説明

真夜中不眠症の治療のための固体組成物およびその治療方法

【課題】真夜中(MOTN)不眠を治療するための医薬組成物、および該組成物の使用方法の提供。
【解決手段】催眠鎮静薬であるゾルピテムまたはその塩を含む固体医薬組成物、および睡眠から目覚め、睡眠に戻るのが困難であり、目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む対象者の治療における使用方法。該組成物は、1.30×10−5モル未満の有効な睡眠を誘発する量のゾルピデムまたはその塩を含む固体医薬組成物の投与に適しており、該組成物の投与工程が対象が睡眠から目覚めた後に行われ、該組成物が対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達を提供し、対象の口内で10分以内に溶解または崩壊し、量が残留鎮静作用を伴わないで投与後4時間で対象が目覚める量である使用方法であることが好ましい。該組成物は、ロゼンジまたは錠剤であり、舌下投与されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年5月25日に出願された米国仮出願番号60/684,842、2005年12月1日に出願された米国仮出願番号60/741,673、2006年3月31日に出願された米国仮出願番号60/788,340、および2006年3月31日に出願された米国仮出願番号60/788,249に基づく優先権を主張しており、これらの開示はすべての目的のためにそのまま本明細書に引用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
近年まで、医学文献により、入眠障害(例えば就寝前睡眠障害)、睡眠持続障害不眠症(例えば夜間睡眠障害)、早朝覚醒および一過性不眠(例えば新環境、ホテル初夜症候群(first night in hotel syndrome))などの4つのタイプの不眠が認識されている。しかし、米国立睡眠財団の2005「アメリカにおける睡眠」世論調査によれば、全回答者の約20%および不眠の兆候がある回答者の約50%は、過度に早く目覚め、少なくとも週に数夜、睡眠に戻ることへの困難性を有していると訴えた(結果はsleepfoundation.orgのウェブサイトで取得可能)。このタイプの不眠としては、「真夜中(middle-of-the-night)」不眠、「深夜」不眠、「入眠後持続的覚醒」不眠、「睡眠持続」不眠、および「真夜中」覚醒後の不眠が挙げられ、それぞれは睡眠の中断要素を有する。
【0003】
より詳細には、「真夜中」(MOTN)不眠の患者は一般に、初期の入眠時の問題は有さないが、意図した起床時間(正常な睡眠時間)の前に、通常約3〜4時間の睡眠時間を残して目覚める。これらの患者は、朝に残留鎮静作用を残さないで目覚めた後睡眠時間中の起床時間を軽減する治療的介入を必要とする。不幸にも、現在入手可能な催眠薬は、睡眠を誘発するのが遅い(例えばザレプロン)および/または朝に残留眠気を回避するために就寝の約7〜9時間前の投与を必要とする(例えばゾルピデム、エスゾピクロンおよびゾピクロンの入手可能な剤形)ため、MOTN不眠を治療するには不適切である。また、現在最も利用されている催眠薬の投与は、週に数夜MOTN不眠のための治療を必要とする者の不必要な投薬および過剰投薬をもたらす予防である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
明らかに、MOTN不眠の者のための適当な治療の必要性がある。本発明はこのおよび他の必要性を果たす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、ゾルピデムまたはその塩によりMOTN不眠を治療するための組成物および方法を提供する。
【0006】
一つの態様において、本発明は、MOTN不眠の治療のための固体単位投与組成物を提供し、ここに、該組成物は有効量のゾルピデムまたはその塩を含み、対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために製剤化され、該有効量は1.30×10-5モル未満の量のゾルピデムであって、適当な患者集団にて評価されるとき、投与の20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlの血漿濃度を産生するのに十分な量である。
【0007】
別の態様において、本発明は、MOTN不眠の治療のための固体単位投与組成物を提供し、ここに、該組成物は、適当な患者集団にて評価されるとき、対象への投与の30分以内に睡眠を生じさせるが、投与の約4時間後に対象が目覚めたときに残留鎮静作用を産生しない、有効な量のゾルピデムまたはその塩を含む。
【0008】
さらに別の態様において、本発明は、MOTN不眠の治療において口腔粘膜による吸収に適した医薬組成物を提供し、ここに、該組成物は約0.5 mg〜約4.0 mgのゾルピデムまたはその塩および医薬的に許容される賦形剤を含む。
【0009】
さらなる態様において、本発明は、5 mg未満の量のゾルピデムおよび緩衝剤を含む、不眠を治療するための口腔粘膜を通した送達のための固体医薬組成物を提供する。
【0010】
関連する態様において、本発明は、5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む、不眠を治療するための口腔粘膜を通した送達のための固体医薬組成物を提供する。
【0011】
別の関連する態様において、本発明は、5 mg未満の用量のヘミ酒石酸ゾルピデムと、対象の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず、約8.5より高いpHに上昇させることができる二成分緩衝系とを含む、固体単位投与医薬組成物を提供し、ここに、該組成物は、対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために製剤化される。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む、不眠の治療のための医薬組成物を提供する。
【0013】
関連する態様において、本発明は、5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む、不眠の治療のための医薬組成物を提供し、ここに、該組成物は、口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために製剤化され、二成分緩衝剤は、唾液の出発pHにかかわらず、少なくとも8.5の唾液pHを産生する。
【0014】
別の態様において、本発明は、睡眠から目覚めて30分以内に5時間未満の睡眠に戻りたいと望む対象に、有効量のゾルピデムまたはその塩を含み、対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために製剤化される、単一単位投与組成物を投与することを含む、不眠の治療方法であって、適当な患者集団にて評価されるとき、該有効量が1.30×10-5モル未満の量のゾルピデムであって、投与の20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlの血漿濃度を産生するのに十分な量である、方法を提供する。
【0015】
関連する態様において、本発明は、1.30×10-5モル未満の量のゾルピデムにてゾルピデムまたはその塩を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、対象におけるMOTN不眠の治療方法であって、該投与が必要に応じてなされ、ゾルピデムの送達が対象の口腔粘膜を通して起こり、投与の約20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlおよび投与の4時間後に20 ng/ml未満の血漿濃度のゾルピデムを産生する、方法を提供する。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、ゾルピデムまたはその塩を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、対象における不眠の治療方法であって、該組成物が対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達を提供し、該対象が睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む対象であり、該組成物が投与の30分以内に睡眠を産生し、用量が対象が投与の4時間後に目覚めたときに残留鎮静作用を産生しない量である、方法を提供する。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、5 mg未満の量のゾルピデムおよび緩衝剤を含む固体医薬組成物を睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む対象に投与することを含む、対象における不眠の治療方法であって、該固体医薬組成物が対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達を提供し、ゾルピデムの血中濃度が対象において投与の約20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlを達成する、方法を提供する。
【0018】
関連する態様において、本発明は、5 mg未満の量のゾルピデムおよび緩衝剤を含む固体医薬組成物を睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む患者に提供し;患者の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために固体医薬組成物を患者に投与する工程を含む、不眠の治療方法であって、患者におけるゾルピデムの血中濃度が投与の約20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlである、方法を提供する。
【0019】
さらなる態様において、本発明は、5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む固体医薬組成物を睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む対象に投与することを含む、不眠の治療方法であって、該固体医薬組成物が対象の口腔粘膜を通してゾルピデムの送達を提供し、対象の口内で約2分以内に溶解または崩壊し、該二成分緩衝剤が対象の口内で唾液のpHを約9.0より高いpHに上昇させる、方法を提供する。
【0020】
関連する態様において、本発明は、5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む固体医薬組成物を睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む患者に提供し;該固体医薬組成物をゾルピデムの送達のために患者の口腔粘膜を通して患者に投与する工程を含む、不眠の治療方法であって、該固体医薬組成物が患者の口内で約2分以内に溶解または崩壊し、該二成分緩衝剤が患者の口内の唾液のpHを約9.0より高いpHに上昇させる、方法を提供する。
【0021】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な記載および図面から当業者に明らかであろう。
【0022】
発明の詳細な記載
I. 総則
本発明は、口腔粘膜を通してゾルピデムを送達することにより治療的に有効な低用量のゾルピデムまたはその塩を用いて、不眠、特にMOTN不眠を治療するための組成物および方法を提供する。本発明は、口腔粘膜を通した送達のために製剤化されるときに、低用量のゾルピデムが、目覚めて2〜4時間後に残留鎮静作用を伴わないで、急速な入眠を誘発することができるという驚くべき発見に部分的に基づく。低用量のゾルピデム(例えば5 mgまたは1.30×10-5モル未満)をMOTN不眠に対抗するために用いる利点としては、睡眠を急速に誘発する作用、必要に応じて過剰で不必要な医薬を回避する治療、および覚醒時の残留鎮静作用が全くないか、または最小限であることが挙げられる。
【0023】
種々のタイプの剤形があるが、経口投与用固体剤形が患者に最も好ましく、最も一般的に用いられる。多くの剤形は、飲み込む錠剤またはカプセルとして製剤化される医薬である。しかし、飲み込み型(swallowed)製剤は、肝臓初回通過代謝中、胃腸管内における酵素的崩壊中および非標的化組織への吸収中の薬物損失などのいくつかの欠点を有する。これらの薬物損失は、薬物応答における多様性を増大するだけでなく、医薬がより高い初回用量を与えることが必要となることが多い。さらに、薬物は血流に入るために胃腸系を通過しなければならないので、治療効果に達する時間はかなり長く、典型的に約45分以上であることができる。
【0024】
口腔の粘膜を経由する薬物送達は、口腔粘膜自体の性質によりいくつかの利点を有する。例えば口腔の粘膜は大いに血管新生されており、リンパ排液部位が十分に供給されている。一般に、口腔の粘膜は5つの主領域に分けることができる:口底(舌下)、頬(頬側)、歯茎(歯肉)、口の上側(口蓋)および口唇。これらの領域は、その解剖学に関して互いに薬物透過性および薬物に対する生理学的反応が異なる。例えば、透過性について、舌下は、口蓋より透過性が高い頬よりも透過性が高い。この透過性は一般に、相対的に薄く角質化していない舌下粘膜、より厚いが角質化していない頬粘膜、および中間の厚さで角質化している口蓋粘膜という、これら粘膜の相対的な厚さおよび角質化の程度に基づく。
【0025】
従って、いくつかの態様において、本発明は、低用量のゾルピデムを含む固体剤形(例えば溶解性錠剤、ロゼンジなど)および口腔粘膜にそのような組成物を投与し、頬および/または舌下腔の組織を通して投与量の実質的用量の吸収を送達し、容易にすることにより、MOTN不眠を治療する方法を提供する。いくつかの具体的態様において、本明細書に記載の固体剤形は、緩衝系(例えば重炭酸塩/炭酸塩緩衝系)の存在により頬および/または舌下吸収を容易にする。いずれの具体的な理論とも結びつけないで、緩衝系はゾルピデムの親水性(すなわち荷電)形態(例えばヘミ酒石酸ゾルピデム)のその脂溶性遊離塩基(すなわち中性)形態への系中変換を促進することができ、該遊離塩基形態は塩形態よりも容易に口腔粘膜における脂質膜を浸透する。結果として、非高齢および高齢の両方の患者は、現在承認されている最低用量の5 mgと比較して実質的に低用量のゾルピデム(例えば非高齢患者について約3.5 mg;高齢患者について約1.75 mg)をとることから利益を得ることができ、それにより覚醒時の残留鎮静作用を伴わない睡眠を急速に誘発しうる。
【0026】
薬物送達における変動を減少することもまた所望である。驚くべきことに、これは、口腔において、初期pHに関係なく、最終pHを達成し持続することができる、二成分緩衝系を利用することにより達成することができる。従って、初期pHに関係なく、最終pHを産生し、与えられた期間、最終pHを持続する、緩衝系を有する口腔粘膜を通して、ゾルピデムまたはその塩を送達するための組成物は、特に所望であることができ、本明細書にて提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】Figure 1は、1.0 mg、1.75 mgおよび3.5 mgの本発明の舌下ゾルピデムロゼンジの平均(SEM)血漿濃度時間プロファイルを示す。
【0028】
【図2】Figure 2は、1.0 mg、1.75 mgおよび3.5 mgの本発明の舌下ゾルピデムロゼンジの血漿プロファイルの予測値対観測値を示す。
【0029】
【図3】Figure 3は、時間の関数としての1.0 mg、1.75 mgおよび3.5 mgの本発明の舌下ゾルピデムロゼンジのデジタル記号置換試験(DSST)スコアを示す。
【0030】
【図4】Figure 4は、血漿濃度の関数としての1.0 mg、1.75 mgおよび3.5 mgの本発明の舌下ゾルピデムロゼンジのDSSTスコアを示す。
【0031】
【図5】Figure 5は、3.5 mgの本発明の舌下ゾルピデムロゼンジおよび5 mgおよび10 mgの文献記載の経口(PO)Ambien(登録商標)のDSSTスコアの比較を示す。
【0032】
【図6】Figure 6は、1.0 mg、1.75 mgおよび3.5 mgの本発明の舌下ゾルピデムロゼンジの視覚的アナログ尺度(VAS)スコアを示す。
【0033】
【図7】Figure 7は、1.0 mg、1.75 mgおよび3.5 mgの本発明の舌下ゾルピデムロゼンジの精神運動覚醒検査(PVT)により測定される反応時間スコアにおける変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
II. 定義
本明細書において、以下の用語は、特に明記されなければ、それらの属するものとみなされる意味を有する。
【0035】
用語「睡眠障害」は、制限されるものではないが、睡眠機序機能不全、睡眠中の生理機能における異常、体内時計の異常、および睡眠過程への外因性因子により誘発される睡眠妨害などの多くの原因から起こる睡眠の破壊的パターンを意味する。特に、該用語は、不眠(例えば一過性、短期性および慢性)、遅延睡眠時期症候群、睡眠薬依存性睡眠障害および覚醒剤依存性睡眠障害などの安眠および/または寝付きにおける困難性に関連する障害;睡眠時無呼吸、ナルコレプシー、下肢静止不能症候群、閉塞性睡眠時無呼吸、中枢性睡眠時無呼吸、特発性過眠症、呼吸筋力低下に伴う睡眠障害などの目覚めにおける困難性と関連する障害;睡眠状態誤解、交代勤務睡眠障害、慢性的時差症候群および不規則性睡眠−覚醒症候群などの規則的な睡眠スケジュールに追随する困難性と関連する障害;睡眠恐怖障害(すなわち睡眠時異常行動)および夢中歩行(すなわち夢遊病)などの異常行動と関連する障害;および睡眠歯ぎしり、線維筋痛および悪夢などの他の障害を包含する。
【0036】
用語「不眠」は、制限されるものではないが、寝付きにおける困難性、安眠における困難性、間欠的覚醒状態および/または覚醒尚早などの症状により特徴付けられる睡眠障害を意味する。該用語はまた、眠気、不安、集中障害、記憶障害および興奮性などの日中症状も含む。本発明の組成物による治療に適した不眠のタイプとしては、制限されるものではないが、一過性、短期性および慢性不眠が挙げられる。用語「一過性不眠」は、数夜続く不眠を意味する。用語「短期性不眠」は、約2〜約4週間続く不眠を意味する。用語「慢性不眠」は、少なくとも1ヶ月間続く不眠を意味する。
【0037】
語句「入眠後持続的覚醒不眠」は、就寝時間数が残存しているにもかかわらず、対象が寝付き後に目覚めて睡眠に戻る困難性を有している状態を意味する。「入眠後持続的覚醒不眠」としては、真夜中不眠、深夜不眠、および早夜覚醒後の不眠が挙げられる。
【0038】
本明細書において、用語「真夜中不眠」または「MOTN不眠」は、対象が寝付き後に目覚めて睡眠に戻る困難性を有している状態を意味する。該対象は典型的に、いくつかの対象では4時間、3時間または2時間の睡眠時間のみを残すことができるが、約5時間の残存する睡眠時間または就寝時間を有する。当業者は、用語真夜中が時間帯、日または夜の具体的な時間よりもむしろ任意の睡眠期間における対象の睡眠時間の中間部分を意味することを認識するだろう。例えば、通常午前8時から午後3時または午後4時まで眠る交代勤務従業員は、彼らの睡眠時間が通常の日照時間中に中断したときには、それでもMOTN不眠を示しうる。MOTN不眠は一過性、短期性または慢性でありうる。
【0039】
用語「就寝時間」は、対象が眠ろうとして側臥位で過ごす(例えばベッドに横になるか、またはいすに寄りかかる)時間量を意味する。
