説明

真偽判定媒体、真偽判定媒体貼着用ラベル、真偽判定媒体転写シート、および真偽判定体

【課題】プリズムシートの凹凸面の凹凸を埋めるパターンを形成した従来のプリズムシートを改良し、より一層の改ざんに対する抵抗性を付与したプリズムシートを提供することを課題とするものである。
【解決手段】透明シート2の背面側に凹凸3、および凹凸3をパターン状に埋める透明パターン層4が積層された反射パターンシートと、加熱により開孔する素材からなる感熱記録層6とを積層し、反射パターンシートおよび感熱記録層6の背面側に、蛍光発光層7を積層して真偽判定媒体1を構成し、課題を解決することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改ざんが困難で、真正性を判定するのに適した真偽判定媒体、真偽判定媒体貼着用ラベル、真偽判定媒体転写シート、および真偽判定体に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
経済的な価値の高い高額商品やID手段として用いることにより価値を生じ得るクレジットカード、金券類等には、それらの真正であるか否かを判定するための手段、即ち、真偽を判定するための手段が講じられていることが多い。真偽を判定する代表的な手段としてはホログラムラベル、ホログラムやホログラムに外観が似ている回折格子をラベル化したもの、がよく用いられている。
【0003】
ホログラムラベルは、その製造に高度な技術を要するため、もともと高い偽造防止性を有しているが、既に多種類のホログラムラベルが出回っており、ホログラムラベルの製造技術自体は知られていることから、改ざんに対するより高度な抵抗性が求められるようになってきている。そこで、ホログラムラベルの改良と共に、他の手段で真偽を判定できるようにするための新たな試みも進められている。
【0004】
そのような新たな試みの一つとして、例えば、断面が三角形のプリズムを多数配列した凹凸を背面に有するプリズムシートを用い、その凹凸面をプリズムシートの素材と屈折率がほぼ近い素材でパターン状に埋めると、凹凸の無い側から観察したときに、凹凸表面が埋められた部分では光が透過し、埋められてない部分では観察側からの入射光が反射する選択的な再帰反射を起こすため、裏面の凹凸を埋めたパターンに応じた再帰反射パターンが観察されるので、このようなシートを真正性の判定の必要な書類や身分証明書等に透明オーバーレイとして使用することが提案されている。(特許文献1)。
【特許文献1】特表平10−508549号公報。
【0005】
特許文献1記載の技術によれば、回折格子をパターン化したものに似た外観のパターンを有する真偽判定媒体が得られ、製造方法的にも複雑なため、一定の偽造防止性を有するものが得られるが、やはり一層の改ざんに対する抵抗性を備えることが望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明においては、プリズムシートの凹凸面の凹凸を埋めるパターンを形成した従来のプリズムシートを改良し、より一層の改ざんに対する抵抗性を付与したプリズムシートを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者の検討によれば、プリズムシートの場合であれば、凹凸面の凹凸を埋めるパターンを形成した従来のプリズムシートに、レーザー光等により開孔させて記録を行なうことが可能なアルミニウムや銅等の感熱記録層を積層して、開孔部により記録を行ない、さらに背面に紫外線等の照射により蛍光を発光する蛍光材料からなる層を積層することにより、外観からは判らないが、紫外線等を照射することにより、蛍光発光層の有無を確認することができ、改ざんをより一層困難にすることが可能であることが見出され、本発明に到達することができた。
【0008】
課題を解決する第1の発明は、透明シートの背面側に凹凸を有しており、前記凹凸をパターン状に埋める透明パターン層が積層された反射パターンシート、および加熱により開孔する素材からなる感熱記録層が積層されており、前記反射パターンシートおよび前記感熱記録層の背面側に、蛍光発光性物質を含有する蛍光発光層が積層されていることを特徴とする真偽判定媒体に関するものである。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記感熱記録層、前記反射パターンシート、および前記蛍光発光層がこの順に積層されていることを特徴とする真偽判定媒体に関するものである。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明の前記真偽判定媒体の前記蛍光発光層側に接着剤層が積層されていることを特徴とする真偽判定媒体貼着用ラベルに関するものである。
