説明

真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法及び装置

【課題】 液体環境を提供できる真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法及び装置を提供する。
【解決手段】 ケース11と、複数の隔離板12によりケース11の内部を分割して形成される液体室14と、液体室14の外部に形成される少なくとも一つの蒸気室16と、蒸気室16の外部に形成される少なくとも一つの緩衝室18と、液体室14の頂面と底面との間の隔離板12に位置付けられる蒸気孔141と、隔離板12に形成されて蒸気孔141の上方と下方に位置付けられる二つの内孔161と、ケース11の頂面と底面に位置付けられる外孔111とを備える。液体室14は内部が液体試料により充填され、蒸気孔141と内孔161と外孔111とは同軸に位置し、ケース11は蒸気室16に対応する送気孔162と緩衝室18に対応する抽気孔182とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空下で液体物質を操作する技術に関し、特に、真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微細尺度下での観察技術において、現今もっとも高倍率の拡大効果を達成可能であるのが電子顕微鏡である。人々は、電子顕微鏡の超高倍率拡大により物質のナノサイズの構造に相関する科学研究を進めることが可能である。
【0003】
電子ビームにより物体を探知することを原理とする電子顕微鏡は、ナノサイズの構造の観察を執行するために、真空環境下で高電圧により電子を加速し、電磁透視鏡により焦点を絞る方法が必要である。図13に示すように、電子顕微鏡81は、試料を置くための試料槽(specimen chamber)82を有する。試料槽82の内部は、真空である。かつ試料槽82は、上極片(pole piece)86と下極片(pole piece)86を有することで、電子ビームにより焦点を合わせる正確度を確保することが可能である。この二つの極片86の間の距離は、約1センチ前後である。また、試料は固体でないと、真空環境下での観察を執行することができない。また、液体または気体のような流体物質は、沸騰、揮発または漏出の現象が発生するため、試料とすることができない。
【0004】
前述の問題を解決し、ある気体が存在している環境下でも電子顕微鏡内に置かれた試料を観察及び分析するために、Hui S Wなどは、1976年に水蒸気を制御可能な環境槽を提出した(非特許文献1参照)。図14と図15に示すように、この技術は、電子顕微鏡91の試料槽92を高くするように改装し、試料槽92の内部に水槽94と環境槽96を配置し、二つの隔離板962により環境槽96の内部を分割してその中央に蒸気層964を形成し、かつ蒸気層964の上下に別々に緩衝層966を形成し、また、水槽94に蒸気層964に連接する気管941を有することで、蒸気層964に水蒸気を供給し、また、相互平行の二つの隔離板962と環境槽96の上下壁面に別々に穿孔963を配置することで、穿孔963により同じ軸の電子ビームを透過させ、また、環境槽96の中間の蒸気層964の一側から外へ延ばして試料管969を形成し、また、試料治具968を外部から試料管969を貫通させて環境槽96内の蒸気層964に進入させ、そして、O型リング969により試料治具968と蒸気層964の壁面を封じることで、蒸気層964と外部を隔離することである。
前述の構造と技術は、環境槽96内の環境は気体または蒸気となるように制御することしかできないため、液体環境とすることができない。
【0005】
近年、電子顕微鏡に相関する改装に携わるのは、Cai P.L.が率いる研究グループである。2002年の研究成果により、電子顕微鏡下で気相、液相、固相化学反応を観察する実験が提出された(非特許文献2参照)。その欠点は、液体試料が直接気体室内の気体環境槽に曝され、気体室の範囲が電子顕微鏡内の上下極片(pole pieces)間の空間(通常、約1cm前後)を含むため、気体室の蒸気分圧が飽和蒸気圧に達していないうちに、試料槽の液体が急速に揮発してしまうことである。したがって、液体を持続的に補充することが必要である。しかし、このようなプロセスは、試料の流動が頻発し、新しい試料と古い試料の混合が均質でない問題が発生するため、観察の信頼性に影響する。また、大量揮発した高圧蒸気または外界から気体室に注入された高圧気体が上下極片の間に充満しているため、電子が気体分子に衝撃を与えて生成した多重散乱を深刻化させ、また、電子ビームによる結像または電子回折の実験をスムーズに進行させることができない。かつこうした試料槽の設計では、液体の注入量を有効に制御できない。したがって、液体の厚さが厚くなりすぎてしまうため、電子ビームが試料を透過できなくなり、観察と分析ができなくなる。
