説明

真偽判定体

【課題】 特殊な読取り機を使用することなく、目視により簡単に真偽判定を行なうことができ、複雑な製造工程を使用せず、偽造することができない真偽判定体を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の真偽判定体は、2層以上の複数層の着色層を有する微粒子を含有するものであり、その着色層は、3層〜15層の複数層の構成をとり、またその複数層が互いに異なる色相で着色されたものであることが好ましく、またその微粒子の大きさが、平均粒径で3〜60μmであるものが好ましく用いられる。このように本発明では、2層以上の複数層の着色層を有する微粒子が、極めて微細な粒子であり、かつ1層毎に着色層が積層された多層構成であり、また着色層において複数層が互いに異なる色相で着色された構成をとるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種カード、商品券、証券、等の物品において、真偽判定を確実に行なうことができる真偽判定体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、チケット、プリペードカード、IDカード、商品券、証券、等の物品における偽造防止対策として、マイクロ文字、万線模様、等の高度な印刷を行なう、蛍光インキ、色彩可変インキ、等の特殊インキで印刷を行なう、ホログラムを貼り付ける、強磁性体を付与する等のことが行なわれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、見る角度によって選択反射性を有し色彩変化を生じるコレスティック液晶層を設けた真偽判定体が提案されている。また、特許文献2には、微細な文字・ロゴ・マーク等の識別情報が記録された回折格子片が媒質に混入された偽造防止用媒質が開示されている。さらに、特許文献3には、基材上に磁気層を設け、さらに磁気層の上に、見る角度によって色相が変わる色相変化インキ層を設けた磁気カードが提案されている。
【0004】
しかしながら、上記の従来から知られている偽造防止対策は、一見して偽造することが容易ではないものを作成したり、目視では判読できないが、一定の読取り機により、判読するものであり、その偽造防止された媒体に使用された材料は比較的簡単に入手することができてしまう。したがって、その媒体に使用された材料を利用して、媒体が偽造されてしまうという問題がある。
【0005】
また、上記の偽造防止された媒体を製造する際に、製造工程が複雑であったり、また読取り機が特殊なもので、汎用的ではないという問題もある。
【特許文献1】特開2004−50596号公報
【特許文献2】特開2004−198507号公報
【特許文献3】特開平8−324169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、特殊な読取り機を使用することなく、目視により簡単に真偽判定を行なうことができ、複雑な製造工程を使用せず、偽造することができない真偽判定体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の発明は、2層以上の複数層の着色層を有する微粒子を含有することを特徴とする真偽判定体である。請求項2の発明は、請求項1に記載の微粒子の着色層は、3層〜15層の複数層であることを特徴とする真偽判定体である。請求項3の発明は、請求項1または2に記載の微粒子の着色層で、複数層が互いに異なる色相で着色されたものであることを特徴とする。請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の微粒子は、平均粒径が3〜60μmであることを特徴とする真偽判定体である。請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の微粒子が、磁気を帯びた着色層、蛍光性を有する着色層の少なくとも1つを有することを特徴とする真偽判定体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の真偽判定体は、2層以上の複数層の着色層を有する微粒子を含有するものであり、その着色層は、3層〜15層の複数層の構成をとり、またその複数層が互いに異なる色相で着色されたものであることが好ましく、またその微粒子の大きさが、平均粒径で3〜60μmであるものが好ましく用いられる。このように本発明では、2層以上の複数層の着色層を有する微粒子が、極めて微細な粒子であり、かつ1層毎に着色層が積層された多層構成であり、また着色層において複数層が互いに異なる色相で着色された構成をとるものである。これにより、本発明の真偽判定体は、特殊な読取り機を使用することなく、ルーペ、顕微鏡等で、拡大して目視観察により簡単に真偽判定を行なうことができ、また上記の特定した微粒子を含有させるだけで、複雑な製造工程を使用しなくても、偽造することができない真偽判定体を得ることができた。但し、上記の微粒子は、認証された人のみが、入手できる唯一のものであり、他人が入手できるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の真偽判定体について詳細に説明する。
