説明

真核生物における糖タンパク質の改変におけるエンドマンノシダーゼ

本発明は、概して、真菌または他の下等真核生物で発現される組換えタンパク質のグリコシル化構造を改変して、高等哺乳動物(特に、ヒト)に由来するタンパク質のグリコシル化構造により密接に類似させる方法に関する。本発明はまた、新規酵素、およびそれらをコードする核酸、およびそれらの酵素を発現するように操作された宿主、宿主において改変糖タンパク質を産生するための方法およびそのように産生された改変糖タンパク質に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国特許出願第10/695,243号への優先権を主張する。米国特許出願第10/695,243号は、米国特許出願第10/371,877号(2003年2月20日出願)の一部継続出願である。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般的には、高等哺乳動物(特にヒト)由来のタンパク質のグリコシル化により近く似せるための、真菌または他の下等真核生物において発現された組換えタンパク質のグリコシル化構造を改変(modify)する方法に関する。本発明はまた、新規の酵素および、その酵素をコードする核酸および、その酵素を発現するように操作された宿主、修飾された糖タンパク質を宿主において産生するための方法、およびそのように産生された、修飾された糖タンパク質に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
DNAがタンパク質に転写および翻訳された後、さらなる翻訳後プロセシングは、糖残基の結合を包含する(グリコシル化として公知のプロセス)。種々の生物体は、種々のグリコシル化酵素(グリコシルトランスフェラーゼおよびグリコシダーゼ)を産生し、そして利用可能な種々の基質(ヌクレオチド糖)を有し、その結果、グリコシル化型および個々のオリゴ糖の組成は、1つの同じタンパク質でさえも、特定のタンパク質が発現される宿主系に依存して異なる。細菌は、代表的には、タンパク質をグリコシル化せず、もしそうである場合も、非常に非特異的様式でだけである(MoensおよびVanderleyden,Arch.Microbiol.168(3):169−175(1997))。下等真核生物(例えば、糸状菌および酵母)は、主としてマンノースおよびマンノシルホスフェート糖を付加し、他方昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)は、さらに別の方法でタンパク質をグリコシル化する。R.K.Bretthauerら,Biotechnology and Applied Biochemistry 1999 30:193−200(1999);W.Martinetら,Biotechnology Letters 1998 20:1171−1177(1998);S.Weikertら,Nature Biotechnology 1999 17:1116−1121(1999);M.Malissardら,Biochem.Biophys.Res.Comm.2000 267:169−173(2000);D.Jarvisら,Curr.Op.Biotech.1998 9:528−533(1998);ならびにTakeuchi,Trends in Glycoscience and Glycotechnology 1997 9:S29−S35(1997)を参照のこと。
【0004】
N結合グリコシル化は、多くの細胞タンパク質および分泌タンパク質のプロセシングにおいて主要な役割を果たす。真核生物において、事前構築された(preassembled)オリゴ糖Glc3Man9GlcNAc2は、小胞体中のオリゴサッカリルトランスフェラーゼによって、ドリコールから上記タンパク質のアクセプター部位上に輸送される(DempskiおよびImperiali,Curr.Opin.Chem.Biol.6:844−850(2002))。引き続いて、末端a−1,2−グルコースが、グルコシダーゼIIによる残存する2つのa−1,3−グルコース残基の除去を促進するグルコシダーゼIによって除去される(Herscovics,Biochim.Biophys.Acta 1473:96−107(1999))。糖タンパク質のゴルジへの転位置の前に、残存する高次マンノースグリカンは、ERマンノシダーゼによってMan8GlcNAc2にプロセシングされ、ここで、このグリカン構造は、さらに修飾される。次には、ERでのグリカン構造の不正確なプロセシングが、引き続く修飾を防ぎ得、疾患状態をもたらす。グルコシダーゼIの非存在は、極めて稀であり(ヒトの症例が1つだけ報告された)、かつ、早い死をもたらす、グリコシル化型(CDG)IIbの先天性障害をもたらす(MarquardtおよびDenecke,Eur.J.Pediatr.162:359−379(2003))。チャイニーズハムスター卵巣細胞株Lec23(グルコシダーゼIが欠乏している)の単離は、存在する優性な糖形態がGlc3Man9GlcNAc2であると示した(Rayら,J.Biol.Chem.266:22818−22825(1991))。酵母および哺乳動物におけるグリコシル化の初期段階は、小胞体から出現する同じグリカン構造と同一である。しかし、これらのグリカンがゴルジによってプロセシングされる場合、生じる構造は大幅に異なり、従って、高等真核生物(例えば、ヒトおよび他の哺乳動物)に見出されるグリコシル化型と実質的に異なる酵母グリコシル化型をもたらす(R.Bretthauerら,Biotechnology and Applied Biochemistry 30:193−200(1999))。さらに、大いに異なるグリコシル化型は、いくつかの場合、ヒトにおけるこれらのタンパク質の免疫原性を上昇させ、そしてこれらの半減期を短縮すると示された(Takeuchi(1997)前出)。
【0005】
ヒトグリコシル化の初期段階は、少なくとも2つの異なる段階に分けられ得る:(i)小胞体(ER)の膜における反応の連続セットにより構築される脂質結合Glc3Man9GlcNAc2オリゴ糖;および(ii)このオリゴ糖の、脂質アンカードリキル(dolichyl)ピロリン酸から新規合成タンパク質への輸送。この特異的輸送部位は、配列Asn−Xaa−Ser/Thr(ここでXaaは、プロリン以外の任意のアミノ酸であり得る)中のアスパラギン残基によって定義される(Y.Gavelら,Protein Engineering 3:433−442(1990))。
【0006】
新生糖タンパク質が初期ゴルジ装置に輸送される前に、グルコシダーゼおよびマンノシダーゼによるさらなるプロセシングが、ERにおいて起こる。初期ゴルジ装置において、さらなるマンノース残基が、ゴルジ特異性a−1,2−マンノシダーゼによって除去される。プロセシングは、上記タンパク質がゴルジの中を進むにつれて続く。内側のゴルジにおいて、多くの修飾する酵素(N−アセチルグルコサミニル−トランスフェラーゼ(GnT I、GnT II、GnT III、GnT IV、GnT V、GnT VI)、マンノシダーゼII、およびフコシルトランスフェラーゼを含む)が、特定の糖残基を付加および除去する。最終的に、トランスゴルジにおいて、ガラクトシルトランスフェラーゼおよびシアリルトランスフェラーゼが、このゴルジより放出される構造を産生する。ビ−、トリ−、およびテトラ−アンテナリー(antennary)構造と特徴付けられるグリカン(ガラクトース、フコース、N−アセチルグルコサミン、ならびに高度の末端シアル酸を含む)は、糖タンパク質にヒトの特徴的を与える。
【0007】
タンパク質がヒトまたは動物から単離される場合、有意数のこのタンパク質は、最も有意な修飾のうちの1つであるグリコシル化によって翻訳後に修飾される。いくつかの研究は、グリコシル化は、(1)免疫原性、(2)薬物動態学的特性、(3)輸送(trafficking)、および(4)治療用タンパク質の効力を決定することに重要な役割を果たすと示した。治療用タンパク質全てのうち推定70%はグリコシル化され、従って、現在のところは、ヒトに類似の様式でグリコシル化し得る産生系(すなわち、宿主)に依存する。現在まで、大部分の糖タンパク質が哺乳動物宿主系で作製されている。従って、医薬産業によるかなりの努力が、可能な限り「ヒューマノイド」な糖タンパク質を得るためのプロセスを開発することに向けられたことは驚くべきことでない。これは、細胞によって発現されたタンパク質のシアリル化(すなわち、シアル酸の末端付加)の程度を高めるための、このような哺乳動物細胞の遺伝子操作を含み得、これは、このようなタンパク質の薬学動態的特性を向上させることが公知である。代替的に、シアリル化の程度は、公知のグリコシルトランスフェラーゼおよびこれらそれぞれのヌクレオチド糖基質(例えば、2,3シアリルトランスフェラーゼおよびCMPシアル酸)を使用することによる、このような糖のインビトロ付加によって向上され得る。
【0008】
さらなる研究は、特定の糖形態の生物学的有意性および治療的有意性を明らかにし得、これによって、このような特定の所望な糖形態を産生する能力を与える。現在までに、かなり良好に特徴付けられたグリコシル化型を有するタンパク質を作製すること、および、以下の高等真核生物タンパク質発現系のうちの1つにおいてこのようなタンパク質をコードするcDNAを発現することに、努力が集中した:
1.チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、マウス線維芽細胞およびマウス骨髄腫細胞のような高等真核生物(R.Wernerら,Arzneimittel−Forschung−Drug rResearch 1998 48:870−880(1998));
2.ヤギ、ヒツジ、マウスなどのようなトランスジェニック動物(Denteら,Genes and Development 2:259−266(1988);Coleら,J.Cell.Biochem.265:補遺18D(1994);P.McGarveyら,Biotechnology 13:1484−1487(1995);Bardorら,Trends in Plant Science 4:376−380(1999))
3.植物(Arabidopsis thaliana、タバコなど)(Staubら, Nature Biotechnology 18:333−338(2000);McGarveyら, Biotechnology 13: 1484−1487 (1995); Bardorら,Trends in Plant Science 4:376−380(1999));
4.組換えバキュロウイルス(例えば、鱗翅類細胞に感染するAutographa californica多核体病ウイルス)と組み合わせた昆虫細胞(Spodoptera frugiperda Sf9,Sf21,Trichoplusia niなど)(Altmannら,Glycoconjugate Journal 16:109−123(1999))。
【0009】
大部分の高等真核生物が、ヒトに見出されるグリコシル化反応と類似のグリコシル化反応を行うが、上記の宿主系で発現される組換えヒトタンパク質は、これらの「天然」ヒト対応物(counterpart)と常に異なる(Rajuら Glycobiology 10:477−486(2000))。従って、広範な開発研究が、これらの発現系で作製されるタンパク質の「ヒト特徴」を改善する方法を見出すことに向けられてきた。これは、タンパク質発現宿主の発酵条件の最適化、およびヒト様糖形態の形成に関与する酵素をコードする遺伝子を導入することによる遺伝子組換え(modification)を包含する(Wernerら,Arzneimittel−Forschung−Drug Res.48:870−880(1998);Weikertら Nature Biotechnology 17:1116−1121(1999);Andersenら,Current Opinion in Biotechnology 5:546−549(1994);Yangら,Biotechnology and Bioengineering 68:370−380(2000))。
【0010】
しかし、全ての哺乳動物発現系に関連する固有の問題が、まだ解決されていない。哺乳動物細胞培養(例えば、CHO細胞、マウス細胞、またはより最近では、ヒト細胞)に基づく発酵プロセスは、非常に遅い傾向があり(一週間を越える発酵時間も珍しくない)、多くの場合低産物力価をもたらし、高価な栄養分および補因子(例えば、ウシ胎仔血清)を必要とし、プログラム細胞死(アポトーシス)によって制限され、そして多くの場合特定の治療的に有用なタンパク質の発現を可能にしない。より重要なことには、哺乳動物細胞は、ヒト病原体である可能性を有するウイルスに対して感受性であり、そして製品安全性を保証するために厳密な品質管理が必要とされる。このことは、格別に関心がある。なぜなら、このようなプロセスと同じ数だけ、動物に由来する複雑かつ温度感受性な培地成分(例えば、子ウシ血清)(これは、ヒトに対して病原性の因子(例えば、ウシの海綿状脳症(BSE)プリオンまたはウイルス)を保有し得る)の添加を必要とするからである。
【0011】
治療用化合物の製造は、好ましくは、しっかり管理された無菌環境下で行われる。動物飼育場は、どんなに清潔に維持されていても、このような環境を構築しない。トランスジェニック動物は、現在のところ、高体積の治療用タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、組織プラスミノゲン活性化因子、モノクローナル抗体、ヘモグロビン、コラーゲン、フィブリノゲンなど)を製造するために考えられている。トランスジェニックヤギおよび他のトランスジェニック動物(マウス、ヒツジ、ウシなど)は、遺伝子操作され、乳中に治療用タンパク質を高濃度に産生し得るが、回収が厄介である。なぜなら、全てのバッチが、厳密な品質管理を受けなければならないからである。トランスジェニックヤギは、一年にわたって十分な量の治療用タンパク質を産生し得るが、乳の全てのバッチは、細菌、真菌、ウイルスおよびプリオンによる夾雑について検査(inspect)および検査(check)されなければならない。これは、製品安全性および法規則の順守を保証するために、厳密な品質管理および保証設備を必要とする。スクラピーおよびウシの海綿状脳症の場合、感染を除外するために、検査を約1年間行い得る。その間、動物の信頼できる供給源における信用は、不在の実際の証拠に代わってしまう。発酵槽中で増殖した細胞は、1つの十分に特徴付けられたMaster Cell Bank(MCB)に由来するが、トランスジェニック技術は、種々の動物に依存し、従って、固有に不均一性である。さらに、外部因子(例えば、異なる食物の取り組み、疾患および群内の同質性の欠如)は、最終生成物のグルコシル化型に影響を与え得る。ヒトにおいて、例えば、異なる食習慣がグルコシル化型に影響することが公知であり、従って、動物において類似の効果を予測することに慎重である。より少ないバッチ発酵において同じタンパク質を製造することは、(1)より実用的であり、(2)より安全であり、そして(3)より安価であり、従って、好ましい。
【0012】
トランスジェニック植物は、治療的価値があるタンパク質を得るための潜在的な供給源として浮上した。しかし、植物中でのタンパク質の高レベル発現は、遺伝子サイレンシング(高度に発現されたタンパク質が、次世代においてダウンレギュレーションされる機構)を受ける。さらに、植物は、キシロースおよびa−1,3結合フコース(ヒト糖タンパク質には通常見いだされないグリコシル化型)を付加し、そして高等哺乳動物において免疫原性副作用をもたらすと示されたことが公知である。オープンフィールドにおいてトランスジェニック植物を成長させることは、しっかり管理された製造環境を構成しない。植物からのタンパク質の回収は、簡単なことではなく、発酵槽中の分泌タンパク質の回収に対する費用競争力をさらに実証しなければならない。
【0013】
従って、現在製造される治療用糖タンパク質の多くは、哺乳動物細胞において発現され、そして多くの努力が、これらの組換えタンパク質のグリコシル化型を改善すること(すなわち、例えば、ヒト化すること)に向けられてきた。培地組成の変化およびヒトグリコシル化に関与する酵素をコードする遺伝子の共発現が、うまく使用されてきた(例えば、Weikertら,Nature Biotechnology 17:1116−1121(1999)を参照のこと)。
【0014】
これらのヒト対応物に類似の組換えタンパク質は、哺乳動物発現系において作製され得るが、下等真核生物(例えば、真菌および酵母)においては、ヒト型グルコシル化型を有するタンパク質を作製することは現在のところ不可能である。小胞体中のタンパク質に輸送されるコアオリゴ糖構造は、哺乳動物と下等真核生物とで基本的には同一であるが、実質的な差異が、真菌および哺乳動物のゴルジ装置の続いて起こるプロセシング反応に見出された。実際、異なる下等真核生物の間でさえ、非常に種々のグリコシル化構造が存在する。これは、哺乳動物発現系より優れた他の注目すべき利点(例えば、(1)一般的により高い産物力価、(2)より短い発酵時間、(3)哺乳動物細胞においてあまり発現されないタンパク質について代替を有すること、(4)化学的に定義されたタンパク質を含まない培地において増殖(成長)する能力、および従って、複雑な動物由来培地成分を必要としないこと、ならびに(5)このような宿主のレトロウイルス感染がないこと)にも拘らず、組換えヒト糖タンパク質の製造のための宿主としての下等真核生物の使用を阻止してきた。
【0015】
種々のメタノール資化性酵母(例えば、Pichia pastoris、Pichia methanolica、およびHansenula polymorpha)は、真核生物発現系として、特に重要な役割を果たしている。なぜなら、それらは、高い細胞密度に細胞を増殖させて、大量の組み換えタンパク質を分泌することが可能だからである。しかし、上記のように、酵母のような下等な真核生物は、高等動物のようにタンパク質をグリコシル化しない。例えば、Marasらに対する米国特許第5,834,251号(1994)を参照のこと。MarasおよびContrerasは最近、P.pastorisが、本質的に、有用な量(5%より多く)のGlcNAcトランスフェラーゼI受容性炭水化物を産生し得ないことを示した(Martinetら,Biotechnology Letters 20:1171−1177(1998))。Chibaら(J.Biol.Chem.273:26298−26304(1998))は、S.cerevisiaeが、1,6マンノシルトランスフェラーゼ(OCH1)、1,3マンノシルトランスフェラーゼ(MNN1)およびマンノシルリン酸トランスフェラーゼ(MNN4)を除去することによって、ならびにAspergillus saitoi由来のa−1,2−マンノシダーゼIの触媒ドメインを、ER検索(retrieval)/標的化配列を用いて、S.cerevisiaeのER中へと標的化することによって、ManGlcNAc構造からManGlcNAc構造の範囲に及ぶ構造を産生するように操作され得ることを示した(Chiba 1998,上述)。しかし、この試みは、所望のManGlcNAcの産生をほとんど生じないか、または全く生じない。このモデルタンパク質(カルボキシペプチダーゼY)は、トリミングされて、27%のManGlcNAc、22%のManGlcNAc、22%のManGlcNAc、29%のManGlcNAcからなる混合物を生じる。ManGlcNAcグリカンのみが、ヒト糖形態へのさらなる酵素変換に感受性であるので、このアプローチは、以下の理由から非常に非効率的である:単一N−グリコシル化部位を有するタンパク質において、全N−グリカンの少なくとも73%は、GlcNAcトランスフェラーゼIによる改変のために利用できない。2個または3個のN−グリコシル化部位を有するタンパク質において、それぞれ少なくとも93%または98%が、GlcNAcトランスフェラーゼIによる改変のために利用できない。このような低効率の変換は、治療剤の産生のために十分でない;多数の改変工程を施される場合、各クローン化酵素は、可能な最も高い効率で機能する必要がある。
【0016】
上記に述べられたグリカン形態の産生における非効率性は、多数の理由により説明され得る。これは、ERにおける、グルコシダーゼI、IIまたは常在性ERマンノシダーゼのいずれかによる、グリカンの非効率なプロセシングに部分的に起因し得る。最近進化したクラスのマンノシダーゼタンパク質が、脊索動物門の真核生物(哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類および魚類を含む)において同定されており、このタンパク質もまた、グルコース除去に関与する。これらのグリコシド酵素は、エンドマンノシダーゼとして定義されている。エンドマンノシダーゼの活性は、N−連結オリゴ糖のプロセシング(すなわち、グルコースα1,3マンノース二糖(dissacharide)の除去)を特徴とする。複雑な炭水化物の生成のために有用であることが知られているN−連結オリゴ糖プロセシングの最初の工程における、オリゴ糖上のグルコースおよびマンノース残基の除去における有用性は、十分確立されている。エンドマンノシダーゼは、元々、GlcManGlcNAcからManGlcNAcへのトリミングにおいて検出されたが、これはまた、他のグリコシル化構造もプロセシングする(図1)。全体的に見て、ジグリコシル化グリカンおよびトリグリコシル化グリカンもまたより低い程度でプロセシングされ得るが、モノグリコシル化グリカンが最も効率的に改変される(Lubasら,J.Biol.Chem.263(8):3990−8(1988))。さらに、GlcManGlcNAcが好ましい基質であるだけでなく、他のグリコシル化グリカン(例えば、GlcManGlcNAcおよびGlcManGlcNAc)も、同様に効率的に(それぞれManGlcNAcおよびManGlcNAcに)トリミングされる。進化の中でこのように遅いこのクラスのタンパク質の発生は、この発生が、高等真核生物で観察されるようなN−連結グリカンの強力なトリミングを増強することへの独自の要求であることを示唆する。この示唆は、エンドマンノシダーゼが、ゴルジ体中に局在し、そして完全な脱グリコシル化が生じることが従来報告されているERに局在しないという知見によって、さらに強化される。
