真偽判別印刷物、該印刷物の真偽判別方法及び真偽判別システム
【課題】 レーザ等による穿孔と機能性インキによる印刷とを組み合わせた真偽判別印刷物、該印刷物の真偽判別方法及び真偽判別システムを提供する。
【解決手段】 基材1と、その基材をレーザ等で貫通して穿孔2し、その穿孔部分を隠蔽するように基材1の表面を赤外線透過インキ5、裏面を赤外線吸収インキ6で印刷して作製した真偽判別印刷物であり、可視光で観察した場合は、表裏面とも穿孔穴を確認することはできないが、赤外線で観察した場合は、表面からの観察では、表面の赤外線透過インキは透過され、穿孔穴2を通した裏面の赤外線吸収インキが黒い穿孔パターン7として観察される。裏面からの観察では、裏面の赤外線吸収インキが黒く観察され、穿孔穴2を確認することはできない。
【解決手段】 基材1と、その基材をレーザ等で貫通して穿孔2し、その穿孔部分を隠蔽するように基材1の表面を赤外線透過インキ5、裏面を赤外線吸収インキ6で印刷して作製した真偽判別印刷物であり、可視光で観察した場合は、表裏面とも穿孔穴を確認することはできないが、赤外線で観察した場合は、表面からの観察では、表面の赤外線透過インキは透過され、穿孔穴2を通した裏面の赤外線吸収インキが黒い穿孔パターン7として観察される。裏面からの観察では、裏面の赤外線吸収インキが黒く観察され、穿孔穴2を確認することはできない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真偽判別印刷物、該印刷物の真偽判別方法及び真偽判別システムに関するものであり、特に、貴重印刷物等において、その印刷物に対して偽造防止効果を図るために、赤外線インキを用いて機械読み取りによる偽造防止手段を施したものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、用紙、フィルム又は金属板等の基材にレーザにより微細な穿孔を施す技術は公知である。また、銀行券、パスポート、有価証券及びカード等の貴重製品等に偽造防止効果として付与するために用いられている穿孔は、基材のみ又は印刷された基材等を貫通させて施し、その孔を複数配置することにより数字や文字等を構成している。
【0003】
赤外線インキの技術は、赤外線インキで画像情報を隠蔽して印刷し、印刷製品の偽造防止特性を高めている。赤外線インキとしては、白色光下で透明で赤外線領域で光を吸収するもの、白色光下で同じ色で赤外線領域で光を反射するインキと吸収するインキをペアで利用するもの、白色光下で異なる色で赤外線領域で異なった分光特性を示すインキの組合せのものが考えられ、赤外線反射吸収ペアインキは、白色光の下で肉眼で見ると全く同じ色に見えるが、赤外線領域では赤外線吸収率が異なっているインキの組合せから構成されている。
【0004】
カーボンインキやロイコ染料等の赤外線吸収物質を含有するインキを用いて情報パターンを設け、赤外線読取り装置にて機械読み取りをし、パターンの有無を判別して真偽判別が行われているが、カーボンブラックやロイコ染料等の赤外線吸収物質は可視領域においても光吸収性を有しているため、肉眼でもその存在が判別されやすかった。
【0005】
レーザにより目視しにくい程度の微細な多数の穿孔が特定のパターンで形成されている基材を有し、該基材の一面を発光物質で印刷又はコートして穿孔を埋めて設けることで、機械による真偽判定を可能とする、微細な穿孔を応用した偽造抑制形成体と、その製造方法及び真偽判定装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、有価証券印刷物の用紙の一部領域に複数の貫通孔を設け、この貫通孔を隠蔽するように印刷物の表裏から光輝性画像形成層を有し、かつ、用紙強度以上の強度を有するシール状貼付物を熱転写した有価証券印刷物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特許第3376408号公報
【特許文献2】特開平9−30172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
貴重印刷物等に偽造防止効果を付与するためのレーザ等を用いた穿孔は、穿孔装置の入手が比較的容易になってきたことで、穿孔であっても偽造される危険性が高まってきた。
【0009】
特許文献1は、基材に穿孔により特定のパターンが形成され、その穿孔を包埋するように、発光物質を付与して穿孔の開口をカバーした偽造抑制形成体であり、透過光により微細な穿孔の配列パターンを認識するとともに、発光物質が励起発光する特定波長を検出することで真偽判定するものである。
【0010】
特許文献2は、有価証券印刷物をカラーコピー機等で複写した場合、シール状貼付物が光輝性を有する画像形成層のため、オリジナルと違って視認される。また、貼付物の転写により剥がそうとすると有価証券印刷物そのものが破壊されるという構成が偽造防止策となっているものであり、改ざんしようとして剥離したときに貼付物の樹脂接着剤が貫通孔にまで浸透することで用紙等の一部領域を固着するものである。
【0011】
本発明は、上述した従来技術にかんがみなされたものであり、貴重印刷物等に偽造防止効果として用いられているレーザ等を用いた穿孔の技術を有効に用い、機能性インキと組み合わせて用いることで偽造防止効果を高めることが可能な真偽判別印刷物、該印刷物の真偽判別方法及び真偽判別システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、基材の少なくとも一部領域に貫通孔により情報パターンが形成された印刷物であって、貫通孔により形成された情報パターンの少なくとも一部を基材の表裏面から隠蔽するように、基材の表裏面に印刷インキによる印刷模様が印刷されて成る真偽判別可能な印刷物である。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明を前提とし、印刷インキが機能性印刷インキであることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1、2記載の発明を前提とし、前記基材の一方の印刷面を赤外線吸収インキで印刷し、他方の印刷面を赤外線透過インキで印刷して成ることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1、2記載の発明を前提とし、前記基材の表裏面を赤外線透過インキで印刷して成ることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0016】
請求項5記載の発明は、基材の少なくとも一部領域に貫通孔により情報パターンが形成された印刷物であって、貫通孔により形成された情報パターンの少なくとも一部を基材の表裏面から隠蔽するように、基材の表裏面に印刷インキによる印刷模様が印刷され、基材の表裏面のいずれか一方の印刷模様を印刷する印刷インキが、赤外線透過インキ又は赤外線反射インキであることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0017】
請求項6記載の発明は、基材の一方の面の少なくとも一部領域に赤外線透過インキにより印刷模様が印刷され、基材及び基材上に印刷された印刷模様を貫通する貫通孔により情報パターンが形成され、基材の他方の面に貫通して形成された貫通孔による情報パターンが赤外線透過インキによる印刷模様で隠蔽されて成ることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0018】
請求項7記載の発明は、基材の表裏面に、少なくとも一部領域に赤外線透過インキによる印刷模様が印刷され、基材の表面の印刷模様、基材及び基材の裏面の印刷模様を貫通する貫通孔により情報パターンが形成されて成ることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0019】
請求項8記載の発明は、請求項3又は4記載の発明を前提とし、真偽判別印刷物に形成された貫通孔によるパターンを第1の情報パターンとし、さらに、真偽判別印刷物の貫通孔を隠蔽するために印刷された印刷模様以外の基材部分に貫通孔により形成された第2の情報パターンを有する真偽判別印刷物である。
【0020】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の真偽判別印刷物であって、前記貫通孔により形成された情報パターンは、貫通孔の位置、大きさ、形状及び/又は個数により情報が形成されたことを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0021】
請求項10記載の発明は、請求項2〜9のいずれかに記載の真偽判別印刷物であって、前記印刷物に貫通孔により形成された情報パターンは、機械読み取り可能な情報パターンであることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0022】
