説明

真偽判定装置、プログラム、及び記憶媒体

【課題】複数枚からなる1セットの原稿の真偽の判定を短時間で行う。
【解決手段】ランダムな固有の特徴を有する真のシート状対象物の表面の所定の領域の特徴を表す基準データを取得すると共に、読み取られた判定対象のシート状対象物の表面の一部の比較領域の特徴を表す比較データの抽出、及び当該比較データと基準データとの比較を、基準位置から比較領域の位置を移動させて繰り返し、比較結果に基づいて判定対象のシート状対象物の真偽を判定する真偽判定装置であって、複数枚のシート状対象物からなる1セットの対象物の真偽を判定する場合に、1セット中の1枚のシート状対象物が真であると判定されたときの比較領域の位置を記憶し、当該比較領域の位置を基準位置として、1セット中の他のシート状対象物の前記比較領域の位置を移動させるように判定を制御する真偽判定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真偽判定装置、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有権証券、機密文書等の紙文書の偽造防止及び原本保証を行なうための技術が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、紙文書の紙の繊維が形成するランダムパターンを予め登録しておき、照合対象の紙文書のランダムパターンと登録されているランダムパターンとを比較することにより、紙文書を照合する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2004−102562公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、複数枚からなる1セットのシート状対象物の真偽の判定を短時間で行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の真偽判定装置の発明は、ランダムな固有の特徴を有する真のシート状物の表面の所定の領域が予め読み取られることで得られた前記所定の領域の特徴を表す基準データを取得する取得手段と、判定対象のシート状対象物の表面を読み取る読取手段と、前記読取手段により読み取られた前記シート状対象物の表面の一部の比較領域の特徴を表す比較データの抽出、及び当該抽出した比較データと前記基準データとの比較を、基準位置から前記比較領域の位置を移動させて繰り返し、比較結果に基づいて前記シート状対象物の真偽を判定する判定手段と、複数枚のシート状対象物からなる1セットの対象物の真偽を判定する場合に、前記1セット中の1枚のシート状対象物が真であると判定されたときの前記比較領域の位置を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に前記比較領域の位置が記憶されている場合は、当該比較領域の位置を前記基準位置として、前記1セット中の他のシート状対象物の前記比較領域の位置を移動させるように前記判定手段を制御する制御手段と、を備えている。
【0006】
請求項2の発明は請求項1に記載の真偽判定装置において、前記制御手段は、前記基準位置を含んだ所定範囲内で前記比較領域を移動させたときに前記シート状対象物が真であると判定されない場合には、前記シート状対象物の中心に対して点対称となる位置を新たな基準位置として前記比較領域の位置を移動させるように前記判定手段を制御するものである。
【0007】
請求項3の発明は、コンピュータに、判定対象のシート状対象物の表面の一部の比較領域の特徴を表す比較データの抽出、及び当該抽出した比較データとランダムな固有の特徴を有する真のシート状物の表面の所定の領域が予め読み取られることで得られた前記所定の領域の特徴を表す基準データとの比較を、基準位置から前記比較領域の位置を移動させて繰り返し、比較結果に基づいて前記シート状対象物の真偽を判定するステップと、複数枚のシート状対象物からなる1セットの対象物の真偽を判定する場合に、前記1セット中の1枚のシート状対象物が真であると判定されたときの前記比較領域の位置を記憶手段に記憶させるステップと、前記記憶手段に前記比較領域の位置が記憶されている場合は、当該比較領域の位置を前記基準位置として、前記1セット中の他のシート状対象物の前記比較領域の位置を移動させるように制御するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【0008】