【0017】
以前の研究は、グルコース除去が、グルコシダーゼIおよびIIの連続的作用を通じて、主にERで起こることを示してきた(Moremenら,Glycobiology 4:113−125(1994))。しかし、より最近の研究は、ゴルジ装置における品質管理機構に関与する、見かけ上別のグルコシダーゼII非依存性脱グリコシル化経路を示唆する(Zuberら,Mol.Biol.Cell.Dec;11(12):4227−40(2000))。グルコシダーゼII−欠乏性マウスリンパ腫細胞における研究は、エンドマンノシダーゼによる脱グリコシル化機構の証拠を示す(Mooreら,J.Biol.Chem.267(12):8443−51(1992))。さらに、マウスリンパ腫細胞株、PHAR2.7が単離された。これは、グルコシダーゼII活性を有さず、主に糖形態GlcManGlcNAcおよびGlcManGlcNAcの産生をもたらした(Reitmanら,J.Biol.Chem.257:10357−10363(1982))。この後者の細胞株の分析は、グルコシダーゼIIが存在しないにもかかわらず、脱グリコシル化高次マンノース構造が存在したことを示し、したがって、グリコシル化構造のための代替的プロセシング経路の存在を示した(MooreおよびSpiro,J Biol.Chem.267:8443−8451(1992))。このグルコシダーゼ非依存経路を担う酵素は、エンドマンノシダーゼ(E.C.3.2.1.130)として同定されている。エンドマンノシダーゼは、モノグリコシル化、ジグリコシル化およびトリグリコシル化高次マンノース糖形態の加水分解を触媒し、存在するグルコース残基および近傍に位置するマンノースを除去する(Hiraizumiら,J.Biol.Chem.268:9927−9935(1993);BauseおよびBurbach,Biol.Chem.377:639−646(1996))。
【0018】
エンドマンノシダーゼは、種々のグリコシル化糖形態のマンノース構造間を区別せずに、GlcMan9〜5GlcNAcをMan8〜4GlcNAcに加水分解するように見える(LubasおよびSpiro,J.Biol.Chem.263:3990−3998(1988))。これまでに、クローン化されるべきであった唯一のエンドマンノシダーゼは、ラット肝臓に由来する。ラット肝臓エンドマンノシダーゼは、52kDaの分子量を有する451アミノ酸の予測オープンリーディングフレーム(ORF)をコードする(Spiroら,J.Biol.Chem.272:29356−29363(1997))。この酵素は、中性の最適pHを有し、そしてどのような特定の陽イオン要求性をも有さないように見える(BauseおよびBurbach 1996,前出)。ERに局在するグルコシダーゼ酵素と異なり、エンドマンノシダーゼは、主にゴルジ体に局在し(Zuberら,Mol.Biol.Cell 11:4227−4240(2000))、このことは、ERから漏出したグリコシル化糖形態をプロセシングすることによって、品質管理の役割を果たし得ることを示唆する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ヒト様糖タンパク質の産生に対しての改変グリコシル化グリカンの有用性を考えると、宿主細胞中においてエンドマンノシダーゼ活性を発現することによってグリコシル化グリカンを改変するための方法が、所望される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の要旨)
非哺乳動物真核生物株を遺伝的に操作することによってグリコシル化N−グリカンを改変するために、方法が開発された。この非哺乳動物真核生物株は、組み換え糖タンパク質を産生し得、この組み換え糖タンパク質は、それらのヒト対応物と実質的に等しい。これらの細胞株(懸濁培養液中で増殖された酵母、糸状菌、昆虫細胞、および植物細胞が挙げられる)は、ヒトにおける糖タンパク質のプロセシングを模倣する一連の酵素反応が起こる、遺伝的に改変されたグリコシル化経路を有する。本明細書において記載されるように、株は、触媒作用的に活性なエンドマンノシダーゼ遺伝子を発現して、よりヒト様のグリカン構造を得ることを全般的な目標としたN−連結グリカン構造のプロセシングを増強するように開発された。さらに、新規のヒトおよびマウスのエンドマンノシダーゼのクローニングおよび発現も、また開示される。本発明の方法は、治療用タンパク質の産生において有用な所望のグリコシル化構造を有する細胞株を操作するように、適合され得る。
【0021】
(発明の詳細な説明)
本明細書中、他に定義されない限り、本発明に関連して使用される科学技術用語は、当業者に一般的に理解される意味を有する。さらに、文脈によって他に必要とされない限り、単数形の用語は、複数形を含み、複数形の用語は、単数形を含む。本発明の方法および技術は概して、当該分野で周知の従来法に従って行なわれる。概して、本明細書中に記載される、生化学、酵素学、分子生物学、細胞生物学、微生物学、遺伝学、タンパク質化学および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションと関連して使用される術語、およびそれらの技術は、当該分野において周知であり、一般に使用されている。本発明の方法および技術は、概して、当該分野で周知の従来法、および他に示されない限り本明細書を通して引用され、考察される種々の一般的な参考文献およびより特定の参考文献に記載される従来法に従って実施される。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboraory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989);Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates(1992、および2002への補遺);HarlowおよびLane Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1990);Introduction to Glycobiology、Maureen E.Taylor、Kurt Drickamer、Oxford Univ.Press(2003);Worthington Enzyme Manual、Worthington Biochemical Corp.Freehold,NJ;Handbook of Biochemistry:A節 Proteins I巻 1976 CRC Press;Handbook of Biochemistry:A節 Proteins II巻 1976 CRC Press;Essentials of Glycobiology、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1999)を参照のこと。本明細書中で記される生化学および分子生物学と関連して使用される術語、ならびにそれらの研究室手順および技術は、当該分野において周知であり、一般に使用されている。
【0022】
本明細書中に言及される全ての出版物、特許および他の参考文献は、本明細書中に参考として援用される。
【0023】
以下の用語は、他に示されない限り、以下の意味を有すると理解される:
本明細書中で使用される場合、用語「N−グリカン」とは、N結合したオリゴ糖(例えば、アスパラギン−N−アセチルグルコサミン結合によってポリペプチドのアスパラギン残基に結合しているオリゴ糖)をいう。N−グリカンは、ManGlcNAc(「Man」とは、マンノースをいい;「Glc」とは、グルコースをいい;「NAc」とは、N−アセチルをいい;GlcNAcとは、N−アセチルグルコサミンをいう)の一般的な五糖のコアを有する。N−グリカンは、ManGlcNAc(「Man3」)コア構造に付加される末梢糖(peripheral sugar)(例えば、フコースおよびシアル酸)を含む枝(アンテナ)の数の点で異なる。N−グリカンは、それらの分枝した構成要素(例えば、高マンノース、複合体またはハイブリッド)に従って分類される。「高マンノース」型N−グリカンは、5個以上のマンノース残基を有する。「複合」型N−グリカンは、代表的に1,3マンノースアームに結合した少なくとも一つのGlcNAcおよび「トリマンノース」コアの1,6マンノースアームに結合した少なくとも一つのGlcNAcを有する。「トリマンノースコア」は、Man3構造を有する五糖コアである。複合Nグリカンはまた、必要に応じてシアル酸または誘導体(「NeuAc」、ここで、「Neu」とはノイラミン酸をいい、「Ac」とはアセチルをいう)で改変されたガラクトース(「Gal」)残基を有し得る。複合N−グリカンはまた、「二分」GlcNAcおよびコアフコース(「Fuc」)を含む鎖内置換を有し得る。「ハイブリッド」Nグリカンは、トリマンノースコアの1,3マンノースアームの末端に少なくとも1個のGlcNAc、およびトリマンノースコアの1,6マンノースアーム上に0個以上のマンノースを有する。
【0024】
本明細書中で使用される略語は、当該分野で共通の用法である(例えば、上記糖の略語を参照のこと)。他の一般的な略語としては、N−グリコシダーゼF(EC3.2.2.18)をいう「PNGase」;3個のN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ酵素の内の1つをいう「GlcNAc Tr(I〜III)」;N−アセチルノイラミニン酸をいう「NANA」が挙げられる。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「分泌経路」とは、脂質結合オリゴ糖前駆体およびN−グリカン基質が連続して曝露され、その後細胞質から小胞体(ER)およびゴルジ装置の区画への初期ポリペプチド鎖の分子の流れが続く、種々のグリコシル化酵素のアセンブリラインをいう。酵素は、この経路に沿って局在化しているとされる。酵素Yの前に脂質結合グリカンまたはN−グリカンに作用する酵素Xは、酵素Yの上流にあるといわれるか、または酵素Yの上流で作用するといわれる;同様に、酵素Yは、酵素Xの「下流」にあるか、または酵素Xの「下流」で作用する。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」とは、完全な抗体(二つの重鎖および二つの軽鎖からなる)またはそのフラグメントをいう。このようなフラグメントとしては、そのフラグメントが抗原に対する特異的結合能を残す限り、種々のプロテアーゼで消化されることにより産生されたフラグメント、化学的切断および/または化学的解離により産生されたフラグメント、ならびに組換えにより産生されたフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。Fab、Fab’、F(ab’)2および単鎖Fv(scFv)フラグメントは、これらのフラグメントの内である。配列は改変されているが、抗原に対する特異的な結合能が残っている抗体もまた、用語「抗体」の範囲内である。改変された抗体の例は、種間キメラ抗体およびヒト化抗体;抗体融合体;およびヘテロマー抗体複合体(例えば、ジアボディ(diabody)(二重特異性抗体)、単鎖ジアボディおよびイントラボディ(intrabody)(例えば、Marasco(編)Intracellular Antibodies:Research and Disease Applications、Springer−Verlag New York,Inc.(1998)(ISBN:3540641513)を参照のこと、その開示は、その全体が参考として本明細書中に援用される)である。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「変異」とは、(例えば、グリコシル化関連酵素の)遺伝子産物の核酸配列またはアミノ酸配列におけるあらゆる変化をいう。
【0028】
用語「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」とは、少なくとも10塩基長のヌクレオチドのポリマー形態をいう。この用語は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNAまたは合成DNA)およびRNA分子(例えば、mRNAまたは合成RNA)ならびに非天然のヌクレオチドアナログ、非天然のヌクレオチド間結合またはその両方を含むDNAもしくはRNAのアナログを包含する。核酸は、任意の幾何学的形態であり得る。例えば、核酸は、一本鎖形態、二本鎖形態、三本鎖形態、四本鎖形態、部分的に二本鎖形態、分枝形態、ヘアピン状形態、環状形態または南京錠様の(padlocked)形態であり得る。この用語は、DNAの一本鎖形態および二本鎖形態を包含する。
【0029】
他に示されない限り、「配列番号Xを含む核酸」とは、少なくともその一部が(i)配列番号Xの配列または(ii)配列番号Xに相補的である配列のどちらかを有する核酸をいう。この二つの間の選択は、文脈により決定される。例えば、核酸がプローブとして使用される場合、その二つの間の選択は、プローブが所望の標的に相補的であるという必要性によって決定される。
【0030】
「単離された」、または「実質的に純粋な」核酸またはポリヌクレオチド(例えば、RNA、DNAまたは混合されたポリマー)は、その天然の宿主細胞中にネイティブのポリヌクレオチドとともに天然に存在する他の細胞構成要素(例えば、リボソーム、ポリメラーゼおよびそれが天然に関連するゲノム配列)から実質的に分離された核酸またはポリヌクレオチドである。この用語は、(1)その天然に存在する環境から取り除かれている、(2)その「単離されたポリヌクレオチド」が天然において見出されるポリヌクレオチドの全てまたは一部と結合していないか、(3)天然では結合していないポリヌクレオチドに作動可能に連結しているか、または(4)天然には存在しない、核酸またはポリヌクレオチドを包含する。用語「単離された」、または「実質的に純粋な」はまた、組換え体またはクローニングされたDNA単離体、化学的に合成されたポリヌクレオチドアナログまたは異種系により生物学的に合成されるポリヌクレオチドアナログに関して使用され得る。
【0031】
しかし、「単離された」は、そのように記載された核酸またはポリヌクレオチド自体が、そのネイティブの環境から物理的に取り除かれることを必ずしも必要としない。例えば、生物のゲノム中の内生の核酸配列は、異種配列(すなわち、この内生の核酸配列に天然には隣接しない配列)が内生核酸配列に隣接し、従って、この内生核酸配列の発現が変化する場合、本明細書中では「単離された」と判断される。例として、非ネイティブのプロモーター配列は、ヒト細胞のゲノムにおける遺伝子のネイティブなプロモーター配列に対して(例えば、相同組換えによって)置換され得、従ってこの遺伝子は、発現パターンが変化する。ここで、この遺伝子は、その遺伝子に天然に隣接する配列の少なくともいくつかから分離されるので、「単離された」になる。
【0032】
核酸が、ゲノム中の対応する核酸に対して天然には生じない任意の改変を含む場合、その核酸はまた、「単離された」とも考えられる。例えば、内生のコード配列は、人工的に、例えば、ヒトの介入によって導入された挿入、欠失または点変異を含む場合、「単離された」と考えられる。「単離された核酸」はまた、宿主細胞染色体の非相同な部位に組み込まれた核酸、エピソームとして存在する核酸構築物を包含する。さらに、「単離された核酸」は、他の細胞物質、組換え技術により作製された場合は、培養培地、または化学的に合成された場合は、化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないものであり得る。
【0033】
本明細書中で使用される場合、語句、参照核酸配列の「縮重改変体」は、参照核酸配列から翻訳されたアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を提供するための、標準的な遺伝子コードに従って翻訳され得る核酸配列を包含する。
【0034】
核酸配列の文脈における用語「パーセント配列同一性」または「同一である」とは、最大限対応させるために並べられた場合に同一である2個の配列中の残基をいう。配列同一性比較の長さは、少なくとも約9ヌクレオチド、通常少なくとも約20ヌクレオチド、より通常には少なくとも約24ヌクレオチド、代表的には少なくとも約28ヌクレオチド、より代表的には少なくとも約32ヌクレオチド、および好ましくは少なくとも約36ヌクレオチド以上の長さを上回り得る。ヌクレオチド配列同一性を測定するために使用され得る当該分野で公知の多数の異なるアルゴリズムが存在する。例えば、ポリヌクレオチド配列は、Wisconsin Package Version 10.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、WisconsinのプログラムであるFASTA,GapまたはBestfitを用いて比較され得る。FASTAは、クエリ配列とサーチ配列との間の最大重複の領域の配置および配列同一性パーセントを提供する(Pearson、1990(本明細書中で参考として援用される))。例えば、核酸配列間の配列同一性パーセントは、FASTAとそのデフォルトのパラメーター(スコアマトリクスに対して単語サイズ6およびNOPAM因子)またはGapとGCG Version 6.1に提供されるそのデフォルトのパラメーターを用いて決定され得る(これらは、本明細書中に参考として援用される)。
【0035】
用語「実質的な相同性」または「実質的な類似性」は、核酸またはそのフラグメントをいう場合、適切なヌクレオチド挿入または欠失を別の核酸(またはその相補的な鎖)と最適に並べる場合、任意の周知の配列同一性のアルゴリズム(例えば、上に議論したFASTA、BLASTまたはGap)により測定して、少なくとも約50%、より好ましくは60%のヌクレオチド塩基に、通常少なくとも約70%、より通常には少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、そしてより好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%または99%のヌクレオチド塩基に、ヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。
【0036】
あるいは、実質的な相同性または類似性は、核酸またはそのフラグメントが、別の核酸、別の核酸の鎖またはその相補的な鎖に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする場合に存在する。核酸ハイブリダイゼーション実験の文脈における「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」および「ストリンジェントな洗浄条件」は、多数の異なる物理的パラメーターに依存する。核酸ハイブリダイゼーションは、当業者によって容易に理解されるように、例えば、塩濃度、温度、溶媒、ハイブリダイズする種の塩基組成、相補的領域の長さおよびハイブリダイズする核酸間のヌクレオチド塩基ミスマッチの数のような条件に影響される。
ハイブリダイゼーションの特定のストリンジェンシーを達成するためにこれらのパラメーターをどのように変化させるかは、当業者には、既知である。
【0037】
一般に、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション」は、特定の条件セットの下で特異的DNAハイブリッドについての融点(T)よりも約25℃低い温度で実施される。「ストリンジェントな洗浄」は、特定の条件セット下で、特定のDNAハイブリッドについてのTよりも約5℃低い温度にて実施される。このTは、標的配列のうちの50%が、完全に一致したプローブに対してハイブリダイズする温度である。Sambrookら(上記)9.51頁(これは、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。本明細書中での目的のために、「高ストリンジェンシー条件」とは、溶液相ハイブリダイゼーションについて、6×SSC(20×SSCは、3.0M NaClおよび0.3Mクエン酸ナトリウムを含む)、1% SDS中での65℃にて8〜12時間の水性ハイブリダイゼーション(すなわち、ホルムアミドを含まない)と、その後の0.2×SSC、0.1% SDSにおける65℃にて20分間の2回の洗浄として定義される。65℃でのハイブリダイゼーションは、多数の要因(ハイブリダイズする配列の長さおよび同一性パーセントを含む)に依存して、種々の速度で生じることが、当業者によって認識される。