請求項11記載の発明は、請求項2〜10のいずれかに記載の真偽判別印刷物を取扱う真偽判別方法であって、前記印刷物の一方の印刷面を下にして赤外線透過材又は赤外線吸収材の機能性材料で形成された基材の上に載置し、印刷物の他方の印刷面より可視光又は赤外線を照射し、情報パターンの有無を確認することを特徴とする真偽判別方法である。
【0023】
請求項12記載の発明は、請求項2〜10のいずれかに記載の真偽判別印刷物を取扱う真偽判別方法であって、真偽判別印刷物に赤外線を照射し、照射された赤外線により、真偽判別印刷物に形成された貫通孔による情報パターンを読み取り、読み取った情報パターンをあらかじめ記憶されている基準の情報パターンと比較することを特徴とする真偽判別方法である。
【0024】
請求項13記載の発明は、請求項2〜10のいずれかに記載の真偽判別印刷物を取扱う真偽判別システムであって、赤外線照射装置より真偽判別印刷物に赤外線を照射する手段と、照射された赤外線により、真偽判別印刷物に形成された貫通孔による情報パターンを読み取る手段と、読み取った情報パターンをあらかじめ記憶部に記憶されている基準の情報パターンと比較する手段とを備えた真偽判別システムである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、レーザ等を用いた穿孔の技術を有効に用い、機能性インキと組み合わせて用いることで印刷物の真偽判別効果を高めることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明の実施の形態による真偽判別印刷物、該印刷物の真偽判別方法及び真偽判別システムについて説明する。
【0027】
本発明に係わる基材としては、用途に応じて種々のものが使用できるが、例えば紙、PET及び塩ビ等のプラスチック等の反射性基材が用いられる。
本発明に係わる機能性インキとしての赤外線吸収インキとしては、通常のカーボンブラック等を顔料とするインキでもよい。
また、基材等に孔をあける手段としては、レーザによる穿孔及び針による孔等が考えられるが、本実施の形態ではレーザを用いた説明とする。
本発明の情報パターンとしては、真偽判別印刷物に付与される固有の情報である記号、番号又は印刷物の種類等である。
【0028】
図1に、本発明の真偽判別印刷物の基本的な構成を説明する。本発明は情報をレーザによる穿孔によってパターンとして形成しているため、貫通孔の位置、大きさ、形状及び個数を変化させることにより情報を形成することが可能となり、より偽造を困難にすることが可能となる。
【0029】
第1の実施の形態としては、基材にレーザで目視し難い程度の微細な穿孔を貫通して情報パターンを形成し、この貫通孔を隠蔽するために基材の表裏面を印刷インキにより印刷模様を施した印刷物である。別の作製法としては、基材の表裏面のいずれか一方の面に印刷インキで印刷し、この印刷された部分にあたる個所に、印刷していない基材側からレーザで基材のみを貫通して穿孔し、印刷していない基材側からインキが確認できるようにし、次に印刷をしていない他方の面を、穿孔した穴を隠蔽するように印刷インキで印刷模様を印刷してもよい。
【0030】
図1(a)は、第1の実施の形態の真偽判別印刷物の断面図であり、基材1と、その基材をレーザ等で貫通して穿孔穴2とし、その穿孔穴部分を隠蔽するように表裏面に印刷インキ3で印刷模様を印刷したものである。この形態の場合は、表裏両面が閉口されている。
【0031】
第2の実施の形態としては、基材にレーザにより目視し難い程度の微細な穿孔を貫通して情報パターンを形成し、この貫通孔の一方の側を隠蔽するために基材の表裏面のいずれか一方の面を印刷インキで印刷模様を印刷した印刷物である。別の作製法としては、基材の表裏面のいずれか一方の面を印刷インキで印刷し、次に印刷部分を貫通しないようにして基材部分のみをレーザで貫通して穿孔してもよい。
【0032】
図1(b)は、第2の実施の形態の真偽判別印刷物の断面図であり、基材1と、その基材をレーザ等で貫通して穿孔穴2とし、その穿孔穴部分を隠蔽するように表裏面のいずれか一方に印刷インキ3で印刷模様を印刷したものである。この形態の場合は、一方の側が開口となって情報パターンが施されている。
【0033】
第3の形態としては、基材の表裏面のいずれか一方の面に印刷インキで印刷模様を印刷し、この印刷模様及び基材をレーザで貫通して穿孔し、次に基材の印刷をしていない他方の面に印刷インキで印刷模様を印刷する。別の作製法としては、基材の表裏面に印刷インキで印刷模様を印刷し、次にどちらか一方の面の印刷模様を貫通しないようにして他方の印刷部分及び基材部分をレーザで貫通して穿孔してもよい。
【0034】
図1(c)は、第3の実施の形態の真偽判別印刷物の断面図であり、基材1と、その基材の表裏面のいずれか一方の面に印刷インキ3で印刷模様を印刷し、この印刷模様及び基材をレーザ等で貫通して穿孔穴2とし、次に基材の印刷をしていない他方の面を印刷インキ3で印刷模様を印刷したものである。この形態の場合は、一方の側が開口となって情報パターンが施されている。
【0035】
第4の形態としては、基材の表裏面に印刷インキで印刷模様を印刷し、表面の印刷模様、基材及び裏面の印刷模様をレーザで貫通して穿孔する。
【0036】
図1(d)は、第4の実施の形態の真偽判別印刷物の断面図であり、基材1と、その基材の表裏面を印刷インキ3で印刷模様を印刷し、表面の印刷模様、基材及び裏面の印刷模様をレーザ等で貫通して穿孔穴2としたものである。この形態の場合は、表裏両方の面が開口となって情報パターンが施されている。
【0037】
第1〜第4の実施の形態の真偽判別印刷物を表(上)面から可視光で観察すると、図2の(a)〜(d)のように、図1(a)の印刷物は穿孔穴2を確認することはできず、(b)の印刷物の場合、穿孔穴2を通して裏面の印刷インキ3が見える。(c)の印刷物の場合、穿孔穴2を通して裏面の印刷インキ3が見えることになるが、表裏のインキが同色である場合、判別は困難である。(d)の印刷物の場合、貫通された穿孔穴2を確認することができる。これは透過光を用いることにより容易に観察できる。
【0038】
第5の形態としては、第1〜第3の実施の形態の真偽判別印刷物を、基材の穿孔部分を赤外線透過型インキで隠蔽した印刷物とし、赤外線吸収板又は赤外線反射板に載置した状態のものである。このようにすることで、印刷物を可視光及び赤外線で観察したときに、印刷物だけのときに観察された情報パターンの穴が、穿孔と印刷によって隠蔽された穴であるか又は擬似的に穿孔部分を印刷等の手法によって施したもので、穿孔されていないものであるかを判別することができるため、真偽判別の手段として有効である。
【0039】
図3(a)〜(c)は、第5の実施の形態の真偽判別印刷物の断面図であり、図3(a)は第1の実施の形態、図3(b)は第2の実施の形態、図3(c)は第3の実施の形態の真偽判別印刷物で、赤外線吸収板又は赤外線反射板4に第1〜第3の実施の形態の印刷物を載置した状態を示す。
【0040】
第5の実施の形態の真偽判別印刷物を表(上)面から可視光で観察すると、図4の(a)〜(c)のように、図3(a)の印刷物の場合、穿孔穴2を確認することはできず、図3(b)、図3(c)の印刷物の場合は裏面の印刷インキ3が見える穿孔穴2を確認することができる。
次に、赤外線吸収板4の上に載置し、表(上)面から赤外線で観察すると、図5の(a)〜(c)のように、図3(a)〜(c)の印刷物は赤外線吸収板4が見える穿孔穴2を確認することができる。
また、赤外線吸収板を赤外線反射板4に交換し、表(上)面から赤外線で観察すると、図6の(a)〜(c)のように、図3(a)〜(c)の印刷物は穿孔穴2を通して赤外線反射板4が見えることになるが、白く明るく確認されるため判別は困難である。
【0041】
また、本実施の形態の印刷物の構成では、施された穿孔部分は印刷される印刷インキで埋められても、埋められなくてもどちらでもよい。
【0042】
本発明の真偽判別印刷物の真偽判別方法としては、可視光と赤外線の両方を用いて観察することで真偽判別をより確実にしている。例えば、機能性インキで隠蔽された穿孔の穴を備えた印刷物を機械読み取りする際に、可視光では光の透過の有無により単純に穿孔された穴かどうかを判別し、赤外線では赤外線吸収板又は赤外線反射板の上に印刷物を載置することで、穴を隠蔽した機能性インキが、赤外線透過型のみか、片面または両面に吸収型を用いた構成であるか、また、観察される情報パターンが基材に穿孔で空けられた孔であるのか否か等を判別することができる。
【実施例】
【0043】
図7〜図14に、上記第1〜第5の実施の形態における実施例として情報パターンを付与した真偽判別印刷物の一例を示す。基材に印刷するインキとしては、真偽判別手段として機械読取りに有効な機能性インキの赤外線吸収インキ及び赤外線透過インキを用いた。
