説明

真正性識別体、および真正性識別構造転写シート

【課題】コレステリック液晶層にホログラム等の光回折構造が形成された真正性識別構造が、真正性識別対象物に適用する際の耐熱性(高温、高圧に対する耐性)および真正性識別対象物に適用した後の耐熱性が不十分であった点を解消することを課題とする。
【解決手段】真正性識別対象物上に積層された、ホログラム等の微細凹凸を有するコレステリック液晶層の微細凹凸のある側に耐熱性向上層が積層されているので、熱や圧力が加わっても、ホログラム等の微細凹凸が消失しにくく、ホログラム等の微細凹凸を有するコレステリック液晶層の真正性識別機能が保持され、従って、真正性識別機能の熱や圧力に対する耐久性が向上した真正性識別体を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム等の光回折構造の微細凹凸を有するコレステリック液晶層が、微細凹凸側に耐熱性向上層を伴なった真正性識別構造を、カード類、有価証券類等の情報記録媒体を代表とする真正性識別対象物に適用した真正性識別体、およびそのような真正性識別体を製造するための転写シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレジットカードや預貯金用カードは、偽造されて使用されると、カードの保持者やカード会社もしくは金融機関に損害を与え得る。同様に偽造が問題となるものとしては、運転免許証、社員証、会員証等の身分証明書、入学試験用の受験票、パスポート等、紙幣、商品券、ポイントカード、株券、証券、抽選券、馬券、預金通帳、乗車券、通行券、航空券、種々の催事の入場券、遊戯券、交通機関や公衆電話用のプリペイドカード等がある。これらはいずれも、経済的、もしくは社会的な価値を有する情報を保持した情報記録媒体であり、偽造による損害を防止する目的で、そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
【0003】
また、これら情報記録媒体以外であっても、高額商品、例えば、高級腕時計、高級皮革製品、貴金属製品、もしくは宝飾品等の、しばしば、高級ブランド品と言われるもの、または、それら高額商品の収納箱やケース等も偽造され得るものである。また、量産品でも有名ブランドのもの、例えば、オーディオ製品、電化製品等、または、それらに吊り下げられるタグも、偽造の対象となりやすい。さらに、著作物である音楽ソフト、映像ソフト、コンピュータソフト、もしくはゲームソフト等が記録された記憶媒体、またはそれらのケース等も、やはり偽造の対象となり得る。これらのものも偽造による損害を防止する目的で、そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
【0004】
従来、情報記録媒体や上記した種々の物品(総称して、真正性識別対象物と言う。)の偽造を防止する目的で、その構造の精密さから、製造上の困難性を有すると言われるホログラムを真正性の識別可能なもの(真正性識別構造と言う。)として適用することが多く行なわれている。しかしながら、ホログラムの製造方法自体は知られており、ホログラムが単に目視するだけのホログラムであるときは、もともと精密なものであるだけに、真正なホログラムと偽造されたホログラムとの区別は困難である。
【0005】
一般的なホログラムは、合成樹脂、中でも紫外線硬化性樹脂を用いて形成され、その硬化した樹脂の層の表面に、ホログラムの干渉縞が微細凹凸として形成されたものであるが、近年、コレステリック液晶を含有する層が左円偏光もしくは右円偏光のいずれかを反射する性質を有し、従って、左円偏光板もしくは右円偏光板のいずれかを用いた場合にのみ、色が見える特性を有し、また、層の表面にホログラム等の微細凹凸を形成し得ることから、コレステリック液晶層をホログラム等の光回折構造を形成するための層として利用した真正性識別構造は、合成樹脂、もしくは紫外線硬化性樹脂を用いた場合にくらべて、偽造防止に対する抵抗性が増すので好ましい。(特許文献1参照)
【0006】
しかしながら、上記のコレステリック液晶層からなる真正性識別構造は、一般的なホログラム形成用材料を用いて得られる真正性識別構造にくらべると、耐熱性が不十分であり、特に、ホログラム等の光回折構造を、熱と圧力をかけつつ情報記録媒体に適用するホットスタンプ方式による適用する際には、ホログラム等の光回折構造の微細凹凸が加熱や加圧によって消失しやすく、コレステリック液晶層からなる真正性識別構造が適用された真正性識別対象物も、真正性識別構造の耐熱性が不十分なものとなりやすい。
【特許文献1】特開2000−25373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明においては、従来、コレステリック液晶層からなるホログラム等の光回折構造が形成された真正性識別構造が、真正性識別対象物に適用する際の耐熱性、および真正性識別対象物に適用した後の耐熱性が不十分であった点を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、ホログラム等の光回折構造が微細凹凸として形成されたコレステリック液晶層からなる真正性識別構造の微細凹凸側に、電離放射線硬化樹脂又は低温処理熱硬化樹脂からなる耐熱性向上層を積層して、この耐熱性向上層の表面に前記微細凹凸構造と同一形状の凹凸構造を形成したことにより、上記の課題を解決することができた。