【0038】
本発明の核酸(ポリヌクレオチドとも呼ばれる)は、RNA、cDNA、ゲノムDNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方、ならびに上記の合成形態および混合ポリマーを包含し得る。これらは、当業者によって容易に認識されるように、化学的もしくは生化学的に改変され得るし、または非天然ヌクレオチド塩基もしくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含み得る。そのような改変としては、例えば、標識、メチル化、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つ以上をアナログで置換すること、ヌクレオチド改変(例えば、非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバメートなど)、荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど))、ペンダント(pendent)部分(例えば、ポリペプチド)、インターカレート剤(例えば、アクリジン、ソラレンなど)、キレート剤、アルキル化剤、および改変型結合(例えば、αアノマー核酸など)が挙げられる。また、水素結合および他の化学的相互作用を介して指定した配列に結合する能力においてポリヌクレオチドを模倣する合成分子も包含される。そのような分子は、当該分野で公知であり、そのような分子としては、例えば、その分子の骨格中のリン酸結合をペプチド結合で置換している分子が挙げられる。
【0039】
用語「変異(した)」とは、核酸配列に適用される場合には、核酸配列中のヌクレオチドが、参照核酸配列と比較して挿入、欠失、または変化され得ることを意味する。単一の変化が、座においてなされ得る(点変異)か、または複数のヌクレオチドが、単一の座において挿入、欠失、または変化され得る。さらに、1つ以上の変化が、核酸配列中の多数の座においてなされ得る。核酸配列は、当該分野で公知の任意の方法によって変異され得、そのような方法としては、変異誘発技術(例えば、「エラープローン(error−prone)PCR」(DNAポリメラーゼのコピー信頼度が低い条件下でPCRを実施するためのプロセスであり、その結果、そのPCR産物の全長に沿って、高率の点変異が得られる。例えば、Leung,D.W.ら、Technique,1,pp.11〜15(1989)ならびにCaldwell,R.C.およびJoyce G.F.,PCR Methods Applic.,2,pp.28〜33(1992)参照);ならびに「オリゴヌクレオチド特異的変異誘発」(目的とする任意のクローン化DNAセグメント中での部位特異的変異の生成を可能にするプロセス。例えば、Reidhaan−Olson,J.F.およびSauer,R.T.ら、Science,241,pp.53〜57(1988)参照))を参照のこと。
【0040】
用語「ベクター」とは、本明細書中で使用される場合、連結されている別の核酸を輸送可能である核酸分子を指すことが意図される。ベクターの型の1つは、「プラスミド」である。これは、さらなるDNAセグメントが連結され得る環状の二本鎖DNAループを指す。他のベクターとしては、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、および酵母人工染色体(YAC)が挙げられる。別の型のベクターは、ウイルスベクターであり、さらなるDNAセグメントが、そのウイルスゲノム中に連結され得る(以下により詳細に考察される)。特定のベクターは、それが導入される宿主細胞中で自己複製可能である(例えば、その宿主細胞中で機能する複製起点を有するベクター)。他のベクターは、宿主細胞中に導入された際にその宿主細胞のゲノム中に組み込まれ得、それにより、その宿主ゲノムとともに複製される。さらに、特定の好ましいベクターは、それが作動可能に連結されている遺伝子の発現を指令することが可能である。そのようなベクターは、本明細書中で「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ばれ得る。
【0041】
「作動可能に連結された」発現制御配列とは、その発現制御配列が、目的の遺伝子と連続していてその目的の遺伝子を制御する連結、ならびにその目的の遺伝子を制御するようにトランスまたは一定距離にて作用する発現制御配列を指す。
【0042】
用語「発現制御配列」とは、本明細書中で使用される場合、それが作動可能に連結されているコード配列の発現をもたらすために必要なポリヌクレオチド配列を指す。発現制御配列は、核酸配列の転写、転写後事象および翻訳を制御する配列である。発現制御配列としては、適切な転写開始配列、転写終結配列、プロモーター配列、およびエンハンサー配列;効率的RNAプロセシングシグナル(例えば、スプライシングシグナルおよびポリアデニル化シグナル);細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(例えば、リボソーム結合部位);タンパク質安定性を増強する配列;および望ましい場合には、タンパク質分泌を増強する配列;が挙げられる。そのような制御配列の性質は、宿主生物に依存して異なる。原核生物においては、そのような制御配列としては、一般的には、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列が挙げられる。用語「制御配列」は、最低限、発現のためにその存在が必須とされるすべての構成要素を包含することが意図され、この用語はまた、その存在が有利であるさらなる構成要素(例えば、リーダー配列、および融合パートナー配列)を含み得る。
【0043】
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)とは、本明細書中で使用される場合、組換えベクターが導入されている細胞を指すことが意図される。このような用語は、特定の対象細胞を指すのみならず、そのような細胞の子孫をも指すと意図されることが理解されるべきである。特定の改変が、変異または環境的影響のいずれかに起因して続く世代において生じ得るので、そのような子孫は、実際には、親細胞とは同一ではないかもしれないが、本明細書中で使用される用語「宿主細胞」の範囲内になお包含される。組換え宿主細胞は、単離された細胞もしくは培養中で増殖した細胞株であり得るか、または生存組織もしくは生物中に存在する細胞であり得る。
【0044】
用語「ペプチド」とは、本明細書中で使用される場合、短いポリペプチド(例えば、代表的には、約50アミノ酸長未満であり、より代表的には約30アミノ酸長未満である)を指す。この用語は、本明細書中で使用される場合、アナログ、ならびに構造的機能(従って、生物学的機能)を模倣する模倣物を包含する。
【0045】
用語「ポリペプチド」とは、天然に存在するタンパク質および天然に存在しないタンパク質の両方、ならびにそれらのフラグメント、変異体、誘導体、およびアナログを包含する。ポリペプチドは、モノマーであっても、ポリマーであってもよい。さらに、ポリペプチドは、多数の異なるドメインを含み得、それらのドメインの各々は、1つ以上の別個の活性を有する。
【0046】
用語「単離されたタンパク質」または「単離されたポリペプチド」とは、その起源もしくは誘導源によって、(1)その天然状態で付随する天然で関連している成分と関連していないか、(2)天然では見出されない純度で存在する場合であって、その純度は、他の細胞物質の存在に関して調節され得る(例えば、同じ種由来の他のタンパク質を含まない)か、(3)異なる種由来の細胞により発現されるか、または(4)天然で存在しない(例えば、それが、天然で見出されるポリペプチドのフラグメントであるか、あるいはそれが、天然で見出されないアミノ酸アナログもしくは誘導体または標準的ペプチド結合以外の結合を含む)、タンパク質またはポリペプチドである。従って、化学合成されるかまたは天然に由来する細胞とは異なる細胞系において合成されるポリペプチドは、その天然で関連する成分から「単離」される。ポリペプチドまたはタンパク質はまた、当該分野で周知のタンパク質精製技術を使用して、単離によって天然で関連する成分を実質的に含まないようにされ得る。そのように定義される場合、「単離された」とは、そのような記載されるタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、またはオリゴペプチドが、その天然環境から物理的に取り除かれていることを必ずしも必要とはしない。
【0047】
用語「ポリペプチドフラグメント」とは、本明細書中で使用される場合、全長ポリペプチドと比較してアミノ末端欠失および/またはカルボキシ末端欠失を有する、ポリペプチドを指す。好ましい実施形態において、そのポリペプチドフラグメントは、そのフラグメントのアミノ酸配列がその天然に存在する配列中の対応する位置と同一である、連続配列である。フラグメントは、代表的には、少なくとも5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、または10アミノ酸長であり、好ましくは、少なくとも12アミノ酸長、14アミノ酸長、16アミノ酸長、または18アミノ酸長であり、より好ましくは、少なくとも20アミノ酸長であり、より好ましくは、少なくとも25アミノ酸長、30アミノ酸長、35アミノ酸長、40アミノ酸長、または45アミノ酸長であり、なおより好ましくは、少なくとも約50アミノ酸長または60アミノ酸長であり、なおより好ましくは、少なくとも70アミノ酸長である。
【0048】
「改変型誘導体」とは、一次構造配列において実質的に相同なポリペプチドまたはそのフラグメントであって、例えば、インビボもしくはインビトロでの化学的改変および生化学的改変を含むか、またはネイティブポリペプチドにおいて見出されないアミノ酸を組み込んでいる、ポリペプチドまたはそのフラグメントを指す。そのような改変としては、当業者によって容易に認識されるような、例えば、アセチル化、カルボキシル化、ホスホリル化、グリコシル化、ユビキチン化、(例えば、放射性核種による)標識、ならびに種々の酵素的改変が挙げられる。ポリペプチドを標識するための種々の方法、およびそのような目的のために有用な置換もしくは標識の種々の方法は、当該分野で周知であり、その方法としては、放射性同位体(例えば、125I、32P、35S、およびH、標識アンチリガンド(例えば、抗体)に結合するリガンド、発蛍光団、化学発光薬剤、酵素、および標識リガンドにとって特異的な結合パートナー対のメンバーとして作用し得るアンチリガンドが挙げられる。標識の選択は、必要な感度、プライマーとの結合体化の容易さ、安定性要件、および利用可能な機器に依存する。ポリペプチドを標識するための方法は、当該分野で周知である。Ausubelら、1992(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0049】
用語「融合タンパク質」とは、異種アミノ酸配列に結合しているポリペプチドまたはフラグメントを含む、ポリペプチドを指す。融合タンパク質は、有用である。なぜなら、それは、2つ以上の異なるタンパク質由来の2つ以上の望ましい機能的エレメントを含むように構築され得るからである。融合タンパク質は、目的のポリペプチドに由来する少なくとも10個連続するアミノ酸を含み、より好ましくは少なくとも20アミノ酸もしくは30アミノ酸を含み、なおより好ましくは少なくとも40アミノ酸、50アミノ酸、もしくは60アミノ酸、なおより好ましくは少なくとも75アミノ酸、100アミノ酸、もしくは125アミノ酸を含む。融合タンパク質は、そのポリペプチドまたはそのフラグメントをコードする核酸配列を、異なるタンパク質またはペプチドをコードする核酸配列とインフレームの状態で構築すること、その後、その融合タンパク質を発現させることによって、組換え生成され得る。あるいは、融合タンパク質は、そのポリペプチドまたはそのフラグメントを、別のタンパク質に架橋させることによって、化学的に生成され得る。
【0050】
用語「非ペプチドアナログ」とは、参照ポリペプチドの特性と同様の特性を有する化合物を指す。非ペプチド化合物はまた、「ペプチド模倣物」または「ペプチドミメティック」とも呼ばれ得る。例えば、Jones(1992)Amino Acid and Peptide Synthesis,Oxford Univeristy Press;Jung(1997)Combinatorial Peptide and Nonpeptide Libraries:A Handbook John Wiley;Bodanszkyら(1993)Peptide Chemistry−A Practical Textbook,Springer Verlag「Synthetic Peptides:A Users Guide」G.A.Grant編、W.H.Freeman and Co.,1992;Evansら、J.Med.Chem.30:1229(1987);Fauchere,J.Adv.Drug Res.15:29(1986);VeberおよびFreidinger,TINS,p.392(1985);ならびに上記の各々において引用される参考文献(これらは、参考として本明細書中で援用される)を参照のこと。そのような化合物は、しばしば、コンピュータ化した分子モデリングの補助を得て開発される。本発明の有用なペプチドと構造的に類似するペプチド模倣物は、等価な効果を生じるために使用され得、従って、本発明の一部であるように想定される。
【0051】
「ポリペプチド変異体」または「ムテイン」とは、その配列が、ネイティブタンパク質もしくは野生型タンパク質のアミノ酸配列と比較して、1つ以上のアミノ酸の挿入、重複、欠失、再配置、または置換を含む、ポリペプチドを指す。ムテインは、1つ以上のアミノ酸の点置換(ある位置にある単一アミノ酸が別のアミノ酸へと変化されている)、1つ以上の挿入および/もしくは欠失(天然に存在するタンパク質の配列において1つ以上のアミノ酸がそれぞれ挿入または欠失している)、ならびに/あるいはアミノ末端もしくはカルボキシ末端のいずれかもしくは両方にあるアミノ酸配列の短縮を有し得る。ムテインは、天然に存在するタンパク質と比較して、同じであるが、好ましくは異なる生物学的活性を有し得る。
【0052】
ムテインは、その野生型対応物に対して、少なくとも70%の全体的配列相同性を有する。なおより好ましいのは、野生型タンパク質に対して80%、85%、または90%の全体的配列相同性を有するムテインである。なおより好ましい実施形態において、ムテインは、95%の配列同一性を示し、なおより好ましくは97%の全体的配列同一性を示し、なおより好ましくは、98%の全体的配列同一性を示し、なおより好ましくは、99%、99.5%、もしくは99.9%の全体的配列同一性を示す。配列相同性は、任意の一般的な配列分析アルゴリズム(例えば、GapまたはBestfit)によって測定され得る。
【0053】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を減少する置換、(2)酸化に対する感受性を減少する置換、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化する置換、(4)結合親和性または酵素活性を変化する置換、および(5)そのようなアナログの他の物理化学的特性または機能的特性を付与もしくは改変する置換である。
【0054】
本明細書中で使用される場合、20個の慣用的なアミノ酸およびこれらの誘導体は、慣用的用法に従う。Immunology−A Synthesis(第2版,E.S.GolubおよびD.R.Gren,編,Sinauer Associates,Sunderland,Mass.(1991))(これは、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。20個の慣用的なアミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)、非天然のアミノ酸(例えば、α−,α−二置換アミノ酸)、N−アルキルアミノ酸、および他の非慣用的なアミノ酸がまた、本発明のポリペプチドにとって適切な成分であり得る。非慣用的なアミノ酸の例としては、以下が挙げられる:4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン,s−N−メチルアルギニン、ならびに他の類似のアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)。本明細書中で使用されるポリペプチド表記法において、標準的用法および慣例に従い、左手方向はアミノ末端方向であり、右手方向はカルボキシ末端方向である。
【0055】
あるタンパク質をコードする核酸配列が、第二のタンパク質をコードする核酸配列に対し類似の配列を有する場合、このタンパク質は、第二のタンパク質に対し、「相同性(homology)」を有するか、または「相同(homologous)」である。あるいは、2つのタンパク質が、「類似の」アミノ酸配列を有する場合、このタンパク質は、第二のタンパク質に対して相同性を有する。(従って、用語「相同なタンパク質(homologous protein)」とは、上記2つのタンパク質が類似のアミノ酸配列を有することを意味すると規定される)。好ましい実施形態において、相同なタンパク質は、野生型タンパク質に対し60%の配列相同性を示すタンパク質であり、より好ましくは、70%の配列相同性を示すタンパク質である。さらにより好ましくは、野生型タンパク質に対し、80%、85%または90%の配列相同性を示す相同なタンパク質である。なおより好ましい実施形態において、相同なタンパク質は、95%、97%、98%または99%の配列同一性を示す。本明細書中で使用される場合、(特に、予測された構造類似性に関して)2つの領域の間の相同性は、機能における類似性を意味すると解釈される。
【0056】
「相同(homologous)」がタンパク質またはペプチドに関して使用される場合、同一ではない残基位置が、保存的アミノ酸置換によってしばしば異なることが認識される。「保存的アミノ酸置換」は、あるアミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換される置換である。概して、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化しない。2つ以上のアミノ酸配列が保存的な置換によって互いに異なる場合、配列同一性%または相同性の程度は、この置換の保存的な性質を補正するように上方修正され得る。この修正を行うための手段は、当業者に周知である(例えば、Pearsonら,1994(これは、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。
【0057】
以下の6つの群は、各々、互いに保存的な置換であるアミノ酸を含む:1)セリン(S)、スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アラニン(A)、バリン(V)、および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0058】
ポリペプチドについての配列相同性(これはまた、配列同一性%と呼ばれる)は、代表的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定される。例えば、Genetics Computer Group(GCG)の配列分析ソフトウェアパッケージ(University of Wisconsin Biotechnology Center,910 University Avenue,Madison,Wisconsin 53705)を参照のこと。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む、種々の置換、欠損および他の改変に割り当てられる相同性の測定を使用して類似の配列を一致させる。例えば、GCGは、密接に関連のあるポリペプチド(例えば、種々の生物種由来の相同性ポリペプチド)の間、または野生型タンパク質とこれらのムテインとの間の配列相同性もしくは配列同一性を決定するためにデフォルトパラメータで使用され得る、「ギャップ」および「ベストフィット」のようなプログラムを含む。例えば、GCGバージョン6.1を参照のこと。
【0059】
阻害性分子の配列と種々の生物由来の多くの配列を含むデータベースとを比較する場合、好ましいアルゴリズムは、コンピュータプログラムBLAST(Altschul,S.F.ら(1990)J.Mol.Biol.215:403−410;GishおよびStates(1993)Nature Genet.3:266−272;Madden,T.L.ら(1996)Meth.Enzymol.266:131−141;Altschul,S.F.ら(1997)Nucleic Acids Res.25:3389−3402;Zhang,J.およびMadden,T.L.(1997)Genome Res.7:649−656)であり、特に、blastpまたはtblastn(Altschulら,1997)である。BLASTp用の好ましいパラメータは、以下である:期待値:10(デフォルト);フィルター:seg(デフォルト);オープンギャップへのコスト:11(デフォルト);延長ギャップへのコスト:1(デフォルト);最大アラインメント:100(デフォルト);文字サイズ:11(デフォルト);記載の数:100(デフォルト);ペナルティーマトリックス:BLOWSUM62。