【0040】
用語「睡眠時間」は、対象が眠りに費やす時間を意味する。睡眠時間は連続的または不連続的であることができる。
【0041】
「睡眠効率」は、対象が就寝時間中に受ける全睡眠時間を意味する。睡眠効率は次式:
100*(全睡眠時間(TST)/全就寝時間)
で測定される。
【0042】
語句「残留鎮静作用」は、患者の覚醒時における鎮静状態の自覚症状を意味する。さらに、該用語は単一の患者の例よりもむしろ例えば臨床試験にて見られる患者集団に言及することを意味する。残留鎮静作用はまた、例えば睡眠潜伏検査(SLT)、視覚的アナログ検査(VAT)、デジタル記号置換検査(Digit Symbol Substitution Test、DSST)、記号コピー検査(Symbol Copying Test、SCT)、フリッカー融合頻度閾値検査(CFF)、単純反応時間検査(視覚または聴覚;SRT)、選択反応時間検査(CRT)、単語学習検査(WLT)、臨界トラッキング検査(Critical Tracking Test、CTT)、分割的注意検査(DAT)、数字または文字末梢検査、睡眠ポリグラフ(PSG)による睡眠段階測定、連続的作業成果検査(CPT)、多睡眠潜伏検査(MSLT)、急速な視覚情報処理検査(RVIP)、暗算検査、身体の揺れ検査、運転能力検査、およびその他などの当業者により用いられる精神運動機能、注意、情報処理および記憶を探索する多くの試験のいずれか1以上を用いて評価することもできる。睡眠潜伏検査についてのガイドラインは、文献(Sleep (1986) 9:519-24)に開示される。上記の検査は、例えば文献(Walsh, et al., (2000) Clin Neuropharm 23:17-21; Verster, et al., (2002) J Clin Psychopharm 22:576-583; Patat, et al, (2001) Human Psychopharm 16:369-392; and Hindmarch, et al., (2001) Human Pshychopharm 16:159-167)に記載される。結果として、残留鎮静作用を実質的に回避するか、または産生しない量は、対象が目覚めた後の睡眠時間に、上記検査の少なくとも一つ、好ましくは上記検査の少なくとも2または3つ、および最も好ましくは上記検査の少なくとも4つで満足できる程度で検査することができる量である。
【0043】
あるいは、残留鎮静作用を実質的に回避するか、または産生しない量は、適当な時点における血漿または血中濃度のゾルピデムを決定することにより客観的に測定することができる。特に、残留鎮静作用は、対象のゾルピデムの血漿濃度が約20 ng/mlを下回るときに、本質的に消滅するだろう。さらに、この客観的検査は、患者集団における平均ゾルピデム血漿または血中濃度を意味する。患者間のある程度の変動が予想されるので、多くの患者が低血漿濃度または低血中濃度のゾルピデムでさえも残留鎮静作用を有するように対応することができる。
【0044】
用語「治療的有効量」または「有効量」は、それを必要とする対象における治療効果を達成することができるゾルピデムの量を意味する。例えば有効量のゾルピデムは、MOTN不眠と関連する1以上の症状を予防または緩和することができる量であることができる。任意の与えられた薬物についての血漿濃度時間曲線は、薬物が投与された後の体内の薬物の運命を決定する、頻繁に重なり合う4つの速度論的事象の説明であることに留意することが重要である。4つの事象は吸収、分配、代謝および排出である。吸収相は始めを支配するが、分配相はピーク濃度時間にて支配し、代謝および排出相は薬物の残りの消滅段階を支配する。ゾルピデムの催眠鎮静活性プロファイルは、その血漿濃度時間曲線から予測することができる(Greenblatt et al., Clin. Pharmacol. Therap. 64:553 (1998))。一般に、約25 ng/ml〜約50 ng/mlの間の血漿濃度は、睡眠を誘発するのに十分であり、薬物の吸収相中に起こるが、これは必ずしもピーク濃度ではない。ゾルピデムが吸収され、分配されるとすぐに、血漿濃度は時間とともに低下するだろう。薬物分配、代謝および排出の後半の相が約20 ng/ml以下のゾルピデムの濃度をもたらすときに、薬物の残留鎮静作用は本質的に消滅するだろう。このレベルは、ある程度患者の年齢、肝臓効率および初期投与量に依存するだろう。一般に、本明細書に記載の組成物および方法について、体内の薬物の連続的枯渇と身体の睡眠・覚醒サイクルの睡眠必要性の達成との同時発生により、血漿濃度が約20 ng/ml以下に低下するとすぐに催眠鎮静活性は持続しなくなる。
【0045】
用語「バイオアベイラビリティ」は、薬物が体内の治療部位に吸収されるか、または利用される速度および/または程度を意味する。ゾルピデムのMOTN効率はまた、ゾルピデムのバイオアベイラビリティまたは吸収を、例えば約0.1 ng/ml/分の速度にて改善することにより改善することもできる。
【0046】
用語「溶解する」または「溶解」は、固体剤形の一部の溶液またはスラリー形態への変換を意味する。長期間にわたり溶解する固体剤形の量は、剤形の成分(例えば用いられるゾルピデムの形態ならびに用いられる賦形剤)に応じて変化するだろう。いくつかの固体剤形は、約15分以内の時間にわたり患者の口内で完全に溶解するだろう。さらに他の固体剤形は約6分以内の時間にわたり口内で完全に溶解するだろう。一般に、少なくとも約25重量%にて、固体剤形は投与の約5分以内に溶解するだろう。固体剤形の溶解プロファイルを決定するための当分野にて知られている適切な方法としては、例えばUSP<711>Apparatus 1またはUSP<711>Apparatus 2などの米国薬局方(USP)溶解検査が挙げられる。
【0047】
用語「崩壊する」または「崩壊」は、固体剤形の実質的な部分の液体形態への完全な溶解に伴う、例えば錠剤またはロゼンジの小片への分解を意味する。より具体的には、固体剤形の崩壊は、適当な期間、例えば投与後約5分間の口内における約25重量%未満の固体剤形の残存を意味する。固体剤形の崩壊プロファイルを決定するための当分野にて知られている適切な方法としては、例えばUSP崩壊検査が挙げられる。
【0048】
本明細書において、語句「ゾルピデムのイオン化した形態からイオン化していない形態への実質的に完全な変換」は、ゾルピデムのイオン化した形態からイオン化していない形態への約50%より高い変換を意味する。例えば、緩衝系は、ゾルピデムのイオン化した形態からイオン化していない形態への少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%の変換が好ましいことができる。いくつかの具体的態様において、変換は投与後約10分以内に起こる。
【0049】
用語「変動」は、最大血漿濃度(Cmax)および最大血漿濃度に達する時間(Tmax)についての相対標準偏差(RSD)の百分率の観点からの被験者間の変動を意味する。特に、本発明の好ましい組成物は、Ambien(登録商標)錠剤などの商業的経口錠剤について約45%に対して約33%のCmaxについてRSDを有する。さらに、本発明の組成物は、Ambien(登録商標)錠剤などの商業的経口錠剤について約100%に対して約50%以下のTmaxについてのRSDを有する。
【0050】
用語「対象」または「患者」はヒトを意味する。
【0051】
用語「投与」は、本発明の組成物の口腔の粘膜(すなわち口腔粘膜)への投与を意味する。口腔粘膜内の投与の適切な部位の例としては、制限されるものではないが、口底の粘膜(舌下粘膜)、頬(頬粘膜)、歯茎(歯肉粘膜)、口の上側(口蓋粘膜)、口唇およびその組合せが挙げられる。好ましくは、本発明の組成物は、舌下粘膜、頬粘膜またはその組合せに投与される。
【0052】
III. 具体的態様の記載
ある態様において、本発明は、MOTN不眠の治療のための固体単位投与組成物であって、該組成物が有効量のゾルピデムまたはその塩を含み、対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために製剤化され、適当な患者集団にて評価されるときに、該有効量が1.30×10-5モル未満の量のゾルピデムであり、投与の20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlの血漿濃度を産生するのに十分な量である、組成物を提供する。
【0053】
ある具体的態様において、固体単位投与組成物は、約30分以内、あるいは約20分以内、あるいは約10分以内でゾルピデムの最大血漿濃度(Cmax)の約50%を提供する。別の具体的態様において、固体単位投与組成物は、投与後約2、3または4時間にて約20 ng/ml未満であるゾルピデムの血中(例えば血漿)濃度を提供する。ゾルピデムは、対象の舌下および/または頬粘膜を通して典型的に送達される。
【0054】
いくつかの具体的態様において、固体単位投与組成物は、炭酸塩および重炭酸塩からなる群から選択される少なくとも一つのpH調節剤を含む。他の具体的態様において、固体単位投与組成物は、対象の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず、約8.5より高い、あるいは約9.0より高い、あるいは約9.5より高い、あるいは約10.0より高い、あるいは約10.5より高い、あるいは約11.0より高い、あるいは約9.0〜約11.0のpHに上昇させる、二成分緩衝系を含む。例えば、二成分緩衝系は炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムからなることができる。あるいは、二成分緩衝系は当分野で知られている炭酸塩および重炭酸塩の任意の組合せからなることができる。
【0055】
固体単位投与組成物は典型的に、ロゼンジ、チューインガム、チュアブル錠または遅延溶解性錠剤もしくは即溶解性錠剤などの溶解性錠剤の形態である。好ましくは、固体単位投与組成物はロゼンジまたは即溶解性錠剤である。即溶解性錠剤は通常、約0.5分未満、あるいは約1分未満、あるいは約1.5分未満、あるいは約2分未満、あるいは約2.5分未満、あるいは約3分未満、あるいは約4分未満、あるいは約5分未満、あるいは約6分未満で対象の口内で完全な溶解を提供する。低用量のゾルピデムのロゼンジおよび錠剤剤形の記載はそれぞれ実施例1および3に提供する。
【0056】
別の具体的態様において、固体単位投与組成物は約5 mg未満のヘミ酒石酸ゾルピデムを含む。好ましくは、固体単位投与組成物は約0.5〜約4.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約1.5〜約2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約3.0〜約3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む。
【0057】
ゾルピデムの有効量は一般に、適当な患者集団(例えば臨床研究に用いられる患者集団)において、対象の年齢、体重、残存する就寝時間数および/またはゾルピデムを代謝する能力などの因子に基づき評価する。従って、口腔粘膜を通した送達のためのゾルピデムの有効量は選択される患者集団について異なることができる。例えば、高齢の患者集団(すなわち65歳以上の対象)のゾルピデムの有効量は通常、約1.5 mg〜約2.5 mgのゾルピデム、あるいは約1.75 mg、あるいは約2.0 mg、あるいは約2.5 mgである。同様に、ゾルピデムを代謝する能力が衰えた対象の集団におけるゾルピデムの有効量は、約1.5 mg〜約2.5 mgのゾルピデム、あるいは約1.75 mg、あるいは約2.0 mg、あるいは約2.5 mgであることができる。非高齢の患者集団(すなわち65歳より若い対象)のゾルピデムの有効量は通常、約3.0 mg〜約3.75 mgのゾルピデム、あるいは約3.25 mg、あるいは約3.5 mg、あるいは約3.75 mgである。目覚めたが未だ約4または5時間の就寝時間が残存する対象におけるゾルピデムの有効量は、約2 mg〜約5 mgのゾルピデムであることができる。より低用量のゾルピデム(例えば約0.5 mg〜約2.5 mg、あるいは約0.5 mg、あるいは約1.0 mg、あるいは約1.5 mg、あるいは約2.0 mg、あるいは約2.5 mg)は、目覚めたが未だ約2〜4時間の就寝時間が残存する対象に投与することができる。
【0058】
当分野に知られているいずれの方法も対象におけるゾルピデムの血漿濃度を測定するために用いることができる。非限定的な例として、対象から集めた血液サンプルからの血漿は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、次いでタンデム質量分析(MS)または蛍光検出を用いてゾルピデム濃度について分析することができる。ゾルピデムの血漿濃度を測定するためのクロマトグラフィー法は例えば文献(Ascalone et al., J. Chromatogr., 581:237-250 (1992); Tracqui et al., J. Chromatogr., 616:95-103 (1993); Durol et al., J. Anal. Toxicol., 215:388-392 (1997); Ptacek et al., J. Chromatogr. B Biomed. Sci. Appl., 694:409-413 (1997); and Ring et al., J. Pharm. Biomed. Anal., 22:495-504 (2000))に記載されている。
【0059】
別の態様において、本発明は、MOTN不眠の治療のための固体単位投与組成物であって、該組成物が、適当な患者集団にて評価されるときに、対象への投与の30分以内に眠りを産生するが、対象が投与の約4時間後に目覚めるときに残留鎮静作用を産生しないような有効なゾルピデムまたはその塩の量を含む、組成物を提供する。
【0060】
いくつかの具体的態様において、固体単位投与組成物はさらに少なくとも一つのpH調節剤を含む。pH調節剤の例としては、炭酸塩、重炭酸塩およびその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。他の具体的態様において、固体単位投与組成物は二成分緩衝系を含む。非限定的な例として、二成分緩衝系は炭酸塩(例えば炭酸ナトリウム)および重炭酸塩(例えば重炭酸ナトリウム)からなることができる。好ましい具体的態様において、固体単位投与組成物は対象の口腔粘膜(例えば頬および/または舌下送達)を通したゾルピデムの送達に適した剤形であり、ここに、該二成分緩衝系は、対象の唾液を唾液の出発pHにかかわらず、約8.5より高い、あるいは約9.0より高い、あるいは約9.5より高い、あるいは約10.0より高い、あるいは約10.5より高い、あるいは約11.0より高い、あるいは約9.0〜約11.0のpHに上昇させる。
【0061】
いくつかの具体的態様において、固体単位投与組成物は入眠時に睡眠ポリグラフステージ1睡眠を産生する。睡眠ポリグラフステージ1睡眠は典型的に、睡眠ポリグラムが覚醒状態から活性の約50%の減少を示す睡眠のノンREMステージを意味する。睡眠ポリグラフステージ1睡眠中に、眼は通常閉じるが、目覚めたときに、対象はまるで眠っていないかのように感じることができる。睡眠ポリグラフステージ1睡眠は約5〜約10分間続くことができる。
【0062】
別の具体的態様において、固体単位投与組成物は、約5 mg未満のヘミ酒石酸ゾルピデムを含む。好ましくは、固体単位投与組成物は約0.5〜約4.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約1.5〜約2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約3.0〜約3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む。
【0063】
固体単位投与組成物は典型的に、ロゼンジ、錠剤(例えばチュアブル錠、遅延溶解性錠剤、即溶解性錠剤)またはチューインガムの形態である。好ましくは、組成物はロゼンジまたは即溶解性錠剤である。いくつかの具体的態様において、固体単位投与組成物は、投与後約5分以内(例えば約4、3、2、1または0.5分以内)に頬および/または舌下溶解を提供する。
【0064】
さらに別の態様において、本発明は、MOTN不眠の治療において口腔粘膜(例えば頬および/または舌下吸収)による吸収に適した医薬組成物であって、該組成物が約0.5 mg〜約4.0 mgのゾルピデムまたはその塩および医薬的に許容される賦形剤を含む、組成物を提供する。
【0065】
いくつかの具体的態様において、医薬組成物は約0.5〜約4.0 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む。一般に、医薬組成物は約1.0 mg、あるいは約1.75 mg、あるいは約2.5 mg、あるいは約3.0 mg、あるいは約3.5 mgのゾルピデムまたはそのヘミ酒石酸ゾルピデムなどの塩を含むことができる。他の具体的態様において、医薬組成物はさらに、二成分緩衝系を含む。例えば、二成分緩衝系は炭酸ナトリウムなどの炭酸塩および重炭酸ナトリウムなどの重炭酸塩からなることができる。炭酸塩および重炭酸塩は通常、重量で約1:1.0〜約1:1.4、あるいは重量で約1:1.0〜約1:1.2の炭酸塩:重炭酸塩比で存在する。好ましくは、二成分緩衝系は、対象の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず、約8.5より高い、あるいは約9.0より高い、あるいは約9.5より高い、あるいは約10.0より高い、あるいは約10.5より高い、あるいは約11.0より高い、あるいは約9.0〜約11.0のpHに上昇させる。
【0066】
いくつかの具体的態様において、医薬組成物はロゼンジまたは錠剤(例えばチュアブル錠、遅延溶解性錠剤、即溶解性錠剤)などの固体単位剤形である。別の具体的態様において、医薬組成物は、投与後約5分以内(例えば約4、3、2、1または0.5分以内)に完全な頬および/または舌下溶解を提供する。
【0067】
さらなる態様において、本発明は、5 mg未満の量のゾルピデムおよび緩衝剤を含む、不眠の治療のための口腔粘膜を通した送達のための固体医薬組成物を提供する。
【0068】
一般に、緩衝剤は炭酸塩緩衝剤、重炭酸塩緩衝剤またはその混合物を含む。いくつかの場合において、緩衝剤は、例えば炭酸塩緩衝剤および重炭酸塩緩衝剤からなる、二成分緩衝剤である。
【0069】
いくつかの具体的態様において、ゾルピデムの量は、約1.30×10-5モル未満のゾルピデムである。他の具体的態様において、ゾルピデムの量は、約0.5〜約4.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、例えば約1.5〜約2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約3.0〜約3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約1.0〜約3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約1.5〜約3.0 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムである。
【0070】
固体医薬組成物は典型的に、ロゼンジ、チューインガム、チュアブル錠、および遅延溶解性錠剤または即溶解性錠剤などの溶解性錠剤などの剤形であるが、これらに限定されない。好ましくは、固体医薬組成物はロゼンジまたは即溶解性舌下錠剤の形態である。ゾルピデムは典型的に、舌下および/または頬粘膜を通して送達される。