【0009】
第1の発明は、真正性識別対象物上に、接着剤層を介し、電離放射線硬化樹脂又は低温処理熱硬化樹脂からなる耐熱性向上層、および前記真正性識別対象物側の面に光回折構造の微細凹凸を有するコレステリック液晶層が順に積層されたことを特徴とする真正性識別構造を備えた真正性識別体に関するものである。
電離放射線硬化樹脂とは、電子線硬化樹脂又は、紫外線硬化樹脂であり、低温処理熱効果樹脂とは、その加熱硬化を、常温もしくは50度以下の温度で進めるものであり、いずれも、硬化時の高温処理を要しない特徴を有する。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記コレステリック液晶層の前記耐熱性向上層が積層されたのとは反対側に保護層が積層されたことを特徴とする真正性識別構造を備えた真正性識別体に関するものである。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記真正性識別構造を備えた真正性識別対象物が情報記録媒体であることを特徴とする真正性識別構造を備えた真正性識別体に関するものである。
【0011】
第4の発明は、離型性シート状基材の離型性面に転写層が積層されており、前記転写層は、前記離型性シート状基材側から、少なくとも、保護層、前記離型性シート状基材側とは反対側の面に光回折構造の微細凹凸を有するコレステリック液晶層、電離放射線硬化樹脂又は低温処理熱硬化樹脂からなる耐熱性向上層、および接着剤層が順に積層した構造からなるものであることを特徴とする真正性識別構造転写シートに関するものである。
第5の発明は、第4の発明において、前記コレステリック液晶層の前記離型性シート状基材側に保護層が積層されたことを特徴とする真正性識別構造転写シートに関するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、真正性識別対象物上に積層された、ホログラム等の微細凹凸を有するコレステリック液晶層の微細凹凸のある側に電離放射線硬化樹脂又は低温処理熱硬化樹脂からなる耐熱性向上層が積層されているので、転写加工時の高温や、高い圧力が加わっても、その耐熱性向上層に形成されているホログラム等の微細凹凸(深さ0.1μm、周期1μm程度の精密な微細凹凸を有し、この凹凸がわずかであっても連動して変形すると、ホログラム等の画像が歪み、ホログラム像を検出器で検出する場合には検出不能となる。)が変形せず、接しているコレステリック液晶層のホログラム等の微細凹凸が消失しにくく、ホログラム等の微細凹凸を有するコレステリック液晶層の真正性識別機能が保持され、従って、真正性識別機能の熱や圧力に対する耐久性が向上した真正性識別体を提供することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、コレステリック液晶層の微細凹凸の無い側に保護層が積層されているので、真正性識別構造の表面の物理的および化学的耐久性が高い真正性識別体を提供することができる。
請求項3の発明によれば、請求項1または請求項2の発明の効果に加え、真正性識別対象物が情報記録媒体であるので、情報記録媒体が持つ、経済的、もしくは社会的な価値を有する情報の真正性が、より高度な水準で確保された真正性識別体を提供することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、ホログラム等の微細凹凸を有するコレステリック液晶層の微細凹凸側転に耐熱性向上層が積層されているので、この転写シートを用いて転写を行なえば、熱や圧力が加わっても、ホログラム等の微細凹凸が消失しにくく、ホログラム等の微細凹凸を有するコレステリック液晶層の真正性識別機能が保持され、従って、真正性識別機能の耐性が向上した真正性識別構造を真正性識別対称物上に適用し得る真正性識別構造転写シートを提供することができる。
請求項5の発明によれば、請求項4の発明の効果に加え、転写後の最表層となり得る保護層が積層されたことにより、物理的および化学的耐久性が高められた真正性識別構造を真正性識別対称物上に適用し得る真正性識別構造転写シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の真正性識別体の断面図である。本発明の真正性識別体1は、基本的には、真正性識別対象物2上に、接着剤層3、耐熱性向上層4、コレステリック液晶層5、および保護層6が順に積層された積層構造を有するものであり、コレステリック液晶層5は、真正性識別対象物2側の面に光回折構造の微細凹凸5aを有するものである。
【0016】
