説明

真核細胞のトランスフェクションのための新規試薬

真核細胞中へ高分子の改良された輸送のための組成物および方法が提供される。非エンベロープウイルスの融合タンパク質からの融合誘導ペプチドは、トランスフェクション剤、例えばカチオン性脂質、ポリカチオン性ポリマー、例えばPEIおよびデンドリマーにより媒介される真核細胞のトランスフェクションの効率を高める。これらの融合誘導ペプチドは、真核細胞中へ高分子、例えば核酸を効率的に輸送するトランスフェクション複合体の一部として用いられる。様々な細胞および組織中へ高分子、例えば核酸、タンパク質、およびペプチドの導入のために用いられる新規カチオン性脂質およびカチオン性脂質の組成物も提供される。トランスフェクション複合体を製造するために、前記脂質は単独でまたは他の脂質と組み合わせて、および/または融合誘導ペプチドと組み合わせて用いられる。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
この出願は、2006年5月9日付けで出願された仮出願第60/746,858号、2006年5月9日付けで出願された第60/746,854号、2006年5月5日付けで出願された第60/746,604号、2006年5月5日付けで出願された第60/746,594号、2006年5月4日付けで出願された第60/746,424号、2006年2月10日付けで出願された第60/771,865号、2006年2月10日付けで出願された第60/771,864号、および2005年5月17日付けで出願された第60/681,462号に基づく優先権を主張する。それら各々の内容は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0002】
背景技術
リポソームのような脂質集合体は、生細胞中への例えばDNA、RNA、およびタンパク質などの高分子の導入を容易にする。カチオン性脂質成分を含んでなる集合体は、ある種の細胞中への核酸などの大きなアニオン性分子の効率的な輸送を行うために用いられる。Felgner et al.Nature 337:387-388(1989),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413(1987)参照。
【0003】
カチオン性脂質の使用は、15年以上前のその導入以来、次第に一般化してきた。いくつかのカチオン性脂質が文献において記載されてきたが、これらのうち一部は市販されている。DOTMA(N‐〔1‐(2,3‐ジオレイルオキシ)プロピル〕‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリド)が、核酸トランスフェクションの目的のために合成された、最初のカチオン性脂質であった。Felgner et al.(Proc.Nat’l.Acad.Sci.84:7413(1987)、米国特許第4,897,355号)参照。DOTMAはリポソームへ単独で処方しても、またはDOPE(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)と組み合わせてもよく、このようなリポソームはある細胞中へプラスミドを輸送するために用いられる。他のクラスの脂質がその後に様々なグループにより合成されてきた。例えば、DOGS(5‐カルボキシスペルミルグリシンジオクタデシルアミド)が、製造された最初のポリカチオン性脂質であり(Behr et al.Proc.Nat’l.Acad.Sci.86:6982(1989)、米国特許第5,171,678号)、他のポリカチオン性脂質もそれ以来製造されてきた。脂質DOSPA(2,3‐ジオレイルオキシ‐N‐〔2‐(スペルミンカルボキサミド)エチル〕‐N,N‐ジメチル‐1‐プロパンアミニウム)が有効なデリバリー剤として記載されていた(米国特許第5,334,761号)。
【0004】
他の例として、DC‐Chol(N,N‐ジメチル‐N‐エチルカルボキサミドコレステロール)などのコレステロールベースカチオン性脂質が製造され、トランスフェクションに用いられてきた(Gao et al.Biochem.Biophys.Res.Comm.179,280(1991))。他の例としては、1,4‐ビス(3‐N‐オレイルアミノプロピル)ピペラジンが製造され、他の試薬より低毒性であると報告されたデリバリー試薬を作製するためにヒストンH1と組み合わされた(Wolf et al.BioTechniques 23,139(1997)、米国特許第5,744,335号)。いくつかの試薬が市販されている。一部の例として、Lipofectin(DOTMA:DOPE)(Invitrogen,Carlsbad,CA)、LipofectAmine(DOSPA:DOPE)(Invitrogen)、LipofectAmine2000(Invitrogen)、Fugene、Transfectam (DOGS)、Effectene、およびDC‐Cholがある。これらの試薬はどれもすべての細胞で普遍的に用いられるわけではない。これはおそらく、異なる種類の細胞の膜の組成の変動と、細胞中への細胞外物質の侵入を制限しうるバリアとを考慮すると、意外ではない。更に、カチオン性脂質が細胞中へ核酸を輸送するメカニズムは明確には理解されていない。前記試薬はウイルス輸送法ほど効率的でなく、細胞に毒性であるが、毒性の程度は試薬毎に異なる。
【0005】
しかしながら、カチオン性脂質を含有するトランスフェクション剤がすべての細胞種において普遍的に有効というわけではない。異なる細胞のトランスフェクションの有効性は具体的なトランスフェクション剤組成に依存する。一般的に、ポリカチオン性脂質は真核細胞をトランスフェクトする上でモノカチオン性脂質より効率的である。多くの場合に、カチオン性脂質単独では有効でないか、またはトランスフェクションで一部有効であるにすぎない。
【0006】
多くの生体物質がレセプター媒介エンドサイトーシスにより細胞に取り込まれ、その場合にリガンドが細胞表面レセプターと結合して、リガンド結合レセプターの凝集と被覆ピットの形成、次いでエンドソームへのリガンドのインターナリゼーションに至る。インフルエンザウイルスおよびアルファウイルスなどのエンベロープウイルスと、アデノウイルスなどの非エンベロープウイルスの双方は、エンドサイトーシスメカニズムを介して細胞に感染する。Pastan,I.et al.(1986)”Virus Attachment and Entry into Cells”(Crowell,R.L.and Lonberg-Holm,K.,eds.)Am.Soc.Microbiology,Washington,p.141-146、Kielian et al.(1986)”Entry of Alphaviruses” in the Togaviridae and Flaviviridae(Schlesinger,S.and Schlesinger,M.J.,eds.)Plenum Press,New York,p.91-119、FitzGerald et al.(1983)Cell 32:607-617参照。クロロキン(リソソーム指向性因子)によるある細胞のデンドリマー媒介トランスフェクションの促進は、エンドサイトーシスが少なくとも一部のトランスフェクションに関与することを示唆している。
【0007】
ウイルス感染で媒介される真核細胞中への外来DNA配列の導入は、アニオン性脂質、カチオン性脂質、PEI、ペプチド、またはデンドリマートランスフェクション剤でのトランスフェクションより通常数桁の程度で効率的である。培養で細胞すべてのウイルス感染には、細胞当たり10ウイルス粒子より少なくてすむ。融合の詳細なメカニズムは十分理解されておらず、ウイルス間で異なるが、ウイルス融合には特別な融合誘導剤、例えばウイルスタンパク質、ウイルススパイク糖タンパク質、およびウイルススパイク糖タンパク質などのペプチドを典型的に必要とする。細胞結合およびインターナリゼーションも、細胞レセプターと結合するペプチドで促進、加速、または選択性化されうる。例えば、アデノウイルスコートのペントンベースタンパク質は、インテグリンへのウイルス結合と、レセプター媒介エンドサイトーシスによるウイルスインターナリゼーションを媒介するペプチドモチーフRGD(Arg‐Gly‐Asp)とを含有している(Wickham et al.(1995)Gene Therapy 2:750-756)。
【0008】
カチオン性脂質トランスフェクションの効率は、トランスフェクション混合物への全ウイルス粒子の添加により高められることが示された。あるウイルス成分もカチオン性脂質媒介トランスフェクションの効率を高める。例えば、Kamataら((1994)Nucl.Acids Res.22:536)は、トランスフェクション混合物へインフルエンザウイルス赤血球凝集素ペプチドを加えることにより“Lipofectin”媒介トランスフェクションが3〜4倍高められることを示唆した。抗体がカチオン性脂質トランスフェクションを高めることが示され(Trubestsky et al.(1992)BBA 1131,311-313)、トランスフェリン‐ポリリシンまたはアシアロ糖タンパク質ポリリシンがカチオン性脂質トランスフェクションを高めることが示された(Mack et al.(1994)Am.J.Med.Sci.138-143)。
【0009】
それにもかかわらず、これらの方法はすべての細胞種において機能するわけでなく、比較的複雑なプロトコールを必要とし、不便である。したがって、細胞中へ高分子、特に核酸を導入するために新規で改良された方法が大いに望まれていることは明らかである。特に、様々な細胞、特に初代細胞中へ核酸を導入するための改良方法が大いに望まれている。
【発明の概要】
【0010】
ここで開示されているのは、細胞中へ核酸のような高分子を導入する上で改良された効率を示す組成物および方法である。したがって、ここで提供されるのは、核酸分子、トランスフェクション剤、および融合剤を含有した複合体であり、前記融合剤は非エンベロープウイルスの融合タンパク質から誘導される融合促進アミノ酸配列を含有する。非エンベロープウイルスとしてはレオウイルス、例えばトリレオウイルス、Nelson BayレオウイルスまたはPulauレオウイルスがある。ある態様において、前記複合体は細胞中へ導入される高分子、例えばペプチド、タンパク質、または核酸を含有する。
【0011】
融合剤は、融合促進アミノ酸配列へ機能的に連結された核酸結合部分を含有してもよい。適切な核酸結合部分には、ポリカチオン性ペプチド配列、ポリアミン、ペプチド核酸、スペルミン、スペルミジン、カルボキシスペルミジンなどがある。核酸結合部分は融合促進アミノ酸配列へ共有結合させてもよい。トランスフェクション剤としてはカチオン性脂質、例えば下記のもの、ポリアミン、ポリカチオン性ペプチド配列、またはカチオン性デンドリマーなどがある。
【0012】
融合促進アミノ酸配列はカチオン性または中性脂質のような脂質へ機能的に連結させてもよく、連結された部分が細胞中への高分子の輸送に用いられる。例えば、融合促進アミノ酸配列を含有するペプチドは、当業界で周知の方法を用いて、カチオン性脂質のような脂質へ共有結合される。
【0013】
複合体は、トランスフェクション促進剤、例えば核局在タンパク質またはペプチド、融合誘導ペプチド、またはタンパク質、レセプター‐リガンドペプチドまたはタンパク質、輸送ペプチドまたはタンパク質、あるいは融合促進アミノ酸配列とは異なる第二ウイルスペプチドまたはタンパク質も含有してよい。第二ウイルスペプチドは、インフルエンザウイルス、水疱性口内炎ウイルス、アデノウイルス、アルファウイルス、セムリキ森林ウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、HIVウイルス、またはシミアンウイルスのようなウイルスから誘導される。トランスフェクション促進剤としては、例えばインスリン、トランスフェリン、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、細胞標的化抗体、ラクトフェリン、フィブロネクチン、アデノウイルスペントンベース、Knob、ヘキソンタンパク質、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質、セムリキ森林ウイルスコアタンパク質、インフルエンザ赤血球凝集素(influenza hemagglutinin)、肝炎Bコアタンパク質、HIV Tatタンパク質、単純ヘルペスウイルスVP22タンパク質、ヒストンタンパク質、アルギニンリッチ細胞透過性タンパク質、高移動性群タンパク質、インベーシンタンパク質、インターナリンタンパク質、内毒素、ジフテリア毒素、赤痢菌毒素、メリチン、マガイニン(magainin)、グラミシジン、セクロピン、デフェンシン、プロテグリン、タキプレシン、チオニン、インドリシジン、バクテネシン、ドロソマイシン、アピダエシン、カテリシジン、殺菌性透過性促進タンパク質、ナイシン、ブホリンまたはそれらの断片がある。トランスフェクション促進剤はクロロキン、リソソーム指向性(lysosomotrophic)化合物、またはそれらの組合せでもよい。トランスフェクション剤は同一または異なるペプチドまたはタンパク質のマルチマーを含有してもよい。
【0014】
具体的態様において、トランスフェクション剤は少なくとも一種のカチオン性脂質を含有し、場合により一種以上の中性脂質も含有する。カチオン性脂質は、少なくとも一種の一価カチオン性脂質またはポリカチオン性脂質、例えばDOSPA、DOSPER、DOGS、TMTPS、TMTOS、TMTLS、TMTMS、TMDOS、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアオレオイルオキシプロピル)‐2‐ヒドロキシプロパン‐1,3‐ジアミン、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアミリスチルオキシプロピル)‐2‐ヒドロキシプロパン‐1,3‐ジアミン、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアパルミチルオキシプロピル)‐2‐ヒドロキシプロパン‐1,3‐ジアミン、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアオレオイルオキシプロピル)‐2‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピルオキシ)プロパン‐1,3‐ジアミン、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアミリスチルオキシプロピル)‐2‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピルオキシ)プロパン‐1,3‐ジアミン、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアパルミチルオキシプロピル)‐2‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピルオキシ)プロパン‐1,3‐ジアミン、L‐スペルミン‐5‐カルボキシル‐3‐(DL‐1,2‐ジパルミトイル‐ジメチルアミノプロピル‐β‐ヒドロキシエチルアミン)、3,5‐(N,N‐ジ‐リシル)ジアミノベンゾイル‐グリシル‐3‐(DL‐1,2‐ジパルミトイル‐ジメチルアミノプロピル‐β‐ヒドロキシエチルアミン)、L‐リシン‐ビス(O,O′‐オレオイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、L‐リシン‐ビス(O,O′‐パルミトイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)アルキルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、L‐リシン‐ビス(O,O′‐ミリストイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、L‐オルニチン‐ビス(O,O′‐ミリストイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、L‐オルニチン‐ビス(O,O′‐オレオイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、L‐オルニチン‐ビス(O,O′‐パルミトイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、1,4‐ビス〔(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレイルアミノ〕ブタン‐2,3‐ジオール、1,4‐ビス〔(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)パルミチルアミノ〕ブタン‐2,3‐ジオール、1,4‐ビス〔(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)ミリスチルアミノ〕ブタン‐2,3‐ジオール、1,4‐ビス〔(3‐オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジン、L‐アルギニン‐ビス(O,O′‐オレオイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)ミリスチルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、L‐アルギニン‐ビス(O,O′‐パルミトイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、L‐セリン‐ビス(O,O′‐オレオイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、グリシン‐ビス(O,O′‐パルミトイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、サルコシン‐ビス(O,O′‐パルミトイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、L‐ヒスチジン‐ビス(O,O′‐パルミトイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、コレステリル‐3β‐カルボキシルアミドエチレントリメチルアンモニウムヨージド、1,4‐ビス〔(3‐ミリスチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、1‐ジメチルアミノ‐3‐トリメチルアンモニオ‐DL‐2‐プロピル‐コレステリルカルボキシレートヨージド、コレステリル‐3β‐カルボキシアミドエチレンアミン、コレステリル‐3β‐オキシスクシンアミドエチレントリメチルアンモニウムヨージド、1‐ジメチルアミノ‐3‐トリメチルアンモニオ‐DL‐2‐プロピル‐コレステリル‐3β‐オキシスクシネートヨージド、2‐〔(2‐トリメチルアンモニオ)エチルメチルアミノ〕エチル‐コレステリル‐3β‐オキシスクシネートヨージド、3β‐〔N‐(N′,N′‐ジメチルアミノエタン)カルバモイル〕コレステロール、3β‐〔N‐(ポリエチレンイミン)カルバモイル〕コレステロール、1,4‐ビス〔(3‐パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、L‐オルニチルグリシル‐N‐(1‐ヘプタデシルオクタデシル)グリシンアミド、N,N‐ビス(3‐アミノプロピル)‐L‐オルニチルグリシル‐N‐(1‐ヘプタデシルオクタデシル)グリシンアミド、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)アルキルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N‐〔N,N‐ビス(3‐アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジオクタデシル‐L‐グルタミン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジオクタデシル‐L‐α‐グルタミン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジオクタデシル‐L‐α‐アスパラギン、N‐〔N‐〔N,N‐ビス〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕‐N,N‐ビス〔3‐〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕アミノプロピル〕‐L‐オルニチル‐N,N‐ジオクタデシル‐L‐グルタミニル〕‐L‐グルタミン酸、N‐〔N,N‐ビス(3‐アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジオレイル‐L‐グルタミン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジオレイル‐L‐α‐グルタミン、4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)ミリスチルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジオレイル‐L‐α‐アスパラギン、N‐〔N‐〔N,N‐ビス〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕‐N,N‐ビス〔3‐〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕アミノプロピル〕‐L‐オルニチル‐N,N‐ジオレイル‐L‐グルタミニル〕‐L‐グルタミン酸、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジン、N‐〔N,N‐ビス(3‐アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジパルミチル‐L‐グルタミン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジパルミチル‐L‐α‐グルタミン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジパルミチル‐L‐α‐アスパラギン、N‐〔N‐〔N,N‐ビス〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕‐N,N‐ビス〔3‐〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕アミノプロピル〕‐L‐オルニチル‐N,N‐ジパルミチル‐L‐グルタミニル〕‐L‐グルタミン酸、N‐〔N,N‐ビス(3‐アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジミリスチル‐L‐グルタミン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジミリスチル‐L‐α‐グルタミン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジミリスチル‐L‐α‐アスパラギン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)パルミチルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N‐〔N‐〔N,N‐ビス〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕‐N,N‐ビス〔3‐〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕アミノプロピル〕‐L‐オルニチル‐N,N‐ジミリスチル‐L‐グルタミニル〕‐L‐グルタミン酸、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)ミリスチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、N‐〔N,N‐ビス(3‐アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジラウレイル‐L‐グルタミン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジラウレイル‐L‐α‐グルタミン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジラウレイル‐L‐α‐アスパラギン、N‐〔N‐〔N,N‐ビス〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕‐N,N‐ビス〔3‐〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕アミノプロピル〕‐L‐オルニチル‐N,N‐ジラウレイル‐L‐グルタミニル〕‐L‐グルタミン酸、3‐〔N′,N″‐ビス(2-tert-ブチルオキシカルボニルアミノエチル)グアニジノ〕‐N,N‐ジオクタデカ‐9‐エニルプロピオンアミド、3‐〔N′,N″‐ビス(2-tert-ブチルオキシカルボニルアミノエチル)グアニジノ〕‐N,N‐ジパルミチルプロピオンアミド、3‐〔N′,N″‐ビス(2-tert-ブチルオキシカルボニルアミノエチル)グアニジノ〕‐N,N‐ジミリスチルプロピオンアミド、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジン、N,N‐(2‐ヒドロキシ‐3‐アミノプロピル)‐N‐2‐ヒドロキシプロピル‐3‐N,N‐ジオレイルアミノプロパン、N,N‐(2‐ヒドロキシ‐3‐アミノプロピル)‐N‐2‐ヒドロキシプロピル‐3‐N,N‐ジパルミチルアミノプロパン、N,N‐(2‐ヒドロキシ‐3‐アミノプロピル)‐N‐2‐ヒドロキシプロピル‐3‐N,N‐ジミリスチルアミノプロパン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)ミリスチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、〔(3‐アミノプロピル)‐ビス(2‐テトラデシルオキシエチル)〕メチルアンモニウムブロミド、〔(3‐アミノプロピル)‐ビス(2‐オレイルオキシエチル)〕メチルアンモニウムブロミド、〔(3‐アミノプロピル)‐ビス(2‐パルミチルオキシエチル)〕メチルアンモニウムブロミド、オレオイル‐2‐ヒドロキシ‐3‐N,N‐ジメチルアミノプロパン、2‐ジデカノイル‐1‐N,N‐ジメチルアミノプロパン、パルミトイル‐2‐ヒドロキシ‐3‐N,N‐ジメチルアミノプロパン、1,2‐ジパルミトイル‐1‐N,N‐ジメチルアミノプロパン、ミリストイル‐2‐ヒドロキシ‐3‐N,N‐ジメチルアミノプロパン、1,2‐ジミリストイル‐1‐N,N‐ジメチルアミノプロパン、(3‐アミノプロピル)‐4‐(3‐アミノプロピルアミノ)‐4‐テトラデシルカルバモイル‐ブチルカルバミン酸コレステリルエステル、(3‐アミノプロピル)‐4‐(3‐アミノプロピルアミノ)‐4‐カルバモイルブチルカルバミン酸コレステリルエステル、(3‐アミノプロピル)‐4‐(3‐アミノプロピルアミノ)‐4‐(2‐ジメチルアミノエチルカルバモイル)ブチルカルバミン酸コレステリルエステル、スペルミン‐5‐カルボキシグリシン(N′‐ステアリル‐N′‐オレイル)ア
ミド四トリフルオロ酢酸塩、スペルミン‐5‐カルボキシグリシン(N′‐ステアリル‐N′‐エライジル)アミド四トリフルオロ酢酸塩、アグマチニルカルボキシコレステロール酢酸塩、スペルミン‐5‐カルボキシ‐β‐アラニンコレステリルエステル四トリフルオロ酢酸塩、2,6‐ジアミノヘキサノイル‐β‐アラニンコレステリルエステル二トリフルオロ酢酸塩、2,4‐ジアミノブチロイル‐β‐アラニンコレステリルエステル二トリフルオロ酢酸塩、N,N‐ビス(3‐アミノプロピル)‐3‐アミノプロピオニルβ‐アラニンコレステリルエステル三トリフルオロ酢酸塩、〔N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐2‐アミノエチル〕アミノカルボキシコレステリルエステル、ステアリルカルニチンエステル、パルミチルカルニチンエステル、ミリスチルカルニチンエステル、ステアリルステアロイルカルニチンエステルクロリド塩、L‐ステアリルステアロイルカルニチンエステル、ステアリルオレオイルカルニチンエステルクロリド、パルミチルパルミトイルカルニチンエステルクロリド、ミリスチルミリストイルカルニチンエステルクロリド、L‐ミリスチルミリストイルカルニチンエステルクロリド、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、N‐(3‐アミノプロピル)‐N,N′‐ビス(ドデシルオキシエチル)ピペラジニウムブロミド、N‐(3‐アミノプロピル)‐N,N′‐ビス(オレイルオキシエチル)ピペラジニウムブロミド、N‐(3‐アミノプロピル)‐N,N′‐ビス(パルミチルオキシエチル)ピペラジニウムブロミド、N‐(3‐アミノプロピル)‐N,N′‐ビス(ミリスチルオキシエチル)ピペラジニウムブロミド、N‐(3‐アミノプロピル)‐N′‐メチル‐N,N′‐(ビス‐2‐ドデシルオキシエチル)ピペラジニウムブロミド、N‐(3‐アミノプロピル)‐N′‐メチル‐N,N′‐(ビス‐2‐オレイルオキシエチル)ピペラジニウムブロミド、N‐(3‐アミノプロピル)‐N′‐メチル‐N,N′‐(ビス‐2‐パルミチルオキシエチル)ピペラジニウムブロミド、N‐(3‐アミノプロピル)‐N′‐メチル‐N,N′‐(ビス‐2‐ミリスチルオキシエチル)ピペラジニウムブロミドを含有しうる。中性脂質としては、例えばDOPE、DPhPEまたはコレステロールであってもよい。
【0015】
他の態様において、トランスフェクション剤は少なくとも一種のポリアミントランスフェクション剤を含有してもよい。適切なポリアミンには、密集星型デンドリマー(dense star dendrimer)、PAMAMデンドリマー、NHコアデンドリマー、エチレンジアミンコアデンドリマー、第5世代以上のデンドリマー、置換基を有するデンドリマー、1以上のアミノ酸を有するデンドリマー、グラフト化デンドリマー、活性化デンドリマー、ポリエチレンイミン、およびポリエチレンイミン複合体がある。
【0016】
具体的態様において、融合促進アミノ酸配列はトランスフェクション剤、カチオン性脂質、中性脂質、および/またはポリアミンへ共有結合させてもよい。
【0017】
他の態様において、融合促進アミノ酸配列は核酸結合基へ接合させてよい。核酸結合基はポリアミンまたはペプチド核酸へ連結させてもよい。ポリアミンは少なくとも一つのスペルミン部分を含有してもよい。
【0018】
上記のような複合体は、融合誘導剤、核局在配列、輸送ペプチド、レセプター‐リガンド、および細胞接着ペプチドからなる群より選択される二種のトランスフェクション剤を含有てもよい。
【0019】
本発明は、上記のような複合体と製剤担体を含有した医薬組成物を更に提供する。
【0020】
本発明は、細胞を上記のような複合体と接触させることにより、細胞をトランスフェクトする方法を更に提供する。細胞としては初代細胞培養物、継代細胞培養物、または細胞系がある。適切な細胞としてはヒト細胞系および動物細胞系がある。細胞は線維芽細胞でもよい。
【0021】
一つの方法においては、核酸が融合剤と接触され、得られた混合物がカチオン性脂質および中性脂質の混合物へ加えられるが、ここで融合剤は非エンベロープウイルスの融合タンパク質から誘導される融合促進アミノ酸配列を含有する。
【0022】
他の方法においては、融合剤がトランスフェクション剤と接触され、次いでペプチド‐またはタンパク質‐核酸複合体を凝集させうる核酸またはタンパク質が加えられるが、ここで融合剤は非エンベロープウイルスの融合タンパク質から誘導される融合促進アミノ酸配列を含有する。
【0023】
本発明は、トランスフェクション剤と、トリレオウイルス、Nelson Bayレオウイルス、Pulauレオウイルス、またはトランスフェクション剤のトランスフェクションを高められるいずれかのレオウイルスの融合促進アミノ酸配列から誘導されるペプチドまたはタンパク質あるいは修飾ペプチドまたは修飾タンパク質を含有したキットを更に提供する。キットはカチオン性脂質トランスフェクション剤も含有しうる。カチオン性脂質トランスフェクション剤は、LipofectAmine 2000、LipofectAmine、Lipofectin、DMRIE‐C、CellFectin(Invitrogen)、Oligofectamine(Invitrogen)、LipofectAce(Invitrogen)、Fugene(Roche,Basel,Switzerland)、Fugene HD(Roche)、Transfectam(Tranfectam,Promega,Madison,WI)、Tfx‐10(Promega)、Tfx‐20(Promega)、Tfx‐50(Promega)、Transfectin(BioRad,Hercules,CA)、SilentFect(Bio-Rad)、Effectene(Qiagen,Valencia,CA)、DC‐chol(Avanti Polar Lipids)、GenePorter(Gene Therapy Systems,San Diego,CA)、DharmaFect 1(Dharmacon,Lafayette,CO)、DharmaFect 2(Dharmacon)、DharmaFect 3(Dharmacon)、DharmaFect 4(Dharmacon)、EscortIII(Sigma,St.Louis,MO)、およびEscortIV(Sigma)からなる群より選択される。キットはポリカチオン性ポリマートランスフェクション剤も含有してよく、診断用核酸も含有しうる。
【0024】
本発明は、細胞中への核酸のような高分子の輸送のために有用な新規カチオン性脂質、およびこのようなカチオン性脂質を含有する組成物を提供する。これらの新規カチオン性脂質は、下記式(I)による構造を有する:
【化1】

