説明

相変化印刷用のインクを配合するのに有用な環式ビスアミド

【課題】ジェットインク印刷用、特にホットメルト印刷用インクのキャリヤーとして有用な非水性組成物の提供。
【解決手段】特定の環式ビスアミドを使用して、ジェットインク印刷用のインクを配合することができる。環式ビスアミドは、環式ジアミンと非環式モノカルボン酸とから製造することができる。逆に、環式ビスアミドは、環式二酸と非環式モノアミンとから製造することもできる。生成物の性能特性は、若干のさらなる二官能性反応体、例えば、二酸またはジアミンを添加することによって改善することができる。ビスアミドのブレンドは、いずれの成分ビスアミド単独の場合よりもより良好な性能特性を発揮し、ブレンドは、少なくとも1つの環式ビスアミドを含む。ビスアミドは、画像形成材料との組み合わせ、さらに場合によっては、その他の材料との組み合わて、溶融形態とし、ついで、基板に塗布され、印刷基板を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、相変化インクおよびその環式ビスアミド成分ならびにこれらインクで印刷するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ホットメルトインクは、相変化インクとしても公知であり、室温で固体であり、かつ、ホットメルトインクが基板に供給される高温で溶融していることを特徴とする。ホットメルトインクは、熱転写、高速プロトタイピングおよびインクジェット印刷にて広く使用され、また、フレキソ印刷、凹版印刷およびグラビア印刷にても使用されることが提案されている。
【0003】
インクジェット印刷は、基板、例えば、紙、プラスチックフィルム、金属ホイール等に非接触印刷するための周知の方法である。本質的には、インクジェット印刷は、非常に小さなオリフィスを介して液体インク流を放出し、その後、ブレークアップディスタンス(breakup distance)として公知のオリフィスからのある一定距離にて、その液体インク流が、微小な均一サイズの液滴に分散する。インク液滴は、それらが基板にぶつかるまで空気を通って飛行し、その結果、インクは、基板上に画像を形成する。
【0004】
印刷装置のプリントヘッドから基板まで画像を描写するようにジェットインクを誘導するための種々の技術が開発されている。ドロップ-オン-デマンド(drop-on-demand)と称される1つの技術において、プリントヘッドは、基板の上を通過し、インクが基板上に付着することが望ましい時および場合にのみインクの液滴を放出する。ドロップ-オン-デマンド技術は、デスクトップインクジェットプリンターにて一般に使用されている。
【0005】
対照的に、連続流ジェット印刷として公知の方法では、プリントヘッドは、それが基板上を通過する時も、または、基板がプリントヘッドの前を通過する時も、絶えずインク液滴を放出している。ガイダンスシステムが、プリントヘッドと基板との間に配置され、かくして、インク液滴は、基板上の個々の位置;または、放出される液滴が基板に接触することが許容されない場合には、再循環側溝のいずれかに誘導される。典型的な連続流インクジェットプリンターは、電荷を付与され得るインクを使用し、ガイダンスシステムは、帯電されたインク液滴と相互作用し、所望される位置に誘導するような静電界である。連続流ジェットインク印刷は、デスクトップ印刷においてよりも工業的印刷においてより一般的に見られる。
【0006】
ドロップ-オン-デマンドまたは連続流インクジェット印刷のいずれにも適したジェットインクは、液体ジェットインクまたはホットメルト(相変化)ジェットインクのいずれかとして分類することができる。いずれのタイプのインクも、典型的には、着色剤とキャリヤーとの両方を含有し、キャリヤーは、着色剤を溶解、懸濁または分散する材料である。液体ジェットインクは、室温で液体であり、典型的には、放出される前にプリントヘッドに貯蔵されている間は約室温である。単純な液体ジェットインクは、水性キャリヤーと、着色剤としての水溶性染料とによって構成される。液体ジェットインクが基板に接触した後、溶剤は、典型的には、着色剤から蒸発し又は吸い出され、着色剤は、インクが基板に最初に接触した部位およびその周りに目視可能なまま残留する。
【0007】
対照的に、ホットメルトジェットインクは、室温で固体であり、インクジェットプリントヘッドから放出される前に溶融状態に加熱される。基板と接触する際に、基板は、典型的には、室温であり、溶融された(すなわち、液体)ホットメルトインクは、冷却し、凝固することになるから、したがって、“相変化(phase-change)”という用語の由来は、これらのインクのためである。単純なホットメルトインクは、キャリヤーとしてのワックスと、着色剤としての顔料かまたは染料とによって構成される。ホットメルトインクの成分の全てまたはほとんど全ては、溶融されたインクが基板に接触する位置に残り、すなわち、ホットメルトインクの成分の吸い出しまたは蒸発がほとんどないかまたは全くない。
【0008】
ジェットインク印刷に有用なインク組成物は、ある種の特性を有する必要がある。インクが、むらのないブレークアップ長さ、液滴粘度;および、少なくとも連続流ジェット印刷では、ジェットインク印刷プロセスの間に使用される条件下での一定の液滴変化を示すことが非常に望ましい。これらの要件に合致するために、ジェットインク組成物は、安定した粘度、安定した抵抗特性を有する必要があり、エージングの後に乾燥してはならない(すなわち、溶剤またはその他の揮発性物質を失ってはならない)。
【0009】
液体ジェットインクに伴う主要な問題は、インクが実質的な量の水および/または有機溶剤を含有するために発生し、これらのインクは、放置すると蒸発して、乾燥し、固まる。これは、プリントヘッドオリフィスの閉塞を生じかねない。さらなる問題は、揮発性溶剤の喪失がインクの粘度の増加を引き起こし、これにより、インクの性能の実質的変化を生じさせるであろう。また、多孔質の基板、例えば、紙は、高品質の液体ジェットインクで印刷される時、ひだを作るかおよび/または歪を生じやすい。さらに、液体ジェットインク中に見られる有機溶剤は、基板と接触した後、蒸発し、これにより、印刷プロセスの近傍に位置するヒトの健康上の問題を引き起こしかねない。
【0010】
液体ジェットインク中の液体溶剤の存在に伴うもう1つの問題は、これら溶剤が着色剤を印刷される、典型的には、多孔質の基板に滲み出させることであり、その後、印刷が低い分解能を示すことである。特に塗被された多孔質基板は、この問題を克服するかもしれないものの、このような特殊な基板は、高価であり、かつ、概して、その他のタイプの印刷、例えば、“無地の紙(plain paper)”すなわち、標準非塗被シートで微細に作業される電子複写印刷については必要ない。少なくともオフィスでの設定にては、インクジェット印刷を含め、全ての印刷は、“無地の紙”上または標準透明度で行うのが非常に望ましい。
【0011】
ホットメルトインクは、液体インクに優る多数の利点を提供する。例えば、多孔質基板上に着色剤を沈着させるために、液体インクが使用される時、着色剤は、液体キャリヤーが吸い出されると基板に運ばれる傾向がある。これにより、印刷密度の低下が生じ、印刷分解能に若干のロスを生ずる。対照的に、ホットメルトインクの迅速な凝固は、着色剤を基板の表面に確実に固定し、それに対応して印刷密度および分解能が増加する。さらなる利点は、ホットメルトインクの印刷に伴うひだがほとんどまたは全く存在しないことであり、これは、液体インクを用いて行われる印刷とは際立って対照的である。なおもう1つの利点は、ホットメルトインクが、液体インクよりもこぼれなく輸送することが容易であることである。
【0012】
幾つかの理由から、着色剤の基板への接着が、また、ホットメルト印刷において優れているかもしれない。例えば、ホットメルトインク中のキャリヤーは、液体インクによる印刷で生ずるような、着色剤からの蒸発または吸い出しは起こらず、全てが、印刷された基板の表面に着色剤とともに留まるので、ホットメルトキャリヤーは、着色剤を基板表面に固定することを補助するためにより良好に利用可能である。また、室温で固体であるキャリヤーは、当然のことながら、液体キャリヤーよりもより良好な固定特性を有するであろう。ジェットインク印刷を詳しく見ると、ホットメルトインクは、本質的に揮発性成分を有しないという利点を提供する。かくして、ホットメルトインク中の成分は、蒸発せず、かくして、インク粘度の変化;ケーキング(caking);および、溶剤蒸発による健康上の危険性という付随的な問題が存在しない。
【0013】
有意な程度に、キャリヤーの特性は、ホットメルトインクの特性を決定する。従来技術は、ホットメルトジェットインク中で、場合によっては、ビヒクルとも称するがキャリヤー;結合剤または固体有機溶剤として使用することのできる幾つかの物質を開示している。上記したように、これらインクの大部分の成分は、慣用的には、ワックスである。分類としてのワックスは、通常、蝋燭およびクレヨンの成分であるパラフィンに関連する物理的特性を有する物質である。通常、蝋燭およびクレヨンの成分である。典型的には、ワックスは、硬質、脆性、滑性(lubricious)および不透明であり、かつ、融点の直上の温度で測定する時、鋭敏な融点および非常に低い粘度を有する。これらの特性は、全て、ワックスの結晶性に関連したものである。ワックスは、通常、単一の化合物;または、飽和かつ直鎖の類似化合物の混合物のいずれかである。ワックスの例は、ステアリン酸および12-ヒドロキシステアリン酸ならびにそれらのエステルおよびモノアミドである。
【0014】
ワックスは、それらが溶融した時に低粘度を有する硬質固体物質であるという点で特性のまれな組み合わせを有するので、ホットメルトインクの製造のために使用されることがよくある。しかし、これらワックスは、冷却の際の結晶化がそれらの収縮を生じさせ、かくして、基板から剥がれやすいので、典型的には、非多孔質基板への接着力が乏しい。また、多くの場合、それらは、良好な画像を形成するために必要とされる高レベルの染料に対して良好な溶剤ではない。
【0015】
以下は、相変化インクキャリヤーを開示している特許の選択リストである。米国特許3,653,932は、セバチン酸(固体直鎖C10ジカルボン酸)と、12個以下の炭素を有するパラフィンアルコールとのジエステルの使用を開示している。米国特許4,390,369は、例えば、天然ワックスの使用を開示している。米国特許4,659,383は、例えば、C20-24酸またはアルコールの使用を開示している。米国特許4,820,346は、例えば、芳香族スルホンアミドの使用を開示している。米国特許4,830,671は、例えば、短鎖ポリアミドの使用を開示している。米国特許5,006,170は、例えば、エチレンジアミンからの、例えば、ビスアミドワックスを開示している。米国特許5,151,120は、例えば、ステアリン酸(固体直鎖のC18カルボン酸)のエチルエステルの使用を開示している。米国特許5,421,868は、例えば、ビスアミドを含有してもよい溶剤含有インクを開示している。米国特許5,354,368は、例えば、トール油ロジンの使用を開示している。米国特許5,597,856は、例えば、アミド含有物質と組み合わせたテトラミドを開示している。米国特許5,667,568は、例えば、脂肪ビスアミド(fatty bisamide)を開示している。米国特許5,703,145は、例えば、芳香族ビスアミドを開示している。米国特許5,594,865は、例えば、種々のアミド含有物質を開示している。米国特許6,037,396は、例えば、種々のアミド含有物質を開示している。前述の記載は、ホットメルトインクキャリヤーに関する従来技術の例である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ホットメルトインクのためのキャリヤーの分野においてなされた相当な量の研究にもかかわらず、当分野では、ホットメルトインクに有用な優れたキャリヤー物質に対する要求;および、このようなキャリヤー物質を有するインクに対する要求が残ったままである。本発明は、以下に記載するように、これらおよび関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の概要
1つの態様では、本発明は、式:
【0018】
【化1】

