説明

真空ポンプ及び真空ポンプユニット

【課題】簡単な構成で軸受部に液分の混入(浸入)がなく、軸受動作不良による故障が発生することのない真空ポンプを提供する。
【解決手段】平行な2つの回転軸32にそれぞれ取付けた一対のポンプロータ11と、該一対のポンプロータを内部に収納するポンプケーシング12とを具備するポンプ部Pと、回転軸32を回転駆動するモータ部Mとを備え、一対のポンプロータ11とポンプケーシング12との間に閉じ込められた気体を移送して排気する真空ポンプにおいて、回転軸32は、モータ部Mのモータステータ30を挟んだ両側に配置した軸受34,35のみ、またはモータ部とポンプ部の間に配置した2つの軸受のみで回転自在に支承されており、ポンプケーシング12のモータ側端部に吸気口15が、反モータ部側端部に排気口16がそれぞれ設けられて、気体がモータ部Mから離れる方向に移送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプケーシング内に一対のポンプロータを備えたポンプ部と、該一対のポンプロータを回転駆動するモータ部とを備え、吸気口から吸込んだ気体を一対のポンプロータとポンプケーシングの間に閉じ込めつつ移送して排気口から排気する構成の真空ポンプ、及び2台の真空ポンプを直列に接続して真空排気性能を高めた真空ポンプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小容量、且つオイルフリーで真空が得られる真空ポンプ、及び2台の真空ポンプを直列に接続して真空排気性能を高めた真空ポンプユニットが種々提案されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
図1(a)は、従来のこの種の真空ポンプの構成例を示す平断面図で、図1(b)は、該真空ポンプの側断面図である。図1に示すように、真空ポンプ100は、ポンプ部Pと該ポンプ部Pを駆動するモータ部Mを備えており、ポンプ部Pとモータ部Mは、一対の共通の回転軸101を有している。ポンプ部Pは、一対の回転軸101の外周面にそれぞれ取付けた、この例ではスクリューロータからなるポンプロータ103と、該一対のポンプロータ103を収納するポンプケーシング102とを具備している。モータ部Mは、内部に一対のモータステータ112を収容配置したモータケーシング104と、一対の回転軸101の外周面にそれぞれ取付けてモータステータ112の内部に配置した一対のモータロータ113を具備している。各回転軸101は、ポンプロータ103を挟んだ両側に位置してポンプケーシング102に配置された軸受107,108で回転自在に支承されている。
【0004】
モータ部Mは、例えば回転軸101を同期反回転させる2軸同期反転駆動モータであり、該モータ部Mを駆動して回転軸101を回転させることにより、ポンプ部Pの一対のポンプロータ103は互いに同期反回転する。また、ポンプケーシング102には、吸気口105及び排気口106が設けられている。これにより、ポンプロータ103の同期反回転により、吸気口105からポンプケーシング102の内部に吸込まれた気体は、一対のポンプロータ103とポンプケーシング102の間に閉じ込められ、排気口106に向かって軸方向に移送され、該排気口106から排気される。
【0005】
図2は、図1に示す真空ポンプ100と同じ構成の2台の真空ポンプ100a,100bを、一方をブースタポンプ(BP)100aとして、他方をメインポンプ(MP)100bとして使用した真空ポンプユニットを示す。
【0006】
図2に示すように、真空ポンプユニットは、アルミ材又はアルミ合金等の高熱伝導性材料からなるポンプ取付け部材110に、図1に示す真空ポンプ100と同じ構成のブースタポンプ100aとメインポンプ100bを取付けた構成である。ブースタポンプ100aは、ポンプ取付け部材110の上面に、回転軸101が水平方向に延びる横置きに配置され、メインポンプ100bは、ポンプ取付け部材110の側面に、モータ部Mが上方に位置し回転軸101が鉛直方向に延びる縦置きに配置されている。ブースタポンプ100aの排気口106とメインポンプ100bの吸気口105は、ポンプ取付け部材110に形成した流路111で接続され、ブースタポンプ100aとメインポンプ100bは直列に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−231935号公報
