説明

相変化処方の薬剤輸送

【課題】 人体表面に薬剤を輸送する装置と方法を提供する。
【解決手段】 本発明の処方は薬剤,処方を固相以下から密着性の柔らかい固相へ変換可能な変換剤,および薬剤および変換剤のビヒクル媒体またはキャリアからなる。薬剤処方はこの人体表面へその固相以下で塗布され,次いで薬剤が人体表面を通って輸送される間に柔らかい固相へ変換される。薬剤の輸送の完了後,柔らかい固形処方は体表面から密着性の固体処方として除去または剥離することができる。薬剤処方は薬剤輸送速度の制御を行い,体表上に汚れた処方残査を残さずに処方を除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体および固相以下の医薬処方を人体表面に施し,次いでより固い状態に変換し,その結果,塗布後の処方の投与と除去を容易にする方法,処方および装置に関する。
【0002】
本発明はまた,擦り傷,裂き傷,または手術後の傷等の皮膚または傷ついた人体表面及びその近辺の組織を麻酔することのできる方法と処方に関する。より具体的には,本発明は皮膚または傷ついた表面に塗布し,その後柔らかい密着した固体状態に変わり,次いで麻酔効果を達成した後に剥離できる固相以下の処方に関する。
【0003】
さらに,本発明はほとんどの局所麻酔剤を未溶解状態で,ほとんど角質等の障壁または皮膚層のない人体表面に塗布し,局所麻酔剤がより制御され長期に放出される処方の塗布法に関する。
【背景技術】
【0004】
体表面上に局所的に塗布される多くの医薬処方はペースト,ゲル,軟膏,または不注意に拭き取られ易いか,塗布個所から流出し易い固相以下の類似の溶液である。例えば,液状処方をヒトの皮膚に塗布した後,液体は速やかに流れ去り,最初の塗布部位との接触時間が短くなる。腕の皮膚にクリームを塗った後は,被覆で保護しなければ日常生活で拭い去られる。頭髪の成長のため睡眠前にミノキシジルクリームまたは溶液を頭皮上に塗った場合,夜中に枕で拭われてしまう。さらに,“固相以下”の処方は汚れが付き易く,除去するのに苦労する。
【0005】
麻酔の局所輸送は,従来技術の輸送法と処方がいかに制約されているかの良い例である。皮膚の手術は苦痛であることが多い。ほとんどの人は,縫合またはほくろの除去等の皮膚の小さな手術に伴う痛みと不快に慣れている。この様な手術を受ける患者は,迅速で効果的な麻酔の恩恵を受ける。皮膚再生や赤痣または同様な痣のレーザー除去等の最近開発された美容整形でも,かなりの麻酔が必要になる。顔の皮膚の美容整形は本質的に苦痛である。現在,これらの薬品投与や美容手術の前に皮膚を麻酔するため,注射,注射で輸送する局所麻酔,および局所麻酔クリーム(EMLAクリーム)の皮膚塗布等の局所的に輸送される局所麻酔により,全身麻酔または局所神経遮断を含むいくつかの従来技術を使用し得る。
【0006】
皮膚麻酔のための従来技術には重大な欠点がある。全身麻酔および局所神経遮断は通常,麻酔医の立ち会いが必要であり,例えば個人開業医で実行することができない。局所麻酔薬の注射は苦痛で不快であり,皮膚表面が変形する可能性がある。また皮膚に針の孔を残し,かさぶたや傷痕を残すことがある。麻酔薬を顔面組織に輸送しなければならない場合,注射の不利益は受け入れ難いものである。EMLAクリームの使用は不快ではないが,開始時間が長すぎる場合が多い。さらに,EMLAクリームは麻酔効果を待つ間,膜で包まなければならず,EMLAクリームは皮膚に汚れを残し,麻酔剤を輸送した後にそれを除去しなければならない。
【0007】
いくつかの医療および整形手術のための皮膚の効果的な麻酔で患者が恩恵を受けると同じ様に,傷ついた人体表面と,傷ついた表面の治療に関連する手術の結果,苦痛を受ける患者も便利な局所麻酔の恩恵を受ける。切り傷,擦り傷または潰瘍等の開いた傷口を有する患者は,苦痛を和らげ,傷を清潔にするか傷口を閉じる麻酔を要求すると思われる。かさぶたや死んだ組織(すなわち回復途上の火傷)を有する慢性的な潰瘍表面を刻々と壊死組織切除する必要がある。
【0008】
麻酔を行わない場合,壊死組織切除は苦痛を伴う手術である。全身麻酔,静脈内麻酔性鎮痛薬,注射による局所神経遮断,および硬膜外麻酔を,壊死組織切除または傷に伴う苦痛を和らげるために用いることができる。しかしながら,全身麻酔剤の輸送,注射による局所神経遮断,硬膜外または静脈内麻酔は特に訓練された医療技術者および/または特製の投与用医療装置が必要である。その手術は患者をかなりの危険にさらし,看護者に相当な責任を負わせる。ほとんどの活性薬剤が溶けている麻酔処方を角質層のない皮膚に施すことは,薬が急速に吸収される危険と,効果の持続が短い結果になり得る。
【0009】
従来技術処方で用いられた局所麻酔薬のいくつかと,人体表面と表面下の組織を安全に麻酔する,または麻酔薬を供給する本発明の装置には重大な限界がある。リドカイン等の一般に用いられる麻酔薬のいくつかは,浸透が比較的限られ,麻酔効果の持続時間が比較的短い。
【0010】
従って,処方を人体表面に塗布する前はペースト,ゲル,軟膏,クリームまたは溶液等の固相以下であり,塗布中に何らかの機構で処方が密着し固化したゲルに変化し,除去し易くなる方法の開発が有利であると思われる。ある麻酔薬では,処方を密着固体に変える手段に,処方中の溶剤の揮発を防止し,処方が擦り取られるのを防ぐ密閉カバーも含まれていれば有利である。
【0011】
皮膚,特に顔面の皮膚を手軽に,非侵入的に麻酔する方法と処方を開発することは特に有利であると思われる。傷ついた人体表面をより手軽で安全に麻酔する方法と処方を開発することも有利であると思われる。麻酔薬を迅速に経皮膚で輸送し,容易に除去することのできる麻酔処方を開発することは,さらに有利であると思われる。
【0012】
本出願では,“固相以下”,“固体状態以下”または“固形以下”と言う語句は,特に別な説明がなければ,固化したゲルほど固くなく,密着しない形を意味する。この様な“固体以下”の物質の例には練り歯磨き,クリーム,軟膏等が含まれる。この様な“固体以下”の物質に共通の性質の一つは,物質が強く密着しない,言い換えれば物質が液体または粘度の大きい流体であることである。実際には,“固体以下”の物質は,全体として掴んだり持ち上げたりすることのできない密着性の物質である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は,薬剤処方の皮膚輸送のための方法と装置に関する。より詳しくは,本発明は,局所的に輸送される薬剤を,患者の皮膚に流体,ゼリーまたは固体以下の処方として投与されるが,その後に密着性の柔らかい固相に変化し,除去し易い処方を用いて輸送するための方法と装置に関する。
【0014】
処方は一般に局所投与薬,変換剤およびビヒクル媒体またはキャリアを含む。薬剤はキャリア中に分散される。変換剤はビヒクル媒体(キャリア)と薬剤と共に処方中に含まれるか,処方の塗布に続いて添加される。処方を皮膚に塗布する時点で,処方は固相以下である。治療が終わった時点で,処方は皮膚からきれいに剥がすことのできる密着性の柔らかい固体である。
【0015】
局所的に輸送される薬剤または医薬は単一成分の局所麻酔剤等の単一薬剤であるか,リドカインとテトラカインの共融混合物等の薬剤の組み合わせである。薬剤は固形で処方中に分散されるか,ビヒクル媒体中に分散された油滴中に溶解するか,またはビヒクル媒体中の水溶液である。薬剤は経皮輸送が可能である必要があり,本発明を用いる制御された有効な薬剤の輸送が可能である透過速度を有する。または,薬剤は透過促進剤等,本発明
で効果的に促進される透過速度を有する。
【0016】
ビヒクル媒体は公知の少なくとも1種の医薬賦形剤である。ビヒクル媒体はまた,薬剤に適当な環境を提供する。例えば,ビヒクル媒体は適当なpHを維持する緩衝剤を含むか,処方の成分間の加水分解反応を減少させる試薬を含むことができる。ビヒクル媒体はまた,処方の塗布を容易にする。塗布中に処方が所定の粘度を保ち得る成分は,処方の塗布を容易にすることができる。ビヒクル媒体はまた,薬剤の輸送を促進する。ビヒクル媒体に浸透促進剤を含ませ,薬剤の吸収速度を増加することも可能である。ビヒクル媒体はまた,輸送後の処方の除去を助ける。例えば,ビヒクル媒体は乳化剤,可塑剤,増粘剤および保湿剤等の成分を含み得る。
【0017】
変換剤は処方に1つの相から他のより固く密着性の相,例えば液体またはクリームから柔らかい固体に変化する能力を与える。処方は,処方の連続的な層を形成する方法で患者の皮膚に塗布される(当然,処方を患者の異なった表面領域に塗布し,数箇所の“連続層”を生成することができる)。相変化を生じる場合,固化した処方は患者の皮膚からより容易に除去できる。処方は残査またはフィルムを残さない。ある場合は,ゲル,クリームまたはペーストの形態の多くの処方を乾燥して固体を生じさせることが可能である。しかしながら,この処方の特徴は,固相(最初の固体以下の処方から変化した)は密着性であり,ある程度の強度を有するので,体表面から相として剥離することができ,処方がほとんど残らないことである。
【0018】
ある処方では,相変化は受動的に開始される。相変化の受動開始は,処方が貯蔵所から取り出され,患者の皮膚に塗布される際の環境の変化であってもよい。受動開始は患者または看護人が処方の変換プロセスを積極的に開始する必要がない。変換プロセスはある種の自然に生じる条件で開始する。例えば,受動的に開始する相変化は大気中への蒸発により処方の水分が変化し,残留する医薬処方が処方を柔らかい密着性の固体またはゲルに変化させるゲル化剤を含む場合に生じる。ポリビニルアルコールが本発明のクリーム処方中の成分である場合,ポリビニルアルコールが変換剤として作用し,蒸発で処方が水を大気中へ失う場合,クリーム処方を固体に変える。受容相変化を開始する可能性のある他の環境トリガーには処方を人体表面温度に晒すこと,および/または処方を空気または光に晒すことが含まれるが,それに限定されない。これらの受容トリガーはまた,過剰投与の阻止を助ける安全機構としても作用し得る。
【0019】
液体,ペーストまたはクリーム処方を密着性の固化したゲルに変える機構には,BASF社(USA)製のプルロニック(Pluronic)F127等の熱可逆性ゲルポリマー(サーマルゲル)が含まれる。一定量のサーマルゲルを含む溶液は室温で液状状態に止まり,温度をあるレベルに上げると非液状ゲルになる。本発明のある実施態様では,液体,ペーストまたはクリーム医薬処方を用いている。この処方は室温ではペーストまたはクリーム等の粘い液体である。処方を人体表面に塗布した場合,体温でサーマルゲルが処方を非液状ゲルに変える。非液状ゲルはより硬いので擦り落とすとができず,塗布部位から流れ去らず,しかも容易に除去できるので,非液状の“非流動性”ゲルは処方の最初の形より有利である。
【0020】
人体表面で非流体ゲルへの転換を行うためには,サーマルゲルポリマーの化学構造および/または成分を特別に設計して変換温度を最適化する必要がある。例えば,従来技術にある様な注射用処方で用いられるサーマルゲルは,約37℃の変換温度を有する。しかしながら,局所的に投与される処方の温度は皮膚でわずか30℃に増加するだけである。従って,皮膚上で変換を生じるためには,変換温度は30℃付近またはそれ以下でなければならない。これはサーマルゲルポリマーの構造を変えることで達成される。
【0021】
変換剤をさらに,または能動的に始動し得る。患者または看護人が処方の周りの環境を能動的に変化させるか,または処方の化学的構成を変えることにより,転換剤を活性化することができる。能動的始動により,ポリマーがより硬い相に変化する。例えば,高レベルのある波長の光にあるポリマーを含む溶液を露光することにより,液体から固体への相変化を行う。患者または看護人は,この様なポリマーを含む処方を,適当な対応する波長の高レベルの光に露光することにより,処方中で相変化を能動的に開始することができる。同様に,保存庫から取り出した後,または塗布した後,架橋可能な成分を含む処方に架橋剤を添加する等,処方に医薬調合物を添加することにより,相変化を能動的に開始することができる。患者または看護人がいつ相変化を開始するかを選ぶことができる処方は,薬剤輸送過程にわたってさらに制御性と柔軟性を与え,ユーザーがいつ処方をゲルに変えるか(従って薬剤の輸送を行うか)を決定する,または何らかの理由でそうすることが望ましくない,または必要ない場合,処方を変換しないことを決定することができる。
【0022】
本発明の方法は,処方をその保存環境から取り出す第1工程を有する。本発明の各実施態様に対する特定の保存環境は,処方の性質と使用する薬剤によって異なる。例えば,ある処方は,それを環境温度および/または空気に晒すことを制限する冷凍環境が必要である。この様な環境は,処方を気密容器中で冷凍室内に保存することで得られる。別な処方は投与前に光の露光を制限する。ある処方は特別な保存環境を必要としない。
【0023】
処方を保存環境から取り出した後,処方を液体,または他の固形以下として塗布する。処置される表面が実質的に処方の均等な層で覆われる様に,処方を整形または加工しても良い。処方層を所望の厚さにするため,処方塗布器を用いることもできる。本発明のある薬剤処方では,皮膚上の処方層を制御することにより,薬剤の輸送を制御する手段と,薬剤処方がその層変化を終えるに必要な時間が決められる。