(実施形態)
図1に本発明の真偽判定体で含有する2層以上の複数層の着色層を有する微粒子の一例を示す。図示した微粒子は、2A、2B、・・、2Jの10層の複数層からなる着色層2を有する微粒子1であり、2A、2B、・・、2Jの各層が1層毎にこの順に積層された多層構成をとっている。2A、2B、・・、2Jの各層は、厚さが1μm〜5μm程度のものである。2A、2B、・・、2Jの着色層2の各層は、例えば、2Aが金色、2Bが黒色、2Cが茶色、2Dが赤色、2Eが橙色、2Fが黄色、2Gが緑色、2Hが青色、2Iが紫色、2Jが灰色の各色相を有したものが挙げられる。上記の示した微粒子1は、10層の複数層からなる着色層2を示したが、着色層は2層以上あれば良く、また色相も図示したものに限らず、適宜変更することができる。尚、実用上は、着色層は3層〜15層の構成を有する微粒子が好ましい。
【0010】
このように微粒子の着色層は、一つの微粒子単位で、複数層が互いに異なる色相で着色された構成をとることが好ましい。そして、このような微粒子は、複数層の着色層の順次積層された構成で、その積層される色相の順序や色相自体、また積層される数を変化させたりして、一つの真偽判定体で使用する微粒子において、唯一の種類のものに限定させ、他の真偽判定体で使用する微粒子とは異なる積層の色相、色相順序や、異なる積層の数にする。これによって、本発明における真偽判定体は、偽造することができないものとなる。また、1つの真偽判定体において、着色層の異なる色相の微粒子や、色相順序の異なる微粒子や、着色層の積層数の異なる微粒子を2種類以上組み合わせて使用することで、より以上に偽造防止性を高めることができる。
【0011】
本発明の真偽判定体で使用する微粒子は、その大きさとして平均粒径が3〜60μmのものが好ましい。本発明における上記の平均粒径の測定方法として、レーザー回折/散乱式粒度測定装置(例えば、堀場製作所社製、LA−920型)、動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所社製、LB−500型)、或いはコールターカウンター(例えば、コールターエレクトロニクス社製、MA−II型)等を粒子径の範囲に応じて、適宜適用することにより測定される。
【0012】
また本発明で使用する微粒子は、2層以上の複数層の着色層を有する微粒子であるが、着色層として、図1で示したような色相のものだけでなく、磁気を帯びた着色層や、蛍光性を有する着色層を利用することができる。磁気を帯びた着色層は、磁性体粉末を分散させて形成することができ、その磁性体材料の高保持力材料としては、BaFe12O13、γ−Fe2O3、Co−γ−Fe2O3、Fe3O4等があり、また低保磁力材料としては、センダスト合金、Ni−Znフェライト、Mn−Znフェライト、Mo−パーマロイ粉等があり、高保持力材料、低保持力材料のいずれのものでも使用できる。また、その磁性体のみ、あるいは磁性体とカーボンブラック等の着色剤を併用して、着色層を構成することができる。
【0013】
また、蛍光性を有する着色層は、光の刺激を受けて蛍光を発光する材料を使用する。その蛍光発光材料としては、受光時に発光する狭義の蛍光と、光を蓄えて刺激停止後に発光する燐光とがあり、本発明ではいずれのものでも使用できる。有機蛍光材料は狭義の蛍光、無機蛍光材料は蓄光に属するものが多い。ルモゲンLイエロー、ルモゲンブリリアントイエロー、ルモゲンブリリアントグリーンは、ブラックライトの紫外線を受けて、黄色ないし緑色の蛍光を発光する有機蛍光材料として知られている。また無機蛍光材料としては、ZnS:Cu(緑)、(Zn,Cd)S:Cu(黄)、CaS:Bi(青)、(Zn,Cd)S:Cu(橙)、(Zn,Cd)S:Cu(赤)等を使用することができる。上記の蛍光性を有する着色層を1層以上と、磁性を帯びた着色層を1層以上を組み合わせて、1つの微粒子単位に積層させて、より偽造防止性を高めることができる。また、本発明の微粒子は、着色層として、赤外線照射により発光する材料や、赤外線の透過材料等、偽造防止として従来から使用されている材料を用いることも可能である。
【0014】
本発明の真偽判定体は、2層以上の複数層の着色層を有する微粒子を含有するものであり、その微粒子の含有する実施形態を図を参照して、以下に説明する。図2では、真偽判定体3が、基材4から構成されたもので、その基材4が紙からなるものであれば、紙を抄造する際に、パルプ原料と上記の微粒子を混合させて基材を製造することができ、紙基材中に、微粒子を分散させることができる。また、使用する基材がプラスチック材料である場合は、例えば、そのプラスチック材料中に微粒子を混合させて、押出し成形、射出成形等のプラスチック成形加工を施して製造することができる。
【0015】
また、図3に示す真偽判定体3は、基材4上に、上記の微粒子を含有する印刷層5が設けられた形態である。その印刷層は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、オフセット印刷法等の形成手段により、その印刷法に適するように、微粒子を含有した印刷インキを調整して、その印刷インキを用いて、印刷して形成することができる。また、印刷層は、基材の表面に、全面均一に形成したり、パターンで形成したりすることができる。
