説明

相間領域を有する重合体コア−シェルナノ粒子

重合体ナノ粒子組成物を提供する。そのナノ粒子は、コア/シェル構造からなり得、該コアと該シェルとをつなぐ相間領域を有する。重合体ナノ粒子の平均径は、約250nm未満とすることができる。相間領域の大きさ、組成及び/又は構造を変えて、得られる重合体ナノ粒子、及び該ナノ粒子が配合される組成物の望ましい物理的性質及び/又は化学的性質を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この国際的なPCT出願は、2006年7月28日に出願された米国仮特許出願第60/820,695号に対する優先権を主張するものであって、該米国仮特許出願は、本願の全体において参照されることにより組み込まれる。
【0002】
本願には、重合体ナノ粒子、その製造方法、及びその使用、例えば、天然及び合成エラストマーを含むゴム用添加剤としての使用が開示されている。例えば、重合体ナノ粒子は、相間領域によって分離されたコア領域とシェル領域とを備えることができる。
【背景技術】
【0003】
重合体ナノ粒子は、触媒作用、コンビナトリアルケミストリー、タンパク質支持体、磁石、及び光結晶を含む種々の分野で、ここ数年に亘って益々注目されるようになってきた。同様に、医学研究及び医療診断テストにおける種々の機器の校正の基準ゲージとして使用するため、ビニル芳香族(例えば、ポリスチレン)微粒子が調製されてきた。
【0004】
ナノ粒子は、ホスト組成物の全体に亘って均一に分散した個々の粒子になり得る。ナノ粒子は、大きさが単分散で、形状が均一になり得る。しかしながら、重合中のナノ粒子の大きさ、該ナノ粒子の表面特性及び/又は内部組成を制御することは、困難な場合がある。また、重合体ナノ粒子の表面組成及び/又は内部組成をより良好に制御することも望まれている。
【0005】
ゴムは、種々の重合体組成物の添加によって変性され得る。かかる重合体の添加剤は、しばしば、ゴム組成物の物理的性質を改善する。特に、かかる変性によって、成形性及び靭性が改善される場合が多い。
【0006】
バラバラの粒子は、おそらくゴム全体に亘って均一に分散して、均一なゴム組成物を与えるので、多種多様なゴムとの相溶性に優れたポリ(共役ジエン)の表面層を一部に有するナノ粒子の開発が望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、重合体ナノ粒子を提供する。一の実施態様においては、ナノ粒子がコア/シェル構造からなり得、該コアと該シェルとをつなぐ相間領域を有する。一の実施態様においては、重合体ナノ粒子の平均径が約250nm未満である。相間領域の大きさ、組成及び/又は構造を変えることによって、得られる重合体ナノ粒子及び該ナノ粒子が配合される組成物の望ましい物理的性質及び/又は化学的性質を達成し得る。
【0008】
重合体ナノ粒子を形成させる方法には、一つ又はそれ以上のナノ粒子中への複数の重合体鎖の自己集合が含まれ得る。ゴム組成物を形成できるが、ここで、上記ナノ粒子は少なくとも一つのゴムと組み合わされ、向上した引張強さ及び引裂強度の少なくとも一つを有する変性ゴム組成物が形成される。
【0009】
特に指定のない限り、本願の全体を通じて、「ビニル置換芳香族炭化水素」及び「アルケニルベンゼン」を置換可能な語句として使用する。また、「ゴム」とは、天然ゴム、及びスチレン−ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム等の当該技術分野で公知の合成エラストマーを含むゴム化合物をさす。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1a】球状の本発明のナノ粒子の一実施態様である。
【図1b】球状の本発明のナノ粒子の複数がそれらの相間領域にて互いに相互作用し結合している他の実施態様である。
【図2】紐状の本発明のナノ粒子である。
【図3】花状の本発明のナノ粒子である。
【図4】表1に示す結果を表すグラフである。
【図5】コアに向かう距離に対する物理的性質に応じて、本発明に係る重合体ナノ粒子の種々の実施態様を表すグラフである。
【図6】コアに向かう距離に対する物理的性質に応じて、本発明に係る重合体ナノ粒子の種々の実施態様を表すグラフである。
【図7】例2に従って作られた、本発明に係る相間領域をもたないナノ粒子の原子間力顕微鏡写真である。
【図8】例2に従って作られた、本発明に係る相間領域をもたないナノ粒子の他の原子間力顕微鏡写真である。
【図9】例3に従って作られた、重合体相間ナノ粒子の原子間力顕微鏡写真である。
【図10】例3に従って作られた、重合体相間ナノ粒子の他の原子間力顕微鏡写真である。
【図11】例3に従って作られた、重合体相間ナノ粒子の更なる原子間力顕微鏡写真である。
【図12】対照と例5に従う組成物とを含む、二つのゴム組成物の応力−歪み曲線を表すグラフである。
【図13】例6のゴム配合物中でのカーボンブラック粒子の分散を示す原子間力顕微鏡写真である。
【図14】ゴム配合物中での例6からの相間ナノ粒子の分散を示す原子間力顕微鏡写真である。
【図15】例6からの二つの組成物の応力−歪み曲線を表すグラフである。
【図16】例6からの二つの組成物の25℃でのtan-δ対歪み(%)を示すグラフである。
【図17】例6からの二つの組成物の25℃でのG'(Pa)対歪み(%)を示すグラフである。
【図18】例6からの二つの組成物の25℃でのG''(Pa)対歪み(%)を示すグラフである。
【図19】ゴム重合体マトリックスに分散した本発明に係る相間ナノ粒子の一の実施態様を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の記載及び下記の記載の双方は、請求する本発明の典型例で説明のためのみのものであり、本発明を制限するものでないことが理解される。論じられる個別の実施態様の組み合わせや変形は、十分に想定されるものであって、意図されるものである。本願で使用されるように、「少なくとも一つ」とは、一つ又はそれ以上を意味する。本願に使用される節の見出しは、読み手に利便性を与えるものであって、開示の範囲や請求する本発明の範囲を制限するように意図されていない。
【0012】
(ナノ粒子の構造)
コア/シェル構造は、一般に、少なくとも二つの定義された領域を有する重合体ナノ粒子をさし、ここで、一の領域(本願においてコアと称する)が他の領域(本願においてシェルと称する)によって実質的に囲まれている。コア領域及びシェル領域は、それぞれ一つ又はそれ以上の層を有していてもよい。
【0013】
重合体ナノ粒子は、該重合体ナノ粒子の二つの領域を分離してつなぐ少なくとも一つの相間領域を備える。一の実施態様においては、相間領域が、コア領域とシェル領域とを分離してつなぐ。相間領域の大きさ、組成及び/又は構造を変えることで、得られる重合体ナノ粒子及び該ナノ粒子が配合される組成物の望ましい物理的性質及び/又は化学的性質を達成することができる。一の実施態様においては、少なくとも一つの相間領域が、少なくとも一つの物理的性質の違いを持つ重合体ナノ粒子の領域を分離する。他の実施態様においては、少なくとも一つの相間領域が、少なくとも一つの化学的性質の違いを持つ重合体ナノ粒子の領域を分離する。更なる実施態様においては、少なくとも一つの相間領域が、つながっている少なくとも一つの領域と比べて異なる物理的性質及び/又は化学的性質を有する。重合体ナノ粒子領域の物理的性質としては、例えば、大きさ、ガラス転移温度、硬度又は剛性、ゴム状弾性、及び架橋密度を挙げることができる。重合体ナノ粒子領域の化学的性質としては、例えば、溶解度、極性、単量体組成、及び単量体配置を挙げることができる。相間領域は、一枚以上の層を有していてもよい。
【0014】
重合体ナノ粒子の大きさは、それらの平均径によって測定され得る。重合体ナノ粒子のコア、シェル及び少なくとも一つの相間領域は、それぞれ平均径への各領域の寄与に従う大きさを有する。相間領域の大きさは、本願において使用されるように、少なくとも一つの相間領域によって分離されつながれる二つの領域間の距離である。相間領域は、種々の大きさを有していてもよい。一の実施態様においては、相間領域が、重合体ナノ粒子の少なくとも一つの他の領域と比べて等しい大きさか又は小さい大きさになることがある。該相間領域は、かかる実施態様中「急な」、「狭い」又は「薄い」と表現できる。他の実施態様においては、相間領域が、重合体ナノ粒子の少なくとも一つの他の領域と比べて等しい大きさか又は大きい大きさになることがある。該相間領域は、かかる実施態様中「広い」又は「厚い」と表現できる。更なる実施態様においては、相間領域の大きさが、コア及びシェルの内の少なくとも一つと比べて大きい。また、他の実施態様においては、相間領域の大きさが、コア及びシェルの内の少なくとも一つと比べて小さい。また、更なる実施態様においては、相間領域の大きさが、コア及びシェルの双方と比べて小さい。更に、他の実施態様においては、相間領域の大きさが、約1ナノメートルより大きい。また、更なる実施態様においては、相間領域の大きさが、約1〜約100nmである。他の実施態様においては、相間領域の大きさが、約10〜約50nmである。
【0015】
また、他の物理的性質及び化学的性質を用いて、ナノ粒子の領域を特徴付けることができる。例えば、硬度モジュラスを用いて、領域間を区別し特徴付けることができる。一の実施態様では、シェルのモジュラスは相間領域のモジュラスより小さく、該相間領域のモジュラスはコアのモジュラスより小さい(Ms<Mi<Mc)。他の実施態様では、シェルのモジュラスは相間領域のモジュラスよりかなり小さく、該相間領域のモジュラスはコアのモジュラスより小さい(Ms<<Mi<Mc)。更なる実施態様では、シェルのモジュラスは相間領域のモジュラスより小さく、該相間領域のモジュラスはコアのモジュラスよりかなり小さい(Ms<Mi<<Mc)。他の例としては、体積分率を用いて、ナノ粒子の領域を特徴付けることができる。一の実施態様では、相間領域の体積分率がナノ粒子の約1%〜約99%である。他の実施態様では、該体積分率が約5%〜約95%である。更なる実施態様では、該体積分率が、約10%〜約80%である。更なる例としては、一つ又はそれ以上の物理的性質及び/又は化学的性質の不均質性を用いて、領域間を区別し特徴付けてもよい。一の実施態様では、領域が異なる量の剛性を有する。他の実施態様では、領域が異なるガラス転移温度を有する。更なる実施態様では、領域が異なる密度を有する。相間ナノ粒子の異質な複雑性は、ナノ粒子を含むゴム等の組成物に対して、転がり抵抗の低減や牽引力の増大等の総合的利益を提供することができる。
