説明

相対位置算出装置

【課題】自車両の他車両に対する相対位置を高精度に算出する。
【解決手段】相対位置算出装置100は、自車両の測位位置を取得する測位位置取得手段110と、他車両が取得する他車両の測位位置を他車両から受信する他車両位置受信手段122と、他車両が他車両の測位位置を取得するために利用する測位衛星を示す他車両測位利用衛星情報を他車両から受信する他車両衛星情報受信手段123と、測位位置取得手段が自車両の測位位置を取得するために利用する自車両測位利用衛星と他車両測位利用衛星とが互いに異なる場合には、測位利用衛星を一致するように変更する測位利用衛星変更手段124と、変更された自車両測位利用衛星を利用して測位位置取得手段によって取得された自車両の測位位置と他車両位置受信手段によって受信された他車両の測位位置とに基づいて、自車両の他車両に対する相対位置を算出する相対位置算出手段125とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自車両の他車両に対する相対位置を算出する相対位置算出装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の相対位置算出装置として、無線通信を利用して車両間で、GPS(Global positioning system)衛星からの電波に基づいて算出した自車両の測位位置(即ち、自車位置)を送受信し、自車両の測位位置と他車両の測位位置とに基づいて、自車両の他車両に対する相対位置を算出するものがある(例えば特許文献1及び2参照)。例えば特許文献1では、自車両と他車両とが同一のGPS衛星から測位用電波を受信する場合において、測位用電波の同期信号情報を車両間で送受信することにより、相対位置を算出する精度を高める技術が開示されている。例えば特許文献2では、他車両から受信した搬送波位相と、自車両の搬送波位相のうち、同時刻に観測されたもの同士のずれに基づいて、自車両の他車両に対する相対位置を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−43336号公報
【特許文献2】特開2009−139125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような相対位置算出装置では、自車両が測位位置を算出するために利用するGPS衛星と、他車両が測位位置を算出するために利用するGPS衛星とが互いに異なる場合、GPS衛星間で電波の伝搬特性が異なることに起因して、算出する相対位置の誤差が大きくなってしまうおそれがあるという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、自車両の他車両に対する相対位置を高精度に算出可能な相対位置算出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の相対位置算出装置は上記課題を解決するために、自車両の測位位置を取得する測位位置取得手段と、他車両が取得する前記他車両の測位位置を前記他車両から受信する他車両位置受信手段と、前記他車両が前記他車両の測位位置を取得するために利用する測位衛星である他車両測位利用衛星を示す他車両測位利用衛星情報を前記他車両から受信する他車両衛星情報受信手段と、前記測位位置取得手段が前記自車両の測位位置を取得するために利用する測位衛星である自車両測位利用衛星と前記他車両測位利用衛星とが互いに異なる場合には、前記自車両測位利用衛星を前記他車両測位利用衛星に一致するように変更する測位利用衛星変更手段と、前記測位利用衛星変更手段によって変更された前記自車両測位利用衛星を利用して前記測位位置取得手段によって取得された前記自車両の測位位置と前記他車両位置受信手段によって受信された前記他車両の測位位置とに基づいて、前記自車両の前記他車両に対する相対位置を算出する相対位置算出手段とを備える。
【0007】
本発明の相対位置算出装置によれば、その動作時には、例えばGPS受信機等を含んで構成される測位位置取得手段によって、例えばGPS衛星等の測位衛星からの電波が受信され、緯度及び経度の組み合わせとして表現される自車両の測位位置が取得される。また、自車両の周辺に存在する他車両から当該他車両の測位位置(即ち、当該他車両が例えばGPS衛星等の測位衛星からの電波に基づいて取得した当該他車両の測位位置)が、例えば車車間通信機等を含んで構成される他車両位置受信手段によって受信される。
【0008】