【0071】
関連する態様において、本発明は、約5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む、不眠の治療のための口腔粘膜を通した送達のための固体医薬組成物を提供する。
【0072】
ある具体的態様において、ゾルピデムの量は、約0.5〜約4.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムである。好ましくは、ゾルピデムの量は約1.5〜約2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約3.0〜約3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約1.0〜約3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約1.5〜約3.0 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムである。いくつかの他の場合において、ゾルピデムの量は、約1.30×10-5モル未満のゾルピデムである。
【0073】
いくつかの具体的態様において、二成分緩衝剤は炭酸ナトリウムなどの炭酸塩緩衝剤および重炭酸ナトリウムなどの重炭酸塩緩衝剤からなる。好ましくは、固体医薬組成物はロゼンジまたは舌下錠剤などの錠剤である。
【0074】
別の関連する態様において、本発明は、約5 mg未満の用量のヘミ酒石酸ゾルピデムと、対象の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず、約8.5より高い、あるいは約9.0より高い、あるいは約9.5より高い、あるいは約10.0より高い、あるいは約10.5より高い、あるいは約11.0より高い、あるいは約9.0〜約11.0のpHに上昇させることができる二成分緩衝系とを含む、固体単位投与医薬組成物を提供し、ここに、該組成物は、対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために製剤化される。
【0075】
ある具体的態様において、固体単位投与医薬組成物は、約0.5〜約4.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む。好ましくは、固体単位投与医薬組成物は約1.5〜約2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約3.0〜約3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約1.0〜約3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約1.5〜約3.0 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む。
【0076】
いくつかの具体的態様において、二成分緩衝系は、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩および重炭酸ナトリウムなどの重炭酸塩からなる。他の具体的態様において、二成分緩衝系は、重量で約1:1.0〜約1:1.4、あるいは重量で約1:1.0〜約1:1.2の炭酸塩:重炭酸塩比で炭酸塩および重炭酸塩を含む。
【0077】
さらなる態様において、本発明は、5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む、不眠の治療のための医薬組成物を提供する。
【0078】
医薬組成物は典型的に、対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達(例えば頬および/または舌下送達)に適した剤形、ロゼンジ、チューインガム、チュアブル錠、および遅延溶解性錠剤または即溶解性錠剤などの溶解性錠剤などであるが、これらに限定されない。いくつかの具体的態様において、二成分緩衝剤は炭酸ナトリウムなどの炭酸塩緩衝剤および重炭酸ナトリウムなどの重炭酸塩緩衝剤からなる。あるいは、二成分緩衝剤は当分野にて知られている炭酸塩および重炭酸塩のいずれの組合せも含むことができる。
【0079】
関連する態様において、本発明は5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む、不眠の治療のための医薬組成物を提供し、ここに、該組成物は、口腔粘膜(例えば頬および/または舌下粘膜)を通したゾルピデムの送達のために製剤化され、該二成分緩衝剤は、唾液の出発pHにかかわらず、少なくとも約8.5、あるいは少なくとも約9.0、あるいは少なくとも約9.5、あるいは少なくとも約10.0、あるいは少なくとも約10.5、あるいは少なくとも約11.0、あるいは約9.0〜約11.0の唾液pHを産生する。
【0080】
別の態様において、本発明は、睡眠から目覚めて30分以内に5時間未満の睡眠に戻りたいと望む対象に、有効量のゾルピデムまたはその塩を含み、該対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために製剤化される、単一単位投与組成物を投与することを含む、不眠の治療方法であって、適当な患者集団にて評価されるときに、該有効量が1.30×10-5モル未満の量のゾルピデムであり、投与の20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlの血漿濃度を産生するのに十分な量である、方法を提供する。
【0081】
本発明の方法において、単一単位投与組成物は典型的に、必要に応じて投与される。好ましくは、単一単位投与組成物は、ゾルピデムの頬および/または舌下送達のために製剤化される、ロゼンジまたは錠剤(例えばチュアブル錠、遅延溶解性錠剤、即溶解性錠剤)である。いくつかの具体的態様において、単一単位投与組成物はさらに、対象の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず、約8.5より高い、あるいは約9.0より高い、あるいは約9.5より高い、あるいは約10.0より高い、あるいは約10.5より高い、あるいは約11.0より高い、あるいは約9.0〜約11.0のpHに上昇させる、二成分緩衝系を含む。
【0082】
好ましい具体的態様において、単一単位投与組成物は、約0.5〜約4.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムと、対象の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず、約8.5より高い、あるいは約9.0より高い、あるいは約9.5より高い、あるいは約10.0より高い、あるいは約10.5より高い、あるいは約11.0より高い、あるいは約9.0〜約11.0のpHに上昇させる、二成分緩衝系とを含む。ある具体的態様において、二成分緩衝系は炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムからなる。
【0083】
関連する態様において、本発明は、1.30×10-5モル未満の量にてゾルピデムまたはその塩を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、対象におけるMOTN不眠を治療する方法であって、該投与が必要に応じてなされ、ゾルピデムの送達が該対象において投与の約20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlおよび投与の4時間後に20 ng/ml未満のゾルピデムの血中濃度を産生するために該対象の口腔粘膜を通してなされる、方法を提供する。
【0084】
ある具体的態様において、医薬組成物は、対象において投与の約20、30または40分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlおよび投与後約2、3または4時間で約20 ng/ml未満のゾルピデムの血中濃度(例えば血漿濃度)を提供する。別の具体的態様において、医薬組成物は、ゾルピデムの最大血漿濃度(Cmax)の約50%を投与後約30分以内に、あるいは約20分以内に、あるいは約10分以内に提供する。対象におけるゾルピデムの血中濃度(例えば血漿濃度)を測定する方法は上記のとおりである。ゾルピデムの送達は典型的に、対象の舌下および/または頬粘膜を通して起こる。
【0085】
いくつかの具体的態様において、医薬組成物は少なくとも一つのpH調節剤を含む。pH調節剤の例としては、炭酸塩、重炭酸塩およびその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。他の具体的態様において、医薬組成物は、対象の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず、約8.5より高い、あるいは約9.0より高い、あるいは約9.5より高い、あるいは約10.0より高い、あるいは約10.5より高い、あるいは約11.0より高い、あるいは約9.0〜約11.0のpHに上昇させる、二成分緩衝系を含む。例えば、二成分緩衝系は炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムからなることができる。あるいは、二成分緩衝系は当分野において知られている炭酸塩および重炭酸塩のいずれの組合せも含むことができる。
【0086】
医薬組成物は典型的に、ロゼンジ、チューインガム、チュアブル錠または遅延溶解性錠剤もしくは即溶解性錠剤(例えば即溶解性舌下錠剤)などの溶解性錠剤の形態である。別の具体的態様において、医薬組成物は約5 mg未満のヘミ酒石酸ゾルピデムを含む。本発明の方法により必要に応じて投与される有効量のゾルピデムは上記のとおりである。好ましくは、医薬組成物は約0.5〜約4.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約1.5〜約2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約3.0〜約3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む。いくつかの場合において、医薬組成物は5 mg未満の用量のヘミ酒石酸ゾルピデムと、炭酸塩および重炭酸塩からなる二成分緩衝系とを含む。
【0087】
さらに別の態様において、本発明は、ゾルピデムまたはその塩を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、対象における不眠の治療方法であって、該組成物が対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達を提供し、該対象が睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む対象であり、該組成物が投与の30分以内の睡眠を産生し、対象が投与の4時間後に目覚めたときに投与が残留鎮静作用を産生しないものである、方法を提供する。
【0088】
ある具体的態様において、医薬組成物は、投与の約20、30または40分以内に睡眠を産生するが、対象が投与の約2、3または4時間後に目覚めたときに残留鎮静作用を産生しない。いくつかの場合において、医薬組成物は、入眠時に睡眠ポリグラフステージ1睡眠を産生する。
【0089】
別の具体的態様において、医薬組成物は、対象において投与の約20、30または40分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlおよび/または投与の約2、3または4時間後に約20 ng/ml未満の血中濃度(例えば血漿濃度)のゾルピデムを産生する。さらに別の具体的態様において、医薬組成物は、ゾルピデムの最大血漿濃度(Cmax)の約50%を投与後約30分以内に、あるいは約20分以内に、あるいは約10分以内に提供する。ゾルピデムは典型的に、対象の舌下および/または頬粘膜を通して送達される。
【0090】
いくつかの具体的態様において、医薬組成物はさらに、少なくとも一つのpH調節剤を含む。他の具体的態様において、医薬組成物はさらに、対象の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず、約8.5より高い、あるいは約9.0より高い、あるいは約9.5より高い、あるいは約10.0より高い、あるいは約10.5より高い、あるいは約11.0より高い、あるいは約9.0〜約11.0のpHに上昇させる、二成分緩衝系を含む。好ましくは、医薬組成物は、例えば約5 mg未満の量のヘミ酒石酸ゾルピデムを含む。いくつかの場合において、医薬組成物は、約0.5〜約4.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、例えば約1.5〜約2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約3.0〜約3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約1.0〜約3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデム、あるいは約1.5〜約3.0 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む。
【0091】
好ましい具体的態様において、医薬組成物は、約1.5〜約2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムまたは約3.0〜約3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムと、炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムからなる二成分緩衝系とを含む。
【0092】
医薬組成物は典型的に、ロゼンジ、チューインガム、チュアブル錠、および遅延溶解性錠剤または即溶解性錠剤などの溶解性錠剤などの固体単位剤形であるが、これらに限定されない。好ましくは、医薬組成物は、ロゼンジまたは即溶解性舌下錠剤の形態である。
【0093】
さらなる態様において、本発明は、5 mg未満の量のゾルピデムおよび緩衝剤を含む固体医薬組成物を、睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む対象に投与することを含む、対象における不眠の治療方法であって、該固体医薬組成物が対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達を提供し、ゾルピデムの血中濃度が対象において投与の約20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlを達成する、方法を提供する。
【0094】
関連する態様において、本発明は、5 mg未満の量のゾルピデムおよび緩衝剤を含む固体医薬組成物を睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む患者に提供し;患者の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために該固体医薬組成物を患者に投与する工程を含む、不眠の治療方法であって、患者におけるゾルピデムの血中濃度が投与の約20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlである、方法を提供する。
【0095】
ある具体的態様において、固体医薬組成物は、対象において、投与の約20、30または40分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlの血中濃度(例えば血漿濃度)のゾルピデムを達成する。別の具体的態様において、固体医薬組成物は、対象において、投与の約2、3または4時間以内に約20 ng/ml未満の血中濃度のゾルピデムを提供する。
【0096】
いくつかの具体的態様において、固体医薬組成物は、約2分以内(例えば約2、1.5、1または0.5分以内)に対象の口内で溶解するか、または崩壊する。他の具体的態様において、固体医薬組成物は、約3〜約6分(例えば約3、3.5、4、4.5、5、5.5または6分)で対象の口内で溶解するか、または崩壊する。ゾルピデムは典型的に、対象の舌下および/または頬粘膜を通して送達される。
【0097】
一般に、医薬組成物中に存在する緩衝剤は、対象の口内の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず、約8.5より高い、あるいは約9.0より高い、あるいは約9.5より高い、あるいは約10.0より高い、あるいは約10.5より高い、あるいは約11.0より高い、あるいは約9.0〜約11.0のpHに上昇させる。好ましくは、唾液のpHは、少なくとも約2分間(例えば約2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6分間以上)約9.0を超えて上昇する。いくつかの場合において、緩衝剤は二成分緩衝剤である。適切な二成分緩衝剤の非限定的な例としては、炭酸塩緩衝剤および重炭酸塩緩衝剤の混合物が挙げられる。
【0098】
さらなる態様において、本発明は、5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む固体医薬組成物を、睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む対象に投与することを含む、不眠の治療方法であって、該固体医薬組成物が対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達を提供し、対象の口内で約2分以内に溶解または崩壊し、該二成分緩衝剤が対象の口内の唾液のpHを約9.0より高いpHに上昇させる、方法を提供する。
【0099】
関連する態様において、本発明は、5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む固体医薬組成物を、睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む患者に提供し;患者の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために該固体医薬組成物を患者に投与する工程を含む、不眠の治療方法であって、該固体医薬組成物が患者の口内で約2分以内に溶解または崩壊し、該二成分緩衝剤が患者の口内の唾液のpHを約9.0より高いpHに上昇させる、方法を提供する。
【0100】
ある具体的態様において、固体医薬組成物は、対象において、投与の約20、30または40分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlの血中濃度(例えば血漿濃度)のゾルピデムを達成する。別の具体的態様において、固体医薬組成物は、対象において、投与の約2、3または4時間以内に約20 ng/ml未満の血中濃度のゾルピデムを提供する。
【0101】
いくつかの具体的態様において、唾液のpHは、少なくとも約2分間(例えば2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6分間以上)約9.0を超えて上昇する。他の具体的態様において、二成分緩衝剤は炭酸塩緩衝剤および重炭酸塩緩衝剤からなる。ゾルピデムは典型的に、対象の舌下および/または頬粘膜を通して送達される。
【0102】
IV. 組成物