【0016】
図5及び6は、本発明に係る重合体ナノ粒子の種々の実施態様を表すグラフであり、ここで、コア領域とシェル領域とが、相間領域によって分離されつながれている。その横軸はコアに向かう距離を表し、コア領域の中心が軸の右で、シェル領域の端が軸の左である。縦軸は、ガラス転移温度、硬度モジュラス等の物理的性質を表し、該軸の底から頂点に向かって値が増大する。
【0017】
図5の線Aは、狭い相間領域を有する本発明に係る重合体ナノ粒子の一の実施態様を表し、ここで、コア領域の大きさはシェル領域より小さく、相間領域はその距離全体を通して直線に近い物理的性質の変化を見せる。図5の線Bは、広い相間領域を有する本発明に係る重合体ナノ粒子の他の実施態様を表し、ここで、相間領域は、コア領域の物理的性質の近くを除きほぼその全ての距離に亘って物理的性質の減少を見せ、続いてシェル領域に近づくと物理的性質のより顕著な降下を見せる。図5の線Cは、広い相間領域を有する本発明に係る重合体ナノ粒子の更なる実施態様を表し、ここで、相間領域は、その距離全体を通して直線に近い物理的性質の変化を見せる。図5の線Dは、広い相間領域を有する本発明に係る重合体ナノ粒子の更に他の実施態様を表し、ここで、相間領域は、シェル領域の物理的性質の近くを除きほぼ全ての距離で物理的性質の増加を見せ、続いてコア領域に近づくと物理的性質のより顕著な上昇を見せる。図5の線Eは、狭い相間領域を有する本発明に係る重合体ナノ粒子の更なる実施態様を表し、ここで、コア領域の大きさはシェル領域より大きく、相間領域はその距離全体を通して直線に近い物理的性質の変化を見せる。
【0018】
図6の線Aは、広い相間領域を有する本発明に係る重合体ナノ粒子の一の実施態様を表し、ここで、相間領域及びコア領域の双方がシェル領域より大きい。図6の線Bは、本発明に係る重合体ナノ粒子の他の実施態様を表し、ここで、シェル領域及び相間領域の双方がコア領域より大きい。図6の線Cは、本発明に係る重合体ナノ粒子の更なる実施態様を表し、ここで、コア及びシェルは、ほぼ同じ大きさであり、物理的性質は、コア領域内で増大し続ける。図6の線Dは、本発明に係る重合体ナノ粒子の更なる実施態様を表し、ここで、コア領域は、シェル領域及び相間領域の双方より大きく、その物理的性質は、シェル領域内で見せる増加に比べて、相間領域内で大きな増加を見せる。図6の線Eは、本発明に係る重合体ナノ粒子の更に他の実施態様を表し、ここで、コア領域は、相間領域及びシェル領域の双方より大きく、その物理的性質は、シェル領域及びコア領域内で見せる増加に比べて、相間領域内で大きな増加を見せる。
【0019】
(ナノ粒子の組成)
本発明の重合体ナノ粒子のコア、シェル及び相間領域は、重合性単量体から作ることができ、本願では、該重合性単量体を単位と称することがある。本願においては、コア領域を形成するために重合させる少なくとも一つの単量体をコア単量体と称することがある。本願においては、シェル領域を形成するために重合させる少なくとも一つの単量体をシェル単量体と称することがある。重合体ナノ粒子のコア、シェル及び少なくとも一つの相間領域は、ランダム重合体、モノブロック重合体、マルチブロック重合体等の一の重合体から形成されてもよいし、一緒に結合し又は凝集した異なる重合体から形成されていてもよい。
【0020】
単量体組成は、重合した場合に重合体ナノ粒子の領域又は層を構成する単量体の一の種類又は複数の種類をさす。一の実施態様において、シェルの単量体組成はコアの単量体組成と異なる。他の実施態様において、相間領域の単量体組成はコアの単量体組成と同一である。更なる実施態様において、相間領域の単量体組成は、コア及びシェルの内の少なくとも一つの単量体組成と異なる。更に他の実施態様において、相間領域の単量体組成は、コア及びシェルを構成する単量体から選ばれる。
【0021】
単量体配置は、重合後の領域又は層内での単量体の配列又は配置をさす。一の実施態様において、単量体配置は、領域又は層内の単量体が実質的に定義できるパターンで配置されるように繰り返している。他の実施態様において、単量体配置は、領域又は層内の単量体が実質的に定義できるパターンで配置されないようにランダムである。更なる実施態様において、単量体配置は、ブロック内の少なくとも二種類の単量体が集団で配置されるように構造化される。更に他の実施態様において、単量体配置は、領域又は層の第一端部又は側部が少なくとも第一種類の単量体を含み、該領域又は層の第二端部又は側部が第一種類の単量体と異なる第二種類の単量体を少なくとも含み、両種類の単量体を含む遷移領域が第一端部と第二端部とを分離するように、テーパー化されている。遷移領域は、繰り返し単量体単位、ランダム単量体単位又は単量体単位のブレンドを含むことができる。単量体単位のブレンドは、領域又は層の第一端部又は側部に最も近い遷移領域部分においてより高い濃度の第一種類の単量体を含み、領域又は層の第二端部又は側部に最も近い遷移領域部分においてより高い濃度の第二種類の単量体を含む。
【0022】
架橋は、重合体ナノ粒子の領域又は層中で行われ得る。架橋密度は、本願で使用されるように、重合体ナノ粒子の領域又は層中での架橋の量をさす。架橋が存在する場合、重合体ナノ粒子の領域又は層は、十分に架橋されていてもよいし、実質的に架橋されていてもよいし、部分的に架橋されていてもよい。一の実施態様においては、シェルが、少なくとも部分的に架橋される。他の実施態様においては、コアが、少なくとも部分的に架橋される。更なる実施態様においては、相間領域が、少なくとも部分的に架橋される。更に他の実施態様においては、領域の一つ又はそれ以上の重合体の中で単量体が少なくとも部分的に架橋される。また、重合体ナノ粒子の領域又は層は、種々の架橋密度を有してもよい。一の実施態様において、領域は、相対的に一定した架橋密度を有する。他の実施態様においては、領域が密度勾配を有し、ここで、該領域の密度は一の端部で大きく、他の端部で小さい。更なる実施態様においては、領域が変動する密度を有し、ここで、該領域の密度は一の端部から他の端部まで(又は一の側部から他の側部まで)さまざまである。
【0023】
重合体ナノ粒子の単量体が重合し、コア、シェル及び相間領域を形成する。単量体組成、単量体配置及び架橋密度の違いは、重合体ナノ粒子のコア、シェル及び相間領域の少なくとも一つの中に層又は領域を作ることができる。一の実施態様においては、重合体ナノ粒子の単量体が一つ又はそれ以上の重合体を形成でき、その二つ以上が集合して重合体ナノ粒子を形成する。ナノ粒子を構成する重合体は、単量体組成、単量体配置及び架橋密度の内の少なくとも一つが異なっていてもよい。他の実施態様においては、重合体ナノ粒子の単量体が一つ又はそれ以上のランダム重合体を形成でき、その二つ以上が集合して重合体ナノ粒子の少なくとも一部を形成する。更なる実施態様においては、重合体ナノ粒子の単量体が一つ又はそれ以上のマルチブロック重合体を形成でき、その二つ以上が集合して重合体ナノ粒子を形成する。マルチブロック重合体は、当該技術分野においてよく知られており、本願において使用されるように、重合した単量体の少なくとも二つのブロックを有する重合体をさす。ブロックとは、本願において使用されるように、マルチブロック重合体の一部分であって、マルチブロック重合体の他の部分と、単量体組成及び単量体配置の内の少なくとも一つが異なる部分である。
【0024】
一の実施態様においては、コア及びシェルがそれぞれ一つ又はそれ以上の重合体を含むことができる。他の実施態様においては、コア及びシェルがそれぞれ二つ以上のマルチブロック重合体の一つ又はそれ以上のブロックを含むことができる。更なる実施態様においては、コアがマルチブロック重合体の第一ブロックを含み、シェルがマルチブロック重合体の第二ブロックを含み、相間領域がマルチブロック重合体のコアとシェルとを分離する部分を含む。また、他の実施態様においては、コアがマルチブロック重合体の第一ブロックを含み、シェルがマルチブロック重合体の第二ブロック及び第三ブロックを含み、相間領域が第二ブロック又はマルチブロック重合体のコアとシェルとを分離する部分を含むことができる。また、更なる実施態様においては、コアがマルチブロック重合体の第一ブロックを含み、シェルがマルチブロック重合体の第三ブロックを含み、相間領域がコアとシェルとを分離するマルチブロック重合体の第二ブロックを含む。他の実施態様においては、相間領域がマルチブロック重合体からなるシェルと他の重合体からなるコアとをつなぐ。また、更なる実施態様においては、相間領域が、重合体からなるシェルと、異なる重合体からなるコアとをつなぐ。
【0025】
一の実施態様においては、重合体ナノ粒子が、約20〜約5000の重合体を含む。他の実施態様においては、重合体ナノ粒子が、約50〜約1000の重合体を含む。また他の実施態様においては、重合体ナノ粒子が、約200の重合体を含むことができる。
【0026】
重合体ナノ粒子は、当該技術分野において現在又は今後知られる重合性の単量体のいずれから作ってもよい。一の実施態様においては、単量体がアルケニルベンゼン単位である。他の実施態様においては、単量体が共役ジエン単位である。更なる実施態様においては、単量体がアクリレートである。また、他の実施態様においては、単量体がジアクリレートである。また、更なる実施態様においては、単量体がトリアクリレートである。更に、他の実施態様においては、単量体が、アニオン重合によって重合し得る化学構造である。
【0027】
アルケニルベンゼン単位又はビニル置換芳香族炭化水素単量体には、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1-α-メチルビニルナフタレン、2-α-メチルビニルナフタレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン及びt-ブトキシスチレン、並びにそれらのアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール及びアラルキル誘導体(ここで、結合炭化水素中の炭素原子の総数は一般に18個以下である)、並びにジビニル又はトリビニル置換芳香族炭化水素が含まれ得る。一の実施態様においては、アルケニルベンゼン単位がスチレンである。
【0028】
共役ジエン単量体には、例えば、C4−C8共役ジエン単量体が含まれる。他の実施態様においては、共役ジエン単量体が1,3-ブタジエンである。更なる実施態様においては、共役ジエン単量体がイソプレンである。また、他の実施態様においては、共役ジエン単量体が1,3-ペンタジエンである。
