説明

真偽判定用インキ組成物及び真偽を判定する方法

【課題】真偽判定用インキ組成物及び真偽を判定する方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される有機金属錯体と、極性溶剤と、該極性溶剤に可溶な樹脂と、を配合したことを特徴とする真偽判定用インキ組成物。


(式中、Mは遷移金属、nは2から4の整数を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属錯体を配合した真偽判定用インキ組成物を用い、該真偽判定用インキ組成物にてマーキングした記録対象物を蛍光X線分析することにより真偽判定に使用できる真偽判定用インキ組成物及び真偽を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マーキングを蛍光X線分析することにより、検出物質の定性分析、定量分析を行って記録対象物の真偽を判定することができることは知られている。検出物質の種類、配合量が検出できるので、当初のインキ組成物が特定できトレーサビリティを可能とする。
また、検出物質を蛍光X線分析で検知できるため、経時劣化に強く、記録対象物の真偽判定や流通管理が行える。また、紙幣等の印刷に用いれば、検出物質の種類と量の組み合わせは無数に存在し偽造防止に有効である。
また、一般に流通している商品などには、ランタノイド系金属元素は含有されていないため、ランタノイド系金属元素を有する錯体を検出物質に用いた場合は、真偽の判定や流通管理が容易に行えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−272832号公報
【特許文献2】特開2007−23199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に示されるランタノイド系金属元素を有する錯体を検出物質に用いた場合は、蛍光X線分析による定量分析の検出強度が弱く、検出物質の配合量を増やさなければならい課題が生じていた。
ランタノイド系金属元素は値段が高いため、配合量が少なくても、同様の効果を有する検出物質が望まれていた。
前記ランタノイド系金属元素を有する錯体としては、C3357La(La(DPM))、C3357Pr(Pr(DPM))、C3357Eu(Eu(DPM))、C3357Gd(Gd(DPM))、C3357Tb(Tb(DPM))、C3357Dy(Dy(DPM))、C3357Tm(Tm(DPM))などをあげることができる。ここで、DPMは「dipivaloylmethanato」の略語であって、(DPM)は「Bis(dipivaloylmethanato)」、(DPM)は「Tris(dipivaloylmethanato)」を表す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた第1の発明の真偽判定用インキ組成物は、
下記一般式(1)で表される有機金属錯体と、極性溶剤と、該極性溶剤に可溶な樹脂と、を配合したことを特徴とする。
【化1】

(式中、Mは遷移金属、nは2から4の整数を表す)
【0006】
第2の発明は、可視光線下で有色の色材を配合したことを特徴とする第1の発明に記載の真偽判定用インキ組成物である。
【0007】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明の真偽判定用インキ組成物を使用して記録対象物にマーキングした後、該マーキングを蛍光X線を用いて定性分析及び定量分析を行って前記有機金属錯体を検出し、前記記録対象物の真偽を判定する方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、次の効果を有する。
本発明の真偽判定用インキ組成物には、一般式(1)で表される有機金属錯体を配合するため、蛍光X線分析による定量分析の検出強度が強い。そのため、配合量が少なくても、ノイズに紛れることなく検知することができ、コスト面で有利である。
また、従来同様、次の効果を有する。
マーキングを蛍光X線分析することにより、一般式(1)で表される有機金属錯体の定性分析及び定量分析を行って記録対象物の真偽を判定することができる。
また、一般式(1)で表される有機金属錯体の種類及び配合量が検出できるので、当初の真偽判定用インキ組成物が特定できトレーサビリティを可能とする。
また、一般式(1)で表される有機金属錯体を蛍光X線分析で検知できるため、経時劣化に強く、記録対象物の真偽判定や流通管理が行える。
また、紙幣等の印刷に用いれば、一般式(1)で表される有機金属錯体の種類と量の組み合わせは無数に存在し偽造防止に有効である。