またCai P.L.の設計は、顕微鏡の本体を分解する必要がある。顕微鏡を分解しないと、これらの部品を装着できないため、量産の可能性が低い。
【0006】
同じ時期にこれに相関する技術研究に携わったのは、Daulton T.L.である(非特許文献3参照)。その試料槽の設計は、窓型(window type)を採用するものである。このような設計は、窓型薄膜が厚すぎて電子の多重散乱が発生する問題があるため、結像または電子回折の実験を進行させることは不可能である。分析観察の作業が可能であるとしても、解像度は大幅に低下する。もう一つの重大な欠点として、試料槽と気体室との間の圧力差が大きすぎる場合、窓型薄膜が破裂し、試料槽内の液体が急速に揮発して顕微鏡の高度真空区域を汚染し、顕微鏡が使用不能になり、あるいは、損壊することがあることである。
前述の諸技術では、真空また低圧環境下で液体環境を安定させるように保持し、かつ操作と観察ができる方法を得ることができない。
【0007】
【非特許文献1】Hui S W et al.,Journal of Physics E 9,69,1976
【非特許文献2】Cai P.L.,Microscopy & Microanalysis 8,21,2002
【非特許文献3】Daulton T.L.et al.,Microscopy Research & Technique 7,470,2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みて、試作と実験で絶えず研究を進めた結果、真空または低圧環境下で液体環境を安定させるように保持し、かつ操作と観察ができる技術を完成させ、かつ電子顕微鏡の本来の設計を変えないことを前提として前述の効果を達成する。
【0009】
本発明の主な目的は、真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法及び装置を提供することである。これにより、真空または低圧環境下で液体環境を提供し、かつ観察をすることが可能となる。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法及び装置を提供することである。これにより、電子顕微鏡の本来の設計を変えないことを前提として液体観察の環境を提供することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、本発明による真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法及び装置は、下記のステップと構造を含む。ステップa)は、ケースを用意し、ケースの内部を複数の隔離板により分割して液体室を形成し、液体室の外部に少なくとも一つの蒸気室を形成し、かつ蒸気室の外部に少なくとも一つの緩衝室を形成し、液体室は内部が液体試料または液体内に保存されている物質により充填され、また、液体室の頂面と底面の隔離板には別々に蒸気孔を設け、蒸気室と緩衝室との間の隔離板には蒸気孔の上方と下方に位置する二つの内孔を設け、また、ケースの頂面と底面には別々に外孔を設けて、かつ蒸気孔を内孔と外孔とともに同軸に位置させ、また、ケースには蒸気室に対応する送気孔と緩衝室に対応する抽気孔とを設ける。ステップb)は、ケースを真空または低圧環境に配置して液体室と蒸気室と緩衝室の温度を同じ温度に制御する。ステップc)は、送気孔により蒸気室に蒸気を注入し、かつ蒸気室内の蒸気圧力と液体室の同じ温度の飽和蒸気圧とを一致させるように制御することで、液体室内の液体を蒸気孔から揮発させることを抑制し、即ち、液体室内の液体を減少させずに定量に維持すると同時に蒸気室内の蒸気を内孔から緩衝室へ徐々に拡散させる。ステップd)は、所定の速度で抽気孔から緩衝室の気体を抽出することで、内孔から緩衝室へ拡散した蒸気を外孔からケースの外部へ拡散させないように抽出する。これにより、真空または低圧環境下で液体室(液体環境)を提供し、電子ビーム、イオンビーム、原子ビーム、中性子ビーム、光束またはX線及び干渉性の高い光束などを外孔、内孔及び蒸気孔から透過させることで、液体室内の流体試料の観察または分析を進行させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の技術特徴を以下の四つの実施例と図面に基づいて説明する。まず、図面の説明は下記の通りである。
図1は、本発明の第一実施例の外観を示す斜視図である。
【0013】
図2は、本発明の第一実施例を示す断面図である。
図3は、本発明の第一実施例の操作状態を示す模式図である。
図4は、本発明の第二実施例を示す断面図である。
【0014】
図5は、本発明の第二実施例を示すもう一つの断面図である。
図6は、本発明の第二実施例を示すまたもう一つの断面図である。
図7は、図6の立体状態を示す斜視図である。
【0015】
