説明

省エネルギー支援装置、省エネルギー支援方法および省エネルギー支援プログラム

【課題】負荷持続曲線上のピーク電力量、ベース電力量、常用電力量の各領域を明確に分類し、かつ、消費電力量が過大な領域を正確かつ簡便に判別する省エネルギー支援装置を提供する。
【解決手段】選択した測定日の単位時間ごとの省エネルギー対象の消費電力量を大きい順番に並べ替えて作成した棒グラフの頂点を順次繋ぎ合わせた負荷持続曲線を負荷持続曲線作成部32で作成し、該負荷持続曲線を分析し、使用時に或る電力閾値以上電力を消費する機器を使用中のピーク電力量領域、使用時に該電力閾値よりも少ない電力を消費する機器を使用中の常用電力量領域、常時電力を消費する機器のみのベース電力量領域、の各領域を領域判別部33で分類し、各領域の領域別合計消費電力量の省エネルギー対象の消費電力量全体に対する割合が、季節ごとに定めた各領域の閾値を超えたか否かに基づきいずれの領域で消費電力量が過大かを過大消費電力領域判別部34にて判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省エネルギー支援装置、省エネルギー支援方法および省エネルギー支援プログラムに関し、特に、省エネルギーの支援用として、ユーザの電力使用傾向を識別するために、1日を単位として単位時間(例えば1分)ごとに測定した負荷機器全体の消費電力量を大きい順に並べた負荷持続曲線を利用して、消費電力量のピーク電力量領域、常用電力量領域、ベース電力量領域の3つの領域を判別し、過大な電力消費になっている領域を判別する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー化特に省電力化を促進しようとする機運が益々旺盛になってきている。これに伴い、省電力化を支援するための仕組みも各種提案されるようになっている。例えば、特許文献1の特開2010−176373号公報「省エネルギー支援システムおよび省エネルギー支援プログラム」においては、ユーザ(電力需要者)の省エネルギー特に省電力対策への意欲を維持させ、省エネルギー行動を継続的に実施させるために、ユーザが使用する各種負荷機器の消費電力量の定期的な測定結果に基づいて、消費電力量の削減が見込まれる負荷機器を特定して、当該負荷機器の消費電力量削減に対応する省エネルギー行動案を当該ユーザの端末に対して定期的に表示する仕組みを提案している。
【0003】
前記特許文献1においては、より具体的には、次のような仕組みを提案している。まず、ユーザが使用する各種負荷機器のタイプを、電子レンジやドライヤのように、使用時に一時的にあらかじめ定めたピーク電力閾値以上の大きな消費電力(以下、「ピーク電力」と称す)になる第1機器、テレビの待機電源やルータ装置や暖房便座のように、ユーザの生活行動に関係することなく常時電力(以下、「ベース電力」と称す)を消費する第2機器、照明やエアコンのように、ユーザの生活に応じて、前記ピーク電力閾値よりも少ない消費電力量であるものの、それぞれ使用している間継続して電力(以下、「常用電力」と称す)を消費することになる第3機器、の3つのタイプに分類してあらかじめ登録しておく。
【0004】
そして、分電盤等に配置した電力測定器により負荷機器全体の全体消費電力量と、また、常時運転状態とされる冷蔵庫等の機器に個別に配置した個別電力測定器により常時運転状態機器の個別消費電力量とを、あらかじめ定めた単位時間(例えば1分間隔)ごとに定期的に測定して蓄積していく。
【0005】
しかる後、あらかじめ定めた所定期間(例えば1週間)に亘る負荷機器全体の全体消費電力量と常時運転状態機器の個別消費電力量との定期的な測定結果に基づいて、まず、全体消費電力量から個別消費電力量を差引いた省エネルギー対象の消費電力量を求めて、該省エネルギー対象の消費電力量について単位時間ごとに各日の同一時刻の平均値を算出して、該平均値が大きい順に1から順次インクリメントするラベルを付して、ラベルの順番(つまり単位時間ごとの消費電力量の平均値が大きい順番)に並べ替えた消費電力量の棒グラフの頂点を順次繋ぎ合わせた包絡線グラフからなる負荷持続曲線を作成する。ここで、該負荷持続曲線によって覆われる領域の面積が省エネルギー対象の消費電力量全体を示していることになる。
【0006】
次に、作成した負荷持続曲線を利用することにより、ユーザの電力使用傾向を示す消費電力パターンを判別する。つまり、作成した負荷持続曲線上における「ピーク電力量」、「ベース電力量」、「常用電力量」それぞれの領域の面積が示す各領域ごとの領域別消費電力量について省エネルギー対象の消費電力量全体に対する割合を求めることによって、ユーザの消費電力パターンが、「ピーク電力量過大型」、「ベース電力量過大型」、「常用電力量過大型」のいずれの電力消費傾向になっているかを判別する。
【0007】
判別したユーザの消費電力パターンに基づいて、前記第1機器、前記第2機器、前記第3機器の中から消費電力量が過大になっている負荷機器を特定して、あらかじめ用意している省エネルギー行動案を、ユーザに提示する。
【0008】
このとき、ユーザから当該省エネルギー行動案を実行可能か否かの回答を得ることにより、実行可能との回答が得られたものについては、さらに具体的な省エネルギー行動用のアドバイス情報を提供する。しかる後、消費電力量の定期的な測定結果に基づいて、省エネルギー行動の実施状況のフォローを行う。
【0009】
なお、ユーザが使用する負荷機器の中には、例えば、電気コタツや電気カーペットや扇風機のように、使用する季節が限定されるいわゆる「季節家電」も存在している。このような「季節家電」については、それぞれに個別の電力測定器を備えておき、「季節家電」の消費電力量が過大になっている場合には、前記第1機器、前記第2機器、前記第3機器に優先して、省エネルギー行動案を、ユーザに提示するようにする。
【0010】
かくのごとき省エネルギー支援動作を定期的に行うことによって、ユーザに省エネルギー行動の困難さを感じさせることを防ぎ、ユーザの省エネルギー対策への意欲を継続させることを可能にする仕組みを提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−176373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記特許文献1のように、省エネルギー支援用として、負荷持続曲線を利用してユーザの電力使用傾向を示す消費電力パターンを判別しようとしても、作成した負荷持続曲線上における「ピーク電力量」、「ベース電力量」、「常用電力量」のそれぞれの領域を的確に分類する具体的な実現手段が不明確なままであり、実用に供することができない。
【0013】
さらには、ユーザの個々の負荷機器の使用については、通常の使用状態であっても、時間帯のみならず、季節によっても大きく変動するので、消費電力量が過大になっているか否かを判別することも容易ではなく、前記特許文献1に記載された技術のみでは、季節の如何を問わず、「ピーク電力量」、「ベース電力量」、「常用電力量」のそれぞれの領域について、過大な消費電力量になっているか否かを正確に判別することができない。
【0014】
また、特許文献1においては、「季節家電」に対する省エネルギー動作を優先的に実施可能とするために、季節家電それぞれに個別の電力測定器を必要とし、省エネルギー支援装置としての煩雑化やコスト上昇を招いてしまうという問題もある。
【0015】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、前述のような負荷持続曲線上における「ピーク電力量」、「ベース電力量」、「常用電力量」のそれぞれの領域を明確に分類することができ、かつ、それぞれの領域において消費電力量が過大になっているか否かをより正確にかつ簡便に判別することができる省エネルギー支援装置、省エネルギー支援方法および省エネルギー支援プログラムを提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前述の課題を解決するために、以下のごとき各技術手段から構成されている。
【0017】
