説明

省エネルギーランプ用のアマルガム球及びそれらの製造

【解決手段】省エネルギーランプは、気体放電バルブ中に水銀蒸気及びアルゴンからなるガス充填物を含有する。水銀で気体放電バルブを充填するために、アマルガム球が使用される。30〜70質量%の水銀の高い質量割合を有するスズアマルガムが提案される。高い水銀含量のために、アマルガム球は、表面上に、液体アマルガム相を有する。前記球をスズ粉末又はスズ合金粉末でコーティングすることにより、表面上の液体アマルガム相は、高いスズ含量を有する固体アマルガムへ転移される。
【効果】これにより、貯蔵及び加工の際のアマルガム球の粘着は防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現代的な省エネルギーランプ中へ水銀を導入するためのアマルガム球(Amalgamkugeln)に関する。
【背景技術】
【0002】
TFL型(Tube Fluorescent Lamp, 管型蛍光ランプ)又はCFL型(Compact Fluorescent Lamp, コンパクト型蛍光ランプ)の現代的な省エネルギーランプは、低圧気体放電ランプに属する。これらは、水銀蒸気及びアルゴンの混合物が充填されており、かつ内部が蛍光発光物質でコーティングされている気体放電バルブからなる。作動の際に放出される水銀の紫外放射は、発光物質コーティングにより蛍光を経て可視光へ変換される。前記ランプは故に蛍光ランプとも呼ばれる。
【0003】
前記ランプの作動に必要とされる水銀は、以前は液体金属として気体放電バルブ中へ計量供給されていた。しかしながら、久しい以前から、水銀をアマルガム球の形で気体放電バルブ中へ導入することは知られている。このことは、有毒な水銀の取扱いを容易にし、かつ前記計量供給の精度を高める。
【0004】
米国特許(US)第4,145,634号明細書には、インジウム36原子%を有し、高い水銀含量のために室温で既に高い液体割合を有するアマルガムペレットの使用が記載されている。前記ペレットは、故に、これらが互いに接触している場合に粘着する(Verkleben)傾向がある。前記ペレットを粉末形の適した材料でコーティングすることによって、この粘着は防止されることができる。安定な金属酸化物(酸化チタン、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウム)、グラファイト、ガラス粉末、蛍光体(Phosphore)、ほう砂、酸化アンチモン並びに水銀とアマルガムを形成しない金属粉末(アルミニウム、鉄及びクロム)が提案される。
【0005】
国際公開(WO)第94/18692号には、水銀5〜60質量%、好ましくは40〜60質量%を有する亜鉛アマルガムからなるペレットの使用が記載されている。回転楕円体状のアマルガムペレットを製造するためには、米国特許(US)第4,216,178号明細書に記載された方法が使用され、前記方法の場合に、溶融されたアマルガムは、振動のために刺激された流出ノズルにより小さな液滴へ破壊され、かつ冷却媒体中で凝固温度未満に冷却される。前記ペレットは、国際公開(WO)第94/18692号によれば、コーティングされない。
【0006】
前記溶融物からアマルガム球を製造するためには、前記アマルガムは、アマルガムが完全に溶融している温度に加熱されなければならない。これは、亜鉛アマルガムの場合に、420℃を上回る温度ではじめて確実に保証される。これらの高い加工温度は、それと結び付いた水銀の高い蒸気圧のために、水銀の毒性に対する相応する安全予防措置を必要にする。
【0007】
特開(JP)2000-251836号公報には、蛍光ランプを製造するために、スズアマルガムからなるアマルガムペレットの使用が記載されている。前記スズアマルガムは好ましくは、90〜80:10〜20のスズ/水銀原子比を有する低い水銀含量を有するに過ぎない。これは15.8〜29.7質量%の水銀含量に相当する。特開(JP)2000-251836号公報には、どのように前記アマルガムから球状ペレットが製造されるかについては記載がなされていない。
【0008】
特開(JP)2000-251836号公報に記載されたスズアマルガムの場合に不利であるのは、低い水銀含量である。このことは、特定量の水銀が放電ランプ中へ導入されるべき場合に、相対的に大きなアマルガム球を必要にする。省エネルギーランプの場合にも一層小型化するためには、このことは前記ランプの構成及び製造の際の問題をまねきうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,145,634号
【特許文献2】国際公開第94/18692号