【0044】
本発明は、本実施例に限定されるものではなく、基材に施される穿孔箇所と印刷の順序、印刷に用いるインキの種類、情報の付与方法(穿孔穴によるパターンの形成)を組み合わせることにより種々の形態が考えられる。また、その真偽判別としては、穿孔穴の隠蔽とその観察、穿孔穴を隠蔽しなくても偽造が困難なものとその観察、情報の読み取りとその照合等により効果的に行うことができ、貴重印刷物等に対して券種判別や偽造防止又は真偽判別等に有効な技術を付与するものである。
【0045】
(実施例1)
図7は、図1(a)の構成で、印刷インキは機能性インキを用いた、実施例1に係わる真偽判別印刷物である。基材1の表面を赤外線透過インキ5、裏面を赤外線吸収インキ6で印刷して作製した真偽判別印刷物を示す。
【0046】
図7(a)は真偽判別印刷物の断面図であり、表面の赤外線透過インキ5と裏面の赤外線吸収インキ6は黒色の同色を用いて印刷している。図7(b)は真偽判別印刷物を表裏面から観察した状態を示す。この印刷物の場合、可視光で観察した場合は、表面の図7(b)イ、裏面の図7(b)ロのどちらからも穿孔穴2を確認することはできない。
赤外線で観察した場合は、表面からの観察では、表面の赤外線透過インキ5は透過され、穿孔穴2を通した裏面の赤外線吸収インキ6が黒い穿孔パターン7として観察される(図7(b)ハ)。なお、裏面からの観察では、裏面の赤外線吸収インキ6が黒く観察され、穿孔穴2を確認することはできない(図7(b)ニ)。
【0047】
(実施例2)
図8は、図1(a)の構成で印刷インキは機能性インキを用いた、実施例2にかかわる真偽判別印刷物である。基材1の表裏面を赤外線透過インキ5で印刷して作製した真偽判別印刷物であり、この印刷物を赤外線吸収板10又は赤外線反射板11の上に載置した状態を示す。
【0048】
図8(a)は真偽判別印刷物を赤外線吸収板(黒色)10の上に載置した状態の断面図であり、(a’)は赤外線反射板(白色)11の上に載置した状態の断面図である。図8(b)、(b’)は真偽判別印刷物を表(上)面から観察した状態を示す。この印刷物の場合、(a)、(a’)の状態で可視光で観察した場合は、両方とも穿孔穴2を確認することはできない(図8(b)イ、図8(b’)イ)。
赤外線で観察した場合は、(b)の状態では、赤外線吸収板10上に印刷物を置いて観察すると、図8(b)ロのように、表裏面の赤外線透過インキ5は透過され、穿孔穴2を通した赤外線吸収材10が黒い穿孔パターン8として観察される。また、(b’)の状態では、赤外線反射板11上に印刷物を置いて観察すると、図8(b’)ロのように、表裏面の赤外線透過インキ5は透過されるが、穿孔穴2を通した赤外線反射板11も白色なので、穿孔パターン9は観察されない。
【0049】
(実施例3)
図9は、図1(b)の構成で、印刷インキは機能性インキを用いた、実施例3に係わる真偽判別印刷物である。基材1の裏面を赤外線吸収インキ6で印刷して作製した真偽判別印刷物を示す。
【0050】
図9(a)は真偽判別印刷物の断面図であり、基材1と、その基材をレーザ等で貫通して穿孔穴2とし、その穿孔部分を隠蔽するように裏面のみに黒色の赤外線吸収インキ6で印刷画線を印刷したものであり、印刷していない面から穿孔穴2を通して裏面の赤外線吸収インキ6による穿孔パターンを観察できるようにした印刷物である。また、本実施例の真偽判別印刷物の別の作製方法として、基材1の裏面側を印刷し、その印刷された印刷画線に当たる部分を表面から基材1のみ穿孔してもよい。
図9(b)は真偽判別印刷物を表裏面から観察した状態を示す。この印刷物の場合、可視光で観察した場合は、表(上)面からは、穿孔穴2を通して裏面の赤外線吸収インキ6が黒い穿孔パターン12として観察される(図9(b)イ)。裏面からは穿孔穴を確認することはできない(図9(b)ロ)。
赤外線で観察した場合は、表面からは、穿孔穴2を通して裏面の赤外線吸収インキ6が黒い穿孔パターン13として観察される(図9(b)ハ)。裏面からは、穿孔穴を確認することはできない(図9(b)ニ)。
【0051】
(実施例4)
図10は、図9と同様の構成で、裏面の印刷を機能性インキの赤外線透過インキ5を用いた、実施例4にかかわる真偽判別印刷物である。この印刷物を赤外線吸収板10又は赤外線反射板11の上に載置した状態を示す。
【0052】
図10(a)は真偽判別印刷物を赤外線吸収板(黒色)10の上に載置した状態の断面図であり、(a’)は赤外線反射板(白色)11の上に載置した状態の断面図である。図10(b)、(b’)は真偽判別印刷物を表(上)面から観察した状態を示す。
この印刷物の場合、赤外線吸収板10又は赤外線反射板11を設けていない状態で可視光により観察した場合、裏面の印刷面からは穿孔を見ることができないが、赤外線吸収板又は赤外線反射板を設けた(a)、(a’)の状態で可視光で観察した場合は、穿孔穴2を通して赤外線透過インキ5がそれぞれ黒い穿孔パターン14及び15として確認できる。
赤外線による観察では、裏面側に赤外線吸収板(黒色)10を置いた場合、穿孔穴2を通して黒い穿孔パターン16として観察することができる(図10(b)ロ)。また、裏面側に赤外線反射板(白色)11を置いた場合、穿孔穴2を通して裏面の赤外線透過インキ5は透過されるが、赤外線反射板11も白色なので、穿孔パターン17は観察されない(図10(b’)ロ)。
【0053】
(実施例5)
図11は、図1(c)の構成で印刷インキは機能性インキを用いた、実施例5に係わる真偽判別印刷物である。基材1の表裏面を赤外線透過インキ5で印刷して作製した真偽判別印刷物であり、この印刷物を赤外線吸収板10又は赤外線反射板11の上に載置した状態を示す。
【0054】
図11(a)は真偽判別印刷物を赤外線吸収板(黒色)10の上に載置した状態の断面図であり、(a’)は赤外線反射板(白色)11の上に載置した状態の断面図である。図11(b)、(b’)は真偽判別印刷物を表面から観察した状態を示す。
この印刷物の場合、可視光による観察では、表(上)面の印刷面の穿孔は存在しているが、裏面のインキによりほとんど観察されない(図11(b)イ及び図11(b’)イ)。
赤外線による観察では、裏面側に赤外線吸収板(黒色)10を置いた場合、穿孔穴2を通して黒い穿孔パターン20として観察することができ(図11(b)ロ)、また、裏面側に赤外線反射板(白色)11を置いた場合、穿孔穴2を通して黒い穿孔パターン21として観察することができない(図11(b’)ロ)。
【0055】
(実施例6)
図12は、図1(d)の構成で、基材1の表裏面の印刷を機能性インキの赤外線透過インキ5を用いた、実施例6に係わる真偽判別印刷物である。この印刷物を赤外線吸収板10又は赤外線反射板11の上に載置した状態を示す。
【0056】
図12(a)は真偽判別印刷物を赤外線吸収板(黒色)10の上に載置した状態の断面図であり、(a’)は赤外線反射板(白色)11の上に載置した状態の断面図である。図12(b)、(b’)は真偽判別印刷物を表(上)面から観察した状態を示す。この印刷物の場合、赤外線吸収板10又は赤外線反射板11を設けない状態での表面からの可視光の観察では、穿孔が印刷物を貫通している状態を観察することができる。
赤外線吸収板(黒色)10に載置した場合は、可視光で観察した場合は穿孔は存在しているが、赤外線吸収板(黒色)10により穿孔パターン22はほとんど観察されない(図12(b)イ)。裏面側に赤外線反射板(白色)11に載置した場合は、白い穿孔パターン23が観察される(図12(b’)イ)。
赤外線による観察では、裏面側に赤外線吸収板(黒色)10を置いた場合、穿孔穴2を通して黒い穿孔パターン24として観察され(図12(b)ロ)、また、裏面側に赤外線反射板(白色)11を置いた場合、穿孔穴2を通して穿孔パターン25が観察することができない(図12(b’)ロ)。
【0057】
(実施例7)
図13は、図8の構成である基材1をレーザで貫通して穿孔穴2を形成し(第1のパターン)、その穿孔部分を隠蔽するように表裏面を赤外線透過インキ5で印刷した真偽判別印刷物に、さらに印刷物の印刷領域以外の基材部分にレーザを用いて貫通して穿孔穴2´を形成して第2のパターンを形成した実施例7にかかわる真偽判別印刷物であり、この印刷物を赤外線吸収板10又は赤外線反射板11の上に載置した状態を示す。
【0058】
図13(a)は真偽判別印刷物を赤外線吸収板(黒色)10の上に載置した状態の断面図であり、(a’)は赤外線反射板(白色)11の上に載置した状態の断面図である。図13(b)、(b’)は真偽判別印刷物を表面から観察した状態を示す。
第1のパターンは図8で説明したように観察される(図13(b)及び図13(b’))。