【特許文献2】特開2010−127157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような、小容量(排気量数十L/M〜数百L/M)で、オイルフリーの真空ポンプは、医療機器や食品機械等にも幅広く使用される。このため、排気する対象流体には、空気だけでなく、大気圧に圧縮することによって容易に液化する水蒸気や溶剤蒸気の液分を含む気体も含まれる。このような水蒸気や溶剤を含む気体を排気すると、真空ポンプ100のポンプ部Pの排気口106側に設置した軸受108の内部に液化した水蒸気や溶剤が入り込み、軸受108の潤滑材を劣化させて潤滑不良を引き起こし、軸受108の動作不良により真空ポンプ100が故障することがある。
【0009】
また、図2に示す真空ポンプユニットでは、特に回転軸101が鉛直方向に延びる縦置きに配置されるメインポンプ100bの排気口106側に設けた軸受108に水分等の液分が混入(浸入)し、軸受108が破損する恐れがある。
【0010】
上記課題を回避するために、軸受部と排気流路との間に狭いクリアランス部からなるシール機構を設けて軸受部への水分等の混入を防ぐことが行われている。しかしながら、軸受部と排気流路との間にシール機構を設けると、構造が複雑となるばかりではなく、シール機構は、非接触シールであるために、液分の軸受部への混入(浸入)を完全に防止することができず、軸受部への液分防止対策としては不十分である。
【0011】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡単な構成で軸受部に液分の混入(浸入)がなく、軸受動作不良による故障が発生することのない真空ポンプ及び該真空ポンプを備えた真空ポンプユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の真空ポンプは、平行な2つの回転軸にそれぞれ取付けた一対のポンプロータと、該一対のポンプロータを内部に収納するポンプケーシングとを具備するポンプ部と、前記回転軸を回転駆動するモータ部とを備え、前記一対のポンプロータと前記ポンプケーシングとの間に閉じ込められた気体を移送して排気する真空ポンプにおいて、前記回転軸は、前記モータ部のモータステータを挟んだ両側に配置した軸受のみ、または前記モータ部と前記ポンプ部の間に配置した2つの軸受のみで回転自在に支承されており、前記ポンプケーシングの前記モータ側端部に吸気口が、反モータ部側端部に排気口がそれぞれ設けられて、前記気体が前記モータ部から離れる方向に移送されるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
前記真空ポンプにおいて、前記モータ部は、前記回転軸を同期反回転させる2軸同期反転駆動モータであることが好ましい。
前記真空ポンプにおいて、前記モータ部が上方に位置し前記回転軸が鉛直方向に延びる縦置きに設置することが好ましい。
【0014】
前記真空ポンプにおいて、前記ポンプケーシングの反モータ部側端部を閉塞する端壁部にドレン口を設けることが好ましい。
前記真空ポンプにおいて、前記ポンプケーシングと前記ポンプロータの前記モータ側端面との間をポンプロータの回転による遠心力でシールするシール構造を設けることが好ましい。
【0015】
本発明の真空ポンプユニットは、真空ポンプからなるブースタポンプと真空ポンプからなるメインポンプを直列に接続した真空ポンプユニットにおいて、前記メインポンプとして、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の真空ポンプを使用し、該メインポンプを前記モータ部が上方に位置し前記回転軸が鉛直方向に延びる縦置きに配置したことを特徴とする。
【0016】
前記真空ポンプユニットにおいて、前記ブースタポンプとして、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の真空ポンプを使用し、該ブースタポンプを前記モータ部が上方に位置し前記回転軸が鉛直方向に延びる縦置きに配置するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、真空ポンプのポンプ部の排気口側に軸受を設置することなく、従って、真空ポンプのポンプ部の排気口側に設置される軸受の内部に液化した水蒸気や溶剤の液分が入り込むといった従来の問題点を原理上完全に防止しつつ、モータ部のモータステータを挟んだ両側に配置した軸受のみで回転軸を回転自在に支承することができる。特に、軸受にグリース軸受を用い、モータ部にギアレスモータである2軸同期反転駆動モータを用いることにより、真空ポンプの設置方向に制約を無くして、モータ部が上方に位置し回転軸が鉛直方向に延びる縦置きに設置することができ、これにより、ロータダイナミクス上も安定させ、しかも、液化した液体を重力の利用により、ポンプケーシング内の液体を容易に外部に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は、従来の真空ポンプの構成例を示す平断面図で、(b)は、該真空ポンプの側断面図である。