本発明では特に、他車両衛星情報受信手段、測位利用衛星変更手段及び相対位置算出手段を備える。
【0009】
他車両衛星情報受信手段は、例えば車車間通信機等を含んで構成され、他車両測位利用衛星を示す他車両測位利用衛星情報を他車両から受信する。他車両測位利用衛星は、他車両が当該他車両の測位位置を取得するために利用する測位衛星、即ち、他車両が当該他車両の測位位置を取得するために利用する電波を送信する測位衛星である。即ち、他車両衛星情報受信手段は、他車両測位利用衛星が例えばGPSにおける複数の測位衛星のうちいずれであるかを示す他車両測位利用衛星情報を他車両から受信する。
【0010】
測位利用衛星変更手段は、他車両衛星情報受信手段によって受信された他車両測位利用衛星情報に基づいて、自車両測位利用衛星(即ち、測位位置取得手段が自車両の測位位置を取得するために利用する測位衛星)と他車両測位利用衛星とが互いに異なる場合には、自車両測位利用衛星を他車両測位利用衛星に一致するように変更する。即ち、測位利用衛星変更手段は、自車両と他車両とで測位利用衛星(即ち、測位位置を取得するために利用する測位衛星)が共通となるように(言い換えれば、自車両と他車両とで互いに同一の測位衛星が利用されるように)、自車両測位利用衛星を変更する。
【0011】
相対位置算出手段は、測位利用衛星変更手段によって変更された自車両測位利用衛星を利用して測位位置取得手段によって取得された自車両の測位位置と他車両位置受信手段によって受信された他車両の測位位置とに基づいて、自車両の他車両に対する相対位置を算出する。ここで特に、相対位置算出手段は、測位利用衛星変更手段によって変更された自車両測位利用衛星(即ち、他車両測位利用衛星と同一の測位衛星)を利用して取得された自車両の測位位置と、他車両の測位位置とに基づいて相対位置を算出するので、仮に自車両測位利用衛星と他車両測位利用衛星とが互いに異なる場合に自車両測位利用衛星と他車両測位利用衛星とで電波の伝搬特性が異なることに起因して生じ得る、算出される相対位置の誤差を低減できる。尚、仮に自車両測位利用衛星と他車両測位利用衛星とが互いに異なる場合には、自車両測位利用衛星と他車両測位利用衛星とで電波の伝搬特性が異なるために、自車両測位利用衛星からの電波の伝搬特性に起因して自車両の測位位置に生じる誤差と、他車両測位利用衛星からの電波の伝搬特性に起因して他車両の測位位置に生じる誤差とが異なる。このため、自車両の測位位置と他車両の測位位置とに基づいて自車両の他車両に対する相対位置を算出すると、算出する相対位置の誤差が大きくなってしまうおそれがある。
【0012】
よって、本発明の相対位置算出装置によれば、自車両の他車両に対する相対位置を高精度に算出できる。
【0013】
本発明の相対位置算出装置の一態様では、前記他車両衛星情報受信手段は、前記他車両測位利用衛星情報に加えて、前記他車両が捕捉可能な測位衛星である他車両捕捉可能衛星を示す他車両捕捉可能衛星情報を前記他車両から受信し、前記測位利用衛星変更手段は、前記自車両測位利用衛星と前記他車両測位利用衛星とが互いに異なる場合において、前記自車両測位利用衛星を前記他車両測位利用衛星に一致するように変更することができないときには、前記自車両測位利用衛星を前記他車両捕捉可能衛星に一致するように変更する。
【0014】
この態様によれば、他車両衛星情報受信手段は、他車両測位利用衛星情報に加えて、他車両捕捉可能衛星を示す他車両捕捉可能衛星情報を他車両から受信する。他車両捕捉可能衛星は、例えばGPSにおける複数の測位衛星のうち、他車両が捕捉可能な(即ち他車両が電波を受信することが可能な)測位衛星であり、典型的には複数存在する。複数の他車両捕捉可能衛星には、他車両測位利用衛星が含まれる。即ち、他車両では、複数の他車両捕捉可能衛星のうち選択された一又は複数の測位衛星が測位利用衛星(即ち、他車両測位利用衛星)として設定され、該選択された測位利用衛星を利用して当該他車両の測位位置が取得される。
【0015】
この態様では特に、測位利用衛星変更手段は、自車両測位利用衛星と他車両測位利用衛星とが互いに異なる場合において、自車両測位利用衛星を他車両測位利用衛星に一致するように変更することができないときには、自車両測位利用衛星を他車両捕捉可能衛星に一致するように変更する。よって、例えば、他車両測位利用衛星が変更されることにより自車両測位利用衛星と他車両測位利用衛星とが一致する可能性(言い換えれば、自車両と他車両とで測位利用衛星を共通化できる可能性)を高めることができ、最終的には、相対位置算出手段によって自車両の他車両に対する相対位置を高精度に算出できる。