第1の技術手段は、ユーザが使用する負荷機器の消費電力量をあらかじめ定めた単位時間ごとに定期的に測定して蓄積し、あらかじめ定めた所定期間が経過する都度、蓄積した前記消費電力量の演算結果に基づいて、ユーザの電力使用傾向を分析することにより、消費電力量の削減が見込まれる負荷機器を特定し、当該負荷機器の消費電力量削減に対応する省エネルギー行動案をユーザに提供する仕組みを有する省エネルギー支援装置であって、蓄積した前記単位時間ごとの前記消費電力量の中から適宜選択した任意日の消費電力量のうち、省エネルギー対象となる消費電力量を抽出して、消費電力量の大きい順番に並べ替えて作成した消費電力量の棒グラフの頂点を順次繋ぎ合わせた包絡線グラフからなる負荷持続曲線を作成する負荷持続曲線作成部と、該負荷持続曲線作成部において作成した前記負荷持続曲線の分析結果に基づいて、該負荷持続曲線上において、前記負荷機器のうち、使用時にあらかじめ定めたピーク電力閾値以上の消費電力量になるいずれかの機器を使用しているピーク電力量領域、使用時に前記ピーク電力閾値よりも少ないものの或る電力量を継続して消費することになるいずれかの機器を使用している常用電力量領域、ユーザの生活行動パターンの如何によらず常時電力を消費することになる機器のみの消費電力量となるベース電力量領域、の3つの領域を判別する領域判別部と、該領域判別部において判別された前記負荷持続曲線上の前記ピーク電力量領域、前記常用電力量領域、前記ベース電力量領域の各領域それぞれの領域別合計消費電力量が前記省エネルギー対象となる消費電力量全体に占める割合を各領域それぞれの領域別消費電力割合として算出し、算出した各領域それぞれの前記領域別消費電力割合が、過大消費電力タイプの判定用として季節ごとに各領域それぞれについてあらかじめ定めた閾値を超えているか否かに基づいて、各領域のいずれの領域において消費電力量が過大になっているか否かを判別する過大消費電力領域判別部と、を少なくとも備えて構成されていることを特徴とする。
【0018】
第2の技術手段は、前記第1の技術手段に記載の省エネルギー支援装置において、前記過大消費電力領域判別部にて前記ピーク電力量領域、前記常用電力量領域、前記ベース電力量領域の各領域のうちいずれか複数の領域において、前記領域別消費電力割合が、対応する領域それぞれの前記閾値を超えている場合、該当する複数の各領域それぞれについて、前記領域別消費電力割合と、対応する領域それぞれの前記閾値との乖離の程度を比較し、前記閾値との乖離の程度が最も大きい領域を消費電力量が過大になっている領域として優先的に判別することを特徴とする。
【0019】
第3の技術手段は、ユーザが使用する負荷機器の消費電力量をあらかじめ定めた単位時間ごとに定期的に測定して蓄積し、あらかじめ定めた所定期間が経過する都度、蓄積した前記消費電力量の演算結果に基づいて、ユーザの電力使用傾向を分析することにより、消費電力量の削減が見込まれる負荷機器を特定し、当該負荷機器の消費電力量削減に対応する省エネルギー行動案をユーザに提供する仕組みを有する省エネルギー支援方法であって、蓄積した前記単位時間ごとの前記消費電力量の中から適宜選択した任意日の消費電力量のうち、省エネルギー対象となる消費電力量を抽出して、消費電力量の大きい順番に並べ替えて作成した消費電力量の棒グラフの頂点を順次繋ぎ合わせた包絡線グラフからなる負荷持続曲線を作成する負荷持続曲線作成ステップと、該負荷持続曲線作成ステップにおいて作成した前記負荷持続曲線の分析結果に基づいて、該負荷持続曲線上において、前記負荷機器のうち、使用時にあらかじめ定めたピーク電力閾値以上の消費電力量になるいずれかの機器を使用しているピーク電力量領域、使用時に前記ピーク電力閾値よりも少ないものの或る電力量を継続して消費することになるいずれかの機器を使用している常用電力量領域、ユーザの生活行動パターンの如何によらず常時電力を消費することになる機器のみの消費電力量となるベース電力量領域、の3つの領域を判別する領域判別ステップと、該領域判別ステップにおいて判別された前記負荷持続曲線上の前記ピーク電力量領域、前記常用電力量領域、前記ベース電力量領域の各領域それぞれの領域別合計消費電力量が前記省エネルギー対象となる消費電力量全体に占める割合を各領域それぞれの領域別消費電力割合として算出し、算出した各領域それぞれの前記領域別消費電力割合が、過大消費電力タイプの判定用として季節ごとに各領域それぞれについてあらかじめ定めた閾値を超えているか否かに基づいて、各領域のいずれの領域において消費電力量が過大になっているか否かを判別する過大消費電力領域判別ステップと、を少なくとも有していることを特徴とする。
【0020】
第4の技術手段は、前記第3の技術手段に記載の省エネルギー支援方法において、前記過大消費電力領域判別ステップにて前記ピーク電力量領域、前記常用電力量領域、前記ベース電力量領域の各領域のうちいずれか複数の領域において、前記領域別消費電力割合が、対応する領域それぞれの前記閾値を超えている場合、該当する複数の各領域それぞれについて、前記領域別消費電力割合と、対応する領域それぞれの前記閾値との乖離の程度を比較し、前記閾値との乖離の程度が最も大きい領域を消費電力量が過大になっている領域として優先的に判別することを特徴とする。
【0021】
第5の技術手段は、前記第3または第4の技術手段に記載の省エネルギー支援方法において、前記過大消費電力領域判別ステップにて各領域それぞれの過大消費電力タイプの判定用として利用する前記閾値は、任意にあらかじめ定義した夏季、冬季、および、春または秋に該当する中間期の3つに分けて、それぞれの季節ごとに適宜定めることを特徴とする。
【0022】
第6の技術手段は、前記第5の技術手段に記載の省エネルギー支援方法において、季節が夏季の場合、前記ピーク電力量領域、前記常用電力量領域、前記ベース電力量領域の各領域それぞれの前記閾値を、30%、55%、15%と定義し、季節が中間期の場合、前記ピーク電力量領域、前記常用電力量領域、前記ベース電力量領域の各領域それぞれの前記閾値を、30%、55%、15%と定義し、季節が冬季の場合、前記ピーク電力量領域、前記常用電力量領域、前記ベース電力量領域の各領域それぞれの前記閾値を、10%、43%、47%と定義することを特徴とする。
【0023】
第7の技術手段は、前記第3ないし第6の技術手段のいずれかに記載の省エネルギー支援方法において、前記領域判別ステップにて前記負荷持続曲線上の前記ピーク電力量領域を判別する際に、前記負荷持続曲線上の前記ピーク電力量領域と前記常用電力量領域との間の境界の位置を示すラベルをL、該ラベルLの位置における消費電力量をa(L)、前記負荷持続曲線上の先頭の位置における最大消費電力量をγ、前記負荷持続曲線上の先頭の位置と最終の位置との中央の位置を示すラベルをL、該ラベルLの位置における消費電力量をa(L)としたとき、
a(L)=γ−0.8{γ−a(L)}
の関係が成立する位置のラベルLと最大消費電力量γになる先頭の位置との間の領域を前記ピーク電力量領域に該当する領域と判別することを特徴とする。
【0024】
第8の技術手段は、前記第3ないし第7の技術手段のいずれかに記載の省エネルギー支援方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施している省エネルギー支援プログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の省エネルギー支援装置、省エネルギー支援方法および省エネルギー支援プログラムによれば、ユーザの単位時間ごとの消費電力量の測定結果に基づいて作成した負荷持続曲線上における「ピーク電力量」、「常用電力量」、「ベース電力量」それぞれの領域を負荷持続曲線の形状を分析することができる条件式に基づいて明確に分類する具体的な仕組みと、それぞれの領域において消費電力量が過大になっているか否かを、季節ごとにあらかじめ定めた各領域ごとの閾値を用いて判別するという具体的な仕組みと、を採用しているので、以下のごとき効果を奏することができる。なお、該条件式や閾値は、サンプル数として十分な人数(例えば20人)のユーザのモニタによる実証実験結果に基づいて、適切と判断した根拠のある値を用いることが望ましい。
【0026】
第1に、負荷持続曲線を利用して、ユーザの電力消費傾向が、「ピーク電力量過大型」、「ベース電力量過大型」、「常用電力量過大型」のいずれかのタイプになっているかを、消費電力量が季節によって変動しても、正確にかつ簡便に判別することができ、ユーザに対して、的確な省エネルギー行動案を提示することができる。
【0027】
第2に、季節ごとにあらかじめ定めた閾値を用いて判別しているので、従来の技術のように、季節家電ごとに個別の電力測定器を備える必要がなく、経済的に実現することができ、また、省エネルギー支援用に煩雑な判別処理を行う必要もないので、ユーザに対して、迅速に省エネルギー行動案を提示することができる。
【0028】