【0060】
相同性について比較されるポリペプチド配列の長さは、概して、少なくとも約16アミノ酸残基であり、一般的には少なくとも約20残基であり、より一般的には少なくとも約24残基であり、代表的には少なくとも約28残基であり、好ましくは、約35残基より長い。多数の種々の生物の由来の配列を含むデータベースを検索する場合、アミノ酸配列を比較することが好ましい。アミノ酸配列を使用したデータベース検索は、当該分野で公知のblastp以外のアルゴリズムによって測定され得る。例えば、ポリペプチド配列は、FASTA(GCGバージョン6.1におけるプログラム)を使用して比較され得る。FASTAは、クエリー(query)と検索配列との間の最高のオーバーラップの領域のアライメントおよび配列同一性%を提供する(Pearson,1990(本明細書中に参考として援用される))。例えば、アミノ酸配列間の配列同一性%は、GCGバージョン6.1(本明細書中で参考として援用される)に提供されるようなFASTAのデフォルトパラメータ(文字サイズ2およびPAM250スコアリングマトリックス)を用いたFASTAを使用して決定され得る。
【0061】
本明細書中で使用される場合、用語「ドメイン」とは、生体分子の公知機能または擬似機能に寄与する生体分子の構造を言う。ドメインは、領域またはこれらの位置と同一の広がりを持ち得る;ドメインはまた、生体分子の別の、非近接の領域を含み得る。タンパク質ドメインの例としては、Igドメイン、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書中に使用される場合、用語「分子」とは、任意の化合物(小分子、ペプチド、タンパク質、糖、ヌクレオチド、核酸、脂質などが挙げられるが、これらに限定されない)を意味し、このような化合物は、天然物または合成物であり得る。
【0063】
他に規定されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。例示的な方法および材料はまた、以下に記載されるが、本明細書中に記載されるものと類似または等価である方法および材料が、本発明の実施において使用され得、かつ当業者に明らかである。本明細書中に記載される全ての刊行物および他の参考文献は、その全体が参考として援用される。矛盾する場合、本明細書(定義を含む)が制御する。材料、方法、および実施例は、例示に過ぎず、限定されることは意図されない。
【0064】
本明細書およびその実施形態にわたって、単語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」または「含む(comprising)」のようなバリエーションは、記載される完全体または完全体の群を包含することをいうが、任意の他の完全体または完全体の群を排除することをいわないことが理解される。
【0065】
(ヒトエンドマンノシダーゼ遺伝子をコードする核酸配列)
ラットエンドマンノシダーゼがクローニングされている(Spiroら,J.Biol.Chem.272(46):29356−29363(1997))。ラットエンドマンノシダーゼは、現在までにこのファミリーのうちで唯一クローニングされたメンバーであり、このORF(特に、ラットエンドマンノシダーゼ触媒ドメイン)に対して有意な相同性を示す遺伝子およびESTが、データベースに存在する。ラットエンドマンノシダーゼタンパク質配列(Genbank gi:2642187)を使用してタンパク質BLAST検索を行うことによって、本発明者らは、ラットエンドマンノシダーゼ配列と有意な相同性の領域を有する、Genbankの2つの仮想ヒトタンパク質を同定した(実施例2;図3A〜3C)。1つのORFに、これらの2つの仮想タンパク質の5’領域および3’領域を組み合わせると、462個の推定アミノ酸配列(図4)および54kDaの予測分子量を生じた。この推定のヒトエンドマンノシダーゼ配列と公知のラット配列とのアライメントにより、これらのタンパク質のC末端は高度に保存されているが、N末端はより異なることが示された(図7)。保存領域(すなわち、モチーフ「DFQ(K/R)SDRIN」〜C末端)は、各エンドマンノシダーゼの触媒ドメイン、または少なくとも活性に不可欠な領域に対応するようである。
【0066】
上記の推定ヒトエンドマンノシダーゼ遺伝子配列に基づき、本発明者らは、プライマーを構築し、PCRによってヒト肝臓cDNAライブラリーからオープンリーディングフレーム(ORF)を増幅した(実施例2)。そのORFをコードする核酸配列は、その長さにわたって、ラットエンドマンノシダーゼORFをコードする全長核酸配列と、77.8%同一である(加重した残基重量表を用いたClustal法を使用して配列対の距離)。アミノ酸配列レベルで、ヒトおよびラットのエンドマンノシダーゼタンパク質は、全体で76.7%同一であると予測される。上記のより保存された領域(すなわち、モチーフ「DFQ(K/R)SDRIN」〜C末端)において、タンパク質は、全体で86.8%同一である。ラットタンパク質と異なり、予測されたヒトタンパク質は、N末端に非常に疎水性の領域(残基10〜26)を有し、これは、膜貫通領域であり得る(図4、囲み)。ヒトエンドマンノシダーゼ(ラットタンパク質と異なる)は、大部分の他の高等真核生物のマンノシダーゼであるようなII型膜タンパク質であると予測される。
【0067】
本発明者らは、ヒトエンドマンノシダーゼORFを、酵母組込みプラスミドを含む種々のベクターにサブクローニングして(実施例3)、下等真核宿主細胞(Pichia pastoris)のN−グリコシル化経路におけるその発現の効果を研究した。以下に記載されるように、宿主細胞のグリコシル化経路へヒトマンノシダーゼ酵素を操作することは、その宿主細胞およびその子孫で産生されるタンパク質のその後のグリコシル化プロフィールに影響を及ぼす。好ましくは、宿主細胞は、1つ以上の他の操作されたグリコシル化活性と組み合わせてヒトマンノシダーゼ酵素活性(例えば、触媒ドメインに由来する)を発現するように操作されて、ヒト様糖タンパク質が作製される。
【0068】
従って、本発明は、単離された核酸分子を提供し、この核酸分子としては、ヒトエンドマンノシダーゼをコードする全長核酸配列を含むか、またはその全長核酸配列からなる核酸分子が挙げられるが、これらに限定されない。ヒトエンドマンノシダーゼの核酸配列およびORFは、図4に配列番号1として示される。コードされるアミノ酸配列はまた、図4に配列番号2として示される。
【0069】
一実施形態において、本発明は、野生型ヒトエンドマンノシダーゼコード配列(配列番号1);これらのホモログ、改変体および誘導体;ならびに任意の上記のフラグメントを含むか、またはこれらからなる核酸配列を有する単離された核酸分子を提供する。一実施形態において、本発明は、野生型のヒトエンドマンノシダーゼコード配列(配列番号1)の縮重した改変体である配列を含むか、またはこの配列からなる核酸分子を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、野生型遺伝子と少なくとも65%の同一性を有する、ヒトエンドマンノシダーゼコード配列(配列番号1)の改変体である配列を含むか、またはこの配列からなる核酸分子を提供する。上記核酸配列は、好ましくは、ヒトエンドマンノシダーゼコード配列(配列番号1)と、少なくとも70%、75%または80%の同一性を有し得る(しかし、具体的には、全体で約78%同一なラットエンドマンノシダーゼ遺伝子を除く)。さらに、より好ましくは、上記核酸配列は、野生型ヒトエンドマンノシダーゼコード配列(配列番号1)と、85%、90%、95%、98%、99%、99.9%、またそれ以上高い同一性を有し得る。
【0070】
別の実施形態において、本発明の核酸分子は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、またはこのアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする。また、配列番号2と少なくとも65%同一であるポリペプチド配列をコードする核酸分子が提供される(しかし、具体的には、全体で約77%の同一性であるラットエンドマンノシダーゼポリペプチドを除く)。代表的に、本発明の核酸分子は、配列番号2と、少なくとも70%、75%または80%同一のポリペプチド配列をコードする。好ましくは、コードされるポリペプチドは、配列番号2と、少なくとも85%、90%または95%同一であり、この同一性は、さらにより好ましくは、98%、99%、99.9%またはそれより高くあり得る。
【0071】
本発明はまた、ストリンジェントな条件下で、上記の核酸分子とハイブリダイズする核酸分子を提供する。上に規定され、当該分野で周知であるように、ストリンジェントなハイブリダイゼーションは、特定の一連の条件下での特定のDNAハイブリッドについての熱融解点(T)以下の、約25℃で行われ、このTは、50%の標的配列が、完全に一致したプローブとハイブリダイズする温度である。ストリンジェントな洗浄は、特定の一連の条件下での特定のDNAハイブリッドについてのTよりも低い約5℃の温度で行われる。
【0072】
上記の核酸配列のいずれか一つのフラグメントを含む核酸分子もまた提供される。これらのフラグメントは好ましくは、少なくとも20個の連続したヌクレオチドを含む。より好ましくは、核酸配列のフラグメントは、少なくとも25個、30個、35個、40個、45個、または50個の連続したヌクレオチドを含む。さらにより好ましくは、核酸配列のフラグメントは、少なくとも60個、70個、80個、90個、100個またはそれ以上の連続したヌクレオチドを含む。本発明のさらなる実施形態において、核酸配列は、野生型の遺伝子フラグメントと少なくとも65%の同一性を有するフラグメントの改変体である。核酸配列は好ましくは、野生型の遺伝子フラグメントと少なくとも70%、75%または80%の同一性を有し得る。さらにより好ましくは、核酸配列は、野生型の遺伝子フラグメントと85%、90%、95%、98%、99%、99.9%またはそれ以上の同一性を有し得る。
【0073】
本発明の核酸配列フラグメントは、種々のシステムおよび方法における有用性を示す。例えば、これらのフラグメントは、種々のハイブリダイゼーション技術においてプローブとして用いられ得る。方法に応じて、標的核酸配列は、DNAまたはRNAのいずれかであり得る。この標的核酸配列は、ハイブリダイゼーションの前に(例えば、ゲル電気泳動によって)分画され得るか、またはハイブリダイゼーションが、インサイチュでサンプルにおいて実施され得る。当業者は、既知配列の核酸プローブが、染色体構造の(例えば、サザン・ブロッティングによる)決定および遺伝子発現の(例えば、ノーザン・ブロッティングによる)測定において有用性を見出すことを理解する。このような実験において、この配列フラグメントは好ましくは、検出可能に標識化され、その結果、標的配列に対するその特異的なハイブリダーゼーションが検出され、必要に応じて定量され得る。当業者は、本発明の核酸フラグメントが、本明細書中に詳細に記載されていない、広範な種々のブロッティング技術に用いられ得ることを理解する。
【0074】
本明細書中に開示される核酸配列フラグメントはまた、マイクロアレイに固定された場合、プローブとして有用であることを見出すこともまた理解されるべきである。支持基板上への核酸の沈着および固定によるマイクロアレイの作製方法は、当該分野において周知である。DNA Microarrays:A Practical Approach(Practical Approach Series)、Schena(編)、Oxford University Press(1999)(ISBN:0199637768);Nature Genet.21(1)(補遺):1−60(1999);Microarray Biochip:Tools and Technology、Schena(編)、Eaton Publishing Company/BioTechniques Books Division(2000)(ISBN:1881299376)に概説され、この開示は、その全体が参考として本明細書中に援用される。例えば、核酸配列フラグメント(例えば、本明細書中に開示される核酸配列フラグメント)を含むマイクロアレイを用いる遺伝子発現の分析は、細胞生物学および分子生物学の分野において十分に確立された配列フラグメントについての有用性である。マイクロアレイに固体された配列フラグメントの他の用途は、Gerholdら、Trends Biochem.Sci.24:168−173(1999)およびZweiger、Trends Biotechnol、17:429−436(1999);DNA Microarrays:A Practical Approach(Practical Approach Series)、Schena(編)、Oxford University Press(1999)(ISBN:0199637768);Nature Genet.21(1)(補遺):1−60(1999);Microarray Biochip:Tools and Technology、Schena(編)、Eaton Publishing Company/BioTechniques Books Division(2000)(ISBN:1881299376)に記載され、これらの各開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される。別の実施形態において、エンドマンノシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子が、提供される。当該分野において周知であるように、酵素活性は、種々の方法によって測定され得る。あるいは、この酵素活性は、クロマトグラフ技術(例えば、高性能液体クロマトグラフィーによる)を用いて追跡され得る(ChungおよびSloan、J.Chrormatogr 371:71−81(1986))。他の方法および技術はまた、当業者によって公知であるように、酵素活性の測定にも適切であり得る。
【0075】
別の実施形態において、本発明の核酸分子は、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。本発明の核酸配列は、野生型ラットエンドマンノシダーゼ遺伝子(Genbank AF023657)と少なくとも77%の同一性を有するポリペプチドをコードする。別の実施形態において、核酸配列は、野生型ラットマンノシダーゼ触媒ドメインと少なくとも87%の同一性を有する。さらにより好ましい実施形態において、核酸配列は、野生型ラットエンドマンノシダーゼ遺伝子と90%、95%、98%、99%、99.9%またはそれ以上の同一性を有し得る。
【0076】
本発明の核酸によってコードされるポリペプチド(特に、生物学的な(例えば、触媒など)活性および/または免疫学的な活性を有するペプチド)もまた、本発明によって提供される。
【0077】
(マウスエンドマンノシダーゼ遺伝子をコードする核酸配列)
マウスエンドマンノシダーゼ遺伝子は、マウスエンドマンノシダーゼ遺伝子とヒトエンドシダーゼ遺伝子との間の推定される相同な領域と相補的なプライマーを設計し、PCR増幅することによってクローン化され、マウスエンドマンノシダーゼをコードする全長cDNAを取り出すために用いられ得るプローブを作製する(実施例2)。マウスエンドマンノシダーゼのオープンリーディングフレーム(ORF)のヌクレオチドおよび予想されるアミノ酸配列は、図6およびそれぞれ配列番号3および配列番号4として示される。
【0078】
このマウスORFは、既知のラットエンドマンノシダーゼおよび本発明のヒト肝臓エンドマンノシダーゼと実質的に相同性を示す(図7)。詳細には、マウスエンドマンノシダーゼORFをコードする核酸配列は、ラットエンドマンノシダーゼORFおよびヒトエンドマンノシダーゼORFをコードしている全長核酸配列に対して、その長さにわたって、それぞれ86.0%および84.2%同一である(ウェイティッドレジデュウェイトテーブル(weighted residue wieight table)を用いるClustal法を用いた配列対の相違)。アミノ酸配列レベルでは、マウスエンドマンノシダーゼタンパク質およびラットエンドマンノシダーゼタンパク質は、82.3%同一であると予測され、マウスエンドマンノシダーゼタンパク質およびヒトエンドマンノシダーゼタンパク質は、全体として84.9%同一であると予測される。上記のより保存された領域(すなわち、モチーフ「DFQ(K/R)SDRIN」からC末端まで)において、このマウスおよびラットのタンパク質は、92.3%同一であり、そしてこのマウスおよびヒトのタンパク質は、全体として86.1%同一である。
【0079】
従って、本発明はさらに、マウスエンドマンノシダーゼをコードする単離された核酸分子およびその改変体を提供する。一つの実施形態において、本発明は、マウスエンドマンノシダーゼ(配列番号3)、相同体、改変体およびその誘導体をコードする遺伝子を含むかまたはこれらの遺伝子からなる核酸配列を有する単離された核酸分子を提供する。
【0080】
従って、本発明は、単離された核酸分子を提供する。この単離された核酸分子としては、マウスエンドマンノシダーゼをコードする全長核酸配列を含むか、またはこの全長核酸配列からなる核酸配列が挙げられるが、これらには限定されない。マウスエンドマンノシダーゼの核酸配列およびORFは、図6および配列番号3として示される。このコードされたアミノ酸配列もまた、図6および配列番号4に示される。
【0081】
一つの実施形態において、本発明は、野生型マウスエンドマンノシダーゼのコード配列(配列番号3);相同体、改変体およびその誘導体;ならびに上記のいずれかのフラグメントを含むか、またはこれらからなる核酸配列を有する単離された核酸分子を提供する。一つの実施形態において、本発明は、野生型マウスエンドマンノシダーゼのコード配列(配列番号3)の縮重改変体である配列を含むか、またはこの配列からなる核酸分子を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、野生型遺伝子と少なくとも65%の同一性を有するマウスエンドマンノシダーゼコード配列(配列番号3)の改変体である配列を含むか、またはこの配列からなる核酸分子を提供する。この核酸配列は好ましくは、野生型ヒトエンドマンノシダーゼコード配列(配列番号3)と少なくとも70%、75%、80%または85%の同一性を有し得る(しかし、詳細には、全体として約86%同一であるラットエンドマンノシダーゼ遺伝子を除く)。さらにより好ましくは、この核酸配列は、野生型マウスエンドマンノシダーゼコード配列(配列番号3)と90%、95%、98%、99%、99.9%またはそれ以上の同一性を有し得る。
【0082】
別の実施形態において、本発明の核酸分子は、配列番号4のアミノ酸配列を含むかまたはこのアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする。また、配列番号4と少なくとも65%同一であるポリペプチド配列をコードする核酸分子が提供される(しかし、詳細には全体として約82%同一であるラットエンドマンノシダーゼポリペプチドを除く)。代表的に、本発明の核酸分子は、配列番号4と少なくとも70%、75%、または80%同一であるポリペプチド配列をコードする。好ましくは、コードされたポリペプチドは、配列番号4と少なくとも85%、90%または95%同一であり、この同一性はさらにより好ましくは、98%、99%、99.9%またはさらにそれ以上であり得る。
【0083】
本発明はまた、ストリンジェントな条件下で上記の核酸分子に対してハイブリダイズする核酸分子を提供する。上に規定されるように、そして当該分野で周知であるように、ストリンジェントなハイブリダイゼーションは、特定の条件セットの下、特異的なDNAハイブリッドについての熱融点(T)よりも約25℃低い温度で実施される。このTは、標的配列の50%が、プローブと完全に適合するようにハイブリダイズする温度である。ストリンジェントな洗浄を、特定の条件セットの下、特異的なDNAハイブリッドについてのTよりも約5℃低い温度で実施される。
【0084】
また、上記核酸配列のいずれか一つのフラグメントを含む核酸分子も提供される。これらのフラグメントは好ましくは、少なくとも20個の連続したヌクレオチドを含む。より好ましく、」は核酸配列のフラグメントは、少なくとも25個、30個、35個、40個、45個または50個の連続したヌクレオチドを含む。さらにより好ましくは、核酸配列のフラグメントは、少なくとも60個、70個、80個、90個、100個またはそれ以上の連続するヌクレオチドを含む。本発明のさらなる実施形態において、核酸配列は、野生型遺伝子フラグメントと少なくとも65%の同一性を有するフラグメントの改変体である。核酸配列は好ましくは、野生型遺伝子フラグメントと少なくとも70%、75%、または80%の同一性を有する。さらにより好ましくは、この核酸配列は、野生型遺伝子フラグメントと85%、90%、95%、98%、99%、99.9%またはそれ以上の同一性を有し得る。
【0085】
