説明

真珠の染色方法

【課題】 天然真珠または養殖真珠等の「高級珠」を染料でもって染色しても、真珠の品位を低下させることがなく、オリエント効果を有し、濃く深い色合いに着色する真珠の染色方法を提供する。
【解決手段】 カチオン染料、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を、それぞれ、少なくとも1種を含有し、かつ5〜9の範囲のpH及び60℃〜95℃の範囲の染色温度における水浴中にて真珠を吸尽染色する。また、上記カチオン界面活性剤が、第4級アンモニウム塩型界面活性剤であることが好ましい。さらに、上記ノニオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル型界面活性剤であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然真珠或いは養殖真珠等の真珠を染料でもって濃く深い色合いに着色するに適した真珠の染色方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真珠は、アコヤガイ、シロチョウガイ或いはクロチョウガイその他の貝類から天然或いは養殖により得られる。当該真珠は、炭酸カルシウムを主成分とする球状或いは半球状の固体であって、真珠特有の光沢や美しさ(オリエント効果)を有し、装飾品として古くから世界で珍重されている。
【0003】
ここで、真珠は、一般には、白いものと認識されているが、実際に海から取れたばかりの「浜揚げ珠」は、一つとして同じ色がないほど千差万別で、例えば、ピンク系、シルバー系、クリーム系、ゴールド系、グリーン系、ブルー系或いはブラック系等に選別されている。
【0004】
また、多くの「浜揚げ珠」には、汚れ等が付着している。このため、この「浜揚げ珠」は、実際には、色の統一と汚れ除去のため、殆ど漂白され、また、研磨されてから市場に供給されている。
【0005】
また、天然真珠の中には、自然の着色のままで非常に優美であり、珍重されているものがある。例えば、南洋真珠として、シロチョウガイ等のゴールド真珠やクロチョウガイの黒真珠等が挙げられる。
【0006】
これらの南洋真珠は、濃く深い色合いをもち、非常に貴重なものであって、一般には入手しがたい高価な装飾品となる。また、装飾品としての真珠の色も、人種間による好みの差や、時代によるファッション性により変化する。従って、天然或いは養殖を問わず、漂白により白くした真珠や淡色の真珠を、後で人種間の好みやファッションの要求により任意の色、特に濃く深い色合いに着色することができれば、真珠の市場価値は大きく向上する。
【0007】
一般に、真珠の着色法としては、放射線(コバルト60)照射による着色法や、硝酸銀或いは感光性銀塩化合物溶液に真珠を浸漬後、紫外線照射又は還元剤を作用して着色する方法等がある。しかし、これらは、黒真珠に着色するための方法であり、ゴールド真珠その他の、任意の色に着色することはできない。
【0008】
また、任意の色に着色する方法として、染料による着色法も実用化されているが、一般的には、染色に長時間を要し、その割には濃色が得られず、また、耐光堅牢度が低いという欠点を有する。
【0009】
そこで、下記特許文献1に開示された色付け真珠に関する着色方法が提案されている。この着色方法は、真珠の外表面に少なくとも顔料とアクリル樹脂とを含む合成樹脂塗料からなる主剤と、シンナーと、硬化剤とを、それぞれ、所要量混合して塗布することを特徴とする色付け真珠を提供するものである。
【特許文献1】特開2004−73761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述のような色付け真珠に関する着色方法によると、オリエント効果をそれほど損なうことなく優しく美しい色付け真珠を提供することができ、しかも、任意の濃色に着色することができる。
【0011】
しかし、この方法は、真珠本来の表面層が顔料を含むアクリル樹脂塗料の層で被覆されており、あくまで「低級珠」を「中級珠」にまではすることができても、いわゆる「高級珠」にまではすることができない。
【0012】
つまり、この方法で「高級珠」を着色すると、濃色には着色できても、真珠の品位を逆に落としてしまい、「高級珠」を「中級珠」に低下させてしまう。また、当該方法によっては、高級なホワイト真珠を濃く深い色合いに着色し、更に高価なゴールド真珠にまではすることができない。
