説明

真偽判定可能な記録媒体

【課題】 偽造防止性が不十分である点、また情報の記録媒体として、記録部が目立たなく、判読しにくい点を改良した真偽判定可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【解決手段】 基材2の一方の面に、少なくとも感熱破壊層4、コレステリック液晶層5を、この順に積層した真偽判定可能な記録媒体1において、該感熱破壊層4と基材2との間に、あるいは該基材2の他方の面に、黒色層3を設ける構成とすることにより、優れた偽造防止性を有し、感熱破壊されていない非記録部10と感熱破壊による記録部9とのコントラストが高いので、結果として記録部9は目立ち、判読しやすいものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止性が不十分であること、また情報の記録媒体として、記録部が目立たなく、判読しにくいことを改良した真偽判定可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、経済的に価値の高い高額商品や、ID(Identification;照合一致)手段として用いると高い価値を生じるクレジットカードや、トラベラーズチェック、または金券類等には、それらの真偽性を判定するのに適したホログラム(ラベル)を付与させて、偽造を防止して、真正物として証明することが行われている。しかし、最近では、目視では本物と区別がつかないようなホログラムの製造が行われて、真正性を証明する新規なものが要求されている。
【0003】
偽造防止対策として、例えば、特許文献1にあるように、対象物の真正性を識別するべく対象物に設けられる識別媒体として、入射した光のうち、左回り偏光又は右回り偏光のいずれか一方の光のみを反射する光選択反射層として、コレステリック液晶インキにより印刷して、その光選択反射層を形成することが記載されている。偽造防止の対策として、上記の方法で改善はされたものの、高分子コレステリック液晶の材料を入手すれば、偽造することは不可能ではなく、未だ十分に偽造防止の方法として、満足できるものとは言えないものである。
【0004】
特許文献2には、加熱により光の透過率もしくは反射率が変化する薄膜層、および見る角度により異なる色を与える色変化層の少なくとも二つの層が積層していることを特徴とする真偽判定用媒体が提案されている。この色変化層として、コレステリック液晶層が提示されている。そして、配向膜や、位相差層と組み合わせることが記載されている。しかし、上記の真偽判定用媒体は、ホログラムを利用した媒体に代わるものであるが、上記薄膜層を除去して記録されるが、その記録部はコントラストが低く、判読しにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−25373号公報
【特許文献2】特開2006−58356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は上記に挙げた課題である、偽造防止性が不十分であること、また情報の記録媒体として、記録部が目立たなく、判読しにくいことを改良した真偽判定可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、請求項1として、基材の一方の面に、少なくとも感熱破壊層、コレステリック液晶層を、この順に積層した真偽判定可能な記録媒体において、該感熱破壊層と基材との間に、あるいは該基材の他方の面に、黒色層を設けたことを特徴とする真偽判定可能な記録媒体を構成とする。これにより、上記課題を解決することができた。
【0008】
また、請求項2として、請求項1に記載する真偽判定可能な記録媒体において、感熱破壊層とコレステリック液晶層との間に、配向膜を設けたことを特徴とする真偽判定可能な記録媒体を構成とする。これにより、コレステリック液晶層をより鮮やかに観察できる。また、請求項3として、請求項1又は2に記載する真偽判定可能な記録媒体において、感熱破壊層の基材側で、接するように、感熱増感層を設けたことを特徴とする真偽判定可能な記録媒体を構成とする。これにより、情報記録における感熱破壊の際、感熱破壊層の熱破壊の感度が高くなり、より鮮明な記録が行なえた。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記の構成の基材の一方の面に、少なくとも感熱破壊層、コレステリック液晶層を、この順に積層した真偽判定可能な記録媒体において、該感熱破壊層と基材との間に、あるいは該基材の他方の面に、黒色層を設ける構成とすることにより、優れた偽造防止性を有し、感熱破壊されていない非記録部と感熱破壊による記録部とのコントラストが高いので、結果として記録部は目立ち、判読しやすいものである。
