説明

真空ポンプ

【課題】本発明は、電動機の運転状態に応じて、永久磁石型同期運転と誘導電動機運転との切り替えを行い、運転性能の改善と電力消費の低減を実現する真空ポンプを低コストで提供する。
【解決手段】ロータケーシング内に配置されたポンプロータと、ポンプロータを回転させる回転軸と、回転軸の端部に連結され複数の永久磁石が配置され、かつ、複数の永久磁石の周囲に2次導体が配置された電動機回転子を有し、回転軸を駆動してポンプロータを回転させる電動機と、電動機の運転状態を検出する検出部と、検出部により検出された電動機の運転状態に応じて、永久磁石を用いて回転軸を駆動する永久磁石型同期運転と、2次導体を用いて回転軸を駆動する誘導電動機運転と、を切り換える制御部と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプに係り、特に、半導体製造装置等のチャンバを真空に排気するために用いられる真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置では、半導体製造工程で使用されるガスをチャンバから排気し、チャンバ内に真空環境を作り出すために真空ポンプが使用されている。このような真空ポンプとしては、ルーツ型やスクリュー型のポンプロータを備えた容積式タイプの真空ポンプが知られている。
【0003】
一般に、容積式の真空ポンプは、ケーシング内に配置された一対のポンプロータと、このポンプロータを回転駆動するための誘導電動機または永久磁石型同期電動機とを備えている。一対のポンプロータ間及びポンプロータとケーシングの内面との間には微小なクリアランスが形成されており、ポンプロータはケーシングに非接触で回転するように構成されている。そして、一対のポンプロータが同期しつつ互いに反対方向に回転することにより、ケーシング内の気体が吸入側から吐出側に移送され、吸入口に接続されるチャンバ等から気体が排気される。
【0004】
半導体製造工程に使用されるガスには、ガスの温度が低下すると固形化あるいは液状化する成分が含まれているものがある。通常、上述した真空ポンプは、ガスを移送する過程で圧縮熱が発生するため、運転中の真空ポンプはある程度高温となっている。従って、真空ポンプが高温を維持している間は、上記真空ポンプを用いて上述した成分を含むガスを排気した場合でもガスの成分が固形化または液状化せず、良好な真空排気が行われる。
【0005】
しかしながら、真空ポンプの運転を停止し、真空ポンプの温度が徐々に低下すると、ガス中に含まれる成分が固形化あるいは液状化し、ポンプロータやケーシングの間の隙間等に堆積してしまう(以下、この固形化、液状化した成分を生成物という)。このため、ポンプロータに生成物が付着してポンプロータ及びポンプケーシング、あるいはポンプロータ同士が摺動摩擦し、ポンプロータの負荷が重くなることがある。この場合、ポンプロータを一旦停止し再始動するとき、定常運転時トルクの数倍程度の始動トルクが必要になる可能性がある。また、一方で真空ポンプは小型、高性能の要求から高速回転させる必要があり、この場合周波数変換器(インバータ)で駆動している。そのため、インバータにて駆動する永久磁石型同期電動機においては、定格容量に対し、数倍程度の電流容量をもつインバータを搭載しなければならず、コストを上昇させていた。また、始動トルクが大きな誘導電動機においては運転時の効率が永久磁石型電動機よりも劣っていた。
【0006】
上述した始動時に永久磁石型同期電動機を用いることによって生じるコスト上昇及び誘導電動機を運転時に用いることによって永久磁石型電動機よりも効率が劣るという問題に対応するものとして、例えば、特許文献1の永久磁石式同期電動機の回転子が提案されている。この永久磁石式同期電動機の回転子では、誘導電動機動作での始動時にトルク特性を向上させ、同期引き入れを行ったのち、永久磁石の磁束を利用して同期運転を行うことを可能にしている。また、特許文献2の密閉型導電圧縮機では、誘導電動機で自己始動を行ない、運転時には埋め込んだ永久磁石の作用によって同期運転を行うことを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭63−20105号公報
【特許文献2】特開2001−339884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1の永久磁石式同期電動機の回転子及び特許文献2の密閉型導電圧縮機では、誘導電動機動作で始動し、その後に、永久磁石の磁束を利用して同期運転を行っており、運転中の運転状態の変化については考慮されていなかった。そのため、半導体製造装置の半導体製造工程で生じる運転中の運転状態の変化に対しては特許文献1及び特許文献2を適用することはできない。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、電動機の運転状態に応じて、永久磁石型同期運転と誘導電動機運転との切り替えを行い、運転性能の改善と電力消費の低減を実現する真空ポンプを低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る真空ポンプは、ロータケーシング内に配置されたポンプロータと、前記ポンプロータを回転させる回転軸と、前記回転軸の端部に連結され複数の永久磁石が配置され、かつ、前記複数の永久磁石の周囲に2次導体が配置された電動機回転子を有し、前記回転軸を駆動して前記ポンプロータを回転させる電動機と、前記電動機の運転状態を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記電動機の運転状態に応じて、前記永久磁石を用いて前記回転軸を駆動する永久磁石型同期運転と、前記2次導体を用いて前記回転軸を駆動する誘導電動機運転と、を切り換える制御部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