請求項4の発明は、前記請求項3に記載のプログラムを記憶した記憶媒体である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1、請求項3、及び請求項4の発明によれば、複数枚のシート状対象物からなる1セットの対象物の真偽を基準位置を変えずに判定する場合と比較して、1セットの対象物の真偽の判定を短時間で行うことができる、という効果が得られる。
【0010】
請求項2の発明によれば、基準位置を含んだ所定範囲内で比較領域を移動させたときにシート状対象物が真であると判定されない場合に、比較領域の移動の仕方を変えない場合と比較して、1セットの対象物の真偽の判定を短時間で行うことができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る真偽判定の機能を備えた複合機10は、ネットワーク12を介して、紙指紋データベースサーバ14、及び複数台(図1には2台を図示)のクライアントPC16A,16Bと接続されている。なお、図1には1台の複合機10が接続される形態を図示しているが、同様の機能を備えた複合機が複数台接続される形態であってもよい。
【0013】
紙指紋データベースサーバ14は、ネットワークインターフェース、コントローラ、及びストレージデバイス(各々の図示省略)を含んで構成されており、ネットワークインターフェースを介して受信した紙指紋データベースサーバ14への登録指示に応じて、ストレージデバイス内に登録指示に応じたデータを登録する。また、紙指紋データベースサーバ14は、ネットワークインターフェースを介して受信した紙指紋データベースサーバ14からの読出指示に応じて、読出指示に応じたデータをストレージデバイスから読み出して、読出指示の送信元へ返信する。
【0014】
紙指紋データベースサーバ14には、真偽判定の対象となる紙毎に、各々の紙(原本)上の所定サイズの任意の領域(以下「紙指紋領域」という)から採取された固有の特徴を表す基準データ(以下「紙指紋データ」という)が登録されている。ここで、紙を形成する繊維質材料の絡み具合を製造時に制御することは不可能であるので、紙を形成する繊維質材料の絡み具合はランダムと見なすことができる。これにより、任意の領域を読み取ることによって得られる画像に対応するデータが、紙(原本)上の任意の領域内における紙(原本)に固有の特徴を表す情報とすることができる。
【0015】
ここで、複数枚の紙を1セットとした原稿である場合、同じセットの紙(原本)の紙指紋データの各々は、同じセットに含まれていることが分かるように対応付けて紙指紋データベースサーバ14に登録されている。また、同じセットの紙(原本)同士は同じ位置の所定サイズの領域から紙指紋データが採取されている場合が多い。
【0016】
クライアントPC16A,16Bは複合機10に画像データ及び動作指示を送信すると共に、複合機10から動作状態の信号の受信を行う。
【0017】
次に、図2を参照して、複合機10の概略構成を説明する。
【0018】
複合機10には、CPU18,ROM20,RAM22等がバス24によって接続されたシステムコントローラ26が設けられている。また、複合機10には、ネットワークと接続するためのネットワークインターフェース28、操作パネル及びディスプレイを含み各種の入力操作や複合機10の動作状態の表示等が行われるユーザーインターフェース30、スキャナ部32、プリンタ部34、HDD36、及び読取装置38を含んで構成されている。ネットワークインターフェース28、ユーザーインターフェース30、スキャナ部32、プリンタ部34、及びHDD36は、システムコントローラ26のバス24に接続されており、システムコントローラ26によって、複合機10の全体が制御されている。
【0019】
また、システムコントローラ26は、ネットワークインターフェース28を介して紙指紋データベースサーバ14、及びクライアントPC16A,16B等にネットワーク接続可能になっている。
【0020】
スキャナ部32は、プラテンガラス(図示省略)上に原稿が載せられることにより、この原稿画像を読み取って、原稿画像に応じた画像データを生成する。本実施の形態において、原稿画像は、例えば400dpiの解像度・8ビットグレイスケールの階調で表される。本実施の形態に係る複合機10には、載せられた原稿を1枚ずつ自動的に送る、いわゆる自動原稿給紙装置(ADF)が備えられている。