【0010】
また、上記構成の真偽判定可能な記録媒体において、感熱破壊層とコレステリック液晶層との間に、配向膜を設けることにより、記録部の輝度、色度、およびコントラストが高く、より偽造防止性及び記録部の鮮明性が高まる。また、上記構成の真偽判定可能な記録媒体において、感熱破壊層の基材側で、接するように、感熱増感層を設けることにより、サーマルヘッドや、レーザー照射等の加熱手段により、感熱破壊層の熱破壊をしやすくして、加熱による情報記録の感度を高めることができ、鮮明な記録が行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の真偽判定可能な記録媒体の一つの実施形態を示す概略の断面図である。
【図2】本発明の真偽判定可能な記録媒体の他の実施形態を示す概略の断面図である。
【図3】本発明の真偽判定可能な記録媒体の他の実施形態を示す概略の断面図である。
【図4】本発明の真偽判定可能な記録媒体の他の実施形態を示す概略の断面図である。
【図5】本発明の真偽判定可能な記録媒体の他の実施形態を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の真偽判定可能な記録媒体の一つの実施形態を示す概略の断面図である。図1(1)は、感熱破壊層の記録前の状態を示し、図1(2)は、図1(1)のものが、感熱破壊層の記録後の状態を示したものである。基材2の一方の面に、黒色層3、感熱破壊層4、コレステリック液晶層5を、順に積層した真偽判定可能な記録媒体1である。真偽判定可能な記録媒体1の感熱破壊層4が、情報に応じて、加熱され、破壊されて、記録部9が形成される。それに対し、感熱破壊層4の加熱されていない部分が、非記録部10として、破壊されないで、感熱破壊層4として残存している。したがって、記録後の真偽判定可能な記録媒体1では、記録部9は、コレステリック液晶層5の下に、背景として黒色層が観察できる。そして、非記録部10は、記録前の記録媒体の状態と変わらずに、コレステリック液晶層5の下に感熱破壊層5の金属色が観察されるのみで、黒色層は全く見えない状態である。したがって、記録部9と非記録部10とは、両者ともコレステリック液晶層5を観察できるが、このコレステリック液晶層に対して、記録部では黒色の背景があり、非記録部では感熱破壊層の金属色の背景があり、その黒色と、金属色との色相の違いで、コントラストが高く、結果として記録部は目立ち、判読しやすいものである。すなわち、非記録部では感熱破壊層の金属色の部分で反射が生じ、記録部では下に位置する黒色層で光が吸収され、黒色の背景として認識される。
【0013】
また、図2は、本発明の真偽判定可能な記録媒体の他の実施形態を示す概略の断面図であり、基材2の一方の面に、感熱破壊層4、コレステリック液晶層5を順に積層し、該基材2の他方の面に、黒色層3を設けた構成の真偽判定可能な記録媒体1である。この場合も、図1の場合と同様に、図2(1)は、感熱破壊層の記録前の状態を示し、図2(2)は、図2(1)のものが、感熱破壊層の記録後の状態を示したものである。図2(2)に示すように、記録後の真偽判定可能な記録媒体1では、記録部9は、コレステリック液晶層5の下に、透明性を有する基材2を介し、背景として黒色層3が観察できる。そして、非記録部10は、記録前の記録媒体の状態と変わらずに、コレステリック液晶層5の下に感熱破壊層5の金属色が観察されるのみで、黒色層は全く見えない状態である。したがって、記録部9と非記録部10とは、両者ともコレステリック液晶層5を観察できるが、このコレステリック液晶層に対して、記録部では黒色の背景があり、非記録部では感熱破壊層の金属色の背景があり、その黒色と、金属色との色相の違いで、コントラストが高く、結果として記録部は目立ち、判読しやすいものである。
【0014】
図3は、本発明の真偽判定可能な記録媒体の他の実施形態を示す概略の断面図であり、基材2の一方の面に、黒色層3、感熱破壊層4、配向膜6、コレステリック液晶層5を順に積層した真偽判定可能な記録媒体1である。この場合も、図1の場合と同様に、図3(1)は、感熱破壊層の記録前の状態を示し、図3(2)は、図3(1)のものが、感熱破壊層の記録後の状態を示したものである。図3では、図1に示す記録媒体に、感熱破壊層4とコレステリック液晶層5との間に、配向膜6を設けたもので、コレステリック液晶層をより鮮やかに観察でき、結果的に記録部の輝度、色度、およびコントラストを高くすることができる。
【0015】
