説明

相変化メモリ材料、デバイスおよび方法

【課題】相変化メモリ材料、デバイスおよび方法を提供する。
【解決手段】Gaと、ランタノイドと、カルコゲニドとからなる化合物に基づく新しい種類の相変化材料を発見した。これにはGaとLaとSからなる化合物(GLS)に加えて、SをO、Se、および/またはTeによって置換した関連化合物が含まれる。またLaを他のランタン系列元素によって置換できる。この種類の材料は低エネルギで切換えられることが実証された。たとえばGLS材料によって、相変化メモリとして標準的なGeSbTe(GST)材料の消去性よりも3〜5dB高い消去性を有する光記録媒体を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に相変化メモリに関し、特にこうしたメモリに使用可能な材料に関する。
【背景技術】
【0002】
相変化メモリ素子は、何らかの形のエネルギを入力することによって書込可能である。光または電気エネルギを用いるのが最も一般的である。
相変化材料は、略アモルファス状態と略結晶状態を切換可能な材料である。これらの材料をメモリに使用する場合、本技術分野において周知のように、電気エネルギや光エネルギなどを用いて材料の状態を切換える。
【0003】
エナジー・コンバージョン・デバイス社のオブシンスキーらによる発明に関連して、1960年代から近年まで、数多くの特許が存在する(たとえば特許文献1、特許文献2)。この分野には、他にも多くの特許が存在する(たとえば特許文献3、特許文献4)。
【0004】
相変化メモリ材料は、略アモルファスな局所構造と略結晶状の局所構造とに構造状態を変化させることが可能であり、完全アモルファス状態から完全結晶状態までの連続した範囲において、検出可能な異なる局所構造状態に設定可能である。
【0005】
オブシンスキー特許に記載された材料の中には、略アモルファスと略結晶状の局所構造という検出可能な2つの構造状態を切換えることによって、符号化2値情報の各々のビットを格納したり取出しできるものがある。またこれらの材料については、検出可能な中間レベルの局所構造への設定が、完全アモルファス状態から完全結晶状態までの全範囲に亘って可能であると言われている。後者の場合、検出可能な中間レベルは、完全アモルファス状態から完全結晶状態までの全ての局所構造の範囲内にある何らかのレベルと定義されると共に、完全アモルファス状態から完全結晶状態までの範囲によって表される「グレースケール」であると述べられている。
【0006】
このグレースケールという特徴を用いて、たとえば抵抗などの連続した可変パラメータを利用して多状態相変化メモリを作成し、最大レベルから最小レベルまでの個々の検出可能な段階によって多重レベル論理を構成することが考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3,271,591号明細書
【特許文献2】米国特許第5,687,112号明細書
【特許文献3】米国特許第3,983,542号明細書
【特許文献4】米国特許第5,920,788号明細書
【特許文献5】米国特許第6,803,335号明細書
【特許文献6】米国特許第5,933,365号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“McGraw−Hill Encyclopedia of Physics”第2版、1993年、第283頁
【非特許文献2】「希土類硫化物および酸硫化物ガラス(Rare Earth Sulphide and Oxysulphide Glasses)」、Glass Technology、J.Flahaut、M.Guittard、A.M Loireau−Lozac’h、1983年、第24巻、第149〜155頁
【非特許文献3】「示差熱分析における反応速度論(Reaction Kinetics in Differential Thermal Analysis)」、Analytical Chemistry、キッシンジャー、ホーマーE.、1957年、29号、1702〜1706頁
【非特許文献4】Advanced Matter 2003、15(17)第3期9月、Kyratsi他
【非特許文献5】“High Throughput Synthesis and Screening of Chalcogenide Materials for Data Storage”,E*PCOS Cambridge September 2005、R E Simpson,D W Hewak, S Guerin,B Hayden and G Purdy
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、本願発明者らの知る限りでは、いわゆる異なるグレースケール状態同士を明確に線引きする特有の、ないしは物理的に識別可能な特徴なるものは未だ確認されておらず、ただアモルファス状と結晶状の局所状態の相対的な「量」が連続的に変化するのである。
【0010】
更にグレースケールをなす局所構造/非構造の程度の連続的な変化というものが、時間や環境条件、あるいは電気や光、圧力、熱エネルギの変動などといった、不意に起こりうる好ましくない副次的なエネルギ変動に対して安定的であるか否かは明らかではない。
【0011】
光エネルギの印加によって相変化材料の状態を切換える光相変化メモリの場合、その状態は、屈折率、光吸収率、光反射率などの特性、またはその組合せから検出可能である。その他の検出可能特性としては、光膨張や光収縮による体積や密度の変化がある。
【0012】
光相変化メモリ材料においては、レーザを用いて光エネルギを供給し、アモルファス状態と結晶状態との間で相変化を起こすのが一般的である。メモリ材料に印加するエネルギ量は、レーザの出力とレーザパルスを印加する時間との関数である。
【0013】
重要であるにも拘わらず従来技術において広く認められていない点は、相変化材料の吸収係数の重要性である。材料がレーザ光線に対して透明である場合、もしくは相変化材料層が薄すぎる場合、温度上昇は比較的小さいものとなってしまう。同様に、相変化材料の熱伝導率と熱容量も重要である。
【0014】
結晶化エネルギも重要である。後ほど定義するように、結晶化エネルギは、相変化メモリ材料のアモルファスな書込可能ボリューム部分を実質的に再結晶化するのに必要な単位体積当たりのエネルギ量である。結晶化エネルギが高すぎる場合、材料をアモルファス状態から結晶状態へと転換するのに、より高出力のレーザパルスまたはより長いレーザパルスを材料に照射することが必要となる。相変化メモリ材料は、一又は複数の調整剤元素を追加することによって結晶化エネルギを調整し得ることが望ましい。また光記録媒体の消去性を大きくすることが望ましい。結晶化エネルギが低すぎる場合、メモリ材料は不安定となり、記憶した情報が取出せずに失われてしまうこともある。
【0015】
電気相変化メモリは、略アモルファス状態と略結晶状態とを電気的に切換可能であり、電子メモリに応用される。上述のように、この材料は、完全アモルファス状態から完全結晶状態までの連続した範囲内で、幾つもの異なる検出可能な局所構造状態へと電気的に変更可能であるとされている。
【0016】
つまりこうした材料は、電気的な切換えによって、完全アモルファス状態と完全結晶状態とを2値的に切換えたり、局所構造の程度が異なるより多くの段階に切換えて「グレースケール」としたりすることが可能である。あるいは、連続した範囲内で、一方が他方に比べてよりアモルファス状であって結晶状でないような、2つの中間段階を切換える2値システムを考えることもできる。
【0017】
オブシンスキー特許に記載の「グレースケール」は、直観に反するものであると共に、その物理的根拠が不明であり、理論によっても実験によっても未だ説得力を持った説明がなされてはいない。オブシンスキー特許では、一連の部分区間パルスを介してメモリ素子を高抵抗状態から低抵抗状態へと移行させると説明されているが、個々の部分区間パルスを印加しても、部分区間パルスの持続時間の総和が所定の時間に達するまでは、メモリデバイスの抵抗が実質的に変化しないとしている。最終の部分区間パルスによってエネルギが最後に増加すると、直ちにデバイスが低抵抗状態へと移行するというわけである。
【0018】
以上を要約すると、多状態材料は、単位面積当たり高い密度でデータを記憶可能であるという点では明らかに有利であろうが、こうした多状態メモリを実現するのに適した安定した相変化材料が確認されているか否かについては、未だ明らかとはなっていない。
【0019】
更に一般的に言って、相変化メモリがうまく作成できる、あるいは作成できているとしても、これらは幾つかの理由から主要市場へはさほど浸透していない。
これまで主に用いられてきた材料はGeSbTe(GSTとも称する)化合物系であり、典型的には一又は複数の「調整剤」ないしは「ドーパント」と呼ばれる元素を更に含有することによって、たとえば切換速度やエネルギなど、デバイスの一又は複数の関連特性を向上したり何らかの調整を行なったりしたものである。
【0020】
GeSbTeと関連の相変化化合物は、一般に相変化データ記憶に好適な特性を有するが、以下のような限界もある。電気的な切換速度が比較的遅いこと。消費電力が、とりわけ書込に際して比較的高いこと。また長期間データを記憶するためにも、環境条件の変化に対する安定性の観点からも、特に「グレースケール」を利用した多重レベルデバイスの場合には、より高い安定性が望まれる。これらの限界は、いずれも相変化化合物に固有の材料特性に起因するものであるため、デバイスが光作動式か電気作動式かなどの別に拘わらず、こうした材料から形成されるあらゆる種類の相変化メモリデバイスに該当するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によれば、相変化材料を備えた相変化メモリデバイスであって、相変化材料が、(i)Gaと、(ii)ランタノイドと、(iii)カルコゲニドとからなる化合物であるデバイスが提供される。
【0022】
或る種の実施形態では、前記化合物がGaとLaとSとからなる。本技術分野ではGLSと称することが多い。GLSは、調整剤やドーパントが比較的少なく、たとえば少なくとも99%をGa、La、およびS原子で形成しても良い。GLSは、周知のガラス化合物である(特許文献5とその引用文献を参照)。しかし、これを相変化材料として用いることは、新しいことであると考えられる。実際、GLSの研究では、結晶化をいかにうまく抑制するかに注目が集まってきたが、それというのも結晶化がガラス形成においては当然一般に好ましからざる事象であるからである。
【0023】
後ほど実施例において詳述するように、GLSと関連化合物は優れた相変化材料であり、低エネルギでの切換えや、複数の不連続な結晶状態など、相変化材料に強く望まれる特性を呈することが発見されている。たとえば、本発明のGLS系材料によると、同じ構造
を有する従来技術のGST系材料よりも、たとえば3dB、5dB、またはそれ以上の極めて低い消去性を有する光記憶媒体を提供できる。
【0024】
GLS化合物に加えて、本発明は、またLaの一部または全部を他のランタン系列元素(周期律表第58〜71番)によって置換した場合をも想定するものである。更にSの一部または全部を、S、O、Se、Te、SとO、SとSe、SとTe、SとSeとTe、OとSとSeとTeなどを初めとする、カルコゲニドO、Se、Teの全ての可能な組合せのうちの一又は複数によって置換した場合も想定するものである。一実施例では、O原子のS原子の比を約1:19に選定するが、これはSの約5%をOによって置換するものである。別の実施例では、SのOによる置換割合をGa:La比に等しくするが、この場合、1<j<3および1<k<3とすると、前記化合物はj対kつまり(2Ga:3S)対(2La:3O)と表される。
【0025】
Sの一部または全部をSeによって置換することによって、相変化合金の特性温度が下がり、再現性のある形で制御できることが実験から明らかになった。更にSまたはSeをTeによって置換することによって、特性温度を一段と低下させることが可能である。一実施例では、S原子:Se原子の比を約1:19に選定するが、これはSの約5%をSeによって置換するものである。別の実施例は、SをTeで完全に置換するものであり、Ga原子とLa原子とTe原子の比(つまりGa:La:Te)を約3:1:6に選定した化合物である。また同じ比率のままSをSeで完全に置換すると、特性温度の高い化合物が得られる。
【0026】