【0013】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、天然真珠或いは養殖真珠等の「高級珠」の真珠を染料でもって染色しても、真珠の品位を低下させることなく、かつオリエント効果を有し、濃く深い色合いに着色するようにした真珠の染色方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る真珠の染色方法では、請求項1の記載によれば、カチオン染料、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を、それぞれ、少なくとも1種を含有し、かつ5〜9の範囲のpH及び60℃〜95℃の範囲の染色温度における水浴中にて、前記真珠を吸尽染色することを特徴とする。
【0015】
このような染色方法によれば、天然真珠或いは養殖真珠等の「高級珠」の真珠を染料でもって染色しても、真珠の品位を低下させることがなく、オリエント効果を有し、濃く深い色合いに着色することができ、また、良好な耐光堅牢度や耐摩擦性を有する着色真珠を得ることができる。
【0016】
また、本発明は、請求項2に記載のように、請求項1に記載の真珠の染色方法において、上記カチオン界面活性剤は、第4級アンモニウム塩型界面活性剤であってもよい。また、本発明は、請求項3に記載のように、請求項1或いは2に記載の真珠の染色方法において、上記ノニオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル型界面活性剤であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る真珠の染色方法の一実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態において、真珠は、アコヤガイ、シロチョウガイ、クロチョウガイ、イケチョウガイ、マベガイ或いはカラスガイその他の貝類から得られるものであれば、特に制限されるものではない。また、真珠は、天然真珠に限るものではなく、養殖真珠であってもよい。
【0019】
特に、本実施形態による真珠の染色方法は、染料を用いて「高級珠」を染色しても、真珠の品位を低下させることがなく、オリエント効果を有し、濃く深い色合いに着色する真珠の染色方法を提供するものである。
【0020】
従って、アコヤガイの養殖真珠でも高級なもの、さらには、シロチョウガイ等の南洋真珠でも高級なものに適用することにより、より一層高付加価値を有する着色真珠が得られる。
【0021】
また、染色前の真珠は、白色であってもよく、かすかに着色されていてもよい。染色前の色彩を考慮して、染料の配合を調整することにより、混色で目的とする色彩や濃度を得ることが可能である。しかし、本実施形態による染色方法からすれば、染色前の真珠は、白く漂白されていることが特に好ましい。例えば、シロチョウガイの白色南洋真珠を高価なゴールド真珠に着色することができる。
【0022】
真珠は、炭酸カルシウムを主成分とする約0.5ミクロンの真珠層でもって、約1000層もの重なりを成して形成されている。その結果、真珠特有のオリエント効果を有し、また、一方、その薄い真珠層に傷や剥がれを生じさせれば、真珠の価値が激減する。
【0023】
従って、漂白、染色等の加工では、真珠層を痛めないマイルドな条件が要求される。そこで、本実施形態では、染色のpHと、染色温度においてマイルドな条件で濃く深い色合いに染色できる染色液を調整し、吸尽染色により染色を行う。
【0024】
実際の染色には、まず、染色液を調整する。染色液は、1種或いは2種以上のカチオン染料と、1種或いは2種以上のカチオン界面活性剤と、1種或いは2種以上のノニオン界面活性剤とを含有する水溶液である。以下に染色液の各成分について説明する。
【0025】
本実施形態において、染色は、1種或いは2種以上のカチオン染料を使用して行われる。上記のように、真珠の主成分は、炭酸カルシウムであるが、コンキオリンという硬たんぱく質が網目状になって炭酸カルシウムの結晶をはさんでいる。従って、このコンキオリンを染色することにより、真珠に任意の色彩を付与することができる。
【0026】
この点に関し、本発明者等は、鋭意研究した結果、カチオン染料が好ましいことを見出した。カチオン染料とは、水に可溶で、塩基性を示す水溶性染料の一群をいい、アクリル繊維、羊毛、カチオン可染ポリエステル繊維等の染色に一般的に使用されるものである。