第3に、ユーザの電力消費傾向が、「ピーク電力量過大型」、「ベース電力量過大型」、「常用電力量過大型」の複数のタイプに該当する場合であっても、前記閾値との乖離程度を考慮して、優先して該当すべきタイプを選択するという仕組みも導入することを可能としており、ユーザの電力消費傾向が、「ピーク電力量過大型」、「ベース電力量過大型」、「常用電力量過大型」のいずれかに偏って判別されることもなく、ユーザに対して、より的確な省エネルギー行動案を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る省エネルギー支援装置のブロック構成の一例を示す装置構成図である。
【図2】図1の消費電力量登録テーブルの登録例を示すテーブルである。
【図3】図1の季節・時間帯登録テーブルの登録例を示すテーブルである。
【図4】図1の省エネルギー支援装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【図5】あらかじめ定めた単位時間ごとに測定した消費電力量に基づいて作成した負荷持続曲線の一例を示す説明図である。
【図6】「ピーク電力量」、「常用電力量」、「ベース電力量」の各領域において過大消費電力タイプになっているか否かを判定するための閾値を季節ごとにそれぞれ登録している過大消費電力タイプ判定閾値登録テーブルの一例を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明に係る省エネルギー支援装置、省エネルギー支援方法および省エネルギー支援プログラムの好適な実施形態について、その一例を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、本発明による省エネルギー支援装置および省エネルギー支援方法について説明するが、かかる省エネルギー支援方法をコンピュータにより実行可能な省エネルギー支援プログラムとして実施するようにしても良いし、さらに、かかる省エネルギー支援プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。
【0031】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、前記特許文献1と同様、全体消費電力量から個別消費電力量を差引いた省エネルギー対象の消費電力量について大きい順に1から順次インクリメントするラベルを付して、ラベルの順番(つまり単位時間ごとの消費電力量が大きい順番)に並べ替えた消費電力量の棒グラフの頂点を順次繋ぎ合わせた包絡線グラフからなる負荷持続曲線を利用して、ユーザの電力消費傾向が「ピーク電力量過大型」、「ベース電力量過大型」、「常用電力量過大型」のいずれかのタイプになっているかを判別して、判別結果に応じた省エネルギー行動案をユーザに対して提示することによって、ユーザの省エネルギーへの意欲を維持させ、省エネルギー行動を継続的に実施させる省エネルギー支援装置、省エネルギー支援方法および省エネルギー支援プログラムを提供するものである。
【0032】
ここで、本発明においては、前記特許文献1における前述のような課題を解決し、前記負荷持続曲線の分析結果に基づいて、該負荷持続曲線の形状を簡便に把握することができ、該負荷持続曲線上における「ピーク電力量」、「常用電力量」、「ベース電力量」それぞれの領域を明確に分類することができる具体的な条件式を定義するとともに、それぞれの領域において消費電力量が過大になっているか否かを判別するための各領域毎の閾値を、ユーザの通常時の電力消費傾向が季節ごとに異なることを考慮した値としてあらかじめ定めることによって、ユーザの電力消費傾向が、季節の如何によらず、より正確にかつより簡便に、「ピーク電力量過大型」、「ベース電力量過大型」、「常用電力量過大型」のいずれかのタイプになっているかを判別することを可能にしていることを主要な特徴にしている。なお、該条件式および該閾値はサンプル数として十分な人数(例えば20人)のユーザのモニタによる実証実験結果に基づいて、適切と判断した根拠のあるものを用いている。
【0033】
より具体的には、省エネルギー対象の消費電力量について、負荷持続曲線に付した各ラベルのうちの先頭のラベルすなわちラベル1(つまり、単位時間ごとに消費電力量を測定した各測定時刻のうち、最も大きい消費電力量を測定した測定時刻に紐付けされたラベル)と最終のラベル例えばラベルL(つまり、最も小さい消費電力量を測定した測定時刻に紐付けされたラベル)との丁度中央に位置するラベル例えばラベルLにおける消費電力量(中央位置消費電力量a(L))を先頭のラベル1における最大消費電力量γから差引いた差分電力量αの80%に相当する電力量が最大消費電力量γよりも少ない消費電力量になっているラベル例えばラベルLの位置を、負荷持続曲線上で「ピーク電力量」と「常用電力量」との領域を区分けする位置であるものとして決定する。
【0034】
すなわち、中央に位置するラベル例えばラベルLについては、最終ラベルの(1/2)であり、
= L/2
で与えられる。また、該中央に位置するラベル例えばラベルLにおける消費電力量すなわち中央位置消費電力量をa(L)と表現すると、中央位置消費電力量a(L)を先頭のラベル1における最大消費電力量γから差引いた差分電力量αは、
α = γ−a(L
で与えられる。
【0035】
したがって、「ピーク電力量」と「常用電力量」との領域を区分けする位置のラベル例えばラベルLの位置は、消費電力量a(L)が
β = γ−0.8α = γ−0.8{γ−a(L)}
に等しくなっている位置として特定する。
【0036】
また、負荷持続曲線上で「常用電力量」と「ベース電力量」との領域を区分けする位置は、最も小さい消費電力量(ベース電力量)として略一定に維持されるユーザの非活動時間(睡眠時間)に移行する就寝時刻に相当するラベル例えばラベルLの位置とすれば良い。
【0037】
かくのごとき条件式を用いることによって、負荷持続曲線上において先頭のラベル1からラベルLの位置までの領域、ラベルLの位置からラベルLの位置までの領域、ラベルLの位置から最終のラベルLの位置までの領域を、「ピーク電力量」、「常用電力量」、「ベース電力量」それぞれの領域として具体的に明確に分類することができる。
【0038】
また、負荷持続曲線上における「ピーク電力量」、「常用電力量」、「ベース電力量」それぞれの領域において過大な消費電力量になっているか否かを判別するための過大消費電力タイプ判定閾値を、ユーザに対応して任意に決定した期間としてあらかじめ定義した季節(具体的には、夏季、冬季、および、春または秋に相当する中間期の3つの季節)ごとに、それぞれの領域に対応付けて、十分なサンプル数のユーザのモニタ結果に基づいてあらかじめ定めている。
【0039】
具体的には、「ピーク電力量」、「常用電力量」、「ベース電力量」それぞれの領域における消費電力量の合計である領域別合計消費電力量が省エネルギー対象の消費電力量全体に占める割合を、それぞれの領域の領域別消費電力割合として算出して、過大消費電力タイプの判定用として季節ごとに各領域それぞれについてあらかじめ定義した過大消費電力タイプ判定閾値を超えているか否かに基づいて、「ピーク電力量」、「常用電力量」、「ベース電力量」それぞれの領域において消費電力量が過大になっているか否かを判別するようにしている。
【0040】
かくのごとき季節ごとの過大消費電力タイプ判定閾値を用いることによって、季節の如何によらず、過大な消費電力量になっている領域を、正確にかつ簡便に判別することができ、また、電気コタツや電気カーペットのように季節により使用の有無が左右される季節家電それぞれについて従来の技術のような個別の電力測定器を配置する必要もなくなるので、省エネルギー支援装置のコスト低減を実現することも可能になる。
【0041】
(実施形態の構成例)
次に、本発明に係る省エネルギー支援装置の構成例について図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る省エネルギー支援装置のブロック構成の一例を示す装置構成図であり、消費電力量に関する省エネルギー支援を行う際に、ユーザの電力消費傾向を把握するために、単位時間(例えば1分)ごとの消費電力量の測定結果に基づいて作成した負荷持続曲線上で「ピーク電力量」、「常用電力量」、「ベース電力量」の各領域を区分けし、それぞれの領域において消費電力量が過大になっているか否かを判別することに関連する部位のみを抽出して示している。
【0042】