第1群のGLS組成例では、GaとLaとSの原子比を、25<w<35、5<x<15、および50<y<70の範囲とする。Ga:Sの原子比を約2:3し、La:Sの原子比を約2:3とすることが好ましく、これは特許文献5に記載のように、GaとLaを開始材料としてGLS化合物を製造することによって可能となる。GaのLaの比を3:1として、Ga:La:Sの原子比を約3:1:6とすることが更に好ましい。これは、開始材料GaとLaの比を3:1とすることによって可能となる。
【0027】
第2群のGLS組成例では、GaとLaとSの原子比を、5<w<15、25<x<35、および50<y<70の範囲とする。この組成範囲の例については、アモルファス状態に加えて複数の不連続な結晶状態を呈するという全く予期しない特性を有することが分かっている。これらの材料は、したがって、2値以上のロジックないしはマルチビットデータを安定的に記憶可能であり、従来技術における「グレースケール」範囲を、化合物の不連続且つ安定した3つ以上の物理状態で置き換えるものである。Ga:Sの原子比を約2:3し、La:Sの原子比を約2:3とすることが好ましい。GaのLaの比を1:3とすることによって、Ga:La:Sの原子比を約1:3:6とすることが更に好ましい。これは、開始材料GaとLaの比を1:3とすることによって可能となる。
【0028】
第3群のGLS組成例では、GaとLaとSの原子比を、15<w<25、15<x<25、および50<y<70の範囲とする。Ga:Sの原子比を約2:3し、La:Sの原子比を約2:3とすることが好ましい。GaのLaの比を1:1として、Ga:La:Sの原子比を約2:2:6とすることが更に好ましい。これは、開始材料GaとLaの比を1:1とすることによって可能となる。
【0029】
上述の第1群、第2群、および第3群のGLS組成例を、Ga:La:Te系において、つまりSをTeによって置換して再現できる。
上述の第1群、第2群、および第3群のGLS組成例を、Ga:La:Se系において
、つまりSをSeによって置換して再現できる。
【0030】
更にカルコゲニドを構成するS、Te、およびSe元素のいかなる組合せによって置換しても、上述の第1群、第2群、および第3群のGLS組成例を再現可能である。
ランタノイドは、Laや他のランタノイド、具体的にはCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、またはLuであっても良く、あるいはLaと少なくとももう1つのランタノイド元素との組合せであっても良い。後者の場合、La原子の、少なくとももう1つのランタノイド元素原子に対する比を、9:1〜1:1の範囲としても良い。一実施例では、他のランタノイド原子:La原子の比(たとえば、Pr:La)を約1:4に選定するが、これはLaの約20%を別のランタノイド元素によって置換するものである。別の実施例では、他のランタノイド原子:La原子の比(たとえば、Er:La)を約1:1に選定するが、これはLaの約50%を別のランタノイドによって置換するものである。
【0031】
前記化合物は、F、Cl、Br、およびIからなる群から選択される一又は複数のVII族元素、および/または、Na、K、Rb、およびCsからなる群から選択されるI族元素からなるハロゲン化物調整剤を更に含むことが可能である。ハロゲン化物調整剤は、化合物の原子の1%〜30%、または20%〜30%を占めていても良い。
【0032】
VII族ハロゲン化物調整剤は、LaF、LaCl、LaBr、またはLaIでLaを置換するか、GaF、GaCl、GaBr、またはGaIでGaを置換することによって容易に化合物に導入できる。
【0033】
こうした化合物の具体例に、(30Ga 70La)10LaF、(30Ga 70La)30CsCl、(30Ga 70La)10NaCl、(40Ga 60La)10LaF、(50Ga 50La)GaF、および(30Ga 70La)GaClがある。
【0034】
前記化合物は、周期律表の第21〜30番、第39〜48番、および第72〜80番の元素、具体的にはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、およびZn(第21〜30番)、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、およびCd(第39〜48番)、ならびにHf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、およびHg(第72〜80番)から選択される一又は複数の元素からなる遷移金属調整剤を更に含むことが可能である。遷移金属調整剤は、Cr、Fe、Ni、Nb、Pd、Pt、Cu、Au、およびAgからなる群から選択される一又は複数の元素であることが好ましく、Cu、Ag、および/またはAuであることが最も好ましい。
【0035】
前記化合物は、B、Al、In、Si、Ge、Sn、As、Sb、およびBiからなる群から選択される一又は複数の元素を更に含むことが可能である。
相変化材料は、不揮発性であることが好ましい。
【0036】
相変化材料は、直接上書き可能であることが好ましい。
硫化ガリウム自体は、融解状態から容易に結晶化するものではあるが、ガラスを形成する化合物ではない。硫化ガリウムと硫化ランタンとを組み合わせることによって初めて、ガラスを形成する化合物が得られることになる。GLS化合物の説明にガラス形成という用語を用いるのはこの理由による。ガリウム、ランタン、または硫黄に添加したり、その一部または全部を置換したりする他の元素や化合物は、いずれも調整剤と呼ぶものとする。化合物中に存在する調整剤のレベルは微量であり、重量ではppm程度、原子百分率では0.001程度、あるいは原子百分率で50%とより高い濃度であっても良いが、原子
百分率で0.06〜1.0%とすることが最も好ましい。目下説明する結晶化プロセスの観点からは、この範囲が重要と考えられる。結晶化は、(1)核の形成、(2)核から結晶への成長という2つの基本段階に分けることができる。核形成のプロセスは、均一核形成であっても不均一核形成であっても良い。不均一核形成に必要なエネルギ量は、均一核形成に必要な量よりも一般に小さい。ちなみに、理論的には、調整剤元素によって相変化材料に不均一核形成サイトが追加されると考えられる。こうした調整剤は比較的少量であっても、結晶化プロセスに大幅な変化をもたらすことが可能である。不均一核形成サイトが追加されると結晶化に必要なエネルギ量が減少するため、相変化材料の結晶化エネルギが減少する。更に相変化材料の結晶化エネルギが減少することによって、相変化材料を用いた記録媒体の消去性が増大する。調整剤元素は、原子百分率が0.06を下回ると、十分に不均一核形成サイトを形成して材料の核形成特性に好ましい影響を及ぼすことができないが、原子百分率が約1.0を超えても、調整剤元素はそれ以上の効果を上げることができず、場合によっては相変化材料の好ましい特性に有害な影響を及ぼすこともある。
【0037】
調整剤は、原子百分率が0.001または0.06〜1.0と小さい範囲において結晶化に及ぼす影響に加え、大量に導入することによっても、ガラスまたは結晶相の他の特性を大幅に変化させることができる。たとえば、Sの一部をOによって置換することによって材料を環境に対して安定化可能であり、この改良は相変化材料の多くの用途において望ましいものである。
【0038】
前記化合物は、光作動式と電気作動式の相変化メモリデバイスに好適に用いられる。
つまり本発明におけるデバイスの実施形態では、相変化材料に対して、相変化材料の書込可能ボリュームに光パルスを適用可能に構成された光ビームを用いてアドレス指定を行なうことによって、光ビームによって選択された書込可能ボリューム内の相変化を選択的に読出と誘起可能である。
【0039】
また本発明におけるデバイスの更なる実施形態では、相変化材料に対して、相変化材料の書込可能ボリュームアレイを規定すると共に、書込可能ボリュームに電気パルスを適用可能に構成された複数の電極を用いてアドレス指定を行なうことによって、電極によって選択された書込ボリューム内の相変化を選択的に読出と誘起可能である。
【0040】
より一般的には、相変化材料の書込可能ボリュームに印加されるエネルギはどのような形態であっても良く、電気と光エネルギに限定されるものではない。たとえば、粒子線エネルギ、熱エネルギ、電磁エネルギ、音響エネルギ、および圧力エネルギが考えられる。電気エネルギは、電流の形でも電圧の形でも良い。
【0041】
電気作動式の場合、エネルギを電流の形として、相変化材料の書込可能ボリュームを高抵抗状態から低抵抗状態に設定するのに必要且つ十分な、所定の振幅に等しい振幅と所定の時間に等しい持続時間とを有する所定の電流パルスを印加することが好ましい。
【0042】
電気作動式の場合、相変化材料の状態は、抵抗率測定によってサンプリングできる。材料は、(1)複数の検出可能な電気抵抗率値を有し、(2)電気信号に応じて、1つの抵抗率値から別の抵抗率値に切換えが可能であると共に、(3)電気信号に応じて、材料のそれまでの抵抗率値に拘わらず、特定の開始抵抗率値または消去抵抗率値に設定することなしに抵抗率値の1つに直接設定できることが好ましい。
【0043】
本発明に係るデバイスでは、相変化材料を誘電材料と組み合わせて用いることができる。誘電材料は、相変化材料と化学的に反応しないかぎり如何なる誘電材料であっても良い。誘電材料が、相変化材料よりも高い融点を有することが好ましい。
【0044】
本明細書に記載の材料を用いることによって、電気的および/または光学的に消去可能であり、および/または、電気光学的、音響光学的、または光磁気的相互作用によって直接上書きまたは書換可能なメモリ材料であって、読出と書込速度が高く、不揮発性のランダムアクセスによって書換可能であり、記憶容量1メガバイト当たりのコストが安いメモリ材料が開発されている。
【0045】
一実施形態では、メモリ材料は、電気信号が印加されることによって第1検出可能状態から第2検出可能状態に変化可能な相変化材料を備える(以下、電気相変化メモリと称する)。
【0046】
別の実施形態では、メモリ材料は、たとえば集束レーザ光による照射パルスが印加されることによって第1検出可能状態から第2検出可能状態に変化可能な相変化材料を備える(以下、光相変化メモリと称する)。
【0047】
相変化材料は、第1状態において第1検出可能特性を有し、第2状態において第2検出可能特性を有する。第1検出可能特性と第2検出可能特性の各々が、電気相変化メモリの場合は電気抵抗率であり、光相変化メモリの場合は反射率であることが好ましい。
【0048】
本発明の一実施形態では、相変化材料が、検出可能な2つの電気抵抗率値を有する。これによって、2値記憶能力を有する単一セルメモリ素子が可能となる。
本発明の別の実施形態では、相変化材料が、検出可能な3つの電気抵抗率値を有する。これによって、マルチビット記憶能力を有する単一セルメモリ素子が可能となる。
【0049】
バルクのメモリ材料中に存在するクリスタリットの大きさと組成は、相変化メモリ材料と、相変化合金に組込まれたドーパントと調整剤とに正比例すると言われる。これらのクリスタリットは合金組成やドープ濃度によってそれぞれ固有に変化する。個々の結晶は、検出可能な抵抗値をそれぞれ有し、材料は、それらの抵抗値に確実且つ再現可能に設定可能である。
【0050】
抵抗値に幅があることから、グレースケールと多値アナログ記憶装置も可能となる。多値記憶装置は、広いダイナミックレンジを複数のサブレンジまたはレベルに分割することによって得られる。抵抗値の連続した書込が可能であることから、2値情報の複数ビットを単一のメモリセルに記憶可能となる。この多値記憶は、2値情報の複数ビットを擬似アナログ的な形に置き換えると共に、このアナログ情報を単一メモリセルに格納することによって実現される。したがって、抵抗値のダイナミックレンジを2個のアナログ値に分割することによって、各々のメモリセルは、nビットの2値情報を記憶する能力を備えることとなる。
【0051】
本発明は、電気作動式の単一セルメモリ素子であって、複数の検出可能な抵抗率値を有すると共に、電気信号に応じて、材料のそれまでの抵抗率値に拘わらず、特定の開始抵抗率値または消去抵抗率値に設定することなしに抵抗率値の1つに直接設定できる相変化材料と、誘電材料と、メモリ材料ボリューム(相変化材料ボリューム)の少なくとも一部に電気信号を伝達する伝達手段とを備えた単一セルメモリ素子を提供する。
【0052】
本発明は更に光作動式の単一セルメモリ素子であって、アモルファス状態と結晶状態とを有すると共に、光エネルギに応じてアモルファスと結晶状態を切換え可能な材料を備えた単一セルメモリ素子を提供する。更に材料が、アモルファスと結晶状態を切換えた際に、屈折率、光吸収率、または光反射率のいずれかに検出可能な変化を生ずることを特徴とする。