上記において、XおよびXは、独立して、(CH、(CHOH)、およびCONHからなる群より選択されてもよく、XおよびXは、独立して、(CH1‐6であり、WおよびWは、独立して、水素、‐OH、‐O‐(C‐C30)アルキル、‐O‐(C‐C30)アルケニル、‐O‐(C‐C30)アルキニル、‐NH、‐NH(CHCH、‐N((CHCH)、‐SH、および‐NH‐NHからなる群より選択されてもよく、Rおよび(Rは、独立して、N、NH、CH、N(CHCH、(CH)、(COH)、CON‐からなる群より選択されてもよく、q=0〜1であり、RおよびRは、独立して、(CH、(CH‐CHOH‐CH、(CHOH)、HNCO、CONH、CO、‐O‐、‐S‐、‐S‐S‐、ポリアミド、およびエステル結合鎖からなる群より選択されてもよく、LおよびLは、独立して、‐NH‐、‐O‐、‐NHCO‐、‐CONH‐、‐OCO‐、‐COO‐、‐CO‐、‐S‐、‐S‐S‐、‐NHC(O)O‐、‐OC(O)NH‐、‐NHCONH‐、‐NHC(=NH)NH‐、‐NH‐NH‐、‐S(O)‐、および‐SO‐からなる群より選択されてもよく、Yは少なくとも一つのアミンまたはアミド部分を含有するヘテロ環式部分であり、Yの結合点は炭素および/またはへテロ原子である。適切なヘテロ環式部分の例としてはピペラジン、ピペリジン、ピリジン、ピロリジン、およびイミダゾール部分およびそれらの誘導体があるが、それらに限定されない。具体的態様において、ヘテロ環式部分はピペラジン環であり、その結合点は場合により窒素原子の一方または双方における。ヘテロ環式部分は、OH、=O、カルボン酸、エーテル、ポリエーテル、アルキルアリール、アミノアルコール、アミド、直鎖アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、直鎖アルケニル、分岐アルケニル、シクロアルケニル、直鎖アルキニル、分岐アルキニル、一級アルキルアミン、二級アルキルアミン、三級アルキルアミン、四級アルキルアミン、アルケニルアミン、二級アルケニルアミン、三級アルケニルアミン、四級アルケニルアミン、アルキニルアミン、二級アルキニルアミン、三級アルキニルアミン、四級アルキニルアミン、アミノアルコール、アルコール、エーテル、ポリエーテル、アリール、ベンジル、ヘテロサイクル、シクロアルキル、アルキルポリアミン、アルケニルポリアミン、アルキニルポリアミン、スペルミジン、スペルミン、カルボキシスペルミン、グアニジニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、ピペラジニウム、およびアミノアシルからなる群より独立して選択される4以下の置換基で場合により置換されてもよく、ここでアルキル、アルケニル、アルキニル、およびアルキルアミン基は少なくとも一つのヒドロキシル、または少なくとも一つのアミン、または少なくとも一つのヒドロキシルおよび少なくとも一つのアミンで場合により置換され、RおよびRは、独立して、水素、一級アルキルアミン、二級アルキルアミン、三級アルキルアミン、四級アルキルアミン、アルケニルアミン、二級アルケニルアミン、三級アルケニルアミン、四級アルケニルアミン、アルキニルアミン、二級アルキニルアミン、三級アルキニルアミン、四級アルキニルアミン、アミノアルコール、アルキルポリアミン、アルケニルポリアミン、アルキニルポリアミン、スペルミジン、スペルミン、カルボキシスペルミン、グアニジニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、ピペラジニウム、アミノアシル、ペプチジル、およびタンパク質からなる群より選択されてもよく、ZおよびZは、独立して、直鎖アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、直鎖アルケニル、分岐アルケニル、シクロアルケニル、直鎖アルキニル、および分岐アルキニルからなる群より選択されてもよく、m、n、p、およびsは独立して0〜6であるが、但しm、n、およびpがすべて0である場合、Yは削除され、RがXへ直接結合される。一つの態様において、LおよびLは、独立して、‐NH‐、‐O‐、‐NHCO‐、‐CONH‐、‐NHC(O)O‐、‐OC(O)NH‐、‐NHCONH‐、‐NHC(=NH)NH‐、‐S(O)‐、および‐SO‐からなる群より選択されてもよく、他の態様において、LおよびLは、独立して、‐NH‐、‐NHCO‐、‐CONH‐、‐NHC(O)O‐および‐OC(O)NH‐からなる群より選択されてもよい。
【0025】
本発明の一つの態様によると、下記式(II)による構造を有する脂質が提供される:
【化2】

上記において、X、X、W、W、R、(R)、R、R、Y、R、R、Z、Z、m、n、p、およびsは前記と同義である。
【0026】
具体的態様において、Yは以下でもよい:
【化3】

上記において、XおよびXは、独立して、NおよびCHから選択され、nおよびnは独立して1〜10である。上記態様のいずれかにおいて、XおよびXはNであり、nおよびnは、独立して、1〜10である。例えば、nおよびnは双方とも2である。この環式構造は、Yに関して前記されたような4以下の置換基で場合により置換されてもよい。
【0027】
本発明の他の態様によると、式(I)の脂質と、中性、正荷電(例えば、カチオン性脂質)、または負荷電の補助脂質(co-lipid)を含有する組成物が提供される。補助脂質は、例えばDOPEまたはコレステロールであってもよく。カチオン性脂質としては、LipofectAmine2000、LipofectAmine、Lipofectin、DMRIE‐C、CellFectin、Oligofectamine、LipofectAce(Invitrogen)、Fugene、Fugene HD(Roche)、Transfectam、Tfx‐10、Tfx‐20、Tfx‐50(Promega)、Transfectin、SilentFect(Bio-Rad)、Effectene(Qiagen)、DC‐chol(Avanti Polar Lipids)、GenePorter(GTS)、DharmaFect 1、DharmaFect 2、DharmaFect 3、DharmaFect 4(Dharmacon)、EscortIII、またはEscortIV(Sigma)があるが、それらに限定されない。組成物は高分子、例えば、限定されないが、核酸を更に含有してもよい。このような核酸には、例えば一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNA(例えば、ssDNA、ssRNA、dsDNA、およびdsRNA)があり、天然または非天然塩基を含有しうる。核酸は、自己相補性でありかつ二本鎖RNAの領域を形成するRNA分子をコードする、プラスミドでもよい。核酸はsiRNAでもよい。これらの組成物はいずれも、例示にすぎないが、哺乳類細胞のような真核細胞を更に含有してもよい。
【0028】
本発明の更に他の態様によると、真核細胞を上記のような組成物と接触させることを含んでなる、細胞中へ高分子を導入する方法が提供される。
【0029】
本発明の他の態様によると、ペプチドまたはタンパク質と共に、ここで記載されているような式(I)の脂質を含んでなる組成物、または式(I)の脂質と上記のような補助脂質を含んでなる組成物が提供される。前記ペプチドまたはタンパク質は、核または他の細胞内局在、輸送または移送で機能するトランスフェクション促進ペプチドまたはタンパク質であってもよい。前記ペプチドまたはタンパク質は、細胞接着シグナル、細胞標的化シグナル、細胞インターナリゼーションシグナル、またはエンドサイトーシスシグナルおよびそれらの組合せを含んでなる、レセプターリガンドとして機能するトランスフェクション促進ペプチドまたはタンパク質でもよい。前記ペプチドまたはタンパク質は、エンベロープおよび非エンベロープウイルス、細菌、インスリン、トランスフェリン、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、細胞標的化抗体、ラクトフェリン、フィブロネクチン、アデノウイルスペントンベース、Knob、ヘキソンタンパク質、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質、セムリキ森林ウイルスコアタンパク質、インフルエンザ赤血球凝集素、肝炎Bコアタンパク質、HIV Tatタンパク質、単純ヘルペスウイルスVP22タンパク質、融合誘導ペプチドまたはタンパク質、レオウイルス融合タンパク質、ヒストンタンパク質、アルギニンリッチ細胞透過性タンパク質、高移動性群タンパク質、インベーシンタンパク質、インターナリンタンパク質、内毒素、ジフテリア毒素、赤痢菌毒素、メリチン、マガイニン、グラミシジン、セクロピン、デフェンシン、プロテグリン、タキプレシン、チオニン、インドリシジン、バクテネシン、ドロソマイシン、アピダエシン、カテリシジン、アダプチンタンパク質、殺菌性透過性促進タンパク質、ナイシン、ブホリン、またはそれらの断片から誘導されるペプチドおよびタンパク質からなる群より選択してもよい。これらの組成物は、場合によりプラスミドの形態で、二本鎖DNA分子のようなDNA分子である、核酸のような高分子を更に含有してもよい。プラスミドは、自己相補性でありかつ二本鎖RNAの領域を形成するRNA分子をコードしてもよい。核酸は二本鎖RNA分子、例えばsiRNAのようなRNA分子を含んでなる。これらの組成物は、真核細胞を上記のような組成物と接触させることにより、細胞中へ高分子、ペプチドまたはタンパク質を導入するために用いられる。前記ペプチドまたはタンパク質は、核または他の細胞内局在、輸送、または移送で機能するトランスフェクション促進ペプチドまたはタンパク質でも、スペルミン、スペルミジン、またはポリリシンで共有結合修飾された細胞接着シグナル、細胞標的化シグナル、細胞インターナリゼーションシグナルまたはエンドサイトーシスシグナルおよびそれらの組合せを含んでなるレセプターリガンドでもよい。
【0030】
本発明の他の態様によると、望ましい分子および脂質を含有する組成物または上記のような組成物と組織を接触させることを含んでなる、組織中へ望ましい分子を導入する方法が提供される。望ましい分子は、例えば核酸、ペプチド、またはタンパク質である。
【0031】
本発明の更に他の態様によると、式(I)の脂質を含んでなる、細胞をトランスフェクトするためのキットが提供される。
【0032】
他の態様において、本発明は、Yが以下である、前記のような複合体も提供する:
【化4】

上記において、X、X、n、およびnは前記と同義である。これらの複合体において、カチオン性脂質は1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)アルキルアミノ)プロピル〕ピペラジン脂質でもよい。前記の複合体において、融合促進アミノ酸配列は:
MLRMPPGSCNGATAVFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
MPRMPPGSCNGATAVFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
MSGDCAGLVSVFGSVHCQSSKNKAGGDLQATSILTTYWPH、
MSSDCAKIVSVFGSVHCQSSKNSAGGDLQATSVFTTYWPH、
MGQRHSIVQPPAPPPNAFVEIVSSSTGIIIAVGIFAFIFS、および
MGSGPSNFVNHAPGEAIVTGLEKGADKVAGTISHTIWEVI
からなる群より選択される配列の10〜30連続アミノ酸を含んでなるペプチドでもよい。
【0033】
前記ペプチドは、8〜30リシン残基へ共有結合された:
RMPPGSCNGATAVFGNVH、
GDCAGLVSVFGSVH、
SDCAKIVSVFGSVH、
QRHSIVQPPAPPPNAFVEIVS、
およびSGPSNFVNHAPGEAIVT
からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも10連続アミノ酸を含有してもよい。
【0034】
上記のキットにおいて、核酸結合部分と、レオウイルスの融合促進アミノ酸配列から誘導されるペプチドまたはタンパク質あるいは修飾ペプチドまたは修飾タンパク質が、同一容器中に存在してもよい。核酸結合部分、カチオン性脂質トランスフェクション剤、およびレオウイルスの融合促進アミノ酸配列から誘導されるペプチドまたはタンパク質あるいは修飾ペプチドまたは修飾タンパク質が、同一容器中に存在してもよい。キットはトランスフェクション促進試薬も含有してよい。一つの態様において、キットは、核酸結合部分、トランスフェクション促進試薬、カチオン性脂質トランスフェクション剤、およびレオウイルスの融合促進アミノ酸配列から誘導されるペプチドもしくはタンパク質または修飾ペプチドもしくは修飾タンパク質を含有し、それらが同一容器中に存在してもよい。
【0035】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい態様を示すが、単なる例示にすぎないと理解されるべきであり、本発明の精神および範囲内で様々な変更および修正がこの詳細な説明から当業者に明らかとなるからである。
【発明の具体的説明】
【0036】
真核細胞中へ高分子の改良された輸送のための組成物および方法が提供される。前記組成物および方法は様々な細胞において有効であり、高効率のトランスフェクションを呈する。特に、非エンベロープウイルスの融合タンパク質からの融合誘導ペプチドは、トランスフェクション剤、例えばカチオン性脂質、ポリカチオン性ポリマー、例えばPEIおよびデンドリマーにより媒介される真核細胞のトランスフェクションの効率を劇的に高められることがわかった。これらの融合誘導ペプチドは、真核細胞中へ高分子、例えば核酸を効率的に輸送するトランスフェクション複合体の一部として用いられる。
【0037】
様々な細胞および組織中へ高分子、例えば核酸、タンパク質、およびペプチドの導入のために有効な新規カチオン性脂質およびカチオン性脂質の組成物も提供される。インビトロまたはインビボで細胞中への高分子の輸送において高度に有効なリポソームまたは脂質集合体を形成するために、前記脂質は単独でまたは他の脂質、例えばDOPEまたはコレステロールと組み合わせて用いられる。ここで記載されているようなトランスフェクション複合体を製造するために、前記脂質は例えば融合誘導ペプチドと併用してもよい。単独でまたは組合せで前記脂質を用いて、標的細胞および組織中へ高分子を輸送するための方法も提供される。
【0038】
前記脂質は下記一般構造(式I)を有する:
【化5】

【0039】
本発明の分子はそれらの中性(非プロトン化)形で便宜上ここでは示されているが、これらの分子は適切なpHの溶液中に部分または完全プロトン化形で存在し、特に別記されない限り、本発明はそれらすべてのプロトン化、非プロトン化、イオン化、および非イオン化形の分子を限定せずに包含する、と当業者であれば認識するであろう。
【0040】
式Iの化合物において、XおよびXは、独立して、(CH、(CHOH)、およびCONHからなる群より選択されてよい。XおよびXは独立して(CH1‐6であってもよく。WおよびWは、独立して、水素、‐OH、‐O‐(C‐C30)アルキル、‐O‐(C‐C30)アルケニル、‐O‐(C‐C30)アルキニル、‐NH、‐NH(CHCH、‐N((CHCH)、‐SH、および‐NH‐NHからなる群より選択されてよい。RおよびRは、独立して、N、NH、CH、N(CHCH、(CH)、(COH)、CON‐からなる群より選択されてよく、q=0〜1である。RおよびRは、独立して、(CH、(CH‐CHOH‐CH、(CHOH)、HNCO、CONH、CO、‐O‐、‐S‐、‐S‐S‐、ポリアミド、およびエステル結合鎖からなる群より選択される。LおよびLは、独立して、‐NH‐、‐O‐、‐NHCO‐、‐CONH‐、‐OCO‐、‐COO‐、‐CO‐、‐S‐、‐S‐S‐、‐NHC(O)O‐、‐OC(O)NH‐、‐NHCONH‐、‐NHC(=NH)NH‐、‐NH‐NH‐、‐S(O)‐、および‐SO‐からなる群より選択されてもよい。
【0041】
Yは少なくとも一つのアミンまたはアミド部分を含有するヘテロ環式部分である。Yの結合点は炭素および/またはへテロ原子であってもよい。適切なヘテロ環式部分の例としてはピペラジン、ピペリジン、ピリジン、ピロリジン、およびイミダゾール部分およびそれらの誘導体があるが、それらに限定されない。具体的態様において、ヘテロ環式部分はピペラジン環であり、その結合点は場合により窒素原子の一方または双方における。ヘテロ環式部分は、OH、=O、カルボン酸、エーテル、ポリエーテル、アルキルアリール、アミノアルコール、アミド、直鎖アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、直鎖アルケニル、分岐アルケニル、シクロアルケニル、直鎖アルキニル、分岐アルキニル、一級アルキルアミン、二級アルキルアミン、三級アルキルアミン、四級アルキルアミン、アルケニルアミン、二級アルケニルアミン、三級アルケニルアミン、四級アルケニルアミン、アルキニルアミン、二級アルキニルアミン、三級アルキニルアミン、四級アルキニルアミン、アミノアルコール、アルコール、エーテル、ポリエーテル、アリール、ベンジル、ヘテロサイクル、シクロアルキル、アルキルポリアミン、アルケニルポリアミン、アルキニルポリアミン、スペルミジン、スペルミン、カルボキシスペルミン、グアニジニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、ピペラジニウム、およびアミノアシルからなる群より独立して選択される4以下の置換基で場合により置換されてもよく、ここでアルキル、アルケニル、アルキニル、およびアルキルアミン基は少なくとも一つのヒドロキシル、または少なくとも一つのアミン、または少なくとも一つのヒドロキシル、および少なくとも一つのアミンで場合により置換される。
【0042】
およびRは、独立して、水素、一級アルキルアミン、二級アルキルアミン、三級アルキルアミン、四級アルキルアミン、アルケニルアミン、二級アルケニルアミン、三級アルケニルアミン、四級アルケニルアミン、アルキニルアミン、二級アルキニルアミン、三級アルキニルアミン、四級アルキニルアミン、アミノアルコール、アルキルポリアミン、アルケニルポリアミン、アルキニルポリアミン、スペルミジン、スペルミン、カルボキシスペルミン、グアニジニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、ピペラジニウム、アミノアシル、ペプチジル、およびタンパク質からなる群より選択されてもよい。本発明の関係において、特に別記されない限り、アルキルアミンは短いまたは長いアルキル鎖を含有するアミンであることが理解されるであろう。同様に、アルケニルアミンは短いまたは長いアルケニル鎖を含有すると理解され、同様のことがアルキニルアミンにも当てはまる。
【0043】
およびZは、独立して、直鎖アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、直鎖アルケニル、分岐アルケニル、シクロアルケニル、直鎖アルキニル、分岐アルキニルからなる群より選択されてもよく、m、n、p、およびsは、独立して、0〜6であるが、但しm、n、およびpがすべて0である場合、Yは削除され、RがXへ直接結合される。
【0044】
Yは下記環式構造を有してもよい:
【化6】

上記において、XおよびXは、独立して、NおよびCHから選択されてもよく、nおよびnは独立して1〜10である。典型的には、Yは6〜9員環であり、例示の具体的態様において、XおよびXは双方ともNであり、nおよびnは双方とも2であり、即ちYは場合により置換されたピペラジン部分である。この構造は、Yに関して前記されたような1〜4の部分で場合により置換されてもよい。
【0045】
他の具体的態様において、Yは下記環式構造を有する:
【化7】

上記において、nおよびnは独立して1〜10である。典型的には、n+nは3〜7である。このような環式構造は、Yに関して前記されたように、独立して選択される1〜4の部分で場合により置換される。
【0046】
脂質の例は下記構造で規定されてもよく、ここでLおよびLは双方ともNHであり、XおよびXはCHである:
【化8】

