真円度測定装置
【課題】測定位置および方向を変える場合でも、検出器の取り付けを変更せずに検出器ホルダの取り付け方向のみを変更すればよく、測定点が測定平面からずれない真円度測定装置の実現。
【解決手段】ベース21と、載置されたワーク32を回転する回転台22と、回転台の回転軸に対して平行に伸び、回転台の回転軸とワークの測定点を含む測定平面に平行に移動可能なコラム24と、コラムに沿って移動可能に支持されたキャリッジ25と、キャリッジに取り付けられた検出器ホルダ29と、測定子31が測定平面で変位可能なように、検出器ホルダに取り付けられた検出器30と、を有し、検出器ホルダは、測定平面に垂直な回転軸を中心とした異なる回転位置でキャリッジに取り付け可能で、異なる回転位置に取り付けても測定子が測定平面で変位可能な状態が維持される真円度測定装置。
【解決手段】ベース21と、載置されたワーク32を回転する回転台22と、回転台の回転軸に対して平行に伸び、回転台の回転軸とワークの測定点を含む測定平面に平行に移動可能なコラム24と、コラムに沿って移動可能に支持されたキャリッジ25と、キャリッジに取り付けられた検出器ホルダ29と、測定子31が測定平面で変位可能なように、検出器ホルダに取り付けられた検出器30と、を有し、検出器ホルダは、測定平面に垂直な回転軸を中心とした異なる回転位置でキャリッジに取り付け可能で、異なる回転位置に取り付けても測定子が測定平面で変位可能な状態が維持される真円度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真円度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物(ワーク)の円筒状の外周面または内周面の真円度を測定する真円度測定装置が広く使用されている。
【0003】
図1は、従来の真円度測定装置の外観図である。
真円度測定装置は、台状のベース1と、ベース1に設けられた回転可能な載物台2と、載物台2を回転駆動するためのモータ等を有する回転駆動部3と、ベース1に設けられたコラム4と、コラム4に沿って移動可能なキャリッジ5と、キャリッジ5に対して移動可能なアーム6と、アーム6の先端部に取り付けられた検出器ホルダ9と、検出器ホルダ9に取り付けられた検出器10と、を有する。検出器10は、測定子11と、差動トランス等の変位検出部と、を有し、測定子11の変位を示す電気信号を出力する。
【0004】
ワーク12は、載物台2上に、ワーク12の円筒面の中心軸が載物台2の回転軸にほぼ一致するように載置され、回転される。コラム4は、載物台2の回転軸に平行に伸びる柱である。キャリッジ5は、コラム4に沿って移動可能であり、一般に移動はコラム4の案内面に沿ってマニュアルで移動されるが、モータ等を用いて自動で移動する場合もある。アーム6は、キャリッジ5の案内面にマニュアルで移動されるが、モータ等を用いて自動で移動する場合もある。検出器ホルダ9は、L字型の部材で、一方の端がアーム6の先端に取り付けられ、他方の端に検出器10が取り付けられる。
【0005】
測定を行なう場合には、ワーク12は、載物台2上に、ワーク12の円筒面の中心軸が載物台2の回転軸にほぼ一致するように載置する。測定子11がワーク12の測定する位置に接触するように、キャリッジ5を移動して上下方向の位置を調整し、アーム6を移動して径方向の位置を調整する。この状態で、ワーク12の真円度を測定するが、高精度の測定を行なう場合には、ワーク12を回転して、ワーク12の円筒部の中心軸と載物台2の回転軸との偏心を測定し、載物台2に設けられたXY移動機構で、ワーク12の円筒部の中心軸が載物台2の回転軸により正確に一致するように調整した後測定を行なう。この時、測定子11は、変位範囲の中心付近であることが望ましい。
【0006】
図2は、図1の真円度測定装置の上面図である。
図2に示すように、コラム4は、載物台2の右側に設けられる。アーム6、検出器ホルダ9および検出器10は、一直線上に配置され、その延長上に、載物台2の回転中心軸が位置する。測定子11は、検出器10の先端に設けられ、この直線と載物台2の回転中心軸がなす平面内で変位する。したがって、ワーク12の測定する円筒面の直径が異なる場合には、測定子11が測定する円筒面に接触するように、アーム6を移動する。ここでは、測定子11が測定する円筒面に接触する測定点と載物台2の回転中心軸がなす平面を測定平面と称し、載物台2の回転中心軸と測定点をむすぶ方向を径方向と称する。言い換えれば、測定する円筒面の直径が異なる場合でも、アーム6、検出器ホルダ9および検出器10は、測定平面に沿って径方向に移動され、測定子11は、測定平面と円筒面の交差する線上で円筒面に接触し、測定平面上で変位する。測定子11が測定平面上で、すなわち載物台2の回転中心軸(円筒面の中心軸)を含む平面内で変位することは、真円度を高精度で測定する上で必須事項である。
【0007】
コラム4を載物台2の右側に設ける(左側でもよい)第1の理由は、アーム6を測定平面上で移動させるためであり、第2の理由は、異なる円筒面を測定する場合に、円筒面の半径(直径)の差を、アーム6の移動量を検出することにより検出できるためである。
【0008】
以上のような理由で、従来の真円度測定装置においては、コラム4を載物台2の側方(右側または左側)に設けていた。そのため、コラム4が固定されるベース1は、上面図では、径方向に長い長方形である。さらに、アーム6は、測定する円筒面の半径に応じて径方向に移動されるため、アーム6が右方向に最大限移動した場合を考慮して、設置スペースを決定する必要がある。以上のような理由で、従来の真円度測定装置は、径方向に長い長方形の設置スペースを必要とし、設置に必要な空間が大きかった。
【0009】
次に、測定動作をより詳細に説明する。
図3は、外筒面12の真円度を測定する場合の操作を説明する図であり、(A)が上面図であり、(B)が側面図であり、(C)がワーク(外筒面)12に接触した測定子11の変位を示す。
【0010】
前述のように、アーム6、検出器ホルダ9および検出器10は、測定平面に沿ってほぼ一直線上に配置され、測定子11は、測定平面内で変位する。図3の(A)および(B)において実線で示すように、測定子11が外筒面12に接触しない状態で、測定子11が外筒面12の測定する高さ位置なるようにキャリッジ5の高さを調整する。その後、破線で示すように、キャリッジ5に対してアーム6を移動して、測定子11を外筒面12に接触させる。これにより、図3の(C)に示すように、測定子11が外筒面12に接触し、外筒面12が回転すると、測定子11が、外筒面12の半径の変動、すなわち真円度に応じて変位する。検出器10は、測定子11の変位量を検出して電気信号として出力する。
【0011】
なお、近年は、検出信号をデジタル処理して補正することが行われており、円筒面の中心軸と載物台2の回転軸の位置ずれ(偏心)、および円筒面の中心軸と載物台2の回転軸の方向差に起因する誤差は、ある程度補正できるようになっている。
【0012】
検出器10は、測定子11が所定の平面内で変位するように支持している。真円度を測定する場合、測定子11が変位する平面が、測定平面に一致することが必要であり、一致しない場合には測定誤差を生じる。