【0019】
[式中、nは、0または1〜10の整数であり、mは、その環がそれぞれシクロペンチル環またはシクロヘキシル環となるように0または1であり、Gは、場合によっては、-NH-C(O)-R、-C(O)-NH-Rおよび-C(O)-NR2(ここで、Rは、C1-C75アルキル基である)から選択されるアミド含有基である。]
で表される環式ビスアミドを含むホットメルトジェットインク組成物に係る。“C1-C75”とう用語は、R基が少なくとも1個から約75個までの炭素を含有することを意味する。環式ビスアミド以外に、本発明のホットメルトインクは、画像形成成分、例えば、顔料または染料を含む。組成物は、好ましくは、相変化印刷のために有用であり、したがって、好ましくは、水を含まない、すなわち、非水性である。
【0020】
もう1つの態様では、本発明は、構造(IV):
【0021】
【化2】

【0022】
で表されるジアミンと、式R1-COOHで表されるモノカルボン酸とを含み、式中、nは、0または1〜10の整数であり、mは、シクロペンチル環またはシクロヘキシル環を生ずるように0または1であり、R1は、C1-C75アルキル基である反応体を、アミド化条件下、すなわち、アミン基と酸基とからアミド結合を形成する反応条件下で、反応させる方法によって製造される組成物を提供する。本発明のこの態様にて、反応体は、さらに、(a) H2N-R2-NH2[式中、R2は、(i) 複数の-OR3基を有し、R3が、C2-C10の脂肪族ヒドロカルビルであるポリエーテル基と、(ii) C2-C36ヒドロカルビル基とから選択される];および、(b) HOOC-R4-COOH[式中、R4は、C2-C34ヒドロカルビル基である]から選択される二官能性反応体を含む。この組成物は、好ましくは、相変化インクを配合するのに有用であり、したがって、好ましくは、130℃での溶融粘度100cPs未満を有する。もう1つの態様として、本発明は、組成物を製造するアミド化プロセスを提供する。二官能性反応体は、好ましくは、反応体の少量成分であり、さもなくば、組成物の分子量は、組成物を相変化インク中で役立てるには大きすぎ、すなわち、溶融粘度および/または融点が高すぎるであろう。したがって、二官能性反応体がカルボン酸基を含む時、二官能性反応体からのカルボン酸基は、好ましくは、反応体中に存在するカルボン酸基の合計の25当量%未満を構成する。逆に、二官能性反応体がアミン基を含む時、二官能性反応体からのアミン基は、好ましくは、反応体中に存在するアミン基の合計の25当量%未満を構成する。二官能性反応体は、好ましくは、明度に寄与し、および/または、組成物の融点を低下させる。
【0023】
もう1つの態様にて、本発明は、第1および第2のビスアミドのブレンドを含み、第1のビスアミドが、構造(I):
【0024】
【化3】

【0025】
[式中、nは、0または1〜10の整数であり、mは、それぞれ、シクロペンチル環またはシクロヘキシル環を生ずるように0または1であり、Gは、アミド含有基である。]
によって示される組成物を提供する。
【0026】
その他の態様にて、本発明は、環式ビスアミドを含むホットメルトインクを、例えば、熱インクリボンを溶融することによって溶融形態にするか、または、液溜めから導き、ついで、基板上に放出する印刷方法を提供する。
【0027】
本発明のこれらおよび関連する態様は、本明細書においてさらに詳細に開示する。
発明の詳細な説明
本発明は、インク成分として有用な化合物および組成物;および、それら化合物、組成物およびインクを製造する方法;ならびに、それら化合物、組成物およびインクで印刷する方法を提供する。本発明は、環式ビスアミドを使用して、相変化印刷用のインクを配合することができることを認める。環式ビスアミドは、環式ジアミンと非環式モノカルボン酸とから製造することができる。逆に、環式ビスアミドは、環式二酸と非環式モノアミンとから製造することができる。製品の性能特性は、幾つかのさらなる二官能性反応体、例えば、二酸またはジアミンを添加することによって高められる。ビスアミドのブレンドは、ブレンドが少なくとも1つの環式ビスアミドを含む場合に、成分ビスアミドのいずれかの単独よりもより良好な性能特性を提供する。ビスアミドは、画像形成材料との組み合わせにて;および、場合によっては、その他の材料との組み合わせにて、溶融形態となり、基板に塗布されて、印刷された基板を生ずる。
【0028】
A. 環式ビスアミド
1つの態様にて、本発明は、ホットメルトインク組成物;および、ホットメルトインクを配合するのに有用な組成物であり、その組成物が、式(I):
【0029】
【化4】

【0030】
[式中、nは、0または1〜10の整数であり、mは、それぞれ、環がシクロペンチル環またはシクロヘキシル環となるように0または1であり、Gは、アミド含有基、好ましくは、-NH-C(O)-R、-C(O)-NH-Rおよび-C(O)-NR2(ここで、Rは、C1-C75アルキル基である)から選択される。]
で表される環式ビスアミドを含む組成物を提供する。環式ビスアミド以外に、本発明のホットメルトインクは、画像形成成分を含む。相変化印刷は、溶融形態に至るまで固体インクに加熱を課し、ついで、溶融されたインクを基板に塗布し、それから、インクを冷却し、固体形に戻す。したがって、加熱されるインク組成物は、好ましくは、いずれの揮発性材料、例えば、水、および溶融されたインクが基板に塗布される前に保持される温度より低い沸点を有するその他の材料をも含有しない。かくして、組成物は、好ましくは、組成物が溶融形態の間、組成物がほとんどまたは全く蒸発しない点で非揮発性である。1つの非揮発性組成物は、非水性である。
【0031】
1つの実施態様にて、ビスアミドが、シクロペンチル環を含み、かつ、式(II):
【0032】
【化5】

【0033】
を有するように、mは、ゼロである。
もう1つの実施態様にて、ビスアミドが、シクロヘキシル環を含み、かつ、式(III):
【0034】
【化6】

【0035】
を有するように、mは、1である。
式(I)で表される化合物にて、基-(CH2)n-Gは、シクロペンチル環またはシクロヘキシル環の結合を二分するように示される。この表記は、基-(CH2)n-Gがまだ-(CH2)n-G基に直接結合されていないいずれかの環炭素に結合しうることを示すことを意味する。かくして、1つの実施態様にて、ビスアミドは、1,2-二置換されたシクロペンタンであるのに対し、他方、別個の実施態様にては、ビスアミドは、1,3-二置換されたシクロペンタンであり、それぞれ、構造(IIa)および(IIb)にて示される。
【0036】
【化7】

【0037】
同様に、シクロヘキシル環は、まだ-(CH2)n-G基に直接結合されていないいずれかの環炭素に結合した基-(CH2)n-Gを有することができる。かくして、1つの実施態様にて、ビスアミドは、構造(IIIa)によって示されるような1,2-二置換されたシクロヘキシルビスアミドであり、別個の実施態様にて、ビスアミドは、構造(IIIb)によって示されるような1,3-二置換されたシクロヘキシルビスアミドであるのに対し、もう1つの別個の実施態様にては、ビスアミドは、構造(IIIc)によって示されるような1,3-二置換されたシクロヘキシルビスアミドである。
【0038】
【化8】

