説明

真偽判別可能な印刷物、その作製装置及びその作製方法並びに真偽判別可能な印刷物の認証装置及びその認証方法

【課題】 本発明は、偽造防止用として施す真偽判別可能な印刷物、その作製装置及びその作製方法並びに真偽判別可能な印刷物の認証装置及びその認証方法に関する。
【解決手段】 異なる色要素から成る複数の線画像で構成された印刷画像であり、複数の線画像は、明度の高い色要素と明度の低い色要素を有し、明度の高い色要素上に明度の低い色要素が形成されて成り、複数の線画像のうち、明度の高い色要素を所定の間隔を有する同心円万線で形成し、明度の低い色素から成る線画像を同心円万線と異なる形状を成す画線群が配置された少なくとも一つの領域によって形成され、明度の高い色要素から成る線画像を周波数解析した場合に、埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価証券、各種証明書及び重要書類等の貴重印刷物に、偽造防止用として施す真偽判別可能な印刷物、その作製装置及びその作製方法並びに真偽判別可能な印刷物の認証装置及びその認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券、各種証明書及び重要書類等の印刷物において、偽造、変造防止策は重要な要素である。主な偽造、変造防止策として、印刷物に対し何らかの手段により不可視情報を埋め込み、何らかの手段によって不可視情報を読み取る方法がある。
【0003】
今日では、読み取り用のセンサに合わせて様々な方法及び手段がある。印刷物の機械読み取り検査方法としては、磁性インキ、赤外線反射吸収インキ、蛍光インキ等の機能性インキや、印刷媒体を形成する繊維、材質、薬品類等による素材を検知するといったものが主流である。しかし、これらの技術は、人間に感知できない特定の電磁波等に起因するものであり、印刷物を作製する上で材料適性に依存するものが多く、生産コスト面において経済性に見合う製品にしか付与することができない。
【0004】
一方、印刷物の生産コストを特に考慮しない方法としては、可視できる一般印刷用のインキのような印刷材料が適用可能な印刷物上の模様に対する光学読み取り方法がある。比較的に容易な光学読み取り方法としては、OCR、OMR、バーコード、二次元コード等が公知であるが、これらの光学読み取り方法で用いられる図形は何ら意匠性を備えておらず、既存製品に用いる場合は、デザイン、仕様の変更が要求される。
【0005】
また、これらの光学読み取り方法は広く市中に出回っている方法でもあり、符号が印刷画線として可視できるため、解読及び改ざんの危険性も予想され、偽造、変造防止策としては用いるには不十分である。
【0006】
さらに、同じく光学読み取り方法でデザイン等の意匠性を変えずに読み取り用情報を付与する方法として、一般に電子すかしと呼ばれる一連の技術がある。電子すかしは、コンシールドイメージ、デジタルすかしとも呼ばれ、主な用途として、高機能化したコピー技術やDTP技術におけるドキュメント・ファイル又はその印刷物に著作権情報を埋め込む技術である。印刷物における公知の代表的な技術としては、周波数利用型と呼ばれる方法がある。
【0007】
電子すかしは、複製物においてもその周波数特性の劣化が少ないと言われ、最近では著作権保護の目的でインターネット上に配信されるデジタルイメージに施されることが多い。また、印刷物においてもその効果を奏することから、ポスターなどに利用されることも多くなってきた。
【0008】
電子すかしが最も効果を発揮できるのは、連続階調(写真階調)模様である。連続階調(写真階調)模様は多値画像データであるから、十分な冗長度が存在するので周波数利用型に限らず画素置換型、画素空間利用型、量子化誤差拡散型等の多くの方法が提案され、文献、特許出願も数多く、今日注目を集めている技術の一つである。
【0009】
しかしながら、電子すかしの多くは一般商業印刷の画像分解能を対象に設計されているため、複製物においては元の情報がそのままコピーされるという特徴があり、複製物の著作権を示すため施策としては適しているが、オリジナルとコピーを区別することはできず、物品を真贋判定する技術としては不十分である。
【0010】
そこで、本発明者らは、「真偽判別可能な印刷物及び判別方法、並びに該印刷物への情報の埋め込み方法」(特許文献1)、「真偽判別可能な印刷物及び判別方法、並びに該印刷物への情報の埋め込み方法」(特許文献2)及び「印刷物並びに該印刷物の認証方法」(特許文献3)により、地紋、彩紋模様のような自由な曲線群から成る印刷画線を、機械的に識別することを特徴とする印刷物を既に出願している。しかし、これらの発明は線表現による彩紋模様などに適用される技術であるため、連続階調(写真階調)模様に適用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−200647号公報
【特許文献2】特開2006−246134号公報
【特許文献3】WO2006/106677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、本発明は、有価証券、各種証明書及び重要書類等の貴重印刷物において、印刷物を構成する明度の高い色成分に、人間が視覚で認識できないレベルで周波数変調を与えることにより、印刷物における美術的な効果を損なうことなくあらかじめ定められた埋め込むべき情報を付与することを目的としている。また、従来の情報埋め込み、読み取り技術において使用されている情報の信号をより強くするために、規則性の高い画線に規則性の高い同心円状の画線構成を与えていることにより達成する真偽判別可能な印刷物、その作製装置及びその作製方法並びに真偽判別可能な印刷物の認証装置及びその認証方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の真偽判別可能な印刷物は、異なる色要素から成る複数の線画像で構成された印刷画像であり、複数の線画像は、明度の高い色要素と明度の低い色要素を有し、明度の高い色要素と明度の低い色要素が重なって形成されて成り、複数の線画像のうち、明度の高い色要素から成る線画像を周波数解析した場合に、埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出される真偽判別可能な印刷物であって、複数の線画像の色要素は、それぞれに色相が異なり、明度の高い色要素から成る線画像が、埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように設定された所定の間隔を有する同心円万線が配置された少なくとも一つの領域によって形成され、明度の高い色要素から成る線画像より明度の低い色素から成る線画像が、同心円万線と異なる形状を成す画線群が配置された少なくとも一つの領域によって形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の真偽判別可能な印刷物における同心円万線の画線の間隔は、埋め込むべき情報ごとに、あらかじめ設定された複数組の間隔の中から選択されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の真偽判別可能な印刷物は、同心円万線の画線面積率は5%以上96%未満であり、均一な画線面積率となって形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の真偽判別可能な印刷物は、明度の低い色要素から成る線画像が、盛り上がりを有する線画線から成り、複数の線画の太さ又は細さの連続的な違いによって白黒階調を表現されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の真偽判別可能な印刷物は、明度の低い色要素から成る線画像が、ドットパターン又は線と点が混在した画線形状であることを特徴とする。