図1に示す省エネルギー支援装置100は、ユーザの消費電力量を登録管理するための消費電力量管理部10、季節や1日の時間帯を登録管理するための季節・時間帯管理部20、ユーザの消費電力の傾向を判別する電力消費タイプ判別部30、省エネルギー用の行動をユーザに促すための省エネルギー行動管理部40を少なくとも備えている。
【0043】
消費電力量管理部10は、消費電力測定部11、消費電力登録部12、消費電力抽出部13、消費電力量登録テーブル14、を少なくとも備えている。消費電力測定部11は、ユーザの消費電力量をあらかじめ定めた時間間隔(例えば1分間隔)で定期的に測定する。消費電力登録部12は、消費電力測定部11によって定期的に測定した消費電力量を消費電力量登録テーブル14に順次登録する。消費電力抽出部13は、消費電力量登録テーブル14から指定した任意の日時の消費電力量を抽出する。
【0044】
消費電力量登録テーブル14の登録例を図2に示している。消費電力量登録テーブル14は、ユーザ(電力需要者)の住居ごとの分電盤等に設置された電力測定器によって各住居全体の消費電力量を、あらかじめ定めた時間間隔で定期的に測定して、測定日時とともに、登録するテーブルであり、図2に示す登録例では、2010年8月13日の14時08分から単位時間として1分ごとに或るユーザの住居全体の消費電力量を逐次登録している例を示している。
【0045】
季節・時間帯管理部20は、季節・時間帯登録部21、季節判別部22、時間帯判別部23、季節・時間帯登録テーブル24、を少なくとも備えている。季節・時間帯登録部21は、季節・時間帯登録テーブル24に季節および時間帯をユーザごとに適宜定義してあらかじめ登録する。季節判別部22は、季節・時間帯登録テーブル24に登録された季節情報に基づいて、消費電力抽出部13によって消費電力量登録テーブル14から抽出された消費電力量の測定日時がどの季節であるかを判別する。時間帯判別部23は、季節・時間帯登録テーブル24に登録された時間帯情報に基づいて、消費電力抽出部13によって消費電力量登録テーブル14から抽出された消費電力量の測定日時がどの時間帯であるかを判別する。
【0046】
季節・時間帯登録テーブル24の登録例を図3に示している。図3(A)の季節登録テーブル24aは、季節の定義を登録しており、消費電力量を測定した日付が7月、8月、9月であれば、「夏季」であり、消費電力量を測定した日付が12月、1月、2月であれば、「冬季」であり、消費電力量を測定した日付が、それらの月以外の3月、4月、5月、6月、10月、11月であれば、「中間期(春・秋)」である旨が定義されている例を示している。なお、季節の定義は、ユーザ(電力需要者)が居住する環境に応じて、それぞれで異なる定義を設定登録することが可能である。
【0047】
また、図3(B)の時間帯登録テーブル24bは、6つの時間帯の定義を登録しており、消費電力量を測定した時刻が、就寝時刻〜起床時刻の間の時刻であれば、「深夜」の時間帯であり、消費電力量を測定した時刻が、起床時刻〜朝食終了時刻の間の時刻であれば、「朝」の時間帯であり、消費電力量を測定した時刻が、朝食終了時刻〜昼食終了時刻の間の時刻であれば、「午前」の時間帯であり、消費電力量を測定した時刻が、昼食終了時刻〜午後5時の間の時刻であれば、「午後」の時間帯であり、消費電力量を測定した時刻が、午後5時〜夕食終了時刻の間の時刻であれば、「夕方」の時間帯であり、消費電力量を測定した時刻が、夕食終了時刻〜就寝時刻の間の時刻であれば、「夜」の時間帯である旨が定義されている例を示している。なお、各時間帯の具体的な開始時刻、終了時刻は、ユーザ(電力需要者)の通常の行動パターンに応じて、ユーザそれぞれで定義して設定登録することが可能である。
【0048】
電力消費タイプ判別部30は、省エネルギー消費電力量算出部31、負荷持続曲線作成部32、領域判別部33、過大消費電力領域判別部34、を少なくとも備えている。省エネルギー消費電力量算出部31は、消費電力抽出部13によって消費電力量登録テーブル14から抽出された任意日の(1日分)の各単位時間それぞれについて消費電力量全体から常時使用する必要がある機器例えば冷蔵庫の消費電力量を差し引いて省エネルギー行動の対象となる消費電力量を算出する。
【0049】
負荷持続曲線作成部32は、省エネルギー消費電力量算出部31によって算出した各単位時間ごとの省エネルギー対象用の消費電力量について消費電力量の大きい順番に1から順次インクリメントするラベルを付して、ラベルの順番(つまり単位時間ごとの消費電力量が大きい順番)に並べ替えた消費電力量の棒グラフの頂点を順次繋ぎ合わせた包絡線グラフからなる負荷持続曲線を作成する。すなわち、蓄積した単位時間ごとの消費電力量の中から適宜選択した任意日の消費電力量のうち、省エネルギー対象となる消費電力量を抽出して、消費電力量の大きい順番に1から順次インクリメントするラベルを付し、ラベルの小さい順に並べ替えて作成した消費電力量の棒グラフの頂点を順次繋ぎ合わせた包絡線グラフからなる負荷持続曲線を作成する。
【0050】
領域判別部33は、負荷持続曲線作成部32によって作成した負荷持続曲線上の「ピーク電力量」、「常用電力量」、「ベース電力量」の各領域を該負荷持続曲線の形状の分析により得られるあらかじめ定めた条件式を用いて判別する。すなわち、負荷持続曲線作成部32において作成した負荷持続曲線の分析結果に基づいて、該負荷持続曲線上において、負荷機器のうち、使用時にあらかじめ定めたピーク電力閾値以上の消費電力量になるいずれかの機器を使用しているピーク電力量領域、使用時に該ピーク電力閾値よりも少ないものの或る電力量を継続して消費することになるいずれかの機器を使用している常用電力量領域、ユーザの生活行動パターンの如何によらず常時電力を消費することになる機器のみの消費電力量となるベース電力量領域、の3つの領域を判別する。
【0051】
過大消費電力領域判別部34は、領域判別部33によって判別した負荷持続曲線上の「ピーク電力量」、「常用電力量」、「ベース電力量」の各領域について、消費電力量が過大になっているか否かを、季節ごとに「夏季閾値」、「中間期閾値」、「冬季閾値」としてあらかじめ定めた閾値を利用して判別する。すなわち、領域判別部33において判別された負荷持続曲線上のピーク電力量領域、常用電力量領域、ベース電力量領域の各領域それぞれの領域別合計消費電力量が省エネルギー対象となる消費電力量全体に占める割合を各領域それぞれの領域別消費電力割合として算出し、算出した各領域それぞれの領域別消費電力割合が、過大消費電力タイプの判定用として季節ごとに各領域それぞれについてあらかじめ定めた閾値(「夏季閾値」、「中間期閾値」、「冬季閾値」)を超えているか否かに基づいて、各領域のいずれの領域において消費電力量が過大になっているか否かを判別する。
【0052】
省エネルギー行動管理部40は、省エネルギー行動提案部41、消費電力量評価部42を、少なくとも備えている。省エネルギー行動提案部41は、消費電力タイプ判別部30により判別されたユーザの電力消費傾向に基づいて、ユーザに省エネルギー行動を促すための省エネルギー行動案を提案する。消費電力量評価部42は、省エネルギー行動案の提案を行った結果の消費電力量を評価する。
【0053】
以上の説明においては、省エネルギー支援装置100を構成する消費電力量管理部10、季節・時間帯管理部20、電力消費タイプ判別部30、省エネルギー行動管理部40の各部位をハードウェアにより実現する例を示しているが、それぞれの部位をソフトウェアやファームウェア等の他の手段を用いて実現するようにしても良く、例えば、省エネルギー支援方法として、あるいは、コンピュータによって実行可能なコンピュータプログラムつまり省エネルギー支援プログラムとして、消費電力量管理部10、季節・時間帯管理部20、電力消費タイプ判別部30、省エネルギー行動管理部40それぞれを、消費電力量管理ステップ10、季節・時間帯管理ステップ20、電力消費タイプ判別ステップ30、省エネルギー行動管理ステップ40として実施するようにしても良い。
【0054】
省エネルギー支援方法として実施する場合やコンピュータプログラムとして実施する場合には、消費電力量管理部10、季節・時間帯管理部20、電力消費タイプ判別部30、省エネルギー行動管理部40それぞれに含まれている消費電力測定部11、消費電力登録部12、消費電力抽出部13、季節・時間帯登録部21、季節判別部22、時間帯判別部23、省エネルギー消費電力量算出部31、負荷持続曲線作成部32、領域判別部33、過大消費電力領域判別部34、省エネルギー行動提案部41、消費電力量評価部42も、それぞれ、消費電力測定ステップ11、消費電力登録ステップ12、消費電力抽出ステップ13、季節・時間帯登録ステップ21、季節判別ステップ22、時間帯判別ステップ23、省エネルギー消費電力量算出ステップ31、負荷持続曲線作成ステップ32、領域判別ステップ33、過大消費電力領域判別ステップ34、省エネルギー行動提案ステップ41、消費電力量評価ステップ42として実施することになる。