真正性識別対象物2は、従来技術の説明において挙げた情報記録媒体やその他の種々の物品である。従って、素材としては、物品によって、プラスチック、布、紙、木、皮革、金属、もしくは石材等、またはそれらの任意の組み合わせからなる複合体であり得る。
真正性識別対象物2が情報記録媒体であるときは、基本的には、紙、プラスチック、もしくは紙とプラスチックの複合体を素材とすることが多い。プラスチック単独の場合には、プラスチックフィルム、プラスチックシート、もしくはプラスチック板の単層、もしくは複層の積層体を素材とすることができる。
【0017】
上記のプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称することがある。)もしくはポリエチレンナフタレー
ト等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABSなどの樹脂が挙げられる。
【0018】
塩素を含まず、加工性の優れた樹脂としては、非晶質ポリエステル樹脂(例えば、イーストマンコダック社製、「PET−G」)が好ましく、さらに耐熱性を要する場合には、非晶質ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂のブレンド樹脂が好ましい。この「PET−G」としては、例えば、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール=70/30(質量比)のものがある。
【0019】
真正性識別対象物が磁気カード等のカードである場合、その厚みを0.76mmとすることが好ましい。例えば、厚み280μmの白色プラスチックシートをコアシートとして、これを2枚重ね、重ねた両側にそれぞれ厚み100μmの透明プラスチックシートをオーバーシートとして重ねて、熱プレスなどにより積層する4層構成の基材(合計厚み0.76mm)を用いるとよい。
【0020】
真正性識別対象物2が情報記録媒体であるときは、通常、種々の文字、図柄等、または着色が、印刷、もしくはコーティング、または転写等によって、施されていてもよい。クレジットカードを例にとっても、文字としては、カードの名称、発行会社名、もしくは内容自体はエンボスにより表示されることが多い氏名、有効期限の項目名、注意書等があり得る。図柄としては、カードの種類を特徴付ける図柄やキャクター等があり得
る。
【0021】
接着剤層3は、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、もしくはゴム変性物系等の樹脂単独、もしくは2種以上の混合系のものの中から、耐熱性向上層4および真正性識別対象物2を構成する素材に応じて選択し使用する。
【0022】
コレステリック液晶層5としては、液晶配向を固定化した高分子フィルム、もしくはコレステリック液晶を適宜な樹脂中に分散したもの等、光学的に選択反射性及び円偏光選択性を示す媒体すべてを用いることが可能であるが、特に液晶配向を固定化した高分子フィルムを好適に用いることができる。
【0023】
液晶配向を固定化した高分子フィルムの例としては、低分子液晶をコレステリック配向させた後、光反応又は熱反応などで低分子液晶を架橋して配向固定化した高分子フィルムをあげることができる。また、他の例としては、側鎖型又は主鎖型のサーモトロピック高分子液晶を液晶状態でコレステリック配向させた後、液晶転移点以下の温度に冷却して、配向状態を固定化して作製した高分子フィルムをあげることができる。さらに、側鎖型又は主鎖型のリオトロピック高分子液晶を溶液中でコレステリック配向させた後、溶媒を徐々に除去することによって配向状態を固定化して作製した高分子フィルムを用いることもできる。
【0024】
これらフィルム作製に用いることのできる高分子液晶の例としては、側鎖に液晶形成基を有するポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリマロネートなどの側鎖型ポリマー、主鎖に液晶形成基をもつポリエステル、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミドなどの主鎖型ポリマーをあげることができる。必要に応じて、コレステリック液晶を電離放射線硬化性樹脂中に配合した、コレ
ステリック液晶含有の電離放射線硬化性樹脂組成物を適宜な基材に塗付し、塗膜に電離放射線を照射することによりフィルム化してもよい。塗布したときの基材を剥がせるように構成することもできる。
【0025】
コレステリック液晶層を構成するコレステリック液晶は、液晶分子の配向構造が膜厚方向に螺旋を描くように規則的なねじれを有しており、螺旋のピッチP(液晶分子が360°回転するのに必要な膜厚)と入射光の波長λがほぼ等しい場合に、(1)入射光のうち特定の波長帯域内にある光を強く反射する選択反射性、および(2)円偏光選択性の、2つの光学的性質を示す。
【0026】
(1)の選択反射性は、特定の波長域に限定されて生じるため、コレステリック液晶のピッチPを適切に選択することにより、反射光は色純度の高い有彩色となる。また、入射光が法線に対し斜めに入射する場合、ピッチPが見かけ上減少することから、中心波長λsは短波長側へ移行し、帯域幅Δλは減少する。この現象は、中心波長λsが短波長側へ移行することからブルーシフトと呼ばれ、目視でも容易に識別可能である。た