また、図4は、本発明の真偽判定可能な記録媒体の他の実施形態を示す概略の断面図であり、基材2の一方の面に、感熱破壊層4、配向膜6、コレステリック液晶層5を順に積層し、該基材2の他方の面に、黒色層3を設けた構成の真偽判定可能な記録媒体1である。この場合も、図1の場合と同様に、図4(1)は、感熱破壊層の記録前の状態を示し、図4(2)は、図4(1)のものが、感熱破壊層の記録後の状態を示したものである。図4では、図2に示す記録媒体に、感熱破壊層4とコレステリック液晶層5との間に、配向膜6を設けたもので、コレステリック液晶層をより鮮やかに観察でき、結果的に記録部の輝度、色度、およびコントラストを高くすることができる。
【0016】
図5は、本発明の真偽判定可能な記録媒体の他の実施形態を示す概略の断面図であり、基材2の一方の面に、黒色層3、感熱増感層7、感熱破壊層4、配向膜6、コレステリック液晶層5、保護層8を順に積層した真偽判定可能な記録媒体1である。この場合も、図1の場合と同様に、図5(1)は、感熱破壊層の記録前の状態を示し、図5(2)は、図5(1)のものが、感熱破壊層の記録後の状態を示したものである。図5では、図3に示す記録媒体に、黒色層3と感熱破壊層4との間に、感熱増感層7を設け、さらにコレステリック液晶層5の上に、保護層8を設けたもので、感熱破壊層の熱破壊が容易に生じて、加熱による情報記録の感度が高く、また記録媒体の最表面に保護層があるので、取扱いで、耐久性が高くなる。図1〜5で示したものに限らず、例えば、図1〜4で、コレステリック液晶層の上で、記録媒体の最表面の位置に、保護層を追加する、あるいは同様に、感熱破壊層の基材側で、接するように、感熱増感層を設けることが可能である。
【0017】
以下、本発明の真偽判定可能な記録媒体を構成する各層について、詳細に説明する。
(基材)
本発明における真偽判定可能な記録媒体で使用する基材2としては、シート状、フィルム状あるいは板状の材質からなり、材料としては特に制限されるものではなく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、セルロースジアセテート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどのプラスチック、銅、アルミニウムなどの金属、紙、含浸紙などを単独あるいは組み合わせて、積層したりして用いることができる。基材の厚さは、0.005〜5mm程度が適当である。但し、図2、4に示した記録媒体のように、基材2の一方の面に、感熱破壊層4、コレステリック液晶層5を設け、該基材2の他方の面に黒色層3を設けた構成の場合は、感熱破壊層の記録部が、基材を透過して下に位置する黒色層が観察できるように、使用する基材は透過性、つまり透明性を有したものとなる。
【0018】
(黒色層)
本発明の真偽判定可能な記録媒体で使用する黒色層3は、バインダー中にカーボンブラックのような黒色の色材を含有した層とすることができる。黒色の色材としては、例えばカーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなど)、グラファイト、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライトなど)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色色素などが挙げられる。これらの色材は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
黒色層におけるバインダーとしては、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ニトロセルロース等、あるいは、これらの混合物等を使用することができる。上記の黒色層は、バインダー樹脂とカーボンブラック等の色材を、溶剤に溶解あるいは分散させた塗工液を用いて、形成できる。塗工方法はロールコーター法、リバースコーター法、ナイフコーター法、コンマコーター法、グラビアコーター法などの一般的な方法で塗工する。その塗工量として0.1〜10g/m2(乾燥状態)が好ましい。
【0020】
(感熱破壊層)
本発明の真偽判定可能な記録媒体で使用する感熱破壊層4は、サーマルヘッド等の加熱手段で破壊することによって印字されるものである。感熱破壊層は、具体的には、Fe,Co,Ni,Te,Sn,In,Al,Bi,Pb,Zn,Cu,Cr,Ti等の金属、合金または化合物あるいはこれらの混合物を、真空蒸着法、スパッタ法、メッキ法等によって、成膜して形成することができる。感熱破壊層の厚さは、100Å〜1μ、好ましくは500〜1000Å程度である。
【0021】
(コレステリック液晶層)