また、一般に流通している商品などには、ランタノイド系金属元素は含有されていないので、ランタノイド系金属元素を有する錯体を一般式(1)で表される有機金属錯体に用いた場合は、真偽の判定や流通管理が容易に行えるものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態の説明)
以下、本発明の第1の実施形態について詳細に説明する。
前記一般式(1)の遷移金属Mとしては、周期表中第3属元素から第11属元素を用いることができ、中でも、第3属元素である、Y、ランタノイド系金属元素、第4属元素であるHfを用いることができる。ランタノイド系金属元素としては、La、Pr、Eu、Gd、Tb、Dy、Tmなどを用いることができる。
前記一般式(1)で表される有機金属錯体としては、
La(C、Tris(2、4-pentanedionato)Lanthanum、
Pr(C、Tris(2、4-pentanedionato)Praseodymium、
Tb(C、Tris(2、4-pentanedionato)Terbium、
Dy(C、Tris(2、4-pentanedionato)Dysprosium、
Y(C、Tris(2、4-pentanedionato)Yttrium、
Eu(C、Tris(2、4-pentanedionato)Europium、
Gd(C、Tris(2、4-pentanedionato)Gadolinium、
Tm(C、Tris(2、4-pentanedionato)Thulium、
Hf(C、Tetrakis(2、4-pentanedionato)Hafnium、
などを用いることができ、また、その水和物として、
La(C・nHO、Tris(2、4-pentanedionato)Lanthanum(III)hydrate、
Pr(C・nHO、Tris(2、4-pentanedionato)Praseodymium(III)hydrate、
Tb(C・3HO、Tris(2、4-pentanedionato)Terbium(III)Trihydrate、
Dy(C・nHO、Tris(2、4-pentanedionato)Dysprosium(III)hydrate、
Y(C・nHO、Tris(2、4-pentanedionato)Yttrium(III)hydrate、
Eu(C・nHO、Tris(2、4-pentanedionato)Europium(III)hydrate、
Gd(C・nHO、Tris(2、4-pentanedionato)Gadolinium(III)hydrate、
Tm(C・nHO、Tris(2、4-pentanedionato)Thulium(III)hydrate、
Hf(C・nHO、Tetrakis(2、4-pentanedionato)Hafnium(IV)hydrate、
などを用いることができる。これら有機金属錯体は、例えば株式会社高純度化学研究所製を用いることができる。
ここで、前記「2、4-pentanedionato」は、別名「acetylacetonato」と呼ばれ、さらに「acetylacetonato」は、「acac」の略語で表される。
「acac」の略語を使用すると、前記有機金属錯体は、La(acac)、Pr(acac)、Tb(acac)、Dy(acac)、や、その水和物、La(acac)・nHO、Pr(acac)・nHO、Tb(acac)・3HO、Dy(acac)・nHO、などと表すことができる。
前記有機金属錯体の配合量は、インキ全量に対して、0.001重量%以上10.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは、0.01重量%以上5.0重量%以下、さらに好ましくは、0.05重量%以上1.0重量%以下である。配合量が10.0重量%より多い場合は、溶解性や、増粘による問題が生じる。
【0010】
本発明に用いる極性溶剤としては、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アマニ油、ヒマシ油等の植物油類、リシノール酸メチル、リシノール酸プロピレンエステル、リシノール酸ブチルエステル、リシノール酸モノグリセライド等のヒマシ油誘導体類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のポリエーテルポリオール類、ジメチルイミダゾール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、などの中から少なくとも1つ以上を用いることができる。
【0011】