図8は、本発明の第三実施例を示す断面図である。
図9は、図8の一部分を拡大した図である。
図10は、本発明の第四実施例を示す断面図である。
【0016】
図11は、図10の一部分を拡大した図である。
図12は、本発明の第四実施例の部分的なユニットの液体ボックスを示す断面図である。
【0017】
図1から図3に示すように、本発明の第一実施例による真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法は、次のステップを含む。
ステップa)は、ケース11を用意し、図1と図2に示すように、ケース11の内部を複数の隔離板12により分割して液体室14を形成する。液体室14は、高さが30um以下で、内部が水または液体試料により充填される。続いて、液体室14外部の上下方に別々に蒸気室16を形成し、かつ上方の蒸気室16の上方に緩衝室18を形成し、下方の蒸気室16の下方にも緩衝室18を形成し、また、液体室14の上下方の隔離板12に別々に蒸気孔141を設け、上方の蒸気室16の上方の隔離板12及び下方の蒸気室16の下方の隔離板12に内孔161を設ける。この二つの内孔161は、二つの蒸気孔141の上方と下方に位置付けられる。続いて、ケース11の頂面と底面に別々に外孔111を設け、蒸気孔141を内孔161と外孔111とともに同軸に位置させる。本実施例では、蒸気孔141の直径は5um−100umで、内孔161の直径は10um−200umで、外孔111の直径は20um−800umである。続いて、ケース11に二つの蒸気室16に対応する二つの送気孔162と二つの緩衝室18に対応する二つの抽気孔182とを設ける。
【0018】
ステップb)は、図3に示すように、ケース11を真空または低圧環境(例えば、電子顕微鏡の試料槽中の真空環境)に配置して、液体室14と二つの蒸気室16と二つの緩衝室18の温度を同じ温度に制御する。本実施例では、これらの温度を37℃に制御する。
【0019】
ステップc)は、二つの送気孔162により二つの蒸気室16に蒸気を注入し、蒸気室内に注入される蒸気温度を二つの蒸気室16の温度に等しい温度またはそれ以下の温度に制御することで、注入される蒸気を冷却させて蒸気室16内において冷却させることを抑制し、また、二つの蒸気室16内の蒸気圧と液体室の同じ温度(37℃)時の飽和蒸気圧とを一致させるように制御することで、二つの蒸気室16の蒸気分圧が温度(37℃)下で飽和蒸気圧47トル(torr)に達していないうちに液体室14の水が急速に揮発してしまうことを抑制し、即ち、液体室14内の水を減少させずに定量に維持すると同時に二つの蒸気室16内の蒸気を内孔161から二つの緩衝室18へ徐々に拡散させる。
【0020】
ステップd)は、所定の速度で二つの抽気孔182から二つの緩衝室18の気体を抽出し、緩衝室18に対する抽気速度を80リットル/秒(L/sec)またはそれ以上に制御することで、内孔161から緩衝室18へ拡散した蒸気を外孔111からケース11の外部へ拡散させないように抽出する。また、液体室14内の液体の厚さは極めて薄い(30um以下)ため、その重量を無視してもよい。したがって、液体室14内の極めて薄い水層は、表面張力の作用を受けて液体室14内から流出しないように保持される。これにより、液体室14内の水を減少させずに定量に保持することが可能となる。
【0021】
前述の方法により、液体室14内の水を減少させることなく、真空または低圧環境下で液体を操作する効果を奏し、かつ電子顕微鏡の電子ビームなどを外孔111と内孔161と蒸気孔141から透過させることで、液体室14内の流体試料の観察を進行させることが可能となる。また、液体室14内に置かれる試料(図中未表示)が生物フィルムである場合、試料を液体の環境において電子顕微鏡による検査及び観察を進行させることが可能である。
【0022】
第一実施例では、蒸気室16に注入される気体は特定蒸気と特定気体(例えば、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)、不活性気体または前記気体の混合物)の混合物でもよい。特定蒸気の蒸気圧力により液体室14内の特定液体の蒸気の蒸発量を抑制することが可能である。また、蒸気室16内において特定蒸気を冷却させて凝結させることを防止するために、特定気体を予め加熱して、その温度を特定蒸気の温度に等しいか、それより高い温度に制御する必要がある。
【0023】
図4に示すように、本発明の第二実施例による真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置20は、次のものを備える。
