説明

真偽判別可能な印刷物とその作成方法

連続階調を成す印刷物であって、印刷物中の単位面積当たりの画線面積率を単位面積毎に変化させた連続階調が写真、絵画、テキスタイル等の模様を成し、模様中には夫々異なる画線より構成される複数の領域が存在し、領域の形状は模様と異なる意匠を成し、且つ夫々の領域を構成する夫々の画線パターンの単位面積当たりの画線周囲長の総和が互いに異なることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
技術的背景
本発明は、真偽判別可能な印刷物とその作成方法に関する。
銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類等の印刷物において、偽造、変造防止策は重要な要素である。これら印刷物の偽造、変造防止策には、主に細い画線で構成される幾何学模様を用いる手法や、肉眼では認識できず、何等かの手段及び作用を加えると発現するような像を用いる手法等がある。
前述の細い画線で構成される幾何学模様の代表的な例は、地紋、彩紋模様、レリーフ模様等である。これらの幾何学模様は、通常多数の非常に細い画線によって構成されており、印刷物からこのような幾何学模様を写真製版装置にて抽出したり、複写機にてモアレを発生させずに複写したりするのは困難であることから、有効な偽造、変造防止策として長い間用いられてきた。又、印刷物に証券独特の意匠性を与えるという効果もあって、今尚、証券印刷物等のデザインに広く用いられている。しかし、近年の技術革新により出現した高性能なDTPシステムや複写機に対し、偽造、変造防止策としての効果があまり見られないという問題があった。
一方、肉眼では認識できず、何等かの手段及び作用を加えると発現するような像を用いる方法の代表的な例には、複写防止画線等の特殊な画線を用いる手法や、蛍光顔料を含有する蛍光インキ等の特殊な材料を用いる手法等がある。
ここで、複写防止画線としては、次のような技術が開示されている。これは、網点もしくは万線等の画線の粗密によって潜像が施され、複写防止用潜像カムフラージュ法(例えば、特許文献1参照)によれば、150線10%の網点より成る潜像(肉眼では認識困難な像)と、潜像周囲の白地面に50〜60線10%程度の万線より成る背景とを備えた潜像版を用いて、用紙の表面に濃色の印刷を施す。これに、背景の万線と干渉した時にモアレ模様を形成する平行線より成る波形パターンを備えたオーバープリント版を用いて、用紙表面に複写機で再生されない淡色の重ね刷りを施すと、印刷物の表面に潜像の存在を識別困難とするモアレ模様が形成される。これを複写機にかけると潜像と波形パターンは再生されずに背景のみが再生されて、潜像が背景と区別して認められる。
このような網点もしくは万線等の画線の粗密によって潜像が施される印刷物は、単色の平面のような単純な様相を成すか、カムフラージュ模様による不規則な模様で形成される傾向にある。よって、潜像を施した単色印刷画線模様そのものを彩紋模様のごとくデザイン化した模様にしたり、装飾効果を持った美術的な印刷物にしたりすることは不可能で、デザイン面において地紋、彩紋模様を多用したい銀行券、債券、株券等の有価証券には適さないという問題があった。
又、画線によって潜像を施されるもの、例えば、本願出願人は、複写防止模様を施した印刷物を、複写に対してより効果のあるものとして提案している。曲線状の集合模様を、潜像を施さない部分の画線を連続線と、潜像を施した部分の画線を基準線方向に一定の間隔で配列された形状の画線から成る定周期断絶線とで構成し、潜像を施した部分の定周期断絶線のうち、基準線方向に連続した一つの画線部と非画線部から成る一周期に相当する部分の画線面積の総和が、潜像を施さない部分の連続線のうち、基準線方向における一周期と同一の長さに相当する部分の画線面積と等しくすることを特徴とした、複写防止模様の作成方法及びその印刷物(例えば、特許文献2参照)を出願している。これは、通常、複写前は潜像の識別が困難であり、複写機にかけると潜像を施した模様は再現されず、背景部分は再現されるため潜像が形成されるというものである。
上述した複写防止画線や模様は、複写機等で複写された場合は真偽判別効果を奏するが、複写機で複写されない限り肉眼で真偽判別することができない、という問題があった。又、近年、カラー複写機の解像度の著しい技術進歩に伴い、このような複写防止画線や模様を有する印刷物を複写機で複写した場合に、明瞭に潜像を発現することが困難になってきているという問題がある。
このような問題を解決すべく本願出願人は、真偽判別可能な印刷物(例えば、特許文献3参照)を出願している。これは、直線又は曲線を基本線とする1本又は複数の画線から成る画線模様に潜像を施した印刷物であって、この画線模様のうち潜像を施さない部分の画線は実線で、潜像を施した部分の画線は実線より分岐し、分岐した線は破線を成している。又、この印刷物は蛍光顔料を含有するインキで印刷されたものである。この印刷物は、複写機にて複写すると、潜像を施した部分が複写されずに印刷支持体(紙等)の色として潜像が顕像となり、紫外線照射下においては、潜像を施した部分の発光強度が周辺より高くなって潜像が顕像となるような現象を有する。この印刷物は、簡易的な道具のみで真偽判別を行うことができる。さらに、偽造あるいは変造するためには、精緻な画線抽出及び再現と、材料の調達との両方を要するため、偽造、変造防止策として優れている。