【0018】
本発明の真偽判別可能な印刷物は、同心円万線が配置される領域が、複数分割され、複数に分割された各領域は、同一の中心点を共有する同心円万線が形成され、複数分割された各領域の同心円万線の画線の間隔は、領域ごとに異なることを特徴とする。
【0019】
本発明の真偽判別可能な印刷物は、同心円万線が配置される領域が、複数分割され、複数に分割された各領域は、領域ごとに異なる中心点を有して同心円万線が形成され、複数分割された各領域の同心円万線の画線の間隔は、領域ごとに異なることを特徴とする。
【0020】
本発明の真偽判別可能な印刷物は、同心円万線が配置される領域が、リング状に複数分割され、複数に分割された各領域は、同一の中心点を共有する同心円万線が形成され、複数に分割された各領域の境界において、隣り合う一方の領域に備わる同心円万線の間隔と、他方の領域に備わる同心円万線の間隔との平均値からなる補間領域が設けられ、境界において同心円万線の連続性が保たれていることを特徴とする。
【0021】
本発明の真偽判別可能な印刷物は、同心円万線の画線の間隔が、50μm〜350μmであることを特徴とする。
【0022】
本発明の真偽判別可能な印刷物の作製装置であって、埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように設定された所定の間隔を有する同心円万線の情報を入力する情報入力手段と、埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように設定された所定の間隔を有する同心円万線の情報が情報入力手段によって入力され、同心円万線データを生成する手段と、生成された前記同心円万線データをドキュメント・ファイルとして生成する画像合成手段と、ドキュメント・ファイルから、所定の色インキで基材に刷り重なって出力される出力手段を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明の情報入力手段、情報埋め込み手段、画像合成手段及び出力手段を備えた真偽判別可能な印刷物の作製装置を用いて、請求項1乃至9のいずれか一項記載の真偽判別可能な印刷物の作製方法であって、情報入力手段によって、埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように設定された所定の間隔を有する同心円万線の情報を入力するステップと、情報埋め込み手段によって、抽出された情報から同心円万線データを生成し、画像合成手段によって、前記同心円万線データをドキュメント・ファイルに書き出すステップと、出力手段によって、ドキュメント・ファイルから、所定の色インキで基材に刷り重なって出力するステップを有することを特徴とする。
【0024】
本発明の真偽判別可能な印刷物の作製方法における同心円万線の画線の間隔は、埋め込むべき情報ごとに、あらかじめ設定された複数組の間隔の中から選択されていることを特徴とする。
【0025】
本発明の真偽判別可能な印刷物の認証装置であって、あらかじめ定められた埋め込むべき情報が埋め込まれた印刷画像をカラー画像として読み取る読み取り手段と、読み取ったカラー画像から明度の高い色要素のグレースケール画像を抽出する色分離手段と、抽出されたグレースケール画像をフーリエ変換してFFTパターンを生成する変換手段と、FFTパターンから周波数成分を抽出する解析手段と、真偽判定データを記憶する記憶手段と、周波数成分と記憶手段に記憶された真偽判別データを比較照合することで真偽判別可能な印刷物の認証が行われる判定手段を備えることを特徴とする。
【0026】
本発明の読み取り手段、色分離手段、変換手段、解析手段、記憶手段及び判定手段を備えた真偽判別可能な印刷物の認証装置を用いて、請求項1乃至9のいずれか一項記載の真偽判別可能な印刷物の認証方法であって、読み取り手段によって、あらかじめ定められた埋め込むべき情報が埋め込まれた印刷画像をカラー画像として読み取るステップと、色分離手段によって、読み取られたカラー画像から明度の高い色要素のグレースケール画像を抽出するステップと、変換手段によって、抽出されたグレースケール画像をフーリエ変換してFFTパターンを生成するステップと、解析手段によって、FFTパターンから周波数成分を抽出するステップと、判定手段によって、抽出された周波数成分と、記憶手段に記憶された真偽判別データを比較照合することで真偽判別可能な印刷物の認証が行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
以上の構成から成る本発明によれば、真偽判別可能な印刷物において人間の視覚では認識できないように真偽判別可能な印刷物を構成する明度の高い色成分に、あらかじめ定められた埋め込むべき情報が付与され、かつ、スキャナ、複写機等のデジタル機器では埋め込んだ情報を検知することが可能であり、デジタル機器上で所定の色成分の抽出、フーリエ変換、特定周波数の抽出という演算を行うことにより、埋め込んだ情報を解析することが可能となる。
【0028】
また、本発明に用いられる画線では、真偽判別可能な印刷物に埋め込まれた情報を人間の視覚で認識することは不可能であることから、真偽判別可能な印刷物の持つ美術的な効果を減じることもなく、どのような被写体においても情報の付与が可能になる。
【0029】
また、本発明における同心円万線の画線の間隔が50μm〜350μmであることから、肉眼で視認されることはなく、カラー複写機等においても偽造防止効果を発揮するものである。また、同心円万線の画線上に重ねて形成される線画線を明度の低い色要素とすることによって、同心円万線の画線の肉眼で視認されないレベルが向上する。さらに、同心円万線の画線上に重ねて形成される線画線を明度の低い色要素で、かつ、印刷面から盛り上がりのある画線にすることによって、同心円万線の画線の肉眼で視認されないレベルが一層向上する。
【0030】
さらに、背景技術で述べた不可視な情報を埋め込み、読み取る技術と比べ、規則性の高い画線に規則性の高い同心円状の画線構成を与えているために、その情報の信号強度は非常に大きなものとなり、読み取り適性に優れた情報の付与が可能になる。
【0031】