【0016】
尚、この態様において、測位利用衛星変更手段によって自車両測位利用衛星が他車両捕捉可能衛星に一致するように変更された場合に、他車両に対して、他車両測位利用衛星を該他車両捕捉可能衛星に変更すること(即ち、他車両測位利用衛星を、変更された自車両測位利用衛星に一致するように変更すること)を要求するように構成してもよい。このように構成することで、自車両測位利用衛星と他車両測位利用衛星とが一致する可能性をより一層高めることができる。よって、自車両の他車両に対する相対位置をより確実に高精度に算出できる。
【0017】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る相対位置算出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る相対位置算出装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態に係る相対位置算出装置の動作を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0020】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る相対位置算出装置について、図1から図3を参照して説明する。
【0021】
先ず、本実施形態に係る相対位置算出装置の構成について、図1を参照して説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る相対位置算出装置の構成を示すブロック図である。
【0023】
図1において、本実施形態に係る相対位置算出装置100は、車両に搭載され、自車両(即ち、当該相対位置算出装置100が搭載された車両)の他車両に対する相対位置を算出する装置である。
【0024】
相対位置算出装置100は、GPS測位部110、演算制御部120及び車車間通信部130を備えている。
【0025】
GPS測位部110は、本発明に係る「測位位置取得手段」の一例であり、GPS衛星から電波を受信して、自車両の測位位置を取得するように構成されたGPS測位装置である。尚、後に詳細に説明するが、本実施形態では、GPS測位部110は、自車両の測位位置を取得するために利用するGPS衛星(以下「自車両測位利用衛星」と適宜称する)が、後述する測位利用衛星変更部124によって変更可能に構成されている。
【0026】
演算制御部120は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備えたコンピュータとして構成されており、衛星情報生成部121、他車両位置受信部122、他車両衛星情報受信部123、測位利用衛星変更部124、相対位置算出部125及び対象車両選択部126を備えている。
【0027】
衛星情報生成部121は、GPS測位部110が自車両の測位位置を取得するために利用するGPS衛星(即ち、自車両測位利用衛星)、及びGPS測位部110が捕捉可能な(即ち、電波を受信することが可能な)GPS衛星(以下「自車両捕捉可能衛星」と適宜称する)を示す自車両測位衛星情報を生成する。自車両測位衛星情報は、後述する車車間通信部130によって他車両に送信される。
【0028】
他車両位置受信部122は、自車両の周辺に存在する他車両から、後述する車車間通信部130を介して、この他車両の測位位置(即ち、この他車両がGPS衛星からの電波に基づいて取得した当該他車両の測位位置)を受信する。
【0029】
他車両衛星情報受信部123は、他車両測位利用衛星及び他車両捕捉可能衛星を示す他車両衛星情報を、後述する車車間通信部130を介して他車両から受信する。ここで、他車両測位利用衛星とは、他車両が当該他車両の測位位置を取得するために利用するGPS衛星、即ち、他車両が当該他車両の測位位置を取得するために利用する電波を送信するGPS衛星を意味する。また、他車両捕捉可能衛星とは、GPSにおける複数のGPS衛星のうち、他車両が捕捉可能な(即ち他車両が電波を受信することが可能な)GPS衛星を意味する。他車両捕捉可能衛星は、典型的には複数存在し、複数の他車両捕捉可能衛星には、上述した他車両測位利用衛星が含まれる。即ち、他車両では、複数の他車両捕捉可能衛星のうち選択された一又は複数のGPS衛星が測位利用衛星(即ち、他車両測位利用衛星)として設定され、該選択された測位利用衛星を利用して当該他車両の測位位置が取得される。即ち、他車両衛星情報受信部123は、他車両測位利用衛星及び他車両捕捉可能衛星がGPSにおける複数のGPS衛星のうちいずれであるかを示す他車両衛星情報を他車両から車車間通信部130を介して受信する。
