真珠品質の非破壊判定方法
【課題】目的とする真珠もしくは真珠貝殻の品質を非破壊的に、かつ簡便かつ迅速に判定することができる方法および検査装置を提供する。
【解決手段】被検体としての真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の反射スペクトル、および/または紫外域から可視域の蛍光スペクトルを測定し、得られた値を、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻の値と比較することによって、真珠品質を非破壊的に判定する方法および検査装置である。
【解決手段】被検体としての真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の反射スペクトル、および/または紫外域から可視域の蛍光スペクトルを測定し、得られた値を、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻の値と比較することによって、真珠品質を非破壊的に判定する方法および検査装置である。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、真珠品質の非破壊的な判定方法に関する。
【0002】
関連技術
アコヤ真珠、シロチョウ真珠、クロチョウ真珠、マベ真珠、淡水真珠などの真珠は、200〜700nm前後のアラゴナイトの炭酸カルシウム結晶と硬蛋白質(基質タンパク質)による薄膜の多重層から成る真珠層構造で構築され、この多重層薄膜構造によって真珠独特の真珠光沢を生ずる。
【0003】
コンキオリンと総称される真珠中の有機基質の中でも真珠層基質タンパク質(Nacreous Shell Matrix Proteins(NSMPs))は、炭酸カルシウムの結晶間を接着し真珠層構造を維持する重要な役割を果たしている。このタンパク質が、光や熱、或いは化学薬品など何らかの原因で破壊されると(ダメージを受けると)、徐々に炭酸カルシウムの結晶がばらばらになり、結晶層が剥離し、その結果、真珠光沢は失われる。こうした影響は時間の経過とともに顕在化する。真珠中のタンパク質のダメージの程度により、真珠の経年変化に及ぼす影響も異なり、真珠層中の基質タンパク質のダメージが大きくなるほど真珠光沢の低下など真珠の経年劣化が起こりやすくなる。
【0004】
タンパク質が破壊された直後の真珠は、真珠層の剥離が始まる前までは美しい真珠光沢を有するが、その後時間の経過と共に真珠層の剥離が顕在化する。このため、真珠層の剥離が顕在化していない限り、何らかの原因で真珠タンパクが劣化していても、目視でこれを判別することはほとんど不可能であると言える。
【0005】
また、製品珠として流通する養殖真珠には、社団法人 日本真珠振興会の「真珠スタンダード」(2009年版)によれば、「物理的、科学的方法により、天然真珠又は養殖真珠が有する潜在的な美しさを引き出し、あるいはこれらが有する本来の性質とは関係なく、その色や外観を変える」と定義される加工処理が施されているものもある。こうした加工処理が施された真珠の中には、加工により真珠中のタンパク質が著しく劣化しているものもあり、比較的短期間で真珠光沢を失うものがある。過度に加工された真珠は、真珠層が著しいダメージを受けて真珠層表層付近に剥離痕などが生ずる。剥離痕などがあれば、専門の熟練検査者による目視の評価でこれらを判別することは可能である。しかしながら、加工直後で真珠層の剥離が顕在化していない真珠の検査については、熟練検査者であっても目視での判定では極めて困難である。
こうした過度の加工処理により真珠層のタンパク質にダメージを受けた真珠は、経年変化が早く起こり、宝石としての真珠の耐久性が損なわれることがある。
【0006】
一方で、真珠のタンパク質の性状評価は、宝石としての価値が失われないように、真珠を非破壊で行うことが求められる。
【0007】
真珠品質を非破壊で検査する方法としては、数は少ないもののこれまで幾つか報告されている。
【0008】
例えば、特開平10−260136号公報(特許文献1)には、所定の波長光(488nm〜など)を照射して、真珠の内部構造情報として微細欠陥を検査する方法が記載されている。この方法は真珠内部の欠陥という物理的な損傷、欠落の発見、評価を目的とするものであり、コンキオリンといった真珠層基質タンパク質の状態については検討されていない。
【0009】
また特開2006−118923号公報(特許文献2)には、真珠貝の品位の非破壊判定法が開示されている。ここでは、真珠の真珠層におけるアラゴナイト結晶の配向性をX線回折によって測定し、品質評価を図っている。しかしながら、ここでは、コンキオリンといった真珠層基質タンパク質の状態については検討されておらず、また測定法もX線回折を使用するものである。
【0010】
このため、真珠品質を非破壊で判定でき、かつ簡便かつ迅速に測定し結果が得られる方法が依然として、求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−260136号公報
【特許文献2】特開2006−118923号公報
【発明の概要】
【0012】
本発明者らは今般、真珠もしくは真珠貝殻の品質評価を行うに際して、真珠層のタンパク質の性状に着目した。本発明者らは、真珠もしくは真珠貝殻の紫外域〜可視域の分光反射スペクトルと、紫外域〜可視域の蛍光スペクトルとを用いることによって、真珠もしくは真珠貝殻を破壊したり、傷つけたりすることなく、真珠層のタンパク質の劣化状態を測定でき、それらを数値化することに成功した。そしてこれらによって、真珠もしくは真珠貝殻の劣化程度の評価と、加工のタイプとを迅速かつ簡便に判定することに成功した。本発明はこれら知見に基づくものである。
【0013】
よって本発明は、目的とする真珠もしくは真珠貝殻の品質を非破壊的に、簡便かつ迅速に判定することができる方法および検査装置を提供することをその目的とする。
【0014】
本発明によれば以下の判定方法および検査装置が提供される。
(1) 被検体としての真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の反射スペクトル、および/または紫外域から可視域の蛍光スペクトルを測定し、得られた値を、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻の値と比較することによって、真珠品質を非破壊的に判定する方法;
【0015】
(2) 被検体としての真珠もしくは真珠貝殻における真珠層タンパク質の分光反射スペクトル、および/または蛍光スペクトルを測定する、前記(1)の方法;
(3) 被検体の真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度を判定する、前記(1)または(2)の方法;
【0016】
(4) 被検体の真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の反射スペクトルの測定結果と、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の蛍光スペクトルの測定結果とを組み合わせて評価することで、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の品質の劣化が、熱処理によるのか、日光照射によるのかを判定することを含む、前記(1)〜(3)のいずれかの方法;
(5) 反射スペクトルとして、波長230〜475nmの範囲の真珠もしくは真珠貝殻の分光反射率を測定する、前記(1)〜(4)のいずれかの方法;
【0017】
(6) 反射スペクトルとして、波長250〜260nmの分光反射率(Ra)と、波長270〜290nmの分光反射率(Rb)とを測定し、その比(分光反射比R(a/b))または差を求め、これに基づいて判定する、前記(1)〜(5)のいずれかの方法;
(7) 蛍光スペクトルとして、波長250〜300nmの紫外線を励起光として真珠もしくは真珠貝殻に照射して生ずる、波長320〜360nmの蛍光強度を測定する、前記(1)〜(6)のいずれかの方法;
【0018】
(8) 蛍光スペクトルとして、波長250〜400nmの紫外線を励起光として真珠もしくは真珠貝殻に照射して生ずる、波長400〜550nmの蛍光強度を測定する、前記(1)〜(7)のいずれかの方法;
(9) 紫外線照射により生ずる蛍光を、波長320〜360nm、420〜460nmまたは400〜550nmを透過する光学フィルタを装着したCCDカメラで撮影して、結果を数値化し、これに基づいて判定する、前記(7)または(8)の方法;
【0019】
(10) 真珠品質の非破壊検査装置であって、
紫外線光源からの光を、真珠もしくは真珠貝殻に照射するための光照射部と、
前記光照射部からの紫外線照射により生ずる蛍光を測定する、蛍光検出部と
を具備してなる、装置;
(11) 前記光照射部からの紫外線照射に対する、真珠もしくは真珠貝殻の分光反射率を測定する、分光反射検出部をさらに含んでなる、前記(10)の装置;
【0020】
(12) 前記検出部で得られたデータと、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻のデータと比較して、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度を判定する、解析部をさらに含んでなる、(10)または(11)の装置。
(13) 被検体である真珠もしくは真珠貝殻を配置する、配置部と、
前記解析部の出力結果を表示する表示部と
をさらに含んでなる、(12)の装置。
【0021】
(14) 蛍光検出部が、紫外線照射により生ずる蛍光を、波長320〜360nm、420〜460nmまたは400〜550nmを透過する光学フィルタを装着したCCDカメラを備えてなる、前記(10)〜(13)のいずれかの装置;
(15) 光照射部からの照射光の波長が、230〜475nmである、前記(10)〜(14)のいずれかの装置; および
(16) 表示部において、解析部からの出力結果を、真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度に応じて色分けして表示する、前記(10)〜(15)のいずれかの装置。
【0022】
本発明の判定方法または検査装置によれば、真珠品質を、真珠もしくは真珠貝殻を破壊することなく非破壊条件にて、迅速かつ簡便に測定することできる。本発明による装置は、小型化も可能で、かつ操作も簡単なことから、真珠を販売する現場等において、容易に使用することができる。このように真珠品質を迅速かつ簡便に測定可能なことは、本発明者らの知る限り、従来、知られておらず、画期的な判定法および検査装置であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1における反射スペクトルの測定結果を示す。図中、Aは熱処理区の結果を示し、Bは日光照射区の結果を示す。また図中、太線は未処理、点線は6時間後、長い点線は192時間後、細線は768時間後の結果を意味する。