【0024】
上記の観点から,本発明は処方,装置および患者の体表面に薬剤を塗布し,次いで薬剤の輸送後にそこから剥離し得る方法を提供する。処方を体表面から擦り落としたり,洗い流したりする必要はない。この患者の体表面を通る薬剤輸送のアプローチは,非侵入性で時間制御されるため,より安全である。本発明はまた,薬剤処方の塗布後の清掃に必要な時間を減少することにより,時間を節約することができる。
【0025】
本発明の処方と方法はまた,薬剤の速度を制御することが可能である。これは,角質層等の“保護障壁”を持たない体表が関係する塗布に特に重要である。保護障壁を持たない皮膚または体表に塗布される,経皮膚で輸送される薬剤は迅速に吸収され,取り込み速度が速く,危険である。さらに,薬剤の吸収が速すぎるので,薬剤が長期間の治療効果を持続することが阻害される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は塗布ノズルを有する処方保存容器/輸送チューブの斜視図を示す。
【図2】図2は塗布ノズルを有する処方保存容器/輸送シリンジの斜視図を示す。
【図3】図3は処方を均一に広げるためのスパチュラの上面図を示す。
【図4】図4は薬剤処方を体表上に展開中のスパチュラの側面図を示す。
【図5】図5は架橋剤を有する輸送パッチの断面図を示す。
【図6】図6は薬剤処方を加え,体表上に配置された輸送パッチの断面図を示す。
【図7】図7は輸送パッチの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書の図面に一般的に記載し説明した本発明の部品を,多様な異なった形態で構成し設計し得ることが容易に理解される。従って,図1〜7に示される以下の本発明のシステムと方法の実施態様のより詳細な記載は,クレームされた本発明の範囲の制限を意図するものではなく,本発明の好ましい実施態様の代表にすぎない。
【0028】
本発明は皮膚または傷ついた人体表面に塗布し,薬剤輸送が行われた後にそこから剥離し得る薬剤処方と輸送システムに関する。より硬くない状態からより硬い状態へ相変化を行う様に,処方は保存容器から取り出した後に変化する。処方によって,この相変化は受動的または能動的に開始する。本発明の他の処方は,硬いゲルに変化しない様に設計されている。本発明の目的はまた,吸収を制限する保護障壁(例えば角質)のない体表へ薬剤を速度を制御して輸送する薬剤処方である。
【0029】
本発明の一つの実施態様(以下,“第1処方”または“処方I”)では,受動的に始動する薬剤処方を用いる。第1処方は,薬剤輸送が行われる皮膚または傷ついた体表へある厚さで塗布し得る,粘い液体,クリームまたはペーストの形である。処方中の溶剤(すなわち水,アルコール)が揮発した場合,この処方層は密着性の柔らかく剥離可能な層へ変化する。従って,薬剤の治療効果が達成された後,“乾燥した”処方は皮膚から剥離可能で,皮膚上に処方残査をほとんど残さない。
【0030】
第2の実施態様は,能動的に始動する粘い液体,クリームまたはペースト薬剤処方(以下“第2処方”または“処方II”)を含む。この第2処方は架橋可能であるが架橋していないポリマーを含む。処方は皮膚に塗布され,次いで固化する被覆で覆われることにより次第により硬い状態に変化する。固化する被覆は,上記処方を固体ゲルに変化させ得る架橋剤を含む。薬剤が輸送され,処方が変化して固形ゲルを形成した後,処方を剥離することができるが,皮膚にほとんど残査を残さない。
【0031】
二つの上記実施態様中の処方は皮膚透過に適した局所麻酔剤を含み,乳化剤,増粘剤,および溶剤等の成分と一緒に使用し得る。2つの処方の麻酔の実施態様を,破れた皮膚,負傷または潰瘍表面,手術後の傷,および切除する必要のあるかさぶたや死んだ組織を有する表面等の傷ついた体表を麻酔するために使用し得る。別な用途では,無菌性またはより高い粘度等のこの様な処方の異なった性質が必要であり,従って異なった医薬成分が必要になる。
【0032】
本発明の異なった適用および使用では,異なった処方が必要になる。例えば,麻酔剤を輸送するために用いられる場合,第1処方で開示された第1実施態様では比較的短い時間で皮膚を麻痺させ,皮膚の刺激を少なくすることが重要である。処方Iはまた,塗布と除去が容易である必要があるが,これは皮膚に塗布する場合はクリームまたはペーストの形であるが,容易に剥離し皮膚に汚れを残さないためには固いゲルになる必要があることを意味する。
【0033】
表Aは第1処方中の成分に対する重量パーセントでの好ましい範囲を示す。表B,C,およびDは受動的に活性化される処方Iの麻酔剤の実施態様の3つの実施例を示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
【表5】

【0039】
ウオーターロック(商標)はグレイン・プロセッシング社(Grain Proces
sing Corporation,Iowa,USA)製の水吸収ポリマーシリーズの
一つである。ウオーターロック(商標)のA−100シリーズはデンプングラフトポリ(2−プロペンアミド−コ−2−プロペン酸ナトリウム塩)に分類される。A−100シリーズに割り当てられたONCI名はコーンスターチ/アクリルアミド/アクリル酸ナトリウムコポリマーである。G−400はアクリルアミド/アクリル酸ナトリウムコポリマーの命名でグラフトポリ(2−プロペンアミド−コ−2−プロペン酸ナトリウム塩)に分類される。G−400はA−100より水溶性であり,従ってより少量で使用し得る。
【0040】
処方IA,IB,ICおよびID中で,処方中に乳化した油滴の形の共融混合物である処方IA,IB,ICおよびIDは活性麻酔剤成分である。ポリビニルアルコールは処方中の十分な水が蒸発した後,クリームを固体に変えることのできるポリマーである。グリセロールは塑性化剤として働き,水の蒸発後は処方を硬い固体でなく柔らかく柔軟な固体にすることができる。グリセロールはまた水を保持する傾向がある。レシチンは共融混合物を処方中で小さな油性液滴に保つ乳化剤である。
【0041】
ウオーターロック(商標)は水の保持と同時に粘度増加のために用いられ,処方の流動性は最少になる。水の蒸発と保持の制御は本発明の重要な部分であり,処方IA,IB,ICおよびID等の実施態様で特に重要である。本発明者は,処方中で処方の水中に溶解した薬剤分子のみが皮膚を透過すると考えられる。従って,本処方の鍵となる新規な特徴は,水の保持と水の損失の間のバランスを制御する能力である。
【0042】
処方中の水は十分に長期間保持されるので,十分な量の薬剤が妥当な時間内に皮膚内へ輸送されるが,同時に水が蒸発によって失われ,麻酔効果を達成した後に皮膚から容易に剥離し得る処方が柔らかい固体となる。特に,水の蒸発が速すぎる場合,処方は早期に十分な速度での薬剤の輸送を停止し,皮膚が意図通りに麻酔されない。水の蒸発が遅すぎる場合,皮膚が麻酔された後でも処方の一部が固相以下のままであり,一般に固化した処方を除去するより固相以下の処方を除去する方がより困難である。
【0043】
この処方では,処方の水保持能力はウオーターロック(商標)とグリセロールで提供される。ウオーターロック(商標)はまた皮膚上での処方の粘度に寄与する。皮膚上の処方の厚さは本発明,特に処方Iに類似の実施態様の重要な因子である。皮膚上の処方の厚さが薄すぎる場合,処方は十分な量の薬剤が輸送される前に乾燥してしまう。層が厚すぎる場合,皮膚と接触する部分がクリームとして残り,一方,空気に晒される外側の層は固化する。層の厚さは,与えられた処方と与えられた治療の必要が要請する,適当な水分の蒸発と維持のに対応する様に調節しなければならない。例えば,処方のより厚い層はより深い場所の麻酔剤を行うために用いられるが,それは層が厚い場合,皮膚と接触する処方が長期間水を維持することができ,従って薬剤をより長い時間輸送するからである。
【0044】
局部麻酔薬を含む第1処方では,特定の皮膚を麻酔する時間の長さと,環境空気がどの程乾燥しているかにより,最適の厚さは0.5〜3mm,より好ましくは1〜2mmである必要がある。従って,皮膚または他の体表面上の最適厚さを選択して処方の乾燥時間を制御することが,本発明の他の新規アプローチである。ある場合は,他の体表面上の処方の所望の厚さを得るに便利な適当な装置の使用が,本発明の重要な部分である。
【0045】
本発明の利点の一つは,皮膚の広い範囲を洗浄または清掃して皮膚からクリームを除去する必要をなくすことである。皮膚の洗浄や清掃は余分な労力と時間が必要であり,皮膚や皮膚の傷ついた体表を刺激する。本発明により水の保持を制御することは,薬剤処方の清掃で費やされる時間をなくす一方,薬剤を適度に輸送することができる。
【0046】
第1処方を用いて薬剤を輸送するためには,薬剤処方が所望の輸送位置の皮膚に塗布される。薬剤処方は実質的に一致する厚さを有する層中に塗布される。皮膚透過のビヒクルとして水を用いる薬剤処方では,ほとんどの水が蒸発し,処方が柔らかい剥離可能な固体となるまで,水の蒸発中に薬剤の輸送が続く。例えば,本発明の第1処方を用いて顔の皮膚の間隔を失わせるためには,処方を麻酔される顔の皮膚領域が完全に約1mmの処方で覆われる様に,処方を塗布する。個人および皮膚の位置により,皮膚領域は通常15〜45分で間隔を失う。一方,処方中の水が蒸発するにつれて,処方が乾燥して柔らかい固体層になる。所定の麻酔効果を達成すると,固形ゲルが皮膚領域から剥離され,皮膚上に汚れを残さない。皮膚領域が麻酔され,必要あれば治療や手術が行われる。最初に水に溶解する必要なく皮膚に浸透し得る薬剤では,水が蒸発後も薬剤輸送を持続することができる。
【0047】
上記の,および処方中に薬剤の共融混合物を用いる類似の処方では,薬剤または医薬品は共融混合物の油滴として存在する一方,その小部分は水相に溶解した分子として存在する。水相中の医薬品の濃度はその水に対する溶解度で制限され,処方のpHと医薬品のpKaによっては非常に低いことがある。本発明のある実施態様では,薬剤の輸送は共融混合物液滴中の薬剤分子の輸送でなく,主として水相に溶解した医薬品の輸送で生じる。このことは,これらの実施態様では医薬品を輸送するために水が必要であることを意味する。
【0048】
薬剤輸送が主として水相に溶解した麻酔剤で生じる処方実施態様では,水の含有量,水の保持および水の蒸発が本質的に重要である。この様な処方を皮膚に塗布後,処方は蒸発により水を失い始める。処方が作用するためには,多くの水が失われ処方が薬剤を十分な速度で輸送できなくなる前に,適度の量の薬剤を輸送する必要がある。従って,EMLAクリーム等の処方が皮膚に塗布された後にバリアフィルムで覆われる様に設計されていない場合,進行中の水の蒸発にも拘わらず薬剤を輸送するためには,処方中の水は充分長く止まる必要がある。しかし,それにも拘わらず,適当量の薬剤を輸送する必要がある場合,処方が除去し易い剥離可能な固体層になる様に十分な水が蒸発することは好ましい。
【0049】
水分量,水の保持および蒸発の制御は,本発明の処方の独自の要請であり,処方設計と使用法において考慮しなければならない。従って,水が薬剤を輸送するに充分長く保持される一方,除去し易いために処方が適宜に剥離可能な柔らかい固体となることを阻害するほど長くないことが,本発明の処方と方法における独自の特徴である。適宜の水の保持は,処方に保水剤を添加し,一定の厚さの処方層を皮膚又は体表面上に形成することにより達成される。
【0050】
処方が塗布される体表面または皮膚のタイプは薬剤の輸送に影響し得る。例えば,顔面の皮膚は体の他の部分の皮膚とはかなり異なる。顔の皮膚は他の部分の皮膚より薄く,脂含有量が多い。さらに,顔面皮膚の下の組織は一般に他の皮膚領域より血管と神経が多い
。顔面の皮膚に塗布される処方は,他の皮膚領域に塗布される処方より短い開始時間を有することができる。
【0051】
皮膚のタイプの差は皮膚用薬剤輸送に重要であり,顔面皮膚を麻酔するための処方の設計において考慮されなければならない。例えば,皮膚では開始時間がより短いので,ある麻酔処方が顔面の皮膚を麻酔することができるが,他の皮膚表面を麻酔できないこともありうる。特定の処方の水の蒸発がある皮膚領域を麻酔するために用いるには速すぎる場合でも,顔面皮膚のより短い開始時間のために,同じ処方が顔面皮膚上では非常にうまく作用する。ある物質を処方中に使用するとその処方がより遅い開始時間を有する様になるが,他の方法では処方がより望ましくなる。処方中のグリセロールの高い濃度は開始時間を多少遅くするが,グリセロールはそれがない場合は硬くなる処方を柔らかくし,水の保持を助け,エステルタイプの局所麻酔剤を処方中でより安定にする。従って,比較的高濃度のグリセロールを含む処方は顔面皮膚の麻酔に適度に作用するが,他の領域の皮膚にはそうでない。
【0052】