ケース21は内部に複数の隔離板22を有することで、ケース21内部が分割されて液体室24が形成され、液体室24は内部が液体試料により充填され、液体室24の外部の上方と下方に蒸気室26を二つ有し、二つの蒸気室26は外部の上下方に別々に緩衝室28を少なくとも一つ有し、また、液体室24は頂面と底面の隔離板22に別々に蒸気孔241(直径は5um−100umの間)を有し、また、二つの蒸気室26と緩衝室28との間のぞれぞれの隔離板22には内孔261(直径は10um−200umの間)を有し、二つの内孔261は二つの蒸気孔241の上方と下方に位置し、また、ケース21は頂面と底面に外孔211(直径は20um−800umの間)を有する。蒸気孔241と内孔261と外孔211とは同軸であり、二つの送気孔262は二つの蒸気室26に対応し、二つの抽気孔282は別々に緩衝室28に対応し、外孔211の直径は内孔261の直径より大きい。ケース21全体の高さは、1センチ(cm)以内である。
【0024】
第二実施例を操作する場合、その操作方法は前述の実施例により掲示される方法により操作することであるため、真空または低圧環境下で液体を操作し、試料を観察する目的を達成し、かつ電子顕微鏡に観察効果を提供することが可能である。
【0025】
図5に示すように、本発明の第二実施例では、二つの緩衝室28’の外部の上下方に外緩衝室287’を増やして、二つの緩衝室28’と二つの外緩衝室287’の間の隔離板22’に別々に緩衝孔281’(直径は10um−400umの間)を形成し、外孔211’、緩衝孔281’、内孔261’及び蒸気孔241’を同軸に位置させることが可能である。緩衝孔281’の直径は、内孔261’と外孔211’の直径の間である。上下に緩衝室287’を増やすことで、圧力漸減の効果を果たし、各緩衝室28’と緩衝室287’の抽気速度の操作に柔軟性を与え、二つの蒸気室26’内の気圧を常圧に達するまで制御することが可能である。緩衝室287’を増設した上で二つの蒸気室26’に注入する気体は、総圧力が大気圧の蒸気と特定気体(例えば、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)または不活性気体)の混合物で、液体室内の水分を揮発させることを抑制する。また、二つの蒸気室26’に注入する水蒸気圧を47(torr)トル(37℃水の飽和蒸気圧)に制御する必要がある。通過する特定気体は、温度が37℃で、かつ圧力が710トル前後の窒素またはヘリウムなどの気体でもよい。また、緩衝室28’と外緩衝室287’に対する抽気速度を160リットル/秒(L/sec)以上と240リットル/秒(L/sec)以上に制御することで、蒸気室26’または緩衝室28’から外緩衝室287’へ拡散した気体と蒸気を外孔211’からケース21’の外へ拡散させないように抽出すると同時に蒸気室26’内部の気圧を常圧に達するまで制御することが可能である。
【0026】
図6と図7に示すように、本発明の第二実施例では、二つの緩衝室内に斜面隔離板29を配置することで、ケース21”の高さを増加させることなく、緩衝室28”の数を増やし、斜面隔離板29により緩衝室28”の本来の空間を分割して二つの副緩衝室288”と副緩衝室289”を形成し、各斜面隔離板29に内孔261”と外孔211”と蒸気孔241”とともに同軸に位置する緩衝孔296を有し、副緩衝室288”をケース21”上の二つの抽気孔282”に対応させ、副緩衝室289”をケース21”上の他の二つの抽気孔283”に対応させることで、気体を抽出し、また、外部の副緩衝室289”の抽気速度を内部の副緩衝室288”の抽気速度以上に維持することで、抽気回流の現象を防止することも可能である。操作方法は、前述の実施例により掲示される方法とほぼ同じである。多層の緩衝室の設計は、各緩衝室の抽気速度の操作に柔軟性を与えることで、圧力漸減の効果及び本実施例中の図5により掲示される効果を奏する長所がある。
【0027】
図8と図9に示すように、本発明の第三実施例による真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置30は、前述の実施例により掲示される装置とほぼ同じであるが、違うことは、さらに内部が中空を呈する試料治具41を含み、試料治具41の末端に箱体42を有し、箱体42が接着剤45により試料治具41に固定され、箱体42の一側に試料治具41内部と繋がる開口部421を有し、箱体42の内部に蒸気室36を有し、試料治具41が箱体42の周囲において箱体42を固定する縦壁46を有し、送気孔362が試料治具41の上に形成されて蒸気室36と繋がり、蒸気孔36の内部に若干の隔離板32により形成される液体室34を有し、液体室34の頂面と底面の隔離板32に別々に蒸気孔341を有し、蒸気孔341の厚さが周縁から中央へ漸減し、また、箱体42の頂面と底面に別々に内孔361を有し、また、ケース31が隔離板32により分割されて試料治具41の外部において緩衝室38を形成し、緩衝室38の上下方に別々に上部外緩衝室386と下部外緩衝室388とを有し、緩衝室38が二つの抽気孔383に対応し、上部外緩衝室386と下部外緩衝室388が抽気孔382に対応し、上部外緩衝室386と下部外緩衝室388の抽気速度が内部の緩衝室38の抽気速度以上に維持され、抽気孔382と抽気孔383がケース31に配置され、緩衝室38と上部外緩衝室386及び下部外緩衝室388との間の隔離板32に別々に緩衝孔381を有し、外孔311と緩衝孔381と内孔361と蒸気孔342とが同軸に位置付けられることである。