別の実施形態において、本発明の核酸分子は、配列番号4のアミノ酸配列を含むかまたはこの配列からなるポリペプチドをコードする。また、配列番号4と少なくとも65%同一であるポリペプチド配列をコードする核酸分子が提供される(しかし、詳細には全体として約82%同一であるラットエンドマンノシダーゼポリペプチドは除く)。代表的に本発明の核酸分子は、配列番号4と少なくとも70%、75%または80%同一であるポリペプチド配列をコードする。好ましくは、コードされるポリペプチドは、配列番号4と少なくとも85%、90%または95%同一であり、この同一性はより好ましくは、98%、99%、99.9%またはそれ以上であり得る。
【0086】
好ましい実施形態において、本発明の核酸分子は、野生型ラットエンドマンノシダーゼ遺伝子(Genbank AF023657)と少なくとも83%の同一性を有するポリペプチドをコードする。別の実施形態において、アミノ酸配列をコードする核酸配列は、野生型ラットエンドマンノシダーゼ触媒ドメインと少なくとも93%の同一性を有する。さらにより好ましい実施形態において、この核酸配列は、野生型ラットエンドマンノシダーゼ遺伝子と94%、95%、98%、99.9%またはそれ以上の同一性を有し得る。
【0087】
本発明の核酸によってコードされるポリペプチド(特に生物学的な(例えば、触媒など)活性および/または免疫学的な活性を有するペプチド)もまた、本発明によって提供される。
【0088】
(コードされるエンドマンノシダーゼ産物の特徴付け)
ヒト肝臓エンドマンノシダーゼおよび推定マウスエンドマンノシダーゼは、グリコシド酵素の新たに生じた、現れたファミリーの第2および第3のメンバーである(第1のこのようなメンバーであるラットエンドマンノシダーゼ酵素と同じく)。ヒトORF、マウスORFおよびラットORFの配列比較(図7)は、「DFQ(K/R)SDRI」モチーフからこの配列のC末端までと高い相同性を示し、このことは、この領域が、このタンパク質の必須フラグメント、そして潜在的には触媒ドメインをコードすることうを示唆する。対照的に、このタンパク質のN末端における低い相同性は、進化的な分岐を示す。大多数のグリコシダーゼおよびグリコシルトランスフェラーゼの大部分のように、このマウスおよびヒトの酵素は、膜貫通ドメインを示す疎水性領域を有する。このようなドメインは、分泌経路におけるこの酵素の配向および局在化を容易にする。対照的に、ラットエンドマンノシダーゼは、位置2に膜貫通ドメインを有さないが、グリシン残基を有する(Spiro 1997、前出)。この最後から二番目のグリシン残基は、ミリストイル化される可能性を有し、次々に膜局在化のための機構を提供する(Boutin,Cell Signal 9:15−35(1997))。あるいは、ミリストイル化は、ゴルジ装置にラットエンドマンノシダーゼを局在化させる手段でなくてもよく(Zuber 2000,前出)−タンパク質−タンパク質の相互作用が、決定機構であり得る。
【0089】
ラットエンドマンノシダーゼのように、ヒトおよびマウスのアイソファームの両方は、この種類のタンパク質の活性に基づいてゴルジ装置に局在することが予測される。代表的に,N−グリカンからのグルコースの除去は、グルコシダーゼIおよびグルコシダーゼIIによってERに生じると考えられた。しかし、エンドマンノシダーゼの特徴付けならびにシス槽およびゴルジ装置の中間槽へのその局在化は、グルコースのトリミングが、グルコースの局在化に続いて生じさせることを示す(Rothら、Biochimie 85:287−294(2003))。
【0090】
エンドマンノシダーゼが果たす特異的な役割は、現在不明である。ラットエンドマンノシダーゼのアフィニティ精製はカルレチキュリン(calreticulin)との同時精製を示し、これはN−グリコシル化の品質制御におけるその役割を示唆する(Spiroら、J.Biol.Chem.271:11588−11594(1996))。あるいは、エンドマンノシダーゼは、迂回されるグルコシダーゼトリミングを有するグリコシル化構造を回収し、適切に成熟させる能力を有する細胞を提供し得る。従って、グリコシル化された高マンノース構造からグルコース−α1,3−マンノース二量体を除去することは、常在性のゴルジグリコシドおよびグリコシルトランスフェラーゼ酵素に対する基質を提示し、N−グリカンの成熟を可能にする。
【0091】
本発明者らは、ヒトエンドマンノシダーゼおよび類似のラットアイソフォームの組織分布を分析し(Spiro(1997))、これは、試験された組織において広範囲に及んだ(図8)(実施例6)。肝臓および腎臓は、高い発現レベルを示したが、この組織の残りにおけるパターンは、かなり異なっていた。興味深いことに、ヒトエンドマンノシダーゼとは対照的に、ラットのアイソフォームは、脳および肺の両方において、高い発現レベルを示す(Spiro(1997))。ラットおよびヒトにおけるこの酵素の両方のアイソフォームの広範な発現は、エンドマンノシダーゼが、N−グリカンのプロセシングにおいて、ハウスキーピングの役割を果たし得ることを示唆する。
【0092】
本発明のヒトエンドマンノシダーゼのP.pastorisにおける発現は、単離されたORFが活性を有することを確認する。興味深いことに、ラットのアイソフォームは、ヌクレオチドおよびタンパク質のレベルでは高度に相同であるが、ウェスタンブロットにおいて見られるヒトタンパク質よりも少なくとも5倍高いレベルで発現する(図9)。ラット酵素は、発現の間、または培養培地において、本質的により安定であることが可能である。
【0093】
両方の組換え発現させたエンドマンノシダーゼ酵素は、これらのC末端においてプロセシングされた。ヒト酵素の場合、C末端のプロセシングが、完全に現れた(おそらく低い発現レベルに起因する、59kDaのバンドから54kDaの形態への見かけ上全体的な変換に基づく)。対照的に、ラットアイソフォームの大部分は、54kDaの形態であったが、いくつかの59kDaのバンドが残った(実施例7)。同様に、ラットエンドマンノシダーゼをEscherichia coliにおいて発現させた場合、そのタンパク質は、経時的に、C末端においてタンパク質分解性にプロセシングされた(Spiro 1997,前出)。さらに、ラット肝臓からのラットアイソフォームのアフィニティークロマトグラフィーによる精製は、2つの形態(56kDaおよび60kDa)の存在を示した(Hiraizumiら、J.Biol.Chem.269:4697−4700(1994))。一緒に、これらのデータは、ヒトおよびラットのエンドマンノシダーゼタンパク質が、タンパク質分解性のプロセシングに感受性であることを示す。タンパク質分解後の2つの酵素の同様のサイズに基づいて、切断部位は、同じであるようである。細菌系、酵母系および哺乳動物系における切断部位が同じであるかどうかが、依然として決定されるべきである。エンドマンノシダーゼのさらなる特徴は、約pH6.2にて最適な活性を示し(実施例9)、そして、約37℃の最適温度を示す(実施例9)。
【0094】
ヒトエンドマンノシダーゼの単離および特徴づけ、ならびに、マウスホモログの同定は、ラットアイソフォームから構成される孤立性メンバーに由来するグリコシダーゼのこのファミリーを拡大する。このことは、次いで、本発明者らが、タンパク質の子のファミリーをさらに特徴付けることを可能にした。実際、このことは、本発明者らが、これらのタンパク質のC末端配列が高度に保存されている一方で、N末端構造においてはバリエーションが生じることを示すことを可能にした。エンドマンノシダーゼの以前に報告された系統発生調査は、このタンパク質が、進化の間、最近にだけ出現し、そして、脊索動物門(哺乳動物、鳥類、は虫類、両生類および骨性魚類を含む)のメンバーに限定され、唯一の例外は、これがまた、Molluscaにおいて同定されたことである(DairakuおよびSpiro,Glycobiology 7:579−586(1997))。従って、タンパク質のこのファミリーのより多様化したメンバーの単離が、エンドマンノシダーゼの構造の、そして、潜在的にはエンドマンノシダーゼの活性のさらなるバリエーションを示すことが期待される。
【0095】
(エンドマンノシダーゼ発現の有用性)
ヒトおよびマウスのエンドマンノシダーゼ酵素または触媒ドメイン(およびこのような活性をコードする本発明の核酸分子)は、各々、例えば、特定のグリコシル化構造を改変するため、特に、グルコシル化されたグリカン構造上の少なくとも1つのグルコース残基、および1つのマンノース残基を含む組成を加水分解するために、有用である(図1および図2)。1つの実施形態において、コードされる酵素は、グリコシル化されたグリカン前駆体の少なくとも1つのグルコース残基および1つのマンノース残基を含む、二糖、三糖、または四糖の組成の切断を触媒する(図1)。別の実施形態において、コードされる酵素はまた、多数のグリコシル化構造(Glc1−3Man9−5GlcNAcを含む)を改変する(図2)。本発明の1つ以上の核酸および/またはポリペプチドは、選択した宿主細胞内に導入され、その宿主細胞により産生される糖タンパク質を改変する。
【0096】
(インビボにおけるエンドマンノシダーゼの細胞標的化)
グルコシダーゼは、ERにおける高度のマンナングリカンに作用するが、いくつかのマンナンは、適切に修飾されることなくERを逃れ、従って、望ましくなくグリコシル化されたマンナンが、分泌経路を通って移動する。以前の研究は、より高等な真核生物において、グリコシル化マンノース構造の画分は、実際にERの品質制御を迂回し、そして、エンドマンノシダーゼが、その後のコンパートメントに存在し、この画分を回収することを示唆する。従って、本発明の特徴において、エンドマンノシダーゼは、ERを迂回した、グリコシル化マンノース構造を修飾する。好ましい実施形態において、本発明の核酸によりコードされるエンドマンノシダーゼ酵素は、ゴルジ、トランスゴルジ網、輸送小胞またはERに局在化する。この酵素は、酵母において、グルコシル化された高度のマンナングリカンのトリミングに関与する。例えば、ERのグルコシダーゼI酵素およびグルコシダーゼII酵素を迂回した、グリコシル化構造GlcManGlcNAcは、エンドマンノシダーゼにより修飾され、ここで、少なくとも1つのグルコース−マンノース残基が加水分解されて、ManGlcNAcを生じる。本発明のエンドマンノシダーゼ酵素は、ゴルジにおいて品質制御工程として機能し、グリコシル化された高度のマンナングリカンを回収し、少なくとも1つのグルコース残基および1つのマンノース残基を含む組成を除去する。
【0097】
(エンドマンノシダーゼ触媒ドメインをコードするコンビナトリアル核酸ライブラリー)
本発明の別の局面において、新規エンドマンノシダーゼタンパク質をコードする1つ以上のキメラ核酸分子は、例えば、細胞標的化シグナルペプチドをコードするDNAフラグメントと、エンドマンノシダーゼ酵素をコードするDNAフラグメントもしくはその触媒活性フラグメントとのインフレームライゲーションによって、エンドマンノシダーゼ酵素と細胞標的化シグナルペプチドとの間で融合タンパク質を形成することによって、構築される。好ましくは、1つ以上の融合タンパク質は、エンドマンノシダーゼのコンビナトリアルDNAライブラリーの背景において作製される。一般的には、WO 02/00879および米国出願番号10/371,877の公報(2003年2月20日出願)(この各々が、その全体において、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。エンドマンノシダーゼDNAライブラリーは、例えば、pRCD259のような組み込み型プラスミド(実施例5)を使用することによって、目的の宿主細胞において発現される、広範種々の融合構築物を含む。
【0098】
(ペプチド配列サブライブラリーの標的化)
別の有用なサブライブラリーは、ER、ゴルジ、トランスゴルジ網内の特定の位置へのタンパク質の局在化を生じる、標的化シグナルペプチドをコードする核酸配列を含む。これらの標的化ペプチドは、遺伝子操作される宿主生物から、そして、他の関連する生物、または無関係の生物から選択され得る。一般に、このような配列は、以下の3つのカテゴリーに分類される:(1)サイトゾルテイル(ct)、膜貫通ドメイン(tmd)およびステム領域(sr)の一部または全てをコードするN末端配列(一緒になってか、または個々に、ゴルジの内側(管腔)膜へとタンパク質を係留する);(2)HDELテトラペプチドまたはKDELテトラペプチドのような、C末端において一般に見出される想起シグナル;ならびに(3)ゴルジに局在することが公知の、種々のタンパク質(例えば、ヌクレオチド糖トランスポーター)に由来する膜架橋領域(membrane spanning region)。
【0099】
標的化ペプチドが種々のエレメント(サイトゾルテイル(ct)、膜貫通ドメイン(tmd)およびステム領域(sr))から構成される、第1の場合において、ライブラリーは、ct、tmdおよびステム領域の種々の部分が代表的なものとなるように設計される。従って、標的化ペプチド配列のサブライブラリーの好ましい実施形態は、ERまたはゴルジの膜結合タンパク質に由来するct、tmdおよび/またはsrの配列を含む。いくつかの場合、可変長のsr配列を含むサブライブラリーを提供することが望ましくあり得る。このことは、サイトゾル領域をコードするDNAの5’末端に結合するプライマーを使用し、ステム領域の種々の部分に結合する一連の対抗するプライマーを採用するPCRによって達成され得る。
【0100】
標的化ペプチド配列のなお他の有用な供給源としては、ERまたはゴルジへと逆方向に輸送される、タンパク質のC末端において代表的に見出される、ペプチドの想起シグナル(例えば、テトラペプチドHDELまたはKDEL)が挙げられる。標的化ペプチド配列のなお他の供給源としては、(a)II型膜タンパク質、(b)最適pHを有する酵素、(c)ゴルジに局在する膜架橋ヌクレオチド糖トランスポーター、および(d)表1において参照される配列、が挙げられる。
【0101】
(表1)
【0102】
【表1−1】

【0103】
【表1−2】

(エンドマンノシダーゼ融合構築物)
プラスミドに挿入される本発明のコンビナトリアルDNAライブラリーに由来するエンドマンノシダーゼ融合構築物の代表例は、プライマー(配列番号5および配列番号6)から構築される短縮型Saccharomyces MNN11(m)標的化ペプチド(SwissProt P46985からのMNN11のヌクレオチド1〜303)を含み、ラットのエンド−α1,2−マンノシダーゼの48N末端アミノ酸欠失(Genbank AF 023657)にインフレームで連結された、pSH280である。従って、本明細書中で使用される命名法は、グリコシル化酵素の標的化ペプチド/触媒ドメイン領域を、Saccharomyces MNN11(m)/ラットエンドマンノシダーゼΔ48と呼ぶ。コードされる融合タンパク質は、そのエンドマンノシダーゼ触媒ドメイン活性を保持しつつ、MNN11標的化ペプチド配列によってゴルジに局在し、より下等な真核生物においてManGlcNAcのようなグリコシル化されていないN−グリカンを生成し得る。pSH280で形質転換されたP.pastoris RDP25の株(och1 alg3)において発現されるレポーター糖タンパク質K3に由来するグリカンプロフィールは、とりわけ、ManGlcNAcの質量に対応する1099m/z[c]、およびヘキソース6の質量に対応する1424m/z[a]にピークを示す(図10B;実施例11および実施例12を参照のこと)。YSH97と命名されたこの新しいP.pastoris株は、グリコシル化されたヘキソース6の構造がレポーター糖タンパク質から除去される程度によって証明される、約95%より高いエンドマンノシダーゼ活性を示す。
【0104】
宿主細胞(例えば、P.pastoris RDP25)において発現されるヘキソース6[a]の構造は、GlcManGlcNAcおよびManGlcNAcならびにその異性体を含む、グリカンの混合物を含む(図10A)。本発明のエンドマンノシダーゼを宿主細胞において導入および発現させることによって、少なくとも1つのグルコース残基およびマンノース残基を含む組成が、ヘキソース6構造から除去される(図10B)。グリコシル化された構造GlcManGlcNAcは、容易にManGlcNAcに変換され、次いで、その後、α1,2−マンノシダーゼのインビトロ消化によりManGlcNAcに変換される。グリコシル化マンナンを含むヘキソース6種は、α1,2−マンノシダーゼにより切断されない。α1,2−マンノシダーゼ消化後に示される構造ManGlcNAc[b]に対応する優性ピークは、ManGlcNAcを生成する加水分解のために、ManGlcNAcに末端Manα1,2を露出するGlcManGlcNAcからの、グルコース−マンノース二量体の見かけ上の除去を確認する。
【0105】
ヘキソース6の他の種であるManGlcNAcは、本発明のエンドマンノシダーゼにより容易には影響を受けず、従って、グリコシル化されていない構造として意図される。ヘキソース6のこの種であるManGlcNAcが、Manα1,2付加を含み、このことは、その後のα1,2−マンノシダーゼのインビトロ消化が、ManGlcNAcを生成する(図10C)ことによって証明されることを、当業者は理解する。
【0106】
プラスミドに挿入される、本発明のコンビナトリアルDNAライブラリーに由来するエンドマンノシダーゼ融合構築物の別の例は、プライマー(配列番号7および配列番号8)から構築される短縮型Saccharomyces VAN1(s)標的化ペプチド(SwissProt P23642からのVAN1のヌクレオチド1〜279)であり、ラットのエンド−α1,2−マンノシダーゼの48N末端アミノ酸欠失(Genbank AF 023657)にインフレームで連結された、pSH279である。従って、本明細書中で使用される命名法は、グリコシル化酵素の標的化ペプチド/触媒ドメイン領域を、Saccharomyces VAN1(s)/ラットエンドマンノシダーゼΔ48と呼ぶ。コードされる融合タンパク質は、そのエンドマンノシダーゼ触媒ドメイン活性を保持しつつ、VAN1標的化ペプチド配列によってゴルジに局在し、P.pastoris(RDP25)においてManGlcNAcを有するN−グリカンを生成し得る。pSH279で形質転換されたP.pastoris RDP25の株(och1 alg3)において発現されるレポーター糖タンパク質K3に由来するグリカンプロフィールは、とりわけ、ManGlcNAcの質量に対応する1116m/z[c]、およびヘキソース6の質量に対応する1441m/z[a]にピークを示す(図11;実施例11および実施例12を参照のこと)。図11Bは、エンドマンノシダーゼの部分的な活性のみを示す残存のヘキソース6[a]のピークを示す。YSH96と命名されたこの株は、グリコシル化されたヘキソース6の構造がレポーター糖タンパク質から除去される程度によって証明される、約40%より高いエンドマンノシダーゼ活性を示す。
【0107】
宿主細胞(例えば、P.pastoris RDP25)において発現されるヘキソース6[a]の構造は、GlcManGlcNAcおよびManGlcNAcならびにその異性体を含むグリカンの混合物を含む(図11A)。宿主細胞における本発明のエンドマンノシダーゼの導入および発現によって、少なくとも1つのグルコース残基およびマンノース残基を含む組成物は、ヘキソース6構造から除去される(図11B)。インビトロ消化において、このグルコシル化構造GlcManGlcNAcは、ManGlcNAcに容易に変換され、これは次いで、α1,2−マンノシダーゼによりManGlcNAcに続いて変換される。グルコシル化マンナンを含むヘキソース6種は、α1,2−マンノシダーゼによって切断されない。α1,2−マンノシダーゼ消化後に示される構造ManGlcNAc[b](図11C)に対応する顕著なピークは、ManGlcNAcを生成する加水分解について、ManGlcNAc上の末端Manα1,2を露出するGlcManGlcNAcからのグルコース−マンノースダイマーの明らかな除去を確認する。
【0108】
ヘキソース6の他の種:ManGlcNAcは、本発明のエンドマンノシダーゼによって容易に影響を受けず、従って、非グルコシル化構造と考察される。当業者は、このヘキソース6:ManGlcNAcの種は、Manα1,2付加物を含むと理解する。これは、ManGlcNAcを産生する、その後のα1,2−マンノシダーゼインビトロ消化によって証明される(図11C)。
【0109】
さらに、本発明のコンビナトリアルDNAライブラリーに由来する明らかな触媒活性を示さないプラスミドに挿入される、エンドマンノシダーゼ融合構築物の一例は、pSH278プライマー(配列番号9および配列番号10)から構築された短縮型Saccharomyces GLSl(s)ターゲッティングペプチド(SwissProt P53008由来のGLSlの1〜102ヌクレオチド))(ラットエンド−α1,2−マンノシダーゼ(Genbank AF 023657)の48N−末端アミノ酸欠失にインフレームで連結される)である。従って、本明細書中で使用される名称は、Saccharomyces GLSl(s)/ラットエンドマンノシダーゼΔ48としてのグリコシル化酵素のターゲッティングペプチド/触媒ドメイン領域をいう。pSH278で形質転換されたP pastoris RDP−25(ochl alg3)の株で発現されるレポーター糖タンパク質K3由来のグリカンプロファイルは、ヘキソース6[a]の質量に対応する、とりわけ、1439m/z(K付加物)[c]にあるピーク、および1422 m/z(Na付加物)にあるピークを示す(図12;実施例11および12)。この株(YSH95と命名される)は、グルコシル化ヘキソース6構造がレポーター糖タンパク質から除去された程度によって明らかなように、約10%未満のエンドマンノシダーゼ活性を示す。