これらの効果を有するので、本発明は、有価証券、各種証明書及び重要書類等の貴重印刷物等に与えた不可視な情報を、デジタル機器による読み取りとその情報に基づくデジタル機器の作動停止等のアクションを起動させるのに有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】RGBカラー画像と線画的な状態の画像の比較図である。
【図2】線画像C1と線画像C2の画線構成が示された図である。
【図3】線画像C1と線画像C2とがそれぞれの任意の色インキで基材に刷り重なって得られた印刷画像2が示された図である。
【図4】本発明の印刷画像のRGB画像とその周波数解析におけるFFTパターンが示された図である。
【図5】本発明における一方の高明度の色インキから成る画像の画線構成が示された部分拡大図と、他方の高明度の色インキから成る画像の画線構成が示された部分拡大図である。
【図6】低明度の色インキから成る画像と高明度の色インキから成る画像とがそれぞれの色インキで基材に刷り重なり、印刷物上で再構築された状態が示された図である。
【図7】本発明における一方の印刷画像とその周波数解析におけるFFTパターンが示された図である。
【図8】本発明における他方の印刷画像とその周波数解析におけるFFTパターンが示された図である。
【図9】それぞれの同心円万線の中心点が等しく配置された三種類の領域によって構成されている画線構成が示された図である。
【図10】それぞれの同心円万線の中心点が等しく、かつ、その領域面積が均等に配置された三種類の領域によって構成されている画線構成が示された図である。
【図11】それぞれの同心円万線の中心点Pが異なりかつ同じ領域面積を持って配置された三種類の領域によって構成されている画線構成が示された図である。
【図12】それぞれの同心円万線の中心点Pが等しく、かつ、リング状に配置された三種類の領域によって構成されている画線構成が示された図である。
【図13】本発明における作製装置のブロック図である。
【図14】本発明における作製処理ステップが示されたフローチャートである。
【図15】本発明における認証装置のブロック図である。
【図16】本発明における認証処理ステップが示されたフローチャートである。
【図17】埋め込むべき情報が登録されたデータテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態を実施例に基づいて図面を参照して以下詳細に説明する。図1(a)は、21.7mm×21.7mmの解像度400dpiから成る24ビットのRGBカラー画像である。この原画像1を、例えば斜め45度のスクリーン角度からなる万線スクリーンを用いて、線画的な状態に再構築されたものが図1(b)に示された線画像C1である。すなわち、図1(b)に示された線画像C1は、図1(a)に示された原画像1を複数の線画の太さ又は細さの連続的な違いによって白黒階調を表現したものである。
【0034】
図2(a)に示された線画像C1は、部分拡大図(円内)に示されたように、画線幅の違いによって連続階調が構成されている。一方、図2(b)に示された線画像C2は、定められた埋め込むべき情報として、複数の同心円万線で構成されたものである。部分拡大図(円内)に示されたように、80μmの間隔dから成る同心円万線で配置された図形領域Aによって構成されている。線画像C2の画線面積率は50%程度となっている。なお、線画像C2の図形領域Aの画線面積率は5%以上96%未満であり、その範囲において画線面積率に何ら制限はない。線画像C1線と画像C2とを重ねて印刷されることによって印刷画像2となる。
【0035】
図3は図2(a)に示された線画像C1と図2(b)に示された線画像C2とがそれぞれの任意の色インキで基材に刷り重なって得られた印刷画像2が示されたものである。線画像C1に対し線画像C2は明度が高くなっている。これにより、印刷画像2が同心円万線で構成されていることが線画像C1によってカモフラージュされている。線画像C2を肉眼で視認されないようにするためには、線画C2上に線画C1を重ね刷りすることが好ましい。例えば、線画像C1は黒、褐色、モスグリーン等、低明度の色インキを用いるのが適当である。一方、線画像C2は、イエロー、黄土色、薄紫等の高明度の色インキを用いるのが適当である。また、線画像C1線と画像C2に用いられる色インキは互いに色相が異なることが望ましいが、必ずしも異なる必要はない。線画C1は、盛り上がりのある画線にすることによって、線画像C2を肉眼で視認されないレベルが一層向上する。線画C1の盛り上がりのある画線の高さは、3μm〜150μmであることが好ましい。盛り上がりのある画線の印刷方式は、特に限定されるものではなく、凹版印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、プリンタ等、特に限定されるものではない。線画C1の盛り上がりのある画線を形成する場合は、凹版印刷、スクリーン印刷が好ましい。また、上記記載の低明度とは、L*a*b*色表系のL値が70以上が好ましく、上記記載の高明度とは、L*a*b*色表系のL値が50以下が好ましい。ただし、あくまでも目安であり、低明度の色インキと高明度の画線の色インキはL*a*b*色表系のL値が少なくとも20以上離れていれば十分な効果が望まれる。また、線画像C2の印刷方式は、特に限定されるものではない。さらに、線画C2は、肉眼で視認されないように同心円万線の画線の間隔が、50μm〜350μmであることが好ましい。
【0036】
印刷物上にある線画像C2の図形領域Aは、80μmの間隔dから成る同心円万線で配置され、図形領域Aを構成する同心円万線は細画線かつ明度の高い色インキで印刷されてあるため目視では同心円万線で構成されていることは視認できない。さらに、明度の低い線画像C1が刷り重なっているため、それがカモフラージュ模様となり、図形領域Aを構成する同心円万線が視認されることはない。
【0037】
図3に示された印刷画像2は、光学式スキャナにて解像度1200dpiで画像入力され、図4(a)に示された1024×1024ピクセルから成る24ビットのRGB画像が生成される。図2(b)に示した印刷物上にある線画像C2の領域Aは、80μmの間隔dから成る同心円万線で配置され、領域Aを構成する同心円万線は細画線かつ、明度の高い色インキで印刷されてあるため目視では同心円万線で構成されていることは視認できない。さらに、明度の低い線画像C1が同時に刷り重なっているため、それらがカモフラージュ模様となり、領域Aを構成する同心円万線が視認されることはない。線画像C1は、線画像C2を形成した同心円万線の周波数成分とは異なる周波数成分から成る同心円万線と異なる形状を成す画線群によって形成される。図4(b)は、図4(a)に示されたRGB画像のうちのBチャンネルをフーリエ変換して得られたFFTパターンである。なお、空間周波数の特徴をわかりやすく説明するため、図4(b)のFFTパターンの第IV象限には、周波数強度グラフを重ねて表示している。図4(b)の周波数強度グラフに示されたように、強度ピークの逆空間距離qd1が見られる。これは、図2(b)に示した間隔dが逆空間上に現れたものである。FFTパターン上の強度ピークの逆空間距離については、画像入力に関わる各種パラメータ、すなわち、図2(b)に示した印刷物上にある領域Aに備わる80μmの間隔dを実空間距離としたとき、画像の一辺のピクセル数と、画像の解像度がわかっていれば、以下の数1によっても容易に算出できる。