基材1に形成された穿孔穴2’による第2のパターンは貫通された開口状態であるので、可視光で観察した場合は、裏面側の赤外線吸収板(黒色)10の黒い穿孔パターン26(図13(b)イ)を、また、裏面側の赤外線反射板(白色)11の白い穿孔パターン27(図13(b’)イ)を観察することができる。
赤外線による観察では、裏面側の赤外線吸収板(黒色)10の色が、穿孔穴2’を通して黒い穿孔パターン28として観察することができ(図13(b)ロ)、また、裏面側の赤外線反射板白色)11の色が、穿孔穴2’を通して穿孔パターン30を観察することができない(図13(b’)ロ)。
【0059】
(実施例8)
図14は、図7の構成である基材1をレーザで貫通して穿孔穴2を形成し(第1のパターン)、その穿孔部分を隠蔽するように表面を赤外線透過インキ5で、裏面を赤外線吸収インキ6で印刷した真偽判別印刷物の構成に、さらに印刷物の印刷模様以外の基材部分にレーザを用いて貫通して穿孔穴2’を形成して第2のパターンを形成した、実施例8に係わる真偽判別印刷物である。この印刷物を赤外線吸収板10又は赤外線反射板11の上に載置した状態を示す。
【0060】
図14(a)は真偽判別印刷物を赤外線吸収板(黒色)10の上に載置した状態の断面図であり、(a’)は赤外線反射板(白色)11の上に載置した状態の断面図である。図14(b)、(b’)は真偽判別印刷物を表(上)面から観察した状態を示す。
第1のパターンは図7で説明したように観察される。
基材1に形成された穿孔穴2’による第2のパターンは貫通された開口状態であるので、可視光で観察した場合は、裏面側の赤外線吸収板(黒色)10からの穿孔パターン32(図14(b)イ)や赤外線反射材反射板(白色)11からの穿孔パターン33(図14(b’)イ)を観察することができる。
赤外線による観察では、裏面側に赤外線吸収板(黒色)10を置いた場合、穿孔穴2を通して黒い穿孔パターン34として観察することができ(図14(b)ロ)、また、裏面側に赤外線反射板(白色)11を置いた場合、穿孔穴2を通して黒い穿孔パターン36として観察することができない(図14(b’)ロ)。
【0061】
以上詳述したように、真偽判別印刷物及び作製方法を用いることにより、印刷するインキを赤外線透過インキ及び赤外線吸収インキ等の機能性インキとすることで、その機能性インキの観察方法を用いて、インキに隠蔽された穿孔による情報パターンを、穿孔穴及び穿孔穴を通して裏面側のインキを観察することで得ることができる。これにより、基材に穴が空いているのか、インキで隠蔽された穴であるのかを見分けることが可能になる。
【0062】
また、通常の穿孔(基材等に貫通して穿孔し、基材の上下が開口となっている)とインキで隠蔽した穿孔とを組み合わせた印刷物を、赤外線透過板や赤外線吸収板等の機能性材料の上に置いて赤外線で観察し、さらに通常の可視光での観察を加えることにより、観察方法の違いによる情報パターンの現出の相違が生じるので二重の偽造回避となっているので、他の手法や材料を用いた偽造を見分けることが可能となる。
【0063】
また、穿孔の位置、大きさ、形状、個数等を変化させることで、その印刷物固有の情報又は印刷物の種類等を情報としたパターンとすることができ、その印刷物固有の情報又は印刷物の種類等の基準のパターンをあらかじめデータベース化しておくことで、印刷物を観察するときに、印刷物に付与されている印刷物固有の情報である記号や番号等の情報パターンを、基準のパターンと比較し、真偽判別することが可能な真偽判別システムを提供することができる。また、真偽判別の際に、同一の番号や記号、実在しない番号の有無等の情報を容易に得ることが可能となる真偽判別システムを構築することによって、偽造されたものの流通を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の真偽判別印刷物の基本的な構成を示す図である。
【図2】第1〜第4の実施の形態の真偽判別印刷物を表(上)面から可視光で観察した図である。
【図3】赤外線吸収板又は赤外線反射板4上に、第1〜第3の実施の形態の真偽判別印刷物を載置した状態を示す図である。
【図4】第1〜第3の実施の形態の真偽判別印刷物を表(上)面から可視光で観察した図である。
【図5】赤外線吸収板4上に、第1〜第3の実施の形態の真偽判別印刷物を載置した状態で赤外線で観察した図である。
【図6】赤外線反射板4上に、第1〜第3の実施の形態の真偽判別印刷物を載置した状態で赤外線で観察した図である。
【図7】実施例1に係わる真偽判別印刷物の構成を示す図である。
【図8】実施例2に係わる真偽判別印刷物の構成を示す図である。
【図9】実施例3に係わる真偽判別印刷物の構成を示す図である。
【図10】実施例4に係わる真偽判別印刷物の構成を示す図である。
【図11】実施例5に係わる真偽判別印刷物の構成を示す図である。
【図12】実施例6に係わる真偽判別印刷物の構成を示す図である。
【図13】実施例7に係わる真偽判別印刷物の構成を示す図である。
【図14】実施例8に係わる真偽判別印刷物の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 用紙等の基材
2 穿孔穴
2’ 第2の穿孔穴
3 印刷インキ
4 赤外線吸収板又は赤外線反射板
5 赤外線透過インキ
6 赤外線吸収インキ
7、8、9 赤外線で観察した穿孔パターン
10 赤外線吸収板
11 赤外線反射板
12、14、15、18、19、22、23、26、27、32、33 可視光で観察した穿孔パターン
13、16、17、20、21、24、25、28、29、30、31、34、35、36、37 赤外線で観察した穿孔パターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、真偽判別印刷物、該印刷物の真偽判別方法及び真偽判別システムに関するものであり、特に、貴重印刷物等において、その印刷物に対して偽造防止効果を図るために、赤外線インキを用いて機械読み取りによる偽造防止手段を施したものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、用紙、フィルム又は金属板等の基材にレーザにより微細な穿孔を施す技術は公知である。また、銀行券、パスポート、有価証券及びカード等の貴重製品等に偽造防止効果として付与するために用いられている穿孔は、基材のみ又は印刷された基材等を貫通させて施し、その孔を複数配置することにより数字や文字等を構成している。
【0003】
赤外線インキの技術は、赤外線インキで画像情報を隠蔽して印刷し、印刷製品の偽造防止特性を高めている。赤外線インキとしては、白色光下で透明で赤外線領域で光を吸収するもの、白色光下で同じ色で赤外線領域で光を反射するインキと吸収するインキをペアで利用するもの、白色光下で異なる色で赤外線領域で異なった分光特性を示すインキの組合せのものが考えられ、赤外線反射吸収ペアインキは、白色光の下で肉眼で見ると全く同じ色に見えるが、赤外線領域では赤外線吸収率が異なっているインキの組合せから構成されている。
【0004】
カーボンインキやロイコ染料等の赤外線吸収物質を含有するインキを用いて情報パターンを設け、赤外線読取り装置にて機械読み取りをし、パターンの有無を判別して真偽判別が行われているが、カーボンブラックやロイコ染料等の赤外線吸収物質は可視領域においても光吸収性を有しているため、肉眼でもその存在が判別されやすかった。
【0005】
レーザにより目視しにくい程度の微細な多数の穿孔が特定のパターンで形成されている基材を有し、該基材の一面を発光物質で印刷又はコートして穿孔を埋めて設けることで、機械による真偽判定を可能とする、微細な穿孔を応用した偽造抑制形成体と、その製造方法及び真偽判定装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、有価証券印刷物の用紙の一部領域に複数の貫通孔を設け、この貫通孔を隠蔽するように印刷物の表裏から光輝性画像形成層を有し、かつ、用紙強度以上の強度を有するシール状貼付物を熱転写した有価証券印刷物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特許第3376408号公報
【特許文献2】特開平9−30172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
貴重印刷物等に偽造防止効果を付与するためのレーザ等を用いた穿孔は、穿孔装置の入手が比較的容易になってきたことで、穿孔であっても偽造される危険性が高まってきた。
【0009】
特許文献1は、基材に穿孔により特定のパターンが形成され、その穿孔を包埋するように、発光物質を付与して穿孔の開口をカバーした偽造抑制形成体であり、透過光により微細な穿孔の配列パターンを認識するとともに、発光物質が励起発光する特定波長を検出することで真偽判定するものである。
【0010】