【図2】従来の真空ポンプユニットの構成例を示す側断面図である。
【図3】(a)は、本発明の実施形態に係る真空ポンプの構成例を示す平断面図で、(b)は、該真空ポンプの側断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る真空ポンプのモータ部の構成例を示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る真空ポンプの構成例を示す平断面図である。
【図6】本発明の実施形態の係る真空ポンプユニットの構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る他の真空ポンプユニットの構成例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る更に他の真空ポンプユニットの構成例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る更に他の真空ポンプユニットの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願発明の実施形態を図3乃至図9に基づいて説明する。なお、図3乃至図9において、同一または相当部材には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0020】
図3(a)は、本発明の実施形態に係る真空ポンプの構成例を示す平断面図で、図3(b)は、該真空ポンプの側断面図である。図3に示すように、真空ポンプ10は、ポンプ部Pと該ポンプ部Pを駆動するモータ部Mとを備えている。ポンプ部Pは、ポンプケーシング12内に、この例ではスクリューロータからなる一対のポンプロータ11を収納した構成である。また、モータ部Mは、内部に一対のモータステータ30を収容配置したモータケーシング33を備え、該モータステータ30内にそれぞれに回転自在に配置された一対のモータロータ31を備えた構成である。モータ部Mのモータロータ31は、回転軸32の外周面にそれぞれ固定されている。ポンプロータ11は、回転軸32のモータ部M側の端部に、固定ボルト13を介して固定されており、これにより、回転軸32と一体に回転するようになっている。モータ部Mは、回転軸32を同期反回転させる2軸同期反転駆動モータ(後に詳述する)である。
【0021】
ポンプケーシング12には、モータ部M側端部に位置して吸気口15が、モータ部Mの反対側端部に位置して排気口16がそれぞれ設けられている。これにより、モータ部Mを起動して回転軸32を回転させ、一対のポンプロータ11を同期反回転させることにより、図3(b)に矢印Aに示すように、気体が吸気口15からポンプケーシング12内に吸込まれる。この吸込まれた気体は、一対のポンプロータ11とポンプケーシング12との間に閉じ込められ、排気口16側に向かって移送され、矢印Bに示すように、排気口16から排気される。
【0022】
ポンプケーシング12のモータ部Mの反対側端部を閉塞する端壁部には、ドレン孔17が形成されている。真空ポンプ10は、例えば図3に示すように、モータ部Mが上方に位置し回転軸32が鉛直方向に延びる縦置きにして使用される。このように、真空ポンプ10を縦置きにして使用した場合、ポンプケーシング12内の一対のポンプロータ11の同期反回転によって圧縮されて液化する水蒸気や溶剤の液分は、その重力により、矢印Cに示すように、ドレン孔17から外部に排出される。なお、ドレン孔17の周辺のポンプケーシング12の端壁部の内壁面は、液化した蒸気や溶剤の液分を該ドレン孔17に導くように凹状に形成されている。
【0023】
上記一対のポンプロータ11は、前述のように、モータ部M側端部において、回転軸32に固定ボルト13で固定されている。一端にポンプロータ11が固定された各モータロータ31の回転軸32は、モータステータ30を挟んだ両側に位置して、モータケーシング33内に配置した軸受34,35のみで回転自在に支承されている。即ち、この例では、ポンプ部Pのポンプケーシング12に軸受は設けられておらず、ポンプロータ11は、回転軸32の回転に伴って、軸受で支承されることなく回転する。従って、例えば図1に示す真空ポンプ100のように、真空ポンプ100のポンプ部Pの排気口106側に設置される軸受108の内部に液化した水蒸気や溶剤の液分が入り込むといった従来の問題点は原理上完全に防止される。しかも、真空ポンプ10が縦置きで使用された場合、各ポンプロータ11は、その上端で回転軸32に固定されて下方に延び、回転軸32は、モータステータ30を挟んだ両側に位置して、モータケーシング33内に配置した軸受34,35で回転自在に支承されているため、ポンプロータ11の回転に伴ってポンプロータ11に振れが生じてしまうことはない。