【0038】
【数1】

【0039】
図4(a)のRGB画像には図2(b)に示された領域Aが含まれるため、領域Aに備わる同心円万線の画線の間隔dがもたらす強度ピークの逆空間距離qd1は、図4(b)に示されているようにFFTパターンの中心から271ピクセルの位置に現れる。
【0040】
図5(a)は線画像C2’の画線構成が示された部分拡大図(円内)である。線画像C2’は、図2(b)の線画像C2の画線面積率と等しく、80μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Aと、100μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Bとによって構成されている。一方、図5(b)は線画像C2”の画線構成が示された部分拡大図(円内)である。線画像C2”は、図2(b)の線画像C2の画線面積率と等しく、80μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Aと、100μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Bと、130μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Cとによって構成されている。また、それぞれの領域の配置に何ら制約はなく、同心円万線の中心の位置が異なっていても構わない。さらに、線画像C2’及び線画像C2”の画線面積率はそれぞれ50%程度となっている。図形領域A、図形領域B及び図形領域Cの画線面積率は等しく、画線面積率は5%以上96%未満であり、その範囲において画線面積率に何ら制限はない。
【0041】
図6はそれぞれの線画像が低明度の色インキと、高明度の色インキで基材に刷り重なり、印刷物上で再構築された状態が示された図である。図6(a)は、図3に示された線画像C1と図5(a)に示された線画像C2’とがそれぞれの色インキで基材に刷り重なって得られた印刷画像3が示されたものである。一方、図6(b)は図3に示された線画像C1と図5(b)に示された線画像C2”とがそれぞれの色インキで基材に刷り重なって得られた印刷画像4が示されたものである。
【0042】
図6(a)に示された印刷画像3は、光学式スキャナにて解像度1200dpiで画像入力され、図7(a)に示された1024×1024ピクセルから成る24ビットのRGB画像が生成される。図5(a)に示した印刷物上にある高明度の色インキから成る画像の領域Aは、80μmの間隔dから成る同心円万線で配置され、領域Bは、100μmの間隔dから成る同心円万線で配置され、領域A及び領域Bを構成する同心円万線は細画線かつ、明度の高い色インキで印刷されているため目視では同心円万線で構成されていることは視認できない。さらに、明度の低い線画像C1が同時に刷り重なっているため、それらがカモフラージュ模様となり、領域A及び領域Bを構成する同心円万線が視認されることはない。線画像C1は、線画像C2’を形成した同心円万線の周波数成分とは異なる周波数成分から成る直画線、曲画線、自由曲線、点及び/又はドットパターン(網点)によって形成される。図7(b)は、図7(a)に示されたRGB画像のうちのBチャンネルをフーリエ変換して得られたFFTパターンである。図4と同様に、空間周波数の特徴をわかりやすく説明するため、図7(b)のFFTパターンの第IV象限には、周波数強度グラフを重ねて表示している。図7(b)の周波数強度グラフに示されたように、強度ピークの逆空間距離qd1と逆空間距離qd2が見られる。
【0043】
数1の算出でも示されるように、図7(a)のRGB画像には図5(a)に示された領域Aが含まれているため、領域Aに備わる同心円万線の画線の間隔dがもたらす強度ピークの逆空間距離qd1は、図7(b)に示されているようにFFTパターンの中心から271ピクセルの位置に現れる。さらに、図7(a)のRGB画像には図5(a)に示された領域Bも含まれているため、領域Bに備わる同心円万線の画線の間隔dがもたらす強度ピークの逆空間距離qd2は、図7(b)に示されているようにFFTパターンの中心から217ピクセルの位置に現れる。
【0044】
一方、図6(b)に示された印刷画像4は、光学式スキャナにて解像度1200dpiで画像入力され、図8(a)に示された1024×1024ピクセルから成る24ビットのRGB画像が生成される。図5(b)に示した印刷物上にある線画像C2”の領域Aは、80μmの間隔dから成る同心円万線で配置され、領域Bは、100μmの間隔dから成る同心円万線で配置され、領域Cは、130μmの間隔dから成る同心円万線で配置され、領域A、領域B及び領域Cを構成する同心円万線は、細画線かつ明度の高い色インキで印刷されてあるため目視では同心円万線で構成されていることは視認できない。さらに、明度の低い線画像C1が同時に刷り重なっているため、それらがカモフラージュ模様となり、領域A、領域B及び領域Cを構成する同心円万線が視認されることはない。線画像C1は、線画像C2”を形成した同心円万線の周波数成分とは異なる周波数成分から成る直画線、曲画線、自由曲線、点及び/又はドットパターン(網点)によって形成される。図8(b)は、図8(a)に示されたRGB画像のうちのBチャンネルをフーリエ変換して得られたFFTパターンである。図4と同様に、空間周波数の特徴をわかりやすく説明するため、図8(b)のFFTパターンの第IV象限には、周波数強度グラフを重ねて表示している。図8(b)の周波数強度グラフに示されたように、強度ピークの逆空間距離qd1と逆空間距離qd2と逆空間距離qd3が見られる。
【0045】
数1の算出でも示されるように、図8(a)のRGB画像には図5(b)に示された領域Aが含まれているため、領域Aに備わる同心円万線の画線の間隔dがもたらす強度ピークの逆空間距離qd1は、図8(b)に示されているようにFFTパターンの中心から271ピクセルの位置に現れる。さらに、図8(a)のRGB画像には図5(b)に示された領域Bも含まれているため、領域Bに備わる同心円万線の画線の間隔dがもたらす強度ピークの逆空間距離qd2は、図8(b)に示されているようにFFTパターンの中心から217ピクセルの位置に現れる。またさらに、図8(a)のRGB画像には図5(b)に示された領域Cも含まれているため、領域Cに備わる同心円万線の画線の間隔dがもたらす強度ピークの逆空間距離qd3は、図8(b)に示されているようにFFTパターンの中心から167ピクセルの位置に現れる。
【0046】
