説明

真偽識別表面を有する物品

【目的】 パチンコの特殊景品或はブランド品の金属部品等の表面が金属である物品の真偽を確実に識別することができ、外見からはその存在を知り得ない情報を有する物品を提供することを目的とする。
【構成】 表面が金属によって構成される物品の表面に対して、予め向きの異なるn種類(n:2以上の自然数)の反射面によって主として構成される微細な凹凸を規則的、かつ連続的に形成しておき、その表面に平行光線を照射し、その反射光を解析することにより、物品の真偽を識別できるようにした物品によって上記目的は達成される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、パチンコ店、ゲーム店等で顧客に渡す現金交換用特殊景品、遊戯用メダルあるいはブランド品の金属部品等、偽造や改竄に対して保護を必要とする物品に関する。
【0002】
【従来の技術】物品の真偽を識別する方法の一つとして、パチンコに利用される特殊景品の真偽を判定するシステムが特開平1−115381号公報に示されている。これは、特定のデータを書き込んだ磁気テープを特殊景品に貼りつけておき、交換時にはそのデータを磁気テープ用リーダで読み取ることによって、景品の真偽を確認するというものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような技術においては、真偽識別の基準となる情報が、景品の表面に貼付された磁気テープに記録されているので、利用者は情報の存在を容易に知り得る。そして、磁気テープの情報を解析することによりデータの改竄が容易に行なわれてしまうという問題があった。また、改竄はしなくても、磁気テープの情報をコピーして別の磁気テープに写し、偽の特殊景品に貼付されて使用されても発見できないという恐れもあった。
【0004】本発明は上述の事情に鑑みて成されたものであり、本発明の目的は、パチンコの特殊景品或はブランド品の金属部品等の少なくとも表面が金属である物品の真偽を確実に識別することができ、外見からはその存在を知り得ない情報を有する物品を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、偽造・改竄を防止した物品に関するものであり、本発明の目的は、表面が金属によって構成される物品の表面に対して、予め向きの異なるn種類(n:2以上の自然数)の反射面によって主として構成される微細な凹凸を規則的、かつ連続的に形成しておき、その表面に平行光線を照射し、その反射光パターンを解析することにより、物品の真偽を識別できるようにした真偽識別表面を有する物品によって達成される。
【0006】
【作用】表面にn種類の反射面が形成された真の物品に平行光を照射すると、光はn方向に反射される。この反射光をスクリーンに写すと、反射面の形状により特定の反射パターンが映し出される。偽の物品の場合、表面の形状に規則性がない為、照射された平行光は乱反射してしまい、スクリーンには定まった形状は写されない。また、表面が鏡面状の偽の物品の場合、反射光は1方向のみのスポットになるだけである。
【0007】
【実施例】以下、実施例としてパチンコの特殊景品の真偽を判別する場合をあげ、図によって本発明の詳細を説明する。
【0008】図1は本発明による特殊景品の外観を示す斜視図である。特殊景品1の表面は金メッキが施されている。上面には、鏡面仕上げされた部分によってパチンコホールの名称等の文字2が描かれている。なお、文字以外の背景部3は外観上は梨地になっている。図2は、上記特殊景品1における背景部3の表面状態を模式的に示す図である。四角錐4が集った形状をしており、全体としては向きの異なる4種類(n=4)の面によって構成されている。一つの四角錐4の大きさは、10〜50ミクロン程度となっている。図3は、本特殊景品1の真偽を判別する装置の構成を示す図である。レーザー光発生機5とスクリーン6とを備えており、スクリーン6にはレーザー光発生機5から発せられた光(入射光)が通過できる通過口7が開口されている。この通過口7の前方には、特殊景品1を固定するホルダー8が取付けられている。
【0009】特殊景品1をホルダー8に取り付け、レーザー光を発生させると、レーザ光はスクリーン上の通過口7を通過し、特殊景品1の背景部3に照射される。このレーザ光は、特殊景品1の表面上の四角錐4の突起を数個〜数百個に照射される程度の直径(数百ミクロン)に絞られている。入射光は背景部3によって反射されるが、この時の反射方向は、入射光が当たった面の向きによって異なる。その状態を示す断面図を図4に示す。レーザ光のうち、図中左下がりの斜面に照射された光は、図中左斜め上方向に反射される。一方、図中右下がりの斜面に照射された光は、図中右斜め上方向に反射される。更に、同様の反射が図中の奥、手前方向についても起こっているため、レーザ光は4方向に反射されることになる。その反射光がスクリーンに照射されたパターン(反射パターン)を図5(b)に示す。中央に通過口7があり、その通過口7を中心として十字を形成するように4つの点が写し出される。特殊景品の背景部3に形成された四角錐4のエッジが鋭い場合は、前述のように入射光は完全に4方向に分けて反射され、図5(b)のような反射パターンが得られるが、実際のプレス加工におけるようにエッジの丸い四角錐(に近い形状)が形成された場合には図5(c)に示されるように、通過口7を中心として4個の頂点を有する星型の反射パターンが得られる。