【0024】
ポンプロータ11のモータ部M側の端面とポンプケーシング12の内面との間には、狭いクリアランスCL1が設定され、このクリアランスCL1によって、ポンプロータ11の回転による遠心力でポンプロータ11のモータ部M側の端面とポンプケーシング12の内面との間をシールするシール構造が構成されている。これにより、ポンプケーシング12内で水蒸気や溶剤蒸気を含む気体を圧縮することにより発生する水分等の液分がモータケーシング33内に設けた軸受35に混入(浸入)するのを抑制できる。このクリアランスCL1の幅は、例えば0.05〜0.5mm、好ましくは、0.1〜0.2mm程度である。なお、クリアランスCL1に面するポンプロータ11とポンプケーシング12の対向面のいずれか一方の面又は双方の面にシール溝を設けてもよい。
【0025】
図4は、ポンプ部Pの2軸1組のポンプロータ11を同期反転させる2軸同期反転駆動モータ、即ちモータ部Mの一構成例を示す図である。図4に示すように、2軸同期反転駆動モータは、同一の構成を有する一対のマグネットロータであるモータロータ31を具備し、ブラシレスDCモータとして2軸1組のポンプロータ11(図3等を参照)を反転駆動すると共に、マグネットカップリングによりポンプロータ11の同期反転を確保している。各モータロータ31は、磁性材の回転軸(ヨーク)32の外周にリング形状のマグネット32aを周設している。この実施形態では、回転軸32の外周上に着磁したマグネット32aが周設され、互いの回転軸32の異磁極が引き合うように対向して、且つクリアランスFを保って配置されている。なお、モータロータ31の極数は、4,6,8・・・などの偶数であり、ここでは6としている。
【0026】
ポンプロータ11は、モータロータ31のマグネットカップリング作用により、同期して反対方向に回転する。これにより、タイミングギアが無くても安定した2軸同期反転が可能な真空ポンプが構成される。また、タイミングギアが無いことは、潤滑油が不要であると共に、2軸の安全な同期機構を含めた非接触回転が可能であり、真空ポンプの高速運転が可能なことを意味している。即ち、タイミングギアを用いた接触式の同期機構では、6000〜7000min−1の回転速度であるが、6極のモータロータ31のマグネットカップリングを用いることで、10000〜30000min−1の同期反転高速回転が安定してできるようになり、これにより真空ポンプを小型にしても、高い到達真空度等の排気性能の向上が達成できる。
【0027】
各モータロータ31の外周面(回転軸32の外周上に設けたマグネット32a)の一部に近接して、鉄心30aと巻線30bから成る三相(U,V,W)のモータステータ30が配置されている。三相のモータステータ30は、モータロータ31どうしがマグネットカップリングする側と回転軸に関して反対側に配置されている。これにより、モータロータ31どうしが互いに吸引するマグネットカップリング力をモータロータ31とモータステータ30の鉄心30aに作用する吸引力でキャンセルすることができる。また、三相のモータステータ磁極は、モータロータ31の磁極数6極に対応し、図4の矢印G、Hに示すように、モータロータ31の4極に磁界をかけるようにしている。三相の巻線30bに所要の矩形パルス状波形の直流電流を供給することで、任意の回転数で2軸1組のポンプロータ11を同期反転駆動することができる。
【0028】
図5は、本発明の他の実施形態に係る真空ポンプ10aを示す。この例の真空ポンプ10aの図3及び図4に示す真空ポンプ10と異なる点は、以下の通りである。つまり、モータ部Mの各モータステータ30は、モータケーシング33の内部に埋設され、各モータロータ31は、回転軸32に取付けたヨーク32bの外周面上にマグネット32aを周設して構成されて、モータケーシング33内のモータステータ30と対向する位置に収容されている。ポンプ部Pの各ポンプロータ11は、モータ部Mから延びる回転軸32の外周面に固定されて、ポンプケーシング12内に収容されている。
【0029】
そして、モータケーシング33とポンプケーシング12との間に軸受ハウジング50,51が配置され、モータ部M側に位置する一方の軸受ハウジング50内に軸受34が収容され、ポンプ部P側に位置する他方の軸受ハウジング51内の軸受押え52で挟まれた位置に軸受35が収容されている。各回転軸32は、これらの軸受34,35の内部を挿通し、軸受34,35のみに支承されて回転する。