ところが、この印刷物の有する画線は比較的粗く、複雑な潜像は顕像化させてもディティールが表現できない傾向にある。よって、偽造、変造防止策の認知度を高めるためにより効果的で、顧客ニーズも高いような意味のある図形、例えば、自治体、法人あるいは企業等のシンボルマーク、イメージキャラクター、ロゴ、あるいはその他の絵、文字、マーク等の形状を、潜像として用いるには、潜像の解像度がもっと高くなるような画線を考案する必要が生じている。
又、この印刷物を作成するには厳密な画線管理が必要であり、この印刷物を作成するには、細かな画線測定と複雑な画線面積率の計算及び、計算結果に基づく画線幅の調整が不可欠であった。印刷製版における各工程で、画線幅の変動を引き起こす要因は多々あり、同一のデジタルデータより得られる印刷物の画線幅は日々変動している。それに対して画線幅を調整するには膨大な時間とコストがかかり、より簡便な方法で同様の効果を成す印刷物の作成方法が求められている。
同様の理由から、この印刷物では階調が再現できないという問題があった。通常の直線あるいは曲線より成る印刷物において、特許文献4に提案されている。複写防止模様を構成する画線に振幅を施すことにより、階調再現することができる。階調再現は、デザイン及び潜像のカムフラージュ効果の点から重要である。しかし、この複写防止模様は複写機による複写に対してのみ有効であり、簡易的な道具のみで真偽判別を行うことはできない。又、この印刷物を作成するには厳密な画線管理が必要であり、この印刷物を作成するには、細かな画線測定と複雑な画線面積率の計算及び、計算結果に基づく画線幅の調整が不可欠であった。
又、特許文献5には、一定周期で連続配置する網点の集合体により構成され、潜像部の網点は潜像周囲部の網点と解像度が異なり、単位面積あたりの網点面積率が等しく、且つ、単位面積あたりの網点周囲長(輪郭長さ)が異なる構成からなり、且つ、潜像部及び潜像周囲部を有色蛍光インキで印刷する真偽判別可能な印刷物が記載されている。しかし、画線の構造は単一な濃度を有する印刷表現のみであり、連続階調を施せるに至ってはいない。
デジタル製版システムにおいて、印刷物に連続階調の画像を付すには、スクリーン処理(スクリーニング、screening)と呼ばれる演算処理が必要である。スクリーン処理とは、連続階調を有するデジタルデータである画像を、スクリーンを用いて画線部と非画線部とに分け、画像の階調を単位面積当たりの画線面積に置き換えて表す処理のことである。スクリーン処理によって得られる画線は微細なので、肉眼では色味の濃淡として認識する。
「スクリーン」という言葉の由来は、従来の光学技術を駆使した写真製版システムにおいて、連続階調を有するフィルムに、コンタクトスクリーンと呼ばれる紗様のフィルムを掛けて露光し、黒化部分と透過部分との2値のフィルム(リスフィルム)を得たところにある。
ここではスクリーンとは、連続階調模様をスクリーン処理によって画線部と非画線部とに分ける際に、いずれの領域を画線部とし、他の領域を非画線部とするのかを定義付けた規則として用いる。より具体的には、スクリーンとは、網点や直線等の画線を用いて、模様の持つ連続階調を再現する際に、画線の形状(画線パターン)や大きさ(スクリーン線数)、角度(スクリーン角度)等を定義する数式等を含む情報であるとする。このような情報をデジタルデータとしてコンピュータに入力し、所望の連続階調模様を有する画像を、スクリーンにより定義された画線により階調を再現した状態で、印刷出力あるいはモニタへの表示を行うことになる。
スクリーンには、画線の形状を決定するスクリーン形状、単位当たりの大きさを決定するスクリーン線数、配列方向を決定するスクリーン角度の3つの要素がある。
画線の形状を複雑化することによって偽造、変造の際の画線抽出を防止するという技術については、様々なものが考案されている。このような画線を用いて画像の階調再現を行うことが可能な出力装置やソフトウェアは多数考案され、市販されている。以下に、上述した特許文献名を記載する。
【特許文献1】:特開昭60−87380号公報
【特許文献2】:特開平9−240135号公報
【特許文献3】:特願2000−172866号公報
【特許文献4】:特願平10−315380号公報
【特許文献5】:特願2001−62385号公報
発明の概要
本発明は、上記事情に鑑み、偽造、改竄防止効果の高い真偽判別可能な印刷物とその作成方法を提供することを目的とする。
本発明の真偽判別可能な印刷物は、
第1の画線により連続階調が再現された第1の領域と、
第2の画線により連続階調が再現された少なくとも1つの第2の領域とを備え、
前記第1の領域と前記第2の領域との境界付近において、前記第1の画線の画線面積率と前記第2の画線の画線面積率とが略等しく、且つ前記第1の画線の単位面積当たりの画線周囲長の総和L1と、前記第2の画線の単位面積当たりの画線周囲長の総和L2とが異なり、
前記第1及び第2の領域は、有色且つ単色の蛍光インキが用いられて印刷されていることを特徴とする。
ここで、前記第1の画線及び前記第2の画線の大きさは、30〜200μmの範囲内にあってもよい。
