説明

真空ポンプ排出物に関するガス測定による凍結乾燥の監視

凍結乾燥プロセスのパラメーターは、真空ポンプ排出物内の痕跡材料を測定することによって監視される。測定は、音響光学分光法、マルチパスキャビティエンハンスト吸収分光法(CEAS)、及びキャビティリングダウン分光法(CRDS)等の技法を使用して行われる。この技法は、凍結乾燥シェルフの漏れ、凝縮コイルの漏れ、室内の雰囲気からの漏れ、及び残留清浄材料の存在等の問題を診断するために使用することができる。この技法は、2次乾燥プロセスの排出物内の水蒸気の存在を監視するために使用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的に、真空及び低温を使用して製品から水分を除去する凍結乾燥プロセスに関する。より具体的には、本発明は、凍結乾燥操作の実施前、実施中、及び実施後にプロセスパラメーターを監視するという課題に関する。
【背景技術】
【0002】
凍結乾燥は、氷の形態の製品から溶媒、通常は水を除去するプロセスである。本開示では例示的な溶媒として水が使用されるが、アルコール等の他の溶媒も凍結乾燥プロセスで使用され、また、本開示の方法及び装置とともに使用することができる。凍結乾燥プロセスでは、製品が凍結され、真空下でこの氷が昇華し蒸気が凝縮器に向かって流れる。水又は他の溶媒は、氷として凝縮器上で凝縮され、後のステージで除去される。凍結乾燥は、医薬品産業で特に有用である。その理由は、製品の完全性が凍結乾燥プロセス中に保持され、製品安定性が比較的長い期間にわたって保証され得るからである。凍結乾燥された製品は通常、生物学的物質であり、一般的にバイアル内に収容される。
【0003】
図1の例示的な凍結乾燥システム100によって示すように、製品112のバッチが、凍結乾燥室110内の凍結乾燥シェルフ121上に配置される。凍結乾燥シェルフ121は、中空であり、製品を支持し、プロセスの必要に応じて、製品に/製品から熱を伝達するために使用される。熱伝達流体114が、熱を除去するか又は熱を付加するためにシェルフを通って流れる。
【0004】
製品112内の氷の昇華によって生成される水蒸気は、通路115を通って流れ、凝縮温度未満に維持された凝縮コイル又は他の面122を含む凝縮室(condensing chamber)120に入る。冷却剤125が、熱を除去するために、コイル122を通して流され、水蒸気をコイル上に氷として凝縮させる。
【0005】
凍結乾燥室110及び凝縮室120はともに、凝縮室120の排出部に接続された低圧入口151を有する真空ポンプ150によって、プロセス中、真空下に維持される。室110、120内に含まれる非凝縮性ガスは、真空ポンプ150によって除去され、高圧出口152で排出される。
【0006】
医薬品凍結乾燥は、凍結乾燥室110及び凝縮器室(condenser chamber)120内に無菌状態を必要とする無菌プロセスである。凍結乾燥サイクルは、数日続く可能性があり、また、単一バッチで処理される製品の量は、非常に大きな投資を意味する可能性がある。したがって、サイクルが開始する前、また、サイクルの継続期間中、凍結乾燥システムが無菌でありかつ漏れがないことを保証することが重要である。凍結乾燥室内のシェルフ及び凝縮室内のコイルはともに中空であり、熱伝達媒体を含む。漏れが発生した場合、プロセス容器内へのそれらの非無菌流体の漏れを検出できることが重要である。
【0007】
凝縮器において、使用される冷却剤媒体は、粘度が非常に低く、低い蒸気圧を有する可能性があり、漏れの検出を難しくする。冷媒の直接膨張によって冷却される凝縮器回路の場合、ガス状冷媒の漏れは同様に検出するのが難しく、凍結乾燥プロセスにおいて望ましくない。凍結乾燥室において、中空シェルフは、通常は粘度が非常に低いシリコーンオイルである熱流体によってフラッシングされる。これらのシリコーンオイルも非常に低い蒸気圧を有し、漏れを検出することを非常に難しくする。したがって、無菌凍結乾燥プロセスを乱すことなく、好ましくはリアルタイムで漏れを検出する必要性が存在する。
【0008】
室及び接続用通路は真空下にあり、したがって、それらの壁の前後で高い圧力差を維持することを必要とされる。壁を通って無菌室に入る非無菌の周囲のガスのいずれの漏れも、できる限り迅速かつ正確に検出しなければならない。
【0009】
2次乾燥操作を実施することが提案されており、2次乾燥操作では、少量の残留水分を除去するために、最終の乾燥ステージにおいて、凝縮室120が通路130によって一時的にバイパスされる。2次乾燥操作において、製品からの少量の残留水蒸気が真空ポンプ150を通って流れ、真空ポンプ排出物に含まれる。2次乾燥プロセスは、水蒸気を圧送する真空ポンプの能力によって概念的に制限される。2次乾燥操作を実施するときに予想される1つの問題は、操作の進行を監視するための、製品内の含水量の適切な検出又は測定である。医薬品乾燥プロセスに干渉することなく水除去を測定するためのシステムが必要とされる。