特許文献2は、有価証券印刷物をカラーコピー機等で複写した場合、シール状貼付物が光輝性を有する画像形成層のため、オリジナルと違って視認される。また、貼付物の転写により剥がそうとすると有価証券印刷物そのものが破壊されるという構成が偽造防止策となっているものであり、改ざんしようとして剥離したときに貼付物の樹脂接着剤が貫通孔にまで浸透することで用紙等の一部領域を固着するものである。
【0011】
本発明は、上述した従来技術にかんがみなされたものであり、貴重印刷物等に偽造防止効果として用いられているレーザ等を用いた穿孔の技術を有効に用い、機能性インキと組み合わせて用いることで偽造防止効果を高めることが可能な真偽判別印刷物、該印刷物の真偽判別方法及び真偽判別システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、基材の少なくとも一部領域に貫通孔により情報パターンが形成された印刷物であって、貫通孔により形成された情報パターンの少なくとも一部を基材の表裏面から隠蔽するように、基材の表裏面に印刷インキによる印刷模様が印刷されて成る真偽判別可能な印刷物である。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明を前提とし、印刷インキが機能性印刷インキであることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1、2記載の発明を前提とし、前記基材の一方の印刷面を赤外線吸収インキで印刷し、他方の印刷面を赤外線透過インキで印刷して成ることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1、2記載の発明を前提とし、前記基材の表裏面を赤外線透過インキで印刷して成ることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0016】
請求項5記載の発明は、基材の少なくとも一部領域に貫通孔により情報パターンが形成された印刷物であって、貫通孔により形成された情報パターンの少なくとも一部を基材の表裏面から隠蔽するように、基材の表裏面に印刷インキによる印刷模様が印刷され、基材の表裏面のいずれか一方の印刷模様を印刷する印刷インキが、赤外線透過インキ又は赤外線反射インキであることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0017】
請求項6記載の発明は、基材の一方の面の少なくとも一部領域に赤外線透過インキにより印刷模様が印刷され、基材及び基材上に印刷された印刷模様を貫通する貫通孔により情報パターンが形成され、基材の他方の面に貫通して形成された貫通孔による情報パターンが赤外線透過インキによる印刷模様で隠蔽されて成ることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0018】
請求項7記載の発明は、基材の表裏面に、少なくとも一部領域に赤外線透過インキによる印刷模様が印刷され、基材の表面の印刷模様、基材及び基材の裏面の印刷模様を貫通する貫通孔により情報パターンが形成されて成ることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0019】
請求項8記載の発明は、請求項3又は4記載の発明を前提とし、真偽判別印刷物に形成された貫通孔によるパターンを第1の情報パターンとし、さらに、真偽判別印刷物の貫通孔を隠蔽するために印刷された印刷模様以外の基材部分に貫通孔により形成された第2の情報パターンを有する真偽判別印刷物である。
【0020】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の真偽判別印刷物であって、前記貫通孔により形成された情報パターンは、貫通孔の位置、大きさ、形状及び/又は個数により情報が形成されたことを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0021】
請求項10記載の発明は、請求項2〜9のいずれかに記載の真偽判別印刷物であって、前記印刷物に貫通孔により形成された情報パターンは、機械読み取り可能な情報パターンであることを特徴とする真偽判別印刷物である。
【0022】
請求項11記載の発明は、請求項2〜10のいずれかに記載の真偽判別印刷物を取扱う真偽判別方法であって、前記印刷物の一方の印刷面を下にして赤外線透過材又は赤外線吸収材の機能性材料で形成された基材の上に載置し、印刷物の他方の印刷面より可視光又は赤外線を照射し、情報パターンの有無を確認することを特徴とする真偽判別方法である。
【0023】
請求項12記載の発明は、請求項2〜10のいずれかに記載の真偽判別印刷物を取扱う真偽判別方法であって、真偽判別印刷物に赤外線を照射し、照射された赤外線により、真偽判別印刷物に形成された貫通孔による情報パターンを読み取り、読み取った情報パターンをあらかじめ記憶されている基準の情報パターンと比較することを特徴とする真偽判別方法である。
【0024】
請求項13記載の発明は、請求項2〜10のいずれかに記載の真偽判別印刷物を取扱う真偽判別システムであって、赤外線照射装置より真偽判別印刷物に赤外線を照射する手段と、照射された赤外線により、真偽判別印刷物に形成された貫通孔による情報パターンを読み取る手段と、読み取った情報パターンをあらかじめ記憶部に記憶されている基準の情報パターンと比較する手段とを備えた真偽判別システムである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、レーザ等を用いた穿孔の技術を有効に用い、機能性インキと組み合わせて用いることで印刷物の真偽判別効果を高めることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明の実施の形態による真偽判別印刷物、該印刷物の真偽判別方法及び真偽判別システムについて説明する。
【0027】
本発明に係わる基材としては、用途に応じて種々のものが使用できるが、例えば紙、PET及び塩ビ等のプラスチック等の反射性基材が用いられる。
本発明に係わる機能性インキとしての赤外線吸収インキとしては、通常のカーボンブラック等を顔料とするインキでもよい。
また、基材等に孔をあける手段としては、レーザによる穿孔及び針による孔等が考えられるが、本実施の形態ではレーザを用いた説明とする。
本発明の情報パターンとしては、真偽判別印刷物に付与される固有の情報である記号、番号又は印刷物の種類等である。
【0028】
図1に、本発明の真偽判別印刷物の基本的な構成を説明する。本発明は情報をレーザによる穿孔によってパターンとして形成しているため、貫通孔の位置、大きさ、形状及び個数を変化させることにより情報を形成することが可能となり、より偽造を困難にすることが可能となる。
【0029】
第1の実施の形態としては、基材にレーザで目視し難い程度の微細な穿孔を貫通して情報パターンを形成し、この貫通孔を隠蔽するために基材の表裏面を印刷インキにより印刷模様を施した印刷物である。別の作製法としては、基材の表裏面のいずれか一方の面に印刷インキで印刷し、この印刷された部分にあたる個所に、印刷していない基材側からレーザで基材のみを貫通して穿孔し、印刷していない基材側からインキが確認できるようにし、次に印刷をしていない他方の面を、穿孔した穴を隠蔽するように印刷インキで印刷模様を印刷してもよい。
【0030】
図1(a)は、第1の実施の形態の真偽判別印刷物の断面図であり、基材1と、その基材をレーザ等で貫通して穿孔穴2とし、その穿孔穴部分を隠蔽するように表裏面に印刷インキ3で印刷模様を印刷したものである。この形態の場合は、表裏両面が閉口されている。
【0031】
第2の実施の形態としては、基材にレーザにより目視し難い程度の微細な穿孔を貫通して情報パターンを形成し、この貫通孔の一方の側を隠蔽するために基材の表裏面のいずれか一方の面を印刷インキで印刷模様を印刷した印刷物である。別の作製法としては、基材の表裏面のいずれか一方の面を印刷インキで印刷し、次に印刷部分を貫通しないようにして基材部分のみをレーザで貫通して穿孔してもよい。
【0032】
図1(b)は、第2の実施の形態の真偽判別印刷物の断面図であり、基材1と、その基材をレーザ等で貫通して穿孔穴2とし、その穿孔穴部分を隠蔽するように表裏面のいずれか一方に印刷インキ3で印刷模様を印刷したものである。この形態の場合は、一方の側が開口となって情報パターンが施されている。
【0033】
第3の形態としては、基材の表裏面のいずれか一方の面に印刷インキで印刷模様を印刷し、この印刷模様及び基材をレーザで貫通して穿孔し、次に基材の印刷をしていない他方の面に印刷インキで印刷模様を印刷する。別の作製法としては、基材の表裏面に印刷インキで印刷模様を印刷し、次にどちらか一方の面の印刷模様を貫通しないようにして他方の印刷部分及び基材部分をレーザで貫通して穿孔してもよい。