前記第1の画線の単位面積当たりの画線周囲長の総和L1と、前記第2の画線の単位面積当たりの画線周囲長の総和L2との間には、同一画線面積率において、L1/L2<0.3、又はL2/L1<0.3の関係があることが望ましい。
前記第1の画線における単位面積当たりの画線面積率は、周期的に配置された直線又は曲線の太さによって変化し、
前記第2の画線における単位面積当たりの画線面積率は、前記第1の画線より小さい周期にて配置された直線、曲線又は破線の太さによって変化するものであってもよい。
あるいは、前記第1の画線における単位面積当たりの画線面積率は、周期的に配置された点の大きさによって変化し、
前記第2の画線における単位面積当たりの画線面積率は、前記第1の画線と同一形状を有する点の大きさによって変化し、且つ、前記第1の画線よりも小さい周期にてこの点が配置されていてもよい。
本発明の真偽判別可能な印刷物の作成方法は、
前記印刷物は、第1の画線により連続階調が再現された第1の領域と、
第2の画線により連続階調が再現された少なくとも1つの第2の領域とを備え、
前記第1の領域と前記第2の領域の境界付近において、前記第1の画線の画線面積率と前記第2の画線の画線面積率が略等しく、且つ前記第1の画線の単位面積当たりの画線周囲長の総和L1と、前記第2の画線の単位面積当たりの画線周囲長の総和L2とが異なり、
前記第1の領域の連続階調を再現するために用いる前記第1の画線を定義する第1のスクリーンと、前記第2の領域の連続階調を再現するために用いる前記第2の画線を定義する第2のスクリーンとをそれぞれ作成する工程と、
連続階調模様を有する画像を作成する工程と、
前記画像に対し、前記第1のスクリーンにより定義された画線を用いて階調再現すべき第1の画像と、前記第2のスクリーンを用いて定義された画線を用いて階調再現すべき第2の画像とを複製する工程と、
前記第1の画像において前記第2の領域を取り除いて前記第1の領域のみとしたものと、前記第2の画像において前記第2の領域を取り出したものとをレイアウト合成することで、前記第1の画像から成る前記第1の領域と、前記第2の画像から成る前記第2の領域とを生成する工程と、
レイアウト合成されたものにおいて、前記第1の領域における前記第1の画像を前記第1のスクリーンにより定義された画線を用いて階調再現し、前記第2の領域における前記第2の画像を前記第2のスクリーンにより定義された画線を用いて階調再現し、有色且つ単色の蛍光インキを用いて印刷することで、前記印刷物を得る工程と、
を備えることを特徴とする。
前記第1のスクリーンと前記第2のスクリーンとを作成する工程では、前記第1の画線及び前記第2の画線の大きさが、30〜200μmの範囲内にあるように、前記第1のスクリーンと前記第2のスクリーンとを作成してもよい。
前記第1のスクリーンと前記第2のスクリーンとを作成する工程では、前記第1の画線の単位面積当たりの周囲長の総和L1と、前記第2の画線の単位面積当たりの周囲長の総和L2との間には、同一画線面積率において、L1/L2<0.3、又はL2/L1<0.3の関係があるように、前記第1のスクリーンと前記第2のスクリーンとを作成してもよい。
前記第1のスクリーンと前記第2のスクリーンとを作成する工程では、前記第1の画線における単位面積当たりの画線面積率は、周期的に配置された直線又は曲線の太さによって変化し、
前記第2の画線における単位面積当たりの画線面積率は、前記第1の画線より小さい周期にて配置された直線、曲線又は破線の太さによって変化するように、前記第1のスクリーンと前記第2のスクリーンとを作成してもよい。
前記第1のスクリーンと前記第2のスクリーンとを作成する工程では、前記第1の画線における単位面積当たりの画線面積率は、周期的に配置された点の大きさによって変化し、
前記第2の画線における単位面積当たりの画線面積率は、前記第1の画線と同一形状を有する点の大きさによって変化し、且つ、前記第1の画線よりも小さい周期にてこの点が配置されるように、前記第1のスクリーンと前記第2のスクリーンとを作成してもよい。
【図面の簡単な説明】
添付図面において
図1Aは、本発明の一実施例による印刷物P1を可視光下において肉眼で視認した状態を示した図、図1Bは、この印刷物P1を紫外線を照射した状態で肉眼により視認される状態を示した図である。
図2は、図1に示される印刷物P1の部分的な拡大図である。
図3は、スクリーンAによって階調再現して得た画線の一例を示した図である。
図4は、スクリーンBによって階調再現して得た画線の一例を示した図である。
図5は、スクリーンAによって階調再現して得た画線の一例を示した図である。
図6は、スクリーンBによって階調再現して得た画線の一例を示した図である。
図7は、図5に示す画線のうち、画線面積率が50%である箇所の拡大図である。
図8は、図6に示す画線のうち、画線面積率が50%である箇所の拡大図である。
図9は、印刷物P1の一例を示した図である。
図10は、本発明の一実施例による印刷物P1の作成方法の一例を示したフローチャートである。
図11は、本発明の一実施例による印刷物P1を作成する装置の構成の一例を示したブロック図である。
図12Aは、印刷物P1における領域2を切り抜いて除去し、領域1のみの画像を示した図、図12Bは、領域2のみの画像を示した図である。