【0030】
この例の真空ポンプにおいて、各回転軸32は、モータケーシング33とポンプケーシング12との間に配置した軸受ハウジング50,51内に収容した軸受34,35のみに支承されて回転する。従って、例えば図1に示す真空ポンプ100のように、真空ポンプ100のポンプ部Pの排気口106側に設置される軸受108の内部に液化した水蒸気や溶剤の液分が入り込むといった従来の問題点は原理上完全に防止される。しかも、モータハウジング内に軸受を配置することなく、モータケーシング33とポンプケーシング12との間に配置した軸受ハウジング50,51内に軸受34,35を収容することで、構造の簡素化を図ることができる。軸受35として、軸受のラジアル隙間がない組合せアンギュラ軸受を使用することが好ましく、これにより、ポンプ部のラジアル方向の触れ回りを最小とすることができる。
【0031】
図6は、本発明の実施形態に係る真空ポンプユニットの構成例を示す側断面図である。図6に示すように、この真空ポンプユニットは、共に真空ポンプからなるブースタポンプ(BP)10bとメインポンプ(MP)10cを備えている。この例では、ブースタポンプ10bとして、図3及び図4に示す真空ポンプ10とほぼ同じ構成であるが、ドレン孔17を有さない真空ポンプが使用され、メインポンプ10cとして、図3及び図4に示す真空ポンプ10とほぼ同じ構成の真空ポンプが使用されている。
【0032】
この例では、ブースタポンプ10bのポンプ部Pのポンプケーシング12とモータ部Mのモータケーシング33との間に、軸受35を高温に維持し水蒸気や溶剤の凝縮液化を抑制するため、空間42を設置している。このことはメインポンプ10cにあっても同様である。なお、軸受35を高温に維持し、水蒸気や溶剤蒸気の凝縮液化を抑制するため、空間42に替えて、断熱材或いは断熱材と空間を設けても良い。
【0033】
ブースタポンプ10bは、高熱伝導性材からなるポンプ取付け部材20の上面に、回転軸32が鉛直方向に延びる縦置きに取付けられ、メインポンプ10cは、ポンプ取付け部材20の側面に、モータ部Mが上方に位置し回転軸32が鉛直方向に延びる縦置き取付けられている。ブースタポンプ10bの排気口16とメインホンプ10cの吸気口15は、ポンプ取付け部材20に設けられた流路21で連通され、ブースタポンプ10bとメインホンプ10cは直列に接続されている。また、メインポンプ10cの排気口16は、ポンプ取付け部材20に設けられた流路22で外部に連通している。
【0034】
上記構成の真空ポンプユニットにおいて、ブースタポンプ10bのモータ部Mを起動すると共に、メインポンプ10cのモータ部Mを起動する。これにより、ブースタポンプ10bの一対のポンプロータ11及びメインポンプ10cの一対のポンプロータ11は、互いに同期反回転する。ブースタポンプ10bの一対のポンプロータ11の回転に伴って、矢印Aで示すように、ブースタポンプ10bの吸気口15から気体が吸込まれ、この吸込まれ気体は、一対のポンプロータ11とポンプケーシング12との間に閉じ込められ、排気口16に向かって移送され、排気口16から排気される。この排気は、メインポンプ10cの一対のポンプロータ11に回転に伴って、流路21を通ってメインポンプ10cの吸気口15から吸込まれ、ブースタポンプ10bと同様、排気口16に向かって移送され、矢印Bで示すように、排気口16から流路22を経て外部に排気される。
【0035】
また、メインポンプ10cの一対のポンプロータ11とポンプケーシング12との間に閉じ込められ、圧縮・移送される間に液化した水蒸気や溶剤の液分は、その重力によりポンプケーシング12内をモータ部Mの反対側に下降する。そして、矢印Cに示すように、ポンプケーシング12の端壁部に設けたドレン孔17から外部に排出される。
【0036】
この例によれば、ブースタポンプ10b及びメインポンプ10cの双方において、ポンプ部の排気口側に設置される軸受の内部に液化した水蒸気や溶剤の液分が入り込むといった従来の問題点は原理上完全に防止される。
【0037】
図7は、本発明の他の実施形態に係る真空ポンプユニットの構成例を示す側断面図である。この例の真空ポンプユニットの図6に示す真空ポンプユニット異なる点は、図6に示すブースタポンプ10bの代わりに、図1に示す従来の真空ポンプとほぼ同様な構成のブースタポンプ10dを横置きで使用している点にある。
【0038】