【0053】
デバイスは、概して平面状であることが好ましく、またその面積の少なくとも一方の寸法に渡って組成を調整することが望ましい。組成を調整することによって抵抗値を十分に安定化可能であり、たとえばバンドギャップ拡大元素を添加して材料の固有抵抗を増加させても良い。組成調整の一例としては、膜厚に対して組成を傾斜させた不均質部分を設けることが挙げられる。たとえば、相変化材料ボリュームを、第1のGa:La:S合金から、組成の異なる第2のGa:La:S合金へと傾斜させても良い。傾斜組成は、所定の抵抗値のドリフトを軽減するものである限り、いかなる形でも良い。たとえば、傾斜組成は、同一合金系の第1合金と第2合金に限定されるものではない。また3つ以上の合金で傾斜させても良い。均一で連続した傾斜でも良く、不均一で不連続な傾斜でも良い。抵抗値のドリフトを軽減できる傾斜組成の具体例としては、片面のGa:La:Sから反対面のGa:La:S:Oまでの均一且つ連続的な傾斜が挙げられる。
【0054】
別の態様では、本発明は、(i)Gaと、(ii)ランタノイドと、(iii)カルコゲニドとに基づく上述のいずれかの化合物を、第1状態と第2状態とに選択的に切換えることによって、相変化メモリデバイスを操作する方法である。第1状態は相変化材料の結晶相であっても良く、第2状態は相変化材料のアモルファス相であっても良い。あるいは、相変化材料の第1結晶相と第2結晶相を第1状態と第2状態とし、加えて相変化材料のアモルファス相を第3状態としても良い。切換えは、光学的、電気的、または本明細書に記載の他のいかなる手段を用いて行なっても良い。
【0055】
[定義]
「アモルファス」は、相変化材料の一状態であり、単結晶に比べて構造的によって規則的ではなく、すなわちより不規則であると共に、たとえば電気抵抗率が高いといった検出可能な特徴を有する状態を指す。
【0056】
或る元素の「原子百分率」とは、材料中のその元素の割合を原子の数で表したものである。
「カルコゲニド」は、周期律表のVI族に含まれる酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、およびテルル(Te)からなる元素、およびこれらの元素を含有する化合物を指す。
【0057】
「組成調整」とは、たとえばバンドギャップ拡大元素を添加して材料の固有抵抗を増加させるなど、相変化材料の組成を調整して抵抗値を十分に安定させるあらゆる手段を意味する。
【0058】
「結晶」は、相変化材料の一状態であり、アモルファスに比べて構造的によって規則的であると共に、たとえば電気抵抗率が低いといった検出可能な異なる特徴を有する状態を指す。
【0059】
「結晶化エネルギ」は、相変化材料のアモルファス化したボリュームを実質的に再結晶化するための単位体積当たりのエネルギ量と定義される。相変化材料ボリュームを結晶化するのに要するエネルギは、出力Pとパルス幅Wを有するレーザ光パルスによって供給できる。アモルファス化したボリュームに伝達されるエネルギ量Eは、積P×Wとなる。(1)本発明の例となる相変化材料と、(2)従来技術の相変化材料との結晶化エネルギの百分率差に基づいて比較試験を行なっても良い。こうした試験では、両材料各々のサンプルボリュームを出力Pとパルス幅Wを有するレーザ光で照射した後、サンプルの光反射率を計測することによって、「静的」試験条件下で測定を行なう。
【0060】
「誘電材料」は、電気絶縁体材料、あるいは最小の電力拡散で電場を維持可能な材料と定義される。より定量的には、ある固体は、価電子帯が充満していると共に導電帯から少
なくとも3eV離れている場合に絶縁体であるとされる。これは非特許文献1に記載の標準的な定義である。
【0061】
相変化材料において「直接上書き可能」とは、その相変化材料に基づくメモリ素子に格納された情報を変更する際に、そのメモリ素子を特定の開始点に設定する必要の無いことを意味する。
【0062】
「消去性」は、光記録媒体における記録信号の搬送波対雑音比(CNR:Carrier−to−Noise Ratio)(以下、「記録CNR」)と、消去後の搬送波対信号比(「消去CNR」)との差と定義される(すなわち消去性=記録CNR−消去CNR)。記録CNRは、媒体に記録された搬送周波数信号電力の、媒体の雑音レベル電力に対する比である。これは通常、記録CNR=20×log10(記録信号のrms電圧/雑音のrms電圧)と表される。消去CNRは、媒体上の信号が記録されている部分に消去処理を行なった後に、媒体に記録されている信号の搬送波対雑音比である。
【0063】
「ランタノイド」とは、周期律表の第57〜71番の元素を指し、具体的にはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuである。
【0064】
相変化材料において「不揮発」とは、その相変化材料からなるメモリセルに格納された情報の完全性を(所定の許容誤差の範囲内で)維持するのに、周期的なリフレッシュを必要としないことを意味する。これによって、抵抗率の設定値が長期間に亘って一定に保たれるため、記憶情報の完全性が失われることはない。
【0065】
「タガント」とは、相変化メモリデバイスのある材料、層、または領域を特定するのに用いる調整剤またはドーパントを指す。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】相変化メモリ材料の温度を横軸として、本発明の一実施形態の相変化メモリ素子における書込の様子を示すグラフ。グラフには、書込可能なメモリ素子の異なる領域を示す。温度上昇には、電気、光をはじめとする様々なエネルギを用いることができる。結晶化パルスによって、ガラスから結晶への相変化が起きる。アモルファス化パルスで結晶を融解して比較的急速に冷却することによって、アモルファス状態への相変化が起きる。低エネルギの電気または光パルスを用いて相を検査することによって、データを読出す。
【図2】本発明の一実施形態の電気メモリ素子のグラフ。デバイス抵抗を縦軸とし、印加電流パルスの振幅を横軸とする。グラフには、この汎用メモリ素子の異なる領域を示す。
【図3】物理気相成長法によってアルミニウム電極と共に薄膜状に成膜したGLS相変化合金を可逆的に切換える、本発明の一実施形態に係る単一セルメモリチップの試作品の写真。
【図4】図3に示すGLS単一セルメモリチップに対して行なった実験の測定結果。抵抗率を電圧の関数として示しており、アモルファス相から結晶相への変化と、結晶相からアモルファス相への変化とが認められる。
【図5】図3に示すGLS単一セルメモリチップに対して行なった実験の測定結果。電流を電圧の関数として示しており、アモルファス相から結晶相への変化と、結晶相からアモルファス相への変化とが認められる。
【図6】Ga:La:Sの勾配を変化させて積層した10×10セルのメモリアレイであり、図6(a)は上面図、図6(b)は底面図。
【図7】図6の10×10個のメモリセルの構造を模式的に示し、図7(a)は各々のメモリセルの側面図、図7(b)は電極構造を詳細に示す斜視図。
【図8a】図6の10×10個のメモリセルアレイ上の傾斜GLS合金の組成の実験測定結果を示すものであり、各々のセルの位置と番号を模式的に示す。
【図8b】図6の10×10個のメモリセルアレイ上の傾斜GLS合金の組成の実験測定結果を示すものであり、Ga、La、S元素の原子百分率の測定結果。
【図8c】図6の10×10個のメモリセルアレイ上の傾斜GLS合金の組成の実験測定結果を示すものであり、Ga、La、S元素の原子百分率の測定結果。
【図8d】図6の10×10個のメモリセルアレイ上の傾斜GLS合金の組成の実験測定結果を示すものであり、Ga、La、S元素の原子百分率の測定結果。
【図9】図6に示す10×10セルのメモリチップ中の4つのセルの動作を示すものであり、電流電圧特性を示す。
【図10】図6に示す10×10セルのメモリチップ中の2つのセルの動作を示す。セル(2,10)の曲線は、3状態マルチビット記憶の例である。
【図11】GLS相変化合金の固相と液相を例示する共晶図。n=75、つまりガリウムの原子百分率が75%の場合に共晶点が存在することを示す。出典は非特許文献2。
【図12】Ga:SとLa:Sの比をそれぞれ40:60に固定すると共に、GaのGa+Laに対する比を55%から90%まで変化させた場合の、Ga:La:S合金の融解開始温度の実験測定結果。n=75%付近において融点が不連続であることから、共晶組成の存在が実験的に確認される。n=70〜80の間の4つの実験箇所における高い融点温度は、液相あるいは完全溶解温度である。
【図13】速度を5〜50Kmin−1に変化させて一連のガラスをそれぞれ加熱した場合のDTA曲線。
【図14】キッシンジャー法を適用して求めた2つのGLS合金の結晶化活性エネルギの実験測定結果。サンプルLD1207(1)の結晶化活性エネルギを直線の傾きから算出すると、265kJmol−1である。サンプルLD1209(1)は、硫黄をより多くの酸素によって置換しており、活性化エネルギが186.8kJmol−1と小さい。
【図15】厚さ100nmの薄膜における、熱蒸着したGLSO結晶とガラス相を示す(μm単位)。
【図16】ガリウム、ランタン、および硫黄化合物を融解して作成した、高周波(RF:Radio Frequency)スパッタリングによる薄膜形成に用いられる2.5インチ(約62.5mm)のスパッタリング対象の写真。
【図17】プラスチック基板上に毎分5nmの成膜速度で厚さ2000nmまで積層したGa:La:S薄膜の写真。
【図18】72:5GaS1.4および27.5Laからなる対象を用いてパルスレーザ堆積法によって積層した薄膜の表面均一性を示すSEM像。
【図19】GeClおよびSbClをHSと反応させた高純度硫化ゲルマニウムおよびアンチモンを示すSEM像。膜厚を測定したところ、それぞれ2.4および4.4μmであった。
【図20】2.5mm厚のGa:La:S基板上にスピンコーティングによって積層した275μm厚のGa:La:Sガラス膜のSEM像。
【図21】ガリウムランタン硫黄系ガラスに830nmのパルスレーザを照射した結果の写真。永久に光黒化した部分がはっきりと認められるが、これによって単一ビットまたは複数ビットの情報を光学的に記憶または再生できる。
【図22】ガリウムランタン硫黄系ガラスに248nmのパルスレーザを照射した結果を示すSEM像。永久に結晶化した部分がはっきりと認められるが、これによって単一ビットまたは複数ビットの情報を光学的に記憶または再生できる。
【図23】正方晶(メリライト)構造で結晶したGaLa10/312サンプルを示すSEM像。
【図24】示差熱分析(DTA:Differential Thermal Analysis)の結果(パーキンエルマー社製のDTA7)。図24(a)はLa酸化物を25%ドープした場合、図24(b)はLa酸化物を5%ドープした場合の結晶化挙動を、温度の関数として示す。
【図25】2つの誘電体層で薄膜Ga:La:S相変化材料を挟持し、その上にアルミニウム合金反射膜を設けた多層積層体からなる光記録デバイスの模式断面図。記録レーザは、基板を通して相変化層に合焦させる。
【図26】一連の薄膜Ga:La:S相変化材料の多層相変化積層体からなる光記録デバイスを示す模式断面図。この例では、それぞれ固有の識別用タガントをドープした6層の独立した相変化層が2層の誘電体層に挟持されると共に、その上にアルミニウム合金の反射膜が設けられている。記録レーザは、タガントを能動的に識別することによって選択した個々の相変化層に合焦させる。
【図27】本発明を実施する相変化材料を用いた光メモリディスクを、一律の縮尺に従わずに示す部分切断図。
【図28】図28(a)は、加熱層と断熱層の具体例を示す単一メモリ素子の模式断面図。図28(b)は、熱プラグの具体例を示す単一メモリ素子の模式断面図。
【図29】GaLaS膜における光相変化切換を実証するのに用いた静的試験装置の模式図。Avtech社製のパルス発生器(AVIR4B−UoS1)を最高1000Hzで運転して、波長658nmで6nsecと短いレーザパルスを生成した。レーザはCW最大出力90mWであり、50nsecパルスでは最大240mWである。サンプルを、コンピュータ制御したxyz監視ステージで操作し、異なるパルス出力とパルス長で一連のデータ点をガラス膜に記録した。帯域幅7GHzのGaAs検出器を用いて、パルス記録を監視すると共に、レーザ書込点の反射率変化に基づいて読出を行なった。
【図30】波長658nmのレーザパルスを用いてGaLaSガラス膜に書込んだ一連のデータ点を示す。パルスの長さは最大200nsecまで、出力は最大約200mWまで変化させた。