本発明の真偽判定可能な記録媒体で使用するコレステリック液晶層5は、上記に挙げた基材上に、コレステリック液晶をインキ化して、グラビア印刷等の凹版印刷、オフセット方式などの平版印刷、凸版印刷、スクリーン印刷等で形成することができる。この形成されるコレステリック液晶層の厚さは、1μm〜20μm程度が望ましい。単位面積当たりの質量では、乾燥時で約1〜20g/m2程度である。その厚さが少なすぎると、コレステリック液晶特有の円偏光選択性と選択反射性の2つの特性を充分に発揮できなくなり、また厚すぎると液晶の配向が低下し、さらにコスト的にも不利である。コレステリック液晶層は単層で設けるだけでなく、2層以上を積層することも可能である。尚、上記のコレステリック液晶の材料をインキ化したものは、例えばワッカーケミー社のコレステリック液晶「HELICONE(登録商標)」等で、市販されているものを使用することができる。
【0022】
本発明で使用されるコレステリック液晶とは、液晶分子の配向構造が膜厚方向に螺旋を描くように規則的なねじれを有している。また、コレステリック液晶は、ピッチP(液晶分子が360°回転するのに必要な膜厚)と、入射光の波長λとがほぼ等しい場合に、選択反射性と円偏光選択性という2つの光学的性質を示すことが知られている。(参考文献;液晶とディスプレイ応用の基礎、コロナ社等)
【0023】
選択反射性とは、入射光のうち特定の波長帯域内にある光を強く反射する性質をいう。この選択反射性は、特定の波長帯域内に限定されて発現するため、高分子コレステリック液晶のピッチPを適切に選択することで、反射光は色純度の高い有彩色となる。その帯域の中心波長をλS、帯域幅をΔλとすれば、これらは光学媒体のピッチP(=λ/nm)と平均屈折率nm(=√((ne2+no2)/2))によって、下記式(1)、(2)のように決まる。ここで、Δnは光学媒体の面内の異常光線屈折率neと、常光線屈折率noの差(Δn=ne−no)とする。
λS=nm・P ・・・(1)
Δλ=Δn・P/nm ・・・(2)
【0024】
上記式(1)、(2)に示した中心波長λSおよび波長帯域幅Δλは、コレステリック液晶層への入射光が垂直入射(0°入射、on−axis入射)の場合において定義されるが、入射光が斜め入射(off−axis入射)である場合、ピッチPが見かけ上、減少することから、中心波長λSは短波長側へ移行し、波長帯域幅Δλは減少する。この現象は、λSが短波長側に移行することから、ブルーシフトと呼ばれ、その移行量は入射角に依存するが、目視で観察しても容易に識別可能である。例えば、垂直(0°入射位置)から観察して赤色に呈色するコレステリック液晶の反射色は、視野角を大きくすることにつれ、オレンジ色、黄色、緑色、青緑色、青色と順次変化するように観察される。このように、コレステリック液晶層は観察する角度によって、色が短波長側にシフトし、カラーコピー等で再現することができない特殊な色を示す(変化する)ために、偽造防止には非常に有効なものである。
【0025】
また、本発明の真偽判定可能な記録媒体では、上記のコレステリック液晶層と、感熱破壊層及び黒色層を必須の構成としており、サーマルヘッド等の加熱により、感熱破壊層に情報記録を行なって、感熱破壊層がその記録に応じて破壊され、下に隠蔽されていた黒色層が露出して、黒色層と感熱破壊層との背景(バックグラウンド)の色相の差が、明瞭になって、記録部は目立ち、判読しやすいものとなる。さらに、コレステリック液晶層と、感熱破壊層及び黒色層を組み合わせることで、感熱破壊層の記録部と非記録部とが、黒色層と感熱破壊層との背景の色相の違いによる特有なものとなり、偽造防止性の非常に高いものである。
【0026】
コレステリック液晶層は、特有の反射色を示すことから、その液晶層を用いた記録媒体に対し、目視でも容易に真偽判定を行うことができ、さらにその円偏光選択性を有しているため、左円偏光か右円偏光のどちらかを選択的に反射する。尚、円偏光選択性とは、特定の回転方向の円偏光だけを透過し、これと回転方向が反対の円偏光を反射する性質をいう。入射光のうちコレステリック液晶の配向構造のねじれ方向と同方向の円偏光成分は反射され、その反射光の回転方向も同一方向となるのに対し、逆方向に回転する円偏光成分は透過する点がコレステリック液晶に特有な特異な性質である。左ねじれ構造を有するコレステリック液晶の場合、左円偏光を反射し、かつ反射光は左円偏光のままであり、右円偏光は透過することになる。また、右ねじれ構造を有するコレステリック液晶の場合、右円偏光を反射し、かつ反射光は右円偏光のままであり、左円偏光は透過することになる。
【0027】