【図2】実施例1において、熱と日光照射処理時間の経過にともなう254nm付近の分光反射率の変化量を示す。
【図3】実施例1における蛍光スペクトルの測定結果を示す。図中、Aは熱処理区の結果を示し、Bは日光照射区の結果を示す。また図中、太線は未処理、点線は6時間後、長い点線は192時間後、細線は768時間後の結果を意味する。
【図4】実施例1において、熱と日光照射処理時間の経過にともなう340nmの蛍光強度値FI340の変化を示す。なお図中、横軸の「Time(h)」は、「時間(時)」を意味する。
【図5】実施例2における反射スペクトルの測定結果を示す。
【図6】実施例2における蛍光スペクトルの測定結果を示す。
【図7】実施例2における得られたR254/282およびFI340の値の関係を示す。
【図8】実施例3の結果を示す。
【図9】実施例4の結果を示す。
【図10】実施例5の結果を示す。
【図11】本発明の装置の概念図を示す。
【発明の具体的説明】
【0024】
本発明は、前記したように、被検体としての真珠もしくは真珠貝殻の紫外域〜可視域の反射スペクトル(好ましくは、分光反射スペクトル)、および/または紫外域〜可視域の蛍光スペクトルを測定し、得られた値を、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻の値と比較することによって、真珠品質を非破壊的に判定する方法に関する。
すなわち、本発明による判定方法は、真珠もしくは真珠貝殻を傷つけたり、一部サンプルを削り取ったりすることなく、非破壊条件にて、真珠品質を判定できるものである。
【0025】
本発明において、真珠とは、養殖真珠、天然真珠、ケシ、貝付き真珠など一般的に真珠と称されるものであれば、特に制限はないが、典型的には、アコヤ真珠、シロチョウ真珠、クロチョウ真珠、マベ真珠および淡水真珠が挙げられる。
また本発明において、真珠貝殻とは、これら真珠の真珠貝の貝殻であり、特に、貝殻における真珠層部分を意味する。
【0026】
ここで、真珠品質とは、真珠もしくは真珠貝殻の装飾的観点で評価した場合における品質をいい、このような真珠品質は具体的には、真珠もしくは真珠貝殻の真珠層タンパク質の状態により影響をうけるものであり、本発明では特に、真珠層タンパク質に関連する品質を意味する。このような意味での真珠品質としては、例えば、真珠もしくは真珠貝殻の色、光沢、色の深み、傷つき度合い等の観点で考慮されるものが挙げられる。
【0027】
また品質が劣化している場合、劣化の程度も判定される品質に包含される。さらに品質の劣化についてはその原因も判定の対象となりうる。この場合、真珠品質の劣化の原因として考えられるものとしては、加工による品質劣化と、経年による品質の劣化等が考えられる。前者の加工による品質劣化の主な原因としてあげられるものとしては、例えば、
加工時の熱処理に伴うもの、酸化剤や還元剤を用いた漂白処理によるもの、硝酸銀などの化学薬品や着色剤、染色剤を用いた着色処理によるもの、蛍光増白剤処理によるもの、その他、アルカリ溶剤や有機溶剤などの化学薬品を用いた処理等がある。また後者の経年による品質の劣化の主な原因としては、日光照射をうけた場合の劣化が挙げられ、このような日光照射によるものは経時的に劣化が進行すると考えられる。
【0028】
よって本発明の一つの好ましい態様としては、本発明の判定法において、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度を判定する。
【0029】
本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明の判定法において、被検体としての真珠もしくは真珠貝殻の真珠層タンパク質の分光反射スペクトル、および/または蛍光スペクトルを測定する。
【0030】
本発明では、被検体として判定法による検査に供する真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の反射スペクトル、および/または紫外域から可視域の蛍光スペクトルを測定し、得られた値(結果)を、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻の値(結果)と比較する。
【0031】
ここで予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻の値(結果)とは、正常、特に真珠層タンパク質に関して正常であることが分かっている真珠もしくは真珠貝殻を用意し、判定法の実施に先立って、その真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の分光反射スペクトル、および/または紫外域から可視域の蛍光スペクトルを測定して、保持しておくこの値(以下、「正常値」または「コントロール値」ということがある)をいう。これを本発明の判定法の実施に際して用いる。真珠もしくは真珠貝殻の種類や、測定条件に影響を受けることが懸念される場合には、実際の判定条件と同じ真珠もしくは真珠貝殻の種類、測定条件にて予め正常値を求めておくことが望ましい。
【0032】
また本発明の判定法において、被検体としての真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の反射スペクトル、および/または紫外域もしくは可視域の蛍光スペクトルを測定とは、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の「紫外域〜可視域の反射スペクトル」、「紫外域〜可視域の蛍光スペクトル」のいずれか一つについて測定すること、およびこれらを組み合わせて測定することのいずれの場合も包含される。また「紫外域から可視域」(紫外域〜可視域)とは、紫外域から可視域の範囲にある場合に加えて、紫外域のみにある場合、可視域のみにある場合のいずれの場合も包含する意味で用いられる。
【0033】
本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明の判定方法において、分光反射スペクトルとして、波長230〜475nmの範囲の真珠もしくは真珠貝殻の分光反射率を測定する。前記波長の範囲は、好ましくは、230〜400nm、より好ましくは230〜320nmであり、さらに好ましくは240〜300nmであり、さらにより好ましくは250〜290nmであり、特に好ましくは250〜286nmである。
【0034】
ここで、真珠もしくは真珠貝殻の分光反射(率)スペクトルは、慣用の分光光度計やマルチ測光装置等を用いて測定できる。
【0035】
本発明の一つのより好ましい態様によれば、本発明の判定方法において、分光反射スペクトルとして、波長250〜260nmの分光反射率(Ra)と、波長270〜290nmの分光反射率(Rb)とを測定し、その比(分光反射比R(a/b))またはその差を求め、これに基づいて判定する。特に好ましくは、波長 約254nmの分光反射率(Ra)と、波長 約282nmの分光反射率(Rb)とを測定し、その比(分光反射比R254/282)またはその差を求め、これに基づいて判定する。
【0036】
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、本発明の判定方法において、蛍光スペクトルとして、波長250〜300nm(好ましくは波長270〜290nm)の紫外線を励起光として真珠もしくは真珠貝殻に照射して生ずる、波長320〜360nm(好ましくは波長330〜350nm)の蛍光強度を測定する。本発明の特に好ましい態様によれば、真珠もしくは真珠貝殻の紫外域の蛍光スペクトルの測定として、波長280nm付近の紫外線を励起光として真珠もしくは真珠貝殻に照射して生ずる、波長340nmの蛍光強度(FI340)を測定する。
【0037】
本発明のさらに別の一つの好ましい態様によれば、本発明の判定方法において、蛍光スペクトルの測定として、波長250〜400nm(好ましくは波長320〜380nm)の紫外線を励起光として真珠もしくは真珠貝殻に照射して生ずる、波長400〜550nm(好ましくは波長400〜500nm、より好ましくは波長410〜480nm)の蛍光強度を測定する。本発明の特に好ましい態様によれば、真珠もしくは真珠貝殻の可視域の蛍光スペクトルの測定として、波長365nm付近の紫外線を励起光として真珠もしくは真珠貝殻に照射して生ずる、波長420〜460nm付近の蛍光強度を測定する。
【0038】
ここで、紫外域蛍光および可視域蛍光は慣用の分光蛍光光度計により測定できる。
【0039】
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、本発明の判定法は、被検体の紫外域から可視域の分光反射スペクトルの測定結果と、被検体の紫外域から可視域の蛍光スペクトルの測定結果とを組み合わせて評価することで、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の品質の劣化が、熱処理によるのか、日光照射によるのかを判定することを含む。
【0040】
本発明においては、真珠もしくは真珠貝殻の蛍光スペクトルを測定し、判定する場合、得られた蛍光スペクトル全体を用いても良いが、上記したような所定の波長範囲の蛍光強度を測定するのが望ましい。このような所定の波長範囲を測定するには、光学フィルタ、好ましくは波長バンドが設定されているバンドパスフィルタを使用することにより、効率的に測定が可能となる。得られた結果を数値化したり、イメージ画像化したりする上では、蛍光を光学フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)を装着したCCDカメラで撮影して、それを必要に応じて画像処理して用いるのが有効である。
【0041】
したがって本発明の別の一つのより好ましい態様によれば、本発明の判定方法において、紫外線照射により生ずる蛍光を、波長320〜360nm、420〜460nmまたは400〜550nmを透過する光学フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)を装着したCCDカメラで撮影して、結果を数値化し、これに基づいて判定する。このようにすることで、大量の真珠もしくは真珠貝殻の迅速な検査実施が可能となる。
【0042】
本発明の別の態様によれば、前記したように、真珠品質の非破壊検査装置であって、
紫外線光源からの光を、真珠もしくは真珠貝殻に照射するための光照射部と、
前記光照射部からの紫外線照射により生ずる蛍光を測定する、蛍光検出部と
を具備してなるものが提供される。
【0043】
