説明

省エネルギーの双胴船およびその航行方法

【課題】波浪中に船首部を突っ込み、喫水が深く入って船体抵抗が増加するのを防止できる双胴船とその運航方法を提供する。
【解決手段】双胴船1の船体2部に喫水線を検出する喫水線検出部14を設け、喫水線検出部14に喫水線を検出するカメラの喫水線検出器15を設けて、船首4部の喫水線の状況を操舵室16のモニター18に映像や情報を送信可能に喫水線検出部15を接続して、喫水を浅くするように水中翼8、9を揺動駆動して船体4の航行抵抗を減少するようにし、省エネルギーをはかるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅客船や観光船等の船舶分野における省エネルギーの双胴船およびその航行方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
双胴船は、旅客や貨物用に広く利用されていて、両胴体間の距離が広くて安定性が向上されているが、荒波に遭遇したとき、波浪中に船首部の突っ込み状態が生じ、ピッチング現象が発生しやすいものであった。
【0003】
そこで、本出願人は、双胴船の左右の船首部間に、船首側を浮力で持ち上げ力を発生させるための船首浮力部を突設した安定航行の双胴船を開発して、乗り心地のよい双胴船を実現している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、双胴船が波浪中に船首部の突っ込み状態が生じるのを防止できるものの、喫水が深く入ると、船の抵抗が増加して航行エネルギーの消費が多くなり、省エネルギーの双胴船およびその航行方法を実現するのが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような点に鑑みたもので、上記の課題を解決するために、双胴船の船体部に喫水線を検出する喫水線検出部を設け、喫水線検出部で喫水状況を検出して所定の喫水レベルよりも喫水が深ければ喫水を浅くするように水中翼を揺動制御して航行することを特徴とする省エネルギーの双胴船の航行方法を提供するにある。
【0006】
また、双胴船の左右の船首部間に船首側を浮力で持ち上げ力を発生させるための船首浮力部を設けて、この船首浮力部に喫水線を検出する喫水線検出部を設けたことを特徴とする省エネルギーの双胴船の航行方法を提供するにある。
【0007】
さらに、双胴船の船体部に喫水線を検出する喫水線検出部を設け、喫水線検出部で喫水状況を検出して所定の喫水レベルよりも喫水が深ければ喫水を浅くするように水中翼を揺動制御自在に形成したことを特徴とする省エネルギーの双胴船を提供するにある。
【0008】
さらにまた、双胴船の左右の船首部間に船首側を浮力で持ち上げ力を発生させるための船首浮力部を設けて、この船首浮力部に喫水線を検出するカメラの喫水線検出部を設け、船首部の喫水線の状況を操舵室のモニターに映像や情報を送信可能に喫水線検出部を接続して水中翼を揺動制御自在に形成したことを特徴とする省エネルギーの双胴船を提供するにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の省エネルギーの双胴船の航行方法は、双胴船の船体部に喫水線を検出する喫水線検出部を設け、喫水線検出部で喫水状況を検出して所定の喫水レベルよりも喫水が深ければ喫水を浅くするように水中翼を揺動制御して航行することによって、双胴船の船首部側が突っ込み状態となると、喫水線検出部で喫水状況を検出して喫水が深ければ喫水を浅くするように水中翼を揺動制御でき、船体の航行抵抗を減少するようにできて、省エネルギーで航行することができる。
【0010】
また、双胴船の左右の船首部間に船首側を浮力で持ち上げ力を発生させるための船首浮力部を設けて、この船首浮力部に喫水線を検出する喫水線検出部を設けたことによって、双胴船が波浪中に船首部の突っ込み状態が生じるのを防止できるとともに、上記のように喫水を浅くするように水中翼を揺動制御でき、船体の航行抵抗を減少するようにできて、省エネルギーの乗り心地のよく航行することができる。
【0011】
さらに、双胴船の船体部に喫水線を検出する喫水線検出部を設け、喫水線検出部で喫水状況を検出して所定の喫水レベルよりも喫水が深ければ喫水を浅くするように水中翼を揺動制御自在に形成したことによって、上記したように双胴船の船首部側が突っ込み状態となると、喫水線検出部で喫水状況を検出して喫水が深ければ喫水を浅くするように水中翼を揺動制御でき、船体の航行抵抗を減少するようにできて、省エネルギーで航行することができる。
【0012】
さらにまた、双胴船の左右の船首部間に船首側を浮力で持ち上げ力を発生させるための船首浮力部を設けて、この船首浮力部に喫水線を検出するカメラの喫水線検出部を設け、船首部の喫水線の状況を操舵室のモニターに映像や情報を送信可能に喫水線検出部を接続して水中翼を揺動制御自在に形成したことによって、船首浮力部によって船首部の突っ込み状態が生じるのを防止できるとともに、この船首浮力部の喫水線検出部を介して船首部の喫水線の状況を操舵室のモニターに映像や情報を送信して、喫水を浅くするように水中翼を揺動制御でき、船体の航行抵抗を減少するようにできて、省エネルギーで乗り心地のよく航行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例の一部省略した双胴船の概略説明用側面図、