【0030】
測位利用衛星変更部124は、GPS測位部110が自車両の測位位置を取得するために利用するGPS衛星(即ち、自車両測位利用衛星)を変更或いは設定する。即ち、測位利用衛星変更部124は、GPS測位部110がGPSにおける複数のGPS衛星のうちいずれのGPS衛星を利用するかを決定する。具体的には、測位利用衛星変更部124は、上述した他車両衛星情報受信部123によって受信された他車両衛星情報に基づいて、自車両測位利用衛星と他車両測位利用衛星とが互いに異なる場合には、自車両測位利用衛星を他車両測位利用衛星に一致するように変更する。即ち、測位利用衛星変更部124は、自車両と他車両とで測位利用衛星(即ち、測位位置を取得するために利用する測位衛星)が共通となるように(言い換えれば、自車両と他車両とで互いに同一の測位衛星を利用するように)、自車両測位利用衛星を変更する。更に、本実施形態では、測位利用衛星変更部124は、自車両測位利用衛星と他車両測位利用衛星とが互いに異なる場合において、自車両測位利用衛星を他車両測位利用衛星に一致するように変更することができないときには、自車両測位利用衛星を他車両捕捉可能衛星に一致するように変更する。
【0031】
相対位置算出部125は、測位利用衛星変更部124によって変更された自車両測位利用衛星を利用してGPS測位部110によって取得された自車両の測位位置と他車両位置受信部122によって受信された他車両の測位位置とに基づいて、自車両の他車両に対する相対位置を算出する。相対位置算出部125は、自車両の測位位置と他車両の測位位置との差分をとることにより、自車両の他車両に対する相対位置を算出する。
【0032】
ここで本実施形態では特に、相対位置算出部125は、測位利用衛星変更部124によって変更された自車両測位利用衛星を利用して取得された自車両の測位位置と、他車両の測位位置とに基づいて相対位置を算出するので、仮に自車両測位利用衛星と他車両測位利用衛星とが互いに異なる場合に自車両測位利用衛星と他車両測位利用衛星とで電波の伝搬特性が異なることに起因して生じ得る、算出される相対位置の誤差を低減できる。
【0033】
対象車両選択部126は、相対位置算出部125によって相対位置を算出する対象となる他車両を選択する。即ち、対象車両選択部126は、自車両の周辺に複数の他車両が存在する場合には、この複数の他車両のうち一の他車両を、相対位置算出部125によって相対位置を算出する対象として選択或いは設定する。
【0034】
次に、本実施形態に係る相対位置算出装置の動作について、図2及び図3を参照して説明する。
【0035】
図2は、本実施形態に係る相対位置算出装置の動作を示すフローチャートである。図3は、本実施形態に係る相対位置算出装置の動作を説明するための概念図である。尚、図2は、本実施形態に係る相対位置算出装置による相対位置の算出処理の流れを示している。また、図3は、自車両C1に相対位置算出装置100が搭載されており、相対位置算出装置100が自車両C1の他車両C2に対する相対位置を算出する際に、測位利用衛星変更部124によって自車両測位利用衛星を変更する動作の一例を概念的に示している。
【0036】
図2及び図3において、先ず、自車両C1で捕捉可能なGPS衛星が検索され、測位が行われる(ステップS10)。即ち、先ず、自車両C1に搭載された相対位置算出装置100のGPS測位部110によって、GPSにおける複数のGPS衛星のうち捕捉可能なGPS衛星(即ち、自車両捕捉可能衛星)が複数特定される。図3に示す例では、GPS衛星STa、STb、STc、STd及びSTeの5つのGPS衛星が自車両捕捉可能衛星である。続いて、GPS測位部110によって、この特定された複数の自車両捕捉可能衛星の中から自車両測位利用衛星として複数のGPS衛星が選択される。図3に示す例では、自車両捕捉可能衛星である5つのGPS衛星STa、STb、STc、STd及びSTeのうち、GPS衛星STa、STb、STc及びSTdの4つのGPS衛星が自車両測位利用衛星である。続いて、GPS測位部110によって、自車両測位利用衛星(図3に示す例では、GPS衛星STa、STb、STc及びSTd)からの電波が受信され、自車両C1の測位位置が取得される。