本発明の別の好ましい態様によれば、本発明による装置は、前記検出部で得られたデータと、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻のデータと比較して、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度を判定する、解析部をさらに含んでなる。
【0044】
本発明の別のより好ましい態様によれば、本発明による装置は、
被検体である真珠もしくは真珠貝殻を配置する、配置部と、
前記解析部の出力結果を表示する表示部と
をさらに含んでなる。
【0045】
ここで、配置部は、被検体となる真珠もしくは真珠貝殻を配置することができるものであり、配置できる真珠もしくは真珠貝殻の数や種類は特に制限されない。また配置方法も特に限定されず、例えば、平面上に等間隔に二次元に配置できる試料台のようなものでもよいし、真珠連や細工品または、真珠、真珠貝殻がそのまま置ける平面であれば良い。このような試料台は、測定波長範囲の蛍光が生じないものであることが望ましいが、周囲に蛍光が生じる部位がある場合は、測定部位以外にマスク(無蛍光)をかけることによって、より正確な測定が可能となる。
【0046】
また光照射部とは、紫外線(UV)光源からの光を、前記配置部の真珠もしくは真珠貝殻に照射するためのものであり、光源の光をそのまま照射してもよいが、フィルタなどを介して照射するようにしても良い。フィルタとしては、例えば、ロッドレンズに光学フィルター(300nm以上カット)等を装着して用いても良い。また光源として慣用のものを適宜使用でき、光源と、光照射部とは、必要により光ファイバーなどにより連結しても良く、あるいは、光源と光照射部とを一体化して用いても良い。
【0047】
蛍光検出部としては、慣用の分光蛍光光度計を利用することができ、紫外域蛍光および可視域蛍光を測定できる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明による装置は、蛍光検出部は、紫外線照射により生ずる蛍光を、波長320〜360nm、420〜460nmまたは400〜550nmを透過する光学フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)を装着した(紫外域対応型)CCDカメラで撮影する。このようにすることで、大量の真珠もしくは真珠貝殻の迅速な検査実施が可能となる。
なお撮影された画像は必要によりA/Dコンバータによりデジタルデータ化して、解析部に送るとしてもよい。
【0048】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による装置は、前記光照射部からの紫外線照射に対する、真珠もしくは真珠貝殻の分光反射率を測定する、分光反射検出部をさらに含んでなる。この場合、解析部には、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の分光反射スペクトルの測定結果と、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の蛍光スペクトルの測定結果とを組み合わせて評価することで、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の品質の劣化が、熱処理によるのか、日光照射によるのかを判定できるようにされていることが好ましい。
【0049】
解析部では、蛍光検出部および/または分光反射検出部から得られたデータを、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻のデータと比較して、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度を判定する。予め測定しておく正常データとしては、測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻のデータを保持しておきそれをつかってもよいし、測定の都度、正常データを取得し、それを用いても良い。
【0050】
本発明において、解析部および表示部として、市販のパーソナルコンピュータ(PC)等を使用しても良い。
【0051】
また検出部において、光学フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)を装着したCCDカメラを使用して紫外線照射によって生ずる被検体の蛍光を検出した場合には、この結果を、解析部におくり、パーソナルコンピュータ(PC)を用いて画像処理し、各被検体についての輝度を数値化処理してもよい。数値化処理には、例えば、市販または一般的に入手可能な画像処理ソフトウェア(例えば、ImageJ、Photoshopなど)であればいずれであっても使用できる。画像処理ソフトウェアを用いて、測定対象部位の階調(濃淡の変化度合い)の平均化処理を行い(例えば、8bitでの画像処理では、最大256階調となる)、得られた値を、「蛍光評価値」とし、これを判定に使用することができる。
なお実際の測定に際しては、測定位置の一定面積(例えば、直径5mmの円形領域)を測定しこれに基づいて、蛍光評価値を求め判定することができる。
【0052】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による装置は、光照射部から照射される波長が、230〜475nmである。
【0053】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による装置は、表示部において、解析部からの出力結果を、真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度に応じて色分けして表示してもよい。これにより、測定結果が容易に把握でき、検査や判定結果も容易に把握することが可能となる。
【0054】
なお、本明細書において、「約」や「程度」、「付近」を用いた値の表現は、その値を設定することによる目的を達成する上で、当業者であれば許容することができる値の変動を含む意味である。
【実施例】
【0055】
本発明を以下の例によって詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0056】
実施例1
(1−1) 材料および方法
供試材料には,直径6.0〜7.0mmのアコヤガイ真珠20個およびアコヤガイ貝殻真珠層より得た真珠層粉末試料を用いた。なお,約250gの真珠層粉末試料は,人工採苗によって生産したアコヤガイ(3年貝)50個体分の貝殻より稜柱層と光輝層部分をグラインダーで完全に除去し,粒径0.3mm未満となるまで粉砕して得た。試料の取り扱いは,基本的に冷暗所で遮光しながら行った。
【0057】
(1−2) 反射スペクトルの測定
反射スペクトルは,積分球付き分光光度計(V−570,日本分光株式会社)を用いて,200〜550nmの波長範囲を測定した。なお,測定には,5mmサイズのマスクを使用した。
【0058】
(1−3) 蛍光スペクトルの測定
蛍光スペクトルは,分光蛍光光度計(FP−750,日本分光株式会社)を用いて,300〜400nmの波長範囲を測定した。励起波長は280nm,蛍光強度の測定には,5mmサイズのマスクを使用した。
【0059】
(1−4) 熱による処理実験
熱処理は(以下,熱処理区),真珠試料10個と真珠層粉末試料30gを60mm×18mmの円形ガラス製シャーレに入れて熱風乾燥機(プログラム温度調節器 E Type,株式会社いすず製作所)内に静置し,100℃で768時間行った。真珠試料の反射スペクトルと蛍光スペクトルは,処理前と処理後6時間,12時間,24時間,48時間,96時間,192時間,384時間,768時間にそれぞれ測定した.なお,測定は試料が室温まで冷えてから行った。
【0060】
(1−5) 日光照射による処理実験
日光照射処理は(以下,日光照射区),真珠試料10個と真珠層粉末試料30gを,光が試料の同一面に照射される様にキセノンテスター(SUNTESTER XF−180CPS,株式会社東洋精機製作所)に固定して,キセノンライト(200V,1.5kW,反射コーティング付石英ガラスおよび特殊UVフィルタを使用して放射光を太陽光のスペクトルに近似させた)を光源とする人工太陽光により,放射照度250W/m2,35℃の条件で768時間行った(ブルースケール8級に相当,JIS L−0841).真珠試料における光照射面の反射スペクトルと蛍光スペクトルを,処理前と処理後12時間,24時間,48時間,96時間,192時間,384時間,768時間にそれぞれ測定した。
【0061】
(1−6) 実験結果
(i) 反射スペクトルの変化
真珠試料における熱処理区と日光照射区の典型的な反射スペクトルの変化は、図1に示されるとおりであった。
処理前の真珠試料の反射スペクトルには,282nmに吸収極大がそれぞれ認められた。熱処理区の反射スペクトルは,処理後6時間から250nmよりも長波長側全域の分光反射率が高くなる傾向を示し,その後12時間以降は322nm付近を中心とした300〜450nmの範囲の分光反射率と254nmを中心とした248〜282nmの範囲の分光反射率が僅かに低下したのに対し,450nm以上の可視領域の分光反射率は高くなる傾向にあった(図1A)。
【0062】
日光照射区では,322〜475nmまでの分光反射率と254nmを中心とした248〜282nmの範囲の分光反射率が徐々に低下し,処理前の真珠では明瞭に認められた280nm付近の吸収極大が極めて不明瞭となった(図1B)。
【0063】
そこで254nmにおける分光反射率R254の値と282nmにおける分光反射率R282の値の比R254/282を求めて,熱と日光照射処理時間の経過にともなう254nm付近の分光反射率の変化量を図2に示した。
熱処理区におけるR254/282は,処理後12時間までは顕著に減少したがそれ以降は緩やかな減少傾向を示した。それに対して日光照射区では,処理後48時間まで著しい減少が認められ,その後緩やかな減少傾向を示したが,熱処理区に比べて減少量は大きく,処理後192時間以降では1.0を下回る試料が増加し,768時間では全ての試料が1.0を下回る値を示した。
【0064】
(ii) 蛍光スペクトルの変化
真珠試料における熱処理区と日光照射区の典型的な蛍光スペクトルの変化を図3に示した。
処理前の真珠試料の蛍光スペクトルは,340nm付近の波長域に単一の蛍光極大を示した.熱処理区と日光照射区の蛍光スペクトルは,処理の経過とともに最大で5nm程度蛍光ピーク波長がブルーシフトしながら蛍光強度が徐々に弱くなり,ほとんど同じ特徴の変化を示した(図3A,B)。
【0065】
そこで両試験区における処理の経過にともなう340nmの蛍光強度値FI340の変化を図4に示した。
その結果,FI340は熱処理区と日光照射区ともに処理後96時間までは同様の減少傾向を示し,120時間以降では日光照射区に比べて熱処理区の減少がやや小さめの傾向を示したが,試験終了時では両者間であまり差が認められなかった.