【0010】
ほとんどの凍結乾燥器の診断技法は、直接的であり、乾燥室内のガスの状態を分析する。漏れの直接的なチェックは、手作業によるチェックを行うことができない非常に大きな凍結乾燥器の場合、複雑になる可能性がある。さらに、漏れが、凍結乾燥サイクル内の或る特定の期間に関連するか、又は或る特定の高温若しくは低温に関連する場合、検出の可能性が最小になる可能性がある。
【0011】
こうしたin situでの低圧分析技法の例は、多くの特化した方法がそれについて存在する分圧ガス分析及び質量分析法を使用する残留ガス分析である。幾つかの欠点は、これらの技術に固有である。対象となる測定は低圧で行われ、これは検出の困難さをもたらす低濃度を意味する。さらに、凍結乾燥室及び凝縮室(condensation chamber)内のガスストリームは、乾燥プロセスからの大量(99%)の水を含み、他の種の測定を感知できなくする可能性がある。
【0012】
測定技術は、乾燥プロセスに干渉する可能性がある。これらのin situでの低圧検出技術は、本来、凍結乾燥が起こる無菌環境内でガス流をサンプリングしなければならない。しかし、これらの技術の多くは、容易に無菌化されないセンサーを必要とする。これらの技術の幾つかは、さらに、乾燥される材料に好ましくない方法で影響を及ぼす可能性がある化学反応種等の副産物を生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、通常のプロセスルーチンを乱すことなく、凍結乾燥プロセスを効果的に監視する技法の必要性が存在する。この技法は、容易に自動化されるべきであり、プロセスに汚染物質を導入すべきでなく、プロセス内の漏れ又は他の異常を高精度で検出すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示は、溶媒蒸気を含むガスストリームを分析するための方法を提供することによって、上述した必要性に応える。本方法では、非凝縮性ガスストリームを生成するために、溶媒蒸気がガスストリームから最初に除去される。非凝縮性ガスストリームは、圧縮ガスストリームを生成するために圧縮される。その後、圧縮ガスストリーム内の材料の濃度が測定される。
【0015】
溶媒蒸気を含むガスストリームは、凍結乾燥室からの排出物とすることができる。凍結乾燥室は、熱伝達流体を含む中空凍結乾燥シェルフを備えることができ、この場合、圧縮ガスストリーム内の測定される材料は、シェルフから漏れる熱伝達流体である。熱伝達流体は、ペルフルオロ流体を含むことができ、この場合、ペルフルオロ流体の濃度は、ハロゲン漏れ検出器を使用して測定される。
【0016】
ガスストリームから溶媒蒸気を除去するステップは、ガスストリームを、冷却された凝縮面を含む凝縮室に通すことを含むことができる。その場合、測定される材料は、凝縮室内に漏れている、凝縮面を冷却する媒体とすることができる。
【0017】
測定される材料は、プロセス室を清浄するときに使用される残留清浄材料とすることができる。清浄材料は、過酸化水素(H)又は二酸化塩素(ClO)とすることができる。
【0018】
測定するステップは、音響光学分光法を使用して、材料の濃度を測定することを含むことができる。測定するステップは、マルチパスキャビティエンハンスト吸収分光法(multipass cavity-enhanced absorption spectrometry)(CEAS)及びキャビティリングダウン分光測定法(CRDS)からなる群から選択される測定技法を使用することを含むことができる。
【0019】
本方法の別の実施の形態は、製品を凍結乾燥するための方法である。その方法では、熱が製品から除去されて、製品に含まれる溶媒が凍結される。製品内の凍結された溶媒は、昇華して、製品から流出する低圧ガス状流出物内に含まれる溶媒蒸気が形成される。溶媒蒸気の少なくとも一部が、低圧ガス状流出物から凝縮され、ガス状流出物が真空ポンプを使用して圧縮される。少なくとも1つの痕跡材料の濃度が、真空ポンプの高圧側でガス状流出物において測定される。
【0020】
熱は、熱伝達流体を含む中空凍結乾燥シェルフを使用して製品から除去することができる。ガス状流出物内の測定される材料は、シェルフから漏れる熱伝達流体とすることができる。熱伝達流体は、ペルフルオロ流体を含むことができ、この場合、ペルフルオロ流体の濃度は、ハロゲン漏れ検出器を使用して測定される。
【0021】