【0055】
さらには、かくのごとき各ステップからなる省エネルギー支援プログラムをコンピュータによる読取りが可能な記録媒体に記録したプログラム記録媒体として提供するようにしても良い。かかる記録媒体としては、ハードディスクドライブ等の磁気ディスクやCD−ROM、DVD−ROM等の光ディスク、半導体メモリ等のデジタルデータを記録することが可能な任意の媒体を用いることができる。
【0056】
(実施形態の動作例)
次に、図1に示した省エネルギー支援装置100の動作について、図4のフローチャートを用いて詳細に説明する。図4は、図1の省エネルギー支援装置100の動作の一例を説明するフローチャートであり、本発明に係る省エネルギー支援方法の一例として、任意日の消費電力量の測定結果に基づいて作成した負荷持続曲線により、ユーザの電力消費傾向を判別する際の動作の一例を示している。
【0057】
なお、図4のフローチャートに先立って、消費電力量管理部10の消費電力測定部11によってあらかじめ定めた時間間隔(例えば1分間隔)で定期的にユーザの住居全体の消費電力量を測定して、消費電力登録部12によって、図2に示すように、消費電力量登録テーブル14に、省エネルギー支援動作に必要な所要期間に亘る消費電力量があらかじめ登録されている状態にあるものとする。
【0058】
また、季節・時間帯管理部20の季節・時間帯登録部21によって、当該ユーザの生活行動に基づいて決定される「夏季」、「冬季」、「中間期」の季節に関する定義、および、「深夜」、「朝」、「午前」、「午後」、「夕方」、「夜」の時間帯に関する定義が、季節・時間帯登録テーブル24にあらかじめ登録されている状態にあるものとする。
【0059】
消費電力量登録テーブル14、季節・時間帯登録テーブル24に既に所要のデータが登録されている状態で、図4のフローチャートが起動されると、まず、消費電力量管理部10の消費電力抽出部13は、省エネルギー支援動作に必要とする所要期間内のうち、適宜決めた順番に選択した任意日について、あらかじめ定めた単位時間(例えば1分)ごとに測定した1日分の消費電力量全体および冷蔵庫の消費電力量に関するデータを、測定日時とともに消費電力量登録テーブル14から抽出する(ステップS1)。
【0060】
次いで、電力消費タイプ判別部30の省エネルギー消費電力量算出部31において、各単位時間ごとの消費電力量全体から同一測定時刻の冷蔵庫の消費電力量を差し引いて、省エネルギー対象の消費電力量を算出する(ステップS2)。
【0061】
しかる後、負荷持続曲線作成部32において、省エネルギー消費電力量算出部31によって算出した各単位時間ごとの省エネルギー対象用の消費電力量について消費電力量の大きい順番に1から順次インクリメントするラベルを付して、ラベルの順番(つまり単位時間ごとの消費電力量が大きい順番)に並べ替えた消費電力量の棒グラフの頂点を順次繋ぎ合わせた包絡線グラフからなる負荷持続曲線LC(Load Continuous Curve)を作成する(ステップS3)。
【0062】
負荷持続曲線LCは、図5に示すように、横軸には、各測定時刻に紐付けされたラベルlが消費電力量の大きい順に付された番号順に並び、縦軸には、それぞれのラベルに紐付けされた測定時刻における消費電力量a(l)を示している。ここに、図5は、あらかじめ定めた単位時間ごとに測定した消費電力量に基づいて作成した負荷持続曲線LCの一例を示す説明図である。
【0063】
負荷持続曲線LCが作成されると、次に、領域判別部23によって、負荷持続曲線LC上における「ピーク電力量」、「常用電力量」、「ベース電力量」の各領域を判別する(ステップS4)。
【0064】
すなわち、使用時に一時的にあらかじめ定めたピーク電力閾値以上の大きな消費電力(以下、「ピーク電力」と称す)になる第1機器のいずれかが使用されていることを示す領域である「ピーク電力量」領域、照明やエアコンのように、第1機器は使用されていなく、前記ピーク電力閾値よりも少ない消費電力量であるものの、ユーザの生活に応じて、それぞれ使用している間継続して電力(以下、「常用電力」と称す)を消費することになる第3機器いずれかが使用されていることを示す領域である「常用電力量」領域、テレビの待機電源やルータ装置や暖房便座のように、ユーザの生活行動に関係することなく、常時電力(以下、「ベース電力」と称す)を消費する第2機器しか使用されていないことを示す領域である「ベース電力量」領域、の3つの領域に、負荷持続局線上の領域を区分けする。
【0065】
具体的には、次のような手順により、負荷持続曲線の分析結果に基づいて、負荷持続曲線上の各領域の境界位置を決定する。まず、図5に示すように、負荷持続曲線LCに付した各ラベルの先頭のラベルつまりラベル1(つまり、単位時間ごとに消費電力量を測定した各測定時刻のうち、最も大きい消費電力量を測定した測定時刻に紐付けされたラベル)と最終のラベル例えばラベルL(つまり、最も小さい消費電力量を測定した測定時刻に紐付けされたラベル)との丁度中央に位置するラベル例えばラベルLの位置を
= L/2
により求める。
【0066】
次いで、丁度中央に位置するラベル例えばラベルLに紐付けされた測定時刻における省エネルギー対象の消費電力量すなわち中央位置消費電力量a(L)を取り出して、先頭のラベル1における省エネルギー対象の最大消費電力量γからの差分電力量αを
α = γ−a(L
により求める。該差分電力量αは、1日分のラベルl(l=1〜L)の丁度中央の位置における中央位置消費電力量a(L)が最大消費電力量γからどの程度減少しているかを示しており、負荷持続曲線LCの形状つまりユーザの電力消費傾向を端的に示す指標となるものである。
【0067】
そこで、かくのごとき簡便な負荷持続曲線LCの形状の分析結果に基づいて、ラベル中央の位置における該差分電力量αの80%に相当する電力量まで最大消費電力量γから消費電力量が減少しているラベルの位置を、負荷持続曲線LC上において、「ピーク電力量」と「常用電力量」との領域を区分けする境界位置として特定することにする。かかる境界位置の特定は、サンプル数として十分な人数(例えば20人)のユーザのモニタによる実証実験結果に基づいて、適切と判断した根拠のあるものである。
【0068】
つまり、「ピーク電力量」と「常用電力量」との領域を区分けする位置のラベル例えばラベルLの位置を、消費電力量a(L)が
β = γ−0.8α = γ−0.8{γ−a(L)}
に等しくなっている位置として決定する。
【0069】
かくのごとき簡明な条件式を適用することにより、「ピーク電力量」と「常用電力量」との領域を区分けする位置を決定することができ、図5に示すように、「ピーク電力量」の領域を、先頭のラベル1からラベルLまでの負荷持続曲線LCが覆う領域として特定することができる。
【0070】
一方、負荷持続曲線LC上で「常用電力量」と「ベース電力量」との領域を区分けする位置は、最終のラベルLの位置に相当する測定時刻において最小消費電力量と略等しい消費電力量が維持されている領域が「ベース電力量」の領域と看做す。したがって、最小消費電力量からあらかじめ定めた電力量だけ変動したラベルの位置として決定すれば良い。しかし、「ベース電力量」領域のような最小消費電力量の近傍のラベル付近においては消費電力量の変動量も極端に少なくなっているので、「常用電力量」と「ベース電力量」との領域を区分けするためのあらかじめ定めた電力量だけ変動した位置を正確に判別することは一般に困難である。
【0071】
そこで、本実施形態においては、かくのごとき「ベース電力量」の領域をより簡便に判別するために、ユーザの非活動時間(睡眠時間)に移行する就寝時刻に相当するラベル例えばラベルLの位置を、「常用電力量」から「ベース電力量」の領域へ切り替わる位置として特定することとする。
【0072】
かかる「常用電力量」と「ベース電力量」との領域の境界位置の特定についても、サンプル数として十分な人数(例えば20人)のユーザのモニタによる実証実験結果に基づいて、適切と判断した根拠のあるものである。
【0073】