とえば、法線方向(0°の入射位置)から観察して赤色に呈色するコレステリック液晶の反射色は、視野角を大きくして行くにつれ、オレンジ色、黄色、緑色、青緑色、青色と順次変化するように観察される。
【0027】
(2)の円偏光選択性は、特定の回転方向の円偏光だけを反射し、これと回転方向が反対の円偏光を透過する性質をいう。入射光のうちコレステリック液晶の配向構造のねじれ方向と同方向の円偏光成分は反射され、その反射光の回転方向も同一方向となるのに対し、逆方向に回転する円偏光成分は透過する点がコレステリック液晶に特有な特異な性質である。例えば、右ねじれ構造を有するコレステリック液晶の場合、右円偏光を反射し、かつ反射光は右円偏光のままであり、左円偏光は透過することになる。従って、コレステリック液晶層5は、入射した光のうち、左円偏光又は右円偏光のいずれか一方の光のみを反射させて反射光を生成する層である。
【0028】
本発明におけるコレステリック液晶層5は、上記の2つの光学的性質を有することに加えて、真正性識別対象物2側の面に、ホログラム等の光回折構造の微細凹凸5aを有している。この微細凹凸5aの形状自体は、ホログラム等の光回折構造における各回折格子を位相変調して得られるものである。
【0029】
図2は、本発明の微細凹凸5aを有するコレステリック液晶層5の光学的性質を説明するための断面図である。真正性識別体1のコレステリック液晶層5に、その法線に対し斜めの方向(図では、法線に対して約40°の方向)から入射した入射光Iは、コレステリック液晶層5の保護層6側の表面で正反射して、反射光Irを生じ、また、反射光Irと同一の円偏光の光が、微細凹凸5aにより、反射光Irとは異なる方向の回折光Idを生じ、微細凹凸5aがホログラムにおける各回折格子を位相変調して得られたものであるときは、ホログラム像を生じる。
【0030】
すなわち本発明の微細凹凸5aを有するコレステリック液晶層5は、その保護層6側の表面およびコレステリック液晶層5の内部において、左円偏光又は右円偏光のいずれか一方の光のみを反射させ、反射光を生成する。反射光と同一の円偏光の光は、更に微細凹凸5aまで達し、微細凹凸5aにおいて反射光と異なる方向の回折光Idを生じ、ホログラム像が形成される。
【0031】
従って、入射光Iがコレステリック液晶層5の保護層6側の表面で正反射して生じる反射光Irを検出器を用いて検出する際に、円偏光板を介するか、もしくは直線偏光板と位相差フィルムを介することにより、例えば、コレステリック液晶層5を構成するコレステリック液晶が右ねじれ構造を有する場合、右円偏光板を使用すれば、光が透過して検出器により光が検出され、左円偏光板を使用すれば、光が吸収されて検出器により光が検出されないため、反射光Irが右円偏光であることが分かる。
【0032】
また、コレステリック液晶層5は選択反射性を有するので、光源側もしくは検出器側に特定波長域を透過するバンドパスフィルターを介することにより、コレステリック液晶層5特有の反射特性を有するかどうかの判定も行なえる。
さらに、微細凹凸5aにおいて反射光と異なる方向に回折した回折光Idによるホログラム像を検出器を用いて検出することができる。
【0033】
耐熱性向上層4は、上記のコレステリック液晶層5の微細凹凸5aを埋めて、コレステリック液晶層5にもたらされる熱や圧力によって、微細凹凸5aが消失しやすい点を解消する目的で積層するものであり、この層の積層により、熱や圧力がコレステリック液晶層5に加わっても、微細凹凸5aが消失せず、コレステリック液晶層5の耐熱性が向上したものとみなせるものである。この目的を果たすため、耐熱性向上層は、コレステリック液晶層5よりも耐熱性の高い材料で構成することが好ましい。但し、耐熱性向上層の形成条件は、微細凹凸が消失しない程度とする必要があるため、形成温度は常温程度もしくは、50℃以下とする。
【0034】
この場合の耐熱性向上層4としては、例えば軟化点がコレステリック液晶層の軟化点よりも高い樹脂を用いて構成したものであることが好ましいが、より現実的には、コレステリック液晶層5が200℃に達しても、コレステリック液晶層5の微細凹凸5aが消失しない樹脂であることが好ましい。
具体的に耐熱性向上層4を構成する樹脂としては熱硬化性樹脂の硬化物を挙げることができ、また、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を挙げることもできる。電離放射線硬化性樹脂とは、電子線硬化性樹脂である。
【0035】
耐熱性向上層4を構成するための熱硬化性樹脂としては、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンツイミダゾール、もしくはポリベンゾチアゾール等を挙げることができる。