本発明の記録媒体におけるコレステリック液晶層に使用される液晶材料は、例えば側鎖に液晶形成基を有するポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリマロネート等の側鎖型ポリマー、主鎖に液晶形成基をもつポリエステル、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミドなどの主鎖型ポリマーを挙げることができる。配向状態にある高分子コレステリック液晶層は、入射した光のうち、左円偏光もしくは右円偏光のいずれか一方のみを反射する性質を有している。また、見る角度により、色相が異なって見える効果も有する。このコレステリック液晶材料の溶剤溶液を各種の印刷法によって適用し、乾燥させることにより、コレステリック液晶層を形成することができ、あるいは、このとき、重合性のコレステリック液晶を用いて紫外線重合性組成物を調製し、得られた紫外線重合性組成物を各種の印刷法によって適用し、乾燥後に、紫外線を照射して重合させて形成することもできる。コレステリック液晶層からなる光選択反射層は、上記の見る角度により、色相が異なって見えることを除けば、透視性を有しており、その意味で透明性を有するものである。
【0028】
配向状態を実現するには、延伸したプラスチックシートの表面にコレステリック液晶の溶剤溶液もしくは重合性のコレステリック液晶を用いて調製した紫外線重合性組成物を適用するか、もしくは対象物の表面に配向膜を形成してからコレステリック液晶の溶剤溶液もしくは重合性のコレステリック液晶を用いて調製した紫外線重合性組成物を適用すればよい。光選択反射層を二層以上設けるときは、層の厚みや素材のらせんピッチ等を異なるように構成し、より複雑な光学特性を付与することができる。あるいは光選択反射層はパターン状に形成することもできるので、一方を一様な層として形成し、他方をパターン状に形成してもよい。
【0029】
上記の重合性のコレステリック液晶として、具体的には特開2006−53356号公報に記載されている液晶材料(液晶性化合物)を用いることができる。さらに、その液晶性化合物には、カイラル剤を配合することで、より鮮明な色を観察することができる。このカイラル剤として、具体的には、特開2006−53356号公報に記載されている化学式のものが使用できる。
【0030】
(配向膜)
本発明の真偽判定可能な記録媒体では、感熱破壊層とコレステリック液晶層との間に、配向膜6を設けることにより、記録部の輝度、色度、およびコントラストを高くすることができる。配向膜は、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリイミド樹脂等の一般に配向膜として使用し得るものであれば、いずれを用いて構成したものでもよい。配向膜は、これらの樹脂の溶剤溶液を、プラスチックフィルム等の基材表面に適宜な塗布方法により塗布し、乾燥させた後に、布、ブラシ等を用いて摩擦するラビングを行なって形成することができる。
【0031】
(感熱増感層)
本発明の真偽判定可能な記録媒体では、感熱破壊層の基材側で、接するように、感熱増感層7を設けることにより、サーマルヘッドや、レーザー照射等の加熱手段により、感熱破壊層の熱破壊が容易に生じて、加熱による情報記録の感度を高めることができ、鮮明な記録が行なえる。感熱増感層は、具体的には、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂を主成分として構成する。また、記録媒体の耐久性向上のため、上記の樹脂に可塑剤を加えたり、イソシアネート硬化剤を加えたりすることができる。
【0032】
(保護層)
本発明の真偽判定可能な記録媒体では、コレステリック液晶層の上に、記録媒体の表面に傷が生じる、あるいは取扱い上で、問題が生じないように、保護層8を設けることができる。保護層は、一般的に保護層を形成するために知られたものが使用できる。インキもしくは塗料中のバインダー樹脂として使用される熱可塑性樹脂もしくは熱硬化性樹脂のほか、紫外線硬化性樹脂もしくは電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂を用いて構成することができる。
【0033】
(情報の記録)
本発明では、上記に説明した真偽判定可能な記録媒体において、サーマルヘッドによる加熱や、レーザー光を照射による加熱を行なって、感熱破壊層を破壊、除去して、情報が記録される。その記録される情報は、一定の固定情報や一つ一つの記録媒体で異なる情報である可変情報が挙げられる。本発明では、偽造防止性を高めるために、可変情報の記録を行なうことが好ましい。この可変情報としては、製造日、製品名称、氏名、住所等、その記録媒体が付与される対象品(高額商品や、身分証明カード、クレジットカード、預貯金用カード、プリペイドカード、定期券、トラベラーズチェック、金券類等)の種類、あるいは記録媒体そのものの種類を特定する個別のデータが挙げられる。