1 領域1
2 領域2
3 印刷物P1の一部分
4 スクリーンAによって階調再現して得た画線
5 スクリーンBによって階調再現して得た画線
10 入力部
20 演算部
30 記憶部
40 出力部
発明の詳細な説明
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
《印刷物の構成》
写真、絵画、テキスタイル等の模様P2から成る階調を有する真偽判別可能な印刷物P1の一例を図1に示す。ここで、図1Aに可視光下において肉眼により認識される画像を示し、図1Bに紫外線を照射したときに肉眼によって認識される画像を示す。また、印刷物P1の部分3の拡大図を図2に示す。
印刷物P1は2つの領域1及び2を備え、各領域1、2は異なる形状を有する画線によって連続階調が再現されている。
ここで印刷物P1は、背景部に相当する領域1と、文字、図形等の何等かの画像部に相当する領域2とを備えており、領域2は少なくとも1つあればよく、領域2を複数備えてもよい。
尚、領域1と領域2との境界部分の形状は、全体の階調の模様P2と異なる意匠、例えば背景と異なる文字や図形等の意匠を有する。
2つの領域1、2は、通常の可視光下においては肉眼での区別が困難である。
印刷物P1は、有色且つ単色の蛍光インキを用いた印刷物である。この印刷物P1を紫外線照射した場合には、図1Bに示すように、領域2が領域1よりも発光が強く見えるような現象を生ずる。このような現象を紫外線発光現象、紫外線発光現象を生ずる画線を紫外線発光機能を有する画線と称する。
印刷物P1において、上述したように領域1を構成する画線と領域2を構成する画線とは相互に異なる画線パターンを有する。ここで画線パターンとは、スクリーンにより定義された画線が持つ一定の形状パターンをいう。
図2に示されたように、領域1は任意のスクリーン(以下、スクリーンAと称す)により定義された画線4により階調が再現されており、領域2はこれと異なる他の任意のスクリーン(以下、スクリーンBと称す)によって定義された画線5より階調が再現されている。
尚、スクリーンA及びBは、画線面積率が0%から100%までの連続階調を再現することが可能である。しかし、顕著な紫外線発光現象を得るには、画線面積率が概ね30%から70%程度の範囲が適当である。
さらに、領域1と領域2との境界において、スクリーンAによって定義された、領域1を構成する画線の単位面積当たりの周囲長の総和L1と、スクリーンBによって定義された、領域2を構成する画線の単位面積当たりの周囲長の総和L2との比L1/L2が1未満(好ましくは、0.3以下)、あるいはL2/L1が1未満(好ましくは、0.3以下)であると、さらに顕著な紫外線発光現象を得ることができる。
ここで、異なるスクリーンAとスクリーンBとを用いて、各々が定義する画線の単位面積当たりの周囲長の総和比L1/L2、又はL2/L1を1未満、好ましくは0.3以下とするには、3種類の方法がある。
一つ目は、スクリーンAとスクリーンBとが、同じスクリーン線数、異なるスクリーン形状を有する場合である。
二つ目は、スクリーンAとスクリーンBとが、同じスクリーン形状、異なるスクリーン線数を有する場合である。
三つ目は、スクリーンAとスクリーンBとが、異なるスクリーン形状、異なるスクリーン線数を有する場合である。
また、スクリーンA又はBが定義する画線における最小画線の大きさは、印刷可能な範囲として、例えば約30〜200μmが適当である。
但し、図1、図2に示された、印刷物P1に再現されている階調及び階調を再現している画線4、画線5の形状、大きさ、角度はいずれも一例であって、これに限定されるものではない。
《紫外線発光機能を有するスクリーンの組み合わせ》
【実施例1】
階調再現して得た画線が紫外線発光機能を有するような画線を定義するスクリーンA及びスクリーンBについて、具体的な画線の形状の例を幾つか示し、以下に説明する。
スクリーンA、Bを用いて、紫外線発光機能を有するように階調再現して得たそれぞれの画線の一例を図3及び図4に示す。図3に示した画線6を定義するために用いたスクリーンをスクリーンAとし、図4に示した画線7を定義するために用いたスクリーンをスクリーンBとする。ここで、それぞれのスクリーン角度は任意である。
領域1と領域2との境界領域におけるそれぞれの画線面積率が略同一であり、且つ、境界領域における領域1、2のそれぞれの画線の単位面積当たりの周囲長が異なっている場合、紫外線発光現象が生ずる。このためには、上述したように、スクリーンAにより定義した、領域1を構成する画線の単位面積当たりの周囲長の総和L1と、スクリーンBにより定義した、領域2を構成する画線の周囲長の総和L2との比L1/L2、又はL2/L1が1未満である必要がある。好ましくは、0.3以下であると、顕著な紫外線発光現象を得ることができる。図3に示された画線6、図4に示された画線7の画線面積率が共に50%であるときのそれぞれの単位面積当たりの周囲長の総和の比L1/L2は、略0.27である。
ここで、画線6の形状は図3に示されたように円であり、画線7の形状は図4に示されたように三重円である。しかしこれに限らず、同一画線面積率において、単位面積当たりの周囲長の総和に差が見られるような組み合わせであればよく、具体的な画線の形状の組み合わせはこれに限定されるものではない。
【実施例2】
画線の単位面積当たりの周囲長を所望の値に設定が容易な画線形状の例として、万線、直線、あるいは曲線等の線を基本としたものがある。このような画線を用いる場合に、画線の線数の異なる組み合わせの例について以下に説明する。
まず、万線、直線、あるいは曲線等の線を基本とした画線を用いる場合の一例として、図5及び図6に直線を基本とした画線の例を示す。図5に示した直線状の画線8を定義するために用いたスクリーンをスクリーンAとし、図6に示した破線状の画線9を定義するために用いたスクリーンをスクリーンBとする。ここで、スクリーンA、スクリーンBのそれぞれのスクリーン線数を、例えば略1インチあたり150線としてもよい。尚、スクリーン角度は任意とする。
画線8のうち、画線面積率が50%である箇所の拡大図を図7に示す。画線8を定義するために用いたスクリーンは、画線面積率が高くなるにつれ画線幅が太くなるような直線で画線8を定義したものであって、一般に万線スクリーンと呼ばれる。万線スクリーン等、線状の画線形状を定義するスクリーンは、1セル(単位)における一方向の画線(図中、縦方向の画線)が隣接するセルの画線と繋がっているので、画線の周囲長が短くなる傾向を持つ形状を定義するものである。1辺がaである単位面積a2当たりの画線の周囲長の総和Lは、画線面積50%において2aである。
一方、画線9を用いるのに用いたスクリーンは、空隙が交互に配置された破線状を成し、破線の周期は画線8の4分の1である。画線9において、画線面積率が50%である箇所の拡大図を図8に示す。このような画線9において、画線面積率が50%のときの単位面積当たりの周囲長の総和Lは8aとなる。
よって、スクリーンAを用いて定義した、領域1を構成する画線8の単位面積当たりの周囲長の総和L1と、スクリーンBを用いて定義した、領域2を構成する画線9の単位面積当たりの周囲長の総和L2との比L1/L2は、同一画線面積率において0.25となる。上述した好ましい条件(L1/L2<0.3)を満たすので、顕著な紫外線発光機能を有する。
図5〜図8に示した画線の形状は一例であって、これらに限定されるものではない。2つの画線が、例えば直線、曲線、あるいは破断線等の形状を有し、それらの組み合わせによって画線の単位面積あたりの周囲長の総和が異なるものであればよい。
線数の異なる2種類の画線の組み合わせの一例として、紫外線発光機能を有するような印刷物P1を図9に示す。領域1及び領域2のそれぞれの階調を再現する画線は、同一のスクリーン形状(点状)を有する。しかしこれらの画線は、スクリーン線数、即ち画線の周期が異なる2つのスクリーンを用いて階調再現して得たものである。画線面積率が同一の場合には、画線の単位面積あたりの周囲長は、スクリーン線数が多いほど長くなる性質を有する。
図9に示す領域2の画線5は、領域1の画線4に対して4分の1の周期を有する。即ち、領域2の画線5を得るのに用いたスクリーンのスクリーン線数は、領域1の画線4を得るのに用いたスクリーンのスクリーン線数の4倍である。このようなスクリーン線数を元に、紫外線発光機能を有する画線の組み合わせを設定する場合、スクリーンAのスクリーン線数とスクリーンBのスクリーン線数とが異なることで、画線周囲長に相対的な差が生じて紫外線発光現象が得られる。例えば、画線4を定義するスクリーンAのスクリーン線数を100乃至150線/インチ、画線5を定義するスクリーンBのスクリーン線数を400乃至600線/インチとしてもよい。
ここで、図9に示された画線4、5は共に円形状の形状を有する。しかし、画線の形状は円形状に限らず、菱形等、他の点状の形状であってもよく、又スクリーン角度についても限定されない。
《印刷物P1の作成方法》
本発明の一実施例による真偽判別可能な印刷物P1の作成方法について、図10に示したフローチャートを用いて説明する。以下の符号S1乃至S12は、図10に示したフローチャートにおける各ステップに対応するものとする。
また、印刷物P1を作成する際に用いる作成装置の構成を図11に示す。この装置は、入力部10、演算部20、記憶部30、出力部40を備える。
入力部10は、処理に必要な各種データの入力や、各種条件の設定等を行う。
演算部20は、入力部10から入力されたデータや条件、あるいは記憶部30から読み出したデータを用いて画像処理等の演算を行う。
記憶部30は、入力部10が入力したデータや演算部20の出力結果等を記憶する。
出力部40は、作成した画像データを出力する。モニタ等の画面に表示したり、あるいはプリンタ、印刷機等の機能を備えて印刷出力を行う。
《スクリーンA及びスクリーンBの作成(S1)》
まず、2種類の画線をそれぞれ定義するスクリーンA及びスクリーンBを作成する(S1)。スクリーンを作成する手順は、出力部40が階調画像Iを出力する処理の内容や手順によって異なり、複数種類存在する。大別すると、処理手順には次の2種類が挙げられる。
一つは、フィルム出力機、あるいはプリンタ等の画像出力装置が通常有するスクリーン処理手段を利用する手法である。スクリーンを階調画像に挿入してフィルム出力装置等の出力装置に転送し、出力装置にてスクリーン処理を行って画線を得る手法であり、以下、ハードウェアRIP法と称する。ハードウェアRIP法においては、画線を定義した情報であるスクリーンが挿入された画像を与えられ、この情報に基づいて演算して画線を生成し、この画線を用いて階調再現した画像を出力するためのアルゴリズムを有する出力装置が必要である。例えば、印刷製版技術における汎用コンピュータ言語であるポストスクリプト(登録商標)言語に対応する出力装置等が存在する。
例えば、ポストスクリプト(登録商標)においては、同言語で記述されたスポット関数と呼ばれる関数、あるいはスレッショルド臨界配列と呼ばれるアスキーデータ配列を用いてスクリーンを記述する。
もう一つの手法は、パーソナルコンピュータ等で用いられているスクリーン処理用のソフトウェア(以下、スクリーン処理ソフトウェアと称す)を用いてスクリーンを作成するものである。このソフトウェアは、スクリーンを入力して画像にスクリーン処理を行い、得られた白黒2値画像を、フィルム出力機やプリンタ等の出力装置に転送する。このようなソフトウェアを用いてスクリーンを生成する手法を、ソフトウェアRIP法と称する。
スクリーン処理ソフトウェアとして、出力装置の有するスクリーン処理手段と同様の目的で用いられるソフトウェアや、得られた白黒2値画像の加工を目的としたデザインソフトウェア等が様々に開発され、市販されている。
例えば、後者のデザインソフトウェアの例として、JURA社が開発し市販している証券用デザインソフトウェアであるJURAピクセル(登録商標)が存在する。
以上のように、階調画像Iのスクリーン処理手段には数多くあり、いずれの手段を用いるかは限定しない。ここでは、ハードウェアRIP法の一例として、出力部40としてポストスクリプト(登録商標)対応のフィルム出力装置を用いる場合を例にとり説明する。この場合、スクリーンA及びスクリーンBを表すスポット関数あるいはスレッショルド臨界配列を作成することになる。
上述したような紫外線発光作用を有する2つの画線の組み合わせのうち所望のものを選択し、必要なデータを入力部10に入力して演算部20にてスポット関数あるいはスレッショルド臨界配列を作成する。スポット関数あるいはスレッショルド臨界配列の作成方法は、限定しない。例えば、市販のテキスト編集ソフトウェアを用いてスクリーン形状を定義する3次元関数であるスポット関数をポストスクリプト(登録商標)にて記述する。
あるいは、市販の画像処理ソフトウェアを用いて画像を描画し、所定のデータ形式にて保存してスレッショルド臨界配列を得てもよい。作成したスクリーンA及びBの制御情報は、記憶部30に与えて記憶させる。
《画像Iの作成(S2)》
印刷物P1として得たい任意の連続階調模様を有する画像Iを、市販の画像処理ソフトウェア等を用いて演算部20においてデジタルデータとして作成する(S2)。次に、作成したスクリーンA及びスクリーンBを用いて、この画像Iにおける領域2、及び領域2の周辺領域1に存在する画線が、上述した複写防止機能及び紫外線発光機能を有するように、演算部20を用いて画像Iの濃度を調節する。具体的には、例えば画像Iを印刷して得られる印刷物P1において、領域1と2との境界部分において、領域1のうち領域2に近接する部分と、領域2のうち領域1に近接する部分との画線面積率が、上述したように概ね30%から70%程度の範囲にある場合、顕著な紫外線発光機能を有する画線を得ることができる。
《画像Iの複製(S3)》
通常市販されているポストスクリプト対応のフィルム出力機の場合、1つの画像に対して1種類のスクリーンしか挿入できない。即ち、1つの画像の階調再現を行うには、1種類のスクリーンのみを用いることができる。よって、あるスクリーンAにより定義された画線を用いて階調再現を行った画像領域1と、他のスクリーンBにより定義された画線を用いて階調再現を行った画像領域2とを同時に作成することはできない。
そこで、演算部20を用いて階調画像Iを複製して同一の2つの階調画像IA及び階調画像IBを用意する。領域1は階調画像IAとし、領域2は階調画像IBとする。
《濃度の微調整(S4、S6)》
一般に、画像処理を行う際には、濃度調整という処理が行われる。これは、出力物には、何等かの光学的な変動要因が原因となってにじみやぼけ等が生じる。このような現象を抑制するために、濃度調整が行われている。そこで、このステップS4、S6においても、このようなにじみやぼけを抑制するために、演算部20によって濃度調整を行う。
さらに、画像IA及び画像IBは、同一の階調を有する画像ではあるが、これらの画像を夫々異なるスクリーンA、Bにより定義された画線を用いて階調再現し、領域1及び2を合成して得た印刷物P1においては、ドットゲインと称される画線の輪郭のにじみ等が発生し、領域1と領域2との階調が異なるものとなる場合がある。
そのような場合、画像IA及び画像IBを合成した際に、領域1と領域2との境界を通常の可視光下において肉眼で判別が困難となるように、演算部20を用いて画像IA及び画像IBの濃度を微調整する必要がある(S4、S6)。
スクリーンA、Bの組み合わせによっては、画像Iにて画線面積率50%相当の濃度の箇所を、画像IAでは45%相当に、画像IBでは55%相当にする等、画線面積率10%以上の濃度差が付くような濃度の微調整処理が必要となる場合もある。
尚、このステップS4、S6の段階では、スクリーンA、Bにより定義された画線を用いて画像を階調再現するスクリーン処理を未だ行っていない。しかし、スクリーン処理後には濃度の微調整処理を行うことはできない。このため、スクリーン処理後に輪郭のにじみ等が発生するかどうかなどについて、予め予測した上で濃度の微調整を行う必要がある。
《切り抜きマスク処理(S7)》
画像IBに対し、切り抜きマスク処理を行う(S7)。この切り抜きマスク処理は、画像処理において幅広く行われている手法を流用することができ、具体的な切り抜きマスクの手法については限定しない。例えば、市販の画像処理ソフトウェアやレイアウトソフトウェアに付属する切り抜きマスク処理機能を用いてもよい。ここでは、マスクの形状が、複写あるいは紫外線照射により可視化する潜像の形状に相当する。
《スクリーンの挿入(S5、S8)》
演算部20を用いて、作成したスクリーンAの制御情報を画像IAに挿入し、作成したスクリーンBの制御情報を画像IBに挿入する(S5、S8)。この段階では、スクリーンA、Bの制御情報を用いて画線をそれぞれ作成し、作成した画線を用いて画像IA、IBを階調再現するスクリーン処理は行っていない。
ここで、画像IA及び画像IBへの定義データの挿入方法は限定しない。例えば、画像をテキスト形式で開くソフトウェアを用いて、テキスト編集によって挿入する。あるいは、Adobe社のPhotoshop(登録商標)やIllustrator(登録商標)のようなスクリーンを定義する機能を有するソフトウェアを用いて、スポット関数を挿入してもよい。
《画像IA及び画像IBのレイアウト合成(S9)》
演算部20を用いて、画像IAと画像IBとを合成する(S9)。例えば、市販の画像処理ソフトウェア等を用いて画像IBのマスク処理を行い、さらに市販のレイアウトソフトウェア等を用いて画像IAの真上に画像IBを配置する。これにより、画像IAと画像IBとの合成処理が可能となる。
図12Aに、領域2の部分を切り抜いた領域1を、スクリーンAを用いて階調再現した画像IAを示す。また図12Bに、切り抜いた領域2を、スクリーンBを用いて階調再現した画像IBを示す。ここでは、図示する必要上、図12Aにおける領域1、図12Bにおける領域2は、スクリーンA、Bにより定義された画線を用いて階調再現されているが、この段階では未だこのようなスクリーン処理は施されていない。
《スクリーン処理(S10)》
演算部20にて合成した画像を、出力部40によって出力する。出力部40としては、例えばポストスクリプト(登録商標)対応のフィルム出力機、あるいは版面出力機を用いてもよい。出力部40は、演算部20から画像データを受け取ると、出力の際にスクリーン処理を行う(S10)。
例えば、丸い網点で構成された画線を定義するスクリーンを用いる場合、このような網点形状を有する画線により階調再現した画像を生成し出力することになる。スクリーンが網点形状を有する画線を定義する場合を例にとると、画像データをRIP展開して網点処理を行う。
《フィルム等への露光及び刷版作成》
中間工程における生成物として、透光性のある領域と透光性のない領域とを有するフィルム(あるいは、フィルムを原版として作成するインキ塗布用の版面)の露光する個所と露光しない個所とを判別して、連続階調より成る画像のデータから画線面積率より成るデータを作成する。
出力部40は、このデータに基づいて、フィルム(あるいは版面)に露光処理を行う(S11)。そして、露光処理を施したフィルム(あるいは版面)に現像処理を行う。出力物がフィルムの場合は、出力したフィルムを元に版面を作成して、印刷を行い、印刷物を出力する。
出力部40は、印刷出力を行う場合には、例えば、オフセットインキ475gに対して蛍光顔料25gを含有する有色蛍光インキを用いてオフセット印刷を行う。蛍光顔料の種類及びインキ中の含有量は限定しない。又、インキの色も特に限定しない。さらには、オフセット印刷以外の印刷手法を用いてもよい。あるいはまた、版面を作成することなしに、印刷物P1が得られる汎用のプリンタやオンデマンド印刷機を用いて出力してもよい。
本実施の形態によれば、改竄、偽造防止効果の高い印刷物を、1つの版面且つ1回の印刷工程によって容易に作成することができる。

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画線により連続階調が再現された第1の領域と、
第2の画線により連続階調が再現された少なくとも1つの第2の領域とを備え、
前記第1の領域と前記第2の領域との境界付近において、前記第1の画線の画線面積率と前記第2の画線の画線面積率とが略等しく、且つ前記第1の画線の単位面積当たりの画線周囲長の総和L1と、前記第2の画線の単位面積当たりの画線周囲長の総和L2とが異なり、
前記第1及び第2の領域は、有色且つ単色の蛍光インキが用いられて印刷されていることを特徴とする真偽判別可能な印刷物。
【請求項2】
前記第1の画線及び前記第2の画線の大きさは、30〜200μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の真偽判別可能な印刷物。
【請求項3】
前記第1の画線の単位面積当たりの画線周囲長の総和L1と、前記第2の画線の単位面積当たりの画線周囲長の総和L2との間には、同一画線面積率において、L1/L2<0.3、又はL2/L1<0.3の関係があることを特徴とする請求項1又は2記載の真偽判別可能な印刷物。