【0011】
第4の発明は、第1または第2の発明の前記真偽判定媒体の前記蛍光発光層が積層されたのとは反対側に剥離性シートが積層されたことを特徴とする真偽判定媒体転写シートに関するものである。
【0012】
第5の発明は、第1または第2の発明の前記真偽判定媒体が積層されていることを特徴とする真偽判定体に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、凹凸を有する透明シートの凹凸がパターン状に埋められている反射パターンシートに、レーザー光等により開孔させて記録を行なうことが可能な感熱記録層が積層されていると共に、さらに背面に蛍光発光層が積層されているので、開口部からのぞいている蛍光発光層の有無を蛍光発光により確認することができ、偽造防止性の高い真偽判定媒体を提供することができる。
【0014】
第2の発明によれば、感熱記録層、反射パターンシート、および蛍光発光層を記載順に積層したので、第1の発明の効果に加えて、感熱記録層を平坦面に形成することができ、また、感熱記録層への記録の際の加熱を直接的に行なえるので、印字性能を向上させることが可能な真偽判定媒体を提供することができる。
【0015】
第3の発明によれば、第1または第2の発明の効果を有する真偽判定媒体の蛍光発光層側に接着剤層が積層されているので、そのまま他の物品に貼付けにより適用することが容易な真偽判定媒体貼着用ラベルを提供することができる。
【0016】
第4の発明によれば、第1または第2の発明の効果を有する真偽判定媒体の蛍光発光層が積層されたのとは反対側に剥離性シートが積層されているので、他の物品に転写により適用することが容易な真偽判定媒体転写シートを提供することができる。
【0017】
第5の発明によれば、第1または第2の発明の効果を有する真偽判定媒体が基材上に適用されているので、真偽判定の容易な真偽判定体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の真偽判定媒体の積層構造を例示する図である。図2は本発明の真偽判定媒体を対象部品に貼着するのに適した真偽判定媒体貼着用ラベルを例示する図である。図3は本発明の真偽判定媒体を転写により対象物品に適用するのに適した真偽判定媒体転写シートを例示する図である。図4は本発明の真偽判定媒体1における凹凸と凹凸を埋める透明パターン層とに基づいてパターンが見えることを示す図である。図5は本発明の真偽判定媒体の感熱記録層に記録部を形成する様子を示す図である。図6は本発明の真偽判定媒体に記録部が形成された状態のものを示す図である。図7は本発明の真偽判定媒体を適用した真偽判定体を示す図である。
【0019】
図1(a)に示すように、本発明の真偽判定媒体1は、透明シート2の下面の全面に、倒立した正三角形の断面を持つ図中の手間側から奥側に向かう三角柱が多数配列して形成された凹凸3が設けられ、凹凸3の下面には凹凸3をパターン状に埋める透明パターン層4が積層され、透明シート2の図中の上面に加熱により開孔する素材からなる感熱記録層6が積層され、透明パターン層4のある部分では透明パターン層4の下面、透明パターン層の無い部分では凹凸3の下面を覆って、蛍光発光性物質を含有する蛍光発光層7が積層されたものである。凹凸3の下面の透明パターン層4の無い部分では、凹凸3の下面と蛍光発光層7との間に空気が存在する。
【0020】
図1(b)に示すように、本発明の真偽判定媒体1は、上記の図1(a)を引用して説明した積層構造中の感熱記録層6が、透明パターン層4のある部分では透明パターン層4の下面、透明パターン層の無い部分では凹凸3の下面を覆って積層されたものであってもよい。この場合、蛍光発光層7は感熱記録層6の下面に積層される。
【0021】
本発明における、透明シート2、凹凸3、および透明パターン層4が順に積層された複合シートを透明シート2側から眺めると、透明パターン層4の平面形状、即ち、パターン形状に基づく光の反射によるパターンを与える。
【0022】