この結果、図5に示すように、「常用電力量」の領域を、ラベルLからラベルLまでの負荷持続曲線LCが覆う領域として特定することができ、さらに、「ベース電力量」の領域を、ラベルLから最終のラベルLまでの負荷持続曲線LCが覆う領域として特定することができる。
【0074】
次に、図4のフローチャートに戻って、過大消費電力領域判別部34において、ユーザの消費電力傾向として、領域判別部33にて判別された負荷持続曲線LC上における「ピーク電力量」、「常用電力量」、「ベース電力量」の各領域において、過大な消費電力量になっているか否かを判別する。このため、まず、「ピーク電力量」、「常用電力量」、「ベース電力量」の各領域それぞれにおける消費電力量の合計を領域別合計消費電力量としてそれぞれ算出し、しかる後、それぞれの領域における領域別合計消費電力量が、省エネルギー対象の消費電力量全体に占める割合を領域別消費電力割合として算出する。
【0075】
次いで、算出した各領域それぞれにおける領域別消費電力割合について、過大消費電力タイプの判定用として季節ごとに各領域それぞれについてあらかじめ定めた閾値(すなわち、ピーク電力量領域、常用電力量領域、ベース電力量領域それぞれの領域における夏季閾値、中間期閾値、冬季閾値)のうち、消費電力量の測定日時に該当する季節に関する各領域ごとの閾値と比較し、該閾値を超えていた場合には、該当する領域において過大な消費電力量になっているものと判定して、ユーザに対して適切な省エネルギー行動案を提示すべき旨を決定する。
【0076】
すなわち、過大消費電力領域判別部34においては、次のような手順にしたがって、各領域について過大な消費電力になっているか否かを判別する。領域判別部33にて判別された負荷持続曲線LC上における領域が「ピーク電力量」の領域であった場合は(ステップS4の「ピーク電力」の場合)、まず、次の式(1)を用いて、ラベル1からラベルLまでの「ピーク電力量」領域における省エネルギー対象の合計消費電力量すなわちピーク電力量Pを算出し、しかる後、ピーク電力量Pが、省エネルギー対象の消費電力量P全体に占める割合を算出する(ステップS51)。ここに、省エネルギー対象の消費電力量Pは、負荷持続曲線LCの先頭のラベル1から最終のラベルLまでの消費電力量の合計で与えられる。
【0077】
【数1】

そして、次に、季節判別部22を用いて、対象とする当該任意日に関する測定日時を、季節・時間帯登録テーブル24の季節登録テーブル24aの定義内容と比較することによって、当該測定日時が示す季節が、「夏季」、「中間期」、「冬季」のいずれであるかを判別する(ステップS61)。
【0078】
当該測定日時が示す季節が、「夏季」であると判別した場合は(ステップS61の「夏季」の場合)、図6に示す過大消費電力タイプ判定閾値を参照して、夏季閾値のうち、ピーク電力値領域における過大消費電力タイプ判定閾値である夏季ピーク閾値30%を用いて、
/P>30%
の関係が成立していた場合には、ピーク電力値領域の合計消費電力量であるピーク電力量Pの割合は、夏季における過大消費電力量タイプを判別するためにあらかじめ定めた夏季ピーク閾値30%を超えているので、ピーク電力量領域において過大な消費電力量になっているものと判定する(ステップS71)。
【0079】
なお、図6は、「ピーク電力量」、「常用電力量」、「ベース電力量」の各領域において、過大消費電力タイプになっているか否かを判定するための閾値を、「夏季」、「中間期(春・秋)」、「冬季」の季節ごとに、それぞれ、登録している過大消費電力タイプ判定閾値登録テーブルの一例を示すテーブルである。
【0080】
一方、
/P≦30%
の関係にあった場合には、夏季ピーク閾値30%以下であるので、ピーク電力量領域において過大な消費電力量になっていないものと判定する(ステップS71)。
【0081】
また、当該測定日時が示す季節が、「中間期」であると判別した場合は(ステップS61の「中間期」の場合)、図6に示す過大消費電力タイプ判定閾値を参照して、中間期閾値のうち、ピーク電力値領域における過大消費電力タイプ判定閾値である中間期ピーク閾値30%を用いて、夏季の場合と同様、
/P>30%
の関係が成立していた場合には、ピーク電力値領域の合計消費電力量であるピーク電力量Pの割合は、中間期における過大消費電力量タイプを判別するためにあらかじめ定めた中間期ピーク閾値30%を超えているので、ピーク電力量領域において過大な消費電力量になっているものと判定する(ステップS81)。
【0082】
一方、
/P≦30%
の関係にあった場合には、中間期ピーク閾値30%以下であるので、ピーク電力量領域において過大な消費電力量になっていないものと判定する(ステップS81)。
【0083】
また、当該測定日時が示す季節が、「冬季」であると判別した場合は(ステップS61の「冬季」の場合)、図6に示す過大消費電力タイプ判定閾値を参照して、冬季閾値のうち、ピーク電力値領域における過大消費電力タイプ判定閾値である冬季ピーク閾値10%を用いて、夏季の場合とは異なり、
/P>10%
の関係が成立していた場合には、ピーク電力値領域の合計消費電力量であるピーク電力量Pの割合は、冬季における過大消費電力量タイプを判別するためにあらかじめ定めた冬季ピーク閾値10%を超えているので、ピーク電力量領域において過大な消費電力量になっているものと判定する(ステップS91)。
【0084】
一方、
/P≦10%
の関係にあった場合には、冬季ピーク閾値10%以下であるので、ピーク電力量領域において過大な消費電力量になっていないものと判定する(ステップS91)。
【0085】
また、「常用電力量」領域、「ベース電力量」領域についても、「ピーク電力量」領域の場合と同様の判別処理を行う。すなわち、領域判別部33にて判別された負荷持続曲線LC上における領域が「常用電力量」の領域であった場合は(ステップS4の「常用電力」の場合)、まず、次の式(2)を用いて、ラベルLからラベルLまでの「常用電力量」領域における省エネルギー対象の合計消費電力量すなわち常用電力量Pを算出し、しかる後、常用電力量Pが、省エネルギー対象の消費電力量P全体に占める割合を算出する(ステップS52)。
【0086】
【数2】

そして、次に、「ピーク電力量」の領域の場合と同様、季節判別部22を用いて、対象とする当該任意日に関する測定日時を、季節・時間帯登録テーブル24の季節登録テーブル24aの定義内容と比較することによって、当該測定日時が示す季節が、「夏季」、「中間期」、「冬季」のいずれであるかを判別する(ステップS62)。
【0087】
当該測定日時が示す季節が、「夏季」であると判別した場合は(ステップS62の「夏季」の場合)、図6に示す過大消費電力タイプ判定閾値を参照して、夏季閾値のうち、常用電力値領域における過大消費電力タイプ判定閾値である夏季常用閾値55%を用いて、
/P>55%
の関係が成立していた場合には、常用電力値領域の合計消費電力量である常用電力量Pの割合は、夏季における過大消費電力量タイプを判別するためにあらかじめ定めた夏季常用閾値55%を超えているので、常用電力量領域において過大な消費電力量になっているものと判定する(ステップS72)。
【0088】
一方、
/P≦55%
の関係にあった場合には、夏季常用閾値55%以下であるので、常用電力量領域において過大な消費電力量になっていないものと判定する(ステップS72)。
【0089】
また、当該測定日時が示す季節が、「中間期」であると判別した場合は(ステップS62の「中間期」の場合)、図6に示す過大消費電力タイプ判定閾値を参照して、中間期閾値のうち、常用電力値領域における過大消費電力タイプ判定閾値である中間期常用閾値55%を用いて、夏季の場合と同様、
/P>55%
の関係が成立していた場合には、常用電力値領域の合計消費電力量である常用電力量Pの割合は、中間期における過大消費電力量タイプを判別するためにあらかじめ定めた中間期常用閾値55%を超えているので、常用電力量領域において過大な消費電力量になっているものと判定する(ステップS82)。
【0090】
一方、
/P≦55%
の関係にあった場合には、中間期常用閾値55%以下であるので、常用電力量領域において過大な消費電力量になっていないものと判定する(ステップS82)。
【0091】
また、当該測定日時が示す季節が、「冬季」であると判別した場合は(ステップS62の「冬季」の場合)、図6に示す過大消費電力タイプ判定閾値を参照して、冬季閾値のうち、常用電力値領域における過大消費電力タイプ判定閾値である冬季常用閾値43%を用いて、夏季の場合とは異なり、
/P>43%