【0034】
図1(c)は、第3の実施の形態の真偽判別印刷物の断面図であり、基材1と、その基材の表裏面のいずれか一方の面に印刷インキ3で印刷模様を印刷し、この印刷模様及び基材をレーザ等で貫通して穿孔穴2とし、次に基材の印刷をしていない他方の面を印刷インキ3で印刷模様を印刷したものである。この形態の場合は、一方の側が開口となって情報パターンが施されている。
【0035】
第4の形態としては、基材の表裏面に印刷インキで印刷模様を印刷し、表面の印刷模様、基材及び裏面の印刷模様をレーザで貫通して穿孔する。
【0036】
図1(d)は、第4の実施の形態の真偽判別印刷物の断面図であり、基材1と、その基材の表裏面を印刷インキ3で印刷模様を印刷し、表面の印刷模様、基材及び裏面の印刷模様をレーザ等で貫通して穿孔穴2としたものである。この形態の場合は、表裏両方の面が開口となって情報パターンが施されている。
【0037】
第1〜第4の実施の形態の真偽判別印刷物を表(上)面から可視光で観察すると、図2の(a)〜(d)のように、図1(a)の印刷物は穿孔穴2を確認することはできず、(b)の印刷物の場合、穿孔穴2を通して裏面の印刷インキ3が見える。(c)の印刷物の場合、穿孔穴2を通して裏面の印刷インキ3が見えることになるが、表裏のインキが同色である場合、判別は困難である。(d)の印刷物の場合、貫通された穿孔穴2を確認することができる。これは透過光を用いることにより容易に観察できる。
【0038】
第5の形態としては、第1〜第3の実施の形態の真偽判別印刷物を、基材の穿孔部分を赤外線透過型インキで隠蔽した印刷物とし、赤外線吸収板又は赤外線反射板に載置した状態のものである。このようにすることで、印刷物を可視光及び赤外線で観察したときに、印刷物だけのときに観察された情報パターンの穴が、穿孔と印刷によって隠蔽された穴であるか又は擬似的に穿孔部分を印刷等の手法によって施したもので、穿孔されていないものであるかを判別することができるため、真偽判別の手段として有効である。
【0039】
図3(a)〜(c)は、第5の実施の形態の真偽判別印刷物の断面図であり、図3(a)は第1の実施の形態、図3(b)は第2の実施の形態、図3(c)は第3の実施の形態の真偽判別印刷物で、赤外線吸収板又は赤外線反射板4に第1〜第3の実施の形態の印刷物を載置した状態を示す。
【0040】
第5の実施の形態の真偽判別印刷物を表(上)面から可視光で観察すると、図4の(a)〜(c)のように、図3(a)の印刷物の場合、穿孔穴2を確認することはできず、図3(b)、図3(c)の印刷物の場合は裏面の印刷インキ3が見える穿孔穴2を確認することができる。
次に、赤外線吸収板4の上に載置し、表(上)面から赤外線で観察すると、図5の(a)〜(c)のように、図3(a)〜(c)の印刷物は赤外線吸収板4が見える穿孔穴2を確認することができる。
また、赤外線吸収板を赤外線反射板4に交換し、表(上)面から赤外線で観察すると、図6の(a)〜(c)のように、図3(a)〜(c)の印刷物は穿孔穴2を通して赤外線反射板4が見えることになるが、白く明るく確認されるため判別は困難である。
【0041】
また、本実施の形態の印刷物の構成では、施された穿孔部分は印刷される印刷インキで埋められても、埋められなくてもどちらでもよい。
【0042】
本発明の真偽判別印刷物の真偽判別方法としては、可視光と赤外線の両方を用いて観察することで真偽判別をより確実にしている。例えば、機能性インキで隠蔽された穿孔の穴を備えた印刷物を機械読み取りする際に、可視光では光の透過の有無により単純に穿孔された穴かどうかを判別し、赤外線では赤外線吸収板又は赤外線反射板の上に印刷物を載置することで、穴を隠蔽した機能性インキが、赤外線透過型のみか、片面または両面に吸収型を用いた構成であるか、また、観察される情報パターンが基材に穿孔で空けられた孔であるのか否か等を判別することができる。
【実施例】
【0043】
図7〜図14に、上記第1〜第5の実施の形態における実施例として情報パターンを付与した真偽判別印刷物の一例を示す。基材に印刷するインキとしては、真偽判別手段として機械読取りに有効な機能性インキの赤外線吸収インキ及び赤外線透過インキを用いた。
【0044】
本発明は、本実施例に限定されるものではなく、基材に施される穿孔箇所と印刷の順序、印刷に用いるインキの種類、情報の付与方法(穿孔穴によるパターンの形成)を組み合わせることにより種々の形態が考えられる。また、その真偽判別としては、穿孔穴の隠蔽とその観察、穿孔穴を隠蔽しなくても偽造が困難なものとその観察、情報の読み取りとその照合等により効果的に行うことができ、貴重印刷物等に対して券種判別や偽造防止又は真偽判別等に有効な技術を付与するものである。
【0045】
(実施例1)
図7は、図1(a)の構成で、印刷インキは機能性インキを用いた、実施例1に係わる真偽判別印刷物である。基材1の表面を赤外線透過インキ5、裏面を赤外線吸収インキ6で印刷して作製した真偽判別印刷物を示す。
【0046】
図7(a)は真偽判別印刷物の断面図であり、表面の赤外線透過インキ5と裏面の赤外線吸収インキ6は黒色の同色を用いて印刷している。図7(b)は真偽判別印刷物を表裏面から観察した状態を示す。この印刷物の場合、可視光で観察した場合は、表面の図7(b)イ、裏面の図7(b)ロのどちらからも穿孔穴2を確認することはできない。
赤外線で観察した場合は、表面からの観察では、表面の赤外線透過インキ5は透過され、穿孔穴2を通した裏面の赤外線吸収インキ6が黒い穿孔パターン7として観察される(図7(b)ハ)。なお、裏面からの観察では、裏面の赤外線吸収インキ6が黒く観察され、穿孔穴2を確認することはできない(図7(b)ニ)。
【0047】
(実施例2)
図8は、図1(a)の構成で印刷インキは機能性インキを用いた、実施例2にかかわる真偽判別印刷物である。基材1の表裏面を赤外線透過インキ5で印刷して作製した真偽判別印刷物であり、この印刷物を赤外線吸収板10又は赤外線反射板11の上に載置した状態を示す。
【0048】
図8(a)は真偽判別印刷物を赤外線吸収板(黒色)10の上に載置した状態の断面図であり、(a’)は赤外線反射板(白色)11の上に載置した状態の断面図である。図8(b)、(b’)は真偽判別印刷物を表(上)面から観察した状態を示す。この印刷物の場合、(a)、(a’)の状態で可視光で観察した場合は、両方とも穿孔穴2を確認することはできない(図8(b)イ、図8(b’)イ)。
赤外線で観察した場合は、(b)の状態では、赤外線吸収板10上に印刷物を置いて観察すると、図8(b)ロのように、表裏面の赤外線透過インキ5は透過され、穿孔穴2を通した赤外線吸収材10が黒い穿孔パターン8として観察される。また、(b’)の状態では、赤外線反射板11上に印刷物を置いて観察すると、図8(b’)ロのように、表裏面の赤外線透過インキ5は透過されるが、穿孔穴2を通した赤外線反射板11も白色なので、穿孔パターン9は観察されない。
【0049】
(実施例3)
図9は、図1(b)の構成で、印刷インキは機能性インキを用いた、実施例3に係わる真偽判別印刷物である。基材1の裏面を赤外線吸収インキ6で印刷して作製した真偽判別印刷物を示す。
【0050】
図9(a)は真偽判別印刷物の断面図であり、基材1と、その基材をレーザ等で貫通して穿孔穴2とし、その穿孔部分を隠蔽するように裏面のみに黒色の赤外線吸収インキ6で印刷画線を印刷したものであり、印刷していない面から穿孔穴2を通して裏面の赤外線吸収インキ6による穿孔パターンを観察できるようにした印刷物である。また、本実施例の真偽判別印刷物の別の作製方法として、基材1の裏面側を印刷し、その印刷された印刷画線に当たる部分を表面から基材1のみ穿孔してもよい。
図9(b)は真偽判別印刷物を表裏面から観察した状態を示す。この印刷物の場合、可視光で観察した場合は、表(上)面からは、穿孔穴2を通して裏面の赤外線吸収インキ6が黒い穿孔パターン12として観察される(図9(b)イ)。裏面からは穿孔穴を確認することはできない(図9(b)ロ)。
赤外線で観察した場合は、表面からは、穿孔穴2を通して裏面の赤外線吸収インキ6が黒い穿孔パターン13として観察される(図9(b)ハ)。裏面からは、穿孔穴を確認することはできない(図9(b)ニ)。
【0051】
(実施例4)
図10は、図9と同様の構成で、裏面の印刷を機能性インキの赤外線透過インキ5を用いた、実施例4にかかわる真偽判別印刷物である。この印刷物を赤外線吸収板10又は赤外線反射板11の上に載置した状態を示す。
【0052】
図10(a)は真偽判別印刷物を赤外線吸収板(黒色)10の上に載置した状態の断面図であり、(a’)は赤外線反射板(白色)11の上に載置した状態の断面図である。図10(b)、(b’)は真偽判別印刷物を表(上)面から観察した状態を示す。