多くの薬剤および薬剤クラスは,本明細書に示した様な本発明のアプローチの恩恵を受けると思われる。例えば,医薬品または薬剤は以下の様なものである:抗ウイルス剤(例えばアシクロビル),抗生物質(例えばバクテリシン,クロラムフェニコール,クリンダマイシン,エリスロマイシン,ゲンタマイシン,ムピロシン,ネオマイシン,テトラサイクリン),抗カビ剤(例えばアンホテリシンB,安息香酸,サリチル酸,ブタコナゾール,シクロピロクス,クリオキノール,クロトリマゾール,硝酸エコナゾール,ハロプロギン,ケトコナゾール,ミクロナゾール,ナフチフィン,ナイスタチン,オキシコナザオール,チオ硫酸ナトリウム,テルコナゾール,トリアセチン,ウンデシレン酸およびウンデシレン酸塩),その他の防腐剤(例えば塩酸ベンズアルコニウム,ヘキサクロロフェン,沃素,マフェナイド,メトリニダゾール,ニトトフラゾール,硫酸セレニウム,サルファディアジン銀),抗炎症剤(例えばコルチコステロール),かゆみ止め剤,細胞刺激および増殖剤(例えばにきび治療用トレチノイン),皮膚軟化薬(例えばビタミンA,D),壊死組織切除用壊死組織および皮膚潰瘍治療薬(例えばコラゲナーゼ,フィブリノリシン,デオキシリボヌクレアーゼ,スチレイン),抗皮膚癌/抗角化症薬(例えばフルオロウラシル),傷洗浄剤(例えばデキストラノマー),毛髪成長促進剤(ミノキシジル),脱色素剤(例えばハイドロキノン,モノベンゾン),日焼け止め剤および化学日焼け止め剤(例えばアミノ安息香酸およびメンチルアントラニレート等のアミノ安息香酸誘導体,ジオキシベンゾンおよびオキシベンゾン等のベンゾフェノン誘導体,サリチル酸誘導体,桂皮酸誘導体,トリオレイン酸ギガロリル)および不透明物理日焼け止め剤(例えば赤色流動パラフィン,酸化チタン,酸化亜鉛),乾せん薬等の他の皮膚薬および医薬品(例えばアンスラリン,カルシポトリエン),傷治癒促進剤,いぼおよびほくろ治療薬,潰瘍皮膚表面治療薬,パッチ形式で輸送する必要のある新生児用薬(パッチの接着剤は新生児の皮膚に激しすぎる),粘膜投与薬(例えばアルプロスタジルその他の男性勃起不全治療用薬(ペニスの先端および/または尿道内)),粘膜いぼ治療薬(例えばイミキモド),および昆虫噛傷および切り傷治療薬(例えば局所麻酔剤)。
【0053】
局所麻酔剤を用いる実施態様では,薬剤はリドカインとプリロカインの共融混合物,またはリドカイン,テトラカイン,プリロカイン,ベンゾカイン,プロカイン,ブピバカイン,ブタカイン,エチドカイン,メピバカイン,シクロメチカイン,ヘキシルカインおよびプロパラカインの化合物,混合物または共融混合物である。
【0054】
処方中の不活性成分の多くを,処方の機能を損なわずに置換し得る。成分の置換で処方をより安定,より安価,および/または製造および使用がより容易になる等,より望ましくすることもある。レシチンは好ましい乳化剤として開示されているが,ゼラチン,ソルンビタンエステル,ポリソルルベート,ポリオキシエチレン,脂肪酸エステル,ペムレン
TR1,TR2(BFグッドリッチ(Goodrich))等も乳化剤として使用し得る。グリセロール以外の可塑剤も使用し得る。30℃以下の融点を有する化合物,および水溶性であるがみずより揮発性の少ない化合物も可塑剤として使用し得る。これらの化合物には低分子量(すなわちm.w.=600)ポリエチレングリコールおよびN−メチルピロリドンが含まれる。ヒマシ油等のオイルも可塑剤として作用する。
【0055】
ウオーターロック(商標)以外の化合物も粘度を保ち水を保持するために使用し得る。粘度を増加させる化合物にはポリアクリル酸ポリマー,ゲランガム,カラギナン,カルボキシメチルセルロースナトリウム塩,ヒドロキシメチルセルロース等の等のセルロース誘導体が含まれる。ソルビトール,綿繊維等の吸水性または保水性物質,および上記の増粘剤のいくつかは水の保持に用いられる。上記および下記に開示した物質および代替成分は排他的または制限的でなく,本発明の別な実施態様の例を提供するものである。
【0056】
処方IIは皮膚から除去する前に架橋することができる,架橋可能であるが未架橋のポリマーを含む本発明の実施態様の一つである。架橋プロセスを開始する好ましい方法は二つある。その一つは,処方を架橋剤を含浸させた物質の層で処方を覆う等,処方を架橋剤と接触させることである。処方が薬剤を輸送し始める間に,架橋剤は処方中へ拡散し,処方を固体に変える。または,紫外線等のある波長の光等の外部からの起動機構で処理した場合,処方IIを架橋し得るポリマーを含んでも良い。皮膚に塗布し,必要なレベルの紫外線に露光した後,処方はこの様な起動機構により固体ゲルに変換される。いずれの場合も,適度の薬剤輸送が行われた場合,処方は固体ゲルを生成し,皮膚に汚れを残さず皮膚から剥離することができる。
【0057】
表Fは未架橋であるが架橋可能ポリマーを,ある範囲の好ましい重量比で含む共融混合物薬剤処方の例である。
【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

【0060】
この実施態様で,ポリビニルアルコールは架橋可能であるが未架橋のポリマーである。硼酸ナトリウムがポリビニルアルコールの架橋剤であり,ガーゼ層に含浸される。処方中の水の揮発を防ぐため,ガーゼはポリウレタンフィルムまたはテープ等の柔軟なプラスチ
ック材料で積層されることが望ましい。硼酸と硼酸塩,または硼素を含む他の化合物等の他の架橋剤も可能である。
【0061】
上記表Gに示される様な処方IIAの麻酔剤実施態様を用いるためには,皮膚が0.5
−1mmの処方で覆われる様に麻酔する皮膚領域上に処方を塗布する。硼酸塩を染み込ませたガーゼが処方と直接接触する様に,硼酸塩を染み込ませたガーゼ/プラスチックフィルムラミネートを処方層上に置く。硼酸塩ガーゼはガーゼ1平方センチメートルあたり1mgの硼酸塩を含む。次いでガーゼ内の硼酸ナトリウムが処方内に拡散し,約15−20分で処方中のポリビニルアルコールを架橋して処方を密着性の柔らかい固体に変える。
【0062】
処方IIAの麻酔剤実施態様を用いて,皮膚は約30〜45分で感覚を失う。所望の麻
酔効果を達成した後,ガーゼラミネートが皮膚から剥離される。固化した処方がガーゼ層に付着しているので,処方はガーゼ層と一緒に剥離され,皮膚上に汚れを残さない。もちろん,架橋剤をスプレー等の他の方法で処方中に輸送することも可能である。
【0063】
薬剤(局所投与麻酔剤以外)および薬剤クラスは,能動的に開始する処方IIおよび実施態様に関連する場合,本発明のアプローチの恩恵を受けると思われる。これらの薬剤には以下のものが含まれるが,それらに限定されない:抗ウイルス剤(例えばアシクロビル),抗生物質(例えばバクテリシン,クロラムフェニコール,クリンダマイシン,エリスロマイシン,ゲンタマイシン,ムピロシン,ネオマイシン,テトラサイクリン),抗カビ剤(例えばアンホテリシンB,安息香酸,サリチル酸,ブタコナゾール,シクロピロクス,クリオキノール,クロトリマゾール,硝酸エコナゾール,ハロプロギン,ケトコナゾール,ミクロナゾール,ナフチフィン,ナイスタチン,オキシコナザオール,チオ硫酸ナトリウム,テルコナゾール,トリアセチン,ウンデシレン酸およびウンデシレン酸塩),その他の防腐剤(例えば塩酸ベンズアルコニウム,ヘキサクロロフェン,沃素,マフェナイド,メトリニダゾール,ニトトフラゾール,硫酸セレニウム,サルファディアジン銀),抗炎症剤(例えばコルチコステロール),かゆみ止め剤,細胞刺激および増殖剤(例えばにきび治療用トレチノイン),皮膚軟化薬(例えばビタミンA,D),壊死組織切除用壊死組織および皮膚潰瘍治療薬(例えばコラゲナーゼ,フィブリノリシン,デオキシリボヌクレアーゼ,スチレイン),抗皮膚癌/抗角化症薬(例えばフルオロウラシル),傷洗浄剤(例えばデキストラノマー),毛髪成長促進剤(ミノキシジル),脱色素剤(例えばハイドロキノン,モノベンゾン),日焼け止め剤および化学日焼け止め剤(例えばアミノ安息香酸およびメンチルアントラニレート等のアミノ安息香酸誘導体,ジオキシベンゾンおよびオキシベンゾン等のベンゾフェノン誘導体,サリチル酸誘導体,桂皮酸誘導体,トリオレイン酸ギガロリル)および不透明物理日焼け止め剤(例えば赤色流動パラフィン,酸化チタン,酸化亜鉛),乾せん薬等の他の皮膚薬および医薬品(例えばアンスラリン,カルシポトリエン),傷治癒促進剤,いぼおよびほくろ治療薬,潰瘍皮膚表面治療薬,パッチ形式で輸送する必要のある新生児用薬(パッチの接着剤は新生児の皮膚に激しすぎる),粘膜投与薬(例えばアルプロスタジルその他の男性勃起不全治療用薬(ペニスの先端および/または尿道内)),粘膜いぼ治療薬(例えばイミキモド),および昆虫噛傷および切り傷治療薬等(例えば局所麻酔剤)。
【0064】
麻酔の実施態様IおよびIIでは,局所麻酔薬としてテトラカインを選択することが良い。テトラカインは水性処方中では加水分解を受けるので,加水分解を阻害し得る化合物を添加することが望ましい。処方中の十分な濃度のグリセロールは,グリセロール−水混合物中で加水分解反応に必要な水とテトラカインの接触を制限して,この様な阻害剤として作用する。同様な加水分解阻害効果を有する他の化合物にはポリエチレングリコールおよびN−メチルピロリドンが含まれる。処方中で用いられる場合,ベンゾカイン,プロカイン,ブタカイン,シクロメチカインおよびプロパラカイン等の他のエステル型局所麻酔剤を保護するために,同じ方法を使用し得る。
【0065】
上記の二つの実施態様中で,多くの局所麻酔剤およびその組み合わせが用いられる。しかしながら,他の局所麻酔剤との組み合わせまたは単独いずれの場合も,テトラカインの使用には特別な利点がある。本発明の処方および方法で優勢な形であるその非イオン化型で,テトラカインはリドカインおよびプリロカイン等の他の一般に用いられる局所麻酔剤より皮膚により速く,深く浸透する。この特徴は,固体への変換が溶剤の蒸発に依存している製剤および方法にとって特に重要である。治療が有効であるためには,大量の溶剤(薬剤輸送に必要)が蒸発する前に十分な量の薬剤が皮膚を浸透している必要がある。従って,固化するために溶剤の揮発に依存する処方中でテトラカイン,特に非イオン化テトラカインを使用することは,麻酔剤の輸送に特に有利である。
【0066】
テトラカインはリドカインより組織に対しより長く持続する麻酔効果を有することが観察されている。最近の研究では,経皮膚で輸送されたテトラカインが長く持続する麻酔効果を有し,これは注射されたリドカインより長いことが示唆されている。適切かつ安全に投与されたテトラカインは,経皮膚で輸送される局所麻酔剤として極めて有利な選択である。
【0067】
局部組織を標的とする薬剤に加えて,全身循環および局部組織を標的とする薬剤も本発明のアプローチの恩恵を受ける。これらの薬剤にはホルモン(例えばエストラジオール,テストステロン),禁煙剤(例えばニコチン),心臓血管薬(例えばニトログリセリン),鎮痛薬(ナルコチン酸,ステロイド),および抗炎症薬が含まれる。これらの薬剤の多くは現在,パッチに含まれる薬剤処方として製造される経皮膚パッチとして輸送されている(以後,製造済み薬剤処方パッチと言う)。しかしながら,薬剤処方を含む様にパッチを製造し,その後個々のパッチを包装することは,パッチのコストが増大する。さらに,特定の治療上の必要に合わせるため,製造工程中,またはその後で製造された薬剤処方を変更または修飾することは困難である。例えば,輸送される薬剤の量に比例する,製造済み薬剤処方パッチの接触面積を簡単に変えることはできない。
【0068】
本発明の方法と処方を用いると,コストがかなり削減され,ユーザーが自分自身の必要性に最も適した量の薬剤を輸送するサイズと接触面積を容易に選ぶことができる。例えば,禁煙のため所定のサイズを有する製造済みニコチンパッチを使用する代わりに,喫煙者はニコチンとポリビニルアルコールを含む処方を空のパッチ(すなわち,浅い空洞を有する発泡テープパッド)に押し込む。浅い空洞の底は硼酸ナトリウムを含浸した物質層で覆われている。所望の浅い空洞面積を有する発泡テープは,準備された異なったサイズから選び得る。充填された空洞を有する発泡テープは次にユーザーの皮膚に貼り付けられ,ニコチン処方を輸送する。正しい空洞面積を選ぶと,ユーザーは正しい輸送量を選ぶことができる。添付後,処方は約20分で密着性固体に変わり,容易に除去できる様になる。発泡テープパッチを特定の治療に適した様々なサイズと形で形成できる。従って,薬剤と様々なパッチを製造し,別々に保存し,使用前に適切に充填し塗布することにより,製造済み薬剤処方パッチより固形密着性パッチの製造をより安価にすることができる。
【0069】
本発明の他の実施態様は,図5,6および7に示す前もって形成された浅い空洞を有するパッチと,薬剤と架橋可能であるが未架橋のポリマーを有する処方を提供する。空洞の底はポリマーを架橋し得る架橋剤を含浸した物質層である。パッチを使用する場合,ユーザーは空洞に処方を充填し,充填したパッチを薬剤を輸送する体表面上に貼付する。パッチはパッチ上の接着剤により皮膚に保持される。一定時間後(例えば20分),パッチを皮膚から除去する。ゲル化した処方は皮膚上に汚れを残さない。この方法はまた,浅い空洞の面積で決められる十分な輸送面積を提供する。
【0070】
本発明の上記二つの実施態様では,多くの場合,処方と処方の下の皮膚を加熱すること
により薬剤の開始時間を短くすることが可能である。例えば単に暖かい空気を顔面皮膚に吹き付けることにより,強制空気加熱を顔面皮膚の麻酔効果の開始時間を短くするために用いることができる。加熱ランプまたは発熱パッチ等の他の熱源も,処方と皮膚を加熱して開始時間を短縮し,薬剤輸送を改善するために同様に用いることができる。外部加熱はまた,ゲルの固化(例えば固化プロセスが蒸発に依存する,またはサーマルゲルの場合)を短縮し,薬剤の速度と量を早くするために用いることができる。均一な輸送速度を維持するためには,皮膚上の薬剤を均等に加熱する様に注意しなければならない。