【0039】
構造(I)、(II)、(IIa)、(IIb)、(III)、(IIIa)、(IIIb)および(IIIc)の各々にて、nは、包括的に、ゼロまたは1〜10から選択される整数であるのがよい。本発明は、これら8つの構造の各々について、具体的な各構造のnの両方の例について、nが0である別個の実施態様を提供する。その他の別個の実施態様にて、本発明は、これら8つの構造の各々について、構造中の1つの-(CH2)n-G基に対して、nが0であり、構造中のその他の-(CH2)n-G基に対して、nが1〜10から選択されることをもたらす。例えば、本発明は、これら8つの構造の各々について、構造中の1つの-(CH2)n-G基に対して、nが0であり、構造中のその他の-(CH2)n-G基に対して、nが1である実施態様を提供する。
【0040】
構造(I)、(II)、(IIa)、(IIb)、(III)、(IIIa)、(IIIb)および(IIIc)の各々について、、nが、各存在について0または1〜10のいずれかであることとは無関係に、Gで示される基は、アミド官能性を含む。アミド含有基の例としては、-NH-C(O)-R、-C(O)-NH-Rおよび-C(O)-NR2(ここで、Rは、各存在にて独立にC1-C75アルキル基である)が挙げられる。1つの実施態様にて、Gは、各存在にて、-NH-C(O)-Rである。1つの実施態様にて、Gは、少なくとも1つの存在にて、-NH-C(O)-Rである。1つの実施態様にて、Gは、各存在にて、-C(O)-NH-Rである。1つの実施態様にて、Gは、少なくとも1つの存在にて、-C(O)-NH-Rである。1つの実施態様にて、Gは、各存在にて、-C(O)-NR2である。1つの実施態様にて、Gは、少なくとも1つの存在にて、-C(O)-NR2である。
【0041】
“C1-C75アルキル基”という用語は、少なくとも1個〜約75個の炭素原子を有するアルキル基を称す。本明細書で使用する場合、“アルキル基”とは、飽和または不飽和、直鎖または分岐、炭化水素鎖を称す。独立に、種々の実施態様にて、アルキル基は、ゼロの分岐(すなわち、直鎖または線形アルキル基である)、1つの分岐、2つの分岐または2より多い分岐を有する。
【0042】
本発明では、以下の基準の各々を使用して、アルキル基を特性決定(characterize)し、これらの各基準が構造(I)、(II)、(IIa)、(IIb)、(III)、(IIIa)、(IIIb)および(IIIc)の各々にあてはまることが規定される:Rは、C1-C30であり;Rは、C1-C25であり;Rは、C1-C20であり;Rは、C1-C15であり;Rは、C1-C10であり;Rは、C2-C35であり;Rは、C2-C30であり;Rは、C2-C25であり;Rは、C2-C20であり;Rは、C2-C15であり;Rは、C2-C10であり;Rは、C5-C35であり;Rは、C5-C30であり;Rは、C5-C25であり;Rは、C5-C20であり;Rは、C5-C15であり;Rは、C5-C10であり;Rは、C8-C35であり;Rは、C8-C30であり;Rは、C8-C25であり;Rは、C8-C20であり;Rは、C8-C15であり;Rは、C8-C10であり;Rは、C10-C35であり;Rは、C10-C30であり;Rは、C10-C25であり;Rは、C10-C20であり;Rは、C10-C15であり;Rは、C15-C35であり;Rは、C15-C30であり;Rは、C15-C25であり;Rは、C15-C20である。これらの数の範囲の各々について、1つの実施態様にて、アルキル基は、直鎖である。これらの数の範囲の各々について、1つの実施態様にて、アルキル基は、1個の分岐点を有する。これらの数の範囲の各々について、1つの実施態様にて、Rは、各存在にて、同一の構造である。これらの数の範囲の各々について、1つの実施態様にて、Rは、各存在にて、異なる構造である。
【0043】
2つの-(CH2)n-G基は、環の同一の面または反対の面に結合していてもよい。換言すれば、これらは、相対的に”cis”配置にて、または、”trans”配置にて、存在してもよい。1つの実施態様にて、本発明の組成物中に存在するビスアミド化合物は、異性体混合物であり、すなわち、cisおよびtrans異性体が混合状態である。もう1つの実施態様にて、ビスアミド化合物は、異性体の混合物ではなく、すなわち、cisは、transに混合されておらず、transもcisに混合されていない。1つの実施態様にて、環式ビスアミドは、cis配置を有し、かつ、trans配置との混合状態ではない。もう1つの実施態様にて、環式ビスアミドは、trans配置を有し、かつ、cis配置との混合状態ではない。
【0044】
B. 環式ビスアミドの特性
ホットメルトインクにて有用であるためには、環式ビスアミドを含む本発明の組成物は、典型的には、室温で固体であり、かつ、溶融されたインクを基板に塗布するために使用される印刷装置の操作温度より低い融点を有する必要がある。環式ビスアミドは、好ましくは、それがべとつくことなく、かつ、その形状をたるませることなく容易に取り扱いうるように、約50℃より高い軟化点を有する。環式ビスアミド(または1つ以上の環式ビスアミドを含有する組成物)の軟化点が約50℃より低くなる時、化合物または組成物は、貯蔵または輸送の間に体験するように高温に暴露される時、溶融されるかおよび/または粘着性となるかもしれない。本発明の種々の実施態様にて、環式ビスアミドおよび/または環式ビスアミドを含む組成物は、融点50〜175℃か、60〜175℃か、70〜175℃か、80〜175℃か、90〜175℃か、100〜175℃か、50〜150℃か、60〜150℃か、70〜150℃か、80〜150℃か、90〜150℃か、100〜150℃か、50〜130℃か、60〜130℃か、70〜130℃か、80〜130℃か、90〜130℃かまたは100〜130℃を有する。融点は、例えば、Mettler-Toledo International,Inc.(CH-8606 Greifensee,Switzerland;http//www.mt.com)によりそれらのModel FP83HT Dropping Point Cellとして市販されている滴点装置によって測定することができる。環式ビスアミドの融点は、一部、環式ビスアミドのR基の同一性を変化させることによって、変化させることができる。組成物の融点は、また、以下に考察するように、少量の二官能性反応体を加えることによって低下させることができる。
【0045】
環式ビスアミドおよび環式ビスアミドを含む組成物は、好ましくは、ニートの形にて130℃で測定する時、溶融粘度約500センチポアーズ(cPまたはcPs)未満を有する。概して、商業的に許容可能な大部分のホットメルトジェットインクは、130℃で測定する時の粘度約100cPs未満を有し、多くは、粘度約50cPs未満を有する。したがって、環式ビスアミドおよび環式ビスアミドを含む組成物についての相対的に低い溶融粘度は、概して、好ましい。本発明の種々の実施態様にて、環式ビスアミドおよび環式ビスアミドを含む組成物は、130℃で測定する時、溶融粘度500cPs未満か、400cPs未満か、300cPs未満か、200cPs未満か、100cPs未満か、90cPs未満か、80cPs未満か、70cPs未満か、60cPs未満か、50cPs未満か、40cPs未満か、30cPs未満か、または、20cPs未満を有する。溶融粘度は、便宜上、Brookfield Engineering Laboratories(Middleboro,MA;http//www.brookfieldengineering.com)製のModel RVTD Digital Viscometerを使用し、測定することができる。環式ビスアミド(または環式ビスアミドを含む組成物)の溶融粘度は、75cPsよりもはるかに高く、環式ビスアミドを添加したインクは、インクの粘度を約50cPsよりも低くするために、典型的には、非常に低粘度の成分、例えば、ポリエーテルを含有させる必要性があるであろう。環式ビスアミドの溶融粘度は、一部、環式ビスアミドのR基の同一性を変化させることによって、変化させることができる。
【0046】
環式ビスアミドの“感触(feel)”および“硬度”は、ビスアミドが首尾よくホットメルトインクに配合されるための重要なパラメータである。環式ビスアミドは、それが、例えば、ジュロメーターによる変形に耐え、かつ、それが、曲げ応力下での変形に耐える点で、好ましくは、“硬質”および“脆性”である。また、それは、好ましくは、ワックス様の感触を有し、すなわち、それは、低い摩擦係数を有する。これらの特性は、経験によって容易に観測されるが、しかし、2つ以上の環式ビスアミドの間の特性における微妙な相違を測定するために機器類を使用することができる。
【0047】
環式ビスアミドは、好ましくは、半透明から透明の範囲の外観を有する。また、この特性は、経験によって容易に観測されるが、しかし、2つ以上の環式ビスアミドの間の外観における微妙な相違を測定するために機器類を使用することができる。1つの態様にて、環式ビスアミドは、全く曇りのない透明である。しかし、黒色のホットメルトインク、特に熱転写リボンインクは、商業的に望ましく、かくして、着色された環式ビスアミド、例えば、琥珀色または曇ったビスアミドも、また、有用である。
【0048】
相変化インクは、印刷された材料がトラックまたは鉄道によって熱天候に輸送される時体験されるような室温またはなお幾分高い温度で、好ましくは、非粘着性である。かくして、環式ビスアミドおよび/または環式ビスアミドを含有する組成物は、同条件下で、好ましくは、非粘着性である。非粘着性環式ビスアミドは、本明細書に開示する本発明に従い製造することができる。
【0049】
C. インク組成物および特性
本発明のもう1つの態様は、画像形成成分と、上記したような環式ビスアミドを含むホットメルトインク組成物である。画像形成成分は、いずれかの手段により検出または観測することのできる材料である。着色剤は、好ましい画像形成成分であり、着色剤は、ヒトの眼によりまたは光学特性読取(OCR)装置により目視検出することができる。染料および顔料の両方とも好適な着色剤であり、本発明のホットメルトインクにて使用するのに適した個々の染料および顔料の包括的なリストは、米国特許Nos.5,286,288および5,122,187の両方に記載されており、これら2つの特許の開示は、それらの全体にて本明細書に組み込む。あるいは、画像形成成分は、適当なリーダー(reader)によってスキャンすることのできる磁性材料;または、光の特定の波長に暴露すると検出することのできる蛍光材料であるのがよい。
【0050】
ビスアミドは、典型的には、ホットメルトインク組成物の約0.5〜約97重量%、好ましくは、インク組成物の約80〜97重量%を構成する。画像形成成分は、典型的には、ホットメルトインク組成物の約0.1〜3重量%、好ましくは、約0.3〜2重量%を構成する。種々の態様にて、式(I)で表される環式ビスアミドは、組成物の合計重量の少なくとも10wt%か、少なくとも20wt%か、少なくとも30wt%か、少なくとも40wt%か、少なくとも50wt%か、少なくとも60wt%か、少なくとも70wt%かまたは少なくとも80wt%を構成する。
【0051】
環式ビスアミドは、インクの非着色成分の全てまたは一部を構成するのがよい。環式ビスアミドがインクの非着色成分の一部のみである時、その他の成分は、最終インクおよび印刷される基板において所望の個々の特性に依存して選択される。例えば、ホットメルトインクを連続ジェットインク印刷にて使用する時、そのインクは、電解質を含有してもよい。電解質を含有する時、ホットメルトインクは、電荷を帯びるようにすることができ、帯電されたホットメルトインクの液滴は、帯電されたインク粒子が通過する必要のある静電界の調節により、印刷するための基板かまたはリサイクルするための溝のいずれかに誘導することができる。本発明のホットメルトインク組成物に適した電解質は、例えば、米国特許No.5,286,288にて開示されているように無機塩である。電解質が無機塩である時、電解質溶媒和および解離化合物は、’288特許にも開示されているように、好ましくは、ホットメルトインク組成物中に存在する。
【0052】
本発明のホットメルトインク組成物中に存在することのできるその他の成分としては、炭化水素、エステル、アミドワックス、腐食抑制剤、殺生物剤、可塑剤、粘着付与剤、界面活性剤、分散剤、抗酸化剤、レオロジー改質剤およびUV安定剤の1つ以上が挙げられる。先に記載したように、揮発性溶剤、例えば、沸点150℃未満を有する溶剤は、好ましくは、相変化インクに存在しないのがよい。
【0053】
1つの態様にて、本発明は、本明細書に記載した環式ビスアミドと組み合わせたモノアミドを含む組成物を提供する。モノアミドと環式ビスアミドとの組み合わせは、環式ビスアミド単独よりも低い溶融粘度(すなわち、組成物が溶融する特定の温度で、より低い粘度)を有する組成物を提供することができる。低い粘度は、それが、例えば、組成物中の環式ビスアミドのより大きい負荷を許容するので、概して、望ましい。また、幾つかの例にて、低い粘度は、プリントヘッドからの組成物の放出を促進する。
【0054】
モノアミドの例としては、式R1-CO-NH-R2で表され、R1およびR2の各々が、約10〜30個の炭素を有する炭化水素である化合物が挙げられるが、それらに限定されるものではない。以下に記載するカルボン酸は、例えば、アミンと反応して、モノアミドを形成することができる。モノアミドの例としては、ステアリルステアラミド、オクタデカンアミド、ベヘニルベネナミド;および、Witco Chemical CompanyによりKENAMIDE商標の下に製造されている製品が挙げられる。モノアミドは、あるいは、例えば、米国特許5,902,84に記載されているようなヒドロキシ官能性モノアミドであってもよい。典型的には、ビスアミド対モノアミドの重量比は、10:1〜1:10の範囲であり、最適値は、融点および溶融粘度ならびにその他の関連因子にの観点から所期の目的に基づき、当業者であれば、容易に決定することができるであろう。
【0055】
相変化インクは、印刷された材料がトラックまたは鉄道によって熱天候に輸送される時体験されるような室温またはなお幾分高い温度で、好ましくは、非粘着性である。本発明のジェットインクが慣用的な印刷装置によりジェットインク印刷に使用される時、そのインクは、典型的には、融点約40℃〜約150℃、好ましくは、約60℃〜約140℃、さらに好ましくは、約80℃〜約130℃を有する。インクの融点は、Mettler-Toledo International,Inc.(CH-8606 Greifensee,Switzerland;http//www.mt.com)によりそれらのModel FP83HT Dropping Point Cellとして市販されている滴点装置によって測定することができる。
【0056】
D. 環式ビスアミドの製造
環式ビスアミドは、反応体を一緒に反応させることによって製造することができる。環式ビスアミドは、2つのアミド基を含有するので、ビスアミドを形成する便利な方法は、アミンをカルボン酸と反応させることである。例えば、各例におけるGが、-NH-C(O)-Rである時、環式ビスアミドは、構造(IV):
【0057】
【化9】