【特許文献3】国際公開第94/18692号
【特許文献4】特開2000-251836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
故に、本発明の課題は、高い水銀含量を有し、かつヒトの健康を危険にさらすことなく安全に貯蔵されることができ、かつ省エネルギーランプの製造の際に使用されることができる、スズアマルガムからなるアマルガム球を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、30〜70質量%の水銀含量を有するスズアマルガムからなるアマルガム球によって解決される。好ましくは、前記アマルガム球は、30〜60質量%及び特に40〜55質量%の水銀含量を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前記球は、欧州特許(EP-B1)第1381485号明細書に記載された方法に従って前記アマルガムの溶融物から製造されることができる。このためには、完全に溶融された前記アマルガムは、前記アマルガムの凝固温度を下回る温度を有する冷却媒体中へ滴下される。好ましくは、前記冷却媒体の温度は、前記アマルガムの液相線温度を10〜20℃下回る。この場合に、スズアマルガムが230℃を下回る温度で既に完全に溶融することが有利である。スズアマルガム球を製造する際の作業場安全性を保証するための費用は故に、亜鉛アマルガム球の場合よりも明らかに低い。
【0013】
冷却媒体として、好ましくは鉱油、有機油又は合成油が使用される。シリコーン油が良いことが判明している。冷却媒体中でアマルガム球を形成した後に、これらは冷却媒体から分離され、かつ脱脂される。
【0014】
本発明の目的のためには、50〜2000μm、好ましくは500〜1500μmの直径を有するアマルガム球が適している。
【0015】
こうして製造されたアマルガム球の表面上に液相が生じるので、それに対して措置が講じられない場合に、前記球が貯蔵及び取扱いの際に互いに粘着することが分かった。前記粘着は、例えば、前記アマルガム球が8℃未満の温度で貯蔵され、かつ加工される場合に、防止されることができる。前記貯蔵のためには−18℃の温度が好ましい。
【0016】
前記アマルガム球の粘着する傾向は、脱脂された前記球が、水銀とアマルガムを形成する金属粉末又は合金粉末でコーティングされる場合に、大幅に阻止されることができる。前記金属粉末のアマルガム化によって、前記球上で低い水銀含量を有する表面層が形成され、この層は前記アマルガム球の通常の加工温度で液相をもはや含有せず、ひいては未処理の球に比較して粘着傾向を阻止する。
【0017】
前記コーティングに使用される金属粉末又は合金粉末は、100μmよりも大きい粒径を有する粒子を含有すべきではない。より大きな粒径を有する粒子は、不完全にのみアマルガム化し、かつ前記球の粗い表面をまねき、これは前記球の計量供給を困難にする。好ましくは、粉末粒子が80μm未満の粒径を有する金属粉末又は合金粉末が使用される。5〜15μmの平均粒子直径d50を有する金属粉末又は合金粉末が特に好ましい。適した金属として、スズ及び亜鉛又はスズの合金もしくは亜鉛の合金が判明している。スズ又はスズ合金がその際に好ましい。良好な結果は、スズと銀及び銅との合金を用いて、特に合金SnAg3Cu0.5を用いて得られた。
【0018】
前記アマルガム球を金属粉末又は合金粉末でコーティングするために、前記球は、例えば回転釜中に装入され、かつ、前記球の粘着がもはや確認不可能になるまで、絶えず転がし(Umwaelzen)ながら金属粉末又は合金粉末でまぶされる(bestreut)ことができる。この際に前記アマルガム球上に施与される金属粉末又は合金粉末の量は、前記アマルガム球の質量を基準として1〜10質量%、好ましくは2〜4質量%である。
【0019】
粘着傾向のさらなる減少は、前記アマルガム球が、金属粉末又は合金粉末でコーティングした後に、前記アマルガム球の質量を基準として、0.001〜1質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%の量で及び特に0.1質量%の量の金属酸化物の粉末で追加的にコーティングされる場合に得られる。このためには、金属粉末又は合金粉末を施与する場合とちょうど同じように行われることができる。このコーティングに適した金属酸化物は、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素及び酸化アルミニウムである。好ましくは、火炎熱分解により製造され、5μm未満、好ましくは1μm未満の平均粒度を有する酸化アルミニウムが使用される。
【0020】
