説明

省資源化効果分析装置、省資源化効果分析方法およびプログラム

【課題】省資源化を意図する製品またはサービスについて環境影響の専門家でなくとも省資源化効果を分析する適切な評価方法を選択する。
【解決手段】省資源化効果分析装置は、省資源化を意図する製品またはサービスの評価要素を解析し、評価要素を評価範囲ごと及び評価項目ごとに区分する評価要素区分部20と、評価範囲および評価項目と環境影響評価方法とを関係付けたデータベースを参照して、評価要素区分部20が区分した評価要素に対応する環境影響評価方法を評価要素ごとに選択する評価要素毎方法選択部21と、評価要素毎方法選択部21の選択結果を基に、全評価要素に対応する環境影響評価方法を選択する全評価要素対応方法選択部22とを備える。データベースに登録された環境影響評価方法は、ライフサイクル評価方法、マテリアルフロー分析方法、ライフサイクルインパクト評価方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省資源化を意図して開発する製品またはサービスについて、消費する資源の削減量ならびに資源の削減を実現する評価要素に関する情報を取得することにより、製品またはサービスごとに適した評価方法を選択して提示する省資源化効果分析装置、省資源化効果分析方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品等の環境影響評価を行う代表的な方法の一つであるライフサイクルアセスメント(LCA)は、評価の実施にあたっては、原料採取から製品の製造、廃棄に至るまでのライフサイクルの全ての段階において発生する様々な環境への負荷を定量化する手法である。LCAは、ISO14040sとして国際標準化されており、目的及び調査範囲の設定、インベントリ分析、インパクト評価、解釈の枠組みからなる。
実際に製品の環境負荷改善効果を測定する場合には、エネルギー消費量とCO2排出量のインベントリ分析であるライフサイクルCO2分析(LCCO2)が多く利用されている。LCCO2による結果は比較しやすいという利点がある。
【0003】
一方、本来のインベントリ分析結果を利用するライフサイクルインベントリ分析(LCI)は、エネルギー消費量やCO2排出量だけでなく、関連する資源消費量や環境排出といった環境負荷項目を定量化するため、項目ごとの比較が可能である。
また、異なる環境負荷項目を比較するために、LCIの結果に対してインパクト評価を行うライフサイクルインパクト評価(LCIA)についても、世界的にいくつかの手法が提案されている。LCIAの結果は、環境項目間のトレードオフが発生する事例でも比較が可能である。
【0004】
また、国家や企業のように、スケールの大きい対象における環境影響を定量評価するための手法として、マテリアルフロー分析(MFA)が提案されている(特許文献1、非特許文献1参照)。MFAでは、国家や企業への素材およびエネルギー資源の投入量と、廃棄物および二酸化炭素などの排出量を測定することにより、物質の収支という観点から環境影響を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−271899号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】森口 祐一 編・著,「マテリアルフローデータブック〜日本を取りまく世界の資源のフロー〜」,第2版,独立行政法人国立環境研究所 地球環境研究センター,平成11年3月31日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の環境影響評価方法には、以下のような問題があった。まず、LCCO2では、省資源化のように省エネルギーを目的としない改善を行った際の効果が過小評価されやすいという問題点があった。
LCIについては、実際の評価においてはすべての環境負荷項目が同時に改善されるケースは少なく、環境負荷項目間で評価結果のトレードオフが発生する事例ではLCIの結果を直接比較して省資源化効果を評価することができないという問題点があった。
【0008】
LCIAでは、国際的に合意された共通的手法がないため、評価結果についても合意を得にくいという問題点があった。
MFAでは、評価結果がフロー図として示されるため、改善効果が分かりにくいという問題点があった。
【0009】
以上のように、従来の環境影響評価方法では、評価の目的によって評価の範囲が異なり、それに伴って評価手法を選択する必要がある。それぞれの評価方法による環境影響評価はソフトウェアや専門家によって実施が可能であるが、目的に対して評価範囲を設定し評価手法を選択するためにはコンサルティングが必要となるため、コストや時間が掛るという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、省資源化を意図する製品またはサービスについて、環境影響の専門家でなくとも省資源化効果を分析する適切な評価方法を選択することができる省資源化効果分析装置、省資源化効果分析方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の省資源化効果分析装置は、省資源化を意図する製品またはサービスの評価要素を解析し、この評価要素を前記製品またはサービスのライフサイクルの各過程である評価範囲ごと及び評価範囲の具体的な評価項目ごとに区分する評価要素区分手段と、前記評価範囲および前記評価項目と環境影響評価方法とを関係付けたデータベースを参照して、前記評価要素区分手段が区分した評価要素に対応する環境影響評価方法を評価要素ごとに選択する評価要素毎方法選択手段と、この評価要素毎方法選択手段の選択結果を基に、全評価要素に対応する環境影響評価方法を選択する全評価要素対応方法選択手段とを備え、前記データベースに登録された環境影響評価方法は、ライフサイクル評価方法、マテリアルフロー分析方法、ライフサイクルインパクト評価方法であり、前記全評価要素対応方法選択手段は、前記評価要素の集合をS、前記ライフサイクル評価方法に対応する評価要素の集合をSp、前記マテリアルフロー分析方法に対応する評価要素の集合をSmとしたとき、
【数1】