このように、任意の領域に同心円万線を含むことによって、該同心円万線の空間周波数の特徴が、FFTパターンにおける強度ピークとして示される。なお、同心円万線の画線の間隔によって、強度ピークの位置が異なる。このFFTパターンにおける強度ピークの位置の違いによって、模様の違いを情報として識別することができる。
【0047】
このように、明度の高い色要素を有する領域に同心円万線を含むことによって、明度の低い色要素を有する他の領域によってカモフラージュされ、特定の色フィルタによって強調された該同心円万線の空間周波数の特徴が、FFTパターンにおける強度ピークとして示される。なお、同心円万線の画線の間隔によって、強度ピークの位置が異なる。このFFTパターンにおける強度ピークの位置の違いによって、模様の違いを識別することができる。なお、明度の高い色要素を有する領域と明度の低い色要素を有する他の領域とが、色相が違うという条件を満たしていれば、それぞれの色を何ら限定するものではない。また、線画像C2、線画像C2’又は線画像C2”の画線形状は、複数の線画の太さ又は細さの連続的な違いによって白黒階調であっても、通常の印刷物に見られるドットパターンであっても、線と点が混在した画線形状であっても良く、画線形状を何ら限定するものではない。
【0048】
上記説明では、最も明度の高い所定の色要素で同心円万線を形成し、残りの色要素でドットパターンを形成して説明しているが、本発明は上記構成に限定されることなく、複数の色要素のうち、最も明度の高い所定の色要素を抽出し、所定の色要素から成る画像が埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように設定された所定の間隔を有する同心円万線が配置され、残りの色要素から成る画像が同心円万線と異なる形状を成す画線群が配置された少なくとも一つの領域によって形成すればよい。残りの色要素から成る画像が同心円万線と異なる形状を成す画線群は、直画線及びドットパターンの少なくとも一つによって形成されていることが好ましい。また、同心円万線の画線の間隔が、50μm〜350μmであることが好ましい。下記に説明する実施の形態1乃至実施の形態2の真偽判別可能な印刷物ついても同様である。
【0049】
本発明の真偽判別可能な印刷物における同心円万線の画線の間隔は、埋め込むべき情報ごとに、あらかじめ設定された複数組の間隔の中から選択されている。
例えば、図17のデータテーブルに示されたように、図4(b)に示されたFFTパターンを得るためのデータとしてはCode 1が適用され、図7(b)に示されたFFTパターンを得るためのデータとしてはCode 2が適用され、図8(b)に示されたFFTパターンを得るためのデータとしてはCode 3が適用される。このデータテーブルに埋め込むべき情報が多く登録されているほど真偽判別用の情報を活用できるものである。
【0050】
本発明は、面表現の領域において同心円万線、すなわち規則性を有する複数本の細画線を有することにより、スキャナ、複写機等のデジタル機器による高解像度入力画像では識別可能であるが、人間にとって視覚で認識困難な微細かつ規則性を有する部分を付与し、得られた印刷物に対してデジタル機器上で証券用線画の間隔の相関を分析し、印刷物に埋め込まれた情報を識別することで真偽判別が可能であり、また、その情報に基づき偽造等に利用する複写機等デジタル機器の動作停止等のアクションを可能とするものである。
【0051】
以下に実施の形態1及び2を示す。実施の形態1及び2は、上記説明した図2及び3で説明した線画像C2の変形例である。図5、図9、図10、図11及び図12に示す同心円の線画像は、図2(b)で示した線画像C2の構成であるイエロー、黄土色、薄紫等の高明度の色インキであること、高明度の範囲がL*a*b*色表系のL値が50以下が好ましいこと、同心円万線の画線の間隔が、50μm〜350μmであること、画線面積率は5%以上96%未満である構成は同じである。また、図5、図9、図10、図11及び図12に示す線画像と重なって形成される線画像C1は、上記の構成と同一であるため、説明は省略する。
【0052】
(1)実施の形態1
本実施の形態1は、同心円万線が含まれる領域の形状及び同心円万線の位置について述べるものである。本実施の形態1について、図面を用いて詳細に説明する。
【0053】
図9は三種類の領域によって構成されている。基本的には図5(b)に示された線画像C2”と同様の構成となっている。図5(b)の線画像C2”は、80μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Aと、100μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Bと、130μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Cとによって構成されている。図9の模式図に示されたように、領域A、領域B及び領域Cそれぞれの同心円万線の中心点Pが等しく、かつ図面左側に領域A、領域Bがそれぞれ配置され、図面右側に領域Cが配置されている。この場合においても、領域A、領域B及び領域Cの空間周波数の特徴を明瞭に識別することができる。
【0054】
また、図10は、図9の模式図と同様に、三種類の領域から成り、図5(b)の線画像C2”と同じく、80μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Aと、100μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Bと、130μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Cとによって構成されている。図10の模式図に示されたように、領域A、領域B及び領域Cそれぞれの同心円万線の中心点Pが等しく、かつ領域A、領域B及び領域Cのそれぞれが、同心円万線の中心点Pから均等に三等分されて配置されている。この場合においても、領域A、領域B及び領域Cの空間周波数の特徴を明瞭に識別することができる。
【0055】
つまり、図9及び図10の同心円画線を用いた真偽判別可能な印刷物は、同心円万線が配置される領域が、複数分割され、複数に分割された各領域は、同一の中心点を共有する同心円万線が形成され、複数分割された各領域の同心円万線の画線の間隔は、領域ごとに異なることを特徴としている。
【0056】
さらに、図11は、図9及び図10の模式図と同様に、三種類の領域から成り、図5(b)の線画像C2”と同じく、80μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Aと、100μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Bと、130μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Cとによって構成されている。図11の模式図に示されたように、領域A、領域B及び領域Cそれぞれの同心円万線の中心点Pが異なり、かつ領域A、領域B及び領域Cのそれぞれが、同じ領域面積を持って配置されている。この場合においても、領域A、領域B及び領域Cの空間周波数の特徴を明瞭に識別することができる。