【0028】
第三実施例の操作方法は、前述の第二実施例に掲示される方法と同じであるため、詳しい説明を省く。第三実施例は、試料治具41の中に液体室34と蒸気室36とを形成し、試料治具41の外に二重の緩衝室38、緩衝室388及び緩衝室389(即ち、緩衝室、それの上下方に位置する上部外緩衝室及び下部外緩衝室)を形成し、緩衝室38、緩衝室388及び緩衝室389の温度と試料治具41内の壁の温度を送気孔362から注入される気体と蒸気の温度に等しくまたはそれ以上に設定することで、操作過程で注入された蒸気を冷却させて凝結させることを防止することである。本実施例では、多層の緩衝室を設置することで、圧力漸減の効果を果たすことが可能である。また、前述の第二実施例のように図5により掲示される構造と効果により、蒸気室36内の気圧を常圧に達するまで制御することが可能である。また、第三実施例では、図6により掲示さる斜面隔離板の設置方法のように上部外緩衝室386と下部外緩衝室388内に斜面隔離板を増設することで、ケース31の高さを増加させることなく、緩衝室の数を増やし、圧力緩衝の効果を増加させることが可能である。これにより、蒸気室36内の気圧を大気圧以上に達するまで制御することが可能となる。
【0029】
図10から図12に示すように、本発明の第四実施例による真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置50は、次のものを備える。
ケース51は内部に複数の隔離板52を有することで、ケース51の内部が分割されて蒸気室56を形成され、蒸気室56の外部の上下方に緩衝室58を有し、蒸気室56と緩衝室58との間のぞれぞれの隔離板52に内孔561を有し、また、ケース51の頂面と底面に別々に外孔511を有し、また、ケース51は蒸気室56と繋がる送気孔562と別々に緩衝室58に対応する二つの抽気孔582とを有する。また、ケース51は一側に扁平部512を有し、内孔561と外孔511は扁平部512に位置付けられる。
【0030】
試料治具61は、設置台62を有し、設置台62が開口部64を有し、かつ設置台62の周囲に縦壁66を有し、ケース51は蒸気室56と繋がる設置孔59を有し、試料治具61は設置孔59を貫通して蒸気室56内に置かれ、内孔561の同軸軸心を開口部64から通過させる。
【0031】
液体ボックス71は内部が液体試料により充填され、かつ液体ボックス71は設置台62の上に置かれ、かつ縦壁66により囲まれ、液体ボックス71と設置台62は接着剤72により固定され、蒸気室56内の中段に位置付けられ、また、液体ボックス71は頂面と底面に別々に蒸気孔74を有し、蒸気孔74の厚さは周縁から中央へ漸減し、かつ蒸気孔74と内孔561と外孔511とは同軸である。
【0032】
第四実施例の操作方法は、前述の第一実施例により掲示されるため、詳しい説明を省く。第四実施例では、図6により掲示さる斜面隔離板の設置方法のように斜面隔離板を増設することで、ケース51の高さを増加させることなく、緩衝室58の数を増やし、また、多層の緩衝室を設置することで、圧力漸減の効果を果たすことが可能である。これにより、圧力緩衝の効果を増大させ、蒸気室56内の気圧を常圧に達するまで制御することが可能となる。つまり、真空または低圧環境下で常圧環境に存在している液体試料を操作する目的を達成することが可能となる。本実施例の操作方法は、前述の第二実施例により掲示されるものとほぼ同じであるため、詳しい説明を省く。
【0033】
上述により、本発明の長所は、下記の通りである。
一、真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする環境を提供し、かつ電子顕微鏡による観察を進行させることが可能であるため、いまだかつてない独創性を有し、医学、生物、物理、化学、材料など分野の進歩を促進する。
【0034】
二、電子顕微鏡の本来の設計を変更することなく、液体観察の環境を提供することが可能である。また、本発明は、電子顕微鏡の試料槽内において直接操作することが可能であるため、操作と組み立てが簡単である特性を有する。
【0035】
三、従来の技術は、電子ビームを気体から透過させる極片の間の距離が大きい場合、電子ビームがたくさんの気体分子と衝突しやすくなり、電子の多重散乱を深刻化させる問題がある。これに対し、本発明は、極めて薄い緩衝室、蒸気室及び液体室を採用することで、効率的に電子の多重散乱の問題を防止することが可能である。
【0036】