【0071】
本発明の方法と処方の応用の一つは,昆虫の噛傷,刺し傷,切り傷の治療である。局所麻酔剤および/または他の薬剤を含む処方は,昆虫の噛傷,刺し傷,切り傷で生じる痛み,かゆみ,その他の不快を軽減する。塗布後に固化し得る処方は,擦り落ち難く,除去が容易である。上記処方はまた,鎮静効果があり,患者が昆虫噛傷をかきむしりたくなる場合の様な,意図しないまたは望まない傷との接触を防止する保護障壁を形成する。
【0072】
若干変更した上記の処方と方法は,従来技術の局所麻酔に比べて,ある種の傷ついた人体表面の麻酔に独自の利点がある。例えば,全てまたはほとんどの薬剤が溶解している従来技術の麻酔液を皮膚がない傷ついた人体表面に塗布した場合,ほとんどの局所麻酔剤は比較的短い時間に組織に吸収される。これは,特に傷ついた領域がその通常の浸透に対する障壁,すなわち角質を持たない場合である。多くの場合,吸収が早いと十分長い持続時間で麻酔剤を行うことができず,より重要なことは,患者の血液中の局所麻酔剤の濃度が危険な程度の高濃度となることである。同様に,アストラ(Astra)製の「キシラカイン2%ゼリー」等の非密着性ゲル状処方(ペースト状)を塗布した場合,除去するのが難しい。この様な処方を除去しようとすると,傷ついた組織を更に損傷する。共融混合物および固体粒子であることに加え,活性薬剤は上記薬剤は処方中で乳化した油滴としても存在し得る。表Hは活性麻酔剤であるテトラカインベースが,処方中で乳化した油滴中に溶解した処方を示す。
【0073】
【表8】

【0074】
この種の処方では,活性薬剤はオイルに溶解している(例えばヒマシ油,オレイルアルコール)。薬剤含有オイルは乳化剤の助けにより,処方の水相中に小さな液滴として乳化される。オイル中の薬剤を乳化する利点は,粒子形状の薬剤を使用する場合よりも,薬剤が処方中により均一に分布することである。さらに,薬剤が加水分解を受ける場合,オイルは薬剤を水から守る“隠れ家”またはミクロ環境を提供し,従って加水分解速度を低くする。処方IおよびIIでは,リドカインとテトラカインの共融混合物がテトラカインに対するこの様な環境または「隠れ家」となる。しかしながら,他の活性薬剤と共融混合物を形成できない薬剤では,この方法が良い別法となる。
【0075】
テトラカインベースを最初にヒマシ油に1:3の重量比で溶解し,油相を形成する。ポリビニルアルコールを90℃で水に溶解後,レシチンを加えて水相を形成する。ウオーターロック(商標)を加えてから,油相と水相を完全に混合してペーストを得る。ヒトの腕
の皮膚上にこの処方の層(1〜2mm)を塗布し,硼酸ナトリウムを含浸したガーゼ層を積層した発泡テープで塗布層を覆うと,約1時間で皮膚が麻酔された。
【0076】
本発明の処方と方法は,処方中の薬剤の制御放出と,傷ついた組織の治療に除去が容易である事を含む独自の利点を提供する。例えば,局所麻酔剤の溶解度が低く,従ってほとんどの局所麻酔剤が未溶解の形で存在する(即ち,共融混合物油滴,固体粒子,ある油滴に溶解した薬剤)ゲル化した局所麻酔剤中で,未溶解の麻酔剤は溶解した分子ほど自由に,迅速に処方中で移動することができない。即ち,油滴と粒子の運動がポリマーゲル化剤で制限される。従って,この様な処方を負傷した表面(例えば傷ついた皮膚外層)に直接接触させた場合,溶解した局所麻酔剤のみが拡散で組織中へ移動できる(皮膚表面と直接接触する処方中の油滴は組織中に直接吸収されるが,この吸収は持続できない)。水相中へ溶解した局所麻酔剤分子の濃度は溶解度で制限され,一定である。溶解した局所麻酔剤が処方から出てゆくと,より多くの局所麻酔剤が共融混合物,粒子または油滴を離れ,水相中に溶解する。その結果,処方からの放出速度は,ほとんどの局所麻酔剤が処方からなくなるまでは時間に対して比較的一定である。これにより,体表面が局所麻酔剤に対する障壁を最小限にしか持たない場合でも,全ての麻酔剤を体内へ短い時間で“一斉に放出する”ことが避けられる。
【0077】
先に説明した局所麻酔剤の重要な用途の一つは,手術後の傷に対する痛みの制御を行うことである。手術の傷に対して局所麻酔を行うことは,苦痛をかなり和らげ,従って全身麻酔の必要性を減らす,またはなくすることができる。手術の傷は皮膚で保護されていないので,本発明の処方の制御放出の特性が,過剰投与に対する安全性と十分に長い効果の持続の点で特に重要になる。従って,殆どの活性薬剤が未溶解形である局所麻酔処方を手術後の傷に適用することが,本発明の重要な部分である。処方は液体,粘い液体,ペースト,クリーム等の固形以下であるか,パッチ中に取り込まれていても良い。殆どの実施態様では,処方が密着性の固体に変化して除去し易くなることが望ましいが,ある実施態様では処方が固形以下のままでも良い。
【0078】
適当量の薬剤を輸送する場合,処方を完全に,適宜に除去することが望ましい。これは,処方を除去する能動的な清掃が更に傷を増やす,傷ついた皮膚表面の近くでは特に重要である。本発明の薬剤処方は,薬剤輸送を達成したとき,密着性の硬い固体に変わる。これは,従来技術の処方より処方の除去をかなり容易にする。薬剤処方を,治療と所望の結果によって,固化の様々な段階で除去し得る。例えば,処方を相変化が100%完了する前に除去しても良い。一般的に,処方はその少なくとも50%が固体に変わった後に除去される。
【0079】
ある使用では,硬い固体ゲルそのものが治療の恩恵を増す。ゲルは被覆が必要な皮膚の保護手段となる。これは傷ついた皮膚領域へ薬剤を輸送する場合に特に有利である。柔らかい固体は皮膚の軟化または水和を助け,薬剤の輸送またはその後の任意の治療を容易にする。例えば,壊死組織切除前に傷ついた体表面を麻酔する場合,死んだ組織およびかさぶたを水和により軟化することが望ましい。この点で,局所麻酔処方層を固化下シートで覆う本発明の実施態様は特に有利である。本発明の処方は高濃度の水を有する。処方が水障壁層を有する積層シートで被覆される実施態様を用いて,死んだ組織およびかさぶたを高度に水和した処方と麻酔剤で同時に処置することができる。
【0080】
無傷の皮膚を麻酔するための処方と比較して,壊死組織切除用の処方は平滑でないか,かさぶたのある表面との接触が良くなる様に,どちらかと言えば液体である必要がある。処方中に増粘剤の濃度がより低い処方は,より流動性の実施態様となり得る。
【0081】
上記の理由で,処方層の厚さはいつ処方が固化した密着性のゲルになったか,処方が乾
燥し,水の蒸発により輸送を停止する前に適当量の薬剤を輸送し得るかを決定する重要な役割を果たす。従って,看護者が処方層を,実質的に均一な所定の厚さで便利に皮膚上に塗布し得るアプリケーターがあることが望ましい。
【0082】
この様なアプリケーターの一つは,図1に示す様な処方を押し込むことのできる容器12にねじ込むことのできる一端を有する輸送ノズル10である。または,図2に示す様に,アプリケーターは特性の輸送ノズル10を有するシリンジ14に似たものでも良い。ノズル10の他端は所定の寸法を有する平坦で薄い開口部16である。例えば,開口部は長さ10mm,幅1mmである。処方が容器12から押し出されるか,またはシリンジ14から強制的に出されて輸送ノズル10を通る場合,処方は幅10mm,厚さ1mmの層となる。この層が皮膚上に塗布された場合,厚さは比較的均一になる。ノズル10は容器12に脱着可能,または永久的に容器12に取り付けられている。図1および2はメスネジを有するルアーロック付きアプリケーターノズル12を示す。ノズル10はそれに合うネジ切り受容端を有するか,シリンジ14上の一定の位置にロックされる容器12中にネジ止めされる。所望の厚さと幅を有する処方の異なった層を異なった体表面に塗布し,所定の処方の厚さを得るため,異なった幅と長さを有するノズルを供給することも望ましい。ノズルは滅菌し使い捨てであっても良い。
【0083】
図3および4は処方を均一に広げるための装置を示す。塗布スパチュラ20は最近塗布された処方の不規則な表面を滑らかにするための刃22を有する。ハンドル24により刃を容易に操作することができる。スペーサー26が,ライン28で表される処方38の均一な厚さの塗布を容易にする。スペーサー26はスパチュラの刃に固定,または回転可能に取り付けられている。固体以下の薬剤処方38が体表面40に塗布された後,塗布スパチュラ20を表面40および処方38と接触させ,処方に沿って引いて処方を滑らかにし,均一な厚さとする。
【0084】
処方層を所定の厚さで輸送し得る他の実施態様は,予備成形され,梱包された処方層を提供する。この処方は所定の厚さを有する層として包装容器中に保存される。保存環境と容器により,処方層の予備成形された形状と所望の厚さが保たれる。例えば,予備成形層を冷蔵機中に保存し,使い捨てプラスチックトレイ中に包装しても良い。保存環境から取り出すと,処方層の粘度のため,層が患者の皮膚に合う様に成形される一方,その予備形成した厚さが実質的に保たれる。保存庫から取り出し塗布した後,層は固体以下のままである。処方が薬剤を皮膚に輸送している間,処方は密着性の柔らかい固体へ一定時間で変化する。十分な薬剤が輸送された後,処方層は完全に柔らかい固体面に変わり,皮膚上にかなりの量の残存処方を残さずに皮膚から剥離される。
【0085】
処方と方法はまた,ヒトの粘膜にも用いられる。開始がより速いため,処方をより短い時間で固化する様に設計しなければならない。例えば,水を保持する成分がはるかに少ない,または全くない処方を用いるか,および/またははるかに薄い処方層を粘膜上に塗布して麻酔が行われる。
【0086】
処方の自己制御特性により,極めて重要な利点が得られる。共融混合物が示す制御により,吸収を制御する“保護障壁”のない皮膚中への薬剤の制御放出が可能になる。この制御吸収は,剥離可能な処方が必要でない場合でも恩恵がある。例えば,人体表面が異物に対する主な障壁である角質層を持たない場合,皮膚は重大な副作用と短い持続時間をもたらす皮膚を通って輸送される薬剤の速い吸収を阻止する障壁を持たない。この様な人体表面には粘膜組織,潰瘍表面,外傷皮膚,および手術後の傷が含まれる。この場合の処方は塗布後必ずしもゲルに変換される必要がなく,従って変換剤を必要とせず,パッチ,クリームまたはペーストの形で良い。従って,本発明の他の目的は,殆どの薬剤が処方中に油滴または固体粒子として配置されているか,または処方の水相中に乳化した油滴中に溶解
している他の処方を提供し,皮膚の角質等の吸収に対する有効な障壁がない人体表面への薬剤の放出を延長することである。
【0087】
処方IA−ID等の薬剤を皮膚に輸送するために水に依存する処方では,水の蒸発が吸収を大きく減少させ,実質的に停止するか,薬剤の吸収速度を大きく下げる。この特性がなければ,ユーザーが危険な高投与量の麻酔剤を輸送されることもあり得る。さらに,ある皮膚領域は他の皮膚領域よりはるかに透過性である。顔面の皮膚または保護障壁を持たない皮膚等の高透過性皮膚に麻酔剤を用いることは,処方への長期の暴露により輸送される麻酔剤が危険なレベルになる機会を増加することになる。
【0088】
液体の蒸発による薬剤輸送の停止または大きな減少は,特に長期の吸収がユーザーに有害である用途,および薬物療法を受ける患者が健康管理専門家により綿密にモニターされていない用途における本発明の重要な安全特性である。例えば,処方Iは皮膚を約30〜60分で麻酔することができる。しかしながら,ユーザーが広い皮膚面積で処方を使用し,その効果を達成した後も処方を除去することを忘れ,長期間皮膚上に貼ったままにした場合,処方は水が蒸発し処方が乾燥した後は薬剤輸送を停止する。自己終結輸送により,過剰投与が防止される。
【0089】
経皮膚薬剤輸送および投与は主として薬剤処方と接触する体表面の表面積で決められる。処方で覆われた表面積を制御する能力を持たない薬剤輸送システムは,薬剤輸送の投与量または投与速度を制御することが困難である。表面積を制御して変えることのできない薬剤輸送システムは,環境の変化に応じて投与量と速度を変えることが困難である。
【0090】
本発明は処方と接触する表面積を変化させ制御する能力を提供する。固体以下処方として塗布後に固体に変換される処方を提供することにより,本発明は異なった用途に適合する様に表面積を変えることが可能であるが,処方の変換により処方は所望の表面積を維持することが可能である。固化すると,薬剤は吸収されるべき投与個所から流出せず,全体の投与量と輸送速度を変化させる。ユーザーが異なった表面積を有する種々のパッチを選び,固体に変換する処方をそのパッチに充填することにより,同様な恩恵が得られる。
【実施例1】
【0091】
患者の顔面皮膚を手術または治療の一部として麻酔しなければならない。処方IA,IBまたはIC等の処方Iの麻酔剤実施態様の1mmの層を次1に示したものと同様のアプリ
ケーターを用いて顔面皮膚上へ塗布する。約30〜45分後,皮膚は麻酔され,処方は密着性の柔らかい固体となる。密着性の柔らかい層を顔面皮膚から剥離し,顔面皮膚は手術できる状態になる。
【実施例2】
【0092】