商用電源の周波数を変換して出力するインバータと、前記商用電源を前記電動機に対して直接供給する第1の電源供給ラインと、前記商用電源を前記インバータを介して前記商用電源の周波数を変換して前記電動機に対して供給する第2の電源供給ラインと、を備え、前記制御部は、前記永久磁石型同期運転を行う場合は前記第2の電源供給ラインを前記電動機に接続し、前記誘導電動機運転を行う場合は前記第1の電源供給ラインを前記電動機に接続する電源ライン切替部を有してもよい。
【0012】
前記検出部は、前記電動機に流れる電流を検出する電流検出部を有し、前記制御部は、前記電流検出部により検出される電流値に応じて前記電動機の運転状態を判定し、判定した運転状態に応じて前記永久磁石型同期運転と前記誘導電動機運転とを切り換えてもよい。
【0013】
前記検出部は、前記電動機の回転数を検出する回転数検出部を有し、前記制御部は、前記回転数検出部により検出される回転数に応じて前記電動機の運転状態を判定し、判定した運転状態に応じて前記永久磁石型同期運転と前記誘導電動機運転とを切り換えてもよい。
【0014】
前記制御部は、前記検出部により検出された前記電動機の運転状態により前記真空ポンプの負荷状態を判定し、当該真空ポンプの負荷状態に応じて前記永久磁石型同期運転と前記誘導電動機運転とを切り換えてもよい。
【0015】
前記制御部は、前記真空ポンプの負荷状態を数値化し、前記負荷状態の数値範囲に応じて前記永久磁石型同期運転と前記誘導電動機運転とを切り換えてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態に係る真空ポンプは、ロータケーシング内に配置された2つのポンプロータと、前記2つのポンプロータを各々回転させる第1の回転軸及び第2の回転軸と、前記第1の回転軸の端部に連結され複数の永久磁石が配置された電動機回転子を有する第1の電動機と、前記第2の回転軸の端部に連結され2次導体が配置された電動機回転子を有する第2の電動機と、前記第1の電動機の運転状態及び前記第2の電動機の運転状態を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記第1の電動機の運転状態及び前記第2の電動機の運転状態に応じて、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を切り換える制御部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
商用電源の周波数を変換して出力するインバータと、前記商用電源を前記インバータを介して前記商用電源の周波数を変換して前記第1の電動機に対して供給するとともに前記第2の電動機に対して直接供給する第1の電源供給ラインと、前記商用電源を前記インバータを介して前記商用電源の周波数を変換して第1の電動機に対して供給する第2の電源供給ラインと、前記商用電源を前記第2の電動機に対して直接供給する第3の電源供給ラインと、を備え、前記制御部は、前記第1の電動機の運転状態及び前記第2の電動機の運転状態に応じて、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行なう場合は前記第1の電源供給ラインを前記第1の電動機及び前記第2の電動機の双方に接続し、前記第1の電動機の運転のみを行う場合は前記第2の電源供給ラインを前記第1の電動機に接続し、前記第2の電動機の運転のみを行う場合は前記第3の電源供給ラインを前記第2の電動機に接続する電源ライン切替部を有してもよい。
【0018】
前記検出部は、前記第1の電動機及び前記第2の電動機に流れる電流を各々検出する電流検出部を有し、前記制御部は、前記電流検出部により検出される電流値に応じて前記第1の電動機及び前記第2の電動機の各運転状態を判定し、判定した各運転状態に応じて前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を切り換えてもよい。
【0019】
前記検出部は、前記第1の電動機及び前記第2の電動機の回転数を各々検出する回転数検出部を有し、前記制御部は、前記回転数検出部により検出される回転数に応じて前記第1の電動機及び前記第2の電動機の運転状態を判定し、判定した各運転状態に応じて前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を切り換えてもよい。
【0020】
前記制御部は、前記検出部により検出された前記第1の電動機及び前記第2の電動機の運転状態により前記真空ポンプの負荷状態を判定し、当該真空ポンプの負荷状態に応じて前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を切り換えてもよい。