本発明に用いる、前記極性溶剤に可溶な樹脂としては、ロジン変性マレイン酸樹脂、アルキルフェノール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、エチセルロース樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ロジン樹脂、エステル樹脂、ニトロセルロース樹脂、アルデヒド樹脂、フェノール樹脂、シクロヘキサノン系アルデヒド樹脂、ケトンホルムアルデヒド樹脂、アクリル樹脂、水溶性アクリル樹脂、水性合成樹脂エマルジョン、マレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの中から少なくとも1つ以上を選択可能である。
具体的には商品名で、マルキードNo32(会社名:荒川化学)、ヒタノールNo1133、ヒタノールNo1140(会社名:日立化成)、エスレックBL−2(会社名:積水化学)、テゴヴァリプラス(会社名:株式会社イムペックスケミカルス謙信洋行)、エチルセルロースN−14(会社名:ハーキュレス)、SCH−2(会社名:岐阜セラック)、KE−604(会社名:荒川化学)、ジョンクリル 683、67、586(以上、ジョンソンポリマー(株)製)、ジュリマー AC−10P、AC−10NP、AC−103AP、ジュリマー ET−410、ET−510(以上、日本純薬(株)製)、ジョンクリル 61J、354、501(以上、ジョンソンポリマー(株)製)、ジョンクリル 1535、537、74J(以上、ジョンソンポリマー(株)製)、アプレタン 3410、モビニール DM765,771H、DM772、DM774(以上、クラリアントポリマー(株)製)等を用いることができる。
【0012】
(第2の実施形態の説明)
以下、第2の実施形態について説明する。ここでは、前記した第1の実施形態と異なる点のみ説明する。
第2の実施形態では、可視光線下で有色の色材を配合する。
本発明に用いる有色の色材としては、染料及び顔料を用いることができ、既存のものでも、新規に合成したものでも、適度な色調と濃度とを有するものであれば問題なく用いることができる。
【0013】
直接染料としては、C.I.ダイレクイトブラック 17、同19、同22、同31、同32、同38、同51、同62、同71、同74、同112、同113、同154、同168、C.I.ダイレクイトイエロー 4、同8、同11、同12、同26、同27、同28、同33、同39、同44、同50、同58、同85、同86、同87、同88、同89、同98、同100、同110、C.I.ダイレクイトレッド 1、同2、同4、同9、同11、同20、同23、同24、同31、同37、同39、同46、同62、同75、同79、同80、同81、同83、同89、同95、同197、同201、同218、同220、同224、同225、同226、同227、同228、同230、C.I.ダイレクイトブルー 1、同15、同22、同25、同41、同71、同76、同77、同80、同86、同90、同98、同106、同108、同199、同120、同158、同163、同168、同199、同226等が挙げられる。
酸性染料としては、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、48、51、同52、同107、同109、同110、同115、同119、同154、同156、C.I.アシッドイエロー 1、同3、同7、同11、同17、同23、同25、同29、同36、同38、同40、同42、同44、同49、同61、同72、同78、同110、同135、同127、同141、同142、C.I.アシッドレッド 6、同8、同9、同13、同14、同18、同26、同27、同32、同35、同37、同42、同51、同52、同57、同80、同82、同83、同87、同89、同92、同94、同106、同111、同114、同115、同129、同131、同133、同134、同138、同145、同158、同186、同198、同249、同254、同265、同276、同289、C.I.アシッドバイオレット 15、同17、C.I.アシッドブルー 1、同7、同9、同15、同22、同23、同25、同29、同40、同41、同43、同59、同62、同74、同78、同80、同83、同90、同93、同100、同102、同103、同104、同112、同113、同117、同127、同138、同158、同161、C.I.アシッドグリーン 3、同9、同16、同25、同27等が挙げられる。
塩基性染料としては、C.I.ベーシックレッド 1、同2、同9、同12、同13、同38、同39、同92、C.I.ベーシックブルー 1、同3、同7、同5、同9、同19、同24、同25、同26、同28、同45、同54、同65、C.I.ベーシックブラック 2、同8等が挙げられる。