典型的に、本発明の組成物は、投与ごとにゾルピデムまたはその塩を約0.5 mg、約0.8 mg、約1.0 mg、約1.5 mg、約1.75 mg、約2.0 mg、約2.5 mg、約3.0 mg、約3.5 mg、約3.75 mg、約4.0 mg、約4.5 mgまたは約4.75 mgの量にて含むだろう。しかし、ゾルピデムの量は、約5 mg未満、あるいは約1.5〜約2.5 mg、あるいは約3.0〜約3.75 mgのいずれの用量でもあることができる。当業者は、ゾルピデムの量を組成物に存在するゾルピデムのモル数として表現することができることを認識するだろう。例えば、5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムは約1.30×10-5モルのゾルピデムと等価である。そのようなものとしてのいくつかの具体的態様において、組成物は約1.30×10-5モル未満のゾルピデムを提供する量のヘミ酒石酸ゾルピデムを含むだろう。
【0103】
ゾルピデムのいずれの形態、例えばゾルピデムの塩形態、ゾルピデムの遊離塩基形態、ゾルピデムの多形体またはその混合物も、本明細書に記載の組成物における使用に適している。例えば、ゾルピデムの医薬的に許容される塩としては、酒石酸塩、ヘミ酒石酸塩、コハク酸塩、二塩酸塩、サリチル酸塩、ヘミコハク酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、塩酸塩、カーバメート、硫酸塩、硝酸塩および安息香酸塩の形態、ならびにその組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの具体的態様において、ゾルピデムは塩形態、例えばヘミ酒石酸ゾルピデムである。他の具体的態様において、ゾルピデムは多形体の形態であり、例えばPlantex Ltd.(Netanya, Israel)で市販されている。
【0104】
本発明の組成物は、固体、半固体、凍結乾燥された粉末または液体剤形、例えば錠剤(例えばチュアブル、遅延型溶解性、即溶解性など)、丸剤、カプセル、ロゼンジ、ガム、散剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤、エアロゾル、泡沫剤、クリーム剤、ゲル剤、ローションなどの形態をとることができる。好ましくは、本発明の組成物は、錠剤またはロゼンジ、特に即溶解性錠剤またはロゼンジとして製剤化され、例えば米国特許公開番号20050226925に記載されている。
【0105】
本明細書において、用語「単位投与」または「剤形」は、ヒト対象および他の哺乳動物のための単一の投与量として適切な物理的に分離した単位を意味し、各単位は、所望の発現、耐性および治療効果を産生するように計算された予め定められた量の治療剤を1以上の担体などの適切な医薬賦形剤とともに含む。そのような剤形を製造する方法は、当業者に知られているか、または明らかであろう。例えば、いくつかの具体的態様において、本発明のチューインガム剤形は米国特許番号4,405,647に記載の手順により製造することができる。他の具体的態様において、本発明の液体スプレーまたは溶液剤、チンキ剤、錠剤、ロゼンジまたはキャンディ剤形は、例えば、文献(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed., Lippincott, Williams&Wilkins (2003); Pharmaceutical Dosage Forms, Volume 1: Tablets, 2nd Ed., Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y. (1989));および同様の刊行物に記載の手順により製造することができる。投与される剤形は、いずれにしても、本発明の教示に従って投与されるときに治療される病態の緩和に治療的に有効な量の治療剤を含むだろう。
【0106】
用語「担体」または「賦形剤」は、治療剤などの薬物のための希釈剤またはビヒクルとして用いられる典型的に不活性な物質を意味する。該用語はまた、組成物に凝集性を与える典型的に不活性な物質も包含する。本発明の組成物における使用に適切な担体としては、結合剤、ガム基礎剤およびその組合せが挙げられるが、これらに限定されない。結合剤の非限定的な例としては、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルトデキストリン、ラクトース、デキストロース、スクロース、グルコース、イノシトール、粉砂糖、糖液、デンプン、セルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、アカシアガム、グアーガム、トラガカントガム、アルギン酸塩、アイリッシュ・モスの抽出物、パンワールガム、ガティガム、イサポール皮の粘液、Veegum(登録商標)、カラマツ・アラボガラクタン(larch arabogalactan)、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリオキシエチレンポリマー、ポリアクリル酸(例えばカルボポール(Carbopol))、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、カオリン、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびその組合せが挙げられる。これらの結合剤は前処理をし、凍結乾燥(例えば文献(Fundamentals of Freeze-Drying, Pharm. Biotechnol., 14:281-360 (2002); Lyophililization of Unit Dose Pharmaceutical Dosage Forms, Drug. Dev. Ind. Pharm., 29:595-602 (2003))を参照のこと);固体−溶液製造(例えば米国特許番号6,264,987を参照のこと);および適切な滑沢剤による滑沢剤ダスティング(lubricant dusting)および湿式造粒(例えば文献(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 上記参照)を参照のこと)などの当分野にて知られている方法により、それらの流動性および風味を改善することができる。例えば、SPI Pharma Group(New Castle, DE)から購入したMannogem(登録商標)およびSorbogem(登録商標)はそれぞれ、マンニトールおよびソルビトールの凍結乾燥処理された形態である。典型的に、本発明の組成物は、重量で約25%〜約90%、好ましくは約50%〜約80%の結合剤を含む。しかし、当業者は、本発明の組成物がいずれの結合剤もなく製造されれば、例えば非常にもろい剤形を産生しうることを認識するだろう。
【0107】
ガム基礎剤の非限定的な例としては、当業者に知られている多くの水不溶性および唾液不溶性のガム基礎剤物質の中から選択される物質が挙げられる。例えば、いくつかの場合において、ガム基礎剤は少なくとも一つの疎水性ポリマーおよび少なくとも一つの親水性ポリマーを含む。ガム基礎剤に適切な疎水性および親水性ポリマーの非限定的な例としては、エラストマー、ゴムおよびその組合せなどの天然および合成ポリマーの両者が挙げられる。適切な天然ポリマーの例としては、チクル、ジェルトン、ガッタパーチャ、クラウンガムおよびその組合せなどの植物起源の物質が挙げられるが、これらに限定されない。適切な合成ポリマーの例としては、ブタジエン-スチレンコポリマー、イソブチレンおよびイソプレンコポリマー(例えば「ブチルゴム」)、ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリビニルエステル(例えばポリビニルアセテートおよびポリビニルアセテートフタレート)およびその組合せなどのエラストマーが挙げられる。他の場合において、ガム基礎剤はブチルゴムの混合物(すなわちイソブチレンおよびイソプレンコポリマー)、ポリイソブチレンを含み、適宜ポリビニルアセテート(例えば約12,000の分子量を有する)を含んでもよい。典型的に、ガム基礎剤はこれらのポリマーの重量で約25%〜約75%、好ましくは約30%〜約60%を含む。
【0108】
本発明の組成物は、さらに滑沢剤;湿潤剤;乳化剤;可溶化剤;懸濁化剤;メチル-、エチル-およびプロピル-ヒドロキシ-ベンゾエート、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびブチル化ヒドロキシアニソールなどの保存剤;甘味剤;着香料;着色剤;およびクロスポビドンならびにクロスカルメロースナトリウムおよび他の架橋セルロースポリマーなどの崩壊剤を含むことができる。
【0109】
滑沢剤は金型と穿孔機の表面の剤形の接着を防止し、粒子間摩擦を軽減するために用いることができる。滑沢剤はまた、金型空洞からの剤形の排出を容易にし、処理中の顆粒の流速を改善することもできる。適切な滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、シメチコン、二酸化ケイ素、タルク、水素化植物油、ポリエチレングリコール、鉱油およびその組合せが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物は重量で約0%〜約10%、好ましくは約1%〜約5%の滑沢剤を含むことができる。
【0110】
甘味剤は、いずれの好ましくない味もマスキングすることにより組成物のおいしさを改善するために用いることができる。適切な甘味剤の例としては、単糖、二糖、三糖、多糖およびオリゴ糖などのサッカリドファミリー;スクロース、グルコース(コーン・シロップ)、デキストロース、転化糖、フルクトース、マルトデキストリンおよびポリデキストロースなどの糖;サッカリンおよびそのナトリウム塩およびカルシウム塩などの塩;シクラミン酸およびその塩;ジペプチド甘味料;スクラロースおよびジヒドロカルコンなどの塩素化糖誘導体;ソルビトール、ソルビトール・シロップ、マンニトール、キシリトール、ヘキサ-レゾルシノールなどの糖アルコール、およびその組合せから選択される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。水素化デンプン加水分解物、および3,6-ジヒドロ-6-メチル-1-1,2,3-オキサチアジン-4-オン-2,2-ジオキシドのカリウム、カルシウムおよびナトリウム塩も用いることができる。上記のうち、ソルビトール、マンニトールおよびキシリトールは、単独でまたは組合せで、好ましい甘味剤である。本発明の組成物は、重量で約0%〜約80%、好ましくは約5%〜約75%、より好ましくは約25%〜約50%の甘味剤を含むことができる。
【0111】
着香料もまた、組成物のおいしさを改善するために用いることができる。適切な着香料の例としては、ペパーミント、スペアミント、ウィンターグリーン、シナモン、メントール、チェリー、ストロベリー、スイカ、グレープ、バナナ、ピーチ、パイナップル、アプリコット、西洋ナシ、ラズベリー、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、プラム、リンゴ、フルーツ・パンチ(fruit punch)、パッションフルーツ、チョコレート(例えばホワイト、ミルク、ダーク)、バニラ、キャラメル、コーヒー、ヘーゼルナッツ、その組合せなどの天然および/または合成(すなわち人工)化合物が挙げられるが、これらに限定されない。着色剤もまた、例えばそこに含まれる治療剤のタイプおよび投与量を示すために組成物を色分けするために用いることができる。適切な着色剤としては、FD&C着色剤などの天然および/または合成化合物、天然果汁濃縮物、酸化チタン、二酸化ケイ素および酸化亜鉛、その組合せなどの色素が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物は、重量で約0%〜約10%、好ましくは約0.1%〜約5%、より好ましくは約2%〜約3%の香味剤および/または着色剤を含むことができる。
【0112】
剤形がチューインガムであるときに、組成物はゾルピデムまたはその医薬的に許容される塩(「治療剤」)、担体またはガム基礎剤、pH調節剤もしくは緩衝系などの賦形剤、および適宜保護剤を含むことができる。チューインガム組成物はさらに、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤;懸濁化剤、保存剤、甘味剤、着香料および着色剤を含むことができる。典型的に、チューインガム組成物は、約5 mg未満(例えば約0.5 mg〜約4.75 mg、約1.5 mg〜約2.5 mg、約3.0 mg〜約3.75 mgなど)のゾルピデムまたはその塩を含む。当業者は、上記の量は利用される特定のゾルピデム源、最終製剤に所望なゾルピデムの量ならびに所望のゾルピデムの特定の放出速度に応じて変化するだろうことを理解する。いくつかの場合において、チューインガム組成物の緩衝系は少なくとも約7.8、好ましくは少なくとも約8.5、より好ましくは少なくとも約9(例えば約9-11)を超える最終唾液pHを提供する。チューインガム組成物は典型的に、重量で約20%〜約95%のガム基礎剤、より典型的には約30%〜約85%、最も典型的には約50%〜約70%のガム基礎剤を含む。
【0113】
チューインガム組成物はさらに、保護剤を含むことができる。保護剤は治療剤の少なくとも一部をコーティングし、典型的にはこれら二つの薬剤の混合時にコーティングする。保護剤は重量比で約0.1〜約100、好ましくは約1〜約50、より好ましくは約1〜約10で治療剤と混合することができる。いずれの特別な理論とも結びつけないで、保護剤は、治療剤がガム基礎剤からより容易に放出することができるように、治療剤とガム基礎剤との間の接着を減らす。このようにして、治療剤は、咀嚼の約5〜約20分以内、好ましくは約10分以内で口腔の粘膜を通して送達することができる。種々の異なる保護剤を用いることができる。適切な保護剤の例としては、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、ベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水素化ヒマシ油、水素化植物油I型、軽油、ラウリル硫酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、鉱油、ポロクサマー、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、カルボシル(cab-o-sil)、タルク、ステアリン酸亜鉛およびその組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
ガム基礎剤としてはさらに、軟化剤または乳化剤などの可塑剤を挙げることができる。そのような可塑剤は例えば、ガム基礎剤の粘性の所望の堅さへの軽減を促進し、その全体的な質感および歯応えを改善することができる。可塑剤はまた、咀嚼時に治療剤の放出を容易にすることもできる。可塑剤の非限定的な例としては、レシチン、モノ-およびジグリセリド、ラノリン、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、トリ酢酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、グリセリンおよびその組合せが挙げられる。ガム基礎剤は典型的に、重量で約0%〜約20%、より典型的に約5%〜約15%の可塑剤を含む。
【0115】
ガム基礎剤はさらに、蜜蝋および微結晶性蝋などの蝋、大豆油および綿実油などの脂肪または油、およびその組合せを含むことができる。典型的に、ガム基礎剤は重量で約0%〜約25%、より典型的には約15%〜約20%のこれらの蝋および油を含む。
【0116】
さらに、ガム基礎剤はさらに、1以上のロジンおよび樹脂などのエラストマー系溶媒を含むことができる。そのような溶媒の非限定的な例としては、ロジンのメチル、グリセロールおよびペンタエリスリトールエステル、水素化、二量化もしくはポリマー化ロジンなどの改変ロジン、またはその組合せ(例えば部分的に水素化されたウッドロジンのペンタエリスリトールエステル、ウッドロジンのペンタエリスリトールエステル、ウッドロジンのグリセロールエステル、部分的に二量化したロジンのグリセロールエステル、ポリマー化ロジンのグリセロールエステル、トールオイルロジンのグリセロールエステル、ウッドロジンおよび部分的に水素化されたウッドロジンのグリセロールエステル、およびアルファ-ピネンまたはベータ-ピネンのポリマーなどのロジンの部分的に水素化されたメチルエステル、ポリテルペンなどのテルペン樹脂、およびその組合せ)が挙げられる。典型的には、ガム基礎剤は重量で約0%〜約75%、より典型的には約10%未満のエラストマー系溶媒を含む。
【0117】
ガム基礎剤はさらに、最終チューインガム組成物の咀嚼性を増強するために充填剤物質を含むことができる。最終チューインガム製剤の他の成分と実質的に反応しない充填剤が好ましい。適切な充填剤の例としては、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム(すなわちタルク)、リン酸二カルシウム、金属性無機塩(例えばアルミナ、水酸化アルミニウムおよびケイ酸アルミニウム)およびその組合せが挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、ガム基礎剤は重量で約0%〜約30%、より典型的には約10%〜約20%の充填剤を含む。
【0118】
当業者は、ガム基礎剤はその個別の成分から製造する必要がないことは認識するだろう。例えば、それに含まれる所望の成分を含むガム基礎剤を購入することができ、改変して別の薬剤を含むことができる。いくつかの製造業者は記載のチューインガム組成物との使用に適切なガム基礎剤を製造する。そのようなガム基礎剤の例としては、Pharmagum(登録商標)M、SまたはC(SPI Pharma Group; New Castle, DE)が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、Pharmagum(登録商標)はガム基礎剤、甘味剤、可塑剤および糖の混合物を含む。
【0119】
いくつかの場合において、チューインガム組成物は、治療剤センターフィル(centerfill)を含む。センターフィルは治療剤の即時放出が好ましいときに特に適切であることができる。さらに、センターフィルにおける治療剤のカプセル化は治療剤が有することができるいずれの所望でない味もマスキングするのに役立つことができる。これらの場合には、ガム基礎剤が少なくともセンターフィルの一部を囲む。センターフィルは少なくとも一つの治療剤を含み、液体または半液体物質であることができる。センターフィル物質は合成ポリマー、半合成ポリマー、低脂肪または無脂肪であることができ、1以上の甘味剤、着香料、着色剤および/または香剤(scenting agent)を含むことができる。好ましくは、センターフィルとしては本明細書に記載の緩衝系が挙げられる。センターフィルチューインガムの製法は例えば、米国特許番号3,806,290に記載されている。
【0120】
チューインガム組成物はいずれの所望の形状、サイズおよび質感を有することもできる。例えば、チューインガムは棒状、タブレット、ガムボールなどの形状を有することができる。同様に、チューインガムはいずれの所望の色であることもできる。例えば、チューインガムは赤、青、緑、橙、黄、スミレ、インジゴおよびその組合せのいずれの色合いであることもでき、その中の治療剤のタイプおよび投与量を示すために色分けすることができる。チューインガムは、個別にラップされるか、または当分野でよく知られている方法によりパッケージするために数片を一緒にすることができる。
【0121】