図4(a)に示すように、透明シート2側から入射する入射光11は、透明パターン層4のある部分では、凹凸3を透過して透明パターン層4内に到達するが、透明パターン層4の無い箇所では、凹凸3と空気との界面で全反射し、最終的に、入射光11の入射して来た方向に戻る反射光12となる。従って、透明パターン層4のパターンに応じて、正確には、透明パターン層4のある部分とはネガとポジの関係になるパターンに相当する箇所が反射部13となり、その他の箇所が非反射部14となる。例えば、英大文字の「N」の文字部をポジパターンとするとき、英大文字の「N」以外の箇所の凹凸3の下面を透明パターン層4で埋めておくことにより、図4(b)に示すように、照明により、英大文字の「N」の形状の反射部13を得ることができる。
【0023】
以上の説明では、透明シートに断面形状が正三角形のプリズムを配列したプリズムシートをベースとしたが、凹凸3を埋める透明パターン層4の形状に基づいて、パターン状の反射部13が得られる限り、いかなる形状の凹凸を有するシートを用いてもよい。
【0024】
例えば、プリズムの断面形状は上記した正三角形に限られることなく、二等辺三角形、もしくは直角三角形等のいずれの三角形でもよい。また、断面がこれらの三角形でもあり得るプリズムを有するプリズムシートに替えて、レンチキュラーレンズ(かまぼこレンズ)が配列したレンチキュラーレンズシートを用いてもよい。さらに、これらのプリズムシートおよびレンチキュラーレンズシートは、二次元の形状のレンズを有するが、三次元の形状のレンズを有するものであってもよい。球体の一部をなす形状や円錐形状、三角錐、四角錐等の形状の微小レンズが縦横に多数配列したシートを用いてもよい。
【0025】
また、透明シート2と凹凸3とは、互いに別の層である方が、透明シート2を基材として凹凸3を形成するのに適しており、また、型を用いることにより、任意の形状の凹凸が再現性よく形成できる利点があるが、透明シート2と凹凸3とは一体であってもよく、要は、透明シート2の片面に凹凸形状を有していればよい。
【0026】
凹凸3がプリズムである場合を例にとると、プリズムの高さは1μm〜100μm程度であり、より好ましくは、5μmから25μm程度であり、ピッチはプリズムの断面形状にもよるが、プリズムの高さと同程度であるか、もしくは数分の1〜数倍程度である。
【0027】
本発明の真偽判定媒体1において、透明シート2、凹凸3、および透明パターン層4に加えて積層されている感熱記録層6は、加熱により開孔するものであるので、適宜な手段で加熱することにより、記録を行なうことができる。感熱記録層6については後に説明するが、厚みとしては1μm以下のものである。
【0028】
図5に例示するように、レーザー光源15から出射したレーザー光16を、レンズ17を介して真偽判定媒体1の感熱記録層6に集光するよう照射することにより、集光部において感熱記録層6を開孔させることができる。例えば、集光部においてレーザー光16により感熱記録層6を蒸発等により除去し、微細な直径の貫通孔を生じさせる。このような貫通孔を入力情報に基づいて生じさせることにより、記録部18を形成することができる。感熱記録層6への記録はサーマルヘッドのような直接の熱伝導による点状加熱手段によって行なうこともできる。なお、サーマルヘッドのような直接の熱伝導による点状加熱手段によって開孔させ記録を行なうときは、図1(a)を引用して説明したような、感熱記録層が表面に露出しているか、表面にごく近い積層構造の真偽判定媒体1を用いることが好ましい。
【0029】
感熱記録層6への記録の際に用いるレーザー光は、連続光あるいはパルス光のいずれであってもよい。連続光のレーザー光は、一定時間の間、常に同じ出力を保持し得るし、パルス光のレーザー光は、ごくわずかな時間の間のみ高出力を得ることが可能である。
【0030】
パルスレーザー光を得る方法としては、CWのレーザー光(連続光)を外部変調器でその出力を制御する方法、またQスイッチをレーザー共振器内に挿入しQスイッチのスイッチングによりレーザー媒質に蓄積されたエネルギーを瞬時に出力させる方法がある。アルゴンレーザー、He−Neレーザー、YAGレーザー、もしくは半導体レーザーを用い、外部変調器としてメカニカルシャッター、A/O変調素子、もしくはE/O変調素子等をQスイッチとして挿入し、共振器のQ値をコントロールすることにより、数十ナノ秒〜数百ナノ秒の時間幅のパルス光を発生させることができる。
【0031】