が真である場合、前記ライフサイクル評価方法を選択し、
【数2】

が真である場合、前記マテリアルフロー分析方法を選択し、
【数3】

が真である場合、前記ライフサイクルインパクト評価方法を選択することを特徴とするものである。
また、本発明の省資源化効果分析装置の1構成例は、さらに、前記全評価要素対応方法選択手段によって選択された環境影響評価方法により、前記製品またはサービスの環境影響評価を行う環境影響評価実行手段を備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の省資源化効果分析方法は、省資源化を意図する製品またはサービスの評価要素を解析し、この評価要素を前記製品またはサービスのライフサイクルの各過程である評価範囲ごと及び評価範囲の具体的な評価項目ごとに区分する評価要素区分ステップと、前記評価範囲および前記評価項目と環境影響評価方法とを関係付けたデータベースを参照して、前記評価要素区分ステップで区分した評価要素に対応する環境影響評価方法を評価要素ごとに選択する評価要素毎方法選択ステップと、この評価要素毎方法選択ステップの選択結果を基に、全評価要素に対応する環境影響評価方法を選択する全評価要素対応方法選択ステップとを備え、前記データベースに登録された環境影響評価方法は、ライフサイクル評価方法、マテリアルフロー分析方法、ライフサイクルインパクト評価方法であり、前記全評価要素対応方法選択ステップは、前記評価要素の集合をS、前記ライフサイクル評価方法に対応する評価要素の集合をSp、前記マテリアルフロー分析方法に対応する評価要素の集合をSmとしたとき、
【数4】