【0066】
実施例2
薬剤(漂白)処理によるアコヤ真珠への影響を非破壊的に評価した。
なお、測定法や測定装置については、実施例1に従った。
【0067】
具体的には、アコヤ真珠(36個、直径5.5mmの未処理珠)を用意し、これを4つの群に分けた。各群の処理条件としては、処理A(漂白液濃度:1.5%、溶媒:水)、処理B(漂白液濃度:3.0%、溶媒:水)、処理C(漂白液濃度:1.5%、溶媒:アルコール系溶媒)、処理D(漂白液濃度:3.0%、溶媒:アルコール系溶媒)とした。なお漂白液としては、当該分野において一般的に使用される市販漂白液を使用した。
各処理条件の真珠について、254nmにおける分光反射率R254の値と282nmにおける分光反射率R282の値の比R254/282を経時的(処理開始日から40日後まで)に測定した。
【0068】
結果は図5に示されるとおりであった。
結果からそれぞれの処理方法により真珠のR254/282の変化は異なるが、処理開始後3日程度を過ぎると処理期間が長くなるほど真珠のR254/282は顕著な低下が認められた。
【0069】
また、各処理条件の真珠について時間の経過(処理開始日から40日後まで)にともなう紫外域蛍光評価値の変化も測定した。
【0070】
紫外域蛍光評価値は、下記のような構成の検査装置で測定した。
150×150mmのアクリル板(真珠100個を設置可能)に、測定面積が直径5mmのマスク(無蛍光板)を使用した試料台(配置部相当)に、試料真珠をセットし、キセノンランプを用いたUV光源(光照射部相当)とフィルタ(300nm以上の光をカットするもの)を用いて、被検体の真珠に300nm以下の紫外線を約1秒照射した。これをバンドパスフィルタ(320〜360nm)を装着した紫外域対応型CCDカメラ(蛍光検出部相当)で、紫外線照射によって生ずる被検体の真珠の蛍光を検出し、パーソナルコンピュータ(PC)を用いて画像処理により、各被検体真珠の輝度を数値化処理した(解析部相当)。
【0071】
ここで画像処理には、市販の画像処理ソフトウェアをもち、測定態様部位の階調の平均化処理を行った(ここでは、8bitでの画像処理であるので、最大256階調存在し、これが処理結果の数値に相当する)。
処理結果をPCのモニター上で数値表示し(表示部相当)、表示された値を紫外域蛍光評価値とした。
【0072】
結果は図6に示されるとおりであった。
【0073】
さらに、340nmの蛍光強度値(FI340)を測定し、R254/282およびFI340の値の関係について、未処理の場合、処理5〜10日後の場合、処理10〜20日後の場合、処理20〜30日後の場合、および処理30〜40日後の場合に分けて示すと、図7の通りとなった。
結果から、薬剤(漂白)処理した真珠は処理後5日以上で処理期間が長くなるほど、R254/282とFI340の顕著な低下が認められた。
【0074】
実施例3
正常なシロチョウ真珠(771個)と、劣化しているシロチョウ真珠(8個)とを用意して(それぞれ業者より入手)、これらの分光反射率比R254/282と、紫外域蛍光評価値とを実施例2と同様にして測定した。
結果は図8Aに示される通りであった。
【0075】
さらに正常なシロチョウ真珠の中から無作為に抽出した74個と、劣化しているシロチョウ真珠(8個)の分光反射率比R254/282と、340nmの蛍光強度値(FI340)と、紫外域蛍光評価値とを、実施例2と同様に測定した。
【0076】
結果は図8B〜図8Dに示されるとおりであった。
結果から、Lot.2(○)の真珠は、R254/282、FI340、および紫外域蛍光評価値のいずれも低いことから、真珠が劣化しているものと判定できた。
【0077】
実施例4
市販の3ロットの淡水真珠を用意して(30個、業界より入手)、これらの分光反射率比R254/282と、340nmの蛍光強度値(FI340)とを実施例2と同様にして測定した。
結果は図9(図9A〜図9C)に示されるとおりであった。
結果から、いずれもLot.1>Lot.2>Lot.3の順に測定値が小さい傾向があり、Lot.1に比べてLot.2およびLot.3は、加工などによって真珠の劣化が進んだものと判定できた。
【0078】
実施例5
アコヤ真珠の未処理珠と蛍光増白剤で処理した真珠とを用意して(73個、業者より入手)の可視域蛍光を測定し、可視域蛍光評価値を比較した。
【0079】
なお、可視域蛍光評価値は、下記のような構成の検査装置で測定した。
暗箱の試料台(配置部相当)に、試料真珠をセットし、365nmのLEDを用いたUV光源(光照射部相当)を被検体の真珠に照射した。これをバンドパスフィルタ(420〜460nm)を装着したCCDカメラ(蛍光検出部相当)で、紫外線照射によって生ずる被検体の真珠の蛍光を検出し、PCを用いて画像処理により、各被検体真珠の輝度を数値化処理した(解析部相当)。
【0080】
ここで画像処理には、市販の画像処理ソフトウェアをもち、測定態様部位の階調の平均化処理を行った(ここでは、8bitでの画像処理であるので、最大256階調存在し、これが処理結果の数値に相当する)。
処理結果をPCのモニター上で数値表示し(表示部相当)、表示された値を可視域蛍光評価値とした。
【0081】
結果は図10に示されるとおりであった。
結果から、可視域蛍光評価装置で数値化したアコヤ真珠(未処理珠)の可視域蛍光評価値は100以下であったのに対して、蛍光増白剤で処理した真珠(2種類)の蛍光評価値は顕著に高い値を示した。
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、真珠品質の非破壊的な判定方法に関する。
【0002】
関連技術
アコヤ真珠、シロチョウ真珠、クロチョウ真珠、マベ真珠、淡水真珠などの真珠は、200〜700nm前後のアラゴナイトの炭酸カルシウム結晶と硬蛋白質(基質タンパク質)による薄膜の多重層から成る真珠層構造で構築され、この多重層薄膜構造によって真珠独特の真珠光沢を生ずる。
【0003】
コンキオリンと総称される真珠中の有機基質の中でも真珠層基質タンパク質(Nacreous Shell Matrix Proteins(NSMPs))は、炭酸カルシウムの結晶間を接着し真珠層構造を維持する重要な役割を果たしている。このタンパク質が、光や熱、或いは化学薬品など何らかの原因で破壊されると(ダメージを受けると)、徐々に炭酸カルシウムの結晶がばらばらになり、結晶層が剥離し、その結果、真珠光沢は失われる。こうした影響は時間の経過とともに顕在化する。真珠中のタンパク質のダメージの程度により、真珠の経年変化に及ぼす影響も異なり、真珠層中の基質タンパク質のダメージが大きくなるほど真珠光沢の低下など真珠の経年劣化が起こりやすくなる。
【0004】
タンパク質が破壊された直後の真珠は、真珠層の剥離が始まる前までは美しい真珠光沢を有するが、その後時間の経過と共に真珠層の剥離が顕在化する。このため、真珠層の剥離が顕在化していない限り、何らかの原因で真珠タンパクが劣化していても、目視でこれを判別することはほとんど不可能であると言える。
【0005】
また、製品珠として流通する養殖真珠には、社団法人 日本真珠振興会の「真珠スタンダード」(2009年版)によれば、「物理的、科学的方法により、天然真珠又は養殖真珠が有する潜在的な美しさを引き出し、あるいはこれらが有する本来の性質とは関係なく、その色や外観を変える」と定義される加工処理が施されているものもある。こうした加工処理が施された真珠の中には、加工により真珠中のタンパク質が著しく劣化しているものもあり、比較的短期間で真珠光沢を失うものがある。過度に加工された真珠は、真珠層が著しいダメージを受けて真珠層表層付近に剥離痕などが生ずる。剥離痕などがあれば、専門の熟練検査者による目視の評価でこれらを判別することは可能である。しかしながら、加工直後で真珠層の剥離が顕在化していない真珠の検査については、熟練検査者であっても目視での判定では極めて困難である。
こうした過度の加工処理により真珠層のタンパク質にダメージを受けた真珠は、経年変化が早く起こり、宝石としての真珠の耐久性が損なわれることがある。
【0006】
一方で、真珠のタンパク質の性状評価は、宝石としての価値が失われないように、真珠を非破壊で行うことが求められる。
【0007】
真珠品質を非破壊で検査する方法としては、数は少ないもののこれまで幾つか報告されている。
【0008】
例えば、特開平10−260136号公報(特許文献1)には、所定の波長光(488nm〜など)を照射して、真珠の内部構造情報として微細欠陥を検査する方法が記載されている。この方法は真珠内部の欠陥という物理的な損傷、欠落の発見、評価を目的とするものであり、コンキオリンといった真珠層基質タンパク質の状態については検討されていない。
【0009】
また特開2006−118923号公報(特許文献2)には、真珠貝の品位の非破壊判定法が開示されている。ここでは、真珠の真珠層におけるアラゴナイト結晶の配向性をX線回折によって測定し、品質評価を図っている。しかしながら、ここでは、コンキオリンといった真珠層基質タンパク質の状態については検討されておらず、また測定法もX線回折を使用するものである。
【0010】
このため、真珠品質を非破壊で判定でき、かつ簡便かつ迅速に測定し結果が得られる方法が依然として、求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−260136号公報