【0029】
アクリレート単量体には、例えば、メチルアクリレート及びフェニルアクリレートが含まれる。
【0030】
ジアクリレート単量体には、例えば、下記に示す単量体が含まれる。
【化1】





【0031】
トリアクリレート単量体には、例えば、下記に示す単量体が含まれる。
【化2】



【0032】
重合体ナノ粒子の大きさは、特定の望ましい直径に制御できる。ナノ粒子の直径は、本願において使用されるように、平均径を意味する。一の実施態様においては、ナノ粒子の直径が約250nm未満である。他の実施態様においては、ナノ粒子の直径が約100nm未満である。更なる実施態様においては、ナノ粒子の直径が約75nm未満である。また、他の実施態様においては、ナノ粒子の直径が約50nm未満である。重合体ナノ粒子の大きさを制御する方法には、例えば、重合温度を制御する方法、溶媒の極性を制御する方法、単量体の濃度を制御する方法、重合のために存在し得る単量体の比を制御する方法(二つ以上の単量体が重合のために存在する場合)、及び重合に使用する一つ又は複数の単量体の種類を制御する方法が含まれる。一の実施態様においては、約170℃より低い重合温度によって、直径が約500nmより小さい重合体ナノ粒子を得ることができる。他の実施態様においては、室温程度、即ち約70°Fの温度によって、直径が約500nmより小さい重合体ナノ粒子を得ることができる。更なる実施態様においては、室温程度より低い温度、即ち約70°Fより低い温度によって、直径が約500nmより小さい重合体ナノ粒子を得ることができる。
【0033】
本発明の重合体ナノ粒子は、少なくとも約1,000の分子量(Mw)を有することができる。重合体ナノ粒子のMwは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、サイズ排除クロマトグラフィーとも知られる)を用いて測定できる。しかしながら、GPCの測定値は、線状の基準に基づく場合があり、歪められた分子量又は下方に記録された分子量をもたらすことがある。そのようなものとして、重合体ナノ粒子のMwは、線状の基準を用いたGPCによって記録されるものと比べて、実際には、約10オーダー程度高いか又はそれ以上高いことがある。加えて、GPCで測定するには、重合体ナノ粒子の直径が大き過ぎる場合がある。それらの制限にもかかわらず、本出願において述べられるMw値の測定は、線状の基準を用いたGPCによって取られたものである。一の実施態様においては、測定技術にかかわらず、重合体ナノ粒子のMwが約10,000〜約300,000,000である。他の実施態様においては、測定技術にかかわらず、重合体ナノ粒子のMwが約500,000〜約1,500,000である。
【0034】
また、重合体ナノ粒子の分散度又はサイズ分布を制御することもできる。本願において使用されるように、分散度は、Mnに対するMwの比によって表され、約1の比率は実質的に単分散である。一の実施態様においては、ナノ粒子の分散度が約1.3未満である。他の実施態様においては、ナノ粒子の分散度が約1.1未満である。更なる実施態様においては、ナノ粒子の分散度が約1.05である。また、他の実施態様においては、ナノ粒子の分散度が約1である。
【0035】
また、重合体ナノ粒子の形状を制御することもできる。一の実施態様においては、図1aに示すように、ナノ粒子が球状又は実質的に球状である。他の実施態様においては、図2に示すように、ナノ粒子が紐状の形状を有する。更なる実施態様においては、図3に示すように、ナノ粒子が花状の形状を有する。他の実施態様においては、ナノ粒子が楕円形状を有する。
【0036】
ナノ粒子の形状は、種々の方法、例えば、(1)重合体形成中の単量体の濃度を変える方法、(2)コア又はシェル中にマルチブロック重合体の少なくとも三つのブロック又は少なくとも二つの重合体を含有させる方法、及び(3)重合体ナノ粒子を作るのに使用する重合体の分子量を変える方法によって制御できる。一の実施態様において、コアは、式S−B−S[式中、Sはスチレンブロックを示し、Bはブタジエンブロックを表す]によって表されるトリブロック重合体を含むことができる。該実施態様の一つでは、トリブロック重合体は、より大きなマルチブロック重合体の一部分である。他の実施態様においては、分子量が、コア単量体に対するシェル単量体の比率を増大させることで変わり、楕円形状を有するナノ粒子を作ることができる。
【0037】
また、ナノ粒子の凝集特性を調整し、特定の性質を得ることができる。一の実施態様において、ナノ粒子は、相対的に離散的な性質を保有し、それらの間で化学的又は物理的な相互作用又は関係がほとんどあるいは全くない。他の実施態様において、ナノ粒子は、例えば、図1bに示されるように、それらの相間領域にて互いに相互作用するか又はつながることができる。特に、図1bは、ナノ粒子がスチレン/ジビニルベンゼンのコア、相対的に狭いポリスチレンの相間領域及びブラシ状のブタジエン/スチレンのシェルからなる実施態様を表す。かかる実施態様は、例えば、相互作用するナノ粒子がゴム組成物中に配合される場合、予想以上に向上した物理的性質を導くことができる。更なる実施態様においては、ナノ粒子がそれらのシェル領域にて互いに相互作用するか又はつながることができる。また、図1bは、それらのシェル領域にてナノ粒子間の相互作用の一部を表す。
【0038】
(重合方法及びナノ粒子の製造方法)
重合体ナノ粒子のコア、シェル及び相間領域は、公知の重合方法又は今後開発される重合方法のいずれか又は複合的な形式によって形成できる。一の実施態様においては、かかる重合方法は、領域自体及び/又は重合ナノ粒子を形成する前に、特定の領域のための一つの単量体又は複数の単量体のクラスターを形成することができる。他の実施態様においては、重合方法が、後で重合体ナノ粒子のシェル領域を形成することになる重合した単量体のクラスターを形成する。
【0039】
一の実施態様においては、重合体ナノ粒子の領域が乳化重合を用いて形成される。例えば、相間ナノ粒子の形成は、多段階プロセスによって行われ、最初に、ポリスチレン、ジビニルベンゼン及びエチルビニルベンゼンの通常のマイクロエマルション共重合によって、架橋されたナノサイズ小球を合成する。次に、更なる工程では、予め形成されたコア粒子上に、フリーラジカル後の溶液重合によって、スチレン−ブタジエンゴム、単量体、又は種々の組成及び分子量の単量体混合物を表面グラフト化することができ、ここで、重合室中でゴム、単量体又は単量体混合物を測定する工程を含むことができる。得られるナノ粒子は、相間領域、特にテーパー構造(実質的に全てがスチレンから実質的に全てがブタジエンに遷移する等)を持つ相間領域を有するであろう。
【0040】
他の実施態様においては、重合体ナノ粒子の領域が、分散重合を用いて形成される。更なる実施態様においては、重合体ナノ粒子の領域が、溶液重合を用いて形成される。更に他の実施態様においては、重合体ナノ粒子が、重合したシェル領域又はシェルクラスターの存在下、少なくとも一つのコア単量体の重合によって形成される。また、更なる実施態様においては、重合体ナノ粒子が、重合したシェル領域又はシェルクラスターの存在下、少なくとも一つのコア単量体と少なくとも一つの架橋剤との共重合によって形成される。
【0041】
一つ又はそれ以上の重合工程を使用し、重合体ナノ粒子を形成できる。加えて、一つ又はそれ以上の重合工程を使用し、コア、シェル及び相間領域のそれぞれを形成することもできる。各重合の時間及び温度は、コア、シェル、相間領域又は重合体ナノ粒子の特定の要求によって調整できる。
【0042】
分散重合用の溶媒として、一つ又はそれ以上の炭化水素を使用することができる。かかる炭化水素には、例えば、脂肪族炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等)及び脂環式炭化水素(シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、シクロオクタン、シクロペンタン、シクロヘプタン、シクロノナン、シクロデカン等)が含まれ得る。本願において確認された単量体及び溶媒については、一つ又は複数の選択溶媒中での選択単量体の重合に有利な温度を維持することにより、分散重合によってナノ粒子を形成できる。一の実施態様においては、温度が約-80℃〜約250℃である。他の実施態様においては、温度が約0℃〜約150℃である。更なる実施態様においては、温度が約50℃〜約80℃である。以下、詳細に説明するように、単量体の選択、温度及び溶媒の相互の影響は、コア、シェル及び相間領域を含む一つ又は複数の重合体の形成、最終的には所望の重合体ナノ粒子の形成を容易にすることができる。
【0043】
一の実施態様においては、本発明に係る重合体ナノ粒子の調製に使用されるジブロック重合体が、ヘキサン等の炭化水素溶媒中、ビニル芳香族炭化水素単量体と共役ジエン単量体との重合によって形成できる。かかる実施態様において、ジブロック重合体は、溶媒に溶解し、共役ジエン単量体からなり且つシェルを表すブロックになり得る第一ブロックと、溶媒にほとんど溶解せず、ビニル置換芳香族炭化水素単量体からなり且つコアを表すブロックになり得る第二ブロックとを含有することができる。他の実施態様において、ビニル置換芳香族炭化水素単量体は、溶媒に不溶であってもよい。
【0044】
他の実施態様においては、本発明に係る重合体ナノ粒子の調製に使用されるジブロック重合体が、当該技術分野において知られる分散重合の形式にて、リビングアニオン重合によって形成できる。一の実施態様において、リビングアニオン重合は、一つ若しくは複数のシェル単量体及び/又は既に完全に重合した相間領域の少なくとも一部への一つ又は複数のコア単量体(相間領域の少なくとも一部を作り得る)の付加を含む。他の実施態様において、リビングアニオン重合は、完全に重合した共役ジエン単量体へのビニル置換芳香族炭化水素単量体の付加を含む。他の実施態様においては、一つ又は複数のコア単量体の混合物が、一つ又は複数のシェル単量体とのリビングアニオン重合を受け、相間領域の少なくとも一部を作ることができる。
【0045】