油溶性染料としては、ニグロシン系、アジン系、モノアゾ系、ジスアゾ系、金属錯塩型モノアゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、トリアリルメタン系等の油溶性染料、油溶性造塩染料、油溶性含金染料を用いることができ、ニグロシンベ−スEE、同EEL、同EX、同EXBP、同SAPL、スペシャルブラック、オイルイエロー105、同107、オイルピンク312、オイルスカーレット318、オイルブラウンBB、同GR、同416、オイルグリーンBG、オイルブルー613、オイルブルー615、同BOS オイルブラックHBB、同860、同BS、バリファストイエロー1101、同1105、同3108、同4120、同4121、バリファストオレンジ2210、同3209、同3210、バリファストレッド1306、同1308、同1355、同1360、同2303、同2320、同3304、同3306、同3320、バリファストピンク2310N、バリファストブラウン2402、同3405、バリファストグリーン1501、バリファストブルー1603、同1605、同1631、同2606、同2610、同2620、バリファストバイオレット1701、同1702、バリファストブラック1807、同3804、同3806,同3808、同3810、同3820、同3830、オスピーイエローRY、ROB−B、MVB3、SPブルー105(以上、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンイエロー3RH、同GRLHスペシャル、同C−2GH、同C−GNH、アイゼンスピロンオレンジ2RH、同GRHコンクスペシャル、アイゼンスピロンレッドGEH、同BEH、同GRLHスペシャル、同C−GH、同C−BH、アイゼンスピロンバイオレットRH、同C−RH、アイゼンスピロンブラウンBHコンク、同RH、アイゼンスピロンマホガニーRH、アイゼンスピロンブルーGNH、同2BNH、同C−RH、同BPNH、アイゼンスピロングリーンC−GH、アイゼンスピロンブラックBNH、同MH、同RLH、同GMHスペシャル、同BHスペシャル、S.B.N.オレンジ703、S.B.N.バイオレット510、同521、S.P.T.オレンジ6、S.P.T.ブルー111、SOTピンク1、SOTブルー4、SOTブラック1、同6、同10、同12、13リキッド、アイゼンローダミンBベース、アイゼンメチルバイオレットベース、アイゼンビクトリアブルーBベース(以上、保土谷化学工業(株)製)、オイルイエローCH、オイルピンク330、オイルブルー8B、オイルブラックS、同FSスペシャルA、同2020、同109、同215、ALイエロー1106D、同3101、ALレッド2308、ネオスーパーイエローC−131、同C−132、同C−134、ネオスーパーオレンジC−233、ネオスーパーレッドC−431、ネオスーパーブルーC−555、ネオスーパーブラウンC−732、同C−733(以上、中央合成化学(株)製)、などをあげることができる。
他にも天然色素、食用色素、植物色素などの染料も用いることができる。
【0014】
顔料としては、従来公知の有機顔料及び無機顔料を使用することができ、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ・チオインジゴ系、ベリノン・ベリレン系、イソインドレノン系、アゾメチレンアゾ系、ジケトピロロピロール系などの有機顔料、カーボンブラック、チタン白などの無機顔料、着色樹脂エマルジョン、パール顔料、アルミニウム顔料、光輝性顔料、蓄光顔料、蛍光顔料などを用いることができる。これらの顔料は通常、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−アクリル酸共重合体、及び、それらの金属塩・アンモニウム塩・アミン塩などや、他の公知の樹脂などに練り込んで加工顔料としておくと、溶剤と混合する際に容易に分散するので便利である。また、既に分散剤中に顔料を練り込んである市販の加工顔料を用いても良く、具体的には、MICROLITH Yellow 3G−WA、MICROLITH Yellow 2R−WA、MICROLITH Scarlet R−WA、MICROLITH Blue 4G−WA、MICROLITH Yellow 2R−A、MICROLITH Scarlet R−A、MICROLITH Blue 4G−A(以上、BASFジャパン(株)製)、EM YELLOW FX−3024、EM SCARLET 2YD、EM GREEN G、EM PINK 2B、EM BLUE 2G(以上、東洋インキ(株)製)、SANDYE SUPER YELLOW 1608、SANDYE SUPER YELLOW D215、SANDYE SUPER BLUE GLL、SANDYE SUPER CARMINE FB(以上、山陽色素(株)製)等を例示することができる。
上記染料及び顔料は単独或いは混合して任意に使用することができる。その配合量はインキ全量に対して0.5〜50重量%が好ましい。
【0015】
また、紫外線下で発光する物質を配合することも可能である。紫外線下で発光する物質としては、次のものが選択可能である。