四、従来の技術は、気体室の蒸気分圧が飽和蒸気圧に達していないうちに試料槽の液体が急速に揮発してしまうため、試料槽に液体を持続的に補充することが必要である。すると、観察待ちの液体試料の厚さを制御し難くなり、試料の流動が頻発し、新しい試料と古い試料の混合が均質でない問題が発生する。したがって、観察の信頼性に影響する。これに対し、本発明は、蒸気室の蒸気圧を飽和蒸気圧に達するように制御することで、水分を補充することなく、液体室内の水分揮発を抑制し、真空状態下で液体環境を保持し、操作、観察及び分析を可能にする技術を提供することが可能である。
【0037】
本発明により掲示される蒸気孔と内孔と緩衝孔と外孔の直径、環境温度及び水蒸気の圧力などは例示的なものに過ぎないため、本発明の範囲を限定するものではない。また他の孔の直径及び気体と液体の圧力または抽気速度を修正することは、本発明の簡単な変化であるため、本発明の請求範囲に含まれるべきである。
【0038】
また、本発明は、電子顕微鏡内の試料槽の環境(電子ビームを採用する環境)に適用するだけでなく、真空または低気圧環境下でイオンビーム、原子ビーム、中性子ビーム、X線または干渉性の高い光束(beams)などを採用して観察または探知を進行させる方法に適用する。同様に、これも本発明の請求範囲に含まれるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第一実施例による真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法及び装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施例による真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法及び装置を示す断面図である。
【図3】本発明の第一実施例による真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法及び装置の操作状態を示す模式図である。
【図4】本発明の第二実施例による真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法及び装置を示す断面図である。
【図5】本発明の第二実施例による真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法及び装置を示すもう一つの断面図である。
【図6】本発明の第二実施例による真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法及び装置を示すまたもう一つの断面図である。
【図7】図6の立体状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の第三実施例による真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法及び装置を示す断面図である。
【図9】図8の一部分を拡大した図である。
【図10】本発明の第四実施例による真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法及び装置を示す断面図である。
【図11】図10の一部分を拡大した図である。
【図12】本発明の第四実施例による真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法及び装置の部分的なユニットの液体ボックスを示す断面図である。
【図13】周知の電子顕微鏡の試料槽の内部を示す模式図である。
【図14】周知の技術により環境槽が改装された電子顕微鏡に設けられている状態を示す模式図である。
【図15】周知の環境槽を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
11 ケース、12 隔離板、14 液体室、16 蒸気室、18 緩衝室、20 真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置、21 ケース、21’ ケース、21” ケース、22 隔離板、22’ 隔離板、24 液体室、26 蒸気室、26’ 蒸気室、28 緩衝室、28’ 緩衝室、28” 緩衝室、29 斜面隔離板、30 真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置、31 ケース、32 隔離板、34 液体室、36 蒸気室、38 緩衝室、41 試料治具、42 箱体、45 接着剤、46 縦壁、50 真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置、51 ケース、52 隔離板、56 蒸気室、58 緩衝室、59 設置孔、61 試料治具、62 設置台、64 開口部、66 縦壁、71 液体ボックス、72 接着剤、74 蒸気孔、111 外孔、141 