耐熱性向上層4を構成するための電離放射線硬化性樹脂としては、分子中に重合性不飽和結合または、エポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又はモノマーを適宜に混合した電離放射線硬化性樹脂組成物を使用することが好ましい。電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを指し、通常は、電子線を指す。
【0036】
電離放射線硬化性樹脂組成物中のプレポリマー、オリゴマーの例としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミ
ンアクリレート等のアクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物が挙げられる。
【0037】
電離放射線硬化性樹脂組成物中のモノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、アクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタ
クリル酸エトキシメチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジベンジルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル等の不飽和置換の置換アミノアルコールエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミ
ド、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート等の化合物、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能性化合物、及び/又は分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物、例えばトリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等が挙げられる。
【0038】
通常、電離放射線硬化性樹脂組成物中のモノマーとしては、以上の化合物を必要に応じて、1種若しくは2種以上を混合して用いるが、電離放射線硬化性樹脂組成物に通常の塗布適性を与えるために、前記のプレポリマー又はオリゴマーを5重量%以上、前記モノマー及び/又はポリチオール化合物を95重量%以下とするのが好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させたときのフレキシビリティーが要求されるときは、モノマー量を減らすか、官能基の数が1又は2のアクリレートモノマーを使用するとよい。電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させたときの耐摩耗性、耐熱性、耐溶剤性が要求されるときは、官能基の数が3つ以上のアクリレートモノマーを使う等、電離放射線硬化性樹脂組成物の設計が可能である。
【0039】
ここで、官能基が1のものとして、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートが挙げられる。官能基が2のものとして、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートが挙げられる。官能基が3以上のものとして、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、
ジペンタエリスリトールヘキサアクレリート等が挙げられる。
耐熱性向上層4は、その色相を問わないが、黒色等の暗色の染料もしくは顔料の配合により、黒色等の暗色とすると、コレステリック液晶層5の微細凹凸5aにより生じるホログラム等の光回折構造の視認性が増して好ましい。なお、耐熱性向上層4の厚みとしては、0.1μm〜5μmが好ましく、より好ましくは0.5μm〜2μm程度である。
【0040】
保護層6は、微細凹凸5aを有するコレステリック液晶層5の微細凹凸5aがある側とは反対側の表面に積層され、コレステリック液晶層5の表面に傷が着いたり、摩耗することを防止する、物理的耐久性の向上の目的、または、汚れや、水分、もしくは種々の化学物質から保護する、化学的耐久性の向上の目的で設けられる。保護層6はまた、耐熱性保護層5が果たすほどの効果ではないが、コレステリック液晶層5の微細凹凸が
熱や圧力により消失することを抑制し得る効果も有するものである。勿論、コレステリック液晶層5およびそれが有する微細凹凸5aの機能を発揮する意味だけからは、積層しなくてもよいが、真正性識別体1を長期に渡って使用する際には、積層されていることが好ましい。
【0041】
保護層6を構成する材質としては、既に説明した耐熱性向上層4を構成するためのものと同様、熱硬化性樹脂の硬化物、または、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を挙げることができ、さらには、一般的な熱可塑性樹脂を用いることもでき、層の形成法も耐熱性向上層4の場合と同様である。保護層6の厚みとしては、0.1μm〜10μm、好ましくは0.5μm〜5μm程度とするとよい。