【図31】CuドープGa:La:Sガラス膜の相変態速度グラフ。ガラス−結晶相変化において約40nsecの最小切換時間が実験によって確認された。
【図32】化学気相成長法によって積層したGe:Sb:Sガラス膜の相変態速度グラフ。ガラス−結晶相変化において約120nsecの最小切換時間が実験によって確認された。
【図33】Ge:Sb:Sガラス膜の相変態速度グラフ。ガラス−結晶相変化において約40nsecの最小切換時間が実験によって確認された。
【図34】高スループット物理蒸着法で合成したGa:La:Teサンプルの範囲を示す相図。
【図35】図35(a)は、サンプル1613の基板のデジタル処理写真。図35(b)は、EDSで測定した組成範囲を示す。同材料は、基板の全面に連続薄膜(厚さ約100nm)として合成されている。反射率の異なる部分が明らかに認められるが、これは堆積したアモルファス相と結晶相に対応する。
【図36】図36(a)は、サンプル1613の基板を328℃に加熱した後のデジタル処理写真。図36(b)は、EDSで測定した組成範囲を示す。図35との比較から、アモルファスから結晶への相変化と思われる反射率変化のある部分が分かる。
【図37】サンプル1592に対するX線回折測定(XRD:X−Ray Diffraction)の代表値データであり、(a)アモルファス相と(b)結晶相とを共に有する組成を示す。これによって、図35と図36において反射率が上昇した部分が、結晶相に依るものであるという解釈が確認された。
【図38】エリプソメータによって633nmで測定したサンプル1617の測定結果ΔとΨ(°)を示す。偏光角Δは、材料の膜厚差に対応する。偏光角Ψは、相変化の吸光度によって定まるものである。
【図39】0.05mΩ〜5kΩの抵抗率範囲を、四探針計を用いて測定した導電率の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
[実施例1−GLS相合金の作用]
本実施例では、薄膜GLS合金の電気相変化挙動を明らかにする。相変化合金はGaとLaとSからなり、GaとLaとSの比(Ga:La:S)を約1:3:6として選定して相変化合金を形成するものである。電気相変化合金がGaとLaとSからなり、Ga、La、Sの比が5<w<10、25<x<35、および50<y<70であることが更に好ましい。w+x+y=100%が更に好ましい。Ga原子:S原子の比を2:3に選定し、La原子:硫黄原子の比を2:3に選定し、2Ga:3Sの2La:3Sに対する比を1:3に選定することが更に好ましい。
【0068】
本発明の一実施形態では、第1接点と第2接点を伝達手段とする。各々の接点は、メモリ材料ボリュームに隣接している。本明細書において、接点がメモリ材料ボリュームに隣接しているとは、接点の少なくとも一部分がメモリ材料に接している場合を指す。
【0069】
顕微鏡用のホウケイ酸スライドガラスを、相変化メモリデバイスを動作させる基板として用いた。スライドの約1cm×1cmの領域上には、アルミニウム、金および銅が蒸着してある。各々の層は、典型的には厚さ200nmである。次にオックスフォード・インストゥルメンツ社製のRFスパッタ装置を用いて、金属層上にガリウムランタン硫黄(GLS)系の相変化合金を積層した。次いでGLS膜上に、別の金属層を蒸着した。
【0070】
図3に、完全に動作可能なデバイスを示す。銀エポキシを用いて、下部金属層と上部金属層をケースレー238型電圧源−電流計に接続した。次いで、デバイスの電流電圧特性を測定した。
【0071】
図4に、カルコゲニド膜の切換特性を端的に示す。1.2Vにおいて、電流がほぼゼロに低下している。抵抗は対数目盛で表す。切換前の曲線を、材料が再び低導電状態に切換わる電圧まで補外すると、補外曲線は測定値と同じ値となる。このことから、切換によって材料が初期状態に戻ったことが分かる。電圧を更に増加すると、膜の抵抗率は更に4桁ほど増加する。
【0072】
図5に、デバイスの電流電圧特性を示すと共に、GLS相変化合金の切換特性を再掲する。
[実施例2−電気相変化メモリセルアレイ]
本実施例では、GLS相変化合金の電気データ記憶素子としての作用を説明し、種々のGLS合金組成から作製したメモリセルアレイの電気相変化挙動を明らかにする。相変化合金はGaとLaとSからなり、GaとLaとSの比を幅広い範囲に亘って変化するように選定する。ここで相変化合金はGaとLaとSを、5<w<10、25<x<35、50<y<70、およびw+x+y=100%とするとき、Ga:La:Sの比率で備えるものとする。
【0073】
前述の実施例と同様、エドワーズ社製のコーティング装置を用いて、適当な基板上に金属トラックを熱蒸着した。トラックはクロムから作製したが、その理由は融点(1907℃)が前述のGLS相変化合金よりも遥かに高いからである。トラックは、典型的には幅1mm、深さ200nm、長さ50mmとした。次に相変化合金GLSを、パルスレーザ堆積法によって表面電極と基板上に積層した。積層に際して基板を回転も移動もさせないため、Ga、LaおよびSは組成勾配をもって、相対濃度がアレイ内で変化するように積層された。これによって、GLS合金組成の確認を並行して行なうことが可能となる。
【0074】
次にCr電極トラックの上部層を、元のトラックに垂直に蒸着した。GLS合金が両電
極の交点に挟持され、電気的にアドレス指定が可能となっている。各々の交点によってGLS相変化メモリセルが形成される。
【0075】
図6は、このメモリアレイの写真である。
図7に、10×10個のメモリセルの構造を模式的に示す。ここで図7(a)は各々のメモリセルの側面図、図7(b)は電極構成を詳細に表す三次元図である。電気エネルギは、第1接点と第2接点を介して、GLS相変化合金の個々の書込可能ボリュームに伝達される。パルスレーザ堆積法などの技術を用いることによって、膜の組成を基板の全域に亘って大きく変化させることができる。これによって、サンプルの組成分析を行なうことによって、各々のメモリ交点の組成を分析できる。
【0076】
図8に、各々のセルで測定した組成範囲を示す。ここではエネルギ分散X線分光分析法(EDXまたはEDS:Energy Dispersive X−ray Spectrometry)を用いて、実験によってGa、La、S各々の元素の原子百分率をメモリセルアレイ全体に亘って測定した。測定した組成の変化から、各々の接点がそれぞれ合金組成の異なるメモリ材料ボリュームに隣接していることを確認した。個々のセルについては、電流電圧特性による電気的な分析を行なった。
【0077】
図9に、10×10セルのメモリチップアレイ中の4つのセルの電流電圧特性を示す。セルの中には、初めから導電性が高く、結晶膜を呈していると思われるものがあった。電圧を上げて膜を通過する電流を増加させたところ、幾つかのセルは相変化挙動を示した。分析の結果、マルチビット記憶が可能と思われるセルもあった。
【0078】
図10に、3段階の不連続な抵抗値を示す2つのセルの電流電圧特性を示す。
[実施例3−GLS合金の最適化]
相変化の用途に合わせてGa:La:Sガラス系を最適化するため、実験研究を行ない、Ga対La比の異なる一連のガラスの結晶化速度を分析した。共晶組成から僅かに外れるだけで、結晶化時間は大幅に増大する。共晶組成であれば、従来の相変化材料を僅か30nsで結晶化可能だが、こうした共晶組成から10%外れるだけでも、結晶化時間は1μs超にまで増加する。共晶組成を有する相変化材料の設計が必要とされるのは、こうした理由による。
【0079】
初期の研究においては、純相原料、特に純相の硫化ガリウムが無かったために、Ga:La:S系ガラスの共晶体の測定は十分なものではなかった。この問題を回避すべく、特許文献5に記載の方法を用いて、純粋材料を合成し、検証した。
【0080】
純相GaSを合成するために、同一モル量の純ガリウム(99.99999%)と硫黄(99.999%)をSiOアンプルに計量した。粗引ポンプと油拡散ポンプを用いて、アンプル内を4×10−5mBの真空とし、次いで水素/酸素トーチを用いて密閉した。次にアンプルを回転炉内に入れ、15℃/分の速度で1100℃まで加熱した。1100℃で6時間放置した後、炉を室温まで自然冷却した。その結果、薄片状の黄色い物質が得られた。同様の手順によって、純相Gaが合成できた。
【0081】
合成した材料を、粉末X線回折で分析して、純度と単相材料の存在を確認した。また化合物に対して示差熱分析(DTA)を行ない、融点を測定した。Gaは978℃で融解するが、密閉アンプル合成法にて調製した純相GaSは940℃で融解した。ガリウムを硫化するなどの他の手法によって調製した同等の非純相化合物(GaS=1:4)は、876℃と903℃で2回の融解現象を呈した。単一の融点を有することから、本願の化合物が純相であることが分かった。
【0082】
次に純相原料から、一連の純GaLaSガラスサンプルをそれぞれ重さ約10gずつ作製した。これらの前駆体材料を、調整窒素環境中で、ガラス状炭素ルツボに入れる。次にアルゴンパージした乾式炉へと移送する。この段階で炉を加熱して、室温から1150℃まで毎分15℃で昇温させる。サンプルを1150℃に24時間放置する。次に水冷ジャケットに入れ、急冷することによってガラスを形成する。一旦ガラスを室温まで冷却した後、アニーリングを行なう。GLSをルツボから取出し、ガラス状炭素槽に入れる。これを再び炉に入れて、毎分0.5℃の速度で550℃まで加熱し、550℃にて6時間放置した後、毎分0.5℃にて室温まで冷却する。
【0083】
更にサンプルに対して示差熱分析(DTA)を行ない、融点を測定した。このようにして固相から液相への転移を測定できた。
図11は、GLS相変化合金の固相と液相を例示する共晶図であり、n=75、つまりガリウムの原子百分率が75%の場合に共晶点が存在することを示す(非特許文献2参照)。本技術分野では周知のように、同文献のこの共晶図は、酸化ランタンと混相の混入した、不純物を含む原料から求めたものある。
【0084】
図12は、Ga:Sの比を40:60に固定し、La:Sの比を40:60に固定し、GaのGa+Laに対する比を55%から90%まで変化させたGa:La:S合金の融解開始温度を実験によって測定したグラフである。n=75%付近において融解温度の不連続性が認められることから、高い融解温度で共晶組成が存在することが実験によって確認される。このことはn=70〜80の間の4つの実験箇所が、液相つまり完全溶解温度を示すことからも明らかである。
【0085】
[実施例4−GLS合金の結晶化活性化エネルギ]
実験分析結果から、Ga、LaおよびSからなる最適化された相変化合金の1つが、電気および光相変化メモリデバイスに好適な特性を有することを示す。ここではGaとLaとSの比を選定して結晶化の活性化エネルギを最小にすることによって、相変化メモリデバイスの主要な仕様の1つ、具体的には消費電力を最適化できることを実験によって示す。
一連の同一サンプルに対し、示差熱分析を用いてガラスの熱特性を測定した。
【0086】
【表1】

実施例3で概説した方法によってガラスを調製した。分析した2つのガラスの組成を、テーブル4.1に示す。ティー・エイ・インスツルメント社製の熱重量測定装置(SDT)Q6000型示差操作熱量計(DSC)を用いて、ガラスの熱特性を分析した。ガラスを急速加熱して450℃とした。DSCの両腕の温度を450℃で均衡させた後、DSC
をプログラムして、サンプル温度を一定速度で900℃(ガラスの融点未満)まで上昇させた。毎回、新しいガラスサンプルを、典型的には15mgずつDSCにセットした。計器内でサンプル容器がずれないように注意を払った。計器の加熱速度を毎分5、10、20、30、40、50℃に設定しておき、これらの設定速度でサンプルを試験した。
【0087】
図13に、上述の加熱速度におけるDSCの値を示す。キッシンジャー法を用いてこれらの結晶加速度を非等温解析することによって、結晶化活性化エネルギを求めることができる。
【0088】
キッシンジャー(非特許文献3)の提唱する式によると、
ln(α/T)=ln(C)−E/RT
であり、ここでαは加熱速度、Tは結晶化温度の最大値、Cは定数、Rはモル気体定数、Eは結晶化活性化エネルギである。当分析において求めるべきは、結晶化活性化エネルギEである。この等式から、1/Tに対するln(α/T)のグラフから、結晶化エネルギが直線の傾きとして求められることが分かる。
【0089】
図14は、2つのサンプルLD1207(1)とLD1209(1)に関するこの種のグラフ、つまり1/Tに対するln(α/T)のグラフである。結晶化活性化エネルギを傾きから計算したところ、それぞれ、265kJ/molと186.8kJ/molであることが分かった。