蒸気孔、161 内孔、162 送気孔、182 抽気孔、211 外孔、211’ 外孔、211” 外孔、241 蒸気孔、241’ 蒸気孔、241” 蒸気孔、261 内孔、261’ 内孔、261” 内孔、262 送気孔、281’ 緩衝孔、282 抽気孔、282” 抽気孔、283” 抽気孔、287’ 外緩衝室、288” 副緩衝室、289” 副緩衝室、296 緩衝孔、311 外孔、341 蒸気孔、361 内孔、362 送気孔、381 緩衝孔、382 送気孔、383 送気孔、386 上部外緩衝室、388 下部外緩衝室、421 開口部、511 外孔、512 扁平部、561 内孔、562 送気孔、582 抽気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースを用意し、ケースの内部を複数の隔離板により分割して液体室を形成し、液体室の外部に少なくとも一つの蒸気室を形成し、蒸気室の外部に少なくとも一つの緩衝室を形成し、液体室は内部が液体試料により充填され、液体室の頂面と底面の隔離板には別々に蒸気孔を設け、蒸気室と緩衝室との間の隔離板には蒸気孔の上方と下方に位置する二つの内孔を設け、ケースの頂面と底面には別々に外孔を設けて、蒸気孔を内孔と外孔とともに同軸に位置させ、ケースには蒸気室に対応する送気孔と緩衝室に対応する抽気孔とを設けるステップa)と、
ケースを真空または低圧環境に配置して液体室と蒸気室と緩衝室の温度を同じ温度に制御するステップb)と、
送気孔により蒸気室に蒸気を注入し、蒸気室内の蒸気圧力と液体室の同じ温度の飽和蒸気圧とを一致させるように制御することで、液体室内の液体を蒸気孔から揮発させることを抑制し、即ち、液体室内の液体を減少させずに定量に維持すると同時に蒸気室内の蒸気を内孔から緩衝室へ徐々に拡散させるステップc)と、
所定の速度で抽気孔から緩衝室の気体を抽出することで、内孔から緩衝室へ拡散した蒸気を外孔からケースの外部へ拡散させないように抽出するステップd)と、
を含むことにより、真空または低圧環境下で液体を操作する効果を達成することが可能であることを特徴とする真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法。
【請求項2】
ステップc)では、蒸気室内に注入される蒸気温度は蒸気室の温度に等しいか、それより低いことを特徴とする請求項1に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法。
【請求項3】
ステップc)では、蒸気室に注入される蒸気は特定気体、蒸気または蒸気と特定気体の混合物のいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法。
【請求項4】
蒸気の温度は、特定気体の温度に等しいか、それより低いことを特徴とする請求項3に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法。
【請求項5】
特定気体は、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)、不活性気体または前記気体の混合物のいずれか一つであることを特徴とする請求項3に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする方法。
【請求項6】
ケースと、複数の隔離板によりケースの内部を分割して形成される液体室と、液体室の外部に形成される少なくとも一つの蒸気室と、蒸気室の外部に形成される少なくとも一つの緩衝室と、液体室の頂面と底面との間の隔離板に位置付けられる蒸気孔と、蒸気室と緩衝室との間の隔離板に形成されて蒸気孔の上方と下方に位置付けられる二つの内孔と、ケースの頂面と底面に位置付けられる外孔とを備え、液体室は内部が液体試料により充填され、蒸気孔と内孔と外孔とは同軸に位置し、ケースは蒸気室に対応する送気孔と緩衝室に対応する抽気孔とを有することを特徴とする真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置。
【請求項7】
緩衝室内の二つの内孔の上方と下方に斜面隔離板を有することで、緩衝室の内部を分割して二つの副緩衝室が形成され、斜面隔離板は内孔と外孔とともに同軸に位置する緩衝孔を有し、副緩衝室はケース上の抽気孔に対応することを特徴とする請求項6に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置。
【請求項8】
二つの副緩衝室は、二つの外孔と繋がり、緩衝室は二つの緩衝孔により二つの副緩衝室と繋がり、二つの副緩衝室の抽気速度は緩衝室の抽気速度より速いことを特徴とする請求項6に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置。
【請求項9】