【0013】
図4は、つば部分を有するワーク12の外筒面の真円度を測定する状態を示す外観図である。
【0014】
図4に示すように、測定子11を、測定する外筒面に接触させる。ここではワーク12の測定子11が接触する点を測定点Pと称する。外筒面と測定平面は2箇所で交差し、2つの交差線が存在する。測定点Pは、いずれの交差線上に存在することも可能であるが、通常、コラム4が設けられる側の測定点Pが選択されて測定が行われる。この理由は、コラム4が設けられる側と反対側の測定点を選択するには、アーム6の移動量を大きくする必要があるためと、大きな半径のワーク12の場合、アーム6がワーク12に接触する場合が生じるためである。
【0015】
図5は、つば部分を有するワーク12の外筒面の真円度を測定する状態の側面図である。
【0016】
図5に示すように、L字型の検出器ホルダ9は、アーム6の先端部のホルダ固定部7にねじ等により取り付けられる。検出器10は、検出器ホルダ9の先端の検出器継手13にねじ等で取り付けられる。検出器10は、細長い形状を有し、載物台2の回転軸に平行に伸びるように、検出器ホルダ9に取り付けられる。ここで、測定子11は、検出器10の側面より外側にまで伸びていることが望ましい。これは、長い外筒面を有するワーク12を測定する場合、測定できる外筒面の下の部分のワーク12の上面からの深さが制限されるためである。図5に示すように、測定子11が検出器10の側面より外側にまで伸びている場合には、測定子11の先端から検出器ホルダ9までが測定深さになる。もし、測定子11が検出器10の側面より外側にまで伸びていない場合には、測定子11の長さがほぼ測定深さになり、非常に短くなるという問題がある。
【0017】
検出器ホルダ9をL字型として、検出器10を取り付けた時に、逆U字型となるようにするのは、後述するように、ワーク12の内筒面の真円度を測定するためである。
【0018】
図6は、つば部分を有するワーク12の内筒面の真円度を測定する状態を示す外観図である。
【0019】
図6に示すように、測定子11を、内筒面の測定点Pに接触させる。測定点Pは、アーム6の移動量を小さくするため、コラム4が設けられる側の測定点が選択されるのが一般的である。
【0020】
図7は、つば部分を有するワーク12の内筒面の真円度を測定する状態の側面図である。
【0021】
図7に示すように、L字型の検出器ホルダ9の垂直部分と検出器10の間には空間が形成され、外筒面および内筒面の間の部分がこの空間内に収容できるワークの内筒面であれば、真円度を対応する深さまで測定することが可能である。
ここで、検出器10の検出器ホルダ9への取り付け方向を変更すると、測定子11の先端位置、すなわち測定点が変化する。そこで、図5および図7に示すように、測定子11の先端が、検出器10の取り付けの回転軸上に位置するように構成する。これにより、検出器10の検出器ホルダ9の先端の検出器継手13に対する取り付け方向を180度回転しても、測定子11の先端部の位置が変化せず、測定点が一致する。
【0022】
図5と比較して明らかなように、外筒面および内筒面のコラム4が設けられる側の測定点に測定子11を接触させる場合、検出器ホルダ9に取り付ける検出器10の方向を180度回転する必要がある。そのため、外筒面の真円度を測定した後内筒面の真円度を測定する場合または逆の場合には、検出器10を検出器ホルダ9の先端の検出器継手13から取り外し、180度回転した後、再び検出器10を検出器ホルダ9の先端の検出器継手13に取り付ける必要がある。検出器10の取り付けを変更すると、取り付け位置および回転方向にずれが生じることが不可避である。
【0023】
真円度測定装置では、外筒面および内筒面の真円度を測定するだけでなく、つば部分を有するワークのつば部分の平面度を測定することも要求されている。
【0024】
図8は、つば部分を有するワーク12のつば部分の上面の平面度を測定する状態を示す外観図である。
【0025】
図6に示す状態から、L字型の検出器ホルダ9のアーム6の先端(ホルダ固定部)に対する取り付け方向を90度回転し、測定子11が、つば部分の上面と測定平面との交差線上で接触するように配置する。そして、ワーク12を回転し、検出器10で測定子11の変位を測定すると、つば部分の平面からのずれ(平面度)が測定できる。L字型の検出器ホルダ9を背面側に回転して取り付けるのは、正面側からの操作を容易にするためである。
【0026】
図9は、つば部分を有するワーク12のつば部分の下面の平面度を測定する状態を示す外観図である。図8の状態とは、検出器ホルダ9に取り付ける検出器10の方向が、180度回転していることが異なる。
【0027】
以上のように、従来の真円度測定装置では、ワークの円筒面の真円度を測定する場合と、つば部分の平面度を測定する場合とで、L字型の検出器ホルダ9のアーム6の先端(ホルダ固定部)に対する取り付け方向を90度回転するための第1の回転軸を設けていた。さらに、外筒面の真円度を測定する場合と内筒面の真円度を測定する場合、およびつば部分の上面の平面度を測定する場合と下面の平面度を測定する場合で、検出器10の検出器ホルダ9の先端の検出器継手13に対する取り付け方向を180度回転するための第2の回転軸を設けていた。すなわち、従来の真円度測定装置は、回転軸を2つ必要としていた。
【0028】
さらに、図5と図7に示すように、検出器10の検出器ホルダ9の先端の検出器継手13に対する取り付け方向を180度回転すると、測定子11の先端部の位置が変化し、測定点が一致しないことになる。図5および図7に示すように、測定子11の先端が、検出器10の取り付けの回転軸上に位置するように構成しても、取り付け誤差による位置の変化は不可避である。
【0029】
図10および図11は、検出器の回転による測定点の変化が生じない別の検出器の例を示す図であり、(A)は外筒面を測定する場合を、(B)は内筒面を測定する場合を示す。
【0030】
図10および図11に示すように、先端が検出器10を検出器継手13に取り付ける第2の回転軸上に位置するような特殊測定子14を使用する。この構成であれば、検出器10を回転しても測定点の位置はほとんど変化しない。しかし、測定子10の上側には検出器10および検出器ホルダ9が存在するため、測定深さが制限されるという問題がある。
【0031】
さらに、L字型の検出器ホルダ9を回転する第1の回転軸は、かならずしも測定平面と一致していないため、検出器ホルダ9のアーム6の先端(ホルダ固定部)に取り付ける角度を変化させると、測定子11の先端が測定平面からずれる、言い換えれば測定点が測定平面上に位置しないという問題を生じる。
【0032】
もちろん、つば部分の上面および下面の平面度を測定する測定点は、かならずしも測定平面上に位置している必要はないが、測定点の位置を正確に管理する上では、ずれは小さいほうが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特開平8−313247号公報
【特許文献2】特開2003−302218号公報