【0034】
以上で、説明してきた記録媒体において、サーマルヘッドによる加熱や、レーザー光を照射して、感熱破壊層を加熱し、溶融あるいは分解させたりして、感熱破壊層を破壊、除去して、情報が記録される。その部分が記録部であり、それ以外の部分が、非記録部であるが、記録部では、黒色層が露出するが、非記録部では、感熱破壊層が残存しており、黒色層は隠蔽されている。したがって、情報の記録部では、黒色層を背景としてコレステリック液晶層が観察され、非記録部では、感熱破壊層を背景として、コレステリック液晶層が観察される。このようにコレステリック液晶層を黒色層の黒色と、感熱破壊層の金属色との色相の違いで、コントラストが高く、結果として記録部は目立ち、判読しやすいものとなる。
【0035】
以下、本発明の真偽判定可能な記録媒体について、実施例を挙げて、詳細に説明する。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
厚さ16μmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とし、該基材の一方の面に、下記組成の黒色層インキを用いて、グラビアコーティング法により、乾燥時で厚さ5g/m2の黒色層を形成し、さらに黒色層の上に、Snを真空蒸着法により、厚さ500Åで、感熱破壊層として形成した。
(黒色層インキ)
カーボンブラック 12部
ポリアミド系樹脂 88部
メチルエチルケトン 20部
トルエン 20部
【0037】
上記感熱破壊層の上に、下記組成のコレステリック液晶層インキを用いて、スクリーン印刷法により印刷し、印刷直後に紫外線を照射して、乾燥時で厚さ10g/m2のコレステリック液晶層を形成し、図1に示すような構成の実施例1の真偽判定可能な記録媒体を作製した。
(コレステリック液晶層インキ)
コレステリック液晶顔料(ワッカーケミー社製、HELICONE(登録商標)HCXL) 30部
メジウムインキ(ザ・インクテック(株)製、UVカード用) 70部
【0038】
(実施例2)
厚さ16μmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とし、該基材の一方の面に、実施例1で使用した黒色層インキを用いて、グラビアコーティング法により、乾燥時で厚さ5g/m2の黒色層を形成した。その基材の黒色層の形成された面と反対側に、Snを真空蒸着法により、厚さ500Åで、感熱破壊層として形成し、その感熱破壊層の上に、実施例1で使用したコレステリック液晶層インキを用いて、スクリーン印刷法により印刷し、印刷直後に紫外線を照射して、乾燥時で厚さ10g/m2のコレステリック液晶層を形成し、図2に示すような構成の実施例2の真偽判定可能な記録媒体を作製した。
【0039】
(実施例3)
厚さ16μmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とし、該基材の一方の面に、実施例1で使用した黒色層インキを用いて、グラビアコーティング法により、乾燥時で厚さ5g/m2の黒色層を形成し、その黒色層の上に、Snを真空蒸着法により、厚さ500Åで、感熱破壊層として形成した。また、その感熱破壊層の上に、ポリビニルアルコール樹脂の溶液((株)クラレ製のPVA樹脂、品番;「110」、5%水溶液(透明)として使用。)を塗布し乾燥させた後に、ラビング処理を行なって配向膜を形成した。この配向膜上に、実施例1で使用したコレステリック液晶層インキを用いて、スクリーン印刷法により印刷し、印刷直後に紫外線を照射して、乾燥時で厚さ10g/m2のコレステリック液晶層を形成し、図3に示すような構成の実施例3の真偽判定可能な記録媒体を作製した。
【0040】
(実施例4)
厚さ16μmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とし、該基材の一方の面に、実施例1で使用した黒色層インキを用いて、グラビアコーティング法により、乾燥時で厚さ5g/m2の黒色層を形成した。その基材の黒色層の形成された面と反対側に、Snを真空蒸着法により、厚さ500Åで、感熱破壊層として形成し、その感熱破壊層の上に、実施例3で形成した配向膜と同様にして、配向膜を形成した。その配向膜の上に、実施例1で使用したコレステリック液晶層インキを用いて、スクリーン印刷法により印刷し、印刷直後に紫外線を照射して、乾燥時で厚さ10g/m2のコレステリック液晶層を形成し、図4に示すような構成の実施例4の真偽判定可能な記録媒体を作製した。
【0041】
(実施例5)