更なる実施態様においては、本発明に係る重合体ナノ粒子の調製に使用されるジブロック重合体が、炭化水素溶媒中、共役ジエン単量体とビニル置換芳香族炭化水素単量体の混合物のリビングアニオン共重合によって形成できる。かかる実施態様においては、リビングアニオン共重合が、例えば、エーテル、第三級アミン及び金属アルコキシド等の極性添加剤の存在下で行われ得る。他のかかる実施態様においては、リビングアニオン共重合が、分離して構成される重合体ブロックの重合を達成できる極性添加剤(例えば、エーテル、第三級アミン、金属アルコキシド等)の不在下で、例えば、ランダム化効果を作り出すか又は1,2-ミクロ構造の含量に影響を及ぼすことにより、行われ得る。かかる条件下で、実質的に全ての共役ジエン単量体が最初に重合してジブロック重合体の第一ブロックを形成し、続いて両方の単量体が重合して相間領域を形成でき、その後に実質的に全てのビニル置換芳香族炭化水素単量体が重合してジブロック重合体の第二ブロックを形成する。
【0046】
また、他の実施態様においては、リビングアニオン重合又は共重合を使用するかどうかにかかわらず、最初にシェルが重合して形成され、続いて相間領域を形成し、その後にコアを形成できる。かかる実施態様においては、重合している重合体のリビング末端が、架橋を容易にするため、コア重合体又はブロックの末端に位置付けられる。また、かかる実施態様においては、シェルが、重合した共役ジエン単量体を含むことができ、コアが、重合したビニル置換芳香族炭化水素単量体を含むことができる。
【0047】
当該技術分野において知られる少なくとも一つのアニオン開始剤の添加によって、リビングアニオン重合又はリビングアニオン共重合を開始し、コア、シェル及び相間領域の内の少なくとも一つを構成する少なくとも一つの単量体を重合し又は共重合することができる。アニオン開始剤の混合物を使用してもよい。アニオン開始剤は、単量体100グラム当たり約0.01〜約60ミリモルの範囲の量で使用できる。一の実施態様においては、少なくとも一つのアニオン開始剤が、式R(Li)x[式中、RはC1−C20ヒドロカルビルラジカルを表し、xは1〜4の整数である]を有する有機リチウム触媒である。また、RはC2−C8ヒドロカルビルラジカルを表し得る。R基には、例えば、脂肪族ラジカル及び脂環式ラジカルが含まれ得る。また、R基には、例えば、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル及びt-ブチル等の第一級基、第二級基及び第三級基が含まれ得る。
【0048】
例えば、本発明に使用できるリチウム開始剤には、モノリチウム開始剤及びマルチリチウム開始剤が含まれ得る。一の実施態様においては、少なくとも一つのアニオン開始剤が、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、アリールリチウム(例えば、フェニルリチウム、トリルリチウム等)、アルケニルリチウム(例えば、ビニルリチウム、プロペニルリチウム等)、アルキレンリチウム、リチウムジアルキルアミン、リチウムジアルキルホスフィン、リチウムアルキルアリールホスフィン及びリチウムジアリールホスフィンである。一の実施態様においては、少なくとも一つのアニオン開始剤がn-ブチルリチウムである。他の実施態様においては、少なくとも一つのアニオン開始剤がsec-ブチルリチウムである。更なる実施態様においては、少なくとも一つのアニオン開始剤がtert-ブチルリチウムである。また、他の実施態様においては、少なくとも一つのアニオン開始剤が、p-トリルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、4-ブチルシクロヘキシルリチウム及び4-シクロヘキシルブチルリチウムの一つから選ばれる。また、更なる実施態様においては、少なくとも一つのアニオン開始剤が、アルキレンジリチウム(テトラメチレンジリチウム、ペンタメチレンジリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、デカメチレンジリチウム等)、アリーレンジリチウム(1,3-ジリチオベンゼン等)、1,3,5-トリリチオシクロヘキサン、1,2,5-トリリチオナフタレン、1,3,5,8-テトラリチオデカン及び1,2,3,5-テトラリチオ-4-ヘキシルアントラセンから選択されるジリチウム開始剤である。更に、他の実施態様においては、少なくとも一つのアニオン開始剤がトリリチウム開始剤である。リチウム開始剤の混合物を使用してもよい。
【0049】
重合体ナノ粒子の集合は、重合条件の固有の態様として行われてもよいし、その後の第二の工程であってもよい。一の実施態様においては、コア、シェル及び相間領域の形成並びに重合体ナノ粒子の集合が、同一の環境又は反応器中で行われる。かかる実施態様の一例では、コア、シェル及び相間領域の構築は、コア、シェル及び相間領域を構成する一つ若しくは複数の単量体、一つ若しくは複数のブロック、又は一つ若しくは複数の重合体の少なくとも一つの熱力学的性質が重合体ナノ粒子の集合を引き起こす環境又は反応器中で行われ得る。かかる実施態様の他の例では、コア、シェル及び相間領域の構築は、コア、シェル及び相間領域を構成する一つ若しくは複数の単量体、ブロック又は重合体の少なくとも一つの熱力学的性質がコア、シェル及び相間領域の形成と重合体ナノ粒子の集合とを引き起こす環境又は反応器中で行われ得る。かかる実施態様の更なる例では、コア、シェル及び相間領域が形成され、次いで溶媒及び温度の少なくとも一つの変化によってコア、シェル及び相間領域を構成するブロック又は重合体の少なくとも一つの溶解度が変わり、重合体ナノ粒子の形成を引き起こす。また、かかる実施態様の他の例では、コア、シェル及び相間領域が形成され、次いで溶媒及び温度の少なくとも一つの変化によって、コア、シェル及び相間領域を形成するための一つ若しくは複数の単量体、ブロック又は重合体の少なくとも一つの溶解度が変わり、重合体ナノ粒子の形成を引き起こす。他の実施態様においては、コア、シェル及び相間領域のいずれかの形成が、重合体ナノ粒子の形成と別の環境で行われる。
【0050】
一の実施態様においては、少なくとも二つのマルチブロック重合体、例えば、リビングアニオン重合又は共重合や、他の重合方法によって形成された、コア、シェル及び相間領域を表す三つのブロックを有するマルチブロック重合体が、凝集して自己集合し、熱力学で動かされるミセル状の構造を形成することができる。ミセル状構造を形成させるための重合体の自己集合の例示的な実施態様は、一般に、米国特許出願公開第2006−0084722A1号に記載されており、本願の全体において参照されることにより組み込まれる。かかる実施態様の一つでは、ミセルが、該ミセルの中心に向けられたコア領域と、相間領域と、それらから伸びるシェル領域とを備える。他の実施態様においては、ミセルを形成するのに、追加の炭化水素溶媒の投入を利用してもよいし、必要とされることがある。更なる実施態様においては、ミセルを形成するのに、重合温度の低減を利用してもよいし、必要とされることがある。実施態様においては、ミセル形成の温度は、約50℃〜約80℃である。また、他の実施態様においては、ミセルを形成した後、共役ジエン単量体、ビニル置換芳香族炭化水素単量体等の追加の単量体又は架橋剤を重合混合物に添加し、コア形成を続けたり、コアを架橋することができる。
【0051】
また、同様な重合体相間ナノ粒子が、例えば、フリーラジカル重合、リビングカチオン重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)、縮合重合、付加重合及び乳化重合等の種々の重合技術の一つによって形成できる。
【0052】
少なくとも一つのランダム化剤を用いて、コア、シェル及び相間領域の少なくとも一つの単量体配置を制御することができる。一の実施態様においては、ランダム化剤が、ランダム重合体や、部分的にランダム又はマルチブロック重合体のブロックを作るのに役立つ。他の実施態様においては、ランダム化剤が、重合体中又はマルチブロック重合体のブロック中の共役ジエン単位の1,2-ミクロ構造を制御する。このような一の実施態様においては、共役ジエン単位の1,2-ミクロ構造が、約5%〜約95%である。このような他の実施態様においては、共役ジエン単位の1,2-ミクロ構造が、約35%より大きい。更なる実施態様においては、ランダム化剤が、重合体中又はマルチブロック重合体のブロック中の共役ジエン単位の1,2-ミクロ構造の百分率を増大させる。また、他の実施態様においては、ランダム化剤が、一つ又はそれ以上の単量体の反応速度を増大させる。また、更なる実施態様においては、ランダム化剤が、二つ以上の単量体の反応性比を均等化する。更に、他の実施態様においては、ランダム化剤が、重合体中又はマルチブロック重合体のブロック中の共役ジエン単位の1,2-ミクロ構造を制御し、且つ、ランダム重合体又はマルチブロック重合体のブロックを作るのに役立つ。他の実施態様において、ランダム化剤は、完全にランダム又は実質的にランダムな重合体を与えるのに必要とされる量より少ない量で提供される。
【0053】
ランダム化剤には、例えば、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジエチルエーテル、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン、p-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジ-n-オクチルエーテル、アニソール、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル、ジメチルエチルアミン、ビス-オキサラニルプロパン、トリ-n-プロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N-エチルピペリジン、N-メチル-N-エチルアニリン、N-メチルモルホリン、テトラメチレンジアミン、オリゴマー状オキソラニルプロパン(OOPs)(2,2-ビス(2'-テトラヒドロフラニル)プロパン等)、2,2-ビス-(4-メチルジオキサン)、ビス(2-オキソラニル)メタン、1,1-ビス(2-オキソラニル)エタン、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン、2,2-ビス(5-メチル-2-オキソラニル)プロパン、2,2-ビス-(3,4,5-トリメチル-2-オキソラニル)プロパン、2,5-ビス(2-オキソラニル-2-プロピル)オキソラン、オクタメチルペルヒドロシクロテトラフルフリレン、2,2-ビス(2-オキソラニル)ブタン及びビステトラヒドロフリルプロパンが含まれ得る。一の実施態様においては、ランダム化剤がOOPsである。OOPsは、線状オキソラニルオリゴマー及び環状オキソラニルオリゴマーから選ばれる一つ又はそれ以上のオリゴマーからなり得る。一つ又はそれ以上のランダム化剤の混合物を使用してもよい。