この構造において、R〜R、W、W、X、X、Z、Z、Y、m、p、およびqは前記と同義である。
【0047】
上記式に含まれる本発明の脂質の具体例は、以下の実施例1において示された化合物5である:R、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CHOH‐CH、R、R=N、Z、Z=オレオイル、W、W=H、q、p、m=1、およびY=ピペラジン。他の具体例としては以下があるが、それらに限定されない:
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CHOH‐CH、R、R=N、Z、Z=パルミチル、W、W=H、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CHOH‐CH、R、R=N、Z、Z=ミリスチル、W、W=H、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CHOH‐CH、R、R=N、Z、Z=ラウリル、W、W=H、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CHOH‐CH、R、R=N、Z、Z=ステアリル、W、W=H、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CHOH‐CH、R、R=N、Z、Z=オレオイル、W、W=OH、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CHOH‐CH、R、R=N、Z、Z=パルミチル、W、W=OH、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CHOH‐CH、R、R=N、Z、Z=ミリスチル、W、W=OH、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CHOH‐CH、R、R=N、Z、Z=ラウリル、W、W=OH、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CHOH‐CH、R、R=N、Z、Z=ステアリル、W、W=OH、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CH‐CH、R、R=N、Z、Z=オレオイル、W、W=H、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CH‐CH、R、R=N、Z、Z=パルミチル、W、W=H、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CH‐CH、R、R=N、Z、Z=ミリスチル、W、W=H、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CH‐CH、R、R=N、Z、Z=ラウリル、W、W=H、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CH‐CH、R、R=N、Z、Z=ステアリル、W、W=H、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CH‐CH、R、R=N、Z、Z=オレオイル、W、W=OH、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CH‐CH、R、R=N、Z、Z=パルミチル、W、W=OH、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CH‐CH、R、R=N、Z、Z=ミリスチル、W、W=OH、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CH‐CH、R、R=N、Z、Z=ラウリル、W、W=OH、q、p、m=1、およびY=ピペラジン、
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CH‐CH、R、R=N、Z、Z=ステアリル、W、W=OH、q、p、m=1、およびY=ピペラジン。
【0048】
本発明のカチオン性脂質はこれらの具体例に限定されない、と当業者であればわかるであろう。
【0049】
本発明の関係において、短鎖アルキル基は典型的には、別記されない限りC‐Cアルキルである。長鎖アルキル基は典型的には、別記されない限りC10‐C20アルキルまたはC10‐C30アルキルである。明記されていない場合、どちらの定義も適宜に用いられる。アルキル部分を含有した他の誘導基、例えばアルコキシ部分なども、別記されない限り、状況に応じて適宜に短および/または長鎖基を含有してよい、と当業者であればわかるであろう。アルケニル基は少なくとも一つのシスまたはトランス炭素‐炭素二重結合を含有し、典型的には鎖長がC10‐C30である。例示アルケニル基は一つまたは二つのシス二重結合を含有し、そこでは二重結合が二置換されている。アルキニル基は少なくとも一つの炭素‐炭素三重結合を含有し、典型的には鎖長がC10‐C30である。アルキル、アルケニル、またはアルキニル基は直鎖でもまたは分岐でもよい。アルキル部分を含有した他の誘導基、例えばアルコキシ部分なども、別記されない限り、状況に応じて適宜に短および/または長鎖基を含有してよい、と当業者であればわかるであろう。
【0050】
本発明の脂質は、当業界で周知である方法により製造される。例えば、米国特許第5,334,761号、第5,264,618号、第5,744,335号、第5,527,928号、WO00/27795号、およびBenerjee et al.(J.Med.Chem.,44,4176(2001))参照、引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0051】
トランスフェクション複合体
一つの態様において、ここで提供されるトランスフェクション複合体は、細胞へ輸送される高分子、融合誘導ペプチドおよびトランスフェクション剤を含有する。前記複合体が形成され、次いでトランスフェクトされる細胞へ加えられる。他の態様において、高分子が核酸である場合、融合誘導ペプチドは核酸結合部分へ機能的に連結される。例えば、融合誘導ペプチドは、以下で更に詳細に記載されているように、核酸と結合するペプチド配列または他のポリカチオン性核酸結合部分へ連結される。機能的な連結は共有結合でも、または非共有でもよい。前記ペプチドと核酸結合部分との非共有結合の例は、前記ペプチドが結合対の第一メンバーを含有し、核酸結合部分が結合対の第二メンバーを含有し、結合対の第一および第二メンバーの会合が融合誘導ペプチドと核酸結合部分との機能的な連結をもたらす場合である。適切な結合対には、抗体および抗原、ストレプトアビジン/ビオチンなどがある。ある例示態様では、ここで開示されているような融合誘導ペプチドとトランスフェクション試薬を含有する複合体を用いて、トランスフェクション複合体が形成される。融合誘導ペプチドおよびトランスフェクション試薬を含有するこれらの複合体が本発明の他の態様を形成する。
【0052】
更に他の態様において、標的細胞中への前記複合体の侵入を容易にするか、または前記複合体の細胞内、細胞標的化を容易にするトランスフェクション促進剤も含有してよい。例示のトランスフェクション促進剤には、以下で更に詳細に記載されているように、核局在ペプチド、他の融合誘導ペプチドまたはタンパク質、細胞表面レセプターのリガンドなどがある。
【0053】
他の態様において、本発明のトランスフェクション複合体は、細胞へ輸送される高分子と、融合誘導ペプチドとを含有する。更に、追加の態様においては、トランスフェクション剤と融合誘導ペプチドを含有するトランスフェクション複合体がここでは提供される。ここで提供されるトランスフェクション複合体はいずれも、核局在配列のようなトランスフェクション促進剤を含有しうる。更に、ここで提供されるトランスフェクション複合体は核酸結合基を含有しうる。
【0054】
細胞中への高分子のトランスフェクション効率を高める融合誘導ペプチドが提供される。前記ペプチドは、非エンベロープレオウイルスの融合タンパク質から誘導されるアミノ酸配列を有する。様々な非エンベロープウイルスの融合タンパク質から誘導されるタンパク質、その断片、または修飾ペプチド、タンパク質および断片が本発明において用いられると当業者であればわかるであろうが、トリレオウイルス、Nelson Bayレオウイルス、およびPulauレオウイルスからのペプチドが特に有用であることを見出した。本発明の組成物および方法は、例示の態様において、このような非エンベロープウイルスからのペプチド、タンパク質、およびその断片、修飾ペプチド、修飾タンパク質、およびその修飾断片、ペプチド接合体、タンパク質接合体、およびその断片の接合体を含んでなる。
【0055】
これらのペプチドはトランスフェクション剤および高分子と複合化され、得られた複合体が培養中の細胞へ加えられ、高分子の効率的細胞内輸送をもたらす。本発明の複合体および方法は様々な高分子を細胞中へ輸送するために用いられるが、核酸の輸送に特に有用である。本発明の関係で核酸の輸送への言及は、他の高分子も核酸の代わりに通常用いうることを当業者へ伝えている、と理解されるであろう。
【0056】
他の態様では、より効率的なトランスフェクションを促す他のペプチド、タンパク質、その断片または修飾ペプチド、タンパク質およびその断片が、本発明の複合体と一緒に用いられる。一つの態様においては、複合体を加える前にこれらのペプチド、タンパク質、またはその断片が核酸へ結合または混和され、他の態様においては、前記ペプチド、タンパク質、またはその断片が核酸の添加前に複合体と混和または複合化される。一方、核酸が前記ペプチド、タンパク質などの添加前に複合体と組み合わされてもよい。
【0057】
融合誘導ペプチド
非エンベロープウイルスから誘導されるアミノ酸配列が、通常のトランスフェクション剤では難しい細胞、例えば初代細胞のような細胞中への高分子のトランスフェクションを促進する上で高度の効率的であることを、本発明者らは意外にも見出したのである。有利には、前記ペプチドは、非エンベロープ融合誘導レオウイルスによりコードされる融合関連小貫膜(FAST)タンパク質のN末端領域から誘導される配列を有する。
【0058】
これらのレオウイルスは、膜融合に続くシンシチウム形成で細胞へ入る。標的細胞の表面に局在して効率的な細胞‐細胞融合を誘導する、時にはFASTタンパク質と称される小さな非構造貫膜タンパク質により、シンシチウム形成が媒介される、と考えられる。Shmulevitz et al.,EMBO J.19:902(2000)、Cheng et al.,J.Virol.,79:1853(2005)。意外にも、これらの融合誘導タンパク質から誘導される短ペプチドが、細胞中への核酸を含有する人工複合体のトランスフェクションを効率的に促進することを、本発明者らは見出した。
【0059】
これらの融合誘導タンパク質から誘導されるあるペプチドは、本発明による融合促進アミノ酸配列の実例を付与する融合誘導ペプチドであると考えられる。ここで提供される組成物および方法に含まれる融合誘導ペプチドは、非エンベロープウイルスのいかなる融合誘導タンパク質から誘導してもよい。有利には、前記ペプチドは融合誘導タンパク質のN末端から誘導されるアミノ酸配列を含んでなる。典型的には、前記ペプチドは天然融合誘導タンパク質配列の最初の約50アミノ酸から誘導され、有利には融合誘導タンパク質のN末端から誘導される15〜25アミノ酸を含有するが、それより長いまたは短い配列も用いられる。ここで提供されるレオウイルスの単離融合誘導ペプチド自体が本発明の別の態様を形成する。
【0060】
レオウイルスFASTタンパク質は典型的には、N末端からC末端順序で、疎水性領域、貫膜領域、およびポリ塩基領域を含んでなる、保存N末端ドメイン構造を含有する。あるウイルスにおいて、疎水性領域はポリプロリンモチーフを含有するか、またはそれで置き換えられる。N末端は場合によりミリストイル化される。本発明で有用なペプチドは典型的には貫膜ドメイン前の疎水性領域から誘導されるが、貫膜ドメインの一部または全部が前記配列に含まれてもよい。貫膜ドメインを同定する方法は当業界で周知である。例えば、White.Annu.Rev.Physiol.,52:675-697(1990)参照。典型的な貫膜ドメインは、平均で29残基、0.7±0.09の平均疎水度、および16%±8%のアラニン+グリシン含有率を有するアミノ酸の連続配列である。
【0061】
前記ペプチドはN末端でミリストイル化されうるが、これは効率的トランスフェクションに必要なわけではない。脂肪酸部分の存在がトリレオウイルスおよびNelson Bayレオウイルスで膜融合に必須であると報告されていたことから、これは意外である。Shmulevitz et al.,J.Virol.77:9769(2003)。融合促進アミノ酸配列もカチオン性または中性脂質のような脂質へ機能的に連結させてよく、連結された部分も細胞中への高分子の輸送に用いられる。例えば、融合促進アミノ酸配列を含有するペプチドが、当業界で周知の方法を用いて、カチオン性脂質のような脂質へ機能的に連結される。
【0062】
レオウイルスFASTタンパク質が疎水性領域と貫膜ドメインとの間に保存領域を含有していることも、記載されていた。Shmulevitz et al.,J.Virol.77:9769(2003)参照。本発明の関係で有用なペプチドは場合によりこの保存領域からのアミノ酸を含む、しかしながら、下記例では、前記ペプチドはこれらのアミノ酸を欠く。
【0063】
Nelson BayレオウイルスFAST融合誘導タンパク質は下記配列を有する:
1 MSSDCAKIVS VFGSVHCQSS KNSAGGDLQA TSVFTTYWPH FAIGGGIIVV
51 ILLLGLFYCC YLKWKTSQVK HTYRRELIAL TRSHVHSTPS GISYV
【0064】
トリレオウイルスFAST融合誘導タンパク質の完全配列は以下である:
MLRMPPGSCN GATAI/VFGNVH CQAAQNTAGG DLQATSSIIA YWPYLAAGGG FLLIVIIFAI LYCCKAKVKA DAARSVFHRE LVALSSGKHN AMAPPYNV
【0065】
このタンパク質から誘導される本発明の関係で有用なプロトタイプペプチドは、プロトタイプトリレオウイルス融合誘導ペプチドと題する以下のセクションで提示された配列を有する。
【0066】
他のペプチドも本発明において用いられる融合タンパク質配列から誘導されうる、と当業者であればわかるであろう。特に、同類アミノ酸置換を含有するペプチドが用いられる。同類アミノ酸置換は当業界で周知である。典型的置換は、アミノ酸がサイズおよび/または電荷面で類似している場合に行える。例えば、リシンとアルギニン、アスパラギン酸とグルタミン酸、およびイソロイシンとバリンが、類似アミノ酸のペアである。アミノ酸ペア間の類似性を調べる方法が、いくつかの方法を用いて記載されていた。例えば、引用することにより本明細書の開示の範囲とされるDayhoff et al.(1978),Atlas of Protein Sequence and Structure,Volume 5,Supplement 3,Chapter 22,pages 345-352は、アミノ酸類似性の尺度として用いられるアミノ酸置換の度数表を示す。加えて、前記ペプチドが化学的ペプチド合成で最も都合よく作製されることから、非天然アミノ酸も公知の置換パターンを用いて置換しうる。例えば、2‐アミノ‐5‐ヘキサン酸がメチオニンの代わりに用いられる。
【0067】
本発明には、レオウイルス融合誘導タンパク質のN末端領域と規定内配列同一性を有するペプチドも含む。特に、例示態様におけるこれらのペプチドは、レオウイルスタンパク質保存領域および貫膜ドメイン前における、レオウイルス融合誘導タンパク質のN末端領域配列の約25以下の連続アミノ酸を含有する。前記ペプチドは、融合誘導ペプチド配列のN末端疎水性ドメインから少なくとも一部誘導される配列を典型的には含有する。下記式は、トリレオウイルスの疎水性(太字)、保存(下線)、および貫膜(二重下線)ドメインの概略位置を示す:
MLRMPPGSCNGATAIFGNVHCQAAQNTAGG DLQATSSIIAYWPYLAAGGGFLLIVIIFAI LYCCKAKVKA DAARSVFHRE LVALSSGKHN AMAPPYNV
【0068】
ある態様においては、レオウイルス融合誘導FASTタンパク質、例えばトリレオウイルス融合誘導FASTタンパク質のアミノ末端50アミノ酸またはそれから誘導されるペプチド、例えば配列RMPPGSCN GATAIFGNVHを有するトリレオウイルスペプチドの5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、45、50、または全アミノ酸と50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%配列同一性またはそれ以上の領域を有する、長さが少なくとも5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20アミノ酸でかつ75、70、60、50、40、30、または25アミノ酸以下であるペプチドが用いられる、と当業者であればわかるであろう。本発明の他の態様において、融合剤の融合誘導ペプチドは、長さが5〜50アミノ酸である配列を有し、レオウイルスFASTタンパク質の疎水性領域の少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14アミノ酸を含有し、疎水性領域および貫膜ドメイン間における保存領域の全部または一部を場合により含有しうる。配列同一性は、例えばGenetics Computer Group,University of Wisconsin Biotechnology Center,1710 University Avenue,Madison,Wis.53705のSequence Analysis Software Packegeのような配列解析ソフトウェアを用いて計算される。例えば、アミノ酸配列は、必要であれば、適切なアライメントを作製するギャップを用いて、同一性を最大化させるように配置される。同一率は、総数の位置に対して、両配列のアミノ酸が同一である位置のすべてを記録することにより計算される。
【0069】
本発明の融合誘導ペプチドが誘導されうるNelson Bayレオウイルス融合タンパク質は、下記配列を有する:
1 MSSDCAKIVS VFGSVHCQSS KNSAGGDLQA TSVFTTYWPH FAIGGGIIVV 51 ILLLGLFYCC YLKWKTSQVK HTYRRELIAL TRSHVHSTPS GISYV
【0070】
タンパク質の疎水性領域は太線で示されている。このタンパク質の最初の1〜50、有利には最初の1〜40、更に有利には最初の1〜25アミノ酸から誘導されるペプチドが本発明において用いられる。別な態様においては、レオウイルスの疎水性領域の少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、または全部のアミノ酸を含む、長さが5〜50アミノ酸であるペプチドが用いられる。他の態様において、有利には、前記ペプチドは上記のようなタンパク質の疎水性領域の大半または全部を含有する。同様に、ヒヒ(baboon)レオウイルスまたは爬虫類レオウイルスから誘導されるN末端ペプチドも用いられる。Corcoran et al.,J.Virol.,78:4342(2004)およびDawe et al.,J.Virol.,76:2131(2002)参照、それら各々の内容は引用することにより本明細書の開示の範囲とされる。他のレオウイルスからの融合誘導ペプチドのN末端領域から誘導されるペプチドも、現在知られているかまたは将来見出されるかにかかわらず、本発明において用いられる。別の具体例としては、野バリケンレオウイルスの融合誘導タンパク質から誘導されるペプチドがある。
【0071】
ある態様において、本発明の融合誘導ペプチドは長さが5〜50アミノ酸、好ましくは長さが10〜40アミノ酸であり、レオウイルスFASTタンパク質、実例としてトリレオウイルスFASTタンパク質の疎水性領域の少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14アミノ酸と少なくとも80、85、90、95、99、または100%同一である少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14連続アミノ酸を含んでいる。融合誘導ペプチドは、ある実例において、ポリカチオン性ペプチド配列を含む。
【0072】
プロトタイプトリレオウイルス融合誘導ペプチド
このセクションの具体例は本発明のプロトタイプトリレオウイルス融合誘導ペプチドを提供する。
【0073】
本発明によるペプチドの具体例として、長さが5〜50アミノ酸であり、下記配列の一つから5〜30連続アミノ酸を含有するペプチドがあるが、それに限定されない:
MLRMPPGSCNGATAVFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
MLRMPPGSCNGATAIFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
MPRMPPGSCNGATAVFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
MSGDCAGLVSVFGSVHCQSSKNKAGGDLQATSILTTYWPH、
MSSDCAKIVSVFGSVHCQSSKNSAGGDLQATSVFTTYWPH、
MGSGPSNFVNHAPGEAIVTGLEKGADKVAGTISHTIWEVI
MGQRHSIVQPPAPPPNAFVEIVSSSTGIIIAVGIFAFIFS、
MGSGPSNFVNHAPGEAIVTGLEKGADKVAGTISHTIWEVI。
【0074】
本発明によるペプチドの別な具体例として、下記配列の一つから少なくとも五つの連続アミノ酸を含有するペプチドがあるが、それに限定されない:
RMPPGSCNGATAVFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
RMPPGSCNGATAIFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
GDCAGLVSVFGSVHCQSSKNKAGGDLQATSILTTYWPH、
SDCAKIVSVFGSVHCQSSKNSAGGDLQATSVFTTYWPH、
SGPSNFVNHAPGEAIVTGLEKGADKVAGTISHTIWEVI、
QRHSIVQPPAPPPNAFVEIVSSSTGIIIAVGIFAFIFS、
SGPSNFVNHAPGEAIVTGLEKGADKVAGTISHTIWEVI。
【0075】
本発明によるペプチドの別な具体例として、下記配列の一つから全部で五つの連続アミノ酸を含有するペプチドがあるが、それに限定されない:
RMPPGSCNGATAVFGNVH、
RMPPGSCNGATAIFGNVH、
GDCAGLVSVFGSVHCQSS、
SDCAKIVSVFGSVHCQSS、
QRHSIVQPPAPPPNAFVE、
SGPSNFVNHAPGEAIVTG。
【0076】
これらのペプチドは、ポリカチオン性ペプチド配列または他の核酸結合部分へ、どちらかの末端で連結される。本発明は、前記ペプチドの一つと少なくとも約50、60、70、75、80、85、90、95、または99%配列同一性を有する、これらペプチドのバリアントも含む。
【0077】
これらの融合誘導ペプチドは、本発明のトランスフェクション複合体を製造するために、この形態で直接用いうる。有利には、しかしながら、効率的トランスフェクションを促すために、融合誘導ペプチドが核酸結合部分(または他の高分子結合部分)へ連結される。核酸結合部分は、核酸へ結合させるために用いられる多くの公知部分のいずれでもよい。有利には、前記結合部分がポリアニオン性核酸と静電気引力で結合するように、それはカチオン性またはポリカチオン性である。適切な核酸結合部分には、ポリカチオン性ペプチド、例えば高率のリシンおよび/またはアルギニン残基を含有するペプチド、スペルミン、またはスペルミジンなどのようなポリアミン、およびペプチド核酸がある。他の核酸結合部分は当業界において周知である。
【0078】
トランスフェクション複合体が形成される場合に、融合誘導ペプチドの非存在下において観察されるよりもトランスフェクションが高められるほど十分に、トランスフェクトされる核酸が融合誘導ペプチドと会合するように、融合誘導ペプチドは核酸結合部分へ機能的に連結される。これは有利には融合誘導ペプチドを核酸結合ドメインへ共有結合させることで行われるが、非共有会合も用いられる。融合誘導ペプチドと核酸結合ドメインの非共有会合を行わせるために、例えば前記ペプチドと結合ドメインは各々が具体的結合ペアのメンバーへ共有結合される。例えば、融合誘導ペプチドがビオチンへカップリングされ、結合ドメインがストレプトアビジンへカップリングされる。一方、前記ペプチドはハプテンへ連結させ、結合ドメインは抗体または抗体断片、例えばscFvへカップリングさせてもよい。
【0079】
有利には、しかしながら、融合誘導ペプチドと核酸結合ドメインは共有結合される。このような結合を行わせるために適したリンカーは当業界において周知であり、例えばPierce(Rockford,IL)から市販されている。融合誘導ペプチドはペプチド合成に際して二官能性リンカーで誘導され、このリンカーが次いで核酸結合ドメインとの共有結合を形成するために用いられる。一方、親核性アミノ酸誘導体が合成に際して融合誘導ペプチド配列へ導入され、前記ペプチドを核酸結合ドメインへカップリングするためにこの誘導体が用いられてもよい。
【0080】
最も好都合には、融合誘導ペプチドはペプチド合成に際してポリカチオン性ペプチド配列へ共有結合される。適切なポリカチオン性ペプチド配列は多数のリシン、オルニチン、および/またはアルギニン残基を含有するが、非天然アミノ酸を含めた他の塩基性アミノ酸も用いられる。典型的には、ポリカチオン性ペプチドは10〜30リシン、オルニチン、またはアルギニン残基を含有し、長さ5〜約50アミノ酸であるが、核酸と静電気結合するいかなるペプチド配列も用いうることが当業者であればわかるであろう。有利には、ポリカチオン性ペプチドは15〜20塩基性残基を含有し、長さ15〜30アミノ酸である。
【0081】
本発明によるペプチドの具体例として、15〜20連続リシン残基へ共有結合された、下記配列の一つから5〜30連続アミノ酸を含有する、長さ20〜50アミノ酸であるペプチドがあるが、それに限定されない:
MLRMPPGSCNGATAVFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
MPRMPPGSCNGATAVFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
MSGDCAGLVSVFGSVHCQSSKNKAGGDLQATSILTTYWPH、
MSSDCAKIVSVFGSVHCQSSKNSAGGDLQATSVFTTYWPH、
MGSGPSNFVNHAPGEAIVTGLEKGADKVAGTISHTIWEVI
MGQRHSIVQPPAPPPNAFVEIVSSSTGIIIAVGIFAFIFS、
MGSGPSNFVNHAPGEAIVTGLEKGADKVAGTISHTIWEVI。
【0082】
本発明によるペプチドの別な具体例として、15〜20連続リシン残基へ共有結合された、下記配列の一つから5〜30連続アミノ酸を含有するペプチドがあるが、それに限定されない:
RMPPGSCNGATAVFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
RMPPGSCNGATAIFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
GDCAGLVSVFGSVHCQSSKNKAGGDLQATSILTTYWPH、
SDCAKIVSVFGSVHCQSSKNSAGGDLQATSVFTTYWPH、
SGPSNFVNHAPGEAIVTGLEKGADKVAGTISHTIWEVI、
QRHSIVQPPAPPPNAFVEIVSSSTGIIIAVGIFAFIFS、
SGPSNFVNHAPGEAIVTGLEKGADKVAGTISHTIWEVI。
【0083】
本発明によるペプチドの別な具体例として下記配列の一つがあるが、それに限定されない:
RMPPGSCNGATAVFGNVHKKKKKKKKKKKKKKKK、
RMPPGSCNGATAIFGNVHKKKKKKKKKKKKKKKK、
GDCAGLVSVFGSVHCQSSKKKKKKKKKKKKKKKK、
SDCAKIVSVFGSVHCQSSKKKKKKKKKKKKKKKK、
QRHSIVQPPAPPPNAFVEKKKKKKKKKKKKKKKK、
SGPSNFVNHAPGEAIVTGKKKKKKKKKKKKKKKK。
【0084】
これらのペプチドは、核酸と結合する能力を前記ペプチドへ付与する16リシン残基を含有する。これらリシン残基の一部または全部が他の正荷電アミノ酸残基で置き換えられたペプチドも本発明が含む、とわかるであろう。
【0085】
トランスフェクション剤
本発明で用いられる複合体の追加成分はトランスフェクション剤である。本発明の関係で適切なトランスフェクション剤には、カチオン性およびポリカチオン性ポリマー、および/またはカチオン性およびポリカチオン性脂質がある。本発明で使用に適したカチオン性およびポリカチオン性ポリマーは当業界において知られ、例えば密集星型デンドリマー、PAMAMデンドリマー、NHコアデンドリマー、エチレンジアミンコアデンドリマー、第5世代以上のデンドリマー、置換基を有するデンドリマー、1以上のアミノ酸を有するデンドリマー、グラフト化デンドリマー、活性化デンドリマー、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン接合体(conjugate)、およびポリアルキレンイミンがある。本発明はこれらのポリカチオン性ポリマートランスフェクション剤の使用に限定されない、と当業者であればわかるであろう。
【0086】
有利には、トランスフェクション剤は脂質、好ましくはカチオン性脂質(またはカチオン性脂質および中性脂質の混合物)である。核膜を含む細胞膜を介したアニオン性核酸の導入を容易にするペプチド‐またはタンパク質‐核酸‐脂質集合体を形成するために、この脂質が用いられる。ペプチド‐またはタンパク質‐核酸複合体と脂質を含んでなる本発明のトランスフェクション組成物は、トランスフェクションを更に高めることが知られた他の非ペプチド剤を更に含有しうる。
【0087】
カチオン性脂質トランスフェクション組成物中におけるペプチド‐またはタンパク質‐核酸複合体あるいは修飾ペプチド‐またはタンパク質‐核酸複合体の含有は、カチオン性脂質単独により媒介される核酸のトランスフェクションと比較して、核酸のトランスフェクションを有意(2倍以上)に高められる。本発明のペプチドまたはタンパク質あるいは修飾ペプチドまたは修飾タンパク質またはそれらの断片によるポリカチオン性ポリマートランスフェクションの促進は、様々な細胞系、例えばヒト初代細胞系および“難トランスフェクト”であると当業者により通常みなされている細胞系で顕著である。
【0088】
一価または多価カチオン性脂質がカチオン性脂質トランスフェクション組成物で用いられる。例示の一価カチオン性脂質としては、DOTMA(N‐〔1‐(2,3‐ジオレオイルオキシ)プロピル〕‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリド)、DOTAP(1,2‐ビス(オレオイルオキシ)‐3‐(トリメチルアンモニウム)プロパン)、DMRIE(1,2‐ジミリスチルオキシプロピル‐3‐ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド)、DDAB(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド)、DC‐Chol(3‐(ジメチルアミノエタン)カルバモイルコレステロール)がある。好ましい多価カチオン性脂質はリポスペルミン、特にDOGS(ジオクタデシルアミノグリシルスペルミン)、DOSPA(2,3‐ジオレイルオキシ‐N‐〔2‐(スペルミンカルボキサミド)エチル〕‐N,N‐ジメチル‐1‐プロパンアミニウムトリフルオロ酢酸塩)、およびDOSPER(1,3‐ジオレオイルオキシ‐2‐(6‐カルボキシスペルミル)プロピルアミド)、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアルキルオキシプロピル)‐2‐ヒドロキシプロパン‐1,3‐ジアミン、例えば限定されないが、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアオレオイルオキシプロピル)‐2‐ヒドロキシプロパン‐1,3‐ジアミン、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアミリスチルオキシプロピル)‐2‐ヒドロキシプロパン‐1,3‐ジアミン、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアパルミチルオキシプロピル)‐2‐ヒドロキシプロパン‐1,3‐ジアミン、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアルキルオキシプロピル)‐2‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピルオキシ)プロパン‐1,3‐ジアミン、例えば限定されないが、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアオレオイルオキシプロピル)‐2‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピルオキシ)プロパン‐1,3‐ジアミン、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアミリスチルオキシプロピル)‐2‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピルオキシ)プロパン‐1,3‐ジアミン、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアパルミチルオキシプロピル)‐2‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピルオキシ)プロパン‐1,3‐ジアミン、ジ‐およびテトラ‐アルキル‐テトラ‐メチルスペルミン、例えば限定されないが、TMTPS(テトラメチルテトラパルミトイルスペルミン)、TMTOS(テトラメチルテトラオレイルスペルミン)、TMTLS(テトラメチルテトララウリルスペルミン)、TMTMS(テトラメチルテトラミリスチルスペルミン)およびTMDOS(テトラメチルジオレイルスペルミン)、並びに1,4‐ビス〔(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)アルキルアミノ〕ブタン‐2,3‐ジオール、例えば限定されないが、1,4‐ビス〔(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレイルアミノ〕ブタン‐2,3‐ジオール、1,4‐ビス〔(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)パルミチルアミノ〕ブタン‐2,3‐ジオール、1,4‐ビス〔(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)ミリスチルアミノ〕ブタン‐2,3‐ジオール、1,4‐ビス(3‐アルキルアミノプロピル)ピペラジン、例えば限定されないが、1,4‐ビス〔(3‐オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジン、1,4‐ビス〔(3‐ミリスチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、1,4‐ビス〔(3‐パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)アルキルアミノ)プロピル〕ピペラジン、例えば限定されないが、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)ミリスチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)アルキルアミノ)プロピル〕ピペラジン、例えば限定されないが、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)ミリスチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)アルキルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、例えば限定されないが、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)ミリスチルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンである。
【0089】
ある実例において、カチオン性脂質は、以下で更に詳細に記載されているような式(I)の脂質、例えば1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)アルキルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンである。用いられる他のカチオン性脂質としては、市販剤LipofectAmine2000、LipofectAmine、Lipofectin、DMRIE‐C、CellFectin(Invitrogen)、Oligofectamine(Invitrogen)、LipofectAce(Invitrogen)、Fugene(Roche,Basel,Switzerland)、Fugene HD(Roche)、Transfectam(Tranfectam,Promega,Madison,WI)、Tfx‐10(Promega)、Tfx‐20(Promega)、Tfx‐50(Promega)、Transfectin(BioRad,Hercules,CA)、SilentFect(Bio-Rad)、Effectene(Qiagen,Valencia,CA)、DC‐chol(Avanti Polar Lipids)、GenePorter(Gene Therapy Systems,San Diego,CA)、DharmaFect 1(Dharmacon,Lafayette,CO)、DharmaFect 2(Dharmacon)、DharmaFect 3(Dharmacon)、DharmaFect 4(Dharmacon)、EscortIII(Sigma,St.Louis,MO)、およびEscortIV(Sigma)がある。
【0090】
カチオン性脂質は、非カチオン性脂質、特に中性脂質、例えばDOPE(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)、DPhPE(ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミン)またはコレステロールのような脂質と場合により組み合わされる。比率は1:1(モル)〜4:1(モル)のカチオン性対中性脂質である。1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジン、およびコレステロールの1:1〜4:1混合物、並びに1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびコレステロールの1:1〜4:1混合物から構成されるカチオン性脂質組成物のトランスフェクション性質が、本発明のペプチドおよびタンパク質により有意に高められる。
【0091】
1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびコレステロールの1:1〜4:1混合物、並びに1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびコレステロールの1:1〜4:1混合物から構成されるカチオン性脂質組成物のトランスフェクション性質が、本発明のペプチドおよびタンパク質により有意に高められる。
【0092】
DOSPAおよびDOPEの3:1(w/w)混合物またはDOTMAおよびDOPEの1:1(w/w)混合物から構成されるカチオン性脂質組成物が本発明のトランスフェクション組成物で通常有用であるが、多くの他の組成物も用いうることは明らかであろう。好ましいトランスフェクション組成物は、高等真核細胞系の実質的トランスフェクションを誘導するものである。ポリカチオン性ポリマートランスフェクション組成物中におけるペプチド‐もしくはタンパク質‐核酸または修飾ペプチド‐もしくはタンパク質‐核酸複合体の含有は、ポリカチオン性ポリマー(例えば、デンドリマー)単独によりまたはDEAE‐デキストラン、クロロキンまたは双方と組み合わせて媒介される核酸のトランスフェクションと比較して、核酸のトランスフェクションを有意(2倍以上)に高められる。ペプチド、タンパク質、修飾ペプチド、または修飾タンパク質によるトランスフェクションの促進は、様々な細胞系、例えばヒト初代細胞系および“難トランスフェクト”であると当業者により通常みなされている細胞系において顕著である。
【0093】
式(I)の脂質の製造
式(I)の脂質は、以下において一般的に記載され、かつ実施例において更に詳細に記載されているように合成される。これら方法の変法または当業界において周知である他の方法を用いてこれらクラスの脂質の他のメンバーも合成されうる、と当業者であればわかるであろう。
【0094】
1,4‐ビス(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)ピペラジンのようなアミン含有環式部分は、例えばN‐(2,3‐エポキシプロピル)フタルイミドでのピペラジンのアルキル化、次いでヒドラジン水和物を用いたフタルアミド基の除去により製造される。得られた1,4‐ビス(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)ピペラジンは、活性化カルボキシル化合物、例えばアルキル酸クロリドまたはアルケニル酸クロリド、例えばオレオイルクロリドでアシル化される。得られたアミドは例えば水素化アルミニウムリチウムで還元され、得られた二級アミンはハロアルキルフタルイミド、例えば3‐ブロモプロピルフタルイミドを用いてアルキル化される。フタルイミド部分は例えばヒドラジン水和物を用いて除去され、得られたアミンは望ましいカチオン性脂質を得るためにHClまたはトリフルオロ酢酸のような酸でプロトン化される。この一般的反応スキームが本発明の様々なカチオン性脂質を製造するために用いられる、と当業者であればわかるであろう。例えば、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレオイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンまたは1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)アルキルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン(アルキルはC10‐C30アルキル鎖を構成する)が合成される。置換へテロ環式環は、当業界において周知である方法を用いて製造される。例えば、二置換ピペラジン部分は、例えばJ.Med.Chem.39:1345(1996)において記載されているような適切な還元剤でラクタム基の還元により、ジケトピペラジン化合物から製造されてもよい。
【0095】
トランスフェクション促進剤
融合誘導ペプチド、オプションの核酸結合ドメイン、核酸、およびトランスフェクション剤の間で形成される複合体は、核または他の細胞内局在において機能し、輸送または移送で機能し、レセプターリガンドであり、細胞接着シグナル、細胞標的化シグナル、細胞インターナリゼーションシグナル、またはエンドサイトーシスシグナルを含んでなるタンパク質またはペプチド、並びにエンベロープウイルスのウイルス融合誘導タンパク質、ウイルス核局在シグナル、レセプターリガンド、細胞接着シグナル、細胞標的化シグナルまたはインターナリゼーションもしくはエンドサイトーシス誘発シグナルのペプチドまたはその機能性部分のような部分の含有により更に高められてもよい。
【0096】
トランスフェクション促進剤の例としては、インスリン、トランスフェリン、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、細胞標的化抗体、ラクトフェリン、フィブロネクチン、アデノウイルスペントンベース、Knob、ヘキソンタンパク質、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質、セムリキ森林ウイルスコアタンパク質、インフルエンザ赤血球凝集素、肝炎Bコアタンパク質、HIV Tatタンパク質、単純ヘルペスウイルスVP22タンパク質、ヒストンタンパク質、アルギニンリッチ細胞透過性タンパク質、高移動性群タンパク質、インベーシンタンパク質、インターナリンタンパク質、内毒素、ジフテリア毒素、赤痢菌毒素、メリチン、マガイニン、グラミシジン、セクロピン、デフェンシン、プロテグリン、タキプレシン、チオニン、インドリシジン、バクテネシン、ドロソマイシン、アピダエシン、カテリシジン、殺菌性透過性促進タンパク質、ナイシン、ブホリン、およびそれらの断片があるが、それらに限定されない。
【0097】
本発明のいかなるタンパク質またはペプチド(またはその断片もしくは部分)も、単独でまたは他のタンパク質またはペプチドと組み合わせて、本発明に従い用いられる。好ましい態様においては、二種以上、三種以上、四種以上、五種以上、六種以上などのタンパク質および/またはペプチドが本発明において用いられる。加えて、このような単一または多種のタンパク質および/またはペプチドが一種以上、二種以上、三種以上、四種以上、五種以上、六種以上などのトランスフェクション剤と併用されうる。他の好ましい態様においては、少なくとも二種のペプチドおよび/またはタンパク質が、トランスフェクション剤、好ましくは少なくとも二種のトランスフェクション剤、例えば脂質および/またはポリカチオン、例えばデンドリマーまたはPEIと併用される。
【0098】
融合誘導ペプチドを含有する複合体の製造および使用
本発明の方法においては、少なくとも前記のような融合誘導ペプチド、トランスフェクション剤、および核酸を含んでなるトランスフェクション複合体と何らかの細胞、好ましくは真核細胞を接触させる。前記複合体は、一種以上の追加ペプチドまたはタンパク質、例えば融合誘導、膜透過性、輸送、もしくは移送細胞内局在、またはレセプター‐リガンドペプチドもしくはタンパク質も場合により含有してよい。これらの追加ペプチドもしくはタンパク質は場合により核酸結合基へ接合され、または場合によりトランスフェクション剤(脂質またはポリカチオン性ポリマー)へ接合され、そこで前記ペプチドまたはタンパク質あるいは修飾ペプチドまたはタンパク質が核酸と非共有会合される。いかなる理論にも拘束されることなく、本出願人らは本発明の複合体がリポソーム構造を典型的に含有する脂質集合体であると考えているが、これら構造の正確な性質は現在未知である。したがって、ある実例において、本発明の複合体はリポソーム複合体である。複合体全体または複合体の一部、例えば脂質部分、例えば式Iの脂質は、例えば当業界における周知のリバースエバポレーションの方法を用いて、リポソームへ処方される。一方、複合体の脂質部分または複合体全体は、超音波処理またはミクロ流動化のようなリポソーム形成のための他の周知方法により処方してもよい。これらのリポソーム処方体はDNAを培養細胞中へトランスフェクトするために有効である。
【0099】
一つの態様において、本発明の融合誘導ペプチドまたはタンパク質および核酸を含有する複合体(融合誘導ペプチドまたはタンパク質は核酸結合基へ接合させてもよい)が最初に形成され、次いでトランスフェクションのために式Iの脂質のようなカチオン性脂質と組み合わされる。関連態様においては、ペプチドまたはタンパク質‐脂質接合体がいずれか適切なカチオン性脂質を含めた他の脂質と場合により組み合わされ、次いでトランスフェクションのために核酸と組み合わされる。他の関連態様においては、核酸‐脂質複合体が形成され、次いでトランスフェクションのために融合誘導ペプチドまたはタンパク質と組み合わされる。上記のように、これら態様のいずれの脂質含有複合体もリポソームまたは非リポソーム処方体である。更に、これらの態様で形成されるいずれの複合体も、細胞をトランスフェクトする前に、例えば5分間〜1年間、15分間〜6月間、または1時間〜3月間保存しうる。ペプチドまたはタンパク質‐脂質接合体の場合に、このような接合体は、核酸と混合する前に、例えば5分間〜1年間、15分間〜6月間、または1時間〜3月間保存しうる。
【0100】
他の態様において、融合誘導ペプチドまたはタンパク質および核酸を含有する複合体(融合誘導ペプチドまたはタンパク質は核酸結合基へ接合させてもよい)が形成され、次いでトランスフェクションのためにポリカチオン性ポリマーと組み合わされる。関連態様においては、ペプチド‐ポリカチオン性ポリマー接合体が場合により他のポリカチオン性ポリマーと組み合わされ、次いでトランスフェクションのために核酸と組み合わされる。他の関連態様においては、核酸‐ポリカチオン性ポリマー複合体が形成され、次いでトランスフェクションのためにペプチドまたはタンパク質と組み合わされる。改良された核酸トランスフェクション組成物を得るために、ポリカチオン性ポリマーおよび/またはペプチド接合ポリカチオン性ポリマーがカチオン性脂質およびカチオン性脂質組成物と組み合わせうる。本発明によると、多種のペプチドおよび/またはタンパク質がトランスフェクションを行うために加えうる。
【0101】
ペプチドまたはタンパク質‐脂質接合体および核酸を含んでなる本発明のトランスフェクション組成物は、トランスフェクションを更に高めることが知られた他の非ペプチドまたは非タンパク質剤を更に含有しうる。
【0102】
ペプチドまたはタンパク質‐ポリカチオン性ポリマー接合体および核酸を含んでなる本発明のトランスフェクション組成物は、ポリカチオン性ポリマートランスフェクションを更に高めることが知られた他の非ペプチド剤を更に含有でき、例えばポリカチオン性ポリマートランスフェクションはDEAE‐デキストランおよび/またはクロロキンの添加により高められる。
【0103】
一つの具体的な態様において、有利にはアミノ酸のポリカチオン性配列を含有した融合誘導ペプチドまたはタンパク質が、細胞中へ導入される核酸と最初に結合される。ペプチドまたはタンパク質‐核酸複合体が次いでトランスフェクション剤(または前記剤の混合物)と混合され、得られた混合物が細胞をトランスフェクトするために用いられる。好ましいトランスフェクション剤はカチオン性脂質組成物、例えば式(I)の脂質を含有するもの、特に一価および多価カチオン性脂質組成物、更に具体的には1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびコレステロールの1:1〜4:1混合物、並びに1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびコレステロールの1:1〜4:1混合物から構成されるカチオン性脂質組成物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびコレステロールの1:1〜4:1混合物、並びに1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびコレステロールの1:1〜4:1混合物から構成されるカチオン性脂質組成物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンおよびコレステロールの1:1〜4:1混合物、並びに1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンおよびコレステロールの1:1〜4:1混合物から構成されるカチオン性脂質組成物である。
【0104】
第二の具体的なトランスフェクション方法においては、トランスフェクション促進ペプチドまたはタンパク質が修飾ペプチドまたはタンパク質を作製するために核酸結合基、例えばポリアミン、更に具体的にはスペルミンへ接合され、次いでこれが細胞中へ導入される核酸と結合される。修飾ペプチド‐核酸複合体は次いでトランスフェクション剤(またはその混合物)と混合され、得られた混合物が細胞をトランスフェクトするために用いられる。特に、前記ペプチドまたはタンパク質はスペルミンへ共有結合で接合され、スペルミン‐修飾ペプチドまたはタンパク質が核酸と複合化され、カチオン性脂質と混合される。好ましいトランスフェクション剤はカチオン性脂質組成物、特に一価および多価カチオン性脂質組成物、更に具体的には1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびコレステロールの1:1〜4:1混合物、並びに1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびコレステロールの1:1〜4:1混合物から構成されるカチオン性脂質組成物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジン、およびコレステロールの1:1〜4:1混合物、並びに1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびコレステロールの1:1〜4:1混合物から構成されるカチオン性脂質組成物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンおよびコレステロールの1:1〜4:1混合物、並びに1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンおよびコレステロールの1:1〜4:1混合物から構成されるカチオン性脂質組成物である。
【0105】
第三の具体的態様においては、融合誘導ペプチドまたはタンパク質、輸送もしくは移送ペプチドまたはタンパク質、レセプター‐リガンドペプチドまたはタンパク質、核局在ペプチドまたはタンパク質、および/またはそれらの修飾アナログ(例えば、スペルミン修飾ペプチドまたはタンパク質)またはそれらの組合せを含めた一種以上のトランスフェクション促進ペプチド、タンパク質、またはタンパク質断片の混合物が、非エンベロープウイルスの融合誘導タンパク質からのアミノ酸配列と混合され、細胞中へ導入される核酸と複合化される。ペプチド‐核酸複合体は次いでトランスフェクション剤と混合され、得られた混合物が細胞とトランスフェクトするために用いられる。ある態様においては、トランスフェクション促進ペプチド、タンパク質、またはタンパク質断片の混合物が、核酸と複合化される前に保存される。
【0106】
他の具体的態様においては、トランスフェクション剤の成分(脂質、カチオン性脂質、デンドリマー、またはPEI)が、選択されたペプチド、タンパク質、またはタンパク質断片と、直接にまたは連結もしくはスペーサー基を介して共有結合で接合される。この態様において特に興味深いのは、非エンベロープウイルスからの融合誘導タンパク質である、ペプチドまたはタンパク質である。
【0107】
非エンベロープウイルスの融合誘導ペプチドを含有する複合体の例示使用