【0090】
比較として、キッシンジャー法を適用して、六方相Ge:Sb:Te=2:2:5相変化材料における結晶化の活性化エネルギを求めた場合、215.2kJ/molという活性化エネルギが得られることが以前から知られている(非特許文献4を参照)。
【0091】
[実施例5−薄膜の作製]
電気相変化メモリデバイスや光記録媒体を作成するには、信頼性が高く再現性のある方法で個々の相変化合金の薄膜層を積層することが必要である。
【0092】
蒸着法、化学気相成長法、スパッタリングやグロー放電、プラズマ支援化学気相成長を含むプラズマ蒸着法、およびスピンコート法が、本開示の相変化材料に容易に使用できることを実験によって明らかにする。
【0093】
エドワーズ社製のコーティング装置を用いて、GLSガラスを試験的に熱蒸着した。ガラスサンプル(70Gas1:4:24La:6La)を、乳鉢と乳棒で砕き、GLSガラス粉末を作成した。次に粉末を計量し、タングステン容器に収めた。蒸発室に入れた後、室内を抜気して5.0×10−6mBarの真空とした。電流1〜3アンペアを用いてタングステン容器を加熱し、ガラス粉末をホウケイ酸スライドとフッ化カルシウムスライド上に蒸着した。蒸着膜厚は100nm程度とした。
【0094】
図15に、蒸着した材料のスライドを示す。ここでは100nm厚の薄膜が、結晶相とガラス相を呈している。当業者には容易に分かるように、ソースを加熱するには2通りの方法がある。つまりソースに熱的に接するタングステン容器またはタングステン線に大電流を流す方法と、ソース材料に電子線(Eビーム)を当てる方法である。電子線によると、電子がソース表面に衝突するため、ソース材料が極めて局所的に加熱されることになる。
【0095】
第2の、より好ましい積層方法は、スパッタリングなどの物理気相成長技術を用いることである。ここでは70Gas:24LaS:6LaOの分子組成を有する直径65mmのガラス対象物を用意して、オックスフォード・インストゥルメンツ社製のRFスパッタ
装置にセットした。スパッタリング技術によると、非常に薄い膜を様々な基板に積層可能であり、また非常に薄く均一な膜を最も経済的な方法で形成できる。またスパッタリングは、冷間運動量移動による手法であるため、導電性材料、非導電性材料のいずれでも、感熱プラスチックを含むあらゆる種類の基板に適用可能である。
【0096】
図16に、ガリウムランタン硫黄化合物を融解して作製したスパッタリング対象を示す。
図17に、結果としてプラスチック基板上に積層された薄膜を示す。
【0097】
作業の一環として、パルスレーザ堆積法によって積層されたガリウムランタン硫黄膜の特性に関する実験研究も行なわれた。パルスレーザ堆積法(PLD:Pulsed Laser Deposition)では、レーザ光の短パルスを用いて対象表面をアブレーションし、対象材料のプラズマプルームを形成する。プルームが基板に接触することによって、基板をプルームの内容物でコーティングできる。
【0098】
圧力10−4mbarのステンレス製の真空室に、ホウケイ酸基板と、原子組成72.5GaS1:4:27.5Laの対象を収めた。波長248nmで動作するKrFエキシマレーザを用いて対象表面をアブレーションし、プルームを基板に垂直に当てた。成膜を行なう間、COレーザを用いて基板を加熱できる。得られる薄膜については、雰囲気ガスや圧力、パルスエネルギ、レーザ波長、パルス持続時間、基板温度、および対象基板間距離を慎重に制御することによって特性を変えることができる。
【0099】
図18に、パルスエネルギ120mJ、パルス持続時間20ns、対象基板間距離20mm、および3.5×10−4mbarのN雰囲気という条件下でパルスレーザ堆積法によって成長させた薄膜を示す。
【0100】
また走査型電子顕微鏡検査(SEM:Scanning Electron Microscopy)によって、膜の形態と組成を観測した。得られた膜は、室内の雰囲気ガスの影響からNドープされていることが確認され、酸素や他のプロセスガスを用いても同様のドープが可能であることが分かった。
【0101】
PLDのもう1つの利点は、レーザ光に別の対象を差し込むだけで、簡単に多層構造を作成できることである。
化学気相成長法(CVD:Chemical Vapour Deposition)は、加熱した基板の表面にガスを反応させる処理である。基板の熱が供給するエネルギによって化学反応を活性化することによって、固体膜と反応副生成物とが形成される。GeClとSbClをそれぞれ450C〜600Cの温度でHSと反応させることによって、高純度ゲルマニウムと硫化アンチモンを合成した。
【0102】
図19に、こうしたサンプルの断面を示す。実験から、カルコゲニドの組成、薄膜の膜厚、化学量、および不純物レベルなどの因子が再現性のある形で制御できることが分かった。更に多層構造を積層可能である。当業者に周知の標準的な手法を用いて、薄膜の形状ならびに構成を決定できる。
【0103】
スピンコート処理を用いて、複合メモリ材料を形成しても良い。相変化材料を、相変化材料と有機ポリマー様ポリアミドなどの誘電体との不均一混合物としても良い。得られた混合物を、更にシリコン基板上にスピンコートして、所望の特性を有する複合メモリ材料を形成しても良い。あるいは、ガラス化合物自体を液状になるまで加熱して、適宜加熱した基板上に積層することによって、ガラス薄膜または厚膜を直接形成できる。
【0104】
図20に、こうした膜の例を示す。
[実施例6−光相変化]
これらの材料が光学データ記憶に適していることを明らかにするため、GLS薄膜に対して実験を行なった。基板と硫化ガリウムランタン記録層とを有するディスク構造を、実施例5の方法を用いて作成した。
【0105】
こうした硫化ガリウムランタンガラスのサンプルに、830nmのパルスレーザを照射したものを、図21に示す。永久に光黒化した部分がはっきりと認められるが、これによって単一ビットまたは複数ビットの情報を光学的に記憶または再生できる。
【0106】
本実施例の場合、ガラス組成を70Ga:30Laとし、波長830nm、出力密度38kW/cmにて5秒間照射した。出力は150フェムト秒のパルスを用いて、250kHzの周波数で伝達した。なお、本例は、レーザ照射の波長、時間、強度のいずれについても限定するものではない。むしろ結晶化した部分ではなく光黒化した部分を設けることが、データ記憶にこれまで利用されていなかった重要且つ新規な特徴であるという点がより重要である。
【0107】
図22に、本実験の変形として、硫化ガリウムランタンガラスに248nmのパルスレーザを照射した場合を示す。永久に結晶化した部分がはっきりと認められるが、これによって単一ビットまたは複数ビットの情報を光学的に記憶または再生できる。
【0108】
この場合、248nmのレーザ光は10Hzという遥かに低い周波数で伝達されると共に、計30000パルスがエネルギ密度9.1mJ/cmで伝達された。こうした周波数領域における相変化のメカニズムは、熱変化によるものである。
【0109】
光記録媒体は、記録層を1層、2層またはそれ以上を有しても良い。
記録層は、調整剤を少なくとも1つ添加して調整したGLS材料から形成することが好ましい。この光記録媒体は、対応する未調整の相変化合金で記録層を形成した未調整の(同じ構造を有する)光記録媒体と比較して、少なくとも3dB、5dB、またはそれ以上高い消去性を有することが更に好ましい。
【0110】
別の実施形態では、誘電体層が追加される。たとえば、光エネルギ源として用いるレーザ光の波長のそれぞれ1/4、1/2、および1/2に等しい光学厚さを有する第1誘電体層と、記録層と、第2誘電体層とを備えた構造としても良い。第1誘電体層と第2誘電体層は、高屈折率材料(たとえばZnS)と低屈折率材料(たとえばSiO)の混合物から形成する。
【0111】
いずれの場合でも、光出力が、所望の相変化効果を(熱的であれ光学的であれ)もたらす閾値出力を上回ると共に、材料のアブレーション出力または破壊閾値を下回るものであることは言うまでもない。
【0112】
[実施例7−銀ドーピング]
本実施例では、Ga:La:S系ガラスに銀ドープを行なう。まず、銀薄膜を用意し、次いでこの金属層を光溶解によってGLS相変化材料に導入して、AgドープGLS材料を作成した。
【0113】
こうしたAg被膜は、熱蒸着によって膜上に直接作製した。エドワード社製のコーティング装置E306Aを用いて、この蒸着プロセスを行なった。原料となるAg線は、純度99.99%のものをAgar Scientific社から調達した。Ag線をタングステンフィラメントに巻回すると共に、真空室内にてGa:La:Sガラス薄膜をAgソ
ースの真上に配置した。約1×10−6mbarの真空下で蒸着を行なった。膜厚モニタ(金被覆水晶センサ、Agに対するZ値=16.7および密度=10.5)を用いて、0.1nm/秒の速度で蒸着を制御した。このようにして約100秒で10nm厚の層を蒸着できた。次いで、このAg層を、記録層内に熱的または光学的に拡散できた。
【0114】
記録層膜にドープした42nmのAgを溶解した後、屈折率の変化を測定したところ、0.14〜0.18の範囲であった。これは、2〜2.5%の反射率の変化に相当する。
[実施例8−熱特性の調整]
本発明の別の実施形態では、相変化合金はGaとLaとSからなり、Laの一部または全部を、一又は複数の他のランタノイド元素Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、および/またはLuによって置換して、ドープGLS相変化合金としたものである。
【0115】
一実施形態では、ランタノイド原子:La原子の比、つまりPr:Laを約1:4に選定するが、これはLaの約20%を別のランタノイドによって置換するものである。別の実施形態では、ランタノイド原子:La原子の比、つまりEr:Laを約1:1に選定するが、これはLaの約50%を別のランタノイドによって置換するものである。GaとLaとSとからなると共に、一又は複数のランタノイドをドープしてなる相変化合金において、Gaと(La+ランタノイド)とSの比を5<w<10、25<x<35、および50<y<70とすることが更に好ましい。w+x+y=100%が更に好ましい。2Ga:3Sの2La:3Sに対する比を3:1に選定することが更に好ましい。これらの元素の組合せによって、本発明の光および/または電気相変化メモリ材料が形成される。
【0116】
原子番号、電子基底状態、およびイオンサイズのいずれかを変更すると、相変化材料の光学的、熱的、および電気的特性が変化する。
[実施例9−金属ドーパント]
本発明の別の実施形態では、調整剤元素として、周期律表の第21〜30番、第39〜48番、第57番、および第72〜80番の元素から選ばれる一又は複数の遷移金属を用いることができる。遷移金属元素を、Na、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Ag、In、Sn、Sb、Cs、Au、Pb、Bi、およびその混合物または合金からなる群から選択することが好ましい。金属が、遷移金属Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、またはZnであることがより好ましい。以下、こうした多元素系の具体例をGa:La:S系に関して述べるが、場合によっては他の調整剤元素を含む場合もある。
【0117】
テーブル9.1は、一連の遷移金属のドープによる、ガラス転移温度(Tg)、結晶化開始点(Tx)、および融点温度(Tm)の変化を示す。
【0118】
【表2】

[実施例10−その他のドーパント]
本発明の別の実施形態では、相変化合金はGaとLaとSからなり、Sの一部または全部をSeまたはTeによって置換するものである。本明細書では、これをGLSSeTe相変化合金と定義する。Sの一部または全部をSeによって置換することによって、相変化合金の特性温度が低下し、再現性のある形で制御が可能となることが明らかになっている。更にSまたはSeをTeによって置換することによって、特性温度を一段と低下させることが可能である。
【0119】
一実施形態では、S原子:Se原子の比を約1:19に選定するが、これはSの約5%をSeによって置換するものである。別の実施形態では、SをTeで完全に置換することによって、相変化金属のGa原子:La原子:Te原子の比、つまりGa:La:Teを、約3:1:6に選定する。光学相変化合金がGaとLaとSを、5<w<10、25<x<35、および50<y<70とするとき、Ga:La:Sの比率で備えることが更に好ましい。w+x+y=100%が更に好ましい。Ga原子:S原子の比を2:3に選定し、La原子:S原子の比を2:3に選定し、2Ga:3Sの2La:3Sに対する比を3:1に選定することが更に好ましい。2Ga:3Teの2La:3Teに対する比を1:1または3:1に選定することも同様である。同様に、同じ比率のまま、SをSeで完全に置換して、特性温度の高い相変化合金を得ることもできる。