【図2】同上の船首側部の一部省略した拡大側断面図、
【図3】同上の船首側部の一部省略した底面図、
【図4】同上の船首部の一部省略した正面図、
【図5】同上の後部の水中翼部の一部省略した側面図(a)と、前部の水中翼部の一部省略した側面図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の省エネルギーの双胴船およびその航行方法は、双胴船の船体部に喫水線を検出する喫水線検出部を設け、喫水線検出部で喫水状況を検出して所定の喫水レベルよりも喫水が深ければ喫水を浅くするように水中翼を揺動制御して航行することを特徴としている。
【0015】
省エネルギーの双胴船1は、図1〜図4のように船体2の下部の左右両側に舟形状の胴体3を左右面対称状に配設していて、その左右の胴体3の船首部4の中央に船首側を浮力で持ち上げ力を発生させるための船首浮力部5を突設して、双胴船1が荒波に遭遇したとき、波浪中に船首部4の突っ込み状態が生じるのを有効に防止できて安定した航行ができるようにしている。
【0016】
上記船首浮力部5は、その作用を発生するために適宜の形状にFRPや鉄板のシート材で形成することができるが、双胴船1の走航抵抗をできるだけ低減できるように図1〜図4のように所要の舟形状とするのが好ましい。
【0017】
上記船首浮力部5は、その幅を胴体3の中心間の1/6〜1/2位、好ましくは1/4〜1/3位で、その長さは幅の4〜10倍位または船長の1/20〜1/5位、好ましくは幅の4〜5倍位または船長の1/10〜1/8位で、船首部4の上部から胴体3間の船底6部にわたって船本体状の円滑な舟形の流線形として配設するのが好ましい。船首浮力部5の幅が胴体3の中心間の1/6よりも狭かったり、長さが幅の4倍や船長の1/20よりも短いと船首側を浮力で持ち上げ力を発生させる効果が少なく、また幅の1/2より広かったり、船長の1/5よりも長いと造波抵抗等が大きくなって好ましくない。
【0018】
この左右の船首部4には、図1〜図4のようにミニ船首7をそれぞれ所定量前方へ突き出して左右対称状に配設して船首側の舟形が非常にスリムになり、船体抵抗の軽減がはかれ、かつ船速を増加できるようにし、かつ双胴船1を安定走航できるようにしている。
【0019】
そして、上記双胴船1の船体2の左右両側の舟形状の胴体3間に、図1、図3〜図5のようにその前部と後部に水平翼8、9をそれぞれ揺動可能に架設していて、これらの水平翼8、9に垂設した揺動棒10、11を介して油圧シリンダーの揺動駆動装置12、13によって所定角度に揺動駆動制御して双胴船1の船首側4を浮上させて船体2の航行抵抗を減少するようにして、省エネルギーで航行することができるようにしている。なお、水平翼8、9は、公知の翼状形状として所定の傾斜角度として配設できるものである。
【0020】
また、上記双胴船1の船首部4間に配設した船首浮力部5の一側面に、図1〜図4のように船首部4の喫水線を検出する覗窓等の喫水線検出部14を設けて喫水線を検出する喫水線検出器15を配設し、船首部4の喫水線の映像状況や喫水レベル情報を操舵室16のモニター17に映像や情報を送信可能に喫水線検出器15を接続し、水中翼8、9を揺動駆動自在に形成している。
【0021】
喫水線検出器15としては、ビデオカメラ、CCDカメラ、CMOSカメラ、赤外線カメラ、超音波センサーなどの検出器を利用することができ、またモニター17としてはCRTや液晶のディスプレイ等の映像装置を利用することができる。CCDカメラ、CMOSカメラでは喫水線を検出する覗窓等の喫水線検出部14をできるだけ小径にでき、赤外線カメラ、超音波センサーの検出器では夜間でも喫水線の映像状況や喫水レベル情報を明確に検出することができる。
【0022】
そして、上記喫水線検出部14の喫水線検出器15で映像や情報を送信し、これらのデータにもとづいて操舵員によって水中翼8、9を揺動駆動したり、予め所定のプログラムを設定したCPUなどの制御器18を介して水中翼8、9の揺動角度の適宜の傾き角度に対応するように制御処理したり、カメラ等の映像を画像処理装置で画像処理し、予め設定した水中翼8、9の揺動角度の適宜の傾き角度に駆動制御するようにできる。19はミニ船首7から船体2の胴体3の下部にそって配設したキールボックスである。
【0023】
なお、船首部4には、喫水の標準線の他に、平行な複数の喫水目印線を設け、航行速度や波の状態に対応して適宜な喫水目印線を介して水中翼8、9を揺動駆動するようにもできる。また、操作室16には、水中翼8、9の翼角メモリ盤を設けて翼角操作レバーを操作するようにできる。さらに、喫水線検出部14を双胴船1の船首部4間に配設した船首浮力部5に設けたが、双胴船1の船首部4の内側面部や、これらの個所に突き出し、引っ込め自在等に配設することも可能であり、本発明の上記した趣旨にもとづいて適宜の位置に実施可能である。
【実施例】
【0024】