図6は、記録部18により、番号等を記録した状態を示すもので、図6(a)および図6(b)のいずれにおいても、真偽判定媒体1の図中の上辺および下辺に沿って左右方向に感熱記録層6、6が積層されており、下辺に沿って積層された感熱記録層6に「0001234」の番号からなる記録部18が形成されている。また、図6(a)および図6(b)のいずれにおいても、上辺および下辺に沿った二つの感熱記録層6、6の間の部分では、英大文字の「N」の形状の反射部13が図4(a)および図4(b)を引用して説明したように形成されており、かつ、二つの感熱記録層6、6の間の部分では、感熱記録層6がすべて除去されている。ここで、図6(a)と図6(b)とで、反射部13の外観を異ならせているのは、反射部13を法線方向から見たときには、反射部13と非反射部14における反射の差により、反射部13が明瞭に見えるが、法線からの角度の大きい位置で見たときには、反射部13と非反射部14における反射の差が小さくなり、明瞭さが次第に低下することを示すためであり、このように、反射部13と非反射部14における反射の差が小さい状態では、下層の透視性が増すので、下層が着色されていれば、反射部13および非反射部14は着色されて見える。
【0032】
このように、本発明の真偽判定媒体1は、反射部13の存在に基づく光の反射により、反射性のパターンを視認することができる上に、感熱記録層6に形成された記録部18が付加されているので、例えば、記録部18に番号等を記録することにより、改ざんをより困難化できると共に、記録された番号をID番号とし、ID番号に対応する情報を予めリスト化しておくことにより、ID番号をインデックスとする製品の詳細や履歴等の照合を行なうようにすることもできる。あるいは、記録部18にバーコードを記録すれば、バーコードを読み取って、予めバーコードに対応させてあるデータを照合することにより、流通の管理を行なえるようにすることもできる。また、本発明の真偽判定媒体1は、基本的に透明シート2、厚みが一例として1〜100μm程度の凹凸3、および厚みが1μm以下の感熱記録層6からなるので、非常に薄くすることが可能であり、種々の対象物品に貼着して用いるのに適している。
【0033】
本発明の真偽判定媒体1は、図1を引用して説明したように、背面側に蛍光発光性物質を含有する蛍光発光層7が積層されているから、前面側から見ると、感熱記録層6の記録部18に生じた開孔部分から蛍光発光層7が存在するのを眺めることができる。従って、記録部18の感熱記録層6側から、例えば、紫外線を照射して蛍光発光層7中の蛍光発光物物質を励起させ、生じた蛍光発光を観察することができ、蛍光発光が起こるかどうかによって、真偽判定を行なうことができる。
【0034】
真偽判定媒体1を構成する透明シート2は、凹凸3を直接に型付けによって設ける場合には型付けの対象であり、凹凸3を別の層として設ける場合には凹凸3を積層する対象となる層であるので、これら型付けや積層の加工の際に必要な機械的強度、耐熱性、および耐溶剤性等を備え、また、真偽判定媒体を他の物品に貼着等により適用する際に必要とされる機械的強度および耐熱性を備えたものであることが好ましい。
【0035】
透明シート2としては、上記の諸性能を備えた各種のプラスチックフィルムを用いることが好ましく、例えば2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以降、単にPETフィルムと言う。)等を使用することができるが、他の透明プラスチックフィルムであってもよい。PETフィルムを透明シート2として使用する場合、その厚みは、5μm〜250μmが好ましく、上記の必要な特性を備え、加工適性、および熱転写の際の熱効率などを考慮すると、10μm〜50μmがより好ましい。
【0036】
図1を引用して説明したように、透明シート2とは別体の凹凸3を設けるときは、例えば、凹凸3の形状の逆型形状を表面に有する型板を準備し、型板との間を間隔をあけて配置された透明シート2との間に透明な紫外線硬化性樹脂組成物等を一面に充填し、紫外線照射等により硬化させた後、透明シート2とその表面に積層された硬化物とを型板から分離することにより、凹凸3を形成することができる。また、透明シート2そのものに凹凸3を付与する場合には、凹凸3の形状の逆型形状を表面に有する型板と別の平板との間に透明シート2をはさみ、透明シート2が熱変形する温度に加熱しつつ加圧し、その後、解放することにより、凹凸3を形成することができる。いずれの凹凸3の形成においても、型板はローラ状であってもよく、成型における平板もローラ状のもので置き換え得る。
【0037】
透明パターン層4は、上記のようにして得られた凹凸3を有する面に、凹凸3をパターン状に埋めるようにして形成するもので、凹凸3の高さにもよるが、凹凸3をならすのに必要な厚みの層を形成する必要があるから、シルクスクリーン印刷法等の、インクの盛り量を多くすることが可能な手法によって形成することが好ましい。なお、透明パターン層4は、上記の凹凸3を構成する素材と等しいか、もしくは近似した光の屈折率を持つ透明樹脂で構成することが好ましく、このようにすることにより、図4(a)を引用して説明したように、透明シート2側から入射する入射光11を、透明パターン層4のある部分では、凹凸3を透過させて透明パターン層4内に到達させることがより確実になる。