つまり、この例のブースタポンプ10dは、モータ部Mから延びてポンプ部Pに達する一対の回転軸18を有しており、この回転軸18が水平方向に延びる横置きでポンプ取付け部材20の上面に取付けられている。そして、ポンプケーシング12の内部に位置して、各回転軸18にポンプロータ11が固定され、モータケーシング33の内周面に取付けたモータステータ30の内部に位置して、各回転軸18にモータロータ31が固定されている。各回転軸18は、ポンプケーシング12に設けた軸受37,38で回転自在に支承されている。
【0039】
更に、各回転軸18のモータ部Mと反対側に位置する軸受38に近接する位置には、クリアランス設定用板23が取付けられている。このクリアランス設定用板23の端面とポンプケーシング12の内面との間に狭いクリアランスCL2が設定され、このクリアランスCL2によって、クリアランス設定用板23の回転による遠心力でクリアランス設定用板23の端面とポンプケーシング12の内面との間をシールするシール構造が構成されている。これにより、ブースタポンプ10dのポンプケーシング12内に発生した水分等の液分が軸受38に接触するのを抑制できる。
【0040】
なお、この例では、クリアランス設定用板23を別部材として回転軸18に固定しているが、図3に示す例のように、ポンプロータ11を軸方向に伸ばして、ポンプロータ11とポンプケーシング12の内面との間にクリアランスCL2を設定してもよい。狭いクリアランスCL2の内側径の大きさは、軸受38の内輪径と同等程度で、外側径の大きさは、ポンプロータ11の外側径と同等程度であることが望ましい。
【0041】
この例によれば、メインポンプ10cにおいて、ポンプ部の排気口側に設置される軸受の内部に液化した水蒸気や溶剤の液分が入り込むといった従来の問題点は原理上完全に防止される。しかも、ブースタポンプ10dを横置きとすることで、真空ポンプユニットの小型コンパクト化を図ることができる。
【0042】
図8は、本発明の更に他の実施形態に係る真空ポンプユニットの構成例を示す側断面図である。この例の真空ポンプユニットの図7に示す真空ポンプユニットと異なる点は、図7に示すメインポンプ10cの代わりに、ポンプケーシング12の底部(モータ部Mの反対側の壁面)に設けた排気口16に排気配管24を接続したメインポンプ10eを使用している点にある。この排気配管24には、液化した水蒸気や溶剤の液分がその重力で外部に排出できるように、排気配管24から分岐してドレン配管25が設けられている。
【0043】
この例によれば、メインポンプ10eの一対のポンプロータ11とポンプケーシング12との間に閉じ込められ、圧縮・移送されるに液化された水蒸気や溶剤の液分は、その重力により、排気配管24から分岐するドレン配管25を通って外部に排出される。
【0044】
図9は、本発明の更に他の実施形態に係る真空ポンプユニットの構成例を示す側断面図である。この例の真空ポンプユニットの図7に示す真空ポンプユニットと異なる点は、図7に示すブースタポンプ10bの代わりに、ポンプケーシング12のクリアランス設定用板23の近傍位置にパージポート39を設けたブースタポンプ10fを使用し、図7に示すメインポンプ10cの代わりに、ポンプケーシング12にパージポート26を設けたメインポンプ10gを使用している点にある。更にこの例では、ブースタポンプ10fを高温に維持して水蒸気や溶剤蒸気の凝縮液化を抑制するため、ブースタポンプ10fとポンプ取付け部材20との間に断熱部材41と空間部40を介在させている。
【0045】
この例によれば、ブースタポンプ10fのポンプケーシング12の内部に、パージポート39からパージガスPGを供給することにより、凝縮性気体の凝縮を防ぐことができる。凝縮性気体(例えば水蒸気)が大気圧まで圧縮されることにより液化するかどうかは、ガス及び真空ポンプの排気口付近の温度による。即ち、排気口付近の温度が排気して圧縮された気体の露点以下である場合に、水蒸気は凝縮する。このため、水蒸気の凝縮をできるかぎり防ぐために、ポンプケーシング12の内部に、パージポート39からパージガスPGを供給することにより、真空ポンプの負荷増大による排気口付近の温度が上昇する効果、排気ガスに含まれる気体分圧が低減する効果が得られる。
【0046】
また、メインポンプ10gのポンプケーシング12の内部に、パージポート26からパージガスPGを供給することにより、上記と同様、凝縮性気体(例えば水蒸気)の凝縮を抑えることができる。なお、パージポートは、ブースタポンプ10fの排気口16からメインポンプ10gの排気口16までのどの部分に設置してもよい。
【0047】