【0021】
前記制御部は、前記真空ポンプの負荷状態を数値化し、前記負荷状態の数値範囲に応じて前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を切り換えてもよい。
【0022】
本発明の一実施形態に係る真空ポンプの運転方法は、ロータケーシング内に配置されたポンプロータと、前記ポンプロータを回転させる回転軸と、前記回転軸の端部に連結され複数の永久磁石が配置され、かつ、前記複数の永久磁石の周囲に2次導体が配置された電動機回転子を有し、前記回転軸を駆動して前記ポンプロータを回転させる電動機を有する真空ポンプの運転方法であって、前記電動機の運転状態を検出し、前記検出された前記電動機の運転状態に応じて、前記永久磁石を用いて前記回転軸を駆動する永久磁石型同期運転と、前記2次導体を用いて前記回転軸を駆動する誘導電動機運転と、を切り換えることを特徴とする。
【0023】
前記誘導電動機運転を行う場合は、商用電源を前記電動機に対して直接供給する第1の電源供給ラインを前記電動機に接続し、前記永久磁石型同期運転を行う場合は、商用電源の周波数を変換して前記電動機に対して供給する第2の電源供給ラインを前記電動機に接続してもよい。
【0024】
前記電動機に流れる電流値を検出し、前記検出された電流値に応じて前記電動機の運転状態を判定し、前記判定した運転状態に応じて前記永久磁石型同期運転と前記誘導電動機運転とを切り換えてもよい。
【0025】
前記電動機の回転数を検出し、前記検出された回転数に応じて前記電動機の運転状態を判定し、前記判定した運転状態に応じて前記永久磁石型同期運転と前記誘導電動機運転とを切り換えてもよい。
【0026】
前記検出された前記電動機の運転状態により前記真空ポンプの負荷状態を判定し、前記真空ポンプの負荷状態に応じて前記永久磁石型同期運転と前記誘導電動機運転とを切り換えてもよい。
【0027】
前記真空ポンプの負荷状態を数値化し、前記負荷状態の数値範囲に応じて前記永久磁石型同期運転と前記誘導電動機運転とを切り換えてもよい。
【0028】
本発明の一実施形態に係る真空ポンプの運転方法は、ロータケーシング内に配置された2つのポンプロータと、前記2つのポンプロータを各々回転させる第1の回転軸及び第2の回転軸と、前記第1の回転軸の端部に連結され複数の永久磁石が配置された電動機回転子を有する第1の電動機及び第2の回転軸の端部に連結され2次導体が配置された電動機回転子を有する第2の電動機を有する真空ポンプの運転方法であって、前記第1の電動機の運転状態及び前記第2の電動機の運転状態を検出し、前記検出された前記第1の電動機の運転状態及び前記第2の電動機の運転状態に応じて、前記第1の電動機の運転と前記第2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記第2の電動機の運転を切り換えることを特徴とする。
【0029】
前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行なう場合は、商用電源の周波数を変換して第1の電動機に対して供給するとともに前記第2の電動機に対して直接供給する第1の電源供給ラインを前記第1の電動機及び前記第2の電動機の双方に接続し、前記第1の電動機の運転のみを行う場合は、前記商用電源の周波数を変換して前記第1の電動機に対して供給する第2の電源供給ラインを前記第1の電動機に接続し、前記第2の電動機の運転のみを行う場合は、前記商用電源を前記第2の電動機に対して直接供給する第3の電源供給ラインを前記第2の電動機に接続してもよい。
【0030】
前記第1の電動機及び前記第2の電動機に流れる電流値を各々検出し、前記検出された電流値に応じて前記第1の電動機及び前記第2の電動機の各運転状態を判定し、前記判定した各運転状態に応じて前記第2の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を切り換えてもよい。
【0031】
前記第1の電動機及び前記第2の電動機の回転数を各々検出し、前記検出された回転数に応じて前記第1の電動機及び前記第2の電動機の運転状態を判定し、前記判定した各運転状態に応じて前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を切り換えてもよい。
【0032】
前記検出された前記第1の電動機及び前記第2の電動機の運転状態により前記真空ポンプの負荷状態を判定し、前記真空ポンプの負荷状態に応じて前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を切り換えてもよい。
【0033】
前記真空ポンプの負荷状態を数値化し、前記負荷状態の数値範囲に応じて前記第1の電動機の運転と前記第2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記第2の電動機の運転を切り換えてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、電動機の運転状態に応じて、永久磁石型同期運転と誘導電動機運転との切り替えを行い、運転性能の改善と電力消費の低減を実現する真空ポンプを低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る真空ポンプの構成を示す断面図である。