【0037】
次に、車車間通信によって周辺車両から情報が取得される(ステップS20)。即ち、相対位置算出装置100(具体的には、他車両位置受信部122及び他車両衛星情報受信部123)は、自車両C1の周辺に存在する他車両(即ち、周辺車両)から、他車両の測位位置及び他車両衛星情報を、車車間通信部130を介して他車両から受信する。尚、図3に示す例では、GPS衛星STb、STc、STd、STe及びSTfの5つのGPS衛星が他車両C2の捕捉可能衛星であり、これらの捕捉可能衛星のうちGPS衛星STb、STc、STd及びSTeの4つのGPS衛星が他車両C2の測位利用衛星である。
【0038】
次に、周辺車両のうち対象車両が選択される(ステップS30)。即ち、相対位置算出装置100(具体的には、対象車両選択部126)は、周辺車両の中から相対位置算出部125によって相対位置を算出する対象となる他車両を選択する。図3に示す例では、他車両C2が相対位置算出部125によって相対位置を算出する対象となっている、即ち、複数の周辺車両のうち他車両C2が対象車両として選択されている。
【0039】
次に、自車両C1と対象車両(図3に示す例では他車両C2)とで、測位利用衛星が同じであるか否かが判定される(ステップS40)。即ち、相対位置算出装置100(具体的には、測位利用衛星変更部124)は、他車両衛星情報受信部123によって受信された他車両衛星情報に基づいて、自車両C1の測位利用衛星と対象車両の測位利用衛星とが同じであるか否かを判定する。図3に示す例では、自車両C1の測位利用衛星は、GPS衛星STa、STb、STc及びSTdであり、対象車両である他車両C2の測位利用衛星は、GPS衛星STb、STc、STd及びSTeであるので、測位利用衛星変更部124は、自車両C1の測位利用衛星と対象車両の測位利用衛星とが同じでない(具体的には、部分的に異なる)と判定する。
【0040】
自車両C1と対象車両とで、測位利用衛星が同じであると判定された場合には(ステップS40:Yes)、自車両C1の測位利用衛星はそのままとされる(ステップS50)。即ち、この場合には、測位利用衛星変更部124は、自車両C1の測位利用衛星を変更しない。続いて、自車両C1の対象車両に対する相対位置が算出される(ステップS110)。即ち、自車両測位利用衛星を利用してGPS測位部110によって取得された自車両の測位位置と他車両位置受信部122によって受信された対象車両の測位位置とに基づいて、自車両の対象車両に対する相対位置が相対位置算出部125によって算出される。ここで、この場合には(ステップS40:Yes)、自車両C1と対象車両とで測位利用衛星が同じであるので、相対位置算出部125によって相対位置を高精度に算出できる。
【0041】
一方、自車両C1と対象車両とで、測位利用衛星が同じでないと判定された場合には(ステップS40:No)、対象車両の測位利用衛星の一部を自車両C1で利用可能か否かが判定される(ステップS60)。即ち、この場合には、測位利用衛星変更部124は、対象車両の測位利用衛星のうち自車両C1の測位利用衛星とは異なるGPS衛星を自車両C1のGPS測位部110が利用可能か否か(言い換えれば、捕捉可能か否か)を判定する。図3に示す例では、対象車両である他車両C2の測位利用衛星であるGPS衛星STb、STc、STd及びSTeのうち、自車両C1の測位利用衛星であるGPS衛星STa、STb、STc及びSTdとは異なるGPS衛星であるGPS衛星STeが、自車両C1の捕捉可能衛星に含まれるか否かが測位利用衛星変更部124によって判定される。この例では、自車両C1の捕捉可能衛星は、GPS衛星STa、STb、STc、STd及びSTeであるので、測位利用衛星変更部124は、対象車両である他車両C2の測位利用衛星の一部を自車両C1で利用可能であると判定する。
【0042】