厚さ16μmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とし、該基材の一方の面に、実施例1で使用した黒色層インキを用いて、グラビアコーティング法により、乾燥時で厚さ5g/m2の黒色層を形成し、その黒色層の上に、下記組成の感熱増感層インキを用いて、グラビアコーティング法により、乾燥時で厚さ1g/m2の感熱増感層を形成した。
(感熱増感層インキ)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(ユニオンカーバイド社製、VAGH) 20部
アクリル樹脂(DIC(株)製、アクリディックA−136−55) 10部
メチルエチルケトン 20部
トルエン 30部
ブチルアルコール 20部
【0042】
そして、その感熱増感層の上に、Snを真空蒸着法により、厚さ500Åで、感熱破壊層として形成した。また、その感熱破壊層の上に、実施例3で形成した配向膜と同様にして、配向膜を形成した。その配向膜の上に、実施例1で使用したコレステリック液晶層インキを用いて、スクリーン印刷法により印刷し、印刷直後に紫外線を照射して、乾燥時で厚さ10g/m2のコレステリック液晶層を形成した。さらに、そのコレステリック液晶層の上に、グラビア印刷により、ウレタン樹脂系の保護層を乾燥時の厚さ2g/m2で形成して、図5に示すような構成の実施例5の真偽判定可能な記録媒体を作製した。
【0043】
上記の得られた実施例1〜5の各真偽判定可能な記録媒体に対し、サーマルヘッドとプラテンロールを用いて、画像情報に応じた信号により、サーマルヘッドにより、コレステリック液晶層側に加熱を行なって、記録を行なった。実施例1及び2の記録媒体は、記録部9は、コレステリック液晶層5の下に、背景として黒色層が観察できる。そして、非記録部10は、記録前の記録媒体の状態と変わらずに、コレステリック液晶層5の下に感熱破壊層5の金属色が観察されるのみで、黒色層は全く見えない状態である。よって、記録部9と非記録部10とは、両者ともコレステリック液晶層5を観察できるが、このコレステリック液晶層に対して、記録部では黒色の背景があり、非記録部では感熱破壊層の金属色の背景があり、その黒色と、金属色との色相の違いで、コントラストが高く、結果として記録部は目立ち、判読しやすいものであった。
【0044】
また、実施例3及び4の記録媒体は、感熱破壊層4とコレステリック液晶層5との間に、配向膜6を設けたものであり、コレステリック液晶層をより鮮やかに観察でき、結果的に記録部の輝度、色度、およびコントラストが、実施例1及び2の記録媒体と比べ、より高まっていた。実施例5の記録媒体は、黒色層3と感熱破壊層4との間に、感熱増感層7が設けられ、さらにコレステリック液晶層5の上に、保護層8を設けているので、感熱破壊層の熱破壊が容易に生じて、実施例1〜4の記録媒体と比べ、加熱による情報記録の感度が高まっていて、また記録媒体の最表面に保護層があるので、実施例1〜4の記録媒体よりも、表面に傷が生じにくくなる等、耐久性が高まっていた。実施例1〜5に記録媒体は、全て偽造防止に優れ、これらの記録媒体が付与された商品(製品)は、真正物として証明することができ、非常に有用なものであった。すなわち、本発明の記録媒体は、真偽を判定する際に、信頼性の高い証明となるものであった。
【符号の説明】
【0045】
1 真偽判定可能な記録媒体
2 基材
3 黒色層
4 感熱破壊層
5 コレステリック液晶層
6 配向膜
7 感熱増感層
8 保護層
9 記録部
10 非記録部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に、少なくとも感熱破壊層、コレステリック液晶層を、この順に積層した真偽判定可能な記録媒体において、該感熱破壊層と基材との間に、あるいは該基材の他方の面に、黒色層を設けたことを特徴とする真偽判定可能な記録媒体。
【請求項2】
請求項1に記載する真偽判定可能な記録媒体において、感熱破壊層とコレステリック液晶層との間に、配向膜を設けたことを特徴とする真偽判定可能な記録媒体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載する真偽判定可能な記録媒体において、感熱破壊層の基材側で、接するように、感熱増感層を設けたことを特徴とする真偽判定可能な記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−214671(P2010−214671A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62076(P2009−62076)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】