【図2】(a)は図1の第1の電動機の部分拡大図であり、(b)は図2(a)のII−II線断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る第1の電動機駆動回路の構成例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る真空ポンプの運転状態と第1の電動機の運転切り替え動作との関係を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る真空ポンプの構成を示す断面図である。
【図6】(a)は図5の第2の電動機の部分拡大図であり、(b)は図6(a)のII−II線断面図である。
【図7】(a)は図5の第3の電動機の部分拡大図であり、(b)は図7(a)のII−II線断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る第2の電動機駆動回路の構成例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る真空ポンプの運転状態と第2の電動機及び第3の電動機の運転切り替え動作との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態では、半導体製造装置のチャンバ内のガスを排気するために使用される容積式の真空ポンプについて説明するが、本発明に係る真空ポンプはこれに限定されない。
【0037】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態では、本発明に係る容積式の真空ポンプ120の電動機として、永久磁石と2次導体とを合わせもつ構成を例示する。
【0038】
<真空ポンプの構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る真空ポンプ120の構成を示す断面図である。図2(a)は第1の電動機100Mの部分拡大図であり、(b)は図2(a)のII−II線断面図である。
【0039】
図1において、ケーシング1内の回転軸20に一対のポンプロータを構成するポンプロータ2、2が配設されている。各ポンプロータ2は両端部近傍で軸受3、3によって支持されている。ポンプロータ2は第1の電動機100Mによって回転駆動されるようになっている。ポンプロータ2の主軸4の図中の左側端部にはタイミングギア11が取り付けられており、第1の電動機100Mによって回転駆動された一対のポンプロータ2は、タイミングギア11によって相互に反転方向に同期回転するようになっている。
【0040】
図2(a)及び(b)に示すように、第1の電動機100Mは回転軸20のポンプロータ2、2とは反対側の端部に配置された電動機固定子30と電動機回転子40とから構成されている。電動機固定子30の内側に配置された電動機回転子40は、複数の永久磁石42と、複数の永久磁石42の周囲に配置された2次導体41と、電動機回転子40の両端部に配置された短絡環43とを備えている。第1の電動機100Mは、後述する制御部150の制御により永久磁石42を用いて回転軸20を駆動する永久磁石型同期運転と、2次導体41を用いて回転軸20を駆動する誘導電動機運転と、が切り替えられる。
【0041】
図1では、一対のポンプロータ2、2間及びケーシング1の内面との間には微小な隙間が形成されており、各ポンプロータ2、2は僅かなクリアランスを保って非接触で回転するようになっている。
【0042】
上記構成の真空ポンプ120において、第1の電動機100Mを駆動して一対のポンプロータ2、2を回転することにより、吸気口(図示せず)から吸入されたガスが各ポンプロータ2、2に従って排気側に移送され、排気口(図示せず)から排気される。
【0043】
図1において、運転制御装置140は、後述する検出部により検出される第1の電動機100Mの運転状態に応じて第1の電動機100Mの上記永久磁石型同期運転と誘導電動機運転とを切り替える制御部150を備えている。
【0044】
図1において、第1の電動機100Mは、配線Lを介して運転制御装置140と接続される。配線Lは第1の電動機100Mの電流値または第1の電動機100Mの回転数を検出するための配線である。
【0045】
なお、本実施形態では、ルーツ型の真空ポンプ120を用いる例を示したが、ルーツ型の真空ポンプに限定するものではなく、例えば、スクリュー型の真空ポンプ、または、ロータリーポンプ等に対しても本発明の第1の電動機100Mを用いることは可能である。
【0046】
<第1の電動機駆動回路の構成>
次に、図1の運転制御装置140により制御される第1の電動機駆動回路200の構成例について図3を参照して説明する。
【0047】