剤形が溶解性錠剤またはチュアブル錠などの錠剤であるとき、組成物はゾルピデムまたはその医薬的に許容される塩、結合剤などの担体または賦形剤、およびpH調節剤または緩衝系を含むことができる。錠剤組成物はさらに、保護剤、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤;懸濁化剤、保存剤、甘味剤、着香料、着色剤および崩壊剤を含むことができる。典型的には、本発明の錠剤組成物は、約5 mg未満(例えば約0.5 mg〜約4.75 mg、約1.5 mg〜約2.5 mg、約3.0 mg〜約3.75 mgなど)のゾルピデムまたはその塩を含む。当業者は、上記の量は利用される特定のゾルピデム源、最終製剤に所望なゾルピデムの量ならびに所望のゾルピデムの特定の放出速度に応じて変化するだろうことを理解する。いくつかの場合において、錠剤組成物の緩衝系は少なくとも約7.8、好ましくは少なくとも約8.5、より好ましくは少なくとも約9(例えば約9-11)を超える最終唾液pHを提供する。
【0122】
いくつかの具体的態様において、錠剤は、咀嚼の必要がない、対象の唾液により溶解する遅延溶解性または即溶解性錠剤などの溶解性錠剤である。例えば、対象の舌の上に置かれた溶解性錠剤は、治療剤の頬送達のために用いることができる。あるいは、対象の舌の下に置かれた溶解性錠剤は治療剤の舌下送達のために用いることができる。小さな子供および高齢者はいくつかのものの咀嚼に困難性を有することが多いので、このタイプの剤形が小児患者および高齢者患者に特に所望であることができる。典型的には、溶解性錠剤は、投与後約1〜約15分以内、好ましくは約2〜約10分以内、例えば約2、3、4、5、6、7、8、9または10分以内に溶解するように製剤化される。当業者は、即溶解性錠剤が遅延溶解性錠剤よりも速く溶解し、典型的に対象の唾液により急速というよりむしろ段階的に溶解することを理解するだろう。好ましい具体的態様において、遅延溶解性または即溶解性錠剤は舌下粘膜を通して治療剤を送達する。
【0123】
いくつかの他の具体的態様において、錠剤は、対象により咀嚼され、急速または段階的に溶解するように製剤化される、チュアブル錠である。例えば、対象の舌の上に置かれたチュアブル錠は、治療剤の頬送達のために用いることができる。咀嚼中に、チュアブル錠は口内のあたりを移動することができ、ときどき歯茎と頬または舌下の間でとどまることができる。結果として、チュアブル錠内に含まれる治療剤の少なくとも一部はまた、舌下送達(すなわち舌下粘膜を通して)することもできる。典型的には、チュアブル錠は、投与後約1〜約15分以内、好ましくは約2〜約10分以内、例えば約2、3、4、5、6、7、8、9または10分以内に溶解するように製剤化される。
【0124】
上記のように、本発明の溶解性錠剤およびチュアブル錠は典型的に、投与後約1〜約15分以内に溶解するように製剤化される。しかし、これらの時間枠は、口腔粘膜(例えば舌下および/または頬粘膜)への治療剤の最大曝露に適しているが、使用する者の順守に必ずしも適さない(例えば使用する者は頻繁に飲み込みすぎることがあり、そのため最大経粘膜吸収を妨げることがある)。結果的に、いくつかの場合には、患者の順守と口腔粘膜への治療剤の最大曝露時間とをうまく両立することが所望であることがある。これは例えば、緩衝系または治療剤の単位用量あたりの濃度または量を軽減することなく、錠剤サイズ(例えば約700-800 mg〜約200-300 mgまたは約100-350 mg)を軽減することにより達成することができる。さらに、錠剤製剤化のわずかな変化、例えばある着香料を別のものと置き換えるか(例えばチョコレートをスペアミントと置き換える)、またはある結合剤もしくは甘味剤を別のものと置き換える(例えばラクトースをマンニトールまたはソルビトールと置き換える)ことは、唾液分泌を軽減するために用いることができる。
【0125】
本発明の錠剤に存在する担体または賦形剤は典型的に、錠剤を半固体状態、および固体または液体に保つのに有用な結合剤であり、例えば高融点脂質または蝋状物質であることができる。結合剤として適切な物質は上記に詳細に記載されており、単独または本発明の錠剤組成物における組合せで用いることができる。さらに、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、スクロースおよびイノシトールなどの結合剤は、錠剤にその口内での崩壊を可能にするか、または増強するという特性を与えることができる。
【0126】
錠剤組成物はまた、1以上のロジンおよび樹脂などのエラストマー系溶媒も含むことができる。そのような溶媒の非限定的な例は、上記に詳細に記載されており、単独または本発明の錠剤組成物における組合せで用いることができる。さらに、錠剤組成物は、蜜蝋および微結晶性蝋などの蝋、大豆油および綿実油などの脂質または油、およびその組合せを含むことができる。さらに、錠剤組成物は軟化剤または乳化剤などの可塑剤を含むことができる。そのような可塑剤は、例えば、錠剤が溶解した唾液溶液の粘性の所望の堅さへの軽減を促進し、その全体的な質感および歯応えを改善することができ、治療剤の放出を容易にすることができる。そのような可塑剤の非限定的な例は、上記に詳細に記載されており、単独または本発明の錠剤組成物における組合せで用いることができる。
【0127】
いくつかの場合において、錠剤組成物は例えば上記のような治療剤センターフィルを含む。いくつかの他の場合において、本発明の錠剤組成物は多層構造である。このようにして、溶解性錠剤またはチュアブル錠は2以上の治療剤を提供するために設計することができる。例えば、二層錠剤において、第一層はゾルピデムまたはその塩を含むことができ、第二層は同一または異なる催眠薬または興奮剤(non-hypnotic agent)を含むことができる。典型的には、第一層は錠剤の溶解性部分またはチュアブル部分を含み、第二(すなわち次の)層は第一層によりコーティングされる。このタイプの製剤はゾルピデムの速やかな放出、次いで第二治療剤の胃腸吸収が所望であるときに特に適切であることができる。第二治療剤の胃腸吸収は、例えば合併症を緩和するか、または錠剤の溶解性部分またはチュアブル部分におけるゾルピデムの治療的利益を持続するために、所望であることができる。あるいは、第二層は第一層の側面の層として存在する。第二層は典型的に、少なくとも一つの治療剤を含み、上記の1以上の甘味剤、着香料、着色剤および香剤を含むこともできる。いくつかの場合において、第二層はさらに本明細書に記載の緩衝系を含む。
【0128】
さらに他の場合において、ゾルピデムまたはその塩と他の催眠薬および/または興奮剤との組合せは多層錠剤の形態をとる必要はないが、代わりに単一の均質な錠剤層を含む。このタイプの製剤はまた、少なくとも一つの治療剤の胃腸吸収が所望である場合にも用いることができる。この場合に、2以上の治療剤のイオン化の相対的な程度は、それらがどれだけ吸収されるかを測定する。例えば、イオン化されていない治療剤は口腔粘膜を通して吸収されるが、イオン化された薬剤は胃腸吸収のために飲み込まれる。
【0129】
錠剤組成物はいずれの所望の形状、サイズおよび質感を有することもできる。例えば、錠剤は棒状、タブレット、ペレット、球などの形状を有することができる。同様に、錠剤はいずれの所望の色であることもできる。例えば、錠剤は赤、青、緑、橙、黄、スミレ、インジゴおよびその組合せのいずれの色合いであることもでき、その中の治療剤のタイプおよび投与量を示すために色分けすることができる。錠剤は、個別にラップされるか、または当分野でよく知られている方法によりパッケージするために数片を一緒にすることができる。
【0130】
剤形がロゼンジまたはキャンディであるとき、組成物は、ゾルピデムまたはその医薬的に許容される塩、結合剤などの担体または賦形剤、およびpH調節剤または緩衝系を含むことができる。ロゼンジまたはキャンディ組成物はさらに、保護剤、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤;懸濁化剤、保存剤、甘味剤、着香料、着色剤および崩壊剤を含むことができる。ロゼンジおよびキャンディの一般的な議論は例えば文献(Pharmaceutical Dosage Forms, Volume 1: Tablets, 2nd Ed., Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., pages 75-418 (1989))に提供される。典型的には、本発明のロゼンジ組成物は約5 mg未満(例えば約0.5 mg〜約4.75 mg、約1.5 mg〜約2.5 mg、約3.0 mg〜約3.75 mgなど)のゾルピデムまたはその塩を含む。当業者は、上記の量は利用される特定のゾルピデム源、最終製剤に所望なゾルピデムの量ならびに所望のゾルピデムの特定の放出速度に応じて変化するだろうことを理解する。いくつかの場合において、ロゼンジ組成物の緩衝系は少なくとも約7.8、好ましくは少なくとも約8.5、より好ましくは少なくとも約9(例えば約9-11)を超える最終唾液pHを提供する。
【0131】
いくつかの具体的態様において、ロゼンジまたはキャンディは咀嚼を必要としないで、対象の唾液により溶解する。例えば、対象の舌の上に置かれたロゼンジは、治療剤の頬送達のために用いることができる。あるいは、対象の舌の下に置かれたロゼンジは治療剤の舌下送達のために用いることができる。小さな子供および高齢者はいくつかのものの咀嚼に困難性を有することが多いので、このタイプの剤形が小児患者および高齢者患者に特に所望であることができる。典型的には、ロゼンジは、投与後約1〜約15分以内、好ましくは約2〜約10分以内、例えば約2、3、4、5、6、7、8、9または10分以内に溶解するように製剤化される。好ましい具体的態様において、ロゼンジまたはキャンディは舌下粘膜を通して治療剤を送達する。
【0132】
上記のように、本発明のロゼンジは典型的に、投与後約1〜約15分以内に溶解するように製剤化される。しかし、これらの時間枠は、口腔粘膜(例えば舌下および/または頬粘膜)への治療剤の最大曝露に適しているが、使用する者の順守に必ずしも適さない(例えば使用する者は頻繁に飲み込みすぎることがあり、そのため最大経粘膜吸収を妨げることがある)。結果的に、いくつかの場合には、患者の順守と口腔粘膜への治療剤の最大曝露時間とをうまく両立することが所望であることがある。これは例えば、緩衝系または治療剤の単位用量あたりの濃度または量を軽減することなく、ロゼンジサイズ(例えば約700-800 mg〜約200-300 mgまたは約100-350 mg)を軽減することにより達成することができる。さらに、ロゼンジ製剤化のわずかな変化、例えばある着香料を別のものと置き換えるか(例えばチョコレートをスペアミントと置き換える)、またはある結合剤もしくは甘味剤を別のものと置き換える(例えばラクトースをマンニトールまたはソルビトールと置き換える)ことは、唾液分泌を軽減するために用いることができる。
【0133】
本発明のロゼンジに存在する担体または賦形剤は典型的に、ロゼンジを半固体状態、および固体または液体に保つのに有用な結合剤であり、例えば高融点脂質または蝋状物質であることができる。結合剤として適切な物質は上記に詳細に記載されており、単独または本発明のロゼンジ組成物における組合せで用いることができる。さらに、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、スクロースおよびイノシトールなどの結合剤は、ロゼンジにその口内の崩壊を可能にするか、または増強するという特性を与えることができる。
【0134】
ロゼンジ組成物はまた、1以上のロジンおよび樹脂などのエラストマー系溶媒も含むことができる。そのような溶媒の非限定的な例は、上記に詳細に記載されており、単独または本発明のロゼンジ組成物における組合せで用いることができる。さらに、ロゼンジ組成物は、蜜蝋および微結晶性蝋などの蝋、脂質、または大豆油および綿実油などの油、およびその組合せを含むことができる。さらに、ロゼンジ組成物は軟化剤または乳化剤などの可塑剤を含むことができる。そのような可塑剤は、例えば、ロゼンジが溶解した唾液溶液の粘性の所望の堅さへの軽減を促進し、その全体的な質感および歯応えを改善することができ、治療剤の放出を容易にすることができる。そのような可塑剤の非限定的な例は、上記に詳細に記載されており、単独または本発明のロゼンジ組成物における組合せで用いることができる。
【0135】
他の具体的態様において、ロゼンジ組成物は治療剤センターフィルを含み、多層構造であるか、または例えば上記のような単一の均質なロゼンジ層を含む。
【0136】
ロゼンジ組成物はいずれの所望な形状、サイズおよび質感も有することができる。例えば、ロゼンジは棒状、タブレット、ペレット、球などの形状を有することができる。同様に、ロゼンジはいずれの所望の色であることもできる。例えば、ロゼンジは赤、青、緑、橙、黄、スミレ、インジゴおよびその混合物のいずれの色合いであることもでき、その中の治療剤のタイプおよび投与量を示すために色分けすることができる。ロゼンジは、個別にラップされるか、または当分野でよく知られている方法によりパッケージするために数片を一緒にすることができる。
【0137】
好ましい具体的態様において、本明細書に記載の組成物における薬物の平均粒度は、典型的な約75〜約100ミクロンの平均薬物粒度と比較して、約20ミクロンである。別の好ましい具体的態様において、本明細書に記載の組成物における薬物の平均粒度は、担体成分(例えばガム基礎剤、結合剤など)の平均粒度より小さいか、またはこれと等しい。
【0138】
典型的には、医薬組成物は本明細書に提供される低用量のゾルピデムの頬または舌下投与に適している。ゾルピデムの頬または舌下投与に適した組成物は、組成物における少なくとも約10%、20%または25%の投与量のゾルピデムの口腔における吸収を提供するものである。この量は一般的に、腸内の有効薬物の吸収のために飲み込むように設計されている錠剤について期待される頬吸収の量の少なくとも2倍である。さらに、そのような組成物についてCmaxへの時間は、腸内にゾルピデムを送達するように設計されている錠剤またはカプセルと比較して、軽減される。上記のように、低用量のゾルピデムの頬または舌下投与に適した組成物は、ゾルピデムの初期影響を増強してCmaxへの時間を軽減するのに十分であり、腸内における送達のために設計された錠剤またはカプセル(例えば摂取時にすぐに飲み込む)と比較して、ゾルピデムの血漿濃度を投与後最初の20分間に一般に2倍以上に増大する。
【0139】
典型的には、頬または舌下投与後のMOTN不眠の治療に適した組成物は、独自の差別的な溶解プロファイルを有する。その溶解方法は、改変されたUSPの方法II溶解手順に応じ、ここに、溶解媒体のpHは6.8であり、これは唾液のpHに近い。その方法は、媒体の容積が1リットルから500 mlに減少し、溶解のためのパドル速度は50 rpm以上の典型的な速度から15 rpmに減少するように、改変すると考えられる。この方法は口内で通常5分以上かけて溶解する錠剤から2〜3分で溶解する錠剤を判別するのに十分に感度がよい。典型的に、口内で3分以内に溶解する錠剤は、改変されたUSPの方法IIの実験条件下、口内で5分以上かけて溶解する錠剤よりも急速に溶解するだろう(以下の第1〜2表を参照のこと)。
第1表:改変されたUSP溶解方法IIを用いたゾルピデムロゼンジの3および5分溶解の予備的溶解プロファイル(37℃におけるpH 6.8リン酸緩衝液500 ml、パドル速度15 rpm)
【表1】

* 相対標準偏差
第2表:改変されたUSP溶解方法IIを用いた1、3.5および10 mg「3分」ゾルピデムロゼンジの溶解プロファイル事例(37℃におけるpH 6.8リン酸緩衝液500 ml、パドル速度15 rpm)
【表2】

【0140】
いくつかの具体的態様において、本発明の組成物は投与後約2分以内で完全な頬および/または舌下溶解を提供する。本発明の即溶解性錠剤は通常、約0.5分未満、あるいは約1分未満、あるいは約1.5分未満、あるいは約2分未満、あるいは約2.5分未満、あるいは約3分未満、あるいは約4分未満、あるいは約5分未満、あるいは約6分未満で完全な頬および/または舌下溶解を提供する。
【0141】
一般に、本明細書に記載の組成物は二または三成分緩衝系を含み、該系は少なくとも一つのプロトン供与性(酸性)成分および少なくとも一つのプロトン受容性(塩基性)成分からなる。緩衝系の成分は、その緩衝能力が約7.2-11.0のpH、通常、例えば約7.2、7.6、7.8、8.0、8.3、8.5、8.8、9.0、9.4、9.5、9.6、9.7または9.8のpHで最大となる(緩衝系がpK値を有する)ように選択される。
【0142】
好ましい具体的態様において、二成分緩衝系は唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず、約7.2、7.6、7.8、8.0、8.3、8.5または8.8より高いpHに上昇させる。他の具体的態様において、二成分緩衝系は唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず、約9.0、9.4、9.5、9.6、9.7または9.8(例えば約9-11)より高いpHに上昇させる。
【0143】
好ましくは、緩衝系は炭酸塩および重炭酸塩成分を含む。例えば、炭酸塩は炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウムおよび炭酸マグネシウムからなる群から選択することができる。重炭酸塩は重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸カルシウム、重炭酸アンモニウムおよび重炭酸マグネシウムからなる群から選択することができる。好ましい具体的態様において、二成分緩衝系は炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムからなる。別の好ましい具体的態様において、重炭酸ナトリウムはデシカント(dessicant)コーティングされた重炭酸ナトリウムである。炭酸塩および重炭酸塩のカチオンは同一または異なることができる。
【0144】
各緩衝系成分の濃度は、最終唾液pHが例えば少なくとも約2分、少なくとも約5分、少なくとも約10分、少なくとも約20分または少なくとも約60分間達成され、持続するように調整される。これは典型的に、種々の量の各緩衝系成分を加えた後、時間とともに最終pHを測定する手順の感覚性および安全性の試行錯誤したものを含む。このようにして、各緩衝系成分について適当な重量比の選択を決定することができる。例えば、炭酸塩の重炭酸塩に対する重量比は、約1:10〜約10:1、好ましくは約1:5〜約5:1、より好ましくは約1:4〜約4:1または約1:3〜約3:1およびさらにより好ましくは約1:2〜約2:1であることができる。
【0145】
いくつかの具体的態様において、重炭酸塩の量は炭酸塩の量より多いか、または等しく、炭酸塩の重炭酸塩に対する重量比は約1:1〜約1:10、好ましくは約1:1〜約1:5、より好ましくは約1:1〜約1:2、例えば1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9または1:2である。あるいは、重炭酸塩の量は炭酸塩の量より少ないか、または等しく、炭酸塩の重炭酸塩に対する重量比は約1:1〜約10:1、好ましくは約1:1〜約5:1、より好ましくは約1:1〜約2:1、例えば1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1または2:1である。いくつかの具体的態様において、炭酸塩および重炭酸塩の組み合わせた量はゾルピデムの量よりも多いか、または等しく、炭酸塩および重炭酸塩のゾルピデムに対する重量比は好ましくは、約1:1〜約10:1、例えば1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1または10:1である。あるいは、炭酸塩および重炭酸塩の組み合わせた量は、ゾルピデムの量よりも少ないか、または等しく、炭酸塩および重炭酸塩のゾルピデムに対する重量比は好ましくは、約1:1〜約1:10、例えば1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9または1:10である。