【0054】
一の実施態様において、単量体に対するランダム化剤の比は、単量体100グラム当たり約0〜約3000ミリモルの範囲で変えることができる。他の実施態様において、該比は、単量体100グラム当たり約0.01ミリモル〜約400ミリモルの調整剤である。更なる実施態様においては、ランダム化剤の量が、重合に使用される開始剤の量に従って変わる。また、他の実施態様においては、使用時に、開始剤の量に対する比率によってランダム化剤の量を決定する。更に、他の実施態様においては、ランダム化剤対開始剤の比が、約0.5:1〜約5:1である。また、更なる実施態様においては、ランダム化剤対開始剤の比が、約1:1〜約3:1である。また、更なる実施態様においては、ランダム化剤対開始剤の比が、約3:1である。
【0055】
(ナノ粒子の官能化)
重合体ナノ粒子を官能化してもよい。重合体ナノ粒子の形成前、形成中又は形成後に、コア、シェル及び相間領域を構成する重合体を官能化することができる。コア、シェル及び相間領域を構成する一の重合体若しくは複数の重合体又は重合体ナノ粒子自体の官能化は、重合体若しくはナノ粒子に一つ若しくはそれ以上の重合体鎖を、重合体若しくはナノ粒子に一つ若しくはそれ以上の官能基を、又はナノ粒子に一つ若しくはそれ以上の層を加えることができる。一の実施態様においては、ジブロック重合体を官能化し、トリブロック重合体を形成できる。他の実施態様においては、重合体ナノ粒子を官能化し、シェルに追加の層を加えることができる。更なる実施態様において、官能化は、適切な重合開始剤の使用によって行われる。また、他の実施態様において、官能化は、コア、シェル及び相間領域の少なくとも一つを構成する重合体を形成するための官能化単量体の使用によって行われる。
【0056】
重合体ナノ粒子は、任意に水素化できる。一の実施態様においては、重合体ナノ粒子を水素化する。他の実施態様においては、重合体ナノ粒子のシェルを水素化する。当該技術分野において知られる水素化技術が、任意の水素化工程に使用できる。
【0057】
(ナノ粒子領域内での架橋)
重合体ナノ粒子領域を構成する領域内での架橋は、少なくとも一つの架橋剤の添加によって達成できる。一の実施態様においては、少なくとも一つの架橋剤が、コアを構成する少なくとも一つの単量体と共重合する。他の実施態様においては、コア、シェル及び相間領域の少なくとも一つを構成する重合体の形成後に、少なくとも一つの架橋剤を添加することで、コア、シェル及び相間領域の少なくとも一つの架橋をもたらす。また、他の実施態様においては、重合体ナノ粒子の集合後に、少なくとも一つの架橋剤を重合させることで、ナノ粒子のシェルに結合された重合した架橋剤をもたらし、その結果、重合した架橋剤はナノ粒子の一部となる。
【0058】
少なくとも一つの架橋剤は、それ自身に架橋し及び/又は重合体ナノ粒子を構成する少なくとも一つの単量体に架橋することで知られる任意の薬剤とすることができる。一の実施態様においては、コア中の少なくとも一つの単量体への親和性を有する架橋剤が選択される。かかる実施態様の一例では、架橋剤が、形成されるミセルの中心に存在する単量体単位及び開始剤残基との相溶性、並びにミセルの外側部分に存在する分散溶媒及び単量体単位との相対的な不相溶性によって、該ミセルの中心へ移動する。他の実施態様においては、架橋剤が、ミセルのコア中の重合体又は単量体単位を架橋し、重合体ナノ粒子のコアを形成する。
【0059】
一の実施態様においては、架橋剤が多官能性であり、即ち、該架橋剤は、互いに及び/又は重合体ナノ粒子を構成する少なくとも一つの単量体と反応することが可能な少なくとも二つの官能基を備える。一の実施態様においては、架橋剤が、二官能性であり、少なくとも一つのコア単量体と反応することが可能である。他の実施態様においては、架橋剤が、ジビニル置換芳香族炭化水素である。更なる実施態様においては、架橋剤がトリビニル置換芳香族炭化水素である。
【0060】
一の実施態様においては、架橋剤が、マルチアクリレート、例えば、ジアクリレート、トリアクリレート又はテトラアクリレートである。他の実施態様においては、架橋剤が、ジビニルベンゼン(DVB)である。DVBは、異なる化学構造の混合物を含有してもよい。市販のDVBは、一般に、少なくとも二つのDVBの異性体、即ち、オルト-ジビニルベンゼン(「o-DVB」)、メタ-ジビニルベンゼン(「m-DVB」)及びパラ-ジビニルベンゼン(「p-DVB」)の少なくとも二つを含有する。加えて、市販のジビニルベンゼンは、エチルビニルベンゼン(「EVB」)をo-EVB、m-EVB及びp-EVBの内の少なくとも一つの形で含有していてもよい。更に、市販のジビニルベンゼンは、ジエチルベンゼン(「DEB」)をo-DEB、m-DEB及びp-DEBの内の少なくとも一つの形で含有していてもよい。かかる市販のDVBは、Aldrich社から購入したもの等、「工業銘柄」として称される。一の実施態様においては、架橋剤の各種異性体の使用により、相間領域の形成に役立つ。他の実施態様において、架橋剤の各種異性体の使用により、ブロックの架橋密度に影響を与える。更なる実施態様においては、架橋剤の各種異性体の使用により、コアブロックの架橋密度に影響を与える。
【0061】
(ゴム組成物中のナノ粒子)
重合体ナノ粒子を形成した後、それらは、ゴム組成物の物理的特性を向上させるため、少なくとも一つのゴムと共にブレンドできる。一の実施態様においては、重合体ナノ粒子が、ゴム組成物の全体に亘って均一に分散させることが可能な離散粒子になり得、物理的特性の均一性をもたらす。更に、ポリ(共役ジエン)を含むシェル又は表面層を有する重合体ナノ粒子、特にビニル変性ポリ(共役ジエン)は、該シェル又は表面層がペンダントビニル基のアクセシビリティによって、ゴムマトリックスと結合可能な場合があるため、有利なことがある。図19は、ゴムマトリックス重合体中に分散した、本発明に係るナノ粒子の形態の一の実施態様を示す。
【0062】
また、重合体マトリックス中のナノ粒子間での相互作用又は凝集は、該マトリックスの一つ又はそれ以上の有利な物理的特性、例えば、ゴム組成物の低歪みモジュラスの増加を増大できる。一の実施態様において、重合体ナノ粒子は、重合体マトリックス中での分散後、互いに相互作用し、結合し得る。他の実施態様において、相互間で相互作用する重合体ナノ粒子は、例えば、図1bに示すように、重合体マトリックス中でブレンドするときに分離して分散し、その後、再び相互に結合し得る。一の実施態様においては、マトリックス重合体に加えられた相互作用するナノ粒子が、せん断力又は混合力のため、分離して分散できる。他の実施態様においては、マトリックス重合体に加えられた相互作用するナノ粒子が、相対的に高い混合温度、例えば、約160℃のため、分離して分散できる。更なる実施態様においては、マトリックス重合体と混合される際に分離した相互作用するナノ粒子が、例えば、約165℃でのアニーリングのとき相互作用を再び始める。
【0063】
重合体ナノ粒子は、限定されるものではないが、ランダムスチレン/ブタジエン共重合体、ブタジエンゴム、ポリ(イソプレン)、ニトリルゴム、ポリウレタン、ブチルゴム及びエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含む各種ゴムを変性するのに適している場合がある。一の実施態様においては、本発明に係る球状の重合体ナノ粒子が、他の球状でない共重合体に対して少なくとも約1%の向上した引張強さ及び/又は引裂強度を実証できる。他の実施態様においては、本発明に係る球状の重合体ナノ粒子が、他の球状でない共重合体に対して少なくとも約10%の向上した引張強さ及び/又は引裂強度を実証できる。更なる実施態様においては、本発明に係る球状の重合体ナノ粒子が、他の球状でない共重合体に対して少なくとも約30%の向上した引張強さ及び/又は引裂強度を実証できる。また、他の実施態様においては、ナノ粒子を、カーボンブラック等のゴム組成物中の種々の充填剤と併用してもよいし、部分的に置換し又は完全に置換して使用してもよい。また、ゴムに使用する場合、重合体ナノ粒子は、向上した退色特性及び/又は向上した牽引力を実証できる。加えて、重合体ナノ粒子は、ナノ複合材料等の他の無機材料用のホストとして使用できる。ゴムは、当該技術分野において知られる技術を用いて増量できる。
【0064】
ナノ粒子含有ゴム組成物の動的性質を測定できる。純貯蔵弾性率(G')及びせん断損失弾性率(G'')は、特定の温度で又は温度範囲に亘って通常の技術により測定できる。G'の高い値は、組成物が良好なコーナリング特性を有することを示す場合がある。G''の高い値は、組成物が増大したウェット牽引力及び/又はドライ牽引力を有することを示す場合がある。Tan-δ(損失正接とも呼ばれる)はG''/G'として定義され、試験したゴム配合物のエネルギー損失と貯蔵間のバランスを定量化するのに有用である。一の実施態様において、本発明に係る相間ナノ粒子を含むゴム組成物は、カーボンブラック粒子を含むゴム組成物と比べて、歪み%の範囲で予想外に高いG''を有し、延いては、より良好な牽引特性を有する。他の実施態様において、本発明に係る相間ナノ粒子を含むゴム組成物は、高度な補強カーボンブラック粒子を含むゴム組成物より、歪みS%の範囲で相対的に低いtan-δを有し、ナノ粒子組成物が良好な全転がり抵抗を有することを示す。
【0065】
重合体ナノ粒子ゴム配合物の特定の用途の一つは、タイヤゴムの配合である。特に、かかる配合は、タイヤトレッド及びサイドウォールを作るのに使用されるゴム配合物で用いるために考慮される。
【0066】
(相間領域の制御)
米国特許第6,437,050号に述べられるように、重合体ナノ粒子は、一部においてランダマイザーを使用せずにアルケニルベンゼン単位とDVBとを同時に添加することで調製できる。なお、米国特許第6,437,050号は、本願の全体において参照されることにより組み込まれる。かかる調製の一の実施態様においては、重合反応器に1,3-ブタジエン及びスチレンを同時に投入し、続いてn-ブチルリチウム開始剤及びOOPsランダマイザーを同時に投入することができ、時間がたてばナノ粒子のシェルが調製されることになる。次いで、追加の量のn-ブチルリチウム開始剤を添加し、スチレン及びDVBを同時に添加することができ、時間がたてばナノ粒子のコアを調製することになる。結果として生じるナノ粒子のコアがスチレン/DVB共重合体を含む一方、該シェルはランダムスチレン/ブタジエン共重合体を含む。そのナノ粒子は、コアとシェルとの間に、例えば、約1〜約10オングストロームの間の大きさの、非常に小さくて狭い相間領域を持つといわれており、今のところ、本願に記載される本発明に従っていない。本願に記載される本発明の重合体ナノ粒子については、少なくとも、相間領域の大きさが大きく、及び/又は(例えば、その中に存在する相間領域を変性することによって)それらの物理的性質及び化学的性質を制御し又は強化する能力が予想以上に大きい。更に、本願に記載される本発明の重合体ナノ粒子については、重合体相間ナノ粒子を含む複合材料の性能を予想以上に向上させる。