【0120】
本発明の別の実施形態では、調整剤元素F、Cl、Br、および/またはIを相変化合金に添加して、ハロゲン化物調整相変化材料を形成しても良い。上述のように、ハロゲン化物元素の原子百分率は1.0〜30%が好ましく、20〜30%が更に好ましい。ハロゲン化物は、LaF、LaCl、LaBr、またはLaIでLaを置換するか、GaF、GaCl、GaBr、またはGaIでGaを置換することによって容易に導入できる。あるいは、Na、K、Rb、Csなどの他の金属ハロゲン化物を合金に添加しても良い。上述の相変化合金からなる相変化メモリ材料の具体例に、(30Ga
70La)10LaF、(30Ga 70La)30CsCl、(30Ga 70La)10NaCl、(40Ga 60La)10LaF、(50Ga 50La)GaF、(30Ga 70La)GaClなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
本発明の相変化材料は、B、Al、In、Si、Ge、Sn、As、Sb、およびBiの元素、ならびにその混合物または合金から選択される一又は複数の元素を含むことが好ましい。相変化材料は、1つのカルコゲニドと、少なくともGaまたはLa元素とを含むことが好ましく、遷移金属、酸化物、またはハロゲン化物調整剤元素を含んでも良い。カルコゲニド元素が、S、Se、および/またはTeの混合物であることが更に好ましい。
【0122】
[実施例11−安定性の改善]
本発明の別の実施形態では、相変化材料がGaとLaとSからなり、Sの一部または全部をOによって置換して、酸化物ドープGLS相変化合金を形成するものである。一実施形態では、O原子:S原子の比を約1:19に選定するが、これはSの約5%をOによって置換するものである。別の実施形態では、SのOによる置換割合をGa:La比と等しくし、この場合、1<j<3および1<k<3とすると、相変化合金はj(2Ga:3S)対k(2La:3O)と表される。このように組成の調整を制御することによって、たとえば、或る特定の結晶特性を得ることが可能となる。
【0123】
図23に、正方晶(メリライト)構造で結晶したGaLa10/312を示す。結晶組成とガラス組成が似ているため、長期間に亘って信頼性を確保できる。
図24は、示差熱分析結果(パーキンエルマー社製のDTA7)を示し、図24(a)はLa酸化物を25%ドープした場合、図24(b)はLa酸化物を5%ドープした場合の結晶化挙動を、温度の関数として示す。ここではGaLaとGaLa10/312とが競合すると共に、GaLaという1つの結晶相が支配的であることによって、相変化材料の安定性が改善されている。こうした系は、グレースケール記憶に用いることができるであろう。互いに独立した2つの相を誘起すると共に、その電気または光学特性を著しく異ならせることによって、3段階(ガラス、結晶相A、結晶相B)の符号化システムが可能となる。
【0124】
[実施例12−光ディスク]
光記録媒体には、多くの構造例がある。
図25に、記録層を第1誘電体層と第2誘電体層とで挟持した光記録媒体を示す。この例では、記憶媒体は、典型的にはポリカーボネートまたはガラスからなる基板と、たとえばZnS−SiOからなる第1誘電体層と、たとえばドーパントを添加した若しくは添加しないGa:La:S系ガラスからなる相変化媒体で構成された記録層と、記録層上に積層された第2誘電体層と、本例ではアルミニウム合金からなり、第2誘電体上に積層された反射層とからなる。反射層上には図示しない保護層があり、たとえば、第2ポリカーボネート材料または他の有機材料から形成して、水分や汚れからの保護に用いることができる。実施例5で述べたように、様々な方法を用いてこれらの層を積層可能である。
【0125】
基板は、ポリカーボネートやガラスなどの材料から形成しても良い。基板の材料が、実質的に光学的等方性と光透過性を有することが好ましい。膜厚は、約0.5〜5mmが好ましい。基板は、射出成形、押出成形、熱間プレスなど、選定した材料に適した手法で形成できる。レーザ光源から伝達される光をガイドする溝を基板に設けても良い。溝は、重合、型成形、射出成形、または注型成形によって基板に形成しても良い。溝の深さは、約10nm〜約250nmが好ましい。
【0126】
第1誘電体層と第2誘電体層の主たる機能は、光源の反射率を最適化して、光源からメ
モリ材料へと伝達される光エネルギ量を最大にすることである。最適化には、適当な材料の屈折率と物理的な層厚とが必要となる。
【0127】
第1誘電体層と第2誘電体層は、2.0〜2.8の光屈折率を有する誘電材料から選定することが好ましい。第1誘電体層と第2誘電体層に使用可能な材料に、酸化ゲルマニウム(GeO)、硫化ゲルマニウム(GeS)、硫化亜鉛(ZnS)、カルコゲニド元素と酸素および/または硫黄との組合せ、あるいは金属元素とカルコゲニド元素との組合せなどがあるが、これらに限定されるものではない。各々の材料は単独で、または組み合わせて用いることができる。誘電体層の一方または両方を多層化したり濃度を傾斜させたりして、記録層への拡散を防止しても良い。
【0128】
第1誘電体層と第2誘電体層は、光源反射率の最適化と共に、記録層の断熱手段ともなる。またメモリ材料を化学変化させ得る物質が記録層に侵入するのを防ぐ働きを有しても良い。更に記録または消去時に光源によってメモリ材料が熱せられ、基板が変形するのを防止しても良い。
【0129】
第2誘電体層上に、反射層を積層しても良い。反射層は、メモリ層に入射する反射光量を増加させる。また急速冷却を促進するヒートシンクを形成することによって、メモリ層の熱環境を変化させる。一般に反射層は、薄膜金属で形成される。Al、Au、Ag、Pt、Cu、Ti、Ni、Pdなどの高反射率材料、またはその合金が好ましい。反射層の膜厚は、約10nm〜約500nmが好ましい。スパッタリングや蒸着などの物理的析出方法で反射層を形成することが好ましい。
【0130】
傷や腐食への耐性を高めるため、反射層上に保護層を積層しても良い。アクリレートなどの有機材料から形成することが好ましい。保護層を、放射線(典型的には、電子線や紫外線)照射によって硬化する放射線硬化性の化合物や組成物で形成することが更に好ましい。保護層の膜厚は、約1μm〜約150μmが好ましい。スピンコート法、コート法、スプレーコート法をはじめとした従来のコート方法の中で適した方法を用いて形成しても良い。
【0131】
本発明の光記録媒体は、記録層を一又は複数層有する。
図26に、一連の薄膜Ga:La:S相変化材料の多層相変化積層体からなる光記録デバイスの別の例を示す。この例では、それぞれ固有の識別用タガントをドープした6層の独立した相変化層が、2層の誘電体層にまとめて挟持され、その上にアルミニウム合金の反射膜が設けられている。記録用レーザを、タガントの能動的に識別することによって選択された各々の相変化層に合焦させることによって、単位面積当たりのデータ密度の高いデータ記憶が可能となる。
【0132】
光相変化メモリ材料は、光相変化合金からなり、少なくとも1つの調整剤元素が相変化合金に添加されていることが好ましい。光相変化合金は、(1)アモルファス状態と一又は複数の結晶状態とから選択される複数の離散状態を有し、(2)光エネルギに応じて離散状態を切換え可能であると共に、(3)離散状態を切換えた際に、屈折率、光吸収率、または光反射率のいずれかに検出可能な変化を生ずる本明細書に記載のいずれかの材料であっても良い。
【0133】
本例では、調整剤元素を、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、および/またはLuからなる群(ランタノイドとも称する)から選択する。Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、および/またはYbからなる群から調整剤元素を選択することが更に好ましい。これらの調整剤元素はそれぞれ特有の蛍光スペクトルを有するため、記録層を特定して、使用中の記録層の追跡、特定、
索引付け可能になる。テーブル11.1に、適当な光源からの光を照射した場合の、各々の調整剤元素に特有の発光の例を示す。
【0134】
【表3】

当業者には理解されるように、これらの発光波長は概略値であり、励起波長やガラスの特性によって変化するものである。
【0135】
本例の別の実施形態では、ランタン系列から選択した上述の調整剤元素によって、実施例5で述べたように、それぞれ固有の屈折率、密度、および熱特性が可能となるため、これらをそれぞれ単独であるいは組み合わせて用いることによって記録媒体の機能を拡張するものである。
【0136】
図27は、本発明による新規のカルコゲニド材料を用いた光メモリディスクを、一律の縮尺に従わずに示す部分切断図である。ディスクは、回転を可能にするスピンドル1を有する。ディスクは、基板11と、基板11上に設けた相変化材料層61とを備える。
【0137】
[実施例13−電気作動式メモリ素子]
図28(a)は、単一メモリ素子の模式断面図であり、下部加熱層34、上部加熱層38、上部断熱層41、および下部断熱層31を示す。
【0138】
図28(b)は、熱プラグを示す単一メモリ素子の模式断面図である。
図28(a)に、単結晶シリコン半導体ウェハ基板10上に形成したメモリ素子の断面図を示す。メモリ素子30は、上述したメモリ材料36を含む。
【0139】
メモリ素子は、メモリ材料に電気入力信号を供給するために設けられた一対の電気接点を更に含む。
電気接点の少なくとも一方が、薄膜電気接点層であることが好ましい。図28(a)では、電気接点がそれぞれ下部薄膜層32と上部薄膜層40という電気接点層として実施されている。
【0140】
一般に薄膜電気接点層はそれぞれ十分に薄く積層されるため、これらの層の熱伝導特性がメモリ材料の熱環境を左右することはない。電気接点層の少なくとも一方を、厚さ約5nm〜約200nmに積層することが好ましい。電気接点層の少なくとも一方を、厚さ約10nm〜約100nmに積層することが更に好ましい。電気接点層の少なくとも一方を
、厚さ約15nm〜約75nmに積層することが最も好ましい。
【0141】
一般に各々の電気接点層は、導電性材料から形成する。好ましくは、電気接点層の少なくとも一方を、Ti、W、Mo、およびその混合物または合金からなる群から選択される一又は複数の元素で構成しても良い。電気接点層の少なくとも一方を、TiとWとで構成することが更に好ましい。電気接点層の少なくとも一方を、原子百分率で5%〜30%のチタンと、70%〜95%のタングステンとからなる化合物で構成することが最も好ましい。
【0142】
図28(a)に示す実施形態では、各々の電気接点層32,40はTi−W層であり、直流スパッタ蒸着プロセスを用いて積層するのが好ましい。Ti−W電気接点層32,40は、優れたオーム接触特性を有する。また外部の電極材料がメモリ材料内にエレクトロマイグレーションしたり拡散したりすることを防ぐのに必要なバリア特性を有する。
【0143】
メモリデバイスへの書込には、電気エネルギを電流パルスとして印加する。
メモリ材料ボリュームに入力されるエネルギの少なくとも一部は熱エネルギの形となり、これによって書込期間内に粘度を約1013Pa・s(1014ポアズ)未満まで引き下げることができる。こうして粘度が引き下げられることによって、原子の再配列が可能となり、メモリの書込が行なわれる。
【0144】
一般に加熱層34,38の電気抵抗率は、十分なジュール加熱が可能な値に選定される。加熱層の少なくとも一方の電気抵抗率を、約10−5Ωcm超とすることが好ましい。加熱層の少なくとも一方の電気抵抗率を、約10−3Ωcm超とすることが更に好ましい。加熱層の少なくとも一方の電気抵抗率を、約10−1Ωcm超とすることが最も好ましい。
【0145】
エネルギがジュール熱となる割合は、材料の特定の部位における電流密度の2乗にも正比例する。ジュール加熱によって加熱層内で生成される熱エネルギの少なくとも一部が、メモリ材料ボリュームの少なくとも一部に流れ込むことによって、メモリ材料が熱せられる。
【0146】
加熱層は、別の構成としても良い。メモリ素子は、メモリ材料に隣接してまたは離して積層された加熱層を1層だけ有しても良いし、メモリ材料の上下両側に有しても良い。またメモリ材料ボリュームの少なくとも一部の側方に、加熱層を配置しても良い。