【0057】
つまり、図11の同心円画線を用いた真偽判別可能な印刷物は、同心円万線が配置される領域が、複数分割され、複数に分割された各領域は、領域ごとに異なる中心点を有して同心円万線が形成され、複数分割された各領域の同心円万線の画線の間隔は、領域ごとに異なることを特徴としている。
【0058】
(2)実施の形態2
本実施の形態2は、複数の領域がリング状に配置し、かつ、それぞれの領域の境界において、それぞれの領域に備わる同心円万線が自然な連続性が保たれている位置関係について述べるものである。本実施の形態2について、図面を用いて詳細に説明する。
【0059】
本発明における領域に備わる同心円万線は、イエロー、黄土色、薄紫等のような明度の高い色インキで印刷されるので、肉眼視において全体的な連続階調は視認できても画線形状を識別できるものではない。しかし、画線の位置関係によりさらに識別できないようにすることもできる。図12は、中心点Pから同じ距離を持って形成された同心円万線に見えるが、実際には図9、図10及び図11の模式図と同様に、三種類の領域によって構成されている。図5(b)の線画像C2”と同じく、80μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Aと、100μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Bと、130μmの間隔dから成る同心円万線で配置された領域Cとによって構成されている。
【0060】
図12(a)の模式図は、領域A、領域B及び領域Cそれぞれの同心円万線の中心点Pが等しく、かつ中心点Pから領域A、領域B及び領域Cの順にリング状に配置されたものである。まず、領域Aは中心点Pから間隔dで形成された同心円万線である。領域Aの外側に、領域Aの同心円万線の間隔dと領域Bの同心円万線の間隔dとの平均値からなる補間間隔Xが設けられ領域Bがリング状に配置される。領域Bは間隔dで形成された同心円万線である。領域Bの外側に、領域Bの同心円万線の間隔dと領域Cの同心円万線の間隔dとの平均値からなる補間間隔Xが設けられ領域Cがリング状に配置される。領域Cは間隔dで形成された同心円万線である。
【0061】
一方、図12(b)の模式図は、領域C、領域B及び領域Aそれぞれの同心円万線の中心点Pが等しく、かつ中心点Pから領域C、領域B、領域Aの順にリング状に配置されたものである。まず、領域Cは中心点Pから間隔dで形成された同心円万線である。領域Cの外側に、領域Cの同心円万線の間隔dと領域Bの同心円万線の間隔dとの平均値からなる補間間隔Xが設けられ領域Bがリング状に配置される。領域Bは間隔dで形成された同心円万線である。領域Bの外側に、領域Bの同心円万線の間隔dと領域Aの同心円万線の間隔dとの平均値からなる補間間隔Xが設けられ領域Aがリング状に配置される。領域Aは間隔dで形成された同心円万線である。
【0062】
これにより、図12(a)及び図12(b)の画線構成は、領域A、領域B及び領域Cが順にリング状に配置していながらも、それぞれの領域の境界において同心円万線が自然な連続性が保たれている。また、図12(a)及び図12(b)の画線構成はそれぞれ等しく、領域A、領域B及び領域Cの空間周波数の特徴を明瞭に識別することができる。
【0063】
つまり、図12の同心円画線を用いた真偽判別可能な印刷物は、同心円万線が配置される領域が、リング状に複数分割され、複数に分割された各領域は、同一の中心点を共有する同心円万線が形成され、複数に分割された各領域の境界において、隣り合う一方の領域に備わる同心円万線の間隔と、他方の領域に備わる同心円万線の間隔との平均値からなる補間領域が設けられ、境界において同心円万線の連続性が保たれていることを特徴とする。
【0064】
(3)実施の形態3
上述した実施の形態1又は実施の形態2で示されたように、本発明は連続階調画像に対してあらかじめ定められた埋め込むべき情報を付与するもので、本実施の形態3では、作製装置と作製方法について説明する。
【0065】
本実施の形態3における作製装置は、図13のブロック図に示されるように、情報入力手段M1、出力手段M2、表示手段M3、編集手段M4及び通信インターフェースM5を備えている。編集手段M4は、情報埋め込み手段4Ma及び画像合成手段M4bを有する。
【0066】
情報入力手段M1は、埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように設定された所定の間隔を有する同心円万線の情報を入力する。例えば、キーボード等からの入力、また、後述する書式データベースと同じパソコン内に登録されている情報が入力されたデータベース(図示せず)、通信インターフェースよってあらかじめ定められた埋め込むべき情報が入力された外部データベースサーバ(図示せず)から情報を得ることができる。なお、同じパソコン内に登録されている情報が入力されたデータベースは、記憶手段(図示せず)に設けられ、埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように設定された所定の間隔を有する同心円万線の情報が保存されている。
【0067】
出力手段M2は、ドキュメント・ファイルに書き出し、ドキュメント・ファイルの形式は特に限定されるものではない。
【0068】
表示手段M3は、パソコンのモニタ、専用のモニタ等、特に限定されるものではない。
【0069】
情報埋め込み手段M4aは、埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように設定された所定の間隔を有する同心円万線の情報が情報入力手段M1によって入力され、同心円万線データを生成する。
【0070】
画像合成手段M4bは、同心円万線データをドキュメント・ファイルとして生成する。なお、プリンタで本発明の真偽判別可能な印刷物を作製する場合は、画像合成手段M4bは、同心円万線データと図2(a)で示した線画像C1の線画像データを合成してドキュメント・ファイルに書き出しが行われる。
【0071】
通信インターフェースM5は、RS−232C、IEEE1394等であり、特に限定されるものではない。
【0072】
本実施の形態3による作製方法は、図13に示された作製装置を用いて、図14のフローチャートに示された処理ステップによって実行されるものである。
【0073】
まず、ステップf1では、情報入力手段M1にて埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように設定された所定の間隔を有する同心円万線の情報を入力する。例えば、入力される情報は、キーボード等からの入力、書式データベースと同じパソコン内に登録されている情報が入力されたデータベース(図示せず)及び/又は通信インターフェースよってあらかじめ情報が入力された外部データベースサーバ(図示せず)から情報を得ることができる。なお、同じパソコン内に登録されている情報が入力されたデータベースは、記憶手段(図示せず)に設けられ、埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように設定された所定の間隔を有する同心円万線の情報が保存されている。