本発明の複合体および方法、特にここで提供される複合体を含有するトランスフェクション組成物に関するものは、細胞、特に真核細胞のインビトロおよびインビボトランスフェクション、更に具体的には動物細胞を含めた高等真核細胞のトランスフェクションに用いられる。本発明の方法は、有用な遺伝子産物を発現するトランスフェクト細胞を作製するために用いられる。本発明の方法は、トランスジェニック動物の作製においても一工程として用いられる。本発明の方法は、遺伝子療法およびウイルス阻害の方法を含めた細胞中への核酸の導入を要する治療法に、および細胞中へのアンチセンスまたはアンチジーン核酸、リボザイム、RNA調節配列、siRNA、RNAi、StealthRNAi(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)または関連阻害もしくは調節核酸の導入のために、一工程として有用である。特に、これらの方法は癌治療、インビボおよび半ビボ遺伝子療法、並びに診断法において有用である。
【0108】
ペプチド、タンパク質、ペプチド、またはタンパク質断片、修飾ペプチドまたは修飾タンパク質を含んでなる本発明のトランスフェクション組成物および方法は、研究目的で行われる真核細胞のトランスフェクションにおいてリサーチ剤としても用いられる。
【0109】
したがって、ここで提供されるのは、トランスフェクション剤および融合剤を含んでなる複合体と核酸を含有するトランスフェクション組成物を形成し(前記融合剤は非エンベロープウイルスの融合タンパク質から誘導される融合促進アミノ酸配列を含む)、真核細胞を前記トランスフェクション組成物と接触させることを含んだ、高分子を細胞中へ導入する方法である。ここで実施例セクションにおいて提示されるのは、本発明の組成物を用いて真核細胞をトランスフェクトするための実例プロトコールである。ここで開示されているように、実例における融合剤は、レオウイルスのFASTタンパク質から誘導される融合ペプチド、有利には、長さが5〜50アミノ酸であり、融合ペプチドの少なくとも10連続アミノ酸がレオウイルスFASTタンパク質の疎水性領域と少なくとも75、80、85、90、95、または100%同一である融合ペプチド、およびポリカチオン性ペプチド配列である。
【0110】
以下の実施例セクションにおいて例示されているように、核酸または他の高分子の容量および濃度、ここで提供されるトランスフェクション複合体の容量および濃度、希釈剤の容量および組成と、細胞の容量および濃度は、例えば細胞傷害性アッセイを利用する方法および/またはリポーター遺伝子、例えばβ‐ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、および/または蛍光タンパク質を発現する核酸発現ベクターを用いてトランスフェクションを利用する方法を含めた、このような最適化および滴定のための標準実験アプローチを用いて定められる。更に、細胞密度は標準法を用いて最適化され、ここで提供されるトランスフェクション複合体を用いたトランスフェクションのための細胞密度は、例えば高密度>75%から低密度<50%までである。
【0111】
複合体形成のための例示の希釈剤としては、例えば低血清または無血清培地、例えばD‐MEMおよびRPMI1640およびOptiPro、Opti-MEM(Invitrogen Corporation)がある。複合体を形成するためのインキュベート時間はルーチン法を用いて定められるが、典型的インキュベート時間は5〜240分間である。加えて、トランスフェクション前および後で細胞の培養のための培地が、トランスフェクトされる細胞系に基づきまたは本方法の具体的適用に基づき選択される、と理解されるであろう。例えば、懸濁細胞でタンパク質の産生の場合は、例示態様において、低血清または有利には無血清培地が用いられる。ある例示態様においては、293 Expression Medium(Invitrogen Corporation)およびCD‐CHO Medium(Invitrogen Corporation)のような無動物源培地が用いられるが、それらに限定されない。ある態様においては、トランスフェクトされる細胞種に応じて、抗生物質がトランスフェクション後培地から除去される。細胞のトランスフェクション後培養のためのインキュベート時間は細胞種およびトランスフェクションで望まれる結果に応じて変わるが、典型的には2時間〜7日間である。大規模タンパク質産生の場合は、非限定的な例として1日間〜7日間にわたり細胞がインキュベートされる。
【0112】
様々な濃度のトランスフェクション剤および融合剤がここで提供される複合体、組成物、および方法において用いられる、と理解されるであろう。例えば、カチオン性脂質および融合誘導ペプチドの複合体を含有する組成物の非限定的な実例において、組成物中におけるカチオン性脂質および融合誘導ペプチドの非制限総濃度は1mg/mL〜4mg/mLである。1mg/mLの脂質へ加えられるペプチドの範囲は100μg/mL〜3mg/mLである。カチオン性脂質対ヘルパー脂質の比率は0.5/1.0(モル)〜純粋化合物である。
【0113】
本発明に従いトランスフェクトされる細胞は、例えば、初代細胞、培養中の細胞、および培養組織中の細胞を含めて、事実上いかなる真核細胞でもよい。細胞は接着細胞でもまたは懸濁中の細胞でもよい。ある例示の態様において、細胞は懸濁CHO‐S細胞および懸濁293‐F細胞である。懸濁細胞培養物がここで提供されるタンパク質産生法では特に好適である。本発明の剤および方法を用いてトランスフェクトされる他の細胞には、293、例えばGripTite 293MSR(Invitrogen Corporation)、CHO、Cos7、NIH3T3、Hela、初代線維芽細胞、A549、Be2C、SW480、Caco2、初代ニューロン、Jurkat、C6、THP1、IMR90、HeLa、ChoKI、GT293、MCF7、HT1080、LnCap、HepG2、PC12、SKBR3、およびK562細胞があるが、それらに限定されない。
【0114】
ここで提供されるある態様においては、細胞をトランスフェクトするために用いられる複合体にトランスフェクション促進剤が含有される。例えば、トランスフェクション促進剤は核局在ペプチドである。一つの例において、トランスフェクション促進剤はPLUS試薬(Invitrogen Corporation)である。ここで提供されるようなトランスフェクション組成物と一緒に用いられた場合、PLUS試薬の添加はタンパク質発現を高めることが示されていた。発現はNIH3T3、Jurkat、C6、Cos7、THP1、IMR90、LnCap、HepG2、PC12、およびK562細胞において高められた。PLUS試薬の使用で細胞傷害性は影響されなかった。
【0115】
他の態様において、ここで提供されるのは、タンパク質をコードする核酸分子で細胞をトランスフェクトし、タンパク質を産生するために細胞をインキュベートし、タンパク質を集めることを含んでなる、タンパク質を産生するための方法であり、トランスフェクティングは細胞を本発明のトランスフェクション組成物と接触させることにより行われる。細胞をトランスフェクトするための組成物は、ここで提供されるようないかなる組成物でもよい。例示組成物は、対象のタンパク質をコードする核酸分子、融合剤、および典型的にはトランスフェクション剤を含有し、前記融合剤は非エンベロープウイルスの融合タンパク質、例えばレオウイルスタンパク質から誘導される融合促進アミノ酸配列を含有する。
【0116】
例示態様において、コードされるタンパク質は抗体分子、もしくは抗原結合断片またはその誘導部分、例えば一本鎖Fv断片である。これらの態様において、例えば抗体結合カラムでアフィニティー精製を用いることにより、前記方法ではタンパク質を単離することを更に含む。ある例においては、抗体の両鎖をコードする核酸が、ここで提供されるトランスフェクション組成物を用いて細胞中へトランスフェクトされる。
【0117】
タンパク質をコードする核酸は発現ベクターでもよい、と理解されるであろう。発現ベクターは典型的には、1以上のタンパク質鎖をコードする1以上の核酸配列へ機能的に連結されたプロモーターを有する。産生されるタンパク質が医薬品である場合、前記タンパク質はそれに応じて、例えば生理的媒体の適切な選択で処方される。
【0118】
ここで提供されるトランスフェクション組成物は、当業界において知られている方法を用いて、ペプチドおよびタンパク質などを細胞中へ導入するためにも用いられる。ペプチドおよびタンパク質輸送のためにカチオン性脂質を用いる方法が以前に記載されていた。加えて、トランスフェクション組成物は核酸、ペプチド、およびタンパク質などをインビボで組織中へ輸送するために用いられる。インビボにおいて組織へ化合物を輸送するために脂質を用いる方法が以前に記載されていた。トランスフェクション組成物は、生理的媒体の適切な選択で、治療および診断分野に用いられる。
【0119】
式(I)の脂質を用いる細胞トランスフェクション
式(I)の脂質は、インビトロまたはインビボで細胞中へ高分子の輸送のために、単独で用いられる。これらの脂質は少なくとも活性であり、細胞中へ高分子の輸送のために現在市販されているカチオン性脂質よりほとんどの場合に活性である。本発明の脂質、例えば1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレオイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンのHCl塩が、補助脂質なしに、または中性脂質DOPEまたはコレステロール(実施例11の129A‐Eおよび129H)と一緒に処方された。図6〜9において示されているように、本発明の脂質はCHO、NIH3T3、HEK293、および293GT細胞をトランスフェクトするために用いられ、比較脂質より2〜4倍良いトランスフェクション効率を呈することが示された。
【0120】
細胞中へ輸送されうる高分子としては核酸があるが、それに限定されない。核酸は、現在知られている、または将来製造もしくは同定されるいかなる種類の核酸でもよいが、但し、式(I)の脂質と混合される場合に、核酸は脂質集合体、リポソームまたはリポソーム様複合体を形成しうるよう十分に負荷電でなければならない。ここで用いられるような核酸とは、一または二本鎖形の、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドとその混合物およびポリマーに関する。前記用語は、合成、天然、および非天然であり、対照核酸と類似の結合性を有し、対照ヌクレオチドと同様に代謝される、公知のヌクレオチドアナログまたは修飾主鎖残基または結合鎖を含有する核酸を包含している。このようなアナログの例としては、限定ではなく、ホスホロチオエート類、ホスホロアミデート類、メチルホルホネート類、キラル‐メチルホルホネート類、2‐O‐メチルリボヌクレオチド、ペプチド‐核酸(PNA)がある。核酸はアンチセンス分子の形、例えばRNase Hを活性化するRNA‐DNA‐RNA構造を含有した“gapmer”でもよい。核酸は例えばDNA、RNA、またはRNA‐DNAハイブリッドでも、オリゴヌクレオチド、プラスミド、プラスミドDNAの一部、前凝縮DNA、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の産物、ベクター、発現カセット、キメラ配列、染色体DNA、またはこれらグループの誘導体、または他の形態の核酸分子でもよい。核酸は、RNA干渉で遺伝子発現を阻害するために用いられる種類の二本鎖RNA分子でもよい。核酸は短鎖干渉二本鎖RNA分子(siRNA)でもよい。核酸分子はStealth RNAi分子(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)でもよい。
【0121】
したがって、ここで提供されるのは、高分子を細胞中へ導入する方法である。例示の方法では、ここで記載されているような式(I)の脂質および核酸を用いて脂質‐核酸複合体を形成し、細胞、単なる例として真核細胞をこのような複合体と接触させる。前記脂質は、限定されないが、リポソームを含めた脂質集合体の形態をとる。式(I)の脂質は、細胞をトランスフェクトするために、本発明に従い非エンベロープウイルスからの融合誘導ペプチドと併用してもよい。本発明の方法のインキュベート時間、混合プロトコールおよび他の具体な態様は、当業界で知られている方法を用いて最適化されうる、と理解されるであろう。
【0122】
このような方法に従いトランスフェクトされる細胞としては、初代細胞、培養中の細胞、継代細胞培養物、または細胞系、および培養組織中の細胞を含めて、事実上いかなる真核細胞でもよいが、それらに限定されない。適切な細胞としてはヒト細胞系および動物細胞系がある。細胞は線維芽細胞でもよい。細胞は接着細胞でもまたは懸濁中の細胞でもよい。ある例示の態様においては、細胞は懸濁CHO‐S細胞および懸濁293‐F細胞である。用いられる他の細胞としては、限定ではなく、293、293‐S、CHO、Cos、3T3、Hela、初代線維芽細胞、A549、Be2C、SW480、CHOK1、Griptite 293、HepG2、Jurkat、LnCap、MCF‐7、NIH‐3T3、PC12、C6、Caco‐2、COS‐7、HL60、HT‐1080、IMR‐90、K‐562、SK‐BR3、PHP1、HUVEC、MJ90、NHFF、NDFF、および初代ニューロンがある。
【0123】
他の態様は、核酸がタンパク質をコードする前記のような脂質‐核酸複合体と細胞を接触させることを含んでなる、タンパク質を産生するための方法である。細胞がタンパク質を産生するためにインキュベートされ、タンパク質が集められる。タンパク質産生に用いられる細胞は前記されている。加えて、式(I)の脂質を含有するいかなる組成物も細胞のトランスフェクションに用いられる。このような組成物はここで更に記載されており、式(I)の脂質、補助脂質およびオプションのトランスフェクション促進剤、例えば融合誘導ペプチドまたはタンパク質を含んでなる組成物があるが、それに限定されない。
【0124】
本発明の脂質集合体は、それらが核酸のような高分子と接触した場合に、複合体を形成する。脂質は場合によりやや過剰で用いられ、このような場合にカチオン性複合体を形成してもよい。いかなる理論にも拘束されることなく、カチオン性複合体は細胞膜へ求引されることで、細胞による取込みを容易化している、と考えられている。このような脂質集合体にはリポソーム、単層ベシクル、多層ベシクル、ミセルなどがあり、これらはナノメートル〜マイクロメートル範囲の粒径を有する。脂質集合体の様々な種類の構造は、前記集合体を形成する組成および方法に応じて変化する。脂質集合体を作製する方法は当業界で知られており、リバースエバポレーション、超音波処理、およびミクロ流動化があるが、それらに限定されない。
【0125】
他の態様において、ここで提供されるのは、タンパク質をコードする核酸で細胞をトランスフェクトし、タンパク質を産生するために前記細胞をインキュベートし、タンパク質を集めることを含んでなる、タンパク質を産生するための方法であり、トランスフェクティングは、場合により非エンベロープウイルスの融合誘導ペプチドを含有する、式Iの脂質を含んでなる組成物と細胞を接触させることにより行われる。細胞をトランスフェクトするための組成物は、他の脂質および/または追加のペプチドおよびタンパク質を含有するものを含めて、ここで提供されるいかなる組成物でもよい。
【0126】
式Iの脂質は、当業界において知られている方法を用いて、ペプチドおよびタンパク質などを細胞中へ導入するためにも用いられてもよい。ペプチドおよびタンパク質輸送のためにカチオン性脂質を用いる方法が以前に記載されていた。
【0127】
加えて、脂質は核酸、ペプチド、およびタンパク質などをインビボで組織中へ輸送するために用いられてもよい。インビボで組織へ化合物を輸送するために脂質を用いる方法が以前記載された。
【0128】
1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびコレステロールの1:1〜4:1混合物、並びに1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびDOPEの1:1〜4:1混合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジンおよびコレステロールの1:1〜4:1混合物を含めた、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)アルキルアミノ)プロピル〕ピペラジン脂質および中性脂質から構成されるカチオン性脂質組成物は、様々な細胞種を核酸によりトランスフェクトする上で有効であった。
【0129】
他の脂質および/またはペプチドを用いる組成物および/または方法
ある実例において、式Iの脂質は、高分子を輸送するために、他の脂質および/または追加のトランスフェクション促進剤を含有する組成物でも用いられる。このような組成物は、式(I)の脂質と、中性、正荷電(例えばカチオン性脂質)、または負荷電の補助脂質を含有する。このような中性脂質としては、例えばジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、コレステロール、セレブロシド類、およびジアシルグリセロール類があるが、それらに限定されない。カチオン性脂質としては、N,N‐ジオレイル‐N,N‐ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N‐〔1‐(2,3‐ジオレイルオキシ)プロピル〕‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N‐ジステアリル‐N,N‐ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N‐〔1‐(2,3‐ジオレオイルオキシ)プロピル〕‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、3‐〔N‐(N′,N′‐ジメチルアミノエタン)カルバモイル〕コレステロール(DC‐Chol)、N‐(1,2‐ジミリスチルオキシプロピ‐3‐イル)‐N,N‐ジメチル‐N‐ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、1,2‐ジリノレイルオキシ‐N,N‐ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2‐ジリノレニルオキシ‐N,N‐ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、DODAP、DODMAおよびDMDMAがあるが、それらに限定されない。カチオン性脂質としては、LipofectAmine2000、LipofectAmine、Lipofectin、DMRIE‐C、Fugene、Fugene HD、Transfectam、Transfectin、SilentFect、およびEffecteneもあるが、それらに限定されない。アニオン性脂質としては、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N‐ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン類、N‐スクシニルホスファチジルエタノールアミン類、N‐グルタリルホスファチジルエタノールアミン類、リシルホスファチジルグリセロール類、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、および中性脂質へ結合される他のアニオン性修飾基があるが、それらに限定されない。
【0130】
上記の組成物中に含有されうるトランスフェクション促進剤としては、核または他のオルガネラのような特定の細胞内部位へ高分子を輸送するために機能し、細胞輸送または移送で機能し、レセプターリガンドであり、細胞接着シグナル、細胞標的化シグナル、細胞インターナリゼーションシグナル、またはエンドサイトーシスシグナルを含んでなる、トランスフェクション促進ペプチドまたはタンパク質があるが、それらに限定されない。他の例としては、エンベロープまたは非エンベロープウイルスタンパク質であるか、またはエンベロープまたは非エンベロープウイルスタンパク質から誘導され、エンベロープまたは非エンベロープウイルス融合誘導タンパク質であるか、またはエンベロープまたは非エンベロープウイルス融合誘導タンパク質から誘導され、ウイルス核局在シグナルを含有し、レセプターリガンドであり、細胞接着シグナル、細胞標的化シグナル、および/またはインターナリゼーションまたはエンドサイトーシス誘発シグナルを含有する、ペプチドまたはその機能性部分がある。例示の融合誘導ペプチドは、ここで記載されたレオウイルス誘導ペプチドである。
【0131】
ここで提供されるある態様において、トランスフェクション促進剤は核局在ペプチドである。一つの例において、トランスフェクション促進剤はPLUS試薬(Invitrogen Corporation)である。ここで提供されるトランスフェクション組成物と共に用いられた場合、PLUS試薬の添加はタンパク質発現を高めることが、初期実験において調べられた。実際に、発現はNIH3T3、Jurkat、C6、Cos7、THP1、IMR90、LnCap、HepG2、PC12、およびK562細胞において高められた。PLUS試薬の使用で細胞傷害性は影響されなかった。
【0132】
実例において、本発明の脂質は、ここで示される例示トランスフェクションプロトコールで提示されているように、Plus Reagent試薬(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA市販)と併用される。更に、脂質は、上記のようなプロトタイプトリレオウイルス融合誘導ペプチドと共ににDOPEのようなヘルパー脂質を含有しうるリポソームまたは非リポソーム処方で処方され、核酸を細胞へ輸送するためにPlus Reagent試薬と併用される。
【0133】
式Iの脂質と併用されてもよい例示のペプチドおよびタンパク質としては、エンベロープおよび非エンベロープウイルス、細菌、インスリン、トランスフェリン、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、細胞標的化抗体、ラクトフェリン、フィブロネクチン、アデノウイルスペントンベース、Knob、ヘキソンタンパク質、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質、セムリキ森林ウイルスコアタンパク質、インフルエンザ赤血球凝集素、肝炎Bコアタンパク質、HIV Tatタンパク質、単純ヘルペスウイルスVP22タンパク質、レオウイルス融合タンパク質またはペプチド、ヒストンタンパク質、アルギニンリッチ細胞透過性タンパク質、高移動性群タンパク質、インベーシンタンパク質、インターナリンタンパク質、内毒素、ジフテリア毒素、赤痢菌毒素、メリチン、マガイニン、グラミシジン、セクロピン、デフェンシン、プロテグリン、タキプレシン、チオニン、インドリシジン、バクテネシン、ドロソマイシン、アピダエシン、カテリシジン、アダプチンタンパク質、殺菌性透過性促進タンパク質、ナイシン、ブホリン、またはそれらの断片から誘導されるものがある。
【0134】
式Iの新規脂質は、単なる例としてジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)またはコレステロールのような補助脂質の存在または非存在下において、一種以上の核酸と共にリポソームまたはリポソーム様ベシクルへ処方されてもよい。前記脂質は、例えば当業界で周知のリバースエバポレーションの方法を用いて、リポソームへ処方されてもよい。一方、前記脂質は、超音波処理、ミクロ流動化などのようなリポソーム形成のための他の周知方法により処方してもよい。これらのリポソーム処方体はDNAを培養細胞中へトランスフェクトするために有効である。
【0135】
一つの方法においては、核酸が融合剤と接触され、得られた混合物が式Iの脂質および中性脂質の混合物へ加えられるが、ここで融合剤は、上記で更に詳細におよび下記実施例で記載されているように、非エンベロープウイルスの融合タンパク質から誘導される融合促進アミノ酸配列を含有する。
【0136】
他の方法においては、融合剤が式Iの脂質と接触され、次いでペプチド‐またはタンパク質‐核酸複合体を凝集させうる核酸またはタンパク質が加えられるが、ここで融合剤は、上記で更に詳細におよび下記実施例で記載されているように、非エンベロープウイルスの融合タンパク質から誘導される融合促進アミノ酸配列を含有する。
【0137】
本発明のある態様において、前記方法は、少なくとも前記のような融合誘導ペプチド、式Iの脂質および核酸を含んでなるトランスフェクション複合体と何らかの細胞、好ましくは真核細胞を接触させる。前記複合体は、一種以上の追加ペプチドまたはタンパク質、例えば融合誘導、膜透過性、輸送もしくは移送細胞内局在、またはレセプター‐リガンドペプチドもしくはタンパク質も場合により含有してよい。これらの追加ペプチドまたはタンパク質は場合により核酸結合基へ接合され、または場合により式Iの脂質へ接合され、そこで前記ペプチドまたはタンパク質あるいは修飾ペプチドまたはタンパク質が核酸と非共有会合される。いかなる理論にも拘束されることなく、本出願人らは本発明の複合体がリポソーム構造を典型的に含有する脂質集合体であると考えているが、これら構造の正確な性質は現在未知である。したがって、ある実例において、本発明の複合体はリポソーム複合体である。複合体全体または複合体の一部、例えば脂質部分は、例えば当業界で周知のリバースエバポレーションの方法を用いて、リポソームへ処方される。一方、複合体の脂質部分または複合体全体は、超音波処理またはミクロ流動化のようなリポソーム形成のための他の周知方法により処方してもよい。これらのリポソーム処方体はDNAを培養細胞中へトランスフェクトするために有効である。
【0138】
一つの態様において、融合誘導ペプチドまたはタンパク質および核酸を含有する複合体(ここで、融合誘導ペプチドまたはタンパク質は核酸結合基へ接合させてもよい)が最初に形成され、次いでトランスフェクションのためにカチオン性脂質と組み合わされる。関連態様においては、ペプチド‐またはタンパク質‐脂質接合体が適切なカチオン性脂質を含めた他の脂質と場合により組み合わされ、次いでトランスフェクションのために核酸と組み合わされる。他の関連態様においては、核酸‐脂質接合体が形成され、次いでトランスフェクションのために融合誘導ペプチドまたはタンパク質と組み合わされる。上記のように、これら態様のいずれの脂質含有複合体もリポソームまたは非リポソーム処方体である。
【0139】
本発明の複合体および方法、特にここで提供される複合体を含有したトランスフェクション組成物に関するものは、細胞、特に真核細胞のインビトロおよびインビボトランスフェクション、更に具体的には動物細胞を含めた高等真核細胞のトランスフェクションに用いられる。本発明の方法は、有用な遺伝子産物を発現するトランスフェクト細胞を作製するために用いられる。例えば、前記方法は、典型的には、ここで提供される複合体を用いて、細胞、特に懸濁細胞中へ導入された一種以上の発現ベクターから組換え軽鎖分子および組換え重鎖分子を発現させることにより、組換え抗体分子を作製するために用いられる。本発明の方法は、トランスジェニック動物の作製でも一つの工程として用いられる。本発明の方法は、遺伝子療法およびウイルス阻害の方法を含めた細胞中への核酸の導入を必要とする治療法に、および細胞中へのアンチセンスまたはアンチジーン核酸、リボザイム、RNA調節配列、siRNA、RNAi、StealthRNAi(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)、または関連阻害もしくは調節核酸の導入のために、一工程として有用である。特に、これらの方法は癌治療、インビボ、および半ビボ遺伝子療法、並びに診断法において有用である。
【0140】
ペプチド、タンパク質、ペプチド、またはタンパク質断片、修飾ペプチドまたは修飾タンパク質を含んでなる本発明のトランスフェクション組成物および方法は、研究目的で行われる真核細胞のトランスフェクションでリサーチ剤としても用いられる。
【0141】
したがって、ここで提供されるのは、式(I)の脂質および融合剤を含んでなる複合体と核酸を含有するトランスフェクション組成物を形成し(前記融合剤は非エンベロープウイルスの融合タンパク質から誘導される融合促進アミノ酸配列を含む)、真核細胞を前記トランスフェクション組成物と接触させることを含んだ、高分子を細胞中へ導入する方法である。ここで実施例セクションで提供されるのは、本発明の組成物を用いて真核細胞をトランスフェクトするための実例プロトコールである。ここで開示されているように、実例における融合剤は、レオウイルスのFASTタンパク質から誘導される融合ペプチド、最も好ましくは、長さが5〜50アミノ酸であり、融合ペプチドの少なくとも10連続アミノ酸がレオウイルスFASTタンパク質の疎水性領域と少なくとも75、80、85、90、95、または100%同一である融合ペプチド、およびポリカチオン性ペプチド配列である。
【0142】
複合体、複合体成分および核酸または他の高分子の量、濃度および容量、インキュベート時間、混合プロトコールおよび本発明の方法の他の具体な態様は、当業界で知られている方法を用いて最適化および/または特定されうる、と理解されるであろう。以下の実施例セクションにおいて例示されているように、核酸または他の高分子の容量および濃度、ここで提供されるトランスフェクション複合体の容量および濃度、希釈剤の容量および組成と、細胞の容量および濃度は、例えば細胞傷害性アッセイを利用する方法および/またはリポーター遺伝子、例えばβ‐ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、および/または蛍光タンパク質を発現する核酸発現ベクターを用いてトランスフェクションを利用する方法を含めた、このような最適化および滴定のための標準実験アプローチを用いて定められる。更に、細胞密度は標準法を用いて最適化され、ここで提供されるトランスフェクション複合体を用いたトランスフェクションのための細胞密度は、例えば高密度>75%から低密度<50%までである。
【0143】
複合体形成のための例示の希釈剤としては、例えば低血清または無血清培地、例えばD‐MEMおよびRPMI1640およびOptiPro、Opti-MEM(Invitrogen Corporation)がある。複合体を形成するためのインキュベート時間はルーチン法を用いて定められるが、典型的インキュベート時間は5〜240分間である。加えて、細胞培養のための培地はトランスフェクトされる細胞系に基づきまたは本方法の具体的適用に基づき選択される、と理解されるであろう。例えば、懸濁細胞でタンパク質の産生の場合は、例示態様において、低血清、好ましくは無血清培地が用いられる。ある例示態様においては、293 Expression Medium(Invitrogen Corporation)およびCD‐CHO Medium(Invitrogen Corporation)のような無動物源培地が用いられるが、それらに限定されない。ある態様においては、トランスフェクトされる細胞種に応じて、抗生物質がトランスフェクション後培地から除去される。細胞のトランスフェクション後培養のためのインキュベート時間は様々であるが、典型的には2時間〜7日間である。大規模タンパク質産生の場合は、非限定的な例として1日間〜7日間にわたり細胞がインキュベートされる。
【0144】
様々な濃度の式(I)の脂質、補助脂質およびトランスフェクション促進剤がここで提供される複合体、組成物、および方法において用いられる、と理解されるであろう。例えば、式(I)の脂質および融合誘導ペプチドの複合体を含有するここで提供される組成物の非限定的な実例において、組成物中における式(I)の脂質および融合誘導ペプチドの非限定的な総濃度は1mg/mL〜4mg/mLである。1mg/mLの脂質へ加えられるペプチドの範囲は100μg/mL〜3mg/mLである。ヘルパー脂質対カチオン性脂質の比率は0.25/1.0(モル)〜純粋化合物である。
【0145】
本発明に従いトランスフェクトされる細胞は、例えば、初代細胞、培養中の細胞、および培養組織中の細胞を含めて、事実上いかなる真核細胞でもよい。細胞は接着細胞でもまたは懸濁中の細胞でもよい。ある例示の態様においては、細胞は懸濁CHO‐S細胞および懸濁293‐F細胞である。本発明の剤および方法を用いてトランスフェクトされる他の細胞には、293、例えばGripTite 293MSR(Invitrogen Corporation)、CHO、Cos7、NIH3T3、Hela、初代線維芽細胞、A549、Be2C、SW480、Caco2、初代ニューロン、Jurkat、C6、THP1、IMR90、HeLa、ChoKI、GT293、MCF7、HT1080、LnCap、HepG2、PC12、SKBR3、およびK562細胞があるが、それらに限定されない。
【0146】
他の態様において、ここで提供されるのは、タンパク質をコードする核酸分子で細胞をトランスフェクトし、タンパク質を産生するために細胞をインキュベートし、タンパク質を集めることを含んでなる、タンパク質を産生するための方法であり、トランスフェクティングは細胞を本発明のトランスフェクション組成物と接触させることにより行われる。細胞をトランスフェクトするための組成物は、ここで提供されるいかなる組成物でもよい。例として、このような組成物は、タンパク質をコードする核酸分子、融合剤、および式(I)の脂質を含有し、前記融合剤は非エンベロープウイルスの融合タンパク質、例えばレオウイルスタンパク質から誘導される融合促進アミノ酸配列を含有する。
【0147】
医薬組成物
本発明のトランスフェクション剤およびトランスフェクション促進剤は、治療用に様々な医薬組成物および剤形で提供される。例えば、これらの複合体を含有した注射用処方剤、鼻内処方剤、および静脈内および/または病変内投与用の処方剤が療法に用いられる。
【0148】
一般的に、本発明の医薬組成物は、標的細胞または標的組織中へ十分に高レベルの核酸の導入を行わせて、核酸がそこで望ましい治療効果を有するように、十分なトランスフェクション剤および何らかの促進剤(ペプチド、タンパク質など)を含有すべきである。治療上有効である標的細胞または組織中における核酸のレベルは、阻害の効力または他の生物学的機能、および核酸が影響を及ぼすべき部位の数に依存する。
【0149】
患者へ投与されるここで記載されたトランスフェクション組成物の用量は、投与の方法と部位、患者年齢、体重および状態を含めた、いくつかの他の要因に依存する。当業者であれば、所定の投与様式、所定の患者、および所定の治療分野に応じて容易に用量を調整しうる。
【0150】
細胞中への核酸の導入を阻害するか、またはトランスフェクションもしくは核酸複合化を妨げる血清または高塩レベルのような阻害成分を、トランスフェクション組成物が最少量で含有すべきことは、当業者にとり明らかであろう。いかなる医薬または治療組成物も、具体的適用に応じて、患者で有害副作用を引き起こしうる成分を最少量で含有すべきことも、明らかであろう。
【0151】
ここで記載されるトランスフェクション組成物は、医薬活性剤およびそのための薬学上許容される希釈剤、賦形剤、または担体を含有する組成物へ処方されてもよい。このような組成物は錠剤、丸薬、カプセル(徐放性または遅放性処方剤を含む)、粉末、顆粒、エリキシル、チンキ、シロップ、およびエマルジョン、無菌非経口溶液または懸濁液、エアゾールまたは液体シロップ、滴剤、アンプル、オートインジェクター装置または坐剤のような単位剤形をとるか、経口、非経口(例えば、静脈内、筋肉内または皮下)、鼻内、舌下、または直腸投与用、あるいは吸入または通気による投与用であり、適切な手法でかつRemington’s Pharmaceutical Sciences(Gennaro,ed.,Mack Publishing Co.,Easton Pa.,1990、引用することにより本明細書の開示の範囲とされる)で開示されているような慣行に従い処方されてもよい。
【0152】
適切な担体、賦形剤および希釈剤の一部例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアガム、リン酸カルシウム、アルギネート類、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチル‐およびプロピル‐ヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油がある。処方剤は、滑沢剤、湿潤剤、乳化および懸濁剤、保存剤、甘味剤または香味剤を追加で含有しうる。担体が希釈剤として働く場合、それは活性成分用のベシクル、賦形剤、または媒体として作用する固体、半固体、または液体物質である。注射の場合、水性または非水性溶媒のような薬学上許容される担体で本発明の一種以上の脂質の溶液またはリポソームを製造することが可能である。用いられる溶媒の例は、注射用の蒸留水、生理食塩水、リンゲル液、植物油、合成脂肪酸グルセリド、高級脂肪酸エステル、プロピレングリコールなどである。
【0153】
試薬キット
本発明のトランスフェクション組成物の成分は試薬キットで提供しうる。前記キットは、トランスフェクション剤と、非エンベロープウイルスの融合誘導タンパク質からのアミノ酸配列とを含有してよい。このキットは、トランスフェクション促進剤、例えばトランスフェクション促進ペプチド、タンパク質、もしくはその断片、またはトランスフェクション促進化合物も含有しうる。トランスフェクション剤、アミノ酸配列、典型的には融合誘導ペプチド、および存在する場合、トランスフェクション促進剤は、各々が混合物として(即ち、単一容器、典型的にはチューブおよび/またはバイアルで)含有されるか、または別々の部分として(即ち、別々の容器、例えば別々のバイアルおよび/またはチューブで)含有される。本発明のキットは、理解されるように、典型的には、例えば段ボール箱へ一緒に詰み込まれる、バイアルおよび/またはチューブのような容器を含む。前記キットは供給者から顧客へ輸送しうる。例えば、一つの例において、ここで提供されるのは、トランスフェクション剤およびトランスフェクション促進ペプチドを含有するリポソーム処方体を含有したバイアルを含むキットである。前記キットは、例えば、トランスフェクション促進剤、例えばトランスフェクション促進ペプチド、例えばPlus Reagent(Invitrogen Corp.,Carlsbad,CA)を含む別々な容器も含有しうる。前記キットは、別々な容器に、細胞、細胞培地、およびリポーター核酸配列、例えばリポーター遺伝子を発現するプラスミドも含有しうる。ある例において、培地は低血清培地および/またはタンパク質発現培地である。
【0154】
一つの態様において、キットは、式Iの脂質などのカチオン性脂質と、ペプチド、タンパク質またはその断片、または修飾ペプチド、タンパク質またはその断片の個別部分または混合物を含んでなる。他の態様において、キットは、ポリカチオン性ポリマーと、ペプチド、タンパク質、もしくはその断片、または修飾ペプチド、タンパク質、もしくはその断片の個別部分または混合物を含んでなる。カチオン性脂質トランスフェクションキットは場合により中性脂質と他のトランスフェクション促進剤または他の添加物を含有でき、キット中における各成分の相対量はトランスフェクション組成物の調製を容易にするよう調整してよい。キット成分として、他のキット成分のための適切な媒体または溶媒も含有しうる。
【0155】
モノカチオン性またはポリカチオン性脂質組成物、例えば式Iの脂質を含んでなり、更に中性脂質と修飾ペプチドまたはタンパク質を含有するカチオン性脂質トランスフェクションキットが好ましい。デンドリマートランスフェクションキットは場合により他のトランスフェクション促進剤、例えばDEAE‐デキストランおよび/またはクロロキンと他の添加物を含有でき、キット中における各成分の相対量はトランスフェクション組成物の調製を容易にするよう調整してよい。本発明により提供されるキットとしては、DOSPAおよびDOPEを含んでなるポリカチオン性脂質組成物、またはDOTMAおよびDOPEと一部の修飾ペプチド、特にスペルミン修飾ペプチドを含んでなるモノカチオン性脂質組成物の個別部分を含んでなるものがある。本発明により提供されるキットには、個別部分のポリカチオン性ポリマーと一部のスペルミン修飾ペプチドを含んでなるものがある。
【0156】
関連態様において、本発明のキットは、トランスフェクションを容易化するために、非接合脂質、非接合ポリカチオン性ポリマーおよび他の剤と共に、ペプチド‐もしくはタンパク質‐脂質接合体またはペプチド‐もしくはタンパク質‐ポリカチオン性ポリマー接合体を含んでなる。
【0157】
本発明のキットには、診断法で有用なもの、例えばトランスフェクション剤およびトランスフェクション促進剤(例えば、タンパク質、ペプチドと、ペプチド、およびタンパク質の断片または修飾体)に加えて診断用核酸を含有しうる診断キットもある。診断用核酸とは、細胞中で他の物質(最も一般的には被検体)の存在を検出するために用いられる核酸に関する総称である。例えば、細胞中へトランスフェクトされた場合、診断用核酸は細胞中で他の物質(例えば、タンパク質、小分子、ステロイド、ホルモン、または他の核酸)の存在に応答してそこで遺伝子の発現を増加または減少させる。診断用核酸には、標的細胞または組織の検出のためにまたは標的細胞または組織中で物質の検出のために、あるラベルまたはそれ以外の検出可能マーカーを特定の標的細胞または標的組織へ運ぶ核酸もある。
【0158】
本発明の方法によりトランスフェクトされうる核酸には、天然ベースまたは非天然ベースを含めた起源からのあらゆる大きさのDNAおよびRNAを含み、細胞中で治療またはそれ以外で有用なタンパク質をコードかつ発現しうるもの、細胞中で核酸の望ましくない発現を阻害するもの、望ましくない酵素活性を阻害するまたは望ましい酵素を活性化するもの、反応を触媒するもの(リボザイム)、および診断アッセイで機能するもの(例えば、診断用核酸)がある。治療用核酸には、細胞中で治療上有用なタンパク質、ペプチド、またはポリペプチドをコードまたは発現しうる核酸、細胞中で核酸の望ましくない発現を阻害するもの、細胞中で望ましくない酵素活性を阻害するまたは望ましい酵素を活性化するものがある。
【0159】
ここで提供される組成物および方法は、核酸以外の生物活性高分子、特にポリアミン、ポリアミノ酸、ポリペプチド、およびタンパク質を真核細胞へ導入するためにも、ここでの開示をみれば容易に応用しうる。例えば治療剤、診断物質、研究用試薬として有用な他の物質も、本発明の方法によりペプチドおよび修飾ペプチドへ結合させて、真核細胞中へ導入させうる。
【0160】
式Iの脂質は前記キットのカチオン性脂質として用いられ、独自に試薬キットで提供してよい。一般的に、キットは適切な容器に式Iの脂質を収納する。脂質は、例えばエタノールのような有機溶媒の溶液中、緩衝液中、または溶媒/緩衝液混合物中に存在する。加えて、キットは適切な溶媒または緩衝液中に式Iの脂質と非エンベロープウイルスの融合誘導タンパク質からのアミノ酸配列を含有してもよいが、それらに限定されない。
【0161】
一つの態様において、キットは、式Iの脂質と、ペプチド、タンパク質、もしくはその断片、または修飾ペプチド、タンパク質、もしくはその断片の個別部分または混合物を含んでなってもよい。式Iの脂質を含むキットは場合により中性脂質と他のトランスフェクション促進剤または他の添加物を含有でき、キット中における各成分の相対量はトランスフェクション組成物の調製を容易にするよう調整してよい。キット成分として、他のキット成分のための適切な媒体または溶媒も含めてよい。
【0162】
式Iの脂質、中性脂質と修飾ペプチドまたはタンパク質を含有するキットが好ましい。本発明により提供されるキットは、個別部分の式Iの脂質、DOSPAと一部の修飾ペプチド、特にスペルミン修飾ペプチドを含んでなる組成物を含有する。本発明により提供されるキットには、個別部分の式Iの脂質と、リシン、オルニチンまたはアルギニンのような塩基性アミノ酸のストレッチを含有する修飾ペプチドの一部を含んでなるものもある。
【0163】
販売するための方法
ここで提供される融合誘導ペプチド、脂質、複合体、および/またはトランスフェクション組成物および/またはキットを識別する識別名を顧客へ提示し、識別名を用いてここで提供される融合誘導ペプチド、脂質、トランスフェクション複合体、トランスフェクション組成物および/またはキットを購入するための購入機能へ顧客をアクセスさせることを含んでなる、ここで提供される融合誘導ペプチド、脂質、トランスフェクション複合体、トランスフェクション組成物および/またはキットを販売するための方法も提供される。識別名は、典型的には、オーダーシステムの一部として顧客へ提示される。オーダーシステムには、望ましい製品を識別するためのインプット機能と、識別された望ましい製品を購入するための購入機能を含む。オーダーシステムは、典型的には供給業者の直接または間接コントロール下にある。ここで用いられている顧客とは、生物研究用製品およびサービスを得ようとしている個人、機関、企業、大学、または組織に関する。ここで用いられている供給業者とは、生物研究用製品およびサービスを提供しようとしている個人、機関、企業、大学、または組織に関する。
【0164】
本発明は、電話オーダーシステムのインプット機能を顧客へ提示し、および/またはコンピューターシステムの一部としてデータ入力フィールドまたは入力の選択リストを顧客へ提示することを含んでなり、融合誘導ペプチド、脂質、トランスフェクション複合体、トランスフェクション組成物、および/またはキットがインプット機能を用いて特定される、ここで提供される融合誘導ペプチド、脂質、トランスフェクション複合体、トランスフェクション組成物、および/またはキットを販売するための方法も提供する。インプット機能がコンピューターシステムの一部である、例えば1頁以上のインターネットサイトで表示されるような場合、典型的には、オンライン購入機能、例えば特定の融合誘導ペプチド、脂質、トランスフェクション複合体、トランスフェクション組成物、および/またはキットを購入するために顧客により購入機能が用いられるオンラインショッピングカートが顧客に提示される。一つの態様において、複数の識別名が顧客へ提示され、各々がここで提供される異なる融合誘導ペプチド、脂質、複合体、および/またはトランスフェクション組成物および/またはキット、あるいはここで提供される融合誘導ペプチド、脂質、複合体、および/またはトランスフェクション組成物および/またはキットの異なる容量または重量を特定している。本方法は、ここで提供される脂質、トランスフェクション複合体、トランスフェクション組成物、および/またはキットを購入するために購入機能を稼動させることを更に含んでなる。本方法は更に、ここで提供される購入済み融合誘導ペプチド、脂質、トランスフェクション複合体、トランスフェクション組成物、および/またはキットを顧客へ輸送することを含んでなる。融合誘導ペプチド、脂質、トランスフェクション複合体、トランスフェクション組成物、および/またはキットは供給業者により顧客へ輸送される。供給業者が典型的にはインプット機能をコントロールし、ここで提供される融合誘導ペプチド、脂質、複合体、および/またはトランスフェクション組成物および/またはキットを購入するためにインプット機能へアクセスするウェブサイトをコントロールしうる。
【0165】
本発明は、このように一般的に記載されており、下記実施例を参考にすると更に容易に理解されるであろうが、これらは例示にすぎず、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0166】
実施例1:ペプチドがDNA/脂質複合体へ加えられる“事後”トランスフェクションプロトコール
β‐ガラクトシダーゼリポータープラスミドpCMV・SPORT‐β‐galでCHO‐K1、NIH3T3、A549、Cos‐7、およびBE(2)Cのトランスフェクションを次のように行った:
望ましい密集度(70%〜95%)へ達するように、トランスフェクション前日に10%牛胎児血清含有培地100μL入り96ウェルプレートへ細胞を入れた。翌日、DNA/脂質複合体を形成するために、脂質DMTS(ジミリスチル‐テトラヒドロキシ‐スペルミン)およびDOPE(2:1DMTS:DOPE)のリポソーム組成物を含有するトランスフェクション剤と、DNAとをOpti-MEM中で混合した。様々な量の脂質(0.1〜0.35μL)を100μLのOpti-MEMへ加えることにより複合体を形成した。DNA(100ng)を100μL Opti-MEMへ加えた。DNA脂質複合体を形成するために、DNAおよび脂質溶液を次いで混合した。複合体を少なくとも15分間インキュベートし、その後でDNA脂質複合体へ、次のような、ここで提供されるプロトタイプトリレオウイルス融合誘導ペプチドの配列:
Arg-Met-Pro-Pro-Gly-Ser-Cys-Asn-Gly-Ala-Thr-Ala-Val-Phe-Gly-Asn-Val-His-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys
を有する様々な量のペプチド20μLを加え、DNA/脂質/ペプチド複合体を形成するために15分間インキュベートした。30分間のインキュベート後、20μLのDNA/脂質/ペプチド複合体を10%血清中の細胞へ直接加えた。プラスミドの発現を行わせるために、細胞を更に24時間インキュベートした。培地を除去し、細胞を100〜200μLの溶解用緩衝液中で溶解させた。酵素基質ONPGを用いて、溶解物(20μL)をβ‐gal活性について検証した。Bio-Rad Benchmark Microplate Spectrophotometerを用いて405でODを読むことにより、総活性を調べた。
【0167】
実施例2:ペプチドがDNAと混合されて、複合体を形成するために脂質へ加えられる、“事前”トランスフェクションプロトコール
β‐ガラクトシダーゼリポータープラスミドpCMV・SPORT‐β‐galでCHO‐K1、NIH3T3、A549、Cos‐7、およびBE(2)Cのトランスフェクションを次のように行った:
望ましい密集度(70%〜95%)へ達するように、トランスフェクション前日に10%牛胎児血清含有培地100μL入り96ウェルプレートへ細胞を入れた。翌日、DNA/脂質/ペプチド複合体を形成するために、脂質DMTS(ジミリスチル‐テトラヒドロキシ‐スペルミン)およびDOPE(2:1DMTS:DOPE)のリポソーム組成物を含有するトランスフェクション剤とDNA/ペプチドをOpti-MEM中で混合した。ペプチドおよびDNAを15分間混合し、更に15分間脂質と混合した。様々な量の脂質(0.1〜0.35μL)を100μLのOpti-MEMへ加えることにより複合体を形成した。DNA(100ng)を100μL Opti-MEMへ加え、次いで次のような、ここで提供されるプロトタイプトリレオウイルス融合誘導ペプチドの配列:
Arg-Met-Pro-Pro-Gly-Ser-Cys-Asn-Gly-Ala-Thr-Ala-Val-Phe-Gly-Asn-Val-His-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys
を有する様々な量のペプチドをDNA混合物へ加え、15分間インキュベートした。DNA脂質複合体を形成するために、DNA/ペプチドおよび脂質溶液を次いで混合した。複合体を更に15分間インキュベートした。インキュベート後、20μLの複合体を10%血清中の細胞へ直接加えた。プラスミドの発現を行わせるために、細胞を更に24時間インキュベートした。培地を除去し、細胞を100〜200μLの溶解用緩衝液中で溶解させた。酵素基質ONPGを用いて、溶解物(20μL)をβ‐gal活性について検証した。Bio-Rad Benchmark Microplate Spectrophotometerを用いて405でODを読むことにより、総活性を調べた。
【0168】
すべての実施例で、図1〜5において示されているように、DNAへのペプチドの添加に続くカチオン性脂質の添加、またはDNA/脂質複合体へのペプチドの添加は、トランスフェクションの促進をもたらし、トランスフェクションを高めるために要する脂質の量を減らした。最良結果の場合、事前または事後トランスフェクション法のいずれを用いるかの選択は、トランスフェクトされる細胞系の性質に依存する。DMRIE‐C、LIPOFECTAMINEおよびFugeneのような他の脂質は、事前法を用いるペプチドの添加により増強されることがわかった。
【0169】
実施例3:懸濁中細胞のための例示のトランスフェクションプロトコール
β‐ガラクトシダーゼリポータープラスミドpCMV・SPORT‐β‐galで懸濁中CHO‐SおよびHEK293のトランスフェクションを下記のように行う:
トランスフェクション前に、細胞をオービタルシェーカー上で含湿37℃および8%CO中懸濁状態で培養した。抗生物質は細胞死を招くため、これは培地へ加えない。加えて凝集はトランスフェクション効率を低下させることから、凝集を避けるために規則的間隔で細胞を十分に撹拌し、抗凝集剤は培養時およびトランスフェクション前に加えない。しかしながら、抗凝集剤は場合によりトランスフェクション後に用いられる。
A)HEK293細胞のルーチン培養の場合、135〜155rpmで振盪して細胞密度を0.1〜2×10細胞/mL培養物に保つ。2×10細胞/mLを超える細胞密度はトランスフェクション効率の低下を招く。
B)CHO‐S細胞のルーチン培養の場合、120〜135rpmで振盪して細胞密度を0.05〜1.5×10細胞/mL培養物に保つ。1.5×10細胞/mLを超える細胞密度はトランスフェクション効率の低下を招く。培地はL‐グルタミンで最終濃度8mMに補充される。
【0170】
トランスフェクションの約24時間前、CHO‐S細胞(5〜6×10細胞/mL)またはHEK293細胞(6〜7×10細胞/mL)を37℃および8%COにおいて135〜155rpm(HEK293細胞)または120〜135rpm(CHO‐S細胞)で回転するオービタルシェーカープラットフォーム上のフラスコへ入れ、培養を続ける。翌日、細胞を約1×10細胞/mLに希釈し、次いで30mLの希釈細胞を125mL振盪フラスコへ入れる。次いでチューブ中において30μgのプラスミドDNAを0.6mLの総容量までOpti-ProSFM培地と混合し、別のチューブ中において2mg/mL総濃度の実施例1の融合誘導ペプチド、中性脂質、およびカチオン性脂質でここに提供されるトランスフェクション組成物30μLを0.6mLの総容量までOpti-ProSFM培地と混合する。トランスフェクション組成物溶液を次いで希釈DNA溶液へ加え、1.2mLの総容量とする。DNA‐脂質‐融合誘導複合体を形成させるために、この混合液を次いで室温において10分間インキュベートする。DNA‐脂質‐融合誘導ペプチド複合体の溶液(1.2mL)を次いで、細胞を含有する125mLフラスコへ、前記フラスコを穏やかにスワーリングしながらゆっくり加える。
【0171】
プラスミドの発現を行わせるために、トランスフェクトされる細胞培養物を135〜155rpmで回転するオービタルシェーカープラットフォーム上において37℃および8%COで更に24時間インキュベートする。培地を除去し、細胞を100〜200μLの溶解用緩衝液中で溶解させる。酵素基質ONPGを用いて、溶解物(20μL)をβ‐gal活性について検証する。Bio-Rad Benchmark Microplate Spectrophotometerを用いて405nmでODを読むことにより、総活性を調べる。タンパク質発現が4〜8時間内で検出でき、最大タンパク質はトランスフェクション後1〜7日で通常生じる。この方法は細胞をトランスフェクトしてタンパク質を発現させるためにうまく用いられた。
【0172】
タンパク質発現の最適化
タンパク質発現を最適化するために、トランスフェクション後1〜7日間にわたり時間経過させ、タンパク質産生のピークを得て、細胞生存を測定する。GFT型蛍光タンパク質の発現でトランスフェクション効率を評価するために、培養物をトランスフェクション後24時間経てから測定する。分泌されるIgGタンパク質産生の場合、ピーク産出はトランスフェクション後5〜7日目である。
【0173】
トランスフェクションのスケールアップまたはダウン
異なる培養容量について、下記パラメーターを用いる:
【表1】