【0147】
加熱層の少なくとも一方は、Ti、V、Cr、Zr、Nb、M、Hf、Ta、W、およびその混合物または合金からなる群から選択される一又は複数の元素と、B、C、N、O、Al、Si、P、S、およびその混合物または合金からなる群から選択される2つ以上の元素とを含むことが可能である。
【0148】
あるいは、加熱層の少なくとも一方が、窒化チタンケイ素、アモルファス炭素、またはアモルファス炭素/アモルファスケイ素二重構造を含むことが可能である。
加熱層は、蒸着法、イオンメッキ法、ならびに直流および高周波スパッタ蒸着法を含む物理気相成長法や、化学気相成長法、プラズマ支援化学気相成長法などの方法で積層しても良い。実際に用いる方法は多くの要因によって決定されるが、その1つに、カルコゲニド対象材料の組成に起因する蒸着温度の制約がある。
【0149】
断熱による熱制御を行なって、メモリ材料36の少なくとも一部からの熱エネルギの伝達を抑制しても良い。メモリ材料36を部分的に包囲すると共にメモリ材料ボリュームの少なくとも一部からの熱エネルギの伝達を抑える断熱層を一又は複数層設けることによっ
て、断熱を行なっても良い。
【0150】
図28(a)では、2層の断熱層、具体的には、メモリ材料36から離して下側に積層した第1下部断熱層31と、メモリ材料36から離して上側に積層した第2上部断熱層41とが用いられている。図28(a)に示すように、断熱層41は、電極42と電気接点層40とを電気的に接続させるように適宜エッチングしてある。またメモリ材料36の下に示す層46は、メモリ材料36の積層に先立って中央部をエッチングによって取り除き、チャネルを設けてある。次にメモリ材料を積層して、チャネルを満たすと共に層46の上面を薄膜で覆っている。
【0151】
図28(a)に示す構造では、断熱層41をエッチングすることによって、断熱層34とメモリ材料36との接触部分付近のメモリ材料ボリュームから横方向に電極42をズラしてある。こうして横方向にズラすことによって、層42の熱伝導特性の影響が軽減され、メモリ材料ボリュームの少なくとも一部からの熱の伝達が更に抑えられている。
【0152】
断熱層は、別の配置構成としても良い。一般に断熱層は、メモリ材料に隣接して積層しても、離して積層しても良い。断熱層を1層だけとしても良い(メモリ材料の上に積層しても下に積層しても良く、メモリ材料に隣接しても離しても良い)。メモリ材料の側面の少なくとも一部を囲むように断熱材料を積層しても良い。
【0153】
一般に断熱層は、断熱材料の面をなしてメモリ材料を少なくとも部分的に包囲するものである。この断熱面によって、メモリ材料ボリューム36の少なくとも一部に保持される熱エネルギ量が増加する。またメモリ材料からの伝熱速度が低下し、メモリ材料の冷却速度が抑えられる。
【0154】
断熱層は、優れた断熱特性が得られるように選定される。断熱層の断熱特性は、断熱層材料の比熱と熱伝導率とによって決まる。材料の比熱および/または熱伝導率を下げると、層の断熱特性が上昇し、メモリ材料ボリュームからの熱損失速度が遅くなる。したがって、これらの材料特性を操作することによって、メモリ材料の冷却速度を制御し、最適化しても良い。
【0155】
断熱層の少なくとも一方の熱伝導率を、約0.2Jcm/cmKsec未満とすることが好ましい。少なくとも一方の断熱層の熱伝導率を、約0.01Jcm/cmKsec未満とすることが更に好ましい。少なくとも一方の断熱層の熱伝導率を、約0.001Jcm/cmKsec未満とすることが最も好ましい。
【0156】
少なくとも一方の断熱層の比熱を、約3J/cmK未満とすることが好ましい。少なくとも一方の断熱層の比熱を、約1J/cmK未満とすることが更に好ましい。少なくとも一方の断熱層の比熱を、約0.1J/cmK未満とすることが最も好ましい。
【0157】
少なくとも一方の断熱層が、酸化物、窒化物、酸窒化物、カルボナイト、炭窒化物、フッ化物、硫化物、塩化物、炭化物、ホウ化物、リン化物、およびその混合物または合金からなる群から選択される一又は複数の材料を含むことが可能である。あるいは、少なくとも一方の断熱層が、有機誘電材料を含むことが可能である。
【0158】
断熱層材料の更なる例としては、スピンオンガラスとスピンオンポリマーが挙げられる。断熱層材料の更に別の例としては、シリカとダイヤモンドが挙げられる。
各々の断熱層の膜厚は、各々の層の断熱特性に(ひいてはメモリ材料の冷却速度に)影響を及ぼす。一般に断熱層の膜厚を増やすと断熱特性が上昇し、メモリ材料の冷却が更に遅くなる。断熱層の少なくとも一方の厚さを、約10nm〜約1000nmとすることが
好ましい。少なくとも一方の断熱層の厚さを、約50nm〜約750nmとすることが更に好ましい。断熱層の少なくとも一方の厚さを、約100nm〜約500nmとすることが最も好ましい。
【0159】
メモリ材料ボリュームの熱環境を更に制御するため、断熱材料ボリュームを少なくとも部分的にメモリ材料ボリューム内に封入して熱制御に供することもできる。以下、この断熱材料ボリュームを熱プラグと称する。熱プラグによると、メモリ材料ボリューム内の熱エネルギ分布を制御可能になる。熱プラグは、上述した断熱層用に選択したものと同じ材料から作成しても良い。
【0160】
図28(b)に、メモリ材料ボリューム36内に配置されると共に、メモリ材料層36の上面から下面へと延在して上部加熱層38と下部加熱層34に接する熱プラグ45を用いたメモリ素子の一実施形態を示す。
【0161】
メモリ材料層36は、本明細書に開示のカルコゲニド材料などの多元素半導体材料を用いて形成できる。この層36は、スパッタリング法や蒸着法などの方法で積層しても、化学気相成長法(CVD)で積層しても良く、また高周波グロー放電などのプラズマ技術によって化学気相成長法を拡張しても良い。カルコゲニドメモリ材料については、高周波スパッタリング法や蒸着法で形成するのが最も好ましい。
【0162】
メモリ材料層36は、厚さ約20nm〜500nmで積層することが好ましく、厚さ約25nm〜250nmが更に好ましく、厚さ約40nm〜125nmが最も好ましい。
一般に本明細書において「孔径」という用語は、メモリ材料36とメモリ材料36に隣接するメモリ素子層との最小接触領域の平均断面積を指すものである。図28(a)に示す実施形態の場合、メモリ材料36と加熱層34、38との最小接触領域の平均断面積が孔径である。メモリ材料36の孔径は約1〜2μm未満であるが、横方向の寸法について特に制限があるわけではない。高導電性材料の導電性パスの直径は、ミクロンオーダよりも遥かに小さいことが分かっている。したがって、孔径はリソグラフィの解像限界で可能な限り小さくでき、実際、孔径を縮小することによって書込に必要なエネルギを小さくできる。
【0163】
孔径は、メモリ材料(抵抗値が書込によって変化する)の断面積とほぼ同等になるように選定することが好ましい。したがって、メモリ材料36の孔径を約1μm未満とすることによって、メモリ材料ボリューム36を、リソグラフィで可能な範囲で、材料36の書込可能な(サブ)ボリュームつまり書込可能ボリュームに限定することが好ましい。
【0164】
孔径と概ね関連のあるメモリ素子の性能について観察しよう。デバイスをバイナリモードで使用する(つまりアモルファス状態と1つの結晶状態とを切換える)場合、孔径を1ミクロン強から全く孔のない状態まで規則的に変化させたウェハ上でのデバイス試験では、OFF/ON抵抗比の全般的な上昇が見られる。孔径をたとえば1ミクロンから約1/6ミクロンの範囲で制御することによって、デバイス性能を向上できる可能性がある。こうしたデバイスの書込には電流密度やエネルギ密度などの因子が重要であるため、デバイスのボリュームを減らして孔径を小さくすることによって、感度や速度が上昇するものと思われる。所定のエネルギや電流、電圧パラメータを最小化するためには、孔径を150nmに、あるいは10nmにまで小さくするのが良い。
【0165】
上述のエネルギ制御として、電気的制御を行なってメモリ材料ボリュームの少なくとも一部における電流分布を制御しても良い。具体的には、一又は複数の抵抗層を用いて電気的制御を行なうことができる。抵抗層の少なくとも1つを、メモリ材料ボリュームに隣接して積層することが好ましい。各々の抵抗層を十分な電気抵抗率を有する材料で形成し、
メモリ材料ボリュームの少なくとも一部において電流を拡散することによって、材料内のエレクトロマイグレーションが低減される。少なくとも一方の抵抗層の抵抗率を、約10−5Ωcm超とすることが好ましい。少なくとも一方の抵抗層の抵抗率を、約10−3Ωcm超とすることが更に好ましい。少なくとも一方の抵抗層の抵抗率を、約10−1Ωcm超とすることが最も好ましい。
【0166】
図28(a)と図28(b)に示すエピタキシャル構造を製造するのに適した製造工程については、特許文献6によって詳細に記載されており、その内容は参照によって本開示に援用されるものとする。
【0167】
[実施例14−Ga:La:S膜における光データ記憶の実証]
CuドープGa:La:Sガラス薄膜を、高周波スパッタリングによって直径65mmの対象からガラス基板上に積層した。1100℃で融解したGa:La:Sガラスを直径3インチの成形型内でメルトクエンチしてスパッタリング対象を作成し、次に同ガラスを500℃で24時間アニーリングした。ガラスディスクを毎分1℃で冷却し、次に銅製のバッキングプレートに装着した。サンプルと対象を真空室内に密封し、分圧アルゴンガスを導入した。高周波スパッタリングを最大6時間行ない、膜厚2000nmの均一な膜を成膜した。
【0168】
図29に模式的に示す特製の静的試験装置を用いて、光データの記憶、書込、および読出を行なった。静的試験装置は、サンプルの各所において薄膜内に相変化を光誘起できる装置である。集束ビームパルスを用いてサンプルを加熱し、ガラス膜を局所的に結晶化させる。また膜を検査し、相変化合金から反射されたレーザ光の出力を尺度として記憶情報の読出を行なうことができる。相変化は、反射光強度の微小な変化として検出される。結晶化温度以上に加熱して結晶化させたり、融点以上に加熱して急速に冷却/急冷し、膜をガラス化させたりすることによって、材料の相を変化させる。長さと出力の異なる一連のパルスを用いて、膜内に相変化マークを書込む。これらの測定値から、パルスエネルギ、パルス時間、および反射率のパーセント変化のグラフを作成する。このグラフは、一般に相変態速度(PTK:Phase Transform Kinetics)図として知られている。
【0169】
図30に、CuドープしたGaLaS膜上に形成した一連のレーザ書込スポットの光学顕微鏡画像を示す。100mW前後のパルス出力において、40nsecの最小切換時間が観測された。比較のために、化学気相成長法で積層したGe:Sb:S膜に対して測定を行なった。図31に示す結果から、50nsecの最小切換時間が認められた。
【0170】
[実施例15−Ga:La:Te系材料の光および/または電気データ記憶への最適化、完全Ga:La:Teガラス系における相変化]
従来のカルコゲニド薄膜は数多くの方法で合成できるが、ほとんどの場合、分析対象となる所望の膜と同じ組成の対象またはチャージ材料がサンプル毎に必要となる。そのためには、適当な対象またはバルクガラスを作製し、典型的には示差熱分析法(DTA)によって熱分析し、X線回折を行なってアモルファス度を求めることが今度は必要となる。こうしたプロセスは非常に時間を要する上、一群の異なる材料の全てを調査しようとすると、コストが掛かり実用的ではない。
【0171】
相変化用途向けの新しい組成を十分に調査するため、制御性が向上すると共に組成範囲が拡大された新技術が開発された(非特許文献5)。超高真空分子線エピタキシー技術に基づいて元素を同時に「くさび状」に成長させる物理気相成長システムを利用することによって、数百種の異なる相変化材料組成を同時に調査し、各々の組成の適性を個々に分析可能となった。このシステムは、合金、混合およびドープ酸化物、窒化物、ならびに水素
化物の傾斜組成や傾斜組織を、Eビームとクヌドソンソースおよびプラズマ原子ソースとの組合せを用いて積層可能に設計されている。
【0172】
一方は最高6個、他方は4個の異なる元素ソースを用いることができる2つの高スループット物理蒸着(HT−PVD:High Throughput Physical Vapour Deposition)合成室を、超高真空(UHV:Ultra High Vacuum)移送ラインおよびUHV特性評価室と共に用いる。グローブボックスと高速投入室(fast entry chamber)によって、クリーンな状態でサンプルを装置に出入可能である。連続薄膜を作成することも、コンタクトマスクを用いて個別アレイを作成できる。各々のソースにウェッジシャッタを用いてサンプル内の材料勾配を制御すると共に、各々のソースからの蒸着速度を併せて制御することによって、材料の組成範囲を完全に制御可能である。初めに、各々の元素の濃度を0%からほぼ100%まで変化させて、幅広い範囲の組成を合成する。予備スクリーニングを行なった後に、問題となる範囲周辺のより狭い組成範囲をより高い分解能で合成できる。