【0110】
図10および図11に示される前の2つのグリカンプロファイルと異なり、P.pastoris RDP25で発現されるエンドマンノシダーゼ構築物pSH278は、比較的低いエンドマンノシダーゼ活性を示す(図12)。しかし、α1,2マンノシダーゼでの続いての消化は、ManGlcNAc [b]の質量に対応するピークを示す。ManGlcNAcを含むヘキソース6種は、α1,2マンノシダーゼの導入によってManGlcNAcに変換されたが、他方、GlcManGlcNAcを含む他のヘキソース6種は、なお存在し、これは、実質的に、さらにグリコシル化されると、当業者は理解する。
【0111】
本発明に従うこれらのこのようなエンドマンノシダーゼ融合構築物および他のこのようなエンドマンノシダーゼ融合構築物のコンビナトリアルDNAライブラリーを作製することによって、当業者は、最適細胞内エンドマンノシダーゼ切り出し活性を有するこれらの構築物と比較的低い活性を有するかまたは活性を有さない構築物とを区別し得、そして比較的低い活性を有するかまたは活性を有さない構築物から最適細胞内エンドマンノシダーゼ切り出し活性を有するこれらの構築物を選択し得る。本発明のコンビナトリアルDNAライブラリーを使用する方法は有用である。なぜなら、選り抜きのいくつかのエンドマンノシダーゼ融合構築物だけが、インビボで特に望ましいN−グリカンを産生し得るからである。さらに、エンドマンノシダーゼ切り出し活性は、目的とする特定のタンパク質に特異的であり得る。従って、ターゲッティングペプチド/マンノシダーゼ触媒ドメイン融合構築物の全てが、目的の糖タンパク質上で適切なグリコシル化を良好に引き起こすように同等に機能し得るわけではないことがさらに理解されるべきである。従って、目的のタンパク質は、コンビナトリアルDNAライブラリーで形質転換された宿主細胞に導入され、この目的のタンパク質に最適なマンノシダーゼ活性を発現する1つ以上の融合構築物を同定し得る。当業者は、本明細書中で記載されるコンビナトリアルDNAライブラリーアプローチを使用して、最適な融合構築物を産生または選択し得る。
【0112】
さらに、局在化活性エンドマンノシダーゼ触媒ドメインを示す他のこのような融合構築物は、WO 02/00879に例示された技術および本明細書中で記載される技術のような技術を使用して作製され得ることが明らかである。当業者にとって、本発明のコンビナトリアルDNAライブラリーを作製および使用して、特定の宿主細胞に導入された特定の発現ベクター中の融合構築物のライブラリー由来の非グルコシル化N−グリカン(例えば、ManGlcNAc)産生を最適化することは、慣用実験法にすぎない。
【0113】
(エンドマンノシダーゼをコードする遺伝子の組換え発現)
本発明の別の特徴は、エンドマンノシダーゼをコードする核酸配列の組換え発現である。この核酸配列は、適切な発現ベクター中の発現コントロール配列に作動可能に連結され、そして適切な宿主細胞において形質転換される(実施例3)。当該分野で容易に利用可能な広範な種々の適切なベクターは、種々の宿主細胞において本発明の融合構築物を発現するために使用される。ベクターpSH278、ベクターpSH279およびベクターpSH280(実施例4)は、下等真核生物Pichia pastorisにおけるエンドマンノシダーゼ活性の発現に適切な、本明細書中で記載される選り抜きのいくつかの例である。選択された宿主細胞におけるエンドマンノシダーゼ活性の発現に適切な広範な種々のベクターは、本発明内に包含されることが理解されるべきである。
【0114】
本発明の1つの局面において、グルコシル化高マンノース構造を産生する下等真核生物宿主細胞は、本発明のエンドマンノシダーゼの導入および発現によって改変される。例えば、ヘキソース6を産生する宿主細胞P.pastoris RDP25(ochl alg3)は、本発明のエンドマンノシダーゼの導入および発現によって改変される。本発明の宿主細胞は、GlcManGlcNAcをManGlcNAcに変換する修飾されたグリカンを産生する。従って、1つの実施形態において、本発明のエンドマンノシダーゼを発現する下等真核生物宿主細胞は、少なくとも1つのグルコース残基およびマンノース残基を含む分子の除去を触媒する。
【0115】
本発明のエンドマンノシダーゼをコードする組換え核酸分子の活性が、本明細書中で記載される。変動される発現レベルは、グルコシル化グリカンGlcManGlcNAcの脱グルコシル化グリカンManGlcNAcへの変換によって定量される。1つの実施形態において、GlcManGlcNAcのManGlcNAcへの変換は、部分的である(図10、図11)。
【0116】
別の実施形態において、GlcManGlcNAcのManGlcNAcへの変換は、全体的である。好ましい実施形態において、GlcManGlcNAcの少なくとも30%が、ManGlcNAcに変換される。より好ましい実施形態において、GlcManGlcNAcの少なくとも60%が、ManGlcNAcに変換される。なおより好ましい実施形態において、GlcManGlcNAcの少なくとも90%が、ManGlcNAcに変換される。さらに、グルコースを含む他のグリカンが、本発明のエンドマンノシダーゼによって除去されることが予測される。例えば、本発明のエンドマンノシダーゼは、グリカンGlcl〜3Man9〜5GlcNAcをMan8〜4GlcNAcに切断する活性をさらに含む。
【0117】
さらに、触媒的に活性なエンドマンノシダーゼをコードする遺伝子は、目的のタンパク質上でのグリコシル化を改変する下等真核生物宿主細胞(例えば、Pichia pastoris)において発現される。1つの実施形態において、本発明のエンドマンノシダーゼは、目的のタンパク質上でグルコシル化N結合オリゴ糖を修飾する。その結果生じるタンパク質は、よりヒト様の糖タンパク質を産生する。本発明のエンドマンノシダーゼによって改変される下等真核生物宿主細胞は、目的のタンパク質上でグルコシル化糖形態からMan8〜4GlcNAcを産生する(図2)。例えば、本発明のエンドマンノシダーゼによって改変されたP.pastorisの株は、目的のタンパク質上でManGlcNAc糖形態を産生し、そしてグルコシル化ヘキソース6糖形態の実体を減少させる(図10B)。ManGlcNAc糖形態の続いてのα1,2−マンノシダーゼ消化は、トリマンノシルコアをもたらす(図10C)。従って、本発明は、目的の治療用タンパク質上でグルコシル化糖形態を所望の糖形態に変換する下等真核生物宿主細胞における触媒的に活性なエンドマンノシダーゼを提供する。
【0118】
治療用タンパク質は、代表的には、注射によって、経口的に、肺に、または他の手段によって投与される。本発明に従って産生され得る適切な標的糖タンパク質の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:エリスロポイエチン、サイトカイン(例えば、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンω)、および顆粒球CSF、凝固因子(例えば、第VIII因子、第IX因子)、およびヒトタンパク質C、可溶性IgEレセプターα鎖、IgG、IgGフラグメント、IgM、インターロイキン、ウロキナーゼ、カイメース(chymase)、ならびに尿素トリプシンインヒビター、IGF結合タンパク質、上皮増殖因子、成長ホルモン放出因子、アネキシンV融合タンパク質、アンギオスタチン、血管内皮増殖因子2、骨髄前駆体抑制因子1、オステオプロテゲリン、α−1−抗トリプシンならびにα−フェトプロテイン、AAT、rhTBP−1(onercept、TNF結合タンパク質1としても公知)、TACI−Ig (膜貫通アクチベーターおよびカルシウムモジュレーターおよびサイクロフィリンリガンドインテラクター)、FSH(濾胞刺激ホルモン)、GM−CSF、FCありまたはなしのGLP−1(グルカゴン様タンパク質1)IL−1レセプターアゴニスト、sTNFr(enbrel、可溶性TNFレセプターFc融合物としても公知)ATIII、rhトロンビン、グルコセレブロシダーゼならびにCTLA4−Ig(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4−Ig)。
【0119】
(プロモーター)
本発明の別の局面において、ラット肝臓エンドマンノシダーゼ(Genbank gi:2642186)、ヒトエンドマンノシダーゼ(Genbank gi:20547442)またはマウスマンノシダーゼ(Genbank AK030141)は、構成プロモーターの制御下で酵母組込みプラスミドにクローン化され、細胞に対する副作用を制限すると同時にエンドマンノシダーゼ活性の量を最適化する。これは、プロモーター強度を改変(alter)する工程を包含し、そして必要に応じて、これらのタンパク質の発現をより良好に制御するために誘発性プロモーターを使用する工程を包含する。
【0120】
野生型エンドマンノシダーゼを発現する工程に加えて、エンドマンノシダーゼの改変された形態が、細胞の局在化および活性を高めるために発現される。エンドマンノシダーゼの触媒的ドメインの変動する長さは、WO 02/00879に記載されるような内因性酵素ターゲッティング領域に融合される。エンドマンノシダーゼ遺伝子をコードする触媒的に活性なフラグメントは、構成プロモーターの制御下で、酵母組込みプラスミドにクローン化される。これは、プロモーター強度を改変(alter)する工程を包含し、そしてこれらのタンパク質の発現をより良好に制御するために誘発性プロモーターを使用する工程を包含し得る。さらに、酵素活性を高めるために、上記タンパク質は、新たな特性を生じるように変異される。当業者は、本明細書中で開示される手順の慣用改変法は、目的の非グルコシル化糖タンパク質の産生において向上された結果を提供し得ると理解する。
【0121】
(コドン最適化)
本発明の核酸は、一次アミノ酸配列の1つ以上の変化(例えば、保存的アミノ酸の置換、付加、欠失またはこれらの組み合わせ)をもたらすのを最適化されたコドンであり得ることもまた、検討される。
【0122】
(分泌エンドマンノシダーゼ)
本発明の別の特徴において、可溶性分泌エンドマンノシダーゼは、宿主細胞において発現される。好ましい実施形態において、可溶性マウスエンドマンノシダーゼまたは可溶性ヒトエンドマンノシダーゼは、組み換え的に発現される。可溶性エンドマンノシダーゼは、ゴルジ装置に正常に局在化するかまたは細胞膜に結合する、細胞局在化シグナルを欠損する。可溶性組換え酵素(これは、膜貫通ドメインを欠損する)を産生するエンドマンノシダーゼの触媒的ドメインの発現は、インフレームで、第2ドメインに融合し得るか、またはその精製を促進するタグに融合し得る。P.pastoris由来の本発明の分泌ラットエンドマンノシダーゼおよびヒトエンドマンノシダーゼは、図9に示される(実施例8)。
【0123】
発現されたエンドマンノシダーゼは、特に、グルコシル化グリカン構造のインビトロ改変に有用である。より好ましい実施形態において、上記組換えエンドマンノシダーゼは、大規模糖タンパク質産生において非グルコシル化グリカン中間体を産生するために使用される。図13は、グリカン中間体GlcManGlcNAc上のグルコース−α1,3−マンノースダイマーを切断し、これをManGlcNAcに変換した、ラットエンドマンノシダーゼ(図13B)およびヒトエンドマンノシダーゼ(図13C)の活性を示す(図14を参照のこと)。従って、本発明のエンドマンノシダーゼは、グルコシル化グリカンをインビトロで改変(modify)するために使用される。さらに、このような可溶性エンドマンノシダーゼは、当該分野で周知の方法に従って精製される。
【0124】
分泌エンドマンノシダーゼは、オリゴ糖上の少なくとも1つのグルコース残基および1つのマンノース残基を加水分解することによって、グルコシル化構造(例えば、GlcManGlcNAc)(図14(i))を脱グルコシル化構造(例えば、ManGlcNAc)(図14(ii))に変換する。例えば、グルコース−α1,3−マンノースダイマーは、図14に示されるように、エンドマンノシダーゼによってグルコシル化オリゴ糖から切断される。続いてのα1,2−マンノシダーゼ消化(図14(iii))は、トリマンノシルコア上にさらなるManα1,2を示す構造:ManGlcNAcをもたらす。
【0125】
(宿主細胞)
多くの宿主細胞は、本発明のエンドマンノシダーゼを発現するために使用され得る。例えば、上記エンドマンノシダーゼは、哺乳動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、真菌細胞、酵母細胞、藻細胞または細菌細胞において発現され得る。目的のタンパク質上でのグルコシル化の改変(modification)については、好ましい宿主細胞は、Glcl〜3Man9〜5GlcNAc構造を産生する下等真核生物である。さらに、グルコシル化グリカンの混合物を産生する他の宿主細胞が、選択される。例えば、非グルコシル化構造(例えば、ManGlcNAcおよびその異性体)に加えてグルコシル化構造(例えば、GlcManGlcNAc)を産生する宿主細胞(例えば、P.pastoris RDP25)が、選択される。
【0126】
好ましくは、下等真核生物宿主細胞は、以下からなる群より選択される:Pichia pastoris、Pichia firalandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranaefaciens、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、Pichia sp.、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces sp.、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces sp.、Kluyveromyces lactis、Candida albicans、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、Fusarium sp.、Fusarium gramineum、Fusarium venenatumおよびNeurospora crassa。
【0127】
他の宿主としては、培養中の、周知の真核生物宿主および原核生物宿主(例えば、E.coli、Pseudomonas、Bacillus、Streptomycesの株)、ならびに動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO;例えば、αグルコシダーゼI欠損株Lec−23)、R1.1細胞、B−W細胞およびL−M細胞、アフリカミドリザル腎細胞(例えば、COS 1、COS−7、BSC1、BSC40、およびBMT10))、昆虫細胞(例えば、Sf9)、およびヒト細胞(例えば、HepG2))ならびに植物細胞が挙げられ得る。
【0128】
(グルコシル化N−グリカンを改変するための方法)
本発明の別の局面において、本発明のエンドマンノシダーゼを導入および発現することによってグルコシル化グリカンを改変するための方法が、本明細書中で提供される。図1は、強調されるように、モノグルコシル化グリカン、ジグルコシル化グリカン、およびトリグルコシル化グリカンのエンドマンノシダーゼ切断(第2のグルコース残基および第3のグルコース残基によって表される)を示す。従って、本発明のエンドマンノシダーゼ酵素は、脱グルコシル化の効率を高めるために宿主(例えば、酵母)のゴルジに導入され、従って、さらなる糖の付加の前にマンナン構造の続いての切り出しを高め、よりヒト様のN結合型グルコシル化構造を産生する(図2)。
【0129】
本発明のさらなる局面において、エンドマンノシダーゼのゴルジへの導入(例えば、酵母)は、ゴルジの中に入り、従って、もはやERグルコシダーゼI酵素およびERグルコシダーゼII酵素が接近可能でないグルコシル化糖タンパク質を回収する方法を提供する。本発明のエンドマンノシダーゼは、図2に示されるように4つのマンノース残基によって強調されるこのようなグルコシル化構造を、プロセシングし得る(例えば、Glc1〜3Man9〜5GlcNAcをMan8〜4GlcNAcに)。従って、本発明は、回収されたグルコシル化オリゴ糖が脱グルコシル化される品質管理機構を提供する。
【0130】
さらに、エンドマンノシダーゼの使用は、グリカン切り出しの初期工程に必要とされるグルコシダーゼI酵素およびグルコシダーゼII酵素についての必要性を取り除くことが企図される。1つの実施形態において、本発明の宿主細胞は、グルコシダーゼI活性および/またはグルコシダーゼII活性が欠乏し得る。グルコシダーゼI活性またはグルコシダーゼII活性の非存在下では、本発明の宿主細胞は、エンドマンノシダーゼによるグルコース触媒活性をさらに示し得る。従って、エンドマンノシダーゼをコードする核酸を宿主(例えば、酵母)に導入し、発現の際に、ゴルジ中に入ったグルコシル化糖タンパク質(これは、もはやERグルコシダーゼI酵素およびERグルコシダーゼII酵素に接近可能でない)を改変する方法が、本明細書中で提供される。好ましくは、本発明の酵素をコードする核酸は、オリゴ糖に結合された少なくとも1つのグルコース残基および1つのマンノース残基を含む組成物を切断する(図2)。より好ましくは、Glcα1,3Manダイマー、Glcα1,3ManトリマーまたはGlcα1,3Manテトラマーは、本発明の方法に従って切断される。
【0131】
当業者にとって、本明細書中に開示される方法を使用して、特定の発現ベクターおよび宿主細胞株において、選択された融合構築物を使用して脱グルコシル化グリカン(例えば、ManGlcNAc)の産生を最適化することは、慣用実験事項にすぎない。従って、慣用改変物が、本発明のエンドマンノシダーゼを発現する下等真核生物宿主細胞において作製され得、これは、グルコシル化グリカンを脱グルコシル化グリカン(例えば、ManGlcNAc)に変換し、続いて、治療用糖タンパク質の製造のための所望の中間体に変換する。
【0132】
(宿主細胞中への他のグリコシル化酵素の導入)
さらに、一組の改変されたグリコシル化酵素が、細胞の局在化、および目的の糖タンパク質を産生する活性を高めるために宿主細胞に導入される。これは、変動する長さの触媒的ドメインの、酵母内因性ターゲッティング領域への融合を包含する(WO 02/00879に記載されるような)。1つの実施形態において、宿主細胞P.pastoris YSH97(och1 alg3エンドマンノシダーゼ)は、グリコシル化酵素またはその触媒的に活性なフラグメント(α1,2−マンノシダーゼIおよびα1,2−マンノシダーゼII、GnT I(N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI)、GnT II、GnT III、GnT IV、GnT V、GnT VI、ガラクトシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼならびにフコシルトランスフェラーゼからなる群より選択される)の導入および発現によって改変される。同様に、酵素のそれぞれの輸送体およびこれらの基質(例えば、UDP−GlcNAc、UDP−Gal、CMP−NANA)は、宿主細胞に導入され、そしてこの宿主細胞で発現される。WO 02/00879を参照のこと。
【0133】
(エンドマンノシダーゼの最適pH)
本発明の別の局面において、コードされたエンドマンノシダーゼは、約5.0と約8.5との間に、好ましくは約5.2と約7.2との間に、より好ましくは約6.2に、最適pHを有する。別の実施形態において、上記コードされた酵素は、小胞体、ゴルジ装置もしくはER間の輸送小胞、ゴルジもしくは宿主生物体のトランスゴルジ網に標的化され、ここで、このコードされた酵素は、オリゴ糖上に存在するグルコシル化構造を除去する。図15は、ヒトエンドマンノシダーゼ(配列番号2)の最適pHプロファイルを示す(実施例9)。
【0134】
以下は、本発明の組成物および方法を例示する実施例である。これらの実施例は、限定するように解釈されるべきでなく:この実施例は、例示のみの目的で包含される。
【実施例】
【0135】
(実施例1:株、培養条件、および試薬)
Escherichia coli株TOP10またはDH5αを、組換えDNA研究のために使用した。酵母株におけるタンパク質発現を、室温で、増殖培地として1%酵母抽出物、2%ペプトン、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)、1.34%酵母窒素塩基、4×10−5%ビオチン、および1%グリセロールを含む、緩衝化グリセロール複合培地(BMGY)を備える96ウェルプレート形式で行った。誘発培地は、BMGY中のグリセロールの代わりに1.5%メタノールを含む、緩衝化メタノール天然培地(BMMY)であった。最小培地は、1.4%酵母窒素塩基、2%デキストロース、1.5%寒天および4×10−5%ビオチン、ならびに適切に補充されたアミノ酸である。制限酵素および修飾酵素を、New England BioLabs(Beverly,MA)から得た。オリゴヌクレオチドを、Dartmouth College Core facility(Hanover,NH)またはIntegrated DNA Technologies(Coralville,IA)から得た。MOPS、カコジル酸ナトリウム、塩化マンガンを、Sigma(St.Louis,MO)から得た。トリフルオロ酢酸(TFA)を、Sigma/Aldrich,Saint Louis,MOから得た。酵素N−グリコシダーゼF、マンノシダーゼ、およびオリゴ糖を、Glyko(San Rafael,CA)から得た。DEAE ToyoPearl樹脂を、TosoHaasから得た。金属キレート「HisBind」樹脂を、Novagen(Madison,WI)から得た。96ウェル溶解物清浄化プレート(lysate−clearing plate)を、Promega(Madison,WI)から得た。タンパク質結合96ウェルプレートを、Millipore(Bedford,MA)から得た。塩および緩衝剤を、Sigma(St.Louis,MO)から得た。MALDIマトリックスを、Aldrich(Milwaukee,WI)から得た。