注意:血液寒天プレート、サブローデキストロース寒天プレートおよび液状チオグリコレート培地を用い、リポータープラスミドでのトランスフェクションにより機能的に、微生物汚染の非存在について脂質を試験する。
【0174】
実施例4:単一チューブプロトコール
24ウェルフォーマットで哺乳類細胞中へDNA(β‐ガラクトシダーゼリポータープラスミドpCMV・SPORT‐β‐gal)をトランスフェクトするために下記プロトコールを用いる。用いられる量はパーウェルベースである。
接着細胞
トランスフェクションの1日前、細胞がトランスフェクション時に50〜80%密集度となるように、500μLの増殖培地へ細胞を入れる。
【0175】
懸濁細胞
複合体の製造直前に、200,000〜500,000細胞を500μLの増殖培地へ入れる。
【0176】
トランスフェクション
各トランスフェクションサンプルについて、複合体を次のように製造する。
500ngのプラスミドDNAを無血清の100μL Opti-MEM I Reduced Serum Mediumで希釈し、穏やかに混合する。(Plus試薬(Invitrogen Inc.,Carlsbad,CA)でオプショナルトランスフェクションの場合は、Plus試薬を穏やかに混合し、0.5μLを希釈DNAへ直接加え、室温において5分間インキュベートする。)次いで、融合誘導ペプチド、カチオン性脂質およびヘルパー脂質を含有したここで提供されるトランスフェクション組成物1.25μLを(Plus試薬と共にまたはそれなしで)希釈DNA溶液へ加え、混合液を穏やかに混ぜ、室温において30分間インキュベートして、複合体を形成させる。次いで約100μLの複合体を細胞含有のウェルへ直接加え、プレートを穏やかに前後に揺する。プラスミドの発現を行わせるために、細胞をCOインキュベーター中37℃において更に24時間インキュベートする。培地を場合により4〜6時間後に変える。
【0177】
培地を除去し、細胞を100〜200μLの溶解用緩衝液中で溶解させる。酵素基質ONPGを用いて、溶解物(20μL)をβ‐gal活性について検証する。Bio-Rad Benchmark Microplate Spectrophotometerを用いて405nmでODを読むことにより、総活性を調べた。
【0178】
トランスフェクションの最適化
最高トランスフェクション性能を得るために、24ウェルフォーマットでは次のようにDNAおよび脂質の量を変える(他のフォーマットの場合は、それに応じて量を調整する)。
【表2】