が真である場合、前記ライフサイクル評価方法を選択し、
【数5】

が真である場合、前記マテリアルフロー分析方法を選択し、
【数6】

が真である場合、前記ライフサイクルインパクト評価方法を選択することを特徴とするものである。
また、本発明は、CPUと記憶装置とを備えたコンピュータを省資源化効果分析装置として動作させる省資源化効果分析プログラムであって、前記記憶装置に格納された省資源化効果分析プログラムに従って前記CPUを、省資源化効果分析装置の各手段として機能させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、環境影響評価方法としてライフサイクル評価方法とマテリアルフロー分析方法とライフサイクルインパクト評価方法のいずれかを選択する省資源化効果分析装置において、省資源化を意図する評価要素を入力とし、最適な環境影響評価方法を選択し、省資源化効果を計算して出力することを特徴とする。本発明では、省資源化を意図して開発する製品またはサービスの省資源化効果を分析する際、環境影響評価の専門家でなくとも、ライフサイクル評価方法とマテリアルフロー分析方法とライフサイクルインパクト評価方法の中から最も相応しい環境影響評価方法を選択することができるため、低コストかつ短時間の省資源化効果分析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る省資源化効果分析装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る省資源化効果分析装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態において評価要素を選択入力する際の評価要素の一覧の例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る全評価要素対応方法選択部の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[発明の原理]
本発明は、上記目的を達成するために、省資源化を意図して開発する製品またはサービスについて、使用量を削減すると考えられる資源の種類やライフステージ、効果をもたらす範囲などを含めた評価要素に関する情報を取得することにより、ライフサイクル評価方法(LCA)、マテリアルフロー分析方法(MFA)、ライフサイクルインパクト評価方法(LCIA)のうちから対象となる製品またはサービスごとに適した環境影響評価方法を選択し、出力することを特徴とするものである。
【0016】
次に、評価方法選択のための基準式について説明する。ここでは、選択する評価要素の集合をS、LCAの評価範囲となる評価要素の集合をSp、MFAの評価範囲となる評価要素の集合をSm、LCIAの評価範囲となる評価要素の集合をSlとし、選択する評価要素をsi,j、LCAの評価範囲となる評価要素をsi,p、MFAの評価範囲となる評価要素をsmとする。
【0017】
評価要素にエネルギー消費およびCO2排出が含まれる場合には、LCCO2を選択する。評価要素に投入資源が含まれる場合には、LCIを選択する。評価要素に廃棄物および環境への排出が含まれる場合には、LCIAを選択する。
通常、LCAの評価範囲は、製品の製造またはサービスの提供に必要な資源の採掘と、部品の製造と、製品またはサービスの製造と、製品またはサービスの消費、使用、保守、廃棄、リサイクルと、これら資源の採掘からリサイクルまでの各過程に係る輸送におけるエネルギー消費、CO2排出および資源の投入である。ただし、製品またはサービスのLCAでは、特に部品の製造、製品またはサービスの製造、使用、保守が評価の中核となるため、部品の製造と、製品またはサービスの製造、消費、使用、保守、廃棄、リサイクルと、これら部品の製造からリサイクルまでの各過程に係る輸送とを評価範囲と設定する。
【0018】
一方、MFAの評価範囲は、製品またはサービスのライフステージだけでなく、製品の製造またはサービスの提供を行う企業、地域や国における生産活動である。
さらに、LCIAでは、資源の消費だけでなく、廃棄物の排出などによる地球環境全体への影響が評価範囲となる。したがって、各評価方法における評価範囲は次式のように表される。
【0019】
【数7】

【0020】
一般的には、より広い評価範囲で環境影響評価を実施することが望ましいとされているが、評価範囲が大きくなるほど、評価の精度が下がる可能性が増え、省資源をはじめとする環境改善効果が相対的に小さくなるため量りづらくなることから、現状では環境影響評価の専門家は、評価の目的に応じて評価範囲を変えて実施する場合が多く見られる。こうした実例をもとに、評価方法ごとに評価範囲を設定する。省資源化を意図する全評価要素がLCAの評価範囲となる評価要素に含まれている場合は、LCAによって省資源化効果を分析することが望ましい。したがって、以下の式(2)が真の場合、環境影響評価方法としてLCAを選択する。
【0021】
【数8】

【0022】
省資源化を意図する評価要素の一部または全部がLCAの評価範囲を超える範囲にあり、かつMFAの評価範囲となる評価要素に含まれている場合は、MFAによって省資源化効果を分析することが望ましい。したがって、以下の式(3)が真の場合、環境影響評価方法としてMFAを選択する。
【0023】
【数9】

【0024】
省資源化を意図する評価要素の一部または全部がMFAの評価範囲を超える範囲にある場合は、LCIAによって省資源化効果を分析することが望ましい。したがって、以下の式(4)が真の場合、環境影響評価方法としてLCIAを選択する。
【0025】
【数10】