パージポート39,26から供給されるパージガスPGには、ブースタポンプ10fやメインポンプ10gの性能上の制約より、その導入量に制限がある。例えば、吸気口15からパージガスPGを導入すると、吸気口圧力に多大な影響を与えるため、あまり多くのパージガスPGを供給できない。そこでブースタポンプ10fとメインポンプ10gの間やメインポンプ10gの中間よりパージガスPGを導入することにより、吸気口圧力に影響を与えることなく、パージガスPGの導入量を増やすことが可能となる。しかし、より排気口16に近いところでパージバスPGを導入すると、真空ポンプの負荷はあまりに上昇しないため、真空ポンプの温度上昇に対しては、あまり効果的でない。使用環境に応じて、パージガスPGの導入位置(パージポート39,26の取付け位置)や導入量を最適にすることが望ましい。様々な使用環境で使用され、用途が特定されていない場合は、排気口16に近いメインポンプ10gの中間にてパージガスPGを導入するのが一般的である。
【0048】
以上、本発明の実施形態例を説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造であっても、本願発明の作用効果を奏する以上、本願発明の技術範囲である。
【符号の説明】
【0049】
10,10a 真空ポンプ
10b,10d,10f ブースタポンプ
10c,10e,10g メインポンプ
11 ポンプロータ
12 ポンプケーシング
13 固定ボルト
15 吸気口
16 排気口
17 ドレン孔
18,32 回転軸
20 ポンプ取付け部材
23 クリアランス設定用板
24 排気配管
25 ドレン配管
26,39 パージポート
30 モータステータ
31 モータロータ
33 モータケーシング
34,35,37,38 軸受
40 空間部
41 断熱部材
42 空間
50,51 軸受ハウジング
52 軸受押え

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行な2つの回転軸にそれぞれ取付けた一対のポンプロータと、該一対のポンプロータを内部に収納するポンプケーシングとを具備するポンプ部と、前記回転軸を回転駆動するモータ部とを備え、前記一対のポンプロータと前記ポンプケーシングとの間に閉じ込められた気体を移送して排気する真空ポンプにおいて、
前記回転軸は、前記モータ部のモータステータを挟んだ両側に配置した軸受のみ、または前記モータ部と前記ポンプ部の間に配置した2つの軸受のみで回転自在に支承されており、前記ポンプケーシングの前記モータ側端部に吸気口が、反モータ部側端部に排気口がそれぞれ設けられて、前記気体が前記モータ部から離れる方向に移送されるように構成されていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の真空ポンプにおいて、
前記モータ部は、前記回転軸を同期反回転させる2軸同期反転駆動モータであることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の真空ポンプにおいて、
前記モータ部が上方に位置し前記回転軸が鉛直方向に延びる縦置きに設置したことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の真空ポンプにおいて、
前記ポンプケーシングの反モータ部側端部を閉塞する端壁部にドレン口を設けたことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の真空ポンプにおいて、
前記ポンプケーシングと前記ポンプロータの前記モータ側端面との間をポンプロータの回転による遠心力でシールするシール構造を設けたことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項6】
真空ポンプからなるブースタポンプと真空ポンプからなるメインポンプを直列に接続した真空ポンプユニットにおいて、
前記メインポンプとして、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の真空ポンプを使用し、該メインポンプを前記モータ部が上方に位置し前記回転軸が鉛直方向に延びる縦置きに配置したことを特徴とする真空ポンプユニット。
【請求項7】
請求項6に記載の真空ポンプユニットにおいて、
前記ブースタポンプとして、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の真空ポンプを使用し、該ブースタポンプを前記モータ部が上方に位置し前記回転軸が鉛直方向に延びる縦置きに配置したことを特徴とする真空ポンプユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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