【0146】
いくつかの具体的態様において、上記の組成物に用いられる二成分緩衝系は炭酸ナトリウムなどの炭酸塩および重炭酸ナトリウムなどの重炭酸塩からなり、ここに、炭酸塩および重炭酸塩は重量で約1:1.0〜約1:1.4、あるいは重量で約1:1.0〜約1:1.2の炭酸塩:重炭酸塩比である。
【0147】
他の具体的態様において、重炭酸塩はそれだけで用いられ、ゾルピデムの選択的な吸収を促進することができる。
【0148】
他の緩衝系は炭酸塩および重炭酸塩緩衝系に加えて、またはこれと代えて、本発明の組成物において使用するのに適している。例えば、別の具体的態様において、緩衝系は炭酸塩または重炭酸塩、および酸化金属、クエン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、アスコルビン酸塩、酢酸塩およびアルカリ性デンプンなどの第二緩衝剤を含む。別の具体的態様において、緩衝系は酸化金属およびクエン酸塩、リン酸塩またはホウ酸塩を含む。さらに別の具体的態様において、緩衝系は炭酸塩、重炭酸塩、および酸化金属、クエン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、アスコルビン酸塩、酢酸塩およびアルカリ性デンプンなどの第三緩衝剤を含む三成分緩衝系である。さらに別の具体的態様において、緩衝系は炭酸塩または重炭酸塩、および酸化金属、クエン酸塩、リン酸塩およびホウ酸塩からなる群から選択される2以上の緩衝剤を含む。
【0149】
さらに他の具体的態様において、医薬組成物は、投与後約5分以内、好ましくは約2分以内の頬または舌下溶解時間を提供するための相対比にて、少なくとも一つの結合剤を含む担体および少なくとも一つの崩壊剤を含む。好ましくは、結合剤の崩壊剤に対する比は約0.1〜約10.0、より好ましくは約0.1〜約1.0、最も好ましくは約0.26〜約0.79である。しかし、当業者は、本発明の組成物がいずれの結合剤も含まなければ、例えば非常にもろい剤形を製造しうることを理解するだろう。
【0150】
好ましい具体的態様において、ゾルピデムは舌下粘膜、頬粘膜およびその組合せからなる群から選択される口腔粘膜を通して送達される。特に好ましい具体的態様において、組成物はゾルピデムが舌下粘膜を通して送達されるように舌下投与される。
【0151】
好ましい本発明の具体的態様において、ゾルピデムは炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムからなる二成分緩衝系にて製剤化される。そのような組成物は、好ましくは舌下投与用のロゼンジ、キャンディまたは溶解性錠剤(例えば遅延溶解性錠剤または即溶解性錠剤)の形態で製剤化される。結果として、舌下投与時、ゾルピデムは舌下粘膜を通して送達される。別の好ましい具体的態様にて、重炭酸ナトリウムはデシカント・コーティングされた重炭酸ナトリウムである。ゾルピデムの重量百分率より大きいか、または等しい炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムの組合せ重量百分率もまた好ましい。
【0152】
いくつかの具体的態様において、組成物は約0.4、0.45または0.5〜約1.5、1.6、1.7または1.8重量百分率のゾルピデム;約6.0〜約10.0重量百分率の炭酸ナトリウム;および約9.0〜約13.0重量百分率のデシカント・コーティングされた重炭酸ナトリウムを含む。好ましい具体的態様において、組成物は約0.47、0.8または1.7重量百分率のゾルピデム;約8.0重量百分率の炭酸ナトリウム;および約11.0重量百分率のデシカント・コーティングされた重炭酸ナトリウムを含む。そのような組成物は好ましくは、約100〜約300 mg、例えば約100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290および300 mgの質量のロゼンジまたはキャンディの形態である。ロゼンジまたは錠剤は対象の口内で非常に速い速度で、例えば投与後約2〜3分以内に溶解する。
【0153】
いくつかの他の場合において、組成物は約0.4、0.45または0.5〜約1.5、1.6、1.7または1.8重量百分率のゾルピデム;約5.0〜約9.0重量百分率の炭酸ナトリウム;および約7.0〜約11.0重量百分率の重炭酸ナトリウムを含む。好ましい具体的態様において、組成物は約0.47、0.8または1.7重量百分率のゾルピデム;約7.0重量百分率の炭酸ナトリウム;および約9.0重量百分率の重炭酸ナトリウムを含む。そのような組成物は好ましくは、約100〜約300 mg、例えば約100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290および300 mgの遅延溶解性錠剤または即溶解性錠剤などの溶解性錠剤の形態である。即溶解性錠剤は対象の口内で急速な速度で、例えば投与後約5分以内に溶解し、遅延溶解性錠剤は対象の口内でより遅い速度で、例えば投与後約10分以内に溶解する。
【0154】
V. 方法
MOTN不眠の治療のための本発明の方法を実行する際に、対象に投与される適当な有効投与量は、対象の年齢、体重、残存する就寝時間数および/またはゾルピデムを代謝する能力などの因子に基づき選択される適当な患者集団にて評価することができる。例えば、約2 mg〜約5 mgの用量は、目覚めて約4または5時間の残存する就寝時間を有する対象に投与することができる。同様に、約3 mg〜約5 mgの用量は、ゾルピデムを代謝する正常な能力を有する非高齢対象(すなわち65歳より若い対象)に投与することができる。対象が約2〜4時間の残存する就寝時間を有して目覚めたならば、約0.5 mg〜約2.5 mgの用量を投与することができる。同様に、ゾルピデムを代謝する能力が減少した対象(すなわち65歳以上の対象)は、ゾルピデムを代謝する正常な能力を有する対象に投与される用量の一部、例えば半−錠剤用量を投与することができる。当業者は、数人の個体に提供される用量にいくらか変動があり得ることを認識するだろう。例えば、肝臓に障害のある個体は、典型的に高齢患者のために提供されるような非常に低用量を使用することができる。
【0155】
典型的には、有効量のゾルピデムは必要に応じて、すなわち必要であれば、MOTN不眠の対象に投与する。つまり、個体は先に眠らせ、睡眠時間が少なくとも約2、3、4または5時間の残存する就寝時間で妨害する。一般に、本発明の方法を実践する際に、ゾルピデムは予防的にまたは入眠前には投与しない。
【0156】
典型的には、本方法は、上記の本発明の組成物を投与することにより実行する。MOTN不眠を治療するための特定の問題の組成物は、約5 mg未満のゾルピデムまたはその塩を含む。いくつかの具体的態様において、ゾルピデムは即溶解性錠剤またはロゼンジにて投与することができる。ゾルピデムの効率的な送達は、二成分または三成分緩衝系、例えば上記の炭酸塩および重炭酸塩成分を有する製剤を用いて達成することができる。
【0157】
本発明の組成物の投与は好ましくは、口腔の粘膜へのいずれの許容される投与形態でも実行される。口腔粘膜内の投与の適切な部位の例としては、口底(舌下粘膜)、頬(頬粘膜)、歯肉(歯肉粘膜)、口蓋(口蓋粘膜)、唇の内側およびその組合せの粘膜が挙げられるが、これらに限定されない。これらの領域はその生体構造、薬物透過性、および薬物に対する生理反応に関して互いに異なる。好ましくは、本発明の組成物は舌下粘膜、頬粘膜またはその組合せに投与する。
【0158】
豊富な血液供給および適切な薬物透過性を有する口腔粘膜は、全身薬物送達のための投与の特に魅力的な経路である。さらに、口腔粘膜を通した治療剤の送達は、肝臓の初回通過代謝を避け、胃腸管内の酵素的崩壊を回避し、薬物吸収のためのより適切な酵素的フローラ(flora)を提供する。本明細書において、用語「舌下送達」は、口底および/または舌腹(ventral tongue)の内側を覆う粘膜を通した治療剤の投与を意味する。本明細書において用語「頬送達」は、頬の内側を覆う粘膜を通した治療剤の投与を意味する。
【実施例】
【0159】
VI. 実施例
次の実施例は、特許請求された発明を説明するために提供されるが、これらに限定されない。
【0160】
実施例1. 低用量ゾルピデムロゼンジ組成物
真夜中不眠に苦しむ個体に、第3表に記載の製剤化に従い製造される、舌下送達のための0 mg、1.0 mg、1.75 mgまたは3.5 mgのゾルピデムを含むロゼンジを与える。
第3表:低用量ゾルピデムロゼンジ製剤
【表3】

【0161】
個体は、睡眠が邪魔され、少なくとも2時間の残存睡眠時間を有するときに、上記製剤化の1のロゼンジを自己投与する。覚醒時、個体はいずれの残留鎮静作用の主観的自己申告も提供し、いずれの残留鎮静作用も評価するために次の精神運動試験および記憶試験を受ける:デジタル記号置換試験(DSST)、選択反応時間(CRT)、記号コピー試験(SCT)およびブシュケ(Buschke)想起試験。
【0162】
プラセボ・ロゼンジを受けた個体は一般に、睡眠に戻ることはできず、それゆえ、朝にすっきりしない。1.0 mg、1.75 mgまたは3.5 mgのゾルピデムを含むロゼンジを受けた個体は、ロゼンジの自己投与後約20分以内に眠り、主観的自己申告およびいずれの上記精神運動試験および記憶試験によっても評価されるように、残留鎮静作用を全くまたは最小限しか示さない。
【0163】
実施例2. 低用量ゾルピデムロゼンジ組成物の薬物動態学的および薬力学的研究
この実施例は、上記第3表に記載の1.0 mg、1.75 mgおよび3.5 mgのゾルピデムロゼンジの日中用量依存性薬物動態学的および薬力学的効果の評価を提供する。
【0164】
概要
現在、真夜中(MOTN)覚醒し睡眠に戻るのが困難な患者のために必要に応じて使用するために利用できる医薬はない。そのような不眠に適当な治療剤により、患者は急速に眠りに戻り、残留効果なしで朝に目覚めることができるだろう。この研究は、とりわけ、本発明の低用量ゾルピデムロゼンジが他の薬物動態学的パラメータに影響しないで、ゾルピデムの急速な全身送達を増強することを示す。
【0165】
健康な成人(n = 24;平均年齢= 37.6歳)は、プラセボまたは1 mg、1.75 mgもしくは3.5 mgの本発明の低用量ゾルピデムロゼンジを朝に投与する、2日間連続の二重盲検プラセボ対照4法交差研究に参加した。各期間の1日目の朝の投与の後、薬力学的評価項目(DSST、PVT、VAS-鎮静、SCTおよびBuschke)を投与前および投与後20分、1、1.5、2、3、4および5時間にて評価した。2日目に、薬物動態学的評価のための血液サンプルを繰り返し、12時間にわたって取り出した。
【0166】
ベースラインDSSTスコア(±SE)は、プラセボ、1 mg、1.75 mgおよび3.5 mgのゾルピデムロゼンジについて、それぞれ57.6±2.9、58.0±3.1、58.4±2.3および56.9±2.7であった。DSSTスコアにおける有意な減少は、1.75 mgおよび3.5 mgのゾルピデムロゼンジについて、開始20分(それぞれ-6.6;p=0.0132および-14.8;p<0.001)で見られ、投与後1.5時間続いた。他の評価項目は、DSSTと同様の結果を示した。平均Tmaxは1 mg、1.75 mgおよび3.5 mgのゾルピデムロゼンジについて、それぞれ36.0、37.9および37.9分であった。ゾルピデムCmaxおよびAUCは用量に比例した。1.75 mgおよび3.5 mgのゾルピデムロゼンジは15分以内に鎮静血漿濃度(約20 ng/ml)に到達し、これらのレベルを15〜240分間維持した。
【0167】
低用量ゾルピデムロゼンジは、成人におけるゾルピデムの経口(PO)の承認用量(10 mg)の半分未満の用量およびTmaxにて昼間の鎮静特性を提供する。この研究は、本発明の低用量の舌下ゾルピデムロゼンジがMOTN投与時に入眠を短くするために使用できることを示す。
【0168】
方法
設計
これは、健康な男性(n = 13)および女性(n = 11)ボランティアによる4法交差プラセボ対照無作為二重盲検試験であった。単一投与の2連続処置日からなる各処置期間および各処置は、6日以上のウォッシュ・アウト期間により分離した。各期間中、ロゼンジは約24時間離して投与され、この対象は毎日同じ処置を受けた。各期間中、いずれの学習または薬物予知反応も回避するために、薬力学的効果を1日目に測定し、薬物動態学的評価のために血液サンプルを2日目に取り出した。
【0169】
薬力学的評価は、鎮静、記憶および不眠症試験の測定からなる。鎮静効果は、デジタル記号置換試験(DSST)における投与後〜投与前スコアの減少および視覚的アナログ尺度(VAS)における自己評価鎮静評価により定量化した。不眠症は、コンピュータ化精神運動覚醒検査(PVT)を用いたデジタル刺激の反応時間および該刺激に対する多くの崩壊の測定による投与後〜投与前スコアの増大により評価した。Buschke単語想起試験(Buschke)の投与後〜投与前スコアにおける減少は記憶効果に用いた。さらに、記号コピー試験(SCT)は単純認識機能の測定に用いた。結果はSASを用いて統計的に分析し、ANOVA手順および有意性はDunnettの比較試験を用いて分析した。
【0170】
連続血液サンプルは、投与前12時間、5、10、20、30および45分および1、2、2.5、3、3.5、4、5、6、8および12時間まで取りだした。非コンパートメント薬物動態学的パラメータはWinNonlinプログラム(Pharsight Corp.; Palo Alto, CA)を用いて評価した。評価されたパラメータはAUCおよび部分的AUC、Cmax、tmaxおよびt1/2であった。
【0171】
さらに、1.0 mg、1.75 mgおよび3.5 mgのゾルピデムロゼンジの血漿濃度は、以下の式:
Ct = D*K01/V/(K01-K10)*EXP(-K10*T)-EXP(-K01*T)
[式中、Ct =予測血漿濃度、D =用量、V =分布の見掛け容積、T =時間、K01 =吸収速度定数およびK10 =消失速度定数である]
を用いた、10 mgのゾルピデムロゼンジについてのデータの単一のコンパートメント一次インプットおよびアウトプットモデリングに従い、予測した。V、K01およびK10の値は10 mgのゾルピデムロゼンジからの血漿データ(すなわち2分ごとに飲み込まれた3分間溶解性ロゼンジ)を上記式に当てはめることにより得た。特に明記されなければ、標準偏差は平均値と関連する分散パラメータである。
【0172】
結果
薬物動態学
ゾルピデムは急速に吸収され、3つの低用量の舌下ロゼンジ製剤のそれぞれから除去される。3つのロゼンジ製剤の血漿プロファイルはFigure 1に示され、薬物動態学的パラメータの要約統計量は第4表に記載されている。概して、3つのロゼンジ製剤のtmaxおよびCmaxは、10 mgのデータのモデリングにより予測される値(Figure 2を参照のこと)または文献記載の値より有意にそれぞれ短く、高かった。
第4表:低用量ゾルピデムロゼンジの平均バイオアベイラビリティパラメータ(%CV)
【表4】

【0173】
特に、この薬物動態学的研究は次の重要な観察を提供した:
1. 3.5 mgのロゼンジは約38分で約64 ng/mlのCmaxを約229 ng.hr/mlのAUC0-12hrで産生した。平均値AUC0-20minは5.80 ng.hr/mlであった。
2. 1.75 mgのロゼンジについてCmaxおよびtmaxの値は、それぞれ約32 ng/mlおよび38分であった。AUC0-12hrおよびAUC0-20minの値は、それぞれ119.54および3.20 ng.hr/mlであった。
3. 1 mgのロゼンジについてCmaxおよびtmaxの値は、それぞれ約18 ng/mlおよび36分であった。AUC0-12hrおよびAUC0-20minの値は、それぞれ65.31および1.53 ng.hr/mlであった。
4. すべての3つのロゼンジ製剤のCmaxの観測値は、10 mgデータの薬物動態学的モデリングにより予測された値よりも有意に高かった。
5. 3つのロゼンジ製剤の薬物動態学は用量に比例した。
【0174】
薬力学
デジタル記号置換試験(DSST):DSSTは鎮静の客観的尺度である。Figure 3に示されるように、1.75 mgおよび3.5 mgのゾルピデムロゼンジは投与の20〜60分以内にDSSTスコアにおけるピーク変化を産生し、スコアは投与の3〜4時間以内にベースラインに戻った。これらのスコアは約90分までの間ベースラインから有意に異なった。1 mgのゾルピデムロゼンジについてのDSSTスコアはプラセボのものと統計的に類似した。
【0175】
Figure 4は、ゾルピデムロゼンジの血漿濃度とDSST反応との関係が反時計回りのヒステリシス・ループにより特徴付けられ、これは催眠鎮静薬に典型的であることを示す。これは、急速な薬力学的効果が主にロゼンジに存在するゾルピデムの急速なバイオアベイラビリティに依存し、薬物のレセプター薬理学におけるいずれの変化にも依存しないことを示す。
【0176】
3.5 mgのゾルピデムロゼンジについてのDSSTスコアからの最も驚くべき発見の一つは、鎮静反応が5 mgおよび10 mgの経口(PO)Ambien(登録商標)についての文献記載の値(Greenblatt et al., Clin. Pharmacol. Therap., 64:553-561 (1998);Greenblatt et al., Clin. Pharmacol. Therap., 64:661-671 (1998) を参照のこと)よりも速いことである。特に、Figure 5は、3.5 mgのゾルピデムロゼンジが5 mgおよび10 mgのPO Ambien(登録商標)の両方よりも急速に睡眠を誘発することができるが、10 mgのPO Ambien(登録商標)に伴う過剰な鎮静を引き起こさなかったことを示す。
【0177】
VASにおける鎮静の自己評価:DSSTとは異なり、1.75 mgおよび3.5 mgのゾルピデムロゼンジの主観的な鎮静効果は同様であった(Figure 6)。これらの低用量のゾルピデムについての視覚的アナログ尺度(VAS)スコアは統計的に、2時間までの間プラセボより異なった。
【0178】
PVTにより測定される不眠症の変化:精神運動覚醒検査(PVT)を用いた反応時間により測定されるように、3.5 mgのゾルピデムロゼンジはまた、不眠症を悪化させた。Figure 7は、3.5 mgのゾルピデムロゼンジについての反応時間スコアが統計的に約90分までの間異なったことを示す。
【0179】
記憶障害(Buschke):3.5 mgのゾルピデムロゼンジでの20分にて見られる有意な効果を除き、薬物効果はプラセボのものに匹敵した。
【0180】
単純な運動課題障害(SCT):3つのロゼンジ製剤の効果はプラセボのものに匹敵した。
結論
1. 驚くべきことに、3.5 mgのゾルピデムロゼンジでの投与後30分までのいくつかの時点にて定められるゾルピデム血中濃度は、PO Ambien(登録商標)についての文献記載の10 mg以下の用量を超えた。実際には、DSST試験により測定されるように、有意により高い30分における鎮静効果を提供したため、3.5 mgのゾルピデムロゼンジは10 mgのPO Ambien(登録商標)(ゾルピデムのほぼ3倍の用量を含む)を上回った。