【0067】
本発明の一の実施態様において、コアとガラス転移温度の勾配を持つテーパー状シェルとの間に相対的に厚い相間領域を有する重合体ナノ粒子は、一部においてランダマイザーを使用せずにアルケニルベンゼン単位とDVBとを同時に添加することで作ることができる。かかる調製においては、重合反応器に1,3-ブタジエン及びスチレンを同時に投入し、続いてn-ブチルリチウム開始剤を投入することができ、時間がたてばナノ粒子のテーパー状シェル及び相間領域が調製されることになる。テーパー状シェル部分は、スチレン濃度が増加するにつれて、相対的に厚い相間領域に寄与し、その部分であると考えられる。次に、追加の量のn-ブチルリチウム開始剤を添加し、続いてスチレン及びDVBを同時に添加することができ、コアを調製し、ナノ粒子の形成を可能にする。得られたナノ粒子のコアは、スチレン/DVB共重合体を含み、相間領域はスチレンが多く含まれたスチレン/ブタジエン共重合体を含み、シェルはスチレン/ブタジエン共重合体を含む。この調製の追加の実施態様では、n-ブチルリチウム開始剤の最初の投入に少量のOOPsランダマイザーを含有させてもよい。
【0068】
本発明の他の実施態様において、コアとガラス転移温度の勾配を持つシェルとの間に相対的に厚い相間を有する重合体ナノ粒子は、一部においてランダマイザーの使用と共にアルケニルベンゼン単位とDVBとを同時に添加することで作ることができる。かかる調製においては、重合反応器に1,3-ブタジエンを投入し、続いてn-ブチルリチウム開始剤を投入することができ、時間がたてばナノ粒子のシェルが調製されることになる。その後、OOPsランダマイザーを投入し、続いてスチレン及び1,3-ブタジエンを同時に添加して、時間がたてばナノ粒子の相間領域が調製されることになる。その後、スチレン及びDVBを同時に添加でき、ナノ粒子のコアを調製することになる。得られたナノ粒子のコアはスチレン/DVB共重合体を含み、相間領域はスチレン/ブタジエン共重合体を含み、シェルはポリブタジエンを含む。この調製の追加の実施態様では、スチレンとDVBの投入に少量のランダマイザーが含有されてもよい。ここで、該ランダマイザーはOOPsであってもよいし、OOPsでなくてもよいが、OOPsは非常に高い均一性の架橋コアを作ることができる。
【0069】
本発明の他の実施態様において、コアとシェルとの間に実質的に存在しないほど相対的に狭い相間を有し、該コアが非常に均一に架橋される重合体ナノ粒子は、一部においてランダマイザーを使用せず、同時にアルケニルベンゼン単位とDVBの量を漸次的添加することで作ることができる。かかる調製においては、重合反応器に1,3-ブタジエン及びスチレンを同時に投入し、続いてn-ブチルリチウム開始剤及びOOPsランダマイザーを同時に投入することができ、時間がたてばナノ粒子のシェルが調製されることになる。次に、追加の量のn-ブチルリチウム開始剤を添加し、続いて同時に添加されるスチレン及びDVBを複数回(例えば、4回)投入でき、時間がたてばナノ粒子のコアが調製されることになる。得られたナノ粒子のコアは、非常に均一に架橋されたスチレン/DVB共重合体を含む一方で、シェルはランダムなスチレン/ブタジエン共重合体を含み、そして、ナノ粒子は、コアとシェルとの間に実質的にないほど相対的に狭い相間領域を有する。この調製スキームの他の実施態様では、スチレン及びDVBの添加が、それらを分離独立した投入で供給したというよりはむしろ、反応器中でそれらの成分を緩除に且つ同時に測ることで達成できる。
【0070】
本発明の更なる実施態様において、コアとシェルとの間に相対的に狭い相間領域を有し、該コアが非常に均一に架橋される重合体ナノ粒子は、一部において、ランダマイザーの使用と共に、同時にアルケニルベンゼン単位とDVBの量を漸次的添加することで作ることができる。かかる調製においては、重合反応器に1,3-ブタジエン及びスチレンを同時に投入し、続いてn-ブチルリチウム開始剤及びOOPsランダマイザーを同時に投入することができ、時間がたてばナノ粒子のシェルが調製されることになる。その後、追加の量のn-ブチルリチウム開始剤及びランダマイザー(OOPsであってもよいし、OOPsでなくてもよい)を同時に添加し、続いてスチレン及びDVBを同時に添加することができ、ナノ粒子のコアを調製することになる。得られたナノ粒子のコアは非常に均一に架橋されたスチレン/DVB共重合体を含む一方で、シェルはランダムなスチレン/ブタジエン共重合体を含み、そして、ナノ粒子は、コアとシェルとの間に実質的にないほど狭い相間領域を有する。
【0071】
また、本発明の他の実施態様において、コアとシェルとの間に実質的に存在しないほど相対的に狭い相間を有し、該コアがガラス転移温度及び/又は硬度の勾配を有する重合体ナノ粒子は、一部において異なった比率でランダマイザーを使用せず、同時にアルケニルベンゼン単位とDVBの量を漸次的添加することで作ることができる。かかる調製においては、重合反応器に1,3-ブタジエン及びスチレンを同時に投入し、続いてn-ブチルリチウム開始剤及びOOPsランダマイザーを同時に投入することができ、時間がたてばナノ粒子のシェルが調製されることになる。次に、追加の量のn-ブチルリチウム開始剤を添加し、続いて同時に添加されるスチレン及びDVBを異なる比率で複数回(例えば、4回)投入でき、時間がたてばナノ粒子のコアが調製されることになる。例えば、その投入は、少量であるが次第に増加する量のDVBと、大量であるが次第に減少する量のスチレンとを含むことができる。かかる投入順序は、シェルに近づくと架橋度が小さくなるナノ粒子コアを作るであろう。他の例としては、投入が、少量であるが次第に増加する量のスチレンと、大量であるが次第に減少する量のDVBとを含むことができる。かかる投入順序は、シェルに近づくと架橋度が大きくなるナノ粒子コアを作るであろう。従って、得られるナノ粒子のコアは、さまざまな程度の架橋密度を有するスチレン/DVB共重合体を含む一方で、シェルはランダムなスチレン/ブタジエン共重合体を含み、そして、ナノ粒子は、コアとシェルとの間に実質的にないほど相対的に狭い相間領域を有する。この調製スキームの他の実施態様では、スチレン及びDVBの添加が、それらを分離独立した投入で供給したというよりはむしろ、反応器中で異なる量のそれら成分を緩除に且つ同時に測ることによって達成できる。
【0072】
なお、本発明は、非限定的な例を参照しながら、説明されることになる。以下に示す例及び表は、説明のためにのみあるものであって、限定的な意味に解釈されるものではない。
【実施例】
【0073】
例1
この例では、相間領域がないか又は非常に急な相間領域を有する重合体ナノ粒子が作られ、従って、本発明に従っていない。外部ジャケット加熱と内部攪拌を備えた2ガロンの反応器を溶液重合に用いた。1,3-ブタジエンをヘキサン中22.2重量パーセントの溶液として用いた。スチレンをヘキサン中33.0重量パーセントの溶液として用いた。n-ブチルリチウムをヘキサン中1.60Mの溶液として用いた。工業銘柄DVB(異性体の混合物として80%)をAldrich社から購入し、アルミナビーズ及び水素化カルシウム上で保存した。ニート状のOOPsを使用前にN2下で抑制剤リムーバーを通し、ヘキサン中1.6Mの溶液として用い、水素化カルシウム上で保存した。ヘキサン(溶媒)イソプロパノール(生きている末端を停止させる)及びIRGANOX 1520L(合成酸化防止剤、チバ社)を供給されたまま用いた。
【0074】
上記反応器に、ヘキサン2.39キログラム、スチレンブレンド0.25キログラム及びブタジエンブレンド1.23キログラムのバッチを投入した。該バッチの温度を、反応器のジャケット温度を調整することで、48.9℃に向かって増大させた。バッチが47℃に達したとき、両方がヘキサン約20mLと一緒に希釈されたn-ブチルリチウム2.0mL及びOOPs0.67mLを添加した。反応の約5分後に、重合は約49.7℃に発熱した。
【0075】
一時間後、反応器のジャケットの温度を37.8℃に下げた。分析用に試料を落とした。反応器にn-ブチルリチウム4mLを加えて、引き続き、ボトル中で用意されたスチレンブレンド420g及びDVB25mLの混合物を加えた。次に、反応器のジャケットの温度を82.2℃に増大させた。大きさがおよそ20mLの試料を30分間5分毎に採取し、次に反応時間が3時間になるまで30分毎に採取し、イソプロパノール1mLで停止させた。
【0076】
反応の3時間後、反応器のジャケットの温度を下げて、残りの混合物をIRGANOX 1520Lを含有するイソプロパノール中に落とした。次に、チーズクロスによって固体をろ過し、ドラム乾燥させた。
【0077】
得られた重合体ナノ粒子は、SBRシェルと共に架橋したスチレン/DVBコアを有した。合成の第二部分の間に集めた試料を、GPC及びガスクロマトグラフィーによって分析した。GPCによれば、SBRシェルは、97,500の分子量を有した。得られた重合体ナノ粒子は、GPCにより(線状の基準に基づいて)612,400のMpを示し、約73%のカップリングであった(即ち、粒子の純度又は収率)。
【0078】
表1は、ガスクロマトグラフィーの情報を表し、図4のグラフ中に表示され、p-DVBが最初に反応する傾向があることを示し、このことは、相間領域におけるコアの外側で架橋密度がより高いことを示唆する。特に、p-DVBはほとんどすぐに消費される。重合が進むにつれ、DVB混合物の残りの成分がより緩除に消費された−最初にm-DVBを消費し、続いてm-EVBとp-EVBである。DVB混合物の成分についての消費速度の違いは、相間領域とコアとの間に異なる架橋密度、組成及び強度をもたらす。
【0079】
【表1】

【0080】
例2