【特許文献2】特開2006−118923号公報
【発明の概要】
【0012】
本発明者らは今般、真珠もしくは真珠貝殻の品質評価を行うに際して、真珠層のタンパク質の性状に着目した。本発明者らは、真珠もしくは真珠貝殻の紫外域〜可視域の分光反射スペクトルと、紫外域〜可視域の蛍光スペクトルとを用いることによって、真珠もしくは真珠貝殻を破壊したり、傷つけたりすることなく、真珠層のタンパク質の劣化状態を測定でき、それらを数値化することに成功した。そしてこれらによって、真珠もしくは真珠貝殻の劣化程度の評価と、加工のタイプとを迅速かつ簡便に判定することに成功した。本発明はこれら知見に基づくものである。
【0013】
よって本発明は、目的とする真珠もしくは真珠貝殻の品質を非破壊的に、簡便かつ迅速に判定することができる方法および検査装置を提供することをその目的とする。
【0014】
本発明によれば以下の判定方法および検査装置が提供される。
(1) 被検体としての真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の反射スペクトル、および/または紫外域から可視域の蛍光スペクトルを測定し、得られた値を、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻の値と比較することによって、真珠品質を非破壊的に判定する方法;
【0015】
(2) 被検体としての真珠もしくは真珠貝殻における真珠層タンパク質の分光反射スペクトル、および/または蛍光スペクトルを測定する、前記(1)の方法;
(3) 被検体の真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度を判定する、前記(1)または(2)の方法;
【0016】
(4) 被検体の真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の反射スペクトルの測定結果と、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の蛍光スペクトルの測定結果とを組み合わせて評価することで、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の品質の劣化が、熱処理によるのか、日光照射によるのかを判定することを含む、前記(1)〜(3)のいずれかの方法;
(5) 反射スペクトルとして、波長230〜475nmの範囲の真珠もしくは真珠貝殻の分光反射率を測定する、前記(1)〜(4)のいずれかの方法;
【0017】
(6) 反射スペクトルとして、波長250〜260nmの分光反射率(Ra)と、波長270〜290nmの分光反射率(Rb)とを測定し、その比(分光反射比R(a/b))または差を求め、これに基づいて判定する、前記(1)〜(5)のいずれかの方法;
(7) 蛍光スペクトルとして、波長250〜300nmの紫外線を励起光として真珠もしくは真珠貝殻に照射して生ずる、波長320〜360nmの蛍光強度を測定する、前記(1)〜(6)のいずれかの方法;
【0018】
(8) 蛍光スペクトルとして、波長250〜400nmの紫外線を励起光として真珠もしくは真珠貝殻に照射して生ずる、波長400〜550nmの蛍光強度を測定する、前記(1)〜(7)のいずれかの方法;
(9) 紫外線照射により生ずる蛍光を、波長320〜360nm、420〜460nmまたは400〜550nmを透過する光学フィルタを装着したCCDカメラで撮影して、結果を数値化し、これに基づいて判定する、前記(7)または(8)の方法;
【0019】
(10) 真珠品質の非破壊検査装置であって、
紫外線光源からの光を、真珠もしくは真珠貝殻に照射するための光照射部と、
前記光照射部からの紫外線照射により生ずる蛍光を測定する、蛍光検出部と
を具備してなる、装置;
(11) 前記光照射部からの紫外線照射に対する、真珠もしくは真珠貝殻の分光反射率を測定する、分光反射検出部をさらに含んでなる、前記(10)の装置;
【0020】
(12) 前記検出部で得られたデータと、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻のデータと比較して、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度を判定する、解析部をさらに含んでなる、(10)または(11)の装置。
(13) 被検体である真珠もしくは真珠貝殻を配置する、配置部と、
前記解析部の出力結果を表示する表示部と
をさらに含んでなる、(12)の装置。
【0021】
(14) 蛍光検出部が、紫外線照射により生ずる蛍光を、波長320〜360nm、420〜460nmまたは400〜550nmを透過する光学フィルタを装着したCCDカメラを備えてなる、前記(10)〜(13)のいずれかの装置;
(15) 光照射部からの照射光の波長が、230〜475nmである、前記(10)〜(14)のいずれかの装置; および
(16) 表示部において、解析部からの出力結果を、真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度に応じて色分けして表示する、前記(10)〜(15)のいずれかの装置。
【0022】
本発明の判定方法または検査装置によれば、真珠品質を、真珠もしくは真珠貝殻を破壊することなく非破壊条件にて、迅速かつ簡便に測定することできる。本発明による装置は、小型化も可能で、かつ操作も簡単なことから、真珠を販売する現場等において、容易に使用することができる。このように真珠品質を迅速かつ簡便に測定可能なことは、本発明者らの知る限り、従来、知られておらず、画期的な判定法および検査装置であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1における反射スペクトルの測定結果を示す。図中、Aは熱処理区の結果を示し、Bは日光照射区の結果を示す。また図中、太線は未処理、点線は6時間後、長い点線は192時間後、細線は768時間後の結果を意味する。
【図2】実施例1において、熱と日光照射処理時間の経過にともなう254nm付近の分光反射率の変化量を示す。
【図3】実施例1における蛍光スペクトルの測定結果を示す。図中、Aは熱処理区の結果を示し、Bは日光照射区の結果を示す。また図中、太線は未処理、点線は6時間後、長い点線は192時間後、細線は768時間後の結果を意味する。
【図4】実施例1において、熱と日光照射処理時間の経過にともなう340nmの蛍光強度値FI340の変化を示す。なお図中、横軸の「Time(h)」は、「時間(時)」を意味する。
【図5】実施例2における反射スペクトルの測定結果を示す。
【図6】実施例2における蛍光スペクトルの測定結果を示す。
【図7】実施例2における得られたR254/282およびFI340の値の関係を示す。
【図8】実施例3の結果を示す。
【図9】実施例4の結果を示す。
【図10】実施例5の結果を示す。
【図11】本発明の装置の概念図を示す。
【発明の具体的説明】
【0024】
本発明は、前記したように、被検体としての真珠もしくは真珠貝殻の紫外域〜可視域の反射スペクトル(好ましくは、分光反射スペクトル)、および/または紫外域〜可視域の蛍光スペクトルを測定し、得られた値を、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻の値と比較することによって、真珠品質を非破壊的に判定する方法に関する。
すなわち、本発明による判定方法は、真珠もしくは真珠貝殻を傷つけたり、一部サンプルを削り取ったりすることなく、非破壊条件にて、真珠品質を判定できるものである。
【0025】
本発明において、真珠とは、養殖真珠、天然真珠、ケシ、貝付き真珠など一般的に真珠と称されるものであれば、特に制限はないが、典型的には、アコヤ真珠、シロチョウ真珠、クロチョウ真珠、マベ真珠および淡水真珠が挙げられる。
また本発明において、真珠貝殻とは、これら真珠の真珠貝の貝殻であり、特に、貝殻における真珠層部分を意味する。
【0026】
ここで、真珠品質とは、真珠もしくは真珠貝殻の装飾的観点で評価した場合における品質をいい、このような真珠品質は具体的には、真珠もしくは真珠貝殻の真珠層タンパク質の状態により影響をうけるものであり、本発明では特に、真珠層タンパク質に関連する品質を意味する。このような意味での真珠品質としては、例えば、真珠もしくは真珠貝殻の色、光沢、色の深み、傷つき度合い等の観点で考慮されるものが挙げられる。
【0027】
また品質が劣化している場合、劣化の程度も判定される品質に包含される。さらに品質の劣化についてはその原因も判定の対象となりうる。この場合、真珠品質の劣化の原因として考えられるものとしては、加工による品質劣化と、経年による品質の劣化等が考えられる。前者の加工による品質劣化の主な原因としてあげられるものとしては、例えば、
加工時の熱処理に伴うもの、酸化剤や還元剤を用いた漂白処理によるもの、硝酸銀などの化学薬品や着色剤、染色剤を用いた着色処理によるもの、蛍光増白剤処理によるもの、その他、アルカリ溶剤や有機溶剤などの化学薬品を用いた処理等がある。また後者の経年による品質の劣化の主な原因としては、日光照射をうけた場合の劣化が挙げられ、このような日光照射によるものは経時的に劣化が進行すると考えられる。