【0038】
感熱記録層6は、加熱により開孔する素材であれば、どのような素材で構成してもよい。例えば、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、金(Au)、銀(Ag)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、セレン(Se)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、テルル(Te)、銅(Cu)、鉛(Pb)、ニッケル(Ni)、もしくはパラジウム(Pd)などの単体の金属、またはこれらの金属の合金を用いて感熱記録層6を構成することができる。これらの金属もしくは合金で構成した感熱記録層6は、レーザー光を照射するか、もしくはサーマルヘッドのような点状加熱手段を用いて加熱することにより、加熱された部分が溶融、もしくは蒸発して、感熱記録層6を貫通する貫通孔を生じる。
【0039】
上記のような金属もしくは合金で感熱記録層6を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、もしくはイオンプレーティング法などの薄膜形成法を挙げることができ、感熱記録層6の厚みとしては、50Å〜1μmが好ましく、100Å〜1000Åがより好ましい。感熱記録層6に透明性を持たせる場合には、厚みを200Å以下にするのが好ましく、感熱記録層6に隠蔽性を持たせる場合には、厚みを200Å以上にするのが好ましい。
【0040】
蛍光発光層7は、紫外線を吸収して赤色、青色、もしくは緑色等の可視光を発光する有機蛍光発光性物質もしくは無機蛍光発光性物質であって、好ましくは無色の蛍光発光性物質を用い、バインダー樹脂中に溶解もしくは分散させて配合し構成した層である。従って、感熱記録層6への記録によって生じる開孔部からのぞく、蛍光発光層7の外観は、通常、無色もしくは白色であって、一見何の意味も持たないかのように見える。感熱記録層6の開口部を蛍光発光層7に所定の紫外線を照射すると、配合された蛍光発光性物質に特有な波長の蛍光発光が得られるので、このことを利用して真偽判定媒体1の真偽を確認することができる。蛍光発光層7のもたらす機能は、可視光領域では判別ができないが、可視光領域以外での判別を可能にすることであるので、上記の蛍光発光性物質に替えて、赤外線吸収剤もしくは紫外線吸収剤を配合しても、可視光領域以外での判別を可能とすることができる。蛍光発光層7、または赤外線吸収剤もしくは紫外線吸収剤を配合した層は無色もしくは白色でもよいが、適宜に着色してもよいので、意匠的な要請に基づいて任意の色相になるよう着色することもできる。また、着色することにより、感熱記録層6の開孔部からのぞく蛍光発光層7を目立たせないようにすることもできる。なお、着色は蛍光発光層7等に行なわずに、さらに下層側に着色層を積層することによって行なってもよい。
【0041】
本発明の真偽判定媒体1は、任意の基材上に積層して、積層された基材の真偽を判別可能として、その基材の偽造に対する抵抗性を向上させることができる。
【0042】
図7は、以上のような真偽判定媒体1を適用した本発明の真偽判定体を例示する図である。この例の真偽判定体19は、基材20上に真偽判定体1が積層されたもので、真偽判定媒体1は、基材20側より、接着剤層9、基材シート2A、蛍光発光層7、透明パターン層4、凹凸3、透明シート2、および感熱記録層6が積層されたものである。
【0043】
基材20は、例えば、背景技術において例示したような、経済的な価値の高い高額商品やID手段として用いることにより価値を生じ得るクレジットカード、金券類等であり得るが、次に例示するような種々のものでもあり得る。
【0044】
純正品の認証の必要のある、例えば、プリンタ消耗品、電子機器、電気機器、コンピュータ製品、医薬品、もしくは化学品。高級ブランド品、例えば、時計、衣類、バッグ、宝石、スポーツ用品、もしくは化粧品等。ID証、例えば、パスポート、運転免許証、保険証、もしくは図書カード等、金券、例えば、商品券、ギフト券、もしくはプリペイドカード等。これらの列挙したものは、上記の基材20となり得るが、必要に応じて、これらを収納もしくは包装する収納容器、包装材料を基材20としてもよい。