低圧ガス状流出物からの溶媒蒸気の凝縮は、低圧ガス状流出物を、冷却された凝縮面を含む凝縮室に通すことを含むことができる。その場合、ガス状流出物内の測定される材料は、凝縮面を冷却するための媒体とすることができる。
【0022】
ガス状流出物内の測定される材料は、プロセス室を清浄するときに使用される残留清浄材料とすることができる。清浄材料は、過酸化水素(H2O2)又は二酸化塩素(ClO2)とすることができる。
【0023】
本発明の別の実施の形態は、凍結乾燥システムである。このシステムは、凍結乾燥プロセス中に製品を収容するための凍結乾燥室と、前記凍結乾燥室に連通し、前記凍結乾燥室から受取った排出ガスからの溶媒蒸気を凝縮させるための面を含む凝縮室と、低圧入口及び高圧出口を有する真空ポンプであって、真空ポンプの低圧入口は凝縮室に連通する、真空ポンプと、前記真空ポンプの高圧出口から排出ガスを受取るように接続された試験装置であって、排出ガス内に含まれる材料の存在を測定する、試験装置とを備える。
【0024】
凍結乾燥室は、熱伝達流体を含む中空凍結乾燥シェルフを備えることができる。その場合、試験装置は、シェルフからの熱伝達流体の痕跡量を測定することができる。熱伝達流体は、ペルフルオロ流体を含むことができ、この場合、試験装置は、ハロゲン漏れ検出器とすることができる。
【0025】
凝縮室内の溶媒蒸気を凝縮させるための面は、冷却された凝縮面を備えることができる。その場合、試験装置は、凝縮室内に漏れている、凝縮面を冷却するための媒体の痕跡量を測定することができる。
【0026】
試験装置は、プロセス室を清浄するために使用される残留清浄材料の痕跡量を測定することができる。清浄材料は、過酸化水素(H2O2)又は二酸化塩素(ClO2)とすることができる。
【0027】
試験装置は、音響光学分光計とすることができる。試験装置は、マルチパスキャビティエンハンスト吸収分光計(CEAS)又はキャビティリングダウン分光計(CRDS)とすることができる。
【0028】
本発明のまた別の実施の形態は、製品を凍結乾燥するための方法である。製品に含まれる溶媒を凍結させるために、凍結乾燥室内で製品から熱が除去される。製品内の凍結溶媒が昇華して、製品から流出する低圧ガス状流出物内に含まれる溶媒蒸気が形成される。ガス状流出物は、真空ポンプを使用して圧縮される。プロセスは、真空ポンプの高圧側でガス状流出物内の溶媒蒸気の濃度を測定することによって監視される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本開示の一実施形態による凍結乾燥システムの概略図である。
【図2】従来技術の音響光学検出システムの概略図である。
【図3】本開示の一態様による方法を示すフローチャートである。
【図4】本開示の別の態様による方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示は、特別に調整されたガスストリームに関して発光分析を実施するためのシステム及び方法を述べる。より具体的には、本開示のシステム及び方法は、誤作動があるかについて凍結乾燥プロセスを監視し、プロセスの特定のパラメーターを検査する。真空プロセス室内の状態を監視するために、真空ポンプの排出側の圧縮ガスが、ガス分析機器190(図1)を使用して分析されて、痕跡量の特定の非凝縮性ガスの存在及び濃度が求められる。その情報は、漏れの存在及びその深刻さを検出し、プロセスパラメーターを測定するために使用される。
【0031】
最近の痕跡ガス分析機器は、10億分の1(ppb)レベルであっても濃度を検出することが可能である。これらのシステムの分解能は、バックグラウンドガスと判断されるべきガスとの間の優れた弁別を可能にする。本開示は、こうした痕跡ガス分析機器が、凍結乾燥プロセスにおいて真空ポンプの高圧側に配置される、技法を提示する。その技法は、冷媒及び熱伝達流体の僅かな漏れの検出、雰囲気からの真空漏れの検出、残留清浄材料の検出、及び2次乾燥プロセス中の水蒸気レベルの測定を含む、凍結乾燥プロセスを監視するための幾つかの診断ツールを可能にする。ガス分析機器の弁別特性は、ポンプからのオイル及び他の不純物が、検出されるべき痕跡ガスを普通なら圧倒する可能性がある真空ポンプの排出側に機器を配置するために重要である。
【0032】
こうした痕跡ガス分析機器の一例は、図2に概略的に示される音響光学分光計200である。音響光学分光計は、ガスの極端に低い濃度を求めるときに使用される技術である。その技術は、光エネルギーの吸収による音波の生成に基づく。真空ポンプの高圧出口152(図1)からの、標的材料を含むガス混合物290は、入口210を通って室220内にサンプリングされる。室内で、中赤外領域の光学レーザー230が、室内の材料に衝当するようにゲート制御される。吸収が起こると、ゲート制御された吸収は、音響マイクロフォン260によって受信され得る圧力波250を生成する。検出されるべきガスの正しい吸収周波数にレーザーを同調させることによって、吸収レベルを直接的な方法で測定することができる。音響光学分光法の感度は、ppbレベルである。測定は、大気圧で行うことができるか、又は、真空ブースターポンプ(図示せず)が真空ポンプ出口の下流で使用される場合、大気圧以下の圧力で行うことができる。音響光学分光法は、果実の熟成を妨げる植物ホルモンであるエチレンを測定するために農業用途で現在のところ使用されている。