この例では、相間領域がないか又は非常に急な相間領域を有する重合体ナノ粒子が作られ、従って、本発明に従っていない。1ガロンの重合反応器を溶液重合に用い、最初にヘキサン1.18キログラムを投入し、次いでブタジエン21.6wt%を含有するブタジエン/へキサンブレンド0.56キログラムを投入した。その後、このバッチを71.1℃に加熱した。温度が安定した後、1.6Mのブチルリチウムのヘキサン溶液3.13mLを用いて重合を開始した。重合中バッチ温度を71.1℃に維持した。45分後(反応が終わったとき)、反応器にスチレン33wt%を含有するスチレン/へキサンブレンド0.34キログラムを投入した。更に30分の反応後、反応器に工業銘柄ジビニルベンゼン(純度80%、Aldrich社)25mLを投入した。反応器を、別に90分間71.1℃で維持し、少量の生成物をGPC用に採取した。このGPC分析は、得られたナノ粒子の平均分子量が790,100であることを示した。ナノ粒子の分散度は、1.14であった。重合の転化率は約100%であった。生成物中の粒子純度は、約88%であった。図7はこの例で作られた粒子の電子顕微鏡写真を示し、図8は原子間力顕微鏡写真を示す。
【0081】
例3
例3は、本発明に係る相間領域を有する重合体ナノ粒子を調製した。1ガロンの重合反応器を溶液重合に用い、最初にヘキサン1.14キログラムを投入し、次いでブタジエン21.6wt%を含有するブタジエン/へキサンブレンド0.59キログラムを投入し、その後、スチレン33wt%を含有するスチレン/へキサンブレンド0.20キログラムを投入した。最初に該バッチを18.3℃にセットし、その温度で、反応器に1.6Mのブチルリチウムのヘキサン溶液1.68mLを加えた。その後、バッチの温度が71.1℃に達するのに約15分かかった。この温度が上昇した後、バッチ温度を4.5時間71.1℃に維持し、その時間で反応が終わった。この過程は、テーパー状のミクロ構造のスチレン/ブタジエン共重合体をもたらした。次に、反応器を18.3℃に冷却し、その温度で、反応器に1.6Mのブチルリチウムのヘキサン溶液5.63mL、スチレン33wt%を含有するスチレン/へキサンブレンド0.74ポンド、及び工業銘柄ジビニルベンゼン(純度80%、Aldrich社)25mLを投入した。反応器を71.1℃にまた加熱し、その温度を40分間維持した。次に、反応器に、スチレン33wt%を含有するスチレン/へキサンブレンド0.31キログラムを投入し、また、工業銘柄ジビニルベンゼン25mLを投入した。それらの投入の後、バッチ温度を2時間71.1℃に維持した。得られた生成物をイソプロパノール/BHT(1000/1)溶液の中へ落とした。次いで、少量の生成物をGPC分析用に採取した。GPC分析は、得られたナノ粒子の平均分子量が2,678,500であることを示した。重合の転化率は約100%であった。生成物中の粒子純度は約94%であった。図9〜11は、この例で作られた粒子の様々なレベルの倍率での電子力顕微鏡写真を示す。
【0082】
例4及び5
最初に、例3に従う相間領域を有する重合体ナノ粒子の試料(「例5」として表示される)と、例2に従う相間領域のない重合体ナノ粒子の試料(「例4」として表示される)とを、トルエン中で混合させる溶液を経て、低シスブタジエンゴム(シス40%、ムーニー40のポリブタジエン、ブチルリチウム触媒、連続PZN、Tg-90℃、Firestone Polymers社製)中に分散させ、乾燥させた。ブラベンダーミキサー中でブタジエンゴムとN339グレードのカーボンブラック50phrとを乾式混合して、対照配合物を調製した。65グラムのブラベンダーミキサー中で、対照、例4及び例5を他の配合剤と共に混合し、混合と、良好な混合を達成するための下記に示すよく知られた通常の手順との三段階を経た。配合処方を表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
混合した配合物をシート状にし、種々の物理的性質の試験に適した異なる形状の試験片にした。次に、適切なモールド中、165℃にて高圧下で15分間、それらの試験片を加硫した。最終バッチの加硫された配合物について、種々の物理的性質の試験を行った。室温(RT、約23℃)での引張試験の結果を表3に要約する。Mod300%は、伸び率300%での公称応力である。Tbは破断点の公称応力又は引張応力である。Ebは破断点伸びである。
【0085】
【表3】

【0086】
表3に示す結果から、我々は、少なくとも一つの相間領域を有する本発明の重合体ナノ粒子を含有する試料5が予想外の超弾性を示すことが理解できる。その破断点での引っ張り、特に破断点での伸びは、重合体ナノ粒子を含有せず、代わりに通常の補強カーボンブラックを50phr含有した対照の配合物をはるかに超えるものであった。これら二つの配合物の応力−歪み曲線を図12に表示する。本発明に係る相間領域がない重合体ナノ粒子を含有する例4は、例5のような超弾性の程度を示さなかった。また、例5のナノ粒子を有する組成物は、相対的に広い相間領域を有し、相間領域を持たない例4のナノ粒子を有する組成物と比べて、良好な弾性特性(特に、Tb及びEb)を表示することに注目すべきである。この比較は、相間領域が、他のナノ粒子のパラメータと共に、組成物が所望の物理的性質を有するように調整できることを示唆する。
【0087】
例6及び7
例6は、本発明に係る重合体ナノ粒子の調製を含む。特に、該ナノ粒子は、ブタジエン/スチレンのシェル領域、スチレン/ジビニルベンゼンのコア領域、及びいくらか広い範囲のスチレンを多く含んだ相間領域を有した。この例の重合は、反応温度の変更以外は、例3と同様であった。反応器にブチルリチウムを加えた後、71.1℃に代えて60℃にバッチを加熱した。また、その後の順番においても、反応温度を60℃に維持した。
【0088】
乾式混合を使用しないこと以外は例5に記載されるように、ゴム部分に、例6からの重合体相間ナノ粒子の試料を配合し、例7の組成物を作った。例7の配合処方を表4に示す。比較のため、カーボンブラック粒子を有する対照の配合物を例4に従って調製し、その配合処方を表4に示す。
【0089】
【表4】

【0090】
混合した配合物をシート状にし、種々の物理的性質の試験に適した異なる形状の試験片にした。次に、適切なモールド中、165℃にて高圧下で15分間、それらの試験片を加硫した。
【0091】
図13は、ゴム配合物中のカーボンブラック粒子の分散を示す電子顕微鏡写真である。図14は、ゴム配合物中のこの例からの相間ナノ粒子の分散を示す電子顕微鏡写真である。図13と図14の比較は、相間ナノ粒子がカーボンブラック粒子に比べてゴム配合物中により均一に分散したことを示す。
【0092】
最終バッチの加硫された配合物について、種々の物理的性質の試験を行った。室温(RT、約23℃)での引張試験の結果を表5に要約する。Mod50%は、伸び率50%での公称応力である。Mod300%は、伸び率300%での公称応力である。Tbは破断点の公称応力又は引張応力である。Ebは破断点伸びである。
【0093】
【表5】

【0094】
表5に示す結果は、少なくとも一つの相間領域を有する本発明の重合体ナノ粒子を含有する例7が予想外の超弾性を示すことを示す。その破断点での引っ張り、特に破断点での伸びは、重合体ナノ粒子を含有せず、代わりに通常の補強カーボンブラックを含有した対照の配合物をはるかに超えるものであった。これら二つの配合物の応力−歪み曲線を図15に表示する。
【0095】
温度掃引(-100℃〜100℃)で試験する動的性質からの結果。せん断貯蔵弾性率(G')及びせん断損失弾性率(G'')を表6に要約する。30℃及び60℃で特定の結果が与えられ、全ての結果を歪み0.5%及び5Hzにて採取した。Rheometrics Instruments,Inc.からの動的レオメータ機械を用いて、試験を行った。

【0096】
【表6】

【0097】
表6に示す結果は、少なくとも一つの相間領域を有する本発明の重合体ナノ粒子を含有する試料6が、カーボンブラック粒子を有する対照と比べて、予想外に良好な貯蔵弾性率と損失弾性率とを示し、より低いtan-δをもたらすことを示す。図16は、25℃でのtan-δ対歪み(%)を示すグラフであり、そして、例6の本発明のナノ粒子については、tan-δ、延いては全エネルギーバランスが歪みの全域で相対的に一定であるが、カーボンブラックの対照は、低い歪みでtan-δが実質的に増大した後、高い歪みで横ばいし始めることを示す。図17は、25℃でのG'(Pa)対歪み(%)を示すグラフである。図18は、25℃でのG''(Pa)対歪み(%)を示すグラフである。表6に示す動的性質の試験及び図16〜18は、例6の本発明のナノ粒子を含有するゴム組成物が、カーボンブラック粒子を含有するゴム組成物と比べてよりエネルギー効率がよく、一定であることを示す。
【0098】
本発明を、例示的な実施態様を参照して説明した。明細書を読んで理解すれば、他のものに変形及び変更できるであろう。この開示と請求の範囲内にある限り、本発明はかかる変形及び変更を含むものと意図される。
【0099】
上記例や他に示されたもの以外では、明細書及び請求の範囲で使用される配合剤の量、反応条件等を表す全ての数が、全ての場合で「約」の語によって変形されるとして理解されるものである。従って、それとは反対に示されない限り、明細書及び添付の請求の範囲に示す数値パラメータは、本開示によって得ようとした所望の性質に応じて変えることができる近似値である。少なくとも、請求の範囲への均等論の適用を制限しようと試みるものとしてでなく、各数値パラメータは、重要な数字及び普通の丸めアプローチの数に照らして解釈されるべきである。
【0100】
本発明の広範な範囲を説明する数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、他に示されない限り、具体例で説明された数値は、できるだけ正確に記録される。しかしながら、いずれの数値も、本質的に、それぞれの試験測定で見られる標準偏差に起因するある種の誤差を必ず含むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの重合したコア単量体を含むコアと、
前記少なくとも一つの重合したコア単量体と異なる少なくとも一つの重合したシェル単量体を含むシェルと、
前記重合したコア単量体及び前記重合したシェル単量体の少なくとも一つを含む少なくとも一つの相間領域と
を備えた重合体ナノ粒子において、
前記コアが少なくとも一つの架橋剤によって架橋され、前記少なくとも一つの相間領域が前記コア及び前記シェルを分離してつなぐことを特徴とする重合体ナノ粒子。
【請求項2】
前記少なくとも一つの重合したコア単量体が、アルケニルベンゼン単量体であることを特徴とする請求項1に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項3】