【0016】
また、本発明の真偽判定体は、基材自体に2層以上の複数層の着色層を有する微粒子を含有したり、またその微粒子を含有する印刷層の形成された形態等が挙げられるが、それらの形態に、ホログラム(回折格子)、ICチップ等の従来から偽造防止として使用されている加工を追加して設けることができる。
【0017】
上記の説明では、本発明の真偽判定体は、ルーペ等で、拡大して目視観察して、着色層を読取って、簡単に真偽判定を行なうものであったが、これに限らず、例えば、着色層の色相と色相の順序を検出できる読取り機により、登録された真正品の色相と色相の順序と比較して、真偽判定を行なうことも可能である。
また着色層の磁性体成分を検出できる読取り機(磁気センサー)により、一定レベル以上の磁性体成分の検出の有無により、真偽判定を行なったり、また着色層の蛍光材料、赤外線吸収剤等を紫外線や赤外線照射により、蛍光発光レベルや特定波長光の反射レベルの検出有無により、真偽判定を行なうことも可能である。
【0018】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0019】
次に、実施例を挙げて、本発明についてさらに具体的に説明する。
なお、以下、「部」又は「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
(実施例1)
図1に示す10層からなる着色層を有する微粒子をインキ(メジウムインキ等)に分散し、スクリーン印刷用インキやオフセット印刷用インキ、グラビア印刷用インキとした。
【0020】
(実施例2)
実施例1で調整したインキを紙、フィルム、布等の基材に印刷し、ルーペで拡大し観察すると、各着色層の色相を確認することが出来た。
【0021】
(実施例3)
紙、フィルム、布等の基材の表面にホログラムが部分的に形成されたものを用意し、該基材のホログラムの表面、又は基材とホログラム形成層の間に、実施例1で調整したインキを印刷した。
【0022】
(実施例4)
ホログラム形成層と反射層からなるホログラムにおいて、ホログラムの反射層をパターン化したホログラムの表面、又は基材とホログラムの間に、実施例1で調整したインキを印刷した。
【0023】
(実施例5)
ホログラム形成層とコレスティック液晶層を備えたホログラムの表面、又は基材とホログラムの間に、実施例1で調整したインキを印刷した。
【0024】
上記の実施例2〜5で作製した真偽判定体は、全て特殊な読取り機を使用することなく、ルーペ、顕微鏡等で、拡大して目視観察により簡単に真偽判定を行なうことができ、また上記の特定した微粒子を含有させるだけで、複雑な製造工程を使用せず、偽造することができない真偽判定体を得ることができた。但し、上記の微粒子は、認証された人のみが、入手できる唯一のものであり、他人が入手できるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の真偽判定体で含有する2層以上の複数層の着色層を有する微粒子の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の真偽判定体の微粒子を含有する一つの実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明の真偽判定体の微粒子を含有する他の実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0026】
1 … 微粒子
2 … 着色層
3 … 真偽判定体
4 … 基材
5 … 印刷層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の複数層の着色層を有する微粒子を含有することを特徴とする真偽判定体。
【請求項2】
前記の微粒子の着色層は、3層〜15層の複数層であることを特徴とする請求項1に記載する真偽判定体。
【請求項3】
前記の微粒子の着色層で、複数層が互いに異なる色相で着色されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載する真偽判定体。
【請求項4】
前記の微粒子は、平均粒径が3〜60μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の真偽判定体。
【請求項5】
前記の微粒子が、磁気を帯びた着色層、蛍光性を有する着色層の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の真偽判定体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−173862(P2008−173862A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9564(P2007−9564)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】