【0021】
プリンタ部34は、例えば電子写真プロセスを適用して、ネットワークを介してクライアントPC16A,16B等から入力される画像データ、スキャナ部32によって読み込まれた原稿画像の画像データ等に応じた画像を記録紙等に形成する。
【0022】
HDD36は、OS(オペレーティングシステム)、後述する真偽判定処理を実行するためのプログラム、プログラムの実行に用いられるデータ、及びスキャナ部32によって生成された画像データ、ネットワーク等を介して入力される画像データ等が格納される不揮発性の記憶装置である。
【0023】
読取装置38は、光磁気ディスク、光ディスク、磁気ディスク等の記憶媒体40が装着され、記憶媒体40から記憶内容が伝達される。例えば、光磁気ディスクの記憶内容を読み取るための光磁気ディスク装置、光ディスクの記憶内容を読み取るための光ディスク装置、及び磁気ディスクの記憶内容を読み取るための磁気ディスク装置等がある。
【0024】
このような複合機10において、システムコントローラ26のCPU18は、HDD36に記憶されているプログラムを読み出してRAM22に格納し、RAM22に格納したプログラムの各々を実行する。本実施の形態では、CPU18によりプログラムが実行されることによって、複合機10において、スキャナ部32によって読み取られた紙の原稿が原本か否かの真偽判定処理が実行される。
【0025】
なお、HDD36に記憶されているプログラム及びプログラムの実行に用いられるデータ等は、記憶媒体40に記憶させて、読取装置38に読み取らせてもよい。このようにプログラムが記憶媒体40に記憶されている場合は、記憶媒体40が読取装置38に装着されると、システムコントローラ26のCPU18は、記憶媒体40に記憶されているプログラムを読み出してRAM22に格納する。
【0026】
次に、システムコントローラ26による真偽判定処理の説明を行なう。
【0027】
図3は、システムコントローラ26による真偽判定の処理ルーチンを示している。この処理ルーチンのプログラムは、システムコントローラ26のROM20に記憶されている。
【0028】
ステップ100では、スキャナ部32に真偽判定対象の原稿がセットされたか否かが判定される。判定が肯定された場合はステップ102へ移行し、判定が否定された場合はステップ100に戻る。
【0029】
ステップ102では、真偽判定対象が、複数枚からなる1セットの原稿か否かを判定する。この判定は、スキャナ部にセットされた原稿が複数枚の場合、1セットとしてもよいし、ユーザーインターフェース30により、複数枚からなる1セットの原稿であることが入力された場合に1セットとしてもよい。
【0030】
ステップ104では、スキャナ部32に1枚の原稿をスキャンさせる。本実施の形態の複合機10には自動原稿給紙装置(ADF)が備えられているので、複数枚のうち最上に載せられている原稿をスキャンし、画像データを記憶する。
【0031】
ステップ106では、RAM22に紙指紋領域の位置を検索するときの位置の基準となる基準位置を示す位置データが記憶されているか否かを判定する。記憶されていない場合はステップ108へ移行し、記憶されている場合はステップ116へ移行する。
【0032】
ステップ108では、原点を基準位置として紙指紋領域の位置を検索して、以下のように原稿の真偽判定を行う。
【0033】
次に、図4,5を参照してステップ108の原稿の真偽判定ルーチンを説明する。
【0034】
本実施の形態の紙指紋領域の位置の検索は、例えば図4(A)に示されるように、原稿を複数のブロックに分割して(図4(A)に図示される場合では、点線により28分割)、各ブロック毎に紙指紋領域を含むか否かを判定することにより行なう。
【0035】
図5のステップ150では、原点に位置するブロックを選択する。すなわち、図4(A)に図示される場合であれば「1」のブロックを選択する。
【0036】
ステップ152では、ブロックの隅に位置するように比較領域の位置を決める。すなわち、図4(B)に図示される場合であれば、領域B1に位置するように比較領域の位置を決める。
【0037】
ステップ154では、ステップ152で決められた位置の比較領域の画像(以下「比較画像」という)を抽出する。
【0038】
ステップ156では、比較処理を行なう。