患者の顔面皮膚を手術または治療の一部として麻酔しなければならない。処方IIA
の麻酔実施態様IIを顔面皮膚に塗布して厚さ1mmの層を形成する。1mg/cm2
硼酸ナトリウムを含浸し,ポリウレタン層を積層したガーゼを,ガーゼ側を処方と直接接触させて顔面皮膚上の処方層の上に置く。20分後,硼酸ナトリウムにより処方は固体の密着性ゲルに変わる。その後皮膚はほぼ同じかより短い時間で麻酔される。積層シートを皮膚から剥離した場合,ゲル化した処方はシートと一緒に外れ,皮膚の上にごくわずかな処方残査を残すのみである。麻酔された顔面皮膚は手術できる状態である。
【実施例3】
【0093】
患者は足に痛みを伴う慢性潰瘍を有する。痛みを取るため,1mmの殺菌した処方IA
層を潰瘍表面に塗布する。リドカインおよびテトラカインが処方から徐々に放出され,長期にわたって痛みを和らげる。45分後に処方は密着性の柔らかい固体となり,潰瘍表面
に処方残査を残さずいつでも除去できる。この場合は,潰瘍表面からの体液により処方を湿った状態を保ち,長期にわたって麻酔剤の輸送を続けることが可能である。
【実施例4】
【0094】
処方IIAを高温または放射線で殺菌し,火傷患者の壊死組織切除の麻酔に用いる。処
方IIを壊死組織切除を行う領域に塗布し,厚さ1mmの層とする。実施例2と同様のシートを,ガーゼ側を処方と直接接触させて処方層の上に置く。20分後,硼酸ナトリウムにより処方は固体の密着性ゲルに変化する。60分後,処方の下の組織は十分に麻酔され,処方中で60分間水和されて十分に柔らかである。積層シートを剥離すると,ゲル化した処方がシートと一緒にはがれ,組織上には殆ど処方残査を残さない。その領域はより容易に,痛みが少なく壊死組織が切除され,全身アレルギーも殆ど,または全くない。
【実施例5】
【0095】
処方IIAを変更したものをかさぶたの壊死組織切除を行うために用いる。この実施例
の処方にウオーターロック(商標)が含まれない以外は,処置は実施例4と同様である。本実施例の処方は,処方中の1.6%のウオーターロック(商標)が水で置き換えられている以外は処方IIと同じである。処方IIと比較すると,この処方は粘度がより低く,かさぶたのある皮膚とより良く密着する。
【実施例6】
【0096】
処方IIAと類似の処方を高温または放射線で殺菌し,手術後の傷の上に塗布する。処
方は変換剤を含まない。上記の様に,局所麻酔剤が傷の表面に放出され,最終的には制御されて長期間体内に放出され,長期間の麻酔効果を与えるが副作用の可能性は少ない。
【実施例7】
【0097】
処方IIAに類似の処方を潰瘍のある皮膚または粘膜表面,または外傷を受けた体表面
に塗布する。上記の様に,局所麻酔剤が傷表面,最終的には体内へ長期間制御放出されるが,長期の麻酔効果を与える一方で副作用の可能性は最少である。
【実施例8】
【0098】
実施例6および7と同様であるが,処方は変換剤を含まない。処方を塗布後,患者又は看護人は1mg/cm2の硼酸ナトリウムを含むガーゼを処方上に施すことにより,処方
を固体ゲルに変える方法を任意に選び,処方を密着性の固体ゲルに変える。処方をゲルに変えることにより,使用後に処方を容易に除去することができる。
【実施例9】
【0099】
適当な比率の水,ポリエチレングリコール600およびポリビニルアルコールを含む溶液にミノキシジルを加え,粘度の高い溶液を作成する。毛髪成長促進のため,就寝前に粘性液の約1mmの層をユーザーの頭皮上に塗布する。約20分後,処方中のほとんどの水が揮発し,処方は頭皮上で薄い固形の密着性フィルムとなる。これにより,夜中に処方が枕で擦り取られる機会を最少にする。ポリアクリル接着剤等の乾燥処方の頭皮に対する密着性を増進する物質を処方中に加え,乾燥処方をよりしっかりと頭皮に付着させることもできる。
【実施例10】
【0100】
サーマルゲルを含む局所麻酔剤は表Iに示す様な組成を有する。
【表9】

【0101】
成分を良く混合し,リドカインとテトラカインの共融混合物を水相中に乳化した小さな油滴とする。処方は室温で流動性の液体である。使用時,処方を殺菌し,手術の傷の上に塗布する。顔の上の温度が処方をゲルに変え,処方の塗布部位からの流出を阻止する。
【0102】
赤外線放射および暖かい空気の吹き付け等の能動温暖法を,処方をゲルに変える助けとして用いることができる。一方,変換温度28〜33℃のサーマルゲルを開発し,プルロニックF127の代わりにこの処方中へ使用すると,体温のみで処方を固化ゲルに変えることができる。
【0103】
好ましいサーマルゲルの実施態様では,室温から28〜38℃,好ましくは29〜34℃の間の温度で処方がより硬い状態に変わる。処方の変換は,少なくとも28℃の温度を有する人体上,または人体内に処方を置くことで生じる。
【実施例11】
【0104】
患者は体の皮膚表面に火傷がある。処方層を火傷を負った皮膚表面に処方層を投与して火傷を治療する。薬剤処方は構成物質,局所麻酔剤等の薬剤を火傷を負った体表面に輸送するが,処方は傷口へ薬剤を制御放出することができる。薬剤が輸送される時,処方の相変化を架橋剤を添加することで開始する。架橋剤をゲル上に霧状にスプレーする。霧の液滴は相変化を開始し得る試薬を含み,処方装置と接触すると処方中へ吸収される。霧はまた,火傷部分を囲む皮膚に水分を与える。火傷を治療する処方は,処方の一部が皮膚と接触し,ある程度の水分を維持し,火傷の皮膚部分を水和し,必要であれば薬剤の輸送を延長する。固化した薬剤処方は傷が広がるか痛みを伴う接触と共に,感染を防止する傷表面の保護手段となる。処方が実質的に固化した後,処方残査を拭き取ることなく固化した薬剤処方を容易に剥離することができる。架橋剤の霧をスプレーする代わりに,架橋剤中に浸した織物上のガーゼを処方上に置くこともできる。ガーゼにより傷がさらに保護される。ある治療では,前もって形成した成形可能な処方層を施すことが,痛みを伴う,または感染性の接触を減らすために有利である。
【0105】
本発明はその精神と必須の特性から逸脱することなく,他の特定の形で具体化することができる。記載された実施態様はあらゆる点で単なる説明のためのものであり,制限するものではない。したがって,本発明の範囲は前記の説明でなく,付随するクレームで示される。クレームの意味と透過の範囲内のあらゆる変更は,その範囲内に含まれる。
【実施例12】
【0106】
局所麻酔剤の実施態様の処方がパッチに含まれ,硼酸ナトリウムでゲル化する。処方は表Jに示される以下の成分を有する。
【表10】

オレイルアルコール等のヒマシ油以外のオイルも処方に使用し得る。
【0107】
パッチを手術後の傷の中に入れ,痛みを制御する。水相中に溶解したリドカインが傷ついた組織中に浸透し麻酔効果を与えるが,架橋したポリビニルアルコールの妨害のため,ヒマシ油液滴中のリドカインは直接処方の外へ移動することができない。溶解したリドカインが処方から出てゆくにつれ,より多くの油滴中のリドカインが水相中へ溶解し,傷ついた組織に容易に浸透する。殆どのリドカインが油滴中に存在し,水相中のリドカインの濃度が減少するので(処方のpHを7に選ぶことにより),リドカインの傷ついた組織中への放出は段階的に制御される。これによりリドカインを組織中に一度に放出することが避けられ,麻酔効果が持続する。
【実施例13】
【0108】
処方を蚊の刺し傷またはミツバチの刺し傷の部位に適用した以外は,実施例1と同様である。刺し傷によるかゆみまたは痛みは約1時間で消える。
【実施例14】
【0109】
この場合は処方が高温または放射線で殺菌され,皮膚の切り傷に適用された以外は実施例1と同様である。痛みは約1時間で消える。
【0110】
【表11】

【実施例15】
【0111】
この場合は処方が高温または放射線で殺菌され,皮膚の切り傷に適用された以外は実施例1と同様である。
【0112】
【表12】

痛みは短時間で消える。
【実施例16】
【0113】
患者は勃起不全を患っている。その患者をアルプロスタジルを含む本発明の処方を用いて治療する。処方は処方の投与中は液体状態であり,処方を陰茎の先端の尿道の開口部を通して陰茎尿道中に挿入して用いられる。アルプロスタジルは粘膜組織中に吸収される。周りの組織からの体温が処方の固相状態以下から,より粘度の高い液体または液状ゲル等の“より硬い”状態への変換を開始させる。変換の前に,液体処方は尿道内に容易に流動し,処方の投与を促進する。処方の変換後,処方はより硬い状態になり,十分な薬剤が投与される前に処方の流出を阻止し,薬剤が尿道の粘膜から早期に流出することを阻止する。持続可能な勃起が達成された後,尿道およびその周辺組織の操作または射精により処方が除去される。処方を避妊薬または妊娠を促進する薬剤等の他の薬剤と組み合わせることもできる。
【実施例17】
【0114】
患者は皮膚を経由して輸送される薬剤を用いる治療を必要としている。患者の体重が大きく,薬剤を輸送するために用いられる表面積が患者にとって小さすぎるので,薬剤の経皮膚投与量は患者にとって不十分である。本発明を用いて,看護者はより大きい治療表面積を有する未充填パッチを選び,パッチに薬剤処方を充填することにより投与量を変更することができる。パッチのより大きい表面積により,看護者は典型的に用いられる同じ薬剤処方を用い,薬剤の投与量を増やすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚用薬剤を体表面に輸送するための処方であって,薬剤,変換剤,およびベヒクル媒体を含み,前記処方は固体以下の形態であることを特徴とする処方。
【請求項2】
薬剤が局所麻酔である,請求項1記載の処方。
【請求項3】
薬剤がテトラカインである,請求項1記載の処方。
【請求項4】
前記テトラカインが少なくとも20%イオン化されていない,請求項3記載の処方。
【請求項5】
薬剤が局所麻酔の共融混合物である,請求項1記載の処方。
【請求項6】
麻酔剤が,リドカイン,テトラカイン,プリロカイン,ベンゾカイン,ブピバカイン,メピバカイン,ジブカイン,エチドカイン,ブタカイン,シクロメチカイン,ヘキシルカイン,プロパラカイン,およびロピバカインからなる群より選択される,請求項2記載の処方。
【請求項7】
前記薬剤が油中に溶解しており,前記油が前記ベヒクル媒体中に液滴として分散している,請求項1記載の処方。
【請求項8】
前記ベヒクル媒体により,処方が適用の間所望の粘度を維持することができる,請求項1記載の処方。
【請求項9】
前記ベヒクル媒体が浸透促進剤を含む,請求項1記載の処方。
【請求項10】
前記ベヒクル媒体が乳化剤を含む,請求項1記載の処方。
【請求項11】
前記ベヒクル媒体が可塑剤を含む,請求項1記載の処方。
【請求項12】
前記ベヒクル媒体が高粘度の薬剤を含む,請求項1記載の処方。
【請求項13】
前記ベヒクル媒体が吸湿性の薬剤を含む,請求項1記載の処方。
【請求項14】
前記変換剤が,前記処方を前記体表面に適用した後に前記処方が粘着性,軟質固体に相変化することを容易にすることができる,請求項1記載の処方。
【請求項15】
前記相変化が受動的に誘発される,請求項14記載の処方。
【請求項16】
前記相変化が能動的に誘発される,請求項14記載の処方。
【請求項17】
前記ベヒクル媒体が,前記処方における前記薬剤の化学的安定性を改良することができる薬剤を含む,請求項1記載の処方。
【請求項18】
前記薬剤が,抗感染剤,抗ウイルス剤,抗生物質,抗真菌剤,防腐剤,抗炎症剤,止痒性剤;細胞刺激剤および増殖剤,軟化薬,壊死性組織および皮膚潰瘍用のまたは壊死組織切除において用いられる薬剤,抗皮膚癌/抗角化症剤,創傷洗清剤,育毛を促進する薬剤,色素脱失剤,サンスクリーン剤および化学的サンスクリーン剤および不透明な物理学的サンスクリーン剤,皮膚病剤,創傷治癒を促進する薬剤,疣贅および母斑を治療するための薬剤,潰瘍化した皮膚表面を治療するための薬剤,新生児に用いる薬剤,粘膜に適用され
る薬剤,男性勃起機能不全を治療するための薬剤,粘膜疣贅を治療するための薬剤からなる薬剤群より選択される,請求項1記載の処方。
【請求項19】
前記薬剤が,アシクロビル,バシトラシン,クロラムフェニコール,クリンダマイシン,エリスロマイシン,ゲンタマイシン,ムピロシン,ネオマイシン,テトラサイクリン,アンホテリシンB,安息香酸,サリチル酸,ブタコナゾール,シクロピロクス,クリオキノール,クロトリマゾール,硝酸エコナゾール,ハロプロギン,ケトコナゾール,ミクロナゾール,ナフチフィン,ナイスタチン,オキシコナゾール,ナトリウムチオ硫酸,テルコナゾール,トリアセチン,ウンデシレン酸,ウンデシレン酸塩,塩化ベンゾアルコニウム,ヘキサクロロフェン,ヨード,マフェニド,メトロニダゾール,ニトロフラゾン,硫化セレン,銀スルファジアジン,コルチコステロイド,トレチノイン,ビタミンA,D,コラゲナーゼ,フィブリノリシン,デオキシリボヌクレアーゼ,スチライン,フルオロウラシル,デキストラノマー,ミノキシジル,ハイドロキノン,モノベンゾン,アミノ安息香酸誘導体,例えばアミノ安息香酸およびメンチルアントラニレート,ベンゾフェノン,誘導体,例えばジオキシベンゾンおよびオキシベンゾン,サリチル酸誘導体,桂皮酸誘導体,トリオレイン酸ギガロリル,赤色流動パラフィン,二酸化チタン,酸化亜鉛,アントラリン,カルシポトリエン,アルプロスタジルおよびイミキモドからなる薬剤群より選択される,請求項1記載の処方。