【0045】
このように、本発明の真偽判定媒体1を対象となる基材20に適用する際には、真偽判定媒体1に予め貼着用の接着剤層を積層したラベルの形態のものや、真偽判定用媒体1を転写するための転写シートの形態のものを準備して使用することが好ましい。
【0046】
図2は、そのような目的で使用することが好ましい真偽判定媒体ラベル8の積層構造を例示するものであり、図の上側から、感熱記録層6、透明シート2、凹凸3、透明パターン層4、蛍光発光層7、基材シート2A、および接着剤層9が順に積層された積層構造を有するが、基本的には図1を引用して説明した真偽判定媒体1の透明シート2とは反対側に接着剤層が積層されたものであればよい。図2を引用して説明する例においては、蛍光発光層7は下層側を基材シート2Aによって裏打ちされており、このようにすることにより、蛍光発光層7を平坦な基材シート2Aに積層形成した後、透明パターン層4が積層された凹凸3の下面に積層することができ、積層を円滑に行なわせる目的で、蛍光発光層7が感熱接着性を有するバインダー樹脂を用いて構成されていることが好ましい。図2を引用して説明する例の最下層の接着剤層9は、真偽判定媒体ラベル8を対象となる基材20に貼着するためのもので、感熱接着剤もしくは感圧接着剤を用いて構成することができるが、基本的に加圧を行なえば接着が可能となる感圧接着剤、具体的には粘着剤を用いて構成することが好ましい。
【0047】
粘着剤としては、アクリル樹脂やアクリル酸エステル樹脂もしくはこれらの樹脂の共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、天然ゴム、カゼイン、ゼラチン、ロジンエステル、テルペン樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、シリコーン樹脂、α−シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂、マレイミド系樹脂、スチロール系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、レゾルシノール系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、もしくはシリコーン系樹脂等からなるものを挙げることができる。なお、粘着剤を用いるときは、粘着剤層の露出面に、粘着剤層の保護用として剥離シートを積層することが好ましく、剥離シートとしては、紙やプラスチックフィルムに必要に応じ離型処理を施したものを使用することができる。
【0048】
図3は、真偽判定媒体転写シート10の積層構造を例示するものであり、図の上側から、剥離性シート2B,感熱記録層6、透明シート2、凹凸3、透明パターン層4、蛍光発光層7、基材シート2A、および接着剤層9が順に積層された積層構造を有するが、基本的には図1を引用して説明した真偽判定媒体1の蛍光発光層7とは反対側に剥離性シート2Bが積層されたものであればよい。図2を引用して説明した例におけるのと同様、蛍光発光層7は下層側を基材シート2Aによって裏打ちされており、このようにすることにより、蛍光発光層7を平坦な基材シート2Aに積層形成した後、透明パターン層4が積層された凹凸3の下面に積層することができる。このとき、積層を円滑に行なわせる目的で、蛍光発光層7が感熱接着性を有するバインダー樹脂を用いて構成されていることが好ましい。図3を引用して説明する例の最下層の接着剤層9は、真偽判定媒体を対象となる基材20に貼着するためのもので、感熱接着剤もしくは感圧接着剤を用いて構成することができる。被転写対象である基材20の表面に接着剤が適用されるときは、転写シート10における接着剤層9は省いてもよい。剥離性シート2Bは、透明シート2と同様の素材のシートのうちから、積層される層との接着性を考慮して選択することができ、必要に応じ、ワックスもしくはシリコーン等の離型剤をバインダー樹脂中に配合した剥離性層を真偽判定媒体が積層される側の面に積層してあってもよい。
【実施例1】
【0049】
厚みが50μmのPETフィルム上に、紫外線硬化性樹脂液と凹凸型を重ね、紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂液を硬化させ、断面が直角三角形であり、ピッチ;50μm、高さ;25μmのプリズムが多数配列した凹凸形状を有する凹凸シートを作成した。次に凹凸シートの凹凸形状を有する側とは反対側に、厚みが200ÅのSn薄膜を蒸着法によって形成した。その後、凹凸シートの凹凸形状を有する側に、ポリエステル系バインダ樹脂の透明インキを用いたシルクスクリーン印刷法により、凹部を埋めて表面が平らになるようにして文字及び記号のネガパターンに相当するパターン印刷を行ない、凹凸シートの凹凸形状を有する側とは反対側から眺めたときに、文字および記号の部分が反射パターンとして見えるパターンシートを得た。