【0173】
本例では、(金属ベースで)純度99.9999%以上のガリウム、ランタン、およびテルル元素を用いて、幅広い範囲のGa:La:Te組成を積層した。基板はガラス、ケイ素、または熱酸化Siで、底面積を32mm×32mmとした。合計36回の成膜を行ない、その代表的なサンプルをテーブル1に示す。これらのサンプル、特にサンプル1613とサンプル1659については、Gaを0〜100%、Laを0〜90%、Teを0〜80%とした連続的な範囲のサンプルを用いて、Ga:La:Te相図のほぼ完全なスクリーニングを行なった。エネルギ分散X線分光分析(EDS)を用いて組成分析を行なって確認した代表点サンプルを図34に示す。
【0174】
【表4】

なお、図34にはサンプルの分析箇所(約2mm間隔)だけを示すが、遥かに高い密度で測定を行なうことによって、三角図内をより詳細に補うこともできる。
【0175】
典型的な基板のデジタル処理写真を図35(a)に示すと共に、EDSによって測定した組成範囲を図35(b)に併せて示す。同材料は、基板の全面に連続薄膜(厚さ約100nm)として合成されている。反射率の変化している部分がはっきりと認められ、肉眼では明るく(より反射して)見えると共に、サンプルの他の部分は(特にガラス基板の場
合)より透明に見える。こうした部分が、ガラスおよび結晶Ga:La:Te組成の成膜された部分と考えられる。これら異なる部分に対応する組成を、図35(b)の相図上にマッピングすることによって、Ga:La:Te系の異なる相の最初の指標が得られる。
【0176】
このサンプルを加熱板で熱して目視観察したところ、ガラスから結晶への相変化を表すように、反射率の高い部分が「成長」した。328℃に加熱した後のサンプルを、図36に示す。
【0177】
本例のカルコゲニド材料について、様々な方法を選んで(テーブル2)、バルク構造、バルクおよび表面組成、光学的、熱的、ならびに導電率特性を得た。
「蒸着したままの」材料の構造特性を得るため、X線回折測定(XRD)を行なった。一例として、アモルファス相と結晶相とを有する組成の例を図37に示す。これによって、反射率の上昇が結晶相に起因するものであるという解釈が確認された。
【0178】
【表5】

図38に、サンプル内に示した100箇所を633nmで測定したエリプソメータの測定結果ΔとΨ(度)を、等高線図状に示す。偏光角Δは、主に材料の膜厚差を反映するものであり、これはAFMによる膜厚データとの比較によって実証可能である。偏光角Ψは、相の吸光度によって定まるものである。Ψ図と処理済みの光学像との比較から、Ψと高反射率の結晶相との間に相関があることがはっきりと分かる。このデータから、光学定数nとkを完全に求めることができる。
【0179】
分析では更に0.05mΩ〜5kΩの抵抗率範囲で四探針計を用いて、やはり自動測定によって導電率を測定する。このデータを図39に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化材料を備えた相変化メモリデバイスであって、
前記相変化材料は、
(i)Gaと、
(ii)Laと、
(iii)カルコゲニドと
からなる化合物である、デバイス。
【請求項2】
前記カルコゲニドはTeからなる、
請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
Gaw、Lax、Teyの原子比は、25<w<35、5<x<15、および50<y<70の範囲である、
請求項2記載のデバイス。
【請求項4】
前記化合物の少なくとも99%は、Ga、La、およびTe原子からなる、
請求項3記載のデバイス。
【請求項5】
Ga:Teの原子比は2:3であり、La:Teの原子比は2:3である、
請求項3記載のデバイス。
【請求項6】
Ga:Laの比は3:1であり、Ga:La:Teの原子比は3:1:6である、
請求項3記載のデバイス。
【請求項7】
Gaw、Lax、Teyの原子比は、5<w<15、25<x<35、および50<y<70の範囲である、
請求項2記載のデバイス。
【請求項8】
前記化合物の少なくとも99%はGa、La、およびTe原子からなる、
請求項7記載のデバイス。
【請求項9】
Ga:Teの原子比は2:3であり、La:Teの原子比は2:3である、
請求項7記載のデバイス。
【請求項10】
Ga:Laの比は1:3であり、Ga:La:Teの原子比は1:3:6である、
請求項7記載のデバイス。
【請求項11】
Gaw、Lax、Teyの原子比は、15<w<25、15<x<25、および50<y<70の範囲である、
請求項2記載のデバイス。
【請求項12】
前記化合物の少なくとも99%はGa、La、およびTe原子からなる、
請求項11記載のデバイス。
【請求項13】
Ga:Teの原子比は2:3であり、La:Teの原子比は2:3である、
請求項11記載のデバイス。
【請求項14】
Ga:Laの比は1:1であり、Ga:La:Teの原子比は2:2:6である、
請求項11記載のデバイス。
【請求項15】
前記カルコゲニドはSeからなる、
請求項1記載のデバイス。
【請求項16】
前記相変化材料はLaの他に、少なくとももう1つのランタノイド元素を有する、
請求項1記載のデバイス。
【請求項17】
La原子:前記少なくとももう1つのランタノイド元素の原子の比は、9:1〜1:1の範囲にある、
請求項16記載のデバイス。
【請求項18】
前記カルコゲニドはOからなる、
請求項1記載のデバイス。
【請求項19】
前記カルコゲニドはSeからなる、
請求項1記載のデバイス。
【請求項20】
前記カルコゲニドはTeからなる、
請求項1記載のデバイス。
【請求項21】
前記化合物は更に、
F、Cl、Br、およびIからなる群から選択される一又は複数のVII族元素と、
Na、K、Rb、およびCsからなる群から選択されるI族元素からなるハロゲン化物調整剤と
のうちの少なくとも一方を含む、
請求項1〜20何れか一項記載のデバイス。
【請求項22】
前記ハロゲン化物調整剤は、前記化合物の原子の1%〜30%を占める、
請求項21記載のデバイス。
【請求項23】
前記ハロゲン化物調整剤は、前記化合物の原子の20%〜30%を占める、
請求項21記載のデバイス。
【請求項24】
前記化合物は更に、周期律表の第21〜30番、第39〜48番、および第72〜80番の元素から選択される一又は複数の原子からなる遷移金属調整剤を含む、
請求項1〜23何れか一項記載のデバイス。
【請求項25】
前記遷移金属調整剤は、Cr、Fe、Ni、Nb、Pd、Pt、Cu、Au、およびAgからなる群から選択される一又は複数の元素である、
請求項24記載のデバイス。
【請求項26】
前記化合物は更に、B、Al、In、Si、Ge、Sn、As、Sb、およびBiからなる群から選択される一又は複数の元素を含む、
請求項1〜25何れか一項記載のデバイス。
【請求項27】
前記相変化材料は、前記相変化材料の書込可能ボリュームに光パルスを適用可能に構成された光ビームを用いてアドレス指定を行なうことによって、前記光ビームによって選択された書込可能ボリューム内の相変化を選択的に読出および誘起できる、
請求項1〜26何れか一項記載のデバイス。
【請求項28】
前記デバイスは光メモリディスクとして形成される、
請求項27記載のデバイス。
【請求項29】
前記デバイスは更に、
基板と、
前記基板上に配置される前記相変化材料の層と
を備える、
請求項27または28記載のデバイス。
【請求項30】
前記デバイスは更に、
前記相変化材料の層の上に配置される上部誘電体層と、
前記相変化材料の層の下に配置される下部誘電体層と
を備える、
請求項29記載のデバイス。
【請求項31】
前記デバイスは更に、
前記上部誘電体層と前記下部誘電体層の間に配置される少なくとももう1つの相変化材料層を備える、
請求項30記載のデバイス。
【請求項32】
前記相変化材料は、前記相変化材料の書込可能ボリュームアレイを規定し、前記書込可能ボリュームに電気パルスを適用可能に構成された複数の電極を用いてアドレス指定を行なうことによって、前記電極によって選択された書込ボリューム内の相変化を選択的に読出および誘起できる、
請求項1〜26何れか一項記載のデバイス。
【請求項33】
前記デバイスは、前記相変化材料を少なくとも1つのメモリ材料層に組込み、
前記デバイスは更に、前記電極を少なくとも1つの電極材料層によって形成してなる平面構造を備える、
請求項32記載のデバイス。
【請求項34】
前記デバイスは更に少なくとも1つの加熱層を備える、
請求項33記載のデバイス。
【請求項35】
前記デバイスは更に断熱材料を備える、
請求項33または34記載のデバイス。
【請求項36】
前記断熱材料は少なくとも1つの断熱層内に配置される、
請求項35記載のデバイス。
【請求項37】
前記断熱材料は、少なくとも部分的に前記メモリ材料層内に配置されてプラグを形成する、
請求項35または36記載のデバイス。
【請求項38】
前記デバイスは前記相変化材料を第1状態と第2状態に切換え、
前記第1状態は前記相変化材料の結晶相であり、
前記第2状態は前記相変化材料のアモルファス相である、
請求項1〜37何れか一項記載のデバイス。
【請求項39】
前記デバイスは前記相変化材料を第1状態と第2状態に切換え、
前記第1状態は前記相変化材料の第1結晶相であり、
前記第2状態は前記相変化材料の第2結晶相である、
請求項1〜37何れか一項記載のデバイス。
【請求項40】
前記デバイスは前記相変化材料を前記第1状態、前記第2状態、および第3状態に切換え、
前記第3状態は前記相変化材料のアモルファス相である、
請求項39記載のデバイス。
【請求項41】
相変化材料を第1状態と第2状態に切換える相変化メモリデバイスとしてのデバイスであって、
前記第1状態は前記相変化材料の第1結晶相であり、
前記第2状態は前記相変化材料の第2結晶相である、デバイス。
【請求項42】
前記第1結晶相は第1固有抵抗率を有し、前記第2結晶相は第2固有抵抗率を有する、
請求項41記載のデバイス。
【請求項43】
前記デバイスは前記相変化材料を前記第1状態、前記第2状態、および第3状態に切換え、
前記第3状態は前記相変化材料のアモルファス相である、
請求項41または42記載のデバイス。
【請求項44】
(i)Gaと、
(ii)Laと、
(iii)カルコゲニドと
からなる化合物を、第1状態と第2状態に選択的に切換えることによって相変化メモリデバイスを操作する、方法。
【請求項45】
前記第1状態は相変化材料の結晶相であり、
前記第2状態は相変化材料のアモルファス相である、
請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記第1状態は相変化材料の第1結晶相であり、
前記第2状態は相変化材料の第2結晶相である、
請求項44記載の方法。
【請求項47】
前記方法は前記第1状態、前記第2状態、および第3状態への切換えを行ない、
前記第3状態は相変化材料のアモルファス相である、
請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記方法は前記切換えを光学的に行なう、
請求項44〜47何れか一項記載の方法。
【請求項49】
前記方法は前記切換えを電気的に行なう、
請求項44〜47何れか一項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2013−65394(P2013−65394A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−240317(P2012−240317)
【出願日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【分割の表示】特願2008−546573(P2008−546573)の分割
【原出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(500125788)ユニバーシティ、オブ、サウサンプトン (12)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SOUTHAMPTON
【Fターム(参考)】