【0058】
で表される環式ジアミンを構造R-COOHで表されるカルボン酸と反応させることによって製造することができる。あるいは、各例におけるGが、-C(O)-NH-Rまたは-C(O)-NR2である時、環式ビスアミドは、構造(V):
【0059】
【化10】

【0060】
で表される環式二酸を構造R-NH2またはR-NH-Rで表されるモノアミンと反応させることによって製造することができる。
式R-COOHで表されるモノカルボン酸(本明細書にてR1-COOHとも称す)は、1〜約75個の炭素を含有する。1つの実施態様にて、R基は、飽和であり、すなわち、それは、いずれの二重結合も三重結合も含有しない。先に記載したように、R(またはR1)は、種々の実施態様にて、C1-C30;C1-C25;C1-C20;C1-C15;C1-C10;C2-C35;C2-C30;C2-C25;C2-C20;C2-C15;C2-C10;C5-C35;C5-C30;C5-C25;C5-C20;C5-C15;C5-C10;C8-C35;C8-C30;C8-C25;C8-C20;C8-C15;C8-C10;C10-C35;C10-C30;C10-C25;C10-C20;C10-C15;C15-C35;C15-C30;C15-C25;またはC15-C20である。
【0061】
式R-COOH(およびR1-COOH)で表されるモノカルボン酸の例としては、ステアリン酸(C18)、1-エイコサン酸(C20)、1-ドコサン酸(C22,ベヘン酸としても公知)、ドトリアコンタノン酸(C32)、テトラトリアコンタン酸(C34)、ペンタトリアコンタン酸(C35)、テトラコンタン酸(C40)、テトラアコンタン酸(C44)、ドペンタアコンタン酸(C54)、テトラヘキサアコンタン酸(C64)、ドヘキサアコンタン酸(C72)等であるが、これらに限定されない。これらのモノカルボン酸は、多くの市販供給元、例えば、Aldrich Chemical(Milwaukee,WI;www.sigma-aldrich com)から入手可能である。
【0062】
もう1つの適したモノカルボン酸は、Baker-Petrolite(Sugar Land,Texas;www.bakerhughes.com/bapt/;division of Baker-Hughes;www.bakerhughes.com)によって、それらのUNICIDTM酸として販売されている、酸化された(具体的には、カルボキシル末端)ポリエチレン材料である。UNICIDTM酸は、十分に飽和された直鎖カルボン酸であり、C24-C50の範囲の平均炭素鎖長を有する。UNICIDTM酸についての酸価は、60〜115で変化する。
【0063】
なおもう1つの適したモノカルボン酸は、高分子量のGuerbetアルコールを酸化することによって製造されるα-分岐カルボン酸である。このような製品は、Jarchem Industries Inc.(Newark,New Jersey;www.jarchem.com)からそれらのJARICTM酸として入手可能である。JARICTMI-36酸が本発明について適したモノカルボン酸である。
【0064】
少量の、いわゆる、助酸(co-acid)、すなわち、R-COOHの基準に合致しないモノカルボン酸を、環式ビスアミドを製造するために使用することができる。例えば、助酸は、芳香族環を有してもよい。助酸に関して、“少量”とは、助酸によって寄与される環式ビスアミドを製造するために使用されるモノカルボン酸当量の50%未満、好ましくは、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満を意味し、本質的には、助酸は、使用されない。かくして、モノカルボン酸R-COOHは、反応体のうちカルボン酸含有分子により存在するカルボン酸の当量に基づき、好ましくは、環式ビスアミドの製造に使用されるモノカルボン酸反応体の大半を提供し、好ましくは、少なくとも70%か、少なくとも80%か、少なくとも90%かまたは少なくとも95%寄与するか;または、モノカルボン酸反応体の本質的に全てを提供する。
【0065】
以下は、mが1である式(IV)で表されるジアミンの例である:1,2-ジアミノシクロヘキサン;1,3-ジアミノシクロヘキサン;1,4-ジアミノシクロヘキサン;1-アミノ-2-メチルアミノシクロヘキサン;1-アミノ-3-メチルアミノシクロヘキサン;1-アミノ-4-メチルアミノシクロヘキサン;1-アミノ-2-エチルアミノシクロヘキサン;1-アミノ-3-エチルアミノシクロヘキサン;1-アミノ-4-エチルアミノシクロヘキサン。
【0066】
例えば、ジアミンは、構造:
【0067】
【化11】

【0068】
を有する1,2-ジアミノシクロヘキサン(DACH)であってもよく、この物質は、例えば、Aldrich,Milwaukee,WI.USAから市販されている。本発明の1つの態様にて、ビスアミド含有組成物は、DACHをモノカルボン酸と反応させることによって製造され、酸価1〜20とアミン価1〜20、好ましくは、それぞれ、1〜10と1〜10を有する組成物を与える。組成物は、好ましくは、融点100〜150℃と140℃での溶融粘度5〜25cPsとを有する。
【0069】
以下は、式(IV)で表され、mが0であるジアミンの例である:1,2-ジアミノシクロペンタン;1,3-ジアミノシクロペンタン;1-アミノ-2-メチルアミノシクロペンタン;1-アミノ-3-メチルアミノシクロペンタン;1-アミノ-2-エチルアミノシクロペンタン;1-アミノ-3-エチルアミノシクロペンタン。
【0070】
例えば、ジアミンは、構造:
【0071】
【化12】

【0072】
を有する1-アミノ-2-メチルアミノシクロペンタンであってもよく、この物質は、AMCPA(アミノメチルシクロペンチルアミン)としても公知であり、例えば、Du Pont De Nemours,Wilminton,DE,USAから入手可能である。本発明の1つの態様にて、ビスアミド含有組成物は、AMCPAをモノカルボン酸と反応させることによって製造され、酸価1〜20とアミン価1〜20、好ましくは、それぞれ、1〜10と1〜10を有する組成物を与える。組成物は、好ましくは、融点100〜150℃と140℃での溶融粘度5〜25cPsとを有する。種々の態様にて、モノカルボン酸は、C1-C100酸か、C5-C50酸か、C10-C30酸か、C10-C26酸か、または、C12-C24酸である。かくして、本発明は、AMCPAから製造されるビスアミドおよび、種々の態様にて、これらモノカルボン酸を提供する。
【0073】
以下は、式(V)で表され、mが1である二酸の例である:1,2-ジカルボキシシクロヘキサン;1,3-ジカルボキシシクロヘキサン;1,4-ジカルボキシシクロヘキサン;;1-アミノ-2-メチルカルボキシシクロヘキサン;1-アミノ-3-メチルカルボキシシクロヘキサン;1-アミノ-4-メチルカルボキシシクロヘキサン;1-アミノ-2-エチルカルボキシシクロヘキサン;1-アミノ-3-エチルカルボキシシクロヘキサン;1-アミノ-4-エチルカルボキシシクロヘキサン。
【0074】
例えば、環式二酸は、式:
【0075】
【化13】