【請求項20】
前記薬剤処方が,処方から体表面への薬剤の制御された放出を与える,請求項1記載の処方。
【請求項21】
前記処方が,処方において水の蒸発速度を制御しうる,請求項1記載の処方。
【請求項22】
前記変換剤により,処方が体表面に対する保護性被覆として作用する軟質粘着性固体に変化することができる,請求項1記載の処方。
【請求項23】
前記変換剤が,粘着性固体相中の処方の前記部分と第2の表面との間の望ましくない接触により,前記接触に起因する前記薬剤処方の第2の表面への除去が生じないように,周囲の看護者に暴露される処方の部分を粘着性固体に変換することができる,請求項1記載の処方。
【請求項24】
皮膚用薬剤をヒト体表面および前記表面の下の組織に輸送する方法であって,薬剤処方をヒト体表面に適用し,前記処方は,薬剤,変換剤,およびベヒクル媒体を含み;
前記処方を固相以下から粘着性,軟質固相に変換させ;
薬剤を前記処方が適用される前記ヒト体表面および前記表面の下の組織に輸送し;そして前記処方を除去する
の各工程を含む方法。
【請求項25】
適用工程が,処方を実質的に一様な層で適用することをさらに含む,請求項24記載の方法。
【請求項26】
適用工程が,処方をあらかじめ定められた厚さの一様な層で適用することをさらに含む,請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記ヒト体表面がヒト顔面皮膚である,請求項24記載の方法。
【請求項28】
前記ヒト体表面が傷つけられたヒト体表面である,請求項24記載の方法。
【請求項29】
前記ヒト体表面が手術後創傷である,請求項24記載の方法。
【請求項30】
前記ヒト体表面が虫のかみ傷を有する,請求項24記載の方法。
【請求項31】
前記ヒト体表面が虫の刺傷を有する,請求項24記載の方法。
【請求項32】
前記ヒト体表面が小さい切り傷である,請求項24記載の方法。
【請求項33】
適用工程が,処方を実質的に均一な厚さの層で適用するための手段を用いる,請求項24記載の方法。
【請求項34】
前記適用手段が,空間を有するスパチュラである,請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記適用手段が,圧搾可能な容器およびノズルである,請求項33記載の方法。
【請求項36】
適用工程が,固体以下の形態の処方を適用することをさらに含む,請求項24記載の方法。
【請求項37】
前記固体以下の形態が,処方のあらかじめ形成された層である,請求項36記載の方法。
【請求項38】
変換工程が,変換プロセスの受動的開始をさらに含む,請求項24記載の方法。
【請求項39】
変換工程が,処方を保存環境から除去して,変換を生じさせることをさらに含む,請求項38記載の方法。
【請求項40】
変換工程が,処方を周囲環境条件に暴露することをさらに含む,請求項24記載の方法。
【請求項41】
前記周囲環境条件が,種々の波長の電磁気放射,温度,湿度レベル,または大気ガスへの暴露である,請求項40記載の方法。
【請求項42】
変換工程が,変換を積極的に開始させることをさらに含む,請求項24記載の方法。
【請求項43】
変換工程が,前記処方中の架橋可能な薬剤を架橋させることをさらに含む,請求項24記載の方法。
【請求項44】
変換工程が,処方からの制御された水喪失を許容することをさらに含む,請求項24記載の方法。
【請求項45】
変換工程が,前記処方に近い周囲環境の条件を改変することにより変換剤を活性化することをさらに含む,請求項24記載の方法。
【請求項46】
前記処方に近い周囲環境の前記条件が,種々の波長の電磁気放射,特定の温度,湿度レベル,または大気ガスへの暴露からなる,請求項45記載の方法。
【請求項47】
輸送工程が,薬剤を制御された速度で輸送することを含む,請求項24記載の方法。
【請求項48】
輸送工程が,薬剤をあらかじめ決定された時間輸送することを含む,請求項24記載の方法。
【請求項49】
輸送工程が,前記処方の水性相における薬剤の溶解性を用いて薬剤の輸送を制御することを含む,請求項24記載の方法。
【請求項50】
輸送工程が,全身毒性を回避するよう薬剤輸送の速度および量を制御する手段をさらに含む,請求項24記載の方法。
【請求項51】
除去工程が,処方が粘着性,軟質固体に変換した後に処方を取り除くことを含む,請求項24記載の方法。
【請求項52】
前記処方が架橋可能であるが実質的に未架橋のポリマーを含む,請求項24記載の方法。
【請求項53】
前記ポリマーが,ポリビニルアルコールおよびカラギーナンからなる群より選択される,請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記処方が,前記処方中の十分な溶媒が蒸発したときに前記処方を固体以下形態から粘着性軟質固体に変換させることを容易にすることができる物質を含む,請求項24記載の方法。
【請求項55】
前記物質が,ポリビニルアルコール,カラギーナン,ゲル化ガム,ポリビニルピロリドン,ナトリウムカルボキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,およびヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,およびヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される,請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記方法が,加熱により前記薬剤の前記ヒト体表面への吸収を促進する手段をさらに含む,請求項24記載の方法。
【請求項57】
前記手段が,加熱した空気を前記ヒト体表面上の前記処方に吹き付けることを含む,請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記手段が,赤外線照射を前記ヒト体表面上の前記処方に照射することを含む,請求項56記載の方法。
【請求項59】
前記手段が,熱を発生することができるパッチを前記ヒト体表面上の前記処方に配置することを含む,請求項56記載の方法。
【請求項60】
前記加熱パッチの熱が発熱反応により発生する,請求項59記載の方法。
【請求項61】
ヒト体表面および前記表面の下の組織を麻酔するための処方であって,
少なくとも1つの局所麻酔剤;
ゲル化剤;および
蒸発可能な液体
を含み,前記処方は,固体以下の形態であり,前記ゲル化剤は,前記蒸発可能な液体の一部が蒸発した後に前記処方を粘着性,軟質固体に変換させることを容易にすることができることを特徴とする処方。
【請求項62】
可塑化物質を含み,前記可塑化物質は,前記処方を,前記蒸発可能な液体が実質的にすべて蒸発した後に軟質固体の形に維持することができる,請求項62記載の処方。
【請求項63】
前記可塑化物質がグリセロールである,請求項62記載の処方。
【請求項64】
前記可塑化物質が,N−メチル−2−ピロリドンおよびポリエチレングリコールからなる群より選択される,請求項62記載の処方。
【請求項65】
前記ゲル化剤がポリビニルアルコールである,請求項61記載の処方。
【請求項66】
前記局所麻酔がテトラカインである,請求項61記載の処方。
【請求項67】
前記ゲル化剤が,ゲル化ガム,ポリビニルピロリドン,カラギーナン,ナトリウムカルボキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロースおよび他のセルロース誘導体からなる群より選択される,請求項61記載の処方。
【請求項68】
前記局所麻酔剤が,リドカイン,プリロカイン,ベンゾカイン,ブピバカイン,メピバカイン,ジブカイン,エチドカイン,ブタカイン,シクロメチカイン,ヘキシルカイン,プロパラカイン,およびロピバカインからなる群より選択される,請求項61記載の処方。
【請求項69】
前記局所麻酔剤が2つの局所麻酔を含む共融混合物である,請求項61記載の処方。
【請求項70】
前記共融混合物が,リドカインおよびテトラカインの共融混合物である,請求項69記載の処方。
【請求項71】
前記共融混合物が,リドカインおよびプリロカインの共融混合物である,請求項69記載の処方。
【請求項72】
前記局所麻酔剤が,実質的に水に不溶性の油中に溶解しており,かつ,前記処方中に油滴として配置されている,請求項61記載の処方。
【請求項73】
前記油がひまし油およびオレイルアルコールからなる群より選択される,請求項72記載の処方。
【請求項74】
前記処方が,エステルタイプの局所麻酔の加水分解を阻害する物質をさらに含む,請求項61記載の処方。
【請求項75】
前記物質がグリセロールである,請求項74記載の処方。
【請求項76】
前記物質が,N−メチルピロリドンおよびポリエチレングリコールからなる群より選択される,請求項74記載の処方。
【請求項77】
前記蒸発可能な液体が水である,請求項61記載の処方。
【請求項78】
前記蒸発可能な液体がアルコールである,請求項61記載の処方。
【請求項79】
前記処方が,水を保持することができる物質をさらに含む,請求項61記載の処方。
【請求項80】
水を保持することができる前記物質がウォーターロック(登録商標)である,請求項79記載の処方。
【請求項81】
水を保持することができる前記物質が,ソルビトールおよびグリセロールからなる群より選択される,請求項79記載の処方。
【請求項82】
前記ヒト体表面が皮膚である,請求項61記載の処方。
【請求項83】
前記ヒト体表面が粘膜である,請求項61記載の処方。
【請求項84】
前記ヒト体表面が傷つけられた皮膚表面である,請求項61記載の処方。
【請求項85】
前記ヒト体表面が潰瘍化した皮膚表面である,請求項61記載の処方。
【請求項86】
前記ヒト体表面が,壊死組織切除が必要な死んだ組織を有する傷つけられた皮膚表面でである,請求項61記載の処方。
【請求項87】
前記ヒト体表面が手術後創傷である,請求項61記載の処方。
【請求項88】
前記ヒト体表面が虫のかみ傷を有する,請求項61記載の処方。
【請求項89】
前記ヒト体表面が虫の刺傷を有する,請求項61記載の処方。
【請求項90】
前記ヒト体表面が小さい切り傷を有する,請求項61記載の処方。
【請求項91】
前記処方がさらに乳化剤を含む,請求項61記載の処方。
【請求項92】
前記乳化剤が,レシチン,ゼラチン,ポリソルベート,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ペミュレン(登録商標)1,ペミュレン(登録商標)2およびソルビタンエステルからなる群より選択される,請求項61記載の処方。
【請求項93】
ヒト体表面および前記表面の下の組織を麻酔するための処方であって,リドカイン,テトラカイン,プリロカイン,ベンゾカイン,ブピバカイン,メピバカイン,ジブカイン,エチドカイン,ブタカイン,シクロメチカイン,ヘキシルカイン,プロパラカイン,およびロピバカインからなる群より選択される少なくとも1つの局所麻酔剤,およびサーマルゲルを含み,前記処方は20°C−37°Cの温度でより固体となることができることを特徴とする処方。
【請求項94】
非侵襲性の皮膚用薬剤をヒト体表面および前記表面の下の組織に輸送する方法であって,薬剤および液体を含む処方の層をヒト体表面に適用し;前記処方は,ヒト体表面に適用する前には粘着性,軟質固体より固形性が低い形であり;
処方の前記層を粘着性固体の層に変換し;そして
処方の前記粘着性固体層を前記ヒト体表面から除去する,
の各工程を含む方法。
【請求項95】
前記層を除去する工程が,前記処方の50%より多くが粘着性,軟質層に変換された後に前記層を剥がすことを含む,請求項94記載の方法。
【請求項96】
前記処方が,前記処方があらかじめ定められた量の前記液体を失ったときに,前記処方を粘着性固体に変換しうるポリマーを含む,請求項94記載の方法。
【請求項97】
前記ポリマーがポリビニルアルコールである,請求項96記載の方法。
【請求項98】
前記ポリマーが,ポリビニルピロリドン,カラギーナン,ゲル化ガム,ナトリウムカルボキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,および他のセルロース誘導体からなる群より選択される,請求項96記載の方法。
【請求項99】
前記薬剤が局所的にターゲティングされる,請求項94記載の方法。
【請求項100】
前記薬剤が全身的にターゲティングされる,請求項94記載の方法。
【請求項101】
前記薬剤が領域的にターゲティングされる,請求項94記載の方法。
【請求項102】
前記薬剤が,リドカイン,テトラカイン,プリロカイン,ベンゾカイン,ブピバカイン,メピバカイン,ジブカイン,エチドカイン,ブタカイン,シクロメチカイン,ヘキシルカイン,プロパラカイン,およびロピバカインからなる群より選択される局所麻酔剤である,請求項94記載の方法。
【請求項103】
前記方法が,前記ヒト体表面が有意に麻酔された後に,処方の前記層を前記ヒト体表面から剥がすことをさらに含む,請求項102記載の方法。
【請求項104】