蒸気室に注入される気体は、蒸気室内の気圧を760トル(torr)以上に保持し、内側に位置する緩衝室に対する抽気速度は160リットル/秒(L/sec)以上で、二つの副緩衝室に対する抽気速度は240リットル/秒(L/sec)以上であることを特徴とする請求項7に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置。
【請求項10】
緩衝孔の直径は、10um−400umであり、緩衝孔の直径は内孔と外孔の直径の間であることを特徴とする請求項7に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置。
【請求項11】
さらに内部が中空を呈する試料治具を含み、試料治具は末端に箱体を有し、箱体は一側に試料治具と連接する開口部を有し、内部に蒸気室を有し、試料治具は蒸気室と繋がる送気孔を有し、箱体は内部に若干の隔離板により形成される液体室を有し、頂面と底面に別々に内孔を有し、ケースは隔離板により試料治具の外部において緩衝室を形成し、緩衝室と上部外緩衝室と下部外緩衝室とは別々に抽気孔に対応し、緩衝室は上方と下方に別々に上部外緩衝室と下部外緩衝室を有し、ケースは抽気孔を複数有し、緩衝室と上部外緩衝室及び下部外緩衝室との間の隔離板には別々に緩衝孔を有し、外孔と緩衝孔と内孔と蒸気孔とは同軸であることを特徴とする請求項6に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置。
【請求項12】
蒸気孔の厚さは、周縁から中央へ漸減することを特徴とする請求項6に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置。
【請求項13】
外孔の直径は、内孔の直径より大きいことを特徴とする請求項6に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置。
【請求項14】
蒸気孔の直径は、5um−100umで、内孔の直径は10um−200umで、外孔の直径は20um−800umであることを特徴とする請求項6に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置。
【請求項15】
液体室内の液体試料の厚さは、30um以下であることを特徴とする請求項6に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置。
【請求項16】
ケース全体の高さは、1センチ(cm)以下であることを特徴とする請求項6に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置。
【請求項17】
ケースは、内部が複数の隔離板により分割されて蒸気室が形成され、蒸気室の外部に少なくとも一つの外緩衝室を有し、蒸気室の頂面と底面の隔離板に別々に内孔を有し、ケースの頂面と底面に別々に外孔を有し、ケースは蒸気室と繋がる送気孔と緩衝室に対応する抽気孔とを有し、
試料治具は設置台を有し、設置台が開口部を有し、ケースは蒸気室と繋がる設置孔を有し、試料治具は設置孔を貫通して蒸気室内に置かれ、内孔の同軸軸心を開口部から通過させ、
液体ボックスは設置台に置かれ、液体ボックスの内部が液体試料により充填され、液体ボックスは頂面と底面に別々に蒸気孔を有し、蒸気孔が内孔と外孔とともに同軸に位置することを特徴とする真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置。
【請求項18】
蒸気孔の厚さは、周縁から中央へ漸減することを特徴とする請求項17に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置。
【請求項19】
ケースは、一側に扁平部を有し、内孔と外孔は扁平部に位置付けられることを特徴とする請求項17に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置。
【請求項20】
設置台は、周囲において液体ボックスを囲む縦壁を有することを特徴とする請求項17に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置。
【請求項21】
液体ボックスと設置台との間には、接着剤を有することを特徴とする請求項17に記載の真空または低圧環境下で液体の操作及び観察を可能にする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−313138(P2006−313138A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162473(P2005−162473)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(505206853)
【Fターム(参考)】