【0026】
[実施の形態]
以下、計算フローを参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、この説明により本発明が限定されるものではない。図1は本実施の形態に係る省資源化効果分析装置の構成例を示すブロック図、図2は図1の省資源化効果分析装置の動作を説明するフローチャートである。省資源化効果分析装置は、評価要素選択入力部1と、評価方法選択部2と、評価方法・評価範囲出力部3と、記憶部4と、操作部5と、表示部6と、環境影響評価実行部7とから構成される。評価方法選択部2は、評価要素区分部20と、評価要素毎方法選択部21と、全評価要素対応方法選択部22とを備えている。
【0027】
評価要素選択入力部1には、あらかじめ定められた製品またはサービスの評価要素ijから、環境影響評価の実施対象となる製品またはサービスにおいて省資源化効果を期待する評価要素が1種類以上選択入力される。評価要素の選択入力方法としては、具体的には評価要素選択入力部1が表示部6の画面に図3のような評価要素の一覧を表示させ、省資源化効果分析装置のユーザが操作部5を操作して、評価要素の一覧中の所望の評価要素をクリックしたりチェックしたりすることによって選択する方法などがある。
【0028】
すなわち、評価要素選択入力部1は、省資源化効果分析装置が起動すると(図2ステップS21)、記憶部4に予め記憶されている評価要素の一覧のデータを読み出して、図3のような評価要素の一覧を表示部6に表示させ(ステップS22)、ユーザは、操作部5を操作して画面上で所望の評価要素を選択する(ステップS23)。
【0029】
次に、評価方法選択部2の評価要素区分部20は、評価要素選択入力部1から入力された評価要素を記憶部4に格納して解析し(ステップS24)、この評価要素を環境影響評価の実施対象となる製品またはサービスのライフサイクルの各過程である評価範囲iごと及び評価範囲iの具体的な評価項目jごとに区分した表1の形式に変換する(ステップS25)。
【0030】
【表1】

【0031】
評価範囲iとしては、例えば図3に示すように、原料採取、部品製造、製品製造、流通、消費・使用・保守、廃棄・リサイクル、他製品・他産業(他製品・他産業への再利用)などがある。評価項目jとしては、例えばエネルギー消費・CO2排出、投入資源、廃棄物などがある。評価方法選択部2による区分結果は、記憶部4に記憶される。
続いて、評価方法選択部2の評価要素毎方法選択部21は、評価範囲iおよび評価項目jと環境影響評価方法とを関係付けた表2を参照して、ステップS25で区分した評価要素に対応する環境影響評価方法を評価要素ごとに選択する(ステップS26)。
【0032】
【表2】