【0028】
よって本発明の一つの好ましい態様としては、本発明の判定法において、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度を判定する。
【0029】
本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明の判定法において、被検体としての真珠もしくは真珠貝殻の真珠層タンパク質の分光反射スペクトル、および/または蛍光スペクトルを測定する。
【0030】
本発明では、被検体として判定法による検査に供する真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の反射スペクトル、および/または紫外域から可視域の蛍光スペクトルを測定し、得られた値(結果)を、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻の値(結果)と比較する。
【0031】
ここで予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻の値(結果)とは、正常、特に真珠層タンパク質に関して正常であることが分かっている真珠もしくは真珠貝殻を用意し、判定法の実施に先立って、その真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の分光反射スペクトル、および/または紫外域から可視域の蛍光スペクトルを測定して、保持しておくこの値(以下、「正常値」または「コントロール値」ということがある)をいう。これを本発明の判定法の実施に際して用いる。真珠もしくは真珠貝殻の種類や、測定条件に影響を受けることが懸念される場合には、実際の判定条件と同じ真珠もしくは真珠貝殻の種類、測定条件にて予め正常値を求めておくことが望ましい。
【0032】
また本発明の判定法において、被検体としての真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の反射スペクトル、および/または紫外域もしくは可視域の蛍光スペクトルを測定とは、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の「紫外域〜可視域の反射スペクトル」、「紫外域〜可視域の蛍光スペクトル」のいずれか一つについて測定すること、およびこれらを組み合わせて測定することのいずれの場合も包含される。また「紫外域から可視域」(紫外域〜可視域)とは、紫外域から可視域の範囲にある場合に加えて、紫外域のみにある場合、可視域のみにある場合のいずれの場合も包含する意味で用いられる。
【0033】
本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明の判定方法において、分光反射スペクトルとして、波長230〜475nmの範囲の真珠もしくは真珠貝殻の分光反射率を測定する。前記波長の範囲は、好ましくは、230〜400nm、より好ましくは230〜320nmであり、さらに好ましくは240〜300nmであり、さらにより好ましくは250〜290nmであり、特に好ましくは250〜286nmである。
【0034】
ここで、真珠もしくは真珠貝殻の分光反射(率)スペクトルは、慣用の分光光度計やマルチ測光装置等を用いて測定できる。
【0035】
本発明の一つのより好ましい態様によれば、本発明の判定方法において、分光反射スペクトルとして、波長250〜260nmの分光反射率(Ra)と、波長270〜290nmの分光反射率(Rb)とを測定し、その比(分光反射比R(a/b))またはその差を求め、これに基づいて判定する。特に好ましくは、波長 約254nmの分光反射率(Ra)と、波長 約282nmの分光反射率(Rb)とを測定し、その比(分光反射比R254/282)またはその差を求め、これに基づいて判定する。
【0036】
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、本発明の判定方法において、蛍光スペクトルとして、波長250〜300nm(好ましくは波長270〜290nm)の紫外線を励起光として真珠もしくは真珠貝殻に照射して生ずる、波長320〜360nm(好ましくは波長330〜350nm)の蛍光強度を測定する。本発明の特に好ましい態様によれば、真珠もしくは真珠貝殻の紫外域の蛍光スペクトルの測定として、波長280nm付近の紫外線を励起光として真珠もしくは真珠貝殻に照射して生ずる、波長340nmの蛍光強度(FI340)を測定する。
【0037】
本発明のさらに別の一つの好ましい態様によれば、本発明の判定方法において、蛍光スペクトルの測定として、波長250〜400nm(好ましくは波長320〜380nm)の紫外線を励起光として真珠もしくは真珠貝殻に照射して生ずる、波長400〜550nm(好ましくは波長400〜500nm、より好ましくは波長410〜480nm)の蛍光強度を測定する。本発明の特に好ましい態様によれば、真珠もしくは真珠貝殻の可視域の蛍光スペクトルの測定として、波長365nm付近の紫外線を励起光として真珠もしくは真珠貝殻に照射して生ずる、波長420〜460nm付近の蛍光強度を測定する。
【0038】
ここで、紫外域蛍光および可視域蛍光は慣用の分光蛍光光度計により測定できる。
【0039】
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、本発明の判定法は、被検体の紫外域から可視域の分光反射スペクトルの測定結果と、被検体の紫外域から可視域の蛍光スペクトルの測定結果とを組み合わせて評価することで、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の品質の劣化が、熱処理によるのか、日光照射によるのかを判定することを含む。
【0040】
本発明においては、真珠もしくは真珠貝殻の蛍光スペクトルを測定し、判定する場合、得られた蛍光スペクトル全体を用いても良いが、上記したような所定の波長範囲の蛍光強度を測定するのが望ましい。このような所定の波長範囲を測定するには、光学フィルタ、好ましくは波長バンドが設定されているバンドパスフィルタを使用することにより、効率的に測定が可能となる。得られた結果を数値化したり、イメージ画像化したりする上では、蛍光を光学フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)を装着したCCDカメラで撮影して、それを必要に応じて画像処理して用いるのが有効である。
【0041】
したがって本発明の別の一つのより好ましい態様によれば、本発明の判定方法において、紫外線照射により生ずる蛍光を、波長320〜360nm、420〜460nmまたは400〜550nmを透過する光学フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)を装着したCCDカメラで撮影して、結果を数値化し、これに基づいて判定する。このようにすることで、大量の真珠もしくは真珠貝殻の迅速な検査実施が可能となる。
【0042】
本発明の別の態様によれば、前記したように、真珠品質の非破壊検査装置であって、
紫外線光源からの光を、真珠もしくは真珠貝殻に照射するための光照射部と、
前記光照射部からの紫外線照射により生ずる蛍光を測定する、蛍光検出部と
を具備してなるものが提供される。
【0043】
本発明の別の好ましい態様によれば、本発明による装置は、前記検出部で得られたデータと、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻のデータと比較して、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度を判定する、解析部をさらに含んでなる。
【0044】
本発明の別のより好ましい態様によれば、本発明による装置は、
被検体である真珠もしくは真珠貝殻を配置する、配置部と、
前記解析部の出力結果を表示する表示部と
をさらに含んでなる。
【0045】
ここで、配置部は、被検体となる真珠もしくは真珠貝殻を配置することができるものであり、配置できる真珠もしくは真珠貝殻の数や種類は特に制限されない。また配置方法も特に限定されず、例えば、平面上に等間隔に二次元に配置できる試料台のようなものでもよいし、真珠連や細工品または、真珠、真珠貝殻がそのまま置ける平面であれば良い。このような試料台は、測定波長範囲の蛍光が生じないものであることが望ましいが、周囲に蛍光が生じる部位がある場合は、測定部位以外にマスク(無蛍光)をかけることによって、より正確な測定が可能となる。
【0046】
また光照射部とは、紫外線(UV)光源からの光を、前記配置部の真珠もしくは真珠貝殻に照射するためのものであり、光源の光をそのまま照射してもよいが、フィルタなどを介して照射するようにしても良い。フィルタとしては、例えば、ロッドレンズに光学フィルター(300nm以上カット)等を装着して用いても良い。また光源として慣用のものを適宜使用でき、光源と、光照射部とは、必要により光ファイバーなどにより連結しても良く、あるいは、光源と光照射部とを一体化して用いても良い。
【0047】