【0027】
真珠の染色に使用するカチオン染料は、これら繊維用の染料の中から適宜選定することができる。当該カチオン染料としては、例えばジアクリルメタン系およびトリアクリルメタン系、キノンイミン(アジン、オキサジン、チアジン)系、キサンテン系、メチン系(ポリメチン、アザメチン)、複素環アゾ系(チアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ベンゾチアゾールアゾ)、アントラキノン系等が挙げられる。これらのカチオン染料を適宜配合して、求める色相の染色液に調整する。
【0028】
本実施形態において、染色は、上述のごとく、1種或いは2種以上のカチオン界面活性剤と、1種或いは2種以上のノニオン界面活性剤とを使用して行われる。真珠のカチオン染料による染色においては、染料の溶解状態の確保と良好な均染性を得るために、界面活性剤を併用することが好ましい。
【0029】
この目的に使用される界面活性剤は、カチオン染料との相溶性の観点から、カチオン界面活性剤、またはノニオン界面活性剤の中から選定される。特に、本実施形態においては、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を併用することが好ましい。
【0030】
ここで、カチオン界面活性剤としては、脂肪アミン塩型、第4級アンモニウム塩型或いはアルキルピリジニウム塩型等が挙げられ、これらのいずれか或いはこれらを混合して使用しても差し支えないが、特に、第4級アンモニウム塩型界面活性剤の使用が好ましい。
【0031】
一方、ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル型、ポリオキシエチレンアルキルエステル型、ソルビタンアルキルエステル型或いはポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル型等が挙げられ、これらのいずれか或いはこれらを混合して使用しても差し支えないが、特に、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル型界面活性剤の使用が好ましい。
【0032】
これらのカチオン界面活性剤或いはノニオン界面活性剤の使用量は、特に限定されるものではないが、染色液の重量に対して、それぞれの活性剤について、0.1%〜10%の範囲がよく、特に、それぞれ、0.5%〜5%の範囲が好ましい。
【0033】
次に、上記1種或いは2種以上のカチオン染料と、1種或いは2種以上のカチオン界面活性剤と、1種或いは2種以上のノニオン界面活性剤とを溶解した水溶液のpHを調整する。
【0034】
本実施形態において、染色は、染色液のpHを5〜9の中性範囲として行われる。さらに好ましくは、染色は、染色液のpHを6〜8として行うとよい。
【0035】
染色液のpHが5未満であると、真珠の真珠層の表面が溶解してしまい、オリエント効果を消失するおそれがある。一方、染色液のpHが、9を超えた場合にも、真珠の真珠層の表面のオリエント効果を消失するおそれがある。特に、酸性或いはアルカリ性で染色時の真珠層に温度がかかることにより、真珠の真珠層の損傷が大きくなる。
【0036】
本実施形態においては、染色液のpHと染色温度との関係が重要となる。従って、本実施形態において、染色は、染色温度が60℃〜95℃の範囲で行われる。さらに好ましくは、染色は、染色温度が70℃〜90℃で行うとよい。
【0037】
染色温度が60℃未満であると、染色に長時間を要し、また、求める染色濃度も得られないおそれがある。一方、染色温度は、高いほど短時間で求める染色濃色が得られるが、95℃を超えると、真珠の真珠層の表面に損傷を与え、オリエント効果を消失するおそれがある。これらの中性付近のpHとマイルドな染色温度により、良好な染色を行うことができる。
【0038】
次に、染色工程について説明する。染色は、真珠を染色液に浸漬する吸尽染色で行われる。ここで、真珠を静置したままで染色してもよいが、真珠と容器の接触部分が固定されたまま長時間染色が行われると、染色ムラが生じるおそれがあり、染色液或いは真珠を動かした方がよい。例えば、染色容器を動かすことにより均一に染色できる。
【0039】
しかし、逆に動きが激しい場合には、真珠が容器壁と衝突し、真珠層の表面に損傷を与える。従って、マイルドな動きが必要である。
【0040】