【0179】
安定な細胞系の作製
トランスフェクション後1日で細胞を新鮮培地へ1:10(またはそれ以上の希釈倍率)で移す。選択培地を場合により翌日加える。
【0180】
トランスフェクションのスケールアップまたはダウン
異なる培養容量について、下記パラメーターを用いる:
【表3】

リバーストランスフェクション
細胞をトランスフェクションミックスへ直接入れることにより急速96ウェルトランスフェクションを得る。複合体をプレートで調製し、100μL容量で上記の2倍の細胞密度で細胞を直接加える。更に脂質を最適トランスフェクションのために用いる。
注意:血液寒天プレート、サブローデキストロース寒天プレート、および液状チオグリコレート培地を用い、リポータープラスミドでのトランスフェクションにより機能的に、微生物汚染の非存在についてトランスフェクション組成物を試験する。
【0181】
実施例5:高スループットプロトコール
高スループットでまたは少量のトランスフェクション組成物を用いて哺乳類細胞中へDNA(β‐ガラクトシダーゼリポータープラスミドpCMV・SPORT‐β‐gal)をトランスフェクトするために、下記プロトコールを用いる。この操作では、試薬を最初に前希釈し、次いで大きな容量を希釈DNAへ加える。用いられる量は、96ウェルフォーマットの場合にパーウェルベースである。
【0182】
接着細胞
トランスフェクションの1日前、細胞がトランスフェクション時に50〜80%密集度となるように、100μLの増殖培地へ細胞を入れる。
【0183】
懸濁細胞
複合体の製造直前に、40,000〜100,000細胞を100μLの増殖培地へ入れる。
【0184】
トランスフェクション
各トランスフェクションサンプルについて、複合体を次のように製造する。
100ngのプラスミドDNAを無血清の10μL Opti-MEM I Reduced Serum Mediumで希釈し、穏やかに混合する。(Plus試薬(Invitrogen Inc.,Carlsbad,CA)でオプショナルトランスフェクションの場合は、Plus試薬を穏やかに混合し、無血清のOpti-MEM I Reduced Serum Medium(0.1μL/ウェル)で10倍希釈し、1μLの希釈Plus試薬を希釈DNAへ直接加え、穏やかに混合し、室温において5分間インキュベートする。)次いで、融合誘導ペプチド、カチオン性脂質、および中性脂質を含有したここで提供されるトランスフェクション組成物0.25μL/ウェルを無血清のOpti-MEM I Reduced Serum Medium中1mg/mL〜2mg/mLの混合総濃度で希釈して、10μL/ウェルとすることにより、トランスフェクション組成物のストック溶液を調製する。次いで融合誘導ペプチド、中性脂質、およびカチオン性脂質を含有したここで提供される希釈トランスフェクション組成物10μLを(Plus試薬と共にまたはそれなしで)希釈DNA溶液へ加え、混合液を穏やかに混ぜ、室温において30分間インキュベートして、複合体を形成させる。次いで約20μLの複合体を細胞含有の各ウェルへ直接加え、プレートを穏やかに前後に揺する。試験froトランスジーン発現前に、細胞をCOインキュベーター中37℃において更に18〜48時間インキュベートする。培地を場合により4〜6時間後に変化させた。
【0185】
培地を除去し、細胞を100〜200μLの溶解用緩衝液中で溶解させる。酵素基質ONPGを用いて、溶解物(20μL)をβ‐gal活性について検証する。Bio-Rad Benchmark Microplate Spectrophotometerを用いて405nmでODを読むことにより、総活性を調べた。
【0186】
トランスフェクションの最適化、安定な細胞系の作製およびトランスフェクションのスケールアップまたはダウンに関しては、実施例4参照
【0187】
下記実施例の全化合物が、予想式と一致するマススペクトロメトリーおよびマススペクトルにより特徴づけられた。
【0188】
実施例6:1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレオイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンの合成
ピペラジン(2.0g)、N‐(2,3‐エポキシプロピル)フタルイミド(12.0g)および過塩素酸リチウム(6.4g)を300mL無水エタノール中で混合し、還流下において2日間加熱した。得られた混合液を冷却し、濾過により得られる沈殿物をエタノールですすぎ、オフホワイト固体物として1,4‐ビス(2‐ヒドロキシ‐3‐フタルイミドプロピル)ピペリジン(化合物1)を得た(8.5g,75%収率)。
【0189】
ヒドラジン水和物(4mL)を200mLのエタノール中化合物1(8.5g)の溶液へ加えた。反応混合液を還流下で一晩加熱し、約1時間かけて室温まで冷却させ、沈殿物を濾過した。沈殿物をエタノールですすぎ、精製せずに更に用いた。得られた化合物1,4‐ビス(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)ピペラジン(化合物2)を塩化オレオイルでアシル化し、次いで水素化アルミニウムリチウムで還元した。THF(400mL)中化合物2の氷冷溶液へ15gの塩化オレオイルおよび15mLのDIPEAを加えた。反応混合液を還流下において一晩攪拌した。反応混合液をクロロホルム(400mL)で希釈し、その後水(2×200mL)、10%HCl(300mL)および0.2%KOH(200mL)で抽出した。有機溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、得られた化合物を真空下において一晩乾燥させた。
【0190】
粗ジアミド化合物を無水THF(400mL)に懸濁し、THF中1M水素化アルミニウムリチウム溶液100mLを滴下した。添加が完了した後で、反応混合液を一晩還流した。更にTHF(150mL)を加え、反応混合液を室温まで冷却した。15%水酸化ナトリウム溶液(200mL)を混合液へ滴下し、2時間攪拌した。THF層をデカントし、残留懸濁液をクロロホルムで徹底的に抽出し、TLCを用いてクロロホルム層中望ましい生成物の存在を測定した。THFおよびクロロホルム層を合わせ、蒸発させて、望ましい化合物オクタデカ‐9‐エニル‐〔2‐ヒドロキシ‐3‐〔4‐(3‐オクタデカ‐9‐エニルアミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)ピペラジン‐1‐イル〕プロピル〕アミン(化合物3)(3.4g)を得た。生成物をマススペクトロメトリーにより特徴づけた。
【0191】
化合物3(2.5g)をDMF(10mL)中、N‐(3‐ブロモプロピル)フタルイミド(2.19g)およびジイソプロピルエチルアミン(2mL)により処理した。反応混合液を100℃において3時間加熱し、次いでクロロホルム(300mL)で希釈し、水(4×300mL)で抽出した。クロロホルムをロータリーエバポレーターで除去し、溶離液としてクロロホルムおよびメタノール/クロロホルムを用いて残渣をフラッシュクロマトグラフィーに付し、望ましいフタルイミド付加物(化合物4)を得た。ヒドラジン水和物(0.75mL)を100%試薬用アルコール(100mL)中フタルイミド化合物4(1.7g)の溶液へ加えた。反応混合液を一晩還流し、室温まで約1時間で冷却させた。反応混合液を次いで4℃において一晩冷却し、沈殿物を濾過により得た。固体物を−20℃に冷却されたエタノール(2×20mL)で洗浄し、真空下において乾燥させた。残渣をクロロホルム(300mL)に溶解し、濾過し、水(200mL)で2回抽出した。クロロホルムをロータリーエバポレーターで除去し、定量的収率で1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレオイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン(化合物5)を得た。この物質をジオキサン中HClで酸性化し、溶離液として水性メタノールを用いて逆相(C‐18)フラッシュクロマトグラフィーで精製し、TLCおよびマススペクトロメトリーにより特徴づけた。
【0192】
こうして、アルキル基の長さがC12‐C18で変わる化合物を合成した。例として次の化合物がある:R、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CHOH‐CH、R、R=N、W、W=H、q、p、m=1、Y=ピペラジン、並びにZおよびZは双方ともパルミチル、ミリスチル、ラウリル、またはステアリルである。
【0193】
実施例7:1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレオイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンの合成
化合物3、オクタデカ‐9‐エニル‐〔2‐ヒドロキシ‐3‐〔4‐(3‐オクタデカ‐9‐エニルアミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)ピペラジン‐1‐イル〕プロピル〕アミン(3.2g)をエタノール(110mL)に溶解し、N‐(2,3‐エポキシプロピル)フタルイミド(2.3g)および過塩素酸リチウム(1.1g)を反応混合液へ加え、次いで還流下において加熱した。反応混合液を冷却し、クロロホルム(300mL)で希釈し、水(2×300mL)で抽出した。有機相を濃縮し、溶離液としてクロロホルム/メタノール(1〜3%)を用いてフラッシュクロマトグラフィーに付し、望ましいフタルアミド(3.05g)を得た。
【0194】
ヒドラジン水和物(0.7mL)を100mLのエタノール中フタルイミド(3.0g)の溶液へ加えた。反応混合液を一晩還流し、室温まで約1時間で冷却させ、沈殿物を濾過した。濾液をクロロホルム(300mL)で希釈し、水(2×300mL)で抽出した。有機層を濃縮し、こうして得られた物質をジオキサン中HClで酸性化し、C18逆相カラムでフラッシュクロマトグラフィーに付した。望ましい化合物、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレオイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンを固体物として得た(2.32g)(R、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CHOH‐CH、R、R=N、Z、Z=オレオイル、W、W=OH、q、p、m=1、およびY=ピペラジン)。こうして、アルキル基の長さがC12‐C18で変わる化合物を合成した。例として次の化合物がある:
、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CHOH‐CH、R、R=N、W、W=OH、q、p、m=1、Y=ピペラジン、並びにZおよびZは双方ともパルミチル、ミリスチル、ラウリル、またはステアリルである。
【0195】
実施例8:1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレオイルアミノ)プロピル〕ピペラジンの合成
THF(200mL)中、1,4‐ビス(3‐アミノプロピル)ピペラジン(10.0g)の氷冷溶液へ38gのテクニカル塩化オレオイル(85%)を加えた。反応混合液を室温において一晩攪拌した。反応混合液をクロロホルム(500mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液(3×200mL)で抽出した。有機溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、溶離液としてクロロホルムおよび5〜20%メタノール/クロロホルムを用いてシリカゲルの短カラムクロマトグラフィーに残渣を付した。望ましい化合物オクタデカ‐9‐エン酸〔3‐〔4‐(3‐オクタデカ‐9‐エノイルアミノプロピル)ピペリジン‐1‐イル〕プロピル〕アミドを含有する画分を合わせ、濃縮して、オフホワイト固体物を得た(18.28g,50%収率)。生成物をマススペクトロメトリーにより特徴づけた。
【0196】
ジアミド化合物オクタデカ‐9‐エン酸〔3‐〔4‐(3‐オクタデカ‐9‐エノイルアミノプロピル)ピペリジン‐1‐イル〕プロピル〕アミド(6.2g)を無水THF(150mL)に懸濁し、THF中1M水素化アルミニウムリチウム溶液100mLを滴下した。添加完了後、反応混合液を還流下において一晩加熱した。更にTHF(150mL)を加え、反応混合液を室温まで冷却させた。15%水酸化ナトリウム溶液(100mL)を混合液へ滴下し、2時間攪拌した。飽和重炭酸ナトリウム溶液(250mL)を加え、約1時間攪拌した。THF層をデカントし、残留懸濁液をクロロホルムにより徹底的に抽出し、TLCを用いてクロロホルム層中望ましい生成物の存在を測定した。THFおよびクロロホルム層を合わせ、蒸発させて、望ましい化合物オクタデカ‐9‐エニル‐3‐〔4‐(3‐オクタデカ‐9‐エニルアミノ‐プロピル)ピペラジン‐1‐イル〕プロピル〕アミン(5.11g,85%収率)を得た。生成物をマススペクトロメトリーにより特徴づけた。
【0197】
アミン、オクタデカ‐9‐エニル‐〔3‐〔4‐(3‐オクタデカ‐9‐エニルアミノ‐プロピル)ピペラジン‐1‐イル〕プロピル〕アミン(5.0g,7.1mmol)を150mL試薬用アルコール中、N‐(2,3‐エポキシプロピル)フタルイミド(3.6g,17.7mmol)および過塩素酸リチウム(1.8g,17.0mmol)で処理した。混合液を一晩還流し、冷却し、400mLクロロホルムで希釈した。クロロホルム溶液を水(300mL)で2回抽出した。クロロホルムをロータリーエバポレーターで除去し、ゴム状物としてビス‐フタルイミド付加物を得、溶離液としてクロロホルム中1%エタノールを用いてシリカのフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、2.3g(30%収率)の純粋物質を得た。化合物をマススペクトロメトリーにより特徴づけた。
【0198】
ヒドラジン水和物(0.5mL)を100%試薬用アルコール(100mL)中、フタルイミド(2.25g)の溶液へ加えた。反応混合液を一晩還流し、室温まで約1時間で冷却させた。反応混合液を次いで4℃において一晩冷却し、沈殿物を濾過により得た。固体物を−20℃に冷却されたエタノール(20mL)で2回洗浄した。エタノールをロータリーエバポレーターで除去し、得られた固体物を300mLクロロホルムに溶解し、濾過し、200mL水で2回抽出した。クロロホルムをロータリーエバポレーターで除去し、定量的収率で1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレオイルアミノ)プロピル〕ピペラジン(R、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CH‐CH、R、R=N、Z,Z=オレオイル、W、W=OH、q、p、m=1、およびY=ピペラジン)を得た。この物質をジオキサン中HClで酸性化し、溶離液として水性メタノールを用いて逆相(C‐18)フラッシュクロマトグラフィーで精製し、TLCおよびマススペクトロメトリーにより特徴づけた。こうして、アルキル基の長さがC12‐C18で変わる化合物を合成した。特に以下の追加化合物を合成した。例として次の化合物がある:R、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CH‐CH、R、R=N、W、W=OH、q、p、m=1、Y=ピペラジン、並びにZおよびZは双方ともパルミチル、ミリスチル、ラウリル、またはステアリルである。
【0199】
実施例9:1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレオイルアミノ)プロピル〕ピペラジンの合成
アミン、オクタデカ‐9‐エニル‐〔3‐〔4‐(3‐オクタデカ‐9‐エニルアミノ‐プロピル)ピペラジン‐1‐イル〕プロピル〕アミン(5g,7.1mmol)をDMF(50mL)中N‐(3‐ブロモプロピル)フタルイミド(6.78g,25mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(3.7mL,21mmol)で処理した。反応混合液を120℃に1時間、次いで95℃において一晩加熱した。溶媒をロータリー蒸発で除去し、溶離液としてクロロホルムおよびメタノール/クロロホルムを用いてシリカフラッシュクロマトグラフィーにより望ましいフタルアミドを単離した。フタルイミドを前記のようにヒドラジン水和物で処理し、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレオイルアミノ)プロピル〕ピペラジン(R、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CH‐CH、R、R=N、Z,Z=オレオイル、W、W=H、q、p、m=1、およびY=ピペラジン)を得た。化合物をTLCおよびマススペクトロメトリーにより特徴づけた。こうして、アルキル基の長さがC12‐C18で変わる化合物を合成した。例として次の化合物がある:R、R=H、X、X=CH、R、R=CH‐CH‐CH、R、R=N、W、W=H、q、p、m=1、Y=ピペラジン、並びにZおよびZは双方ともパルミチル、ミリスチル、ラウリル、またはステアリルである。
【0200】
実施例10:1‐アミノ‐3‐〔(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オクタデカ‐9‐エニルアミノ〕プロパン‐2‐オールの合成
オレイルアミン(2.67g,10mmol)をDMF(50mL)中、過剰N‐(2,3‐エポキシプロピル)フタルイミド(10.72,40mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(6.7mL)で処理した。反応混合液を95℃において一晩加熱した。溶媒をロータリー蒸発で除去し、得られたゴム状物をクロロホルム(200mL)に溶解し、水(200mL)で2回抽出した。クロロホルムを蒸発により除去し、得られた物質を溶離液としてクロロホルムを用いてシリカで短カラムクロマトグラフィーに付した。こうして得られた望ましい物質を前記のようにヒドラジン水和物で処理し、1‐アミノ‐3‐〔(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オクタデカ‐9‐エニルアミノ〕プロパン‐2‐オール(化合物6)を得た。
【0201】
実施例11:リポソームへのカチオン性脂質の処方
一般的に、所要量のカチオン性脂質および補助脂質を秤量し、丸底フラスコへ移す。脂質を溶解するために十分な量のクロロホルム、次いで望ましい総脂質濃度/容量(例えば2mg/mL)を得るために十分な分子生物学グレード水を加える。クロロホルムを真空下ロータリーエバポレーターにより除去する。クロロホルムが除去されたら、リポソームが水性媒体中で形成される。溶液は乳白色になり、処方されるカチオン性脂質および補助脂質に応じてその濁度が様々である。
【0202】
更に詳しくは、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレオイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンのHCl塩を、補助脂質なしで、および補助脂質としてDOPEまたはコレステロールを用いて処方した。こうして、14.9mgのカチオン性脂質および5.1mgのDOPE(M/M,2:1)を1mLクロロホルムに溶解した。クロロホルム溶液へ10mLの水を加え、不均質溶液を真空下ロータリーエバポレーターで蒸発させた。クロロホルムを除去すると、透明な乳白色の均質水溶液が残存した。容量を10mLに再調整して、2mg/mL溶液(129‐A)を得た。こうして1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレオイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンのHCl塩をDOPEと4:1のM/M比(129‐B)で、コレステロールと2:1(129‐C)、4:1(129‐D)および1:1(130‐H)のM/M比で、および補助脂質なし(129‐E)で処方した。
【0203】
実施例12:トランスフェクションプロトコール
β‐ガラクトシダーゼリポータープラスミドpCMV・SPORT‐β‐galでCHO‐K1およびHEK293のトランスフェクションを次のように行った:
望ましい密集度(70%〜95%)へ達するように、トランスフェクション前日に10%牛胎児血清含有培地100μL入り96ウェルプレートへ細胞を入れた。翌日、DNA/脂質複合体を形成するために、脂質およびDNAをOpti-MEM培地中で混合した。様々な量の脂質(0.1〜0.35μL)を100μLのOpti-MEMへ加えることにより複合体を形成させた。DNA(100ng)を100μL Opti-MEMへ加えた。DNA‐脂質複合体を形成するために、DNAおよび脂質溶液を次いで混合した。複合体を少なくとも20〜30分間インキュベートし、20μLの複合体を10%血清中の細胞へ直接加えた。プラスミドの発現を行わせるために、細胞を更に24時間インキュベートした。培地を除去し、細胞を100〜200μLの溶解用緩衝液中で溶解させた。酵素基質ONPGを用いて、溶解物(20μL)をβ‐gal活性について検証した。Bio-Rad Benchmark Microplate Spectrophotometerを用いて405nmでODを読むことにより、総活性を調べた。
【0204】
実施例13:siRNAトランスフェクション
siRNAトランスフェクションの場合、細胞が50〜60%密集度となるように、トランスフェクション前日に血清含有培地中適切な数の細胞で24ウェルプレートを接種し、細胞を3〜5%COインキュベーター中37℃において一晩インキュベートする。トランスフェクトされる各ウェルにおいて、0.1〜0.4μLの脂質を含有する無血清培地25μLおよびsiRNAを含有する無血清培地25μLを調製する。siRNAの最終濃度は10nMである。脂質およびsiRNA溶液を混合し、室温において20分間インキュベートする。脂質/siRNA複合体(50μL)を血清含有培地中の細胞へ加え、細胞をCOインキュベーター中、37℃においてインキュベートする。遺伝子サイレンシングがトランスフェクション後24〜72時間で測定されうる。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】図1は、“事前”および“事後”プロトコールを用いて、本発明の複合体を用いた、CHO‐K1細胞のトランスフェクションの結果を示す。
【図2】図2は、“事前”および“事後”プロトコールを用いて、本発明の複合体を用いた、NIH‐3T3細胞のトランスフェクションの結果を示す。
【図3】図3は、“事前”および“事後”プロトコールを用いて、本発明の複合体を用いた、A549細胞のトランスフェクションの結果を示す。
【図4】図4は、“事前”および“事後”プロトコールを用いて、本発明の複合体を用いた、COS細胞のトランスフェクションの結果を示す。
【図5】図5は、“事前”および“事後”プロトコールを用いて、本発明の複合体を用いた、BE2C細胞のトランスフェクションの結果を示す。
【図6】図6は、LipofectAmine2000、Transfectin、および本発明の化合物の様々な処方体を用いて、プラスミドpCMV‐Sport β‐galでCHO細胞のトランスフェクションから得られる結果を比較する。トランスフェクションは、補助脂質なし(3‐118‐D)に、1:1(3‐118‐A)、2:1(3‐118‐B)、および4:1(3‐118‐C)のモル比によりコレステロールと処方された式(I)の化合物を用いて行われた。LipofectAmine2000(LA2K,Invitrogen Corp.,Carlsbad,CA)およびTransfectin(BioRad,Hercules,CA)でのトランスフェクションも比較のために示す。
【図7】図7は、LipofectAmine2000、Transfectin、および式(I)の第二化合物の様々な処方体を用いて、プラスミドpCMV‐Sport β‐galでHEK293細胞のトランスフェクションから得られる結果を示す。トランスフェクションは、補助脂質なし(129E)に、1:1(129H)、2:1(129C)、および4:1(129D)のM/M比でコレステロールと処方された本発明の化合物、並びにM/M2:1(129A)および4:1(129B)でDOPEと処方された発明の化合物を用いて行われた。LipofectAmine2000(LA2K)およびTransfectinでのトランスフェクションを比較のために示す。
【図8】図8は、LipofectAmine、DMRIE‐C(Invitrogen Corp.,Carlsbad,CA)、および式(I)の第二化合物の様々な処方体を用いて、プラスミドpCMV‐Sport β‐galでNIH3T3細胞のトランスフェクションから得られる結果を示す。トランスフェクションは、2:1のM/M比でコレステロールと処方された本発明の化合物(129C)、およびM/M2:1でDOPEと処方された発明の化合物(129A)を用いて行われた。LipofectAmineおよびDMRIE‐Cでのトランスフェクションを比較のために示す。
【図9】図9は、LipofectAmine、DMRIE‐C(Invitrogen Corp.,Carlsbad,CA)、および式(I)の第二化合物の様々な処方体を用いて、プラスミドpCMV‐Sport β‐galで293GT細胞のトランスフェクションから得られる結果を示す。トランスフェクションは、2:1のM/M比でコレステロールと処方された本発明の化合物(129C)、およびM/M2:1でDOPEと処方された発明の化合物(129A)を用いて行われた。LipofectAmineおよびDMRIE‐Cでのトランスフェクションを比較のために示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスフェクション剤および融合剤を含んでなる複合体であって、前記融合剤が非エンベロープウイルスの融合タンパク質から誘導される融合促進アミノ酸配列を含んでなるものである、複合体。
【請求項2】
前記非エンベロープウイルスがレオウイルスである、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記レオウイルスが、トリレオウイルス、Nelson Bayレオウイルス、Pulauレオウイルス、およびヒヒレオウイルスからなる群より選択されるものである、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記融合剤が、前記融合促進アミノ酸配列へ機能的に連結された核酸結合部分を更に含んでなる、請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
前記核酸結合部分が、ポリカチオン性ペプチド配列、ポリアミン、ペプチド核酸、スペルミン、スペリジン、およびカルボキシスペルミジンからなる群より選択されるものである、請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
前記核酸結合部分が前記融合促進アミノ酸配列へ共有結合されるものである、請求項5に記載の複合体。
【請求項7】
前記トランスフェクション剤が、カチオン性脂質、ポリアミン、ポリカチオン性ペプチド配列、およびカチオン性デンドリマーからなる群より選択される試薬を含んでなるものである、請求項1に記載の複合体。
【請求項8】
前記複合体がトランスフェクション促進剤を更に含んでなるものである、請求項1に記載の複合体。
【請求項9】
前記トランスフェクション促進剤が核局在タンパク質またはペプチドを含んでなるものである、請求項8に記載の複合体。
【請求項10】
前記トランスフェクション促進剤が融合誘導ペプチドまたはタンパク質を含んでなるものである、請求項8に記載の複合体。
【請求項11】
前記トランスフェクション促進剤がレセプター‐リガンドペプチドまたはタンパク質を含んでなるものである、請求項8に記載の複合体。
【請求項12】
前記トランスフェクション促進剤が輸送ペプチドまたはタンパク質を含んでなるものである、請求項8に記載の複合体。
【請求項13】
前記トランスフェクション促進剤が、レオウイルス以外のウイルスから誘導される、細胞侵入を容易にするウイルスペプチドまたはタンパク質を含んでなるものである、請求項8に記載の複合体。
【請求項14】
前記ウイルスペプチドが、インフルエンザウイルス、水疱性口内炎ウイルス、アデノウイルス、アルファウイルス、セムリキ森林ウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、HIVウイルス、およびシミアンウイルスからなる群より選択されるウイルスから誘導されるものである、請求項13に記載の複合体。
【請求項15】
前記トランスフェクション促進剤が、インスリン、トランスフェリン、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、細胞標的化抗体、ラクトフェリン、フィブロネクチン、アデノウイルスペントンベース、Knob、ヘキソンタンパク質、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質、セムリキ森林ウイルスコアタンパク質、インフルエンザ赤血球凝集素、肝炎Bコアタンパク質、HIV Tatタンパク質、単純ヘルペスウイルスVP22タンパク質、ヒストンタンパク質、アルギニンリッチ細胞透過性タンパク質、高移動性群タンパク質、インベーシンタンパク質、インターナリンタンパク質、内毒素、ジフテリア毒素、赤痢菌毒素、メリチン、マガイニン、グラミシジン、セクロピン、デフェンシン、プロテグリン、タキプレシン、チオニン、インドリシジン、バクテネシン、ドロソマイシン、アピダエシン、カテリシジン、殺菌性透過性促進タンパク質、ナイシン、ブホリン、またはそれらの断片からなる群より選択される、請求項8に記載の複合体。
【請求項16】
前記トランスフェクション剤が少なくとも一種のカチオン性脂質を含んでなるものである、請求項1に記載の複合体。
【請求項17】
前記トランスフェクション剤が一種以上の中性脂質を更に含んでなるものである、請求項16に記載の複合体。
【請求項18】
前記トランスフェクション剤が少なくとも一種のポリアミントランスフェクション剤を含んでなるものである、請求項1に記載の複合体。
【請求項19】
前記カチオン性脂質が少なくとも一種の一価カチオン性脂質を含んでなるものである、請求項16に記載の複合体。
【請求項20】
前記一価カチオン性脂質が、DOTMA、DOTAP、DMRIE、DC‐Chol、およびDDABからなる群より選択されるものである、請求項19に記載の複合体。
【請求項21】
前記カチオン性脂質が少なくとも一種の多価カチオン性脂質を含んでなるものである、請求項16に記載の複合体。
【請求項22】
前記多価カチオン性脂質が、DOSPA、DOSPER、DOGS、TMTPS、TMTOS、TMTLS、TMTMS、TMDOS、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアオレオイルオキシプロピル)‐2‐ヒドロキシプロパン‐1,3‐ジアミン、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアミリスチルオキシプロピル)‐2‐ヒドロキシプロパン‐1,3‐ジアミン、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアパルミチルオキシプロピル)‐2‐ヒドロキシプロパン‐1,3‐ジアミン、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアオレオイルオキシプロピル)‐2‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピルオキシ)プロパン‐1,3‐ジアミン、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアミリスチルオキシプロピル)‐2‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピルオキシ)プロパン‐1,3‐ジアミン、N‐1‐ジメチル‐N‐1‐(2,3‐ジアパルミチルオキシプロピル)‐2‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピルオキシ)プロパン‐1,3‐ジアミン、L‐スペルミン‐5‐カルボキシル‐3‐(DL‐1,2‐ジパルミトイル‐ジメチルアミノプロピル‐β‐ヒドロキシエチルアミン)、3,5‐(N,N‐ジ‐リシル)ジアミノベンゾイル‐グリシル‐3‐(DL‐1,2‐ジパルミトイル‐ジメチルアミノプロピル‐β‐ヒドロキシエチルアミン)、L‐リシン‐ビス(O,O′‐オレオイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、L‐リシン‐ビス(O,O′‐パルミトイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)アルキルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、L‐リシン‐ビス(O,O′‐ミリストイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、L‐オルニチン‐ビス(O,O′‐ミリストイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、L‐オルニチン‐ビス(O,O′‐オレオイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、L‐オルニチン‐ビス(O,O′‐パルミトイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、1,4‐ビス〔(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレイルアミノ〕ブタン‐2,3‐ジオール、1,4‐ビス〔(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)パルミチルアミノ〕ブタン‐2,3‐ジオール、1,4‐ビス〔(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)ミリスチルアミノ〕ブタン‐2,3‐ジオール、1,4‐ビス〔(3‐オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジン、L‐アルギニン‐ビス(O,O′‐オレオイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)ミリスチルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、L‐アルギニン‐ビス(O,O′‐パルミトイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、L‐セリン‐ビス(O,O′‐オレオイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、グリシン‐ビス(O,O′‐パルミトイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、サルコシン‐ビス(O,O′‐パルミトイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、L‐ヒスチジン‐ビス(O,O′‐パルミトイル‐β‐ヒドロキシエチル)アミド二塩酸塩、コレステリル‐3β‐カルボキシル‐アミドエチレントリメチルアンモニウムヨージド、1,4‐ビス〔(3‐ミリスチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、1‐ジメチルアミノ‐3‐トリメチルアンモニオ‐DL‐2‐プロピル‐コレステリルカルボキシレートヨージド、コレステリル‐3β‐カルボキシアミドエチレンアミン、コレステリル‐3β‐オキシスクシンアミドエチレントリメチルアンモニウムヨージド、1‐ジメチルアミノ‐3‐トリメチルアンモニオ‐DL‐2‐プロピル‐コレステリル‐3β‐オキシスクシネートヨージド、2‐〔(2‐トリメチルアンモニオ)エチルメチルアミノ〕エチル‐コレステリル‐3β‐オキシスクシネートヨージド、3β‐〔N‐(N′,N′‐ジメチルアミノエタン)カルバモイル〕コレステロール、3β‐〔N‐(ポリエチレンイミン)カルバモイル〕コレステロール、1,4‐ビス〔(3‐パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、L‐オルニチルグリシル‐N‐(1‐ヘプタデシルオクタデシル)グリシンアミド、N,N‐ビス(3‐アミノプロピル)‐L‐オルニチルグリシル‐N‐(1‐ヘプタデシルオクタデシル)グリシンアミド、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)アルキルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N‐〔N,N‐ビス(3‐アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジオクタデシル‐L‐グルタミン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジオクタデシル‐L‐α‐グルタミン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジオクタデシル‐L‐α‐アスパラギン、N‐〔N‐〔N,N‐ビス〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕‐N,N‐ビス〔3‐〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕アミノプロピル〕‐L‐オルニチル‐N,N‐ジオクタデシル‐L‐グルタミニル〕‐L‐グルタミン酸、N‐〔N,N‐ビス(3‐アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジオレイル‐L‐グルタミン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジオレイル‐L‐α‐グルタミン、4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)ミリスチルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジオレイル‐L‐α‐アスパラギン、N‐〔N‐〔N,N‐ビス〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕‐N,N‐ビス〔3‐〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕アミノプロピル〕‐L‐オルニチル‐N,N‐ジオレイル‐L‐グルタミニル〕‐L‐グルタミン酸、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジン、N‐〔N,N‐ビス(3‐アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジパルミチル‐L‐グルタミン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジパルミチル‐L‐α‐グルタミン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジパルミチル‐L‐α‐アスパラギン、N‐〔N‐〔N,N‐ビス〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕‐N,N‐ビス〔3‐〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕アミノプロピル〕‐L‐オルニチル‐N,N‐ジパルミチル‐L‐グルタミニル〕‐L‐グルタミン酸、N‐〔N,N‐ビス(3‐アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジミリスチル‐L‐グルタミン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジミリスチル‐L‐α‐グルタミン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジミリスチル‐L‐α‐アスパラギン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)パルミチルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N‐〔N‐〔N,N‐ビス〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕‐N,N‐ビス〔3‐〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕アミノプロピル〕‐L‐オルニチル‐N,N‐ジミリスチル‐L‐グルタミニル〕‐L‐グルタミン酸、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)ミリスチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、N‐〔N,N‐ビス(3‐アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジラウレイル‐L‐グルタミン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジラウレイル‐L‐α‐グルタミン、N‐〔N,N‐ビス(アミノプロピル)‐L‐オルニチル〕‐N,N‐ジラウレイル‐L‐α‐アスパラギン、N‐〔N‐〔N,N‐ビス〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕‐N,N‐ビス〔3‐〔(1,1‐ジメチルエトキシ)カルボニル〕アミノプロピル〕‐L‐オルニチル‐N,N‐ジラウレイル‐L‐グルタミニル〕‐L‐グルタミン酸、3‐〔N′,N″‐ビス(2-tert-ブチルオキシカルボニルアミノエチル)グアニジノ〕‐N,N‐ジオクタデカ‐9‐エニルプロピオンアミド、3‐〔N′,N″‐ビス(2-tert-ブチルオキシカルボニルアミノエチル)グアニジノ〕‐N,N‐ジパルミチルプロピオンアミド、3‐〔N′,N″‐ビス(2-tert-ブチルオキシカルボニルアミノエチル)グアニジノ〕‐N,N‐ジミリスチルプロピオンアミド、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)オレイルアミノ)プロピル〕ピペラジン、N,N‐(2‐ヒドロキシ‐3‐アミノプロピル)‐N‐2‐ヒドロキシプロピル‐3‐N,N‐ジオレイルアミノプロパン、N,N‐(2‐ヒドロキシ‐3‐アミノプロピル)‐N‐2‐ヒドロキシプロピル‐3‐N,N‐ジパルミチルアミノプロパン、N,N‐(2‐ヒドロキシ‐3‐アミノプロピル)‐N‐2‐ヒドロキシプロピル‐3‐N,N‐ジミリスチルアミノプロパン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)ミリスチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、〔(3‐アミノプロピル)‐ビス(2‐テトラデシルオキシエチル)〕メチルアンモニウムブロミド、〔(3‐アミノプロピル)‐ビス(2‐オレイルオキシエチル)〕メチルアンモニウムブロミド、〔(3‐アミノプロピル)‐ビス(2‐パルミチルオキシエチル)〕メチルアンモニウムブロミド、オレオイル‐2‐ヒドロキシ‐3‐N,N‐ジメチルアミノプロパン、2‐ジデカノイル‐1‐N,N‐ジメチルアミノプロパン、パルミトイル‐2‐ヒドロキシ‐3‐N,N‐ジメチルアミノプロパン、1,2‐ジパルミトイル‐1‐N,N‐ジメチルアミノプロパン、ミリストイル‐2‐ヒドロキシ‐3‐N,N‐ジメチルアミノプロパン、1,2‐ジミリストイル‐1‐N,N‐ジメチルアミノプロパン、(3‐アミノプロピル)‐4‐(3‐アミノプロピルアミノ)‐4‐テトラデシルカルバモイル‐ブチルカルバミン酸コレステリルエステル、(3‐アミノプロピル)‐4‐(3‐アミノプロピルアミノ)‐4‐カルバモイルブチルカルバミン酸コレステリルエステル、(3‐アミノプロピル)‐4‐(3‐アミノプロピルアミノ)‐4‐(2‐ジメチルアミノエチルカルバモイル)ブチルカルバミン酸コレステリルエステル、スペルミン‐5‐カルボキシグリシン(N′‐ステアリル‐N′‐オレイル)アミド四トリフルオロ酢酸塩、スペルミン‐5‐カルボキシグリシン(N′‐ステアリル‐N′‐エライジル)アミド四トリフルオロ酢酸塩、アグマチニルカルボキシコレステロール酢酸塩、スペルミン
‐5‐カルボキシ‐β‐アラニンコレステリルエステル四トリフルオロ酢酸塩、2,6‐ジアミノヘキサノイル‐β‐アラニンコレステリルエステル二トリフルオロ酢酸塩、2,4‐ジアミノブチロイル‐β‐アラニンコレステリルエステル二トリフルオロ酢酸塩、N,N‐ビス(3‐アミノプロピル)‐3‐アミノプロピオニルβ‐アラニンコレステリルエステル三トリフルオロ酢酸塩、〔N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐2‐アミノエチル〕アミノカルボキシコレステリルエステル、ステアリルカルニチンエステル、パルミチルカルニチンエステル、ミリスチルカルニチンエステル、ステアリルステアロイルカルニチンエステルクロリド塩、L‐ステアリルステアロイルカルニチンエステル、ステアリルオレオイルカルニチンエステルクロリド、パルミチルパルミトイルカルニチンエステルクロリド、ミリスチルミリストイルカルニチンエステルクロリド、L‐ミリスチルミリストイルカルニチンエステルクロリド、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピル)パルミチルアミノ)プロピル〕ピペラジン、N‐(3‐アミノプロピル)‐N,N′‐ビス(ドデシルオキシエチル)ピペラジニウムブロミド、N‐(3‐アミノプロピル)‐N,N′‐ビス(オレイルオキシエチル)ピペラジニウムブロミド、N‐(3‐アミノプロピル)‐N,N′‐ビス(パルミチルオキシエチル)ピペラジニウムブロミド、N‐(3‐アミノプロピル)‐N,N′‐ビス(ミリスチルオキシエチル)ピペラジニウムブロミド、N‐(3‐アミノプロピル)‐N′‐メチル‐N,N′‐(ビス‐2‐ドデシルオキシエチル)ピペラジニウムブロミド、N‐(3‐アミノプロピル)‐N′‐メチル‐N,N′‐(ビス‐2‐オレイルオキシエチル)ピペラジニウムブロミド、N‐(3‐アミノプロピル)‐N′‐メチル‐N,N′‐(ビス‐2‐パルミチルオキシエチル)ピペラジニウムブロミド、N‐(3‐アミノプロピル)‐N′‐メチル‐N,N′‐(ビス‐2‐ミリスチルオキシエチル)ピペラジニウムブロミド、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)オレイルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)ミリスチルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、および1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)パルミチルアミノ)‐2‐ヒドロキシプロピル〕ピペラジンからなる群より選択されるものである、請求項21に記載の複合体。
【請求項23】
前記中性脂質が、DOPE、DPhPE、およびコレステロールからなる群より選択されるものである、請求項17に記載の複合体。
【請求項24】
前記ポリアミントランスフェクション剤が、密集星型デンドリマー、PAMAMデンドリマー、NHコアデンドリマー、エチレンジアミンコアデンドリマー、第5世代以上のデンドリマー、置換基を有するデンドリマー、1以上のアミノ酸を有するデンドリマー、グラフト化デンドリマー、活性化デンドリマー、ポリエチレンイミン、およびポリエチレンイミン接合体からなる群より選択されるものである、請求項18に記載の複合体。
【請求項25】
前記トランスフェクション剤が前記融合促進アミノ酸配列へ共有結合されるものである、請求項1に記載の複合体。
【請求項26】
前記カチオン性脂質の少なくとも一種が前記融合促進アミノ酸配列の一種以上へ共有結合されるものである、請求項16に記載の複合体。
【請求項27】
前記中性脂質の少なくとも一種が前記融合促進アミノ酸配列の一種以上へ共有結合されるものである、請求項17に記載の複合体。
【請求項28】
前記ポリアミンの少なくとも一種が前記融合促進アミノ酸配列の一種以上へ共有結合されるものである、請求項18に記載の複合体。
【請求項29】
前記融合促進アミノ酸配列が少なくとも一種の核酸結合基へ接合されるものである、請求項1に記載の複合体。
【請求項30】
前記核酸結合基が少なくとも一種のポリアミンまたはペプチド核酸を含んでなるものである、請求項29に記載の複合体。
【請求項31】
前記核酸結合基が、少なくとも一つのスペルミン部分を含んでなるポリアミンである、請求項30に記載の複合体。
【請求項32】
クロロキン、リソソーム指向性化合物、またはそれらの組合せを更に含んでなる、請求項8に記載の複合体。
【請求項33】
核酸、タンパク質またはペプチド、トランスフェクション剤、および融合剤を含んでなる複合体と、細胞とを接触させ(ここで、前記融合剤は非エンベロープウイルスの融合タンパク質から誘導される融合促進アミノ酸配列を含んでなる)、それにより核酸、タンパク質、またはペプチドを細胞中へ導入することを含んでなる、核酸、タンパク質、またはペプチドを細胞中へ導入するための方法。
【請求項34】
前記細胞がヒト細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞が動物細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞が線維芽細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞が初代細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記トランスフェクション剤が同一もしくは異なるペプチドまたはタンパク質のマルチマーを含んでなるものである、請求項1に記載の複合体。
【請求項39】
融合誘導剤、核局在配列、輸送ペプチド、レセプター‐リガンド、および細胞接着ペプチドからなる群より選択される二種のトランスフェクション剤を含んでなる、請求項1に記載の複合体。
【請求項40】
請求項1に記載の複合体と、製剤担体とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項41】
核酸、タンパク質、またはペプチド、および融合剤を含んでなる第一混合物を、トランスフェクション剤を含んでなる第二混合物と接触させることにより、複合体を形成することを更に含んでなる、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
融合剤およびトランスフェクション剤を含んでなる混合物へ核酸、タンパク質、またはペプチドを加えることにより、複合体を形成することを更に含んでなる、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
請求項2〜39のいずれか一項に記載の複合体および核酸、タンパク質、またはペプチドと、細胞とを接触させることを含んでなる、細胞を核酸、タンパク質、またはペプチドによりトランスフェクトする方法。
【請求項44】
前記アミノ酸配列がレオウイルスから誘導されるものである、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
前記レオウイルスが、トリレオウイルス、Nelson Bayレオウイルス、またはPulauレオウイルスからなる群より選択されるものである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
核酸結合部分と、レオウイルスの融合促進アミノ酸配列から誘導されるペプチドもしくはタンパク質または修飾ペプチドもしくは修飾タンパク質とを含んでなる、キット。
【請求項47】
カチオン性脂質トランスフェクション剤を更に含んでなる、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
カチオン性脂質トランスフェクション剤が、“LIPOFECTAMINE”、“LIPOFECTIN”、“LIPOFECTACE”、“CELLFECTIN”、“MULTIFECTOR”、“TRANSFECTIN”、Tfx‐10、Tfx‐20、Tfx‐50、SilentFect、GenePorter、Transfectam、DharmaFect 1、DharmaFect 2、DharmaFect 3、DharmaFect 4、Oligofectamine、Effectene、およびLIPOFECTAMINE2000からなる群より選択されるものである、請求項47に記載のキット。
【請求項49】
ポリカチオン性ポリマートランスフェクション剤を更に含んでなる、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
前記キットが、診断用核酸を更に含んでなる診断キットである、請求項49に記載のキット。
【請求項51】
前記キットが、トランスフェクション剤と、ペプチド、タンパク質、修飾ペプチド、または修飾タンパク質との混合物を含む容器を含んでなるものである、請求項91に記載のキット。
【請求項52】
トランスフェクション剤と、ペプチド、タンパク質、修飾ペプチド、または修飾タンパク質とが別々の容器に存在する、請求項91に記載のキット。
【請求項53】
非エンベロープウイルスから誘導される融合誘導ペプチドを含んでなる、長さ20〜50アミノ酸のペプチド。
【請求項54】
前記核酸結合部分がポリカチオン性ペプチドである、請求項53に記載のペプチド。
【請求項55】
前記核酸結合部分がリンカーを介して融合ペプチドへ連結されるものである、請求項54に記載のペプチド。
【請求項56】
前記リンカーがペプチド配列である、請求項55に記載のペプチド。
【請求項57】
前記ポリカチオン性ペプチドが融合誘導ペプチドへ直接連結されるものである、請求項54に記載のペプチド。
【請求項58】
前記核酸結合部分がポリアミン、ペプチド核酸、またはスペルミンである、請求項53に記載のペプチド。
【請求項59】
前記ペプチドが:
MLRMPPGSCNGATAVFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
MPRMPPGSCNGATAVFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
MSGDCAGLVSVFGSVHCQSSKNKAGGDLQATSILTTYWPH、
MSSDCAKIVSVFGSVHCQSSKNSAGGDLQATSVFTTYWPH、
MGSGPSNFVNHAPGEAIVTGLEKGADKVAGTISHTIWEVI
MGQRHSIVQPPAPPPNAFVEIVSSSTGIIIAVGIFAFIFS、および
MGSGPSNFVNHAPGEAIVTGLEKGADKVAGTISHTIWEVI
からなる群より選択される配列の5〜30連続アミノ酸を含んでなる、請求項53〜58のいずれか一項に記載の融合誘導ペプチド。
【請求項60】
前記ペプチドが、8〜30リシン残基へ共有結合された:
RMPPGSCNGATAVFGNVH、
RMPPGSCNGATAIFGNVH、
GDCAGLVSVFGSVH、
SDCAKIVSVFGSVH、
SGPSNFVNHAPGEAIVT、
QRHSIVQPPAPPPNAFVEIVS、および
SGPSNFVNHAPGEAIVT
からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも10連続アミノ酸を含んでなる、請求項59に記載のペプチド。
【請求項61】
請求項40に記載の医薬組成物を対象者へ投与することを含んでなる、対象者における疾患を治療する方法。
【請求項62】
前記ペプチドもしくはタンパク質または修飾ペプチドもしくは修飾タンパク質がレオウイルスからの融合誘導ペプチドである、請求項46に記載のキット。
【請求項63】
前記ペプチドもしくはタンパク質または修飾ペプチドもしくは修飾タンパク質が、トリレオウイルス、Nelson Bayレオウイルス、またはPulauレオウイルスからの融合誘導ペプチドである、請求項46に記載のキット。
【請求項64】
前記キットがトランスフェクション促進剤を更に含んでなるものである、請求項46に記載のキット。
【請求項65】
前記トランスフェクション促進剤がトランスフェクション促進ペプチドである、請求項64に記載のキット。
【請求項66】
前記キットが、核局在配列を含むペプチドを更に含んでなるものである、請求項64に記載のキット。
【請求項67】
前記核局在配列が、ペプチドまたはタンパク質あるいは修飾ペプチドまたは修飾タンパク質においてみられるものである、請求項66に記載のキット。
【請求項68】
前記キットが、核局在配列を含むトランスフェクション促進剤を更に含んでなるものである、請求項66に記載のキット。
【請求項69】
前記融合促進アミノ酸配列が脂肪酸へ結合されていないものである、請求項1に記載の複合体。
【請求項70】
前記複合体が核酸分子を更に含んでなるものである、請求項1に記載の複合体。
【請求項71】
前記融合促進アミノ酸配列の少なくとも10連続アミノ酸が、レオウイルスFASTタンパク質の疎水性領域の少なくとも10アミノ酸と少なくとも80%同一である、請求項2に記載の複合体。
【請求項72】
前記融合促進アミノ酸配列の少なくとも10連続アミノ酸が、レオウイルスFASTタンパク質の疎水性領域の少なくとも10アミノ酸と少なくとも90%同一である、請求項2に記載の複合体。
【請求項73】
前記融合促進アミノ酸配列の少なくとも10アミノ酸の連続ストレッチが、レオウイルスFASTタンパク質の疎水性領域の少なくとも10アミノ酸と同一である、請求項2に記載の複合体。
【請求項74】
前記核酸結合部分がポリカチオン性アミノ酸配列を含んでなるものである、請求項4に記載の複合体。
【請求項75】
前記細胞が初代細胞培養物、継代細胞培養物、または細胞系からのものである、請求項33に記載の方法。
【請求項76】
核酸が細胞中へ導入される、請求項33に記載の方法。
【請求項77】
細胞中へ導入される核酸がベクターである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
細胞中へ導入されるベクターが発現ベクターである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
発現ベクターによりコードされるタンパク質を発現することを更に含んでなる、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
発現されるタンパク質が抗体である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
接触される細胞が懸濁細胞である、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
タンパク質がリポータータンパク質である、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
核酸、タンパク質、またはペプチドと、トランスフェクション剤とを含んでなる第一混合物を、融合剤を含んでなる第二混合物と接触させることにより、複合体を形成することを更に含んでなる、請求項33に記載の方法。
【請求項84】
前記トランスフェクション剤がカチオン性脂質を含んでなる、請求項33に記載の方法。
【請求項85】
前記トランスフェクション剤が中性脂質を更に含んでなる、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
細胞を接触させる前に、トランスフェクション剤を脂質集合体へ形成することを更に含んでなる、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記融合促進アミノ酸配列が、長さ20〜50アミノ酸である融合誘導ペプチドである、請求項33に記載の方法。
【請求項88】
前記融合促進アミノ酸配列が、トリレオウイルス、Nelson Bayレオウイルス、またはPulauレオウイルスのFASTタンパク質の疎水性領域の少なくとも10連続アミノ酸と少なくとも80%同一である、少なくとも10アミノ酸の連続ストレッチを含んでなる、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記融合促進アミノ酸配列が、トリレオウイルスFASTタンパク質の疎水性領域の少なくとも10連続アミノ酸と少なくとも80%同一であり、少なくとも10アミノ酸の連続ストレッチを含んでなる、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
核酸、タンパク質、またはペプチドを細胞中へ導入するために、前記細胞が少なくとも15分間にわたり複合体と接触される、請求項33に記載の方法。
【請求項91】
トランスフェクション剤を更に含んでなる、請求項46に記載のキット。
【請求項92】
細胞を含む容器を更に含んでなる、請求項46に記載のキット。
【請求項93】
前記細胞が懸濁細胞である、請求項92に記載のキット。
【請求項94】
ベクターを更に含んでなる、請求項46に記載のキット。
【請求項95】
前記ベクターが、プロモーターを含んでなる発現ベクターである、請求項94に記載のキット。
【請求項96】
前記発現ベクターが、プロモーターへ機能的に連結された、リポータータンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含んでなる、請求項95に記載のキット。
【請求項97】
細胞培地を含む容器を更に含んでなる、請求項46に記載のキット。
【請求項98】
トランスフェクション促進剤を更に含んでなる、請求項91に記載のキット。
【請求項99】
前記トランスフェクション促進剤が、核酸結合剤を含んでなる剤である、請求項98に記載のキット。
【請求項100】
前記トランスフェクション促進剤が、核局在配列を含むペプチドを含んでなる、請求項98に記載のキット。
【請求項101】
前記ペプチドもしくはタンパク質または修飾ペプチドもしくはタンパク質が、長さ20〜50アミノ酸である融合誘導ペプチドである、請求項46に記載のキット。
【請求項102】
前記融合誘導ペプチドが、トリレオウイルス、Nelson Bayレオウイルス、またはPulauレオウイルスのFASTタンパク質の疎水性領域の少なくとも10連続アミノ酸と少なくとも80%同一であり、少なくとも10アミノ酸の連続ストレッチを含んでなるものである、請求項101に記載のキット。
【請求項103】
前記融合誘導ペプチドが、トリレオウイルスFASTタンパク質の疎水性領域の少なくとも10連続アミノ酸と少なくとも80%同一であり、少なくとも10アミノ酸の連続ストレッチを含んでなるものである、請求項101に記載のキット。
【請求項104】
前記核酸結合部分が融合誘導ペプチドへ機能的に連結されるものである、請求項101に記載のキット。
【請求項105】
前記核酸結合部分が融合誘導ペプチドへ共有結合されるものである、請求項101に記載のキット。
【請求項106】
前記核酸結合部分が、塩基性アミノ酸を含んでなるペプチドである、請求項105に記載のキット。
【請求項107】
前記核酸結合部分が8〜30リシン残基を含んでなるものである、請求項105に記載のキット。
【請求項108】
前記ペプチドが:
MLRMPPGSCNGATAVFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
MPRMPPGSCNGATAVFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
MSGDCAGLVSVFGSVHCQSSKNKAGGDLQATSILTTYWPH、
MSSDCAKIVSVFGSVHCQSSKNSAGGDLQATSVFTTYWPH、
MGSGPSNFVNHAPGEAIVTGLEKGADKVAGTISHTIWEVI
MGQRHSIVQPPAPPPNAFVEIVSSSTGIIIAVGIFAFIFS、および
MGSGPSNFVNHAPGEAIVTGLEKGADKVAGTISHTIWEVI
からなる群より選択される配列の5〜30連続アミノ酸を含んでなるものである、請求項103に記載のキット。
【請求項109】
前記ペプチドが、8〜30リシン残基へ共有結合された:
RMPPGSCNGATAVFGNVH、
RMPPGSCNGATAIFGNVH、
GDCAGLVSVFGSVH、
SDCAKIVSVFGSVH、
SGPSNFVNHAPGEAIVT、
QRHSIVQPPAPPPNAFVEIVS、
、および
SGPSNFVNHAPGEAIVT
からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも10連続アミノ酸を含んでなるものである、請求項103に記載のキット。
【請求項110】
前記ペプチドが核酸結合部分へ共有結合されたものである、請求項53に記載のペプチド。
【請求項111】
前記核酸結合部分が8〜30リシン残基を含んでなるものである、請求項53に記載のペプチド。
【請求項112】
前記カチオン性脂質が下記式を有する:
【化1】