2. 低用量ゾルピデムロゼンジからのゾルピデムのCmax(最大血漿濃度)は、10 mgのゾルピデムロゼンジについてのデータの薬物動態学的モデリングにより予測される値より約30%高かった。3.5 mgのゾルピデムロゼンジの平均Cmax(64 ng/ml)は、5 mgのPO Ambien(登録商標)について報告される値と同じ範囲であった。さらに、1.75 mgおよび3.5 mgのゾルピデムロゼンジはともに、30分以内にて血漿濃度を産生し、これは鎮静効果を産生することが文献に記載されている。
3. 低用量ゾルピデムロゼンジは約36〜38分における最大血漿濃度を達成した。約35分のtmaxは、5 mgおよび10 mgのPOゾルピデム(Ambien(登録商標))、エスゾピクロン(Lunesta(登録商標))、ザレプロン(Sonata(登録商標))およびremelteon(Rozerem(登録商標))について典型的に報告される1〜1.5時間のtmaxよりも有意に速かった。
4. 上記の薬力学的データは、1.75 mgおよび3.5 mgのゾルピデムロゼンジが前向性健忘症または夜中転倒の危険性を伴わないで、急速な催眠鎮静効果を産生し、これはより高用量のPO Ambien(登録商標)に典型的な副作用であることを示す。
5. 低用量ゾルピデムロゼンジへの薬物動態学的および薬力学的反応は、用量に比例した。それゆえ、5 mgのPO Ambien(登録商標)と異なり、約1 mg〜3.5 mgの用量範囲におけるゾルピデムの薬理学は、一貫性のある予測可能な反応を産生することが期待される。
6. 上記の薬力学的データは明らかに、1.75 mgおよび3.5 mgのゾルピデムロゼンジ製剤の鎮静効果を示し、これは作用の急速な開始を含む。実際に、DSST(客観的)およびVAS(主観的)の両方により定義されるような作用の開始およびピーク効果は20分以内に起こった。対照的に、5 mgのPO Ambien(登録商標)は約60分でピークDSST効果を産生し、反応の大きさは3.5 mgのゾルピデムロゼンジで見られるもののわずか約50%であった。DSSTにおける減少のレベル(鎮静の代わり)スコアは著しい催眠とともに見られるものに匹敵した。
7. 薬力学的部分の研究中、1.75または3.5 mgのゾルピデムを含む低用量のゾルピデムロゼンジは投与の約20分以内にピーク鎮静効果(DSSTおよびVASにより測定される)を産生した。
8. 3.5 mgのゾルピデムロゼンジはまた、不眠症も悪化した(PVTにおける反応時間により測定される)。1.75 mgのゾルピデムロゼンジは非高齢者の成人である対象に全く効果を有しなかった。
9. 低用量のゾルピデムロゼンジに存在するゾルピデムの投与は、記憶試験(Buschke)または単純運動課題能力試験(SCT)における動作を全く害さなかった。
【0181】
実施例3. 低用量ゾルピデム錠剤組成物
低用量のゾルピデムを含む即時放出経口(PO)錠剤は、第5表に記載の製剤化に従い製造することができる。
第5表:低用量ゾルピデム錠剤製剤化
【表5】

【0182】
製造方法
調剤:スクリーン番号30を通してヘミ酒石酸ゾルピデムおよび賦形剤をスクリーンする。各成分の必要量を調剤する。
【0183】
混合:
1. ヘミ酒石酸ゾルピデムおよびポビドンK 29/32をV-Shellブレンダーに移し、2分間混合する。
2. SSGおよびデンプン1500を工程1に加え、さらに2分間混合する。
3. ラクトース高速流およびプロソルブSMCC 90を工程2に加え、さらに10分間混合する。
4. 工程3の混合物と等量のステアリン酸マグネシウムまたはステアリルフマル酸ナトリウムとを混合し、混合物をスクリーン番号30によりV-Shellブレンダーに戻す。3分間混合する。
【0184】
圧縮: 工程4の最終混合物を輪転機上で圧縮し、210 mgの目的錠剤重量とする。
【0185】
本明細書に引用されるすべての開示および特許出願は、各開示または特許出願が具体的に個別に引用されていることを示すように、本明細書に引用される。前述の発明は明白な理解の目的のための説明および例示により少し詳しく記載されているが、本発明の教示に鑑み、いくつかの変化および改変が特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、これになされうることは当業者に容易に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のゾルピデムまたはその塩を含み、対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために製剤化される、真夜中(MOTN)不眠の治療のための固体単位投与組成物であって、該有効量が1.30×10-5モル未満の量のゾルピデムであり、適当な患者集団にて評価されるとき投与の20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlの血漿濃度を産生するのに十分な量である、組成物。
【請求項2】
ゾルピデムの最大血漿濃度(Cmax)の50%を10分以内にてさらに提供する、請求項1記載の固体単位投与組成物。
【請求項3】
投与の4時間後に20 ng/ml未満の血中濃度のゾルピデムをさらに提供する、請求項2記載の固体単位投与組成物。
【請求項4】
炭酸塩および重炭酸塩からなる群から選択される少なくとも一つのpH調節剤をさらに含む、請求項1記載の固体単位投与組成物。
【請求項5】
対象の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず、約8.5よりも高いpHに上昇させる二成分緩衝系をさらに含む、請求項1記載の固体単位投与組成物。
【請求項6】
二成分緩衝系が炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムからなる、請求項5記載の固体単位投与組成物。
【請求項7】
即溶解性の錠剤またはロゼンジの形態である、請求項6記載の固体単位投与組成物。
【請求項8】
0.5〜4.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項5記載の固体単位投与組成物。
【請求項9】
1.5〜2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項5記載の固体単位投与組成物。
【請求項10】
3.0〜3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項5記載の固体単位投与組成物。
【請求項11】
ゾルピデムが舌下粘膜または頬粘膜の少なくとも一つを通して送達される、請求項1記載の固体単位投与組成物。
【請求項12】
適当な患者集団にて評価されるとき、対象の投与の30分以内の睡眠を産生するが該対象が投与の4時間後に目覚めたときに残留鎮静作用を産生しないために有効な量のゾルピデムまたはその塩を含む、MOTN不眠の治療のための固体単位投与組成物。
【請求項13】
少なくとも一つのpH調節剤をさらに含む、請求項12記載の固体単位投与組成物。
【請求項14】
二成分緩衝系をさらに含む、請求項12記載の固体単位投与組成物。
【請求項15】
二成分緩衝系が炭酸塩および重炭酸塩からなる、請求項14記載の固体単位投与組成物。
【請求項16】
二成分緩衝系が対象の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず、約8.5より高いpHに上昇させる、対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のための剤形である、請求項14記載の固体単位投与組成物。
【請求項17】
5 mg未満のヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項16記載の固体単位投与組成物。
【請求項18】
1.5〜2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項17記載の固体単位投与組成物。
【請求項19】
3.0〜3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項17記載の固体単位投与組成物。
【請求項20】
即溶解性のロゼンジまたは錠剤の形態である、請求項16記載の固体単位投与組成物。
【請求項21】
投与後約5分以内にて頬および/または舌下溶解を提供する、請求項16記載の固体単位投与組成物。
【請求項22】
約0.5 mg〜約4.0 mgのゾルピデムまたはその塩および医薬的に許容される賦形剤を含む、MOTN不眠の治療における口腔粘膜による吸収に適した医薬組成物。
【請求項23】
約0.5〜約4.0 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
約1.0 mgのゾルピデムを含む、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項25】
約1.75 mgのゾルピデムを含む、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項26】
約3.5 mgのゾルピデムを含む、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項27】
二成分緩衝系を含む、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項28】
緩衝系が唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず、約8.5より高いpHに上昇させる、請求項27記載の医薬組成物。
【請求項29】
即溶解性の錠剤またはロゼンジの形態である、請求項27記載の医薬組成物。
【請求項30】
投与後約5分以内にて完全な頬および/または舌下溶解を提供する、請求項29記載の医薬組成物。
【請求項31】
緩衝系が炭酸塩および重炭酸塩からなる、請求項27記載の医薬組成物。
【請求項32】
炭酸塩および重炭酸塩が重量で約1:1.0〜約1:1.2の炭酸塩:重炭酸塩比にて存在する、請求項31記載の医薬組成物。
【請求項33】
緩衝系が炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムからなる、請求項31記載の医薬組成物。
【請求項34】
5 mg未満の量のゾルピデムおよび緩衝剤を含む、不眠の治療のための口腔粘膜を通した送達のための固体医薬組成物。
【請求項35】
緩衝剤が炭酸塩緩衝剤を含む、請求項34記載の固体医薬組成物。
【請求項36】
緩衝剤が重炭酸塩緩衝剤を含む、請求項34記載の固体医薬組成物。
【請求項37】
緩衝剤が炭酸塩緩衝剤および重炭酸塩緩衝剤からなる、請求項34記載の固体医薬組成物。
【請求項38】
緩衝剤が二成分緩衝剤からなる、請求項34記載の固体医薬組成物。
【請求項39】
ゾルピデムの量が1.30×10-5モル未満である、請求項34記載の固体医薬組成物。
【請求項40】
ゾルピデムの量が約1.5〜約2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムである、請求項34記載の固体医薬組成物。
【請求項41】
ゾルピデムの量が約3.0〜約3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムである、請求項34記載の固体医薬組成物。
【請求項42】
固体医薬組成物が舌下錠剤である、請求項34記載の固体医薬組成物。
【請求項43】
固体医薬組成物がロゼンジである、請求項34記載の固体医薬組成物。
【請求項44】
ゾルピデムが舌下または頬粘膜の少なくとも一つを通して送達される、請求項34記載の固体医薬組成物。
【請求項45】
5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む、不眠の治療のための口腔粘膜を通した送達のための固体医薬組成物。
【請求項46】
二成分緩衝剤が炭酸塩緩衝剤および重炭酸塩緩衝剤からなる、請求項45記載の固体医薬組成物。
【請求項47】
ゾルピデムの量が1.30×10-5モル未満である、請求項45記載の固体医薬組成物。
【請求項48】
ゾルピデムの量が約1.5〜約2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムである、請求項45記載の固体医薬組成物。
【請求項49】
ゾルピデムの量が約3.0〜約3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムである、請求項45記載の固体医薬組成物。
【請求項50】
固体医薬組成物が舌下錠剤である、請求項45記載の固体医薬組成物。
【請求項51】
固体医薬組成物がロゼンジである、請求項45記載の固体医薬組成物。
【請求項52】
5 mg未満の用量のヘミ酒石酸ゾルピデム、および対象の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず約8.5より高いpHに上昇させることができる二成分緩衝系を含む、固体単位投与医薬組成物であって、該対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために製剤化される、組成物。
【請求項53】
1.5〜2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項52記載の医薬組成物。
【請求項54】
3.0〜3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項52記載の医薬組成物。
【請求項55】
二成分緩衝系が炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムからなる、請求項54記載の医薬組成物。
【請求項56】
二成分緩衝系が炭酸塩および重炭酸塩からなり、該炭酸塩および重炭酸塩が重量で約1:1.0〜約1:1.2の炭酸塩:重炭酸塩比にて存在する、請求項54記載の医薬組成物。
【請求項57】
5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む、不眠の治療のための医薬組成物。
【請求項58】
組成物が口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために製剤化され、二成分緩衝剤が出発唾液pHにかかわらず少なくとも8.5の唾液pHを産生する、5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む、不眠の治療のための医薬組成物。
【請求項59】
ゾルピデムが舌下または頬粘膜の少なくとも一つを通して送達される、請求項58記載の医薬組成物。
【請求項60】
睡眠から目覚めて30分以内に5時間未満の睡眠に戻りたいと望む対象に、有効量のゾルピデムまたはその塩を含み、該対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために製剤化される単一単位投与組成物を投与することを含む、不眠の治療方法であって、該有効量が1.30×10-5モル未満の量のゾルピデムであり、適当な患者集団にて評価されるとき投与の20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlの血漿濃度を産生するのに十分な量である、方法。
【請求項61】
組成物が必要に応じて投与される、請求項60記載の方法。
【請求項62】
組成物がゾルピデムの頬および/または舌下送達のために製剤化される即溶解性の錠剤またはロゼンジである、請求項60記載の方法。
【請求項63】
組成物が対象の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず約8.5より高いpHに上昇させる二成分緩衝系を含む、請求項60記載の方法。
【請求項64】
組成物が0.5〜4.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムと、対象の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず約8.5より高いpHに上昇させる炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムの二成分緩衝系とを含む、請求項60記載の方法。
【請求項65】
1.30×10-5モルの量にてゾルピデムまたはその塩を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、対象におけるMOTN不眠の治療方法であって、該投与が必要に応じてなされ、ゾルピデムの送達が該対象において投与の約20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlおよび投与の4時間後に20 ng/ml未満のゾルピデムの血中濃度を産生するために該対象の口腔粘膜を通してなされる、方法。
【請求項66】
組成物が少なくとも一つのpH調節剤を含む、請求項65記載の方法。
【請求項67】
組成物が対象の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず約8.5より高いpHに上昇させる二成分緩衝系を含む、請求項65記載の方法。
【請求項68】
組成物がヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項65記載の方法。
【請求項69】
組成物が0.5〜4.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項68記載の方法。
【請求項70】
組成物が1.5〜2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項68記載の方法。
【請求項71】
組成物が3.0〜3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項68記載の方法。
【請求項72】
組成物が投与後10分以内に最大血漿濃度(Cmax)の50%を提供する、請求項65記載の方法。
【請求項73】
組成物が5 mg未満の用量のヘミ酒石酸ゾルピデムと炭酸塩および重炭酸塩からなる二成分緩衝系とを含む、請求項72記載の方法。
【請求項74】
組成物が即溶解性の舌下錠剤またはロゼンジの形態である、請求項65記載の方法。
【請求項75】
ゾルピデムの送達が舌下または頬粘膜の少なくとも一つを通してなされる、請求項65記載の方法。
【請求項76】
ゾルピデムまたはその塩を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、対象における不眠の治療方法であって、該組成物が対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達を提供し、該対象が睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望むものであり、該組成物が投与の30分以内の睡眠を産生し、対象が投与の4時間後に目覚めたときに投与が残留鎮静作用を産生しないものである、方法。
【請求項77】
睡眠が入眠時における睡眠ポリグラフステージ1睡眠である、請求項76記載の方法。
【請求項78】
組成物が投与の20分以内に対象において約25 ng/ml〜約50 ng/mlの血中濃度のゾルピデムを産生する、請求項76記載の方法。
【請求項79】
組成物が投与の4時間後に対象において20 ng/ml未満の血中濃度のゾルピデムを産生する、請求項76記載の方法。
【請求項80】
組成物が投与後10分以内にて最大血漿濃度(Cmax)の50%を提供する、請求項79記載の方法。
【請求項81】
組成物がヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項76記載の方法。