前記アルケニルベンゼン単量体が、スチレンであることを特徴とする請求項2に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項4】
前記少なくとも一つの重合したシェル単量体が、共役ジエン単量体であることを特徴とする請求項1に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項5】
前記共役ジエン単量体が、1,3-ブタジエンであることを特徴とする請求項4に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項6】
前記少なくとも一つの架橋剤が、ジビニルベンゼンであることを特徴とする請求項1に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項7】
前記少なくとも一つの架橋剤が、オルト-ジビニルベンゼン、メタ-ジビニルベンゼン、パラ-ジビニルベンゼン、オルト-エチルビニルベンゼン、メタ-エチルビニルベンゼン及びパラ-エチルビニルベンゼンから選択される少なくとも二つのベンゼンを含むジビニルベンゼン混合物であることを特徴とする請求項1に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項8】
前記コアが、前記少なくとも一つの架橋剤と共に共重合された少なくとも一つの重合したコア単量体を含むことを特徴とする請求項1に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項9】
前記コア、シェル及び相間領域の少なくとも一つが、少なくとも一つの追加の単量体を含むことを特徴とする請求項1に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項10】
前記重合体ナノ粒子の平均径が、約200nm未満であることを特徴とする請求項1に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項11】
前記少なくとも一つの相間領域が、少なくとも1nmであることを特徴とする請求項1に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項12】
前記少なくとも一つの相間領域が、約1nm〜約100nmであることを特徴とする請求項1に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項13】
前記少なくとも一つの相間領域が、約10〜約50nmであることを特徴とする請求項12に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項14】
前記少なくとも一つの相間領域の硬度モジュラスが前記コアの硬度モジュラスより小さく、前記シェルの硬度モジュラスより大きいことを特徴とする請求項1に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項15】
前記少なくとも一つの相間領域の体積分率が、約1%〜約99%であることを特徴とする請求項1に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項16】
前記少なくとも一つの相間領域の体積分率が、約5%〜約95%であることを特徴とする請求項15に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項17】
前記少なくとも一つの相間領域の体積分率が、約10%〜約80%であることを特徴とする請求項16に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項18】
前記ナノ粒子の形状が、球状、実質的に球状、紐状、花又は楕円の内の一つであることを特徴とする請求項1に記載の重合体ナノ粒子。
【請求項19】
少なくとも一つのシェル単量体を重合してシェルを形成させることを含む第一重合と、
前記シェルの存在下、前記少なくとも一つのシェル単量体と異なる少なくとも一つのコア単量体及び少なくとも一つの架橋剤を共重合することを含む第二重合によって、前記シェルにコア及び相間領域を結合させる工程と、
少なくとも前記コアを前記少なくとも一つの架橋剤で架橋し、それによって、重合体ナノ粒子を形成させる工程と
を含む重合体ナノ粒子の製造方法において、
前記相間領域が前記コア及び前記シェルを分離してつなぐことを特徴とする重合体ナノ粒子の製造方法。
【請求項20】
前記少なくとも一つのシェル単量体が、共役ジエンであることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記共役ジエンが、1,3-ブタジエンであることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも一つのコア単量体が、アルケニルベンゼンであることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記アルケニルベンゼンが、スチレンであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも一つの架橋剤が、ジビニルベンゼンであることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも一つの架橋剤が、オルト-ジビニルベンゼン、メタ-ジビニルベンゼン、パラ-ジビニルベンゼン、オルト-エチルビニルベンゼン、メタ-エチルビニルベンゼン及びパラ-エチルビニルベンゼンから選択される少なくとも二つのベンゼンを含むジビニルベンゼン混合物であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記コア、シェル及び相間領域の少なくとも一つが、少なくとも一つの追加の単量体を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記重合体ナノ粒子の平均径が、約200nm未満であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも一つの相間領域が、少なくとも1nmであることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも一つの相間領域が、約1nm〜約100nmであることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも一つの相間領域が、約10〜約50nmであることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも一つの相間領域の硬度モジュラスが前記コアの硬度モジュラスより小さく、前記シェルの硬度モジュラスより大きいことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも一つの相間領域の体積分率が、約1%〜約99%であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも一つの相間領域の体積分率が、約5%〜約95%であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも一つの相間領域の体積分率が、約10%〜約80%であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項35】
前記ナノ粒子の形状が、球状、実質的に球状、紐状、花又は楕円の内の一つであることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項36】
前記第一重合及び第二重合の少なくとも一つが、アニオン重合、フリーラジカル重合、リビングカチオン重合、原子移動ラジカル重合、可逆的付加開裂連鎖移動重合、縮合重合、付加重合及び乳化重合よりなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項37】
架橋する前に、前記第二重合からの重合体が自己集合してミセル状の構造を形成することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項38】
前記第二重合及び前記架橋が、同一の工程で行われることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項39】
少なくとも一つのアニオン開始剤の存在下で、共役ジエン単量体を重合し、シェルを形成させる工程と、
前記シェルの存在下、アルケニルベンゼン単量体及びジビニルベンゼン混合物を共重合させることで、前記シェルにコア及び相間領域を結合させる工程と、
少なくとも一つの前記コアを前記ジビニルベンゼン混合物で架橋し、それによって、重合体ナノ粒子を形成させる工程と
を含む重合体ナノ粒子の製造方法において、
前記相間領域が、前記コア及び前記シェルを分離してつなぎ且つ該コアより大きな架橋密度を有し、前記ジビニルベンゼン混合物が、パラ-ジビニルベンゼンと、オルト-ジビニルベンゼン、メタ-ジビニルベンゼン、オルト-エチルビニルベンゼン、メタ-エチルビニルベンゼン及びパラ-エチルビニルベンゼンから選択される少なくとも一つのベンゼンとを含むことを特徴とする重合体ナノ粒子の製造方法。
【請求項40】
コアを形成するため、少なくとも一つの架橋剤の存在下における少なくとも一つのコア単量体の乳化重合と、
前記コアの存在下で少なくとも二つの単量体を重合することによって、架橋されたコア上に、相間領域及びシェルを表面グラフト化する工程と
を含む重合体ナノ粒子の製造方法。
【請求項41】
請求項1に記載の重合体ナノ粒子を含むゴム組成物。
【請求項42】
請求項41に記載のゴム組成物のタイヤでの使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2009−544824(P2009−544824A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522021(P2009−522021)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/074611
【国際公開番号】WO2008/014464
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】