対象車両の測位利用衛星の一部を自車両C1で利用可能であると判定された場合には(ステップS60:Yes)、自車両C1の測位利用衛星が、対象車両の測位利用衛星に合うように変更される(ステップS70)。即ち、この場合には、測位利用衛星変更部124は、自車両C1の測位利用衛星を対象車両の測位利用衛星に一致するように変更する。図3に示す例では、測位利用衛星変更部124は、自車両C1の測位利用衛星であるGPS衛星STa、STb、STc及びSTdを、他車両C2の測位利用衛星であるGPS衛星STb、STc、STd及びSTeに一致するように変更する。即ち、測位利用衛星変更部124は、自車両C1の測位利用衛星であるGPS衛星STa、STb、STc及びSTdのうち、他車両C2の測位利用衛星に含まれないGPS衛星STaに代えて、自車両C1の測位利用衛星に現在含まれず他車両C2の測位利用衛星に含まれるGPS衛星STeを自車両C1の測位利用衛星に設定する。よって、この変更後の自車両C1の測位利用衛星はGPS衛星STb、STc、STd及びSTeであり、他車両C2の測位利用衛星に一致する。続いて、自車両C1の対象車両に対する相対位置が算出される(ステップS110)。即ち、測位利用衛星変更部124による変更(ステップS70)後の自車両C1の測位利用衛星を利用してGPS測位部110によって取得された自車両C1の測位位置と他車両位置受信部122によって受信された対象車両の測位位置とに基づいて、自車両C1の対象車両に対する相対位置が相対位置算出部125によって算出される。ここで、相対位置算出部125は、測位利用衛星変更部124によって変更された自車両C1の測位利用衛星(即ち、対象車両(図3に示す例では他車両C2)の測位利用衛星と同一の測位衛星)を利用して取得された自車両C1の測位位置と、対象車両の測位位置とに基づいて相対位置を算出するので、仮に自車両C1の測位利用衛星と対象車両の測位利用衛星とが互いに異なる場合に自車両C1の測位利用衛星と対象車両の測位利用衛星とで電波の伝搬特性が異なることに起因して生じ得る、算出される相対位置の誤差を低減できる。よって、相対位置算出部125によって自車両C1の対象車両に対する相対位置を高精度に算出できる。
【0043】
一方、対象車両の測位利用衛星の一部を自車両C1で利用可能でないと判定された場合には(ステップS60:No)、対象車両の捕捉可能衛星を自車両で利用可能か否かが判定される(ステップS80)。即ち、この場合には、測位利用衛星変更部124は、対象車両の捕捉可能衛星であって対象車両の測位利用衛星でないGPS衛星のうちいずれかを自車両C1のGPS測位部110が利用可能か否か(言い換えれば、捕捉可能か否か)を判定する。
【0044】
対象車両の捕捉可能衛星を自車両で利用であると判定された場合には(ステップS80:Yes)、自車両C1の測位利用衛星が、対象車両の捕捉可能衛星に合うように変更される(ステップS90)。即ち、この場合には、測位利用衛星変更部124は、自車両C1の測位利用衛星を対象車両の捕捉可能衛星に一致するように変更する。例えば、自車両C1の捕捉可能衛星がGPS衛星STa、STb、STc、STd及びSTfであり、自車両C1の測位利用衛星がGPS衛星STa、STb、STc及びSTdであり、対象車両である他車両C2の捕捉可能衛星がGPS衛星STb、STc、STd、STe及びSTfであり、対象車両である他車両C2の測位利用衛星がGPS衛星STb、STc、STd及びSTeである場合には、測位利用衛星変更部124は、対象車両である他車両C2の測位利用衛星であるGPS衛星STeが自車両C1で利用可能でないと判定する(ステップS60:No)と共に、他車両C2の捕捉可能衛星であって他車両C2の測位利用衛星でないGPS衛星STfが自車両C1で利用可能であると判定し(ステップS80:Yes)、自車両C1の測位利用衛星であるGPS衛星STa、STb、STc及びSTdのうち、他車両C2の測位利用衛星に含まれないGPS衛星STaに代えて、自車両C1の測位利用衛星に現在含まれず他車両C2の捕捉可能衛星に含まれるGPS衛星STfを自車両C1の測位利用衛星に設定する。つまり、この例の場合には、この変更後の自車両C1の測位利用衛星はGPS衛星STb、STc、STd及びSTfであり、他車両C2の捕捉可能衛星の一部に一致する。続いて、自車両C1の対象車両に対する相対位置が算出される(ステップS110)。ここで、上述したように自車両C1の測位利用衛星は対象車両の捕捉可能衛星に一致するように測位利用衛星変更部124によって変更されるので、自車両C1の測位利用衛星と対象車両の測位利用衛星とが一致する可能性(言い換えれば、自車両C1と対象車両とで測位利用衛星を共通化できる可能性)を高めることができる。よって、相対位置算出部125によって自車両C1の対象車両に対する相対位置を高精度に算出できる。
【0045】