【0039】
次に、ステップ156の比較の処理ルーチンを説明する。図6,7を参照して、2パターンの異なる比較の処理ルーチンについて説明する。
【0040】
図6は、比較領域のサイズを紙指紋領域と同じサイズとした場合のルーチンを示している。
【0041】
ステップ200では、ステップ104の処理によって得られた画像データから、比較画像に対応する比較データを抽出する。本実施の形態では、例えば、紙指紋領域のサイズ及び比較領域のサイズを64×64ドット(約4mm×約4mm)とする。
【0042】
ステップ202では、紙指紋データを取得する。ここで、RAM22に紙指紋領域の位置を検索するための基準となる基準位置を示す位置データが記憶されていない場合は、紙指紋データベースサーバ14から、未だ比較が行なわれていない紙指紋データの何れかを取得する。なお、紙指紋領域の位置を検出したときには、当該紙指紋データと対応付けられて紙指紋データベースサーバ14に登録されている同じセットに含まれる原稿の紙指紋データを読み出し、RAM22に記憶させる。すなわち、RAM22に基準位置を示す位置データが記憶されている場合は、RAM22から、未だ比較が行なわれていない紙指紋データの何れかを取得する。
【0043】
ステップ204では次の(1)式に従い、紙指紋データと比較データとの相関値を正規化相関法により演算する。
【0044】
【数1】

ステップ206では、ステップ204で求めた相関値が閾値を超えているか否か判定する。なお、相関値の閾値としては例えば「0.3」を用いることができる。ステップ206の判定が肯定された場合にはステップ208へ移行し、照合成立とする。また、ステップ206の判定が否定された場合はステップ210へ移行し、未だ比較が行なわれていない紙指紋データがないか否かを判定する。判定が肯定された場合はステップ212へ移行し、判定が否定された場合はステップ202へ戻る。ステップ212では、照合不成立とする。
【0045】
図7は、比較領域のサイズを紙指紋領域よりも大きいサイズとした場合のルーチンを示している。
【0046】
ステップ250では、ステップ104の処理によって得られた画像データから、比較画像に対応する比較データを抽出する。
【0047】
ステップ252では、紙指紋データを取得する。ここで、RAM22に紙指紋領域の位置を検索するための基準となる基準位置を示す位置データが記憶されていない場合は、紙指紋データベースサーバ14から、未だ比較が行なわれていない紙指紋データの何れかを取得する。なお、紙指紋領域の位置を検出したときには、当該紙指紋データと対応付けられて紙指紋データベースサーバ14に登録されている同じセットに含まれる原稿の紙指紋データを読み出し、RAM22に記憶させる。すなわち、RAM22に基準位置を示す位置データが記憶されている場合は、RAM22から、未だ比較が行なわれていない紙指紋データの何れかを取得する。
【0048】
ステップ254では、比較領域内におけるデータ抽出位置を初期化する。
【0049】
ステップ256では、比較データから、設定したデータ抽出位置に位置している紙指紋領域と同サイズの領域のデータ(演算対象データ)を取り出す。例えば、紙指紋領域のサイズを32×32ドット(約2mm×約2mm)とし、比較領域のサイズを64×64ドット(約4mm×約4mm)とする。
【0050】
ステップ258では前述の(1)式に従い、紙指紋データと演算対象データとの相関値を正規化相関法により演算し、演算によって得られた相関値をRAM22に記憶させる。
【0051】
ステップ260では、比較領域の全面について演算・記憶したか否か判定する。判定が肯定された場合はステップ264へ移行し、判定が否定された場合はステップ262へ移行する。
【0052】
ステップ262では、データ抽出位置を1ドットだけ縦又は横に移動させ、ステップ256に戻る。これにより、ステップ260の判定が肯定されるまでの間、ステップ256〜ステップ262が繰り返される。本実施の形態では紙指紋領域が32×32ドット、比較領域が64×64ドットとしたので、相関値の演算が(64−32+1)×(64−32−1)=1089回行われ、1089個の相関値が得られることになる。
【0053】
相関値の演算が終了するとステップ260の判定が肯定されてステップ264へ移行し、上記の演算によって得られた多数個の相関値の中から最大値を抽出する。
【0054】