【請求項82】
組成物が少なくとも一つのpH調節剤を含む、請求項76記載の方法。
【請求項83】
組成物が対象の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず約8.5より高いpHに上昇させる二成分緩衝系を含む、請求項76記載の方法。
【請求項84】
組成物が固体単位剤形である、請求項76〜83のいずれか記載の方法。
【請求項85】
組成物が即溶解性の舌下錠剤またはロゼンジの形態である、請求項83記載の方法。
【請求項86】
組成物が1.5〜2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項83記載の方法。
【請求項87】
組成物が3.0〜3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項83記載の方法。
【請求項88】
組成物が1.5〜2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含み、二成分緩衝系が炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムからなる、請求項83記載の方法。
【請求項89】
組成物が3.0〜3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含み、二成分緩衝系が炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムからなる、請求項83記載の方法。
【請求項90】
ゾルピデムが舌下または頬粘膜の少なくとも一つを通して送達される、請求項76記載の方法。
【請求項91】
5 mg未満の量のゾルピデムおよび緩衝剤を含む固体医薬組成物を、睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む対象に投与することを含む、対象における不眠の治療方法であって、固体医薬組成物が対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達を提供し、ゾルピデムの血中濃度が対象において投与の約20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlを達成する、方法。
【請求項92】
対象におけるゾルピデムの血中濃度が投与の約4時間後に約20 ng/ml未満である、請求項91記載の方法。
【請求項93】
固体医薬組成物が対象の口内で約2分以内に溶解または崩壊する、請求項91記載の方法。
【請求項94】
固体医薬組成物が対象の口内で約3〜約6分で溶解または崩壊する、請求項91記載の方法。
【請求項95】
緩衝剤が二成分緩衝剤である、請求項91記載の方法。
【請求項96】
二成分緩衝剤が炭酸塩緩衝剤および重炭酸塩緩衝剤からなる、請求項95記載の方法。
【請求項97】
緩衝剤が対象の口内の唾液のpHを約9.0より高いpHに上昇させる、請求項91記載の方法。
【請求項98】
唾液のpHが少なくとも約2分間9.0を超えて上昇する、請求項97記載の方法。
【請求項99】
ゾルピデムが舌下または頬粘膜の少なくとも一つを通して送達される、請求項91記載の方法。
【請求項100】
5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む固体医薬組成物を、睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む対象に投与することを含む、不眠の治療方法であって、該固体医薬組成物が対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達を提供し、対象の口内で約2分以内に溶解または崩壊し、該二成分緩衝剤が対象の口内の唾液のpHを約9.0より高いpHに上昇させる、方法。
【請求項101】
唾液のpHが少なくとも約2分間9.0を超えて上昇する、請求項100記載の方法。
【請求項102】
二成分緩衝剤が炭酸塩緩衝剤および重炭酸塩緩衝剤からなる、請求項100記載の方法。
【請求項103】
対象におけるゾルピデムの血中濃度が投与の約20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlである、請求項100記載の方法。
【請求項104】
対象におけるゾルピデムの血中濃度が投与の約4時間後に約20 ng/ml未満である、請求項100記載の方法。
【請求項105】
ゾルピデムが舌下または頬粘膜の少なくとも一つを通して送達される、請求項100記載の方法。
【請求項106】
5 mg未満の量のゾルピデムおよび緩衝剤を含む固体医薬組成物を睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む患者に提供し;患者の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために該固体医薬組成物を患者に投与する工程を含む、不眠の治療方法であって、患者におけるゾルピデムの血中濃度が投与の約20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlである、方法。
【請求項107】
患者におけるゾルピデムの血中濃度が投与の約4時間後に約20 ng/ml未満である、請求項106記載の方法。
【請求項108】
固体医薬組成物が患者の口内で約2分以内に溶解または崩壊する、請求項106記載の方法。
【請求項109】
固体医薬組成物が患者の口内で約3〜約6分で溶解または崩壊する、請求項106記載の方法。
【請求項110】
緩衝剤が二成分緩衝剤である、請求項106記載の方法。
【請求項111】
二成分緩衝剤が炭酸塩緩衝剤および重炭酸塩緩衝剤からなる、請求項110記載の方法。
【請求項112】
緩衝剤が患者の口内の唾液のpHを約9.0より高いpHに上昇させる、請求項106記載の方法。
【請求項113】
唾液のpHが少なくとも約2分間9.0を超えて上昇する、請求項112記載の方法。
【請求項114】
ゾルピデムが舌下または頬粘膜の少なくとも一つを通して送達される、請求項106記載の方法。
【請求項115】
5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む固体医薬組成物を、睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む患者に提供し;患者の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために該固体医薬組成物を患者に投与する工程を含む、不眠の治療方法であって、該固体医薬組成物が患者の口内で約2分以内に溶解または崩壊し、該二成分緩衝剤が患者の口内の唾液のpHを約9.0より高いpHに上昇させる、方法。
【請求項116】
唾液のpHが少なくとも約2分間9.0を超えて上昇する、請求項115記載の方法。
【請求項117】
二成分緩衝剤が炭酸塩緩衝剤および重炭酸塩緩衝剤からなる、請求項115記載の方法。
【請求項118】
患者におけるゾルピデムの血中濃度が投与の約20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlである、請求項115記載の方法。
【請求項119】
患者におけるゾルピデムの血中濃度が投与の約4時間後に約20 ng/ml未満である、請求項115記載の方法。
【請求項120】
ゾルピデムが舌下または頬粘膜の少なくとも一つを通して送達される、請求項115記載の方法。
【請求項121】
5 mg未満の量のゾルピデムおよび緩衝剤を含む、不眠の治療のための口腔粘膜を通した送達のための医薬組成物。
【請求項122】
緩衝剤が炭酸塩緩衝剤を含む、請求項121記載の医薬組成物。
【請求項123】
緩衝剤が重炭酸塩緩衝剤を含む、請求項121記載の医薬組成物。
【請求項124】
緩衝剤が炭酸塩緩衝剤および重炭酸塩緩衝剤からなる、請求項121記載の医薬組成物。
【請求項125】
緩衝剤が二成分緩衝剤からなる、請求項121記載の医薬組成物。
【請求項126】
ゾルピデムの量が1.30×10-5モル未満である、請求項121記載の医薬組成物。
【請求項127】
ゾルピデムの量が約1.5〜約2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムである、請求項121記載の医薬組成物。
【請求項128】
ゾルピデムの量が約3.0〜約3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムである、請求項121記載の医薬組成物。
【請求項129】
5 mg未満の用量のヘミ酒石酸ゾルピデムと、対象の唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず約8.5より高いpHに上昇させることができる二成分緩衝系とを含む、医薬組成物であって、該組成物が対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために製剤化される、医薬組成物。
【請求項130】
1.5〜2.5 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項129記載の医薬組成物。
【請求項131】
3.0〜3.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムを含む、請求項129記載の医薬組成物。
【請求項132】
二成分緩衝系が炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムからなる、請求項129記載の医薬組成物。
【請求項133】
二成分緩衝系が炭酸塩および重炭酸塩からなり、該炭酸塩および重炭酸塩が重量で約1:1.0〜約1:1.2の炭酸塩:重炭酸塩比で存在する、請求項129記載の医薬組成物。
【請求項134】
5 mg未満の量のゾルピデムおよび緩衝剤を含む固体医薬組成物を睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む対象に投与することを含む、対象における不眠の治療方法であって、該固体医薬組成物が対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達を提供し、ゾルピデムの血中濃度が対象において投与の約20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlを達成する、方法。
【請求項135】
対象におけるゾルピデムの血中濃度が投与の約4時間後に約20 ng/ml未満である、請求項134記載の方法。
【請求項136】
固体医薬組成物が対象の口内で約2分以内に溶解または崩壊する、請求項134記載の方法。
【請求項137】
固体医薬組成物が対象の口内で約3〜約6分で溶解または崩壊する、請求項134記載の方法。
【請求項138】
緩衝剤が二成分緩衝剤である、請求項134記載の方法。
【請求項139】
二成分緩衝剤が炭酸塩緩衝剤および重炭酸塩緩衝剤からなる、請求項138記載の方法。
【請求項140】
緩衝剤が対象の口内の唾液のpHを約9.0より高いpHに上昇させる、請求項134記載の方法。
【請求項141】
唾液のpHが少なくとも約2分間9.0を超えて上昇する、請求項140記載の方法。
【請求項142】
ゾルピデムが舌下または頬粘膜の少なくとも一つを通して送達される、請求項134記載の方法。
【請求項143】
5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む医薬組成物を睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む対象に投与することを含む、不眠の治療方法であって、該医薬組成物が対象の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達を提供し、該二成分緩衝剤が対象の口内の唾液のpHを約9.0より高いpHに上昇させる、方法。
【請求項144】
唾液のpHが少なくとも約2分間9.0を超えて上昇する、請求項143記載の方法。
【請求項145】
二成分緩衝剤が炭酸塩緩衝剤および重炭酸塩緩衝剤からなる、請求項143記載の方法。
【請求項146】
対象におけるゾルピデムの血中濃度が投与の約20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlである、請求項143記載の方法。
【請求項147】
対象におけるゾルピデムの血中濃度が投与の約4時間後に約20 ng/ml未満である、請求項143記載の方法。
【請求項148】
ゾルピデムが舌下または頬粘膜の少なくとも一つを通して送達される、請求項143記載の方法。
【請求項149】
5 mg未満の量のゾルピデムおよび緩衝剤を含む固体医薬組成物を睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む患者に提供し;該固体医薬組成物を患者の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために患者に投与する工程を含む、不眠の治療方法であって、患者におけるゾルピデムの血中濃度が投与の約20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlである、方法。
【請求項150】
患者におけるゾルピデムの血中濃度が投与の約4時間後に約20 ng/ml未満である、請求項149記載の方法。
【請求項151】
緩衝剤が二成分緩衝剤である、請求項149記載の方法。
【請求項152】
二成分緩衝剤が炭酸塩緩衝剤および重炭酸塩緩衝剤からなる、請求項151記載の方法。
【請求項153】
緩衝剤が患者の口内の唾液のpHを約9.0より高いpHに上昇させる、請求項149記載の方法。
【請求項154】
唾液のpHが少なくとも約2分間9.0を超えて上昇する、請求項153記載の方法。
【請求項155】
ゾルピデムが舌下または頬粘膜の少なくとも一つを通して送達される、請求項149記載の方法。
【請求項156】
5 mg未満の量のゾルピデムおよび二成分緩衝剤を含む医薬組成物を睡眠から目覚めて5時間未満の睡眠を再開したいと望む患者に提供し;該医薬組成物を患者の口腔粘膜を通したゾルピデムの送達のために患者に投与する工程を含む、不眠の治療方法であって、該二成分緩衝剤が患者の口内の唾液のpHを約9.0より高いpHに上昇させる、方法。
【請求項157】
唾液のpHが少なくとも約2分間9.0を超えて上昇する、請求項156記載の方法。
【請求項158】
二成分緩衝剤が炭酸塩緩衝剤および重炭酸塩緩衝剤からなる、請求項156記載の方法。
【請求項159】
患者におけるゾルピデムの血中濃度が投与の約20分以内に約25 ng/ml〜約50 ng/mlである、請求項156記載の方法。
【請求項160】
患者におけるゾルピデムの血中濃度が投与の約4時間後に約20 ng/ml未満である、請求項156記載の方法。
【請求項161】
ゾルピデムが舌下または頬粘膜の少なくとも一つを通して送達される、請求項156記載の方法。
【請求項162】
頬または舌下吸収のための有効量の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、MOTN不眠の治療方法であって、該組成物がゾルピデムまたはその塩を含み、有効量が約20分以内に睡眠を誘発するのに十分な量であり、摂取の4時間後に残留鎮静作用を回避または実質的に消滅させる、方法。
【請求項163】
ゾルピデムが睡眠中断後、必要に応じて投与される、請求項162記載の方法。
【請求項164】
医薬組成物が約0.5〜約4.75 mgのゾルピデムまたはその塩を含む、請求項162記載の方法。
【請求項165】
医薬組成物が約0.5〜約4.75 mgのヘミ酒石酸ゾルピデムまたは酒石酸ゾルピデムを含む、請求項162記載の方法。
【請求項166】
有効量が約1.0 mgのゾルピデムである、請求項162記載の方法。
【請求項167】
有効量が約1.75 mgのゾルピデムである、請求項162記載の方法。
【請求項168】
有効量が約3.5 mgのゾルピデムである、請求項162記載の方法。
【請求項169】
医薬組成物が二成分緩衝系を含む、請求項162記載の方法。
【請求項170】
緩衝系が唾液のpHを唾液の出発pHにかかわらず約8.5より高いpHに上昇させる、請求項169記載の方法。
【請求項171】
医薬組成物が即溶解性錠剤またはロゼンジである、請求項169記載の方法。
【請求項172】
医薬組成物が投与後約5分以内に完全な頬または舌下崩壊を提供する、請求項171記載の方法。
【請求項173】
緩衝系が炭酸塩および重炭酸塩からなる、請求項169記載の方法。
【請求項174】
炭酸塩および重炭酸塩が重量で約1:1.0〜約1:1.4の炭酸塩:重炭酸塩比で存在する、請求項173記載の方法。
【請求項175】
緩衝系が炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムからなる、請求項173記載の方法。
【請求項176】
ゾルピデムまたはその塩を含む有効量の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、MOTN不眠の治療方法であって、該有効量が投与後約20分以内に約25〜約50 ng/mLの血中濃度を提供するのに十分な量である、方法。
【請求項177】
ゾルピデムが睡眠中断後、必要に応じて投与される、請求項176記載の方法。
【請求項178】
医薬組成物が約0.5〜約4.75 mgのゾルピデムまたはその塩を含む、請求項176記載の方法。
【請求項179】
医薬組成物が二成分緩衝系を含む、請求項176記載の方法。
【請求項180】
医薬組成物が即溶解性錠剤またはロゼンジである、請求項179記載の方法。
【請求項181】
ゾルピデムまたはその塩を含む有効量の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、MOTN不眠の治療方法であって、該有効量が約1.0〜4.0 mgの量である、方法。
【請求項182】
有効量が約1.75 mgのゾルピデムである、請求項181記載の方法。
【請求項183】
有効量が約2.0 mgのゾルピデムである、請求項181記載の方法。
【請求項184】
有効量が約3.5 mgのゾルピデムである、請求項181記載の方法。
【請求項185】
ゾルピデムまたはその塩を含む有効量の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、MOTN不眠の治療方法であって、該有効量が約5 mg未満の量であり、投与後約20分以内に約25〜約50 ng/mLの血中濃度を提供するのに十分な量である、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−40175(P2013−40175A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−200831(P2012−200831)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【分割の表示】特願2008−513770(P2008−513770)の分割
【原出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(507388672)トランセプト・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】TRANSCEPT PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】