施与された粉末層は、自動計量供給装置での前記アマルガム球の取扱適性を改善する。そのような自動計量供給装置中に、前記アマルガム球は、これらが蛍光ランプ中へ充填される前に、室温で平均して3時間まで存在しうる。その際に、金属粉末又は合金粉末で及び金属酸化物粉末でコーティングされたアマルガム球が、自動計量供給装置中での40℃までの温度での3時間の平均滞留期間を問題なく持ち堪えることが分かった。2つの層のうち1つのみが施与される場合には、3時間の平均滞留期間が経過する前に既に、施与された層が時折剥がれることとなる。
【0021】
本発明をさらに説明するために、次の表が利用される。この表は、前記球の直径に応じた、スズアマルガム球の全質量(Sn+Hg)及び水銀質量(Hg)及び20〜50質量%の水銀含量を有するスズアマルガムの計算値を示す。前記表中には、さらに、計算に使用されたような多様なアマルガムの密度ρが記載されている。
【0022】
高い水銀含量を有するスズアマルガムの使用によって、同じ直径の球で、20質量%のみの低い水銀含量を有するスズアマルガムを用いるよりも明らかにより多くの水銀が気体放電バルブ中へ導入されることができる。例えば、水銀50質量%を有するSnHg50からなるアマルガム球は、水銀20質量%のみを有するSnHg20からなるアマルガム球の約三倍の質量の水銀を含有する。
【0023】
表:20〜50質量%の水銀含量を有するスズアマルガム球の球直径に応じた全質量及び水銀質量
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アマルガム球が30〜70質量%の水銀含量を有するスズアマルガムを含有することを特徴とする、蛍光ランプ用のアマルガム球。
【請求項2】
前記球が、水銀とアマルガムを形成する金属粉末又は合金粉末でコーティングされている、請求項1記載のアマルガム球。
【請求項3】
前記粉末粒子が100μm未満の粒径を有する、請求項2記載のアマルガム球。
【請求項4】
金属粉末又は合金粉末が、スズ、亜鉛又はスズの合金もしくは亜鉛の合金からなる、請求項3記載のアマルガム球。
【請求項5】
アマルガム球がそれらの質量を基準として、1〜10質量%の量で金属粉末又は合金粉末でコーティングされている、請求項4記載のアマルガム球。
【請求項6】
アマルガム球が追加的に0.001〜1質量%の量の金属酸化物の粉末でコーティングされている、請求項5記載のアマルガム球。
【請求項7】
金属粉末又は合金粉末が、スズ又はスズ合金からなる、請求項6記載のアマルガム球。
【請求項8】
金属粉末又は合金粉末が、スズと銀及び銅との合金からなる、請求項7記載のアマルガム球。
【請求項9】
前記球が50〜2000μmの直径を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載のアマルガム球。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載のアマルガム球を製造するにあたり、
前記アマルガムを完全に溶融させ、溶融物を、前記アマルガムの凝固温度未満の温度を有する冷却媒体中へ滴下し、引き続き、形成されたアマルガム球を冷却媒体から分離する
ことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のアマルガム球の製造方法。
【請求項11】
冷却媒体として、鉱油、有機油又は合成油を使用する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
アマルガム球を、冷却媒体から分離した後に脱脂し、かつ、前記球の粘着がもはや確認不可能になるまで、室温で絶えず転がしながら、水銀とアマルガムを形成する金属粉末又は合金粉末でまぶす、請求項11記載の方法。
【請求項13】
アマルガム球をさらなる工程において、絶えず転がしながら金属酸化物の粉末で追加的にコーティングする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
蛍光ランプを製造するための、請求項1から9までのいずれか1項記載のアマルガム球の使用。

【公開番号】特開2013−69700(P2013−69700A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−273008(P2012−273008)
【出願日】平成24年12月14日(2012.12.14)
【分割の表示】特願2010−504659(P2010−504659)の分割
【原出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】