【0010】これらの反射パターンを肉眼或はCCDアレイ等のセンサによって読み取り、予め判っている本物の特殊景品1の反射パターンと比較すれば、特殊景品1の真偽を判別することができる。また、この表面を直接肉眼で見れば、単なる梨地にしか見えず、利用者は表面に物品の真偽に関する情報が組み込まれていることに気付かないので、偽造を防止できる。また、気付いたとしても、微細な構成であるため偽造は困難である。
【0011】次に、特殊景品の作成方法について説明する。金属を成形し、金メッキを施すところまでは通常の機械加工及びメッキ処理による。
(1)プレスによる凹凸の作成タングステンやダイヤモンド等硬度の高い材料で細かい凹凸の型を作成し、これを景品部材に押し付ければ、所定の形状の凹凸が形成される。
(2)エッチングによる凹凸の作成単結晶の金属表面を有する景品部材の表面上で、文字部とする部分にマスキングを施してから、腐食液に浸漬し、表面を腐食させる。腐食液には、例えば王水を使用し、数分間浸漬する。この浸漬により、景品部材の表面の中でマスキングされていない部分が腐食され、角錐の集合体である凹凸が形成される。
【0012】腐食によって特定の凹凸ができるしくみは例えば応用物理学会発行“応用物理”第36巻第8号(1967)「化学腐食されたMn,Zn及びMn−Znフェライト単結晶の光像と表面構造」において明らかにされている。すなわち、金属は種類によって定まった結晶構造を有している。そしてこの結晶構造において、いろいろな断面をみてみると、原子が密に並ぶ面と疎な面とがある。腐食は、特定の結晶軸に沿って進行するため、腐食された面は特定の形状をとる。金の結晶構造は、面心立方晶(立方体の各頂点と、各面の中央に原子がある)であるので、表面が(100)面であるとき、四角錐が集まった形状が形成される。ちなみに、ケイ素はダイヤモンド型構造(立方体の各頂点と、各面の中央と、1つの頂点とそれに隣接する3つの面の中央の4つの点から等距離となる点に原子がある)であるので、表面が(111)面であれば、三角錐が集まった形状が形成される。
【0013】更に、図6に示す特殊景品のように、背景部3を複数の領域A部〜F部に分割し、それぞれ異なる表面形状パターンを刻めば、複数の情報を記録できる。例えば、A部には店を示すパターンを、B部には金額を示すパターンを、C部には日付を示すパターンをという具合にする。この場合、各領域は同一表面形状でパターンの向きを変えてもよい。また、異なる表面形状の中にはn=1すなわち鏡面を含めても良い。
【0014】図7に、前述のものとは異なる真偽判別装置を示す。光源には白色光源9を用い、レンズ10によって平行光としたもの、あるいはレーザを用いる。半透明スクリーン11は装置本体の外側に所定の角度をもって配置され、裏側から反射パターンを観察するようになっている。
【0015】
【発明の効果】以上に述べたように、本発明によれば、パチンコの特殊景品等の少なくとも表面が金属である物品の真偽を確実に識別できるとともに、第三者による偽造が困難である複数の情報を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるパチンコ用特殊景品の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の表面の形状を示す図である。
【図3】本発明の物品の真偽を識別する装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の表面におけるレーザ光の反射状況を示す図である。
【図5】真偽判別装置のスクリーンに映される反射パターンを示す図であり、(a)は鏡面状の表面による反射パターン、(b)はエッジが鋭い四角錐凹凸面による反射パターン、(c)はエッジが鈍い反射パターンを示す。
【図6】本発明の他の実施例であるパチンコ用特殊景品の外観を示す斜視図である。
【図7】本発明の物品の真偽を識別する装置の他の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 特殊景品
2 文字
3 背景部
4 四角錐
5 レーザ光発生機
6 スクリーン
7 通過口
8 ホルダー
9 白色光源
10 レンズ
11 半透明スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面が金属等によって構成される物品の表面に対して、予め向きの異なるn種類(n:2以上の自然数)の反射面によって主として構成される微細な凹凸を規則的、かつ連続的に形成し、前記表面に平行光線を照射し、その反射光パターンを解析することにより、物品の真偽を識別できるようにしたことを特徴とする真偽識別表面を有する物品。
【請求項2】 前記物品の表面が前記反射光パターンの形状又は向きの異なる複数種類の表面領域で形成され、複数の情報を記録するようにしたことを特徴とする請求項1の真偽識別表面を有する物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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