【0136】
(実施例2:ヒトエンドマンノシダーゼおよびマウスエンドマンノシダーゼのクローニング)
ポジティブコントロールとして、本発明者らは、特異的プライマー:
【0137】
【数1】

を使用してラットマンノシダーゼ遺伝子の推定触媒ドメインに相同な領域を増幅し、そして、標準的な組換えDNA技術を使用して、生じた領域を酵母組込みプラスミドにサブクローン化した(例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning,A Laboratory Manual(第2版),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.およびこの中で記載される参考文献(全てが参考として援用される)を参照のこと;実施例3もまた参照のこと)。
【0138】
ヒトエンドマンノシダーゼのORF配列を同定し、そしてヒトエンドマンノシダーゼのORFを単離するために、本発明者らは、ラットエンドマンノシダーゼタンパク質配列(Genbank gi:2642187)を使用してタンパク質BLAST検索を行い、そして、ラットORFのアミノ酸162〜451に対して88%の同一性および94%の類似性を示す、290アミノ酸長の仮想ヒトタンパク質(Genbank gi:20547442)を同定した(図3A)。このヒト配列のDNA5’末端を、翻訳BLASTを使用して分析し、そして検索配列の最初の22個のアミノ酸にわたって95%の同一性を保有したが、その後停止コドンで終結する別の仮想ヒトタンパク質(Genbank gi:18031878)を同定した(図3B)。この第2の配列のリーディングフレーム分析は、172個のアミノ酸が、相同領域の上流でインフレームであったと示した(図3C)。これらの5’領域および3’領域の両方を組み合わせることにより、462個のアミノ酸および54kDaの推定分子量のORFを有する推定配列(図4)を生じた。
【0139】
2つのヒト配列が1つの完全なORFであることを確認するために、本発明者らは、gi:18031877 ORFの5’末端に特異的なプライマーおよびgi:20547441 ORFの3’末端に特異的なプライマー:
【0140】
【数2】

を設計した。これらのプライマーを使用し、Pfu Turbo DNAポリメラーゼ(Stratagene,La Jolla,CA)を製造者に推奨されるように、サイクル条件:95℃で1分、1サイクル:95℃で30秒間、60℃で1分間、72℃で2.5分間、30サイクル;72℃で5分間、1サイクル下で使用して、ヒト肝臓cDNA(Clontech,Palo Alto,CA)由来の1389bpフラグメントを増幅した。産生されたDNAフラグメントを、Taq DNAポリメラーゼと一緒に、10分間68℃でインキュベートし、そしてpCR2.1(Invitrogen,Carlsbad,CA)にTOPOクローン化した。ABI DNA配列決定により、BLAST検索によって同定されたヒト配列の両方が、1つの完全なORFを産生したと確認され、この確認された構築物を、pSH131と命名した。
【0141】
マウス由来のエンドマンノシダーゼ遺伝子は、同様に増幅および単離され得る(また、例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning,A Laboratory Manual(第2版),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.,Innisら(1990)PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press,New York,NYおよびこれらの中に記載される参考文献(全てが参考として援用される)を参照のこと)。プライマー:
【0142】
【数3】

を使用し、マウス全長エンドマンノシダーゼオープンリーディングフレームを産生する。
【0143】
(実施例3:組換えエンドマンノシダーゼ構築物の作製および発現)
ヒトエンドマンノシダーゼの酵母分泌形態を産生するために、推定触媒ドメインをコードする領域を、EasySelect Pichia Expression kit(Invitrogen)で製造者により推奨されるように発現させた。手短に言うと、PCRを使用し、プライマーhEndoΔ59順方向およびプライマーhEndoΔ停止逆方向:
【0144】
【数4】

を使用して、pSH131から178〜1386塩基のORFフラグメントを増幅した。Pfu Turboを用いて使用した条件は、以下であった:95℃で1分間、1サイクル;95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で3分間、25サイクル;72℃で3分間、1サイクル。この産物を、Taq DNAポリメラーゼと一緒にインキュベートし、上記のようにTOPOクローン化およびABI配列決定を行った。得られたクローンを、pSH178と命名した。この構築物から、ヒトエンドマンノシダーゼフラグメントを、EcoRIでの消化によって切り出し、そして同じ酵素で消化されたpPicZαA(Invitrogen,Carlsbad,CA)にサブクローン化し、pAW105を産生した。この構築物を、EasySelect Pichia Expressionキット(Invitrogen,Carlsbad,CA)に付属のPichia pastoris酵母株GS115に形質転換し、株YSH16を産生した。続いて、キット製造者により推奨されるように、この株をBMGYにおいてOD600=2まで増殖させ、そしてBMMYにおいて、48時間30℃で誘導した。
【0145】
単離されたORFがエンドマンノシダーゼであることを確認するために、以前に報告されたラット肝臓エンドマンノシダーゼを、0平行してポジティブコントロールとして増幅および発現させた。手短に言うと、ラットエンドマンノシダーゼのアミノ酸49〜451をコードするフラグメント(推定触媒ドメインに対応する)を、上のヒトエンドマンノシダーゼについて記載された条件と同じ条件を使用して、ラット肝臓cDNA(Clontech)から増幅した。使用したプライマーは、rEndo Δ48順方向およびrEndo Δ停止逆方向
【0146】
【数5】

であった。このPCR産物をpCR2.1にクローン化し、配列決定をし、そして得られた構築物をpSH179と命名した。続いて、このラットエンドマンノシダーゼを、上記のように、pPicZαA(Invitrogen,Carlsbad,CA)にサブクローン化し、そしてGS115(Invitrogen,Carlsbad,CA)において発現させ、pAW106およびYSH13を産生した。
【0147】
N末端型タグ組換えヒトエンドマンノシダーゼおよびN末端型タグ組換えラットエンドマンノシダーゼについて、以下の通り、ダブルFLAGタグをα接合因子のKex2切断部位に対して3’側に操作し、そしてpPicZαAでのエンドマンノシダーゼクローニングに使用したEcoRI制限に対して5’側に操作した。手短に言うと、リン酸化オリゴヌクレオチドのFLAGタグ順方向およびFLAGタグ逆方向
【0148】
【数6】

を、Sambrookら(1989)(前出)に記載されるようにアニーリングし、EcoRIで消化されたpPicZαAに連結し、そして子ウシアルカリホスファターゼで脱リン酸化した。2つのタンデムFLAGタグを正しい配向で含む構築物を、pSH241と命名した。続いて、ラットエンドマンノシダーゼおよびヒトエンドマンノシダーゼを、pSH179およびpSH178からEcoRIで消化し、そしてpSH241に連結し、同じ酵素で消化した。得られたラットエンドマンノシダーゼ構築物およびヒトエンドマンノシダーゼ構築物を、pSH245およびpSH246とそれぞれ命名した。これらの構築物のGS115(Invitrogen,Carlsbad,CA)への形質転換は、株YSH89および株YSH90をそれぞれ産生した。これらの株におけるエンドマンノシダーゼ活性の発現を、上記のように研究した。
【0149】
(実施例4:ラットエンドマンノシダーゼのP.pastorisでの発現)
ラットエンドマンノシダーゼの触媒ドメインを、プライマーのラットエンドマンノシダーゼΔ48AscIおよびrEndo PacI:
【0150】
【数7】

を使用してpSH179から増幅した。これらのプライマーを使用し、Pfu Turbo DNAポリメラーゼ(Stratagene)を製造者に推奨されるようにサイクル条件:95℃で1分、1サイクル:95℃で30秒間、60℃で1分間、72℃で2.5分間、30サイクル;72℃で5分間、1サイクル下で使用して、1212bpフラグメントをpSH179から増幅した。産生されたDNAフラグメントを、Taq DNAポリメラーゼと共に、10分間68℃でインキュベートし、そしてpCR2.1(Invitrogen,Carlsbad,CA)にTOPOクローン化した。ABI DNA配列決定により、BLAST検索によって同定されたヒト配列の両方が、1つの完全なORFを産生したことを確認した。この確認された構築物を、pSH223と命名した。続いて、ラットエンドマンノシダーゼフラグメントを、この構築物から消化し、そして酵母発現ベクターpRCD259に連結し、構築物pSH229を与えた。この発現構築物は、以下を含み、細菌の複製を促進する:ハイグロマイシン選択マーカー;GAPDHプロモーターおよびCYC1ターミネーター(これらの2つの領域の間に位置したクローニング部位NotI、AscIおよびPacIを有する);URA3ターゲッティング組込み領域;ならびにpUC19プラスミドのフラグメント。
【0151】
(実施例5:発現ベクターおよび組込み)
酵母においてラットエンドマンノシダーゼタンパク質を発現するために、触媒ドメインをコードするcDNAを、ベクターpSH229を産生する発現ベクターpRCD259にクローン化した(実施例4を参照のこと)。続いて、Gls1(s)リーダー、Van1(s)リーダーおよびMnn11(m)リーダーをコードするcDNAを、プラスミドpSH278(rEndo Δ48 Gls1sリーダー)、pSH279(rEndo Δ48 Van1sリーダー)およびpSH280(rEndo Δ48 Mnn11mリーダー)を産生するラットエンドマンノシダーゼ触媒ドメインをコードするcDNAに対して5’側にクローン化した。組込みをコロニーPCRによって確認し、結果として得られたポジティブクローンを分析し、分泌レポータータンパク質のNグリカン構造を決定した。
【0152】
(実施例6:ノーザンブロット分析)
ヒトエンドマンノシダーゼ転写物の組織分布を、組織の各々に由来の2μgの精製ポリARNAを表すヒトMultiple Tissue Northernブロット(Clontech)を製造者の指示書に従って使用して決定した。使用した547bpヒトエンドマンノシダーゼDNAプローブ(843〜1389)を、RadPrime DNA Labeling System(Invitrogen,Carlsbad,CA)および[32P]dCTPを使用して産生した。この結果を、図8に示す。
【0153】
(実施例7:SDS−PAGEおよびウェスタンブロッティング)
P.pastoris由来の培地を、Bio−Rad Mini−Protean II装置を使用して、サンプルを10% SDS−PAGE(Laemmli,U.K.(1970)Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4.Nature,227,680−685)上で泳動することによって、エンドマンノシダーゼ分泌について分析した。次いで、このタンパク質をニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell,Keene,NH)上に転写した。組換えエンドマンノシダーゼを、製造者の指示書に従ってヤギ抗マウスHRP結合体化二次抗体と組み合わせて抗FLAG M2モノクローナル抗体を使用して検出し、そしてECL Western検出システム(Amersham Biosciences)を使用して可視化した。GS115(Invitrogen,Carlsbad,CA)由来の培地を、コントロールとして使用した。この結果を、図9に示す。
【0154】
(実施例8:組換えエンドマンノシダーゼのインビトロでの特徴付け)
GlcManGlcNAc(エンドマンノシダーゼアッセイのための基質)を、och1 alg3変異株RDP25(WO 03/056914A1)(Davidsonら,2003(近刊))から単離した。2−アミノベンズアミド標識化GlcManGlcNAcを、10μlの培地上清に添加し、そして37℃で、8時間または一晩、インキュベートした。次いで、Choiら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100(9):5022−5027(2003)のプロトコルに従って、10μlの水を添加し、続いてグリカンを、Econosil NH 4.6×250mm、5ミクロンビーズ、アミノ結合シリカカラム(Altech,Avondale,PA)を使用して、サイズおよび電荷によって分離した。
【0155】
(実施例9:操作されたエンドα−1,2−マンノシダーゼの最適pHおよび最適温度のアッセイ)
蛍光標識化GlcManGlcNAc(0.5μg)を、種々のpH(表2)に調節した20μLの上清に添加し、そして8時間室温でインキュベートした。インキュベート後、このサンプルを、Econosil NH 4.6×250 mm、5ミクロンビーズ、アミノ結合シリカカラム(Altech,Avondale,PA)を使用して、HPLCにより分析した。流速は、40分間1.0ml/分であり、そしてこのカラムを30℃に維持した。定組成的に(isocratically)(68% A:32% B)3分間溶出した後、直線的な溶媒勾配(68% A:32% B〜40% A:60% B)を27分にわたって使用し、グリカン(18)を溶出した。溶媒A(アセトニトリル)および溶媒B(ギ酸アンモニウム)は、50mM、pH4.5であった。このカラムを、流出の間の20分間、溶媒(68% A:32% B)で平衡化した。以下の表は、種々のpHにおいてGlcManGlcNAcから生じたManGlcNAcの量(%)を示す(図15、表2)。
【0156】
【表2】

ヒトエンドマンノシダーゼについての最適温度を、同様に、種々の温度(室温、30℃および37℃)で酵素基質を培養上清と共にインキュベートすることによって試験した。37℃が最適であった。
【0157】
(実施例10:レポータータンパク質発現、N結合型グリカンの精製および解離)
(タンパク質精製)
Kringle 3(K3)ドメイン(アルコールオキシダーゼ1(AOX1)プロモーターの制御下)を、モデルタンパク質として使用した。Beckman BioMek 2000サンプル操作ロボット(Beckman/Coulter Ranch Cucamonga,CA)で96ウェル形式を使用して、Kringle 3を精製した。Kringle 3を、C末端ヘキサ−ヒスチジンタグ(Choiら 2003、前出)を使用して発現培地から精製した。自動化精製は、NovagenによってそれらのHisBind樹脂について提供されたプロトコルの適応である。手短に言うと、150μL(μL)固定体積の樹脂を、96ウェル溶解物結合プレートのウェルに注ぎ、3倍容量の水で洗浄し、そして5倍容量の50mM NiSO4で満たし、そして3倍容量の結合緩衝液(5mMイミダゾール、0.5M NaCI、20mM Tris−HCL pH7.9)で洗浄する。このタンパク質発現培地を、3:2、培地/PBS(60mM PO4、16mM KC1、822mM NaCl pH7.4)に希釈し、そして上記カラム上にロードする。排液後、このカラムを10倍体積の結合緩衝液および6倍体積の洗浄用緩衝液(30mMイミダゾール、0.5M NaCI、20mM Tris−HCl pH7.9)で洗浄し、そして上記タンパク質を、6倍体積の溶出緩衝液(1Mイミダゾール、0.5M NaCI、20mM Tris−HCl pH7.9)で溶出する。溶出した糖タンパク質を凍結乾燥によって乾燥するまでエバポレートする。
【0158】
(N結合型グリカンの解離)
以前に報告された方法(Papacら,Glycobiology 8(5):445−54(1998))の改変によって、グリカンを、糖タンパク質から解離および分離する。96ウェルMultiScreen IP(イモビロン−P膜)プレート(Millipore)のウェルを、100μLのメタノールで湿らせ、3×150μLの水および50μLのRCM緩衝液(8M尿素、360mM Tris、3.2mM EDTA pH8.6)で洗浄し、各々の添加後に緩やかな減圧によって排液した。上記乾燥タンパク質サンプルを、30μLのRCM緩衝液に溶解し、そして10μLのRCM緩衝液を含むウェルに移した。このウェルを排液し、そしてRCM緩衝液で2回洗浄した。このタンパク質を、RCM緩衝液中60μLの0.1M DTTの添加によって、1時間37℃で還元した。このウェルを、300μLの水で3回洗浄し、そして60μLの0.1Mヨード酢酸の添加によって、30分間、暗所で、室温においてカルボキシメチル化した。このウェルを、水で3回再度洗浄し、そして上記膜を、水中1% PVP360を100μL添加することによって、1時間、室温でブロッキングした。このウェルを排液し、そして300μLの水で3回洗浄し、そして、1ミリ単位のN−グリカネーゼ(Glyko)を含む10mM NHHCO pH8.3を30μL添加することによって脱グルコシル化した。16時間、37℃でのインキュベートの後、上記グリカンを含む溶液を、遠心分離によって取り除き、そして乾燥するまで蒸発させた。
【0159】
その他:タンパク質を、Laemmli(Laemmli 1970)に従うSDS/PAGEによって分離した。
【0160】
(実施例11:飛行時間型質量分析法のマトリックス補助レーザー脱離イオン化)
グリカンの分子量を、ディレイドエクストラクション(delayed extraction)を用いるVoyager DE PRO linear MALDI−TOF(Applied Biosciences)質量分析計を使用して決定した。各ウェルからの乾燥グリカンを、15μLの水に溶解し、そしてステンレス鋼サンプルプレート上に0.5μLスポットし、そして0.5μLのS−DHBマトリックス(1:1水/アセトニトリル0.1% TFA中、9mg/mLのジヒドロキシ安息香酸、1mg/mLの5−メトキシサリチル酸(methoxysalicilic acid))と混合し、そして乾燥させた。
【0161】
イオンは、4nsのパルス時間を有するパルス窒素レーザー(337nm)での放射によって発生された。この装置を、125nsの遅延および20kVの加速電圧を使用するディレイドエクストラクションモードで操作した。グリッド電圧は93.00%であり、ガイドワイヤー電圧は0.10%であり、内圧は5×10〜7トル未満であり、そして低質量ゲートは875Daであった。スペクトルを、100〜200レーザーパルスの合計から生成し、そして2 GHzデジタイザーを用いて得た。ManGlcNAcオリゴ糖を、外部分子量標準として使用した。全てのスペクトルを、陽イオンモードで装置を使用して生成した。このスペクトルの推定質量精度は、0.5%であった。
【0162】
(実施例12)
(キメラエンドマンノシダーゼタンパク質を生成するためのコンビナトリアルライブラリー)
最適温度および最適pHの範囲を有する触媒ドメインによって特徴付けられる、ヒトエンドマンノシダーゼ、マウスエンドマンノシダーゼ、ラットエンドマンノシダーゼおよび/または混合エンドマンノシダーゼの任意の組み合わせのライブラリーは、公表された手順(例えば、WO 02/00879;Choiら、2003、前出、および米国出願番号10/371,877(2003年2月20日出願)の公報を参照のこと)に従って作製される。このライブラリーは、酵母のような下等な真核宿主細胞で発現された場合に、レポータータンパク質のグリコシル化パターンを改変して所望のグリカン構造を産生することにおいて最適に機能するエンドマンノシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする1以上の配列を選択するのに有用である。特定の細胞区画に対するエンドマンノシダーゼの触媒ドメインを標的するのが有利であることが期待される。DNAコンビナトリアルライブラリーアプローチ(標的ペプチドと酵素ドメインとの間のインフレーム融合)は、選択のために使用される宿主細胞において、所望もしくは効率的な様式でエンドマンノシダーゼ活性を発現するキメラ分子を同定することを可能にする。エンドマンノシダーゼ配列は、多くの発現系(細菌細胞、酵母細胞および哺乳動物細胞が挙げられる)において発現され、コードされたタンパク質が特徴付けされる。