【特許文献3】特開2006−145344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明は、ワークの測定する位置および方向を変える場合でも、検出器の取り付けを変更する必要が無く、検出器ホルダの取り付け方向のみを変更すればよく、測定点が変化せず、測定点が測定平面からずれない真円度測定装置の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
上記課題を解決するため、本発明の真円度測定装置は、測定平面に平行に移動可能なコラムを背面側に設け、コラムに沿って上下方向に移動可能なキャリッジにL字型の検出器ホルダを取り付け、さらに検出器ホルダに検出器を取り付け、測定子が測定平面で変位可能にすると共に、コラムを移動すると測定子が測定平面上を移動し、検出器ホルダの取り付け方向を変更しても測定子が測定平面上を位置するように構成する。
【0036】
すなわち、本発明の真円度測定装置は、ベースと、ベースに固定され、載置されたワークを回転する回転台と、回転台の回転軸に対して平行に伸び、回転台の回転軸とワークの測定点を含む測定平面に平行に移動可能なコラムと、コラムに沿って移動可能に支持されたキャリッジと、キャリッジに取り付けられた検出器ホルダと、測定子が測定平面で変位可能なように、検出器ホルダに取り付けられた検出器と、を有し、検出器ホルダは、測定平面に垂直な回転軸を中心とした異なる回転位置でキャリッジに取り付け可能で、異なる回転位置に取り付けても検出器の測定子が測定平面で変位可能な状態が維持されることを特徴とする。
【0037】
本発明の真円度測定装置では、コラムが載物台の両側に移動するので、検出器の取り付け方向を変更しなくても、外筒面および内筒面の真円度を測定できる。さらに、検出器ホルダは、測定平面に垂直な回転軸を中心として回転するので、つば部分の上面および下面の平面度を測定する場合に検出器ホルダを回転しても、測定子は測定平面に位置する。このため、回転軸は1つでよい。
【0038】
検出器ホルダは、ホルダ固定部にマニュアルで(手動で)取り付け方向を変えて取り付け可能にしても、ホルダ固定部を回転中心として回転するホルダ回転機構を設けて自動で取り付け方向を変更可能にしてもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、小型で、操作が容易で、姿勢変更に伴う位置誤差を低減して測定誤差の小さな真円度測定装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、従来の真円度測定装置の外観図である。
【図2】図2は、図1の真円度測定装置の上面図である。
【図3】図3は、外筒面の真円度を測定する場合の操作を説明する図である。
【図4】図4は、つば部分を有するワークの外筒面の真円度を測定する状態を示す外観図である。
【図5】図5は、つば部分を有するワークの外筒面の真円度を測定する状態の側面図である。
【図6】図6は、つば部分を有するワークの内筒面の真円度を測定する状態を示す外観図である。
【図7】図7は、つば部分を有するワークの内筒面の真円度を測定する状態の側面図である。
【図8】図8は、つば部分を有するワークのつば部分の上面の平面度を測定する状態を示す外観図である。
【図9】図9は、つば部分を有するワークのつば部分の下面の平面度を測定する状態を示す外観図である。
【図10】図10は、検出器の回転による測定点の変化が生じない検出器の例を示す図である。
【図11】図11は、検出器の回転による測定点の変化が生じない検出器の例を示す図である。
【図12】図12は、本発明の第1実施形態の真円度測定装置の正面側から見た外観図である。
【図13】図13は、本発明の第1実施形態の真円度測定装置の背面側から見た外観図である。
【図14】図14は、第1実施形態の真円度測定装置の上面図である。
【図15】図15は、つば部分を有するワークの外筒面の真円度を測定する状態を示す側面図である。
【図16】図16は、つば部分を有するワークの内筒面の真円度を測定する状態を示す外観図である。
【図17】図17は、つば部分を有するワークの内筒面の真円度を測定する状態の側面図である。
【図18】図18は、つば部分を有するワークのつば部分の上面の平面度を測定する状態を示す図である。
【図19】図19は、つば部分を有するワークのつば部分の下面の平面度を測定する状態を示す図である。
【図20】図20は、本発明の第2実施形態の真円度測定装置の正面側から見た外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図12および図13は、本発明の第1実施形態の真円度測定装置の正面側および背面側から見た外観図である。
【0042】
第1実施形態の真円度測定装置は、台状のベース21と、ベース21に設けられた回転可能な載物台22と、載物台22を回転駆動するためのモータ等を有する回転駆動部(図示せず)と、ベース21の背面に設けられたコラム24と、コラム24に沿って移動可能なキャリッジ25と、キャリッジ25に取り付けられた検出器ホルダ29と、検出器ホルダ29に取り付けられた検出器30と、を有する。検出器30は、測定子31と、差動トランス等の変位検出部と、を有し、測定子31の変位を示す電気信号を出力する。キャリッジ25は、検出器ホルダ29が取り付けられるので、ホルダ固定部とも称する。
【0043】
コラム24は、上下方向ガイド51および52と、上下方向送りねじ53が設けられている。キャリッジ25は、上下方向送りねじ53に上下方向送りナットにより係合されており、上下方向送りつまみ55を回転することにより上下方向送りねじ53が回転して、上下方向に移動する。なお、上下方向送りつまみ55の代わりに、上下方向送りねじ53を回転駆動するモータ等を設けて、キャリッジ25を上下方向に自動で移動することも可能である。キャリッジ25は、高精度の上下方向ガイド51および52により案内されるので、移動しても姿勢が変化することはない。したがって、キャリッジ25に取り付けられた検出器ホルダ29および検出器30は、上下方向に移動しても、姿勢は変化せず、上下方向の位置(高さ)のみが変化する。
【0044】
さらに、ベース21の背面には、径方向ガイド71および72と、径方向送りねじ73が設けられている。コラム24は、径方向送りねじ73に径方向送りナット74により係合されており、径方向送りつまみ75を回転することにより径方向送りねじ73が回転して、径方向と平行に移動する。コラム24は、載物台22の右側および左側に移動可能である。なお、径方向送りつまみ75の代わりに、径方向送りねじ73を回転駆動するモータ等を設けて、コラム24を径方向と平行に自動で移動することも可能である。コラム24は、高精度の径方向ガイド71および72により案内されるので、移動しても姿勢が変化することはない。したがって、コラム24(キャリッジ25)に取り付けられた検出器ホルダ29および検出器30は、径方向と平行に移動しても、姿勢は変化せず、径方向の位置のみが変化する。言い換えれば、異なる半径の円筒面の真円度を測定するため、コラム24を径方向と平行に移動しても、検出器30の測定子31は、測定平面でワーク32に接触する。
【0045】
検出器ホルダ29および検出器30は、図1に示した従来例のものと同じである。