【0033】
真空ポンプの高圧側で行われるガス分析を用いて、凍結乾燥又は同様なプロセスを監視することができることを本発明者らは発見した。図3のフローチャートに示す技法300は、実際に、診断のために特別に調整されたガスストリームの発光分析である。ガスストリームは、310にてガスストリームから水蒸気を最初に除去することによって調整される。凍結乾燥システムにおいて、そのステップは、ガスストリームから水を氷として凝縮させる凝縮器室によって実施される。残留している非凝縮性ガスが、320にて圧縮される。凍結乾燥システムにおける圧縮は、凝縮室からのガスを圧縮する真空ポンプによって実施される。調整され圧縮されたガスストリームは、その後、330にて、特定の方法によって分析される。
【0034】
凍結乾燥プロセスに付されるものとしての方法の例示的な実施形態400が、図4のフローチャートによって示される。410において、製品に含まれる水を凍結するために、熱が製品から除去される。熱除去プロセスは、凍結乾燥室内で、製品を支持するシェルフに熱伝達流体を強制的に通すことによって行われる。420において、凍結した製品を真空条件及び僅かな温度上昇にさらすことによって、製品内の凍結した水が昇華され、水蒸気を形成する。水蒸気は、製品から流出する低圧ガス状流出物内に含まれ、凍結乾燥室から出る。
【0035】
凝縮室において、ガス状流出物内の水蒸気は、430にて氷として凝縮され、氷は、凝縮面上に蓄積する。凝縮面は、凝縮プロセスによって解放された熱を除去する冷却剤によって冷却される。1つの例示的な実施形態では、その面は、−70℃〜−90℃の温度に冷却される。
【0036】
凝縮室内に含まれる非凝縮性ガスは、真空ポンプの低圧吸入部に入り、そこで、440にて非凝縮性ガスが圧縮される。450にて、それらの圧縮されたガス内の痕跡材料の濃度が、真空ポンプの高圧排出部で測定される。
【0037】
真空ポンプからのガス排出物の分析は、上述した音響光学分光法を使用して、又は、雰囲気ガス中の痕跡量の材料を検出することが可能な任意の他の技法によって行うことができる。例えば、マルチパスキャビティエンハンスト吸収分光法(CEAS)及びキャビティリングダウン分光測定法(CRDS)を使用することができる。いずれの場合も、真空ポンプは、測定ゲージと無菌室との間の障壁として働き、要件に沿って、医薬品産業の室の汚染を回避する。
【0038】
1つの例示的な実施形態では、システムは、通常状況下でシェルフ内に含まれる熱伝達流体の存在について、真空ポンプからの流れを監視する。真空ポンプ排出部におけるその流体のたとえ痕跡量の存在でも、シェルフから凍結乾燥室内への漏れを示す可能性がある。
【0039】
シェルフ内での熱伝達流体として使用されるシリコーンオイル及び凝縮器コイルで使用される冷媒オイルは、一般的な真空ポンプで使用されるオイルのスペクトルと異なる非常に特有のスペクトルを有する。音響光学分光法、マルチパスキャビティエンハンスト吸収分光法(CEAS)、又はキャビティリングダウン分光法(CRDS)等の分光技法が真空ポンプ排出部で使用される場合、シリコーン熱伝達オイル及び/又は冷媒オイルの最も重要な吸収ピークの高さに関する較正は、これらのオイルの互いとの、これらのオイルと真空ポンプで使用されるオイルとの、および、真空ポンプ排出部に存在する可能性がある任意の他の材料との弁別を可能にする。
【0040】
熱伝達オイルは、ハロゲン漏れ検出器によって容易に検出されるペルフルオロ流体とすることができる。今回述べるシステムで使用するのに適した1つのこうしたハロゲン漏れ検出器は、米国のニューヨーク州シラキュース(Syracuse, NY)のInficonによって販売されているD−TEK(商標)Select Refrigerant Leak Detectorである。そのデバイスは、試料による赤外エネルギーの吸収を検出する。ハロゲン漏れ検出器は、上述したように、真空ポンプ排出部に配置される。ペルフルオロ流体は、完全に熱伝達流体として使用されるか、又は、ハロゲン漏れ検出器によって検出されるのに十分な量のシリコーンオイルと混合される。
【0041】