の関係が成立していた場合には、常用電力値領域の合計消費電力量である常用電力量Pの割合は、冬季における過大消費電力量タイプを判別するためにあらかじめ定めた冬季常用閾値43%を超えているので、常用電力量領域において過大な消費電力量になっているものと判定する(ステップS92)。
【0092】
一方、
/P≦43%
の関係にあった場合には、冬季常用閾値43%以下であるので、常用電力量領域において過大な消費電力量になっていないものと判定する(ステップS92)。
【0093】
また、領域判別部33にて判別された負荷持続曲線LC上における領域が「ベース電力量」の領域であった場合は(ステップS4の「ベース電力」の場合)、まず、次の式(3)を用いて、ラベルLからラベルLまでの「ベース電力量」領域における省エネルギー対象の合計消費電力量すなわちベース電力量Pを算出し、しかる後、ベース電力量Pが、省エネルギー対象の消費電力量P全体に占める割合を算出する(ステップS53)。
【0094】
【数3】

そして、次に、「ピーク電力量」の領域の場合と同様、季節判別部22を用いて、対象とする当該任意日に関する測定日時を、季節・時間帯登録テーブル24の季節登録テーブル24aの定義内容と比較することによって、当該測定日時が示す季節が、「夏季」、「中間期」、「冬季」のいずれであるかを判別する(ステップS62)。
【0095】
当該測定日時が示す季節が、「夏季」であると判別した場合は(ステップS63の「夏季」の場合)、図6に示す過大消費電力タイプ判定閾値を参照して、夏季閾値のうち、ベース電力値領域における過大消費電力タイプ判定閾値である夏季ベース閾値15%を用いて、
/P>15%
の関係が成立していた場合には、ベース電力値領域の合計消費電力量であるベース電力量Pの割合は、夏季における過大消費電力量タイプを判別するためにあらかじめ定めた夏季ベース閾値15%を超えているので、ベース電力量領域において過大な消費電力量になっているものと判定する(ステップS73)。
【0096】
一方、
/P≦15%
の関係にあった場合には、夏季ベース閾値15%以下であるので、ベース電力量領域において過大な消費電力量になっていないものと判定する(ステップS72)。
【0097】
また、当該測定日時が示す季節が、「中間期」であると判別した場合は(ステップS62の「中間期」の場合)、図6に示す過大消費電力タイプ判定閾値を参照して、中間期閾値のうち、ベース電力値領域における過大消費電力タイプ判定閾値である中間期ベース閾値15%を用いて、夏季の場合と同様、
/P>15%
の関係が成立していた場合には、ベース電力値領域の合計消費電力量であるベース電力量Pの割合は、中間期における過大消費電力量タイプを判別するためにあらかじめ定めた中間期ベース閾値15%を超えているので、ベース電力量領域において過大な消費電力量になっているものと判定する(ステップS83)。
【0098】
一方、
/P≦15%
の関係にあった場合には、中間期ベース閾値15%以下であるので、ベース電力量領域において過大な消費電力量になっていないものと判定する(ステップS83)。
【0099】
また、当該測定日時が示す季節が、「冬季」であると判別した場合は(ステップS63の「冬季」の場合)、図6に示す過大消費電力タイプ判定閾値を参照して、冬季閾値のうち、ベース電力値領域における過大消費電力タイプ判定閾値である冬季ベース閾値47%を用いて、夏季の場合とは異なり、
/P>47%
の関係が成立していた場合には、ベース電力値領域の合計消費電力量であるベース電力量Pの割合は、冬季における過大消費電力量タイプを判別するためにあらかじめ定めた冬季ベース閾値47%を超えているので、ベース電力量領域において過大な消費電力量になっているものと判定する(ステップS93)。
【0100】
一方、
/P≦47%
の関係にあった場合には、冬季ベース閾値47%以下であるので、ベース電力量領域において過大な消費電力量になっていないものと判定する(ステップS93)。
【0101】
以上のように、「ピーク電力量」、「常用電力量」、「ベース電力量」の各領域それぞれにおいて、過大消費電力タイプになっているか否かを判定するための閾値を、「夏季」、「中間期(春・秋)」、「冬季」の季節ごとにあらかじめ用意しているので、ユーザの電力消費傾向をより的確に判別することができ、ユーザに対して効果的な省エネルギー行動案を提示することが可能になる。なお、図6の過大消費電力タイプ判定閾値登録テーブルに登録している季節ごとの各領域における過大消費電力タイプ判定用の閾値は、一例を示すものであり、かかる場合のみに限るものではないが、図6に示す各閾値の値は、サンプル数として十分な人数(例えば20人)のユーザのモニタによる実証実験結果に基づいて、適切と判断した根拠のある値を示している。
【0102】
また、図4に示した動作例において、「ピーク電力量」、「常用電力量」、「ベース電力量」の各領域のうち、単一の領域ではなく、複数の領域において過大消費電力タイプになっているという判定結果が得られた場合には、該当する閾値との間の乖離が大きい方の領域において過大消費電力になっているものと判定することにより、ユーザに対して、より的確な省エネルギー行動案を提示することができる。
【0103】
つまり、過大消費電力領域判別部34にてピーク電力量領域、常用電力量領域、ベース電力量領域の各領域のうちいずれか複数の領域において、領域別消費電力割合が、対応する領域それぞれの閾値を超えている場合、該当する複数の各領域それぞれについて、領域別消費電力割合と、対応する領域それぞれの閾値との乖離の程度を比較し、閾値との乖離の程度が最も大きい領域を消費電力量が過大になっている領域として優先的に判別することにより、ユーザに対して、より効果的な省エネルギー行動案を提示することができる。
【0104】
例えば、夏季において、
ピーク電力量Pの割合P/P=35%、
常用電力量Pの割合P/P=45%
ベース電力量Pの割合P/P=20%
の消費電力量の割合であった場合には、図6に示すように、
夏季ピーク閾値30%
夏季常用閾値55%
夏季ベース閾値15%
であるので、ピーク電力量Pとベース電力量Pとの2つの領域で、それぞれの閾値を超えて、過大消費電力になっているものと判定されることになる。
【0105】
ここで、ピーク電力量Pとベース電力量Pとの2つの領域におけるそれぞれの閾値からの乖離の程度を求めると、ピーク電力量Pの領域の場合は、
(35%−30%)/30%=16.7%
であり、ベース電力量Pの領域の場合は、
(20%−15%)/15%=33.3%
であり、ベース電力量Pの領域の方が該当する閾値からの乖離が大きいと判断することができる。したがって、ベース電力量Pの領域において、より顕著に過大消費電力が発生しているものと看做して、ベース電力量Pの領域に該当する負荷機器に対する省エネルギー行動案を優先して選択して、ユーザに提供することができる。
【0106】
以上のような動作を行うことによって、負荷持続曲線LC上でピーク電力量領域、常用電力量領域、ベース電力量領域の3つの領域を簡単な論理で明確に分離することができる。すなわち、負荷持続曲線LC上でピーク電力量領域と常用電力量領域との境界になるラベルLの位置における消費電力量をa(L)とし、先頭のラベルと最終のラベルとの中央の位置のラベルLの位置における消費電力量をa(L)とし、先頭のラベルの位置における最大消費電力量をγとした場合に、
a(L)=γ−0.8{γ−a(L2)}
の関係が成立する位置のラベルLと最大消費電力量γになる先頭のラベルとの間の領域をピーク電力量領域に該当する領域として判別し、該ラベルLから就寝時刻に紐付けされたラベルLまでを常用電力量領域に該当する領域として判別し、さらに、就寝時刻に紐付けされたラベルLから最終ラベルLまでをベース電力量領域に該当する領域として判別することができる。
【0107】
さらには、ピーク電力量領域、常用電力量領域、ベース電力量領域の各領域それぞれの領域別合計消費電力量が省エネルギー対象となる消費電力量全体に占める割合を各領域それぞれの領域別消費電力割合として算出して、算出した各領域それぞれの領域別消費電力割合が、過大消費電力タイプの判定用として季節ごとに各領域それぞれについてあらかじめ定めた閾値(夏季閾値、中間期閾値、冬季閾値)を超えているか否かに基づいて、各領域のいずれの領域において消費電力量が過大になっているか否かを判別することにより、季節の影響を受けることなく、過大な消費電力量になっている領域を的確かつ簡単に判別することができる。而して、従来技術のように、季節家電ごとに個別の電力測定器を備える必要がなく、より経済的な省エネルギー支援装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0108】