この印刷物の場合、赤外線吸収板10又は赤外線反射板11を設けていない状態で可視光により観察した場合、裏面の印刷面からは穿孔を見ることができないが、赤外線吸収板又は赤外線反射板を設けた(a)、(a’)の状態で可視光で観察した場合は、穿孔穴2を通して赤外線透過インキ5がそれぞれ黒い穿孔パターン14及び15として確認できる。
赤外線による観察では、裏面側に赤外線吸収板(黒色)10を置いた場合、穿孔穴2を通して黒い穿孔パターン16として観察することができる(図10(b)ロ)。また、裏面側に赤外線反射板(白色)11を置いた場合、穿孔穴2を通して裏面の赤外線透過インキ5は透過されるが、赤外線反射板11も白色なので、穿孔パターン17は観察されない(図10(b’)ロ)。
【0053】
(実施例5)
図11は、図1(c)の構成で印刷インキは機能性インキを用いた、実施例5に係わる真偽判別印刷物である。基材1の表裏面を赤外線透過インキ5で印刷して作製した真偽判別印刷物であり、この印刷物を赤外線吸収板10又は赤外線反射板11の上に載置した状態を示す。
【0054】
図11(a)は真偽判別印刷物を赤外線吸収板(黒色)10の上に載置した状態の断面図であり、(a’)は赤外線反射板(白色)11の上に載置した状態の断面図である。図11(b)、(b’)は真偽判別印刷物を表面から観察した状態を示す。
この印刷物の場合、可視光による観察では、表(上)面の印刷面の穿孔は存在しているが、裏面のインキによりほとんど観察されない(図11(b)イ及び図11(b’)イ)。
赤外線による観察では、裏面側に赤外線吸収板(黒色)10を置いた場合、穿孔穴2を通して黒い穿孔パターン20として観察することができ(図11(b)ロ)、また、裏面側に赤外線反射板(白色)11を置いた場合、穿孔穴2を通して黒い穿孔パターン21として観察することができない(図11(b’)ロ)。
【0055】
(実施例6)
図12は、図1(d)の構成で、基材1の表裏面の印刷を機能性インキの赤外線透過インキ5を用いた、実施例6に係わる真偽判別印刷物である。この印刷物を赤外線吸収板10又は赤外線反射板11の上に載置した状態を示す。
【0056】
図12(a)は真偽判別印刷物を赤外線吸収板(黒色)10の上に載置した状態の断面図であり、(a’)は赤外線反射板(白色)11の上に載置した状態の断面図である。図12(b)、(b’)は真偽判別印刷物を表(上)面から観察した状態を示す。この印刷物の場合、赤外線吸収板10又は赤外線反射板11を設けない状態での表面からの可視光の観察では、穿孔が印刷物を貫通している状態を観察することができる。
赤外線吸収板(黒色)10に載置した場合は、可視光で観察した場合は穿孔は存在しているが、赤外線吸収板(黒色)10により穿孔パターン22はほとんど観察されない(図12(b)イ)。裏面側に赤外線反射板(白色)11に載置した場合は、白い穿孔パターン23が観察される(図12(b’)イ)。
赤外線による観察では、裏面側に赤外線吸収板(黒色)10を置いた場合、穿孔穴2を通して黒い穿孔パターン24として観察され(図12(b)ロ)、また、裏面側に赤外線反射板(白色)11を置いた場合、穿孔穴2を通して穿孔パターン25が観察することができない(図12(b’)ロ)。
【0057】
(実施例7)
図13は、図8の構成である基材1をレーザで貫通して穿孔穴2を形成し(第1のパターン)、その穿孔部分を隠蔽するように表裏面を赤外線透過インキ5で印刷した真偽判別印刷物に、さらに印刷物の印刷領域以外の基材部分にレーザを用いて貫通して穿孔穴2´を形成して第2のパターンを形成した実施例7にかかわる真偽判別印刷物であり、この印刷物を赤外線吸収板10又は赤外線反射板11の上に載置した状態を示す。
【0058】
図13(a)は真偽判別印刷物を赤外線吸収板(黒色)10の上に載置した状態の断面図であり、(a’)は赤外線反射板(白色)11の上に載置した状態の断面図である。図13(b)、(b’)は真偽判別印刷物を表面から観察した状態を示す。
第1のパターンは図8で説明したように観察される(図13(b)及び図13(b’))。
基材1に形成された穿孔穴2’による第2のパターンは貫通された開口状態であるので、可視光で観察した場合は、裏面側の赤外線吸収板(黒色)10の黒い穿孔パターン26(図13(b)イ)を、また、裏面側の赤外線反射板(白色)11の白い穿孔パターン27(図13(b’)イ)を観察することができる。
赤外線による観察では、裏面側の赤外線吸収板(黒色)10の色が、穿孔穴2’を通して黒い穿孔パターン28として観察することができ(図13(b)ロ)、また、裏面側の赤外線反射板白色)11の色が、穿孔穴2’を通して穿孔パターン30を観察することができない(図13(b’)ロ)。
【0059】
(実施例8)
図14は、図7の構成である基材1をレーザで貫通して穿孔穴2を形成し(第1のパターン)、その穿孔部分を隠蔽するように表面を赤外線透過インキ5で、裏面を赤外線吸収インキ6で印刷した真偽判別印刷物の構成に、さらに印刷物の印刷模様以外の基材部分にレーザを用いて貫通して穿孔穴2’を形成して第2のパターンを形成した、実施例8に係わる真偽判別印刷物である。この印刷物を赤外線吸収板10又は赤外線反射板11の上に載置した状態を示す。
【0060】
図14(a)は真偽判別印刷物を赤外線吸収板(黒色)10の上に載置した状態の断面図であり、(a’)は赤外線反射板(白色)11の上に載置した状態の断面図である。図14(b)、(b’)は真偽判別印刷物を表(上)面から観察した状態を示す。
第1のパターンは図7で説明したように観察される。
基材1に形成された穿孔穴2’による第2のパターンは貫通された開口状態であるので、可視光で観察した場合は、裏面側の赤外線吸収板(黒色)10からの穿孔パターン32(図14(b)イ)や赤外線反射材反射板(白色)11からの穿孔パターン33(図14(b’)イ)を観察することができる。
赤外線による観察では、裏面側に赤外線吸収板(黒色)10を置いた場合、穿孔穴2を通して黒い穿孔パターン34として観察することができ(図14(b)ロ)、また、裏面側に赤外線反射板(白色)11を置いた場合、穿孔穴2を通して黒い穿孔パターン36として観察することができない(図14(b’)ロ)。
【0061】
以上詳述したように、真偽判別印刷物及び作製方法を用いることにより、印刷するインキを赤外線透過インキ及び赤外線吸収インキ等の機能性インキとすることで、その機能性インキの観察方法を用いて、インキに隠蔽された穿孔による情報パターンを、穿孔穴及び穿孔穴を通して裏面側のインキを観察することで得ることができる。これにより、基材に穴が空いているのか、インキで隠蔽された穴であるのかを見分けることが可能になる。
【0062】
また、通常の穿孔(基材等に貫通して穿孔し、基材の上下が開口となっている)とインキで隠蔽した穿孔とを組み合わせた印刷物を、赤外線透過板や赤外線吸収板等の機能性材料の上に置いて赤外線で観察し、さらに通常の可視光での観察を加えることにより、観察方法の違いによる情報パターンの現出の相違が生じるので二重の偽造回避となっているので、他の手法や材料を用いた偽造を見分けることが可能となる。
【0063】
また、穿孔の位置、大きさ、形状、個数等を変化させることで、その印刷物固有の情報又は印刷物の種類等を情報としたパターンとすることができ、その印刷物固有の情報又は印刷物の種類等の基準のパターンをあらかじめデータベース化しておくことで、印刷物を観察するときに、印刷物に付与されている印刷物固有の情報である記号や番号等の情報パターンを、基準のパターンと比較し、真偽判別することが可能な真偽判別システムを提供することができる。また、真偽判別の際に、同一の番号や記号、実在しない番号の有無等の情報を容易に得ることが可能となる真偽判別システムを構築することによって、偽造されたものの流通を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の真偽判別印刷物の基本的な構成を示す図である。
【図2】第1〜第4の実施の形態の真偽判別印刷物を表(上)面から可視光で観察した図である。
【図3】赤外線吸収板又は赤外線反射板4上に、第1〜第3の実施の形態の真偽判別印刷物を載置した状態を示す図である。
【図4】第1〜第3の実施の形態の真偽判別印刷物を表(上)面から可視光で観察した図である。
【図5】赤外線吸収板4上に、第1〜第3の実施の形態の真偽判別印刷物を載置した状態で赤外線で観察した図である。
【図6】赤外線反射板4上に、第1〜第3の実施の形態の真偽判別印刷物を載置した状態で赤外線で観察した図である。
【図7】実施例1に係わる真偽判別印刷物の構成を示す図である。
【図8】実施例2に係わる真偽判別印刷物の構成を示す図である。
【図9】実施例3に係わる真偽判別印刷物の構成を示す図である。
【図10】実施例4に係わる真偽判別印刷物の構成を示す図である。
【図11】実施例5に係わる真偽判別印刷物の構成を示す図である。
【図12】実施例6に係わる真偽判別印刷物の構成を示す図である。