可視光領域で実質的に不可視(不発色)であり、紫外線発光型(紫外線励起型)の物質でチノパールOB(2−チオフェンジル、BASFジャパン(株)製)、金属元素をユウロピウムとしたβ−ジケトン錯体物質であり赤色発光が可能な商品名LCH613(日本化薬株式会社)、商品名LUMI−COLOR(ルミカラー、記録素材研究所)があり少なくとも1つが選択可能である。
また、本発明の真偽判定用インキ組成物には、各種の添加剤が使用可能であり、PH調整剤、界面活性剤等を添加することもできる。
また、本発明の真偽判定用インキ組成物は、種々のインキとして使用可能であるが、特に、氏名や日付等を捺印する氏名印、日付印、朱肉等のインキ組成物として使用すると、トレーサビリティ効果が高く有用である。
【0016】
以下、前記真偽判定用インキ組成物を使用して記録対象物にマーキングした後、該マーキングを蛍光X線を用いて定性分析及び定量分析を行って前記有機金属錯体を検出し、前記記録対象物の真偽を判定する方法について説明する。
前記真偽判定用インキ組成物をケント紙にマーキングし、蛍光X線分析装置にて、定性分析及び定量分析する。
定性分析は、蛍光X線と元素との規則性を利用して行う。
また、定量分析は、検量線法を用いて行う。この検量線法は、濃度がわかっているサンプルを数点実際に測定することで、測定したい元素の蛍光X線の検出強度と濃度との間の関係を求めておき、その結果を元にして未知試料を測定して得られた蛍光X線の検出強度から濃度を求める方法である。
このようにして定性分析及び定量分析を行い、それぞれの遷移金属元素とその量を検出する。真偽判定は、マーキングに使用した真偽判定用インキ組成物の配合と測定結果を照合することで可能となる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
上記一般式(1)で表される有機金属錯体と、樹脂と、溶剤と、可視光線下で有色の色材とを配合したことを特徴とする真偽判定用インキ組成物の具体的な実施例を表1に示す。

表1に示す実施例1から実施例4のLa(acac)、Pr(acac)、Dy(acac)のかわりに、La(DPM)、Pr(DPM)、Dy(DPM)を配合したものを比較例1から比較例4とする。
【0018】
次に、実施例1から実施例4、比較例1から比較例4を、前記方法により蛍光X線分析する。定性分析及び定量分析は、Lα線で行った。
本実施例では、検量線法により定量分析を行い、検出物質を0重量%(ブランク)、0.01重量%、0.05重量%の場合のサンプルを作製して、予め測定値を計測しておく。
このようにして定性分析及び定量分析を行い、それぞれのランタノイド系金属元素の検出強度とその配合量を測定した。
表1の試験結果からも明らかなように、「acac」は、配合量が同じであるにも関わらず、「DPM」と比較して、1.3倍から1.8倍の検出強度を得ることができた。つまり、同一の検出強度であれば、「acac」は「DPM」より配合量が少なくてすみ、本試験結果によれば、「acac」の配合量は、「DPM」の配合量に対して0.6倍から0.8倍の量ですむことになる。
また、表中に示していないが、検量線法により、各実施例、各比較例ともに、0.1重量%の有機金属錯体が配合されていることを確認できた。
以上の結果より、「acac」は、「DPM」より少ない配合量にも関わらず、「DPM」と同等の真偽判定をすることができるものである。
【0019】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う真偽判定用インキ組成物もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される有機金属錯体と、
極性溶剤と、
該極性溶剤に可溶な樹脂と、
を配合したことを特徴とする真偽判定用インキ組成物。
【化1】

(式中、Mは遷移金属、nは2から4の整数を表す)
【請求項2】
可視光線下で有色の色材を配合したことを特徴とする請求項1に記載の真偽判定用インキ組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の真偽判定用インキ組成物を使用して記録対象物にマーキングした後、該マーキングを蛍光X線を用いて定性分析及び定量分析を行って前記有機金属錯体を検出し、前記記録対象物の真偽を判定する方法。

【公開番号】特開2012−51956(P2012−51956A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193080(P2010−193080)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(390017891)シヤチハタ株式会社 (162)
【Fターム(参考)】