【0074】
さらに、図13に示された編集手段M4に含まれる情報埋め込み手段M4aによって、ステップf2では、同心円万線データを生成する。例えば、入力された埋め込むべき情報によって定義された同心円万線パターンが生成され、ステップf3において適用される。
【0075】
次に、図13に示された編集手段M4に含まれる画像合成手段M4bによって、ステップf4のドキュメント・ファイルに書き出しが行われる。なお、プリンタで本発明の真偽判別可能な印刷物を作製する場合は、画像合成手段M4bは、同心円万線データと図2(a)で示した線画像C1の線画像データを合成してドキュメント・ファイルに書き出しが行われる。こうして生成されたドキュメント・ファイルが、それぞれの色インキで基材に刷り重なることにより情報を埋め込んだカラー印刷物が得られるものである。
【0076】
(4)実施の形態4
上述した実施の形態1又は実施の形態2で示されたように、本発明は連続階調画像に対して情報を付与するもので、本実施の形態4では、認証装置と認証方法について説明する。
【0077】
本実施の形態4による印刷物の認証装置について説明する。本装置は、図15に示されたように、光学スキャナ等から成る読み取り手段M6、操作パネル等から成る入力手段M7、CRT、液晶パネル、プリンタ等から成る表示手段M8、通信インターフェースM9、記憶手段M11、さらに色分離手段M10a、変換手段M10b、解析手段M10c、判定手段M10dを有する演算手段M10を備えている。
【0078】
演算手段M10は、真偽判別処理に必要な演算の全てを行うものであって、色分離手段M10a、変換手段M10b、解析手段M10c及び判定手段M10dを有する。また、演算手段M10は、記憶手段M11、通信インターフェースM9、読み取り手段M6、入力手段M7、表示手段M8に接続されている。色分離手段M10aは、カラー画像から線画像C2、線画像C2’又は線画像C2”を構成する色インキが最も高コントラストとなっているグレースケール画像を抽出する。変換手段M10bは、抽出されたグレースケール画像をフーリエ変換してFFTパターンを生成する。解析手段M10cは、FFTパターンから周波数成分を抽出する。判定手段M10dは、周波数成分と、記憶手段に記憶された真偽判別データを比較照合することで真偽判別可能な印刷物の認証を行う。
【0079】
読み取り手段M6は、真偽判別可能な印刷物に印刷された、あらかじめ定められた埋め込むべき情報が埋め込まれた印刷画像をカラー画像として取得するものである。
【0080】
読み取ったカラー画像は、演算手段M10を介して記憶手段M11に転送され記憶される。
【0081】
入力手段M7は、真偽判別の処理に必要なデータを入力し、演算手段M10に転送するものである。
【0082】
表示手段M8は、入力手段M7に入力されたデータや、演算手段M10が真偽判別を行った結果等の表示を行うものである。
【0083】
通信インターフェースM9は、真偽判別データが記憶手段M11に保存されていない場合において、例えば真正な印刷物に関する基準値等を取得するため、図示されていないコンピュータ端末に接続されているものである。また、通信手段は、RS−232C、IEEE1394等、特に限定されるものではない。
【0084】
記憶手段M11は、真偽判定データを記憶しておく。また、演算手段M10から与えられた各種データや判別結果を記憶するものである。
【0085】
本実施の形態による認証方法は、図15に示された認証装置を用いて、図16のフローチャートに示された処理ステップによって実行されるものである。
【0086】
図16に示されたように、ステップf5として、デジタルカメラ、光学式スキャナ等の読み取り手段M6によって、あらかじめ定められた埋め込むべき情報が埋め込まれた印刷画像をカラー画像(RGB画像)として読み取る。例えば、1200dpiというような高解像度で、1024×1024ピクセルの画像サイズでRGB画像として読み取りを行う。
【0087】
ステップf6として、ステップf5で色分離手段M10aによって、読み取られたカラー画像(RGB画像)から線画像C2、線画像C2’又は線画像C2”を構成する色インキが最も高コントラストとなっているグレースケール画像を抽出する。例えば、色分離手段M10aにてB(ブルー)チャンネルのグレースケール画像の抽出を行う。
【0088】
ステップf7として、変換手段M10bによって、ステップf6で抽出されたグレースケール画像(例えば、B(ブルー)チャンネル)をフーリエ変換し、FFTパターンを生成する。
【0089】
ステップf8として、解析手段M10cによって、ステップf7で作成されたFFTパターンに対し、周波数成分の抽出を行う。
【0090】
ステップf9として、判定手段M10dによって、抽出された周波数成分と、記憶手段に記憶された真偽判別データ(周波数成分)を比較照合することで真偽判別可能な印刷物の認証が行われる。
【0091】
周波数成分は、同心円状の画線で形成された領域の成分であるため、従来よりもはっきりとした周波数成分が抽出することができるため、あらかじめ定められた周波数成分とを比較照合上で誤認識することがない。
【符号の説明】
【0092】
1 原画像
2 印刷画像
3 印刷画像
4 印刷画像
A 図形領域
B 図形領域
C 図形領域
C1 線画像
C2 線画像
C2’ 線画像
C2” 線画像
間隔
間隔
間隔
M1 情報入力手段
M2 出力手段
M3 表示手段
M4 編集手段
M4a 情報埋め込み手段
M4b 画像合成手段
M5 通信インターフェース
M6 読み取り手段
M7 入力手段
M8 表示手段
M9 通信インターフェース
M10 演算手段
M10a 色分離手段
M10b 変換手段
M10c 解析手段
M10d 判定手段
M11 記憶手段
P 中心
d1 逆空間距離
d2 逆空間距離
d3 逆空間距離
補間間隔
補間間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる色要素から成る複数の線画像で構成された印刷画像であり、前記複数の線画像は、明度の高い色要素と明度の低い色要素を有し、前記明度の高い色要素と前記明度の低い色要素が重なって形成されて成り、前記複数の線画像のうち、前記明度の高い色要素から成る線画像を周波数解析した場合に、埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出される真偽判別可能な印刷物であって、
前記複数の線画像の色要素は、それぞれに色相が異なり、
前記明度の高い色要素から成る線画像が、前記埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように設定された所定の間隔を有する同心円万線が配置された少なくとも一つの領域によって形成され、