ワーク32のつば部分の上面および下面の高さ位置の変化、すなわち平面度を検出するため、検出器ホルダ29は、キャリッジ25に取り付ける方向を90度ずつ異なる3方向にすることが可能である。このため、キャリッジ25のホルダ固定部に測定平面と垂直な方向に伸びる取り付け軸が設けられ、検出器ホルダ29には軸合わせ部材が設けられ、90度ずつ異なる3方向で、取り付け軸に軸合わせ部材を嵌め合わせて取り付けられるように構成されている。この機構自体は、従来のものがそのまま使用できる。
【0046】
検出器30は、検出器ホルダ29に対して取り付け方向を変更しなくても外筒面、内筒面、つば部分の上面および下面を測定できるので、検出器ホルダ29に対して取り付け方向を変更可能にする必要はない。しかし、汎用の検出器30を取り付け可能にする場合、取り付け方向を変更可能にしてもよい。
【0047】
測定を行なう場合には、ワーク32は、載物台2上に、ワーク32の円筒面の中心軸が載物台22の回転軸にほぼ一致するように載置する。測定子31がワーク32の測定する位置に接触するように、キャリッジ25を移動して上下方向の位置を調整し、コラム24を移動して径方向の位置を調整する。この状態で、ワーク32の真円度を測定するが、高精度の測定を行なう場合には、ワーク32を回転して、ワーク32の円筒部の中心軸と載物台22の回転軸との偏心を測定し、載物台22に設けられたXY移動機構で、ワーク32の円筒部の中心軸が載物台22の回転軸により正確に一致するように調整する。この時、測定子31は、変位範囲の中心付近であることが望ましい。
【0048】
図14は、第1実施形態の真円度測定装置の上面図である。
図14に示すように、コラム24は、載物台22の背面に、測定平面と平行に移動可能に設けられる。検出器ホルダ29は、キャリッジ25から測定平面に垂直な方向に伸び、検出器30は、測定子31が測定平面上で変位するように取り付けられる。ワーク32の測定する円筒面の直径が異なる場合には、コラム24を測定平面と平行に移動するので、検出器ホルダ29および検出器30は、測定平面に沿って径方向に移動され、測定子31は、測定平面と円筒面の交差する線上で円筒面に接触し、測定平面上で変位する。前述のように、測定子31が測定平面上で変位することは、真円度を高精度で測定する上で必須事項であり、第1実施形態はこの必須事項を満たす。
【0049】
図2と図14を比較して明らかなように、第1実施形態の真円度測定装置は、従来の真円度測定装置に比べて、ベースの横方向(径方向)の長さが大幅に短縮され、アームが側方に突き出すことも無いので、設置スペースが大幅に小さくなっていることが分かる。
【0050】
前述のように、従来の真円度測定装置では、円筒面の半径(直径)の差を、アーム6の移動量を検出することにより検出できたが、第1実施形態の真円度測定装置でも同様に、コラム24の移動量を検出することにより検出できる。
【0051】
次に、第1実施形態の真円度測定装置で、ワークの各部の測定を行なう場合を詳細に説明する。
【0052】
図15は、つば部分を有するワーク32の外筒面の真円度を測定する状態を示す側面図である。図15に示すように、測定子31を、測定する外筒面の測定点Pに接触させる。
【0053】
図16は、つば部分を有するワーク32の内筒面の真円度を測定する状態を示す外観図である。
また、図17は、つば部分を有するワーク32の内筒面の真円度を測定する状態の側面図である。
【0054】
図16および図17に示すように、測定子31を、内筒面の測定点Pに接触させる。測定点Pは、載物台22の回転軸に対して、図15の外筒面の真円度を測定した測定点と反対側の内筒面上の測定点が選択される。コラム24は、ベース21の平面全体に渡って、載物台22の回転軸の両側に移動可能であり、反対側の測定点であっても特に問題は生じない。
【0055】
内筒面の真円度を測定する時の検出器30の方向は、外筒面の真円度を測定する時と同じであり、検出期30の検出器ホルダ29への取り付けを変更する必要はない。
【0056】
図18は、つば部分を有するワーク32のつば部分の上面の平面度を測定する状態を示す図であり、(A)が外観図であり、(B)が側面図である。
【0057】
図16に示す状態から、L字型の検出器ホルダ29のキャリッジ25(ホルダ固定部)に対する取り付け方向を90度回転し、測定子31が、つば部分の上面と測定平面との交差線上で接触するように配置する。そして、ワーク32を回転し、検出器30で測定子31の変位を測定すると、つば部分の平面からのずれ(平面度)が測定できる。前述のように、L字型の検出器ホルダ9の取り付け方向を90度変更しても、測定子31は測定平面内で回転するだけである。
【0058】
図19は、つば部分を有するワーク32のつば部分の下面の平面度を測定する状態を示す図であり、(A)が外観図であり、(B)が側面図である。図18の状態とは、L字型の検出器ホルダ29のキャリッジ25を取り付ける方向が180度異なる。言い換えれば、L字型の検出器ホルダ29を、逆方向に90度回転して取り付ける。
【0059】
以上のように、第1実施形態の真円度測定装置では、L字型の検出器ホルダ29をキャリッジ25に対して回転する回転軸を1つ設けるだけでよく、さらに、L字型の検出器ホルダ29を測定平面に垂直な回転軸で回転するため、回転しても測定点は測定平面内に位置し、さらに、検出器30を回転する必要が無いので、測定子11の先端部の位置、すなわち測定点が変化しない。
【0060】
図20は、本発明の第2実施形態の真円度測定装置の正面側から見た外観図である。
【0061】
第2実施形態の真円度測定装置は、検出器ホルダ29を取り付けるキャリッジ25のホルダ固定部に、モータ33と、ギア34および35と、が設けられ、外部からの信号に応じて90度ずつ回転することが、第2実施形態と異なり、他の部分は同じである。言い換えれば、第2実施形態の真円度測定装置では、外部信号でモータ33を駆動することにより、図12、図13および図16に示した検出器ホルダ29が上方向を向いた状態、図18に示した左方向を向いた状態、および図19に示した右方向を向いた状態、に自動で切り替えることができる。
【0062】
以上、第1および第2実施形態を説明したが、各種の変形例が可能であるのはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、真円度測定装置および類似の機能を有する測定装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
21 ベース
22 載物台
24 コラム
25 キャリッジ
29 検出器ホルダ
30 検出器
31 測定子
32 ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、真円度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物(ワーク)の円筒状の外周面または内周面の真円度を測定する真円度測定装置が広く使用されている。
【0003】
図1は、従来の真円度測定装置の外観図である。