【0076】
を有する1,4-シクロヘキサンジカルボン酸であるのがよい。1,4-シクロヘキサンジカルボン酸は、
【0077】
【化14】

【0078】
かまたは
【0079】
【化15】

【0080】
異性体形のいずれであってもよい。いずれの異性体またはこれら異性体の任意の混合物は、本発明のポリアミドの製造に使用することができる。例えば、Eastman(Kingsport,TN;www.eastman.com)は、EASTMAN 1,4-CHDA-HPTM高純度1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を販売しており、これは、融点165℃と、(cisおよびtrans二酸の合計重量に基づき)80重量%のcis異性体の含量とを有する白色粉末であり、これを使用して、本反応のための1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を提供し得る。1,4-シクロヘキサンジカルボン酸は、また、種々の等級および純度で、Aldrich(Milwaukee,WI)から入手可能である。1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のcisoid立体異性体は、概して、transoid1,4-シクロヘキサンジカルボン酸立体異性体から形成されるポリマーと比較して、より硬い硬度を有する本発明のポリマーを提供する。
【0081】
以下は、式(V)で表され、mが0である二酸の例である:1,2-ジカルボキシシクロペンタン;1,3-ジカルボキシシクロペンタン;1-アミノ-2-メチル-カルボキシシクロペンタン;1-アミノ-3-メチルカルボキシシクロペンタン:1-アミノ-2-エチルカルボキシシクロペンタン;1-アミノ-3-エチルカルボキシシクロペンタン。
【0082】
酸/二酸およびアミン/ジアミンの反応性等価体を使用して、環式ビスアミドを製造することができる。例えば、ジエステルで二酸の幾分かまたは全てを置換することができ、ここで、“ジエステル”とは、二酸とヒドロキシル含有分子とのエステル化生成物を称する。しかし、このようなジエステルは、好ましくは、比較的揮発性のヒドロキシル含有分子から製造され、ヒドロキシル含有分子は、ジアミンのジエステルとの反応に続いて、反応容器から容易に取り出すことができる。低級アルキルジエステル、例えば、本明細書にて定義する二酸およびC1-4一価アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノール)のエステル化またはジエステル化生成物は、環式ビスアミド形成反応において二酸の幾分かまたは全ての代わりに使用することができる。二酸の酸ハロゲン化物も、同様に、二酸の幾分かまたは全ての代わりに使用することができるが、しかし、このような物質は、典型的には、二酸それ自体と比較して、はるかに高価であり、かつ、取り扱いが難しく、かくして、二酸が好ましい。このような反応性等価体も本反応にて使用することができるが、このような等価体は、所望されない反応性基を反応容器に導入することとなるので、それらの存在は、好ましくない。
【0083】
本明細書に記載するように、1つの態様では、カルボン酸は、アミンと反応させて環式ビスアミドを製造する。これら出発物質は、生ずる反応生成物の酸価が25未満、好ましくは、20未満、好ましくは、15未満、さらに好ましくは、10未満または5未満、なおさらに好ましくは、1未満である一方、アミン価が同様に、好ましくは、25未満、好ましくは、20未満、好ましくは、15未満、好ましくは、10未満、さらに好ましくは、5未満、なおさらに好ましくは、1未満であるような、化学量論および反応条件下で一緒に反応させられる。1つの態様では、酸価0.1〜10とアミン価0.1〜10とを有する環式ビスアミドを含む組成物が製造される。もう1つの態様にて、酸価1〜25とアミン価1〜25とを有する環式ビスアミドを含む組成物が製造される。反応の進行は、試料を定期的に取出し、試料の酸価を測定することによってモニターされる。酸価を測定するための技術は、当分野で周知である。例えば、ASTM D-465(1982)参照。典型的には、約200〜220℃で4〜8時間反応させると、特定の酸価およびアミン価に合致する環式ビスアミドを提供することができる。
【0084】
環式ビスアミドを製造するためには、酸とアミンとをアミド化条件下で一緒に反応させる。本明細書で使用する場合、“一緒に反応させる”とは、反応体を合わせて、反応混合物を形成することを意味する。アミド化条件とは、混合物を高温に維持して、ビスアミド形成を達成することをいう。いずれの順序の反応体の組み合わせも適当であり、加熱速度は、特に重要ではない。最終加熱温度は、約150℃〜約250℃が適当である。約150℃より低い温度では、生成物形成速度は遅くて望ましいものではなく、約250℃より高い温度では、幾つかの反応体および/または生成物の分解を生じかねず、暗着色の生成物を生ずる。
【0085】
加熱すると、アミド化反応が生ずるにつれて、水蒸気が発生するであろう。好ましくは、水蒸気は、凝縮され、それが形成されると直ちに反応混合物から除去され、かくして、反応を完了に導く。不活性ガス、例えば、窒素の緩やかな流を反応フラスコに通過させると、水蒸気の除去を促進される。あるいは、中程度の約20〜200mtorrの減圧を適用するか、または、Dean Starkトラップの使用による不活性プロセス溶剤の共沸蒸留(例えば、キシレンの共沸蒸留)により、水蒸気を除去する。
【0086】
アミド化反応をスピードアップするために、触媒を使用することもでき、これに適した触媒は、当分野で周知であり、例えば、硫酸、リン酸およびその他の無機酸;金属水酸化物およびアルコキシド、例えば、酸化錫およびチタンイソプロポキシド;および、2価の金属塩、例えば、錫塩または亜鉛塩が挙げられる。触媒が存在する時、それは、少量、例えば、反応混合物の合計質量の約5重量%未満、好ましくは、約2%未満、さらに好ましくは、反応混合物の合計質量の約1%未満使用するべきである。過剰量の触媒は、環式ビスアミドを製造するコストを高め、同時に、ホットメルトインクが置かれた環境、例えば、プリントヘッドに有害であるかもしれない残渣を後に残すことが多い。
【0087】
かくして、本発明は、種々の反応体を一緒に反応させて、反応混合物を生ずる工程を含み、これらの反応体が、モノカルボン酸またはその反応等価体とその環式ジアミン反応等価体とを含む方法によって製造される組成物を提供する。反応体の相対量および反応時間は、好ましくは、酸価およびアミン価25未満を有する生成組成物を生ずるように選択される。印刷に使用するためには、組成物は、上記考察したように、画像形成成分と混合させて置く必要がある。
【0088】
本発明に従う環式ビスアミドを製造するためには、反応体の化学量論量を制御することが重要である。反応体の化学量論量に関する以下の考察において、“当量”および“当量パーセント”という用語を使用するが、当分野にて使用されるそれらの標準的な意味を有するものとする。しかし、さらに明瞭とするために、当量とは、ジカルボン酸の1モルが2当量のカルボン酸を有し、他方、ジアミンの1モルがアミン2当量を有するというように、分子1モル量中に存在する反応性基の数を称することに留意するべきである。さらに、“二酸”は、2つのみの反応性基(ともにカルボン酸)を有し、モノカルボン酸は、1つのみの反応性基(カルボキシル基)を有し、“ジアミン”は、2つの反応性基(ともに、第1級アミン基)を有し、モノアミンは、1つの反応性基(アミン基であり、第1級または第2級であってもよい)を有し、これらは、好ましくは、反応混合物中に存在する反応性物質のみであるが、必ずしも、そうである必要はない。
【0089】
本発明に従えば、(酸または二酸からの)カルボン酸の当量が、(アミンまたはジアミンからの)アミンの当量に実質的に等しいことが好ましい。これらの条件下で、実質的に全てのカルボン酸は、最終生成物がごく少量の未反応カルボン酸基かアミン基を含有するように、実質的に全てのアミン基と反応するであろう。換言すれば、本発明の複数の化合物を含有する組成物の各酸価およびアミン価は、好ましくは、約25未満であり、さらに好ましくは、約15未満であり、さらに好ましくは、約10未満であり、なおさらに好ましくは、約5未満である。
【0090】
好ましい環式ビスアミドは、少なくとも一部透明であり、インク中の着色剤またはその他の画像形成成分の外観を妨害せず、汚損せず、覆い隠さない。さらに、好ましい環式ビスアミドは、硬質であり、オイル状ではなく、ねばねばしない。
【0091】
E. 環式ビスアミドを含むブレンドおよびそれらの調製
本発明の1つの態様にて、環式ビスアミドは、第2のビスアミドと混合され、その第2のビスアミドは、構造(I)を有する環式ビスアミドであってもまたはなくてもよい。このような組成物は、本明細書でブレンドと称する。
【0092】
このようなブレンドを調製するために、成分ビスアミドは、個別に製造され、ついで、一緒に混合される。構造(I)によって定義されない第2のビスアミドは、構造(I)の環式ビスアミドを製造するために本明細書に記載した方法と類似の方法によって製造することができる。基本的には、適当な酸およびアミン反応体を合わせ、所望される縮合反応、この場合、アミド化反応が生じて、成分ビスアミドを形成するまで加熱する。ブレンドを調製するために、成分ビスアミドは、溶融状態を達成するために混合しつつ加熱され、その結果、それらは、攪拌されて、均質な混合物を形成する。冷却すると、均質な混合物は、本発明のブレンドを形成する。ブレンドを形成するこの方法は、本発明のもう1つの態様である。
【0093】
あるいは、成分ビスアミドを製造して、溶融状態に置いてもよい。溶融されたビスアミドは、式(I)の環式ビスアミドまたはブレンドの第2のビスアミドのいずれであってもよいが、その溶融されたビスアミドに、必要とされる反応体を加えて、ブレンドのその他の成分ビスアミドを形成する。“その他の成分ビスアミド”の形成後、混合物を冷却すると、本発明のブレンドを形成する。ブレンドを形成するこの方法が、本発明のもう1つの態様である。
【0094】
もう1つの別法として、反応体の全てを反応容器に装填し、ついで、それらの反応体をアミド化反応を生じさせるのに十分な高温とする。冷却すると、本発明のブレンドが形成される。ブレンドを形成するこの方法は、本発明のもう1つの態様である。
【0095】
本発明の1つの態様では、本明細書に定義される2つの異なる環式ビスアミド、すなわち、構造(I)を有する2つの異なるビスアミドがブレンド中に存在する。例えば、構造(II)を有する環式ビスアミドと構造(III)を有するビスアミドとがブレンド中に存在してもよい。もう1つの例として、構造(II)を有する2つの異なる環式ビスアミドがブレンド中に存在してもよい。さらなる例として、構造(III)を有する2つの異なる環式ビスアミドがブレンド中に存在してもよい。これら3つの例の各々は、本発明の別個の態様である。
【0096】
これら3つの態様の各々について、本発明の1つの実施態様では、Gは、各存在にて、-NH-C(O)-Rである。この基準に合致するブレンドの調製は、便宜上、2つの異なるジアミンを使用することによって達成される。本発明の1つの態様にて、2つの異なるジアミンがブレンドを調製するために使用され、少なくとも1つのジアミンは、構造(IV)によって示される。例えば、両方のジアミンとも構造(IV)によって示すことができる。しかし、別個の実施態様では、ジアミンの1つは、構造(IV)によって示される環式ジアミンであり、もう1つのジアミンは、環式であってもなくともよいが、しかし、それは、構造(IV)によって示されない。構造(IV)によって示されないこのジアミンは、コ-ジアミン(co-diamine)と称することができる。
【0097】
コ-ジアミンの例としては、以下のものが挙げられ、本発明の別個の態様は、本発明のブレンドを調製するために、列挙したコ-ジアミンの例の各々を使用することを提供する:短鎖ジアミン、すなわち、2つのアミン基が6個以下の炭素原子を含有する脂肪族、脂環式または芳香族部分に結合するジアミンであり、“脂肪族”とは、芳香族環系の欠けている構造を有する分子部分を称し、“脂環式”とは、環構造を有する脂肪族分子部分を称し、“芳香族”とは、芳香族環構造、例えば、限定するつもりはないが、フェニルまたはナフチルを含有する分子部分を称する;分岐鎖脂肪族ジアミン、すなわち、2つのアミン基が、少なくとも1つの第2級または第3級炭素を含む飽和された非環式ヒドロカルビル基によって分離されたジアミン;エチレンジアミン(EDA);1,2-ジアミノプロパン;1,3-ジアミノプロパン;1,2-ジアミノブタン;1,4-ジアミノブタン;1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン;1,3-ジアミノペンタン;1,5-ジアミノペンタン;2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン;1,6-ヘキサンジアミン(ヘキサメチレンエチレンジアミン,HMDAとしても公知);2,2,4-トリメチルヘキサンジアミン;3-エチル-2-プロピル-1,5-ペンタンジアミン;2-メチル-1,5-ペンタンジアミン;1,7-ジアミノヘプタン;1,8-ジアミノオクタン;2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジアミン;1,9-ジアミノノナン;1,10-ジアミノデカン;1,12-ジアミノドデカン;ジアミノフェナンスレン(9,10を含む全ての異性体);ピペラジン;2-メチルピペラジン;2,7-ジアミノフルオレン;フェニレンジアミン(1,2;1,3および/または1,4異性体);4-4’-ジアミノジフェニルメタン;アダマンタンジアミン;イソホロンジアミン(a.k.a. 3-メチル-3-アミノエチル-5-ジメチル-1-アミノシクロヘキサン);m-キシレンジアミン;トリレンジアミン;キシリレンジアミン;2,4,6-トリメチル-1,3-フェニレンジアミン;メンタンジアミン(すなわち、1,8-ジアミノ-p-メンタン);2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン;ポリエーテルジアミン;ダイマージアミン;ジアミノナフタレン(1,5;1,8;および、2,3を含め、全ての異性体);4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン;および、式H2N-Ra-NH2(式中、Raは、C2-6炭化水素ジラジカルである)で表されるジアミン。
【0098】
先に記載したように、ジアミンは、ポリエーテルジアミンであってもよく、本明細書では、また、PAO(ポリアルキレンオキシ)ジアミンとも称する。ポリエーテルジアミンは、Tomah Product,Inc.,Milton,WIおよびHuntsman Chemicalから得ることができる。好適なポリエーテルジアミンは、式H2N-C(CH3)HCH2CO-(CH2C(R)HO)n -CH2C(CH3)H-NH2を有するポリ(プロピレンオキシ)ジアミン、例えば、JEFFAMINE R(上付きRは、以降、登録商標を表す) 230ジアミン(nは、1〜2であり、Rは、CH3である)、JEFFAMINE RD-400ジアミン(nは、4〜5であり、Rは、CH3である);JEFFAMINE RD-2000ジアミン(nは、約32であり、Rは、CH3である)およびXTJ-502ジアミン(以前は、JEFFAMINE R ED-2003ジアミン(nは、約41であり、Rは、Hである)であり、これらポリエーテルジアミンの各々は、Huntsman Corporation(Salt Lake City,UT,USA@huntsman.com.)から市販品の入手が可能である。もう1つの好適なジアミンは、ポリ(エチレンオキシ)-コ-プロピレンオキシ)ジアミン、例えば、HUNTSMAN XTJ-500である。もう1つの好適なジアミンは、CAS Registry No.271-79-0と化学構造H2N-CH2CH2CH2-OCH2-CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2CH2-NH2とを有するDPA-DEGである。なおもう1つの好適なジアミンは、XTJ-504(以前は、JEFFAMINE R EDR-148)であり、これは、また、CAS Registry No.929-59-9と化学構造H2N-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-NH2とを有するトリエチレングリコールジアミンとして公知である。1つの実施態様にて、ポリエーテルジアミンは、構造NH2CH (CH3)CH2O-(CH2CHR’O)x-CH2CH(CH3)NH2を有し、ここで、RおよびR’は、メチルまたはHである。Huntsmanは、また、構造H2N-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-NH2を有するそれらのXTJ-504ジアミンの表示(以前は、JEFFAMINE REDR-148ジアミン)の下でトリエチレングリコールジアミンを販売しており、これは、ポリエーテルジアミンとして使用することができる。Huntsmanからのさらなる適したポリエーテルジアミンとしては、構造H2N-C(CH3)CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2C(CH3)H-NH2を有するXTJ-511;および、構造H2N-C(CH2CH3)H-CH2-(O-C(CH2CH3)H-CH2)a-OCH2C(CH2CH3)- NH2 (式中、aは、約26である)を有するXTJ-523がある。
【0099】
前述のジアミンは、さらに以下で考察する式H2N-R2-NH2で表されるジアミンの例である。
ジアミンは、式(I)で表され、Gが、-NH-C(O)-Rである環式ビスアミドを製造するのに使用するのが便利である。しかし、式(I)で表され、Gが、-C(O)-NH-Rまたは-C(O)-NR2である環式ビスアミドの製造において、式(V)で表される二酸を出発物質として使用するのが便利である。上記したように、本発明の1つの態様では、本明細書にて定義される2つの異なる環式ビスアミド、すなわち、構造(I)を有する2つの異なるビスアミドが本発明のブレンド中に存在してもよい。例えば、構造(II)を有する環式ビスアミドと構造(III)を有するビスアミドとがブレンド中に存在してもよい。もう1つの例として、構造(II)を有する2つの異なる環式ビスアミドがブレンド中に存在してもよい。さらなる例として、構造(III)を有する2つの異なる環式ビスアミドがブレンド中に存在してもよい。これら3つの例の各々は、本発明の別個の態様である。
【0100】
これら3つの態様の各々について、本発明の1つの実施態様にて、Gは、各存在にて、-C(O)-NH-Rまたは-C(O)-NR2である。別個に、これら3つの態様の各々について、本発明の1つの実施態様にて、Gは、各存在にて、-C(O)-NH-Rである。別個に、これら3つの態様の各々について、本発明の1つの実施態様にて、Gは、各存在にて、-C(O)-NR2である。この基準に合致するブレンドの調製は、2つの異なる二酸を使用することによって達成するのが便利である。本発明の1つの態様にて、ブレンドを調製するために、2つの異なる二酸が使用され、少なくとも1つの二酸は、構造(V)によって示される。例えば、両方の二酸とも、構造(V)によって示すことができる。しかし、別個の実施態様にて、二酸の一方は、構造(V)によって示される環式二酸であり、もう一方の二酸は、環式であってもなくともよいが、しかし、それは、構造(V)によって示されない。構造(V)によって示されない二酸は、補助二酸(co-diacid)と称する。
【0101】
補助二酸の例としては、以下のものが挙げられ、本発明の別個の態様では、補助二酸として列挙する例の各々を使用して、本発明のブレンドを製造することが規定される:2つのカルボン酸基の間に直鎖C4-12の炭化水素基を有する補助二酸;2つのカルボン酸基の間に直鎖C6-8炭化水素基を有する補助二酸;1,6-ヘキサン二酸(アジピン酸)、1,7-ヘプタン二酸(ピメリン酸)、1,8-オクタン二酸(スベリン酸)、1,9-ノナン二酸(アゼライン酸)、1,10-デカン二酸(セバチン酸)、1,11-ウンデカン二酸、1,12-ドデカン二酸(1,10-デカンジカルボン酸)、1,13-トリデカン二酸(ブラシル酸)および1,14-テトラデカン二酸(1,12-ドデカンジカルボン酸)。
【0102】
本発明にて使用されるもう1つの補助二酸の例は、アクリル酸またはメタクリル酸(または、それらのエステルであり、続く加水分解工程で酸を形成する)と不飽和脂肪酸の反応生成物である。例えば、このタイプのC21二酸は、アクリル酸をC18の不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸)と反応させることによって形成することができ、反応体の間で、恐らくは、エン反応を生ずる。C21二酸の例は、Westvaco Corporation,Chemical Division Charleston Heights,South Carolinaから、それらの製品番号1550として市販品の入手が可能である。
【0103】
芳香族二酸を補助二酸として使用してもよい。本明細書で使用する“芳香族二酸”とは、2つのカルボン酸基(-COOH)またはそれらの反応性等価体(例えば、酸塩化物(-COCl)またはエステル(-COOR)と少なくとも1つの芳香族環とを有する分子を称する。フタル酸類、例えば、イソフタル酸およびテレフタル酸が、芳香族補助二酸の例である。芳香族補助二酸は、HOOC-CH2-Ar-CH2-COOH等におけるように、芳香族環に結合する脂肪族炭素を含有してもよい。芳香族補助二酸は、2つの芳香族環を含有し、これらは、1つ以上の炭素結合を介して一緒に結合していてもよく(例えば、カルボン酸置換を有するビフェニル)、または、これらは、縮合していてもよい(例えば、カルボン酸置換を有するナフタレン)。
【0104】
前述の補助二酸は、本明細書にて後述するように、式HOOC-R4-COOHを有する二酸の例である。
本発明の1つの態様にて、ブレンドは、いずれの成分ビスアミドによっても観測されない有益な特性を有する。例えば、ビスアミドブレンドでは、環式ビスアミド単独と比較して、透明度、溶融温度および融点における改善を観察することができる。かくして、本発明の1つの態様では、ブレンドは、より透明性であり、すなわち、同等の試験条件下で、2つの成分ビスアミドのいずれかのニートの形よりも高い透明度を有する。この態様の1つの実施態様では、ブレンドは、本発明の環式ビスアミドについて上記した範囲内の融点を有し、例えば、種々の実施態様にて、ブレンドの融点は、50〜175℃、好ましくは、80〜150℃、さらに好ましくは、100〜130℃である。また、ブレンドは、好ましくは、130℃で測定する時、30cPsより低い粘度を有する。
【0105】
F. その他の二官能性反応体
本発明の1つの態様では、ジアミンと一酸(monoacid)とが、本明細書に記載する環式ビスアミドまたはブレンドを製造するために使用される反応混合物中に存在する唯一の反応体である。もう1つの態様では、二酸とモノアミンとが、本明細書に記載する環式ビスアミドまたはブレンドを製造するために使用される反応混合物中に存在する唯一の反応体である。しかし、次に記載する本発明のその他の態様では、これらの特定の反応体よりも多く含有する反応混合物を使用することができる。
【0106】
本発明の1つの態様では、第2の二官能性反応体が反応体のうちに含まれていてもよい。以下の説明は、第2の二官能性反応体が二酸である場合についてのものである。しかし、本発明は、また、このように詳細に記載しないが、第2の二官能性反応体がジアミンであるという補充的な場合をも提供する。
【0107】
ビスアミドがジアミンと一酸とから製造される1つの態様にて、少量の二酸を反応混合物に加えることができる。この二酸は、上記称した“第2の二官能性反応体”である。二酸は、共存物により生ずる組成物の平均分子量を高める役割を果たし、望ましくは、同時に融点を高める。しかし、組成物の平均分子量を高めることは、また、典型的には、組成物の溶融粘度を高める効果を有し、これは、典型的には、望ましくない。したがって、二酸が反応体であるこの例では、二酸は、好ましくは、少量、反応体の合計重量の20%未満のオーダーで存在する。最も多くは、二酸によって達成される所望される効果は、二酸が、反応体の合計重量の18%未満か、16%未満か、14%未満か、12%未満か、10%未満か、8%未満か、6%未満か、4%未満か、2%未満を構成する時に達成することができ、これらの範囲は、各々、本発明の別個の実施態様である。本発明の1つの態様にて、二酸は、全く存在しない。
【0108】
同様に、ビスアミドが二酸とモノ(アミン)とから製造される時、少量のジアミンを反応混合物に加えるのがよい。このさらなる二官能性反応体は、ビスアミドを形成するための二官能性反応体に対し反応性であり、組成物の平均分子量における増加を生じ、典型的には、融点および溶融粘度における必然的な増加を伴う。
【0109】
したがって、ジアミンが反応体である例にて、二酸は、好ましくは、少量、反応体の合計重量の20%未満のオーダーで存在する。最も多くは、二酸によって達成される所望の効果は、二酸が、反応体の合計重量の18%未満か、16%未満か、14%未満か、12%未満か、10%未満か、8%未満か、6%未満か、4%未満か、2%未満を構成する時に達成することができ、これらの範囲は、各々、本発明の別個の実施態様である。本発明の1つの態様にて、二酸は、反応体のうちに全く存在しない。反応体の合計重量に基づく重量パーセントに関して二酸の存在を説明する代わりに、二酸は、当量に基づき説明することができる。ほとんどの場合、二酸によって達成される所望の効果は、二酸が反応混合物中に存在するカルボン酸の当量の20%未満のオーダーで寄与する時達成することができ、一酸は、典型的には、酸当量の80%以上を構成する。ほとんどの場合、二酸によって達成される所望の効果は、二酸が、反応混合物中に存在する合計カルボン酸当量の18%未満か、16%未満か、14%未満か、12%未満か、10%未満か、8%未満か、6%未満か、4%未満か、2%未満を構成する時に達成することができ、これら範囲は、各々、本発明の個別の実施態様である。
【0110】
第2の二官能性反応体から調製される本発明のこれら組成物は、好ましくは、環式ビスアミドおよびそれらのブレンドについて上記した特性を有する。例えば、本発明の種々の実施態様において、これら組成物は、融点50〜175℃か、60〜175℃か、70〜175℃か、80〜175℃か、90〜175℃か、100〜175℃か、50〜150℃か、60〜150℃か、70〜150℃か、80〜150℃か、90〜150℃か、100〜150℃か、100〜150℃か、50〜130℃か、60〜130℃か、70〜130℃か、80〜130℃か、90〜130℃かまたは100〜130℃を有する。独立に、これら組成物は、それらの溶融粘度を特徴とすることができ、本発明の種々の実施態様にて、組成物の溶融粘度は、130℃で測定する時、溶融粘度500cPs未満か、400cPs未満か、300cPs未満か、200cPs未満か、100cPs未満か、90cPs未満か、80cPs未満か、70cPs未満か、60cPs未満か、50cPs未満か、40cPs未満か、30cPs未満か、または、20cPs未満を有する。これら組成物は、好ましくは、半透明から透明の範囲の外観を有し、1つの態様にて、組成物は、全く曇りのない透明である。しかし、黒色ホットメルトインクが、商業的に望ましく、かく着色された組成物、例えば、琥珀色または曇った組成物もまた有用である。また、組成物は、好ましくは、印刷された材料がトラックまたは鉄道により熱天候にて輸送される時体験するかもしれない室温またはなお幾分高温で非粘着性である。
【0111】
かくして、本発明は、構造(IV):
【0112】
【化16】