前記明度の高い色要素から成る線画像より前記明度の低い色素から成る線画像が、前記同心円万線と異なる形状を成す画線群が配置された少なくとも一つの領域によって形成されていることを特徴とする真偽判別可能な印刷物。
【請求項2】
前記同心円万線の画線の間隔は、埋め込むべき情報ごとに、あらかじめ設定された複数組の間隔の中から選択されていることを特徴とする請求項1記載の真偽判別可能な印刷物。
【請求項3】
前記同心円万線の画線面積率は5%以上96%未満であり、均一な画線面積率となって形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の真偽判別可能な印刷物。
【請求項4】
前記明度の低い色要素から成る線画像が、印刷面から盛り上がりを有する線画線から成り、複数の線画の太さ又は細さの連続的な違いによって白黒階調を表現されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の真偽判別可能な印刷物。
【請求項5】
前記明度の低い色要素から成る線画像が、ドットパターン又は線と点が混在した画線形状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の真偽判別可能な印刷物。
【請求項6】
前記同心円万線が配置される領域が、複数分割され、
前記複数に分割された各領域は、同一の中心点を共有する同心円万線が形成され、
前記複数分割された各領域の同心円万線の画線の間隔は、前記領域ごとに異なることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の真偽判別可能な印刷物。
【請求項7】
前記同心円万線が配置される領域が、複数分割され、
前記複数に分割された各領域は、前記領域ごとに異なる中心点を有して同心円万線が形成され、
前記複数分割された各領域の同心円万線の画線の間隔は、前記領域ごとに異なることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の真偽判別可能な印刷物。
【請求項8】
前記同心円万線が配置される領域が、リング状に複数分割され、
前記複数に分割された各領域は、同一の中心点を共有する同心円万線が形成され、
前記複数に分割された各領域の境界において、隣り合う一方の前記領域に備わる同心円万線の間隔と、他方の前記領域に備わる同心円万線の間隔との平均値からなる補間領域が設けられ、
前記境界において同心円万線の連続性が保たれていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の真偽判別可能な印刷物。
【請求項9】
前記同心円万線の画線の間隔が、50μm〜350μmであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項記載の真偽判別可能な印刷物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項記載の真偽判別可能な印刷物の作製装置であって、
前記埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように設定された所定の間隔を有する同心円万線の情報を入力する情報入力手段と、
埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように設定された所定の間隔を有する同心円万線の情報が情報入力手段によって入力され、同心円万線データを生成する手段と、
前記生成された前記同心円万線データをドキュメント・ファイルとして生成する画像合成手段と、
前記ドキュメント・ファイルから、所定の色インキで基材に刷り重なって出力される出力手段を備えることを特徴とする真偽判別可能な印刷物の作製装置。
【請求項11】
情報入力手段、情報埋め込み手段、画像合成手段及び出力手段を備えた真偽判別可能な印刷物の作製装置を用いて、請求項1乃至9のいずれか一項記載の真偽判別可能な印刷物の作製方法であって、
前記情報入力手段によって、埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように設定された所定の間隔を有する同心円万線の情報を入力するステップと、
前記情報埋め込み手段によって、前記抽出された情報から同心円万線データを生成し、
前記画像合成手段によって、前記同心円万線データをドキュメント・ファイルに書き出すステップと、
前記出力手段によって、前記ドキュメント・ファイルが、所定の色インキで基材に刷り重なって出力するステップを有することを特徴とする真偽判別可能な印刷物の作製方法。
【請求項12】
前記同心円万線の画線の間隔は、埋め込むべき情報ごとに、あらかじめ設定された複数組の間隔の中から選択されていることを特徴とする請求項10記載の真偽判別可能な印刷物の作製方法。
【請求項13】
請求項1乃至9のいずれか一項記載の真偽判別可能な印刷物の認証装置であって、
あらかじめ定められた埋め込むべき情報が埋め込まれた印刷画像をカラー画像として読み取る読み取り手段と、
前記読み取ったカラー画像から明度の高い色要素のグレースケール画像を抽出する色分離手段と、
前記抽出されたグレースケール画像をフーリエ変換してFFTパターンを生成する変換手段と、
前記FFTパターンから周波数成分を抽出する解析手段と、
真偽判定データを記憶する記憶手段と、
前記周波数成分と、前記記憶手段に記憶された真偽判別データを比較照合することで真偽判別可能な印刷物の認証が行われる判定手段を備えることを特徴とする真偽判別可能な印刷物の認証装置。
【請求項14】
読み取り手段、色分離手段、変換手段、解析手段、記憶手段及び判定手段を備えた真偽判別可能な印刷物の認証装置を用いて、請求項1乃至9のいずれか一項記載の真偽判別可能な印刷物の認証方法であって、
前記読み取り手段によって、あらかじめ定められた埋め込むべき情報が埋め込まれた印刷画像をカラー画像として読み取るステップと、
前記色分離手段によって、前記読み取られたカラー画像から明度の高い色要素のグレースケール画像を抽出するステップと、
前記変換手段によって、前記抽出されたグレースケール画像をフーリエ変換してFFTパターンを生成するステップ、
前記解析手段によって、前記FFTパターンから周波数成分を抽出するステップと、
前記判定手段によって、前記抽出された周波数成分と、前記記憶手段に記憶された真偽判別データを比較照合することで真偽判別可能な印刷物の認証が行われることを特徴とする真偽判別可能な印刷物の認証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−70220(P2013−70220A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207153(P2011−207153)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】