上記において、XおよびXは、独立して、(CH、(CHOH)、およびCONHからなる群より選択され、
およびXは、独立して、(CH1‐6であり、
およびWは、独立して、水素、‐OH、‐O‐(C‐C18)アルキル、‐O‐(C‐C18)アルケニル、‐O‐(C‐C18)アルキニル、‐NH、‐NH(CHCH、‐N((CHCH)、‐SH、および‐NH‐NHからなる群より選択され、
および(Rは、独立して、N、NH、CH、N(CHCH、(CH)、(COH)、CON‐からなる群より選択され、q=0〜1であり、
およびRは、独立して、(CH、(CH‐CHOH‐CH、(CHOH)、HNCO、CONH、CO、‐O‐、‐S‐、‐S‐S‐、ポリアミド、およびエステル結合鎖からなる群より選択され、
およびLは、独立して、‐NH‐、‐O‐、‐NHCO‐、‐CONH‐、‐OCO‐、‐COO‐、‐CO‐、‐S‐、‐S‐S‐、‐NHC(O)O‐、‐OC(O)NH‐、‐NHCONH‐、‐NHC(=NH)NH‐、‐NH‐NH‐、‐S(O)‐、および‐SO‐からなる群より選択され、
Yは、少なくとも一つのアミンまたはアミド部分を含有するヘテロ環式部分であり、Yの結合点は炭素および/またはへテロ原子であり、
およびRは、独立して、水素、一級アルキルアミン、二級アルキルアミン、三級アルキルアミン、四級アルキルアミン、アルケニルアミン、二級アルケニルアミン、三級アルケニルアミン、四級アルケニルアミン、アルキニルアミン、二級アルキニルアミン、三級アルキニルアミン、四級アルキニルアミン、アミノアルコール、アルキルポリアミン、アルケニルポリアミン、アルキニルポリアミン、スペルミジン、スペルミン、カルボキシスペルミン、グアニジニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、ピペラジニウム、アミノアシル、ペプチジル、およびタンパク質からなる群より選択され、
およびZは、独立して、直鎖アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、直鎖アルケニル、分岐アルケニル、シクロアルケニル、直鎖アルキニル、および分岐アルキニルからなる群より選択され、
m、n、p、およびsは、独立して、0〜6であるが、但しm、n、およびpがすべて0である場合、Yは削除され、RがXへ直接結合される、請求項16に記載の複合体。
【請求項113】
前記カチオン性脂質が下記式を有する:
【化2】