【図13】実施例7に係わる真偽判別印刷物の構成を示す図である。
【図14】実施例8に係わる真偽判別印刷物の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 用紙等の基材
2 穿孔穴
2’ 第2の穿孔穴
3 印刷インキ
4 赤外線吸収板又は赤外線反射板
5 赤外線透過インキ
6 赤外線吸収インキ
7、8、9 赤外線で観察した穿孔パターン
10 赤外線吸収板
11 赤外線反射板
12、14、15、18、19、22、23、26、27、32、33 可視光で観察した穿孔パターン
13、16、17、20、21、24、25、28、29、30、31、34、35、36、37 赤外線で観察した穿孔パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一部領域に貫通孔により情報パターンが形成された印刷物であって、前記貫通孔により形成された情報パターンの少なくとも一部を前記基材の表裏面から隠蔽するように、前記基材の表裏面に印刷インキによる印刷模様が印刷されて成る真偽判別可能な印刷物。
【請求項2】
前記情報パターンの少なくとも一部を隠蔽するための印刷模様を印刷する印刷インキは、機能性インキである請求項1記載の真偽判別印刷物。
【請求項3】
前記機能性インキは、前記基材の一方の面が赤外線吸収インキで、他方の面が赤外線透過インキである請求項2記載の真偽判別印刷物。
【請求項4】
前記機能性インキは、前記基材の表裏面が赤外線透過インキである請求項2記載の真偽判別印刷物。
【請求項5】
基材の少なくとも一部領域に貫通孔により情報パターンが形成された印刷物であって、前記貫通孔により形成された情報パターンの少なくとも一部を前記基材の表裏面から隠蔽するように、前記基材の表裏面に印刷インキによる印刷模様が印刷され、前記基材の表裏面のいずれか一方の前記印刷模様を印刷する印刷インキが、赤外線透過インキ又は赤外線反射インキであることを特徴とする真偽判別印刷物。
【請求項6】
基材の一方の面の少なくとも一部領域に赤外線透過インキにより印刷模様が印刷され、前記基材及び前記基材上に印刷された印刷模様を貫通する貫通孔により情報パターンが形成され、前記基材の他方の面に貫通して形成された貫通孔による情報パターンが赤外線透過インキによる印刷模様で隠蔽されて成ることを特徴とする真偽判別印刷物。
【請求項7】
基材の表裏面に、少なくとも一部領域に赤外線透過インキによる印刷模様が印刷され、前記基材の表面の印刷模様、前記基材及び前記基材の裏面の印刷模様を貫通する貫通孔により情報パターンが形成されて成ることを特徴とする真偽判別印刷物。
【請求項8】
前記請求項3又は4記載の真偽判別印刷物に形成された貫通孔による情報パターンを第1の情報パターンとし、さらに、前記真偽判別印刷物の貫通孔を隠蔽するために印刷された印刷模様以外の基材部分に貫通孔により形成された第2の情報パターンを有する真偽判別印刷物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の真偽判別印刷物であって、前記貫通孔により形成された情報パターンは、貫通孔の位置、大きさ、形状及び/又は個数により情報が形成されたことを特徴とする真偽判別印刷物。
【請求項10】
前記印刷物に貫通孔により形成された情報パターンは、機械読み取り可能な情報パターンである請求項2〜9記載の真偽判別印刷物。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれかに記載の真偽判別印刷物の真偽判別方法であって、前記印刷物の一方の印刷面を下にして赤外線透過材又は赤外線吸収材の機能性材料で形成された基材の上に載置し、前記印刷物の他方の印刷面より可視光又は赤外線を照射し、前記情報パターンの有無を確認することを特徴とする真偽判別方法。
【請求項12】
請求項2〜10のいずれかに記載の真偽判別印刷物の真偽判別方法であって、前記真偽判別印刷物に赤外線を照射し、前記照射された赤外線により、前記真偽判別印刷物に形成された貫通孔による情報パターンを読み取り、前記読み取った情報パターンをあらかじめ記憶されている基準の情報パターンと比較することを特徴とする真偽判別方法。
【請求項13】
請求項2〜10のいずれかに記載の真偽判別印刷物の真偽判別システムであって、前記真偽判別印刷物に赤外線を照射する手段と、前記照射された赤外線により、前記真偽判別印刷物に形成された貫通孔による情報パターンを読み取る手段と、前記読み取った情報パターンをあらかじめ記憶部に記憶されている基準の情報パターンと比較する手段とを備えた真偽判別システム。
【請求項1】
基材の少なくとも一部領域に貫通孔により情報パターンが形成された印刷物であって、前記貫通孔により形成された情報パターンの少なくとも一部を前記基材の表裏面から隠蔽するように、前記基材の表裏面に印刷インキによる印刷模様が印刷されて成る真偽判別可能な印刷物。
【請求項2】
前記情報パターンの少なくとも一部を隠蔽するための印刷模様を印刷する印刷インキは、機能性インキである請求項1記載の真偽判別印刷物。
【請求項3】
前記機能性インキは、前記基材の一方の面が赤外線吸収インキで、他方の面が赤外線透過インキである請求項2記載の真偽判別印刷物。
【請求項4】
前記機能性インキは、前記基材の表裏面が赤外線透過インキである請求項2記載の真偽判別印刷物。
【請求項5】
基材の少なくとも一部領域に貫通孔により情報パターンが形成された印刷物であって、前記貫通孔により形成された情報パターンの少なくとも一部を前記基材の表裏面から隠蔽するように、前記基材の表裏面に印刷インキによる印刷模様が印刷され、前記基材の表裏面のいずれか一方の前記印刷模様を印刷する印刷インキが、赤外線透過インキ又は赤外線反射インキであることを特徴とする真偽判別印刷物。
【請求項6】
基材の一方の面の少なくとも一部領域に赤外線透過インキにより印刷模様が印刷され、前記基材及び前記基材上に印刷された印刷模様を貫通する貫通孔により情報パターンが形成され、前記基材の他方の面に貫通して形成された貫通孔による情報パターンが赤外線透過インキによる印刷模様で隠蔽されて成ることを特徴とする真偽判別印刷物。
【請求項7】
基材の表裏面に、少なくとも一部領域に赤外線透過インキによる印刷模様が印刷され、前記基材の表面の印刷模様、前記基材及び前記基材の裏面の印刷模様を貫通する貫通孔により情報パターンが形成されて成ることを特徴とする真偽判別印刷物。
【請求項8】
前記請求項3又は4記載の真偽判別印刷物に形成された貫通孔による情報パターンを第1の情報パターンとし、さらに、前記真偽判別印刷物の貫通孔を隠蔽するために印刷された印刷模様以外の基材部分に貫通孔により形成された第2の情報パターンを有する真偽判別印刷物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の真偽判別印刷物であって、前記貫通孔により形成された情報パターンは、貫通孔の位置、大きさ、形状及び/又は個数により情報が形成されたことを特徴とする真偽判別印刷物。
【請求項10】
前記印刷物に貫通孔により形成された情報パターンは、機械読み取り可能な情報パターンである請求項2〜9記載の真偽判別印刷物。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれかに記載の真偽判別印刷物の真偽判別方法であって、前記印刷物の一方の印刷面を下にして赤外線透過材又は赤外線吸収材の機能性材料で形成された基材の上に載置し、前記印刷物の他方の印刷面より可視光又は赤外線を照射し、前記情報パターンの有無を確認することを特徴とする真偽判別方法。
【請求項12】
請求項2〜10のいずれかに記載の真偽判別印刷物の真偽判別方法であって、前記真偽判別印刷物に赤外線を照射し、前記照射された赤外線により、前記真偽判別印刷物に形成された貫通孔による情報パターンを読み取り、前記読み取った情報パターンをあらかじめ記憶されている基準の情報パターンと比較することを特徴とする真偽判別方法。
【請求項13】
請求項2〜10のいずれかに記載の真偽判別印刷物の真偽判別システムであって、前記真偽判別印刷物に赤外線を照射する手段と、前記照射された赤外線により、前記真偽判別印刷物に形成された貫通孔による情報パターンを読み取る手段と、前記読み取った情報パターンをあらかじめ記憶部に記憶されている基準の情報パターンと比較する手段とを備えた真偽判別システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−162233(P2008−162233A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80(P2007−80)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]