真円度測定装置は、台状のベース1と、ベース1に設けられた回転可能な載物台2と、載物台2を回転駆動するためのモータ等を有する回転駆動部3と、ベース1に設けられたコラム4と、コラム4に沿って移動可能なキャリッジ5と、キャリッジ5に対して移動可能なアーム6と、アーム6の先端部に取り付けられた検出器ホルダ9と、検出器ホルダ9に取り付けられた検出器10と、を有する。検出器10は、測定子11と、差動トランス等の変位検出部と、を有し、測定子11の変位を示す電気信号を出力する。
【0004】
ワーク12は、載物台2上に、ワーク12の円筒面の中心軸が載物台2の回転軸にほぼ一致するように載置され、回転される。コラム4は、載物台2の回転軸に平行に伸びる柱である。キャリッジ5は、コラム4に沿って移動可能であり、一般に移動はコラム4の案内面に沿ってマニュアルで移動されるが、モータ等を用いて自動で移動する場合もある。アーム6は、キャリッジ5の案内面にマニュアルで移動されるが、モータ等を用いて自動で移動する場合もある。検出器ホルダ9は、L字型の部材で、一方の端がアーム6の先端に取り付けられ、他方の端に検出器10が取り付けられる。
【0005】
測定を行なう場合には、ワーク12は、載物台2上に、ワーク12の円筒面の中心軸が載物台2の回転軸にほぼ一致するように載置する。測定子11がワーク12の測定する位置に接触するように、キャリッジ5を移動して上下方向の位置を調整し、アーム6を移動して径方向の位置を調整する。この状態で、ワーク12の真円度を測定するが、高精度の測定を行なう場合には、ワーク12を回転して、ワーク12の円筒部の中心軸と載物台2の回転軸との偏心を測定し、載物台2に設けられたXY移動機構で、ワーク12の円筒部の中心軸が載物台2の回転軸により正確に一致するように調整した後測定を行なう。この時、測定子11は、変位範囲の中心付近であることが望ましい。
【0006】
図2は、図1の真円度測定装置の上面図である。
図2に示すように、コラム4は、載物台2の右側に設けられる。アーム6、検出器ホルダ9および検出器10は、一直線上に配置され、その延長上に、載物台2の回転中心軸が位置する。測定子11は、検出器10の先端に設けられ、この直線と載物台2の回転中心軸がなす平面内で変位する。したがって、ワーク12の測定する円筒面の直径が異なる場合には、測定子11が測定する円筒面に接触するように、アーム6を移動する。ここでは、測定子11が測定する円筒面に接触する測定点と載物台2の回転中心軸がなす平面を測定平面と称し、載物台2の回転中心軸と測定点をむすぶ方向を径方向と称する。言い換えれば、測定する円筒面の直径が異なる場合でも、アーム6、検出器ホルダ9および検出器10は、測定平面に沿って径方向に移動され、測定子11は、測定平面と円筒面の交差する線上で円筒面に接触し、測定平面上で変位する。測定子11が測定平面上で、すなわち載物台2の回転中心軸(円筒面の中心軸)を含む平面内で変位することは、真円度を高精度で測定する上で必須事項である。
【0007】
コラム4を載物台2の右側に設ける(左側でもよい)第1の理由は、アーム6を測定平面上で移動させるためであり、第2の理由は、異なる円筒面を測定する場合に、円筒面の半径(直径)の差を、アーム6の移動量を検出することにより検出できるためである。
【0008】
以上のような理由で、従来の真円度測定装置においては、コラム4を載物台2の側方(右側または左側)に設けていた。そのため、コラム4が固定されるベース1は、上面図では、径方向に長い長方形である。さらに、アーム6は、測定する円筒面の半径に応じて径方向に移動されるため、アーム6が右方向に最大限移動した場合を考慮して、設置スペースを決定する必要がある。以上のような理由で、従来の真円度測定装置は、径方向に長い長方形の設置スペースを必要とし、設置に必要な空間が大きかった。
【0009】
次に、測定動作をより詳細に説明する。
図3は、外筒面12の真円度を測定する場合の操作を説明する図であり、(A)が上面図であり、(B)が側面図であり、(C)がワーク(外筒面)12に接触した測定子11の変位を示す。
【0010】
前述のように、アーム6、検出器ホルダ9および検出器10は、測定平面に沿ってほぼ一直線上に配置され、測定子11は、測定平面内で変位する。図3の(A)および(B)において実線で示すように、測定子11が外筒面12に接触しない状態で、測定子11が外筒面12の測定する高さ位置なるようにキャリッジ5の高さを調整する。その後、破線で示すように、キャリッジ5に対してアーム6を移動して、測定子11を外筒面12に接触させる。これにより、図3の(C)に示すように、測定子11が外筒面12に接触し、外筒面12が回転すると、測定子11が、外筒面12の半径の変動、すなわち真円度に応じて変位する。検出器10は、測定子11の変位量を検出して電気信号として出力する。
【0011】
なお、近年は、検出信号をデジタル処理して補正することが行われており、円筒面の中心軸と載物台2の回転軸の位置ずれ(偏心)、および円筒面の中心軸と載物台2の回転軸の方向差に起因する誤差は、ある程度補正できるようになっている。
【0012】
検出器10は、測定子11が所定の平面内で変位するように支持している。真円度を測定する場合、測定子11が変位する平面が、測定平面に一致することが必要であり、一致しない場合には測定誤差を生じる。
【0013】
図4は、つば部分を有するワーク12の外筒面の真円度を測定する状態を示す外観図である。
【0014】
図4に示すように、測定子11を、測定する外筒面に接触させる。ここではワーク12の測定子11が接触する点を測定点Pと称する。外筒面と測定平面は2箇所で交差し、2つの交差線が存在する。測定点Pは、いずれの交差線上に存在することも可能であるが、通常、コラム4が設けられる側の測定点Pが選択されて測定が行われる。この理由は、コラム4が設けられる側と反対側の測定点を選択するには、アーム6の移動量を大きくする必要があるためと、大きな半径のワーク12の場合、アーム6がワーク12に接触する場合が生じるためである。
【0015】
図5は、つば部分を有するワーク12の外筒面の真円度を測定する状態の側面図である。
【0016】
図5に示すように、L字型の検出器ホルダ9は、アーム6の先端部のホルダ固定部7にねじ等により取り付けられる。検出器10は、検出器ホルダ9の先端の検出器継手13にねじ等で取り付けられる。検出器10は、細長い形状を有し、載物台2の回転軸に平行に伸びるように、検出器ホルダ9に取り付けられる。ここで、測定子11は、検出器10の側面より外側にまで伸びていることが望ましい。これは、長い外筒面を有するワーク12を測定する場合、測定できる外筒面の下の部分のワーク12の上面からの深さが制限されるためである。図5に示すように、測定子11が検出器10の側面より外側にまで伸びている場合には、測定子11の先端から検出器ホルダ9までが測定深さになる。もし、測定子11が検出器10の側面より外側にまで伸びていない場合には、測定子11の長さがほぼ測定深さになり、非常に短くなるという問題がある。
【0017】
検出器ホルダ9をL字型として、検出器10を取り付けた時に、逆U字型となるようにするのは、後述するように、ワーク12の内筒面の真円度を測定するためである。
【0018】