ステップ266では、多数個の相関値の標準偏差及び平均値を演算した後に、演算した標準偏差・平均値及びステップ264で求めた相関値の最大値を次の(2)式に各々代入することで、相関値の最大値のノーマライズド・スコアを演算する。
ノーマライズド・スコア=(相関値の最大値−相関値の平均値)÷相関値の標準偏差 …(2)
ステップ268では、ステップ264で求めた相関値の最大値が閾値を超え、かつステップ266で演算したノーマライズド・スコアが閾値を超えているか否か判定する。なお、相関値の最大値の閾値としては例えば「0.3」を、ノーマライズド・スコアの閾値としては例えば「5.0」を用いることができる。ステップ268の判定が肯定された場合にはステップ270へ移行し、照合成立とする。また、ステップ268の判定が否定された場合はステップ272へ移行し、未だ比較が行なわれていない紙指紋データがないか否かを判定する。判定が肯定された場合はステップ274へ移行し、判定が否定された場合はステップ252へ戻る。ステップ274では、照合不成立とする。
【0055】
ステップ158では、照合が不成立か否かを判定する。判定が肯定された場合はステップ160へ移行し、判定が否定された場合は図3のステップ110へ移行する。
【0056】
ステップ160では、選択されているブロック内に比較処理が未実施の領域がないか否かを判定する。判定が肯定され場合はステップ164に移行し、判定が否定された場合はステップ162へ移行する。
【0057】
ステップ162では、比較領域の位置を移動する。すなわち、例えば図4(B)の矢印で示されるように、比較領域の位置を領域B1から領域B2に移動する(図4(B)に示される場合では、領域B1と領域B2とは一部重なっている)。この移動幅は、1ドットの幅であることが望ましい。また、この移動幅は、比較結果に基づいて、相関の度合いが小さいうちは比較領域の半分の幅として、相関の度合いが大きくなるに従い幅を狭めていくようにしてもよい。
【0058】
ステップ164では、比較処理が未実施のブロックがないか否かを判定する。判定が肯定された場合は図3のステップ110へ移行し、判定が否定された場合はステップ166へ移行する。
【0059】
ステップ166では、ブロックの選択を行なう。例えば、図4(A)に図示される場合であれば、矢印4Aで示される順番でブロックが選択されるようにする。
【0060】
次に、ステップ110では、紙指紋データが採取された位置を検出したか否かを判定する。判定が肯定された場合はステップ112へ移行し、判定が否定された場合はステップ114へ移行する。
【0061】
ステップ112では、紙指紋データが採取された位置を基準位置としてRAM22に記憶する。
【0062】
ステップ114では、次の原稿があるか否かを判定する。原稿がない場合は後述するステップ122へ移行し、原稿がある場合はステップ104へ戻る。
【0063】
次に、ステップ106の判定で、RAM22に基準位置を示す位置データが記憶されていると判定された場合に移行するステップ116の処理ルーチンを図8,9を参照して説明する。
【0064】
図8のステップ300では、RAM22に記憶されている位置データの基準位置を含むブロックを選択する。すなわち、図9に図示される場合であれば「1」のブロックを選択する。
【0065】
ステップ302では、ステップ300で選択されたブロックに隣接するブロックの全てに対して比較処理を行なう。すなわち、図9(A)に図示される場合であれば、「1」〜「9」のブロックに対して比較処理を行なう。また、図9(B)に図示されるように、隣り合うブロックがない場合であれば、「1」〜「6」のブロックに対して比較処理を行なう。
【0066】
次に、ステップ302の処理ルーチンを図10を参照して説明する。
【0067】
ステップ350では、選択されたブロックの隅に位置するように比較領域の位置を決める。
【0068】
ステップ352では、ステップ350で決められた位置の比較領域の画像(以下「比較画像」という)を抽出する。
【0069】
ステップ354では、比較処理を行なう。この比較処理のルーチンは、前述の図5のステップ156の比較の処理ルーチンと同様である。
【0070】
ステップ356では、照合が成立か否かを判定する。照合が不成立の場合はステップ358へ移行し、照合が成立した場合は図8のステップ304へ移行する。
【0071】