蛍光検出部としては、慣用の分光蛍光光度計を利用することができ、紫外域蛍光および可視域蛍光を測定できる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明による装置は、蛍光検出部は、紫外線照射により生ずる蛍光を、波長320〜360nm、420〜460nmまたは400〜550nmを透過する光学フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)を装着した(紫外域対応型)CCDカメラで撮影する。このようにすることで、大量の真珠もしくは真珠貝殻の迅速な検査実施が可能となる。
なお撮影された画像は必要によりA/Dコンバータによりデジタルデータ化して、解析部に送るとしてもよい。
【0048】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による装置は、前記光照射部からの紫外線照射に対する、真珠もしくは真珠貝殻の分光反射率を測定する、分光反射検出部をさらに含んでなる。この場合、解析部には、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の分光反射スペクトルの測定結果と、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の蛍光スペクトルの測定結果とを組み合わせて評価することで、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の品質の劣化が、熱処理によるのか、日光照射によるのかを判定できるようにされていることが好ましい。
【0049】
解析部では、蛍光検出部および/または分光反射検出部から得られたデータを、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻のデータと比較して、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度を判定する。予め測定しておく正常データとしては、測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻のデータを保持しておきそれをつかってもよいし、測定の都度、正常データを取得し、それを用いても良い。
【0050】
本発明において、解析部および表示部として、市販のパーソナルコンピュータ(PC)等を使用しても良い。
【0051】
また検出部において、光学フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)を装着したCCDカメラを使用して紫外線照射によって生ずる被検体の蛍光を検出した場合には、この結果を、解析部におくり、パーソナルコンピュータ(PC)を用いて画像処理し、各被検体についての輝度を数値化処理してもよい。数値化処理には、例えば、市販または一般的に入手可能な画像処理ソフトウェア(例えば、ImageJ、Photoshopなど)であればいずれであっても使用できる。画像処理ソフトウェアを用いて、測定対象部位の階調(濃淡の変化度合い)の平均化処理を行い(例えば、8bitでの画像処理では、最大256階調となる)、得られた値を、「蛍光評価値」とし、これを判定に使用することができる。
なお実際の測定に際しては、測定位置の一定面積(例えば、直径5mmの円形領域)を測定しこれに基づいて、蛍光評価値を求め判定することができる。
【0052】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による装置は、光照射部から照射される波長が、230〜475nmである。
【0053】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による装置は、表示部において、解析部からの出力結果を、真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度に応じて色分けして表示してもよい。これにより、測定結果が容易に把握でき、検査や判定結果も容易に把握することが可能となる。
【0054】
なお、本明細書において、「約」や「程度」、「付近」を用いた値の表現は、その値を設定することによる目的を達成する上で、当業者であれば許容することができる値の変動を含む意味である。
【実施例】
【0055】
本発明を以下の例によって詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0056】
実施例1
(1−1) 材料および方法
供試材料には,直径6.0〜7.0mmのアコヤガイ真珠20個およびアコヤガイ貝殻真珠層より得た真珠層粉末試料を用いた。なお,約250gの真珠層粉末試料は,人工採苗によって生産したアコヤガイ(3年貝)50個体分の貝殻より稜柱層と光輝層部分をグラインダーで完全に除去し,粒径0.3mm未満となるまで粉砕して得た。試料の取り扱いは,基本的に冷暗所で遮光しながら行った。
【0057】
(1−2) 反射スペクトルの測定
反射スペクトルは,積分球付き分光光度計(V−570,日本分光株式会社)を用いて,200〜550nmの波長範囲を測定した。なお,測定には,5mmサイズのマスクを使用した。
【0058】
(1−3) 蛍光スペクトルの測定
蛍光スペクトルは,分光蛍光光度計(FP−750,日本分光株式会社)を用いて,300〜400nmの波長範囲を測定した。励起波長は280nm,蛍光強度の測定には,5mmサイズのマスクを使用した。
【0059】
(1−4) 熱による処理実験
熱処理は(以下,熱処理区),真珠試料10個と真珠層粉末試料30gを60mm×18mmの円形ガラス製シャーレに入れて熱風乾燥機(プログラム温度調節器 E Type,株式会社いすず製作所)内に静置し,100℃で768時間行った。真珠試料の反射スペクトルと蛍光スペクトルは,処理前と処理後6時間,12時間,24時間,48時間,96時間,192時間,384時間,768時間にそれぞれ測定した.なお,測定は試料が室温まで冷えてから行った。
【0060】
(1−5) 日光照射による処理実験
日光照射処理は(以下,日光照射区),真珠試料10個と真珠層粉末試料30gを,光が試料の同一面に照射される様にキセノンテスター(SUNTESTER XF−180CPS,株式会社東洋精機製作所)に固定して,キセノンライト(200V,1.5kW,反射コーティング付石英ガラスおよび特殊UVフィルタを使用して放射光を太陽光のスペクトルに近似させた)を光源とする人工太陽光により,放射照度250W/m2,35℃の条件で768時間行った(ブルースケール8級に相当,JIS L−0841).真珠試料における光照射面の反射スペクトルと蛍光スペクトルを,処理前と処理後12時間,24時間,48時間,96時間,192時間,384時間,768時間にそれぞれ測定した。
【0061】
(1−6) 実験結果
(i) 反射スペクトルの変化
真珠試料における熱処理区と日光照射区の典型的な反射スペクトルの変化は、図1に示されるとおりであった。
処理前の真珠試料の反射スペクトルには,282nmに吸収極大がそれぞれ認められた。熱処理区の反射スペクトルは,処理後6時間から250nmよりも長波長側全域の分光反射率が高くなる傾向を示し,その後12時間以降は322nm付近を中心とした300〜450nmの範囲の分光反射率と254nmを中心とした248〜282nmの範囲の分光反射率が僅かに低下したのに対し,450nm以上の可視領域の分光反射率は高くなる傾向にあった(図1A)。
【0062】
日光照射区では,322〜475nmまでの分光反射率と254nmを中心とした248〜282nmの範囲の分光反射率が徐々に低下し,処理前の真珠では明瞭に認められた280nm付近の吸収極大が極めて不明瞭となった(図1B)。
【0063】
そこで254nmにおける分光反射率R254の値と282nmにおける分光反射率R282の値の比R254/282を求めて,熱と日光照射処理時間の経過にともなう254nm付近の分光反射率の変化量を図2に示した。
熱処理区におけるR254/282は,処理後12時間までは顕著に減少したがそれ以降は緩やかな減少傾向を示した。それに対して日光照射区では,処理後48時間まで著しい減少が認められ,その後緩やかな減少傾向を示したが,熱処理区に比べて減少量は大きく,処理後192時間以降では1.0を下回る試料が増加し,768時間では全ての試料が1.0を下回る値を示した。
【0064】
(ii) 蛍光スペクトルの変化
真珠試料における熱処理区と日光照射区の典型的な蛍光スペクトルの変化を図3に示した。
処理前の真珠試料の蛍光スペクトルは,340nm付近の波長域に単一の蛍光極大を示した.熱処理区と日光照射区の蛍光スペクトルは,処理の経過とともに最大で5nm程度蛍光ピーク波長がブルーシフトしながら蛍光強度が徐々に弱くなり,ほとんど同じ特徴の変化を示した(図3A,B)。
【0065】
そこで両試験区における処理の経過にともなう340nmの蛍光強度値FI340の変化を図4に示した。
その結果,FI340は熱処理区と日光照射区ともに処理後96時間までは同様の減少傾向を示し,120時間以降では日光照射区に比べて熱処理区の減少がやや小さめの傾向を示したが,試験終了時では両者間であまり差が認められなかった.