【0163】
宿主(例えば、微生物)においてヒト様糖形態を生成するために、宿主を操作して、モノグリコシル化高マンノース糖形態、ジグリコシル化高マンノース糖形態およびトリグリコシル化高マンノース糖形態を加水分解し、存在するグルコース残基および近接位のマンノースを除去するエンドマンノシダーゼ酵素(例えば、本明細書中で記載されるヒトマンノシダーゼまたはマウスマンノシダーゼ)を発現させる(図1を参照のこと)。シスゴルジ局在化シグナルおよび内側ゴルジ局在化シグナル(ならびに必要に応じてER局在化シグナルを含む)をコードする配列を含むDNAライブラリーは、インフレームで1以上のエンドマンノシダーゼ触媒ドメインをコードするライブラリーに融合される。宿主生物は、菌株(例えば、酵母)であり、これは、高マンノシル化(例えば、och1変異体)に欠けており、好ましくは、ゴルジおよび/またはERにおいてGlcManGlcNAcの構造を有するN−グリカンを提供する。(エンドマンノシダーゼは、Glc1−3Man9−5GlcNAcをMan8−4GlcNAcに加水分解し得、従って、好ましいGlcManGlcNAc構造は必須ではない)。形質転換後、所望のグリコシル化表現型を有する生物を選択する。好ましくは、エンドマンノシダーゼ活性は、オリゴ糖上に少なくとも1つのグルコース残基と1つのマンノース残基とを含む組成物を除去する。インビトロアッセイが、1つの方法で使用される。所望の構造は、酵素α1,2−マンノシダーゼに対する基質である(図2を参照のこと)。従って、シグナルコロニーは、インビトロでこの酵素を使用してアッセイされ得る。
【0164】
上記のインビトロアッセイは、ハイスループットなスクリーニング機器を使用して、個々のコロニーで簡便に実施される。あるいは、レクチン結合アッセイが使用される。この場合には、末端マンノースに特異的なレクチンの減少した結合が、所望の表現型を有する形質転換体の選択を可能にする。例えば、Galantus nivalisレクチンは、末端α−1,3−マンノースに特異的に結合し、その濃度は、操作可能に発現されたエンドマンノシダーゼ活性の存在下で減少される。1つの適切な方法では、固体アガロース支持体(Sigma Chemical,St.Louis,MOから入手可能)に結合したG.nivalisレクチンを使用して、高レベルの末端α−1,3−マンノースを有する細胞の形質転換集団を枯渇させる。
【0165】
(配列表)
【0166】
【数8】

【0167】
【数9】

【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】図1は、ERにおけるN−グリカンのグルコースプロセシングと比較した、ゴルジ体におけるモノグリコシル化グリカン、ジグリコシル化グリカンおよびトリグリコシル化グリカンを改変するエンドマンノシダーゼの模式図である。強調表示は、加水分解され得るさらなるグルコース残基である。
【図2】図2は、ゴルジ体においてグリコシル化構造GlcManGlcNAcをManGlcNAcグリカンへとプロセシングする、エンドマンノシダーゼの模式図である。強調表示されたマンノース残基は、種々の組合せで、エンドマンノシダーゼの基質となり得る種々の型の高分子マンナングリカンを生じる構成を表す。
【図3】図3は、相同体を同定するための、ラットエンドマンノシダーゼのBLAST分析を示す。パネルAは、ラットエンドマンノシダーゼのC−末端に対して88%同一性を示すヒト配列の同定を示す。パネルBは、パネルAに由来する単離された配列のN−末端を示し、これは、パネルCにおけるヒトエンドマンノシダーゼの5’領域を単離するために使用された。パネルCは、可能性のあるヒトエンドマンノシダーゼの潜在的N−末端配列を示す。
【図4】図4は、ヒト肝臓エンドマンノシダーゼのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。ヒトエンドマンノシダーゼのヌクレオチド配列(上)および一文字アミノ酸配列(下)は、左に標識された残基番号とともに示される。太字のヌクレオチド領域は、推定全長ヒト肝臓エンドマンノシダーゼの構築に使用される、Genbank配列gi:18031878(下線)およびgi:20547442(標準文字)の重複セグメントを表す。KyteおよびDoolittleの分析(J.Mol.Biol.157:105−132(1982))(図5参照)によって同定された推定膜貫通ドメインは、四角によって強調表示される。
【図5】図5は、ウェブベースのソフトウェアGREASEおよび11残基のウインドウを用いてKyteおよびDoolittle((1982)前出)の方法に従って作製された、ヒトエンドマンノシダーゼのアミノ酸配列の水治療プロットを示す。黒四角は、高疎水性のN−末端領域を表し、推定膜貫通ドメインの存在を示唆する。この領域はまた、図4において四角によって表わされる(アミノ酸残基10〜26)。
【図6】図6は、マウスエンドマンノシダーゼのヌクレオチドおよびアミノ酸配列(Genbank AK030141)を示す。マウスエンドマンノシダーゼのヌクレオチド配列(上)および一文字アミノ酸配列(下)は、左に標識された残基番号とともに示される。KyteおよびDoolittleの分析(J.Mol.Biol.157:105−132(1982))によって同定された推定膜貫通ドメインは、四角によって強調表示される。
【図7】図7は、3つのエンドマンノシダーゼオープンリーディングフレームの配置を示す。ヒト、マウスおよびラットのエンドマンノシダーゼのORFは、DNASTAR suiteのプログラムのうちのMegalignソフトウェアを用いて並置された。この分析のために選択されたアルゴリズムは、CLUSTAL Vバージョン(HigginsおよびSharp Comput.Appl.Biosci.5,151−153(1989))であった。陰影によって表示された残基は、少なくとも2つのORFの間で同一のアミノ酸を表す。各ORFのアミノ酸位置は、並置された配列の左に提示される。
【図8】図8は、標識化ヒトエンドマンノシダーゼ核酸プローブにハイブリダイズされた、種々のヒト組織に由来するRNAのノーザンブロット分析を示す。
【図9】図9は、分泌されたN−末端タグ化エンドマンノシダーゼの、Ni−樹脂上における前精製物(コントロール(GS115)(A)株、rEndo(YSH89)(B)株およびhEndo(YSH90)(C)株由来のサンプル)のウェスタンブロット分析を示す。これらのサンプルは、抗−FLAG M2抗体(Stratagene,La Jolla,CA)を用いて検出された。
【図10】図10Aは、P.pastoris RDP−25(och1 alg3)において産生されたクリングル3糖タンパク質から単離されたN−グリカンの、MALDI−TOF MS分析を示す。図10Bは、pSH280(ラットエンドマンノシダーゼΔ48/Mnn11(m))によって形質転換されたP.pastoris RDP−25(och1 alg3)において産生されたクリングル3糖タンパク質から単離されたN−グリカンの、MALDI−TOF MS分析を示し、この分析は、とりわけ、ManGlcNAcの質量に対応する1099m/zにおけるピーク[c]、およびヘキソース6の質量に対応する1424m/zにおけるピーク[a]を示す。この株は、YSH97と命名された。図10Cは、P.pastoris YSH97において産生されたクリングル3糖タンパク質から単離されたN−グリカンの、α1,2−マンノシダーゼによるインビトロ消化後における、MALDI−TOF MS分析を示し、この分析は、ManGlcNAcの質量に対応する938m/zにおけるピーク[b](Na付加)を示す。
【図11】図11Aは、P.pastoris RDP−25(och1 alg3)において産生されたクリングル3糖タンパク質から単離されたN−グリカンの、MALDI−TOF MS分析を示す。図11Bは、pSH279(ラットエンドマンノシダーゼΔ48/Van1(s))によって形質転換されたP.pastoris RDP−25(och1 alg3)において産生されたクリングル3糖タンパク質から単離されたN−グリカンの、MALDI−TOF MS分析を示し、この分析は、とりわけ、ManGlcNAcの質量に対応する1116m/zにおけるピーク[c]、およびヘキソース6の質量に対応する1441m/zにおけるピーク[a]を示す。この株は、YSH96と命名された。図11Cは、P.pastoris YSH96において産生されたクリングル3糖タンパク質から単離されたN−グリカンの、α1,2−マンノシダーゼによるインビトロ消化後における、MALDI−TOF MS分析を示し、この分析は、ManGlcNAcの質量に対応する938m/zにおけるピーク[b](Na付加)、およびヘキソース6の減少を示す1425m/zにおける第二のピーク[a]を示す。
【図12】図12Aは、P.pastoris RDP−25(och1 alg3)において産生されたクリングル3糖タンパク質から単離されたN−グリカンの、MALDI−TOF MS分析を示す。図12Bは、pSH278(ラットエンドマンノシダーゼΔ48/Gls1(s))によって形質転換されたP.pastoris RDP−25(och1 alg3)において産生されたクリングル3糖タンパク質から単離されたN−グリカンの、MALDI−TOF MS分析を示し、この分析は、とりわけ、1439m/z(K付加)におけるピーク[c]、およびヘキソース6の質量に対応する1422m/z(Na付加)におけるピーク[a]を示す。この株は、YSH95と命名された。図12Cは、P.pastoris YSH95において産生されたクリングル3糖タンパク質から単離されたN−グリカンの、α1,2−マンノシダーゼによるインビトロ消化後における、MALDI−TOF MS分析を示し、この分析は、ManGlcNAcの質量に対応する936m/zにおけるピーク[b](Na付加)、およびヘキソース6の減少を示す1423m/zにおけるピーク[a]を示す。
【図13】図13は、ラットおよびヒトのエンドマンノシダーゼ活性についての高速液体クロマトグラムインビトロアッセイを示す。パネルAは、BMMYにおけるヘキソース6標準GlcManGlcNAcを示す。パネルBは、P.pastoris YSH13由来の上清とインキュベートしたラットエンドマンノシダーゼから産生されたグリカン基質を示す。パネルCは、P.pastoris YSH16由来の上清とインキュベートしたヒトエンドマンノシダーゼから産生されたグリカン基質を示す。(i)および(ii)に対応する構造については、図14を参照のこと。
【図14】図14は、エンドマンノシダーゼによる基質グリカン改変、およびα1,2−マンノシダーゼ消化および分析による生成物の構造のその後の確認を示す。図示された構造は、GlcManGlcNAc(i)、ManGlcNAc(ii)およびManGlcNAc(iii)である。Rは、グリカンの還元末端を示す。基質GlcManGlcNAc(i)は、それをManGlcNAc(ii)に変換する(Glcα1,3 Manを加水分解する)エンドマンノシダーゼにより改変されている。その後のα1,2−マンノシダーゼ消化により、ManGlcNAc(iii)を生じる。
【図15】図15は、ManGlcNAcに変換したGlcManGlcNAc基質の%として示した、ヒトエンドマンノシダーゼの活性のpHプロフィールを、pHの関数として示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたポリヌクレオチドであって、以下:
(a)配列番号1または3;
(b)配列番号1または3の変性改変体である核酸配列;
(c)配列番号1または3に対して少なくとも78%同一な核酸配列;
(d)配列番号2または4のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列;
(e)配列番号2または4に対して少なくとも77%同一なポリペプチドをコードする核酸配列;
(f)ストリンジェントな条件下で配列番号1または3にハイブリダイズする核酸配列;および
(g)長さが少なくとも60個連続したヌクレオチドである(a)〜(f)のうちのいずれか1つのフラグメントを含む核酸配列
からなる群より選択される核酸配列を含むか、またはそれらからなる、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
単離されたポリヌクレオチドであって、以下:
(a)配列番号1または3;
(b)配列番号1または3の変性改変体である核酸配列;
(c)配列番号1または3に対して少なくとも87%同一な核酸配列;
(d)配列番号2または4のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列;
(e)配列番号2または4に対して少なくとも83%同一なポリペプチドをコードする核酸配列;
(f)ストリンジェントな条件下で配列番号1または3にハイブリダイズする核酸配列;および
(g)長さが少なくとも60個連続したヌクレオチドである(a)〜(f)のうちのいずれか1つのフラグメントを含む核酸配列
からなる群より選択される核酸配列を含むか、またはそれらからなる、ポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記核酸配列が、エンドマンノシダーゼ活性をコードする、請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記核酸配列が、エンドマンノシダーゼの触媒活性フラグメントをコードする、請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記コードされたエンドマンノシダーゼが、約5.2と約7.2との間のpHにおいて最適活性を有する、請求項4に記載のコードされたポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記コードされたエンドマンノシダーゼ活性が、約6.2のpHにおいて最適活性を有する、請求項4に記載のコードされたポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、グリコシル化グリカン上に少なくとも1つのグルコース残基と1つのマンノース残基とを含む組成物を加水分解する、請求項1または2に記載のコードされたポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、オリゴ糖におけるGlcα1,3Manダイマー、Glcα1,3ManトリマーまたはGlcα1,3Manテトラマーを加水分解する、請求項1または2に記載のコードされたポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、Glc1−3ManGlcNAc、Glc1−3ManGlcNAc、Glc1−3ManGlcNAc、Glc1−3ManGlcNAc、Glc1−3ManGlcNAcまたはグリコシル化高級マンナングリカン上の少なくとも1つのグルコース残基と1つのマンノース残基とを加水分解する、請求項1または2に記載のコードされたポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項1または2に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項11】
請求項1または2に記載のコードされたポリペプチドを含む、融合タンパク質。
【請求項12】
前記コードされたポリペプチドが、目的のタンパク質上に改変された糖形態を産生する、請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記コードされたポリペプチドが、Glcα1,3Man、Glcα1,3ManまたはGlcα1,3Manを加水分解する、請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
請求項1または2に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項15】
前記宿主細胞が、哺乳動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、真菌細胞、酵母細胞、藻細胞または細菌細胞である、請求項14に記載の宿主細胞。
【請求項16】
前記細胞が、Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranaefaciens、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、Pichia種、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces種、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces種、Kluyveromyces lactis、Candida albicans、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、Fusarium種、Fusarium gramineum、Fusarium venenatumおよびNeurospora crassaからなる群より選択される、請求項14に記載の宿主細胞。
【請求項17】
下等な真核生物におけるグリコシル化構造を改変するための方法であって、該方法は、エンドマンノシダーゼ活性を発現する工程であって、ここで、該エンドマンノシダーゼ活性が、オリゴ糖上に少なくとも1つのグルコース残基と1つのマンノース残基とを含む組成物を除去する、工程を包含する、方法。
【請求項18】
前記エンドマンノシダーゼ活性が、Glc1−3Man9−5GlcNAcをMan8−4GlcNAcに切断する活性をさらに含み、ここで、Glcα1,3Man、Glcα1,3ManまたはGlcα1,3Manが除去される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エンドマンノシダーゼ活性が、グリコシル化グリカン上に少なくとも1つのグルコース残基と1つのマンノース残基とを含む組成物の加水分解を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記導入されたエンドマンノシダーゼが、小胞体、初期ゴルジ、内側ゴルジ、後期ゴルジ、トランスゴルジ網または前記宿主生物内の任意の小胞区画に標的される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記エンドマンノシダーゼが、宿主起源であるが、変異、プロモータ強度またはコピー数によって改変されて、活性が高められている、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記エンドマンノシダーゼが分泌される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記宿主細胞が、哺乳動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、真菌細胞、酵母細胞、藻細胞または細菌細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記下等な真核生物が、Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranaefaciens、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、Pichia種、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces種、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces種、Kluyveromyces lactis、Candida albicans、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、Fusarium種、Fusarium gramineum、Fusarium venenatumおよびNeurospora crassaからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
グルコシル化糖タンパク質を改変するための方法であって、該方法は、下等真核生物宿主細胞にエンドマンノシダーゼ活性を導入する工程であって、ここで、該エンドマンノシダーゼ活性の発現の際に、前記ERをバイパスしたグルコシル化糖タンパク質を改変する、工程を包含する、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公表番号】特表2006−518598(P2006−518598A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503759(P2006−503759)
【出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/005131
【国際公開番号】WO2004/074497
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(505310002)
【Fターム(参考)】