ステップ358では、選択されているブロック内に比較処理が未実施の領域があるか否かを判定する。未実施の領域がない場合はステップ362に移行し、未実施の領域がある場合はステップ360へ移行する。
【0072】
ステップ360では、比較領域の位置を移動する。この移動幅は、1ドットの幅であることが望ましい。また、この移動幅は、比較結果に基づき、相関の度合いが小さいうちは比較領域の半分の幅として、相関の度合いが大きくなるに従い幅を狭めていくようにしてもよい。
【0073】
ステップ362では、ステップ300で選択されたブロックに隣接するブロックの全てに対して比較処理を行なったか否かを判定する。すなわち、図9(A)に図示される場合であれば、「1」〜「9」のブロックに対して比較処理を行なったか否かを判定する。判定が肯定された場合は図8のステップ304へ移行し、判定が否定された場合はステップ364へ移行する。
【0074】
ステップ364では、ブロックの選択を行なう。例えば、図9(C)に図示される場合であれば、矢印C1で示される順番でブロックが選択されるようにする。また、図9(D)に図示される場合であれば、矢印D1で示される順番でブロックが選択されるようにする。
【0075】
ステップ304では、RAM22に記憶されている位置データの基準位置と点対象となる位置を含むブロックを選択する。すなわち、図9(C)に図示される場合であれば「10」のブロックを選択する。また、図9(D)に図示される場合であれば「7」のブロックを選択する。
【0076】
ステップ306では、ステップ304で選択されたブロックに隣接するブロックの全てに対して比較処理を行なう。すなわち、図9(C)に図示される場合であれば、「10」〜「16」のブロックに対して比較処理を行なう。ブロックの選択は矢印C2で示される順番に従って行なう。「4」、「5」のブロックは既に比較処理が行なわれているので、処理対象外とする。また、図9(D)に図示される場合であれば、「7」〜「12」のブロックに対して比較処理を行なう。ブロックの選択は矢印D2で示される順番に従って行なう。この比較処理のルーチンは、前述のステップ302の処理ルーチンと同様である。
【0077】
前述したステップ102の判定で、真偽判定対象が複数枚からなる1セットの原稿でないと判定された場合は、スキャナ部32に原稿をスキャンさせる(ステップ118)と共に、原点を基準位置として紙指紋データが採取された位置を検索して、原稿の真偽判定を行う(ステップ120)。このステップ120の処理は、ステップ108の処理と同様である。
【0078】
ステップ122では、真偽判定の結果を出力する。出力は、ユーザーインターフェース30のディスプレイに表示させることで行なう。また、プリンタ部34に記録紙に画像形成させることで行なってもよい。さらに、ネットワーク12を介してクライアントPC16A,16Bに通知させることで行なってもよい。なお、偽と判定された原稿については、裏表逆にスキャンを行なったために偽と判定されたとも考えられる。この場合、真偽判定の結果を入手したオペレータが、スキャナ部32に裏面をスキャンさせ、システムコントローラ26に再度真偽判定を行わせるようにしてもよい。また、システムコントローラ26が、図3のステップ164の処理の後に、スキャナ部32に原稿の裏面をスキャンさせ、ステップ150〜ステップ164と同様の処理を行なう構成としてもよい。同様に、図8のステップ306の処理の後に、スキャナ部32に原稿の裏面をスキャンさせ、ステップ300〜ステップ306と同様の処理を行なう構成としてもよい
なお、図3のステップ102で行なわれる判定を、ステップ110の判定の後に行ってもよい。すなわち、紙指紋データが他の紙指紋データと対応付けられていた場合は、原稿が、複数枚からなる1セットのうちの1枚であると判定する。このとき、紙指紋データが他の紙指紋データと対応付けられていない場合は、ステップ112の処理は省略する。
【0079】
また、ブロック分割を行なうことなく、紙指紋領域を検索する形態であってもよい。
【0080】
このように、本実施の形態では、複数枚からなる1セットの原稿の真偽を判定する場合に、1セット中の最初に真であると判定された原稿の紙指紋領域の位置から、1セット中の他の原稿の紙指紋領域を検索する。これにより、紙指紋領域の検索を短時間に行なうことができ、原稿の真偽判定処理の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本実施の形態の全体像を示す概念図である。