今回述べるシステムはまた、凝縮室内の凝縮面及びコイルからの冷却剤の漏れを検出するために使用されることができる。冷却剤は、上述したように、ハロゲン漏れ検出器を使用して検出可能であるか、又は、他のガス分析機器によって監視される特有のスペクトルを有する材料とすることができる。製品シェルフ熱伝達流体の場合と同様に、凝縮器冷却剤は、真空ポンプ排出部での検出を容易にするためにペルフルオロ化されることができる。
【0042】
システム内のいずれの場所の真空漏れも、真空ポンプ排出部に非凝縮性汚染物質をもたらす可能性がある。これらの汚染物質は、凍結乾燥室及び凝縮室において低濃度で検出することは難しいが、真空ポンプによって圧縮及び濃縮され、本開示の技法を使用して検出されることができる。例えば、ガス分析機器は、周囲雰囲気内にある可能性がある一般的な有機及び無機の汚染物質のスペクトルを検出するように構成することができる。これらの汚染物質は、自然に発生する可能性があるか、又は、システムによる検出のために周囲雰囲気内に導入される可能性がある。代替的には、ガス分析機器は、機器の通常の運転中には存在しない、結果として得られるスペクトルの任意のピークを検出するように構成することができる。その場合、シグネチャ又はベースラインスペクトルが、問題なしとわかっている機器の実行中に確立されることができる。新しいピークを含む、後で測定されるスペクトルは、疑わしいと考えられることになる。
【0043】
今回述べるシステムのまた別の用途は、凍結乾燥器の他の機能のために使用される材料から残っている痕跡ガスの検出である。例えば、蒸発した過酸化水素(H)又は二酸化塩素(ClO)は、凍結乾燥システムにおけるサイクルとサイクルとの間の殺菌剤として使用される。上記で論じたシリコーンオイルと同様に、Hは、中赤外範囲内に非常に特有のスペクトルを有する。したがって、ガス分析機器によって行われる測定を用いて、Hの濃度が、殺菌サイクル後の製造の始動のために許容可能であるほどに十分に低いかどうかを判定することができる。
【0044】
新しくより効率的な世代の乾燥真空ポンプの出現によって、凝縮室を使用することなく、直接真空ポンプを通して製品から或る量の水を除去することが可能である場合がある。例えば、2次乾燥操作は、ほとんどの水が凝縮室を使用して製品から除去された後に実施することができる。一例では、乾燥室110から真空ポンプ150に直接ガスを導く代わりに、バイパス導管130(図1)が、凝縮室120をバイパスするために使用される。製品112内の少量の残留水分は、昇華され、真空ポンプ150を通って直接導かれる。そのステップ中、凝縮室120は、次のサイクルの1次乾燥のために再生される(すなわち、氷が除去される)ことができる。
【0045】
2次乾燥中、水蒸気輸送速度は非常に低い。波長可変半導体レーザー吸収分光測定法(TDLAS)等の、凍結乾燥装置の真空部分に配置される現用の測定技法は、低濃度によって複雑となる。ガス分析機器を乾燥真空ポンプの排出部側に配置することによって、水蒸気の濃度を推測することができ、その情報が、製品バイアル内の平均残留水分レベルの指標として役立つ可能性がある。
【0046】
ガス分析が、真空ポンプの大気圧側で行われる上述したシステムは、現用のシステムに優る多くの利点を有する。圧力低下したガスは、ポンプの排出部側で圧縮されて、大気圧になる。これらのガスの濃度は、大気圧において依然として低い場合があるが、検出可能レベルをもたらす、特定の信号に寄与するより多くの分子が存在し、化学分析技法の幅広い選択を可能にする。特に、光学的分光技法を使用することができる。
【0047】
さらに、シェルフ漏れ検出等において、凍結乾燥プロセスが進行中である間に、分析が行われる場合、分析される排出ガスは、普通なら信号を圧倒してしまうことになる多量の水蒸気から分離されている。水蒸気は、ガスストリームが真空ポンプに達する前に、低圧で凝縮器コイル上で凍結する。真空ポンプは、乾燥プロセス中に凍結乾燥器の状態を顕在化させる非凝縮性ガスだけを圧縮する。
【0048】
ガス分析機器が、凍結乾燥システムの無菌ゾーンの外側に位置するため、本凍結乾燥器適用形態は、凍結乾燥プロセスの有効性を再確認する必要なく、今回述べるシステムを用いて改造することができる。したがって、医薬品産業等の産業で使用するための配置は、より迅速かつより安価である。
【0049】
上記の詳細な説明は、全ての点で、制限的ではなく、例証的かつ例示的であるものとして理解され、本明細書で開示される本発明の範囲は、本発明の説明から確定されるのではなく、むしろ、特許法によって認められる全範囲に従って解釈される特許請求の範囲から確定される。本明細書で示し述べる実施形態が本発明の原理を例証に過ぎないこと、並びに、種々の変更が本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者によって実施できることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒蒸気を含むガスストリームを分析する方法であって、