【0113】
で表されるジアミンと、式R1-COOHで表される一カルボン酸とを含み、式中、nは、0または1〜10の整数であり、mは、シクロペンチル環またはシクロヘキシル環を生ずるように0または1であり、R1が、C1-C75アルキル基である反応体を、アミド化条件下、反応させる方法によって製造される組成物である。反応体は、さらに、(a) H2N-R2-NH2[式中、R2は、(i) 複数の-OR3基を有し、R3が、C2-C10脂肪族ヒドロカルビルであるポリエーテル基と、(ii) C2-C36ヒドロカルビル基とから選択される];および、(b) HOOC-R4-COOH[式中、R4は、C2-C34ヒドロカルビル基である]から選択される二官能性反応体を含み、その組成物が、130℃での溶融粘度100cPs未満を有する。二官能性反応体が式H2N-R2-NH2を有する場合には、ビスアミドのブレンドが製造される。二官能性反応体が式HOOC-R4-COOHを有する場合には、環式ビスアミドと少量のオリゴアミドとを含む組成物が製造される。
【0114】
種々の任意の実施態様では、以下の基準のいずれか1つを使用して、組成物を特徴づけるか、または、以下の基準のいずれか2つ以上を併用して、組成物を特徴づける:構造(IV)のジアミンは、1,2-ジアミノシクロヘキサンである;反応体が、HOOC-R4-COOHを含み、これが、ダイマー酸を表すか;反応体が、H2N-R2-NH2を含み、R2は、複数のOR3基を有するポリエーテル基であり、R3は、C2-C3脂肪族ヒドロカルビルである;式H2N-R2-NH2で表される二官能性反応体が、式量3,000g/mol未満を有するか、反応体が、H2N-R2-NH2を含み、R2が、C2-C36ヒドロカルビル基である;反応体が、H2N-R2-NH2を含み、H2N-R2-NH2が、構造(IV)
【0115】
【化17】