【図2】本実施の形態に係る複合機の概略構成図である。
【図3】本実施の形態に係る真偽判定処理のルーチンを示すフローチャートである。
【図4】(A)はブロック分割の概念図であり、(B)は比較領域の概念図である。
【図5】原点を基準位置とした場合の紙指紋領域の検出処理のルーチンを示すフローチャートである。
【図6】比較処理のルーチンを示すフローチャートである。
【図7】比較処理のルーチンを示すフローチャートである。
【図8】既に検出された紙指紋領域の位置を基準位置とした場合の紙指紋領域の検出処理のルーチンを示すフローチャートである。
【図9】ブロックの選択順序を説明するための概念図である。
【図10】基準位置を含むブロックに隣接するブロックの全てに対して比較処理を行なうルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
10 複合機
14 紙指紋データベースサーバ
16A,16B クライアントPC
26 システムコントローラ
28 ネットワークインターフェース
32 スキャナ部
34 プリンタ部
36 HDD
38 読取装置
40 記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダムな固有の特徴を有する真のシート状物の表面の所定の領域が予め読み取られることで得られた前記所定の領域の特徴を表す基準データを取得する取得手段と、
判定対象のシート状対象物の表面を読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取られた前記シート状対象物の表面の一部の比較領域の特徴を表す比較データの抽出、及び当該抽出した比較データと前記基準データとの比較を、基準位置から前記比較領域の位置を移動させて繰り返し、比較結果に基づいて前記シート状対象物の真偽を判定する判定手段と、
複数枚のシート状対象物からなる1セットの対象物の真偽を判定する場合に、前記1セット中の1枚のシート状対象物が真であると判定されたときの前記比較領域の位置を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に前記比較領域の位置が記憶されている場合は、当該比較領域の位置を前記基準位置として、前記1セット中の他のシート状対象物の前記比較領域の位置を移動させるように前記判定手段を制御する制御手段と、
を備えた真偽判定装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記基準位置を含んだ所定範囲内で前記比較領域を移動させたときに前記シート状対象物が真であると判定されない場合には、前記シート状対象物の中心に対して点対称となる位置を新たな基準位置として前記比較領域の位置を移動させるように前記判定手段を制御する請求項1に記載の真偽判定装置。
【請求項3】
コンピュータに、
判定対象のシート状対象物の表面の一部の比較領域の特徴を表す比較データの抽出、及び当該抽出した比較データとランダムな固有の特徴を有する真のシート状物の表面の所定の領域が予め読み取られることで得られた前記所定の領域の特徴を表す基準データとの比較を、基準位置から前記比較領域の位置を移動させて繰り返し、比較結果に基づいて前記シート状対象物の真偽を判定するステップと、
複数枚のシート状対象物からなる1セットの対象物の真偽を判定する場合に、前記1セット中の1枚のシート状対象物が真であると判定されたときの前記比較領域の位置を記憶手段に記憶させるステップと、
前記記憶手段に前記比較領域の位置が記憶されている場合は、当該比較領域の位置を前記基準位置として、前記1セット中の他のシート状対象物の前記比較領域の位置を移動させるように制御するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項4】
前記請求項3に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−116808(P2009−116808A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292084(P2007−292084)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】