【0066】
実施例2
薬剤(漂白)処理によるアコヤ真珠への影響を非破壊的に評価した。
なお、測定法や測定装置については、実施例1に従った。
【0067】
具体的には、アコヤ真珠(36個、直径5.5mmの未処理珠)を用意し、これを4つの群に分けた。各群の処理条件としては、処理A(漂白液濃度:1.5%、溶媒:水)、処理B(漂白液濃度:3.0%、溶媒:水)、処理C(漂白液濃度:1.5%、溶媒:アルコール系溶媒)、処理D(漂白液濃度:3.0%、溶媒:アルコール系溶媒)とした。なお漂白液としては、当該分野において一般的に使用される市販漂白液を使用した。
各処理条件の真珠について、254nmにおける分光反射率R254の値と282nmにおける分光反射率R282の値の比R254/282を経時的(処理開始日から40日後まで)に測定した。
【0068】
結果は図5に示されるとおりであった。
結果からそれぞれの処理方法により真珠のR254/282の変化は異なるが、処理開始後3日程度を過ぎると処理期間が長くなるほど真珠のR254/282は顕著な低下が認められた。
【0069】
また、各処理条件の真珠について時間の経過(処理開始日から40日後まで)にともなう紫外域蛍光評価値の変化も測定した。
【0070】
紫外域蛍光評価値は、下記のような構成の検査装置で測定した。
150×150mmのアクリル板(真珠100個を設置可能)に、測定面積が直径5mmのマスク(無蛍光板)を使用した試料台(配置部相当)に、試料真珠をセットし、キセノンランプを用いたUV光源(光照射部相当)とフィルタ(300nm以上の光をカットするもの)を用いて、被検体の真珠に300nm以下の紫外線を約1秒照射した。これをバンドパスフィルタ(320〜360nm)を装着した紫外域対応型CCDカメラ(蛍光検出部相当)で、紫外線照射によって生ずる被検体の真珠の蛍光を検出し、パーソナルコンピュータ(PC)を用いて画像処理により、各被検体真珠の輝度を数値化処理した(解析部相当)。
【0071】
ここで画像処理には、市販の画像処理ソフトウェアをもち、測定態様部位の階調の平均化処理を行った(ここでは、8bitでの画像処理であるので、最大256階調存在し、これが処理結果の数値に相当する)。
処理結果をPCのモニター上で数値表示し(表示部相当)、表示された値を紫外域蛍光評価値とした。
【0072】
結果は図6に示されるとおりであった。
【0073】
さらに、340nmの蛍光強度値(FI340)を測定し、R254/282およびFI340の値の関係について、未処理の場合、処理5〜10日後の場合、処理10〜20日後の場合、処理20〜30日後の場合、および処理30〜40日後の場合に分けて示すと、図7の通りとなった。
結果から、薬剤(漂白)処理した真珠は処理後5日以上で処理期間が長くなるほど、R254/282とFI340の顕著な低下が認められた。
【0074】
実施例3
正常なシロチョウ真珠(771個)と、劣化しているシロチョウ真珠(8個)とを用意して(それぞれ業者より入手)、これらの分光反射率比R254/282と、紫外域蛍光評価値とを実施例2と同様にして測定した。
結果は図8Aに示される通りであった。
【0075】
さらに正常なシロチョウ真珠の中から無作為に抽出した74個と、劣化しているシロチョウ真珠(8個)の分光反射率比R254/282と、340nmの蛍光強度値(FI340)と、紫外域蛍光評価値とを、実施例2と同様に測定した。
【0076】
結果は図8B〜図8Dに示されるとおりであった。
結果から、Lot.2(○)の真珠は、R254/282、FI340、および紫外域蛍光評価値のいずれも低いことから、真珠が劣化しているものと判定できた。
【0077】
実施例4
市販の3ロットの淡水真珠を用意して(30個、業界より入手)、これらの分光反射率比R254/282と、340nmの蛍光強度値(FI340)とを実施例2と同様にして測定した。
結果は図9(図9A〜図9C)に示されるとおりであった。
結果から、いずれもLot.1>Lot.2>Lot.3の順に測定値が小さい傾向があり、Lot.1に比べてLot.2およびLot.3は、加工などによって真珠の劣化が進んだものと判定できた。
【0078】
実施例5
アコヤ真珠の未処理珠と蛍光増白剤で処理した真珠とを用意して(73個、業者より入手)の可視域蛍光を測定し、可視域蛍光評価値を比較した。
【0079】
なお、可視域蛍光評価値は、下記のような構成の検査装置で測定した。
暗箱の試料台(配置部相当)に、試料真珠をセットし、365nmのLEDを用いたUV光源(光照射部相当)を被検体の真珠に照射した。これをバンドパスフィルタ(420〜460nm)を装着したCCDカメラ(蛍光検出部相当)で、紫外線照射によって生ずる被検体の真珠の蛍光を検出し、PCを用いて画像処理により、各被検体真珠の輝度を数値化処理した(解析部相当)。
【0080】
ここで画像処理には、市販の画像処理ソフトウェアをもち、測定態様部位の階調の平均化処理を行った(ここでは、8bitでの画像処理であるので、最大256階調存在し、これが処理結果の数値に相当する)。
処理結果をPCのモニター上で数値表示し(表示部相当)、表示された値を可視域蛍光評価値とした。
【0081】
結果は図10に示されるとおりであった。
結果から、可視域蛍光評価装置で数値化したアコヤ真珠(未処理珠)の可視域蛍光評価値は100以下であったのに対して、蛍光増白剤で処理した真珠(2種類)の蛍光評価値は顕著に高い値を示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体としての真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の反射スペクトル、および/または紫外域から可視域の蛍光スペクトルを測定し、得られた値を、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻の値と比較することによって、真珠品質を非破壊的に判定する方法。
【請求項2】
被検体としての真珠もしくは真珠貝殻における真珠層タンパク質の分光反射スペクトル、および/または蛍光スペクトルを測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被検体の真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度を判定する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
被検体の真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の反射スペクトルの測定結果と、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の蛍光スペクトルの測定結果とを組み合わせて評価することで、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の品質の劣化が、熱処理によるのか、日光照射によるのかを判定することを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
反射スペクトルとして、波長230〜475nmの範囲の真珠もしくは真珠貝殻の分光反射率を測定する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
反射スペクトルとして、波長250〜260nmの分光反射率(Ra)と、波長270〜290nmの分光反射率(Rb)とを測定し、その比(分光反射比R(a/b))またはその差を求め、これに基づいて判定する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
蛍光スペクトルとして、波長250〜300nmの紫外線を励起光として真珠もしくは真珠貝殻に照射して生ずる、波長320〜360nmの蛍光強度を測定する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
蛍光スペクトルとして、波長250〜400nmの紫外線を励起光として真珠もしくは真珠貝殻に照射して生ずる、波長400〜550nmの蛍光強度を測定する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
紫外線照射により生ずる蛍光を、波長320〜360nm、420〜460nmまたは400〜550nmを透過する光学フィルタを装着したCCDカメラで撮影して、結果を数値化し、これに基づいて判定する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
真珠品質の非破壊検査装置であって、
紫外線光源からの光を、真珠もしくは真珠貝殻に照射するための光照射部と、
前記光照射部からの紫外線照射により生ずる蛍光を測定する、蛍光検出部と
を具備してなる、装置。
【請求項11】
前記光照射部からの紫外線照射に対する、真珠もしくは真珠貝殻の分光反射率を測定する、分光反射検出部をさらに含んでなる、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記検出部で得られたデータと、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻のデータと比較して、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度を判定する、解析部をさらに含んでなる、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
被検体である真珠もしくは真珠貝殻を配置する、配置部と、
前記解析部の出力結果を表示する表示部と
をさらに含んでなる、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
蛍光検出部が、紫外線照射により生ずる蛍光を、波長320〜360nm、420〜460nmまたは400〜550nmを透過する光学フィルタを装着したCCDカメラを備えてなる、請求項10〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
光照射部からの照射光の波長が、230〜475nmである、請求項10〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
表示部において、解析部からの出力結果を、真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度に応じて色分けして表示する、請求項10〜15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項1】
被検体としての真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の反射スペクトル、および/または紫外域から可視域の蛍光スペクトルを測定し、得られた値を、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻の値と比較することによって、真珠品質を非破壊的に判定する方法。
【請求項2】
被検体としての真珠もしくは真珠貝殻における真珠層タンパク質の分光反射スペクトル、および/または蛍光スペクトルを測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被検体の真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度を判定する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
被検体の真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の反射スペクトルの測定結果と、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の紫外域から可視域の蛍光スペクトルの測定結果とを組み合わせて評価することで、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の品質の劣化が、熱処理によるのか、日光照射によるのかを判定することを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
反射スペクトルとして、波長230〜475nmの範囲の真珠もしくは真珠貝殻の分光反射率を測定する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
反射スペクトルとして、波長250〜260nmの分光反射率(Ra)と、波長270〜290nmの分光反射率(Rb)とを測定し、その比(分光反射比R(a/b))またはその差を求め、これに基づいて判定する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
蛍光スペクトルとして、波長250〜300nmの紫外線を励起光として真珠もしくは真珠貝殻に照射して生ずる、波長320〜360nmの蛍光強度を測定する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
蛍光スペクトルとして、波長250〜400nmの紫外線を励起光として真珠もしくは真珠貝殻に照射して生ずる、波長400〜550nmの蛍光強度を測定する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
紫外線照射により生ずる蛍光を、波長320〜360nm、420〜460nmまたは400〜550nmを透過する光学フィルタを装着したCCDカメラで撮影して、結果を数値化し、これに基づいて判定する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
真珠品質の非破壊検査装置であって、
紫外線光源からの光を、真珠もしくは真珠貝殻に照射するための光照射部と、
前記光照射部からの紫外線照射により生ずる蛍光を測定する、蛍光検出部と
を具備してなる、装置。
【請求項11】
前記光照射部からの紫外線照射に対する、真珠もしくは真珠貝殻の分光反射率を測定する、分光反射検出部をさらに含んでなる、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記検出部で得られたデータと、予め測定しておいた正常な真珠もしくは真珠貝殻のデータと比較して、被検体の真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度を判定する、解析部をさらに含んでなる、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
被検体である真珠もしくは真珠貝殻を配置する、配置部と、
前記解析部の出力結果を表示する表示部と
をさらに含んでなる、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
蛍光検出部が、紫外線照射により生ずる蛍光を、波長320〜360nm、420〜460nmまたは400〜550nmを透過する光学フィルタを装着したCCDカメラを備えてなる、請求項10〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
光照射部からの照射光の波長が、230〜475nmである、請求項10〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
表示部において、解析部からの出力結果を、真珠もしくは真珠貝殻の劣化の程度に応じて色分けして表示する、請求項10〜15のいずれか一項に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−47489(P2012−47489A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187465(P2010−187465)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(391060535)株式会社ミキモト (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(391060535)株式会社ミキモト (4)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]