上記において、XおよびXは、独立して、(CH、(CHOH)、およびCONHからなる群より選択され、
およびXは、独立して、(CH1‐6であり、
およびWは、独立して、水素、‐OH、‐O‐(C‐C18)アルキル、‐O‐(C‐C18)アルケニル、‐O‐(C‐C18)アルキニル、‐NH、‐NH(CHCH、‐N((CHCH)、‐SH、および‐NH‐NHからなる群より選択され、
および(Rは、独立して、N、NH、CH、N(CHCH、(CH)、(COH)、CON‐からなる群より選択され、q=0〜1であり、
およびRは、独立して、(CH、(CH‐CHOH‐CH、(CHOH)、HNCO、CONH、CO、‐O‐、‐S‐、‐S‐S‐、ポリアミド、およびエステル結合鎖からなる群より選択され、
およびLは、独立して、‐NH‐、‐O‐、‐NHCO‐、‐CONH‐、‐OCO‐、‐COO‐、‐CO‐、‐S‐、‐S‐S‐、‐NHC(O)O‐、‐OC(O)NH‐、‐NHCONH‐、‐NHC(=NH)NH‐、‐NH‐NH‐、‐S(O)‐、および‐SO‐からなる群より選択され、
Yは、少なくとも一つのアミンまたはアミド部分を含有するヘテロ環式部分であり、Yの結合点は炭素および/またはへテロ原子であり、
およびRは、独立して、水素、一級アルキルアミン、二級アルキルアミン、三級アルキルアミン、四級アルキルアミン、アルケニルアミン、二級アルケニルアミン、三級アルケニルアミン、四級アルケニルアミン、アルキニルアミン、二級アルキニルアミン、三級アルキニルアミン、四級アルキニルアミン、アミノアルコール、アルキルポリアミン、アルケニルポリアミン、アルキニルポリアミン、スペルミジン、スペルミン、カルボキシスペルミン、グアニジニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、ピペラジニウム、アミノアシル、ペプチジル、およびタンパク質からなる群より選択され、
およびZは、独立して、直鎖アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、直鎖アルケニル、分岐アルケニル、シクロアルケニル、直鎖アルキニル、および分岐アルキニルからなる群より選択され、
m、n、p、およびsは、独立して、0〜6であるが、但しm、n、およびpがすべて0である場合、Yは削除され、RがXへ直接結合される、請求項46に記載のキット。
【請求項114】
前記カチオン性脂質が下記式を有する:
【化3】

上記において、XおよびXは、独立して、(CH、(CHOH)、およびCONHからなる群より選択され、
およびXは、独立して、(CH1‐6であり、
およびWは、独立して、水素、‐OH、‐O‐(C‐C18)アルキル、‐O‐(C‐C18)アルケニル、‐O‐(C‐C18)アルキニル、‐NH、‐NH(CHCH、‐N((CHCH)、‐SH、および‐NH‐NHからなる群より選択され、
および(Rは、独立して、N、NH、CH、N(CHCH、(CH)、(COH)、CON‐からなる群より選択され、q=0〜1であり、
およびRは、独立して、(CH、(CH‐CHOH‐CH、(CHOH)、HNCO、CONH、CO、‐O‐、‐S‐、‐S‐S‐、ポリアミド、およびエステル結合鎖からなる群より選択され、
およびLは、独立して、‐NH‐、‐O‐、‐NHCO‐、‐CONH‐、‐OCO‐、‐COO‐、‐CO‐、‐S‐、‐S‐S‐、‐NHC(O)O‐、‐OC(O)NH‐、‐NHCONH‐、‐NHC(=NH)NH‐、‐NH‐NH‐、‐S(O)‐、および‐SO‐からなる群より選択され、
Yは、少なくとも一つのアミンまたはアミド部分を含有するヘテロ環式部分であり、Yの結合点は炭素および/またはへテロ原子であり、
およびRは、独立して、水素、一級アルキルアミン、二級アルキルアミン、三級アルキルアミン、四級アルキルアミン、アルケニルアミン、二級アルケニルアミン、三級アルケニルアミン、四級アルケニルアミン、アルキニルアミン、二級アルキニルアミン、三級アルキニルアミン、四級アルキニルアミン、アミノアルコール、アルキルポリアミン、アルケニルポリアミン、アルキニルポリアミン、スペルミジン、スペルミン、カルボキシスペルミン、グアニジニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、ピペラジニウム、アミノアシル、ペプチジル、およびタンパク質からなる群より選択され、
およびZは、独立して、直鎖アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、直鎖アルケニル、分岐アルケニル、シクロアルケニル、直鎖アルキニル、および分岐アルキニルからなる群より選択され、
m、n、p、およびsは、独立して、0〜6であるが、但しm、n、およびpがすべて0である場合、Yは削除され、RがXへ直接結合される、請求項84に記載の方法。
【請求項115】
下記式を有する脂質:
【化4】

上記において、XおよびXは、独立して、(CH、(CHOH)、およびCONHからなる群より選択され、
およびXは独立して(CH1‐6であり、
およびWは、独立して、水素、‐OH、‐O‐(C‐C18)アルキル、‐O‐(C‐C18)アルケニル、‐O‐(C‐C18)アルキニル、‐NH、‐NH(CHCH、‐N((CHCH)、‐SH、および‐NH‐NHからなる群より選択され、
および(Rは、独立して、N、NH、CH、N(CHCH、(CH)、(COH)、CON‐からなる群より選択され、q=0〜1であり、
およびRは、独立して、(CH、(CH‐CHOH‐CH、(CHOH)、HNCO、CONH、CO、‐O‐、‐S‐、‐S‐S‐、ポリアミド、およびエステル結合鎖からなる群より選択され、
およびLは、独立して、‐NH‐、‐O‐、‐NHCO‐、‐CONH‐、‐OCO‐、‐COO‐、‐CO‐、‐S‐、‐S‐S‐、‐NHC(O)O‐、‐OC(O)NH‐、‐NHCONH‐、‐NHC(=NH)NH‐、‐NH‐NH‐、‐S(O)‐、および‐SO‐からなる群より選択され、
Yは、少なくとも一つのアミンまたはアミド部分を含有するヘテロ環式部分であり、Yの結合点は炭素および/またはへテロ原子であり、
およびRは、独立して、水素、一級アルキルアミン、二級アルキルアミン、三級アルキルアミン、四級アルキルアミン、アルケニルアミン、二級アルケニルアミン、三級アルケニルアミン、四級アルケニルアミン、アルキニルアミン、二級アルキニルアミン、三級アルキニルアミン、四級アルキニルアミン、アミノアルコール、アルキルポリアミン、アルケニルポリアミン、アルキニルポリアミン、スペルミジン、スペルミン、カルボキシスペルミン、グアニジニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、ピペラジニウム、アミノアシル、ペプチジル、およびタンパク質からなる群より選択され、
およびZは、独立して、直鎖アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、直鎖アルケニル、分岐アルケニル、シクロアルケニル、直鎖アルキニル、および分岐アルキニルからなる群より選択され、
m、n、p、およびsは、独立して、0〜6であるが、但しm、n、およびpがすべて0である場合、Yは削除され、RがXへ直接結合される。
【請求項116】
およびLが、独立して、‐NH‐、‐O‐、‐NHCO‐、‐CONH‐、‐NHC(O)O‐、‐OC(O)NH‐、‐NHCONH‐、‐NHC(=NH)NH‐、‐S(O)‐、および‐SO‐からなる群より選択されるものである、請求項115に記載の脂質。
【請求項117】
およびLが、独立して、‐NH‐、‐NHCO‐、‐CONH‐、‐NHC(O)O‐、および‐OC(O)NH‐からなる群より選択されるものである、請求項116に記載の脂質。
【請求項118】
下記式を有する:
【化5】

上記において、X、X、W、W、R、(R)、R、R、Y、R、R、Z、Z、m、n、p、およびsは前記と同義である、請求項115に記載の脂質。
【請求項119】
Yが以下である:
【化6】

上記において、XおよびXは、独立して、NおよびCHから選択され、nおよびnは独立して1〜10である、請求項115〜118のいずれか一項に記載の脂質。
【請求項120】
およびXがNであり、nおよびnが独立して1〜10である、請求項115〜119のいずれか一項に記載の脂質。
【請求項121】
およびnが各々2である、請求項120に記載の脂質。
【請求項122】
請求項115〜121のいずれか一項に記載の脂質と、中性、正荷電、または負荷電である補助脂質とを含んでなる、組成物。
【請求項123】
前記補助脂質がDOPEまたはコレステロールである、請求項122に記載の組成物。
【請求項124】
高分子を更に含んでなる、請求項122または123に記載の組成物。
【請求項125】
前記高分子が核酸である、請求項124に記載の組成物。
【請求項126】
前記核酸がDNA分子を含んでなる、請求項125に記載の組成物。
【請求項127】
前記DNA分子が二本鎖DNA分子である、請求項126に記載の組成物。
【請求項128】
前記DNA分子がプラスミドである、請求項127に記載の組成物。
【請求項129】
前記プラスミドが、自己相補性でありかつ二本鎖RNAの領域を形成する、RNA分子をコードするものである、請求項128に記載の組成物。
【請求項130】
前記核酸がRNA分子を含んでなるものである、請求項125に記載の組成物。
【請求項131】
前記RNA分子が二本鎖RNA分子である、請求項130に記載の組成物。
【請求項132】
前記RNA分子がsiRNAである、請求項131に記載の組成物。
【請求項133】
真核細胞を更に含んでなる、請求項122〜132のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項134】
前記細胞が哺乳類細胞である、請求項133に記載の組成物。
【請求項135】
真核細胞を請求項124〜133のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを含んでなる、高分子を細胞中へ導入する方法。
【請求項136】
請求項115〜134のいずれか一項に記載の脂質または組成物と、ペプチドまたはタンパク質とを含んでなる、組成物。
【請求項137】
前記ペプチドもしくはタンパク質が、核もしくは他の細胞内局在、輸送もしくは移送により機能するトランスフェクション促進ペプチドまたはタンパク質であり、細胞接着シグナル、細胞標的化シグナル、細胞インターナリゼーションシグナル、またはエンドサイトーシスシグナルおよびそれらの組合せを含んでなるレセプターリガンドである、請求項136に記載の組成物。
【請求項138】
前記ペプチドまたはタンパク質が、エンベロープおよび非エンベロープウイルス、細菌、インスリン、トランスフェリン、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、細胞標的化抗体、ラクトフェリン、フィブロネクチン、アデノウイルスペントンベース、Knob、ヘキソンタンパク質、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質、セムリキ森林ウイルスコアタンパク質、インフルエンザ赤血球凝集素、肝炎Bコアタンパク質、HIV Tatタンパク質、単純ヘルペスウイルスVP22タンパク質、レオウイルス融合タンパク質、ヒストンタンパク質、アルギニンリッチ細胞透過性タンパク質、高移動性群タンパク質、インベーシンタンパク質、インターナリンタンパク質、内毒素、ジフテリア毒素、赤痢菌毒素、メリチン、マガイニン、グラミシジン、セクロピン、デフェンシン、プロテグリン、タキプレシン、チオニン、インドリシジン、バクテネシン、ドロソマイシン、アピダエシン、カテリシジン、アダプチンタンパク質、殺菌性透過性促進タンパク質、ナイシン、ブホリン、またはそれらの断片から誘導されるペプチドおよびタンパク質からなる群より選択されるものである、請求項136に記載の組成物。
【請求項139】
請求項136〜138のいずれか一項に記載の組成物および高分子。
【請求項140】
前記高分子が核酸である、請求項139に記載の組成物。
【請求項141】
前記核酸がDNA分子を含んでなるものである、請求項140に記載の組成物。
【請求項142】
前記DNA分子が二本鎖DNA分子である、請求項141に記載の組成物。
【請求項143】
前記DNA分子がプラスミドである、請求項142に記載の組成物。
【請求項144】
前記プラスミドが、自己相補性でありかつ二本鎖RNAの領域を形成する、RNA分子をコードするものである、請求項143に記載の組成物。
【請求項145】
前記核酸がRNA分子を含んでなるものである、請求項140に記載の組成物。
【請求項146】
前記RNA分子が二本鎖RNA分子である、請求項145に記載の組成物。
【請求項147】
前記RNA分子がsiRNAである、請求項146に記載の組成物。
【請求項148】
真核細胞を請求項139〜146のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを含んでなる、高分子を細胞中へ導入する方法。
【請求項149】
真核細胞を請求項136に記載の組成物と接触させることを含んでなる、ペプチドまたはタンパク質を細胞中へ導入する方法。
【請求項150】
前記望ましい分子および脂質を含んでなる組成物または請求項115〜123または請求項136〜138のいずれか一項に記載の組成物と、前記組織とを接触させることを含んでなる、望ましい分子を組織中へ導入する方法。
【請求項151】
前記望ましい分子が核酸、ペプチド、またはタンパク質である、請求項150に記載の方法。
【請求項152】
前記補助脂質がカチオン性脂質である、請求項122に記載の組成物。
【請求項153】
前記カチオン性脂質が、LipofectAmine 2000、LipofectAmine、Lipofectin、DMRIE‐C、Fugene、Fugene HD、Transfectam、TRANSFECTIN、SilentFect、Effectene、およびDC‐cholからなる群より選択されるものである、請求項152に記載の組成物。
【請求項154】
前記ペプチドまたはタンパク質が、核または他の細胞内局在、輸送または移送で機能するトランスフェクション促進ペプチドまたはタンパク質であり、スペルミン、スペルミジン、またはポリリシンで共有結合修飾された細胞接着シグナル、細胞標的化シグナル、細胞インターナリゼーションシグナル、またはエンドサイトーシスシグナルおよびそれらの組合せを含んでなるレセプターリガンドである、請求項136に記載の組成物。
【請求項155】
Yが以下である:
【化7】

上記において、XおよびXは、独立して、NおよびCHから選択され、nおよびnは独立して1〜10である、請求項112に記載の複合体。
【請求項156】
前記カチオン性脂質が1,4‐ビス〔(3‐(3‐アミノプロピル)アルキルアミノ)プロピル〕ピペラジン脂質である、請求項155に記載の複合体。
【請求項157】
前記融合促進アミノ酸配列が:
MLRMPPGSCNGATAVFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
MPRMPPGSCNGATAVFGNVHCQAAQNTAGGDLQATSSIIA、
MSGDCAGLVSVFGSVHCQSSKNKAGGDLQATSILTTYWPH、
MSSDCAKIVSVFGSVHCQSSKNSAGGDLQATSVFTTYWPH、
MGQRHSIVQPPAPPPNAFVEIVSSSTGIIIAVGIFAFIFS、および
MGSGPSNFVNHAPGEAIVTGLEKGADKVAGTISHTIWEVI
からなる群より選択される配列の10〜30連続アミノ酸を含んでなるペプチドである、請求項1に記載の複合体。
【請求項158】
前記ペプチドが、8〜30リシン残基へ共有結合された:
RMPPGSCNGATAVFGNVH、
GDCAGLVSVFGSVH、
SDCAKIVSVFGSVH、
QRHSIVQPPAPPPNAFVEIVS、および
SGPSNFVNHAPGEAIVT
からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも10連続アミノ酸を含んでなる、請求項157に記載の複合体。
【請求項159】
前記核酸結合部分と、レオウイルスの融合促進アミノ酸配列から誘導されるペプチドもしくはタンパク質または修飾ペプチドもしくは修飾タンパク質とが、同一容器中に存在する、請求項46に記載のキット。
【請求項160】
前記核酸結合部分、カチオン性脂質トランスフェクション剤、およびレオウイルスの融合促進アミノ酸配列から誘導されるペプチドもしくはタンパク質または修飾ペプチドもしくは修飾タンパク質が、同一容器中に存在するものである、請求項47に記載のキット。
【請求項161】
トランスフェクション促進試薬を更に含んでなる、請求項160に記載のキット。
【請求項162】
前記核酸結合部分、前記トランスフェクション促進試薬、前記カチオン性脂質トランスフェクション剤、および前記レオウイルスの融合促進アミノ酸配列から誘導されるペプチドもしくはタンパク質または修飾ペプチドもしくは修飾タンパク質が、同一容器中に存在するものである、請求項161に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−536030(P2009−536030A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509534(P2009−509534)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/019356
【国際公開番号】WO2007/130073
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(505434009)モレキュラー、トランスファー、インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】MOLECULAR TRANSFER, INC.
【Fターム(参考)】