前記ガスストリームから前記溶媒蒸気を除去して、非凝縮性ガスストリームを生成する、除去するステップと、
前記非凝縮性ガスストリームを圧縮して、圧縮ガスストリームを生成する、圧縮するステップと、
前記圧縮ガスストリーム内の材料の濃度を測定するステップと、
を含む、溶媒蒸気を含むガスストリームを分析する方法。
【請求項2】
前記溶媒蒸気を含むガスストリームは、凍結乾燥室からの排出物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凍結乾燥室は、熱伝達流体を含む中空凍結乾燥シェルフを備え、前記圧縮ガスストリーム内の測定される前記材料は、前記シェルフから漏れる熱伝達流体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱伝達流体は、ペルフルオロ流体を含み、前記材料の濃度を測定するステップは、ハロゲン漏れ検出器を使用して前記ペルフルオロ流体の濃度を測定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ガスストリームから前記溶媒蒸気を除去するステップは、前記ガスストリームを、冷却された凝縮面を含む凝縮室に通すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記測定される材料は、前記凝縮室内に漏れている、前記凝縮面を冷却する媒体である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法において使用されるプロセス室を清浄材料で清浄するステップを更に含み、
前記測定される材料は、残留清浄材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記測定される材料は、過酸化水素(H)及び二酸化塩素(ClO)からなる群から選択される材料を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記圧縮ガスストリーム内の材料の濃度を測定するステップは、音響光学分光法を使用して前記材料の前記濃度を測定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記圧縮ガスストリーム内の材料の濃度を測定するステップは、マルチパスキャビティエンハンスト吸収分光法(CEAS)及びキャビティリングダウン分光測定法(CRDS)からなる群から選択される測定技法を使用することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
製品を凍結乾燥する方法であって、
前記製品から熱を除去して、前記製品に含まれる溶媒を凍結させる、除去するステップと、
前記製品内の前記凍結された溶媒の昇華を引き起こして、前記製品から流出する低圧ガス状流出物内に含まれる溶媒蒸気を形成する、引き起こすステップと、
前記低圧ガス状流出物からの前記溶媒蒸気の少なくとも一部を凝縮するステップと、
真空ポンプを使用して前記ガス状流出物を圧縮するステップと、
前記真空ポンプの高圧側で前記ガス状流出物内の少なくとも1つの痕跡材料の濃度を測定するステップと、
を含む、製品を凍結乾燥する方法。
【請求項12】
前記熱は、熱伝達流体を含む中空凍結乾燥シェルフを使用して前記製品から除去される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ガス状流出物内の測定される材料は、前記シェルフから漏れる熱伝達流体である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記熱伝達流体は、ペルフルオロ流体を含み、前記少なくとも1つの痕跡材料の濃度を測定するステップは、ハロゲン漏れ検出器を使用して前記ペルフルオロ流体の濃度を測定することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記低圧ガス状流出物からの前記溶媒蒸気の少なくとも一部を凝縮するステップは、前記低圧ガス状流出物を、冷却された凝縮面を含む凝縮室に通すことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記ガス状流出物内の測定される材料は、前記凝縮面を冷却するための媒体である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法において使用されるプロセス室を清浄材料で清浄するステップを更に含み、