10…消費電力量管理部、11…消費電力測定部、12…消費電力登録部、13…消費電力抽出部、14…消費電力量登録テーブル、20…季節・時間帯管理部、21…季節・時間帯登録部、22…季節判別部、23…時間帯判別部、24…季節・時間帯登録テーブル、24a…季節登録テーブル、24b…時間帯登録テーブル、30…電力消費タイプ判別部、31…省エネルギー消費電力量算出部、32…負荷持続曲線作成部、33…領域判別部、34…過大消費電力領域判別部、40…省エネルギー行動管理部、41…省エネルギー行動提案部、42…消費電力量評価部、100…省エネルギー支援装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが使用する負荷機器の消費電力量をあらかじめ定めた単位時間ごとに定期的に測定して蓄積し、あらかじめ定めた所定期間が経過する都度、蓄積した前記消費電力量の演算結果に基づいて、ユーザの電力使用傾向を分析することにより、消費電力量の削減が見込まれる負荷機器を特定し、当該負荷機器の消費電力量削減に対応する省エネルギー行動案をユーザに提供する仕組みを有する省エネルギー支援装置であって、
蓄積した前記単位時間ごとの前記消費電力量の中から適宜選択した任意日の消費電力量のうち、省エネルギー対象となる消費電力量を抽出して、消費電力量の大きい順番に並べ替えて作成した消費電力量の棒グラフの頂点を順次繋ぎ合わせた包絡線グラフからなる負荷持続曲線を作成する負荷持続曲線作成部と、
該負荷持続曲線作成部において作成した前記負荷持続曲線の分析結果に基づいて、該負荷持続曲線上において、前記負荷機器のうち、使用時にあらかじめ定めたピーク電力閾値以上の消費電力量になるいずれかの機器を使用しているピーク電力量領域、使用時に前記ピーク電力閾値よりも少ないものの或る電力量を継続して消費することになるいずれかの機器を使用している常用電力量領域、ユーザの生活行動パターンの如何によらず常時電力を消費することになる機器のみの消費電力量となるベース電力量領域、の3つの領域を判別する領域判別部と、
該領域判別部において判別された前記負荷持続曲線上の前記ピーク電力量領域、前記常用電力量領域、前記ベース電力量領域の各領域それぞれの領域別合計消費電力量が前記省エネルギー対象となる消費電力量全体に占める割合を各領域それぞれの領域別消費電力割合として算出し、算出した各領域それぞれの前記領域別消費電力割合が、過大消費電力タイプの判定用として季節ごとに各領域それぞれについてあらかじめ定めた閾値を超えているか否かに基づいて、各領域のいずれの領域において消費電力量が過大になっているか否かを判別する過大消費電力領域判別部と、
を少なくとも備えて構成されていることを特徴とする省エネルギー支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の省エネルギー支援装置において、前記過大消費電力領域判別部にて前記ピーク電力量領域、前記常用電力量領域、前記ベース電力量領域の各領域のうちいずれか複数の領域において、前記領域別消費電力割合が、対応する領域それぞれの前記閾値を超えている場合、該当する複数の各領域それぞれについて、前記領域別消費電力割合と、対応する領域それぞれの前記閾値との乖離の程度を比較し、前記閾値との乖離の程度が最も大きい領域を消費電力量が過大になっている領域として優先的に判別することを特徴とする省エネルギー支援装置。
【請求項3】
ユーザが使用する負荷機器の消費電力量をあらかじめ定めた単位時間ごとに定期的に測定して蓄積し、あらかじめ定めた所定期間が経過する都度、蓄積した前記消費電力量の演算結果に基づいて、ユーザの電力使用傾向を分析することにより、消費電力量の削減が見込まれる負荷機器を特定し、当該負荷機器の消費電力量削減に対応する省エネルギー行動案をユーザに提供する仕組みを有する省エネルギー支援方法であって、
蓄積した前記単位時間ごとの前記消費電力量の中から適宜選択した任意日の消費電力量のうち、省エネルギー対象となる消費電力量を抽出して、消費電力量の大きい順番に並べ替えて作成した消費電力量の棒グラフの頂点を順次繋ぎ合わせた包絡線グラフからなる負荷持続曲線を作成する負荷持続曲線作成ステップと、
該負荷持続曲線作成ステップにおいて作成した前記負荷持続曲線の分析結果に基づいて、該負荷持続曲線上において、前記負荷機器のうち、使用時にあらかじめ定めたピーク電力閾値以上の消費電力量になるいずれかの機器を使用しているピーク電力量領域、使用時に前記ピーク電力閾値よりも少ないものの或る電力量を継続して消費することになるいずれかの機器を使用している常用電力量領域、ユーザの生活行動パターンの如何によらず常時電力を消費することになる機器のみの消費電力量となるベース電力量領域、の3つの領域を判別する領域判別ステップと、
該領域判別ステップにおいて判別された前記負荷持続曲線上の前記ピーク電力量領域、前記常用電力量領域、前記ベース電力量領域の各領域それぞれの領域別合計消費電力量が前記省エネルギー対象となる消費電力量全体に占める割合を各領域それぞれの領域別消費電力割合として算出し、算出した各領域それぞれの前記領域別消費電力割合が、過大消費電力タイプの判定用として季節ごとに各領域それぞれについてあらかじめ定めた閾値を超えているか否かに基づいて、各領域のいずれの領域において消費電力量が過大になっているか否かを判別する過大消費電力領域判別ステップと、
を少なくとも有していることを特徴とする省エネルギー支援方法。
【請求項4】
請求項3に記載の省エネルギー支援方法において、前記過大消費電力領域判別ステップにて前記ピーク電力量領域、前記常用電力量領域、前記ベース電力量領域の各領域のうちいずれか複数の領域において、前記領域別消費電力割合が、対応する領域それぞれの前記閾値を超えている場合、該当する複数の各領域それぞれについて、前記領域別消費電力割合と、対応する領域それぞれの前記閾値との乖離の程度を比較し、前記閾値との乖離の程度が最も大きい領域を消費電力量が過大になっている領域として優先的に判別することを特徴とする省エネルギー支援方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の省エネルギー支援方法において、前記過大消費電力領域判別ステップにて各領域それぞれの過大消費電力タイプの判定用として利用する前記閾値は、任意にあらかじめ定義した夏季、冬季、および、春または秋に該当する中間期の3つに分けて、それぞれの季節ごとに適宜定めることを特徴とする省エネルギー支援方法。
【請求項6】
請求項5に記載の省エネルギー支援方法において、
季節が夏季の場合、前記ピーク電力量領域、前記常用電力量領域、前記ベース電力量領域の各領域それぞれの前記閾値を、30%、55%、15%と定義し、
季節が中間期の場合、前記ピーク電力量領域、前記常用電力量領域、前記ベース電力量領域の各領域それぞれの前記閾値を、30%、55%、15%と定義し、
季節が冬季の場合、前記ピーク電力量領域、前記常用電力量領域、前記ベース電力量領域の各領域それぞれの前記閾値を、10%、43%、47%と定義する
ことを特徴とする省エネルギー支援方法。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれかに記載の省エネルギー支援方法において、前記領域判別ステップにて前記負荷持続曲線上の前記ピーク電力量領域を判別する際に、前記負荷持続曲線上の前記ピーク電力量領域と前記常用電力量領域との間の境界の位置を示すラベルをL、該ラベルLの位置における消費電力量をa(L)、前記負荷持続曲線上の先頭の位置における最大消費電力量をγ、前記負荷持続曲線上の先頭の位置と最終の位置との中央の位置を示すラベルをL、該ラベルLの位置における消費電力量をa(L)としたとき、
a(L)=γ−0.8{γ−a(L)}
の関係が成立する位置のラベルLと最大消費電力量γになる先頭の位置との間の領域を前記ピーク電力量領域に該当する領域と判別することを特徴とする省エネルギー支援方法。
【請求項8】
請求項3ないし7のいずれかに記載の省エネルギー支援方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とする省エネルギー支援プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate