説明

真偽判別媒体

【課題】
真偽判別用の円偏光フィルタを所持する必要がなく、すべてのユーザが、表側から見た場合と、裏側から見た場合とで生じる画像の変化を容易に観察して真偽判別をすることが可能な真偽判別媒体を提供することを目的とする。
【解決手段】
右回転又は左回転の円偏光のいずれか一方を透過する機能を有する透明又は半透明の基材の表側に、第一の画像及び第二の画像を少なくとも有する印刷画像を形成する。このとき、第一の画像を、基材を透過する円偏光と逆回転の円偏光のみを反射するコレステリック液晶で形成し、第二の画像を、基材を透過する円偏光と逆回転の円偏光のみを反射する特性を有さない材料で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止効果を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等の貴重印刷物の分野において、表側から見た場合と、裏側から見た場合で観察できる画像が変化する真偽判別媒体に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年のスキャナ、プリンタ、カラーコピー機等のデジタル機器の進展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。そのような複製や偽造を防止する偽造防止技術の一つとして、コレステリック液晶を用いた技術がある。
【0003】
コレステリック液晶は、その分子構造に起因する二つの特徴を有している。一つは分子構造中のらせんピッチに応じた構造色を生じ、光を反射する角度を変えることでらせんピッチが擬似的に変化し、観察される色相が変化する効果、いわゆる色相遷移効果を有するという特徴である。なお、透過光で観察した場合には反射色の補色を呈する。もう一つは、分子構造中のらせんの回転方向と同じ回転方向の偏光のみを反射するという特徴である。この色相遷移効果は道具を用いず、裸眼で視認することが可能であり、一方の回転の同じ偏光のみを反射する特徴は、円偏光フィルタを介して観察した場合にのみ確認することが可能である。このように、コレステリック液晶は、二つの異なる効果を同時に利用できることから、偽造防止の分野で従来から広く活用されている。
【0004】
このようなコレステリック液晶材料を用いた印刷物として、基材の透明部にコレステリック液晶部を設け、カラー複写機やパソコンプリンタなどによる複写で偽造を試みた複写物の真偽判定を、目視で容易に行うことができる偽造防止用紙が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、基材上に有色層を形成し、有色層の上に入射された光のうち右回転の偏光を反射する右偏光反射層と、入射された光のうち左回転の偏光を反射する左偏光反射層を備えることを特徴とする光学素子を貼付された印刷物が開示されている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−318399号公報
【特許文献2】特開2003−170649号公報
【特許文献3】特開2009−98454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載の技術はいずれも、印刷物中に備えられたコレステリック液晶の反射する円偏光を利用した真偽判別を行う際に、判別具として円偏光フィルタを用い、観察できる画像が変化するか否かを確認する必要があった。この円偏光フィルタを用いた判定方法は、言うなればコレステリック液晶独自の分子配列の特徴を目に見える形に可視化するものであるから、極めて偽造が難しく、極めて精度の高い判定方法であるといえる。しかし、この判定方法は、専用の円偏光フィルタを別に用意して確認する必要があり、判定できるユーザが制限されるという問題があった。
【0008】
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、従来のように真偽判別用の円偏光フィルタを所持する必要がなく、すべてのユーザが、表側から見た場合と、裏側から見た場合とで生じる画像の変化を容易に観察して真偽判別をすることが可能な真偽判別媒体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の真偽判別媒体は、右回転又は左回転の円偏光のいずれか一方を透過する機能を有する透明又は半透明の基材の表側に、第一の画像及び第二の画像を少なくとも有する印刷画像を備え、第一の画像は、基材を透過する円偏光と逆回転の円偏光のみを反射するコレステリック液晶から成り、第二の画像は、基材を透過する円偏光と逆回転の円偏光のみを反射する特性を有さない材料から成り、基材を表側から反射光下で観察した場合に対して、基材を裏側から反射光下で観察した場合及び基材を表裏から透過光下で観察した場合とで、観察できる画像が異なることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の真偽判別媒体は、第一の画像と第二の画像が、表側から反射光下で所定の角度から観察した場合に等色の色彩であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の真偽判別媒体は、第二の画像が、基材を透過する円偏光と同じ回転の円偏光を反射するコレステリック液晶材料から成ることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の貴重印刷物は、真偽判別媒体を構成する基材とは異なる基材の一部に設けられた窓あき部を覆うように積層されて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
コレステリック液晶の分子配列中のらせんの回転方向を利用した真偽判別を、専用の円偏光フィルタを別に用意することなく、基材を表側から観察した場合と、基材を裏側から見た場合とで生じる、画像の変化を確認することで行える。この方法によって、真偽判別媒体を手にした万人が、迅速、かつ、極めて容易に真偽判別を行うことができる。
【0014】
また、本発明の真偽判別媒体は、従来の印刷画像とフィルタが分離したタイプの認証と比較して、全く同じ材料(コレステリック液晶とフィルタ)を用いて形成した場合でも、フィルタを通して観察される画像(本発明の真偽判別媒体においては裏側から観察した画像)がより鮮明な画像となる。これはフィルタと印刷画像が密着しているために、印刷画像とフィルタ間に外乱光が入射しないことで生じる大きな利点である。
【0015】
反射光下で観察した場合、コレステリック液晶で形成された第一の画像が鮮やかな構造色を呈し、観察角度を変えた場合に生じる色相遷移効果も極めて高いために、真偽判別効果に優れる。
【0016】
透過光下で観察した場合、第一の画像の構造色が失われ、無色透明に変化する効果が生じることから、透過光下においても真偽判別効果に優れる。
【0017】
基材が透過する円偏光と同じ回転のコレステリック液晶で第二の画像を形成した場合、第二の画像が透過光下で反射色の補色を呈する効果も生じることから、真偽判別効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の真偽判別媒体を示す説明図である。
【図2】(a)は、印刷画像の説明図であり、(b)は真偽判別媒体に含まれる第一の画像と、(c)は真偽判別媒体に含まれる第二の画像の説明図である。
【図3】(a)は真偽判別媒体を観察する状態を示す図であり、(b)は真偽判別媒体を表側から見た場合に、観察される画像の説明図であり、(c)は真偽判別媒体を裏側から見た場合に、観察される画像の説明図である。
【図4】(a)は、本発明の真偽判別媒体を反射光下で表側から観察した場合のそれぞれの円偏光の光路を示す説明図である。(b)は、本発明の真偽判別媒体を反射光下で裏側から観察した場合のそれぞれの円偏光の光路を示す説明図である。
【図5】(a)は、本発明の真偽判別媒体を透過光下で表側から観察した場合のそれぞれの円偏光の光路を示す説明図である。(b)は、本発明の真偽判別媒体を透過光下で裏側から観察した場合のそれぞれの円偏光の光路を示す説明図である。
【図6】真偽判別媒体が貼り付けられて成る貴重印刷物の説明図である。
【図7】本発明の真偽判別媒体を示す説明図である。
【図8】(a)は、印刷画像の説明図であり、(b)は真偽判別媒体に含まれる第一の画像と、(c)は真偽判別媒体に含まれる第二の画像と、(d)は真偽判別媒体に含まれる付加要素の説明図である。
【図9】(a)は真偽判別媒体を観察する状態を示す図であり、(b)は真偽判別媒体を表側から見た場合に、観察される画像の説明図であり、(c)は真偽判別媒体を裏側から見た場合に、観察される画像の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図1から図3までを用いて説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0020】
図1に本発明の真偽判別媒体(1)を示す。本発明の真偽判別媒体(1)は基材(2)上に、印刷画像(3)が形成されている。基材(2)は、入射した光を円偏光(楕円偏光を含む)に偏光する働きを持つものであり、右回転あるいは左回転の円偏光のいずれか一方の偏光のみを透過する透明又は半透明な材料で形成されて成る。基材(2)の光透過率としては、30%以上が望ましい。これは、基材(2)の透過率が30%より小さくなると、表側から見た場合と、裏側から見た場合とで生じる画像の変化を観察し難くなるためである。このような基材の例としては、少なくとも偏光フィルムと位相差フィルム(1/4波長板)が積層されて成る構成をとり、これらを強度的に保護し、温湿度による劣化を防止するために、透明性が高く低複屈折率であり耐候性に優れた保護フィルムを積層することが望ましい。このような保護フィルムの例としてはトリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどが挙げられる。位相差フィルムは、広帯域化のため複数枚の位相差板を積層した構成をとっても良い。ただし、基材(2)の構成はこれに限らず、前述した積層構造をとらなくても同機能を発揮するものであれば良い。以降の説明では、基材(2)上に印刷画像(3)が形成される面を「表側」とし、その反対の面を「裏側」として説明する。
【0021】
図2に、印刷画像(3)の構成を示す。図2(a)に示す印刷画像(3)は、図2(b)に示す第一の画像(4a)と図2(c)に示す第二の画像(4b)から構成されている。本発明において、第一の画像(4a)は、基材(2)が透過する偏光とは逆回転の偏光のみを反射する性質を有するコレステリック液晶で形成されて成り、例えば、基材(2)が右回転の偏光を透過する場合、第一の画像(4a)は左回転の偏光のみを反射する性質を有するコレステリック液晶で形成され、基材(2)が左回転の偏光を透過する場合、右回転の偏光のみを反射する性質を有するコレステリック液晶で形成される。
【0022】
なお、コレステリック液晶とは、一つの平面内では細長い分子が長軸の方向をそろえて配列しており、平面に垂直な方向に進むにしたがって分子の配列する向きが、らせん状に旋回する構造の液晶であり、らせんピッチと等しい波長の光を選択的に反射する性質と、らせんの回転方向と同じ回転方向の円偏光(楕円偏光を含む)を選択的に反射するという性質を有している。さらに、コレステリック液晶の光又は偏光を反射する性質に関しては、らせんのピッチを制御することで反射色の色相を制御することができ、光を反射した場合に明度だけでなく色相も同時に変化させる効果、いわゆる色相遷移効果を備えている。また、液晶を傾けて観察することで、らせんピッチが擬似的に短くなり、干渉する光の波長が短波長側にシフトすることで観察される色相が変化する、いわゆる色相遷移効果を有する。
【0023】
また、透過光下においてコレステリック液晶は、反射光下で視認されていた構造色の補色を呈することが知られている。詳細には、このコレステリック液晶を透過する光とは、コレステリック液晶が反射する光と同じ回転方向の光のうちの、構造色の補色の光と、コレステリック液晶の回転方向と逆の円偏光である。このとき、コレステリック液晶の回転方向と逆の円偏光は、可視波長域の全ての光成分を含んでいるため、コレステリック液晶を透過する光の色の視認性に影響することはなく、結果的に、構造色の補色が透過光として観察される。
【0024】
以上説明したコレステリック液晶が反射又は透過する一定の回転方向を有する円偏光は、回転方向が一致したフィルタを透過する一方、回転方向が一致しない逆回転のフィルタは透過できない特徴を有しており、この円偏光の回転方向の違いは、専用のフィルタを所持していなければ観察できないという特徴を有する。
【0025】
本発明では、このコレステリック液晶の特徴を利用して真偽判別媒体(1)を表側から見た場合と、裏側から見た場合で、観察できる画像が変化する効果を得るため、基材が透過する偏光と、第一の画像(4a)が反射する偏光は必ず逆の関係で構成する。なお、表裏から観察した場合に画像が変化して観察される効果の詳細な説明は後述する。
【0026】
本発明において、第一の画像(4a)を形成するコレステリック液晶は、コレステリック液晶を固体化して粉砕した顔料を含んだインキを使用しても良いし、流動性のある状態のコレステリック液晶自体を直接インキとして印刷して形成しても良い。印刷方式は特に限定されるものではないが、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、凹版印刷等の一定のインキ転移量を得られる印刷方式が適している。
【0027】
一方の、図2(c)に示す第二の画像(4b)は、第一の画像(4a)を形成しているコレステリック液晶でなければ、いずれの材料で形成してもよい。赤、青、黄といった通常の着色インキに代表される物体色を有する材料を用いてもよく、透明ニスやメジウムのように物体色のない透明な材料を用いても良い。また、虹彩色パールインキのように物体色はないが、特定の構造色を呈する特殊な材料を用いても何ら問題ない。第二の画像(4b)は、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷方法によって印刷すれば良い。
【0028】
なお、第一の画像(4a)を形成しているコレステリック液晶を用いて第二の画像(4b)を形成した場合にも、本発明の最大の効果である印刷物を表側から見た場合と、裏側から見た場合で観察できる画像が変化する効果を実現することはできる。ただし、その場合は表側から見た場合に見えていた画像が、裏側から見た場合にすべて消失するという消失効果に限定されるため、望ましくない。
【0029】
以下、第二の画像(4b)を形成する具体的な材料について説明し、これと併せて、本発明の真偽判別媒体(1)を反射光と透過光で観察したときに観察される画像について説明する。まず、第一の例として、基材(2)が右回転の偏光のみを透過する特性を有し、第一の画像(4a)が、構造色が赤色で左回転の偏光を反射する性質を有するコレステリック液晶で形成され、第二の画像(4b)が、淡い緑色の通常の着色インキで形成されて成る真偽判別媒体(1)について説明する。
【0030】
図3(a)は、本発明の真偽判別媒体(1)を観察する状態を示す図であり、視点(5a)は、真偽判別媒体(1)を表側から観察する時の視点の位置を示しており、視点(5b)は、裏側から観察する時の視点の位置を示している。また、図3(a)では、真偽判別媒体(1)を観察したときの反射光を実線の矢印で示し、透過光を破線の矢印で示している。
【0031】
このとき、真偽判別媒体(1)を表側の視点(5a)から反射光下で観察した場合には、印刷画像(3)全体が観察され、第一の画像(4a)は赤色であり、第二の画像(4b)は淡い緑色で観察される(図3(b))。また、第一の画像(4a)は、正反射させながら傾けて観察した場合に、傾き角度が大きくなるにしたがって、構造色が波長の短い色相へと変化する効果が生じる。第一の画像(4a)のみに生じる、この優れた色相遷移効果を確認することでも真偽判別可能である。
【0032】
一方、真偽判別媒体(1)を裏側の視点(5b)から反射光で観察した場合には、図3(c)に示すように、印刷画像(3)のうち、第一の画像(4a)が消失し、第二の画像(4b)のみが淡い緑色で観察される。
【0033】
反射光下において真偽判別媒体(1)の第一の画像(4a)が形成された領域を表裏から観察した場合に、画像が変化する原理及び第一の画像(4a)が色相遷移効果を生じる原理について、図4を用いて説明する。図4(a)に真偽判別媒体(1)を反射光下で表側の視点(5a)から観察した場合の、右回転の偏光(6R)と左回転の偏光(6L)の光路を示し、図4(b)に真偽判別媒体(1)を反射光下で裏側の視点(5b)から観察した場合の、右回転の偏光(6R)と左回転の偏光(6L)の光路を示す。なお、図4(a)及び図4(b)では説明を明瞭にするために、入射する光があらかじめ右回転の偏光(6R)と左回転の偏光(6L)の2成分に分かれて真偽判別媒体(1)に入射していると仮定している。また、図中の偏光は斜めから真偽判別媒体(1)に入射し、観察者は斜めから真偽判別媒体(1)を観察すると仮定しているが、説明する効果や原理はこの入射角度や観察角度に限定されるのではなく、図3のように垂直に光が入射して、観察者は真偽判別媒体(1)に正対して観察した場合でも同じである。
【0034】
まず、反射光下において真偽判別媒体(1)の第一の画像(4a)が形成された領域を表側から観察した場合のそれぞれの偏光の光路と、それによって生じる効果について図4(a)を用いて説明する。入射する二つの偏光のうち、右回転の偏光(6R)は、第一の画像(4a)及び基材(2)をそのまま透過するため、観察者の視点(5a)に達することはない。一方の左回転の偏光(6L)のうち、コレステリック液晶の構造色にあたる赤色の光(6L)は第一の画像(4a)で反射され、観察者の視点(5a)に達する。このとき、左回転の偏光(6L)のうち、反射されなかった構造色の補色(6LGB)は、基材(2)によって吸収される。よって、観察者の視点(5a)まで達する光は、左回転の偏光(6L)のうちの赤色成分(6L)のみとなる。
【0035】
次に、反射光下において真偽判別媒体(1)の第一の画像(4a)が形成された領域を裏側から観察した場合のそれぞれの偏光の光路と、それによって生じる効果について図4(b)を用いて説明する。入射する二つの偏光のうち、右回転の偏光(6R)は、第一の画像(4a)及び基材(2)をそのまま透過し、観察者の視点(5b)に達することはない。一方の左回転の偏光(6L)は、基材(2)によって吸収され、観察者の視点(5b)に反射されることはない。通常では、半透明又は透明な基材の表側に印刷された模様を、裏側から観察した場合には、基材の透過性によって表側の模様が透けて見えてしまうが、本発明の構成とした場合には以上説明した原理によって、観察者の視点(5b)まで達する光には、第一の画像(4a)から反射された光は含まれず、観察者の視点(5b)からは第一の画像(4a)が完全に消失したように見える。なお、第二の画像(4b)は、通常の着色インキで形成されているため、基材(2)の透過性によって、そのまま観察される。
【0036】
以上が、反射光下において表裏から観察した場合における、画像の観察原理であり、本発明の真偽判別媒体(1)においては、消失する第一の画像(4a)と消失しない第二の画像(4b)を組み合わせることで、表裏から観察した場合に観察される画像が変化する効果を生じさせている。
【0037】
なお、従来技術では、基材(2)を黒色か、それに近い濃い色で着色しない限り、コレステリック液晶の構造色を鮮やかに出現させ、かつ傾けた場合に生じる色相遷移効果を高く保つことは難しいと考えられてきた。これは、基材が白色や特定の色相を有する場合、コレステリック液晶は構造色のみを反射する一方で、コレステリック液晶を透過した構造色の補色を基材(2)が反射してしまい、コレステリック液晶が反射した構造色と、基材(2)が反射した構造色の補色が合成されて、反射光が白色光に戻ってしまうためである。高い色相遷移効果を得るためには、基材が特定の色相の色だけを吸収するだけでは充分ではなく、角度ごとに変化するコレステリック液晶の構造色の補色のすべてを吸収するか、透過できなければならない。そのため、コレステリック液晶は黒色の基材に印刷されることが通例であった。
【0038】
しかし、本発明の真偽判別媒体(1)においては、基材がコレステリック液晶を透過した構造色の補色すべてを吸収するか、あるいは透過する特性を有し、光透過性を有するクリアな材料であるために、補色成分が反射されて観察者に達することが無い。よって、真偽判別媒体(1)の第一の画像(4a)は、極めて鮮明な構造色を呈し、かつ、傾きを変化させた場合でも優れた色相遷移効果を得ることができる。これは、本発明の優れた特徴の一つである。
【0039】
以上が、本発明の真偽判別媒体(1)を反射光下で表裏から観察した場合に生じる画像変化の原理と、第一の画像(4a)において鮮明な構造色を呈し、かつ、優れた色相遷移効果が生じる原理である。
【0040】
続いて、透過光下の観察における本発明の真偽判別媒体(1)の効果と、その効果が生じる原理について説明する。透過光下において、コレステリック液晶は反射光下で視認されていた構造色の補色を呈することが知られている。しかし、本発明の真偽判別媒体(1)において、視点(5a)及び視点(5b)から透過光下で観察した場合、第一の画像(4a)は、透過光下で視認できるはずの構造色の補色を呈さず、無色透明に変化する効果を有する。この効果と、この効果が生じる原理について、図5を用い、以下に説明する。
【0041】
真偽判別媒体(1)を透過光下で観察した場合に、第一の画像(4a)が無色透明に変化する効果は、一見しただけでは第一の画像(4a)が消失したかのように見えるため、真偽判別媒体(1)を裏側の視点(5b)から反射光下で観察した場合に生じる、画像の消失効果と混同されやすい。しかし、実際にはその効果と原理が大きく異なる。図5(a)に真偽判別媒体(1)を表側の視点(5a)から透過下で観察した場合の、右回転の偏光と左回転の偏光の光路を示し、図5(b)に真偽判別媒体(1)を裏側の視点(5b)から透過下で観察した場合の、右回転の偏光と左回転の偏光の光路を示す。なお、図5の説明において、基材(2)は右回転の偏光を透過し、第一の画像(4a)は左回転の偏光を反射する特性を有することとする。また、図5では説明を明瞭にするために、入射する光があらかじめ右回転の偏光と左回転の偏光の二成分に分かれて真偽判別媒体(1)に入射していると仮定している。
【0042】
図5(a)に示すように、透過光で真偽判別媒体(1)を表側の視点(5a)から観察した場合には、右回転の偏光(6R)は基材(2)と第一の画像(4a)を透過したのちに観察者に達する。一方、左回転の偏光(6L)は基材(2)で吸収されるため、左回転の偏光(6L)は観察者の視点(5a)には達しない。よって、図5(a)に示す例では、観察者の視点(5a)に達する光は右回転の偏光(6R)のみである。この光は、第一の画像(4a)を形成するコレステリック液晶のらせん構造とは干渉しないために構造色の補色を呈することはないものの、第一の画像(4a)を透過したのちに観察者の目に達するため、第一の画像(4a)を形成する樹脂や液晶材料の影響を受けて光の減衰が生じ、観察者には第一の画像(4a)が光の強弱によって視認される。なお、図5(b)に示す、透過光で真偽判別媒体(1)を裏側の視点(5b)から観察した場合でも、左回転の偏光(6LGB)が吸収され、右回転の偏光(6R)が第一の画像(4a)を形成する樹脂や液晶材料の影響を受けて光の減衰が生じ観察者の視点(5b)に達することから同様な効果が生まれる。
【0043】
以上のことから、透過光下の観察において、第一の画像(4a)は、反射光下で裏側から観察する場合のように完全に画像が消失するのではなく、第一の画像(4a)の色彩のみが失われ、画像の形状や輪郭は透過光の強弱によって視認できる。このように、特定の構造色を有するコレステリック液晶が透過光下で無色透明に変化する効果は極めて特異であり、透過光を用いた真偽判別方法として有効であって、本発明の優れた特徴のひとつであるといえる。
【0044】
続いて、第二の例について説明する。第二の例は、第一の例に対して、反射光下で所定の観察角度から観察した場合に、第二の画像(4b)が第一の画像(4a)と等色の赤色の着色インキで形成される点が異なる。なお、本発明において、反射光下の観察において、第二の画像(4b)が第一の画像(4a)と等色で観察される際の「特定の観察角度」とは、基材(2)に対して、鉛直方向から観察する角度のことである。
【0045】
このとき、真偽判別媒体(1)を表側の視点(5a)から反射光下で観察した場合には、印刷画像(3)全体がすべて同じ赤色で観察される。一方、真偽判別媒体(1)を裏側の視点(5b)から反射光で観察した場合には、第一の例の観察原理と同様に、印刷画像(3)のうち、第一の画像(4a)が消失し、第二の画像(4b)のみが赤色で観察される。この場合、印刷画像(3)が一色で構成されていることから、観察者が表側の視点(5a)から真偽判別媒体(1)を反射光下の特定の角度で観察しただけでは第一の画像(4a)と第二の画像(4b)が異なる材料で形成されていることを予想することは困難であるが、裏側の視点(5b)から反射光下で観察した場合に第一の画像(4a)のみが消失する効果が発現し、観察者により強いインパクトを与えることができる。また、前述した例と同様に第一の画像(4a)は、正反射させながら傾けて観察した場合に、傾き角度が大きくなるにしたがって、色相遷移効果が生じることから、その色相変化を確認することでも真偽判別が可能である。
【0046】
また、第二の画像(4b)は、第一の画像(4a)を形成するコレステリック液晶と逆回転の偏光を反射する性質を有するコレステリック液晶で形成しても良い。この場合、第一の画像(4a)を形成するのと同様に、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、凹版印刷等の印刷方式が適している。これを第三の例として、基材(2)が右回転の偏光のみを透過する特性を有し、第一の画像(4a)が、構造色が赤色で左回転の偏光を反射する性質を有するコレステリック液晶で形成され、第二の画像(4b)が、第一の画像(4a)と逆回転の右回転の偏光を反射する性質を有する、構造色が赤色のコレステリック液晶で形成されて成る真偽判別媒体(1)について説明する。
【0047】
このとき、真偽判別媒体(1)を表側の視点(5a)から反射光で観察した場合には印刷画像(3)全体が赤色で観察される。一方、真偽判別媒体(1)を裏側の視点(5b)から反射光で観察した場合には、印刷画像(3)のうち、第一の画像(4a)が消失し、第二の画像(4b)のみが赤色で観察される。なお、第二の画像(4b)が観察される原理は、基材(2)を透過した右回転の偏光(6R)が、第二の画像(4b)によって反射され、第二の画像(4b)によって反射された光が、再び基材(2)を透過し観察者の視点(5b)に達することによるものである。これまで説明した二つの例では、真偽判別媒体(1)を正反射させながら傾けた場合には、第一の画像(4a)のみ色相変化が生じていたが、本例では第二の画像(4b)も第一の画像(4a)と全く同じ色相変化が生じる。液晶のらせんピッチが同じ右回転と左回転の一対のコレステリック液晶は、反射光下のいかなる角度で観察した場合でも、完全な等色関係が成り立つことから、表側の視点(5a)から観察しただけでは、第一の画像(4a)と第二の画像(4b)が異なる材料で形成されていることを予想することは不可能である。第一の画像(4a)と第二の画像(4b)を、回転方向のみが異なる同じ構造色のコレステリック液晶で形成する本例は、反射光下で第一の画像(4a)と第二の画像(4b)が同じ色で観察され、かつ、傾けたときの色相変化も同じであるために、第一の画像(4a)と第二の画像(4b)がそれぞれ異なる材料で形成されていることを事前に察知することが困難であり、それゆえ裏側から観察したときに、第一の画像(4a)が消失して観察されるインパクトは非常に大きい。よって、本例は、本発明の中でも最も優れた形態であると言える。
【0048】
なお、第二の画像(4b)が、基材(2)が透過する回転と同じ円偏光を反射するコレステリック液晶で形成された真偽判別媒体(1)を、透過光下で観察した場合には、表側の視点(5a)及び裏側の視点(5b)のいずれから観察した場合でも反射光下で有していた構造色の補色が視認される。加えて、透過光下で光が垂直に入射する状態から、徐々に傾けて観察した場合には、色相が徐々に変化する。
【0049】
以上のように、本発明の真偽判別媒体(1)は、反射光下で正反射させながら角度をかえて観察した場合に、第一の画像(4a)が呈する鮮やかな色相遷移効果を認証する第一の効果と、透過光下で第一の画像(4a)が無色透明に変化する効果を認証する第二の効果と、表側の視点(5a)から見た場合と、裏側の視点(5b)から見た場合で観察できる画像が変化する第三の効果を少なくとも備えており、その三つの効果のいずれも道具を必要とすることなく、裸眼で確認できることから真偽判別性に優れる。
【0050】
本発明の真偽判別媒体(1)は、単体で用いることが可能であるだけでなく、銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券、商品券等の貴重印刷物の一部に積層し、一体化して使用することができる。このような貴重印刷物の構成について図6を用いて説明する。
【0051】
図6は、例として商品券の形態の貴重印刷物(8)を示しており、図6(a)はその平面図、図6(b)は、図6(a)のX−X’線における断面図を示している。図6(a)に示す貴重印刷物(8)には、額面(11)が設けられているが、その他の模様、図柄が形成される構成でも良い。また、偽造防止対策として、スレッド、ホログラム、紫外赤外発光インキ、複写防止画線等が施される構成でも良い。
【0052】
貴重印刷物(8)を構成する基材(9)は、紙、フィルム、プラスチックが用いられる。なお、貴重印刷物を構成する基材(21)は、透明でも良いし、不透明であっても良い。このような貴重印刷物を構成する基材(9)の一部に、あらかじめ基材(9)を除去した窓あき部(10)を形成しておく。本発明において、窓あき部(10)とは、貴重印刷物を構成する基材(9)を貫通する穴のことであり、図6(a)では、窓あき部(10)の範囲を破線で図示している。窓あき部(10)を形成する範囲は、図6(a)に示すように、真偽判別媒体(1)に形成される印刷画像(3)の範囲より大きく形成しておく必要がある。窓あき部(10)を形成する方法としては、型抜き加工、レーザー加工を用いることができる。
【0053】
そして、図6(b)に示すように、窓あき部(10)を覆うように、真偽判別媒体(1)が積層されることで、一体型の貴重印刷物(8)が形成される。このとき、真偽判別媒体(1)に形成される印刷画像(3)が窓あき部(10)の範囲内に位置するようにして積層される。真偽判別媒体(1)を積層する手段は、接着剤によって貴重印刷物を構成する基材(9)に直接貼り付ける又はラミネートフィルムで真偽判別媒体(1)を覆うようにして接着することができる。
【0054】
このようにして作製された貴重印刷物(8)は、窓あき部(10)を設けることによって、真偽判別媒体(1)の表側と裏側の観察が可能であり、画像が変化する効果が得られる。
【0055】
また、貴重印刷物(8)を構成する基材(9)に、透明なフィルム、プラスチックを用いる場合、真偽判別媒体(1)を直接貼り付けても良い。
【0056】
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した真偽判別媒体の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
実施例1は、真偽判別媒体(1)を右回転の円偏光を透過する基材(2)で形成し、第一の画像を左回転のコレステリック液晶で、第二の画像を第一の画像と等色の通常の着色インキで形成した例である。
【0058】
図面は実施の形態で用いた図1から図3を用いて説明する。実施例1において基材(2)は、右回転の偏光を透過する性質を有する円偏光フィルタを用いた。基材(2)は、わずかに黒味を帯びているが、充分な光透過性を有する透明な材質であり、一見してフィルタであるとは判断できない。基材(2)に対して、緑色の構造色を呈する左回転のコレステリック液晶を用いて、図2(b)に示す第一の画像(4a)をUV乾燥方式のフレキソ印刷方式で形成した。また、表1に示す配合の淡い緑色のフレキソインキを用いて、図2(c)に示す第一の画像(4a)と等色の第二の画像(4b)を、第一の画像(4a)と同様にフレキソ印刷方式で印刷して印刷画像(3)を形成し、真偽判別媒体(1)とした。
【0059】
【表1】

【0060】
実施例1の効果について図3を用いて説明する。真偽判別媒体(1)を表側の視点(5a)から反射光下で観察した場合、図3(b)に示すように、緑色の印刷画像(3)が観察された。また、真偽判別媒体(1)を正反射させて徐々に傾けた場合、第一の画像(4a)のみが、緑色から青色へと徐々に色相が変化する色相遷移効果を示した。また、真偽判別媒体(1)を裏側の視点(5b)から反射光下で観察した場合、図3(c)に示すように、第二の画像(4b)のみが緑色で観察された。加えて、真偽判別媒体(1)を透過光下で観察した場合には、第一の画像(4a)から構造色が失われ、無色透明に変化することが確認できた。以上のように、第一の画像(4a)の色相遷移効果と、表側から見た画像と裏側から見た画像が異なる効果を確認することができた。
【0061】
(実施例2)
実施例2は、真偽判別媒体(1)を右回転の円偏光を透過する基材(2)で形成し、第一の画像を左回転のコレステリック液晶で、第二の画像を右回転のコレステリック液晶で形成した例である。
【0062】
図面は実施の形態で用いた図1から図3を用いて説明する。実施例2において基材(2)は、実施例1と同様に右回転の偏光を透過する性質を有する円偏光フィルタを用いた。基材(2)に対して、構造色が赤色の左回転のコレステリック液晶を用いて、図2(b)に示す第一の画像(4a)をUV乾燥方式のフレキソ印刷方式で形成した。また、構造色が赤色で、かつ第一の画像(4a)を形成した左回転のコレステリック液晶と対を成す、右回転のコレステリック液晶を用いて、図2(c)に示す第一の画像(4a)と等色の第二の画像(4b)を、第一の画像(4a)と同様にフレキソ印刷方式で印刷して印刷画像(3)を形成し、真偽判別媒体(1)とした。
【0063】
実施例の効果について図3を用いて説明する。真偽判別媒体(1)を表側の視点(5a)から反射光下で観察した場合、図3(b)に示すように、赤色の印刷画像(3)が観察された。また、真偽判別媒体(1)を正反射させて徐々に傾けた場合、第一の画像(4a)および第二の画像(4b)のいずれもが、赤色から黄色、緑色、青色へと徐々に色相が変化する色相遷移効果を示した。また、真偽判別媒体(1)を裏側の視点(5b)から反射光下で観察した場合、図3(c)に示すように、第二の画像(4b)のみが赤色で観察された。加えて、真偽判別媒体(1)を透過光下で観察した場合には、第一の画像(4a)から構造色が失われ、無色透明に変化し、一方の第二の画像(4b)は赤色の補色である青緑色(シアン)に変化することが確認できた。以上のように、第一の画像(4a)及び第二の画像(4b)の色相遷移効果と、表側から見た画像と裏側から見た画像が異なる効果を確認することができた。
【0064】
(実施例3)
実施例3は、真偽判別媒体(1´)を左回転の偏光を透過する基材(2´)で形成し、第一の画像を右回転のコレステリック液晶で、第二の画像を左回転のコレステリック液晶で形成し、第三の画像を通常の着色インキで形成した例である。
【0065】
図面は図7から図9を用いて説明する。実施例3において基材(2´)は、左回転の偏光を透過する性質を有する円偏光フィルタを用いた。基材(2´)に対して、構造色が緑色の右回転のコレステリック液晶を用いて、図8(b)に示す第一の画像(4a´)をUV乾燥方式のフレキソ印刷方式で形成した。また、構造色が緑色の左回転のコレステリック液晶を用いて、図8(c)に示す第一の画像(4a´)と等色の第二の画像(4b´)を、第一の画像(4a´)と同様にフレキソ印刷方式で形成した。最後に、表2に示す配合の通常の淡い赤色のフレキソインキを用いて、図8(d)に示す桜の花びらを現した第三の画像(4c´)を印刷して印刷画像(3´)を形成し、真偽判別媒体(1´)とした。
【0066】
【表2】

【0067】
第一の画像(4a´)は、ミラー反転させたアルファベットの「NP」の文字をネガで表現した図柄であり、一方の第二の画像(4b´)は、ミラー反転させたアルファベットの「NP」の文字をポジで表現した図柄であり、第一の画像(4a´)と第二の画像(4b´)を組み合わせると単なるベタとなり、ミラー反転させた「NP」の文字が隠蔽される構成となっている。
【0068】
実施例3の効果について図9を用いて説明する。真偽判別媒体(1´)を表側の視点(5a´)から反射光下で観察した場合、図9(b)に示すように、印刷画像(3´)は、緑色のベタ模様の上に赤い桜の花びらが観察された。また、真偽判別媒体(1´)を正反射させて徐々に傾けた場合、第一の画像(4a´)及び第二の画像(4b´)のいずれもがコレステリック液晶であることから、背景全体が緑色から青色へと徐々に色相が変化する色相遷移効果を示した。また、真偽判別媒体(1´)を裏側の視点(5b´)から反射光下で観察した場合、図9(c)に示すように、第二の画像(4b´)が緑色で観察され、そのバックにやや弱い赤色で第三の画像(4c´)である桜の花びらが重なって観察された。加えて、真偽判別媒体(1´)を透過光下で観察した場合には、第一の画像(4a´)から構造色が失われ、無色透明に変化し、一方の第二の画像(4b´)は緑色の補色である赤色に変化することが確認できた。以上のように、第一の画像(4a´)及び第二の画像(4b´)の色相遷移効果と、表側から見た画像と裏側から見た画像が異なる効果を確認することができた。実施例3においては、表側から反射光下で観察した場合に、印刷画像(3´)の中に第一の画像(4a´)が完全に隠蔽されていることから、裏側から観察して第二の画像(4b´)の出現を確認したときのインパクトが大きい。
【符号の説明】
【0069】
1、1´ 真偽判別媒体
2、2´ 基材
3、3´ 印刷画像
4a、4a´ 第一の画像
4b、4b´ 第二の画像
4c´ 第三の画像
5a、5b、5a´、5b´ 観察者の視点
6L 左回転の偏光
6R 右回転の偏光
6L 左回転の偏光の構造色(R成分)
6LGB 左回転の偏光の構造色の補色(GB成分)
8 貴重印刷物
9 貴重印刷物を構成する基材
10 窓あき部
11 額面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右回転又は左回転の円偏光のいずれか一方を透過する機能を有する透明又は半透明の基材の表側に、第一の画像及び第二の画像を少なくとも有する印刷画像を備え、前記第一の画像は、前記基材を透過する円偏光と逆回転の円偏光のみを反射するコレステリック液晶から成り、前記第二の画像は、前記基材を透過する円偏光と逆回転の円偏光のみを反射する特性を有さない材料から成り、前記基材を表側から反射光下で観察した場合に対して、前記基材を裏側から反射光下で観察した場合及び前記基材を表裏から透過光下で観察した場合とで、観察できる画像が異なることを特徴とする真偽判別媒体。
【請求項2】
前記第一の画像と前記第二の画像が、前記表側から反射光下で所定の角度から観察した場合に等色の色彩であることを特徴とする請求項1記載の真偽判別媒体。
【請求項3】
前記第二の画像が、前記基材を透過する円偏光と同じ回転の円偏光を反射するコレステリック液晶材料から成ることを特徴とする請求項2に記載の真偽判別媒体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の真偽判別媒体が、前記真偽判別媒体を構成する基材とは異なる基材の一部に設けられた窓あき部を覆うように積層されて成ることを特徴とする貴重印刷物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−8113(P2013−8113A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138995(P2011−138995)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】