図6は、つば部分を有するワーク12の内筒面の真円度を測定する状態を示す外観図である。
【0019】
図6に示すように、測定子11を、内筒面の測定点Pに接触させる。測定点Pは、アーム6の移動量を小さくするため、コラム4が設けられる側の測定点が選択されるのが一般的である。
【0020】
図7は、つば部分を有するワーク12の内筒面の真円度を測定する状態の側面図である。
【0021】
図7に示すように、L字型の検出器ホルダ9の垂直部分と検出器10の間には空間が形成され、外筒面および内筒面の間の部分がこの空間内に収容できるワークの内筒面であれば、真円度を対応する深さまで測定することが可能である。
ここで、検出器10の検出器ホルダ9への取り付け方向を変更すると、測定子11の先端位置、すなわち測定点が変化する。そこで、図5および図7に示すように、測定子11の先端が、検出器10の取り付けの回転軸上に位置するように構成する。これにより、検出器10の検出器ホルダ9の先端の検出器継手13に対する取り付け方向を180度回転しても、測定子11の先端部の位置が変化せず、測定点が一致する。
【0022】
図5と比較して明らかなように、外筒面および内筒面のコラム4が設けられる側の測定点に測定子11を接触させる場合、検出器ホルダ9に取り付ける検出器10の方向を180度回転する必要がある。そのため、外筒面の真円度を測定した後内筒面の真円度を測定する場合または逆の場合には、検出器10を検出器ホルダ9の先端の検出器継手13から取り外し、180度回転した後、再び検出器10を検出器ホルダ9の先端の検出器継手13に取り付ける必要がある。検出器10の取り付けを変更すると、取り付け位置および回転方向にずれが生じることが不可避である。
【0023】
真円度測定装置では、外筒面および内筒面の真円度を測定するだけでなく、つば部分を有するワークのつば部分の平面度を測定することも要求されている。
【0024】
図8は、つば部分を有するワーク12のつば部分の上面の平面度を測定する状態を示す外観図である。
【0025】
図6に示す状態から、L字型の検出器ホルダ9のアーム6の先端(ホルダ固定部)に対する取り付け方向を90度回転し、測定子11が、つば部分の上面と測定平面との交差線上で接触するように配置する。そして、ワーク12を回転し、検出器10で測定子11の変位を測定すると、つば部分の平面からのずれ(平面度)が測定できる。L字型の検出器ホルダ9を背面側に回転して取り付けるのは、正面側からの操作を容易にするためである。
【0026】
図9は、つば部分を有するワーク12のつば部分の下面の平面度を測定する状態を示す外観図である。図8の状態とは、検出器ホルダ9に取り付ける検出器10の方向が、180度回転していることが異なる。
【0027】
以上のように、従来の真円度測定装置では、ワークの円筒面の真円度を測定する場合と、つば部分の平面度を測定する場合とで、L字型の検出器ホルダ9のアーム6の先端(ホルダ固定部)に対する取り付け方向を90度回転するための第1の回転軸を設けていた。さらに、外筒面の真円度を測定する場合と内筒面の真円度を測定する場合、およびつば部分の上面の平面度を測定する場合と下面の平面度を測定する場合で、検出器10の検出器ホルダ9の先端の検出器継手13に対する取り付け方向を180度回転するための第2の回転軸を設けていた。すなわち、従来の真円度測定装置は、回転軸を2つ必要としていた。
【0028】
さらに、図5と図7に示すように、検出器10の検出器ホルダ9の先端の検出器継手13に対する取り付け方向を180度回転すると、測定子11の先端部の位置が変化し、測定点が一致しないことになる。図5および図7に示すように、測定子11の先端が、検出器10の取り付けの回転軸上に位置するように構成しても、取り付け誤差による位置の変化は不可避である。
【0029】
図10および図11は、検出器の回転による測定点の変化が生じない別の検出器の例を示す図であり、(A)は外筒面を測定する場合を、(B)は内筒面を測定する場合を示す。
【0030】
図10および図11に示すように、先端が検出器10を検出器継手13に取り付ける第2の回転軸上に位置するような特殊測定子14を使用する。この構成であれば、検出器10を回転しても測定点の位置はほとんど変化しない。しかし、測定子10の上側には検出器10および検出器ホルダ9が存在するため、測定深さが制限されるという問題がある。
【0031】
さらに、L字型の検出器ホルダ9を回転する第1の回転軸は、かならずしも測定平面と一致していないため、検出器ホルダ9のアーム6の先端(ホルダ固定部)に取り付ける角度を変化させると、測定子11の先端が測定平面からずれる、言い換えれば測定点が測定平面上に位置しないという問題を生じる。
【0032】
もちろん、つば部分の上面および下面の平面度を測定する測定点は、かならずしも測定平面上に位置している必要はないが、測定点の位置を正確に管理する上では、ずれは小さいほうが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特開平8−313247号公報
【特許文献2】特開2003−302218号公報
【特許文献3】特開2006−145344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明は、ワークの測定する位置および方向を変える場合でも、検出器の取り付けを変更する必要が無く、検出器ホルダの取り付け方向のみを変更すればよく、測定点が変化せず、測定点が測定平面からずれない真円度測定装置の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
上記課題を解決するため、本発明の真円度測定装置は、測定平面に平行に移動可能なコラムを背面側に設け、コラムに沿って上下方向に移動可能なキャリッジにL字型の検出器ホルダを取り付け、さらに検出器ホルダに検出器を取り付け、測定子が測定平面で変位可能にすると共に、コラムを移動すると測定子が測定平面上を移動し、検出器ホルダの取り付け方向を変更しても測定子が測定平面上を位置するように構成する。
【0036】
すなわち、本発明の真円度測定装置は、ベースと、ベースに固定され、載置されたワークを回転する回転台と、回転台の回転軸に対して平行に伸び、回転台の回転軸とワークの測定点を含む測定平面に平行に移動可能なコラムと、コラムに沿って移動可能に支持されたキャリッジと、キャリッジに取り付けられた検出器ホルダと、測定子が測定平面で変位可能なように、検出器ホルダに取り付けられた検出器と、を有し、検出器ホルダは、測定平面に垂直な回転軸を中心とした異なる回転位置でキャリッジに取り付け可能で、異なる回転位置に取り付けても検出器の測定子が測定平面で変位可能な状態が維持されることを特徴とする。
【0037】
本発明の真円度測定装置では、コラムが載物台の両側に移動するので、検出器の取り付け方向を変更しなくても、外筒面および内筒面の真円度を測定できる。さらに、検出器ホルダは、測定平面に垂直な回転軸を中心として回転するので、つば部分の上面および下面の平面度を測定する場合に検出器ホルダを回転しても、測定子は測定平面に位置する。このため、回転軸は1つでよい。
【0038】