【0042】
保護層6を構成し得る熱可塑性樹脂としては、ロジン変成マレイン酸樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、酪酢酸セルロース、エチルセルロース、飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ゴム、環化ゴム、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン、もしくはアクリル樹脂を挙げることができる。
【0043】
本発明の真正性識別体1は、真正性識別対象物2を基材とし、その上に、接着剤層3、耐熱性向上層4、コレステリック液晶層5、および保護層6を順に積層することにより形成することができるが、コレステリック液晶層5の真正性識別対象物2側(耐熱性向上層4側でもある。)に微細凹凸5aを形成する必要上、逆の順序で積層する方が好ましい。
コレステリック液晶層5自体は、巻取り可能な連続したフィルムとして得ることもできるので、コレステリック液晶層5の片面には保護層6を積層し、反対側の面には微細凹凸5aを形成し、形成された微細凹凸5aを覆うようにして耐熱性向上層4、および接着剤層3を積層した積層体を形成しておき、得られた積層体を、真正性識別対象物2と、接着剤層3側が真正性識別対象物2側になるよう向かい合わせて、両者間に熱と圧
力をかけて接着させ、積層することができる。
【0044】
あるいは、保護層6、耐熱性向上層4側に微細凹凸5aを有するコレステリック液晶層5、耐熱性向上層4、および接着剤層3を積層した積層体を転写層(真正性識別構造でもある。)とする転写シートとして構成し、このような転写シートを用いて、真正性識別対象物2上に、転写層をその接着剤層3を利用して積層することもできる。
図3は、そのような真正性識別構造を転写可能とした真正性識別構造転写シートを示すための断面図である。本発明の真正性識別構造転写シート11は、離型性シート上基材12の一方の面の離型性面12a(図3では下面側)に、保護層6、コレステリック液晶層5、耐熱性向上層4、および接着剤層3からなる転写層13が順に積層されており、コレステリック液晶層5の離型性シート状基材12側とは反対側の面に微細凹凸
5aを有する構造からなるものである。
【0045】
転写シートの基材シートである離型性シート状基材12としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、もしくはポリエチレン−ビニルアルコール共重合体等の樹脂のフィルムであって、一般的な転写シートのベースとして使用するものを使用することができ、厚みとしては、2〜100μm程度が使いやすいが、この範囲外のものでもよい。
これらプラスチックフィルムは、転写層13、通常は、保護層6を構成する素材との関係で、必要に応じ、離型性層を設けることにより離型性面を構成して使用する。また、保護層6を構成する素材との関係で、保護層6を形成する側の面が適度に離型性を有し、即ち、適度な接着力を有するけれども、転写層13の剥離が円滑に行なえる離型性面である場合には、離型性層を設けずに使用する。
【0046】
上記の樹脂のフィルムの片面に離型性を付与する目的で設ける離型性層は、樹脂のフィルムとよく密着し、適宜な離型性面を与える樹脂で構成するか、もしくは、そのような樹脂に、さらにシリコーン樹脂、シリコーンオイル、ワックス等を剥離性を向上させる目的で添加して構成したものであり、通常、1〜5μm程度の厚みに形成する。
上記の離型性シート状基材12の離型性面12a上には、保護層6を積層する。用いる素材は既に述べた通りであり、塗布に適した適宜な粘度になるよう調製した後、公知のコーティング方法により塗布し、塗布後の塗膜に、必要に応じ、電離放射線を照射することにより、離型性シート状基材12の離型性面12a上に、保護層6を積層することができる。
【0047】
保護層6の離型性シート状基材12とは反対側の面上には、コレステリック液晶層5を積層する。コレステリック液晶層5を積層するには、既に説明した素材を用い、塗付および乾燥することにより積層してもよく、もしくは、別に製造したコレステリック液晶フィルムを接着剤を用いる等により、ラミネートすることにより積層してもよい。または、コレステリック液晶層の積層を、コレステリック液晶を電離放射線硬化性樹脂中
に配合した、コレステリック液晶含有の電離放射線硬化性樹脂組成物を用いた塗布によって行なってもよい。
【0048】
コレステリック液晶層5の離型性シート状基材側とは反対の側の面には、ホログラム等の光回折構造の微細凹凸5aを形成する。微細凹凸5aを形成するには、コレステリック液晶層5が熱可塑性であるときは、所望の微細凹凸5aとは逆型形状を有する凹凸型を熱および圧力を伴って、押し付けることにより、コレステリック液晶層5に、ホログラム等の光回折構造の微細凹凸5aを形成することが好ましい。