【請求項4】
前記第1の画線における単位面積当たりの画線面積率は、周期的に配置された直線又は曲線の太さによって変化し、
前記第2の画線における単位面積当たりの画線面積率は、前記第1の画線より小さい周期にて配置された直線、曲線又は破線の太さによって変化することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の真偽判別可能な印刷物。
【請求項5】
前記第1の画線における単位面積当たりの画線面積率は、周期的に配置された点の大きさによって変化し、
前記第2の画線における単位面積当たりの画線面積率は、前記第1の画線と同一形状を有する点の大きさによって変化し、且つ、前記第1の画線よりも小さい周期にてこの点が配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の真偽判別可能な印刷物。
【請求項6】
真偽判別可能な印刷物の作成方法において、
前記印刷物は、第1の画線により連続階調が再現された第1の領域と、
第2の画線により連続階調が再現された少なくとも1つの第2の領域とを備え、
前記第1の領域と前記第2の領域の境界付近において、前記第1の画線の画線面積率と前記第2の画線の画線面積率が略等しく、且つ前記第1の画線の単位面積当たりの画線周囲長の総和L1と、前記第2の画線の単位面積当たりの画線周囲長の総和L2とが異なり、
前記第1の領域の連続階調を再現するために用いる前記第1の画線を定義する第1のスクリーンと、前記第2の領域の連続階調を再現するために用いる前記第2の画線を定義する第2のスクリーンとをそれぞれ作成する工程と、
連続階調模様を有する画像を作成する工程と、
前記画像に対し、前記第1のスクリーンにより定義された画線を用いて階調再現すべき第1の画像と、前記第2のスクリーンを用いて定義された画線を用いて階調再現すべき第2の画像とを複製する工程と、
前記第1の画像において前記第2の領域を取り除いて前記第1の領域のみとしたものと、前記第2の画像において前記第2の領域を取り出したものとをレイアウト合成することで、前記第1の画像から成る前記第1の領域と、前記第2の画像から成る前記第2の領域とを生成する工程と、
レイアウト合成されたものにおいて、前記第1の領域における前記第1の画像を前記第1のスクリーンにより定義された画線を用いて階調再現し、前記第2の領域における前記第2の画像を前記第2のスクリーンにより定義された画線を用いて階調再現し、有色且つ単色の蛍光インキを用いて印刷することで、前記印刷物を得る工程と、
を備えることを特徴とする真偽判別可能な印刷物の作成方法。
【請求項7】
前記第1のスクリーンと前記第2のスクリーンとを作成する工程では、前記第1の画線及び前記第2の画線の大きさが、30〜200μmの範囲内にあるように、前記第1のスクリーンと前記第2のスクリーンとを作成することを特徴とする請求項6記載の真偽判別可能な印刷物の作成方法。
【請求項8】
前記第1のスクリーンと前記第2のスクリーンとを作成する工程では、前記第1の画線の単位面積当たりの周囲長の総和L1と、前記第2の画線の単位面積当たりの周囲長の総和L2との間には、同一画線面積率において、L1/L2<0.3、又はL2/L1<0.3の関係があるように、前記第1のスクリーンと前記第2のスクリーンとを作成することを特徴とする請求項6又は7記載の真偽判別可能な印刷物の作成方法。
【請求項9】
前記第1のスクリーンと前記第2のスクリーンとを作成する工程では、前記第1の画線における単位面積当たりの画線面積率は、周期的に配置された直線又は曲線の太さによって変化し、
前記第2の画線における単位面積当たりの画線面積率は、前記第1の画線より小さい周期にて配置された直線、曲線又は破線の太さによって変化するように、前記第1のスクリーンと前記第2のスクリーンとを作成することを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の真偽判別可能な印刷物の作成方法。
【請求項10】
前記第1のスクリーンと前記第2のスクリーンとを作成する工程では、前記第1の画線における単位面積当たりの画線面積率は、周期的に配置された点の大きさによって変化し、
前記第2の画線における単位面積当たりの画線面積率は、前記第1の画線と同一形状を有する点の大きさによって変化し、且つ、前記第1の画線よりも小さい周期にてこの点が配置されるように、前記第1のスクリーンと前記第2のスクリーンとを作成することを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の真偽判別可能な印刷物の作成方法。

【国際公開番号】WO2004/085166
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504015(P2005−504015)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003648
【国際出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】