【0033】
表2のようなデータベースは記憶部4に予め記憶されている。なお、表2では、LCAの範疇に含まれる具体的な環境影響評価方法としてLCCO2とLCIとを例に挙げている。表2によれば、例えば評価範囲iが「製造〜消費・使用・保守」で、評価項目jが「エネルギー消費・CO2排出」という評価要素の場合、対応する環境影響評価方法はLCCO2である。こうして、評価要素ごとにLCCO2、LCI、MFA、LCIAといった環境影響評価方法を選択することができる。この選択結果は、記憶部4に記憶される。
【0034】
次に、評価方法選択部2の全評価要素対応方法選択部22は、ステップS26の選択結果を基に、式(2)、式(3)、式(4)により全評価要素に対応する環境影響評価方法を選択する(ステップS27)。図4は全評価要素対応方法選択部22の動作を説明するフローチャートである。
【0035】
全評価要素対応方法選択部22は、評価要素選択入力部1から入力された全評価要素がLCAの評価範囲となる評価要素に含まれる場合、すなわち式(2)が真であり、全評価要素に対応する環境影響評価方法がLCA(LCCO2若しくはLCI)である場合(図4ステップS31においてYES)、環境影響評価方法としてLCAを選択する(ステップS32)。
【0036】
また、全評価要素対応方法選択部22は、評価要素選択入力部1から入力された全評価要素の一部または全部がLCAの評価範囲を超える範囲にあり、かつMFAの評価範囲となる評価要素に含まれる場合、すなわち式(3)が真であり、全評価要素に対応する環境影響評価方法がLCA(LCCO2若しくはLCI)またはMFAである場合(図4ステップS33においてYES)、環境影響評価方法としてMFAを選択する(ステップS34)。
【0037】
また、全評価要素対応方法選択部22は、評価要素選択入力部1から入力された全評価要素の一部または全部がMFAの評価範囲を超える範囲にある場合、すなわち式(4)が真であり、全評価要素に対応する環境影響評価方法がLCA(LCCO2若しくはLCI)、MFAまたはLCIAである場合(ステップS33においてNO)、環境影響評価方法としてLCIAを選択する(ステップS35)。以上で、評価方法選択部2の処理が終了する。
【0038】
次に、評価方法・評価範囲出力部3は、評価方法選択部2の全評価要素対応方法選択部22によって選択された環境影響評価方法および評価範囲を出力する(ステップS28)。出力方法としては、例えば表示部6による表示や図示しないプリンタによる印刷などがあり、また環境影響評価方法のデータを外部に出力するようにしてもよい。
【0039】
環境影響評価実行部7は、評価方法選択部2の全評価要素対応方法選択部22によって選択された環境影響評価方法により、環境影響評価の実施対象となる製品またはサービスの環境影響評価を行う(ステップS29)。なお、LCA、MFA、LCIAの各環境影響評価方法については周知であるので、ここでは各環境影響評価方法の具体的な実行方法の説明は省略する。こうして、省資源化効果分析装置の処理が終了する(ステップS30)。
【0040】
環境省では、循環型社会基本計画で「循環利用率」という指標を採用している。循環利用率は日本のMFAの結果をもとに算出可能であり、下記の式で定義されている。
循環利用率=循環利用量/(循環利用量+天然資源等投入量)(=総物質投入量)
・・・(5)
【0041】
以下、本実施の形態の省資源化効果分析装置を用いた環境影響評価方法の選択の実例について説明する。コンクリートポールについて、骨材原料を砕石から石灰石で代替する完全リサイクル技術を適用すると、ポール撤去後に発生する廃コンクリート塊を従来の再生路盤材利用からセメント材料として再資源化することができる。また、ポール製造時に発生する汚泥についてもセメント材料として利用できる。骨材原料として砕石の代わりに石灰石を用いても、コンクリートポールの製造プロセスの変更はほとんどないため、評価項目jとしては「エネルギー消費・CO2排出」は含まれず、「投入資源」および「廃棄物・環境への排出」が評価項目jとなる。評価範囲iとしては、ポール製造時の汚泥を抑制するため「原料採取、廃棄・リサイクル」が選択されるが、その他に廃コンクリート塊をセメント材料として再使用することでセメント製造業の原料採取を削減する効果があることから「他製品・他産業」も評価範囲iとなる。
【0042】
表2に従うと、この場合の環境影響評価方法は、「製品・サービスのLCIA」、「他製品・他産業を含めたMFA」および「MFAと同じ範囲のLCIA」となる。
コンクリートポールのみについて日本版被害算定型影響評価手法(LIME)を用いてLCIAを実施した結果、外部費用について約19%の削減効果が期待できることが分かった。セメント産業を含めてMFAを行い、資源循環利用率を比較すると、従来品のコンクリートポールでは資源循環利用率が4%であったが、上記完全リサイクル技術により資源循環利用率が約15%に改善されることが分かった。
【0043】
MFAの範囲についてLIMEを用いてLCIAを実施した結果、外部費用について約20%の削減効果が期待できることが分かった。一方、コンクリートポールのみについてLCCO2による評価を実施した結果、4%の削減効果しか得られないという結果になった。
【0044】
以上のように、本実施の形態は、環境影響評価方法としてLCAとMFAとLCIAのいずれかを選択する省資源化効果分析装置において、省資源化を意図する評価要素を入力とし、最適な環境影響評価方法を選択し、省資源化効果を計算して出力することを特徴とする。本実施の形態では、省資源化を意図して開発する製品またはサービスの省資源化効果を分析する際、環境影響評価の専門家でなくとも、LCAとMFAとLCIAの中から最も相応しい環境影響評価方法を選択することができるため、低コストかつ短時間の省資源化効果分析が可能となる。
【0045】
本実施の形態で説明した省資源化効果分析装置は、例えばCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータにおいて、本発明の省資源化効果分析方法を実現させるための省資源化効果分析プログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体に記録された状態で提供されるか、あるいはネットワークを通して提供される。CPUは、記録媒体またはネットワークから読み込んだプログラムを記憶装置に書き込み、記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、省資源化を意図して開発する製品またはサービスの省資源化効果の評価について、好適な評価方法を利用者に提供する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…評価要素選択入力部、2…評価方法選択部、3…評価方法・評価範囲出力部、4…記憶部、5…操作部、6…表示部、7…環境影響評価実行部、20…評価要素区分部、21…評価要素毎方法選択部、22…全評価要素対応方法選択部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
省資源化を意図する製品またはサービスの評価要素を解析し、この評価要素を前記製品またはサービスのライフサイクルの各過程である評価範囲ごと及び評価範囲の具体的な評価項目ごとに区分する評価要素区分手段と、
前記評価範囲および前記評価項目と環境影響評価方法とを関係付けたデータベースを参照して、前記評価要素区分手段が区分した評価要素に対応する環境影響評価方法を評価要素ごとに選択する評価要素毎方法選択手段と、
この評価要素毎方法選択手段の選択結果を基に、全評価要素に対応する環境影響評価方法を選択する全評価要素対応方法選択手段とを備え、
前記データベースに登録された環境影響評価方法は、ライフサイクル評価方法、マテリアルフロー分析方法、ライフサイクルインパクト評価方法であり、
前記全評価要素対応方法選択手段は、前記評価要素の集合をS、前記ライフサイクル評価方法に対応する評価要素の集合をSp、前記マテリアルフロー分析方法に対応する評価要素の集合をSmとしたとき、
【数1】