コレステリック液晶層5がコレステリック液晶を電離放射線硬化性樹脂中に配合した、コレステリック液晶含有の電離放射線硬化性樹脂組成物等の電離放射線硬化性組成物を用いて形成される場合には、耐熱保護層5を積層した離型性シート状基材12と凹凸型とを、そのような電離放射線硬化性組成物を介して密着させ、そのままの状態で、電離放射線硬化性組成物に対して電離放射線を照射し、硬化させることにより、微細凹
凸5aを形成することができる。
【0049】
なお、保護層6が電離放射線硬化樹脂の硬化物で構成され、コレステリック液晶層5の形成の際に、コレステリック液晶含有の電離放射線硬化性樹脂組
成物等の電離放射線硬化性組成物を使用するときは、保護層6が完全に硬化した後に、コレステリック液晶層5を形成しようとすると、保護層6とコレステリック液晶層5との間の接着力が十分向上しないことがあり得る。そこで、保護層6の硬化を、未だ、表面の接着性が失われない程度にハーフキュア状態で止めておき、コレステリック液晶を電離放射線硬化性樹脂中に配合した、コレステリック液晶含有の電離放射線硬化性樹脂組成物等の
電離放射線硬化性組成物を、ハーフキュア状態の保護層6上に塗布し、下層の保護層6の硬化を兼ねて、上層のコレステリック液晶層5を硬化させると、両層共、硬化させることができる上、両層間の接着力を十分に確保することができるので、好ましい。
【0050】
微細凹凸5aを形成するための凹凸型は、平面状のものでも、ローラ状のものでもよい。凹凸型の片面の微細凹凸は、ホログラムや回折格子パターン(これらを総称して光回折構造と言う。)が有する回折格子を位相変調して得られたものをオリジナル型として作られる。例えば、ホログラムを撮影する際に、フォトレジスト層に対して干渉露光を行ない、現像を行なえば、格子が凹凸に変換されたレリーフ型を得ることができるので、これをオリジナル型とすることができる。また、ホログラムや回折格子パターンを計算によって求めるときは、位相の情報を型の深さの情報に変換したデータを基に、フォトマスクを露光、現像することにより、レリーフ型を得ることができるので、これをオリジナル型とすることができる。
【0051】
得られたオリジナル型は、メッキを繰り返し行なう等により、複製用型を製造し、あるいは、縦横等に並べる等して、同じ微細凹凸を一度に広い面積に押し付けることができるよう、好ましくは殖版して、平板状、もしくはローラ状の凹凸型として、使用する。コレステリック液晶層5の微細凹凸5aが設けられた側を覆って、耐熱性向上層4を積層する。熱硬化性樹脂を用いて耐熱性向上層4を形成するには、主剤と硬化剤等を混合して、塗布に適した熱硬化性樹脂組成物を調製して、公知の塗布手段によりコレステリック液晶層5の微細凹凸5a上に塗布し、塗布後、必要に応じ、加温して硬化させる。
【0052】
また、電離放射線硬化樹脂を用いて耐熱性向上層4を形成するには、プレポリマー、
オリゴマー、及び/又はモノマーを、必要に応じて、光重合開始剤や光重合促進剤を添加して混合して得た電離放射線硬化性樹脂組成物を、公知の塗布手段により塗布し、塗布後の塗膜に電離放射線を照射することにより行なう。コレステリック液晶層5が電離放射線硬化樹脂の硬化物で構成される場合には、塗布の際の下層となるコレステリック液晶層5をハーフキュアさせておき、耐熱性向上層4を形成する際の電離放射線照射の際に、下層
となる保護層6および/またはコレステリック液晶層5を完全硬化させるとよい。保護層6およびコレステリック液晶層5の両方が電離放射線硬化樹脂の硬化物で構成される場合には、いずれの層もハーフキュア状態としておき、耐熱性向上層4を形成する際の電離放射線照射の際に、下層となる保護層6およびコレステリック液晶層5の両方を完全硬化させるとよい。
【0053】
続いて、耐熱性向上層4上に接着剤層3を積層する。接着剤層3を構成する素材としては、既に説明したもの用い、耐熱性向上層4上に直接に塗付するか、もしくは剥離紙(通称、「セパ紙」)に塗布したものをラミネートすることによってもよい。この剥離紙は、真正性識別構造を真正性識別対象物に適用する際には、事前に剥がす。
真正性識別構造転写シート11は、その接着剤層3側を真正性識別対象物2側に向けて重ね、重ね合せたものを、平板状、もしくはローラ状の熱プレスを用いて熱および圧力をかけることにより、接着剤層3を賦活して接着させ、その後、離型性シート状基材12を剥がすことにより、上から保護層6、保護層6側とは反対側の面に光回折構造の微細凹凸5aを有するコレステリック液晶層5、耐熱性向上層4、および接着剤層3とからなる真正性識別構造を、真正性識別対象物2上に転写することができる。
【0054】
本発明は、基本的に以上の構成を有するが、説明した各層の間には、通常、この分野で付加され得る層が追加されたり、処理が追加されてもよい。例えば、接着性を向上させるためのコロナ放電処理、アンカー層もしくはプライマー層の積層等である。また、この明細書では、離型層はプラスチックフィルムに密着しており、離型層と耐熱性保護層の間で剥離することを念頭に説明したが、離型層と耐熱性保護層との間に、離型性を調節するための層を追加して、その層と離型層との間で剥離するよう構成することもできる。また、真正性識別体や接着性識別構造転写シートには、外から見える限り、適宜なデザインの図柄、文字を介在させたり、着色を施してもよい。特に、接着剤層3とコレステリック液晶層5の間に着色層、特に暗色もしくは濃色の着色層を介在させてもよい。