前記ガス状流出物内の測定される材料は、残留清浄材料である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記ガス状流出物内の測定される材料は、過酸化水素(H)及び二酸化塩素(ClO)からなる群から選択される材料を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記真空ポンプの高圧側で前記ガス状流出物内の少なくとも1つの痕跡材料の濃度を測定するステップは、音響光学分光法を使用して前記材料の前記濃度を測定することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記真空ポンプの高圧側で前記ガス状流出物内の少なくとも1つの痕跡材料の濃度を測定するステップは、マルチパスキャビティエンハンスト吸収分光法(CEAS)及びキャビティリングダウン分光法(CRDS)からなる群から選択される測定技法を使用することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
凍結乾燥システムであって、
前記凍結乾燥プロセス中に製品を収容するための凍結乾燥室と、
前記凍結乾燥室に連通し、前記凍結乾燥室から受取った排出ガスから溶媒蒸気を凝縮させるための面を含む凝縮室と、
低圧入口及び高圧出口を有する真空ポンプであって、前記真空ポンプの前記低圧端は前記凝縮室に連通する、真空ポンプと、
前記真空ポンプの前記高圧出口から排出ガスを受取るように接続された試験装置であって、前記排出ガス内に含まれる材料の存在を測定する、試験装置と、
を備える、凍結乾燥システム。
【請求項22】
前記凍結乾燥室は、熱伝達流体を含む中空凍結乾燥シェルフを備える、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記試験装置は、前記シェルフから熱伝達流体の痕跡量を測定する、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記熱伝達流体は、ペルフルオロ流体を含み、前記試験装置は、ハロゲン漏れ検出器である、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記凝縮室内の溶媒蒸気を凝縮させるための前記面は、冷却された凝縮面を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項26】
前記試験装置は、前記凝縮室内に漏れている、前記凝縮面を冷却するための媒体の痕跡量を測定する、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記試験装置は、前記プロセス室を清浄するために使用される残留清浄材料の痕跡量を測定する、請求項21に記載のシステム。
【請求項28】
前記清浄材料は、過酸化水素(H)及び二酸化塩素(ClO)からなる群から選択される材料を含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記試験装置は、音響光学分光計である、請求項21に記載のシステム。
【請求項30】
前記試験装置は、マルチパスキャビティエンハンスト吸収分光計(CEAS)及びキャビティリングダウン分光計(CRDS)からなる群から選択される装置である、請求項21に記載のシステム。
【請求項31】
製品を凍結乾燥する方法であって、
凍結乾燥室内で前記製品から熱を除去して、前記製品に含まれる溶媒を凍結させる、除去するステップと、
前記製品内の凍結溶媒の昇華を引き起こして、前記製品から流出する低圧ガス状流出物内に含まれる溶媒蒸気を形成する、引き起こすステップと、
真空ポンプを使用して前記ガス状流出物を圧縮するステップと、
前記真空ポンプの高圧側で前記ガス状流出物内の前記溶媒蒸気の濃度を測定することによって、前記凍結乾燥を監視するステップと、
を含む、製品を凍結乾燥する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−515261(P2013−515261A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545915(P2012−545915)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/006681
【国際公開番号】WO2011/078835
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(511152968)アイエムエー ライフ ノース アメリカ インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】