検出器ホルダは、ホルダ固定部にマニュアルで(手動で)取り付け方向を変えて取り付け可能にしても、ホルダ固定部を回転中心として回転するホルダ回転機構を設けて自動で取り付け方向を変更可能にしてもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、小型で、操作が容易で、姿勢変更に伴う位置誤差を低減して測定誤差の小さな真円度測定装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、従来の真円度測定装置の外観図である。
【図2】図2は、図1の真円度測定装置の上面図である。
【図3】図3は、外筒面の真円度を測定する場合の操作を説明する図である。
【図4】図4は、つば部分を有するワークの外筒面の真円度を測定する状態を示す外観図である。
【図5】図5は、つば部分を有するワークの外筒面の真円度を測定する状態の側面図である。
【図6】図6は、つば部分を有するワークの内筒面の真円度を測定する状態を示す外観図である。
【図7】図7は、つば部分を有するワークの内筒面の真円度を測定する状態の側面図である。
【図8】図8は、つば部分を有するワークのつば部分の上面の平面度を測定する状態を示す外観図である。
【図9】図9は、つば部分を有するワークのつば部分の下面の平面度を測定する状態を示す外観図である。
【図10】図10は、検出器の回転による測定点の変化が生じない検出器の例を示す図である。
【図11】図11は、検出器の回転による測定点の変化が生じない検出器の例を示す図である。
【図12】図12は、本発明の第1実施形態の真円度測定装置の正面側から見た外観図である。
【図13】図13は、本発明の第1実施形態の真円度測定装置の背面側から見た外観図である。
【図14】図14は、第1実施形態の真円度測定装置の上面図である。
【図15】図15は、つば部分を有するワークの外筒面の真円度を測定する状態を示す側面図である。
【図16】図16は、つば部分を有するワークの内筒面の真円度を測定する状態を示す外観図である。
【図17】図17は、つば部分を有するワークの内筒面の真円度を測定する状態の側面図である。
【図18】図18は、つば部分を有するワークのつば部分の上面の平面度を測定する状態を示す図である。
【図19】図19は、つば部分を有するワークのつば部分の下面の平面度を測定する状態を示す図である。
【図20】図20は、本発明の第2実施形態の真円度測定装置の正面側から見た外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図12および図13は、本発明の第1実施形態の真円度測定装置の正面側および背面側から見た外観図である。
【0042】
第1実施形態の真円度測定装置は、台状のベース21と、ベース21に設けられた回転可能な載物台22と、載物台22を回転駆動するためのモータ等を有する回転駆動部(図示せず)と、ベース21の背面に設けられたコラム24と、コラム24に沿って移動可能なキャリッジ25と、キャリッジ25に取り付けられた検出器ホルダ29と、検出器ホルダ29に取り付けられた検出器30と、を有する。検出器30は、測定子31と、差動トランス等の変位検出部と、を有し、測定子31の変位を示す電気信号を出力する。キャリッジ25は、検出器ホルダ29が取り付けられるので、ホルダ固定部とも称する。
【0043】
コラム24は、上下方向ガイド51および52と、上下方向送りねじ53が設けられている。キャリッジ25は、上下方向送りねじ53に上下方向送りナットにより係合されており、上下方向送りつまみ55を回転することにより上下方向送りねじ53が回転して、上下方向に移動する。なお、上下方向送りつまみ55の代わりに、上下方向送りねじ53を回転駆動するモータ等を設けて、キャリッジ25を上下方向に自動で移動することも可能である。キャリッジ25は、高精度の上下方向ガイド51および52により案内されるので、移動しても姿勢が変化することはない。したがって、キャリッジ25に取り付けられた検出器ホルダ29および検出器30は、上下方向に移動しても、姿勢は変化せず、上下方向の位置(高さ)のみが変化する。
【0044】
さらに、ベース21の背面には、径方向ガイド71および72と、径方向送りねじ73が設けられている。コラム24は、径方向送りねじ73に径方向送りナット74により係合されており、径方向送りつまみ75を回転することにより径方向送りねじ73が回転して、径方向と平行に移動する。コラム24は、載物台22の右側および左側に移動可能である。なお、径方向送りつまみ75の代わりに、径方向送りねじ73を回転駆動するモータ等を設けて、コラム24を径方向と平行に自動で移動することも可能である。コラム24は、高精度の径方向ガイド71および72により案内されるので、移動しても姿勢が変化することはない。したがって、コラム24(キャリッジ25)に取り付けられた検出器ホルダ29および検出器30は、径方向と平行に移動しても、姿勢は変化せず、径方向の位置のみが変化する。言い換えれば、異なる半径の円筒面の真円度を測定するため、コラム24を径方向と平行に移動しても、検出器30の測定子31は、測定平面でワーク32に接触する。
【0045】
検出器ホルダ29および検出器30は、図1に示した従来例のものと同じである。
ワーク32のつば部分の上面および下面の高さ位置の変化、すなわち平面度を検出するため、検出器ホルダ29は、キャリッジ25に取り付ける方向を90度ずつ異なる3方向にすることが可能である。このため、キャリッジ25のホルダ固定部に測定平面と垂直な方向に伸びる取り付け軸が設けられ、検出器ホルダ29には軸合わせ部材が設けられ、90度ずつ異なる3方向で、取り付け軸に軸合わせ部材を嵌め合わせて取り付けられるように構成されている。この機構自体は、従来のものがそのまま使用できる。
【0046】
検出器30は、検出器ホルダ29に対して取り付け方向を変更しなくても外筒面、内筒面、つば部分の上面および下面を測定できるので、検出器ホルダ29に対して取り付け方向を変更可能にする必要はない。しかし、汎用の検出器30を取り付け可能にする場合、取り付け方向を変更可能にしてもよい。
【0047】
測定を行なう場合には、ワーク32は、載物台2上に、ワーク32の円筒面の中心軸が載物台22の回転軸にほぼ一致するように載置する。測定子31がワーク32の測定する位置に接触するように、キャリッジ25を移動して上下方向の位置を調整し、コラム24を移動して径方向の位置を調整する。この状態で、ワーク32の真円度を測定するが、高精度の測定を行なう場合には、ワーク32を回転して、ワーク32の円筒部の中心軸と載物台22の回転軸との偏心を測定し、載物台22に設けられたXY移動機構で、ワーク32の円筒部の中心軸が載物台22の回転軸により正確に一致するように調整する。この時、測定子31は、変位範囲の中心付近であることが望ましい。
【0048】
図14は、第1実施形態の真円度測定装置の上面図である。