【0055】
真正性識別対象物2は、従来技術に挙げたもののすべてが含まれるが、真正性識別対象物2が工業的に利用される可能性の高い情報記録媒体である場合、先に述べたように、印刷、エンボスがなされていてもよいことは勿論だが、用途に応じて、種々の要素、主に、情報記録手段が付加されていてもよい。そのような情報記録手段としては、磁気記録層、光学記録層(ホログラムをも含む。)、感熱記録層、感熱発消色層、昇華方式
の記録用の受像層、署名のための筆記性層、またはICモジュール、もしくはLSIモジュール、等である。これらは、単独、もしくは二以上、適宜に選択して付加され得る。
【0056】
(実施例1)剥離層を有するフィルム上に、剥離性保護層およびコレステリック液晶層が積層された積層フィルム(日石三菱(株)製、「CHSフィルム」)のコレステリック液晶層に、エンボスホログラムのマスター型を用い、加熱ロールおよび加圧ロールからなるプレス装置を利用して、ホログラムの凹凸を形成した。次に、ホログラムの凹凸が形成された面上の全面に、二液硬化型ポリウレタン樹脂系バインダの墨インキ(ザ・インクテック(株)製、「XEL検知マーク墨」/「XEL(D)硬化剤(イソシアネート化合物)」=100/5の混合物)を用い、乾燥時塗付量が1g/m2になるよう塗布した後、50°の温度で36時間エージングを行なって、耐熱性向上層を形成した。
【0057】
さらに、耐熱性向上層上の全面に、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体系樹脂を含むインキ(ザ・インクテック(株)製の「HS−ASV」/昭和インク工業(株)製の「HS−31」=10/3の混合物)を用い、乾燥時塗付量が3g/m2になるよう塗布して、ヒートシール層を形成し、転写シートとした。このようにして得られた転写シートを、プラスチックカード上に、ヒートシール層側が接するようにして重ねて通常の条件にて熱転写し、フィルムを剥離したところ、プラスチックカード上に転写されたホログラムが十分に視認でき、ホログラムが熱転写で損なわれることがなかった。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】真正性識別体を示す断面図である。
【図2】本発明のコレステリック液晶層5の光学的性質を示す断面図である。
【図3】真正性識別構造転写シートを示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 真正性識別体
2 真正性識別対象物
3 接着剤層
4 耐熱性向上層
5 コレステリック液晶層(5a;微細凹凸)
6 保護層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真正性識別対象物上に、接着剤層を介し、電離放射線硬化樹脂又は低温処理熱硬化樹脂からなる耐熱性向上層、および前記真正性識別対象物側の面に光回折構造の微細凹凸を有するコレステリック液晶層が順に積層されたことを特徴とする真正性識別構造を備えた真正性識別体。
【請求項2】
前記コレステリック液晶層の前記耐熱性向上層が積層されたのとは反対側に保護層が積層されたことを特徴とする請求項1記載の真正性識別構造を備えた真正性識別体。
【請求項3】
前記真正性識別構造を備えた真正性識別対象物が情報記録媒体であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の真正性識別構造を備えた真正性識別体。
【請求項4】
離型性シート状基材の離型性面に転写層が積層されており、前記転写層は、前記離型性シート状基材側から、保護層、前記離型性シート状基材側とは反対側の面に光回折構造の微細凹凸を有するコレステリック液晶層、電離放射線硬化樹脂又は低温処理熱硬化樹脂からなる耐熱性向上層、および接着剤層が順に積層した構造からなるものであることを特徴とする真正性識別構造転写シート。
【請求項5】
前記コレステリック液晶層の前記離型性シート状基材側に保護層が積層されたことを特徴とする請求項4記載の真正性識別構造転写シート。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−15338(P2009−15338A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214105(P2008−214105)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【分割の表示】特願2001−382513(P2001−382513)の分割
【原出願日】平成13年12月17日(2001.12.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】