前記薬剤が,アシクロビル,バシトラシン,クロラムフェニコール,クリンダマイシン,エリスロマイシン,ゲンタマイシン,ムピロシン,ネオマイシン,テトラサイクリン,アンホテリシンB,安息香酸,サリチル酸,ブタコナゾール,シクロピロクス,クリオキノール,クロトリマゾール,硝酸エコナゾール,ハロプロギン,ケトコナゾール,ミクロナゾール,ナフチフィン,ナイスタチン,オキシコナゾール,ナトリウムチオ硫酸,テルコナゾール,トリアセチン,ウンデシレン酸,およびウンデシレン酸塩,塩化ベンゾアルコニウム,ヘキサクロロフェン,ヨード,マフェニド,メトロニダゾール,ニトロフラゾン,硫化セレン,銀スルファジアジン,コルチコステロイド,トレチノイン,ビタミンA,D,コラゲナーゼ,フィブリノリシン,デオキシリボヌクレアーゼ,スチライン,フルオロウラシル,デキストラノマー,ミノキシジル,ハイドロキノン,モノベンゾン,アミノ安息香酸誘導体,例えばアミノ安息香酸およびメンチルアントラニレート,ベンゾフェノン誘導体,例えばジオキシベンゾンおよびオキシベンゾン,サリチル酸誘導体桂皮酸誘導体トリオレイン酸ギガロリル,赤色流動パラフィン,二酸化チタン,酸化亜鉛,アントラリン,カルシポトリエン,アルプロスタジルおよびイミキモドからなる群より選択される,請求項94記載の方法。
【請求項105】
前記薬剤が,抗感染剤,抗ウイルス剤,抗生物質,抗真菌剤,防腐剤,抗炎症剤,止痒性剤;細胞刺激剤および増殖剤,軟化薬,壊死性組織および皮膚潰瘍を治療するためにまたは壊死組織切除において用いられる薬剤,抗皮膚癌/抗角化症剤,創傷洗清剤,育毛を促進する薬剤,色素脱失剤,サンスクリーン剤および化学的サンスクリーン剤および不透明な物理学的サンスクリーン剤,他の皮膚病薬剤,創傷治癒を促進するための薬剤,疣贅および母斑を治療するための薬剤,潰瘍化した皮膚表面を治療するための薬剤,新生児において用いられる,パッチ形状で輸送することが必要な薬剤,粘膜に適用される薬剤,男性勃起機能不全を治療するための薬剤,粘膜疣贅を治療するための薬剤からなる薬剤の群より選択される,請求項94記載の方法。
【請求項106】
前記処方が可塑剤を含み;前記可塑剤は,前記液体が実質的にすべて蒸発した後に前記処方を軟質固体の形状に維持することができる,請求項94記載の方法。
【請求項107】
前記ヒト体表面が皮膚である,請求項94記載の方法。
【請求項108】
前記ヒト体表面が粘膜である,請求項94記載の方法。
【請求項109】
前記ヒト体表面が傷つけられた角質層を有する皮膚表面である,請求項94記載の方法。
【請求項110】
前記ヒト体表面が潰瘍化した表面である,請求項94記載の方法。
【請求項111】
前記ヒト体表面が,壊死組織切除することが必要な死んだ組織を有する傷つけられた表面
である,請求項94記載の方法。
【請求項112】
前記ヒト体表面が手術後創傷表面である,請求項94記載の方法。
【請求項113】
処方の前記層を変換する前記工程が,前記処方中の前記液体を蒸発させることを含む,請求項94記載の方法。
【請求項114】
前記ヒト体表面が虫のかみ傷を有する,請求項94記載の方法。
【請求項115】
前記ヒト体表面が虫の刺傷を有する,請求項94記載の方法。
【請求項116】
前記ヒト体表面が小さい切り傷を有する,請求項94記載の方法。
【請求項117】
前記処方を粘着性固体の前記層に変換するのに要する時間を制御する工程をさらに含む,請求項94記載の方法。
【請求項118】
前記処方を変換するのに要する時間を制御する前記工程が,あらかじめ定められた厚さを有する前記処方の層を前記ヒト体表面に適用することを含む,請求項117記載の方法。
【請求項119】
処方の前記層を変換する前記工程が,前記ヒト体表面に適用してから約30−60分以内に完了する,請求項94記載の方法。
【請求項120】
前記処方が架橋可能であるが実質的に未架橋のポリマーを含む,請求項94記載の方法。
【請求項121】
処方の前記層を変換する前記工程が,架橋剤を前記処方中に輸送することを含む,請求項94記載の方法。
【請求項122】
前記変換剤がホウ酸およびホウ酸ナトリウムから選択される化合物である,請求項121記載の方法。
【請求項123】
架橋剤の前記処方への前記輸送が,前記処方を前記架橋剤を含浸した材料のシートで覆うことを含む,請求項121記載の方法。
【請求項124】
架橋剤の前記処方への前記輸送が,前記架橋剤を前記処方上に噴霧することを含む,請求項123記載の方法。
【請求項125】
処方の前記層を変換する前記工程が,前記処方中のポリマーを紫外線照射を用いて架橋させることを含む,請求項94記載の方法。
【請求項126】
前記処方が,保存温度から約28°C−約38°Cの温度範囲に暖められることにより前記処方がより固体の状態に変換するようにサーマルゲルを含む,請求項94記載の方法。
【請求項127】
前記温度範囲が約29°C−約34°Cである,請求項126記載の方法。
【請求項128】
前記処方および前記処方近くの皮膚を加熱する工程をさらに含む,請求項94記載の方法。
【請求項129】
前記加熱工程が,熱空気を前記ヒト体表面上の前記処方に吹き付けることを含む,請求項128記載の方法。
【請求項130】
前記加熱工程が,前記ヒト体表面上の前記処方に赤外線照射を照射することを含む,請求項128記載の方法。
【請求項131】
前記加熱工程が,前記ヒト体表面上の前記処方で熱を発生させることができるパッチを配置することを含む,請求項128記載の方法。
【請求項132】
前記加熱パッチの熱が,発熱反応により発生する,請求項131記載の方法。
【請求項133】
処方の前記層の前記変換が,前記処方の層を少なくとも28°Cの温度を有するヒト体表面に置くことを含む,請求項94記載の方法。
【請求項134】
前記方法が,熱により前記薬剤の前記ヒト体表面への吸収を促進する手段をさらに含む,請求項94記載の方法。
【請求項135】
前記手段が,加熱空気を前記ヒト体表面上の前記処方に吹き付けることを含む,請求項129記載の方法。
【請求項136】
前記手段が,赤外線照射を前記ヒト体表面上の前記処方に照射することを含む,請求項129記載の方法。
【請求項137】
前記手段が,熱を発生しうるパッチを前記ヒト体表面上の前記処方上に置くことを含む,請求項129記載の方法。
【請求項138】
前記加熱パッチの熱が発熱反応により発生する,請求項132記載の方法。
【請求項139】
ヒト身体に薬剤を輸送する方法であって,
薬学的に活性な物質および架橋可能であるが実質的に未架橋のポリマーを含む処方を用意し;
あらかじめ定められた面積を有する浅い溝を有するパッチを用意し,ここで,前記浅い溝の底は,前記処方をより固体の形に変換することができる架橋剤を含み;
前記処方を前記溝に配置し,そして
前記処方を有する前記パッチをヒト体表面に適用する,
の各工程を含む方法。
【請求項140】
ヒト体表面上に固定する手段をさらに含む,請求項139記載のパッチ。
【請求項141】
前記手段が接着剤の層を含む,請求項140記載のパッチ。
【請求項142】
前記薬学的に活性な物質が全身的にターゲティングされる薬剤である,請求項139記載のパッチ。
【請求項143】
前記薬学的に活性な物質が局所的にターゲティングされる薬剤である,請求項139記載のパッチ。
【請求項144】
前記薬学的に活性な物質が,領域的にターゲティングされる薬剤である,請求項139記載のパッチ。
【請求項145】
前記薬学的に活性な物質が全身的にターゲティングされる薬剤である,請求項139記載のパッチ。
【請求項146】
前記薬学的に活性な物質がニコチンである,請求項139記載のパッチ。
【請求項147】
前記薬学的に活性な物質がテストステロンである,請求項139記載のパッチ。
【請求項148】
前記薬学的に活性な物質がフェンタニルである,請求項139記載のパッチ。
【請求項149】
前記薬学的に活性な物質がスフェンタニルである,請求項139記載のパッチ。
【請求項150】
前記薬学的に活性な物質が,アシクロビル,バシトラシン,クロラムフェニコール,クリンダマイシン,エリスロマイシン,ゲンタマイシン,ムピロシン,ネオマイシン,テトラサイクリン,アンホテリシンB,安息香酸,サリチル酸,ブタコナゾール,シクロピロクス,クリオキノール,クロトリマゾール,硝酸エコナゾール,ハロプロギン,ケトコナゾール,ミクロナゾール,ナフチフィン,ナイスタチン,オキシコナゾール,ナトリウムチオ硫酸,テルコナゾール,トリアセチン,ウンデシレン酸,およびウンデシレン酸塩,塩化ベンゾアルコニウム,ヘキサクロロフェン,ヨード,マフェニド,メトロニダゾール,ニトロフラゾン,硫化セレン,銀スルファジアジン,コルチコステロイド,トレチノイン,ビタミンA,D,コラゲナーゼ,フィブリノリシン,デオキシリボヌクレアーゼ,スチライン,フルオロウラシル,デキストラノマー,ミノキシジル,ハイドロキノン,モノベンゾン,アミノ安息香酸誘導体,例えばアミノ安息香酸およびメンチルアントラニレート,ベンゾフェノン誘導体,例えばジオキシベンゾンおよびオキシベンゾン,サリチル酸誘導体,桂皮酸誘導体,トリオレイン酸ギガロリル,赤色流動パラフィン,二酸化チタン,酸化亜鉛,アントラリン,カルシポトリエン,アルプロスタジルおよびイミキモドからなる群より選択される,請求項139記載のパッチ。
【請求項151】
前記薬学的に活性な物質が,抗感染剤,抗ウイルス剤,抗生物質,抗真菌剤,防腐剤,抗炎症剤,止痒性剤;細胞刺激剤および増殖剤,軟化薬,壊死性組織および皮膚潰瘍を治療するためのまたは壊死組織切除において用いられる薬剤,抗皮膚癌/抗角化症剤,創傷洗清剤,育毛を促進するための薬剤,色素脱失剤,サンスクリーン剤および化学的サンスクリーン剤および不透明な物理学的サンスクリーン剤,他の皮膚病薬剤,薬剤創傷治癒を促進するための薬剤,疣贅および母斑を治療するための薬剤,潰瘍化した皮膚表面を治療するための薬剤,パッチ形状で輸送することが必要な,新生児において用いられる薬剤,粘膜に適用される薬剤,男性勃起機能不全を治療するための薬剤,粘膜疣贅を治療するための薬剤からなる群より選択される,請求項139記載のパッチ。
【請求項152】
前記ポリマーがポリビニルアルコールである,請求項139記載のパッチ。
【請求項153】
前記ポリマーがカラギーナンである,請求項139記載のパッチ。
【請求項154】
前記架橋剤が,ホウ酸およびホウ酸の塩からなる群より選択される,請求項139記載のパッチ。
【請求項155】
前記架橋剤がホウ素を含む,請求項139記載のパッチ。
【請求項156】
ヒト体表面および前記表面の下の組織を麻酔するための装置であって,
処方,ここで前記処方は局所麻酔剤を含み;
固化シート;および
架橋可能であるが実質的に未架橋のポリマー;
を含み,前記固化シートは,前記処方中の前記ポリマーを架橋しうる架橋剤で含浸された材料のシートを含むことを特徴とする装置。
【請求項157】
前記局所麻酔剤がテトラカインである,請求項156記載の装置。
【請求項158】
前記局所麻酔剤が,リドカイン,プリロカイン,ベンゾカイン,ブピバカイン,メピバカイン,ジブカイン,エチドカイン,ブタカイン,シクロメチカイン,ヘキシルカイン,プロパラカイン,およびロピバカインからなる群より選択される,請求項156記載の装置。
【請求項159】
前記局所麻酔剤が局所麻酔の共融混合物の形である,請求項156記載の装置。
【請求項160】
前記共融混合物がリドカインおよびテトラカインの共融混合物である,請求項159記載の装置。
【請求項161】
前記共融混合物がリドカインおよびプリロカインの共融混合物である,請求項159記載の装置。
【請求項162】
前記局所麻酔剤が,水に実質的に不溶性の油に溶解しており,かつ前記処方中に油滴として配置されている,請求項156記載の処方。
【請求項163】
前記油が,ひまし油およびオレイルアルコールからなる群より選択される,請求項162記載の処方。
【請求項164】
前記処方が,エステルタイプの局所麻酔の加水分解を阻害する物質をさらに含む,請求項156記載の装置。
【請求項165】
前記物質がグリセロールである,請求項168記載の装置。
【請求項166】
前記物質が,N−メチルピロリドンおよびポリエチレングリコール,ひまし油およびオレイルアルコールからなる群より選択される,請求項168記載の装置。
【請求項167】
前記架橋可能であるが実質的に未架橋のポリマーがポリビニルアルコールである,請求項156記載の装置。
【請求項168】
前記架橋剤が,ホウ酸およびホウ酸の塩からなる群より選択される,請求項156記載の装置。
【請求項169】
前記架橋可能であるが実質的に未架橋のポリマーがカラギーナンである,請求項156記載の装置。
【請求項170】
前記ポリマーを架橋しうる前記物質が,カルシウムを含む化合物である,請求項156記載の装置。
【請求項171】
前記処方が,リドカインおよびテトラカイン,ポリビニルアルコール,および水の共融混合物を含み,および前記固化シートは,ホウ酸ナトリウム,ホウ酸の塩およびホウ酸からなる群より選択される架橋剤が含浸されている材料のシートを含む,請求項156記載の装置。
【請求項172】
前記処方が,リドカインおよびプリロカイン,ポリビニルアルコール,および水の共融混合物を含み,前記固化シートは,ホウ酸ナトリウム,ホウ酸の塩およびホウ酸からなる群より選択される架橋剤が含浸されている材料のシートを含む,請求項156記載の装置。