一方、対象車両の捕捉可能衛星を自車両で利用でないと判定された場合には(ステップS80:No)、自車両C1の測位利用衛星が、対象車両の捕捉可能衛星を利用するように変更される(ステップS100)。即ち、この場合には、測位利用衛星変更部124は、自車両C1の測位利用衛星を、対象車両の捕捉可能衛星に可能な限り一致するように変更する。つまり、測位利用衛星変更部124は、自車両C1の測位利用衛星にできるだけ対象車両の捕捉可能衛星が含まれるように、自車両C1の測位利用衛星を変更する。続いて、自車両C1の対象車両に対する相対位置が算出される(ステップS110)。
【0046】
自車両C1の対象車両に対する相対位置が算出された(ステップS110)後には、再びステップS10に係る処理に戻り、周辺車両のうち相対位置が算出されていない他の他車両が対象車両として選択され(ステップS30)、ステップS40からステップS110に係る処理が繰り返される。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る相対位置算出装置100によれば、自車両の他車両に対する相対位置を高精度に算出できる。
【0048】
尚、本実施形態の第1の変形例として、相対位置算出装置100は、対象車両である他車両に対して、該他車両から受信した他車両衛星情報に基づいて自車両の測位利用衛星を変更した旨を、該他車両に対して通知するように構成されてもよい。この場合には、自車両の測位利用衛星が他車両の測位利用衛星と一致するように変更されたことにより、自車両が、自車両の該他車両に対する相対位置を算出する際の算出誤差を低減できる状態であることを該他車両に通知することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態の第2変形例として、相対位置算出装置100は、対象車両である他車両に対して、該他車両の測位利用衛星を変更することを要求するよう構成されてもよい。この場合には、自車両の測位利用衛星と該他車両の測位利用衛星とが一致する可能性をより一層高めることができる。
【0050】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う相対位置算出装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0051】
100…相対位置算出装置、110…GPS測位部、120…演算制御部、121…衛星情報生成部、122…他車両位置受信部、123…他車両衛星情報受信部、124…測位利用衛星変更部、125…相対位置算出部、126…対象車両選択部、130…車車間通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の測位位置を取得する測位位置取得手段と、
他車両が取得する前記他車両の測位位置を前記他車両から受信する他車両位置受信手段と、
前記他車両が前記他車両の測位位置を取得するために利用する測位衛星である他車両測位利用衛星を示す他車両測位利用衛星情報を前記他車両から受信する他車両衛星情報受信手段と、
前記測位位置取得手段が前記自車両の測位位置を取得するために利用する測位衛星である自車両測位利用衛星と前記他車両測位利用衛星とが互いに異なる場合には、前記自車両測位利用衛星を前記他車両測位利用衛星に一致するように変更する測位利用衛星変更手段と、
前記測位利用衛星変更手段によって変更された前記自車両測位利用衛星を利用して前記測位位置取得手段によって取得された前記自車両の測位位置と前記他車両位置受信手段によって受信された前記他車両の測位位置とに基づいて、前記自車両の前記他車両に対する相対位置を算出する相対位置算出手段と
を備えることを特徴とする相対位置算出装置。
【請求項2】
前記他車両衛星情報受信手段は、前記他車両測位利用衛星情報に加えて、前記他車両が捕捉可能な測位衛星である他車両捕捉可能衛星を示す他車両捕捉可能衛星情報を前記他車両から受信し、
前記測位利用衛星変更手段は、前記自車両測位利用衛星と前記他車両測位利用衛星とが互いに異なる場合において、前記自車両測位利用衛星を前記他車両測位利用衛星に一致するように変更することができないときには、前記自車両測位利用衛星を前記他車両捕捉可能衛星に一致するように変更する
請求項1に記載の相対位置算出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−106870(P2011−106870A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260030(P2009−260030)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】