真珠と染色液の重量比である浴比は、任意に決めればよいが、一般には1:1〜1:5が好ましい。浴比が小さく、染色液が少ない場合には、染色液中の染料濃度が大きくなり、染料の溶解状態が悪くなり、ムラ染めになるおそれがあるからである。一方、浴比が大きく、染色液が多い場合には、求める染色濃度を得るために、染料を多く使用しなければならず、染料の利用率が悪く、コストアップになるおそれがあるからである。
【0041】
染色には、上記のように染色温度として60℃〜95℃が必要であるが、染色初期から同温度で染色を行ってもよい。好ましくは、低温、例えば室温付近で、真珠を染色液になじませ、続いて、染色液の温度を所定温度まで昇温し、所定時間、同温度を保ち、染色を行う。
【0042】
染色後は、染色液から真珠を取り出し、水洗及び湯洗を行う。さらに、界面活性剤とトリポリリン酸ソーダを使用したソーピングを行うことにより、真珠層の表面の未染着染料を除去する。続いて、水洗し、室温または低温で乾燥することにより、求める色彩の着色真珠を得ることができる。
【0043】
上述のように、本実施形態では、真珠層の炭酸カルシウムの結晶をはさんでいる網目状のコンキオリンという硬たんぱく質を染色する。すなわち、真珠を1種或いは2種以上のカチオン染料と、1種或いは2種以上のカチオン界面活性剤と、1種或いは2種以上のノニオン界面活性剤とを含有する水浴中であってpHを5〜9の中性範囲とし、かつ染色温度を60℃〜95℃の範囲とする水浴中にて、真珠を吸尽染色するものである。
【0044】
これにより、上述のように染色された真珠は、天然真珠または養殖真珠等の「高級珠」の真珠の品位を低下させることがなく、オリエント効果を有し、濃く深い色合いに着色され得る。
【実施例】
【0045】
以下、本実施形態において、次のような各実施例及び比較例を作製して評価した。
【0046】
実施例1:
染色液として、1%の C.I.Basic Yellow 45、5%の C.I.Basic Yellow 91 及び 0.5%の C.I.Basic Blue 3 を含み、さらに、3%のサンモールD267(日華化学株式会社製、第4級アンモニウム塩型界面活性剤)、4%のサンモールNS3(日華化学株式会社製、第4級アンモニウム塩型界面活性剤)、及び2%のニューソルブES(日華化学株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル型界面活性剤)を含む水溶液を作成し、pHを7に調整した。シロチョウガイの白色南洋真珠100gを三角フラスコに入れ、上記の染色液を浴比1:1になるように付与した。
【0047】
その後、三角フラスコを40℃の振とう式恒温染色機にセットし、振幅40mm、10回/分のストロークに設定した。同一の染色温度で7時間処理後、当該染色温度を80℃に昇温し、さらに8時間染色を継続して染色を行った。
【0048】
染色後、同一装置でもって、1g/Lのトリポリリン酸ソーダ及び0.5g/Lのノニオン界面活性剤を含む水溶液を用いて、浴比1:1及び80℃にて、30分間ソーピングし、さらに水洗して自然乾燥した。得られた染色真珠は、オリエント効果を損なわず、濃く深い色合いのゴールド真珠であった。
【0049】
実施例2:
染色液として、5%の C.I.Basic Blue 47を含み、さらに、3%のサンモールD267(日華化学株式会社製、第4級アンモニウム塩型界面活性剤)、4%のサンモールNS3(日華化学株式会社製、第4級アンモニウム塩型界面活性剤)、及び2%のニューソルブES(日華化学株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル型界面活性剤)を含む水溶液を作成し、pHを7に調整した。アコヤガイの養殖真珠100gを三角フラスコに入れ、上記の染色液を浴比1:1になるように付与した。
【0050】
その後、三角フラスコを40℃の振とう式恒温染色機にセットし、振幅40mm、10回/分のストロークに設定した。同一の染色温度で4時間処理後、当該染色温度を80℃に昇温し、さらに4時間染色を継続して染色を行った。
【0051】
染色後、同一装置でもって、1g/Lのトリポリリン酸ソーダ及び0.5g/Lのノニオン界面活性剤を含む水溶液を用いて、浴比1:1及び80℃にて、30分間ソーピングし、さらに水洗して自然乾燥した。得られた染色真珠は、オリエント効果を損なわず、濃く深い色合いのブルー真珠であった。
【0052】
比較例1:
本比較例1は、上記実施例1と同一の試料に対し、当該実施例1の染色液においてpHのみを4に調整した点を除き、上記実施例1と同様に染色することで準備した。
【0053】
比較例2:
本比較例2は、上記実施例2と同一の試料に対し、当該実施例2の染色液においてpHのみを10に調整した点を除き、上記実施例2と同様に染色することで準備した。
【0054】
比較例3:
本比較例3は、上記実施例1と同一の試料に対し、当該実施例1の染色工程において染色温度のみを100℃のボイル状態で染色した点を除き、上記実施例1と同様に染色することで準備した。但し、ボイル状態で染色するにあたり、染色液の蒸発を防ぐために、三角フラスコは密閉状態で使用した。
【0055】
比較例4:
本比較例4は、上記実施例2と同一の試料に対し、当該実施例2の染色液においてカチオン界面活性剤と、ノニオン界面活性剤のみを含まない染色液を調整した点を除き、上記実施例2と同様に染色することで準備した。
【0056】
以上のように作製した各実施例及び各比較例についてその特性につき評価した。この評価にあたり、評価項目として、色相、オリエント効果、均染性、耐光堅牢度、耐摩擦性を採用した。
【0057】
なお、これらの評価は、以下の方法で行った。色相、オリエント効果、均染性は、目視にて評価した。耐光堅牢度は、JIS L 0842の方法に準じ4級照射後の変退色を評価した。耐摩擦性は、乾燥及び湿潤状態の起毛綿布で10回強く摩擦する方法により評価した。
【0058】
これらの評価によれば、次の表1にて示すような評価結果が得られた。
【0059】
【表1】

【0060】
この表1によれば、上記各実施例1、2は、色相、オリエント効果、均染性、耐光堅牢度及び耐摩擦性のいずれの評価項目についても、上記比較例1、2、3、4に比べて、優れていることが分かる。
【0061】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限らず、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)染色する真珠は、シロチョウガイの白色真珠或いはアコヤガイの養殖真珠でなくてもよい。クロチョウガイ、イケチョウガイ、マベガイ或いはカラスガイその他の貝類から得られるどのような真珠であっても染色することができる。
従って、「高級珠」をより高価な着色真珠にするだけでなく、「低級珠」を「中級珠」にすること、あるいは「中級珠」を「高級珠」にすることにも有効である。
(2)染色前の真珠には、着色があっても差し支えない。染色前の色相と濃度を考慮して、染料配合を決定できる。例えば、淡いクリーム系の色彩の上に染色し、濃いゴールドにすることができる。
(3)染色機器は、振とう式恒温染色機でなくてもよく、ロータリー式染色機であっても差し支えない。染色の時に真珠と染色液が静置した状態にならないほうが好ましい。
従って、真珠を静置した状態にして、染色液を流通させるようにした、ビーム型染色機であってもよい。これらの機器は、真珠のサイズ、一度に染める量からして、繊維用の染色試験機を流用することができる。
(4)上記各実施例1、2は、例示であって、本発明は、当該各実施例に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真珠の染色方法において、
カチオン染料、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を、それぞれ、少なくとも1種を含有し、かつ5〜9の範囲のpH及び60℃〜95℃の範囲の染色温度における水浴中にて、前記真珠を吸尽染色することを特徴とする真珠の染色方法。
【請求項2】
前記カチオン界面活性剤が、第4級アンモニウム塩型界面活性剤であることを特徴とする、請求項1に記載の真珠の染色方法。
【請求項3】
前記ノニオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル型界面活性剤であることを特徴とする、請求項1或いは2に記載の真珠の染色方法。

【公開番号】特開2006−305034(P2006−305034A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130717(P2005−130717)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000219794)東海染工株式会社 (24)
【Fターム(参考)】