【請求項173】
前記架橋剤が加熱により架橋を開始することができる,請求項156記載の装置。
【請求項174】
前記架橋剤が,前記ヒト体表面上の前記処方に加熱空気を吹き付けることにより架橋を開始することができる,請求項156記載の装置。
【請求項175】
前記架橋剤が,前記ヒト体表面上の前記処方に赤外線照射を照射することにより架橋を開始することができる,請求項156記載の装置。
【請求項176】
前記架橋剤が,前記ヒト体表面上の前記処方に熱を発生することができるパッチを置くことにより架橋を開始することができる,請求項156記載の装置。
【請求項177】
前記加熱パッチの熱が発熱反応により発生する,請求項176記載の装置。
【請求項178】
皮膚輸送される薬剤処方の層を均一かつあらかじめ定められた厚さを有するようにヒト体表面に適用するためのアプリケータであって,処方容器およびノズルを含み,前記ノズルは1つの入口端および1つの出口端を含み;前記入口端は,前記アプリケータを前記薬剤処方を含みかつ前記処方を分配することができる前記容器に取り付ける手段を含み;前記ノズルの前記出口端はあらかじめ決定された幅および長さを有する開口部を含むことを特徴とするアプリケータ。
【請求項179】
前記幅が0.2mm−3.0mmである,請求項178記載のアプリケータ。
【請求項180】
前記長さが2mm−30mmである,請求項178記載のアプリケータ。
【請求項181】
前記アプリケータを前記容器に取り付ける前記手段が,前記容器の適合した出口に取り外し可能なように取り付けることができるコネクターを含む,請求項178記載のアプリケータ。
【請求項182】
前記薬剤処方が局所麻酔剤である,請求項178記載のアプリケータ。
【請求項183】
ヒト皮膚を非侵襲性的に麻酔する方法であって,水を含有する固体以下処方の層をヒト皮膚に適用し;そして前記処方の50%より多くが粘着性,軟質固体となるように十分な量の前記水が処方から蒸発した後に,処方の前記層を前記ヒト皮膚から剥がす,の各工程を含む方法。
【請求項184】
前記処方がリドカインおよびテトラカイン,ポリビニルアルコール,および水の共融混合物を含む,請求項183記載の方法。
【請求項185】
前記処方とともに配置される,リドカインおよびテトラカイン,およびポリビニルアルコール,および水の前記共融混合物が以下の重量比:
リドカインおよびテトラカインの共融混合物,約1%−約40%,
ポリビニルアルコール,約2%−約40%,
水,約30%−約95%
を有する,請求項184記載の方法。
【請求項186】
前記処方がグリセロールをさらに含み,前記グリセロールは,処方中で約0−40%の重量比を有する,請求項185記載の方法。
【請求項187】
処方が,処方中において以下の重量比:
レシチン,約0.5%−約10%
ウォーターロック(登録商標)A−100,約0.2%−約6%
を有するレシチンおよびウォーターロック(登録商標)をさらに含む,請求項185記載の方法。
【請求項188】
前記皮膚が顔面皮膚である,請求項184記載の方法。
【請求項189】
前記処方が,リドカインおよびプリロカイン,ポリビニルアルコール,グリセロールおよび水の共融混合物を含む,請求項183記載の方法。
【請求項190】
前記処方とともに配置されるリドカインおよびプリロカイン,ポリビニルアルコールおよび水の前記共融混合物が以下の重量比:
リドカインおよびプリロカインの共融混合物,約1%−約40%,
ポリビニルアルコール,約2%−約4%,および
水,約30%−約95%
を有する,請求項189記載の方法。
【請求項191】
前記処方がグリセロールをさらに含み,前記グリセロールは処方中で約0−40%の重量比を有する,請求項190記載の方法。
【請求項192】
前記皮膚が顔面皮膚である,請求項189記載の方法。
【請求項193】
ヒト皮膚を麻酔するための装置であって,処方と,ホウ酸ナトリウム,ホウ酸の塩またはホウ酸からなる群より選択される架橋剤が含浸されている固化シートとを含む装置。
【請求項194】
前記処方が,リドカインおよびテトラカイン,ポリビニルアルコール,および水の共融混合物を含む,請求項193記載の装置。
【請求項195】
前記処方が,以下の重量比:
リドカインおよびテトラカインの共融混合物,約1.0−約40.0%
ポリビニルアルコール,約2.0%−40%および
水,約30−95%
を有する,リドカインおよびテトラカイン,ポリビニルアルコールおよび水の共融混合物を含む,請求項193記載の装置。
【請求項196】
前記処方が,リドカインおよびプリロカイン,ポリビニルアルコールおよび水の共融混合物を含む,請求項193記載の装置。
【請求項197】
かさぶたを有するヒト体表面を壊死組織切除前に同時に水和および麻酔する方法であって,
少なくとも1つの局所麻酔剤,1つの変換剤,および水を含む処方の層を壊死組織切除を必要とするかさぶたを有するヒト体表面に適用し;
前記変換剤を活性化しかつ前記処方を粘着性,軟質,固体ゲルに変換することができる物質を含浸した材料のシートを適用し;前記材料のシートは水を遮る材料の層をさらに含み;
処方の前記層が実質的に粘着性,軟質,固体ゲルに変換されるのに十分な時間待ち;そして
前記ヒト体表面が麻酔されかつ前記かさぶたが有意に柔らかくなった後に粘着性,軟質,固体ゲルの前記層を前記ヒト体表面から除去する,
の各工程を含む方法。
【請求項198】
前記変換剤がポリビニルアルコールである,請求項197記載の方法。
【請求項199】
前記変換剤を活性化させることができる前記物質が,ホウ酸およびホウ酸の塩の群から選択される化合物である,請求項197記載の方法。
【請求項200】
角質層で覆われていないヒト体表面および前記表面の下の組織への制御された麻酔剤輸送用の処方であって,前記処方中に配置された局所麻酔剤を含み,前記局所麻酔剤の60%より多くが前記処方中で溶解していない状態で存在することを特徴とする処方。
【請求項201】
前記薬剤がテトラカインを含む,請求項200記載の処方。
【請求項202】
角質層で覆われていない前記ヒト体表面が粘膜である,請求項201記載の方法。
【請求項203】
角質層で覆われていない前記ヒト体表面が潰瘍化した皮膚である,請求項201記載の方法。
【請求項204】
角質層で覆われていない前記ヒト体表面が壊死組織切除を必要とするかさぶたを有する皮膚である,請求項201記載の方法。
【請求項205】
角質層で覆われていない前記ヒト体表面が手術後創傷表面である,請求項201記載の方法。
【請求項206】
非溶解状態の前記局所麻酔が局所麻酔の共融混合物である,請求項201記載の処方。
【請求項207】
非溶解状態の前記局所麻酔が粉体である,請求項201記載の処方。
【請求項208】
前記局所麻酔が,以下の重量比:
テトラカイン:0.1−20%
水:30−99.9%
を有するリドカインおよびテトラカイン,および水,リドカインおよびテトラカインの共融混合物を含む,請求項201記載の処方。
【請求項209】
前記テトラカインの60%より多くが前記処方中で非溶解塩基として存在する,請求項208記載の処方。
【請求項210】
前記テトラカインの60%より多くが前記処方中で非溶解塩として存在する,請求項208記載の処方。
【請求項211】
前記薬剤が油ベヒクル媒体中に溶解され,前記薬剤含有油が前記処方中で小液滴として乳濁されている,請求項200記載の処方。
【請求項212】
前記油が,ひまし油およびオレイルアルコールからなる群より選択される,請求項211記載の処方。
【請求項213】
角質層で覆われていない前記ヒト体表面が粘膜である,請求項211記載の方法。
【請求項214】
角質層で覆われていない前記ヒト体表面が潰瘍化した皮膚である,請求項211記載の方法。
【請求項215】
角質層で覆われていない前記ヒト体表面が壊死組織切除を必要とするかさぶたを有する皮
膚である,請求項211記載の方法。
【請求項216】
角質層で覆われていない前記ヒト体表面が手術後創傷表面である,請求項211記載の方法。
【請求項217】
局所的に適用される医薬処方の機能を改善する方法であって,
薬学的に活性な化合物および液体を含む処方の層をヒト体表面に適用し;前記処方は,ヒト体表面に適用する前には固体以下の形態であり;
処方の前記層を粘着性固体の層に変換し,そして前記処方の50%より多くが粘着性軟質固体となった後に処方の前記層を前記ヒト体表面から剥がす,
の各工程を含む方法。
【請求項218】
前記処方が,前記処方があらかじめ定められた量の前記液体を失ったときに前記処方を粘着性固体に変換させることができるポリマーを含む,請求項217記載の方法。
【請求項219】
前記ポリマーがポリビニルアルコールである,請求項218記載の方法。
【請求項220】
前記ポリマーが,ポリビニルピロリドン,カラギーナン,ゲル化ガム,ナトリウムカルボキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,および他のセルロース誘導体からなる群より選択される,請求項218記載の方法。
【請求項221】
前記処方が可塑剤を含み;前記可塑剤が前記液体が実質的にすべて蒸発した後に前記処方を軟質固体の形状に維持することができる,請求項217記載の方法。
【請求項222】
前記ヒト体表面が皮膚である,請求項217記載の方法。
【請求項223】
前記ヒト体表面が粘膜である,請求項217記載の方法。
【請求項224】
前記ヒト体表面が創傷表面である,請求項217記載の方法。
【請求項225】
前記ヒト体表面が潰瘍表面である,請求項217記載の方法。
【請求項226】
前記ヒト体表面が虫のかみ傷を有する,請求項217記載の方法。
【請求項227】
前記ヒト体表面が虫の刺傷を有する,請求項217記載の方法。
【請求項228】
処方の前記層の粘着性固体の層への前記変換が,前記処方中の前記液体を蒸発させることを含む,請求項217記載の方法。
【請求項229】
処方の前記層の粘着性固体への前記変換が,架橋剤を前記処方に輸送することを含む,請求項217記載の方法。
【請求項230】
架橋剤の前記処方への前記輸送が,前記架橋剤を含浸した材料のシートで前記処方を変換することを含む,請求項229記載の方法。
【請求項231】
架橋剤の前記処方への前記輸送が,前記架橋剤を前記処方に噴霧することを含む,請求項229記載の方法。
【請求項232】
処方の前記層の粘着性固体の層への前記変換が,前記処方中のポリマーを紫外線照射により架橋することにより行われる,請求項217記載の方法。
【請求項233】
処方の前記層の粘着性固体の層への前記変換が,前記処方中の液体を蒸発させることを含む,請求項217記載の方法。
【請求項234】
処方の前記層の粘着性固体の層への前記変換が,薬剤輸送の速度を有意に低下させる,請求項233記載の方法。
【請求項235】
処方の前記層の粘着性固体の層への前記変換が,前記変換が完了した際に薬剤輸送を実質的に終了させる,請求項233記載の方法。
【請求項236】
処方の前記層の粘着性固体の層への前記変換が,過剰投与を防ぐ,請求項233記載の方法。
【請求項237】
処方と接触するであろう表面積の寸法を選択することをさらに含む,請求項217記載の方法。
【請求項238】
前記選択が,接触する可能性のある表面積を有する種々の空のパッチから選択し,および前記種々の空のパッチの1つに前記処方を充填して,所望の接触表面積を得ることを含む,請求項237記載の方法。
【請求項239】
前記適用が,処方と接触させるべき所望の表面積を決定し,そして所望の表面積と等しい表面積を有するよう前記処方を適用することをさらに含む,請求項237記載の方法。
【請求項240】
前記適用が,前記処方と接触させるべき所望の表面積を選択することにより薬剤輸送を制御し,そして所望の表面積を覆う補足的表面積を有するよう前記処方を投与することをさらに含む,請求項237記載の方法。
【請求項241】
前記処方をヒト体表面に適用する時間保護し,かつ適用後に前記処方を簡単に除去することを容易にするための,方法と固化シートとの組み合わせであって,
前記処方は,以下の薬剤群:抗生物質,育毛を促進するための薬剤,皮膚疾病を治療するための薬剤,創傷を治療するための医薬品から選択される薬学的に活性な薬剤;および架橋可能であるが実質的に未架橋のポリマーを含み,
前記固化シートは,前記処方中の前記ポリマーを架橋することができる架橋剤が含浸されている材料のシートを含むことを特徴とする組み合わせ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−246315(P2012−246315A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−203191(P2012−203191)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【分割の表示】特願2007−140999(P2007−140999)の分割
【原出願日】平成12年9月27日(2000.9.27)
【出願人】(502110322)ザーズ インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】