【0116】
[式中、nは、0または1〜10の整数であり、mは、シクロペンチル環またはシクロヘキシル環を生ずるように0または1であり、R1は、C1-C75アルキル基である]で表される第2の環式ジアミンを表す;反応体は、式H2N-R2-NH2(式中、R2は、(i) 複数のOR3基を有し、R3は、C2-C10脂肪族ヒドロカルビルであるポリエーテル基と、(ii) C2-C36ヒドロカルビル基とから選択される);および、式HOOC-R4-COOHで表される二官能性反応体(式中、R4は、C2-C34ヒドロカルビル基である)の両方を含むものである;式H2N-R2-NH2で表される二官能性反応体が、構造(IV):
【0117】
【化18】

【0118】
で表される第2の環式ジアミンを表し、場合に応じて式HOOC-R4-COOHで表される二官能性反応体は、ダイマー酸を表す;二官能性反応体は、カルボン酸基を含み、二官能性反応体からのカルボン酸基は、反応体中に存在するカルボン酸の合計の25当量%未満を構成する;二官能性反応体は、アミン基を含み、二官能性反応体からのアミン基は、反応体中に存在するアミン基の合計の25当量パーセント未満を構成する;組成物が、二官能性反応体なしで調製される対応する組成物よりも高い透明度を有し、すなわち、二官能性反応体を有する組成物が二官能性反応体なしで調製される対応する組成物よりもさらに透明である。ここで、第2の二官能性反応体の当量は反応混合物中にすでに反応体上に存在する同一官能基の追加の当量で置き換えるものとする。。
【0119】
G. 環式ビスアミドまたはブレンドを含むインクの調製
、(多数の二官能性反応体を使用することにより調製される)幾分高い分子量を有するブレンドおよび組成物を含め、環式ビスアミドを含有する組成物については、すでに説明した。これらの材料を使用して、ホットメルト印刷用のインクが調製される。
【0120】
本発明のホットメルトインク組成物は、概して、所望の成分を組み合わせて、混合物を形成し、混合物を、攪拌しつつ、加熱して、ホットメルトインク組成物である溶融均質組成物を形成するだけで簡単に調製することができる。約90℃〜約150℃の範囲の温度が、攪拌時間約15分〜約1時間の後、均質な組成物を達成するのに、典型的には、適切である。インクの1つの成分、例えば、環式ビスアミドを溶融して、ついで、攪拌しつつ、他の成分を加えることもまた可能である。ホットメルトインク組成物中に顔料が含まれる時、顔料のインク中への均一な分散を果たすために、成分の混合物を粉砕する必要があるかもしれない。粉砕は、ボールミルまたはアトリッター(atritor)で達成するのが適当である。
【0121】
本明細書で使用する場合、“ホットメルトインク”および“相変化インク”という用語は、室温で固体、かつ、ホットメルトインクを使用するプリンターの操作温度で液体であるインクを指す。ホットメルトインク用の典型的なプリンターは、インクを約110℃〜約130℃まで加熱する。本発明のホットメルトインクは、かくして、約75℃〜約175℃の温度で約1センチポアーズ(cP)〜約50cPの粘度を有し、さらに好ましくは、約90℃〜約150℃の温度で、約2cP〜約20cPの粘度を有し、なおさらに好ましくは、約110℃〜約130℃の温度で、粘度約5cP〜約15cPの粘度を有する。好ましい実施態様では、インク組成物は、沸点150℃未満を有する溶剤を含まない上記の環式ビスアミドを含む。
【0122】
H. 環式ビスアミドを含有するインクでの印刷
本発明のホットメルトインクは、多種多様な基板上に印刷するために使用することができ、基板は、多孔質または非多孔質であってもよい。基板の例としては、プラスチック、プラスチックラミネート、ガラス、金属、紙、木材等が挙げられる。インクは、ドロップ-オン-デマンドおよび連続インクジェットプリンターにて使用することができ、これらのプリンターは、多くの供給元から市販品の入手が可能である。
【0123】
かくして、1つの態様にて、本発明は、基板とインクとを接触させる工程を含み、そのインクが、種々の態様およびそれらの実施態様などで上記した画像形成成分と環式ビスアミドを含む印刷方法を提供する。接触工程は、例えば、溜めから基板にインクを噴射させることによって達成することができ、好適な基板は、紙およびポリエステルである。1つの態様では、インクは、130℃で測定する時、150cP未満の粘度を有する。
【0124】
相変化インクは、また、グラビアおよび凹版印刷にて使用することができる。このような印刷を相変化インクにより達成するためには、上記した相変化インクを溶融し、溶融されたインクを液溜めに貯蔵する。印刷プレートは、典型的には、相変化インクの融点とほぼ同じかそれ以上の温度に温め、ついで、溶融された相変化インクのプールと接触させる。このように、溶融された相変化インクは、本質的には、液体インクが印刷プレートに流れるように転写されるのと同様に、グラビアまたは凹版印刷プレートに転写される。
【0125】
印刷プレートは、その上に溶融された相変化インクを有し、基板と接触させて、インクを画像様に基板に転写する。基板は、典型的には、室温であり、直ちに、相変化インクの冷却を誘発し、それによって、インクは、基板に固着される。
【0126】
かくして、本発明は、環式ビスアミドを含むホットメルトインクが、例えば、熱インクリボンから溶融されることによって溶融形態にされるか、または液溜めから導かれ、ついで、基板上に放出される印刷方法を提供する。本発明のそれら以外のインクによるホットメルト印刷も当分野で公知であり、これらの印刷技術を使用して、本発明の組成物による印刷を達成することができる。
【0127】
本発明の環式ビスアミドは、また、高速プロトタイピング(prototyping)でも使用することができる。高速プロトタイピングは、CADデータ源から直接物体を製造するために使用することのできる技術群に付けられた一般的な名称である。このようなシステムは、フリーフォーム製造(FFF)、固体フリーフォーム製造(SFF)および積層製造(layered manufacturing)という概括的な名称によっても公知である。高速プロトタイピングのための一般的な方法としては、ステレオリソグラフィー、広面積インクジェット、選択的なレーザー焼結、融合析出モデリング(FDM)、シングルジェットインクジェット、三次元印刷(3DP)および積層物体製造(layred object manufacture)が挙げられる。これら方法の幾つか(例えば、インクジェット法、融合析出モデリング、3DP)は、物質の層の上部に層を生じさせることによって物体を形成する。
【0128】
例えば、FDMでは、熱可塑性フィラメントは、コイルから解かれ、押出ノズルに材料を供給する。ノズルは、プラスチックを溶融するために加熱され、溶融されたプラスチックのフローをオン-オフする機構を有する。ノズルは、水平および垂直の両方向に動かすことのできる機械的段階に取り付けられる。ノズルがテーブル上を要求されるジオメトリーで動かされると、ノズルは、溶融された熱可塑性樹脂の薄いビーズを沈着させ、各層を形成する。プラスチックは、ノズルから噴射された後直ちに硬化し、下の層と結合する。全体のシステムは、チャンバ内に収容され、チャンバは、プラスチックの融点の直下の温度に保持される。本発明の環式ビスアミドは、FDMにて使用することができる。FDM装置は、Stratasys(www.stratasys),Minneapolis,Minnesotaから入手可能である。
【0129】
インクジェット技術は、また、高速プロトタイピングでも使用されている。インクジェット高速プロトタイピングの1つのタイプは、2つのジェットを有する機械を使用する:1つのジェットは、熱可塑性構築材料を提供し、他方のジェットは、(部品の製造の間に開口を満たし支持するために)当て物様の支持材料を提供する。支持材料および構築材料の各々は、液溜め内に溶融された状態で保持され、印刷ヘッドがX-Y方式でに動くにつれて小さな液滴として分散される。各々の材料は、それらが印刷ヘッドを離れ、室温に到達した後、高速硬化する。物体が形成された後、支持材料は、溶融されるかまたは溶解される。本発明の環式ビスアミドは、構築または支持材料として使用することができる。Burlington MassachusettsのZ Corporation(www.zcorp.com)は、インクジェットおよび三次元印刷高速プロトタイピング用の幾つかの装置および材料を市販している。
【0130】
本発明の環式ビスアミドを低粘度溶融された形に形成することの容易さは、それらをプリントヘッドまたはその他の計量分配器から容易に放出可能とし、その結果、それらを周囲温度まで冷却すると、それらは、迅速に凝固される。本発明のビスアミドのこれらの特性は、それらを高速プロトタイピングにおいて非常に有用となる。
【0131】
以下の実施例は、本発明を例示する手段として記載するものであり、本発明は、それらに何等限定されるものではない。
【実施例】
【0132】
実施例
実施例1
磁気攪拌子、窒素パージおよび熱電対温度計を備えた250mLのフラスコに、テトラデカン酸(ミリスチン酸,60.0g,261meq)およびcis/trans-1,2-ジアミノシクロヘキサン(DACH,15.0g,263meq.,ともにAldrich Chemical Co.からの薬品)を装填し、220℃まで緩やかに加熱し、この温度に約6時間保持して、134.5℃で溶融し、酸価3.6、アミン価3.8および140℃での溶融粘度値12.3cPsを有する、半透明、硬質、ワックス状、脆性化合物の1,2-ジシクロヘキシレンビスミリストアミドを得た。
【0133】
実施例2
磁気攪拌子、窒素パージおよび熱電対温度計を備えた250mLのフラスコに、ヘキサデカン酸(パルミチン酸,66.1g,257meq.,Aldrich)およびcis/trans-2-アミノメチル-1-シクロペンチルアミン(AMCPA,13.4g,225meq.,DuPont)を装填し、220℃まで緩やかに加熱し、この温度に約8時間保持して、108.1℃で溶融し、酸価13.0、アミン価18.4および130℃での溶融粘度値21.3cPsを有し、半透明、硬質、ワックス状、脆性物質であるシクロペンチルビスパルミトアミドを得た。
【0134】
実施例3
ドデカン酸(ラウリル酸,70.5g,352meq.,Aldrich)、EMPOL 1008 Rダイマー酸(20.7g,72meq.,Cognis,Cincinnati,OH,USA)およびDACH(24.3g,426meq.,Aldrich)の反応器装填を使用して、実施例1および2の処理法に従い、127.9℃で溶融し、酸価4.4、アミン価5.2および130℃での溶融粘度値47.1cPsを有する透明、硬質および脆性のビスアミド(大半の生成物)-オリゴアミド(少量の生成物)混合物を得た。
【0135】
実施例4
ラウリン酸(38.0g,190meq.)、パルミチン酸(56.9g,222meq.)、PRIPOL 1009 Rダイマー酸(10.7g,37meq.,Uniqema,New Castle,DE,USA)、DACH(15.3g,206meq.)およびAMCPA(15.2g,252meq.,DuPont,Wilmington,DE,USA) の反応器装填を使用して、実施例1および2の処理法に従い、116.6℃で溶融し、酸価20.6、アミン価13.3および130℃での溶融粘度値26.7cPsを有する透明、硬質および脆性のビスアミド(大半の生成物)-オリゴアミド(少量の生成物)混合物を得た。
【0136】
実施例5
ミリスチン酸(142.7g,403meq.)、PRIPOL 1009 Rダイマー酸(20.2g,70meq.)、DACH(23.0g,403meq.)およびXTJ-504(22.4g,302meq.,Huntsman Chemicals,Houston,TX,USA)の反応器装填を使用して、実施例1および2の処理法に従い、113.3℃で溶融し、酸価4.5、アミン価5.2および130℃での溶融粘度値16.5cPsを有する透明、わずかに曇った、硬質、滑りやすく、かつ、脆性のビスアミド(大半の生成物)-オリゴアミド(少量の生成物)混合物を得た。
【0137】
実施例6
熱電対、オーバーヘッド攪拌機、窒素導入口および水除去/冷却器を備えた1リットルの4口丸底フラスコに、285.05g(酸当量)のミリスチン酸(Aldrich,95%純度);70.02gウンデシレン酸(Atofina Chemicals Inc.,97%純度)、47.23g PRIPOL 1009 R ダイマー酸(Uniqema);および、触媒および漂白剤としての1.16gの25%次亜リン酸水溶液を装填した。窒素ガスシール下、攪拌しつつ、反応器内容物を100℃まで加熱し、その時点で、84.16gの1,2-ジアミノシクロヘキサン(Aldrich,99%純度,cis-およびtrans-異性体)と21.00gのXTJ-504(Huntsman)とからなるアミン混合物を10分間かけて加えた。
【0138】
反応混合物を、ついで、200℃まで加熱し、その間、反応水を蒸留した。この温度で2時間後、酸価およびアミン価(それぞれ、18.3,8.5)を測定するために試料を取出し、2.42gの1,2-ジアミノシクロヘキサンを添加することによって、スプレッド(spread)を調節した。反応温度を、ついで、220℃まで上昇させた。合計9時間の反応後、反応混合物に、減圧(約50mbar)を5時間印加した。生成物を、ついで、注入した。樹脂は、硬質であり、本質的に、透明な固体であり、酸価4.8とアミン価4.0とを有し、融点123℃と溶融粘度21.0cP(130℃)を有した。
【0139】
本明細書に記載した公報および特許出願は、全て、各個々の公報または特許出願があたかも参照により詳細かつ個々に組み込まれているかのような程度まで参照により本明細書に組み込まれる。
【0140】
前述の記載から、本発明の詳細な実施態様を例示する目的で本明細書に記載したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更をなすことができることが理解されるであろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲による以外、何等限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成材料と、式(I):
【化1】