図14に示すように、コラム24は、載物台22の背面に、測定平面と平行に移動可能に設けられる。検出器ホルダ29は、キャリッジ25から測定平面に垂直な方向に伸び、検出器30は、測定子31が測定平面上で変位するように取り付けられる。ワーク32の測定する円筒面の直径が異なる場合には、コラム24を測定平面と平行に移動するので、検出器ホルダ29および検出器30は、測定平面に沿って径方向に移動され、測定子31は、測定平面と円筒面の交差する線上で円筒面に接触し、測定平面上で変位する。前述のように、測定子31が測定平面上で変位することは、真円度を高精度で測定する上で必須事項であり、第1実施形態はこの必須事項を満たす。
【0049】
図2と図14を比較して明らかなように、第1実施形態の真円度測定装置は、従来の真円度測定装置に比べて、ベースの横方向(径方向)の長さが大幅に短縮され、アームが側方に突き出すことも無いので、設置スペースが大幅に小さくなっていることが分かる。
【0050】
前述のように、従来の真円度測定装置では、円筒面の半径(直径)の差を、アーム6の移動量を検出することにより検出できたが、第1実施形態の真円度測定装置でも同様に、コラム24の移動量を検出することにより検出できる。
【0051】
次に、第1実施形態の真円度測定装置で、ワークの各部の測定を行なう場合を詳細に説明する。
【0052】
図15は、つば部分を有するワーク32の外筒面の真円度を測定する状態を示す側面図である。図15に示すように、測定子31を、測定する外筒面の測定点Pに接触させる。
【0053】
図16は、つば部分を有するワーク32の内筒面の真円度を測定する状態を示す外観図である。
また、図17は、つば部分を有するワーク32の内筒面の真円度を測定する状態の側面図である。
【0054】
図16および図17に示すように、測定子31を、内筒面の測定点Pに接触させる。測定点Pは、載物台22の回転軸に対して、図15の外筒面の真円度を測定した測定点と反対側の内筒面上の測定点が選択される。コラム24は、ベース21の平面全体に渡って、載物台22の回転軸の両側に移動可能であり、反対側の測定点であっても特に問題は生じない。
【0055】
内筒面の真円度を測定する時の検出器30の方向は、外筒面の真円度を測定する時と同じであり、検出期30の検出器ホルダ29への取り付けを変更する必要はない。
【0056】
図18は、つば部分を有するワーク32のつば部分の上面の平面度を測定する状態を示す図であり、(A)が外観図であり、(B)が側面図である。
【0057】
図16に示す状態から、L字型の検出器ホルダ29のキャリッジ25(ホルダ固定部)に対する取り付け方向を90度回転し、測定子31が、つば部分の上面と測定平面との交差線上で接触するように配置する。そして、ワーク32を回転し、検出器30で測定子31の変位を測定すると、つば部分の平面からのずれ(平面度)が測定できる。前述のように、L字型の検出器ホルダ9の取り付け方向を90度変更しても、測定子31は測定平面内で回転するだけである。
【0058】
図19は、つば部分を有するワーク32のつば部分の下面の平面度を測定する状態を示す図であり、(A)が外観図であり、(B)が側面図である。図18の状態とは、L字型の検出器ホルダ29のキャリッジ25を取り付ける方向が180度異なる。言い換えれば、L字型の検出器ホルダ29を、逆方向に90度回転して取り付ける。
【0059】
以上のように、第1実施形態の真円度測定装置では、L字型の検出器ホルダ29をキャリッジ25に対して回転する回転軸を1つ設けるだけでよく、さらに、L字型の検出器ホルダ29を測定平面に垂直な回転軸で回転するため、回転しても測定点は測定平面内に位置し、さらに、検出器30を回転する必要が無いので、測定子11の先端部の位置、すなわち測定点が変化しない。
【0060】
図20は、本発明の第2実施形態の真円度測定装置の正面側から見た外観図である。
【0061】
第2実施形態の真円度測定装置は、検出器ホルダ29を取り付けるキャリッジ25のホルダ固定部に、モータ33と、ギア34および35と、が設けられ、外部からの信号に応じて90度ずつ回転することが、第2実施形態と異なり、他の部分は同じである。言い換えれば、第2実施形態の真円度測定装置では、外部信号でモータ33を駆動することにより、図12、図13および図16に示した検出器ホルダ29が上方向を向いた状態、図18に示した左方向を向いた状態、および図19に示した右方向を向いた状態、に自動で切り替えることができる。
【0062】
以上、第1および第2実施形態を説明したが、各種の変形例が可能であるのはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、真円度測定装置および類似の機能を有する測定装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
21 ベース
22 載物台
24 コラム
25 キャリッジ
29 検出器ホルダ
30 検出器
31 測定子
32 ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに固定され、載置されたワークを回転する回転台と、
前記回転台の回転軸に対して平行に伸び、前記回転台の回転軸と前記ワークの測定点を含む測定平面に平行に移動可能なコラムと、
前記コラムに沿って移動可能に支持されたキャリッジと、
前記キャリッジに取り付けられた検出器ホルダと、
測定子が前記測定平面で変位可能なように、前記検出器ホルダに取り付けられた検出器と、を備え、
前記検出器ホルダは、前記測定平面に垂直な回転軸を中心とした異なる回転位置で前記キャリッジに取り付け可能で、異なる回転位置に取り付けても前記検出器の前記測定子が前記測定平面で変位可能な状態が維持されることを特徴とする真円度測定装置。
【請求項2】
前記検出器ホルダを、前記ホルダ固定部を回転中心として回転するホルダ回転機構を、さらに備える請求項1記載の真円度測定装置。
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに固定され、載置されたワークを回転する回転台と、
前記回転台の回転軸に対して平行に伸び、前記回転台の回転軸と前記ワークの測定点を含む測定平面に平行に移動可能なコラムと、
前記コラムに沿って移動可能に支持されたキャリッジと、
前記キャリッジに取り付けられた検出器ホルダと、
測定子が前記測定平面で変位可能なように、前記検出器ホルダに取り付けられた検出器と、を備え、
前記検出器ホルダは、前記測定平面に垂直な回転軸を中心とした異なる回転位置で前記キャリッジに取り付け可能で、異なる回転位置に取り付けても前記検出器の前記測定子が前記測定平面で変位可能な状態が維持されることを特徴とする真円度測定装置。
【請求項2】
前記検出器ホルダを、前記ホルダ固定部を回転中心として回転するホルダ回転機構を、さらに備える請求項1記載の真円度測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−108757(P2013−108757A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251589(P2011−251589)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】
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