【0050】
続いて、パターンシートのパターン印刷を行なった側に、紫外線照射により緑色の蛍光発光を起こす紫外線蛍光発光性物質をポリエステル系バインダ樹脂中に含有する感熱接着剤層形成用インキを用いて、厚みが5μmの感熱接着剤層を形成し、形成した感熱接着剤層を利用して厚みが25μmのPETフィルムを熱ラミネートした。熱ラミネートは、加熱したニップローラ間を、ローラ加熱温度;150℃、速度;0.8m/min条件で通過させることにより行なった。熱ラミネート後、厚みが25μmのPETフィルムの側の露出面に、黄色に着色した粘着剤層および離型シートを積層して、ラベル形態とした。
【0051】
得られたラベルのSn薄膜に、図5を引用して説明したようにレーザー光を照射して、図6に示すように、Sn蒸着膜に点状の除去部分の集まりにより、ラベルを貼着する製品のID番号を記録し、また、先に得られた反射パターンのある、ラベルの中央の領域では、反射部13およびその周囲のSn蒸着薄膜を除去した。
【0052】
以上の加工を行なった後のラベルの離型シートを剥がし、コンピュータのプリンタ用のトナー容器の表面に貼りつけた。
【0053】
貼りつけられたラベルは、正面、即ち法線方向から眺めると、パターンシートの反射パターンの全反射により銀色に見え、また、角度を変えると黄色い変化して見えた。また、ブラックライトを照射すると、ID番号を記録した下層が緑色に発光し、ラベルの真偽の判定を行なうことができた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】真偽判定媒体の積層構造を示す図である。
【図2】真偽判定媒体貼着用ラベルを示す図である。
【図3】真偽判定媒体転写シートを示す図である。
【図4】真偽判定媒体の凹凸および透明パターンに基づくパターンを示す図である。
【図5】感熱記録層に記録部を形成する様子を示す図である。
【図6】真偽判定媒体のパターン、記録部を説明する図である。
【図7】真偽判定媒体を適用した真偽判定体を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1……真偽判定媒体
2……透明シート
3……凹凸
4……透明パターン層
5……空気
6……感熱記録層
7……基材シート
8……接着剤層
9……真偽判定媒体貼着用ラベル
10……真偽判定媒体転写シート
13……反射部
18……記録部
19……真偽判定体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明シートの背面側に凹凸を有しており、前記凹凸をパターン状に埋める透明パターン層が積層された反射パターンシート、および加熱により開孔する素材からなる感熱記録層が積層されており、前記反射パターンシートおよび前記感熱記録層の背面側に、蛍光発光性物質を含有する蛍光発光層が積層されていることを特徴とする真偽判定媒体。
【請求項2】
前記感熱記録層、前記反射パターンシート、および前記蛍光発光層がこの順に積層されていることを特徴とする請求項1記載の真偽判定媒体。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の前記真偽判定媒体の前記蛍光発光層側に接着剤層が積層されていることを特徴とする真偽判定媒体貼着用ラベル。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の前記真偽判定媒体の前記蛍光発光層が積層されたのとは反対側に剥離性シートが積層されたことを特徴とする真偽判定媒体転写シート。
【請求項5】
基材上に請求項1または請求項2記載の前記真偽判定媒体が積層されていることを特徴とする真偽判定体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−7598(P2006−7598A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188026(P2004−188026)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】