が真である場合、前記ライフサイクル評価方法を選択し、
【数2】

が真である場合、前記マテリアルフロー分析方法を選択し、
【数3】

が真である場合、前記ライフサイクルインパクト評価方法を選択することを特徴とする省資源化効果分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の省資源化効果分析装置において、
さらに、前記全評価要素対応方法選択手段によって選択された環境影響評価方法により、前記製品またはサービスの環境影響評価を行う環境影響評価実行手段を備えることを特徴とする省資源化効果分析装置。
【請求項3】
省資源化を意図する製品またはサービスの評価要素を解析し、この評価要素を前記製品またはサービスのライフサイクルの各過程である評価範囲ごと及び評価範囲の具体的な評価項目ごとに区分する評価要素区分ステップと、
前記評価範囲および前記評価項目と環境影響評価方法とを関係付けたデータベースを参照して、前記評価要素区分ステップで区分した評価要素に対応する環境影響評価方法を評価要素ごとに選択する評価要素毎方法選択ステップと、
この評価要素毎方法選択ステップの選択結果を基に、全評価要素に対応する環境影響評価方法を選択する全評価要素対応方法選択ステップとを備え、
前記データベースに登録された環境影響評価方法は、ライフサイクル評価方法、マテリアルフロー分析方法、ライフサイクルインパクト評価方法であり、
前記全評価要素対応方法選択ステップは、前記評価要素の集合をS、前記ライフサイクル評価方法に対応する評価要素の集合をSp、前記マテリアルフロー分析方法に対応する評価要素の集合をSmとしたとき、
【数4】

が真である場合、前記ライフサイクル評価方法を選択し、
【数5】

が真である場合、前記マテリアルフロー分析方法を選択し、
【数6】

が真である場合、前記ライフサイクルインパクト評価方法を選択することを特徴とする省資源化効果分析方法。
【請求項4】
請求項3記載の省資源化効果分析方法において、
さらに、前記全評価要素対応方法選択ステップで選択した環境影響評価方法により、前記製品またはサービスの環境影響評価を行う環境影響評価実行ステップを備えることを特徴とする省資源化効果分析方法。
【請求項5】
CPUと記憶装置とを備えたコンピュータを省資源化効果分析装置として動作させる省資源化効果分析プログラムであって、
前記記憶装置に格納された省資源化効果分析プログラムに従って前記CPUを、請求項1または2に記載の各手段として機能させることを特徴とする省資源化効果分析プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−4016(P2013−4016A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137453(P2011−137453)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)