図1〜図5は、本発明の一実施例を示すものである。双胴船1は、図1〜図4のように左右の胴体3の船首部4の中央に船首部4側を浮力で持ち上げ力を発生させるための船首浮力部5を、船体2と同一材料の鉄板材で船本体部の舟形状に形成して、その中心線を双胴船1の中心線と合わせてその上面を船底6にそって溶接して取り付けていて、これらの左右の船首部4には、図1〜図4のようにミニ船首7をそれぞれ所定量前方へ突き出して左右対称状に配設し、双胴船1を安定走航できるようにしている。
【0025】
船首浮力部5は、その幅を胴体3の中心間のほぼ1/4幅のものとし、その長さは幅Bの4倍ないし船長の8分の1位として船首部4の上部から船底6部にわたって円滑な舟形の流線形状として喫水線よりも高い位置に溶接して取り付けている。
【0026】
そして、上記双胴船1の船体2の左右両側の舟形状の胴体3間には、図1〜図4のようにその前部と後部に水平翼8、9をそれぞれ揺動可能に架設していて、図1、図5のようにこれらの水平翼8、9に垂設した揺動棒10、11を介して油圧シリンダーの揺動駆動装置12、13によって所定角度に揺動駆動制御して、双胴船1の船首側4を浮上させて船体2の航行抵抗を減少するようにして、省エネルギーで航行することができるようにしている。
【0027】
また、上記双胴船1の船首部4間に配設した船首浮力部5に、図1〜図4のように船首部4の喫水線を検出する強化ガラスの覗窓を水密的とした喫水線検出部14を配設し、その内部にCCDカメラの喫水線検出器15を設けて対向する船首部4の喫水線の状況を検出して操舵室16のモニター17に映像等を送信して監視するとともに、操舵員によって水中翼8、9をそれぞれ揺動駆動したり、予め設定したCPUなどの制御器18を介して水中翼8、9の揺動角度の適宜の傾き角度に自動的にそれぞれ対応するように制御処理して水中翼8、9の揺動角度の適宜の傾き角度に駆動制御して双胴船1の船首側4を浮上させて船体2の航行抵抗を減少するようにして、省エネルギーで航行することができるようにしている。
【0028】
このように双胴船1の船首部4間に双胴船1の船首部4側を浮力で持ち上げ力を発生させるための船首浮力部5を配設することによって、双胴船が荒波に遭遇したとき、波浪中に船首部4の突っ込み状態が生じるのを有効に防止でき、安定した乗り心地のよい双胴船1を実現することができるとともに、喫水線検出部14で喫水状況を検出して喫水が深ければ喫水を浅くするように水中翼8、9を揺動制御して、船体2の抵抗を減少するようにできて、省エネルギーで航行することができる。
【0029】
また、双胴船1の左右の船首部4間に船首側を浮力で持ち上げ力を発生させるための船首浮力部5に喫水線を検出する喫水線検出部14を設けることによって、双胴船1が波浪中に船首部4の突っ込み状態が生じるのを防止できるとともに、上記のように喫水を浅くするように水中翼8、9を揺動制御でき、船体2の航行抵抗を減少するようにできて、省エネルギーで乗り心地のよく航行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、旅客船や観光船等の船舶分野における双胴船に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…双胴船 2…船体 3…胴体 4…船首部 5…船首浮力部8、9…水平翼 14…喫水線検出部 15…喫水線検出器 16…操舵室
17…モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
双胴船の船体部に喫水線を検出する喫水線検出部を設け、喫水線検出部で喫水状況を検出して所定の喫水レベルよりも喫水が深ければ喫水を浅くするように水中翼を揺動制御して航行することを特徴とする省エネルギーの双胴船の航行方法。
【請求項2】
双胴船の左右の船首部間に船首側を浮力で持ち上げ力を発生させるための船首浮力部を設けて、この船首浮力部に喫水線を検出する喫水線検出部を設けた請求項1に記載の省エネルギーの双胴船の航行方法。
【請求項3】
双胴船の船体部に喫水線を検出する喫水線検出部を設け、喫水線検出部で喫水状況を検出して所定の喫水レベルよりも喫水が深ければ喫水を浅くするように水中翼を揺動制御自在に形成したことを特徴とする省エネルギーの双胴船。
【請求項4】
双胴船の左右の船首部間に船首側を浮力で持ち上げ力を発生させるための船首浮力部を設けて、この船首浮力部に喫水線を検出するカメラの喫水線検出部を設け、船首部の喫水線の状況を操舵室のモニターに映像や情報を送信可能に喫水線検出部を接続して水中翼を揺動制御自在に形成した請求項3に記載の省エネルギーの双胴船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−35648(P2012−35648A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174507(P2010−174507)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(506364879)株式会社三保造船所 (1)