[式中、nは、0または1〜10の整数であり、mは、それぞれ、シクロペンチル環またはシクロヘキシル環を生ずるために0または1であり、Gは、アミド含有基である。]
で表される環式ビスアミドを含む非水性組成物。
【請求項2】
130℃での粘度100cPs未満を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
融点100〜130℃を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
酸価0.1〜10と、アミン価0.1〜10を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
環式ビスアミドが、組成物の少なくとも10重量%を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
画像形成材料が、顔料かまたは染料である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
Gが、-NH-C(O)-Rであり、Rが、各存在にて独立に選択されるC1-C75アルキル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
環式ビスアミドが、式(IIIa):
【化2】

によって示される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
nが、各存在にて0であり、Gが、各存在において-NH-C(O)-Rであり、Rが、各存在にて独立に選択されるC8-C22アルキル基である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
環式ビスアミドが、式(IIa):
【化3】

によって示される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
nが、1つの存在にて0であり、nが、1つの存在にて1であり、Gが、各存在にて-NH-C(O)-Rであり、Rが、各存在にて独立に選択されるC8-C22アルキル基である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
第2のビスアミド化合物を含み、その第2のビスアミド化合物が、式(I )によって示されない、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
第2のビスアミド化合物が、2つのアミド基間に位置するポリエーテル部分を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
構造(IV):
【化4】

で表されるジアミンと、式R1-COOHで表されるモノカルボン酸とを含み、式中、nは、0または1〜10の整数であり、mは、シクロペンチル環またはシクロヘキシル環を生ずるために0または1であり、R1が、C1-C75アルキル基である反応体を、アミド化条件下で反応させることによって製造される組成物であり、前記反応体が、さらに、(a) H2N-R2-NH2[式中、R2は、(i) 複数の-OR3-基を有し、R3が、C2-C10の脂肪族ヒドロカルビルであるポリエーテル基と、(ii) C2-C36ヒドロカルビル基とから選択される];および、(b) HOOC-R4-COOH[式中、R4は、C2-C34ヒドロカルビル基である]から選択される二官能性反応体を含み、その組成物が、130℃での溶融粘度100cPs未満を有する前記組成物。
【請求項15】
構造(IV)で表されるジアミンが、1,2-ジアミノシクロヘキサンである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
反応体が、HOOC-R4-COOHを含み、これが、ダイマー酸を表す、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
反応体が、H2N-R2-NH2を含み、式中、R2が、複数の-OR3-基を有するポリエーテルであり、R3が、C2-C3脂肪族ヒドロカルビルである、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
式H2N-R2-NH2で表される二官能性反応体が、式量3,000g/mol未満を有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
反応体が、H2N-R2-NH2を含み、R2が、C2-C36ヒドロカルビル基である、請求項14に記載の組成物。
【請求項20】
反応体が、H2N-R2-NH2を含み、H2N-R2-NH2が、構造(IV):
【化5】

[式中、nは、0または1〜10の整数であり、mは、シクロペンチル環またはシクロヘキシル環を生ずるために0または1である。]
で表される第2の環式ジアミンを表す、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
反応体が、式H2N-R2-NH2[式中、R2は、(i) 複数の-OR3-基を有し、R3は、C2-C10脂肪族ヒドロカルビルであるポリエーテル基と、(ii) C2-C36ヒドロカルビル基から選択される]で表される二官能性反応体と、式HOOC-R4-COOH[式中、R4は、C2-C34ヒドロカルビル基である]で表される二官能性反応体との両方を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項22】
式H2N-R2-NH2で表される二官能性反応体が、構造(IV):
【化6】

で表される第2の環式ジアミンを表す、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
式HOOC-R4-COOHで表される二官能性反応体が、ダイマー酸を表す、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
二官能性反応体が、カルボン酸基を含み、二官能性反応体からのカルボン酸基が、反応体中に存在するカルボン酸の合計の25当量%未満を構成する、請求項14に記載の組成物。
【請求項25】
二官能性反応体が、アミン基を含み、二官能性反応体からのアミン基が、反応体中に存在するアミン基の合計の25当量%未満を構成する、請求項14に記載の組成物。
【請求項26】
二官能性反応体なしで製造される対応する組成物よりも高い透明度を有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項27】
構造(IV):
【化7】

で表されるジアミンと、式R1-COOHで表されるモノカルボン酸とを含み、式中、nは、0または1〜10の整数であり、mは、それぞれ、シクロペンチル環またはシクロヘキシル環を生ずるために0または1であり、R1は、C1-C75アルキル基である反応体を、アミド化条件下で反応させる工程を含む方法であって、前記反応体が、さらに、(a) H2N-R2-NH2[式中、R2は、(i) 複数の-OR3-基を有し、R3は、C2-C10の脂肪族ヒドロカルビルであるポリエーテル基と、(ii) C2-C36ヒドロカルビル基とから選択される];および、(b) HOOC-R4-COOH[式中、R4は、C2-C34ヒドロカルビル基である]から選択される二官能性反応体を含み、130℃での溶融粘度100cPs未満を有する組成物を与える前記方法。
【請求項28】
組成物が、酸価1〜25と、アミン価1〜25とを有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
第1および第2のビスアミドのブレンドを含み、第1のビスアミドが、構造(I):
【化8】

[式中、nは、0または1〜10の整数であり、mは、それぞれ、シクロペンチル環またはシクロヘキシル環を生ずるために0または1であり、Gは、アミド含有基である。]
によって示される組成物。
【請求項30】
第1のビスアミドが、式(IIIa):
【化9】

によって示される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
第1のビスアミドが、1,2-ジアミノシクロヘキサンのビスアミドである、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
第2のビスアミドが、また、式(I)によって示される、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
第2のビスアミドが、式(I)によって示されない、請求項29に記載の組成物。
【請求項34】
130℃での粘度100cPs未満を有する、請求項29に記載の組成物。
【請求項35】
請求項1の溶融組成物を基板に塗布する工程を含む印刷方法。
【請求項36】
請求項14の溶融組成物を基板に塗布する工程を含む印刷方法。
【請求項37】
請求項29の溶融組成物を基板に塗布する工程を含む印刷方法。

【公表番号】特表2007−503523(P2007−503523A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533290(P2006−533290)
【出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/016010
【国際公開番号】WO2004/106442
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505333816)アリゾナ・ケミカル・カンパニー (13)
【Fターム(参考)】