まず、図3に示す第1の電動機駆動回路200の構成例を参照して説明する。図3において、第1の電動機駆動回路200は、商用電源(50/60Hz)210と、制御部150と、インバータ230と、第1の電流検出部240と、第1の回転数検出部250と、を備えている。制御部150は、入力段に商用電源210が接続され、出力段に第1の電源供給ライン222及びインバータ230を介した第2の電源供給ライン224を介して第1の電動機100Mが接続されている。また、制御部150は、第1の電流検出部240と第1の回転数検出部250が接続されている。第1の電流検出部240は、第1の電動機100Mの入力段に流れる電流を検出して第1の電流検出信号SI1を制御部150に出力する。第1の回転数検出部250は、第1の電動機100Mの回転数を検出して第1の回転数検出信号SR1を制御部150に出力する。制御部150は、第1の電流検出信号SI1又は第1の回転数検出信号SR1により第1の電動機Mの運転状態を判定し、その運転状態の判定結果に応じて上記永久磁石型同期運転と上記誘導電動機運転を切り替える。制御部150は、第1の電動機Mの電源を切り替えるため電源ライン切替部220を備える。制御部150は、誘導電動機運転を行う場合は第1の電源供給ライン222を第1の電動機100Mに接続するように電源ライン切替部220を切り替え、永久磁石型同期運転を行う場合は第2の電源供給ライン224を制御部150による電源ライン切替部220の切り替え動作により、切り替える。誘導電動機運転を行う場合は第1の電源供給ライン222を介して商用電源210の3相交流電圧が第1の電動機100Mに直接供給され、永久磁石型同期運転を行う場合は第2の電源供給ライン224を介してインバータ230により周波数変換された商用電源210の3相交流電圧が第1の電動機100Mに供給される。
【0048】
なお、本発明に係る第1の実施形態では、第1の電動機駆動回路200の構成として図3に示す構成例を示したが、これらの回路構成に限定されるものではなく、他の回路構成を用いてもよい。
【0049】
<第1の電動機の動作例>
次に、運転制御装置140において実行される第1の電動機100Mの上記運転切り替え動作について図4を参照して説明する。
【0050】
図4は、真空ポンプ120の運転状態と第1の電動機100Mの上記運転切り替え動作との関係を示す図である。この図4において、縦軸は第1の電動機100Mの回転速度を示し、横軸は真空ポンプ120の負荷状態(以下、ポンプ負荷という)を示している。この場合、ポンプ負荷は数値化(例えば、0〜10)して示しており、その数値が大きい程、ポンプ負荷は大きいものとする。
【0051】
また、図4では、第1の電動機100Mを始動させてから定常運転状態になり、定常運転状態から過負荷運転状態になるまでの遷移状態を、図中に示す符号T1〜T6と、この符号間を結ぶ実線により示している。この時、ポンプ負荷の最小値、すなわちポンプロータの生成物が除去され、ポンプ負荷がない状態を0とし、ポンプ負荷の最大値、すなわち、ポンプロータに生成物が付着し、ポンプ負荷が重い状態を10とする。
【0052】
図4に示す符号T1においては、ポンプ負荷が例えば10、すなわちポンプロータ2に生成物が付着し、ポンプ負荷が重い状態である。この場合、第1の電動機100Mは、始動時として誘導電動機運転を行うことにする。始動時に、商用電源(50/60Hz)を第1の電源供給ライン222を介して直接第1の電動機100Mに接続し誘導電動機運転を行うため、ポンプロータ2に生成物が付着しポンプ負荷が重い状態であっても、永久磁石型同期電動機では必要になる電流容量の大きなインバータを搭載せずに、高トルクでの始動が可能となる。
【0053】
符号T2においては、ポンプ負荷が例えば4、すなわち始動時からの回転速度上昇とともに生成物が除去されポンプ負荷が軽くなることによって、符号T2の電源切り替えポイントである誘導機同期回転数まで上昇する。
【0054】
符号T3においては、電源ライン切替部220の切り替え動作により、第2の電源供給ライン224に切り替えて、インバータで周波数変換した商用電源210の3相交流電圧を第1の電動機100Mに印加するため、第1の電動機100Mは誘導電動機運転のまま、定格回転数付近に上昇する。
【0055】
符号T4においては、ポンプ負荷が例えば3.5の場合、すなわち始動時からの回転速度上昇とともに生成物が除去されポンプ負荷が軽くなることによって、永久磁石同期トルクに引き込まれ、第1の電動機100Mは誘導電動機運転から永久磁石型同期運転に切り替わる。このとき、第1の電動機駆動回路200の第1の回転数検出部250は、誘導電動機運転を行っている第1の電動機100Mの回転数を検出して第1の回転数検出信号SR1を制御部150に出力する。第1の電流検出部240は、誘導電動機運転を行っている第1の電動機100Mの入力段に流れる電流を検出して第1の電流検出信号SI1を制御部150に出力する。そして、第1の電流検出信号SI1又は第1の回転数検出信号SR1が入力された制御部150は、第1の電動機100Mの運転状態を判定する。この運転状態の判定結果によって、第1の電源供給ライン222から第2の電源供給ライン224に電源ライン切替部220により電源の切り替えを行う。この切り替えによって、第2の電源供給ライン224を介してインバータ230により周波数変換された商用電源210の3相交流電圧が第1の電動機100Mに供給され、誘導電動機運転のまま、定格回転数付近まで昇速する。さらにポンプ負荷が軽くなることで永久磁石同期トルクに引き込まれ永久磁石型同期運転に切り替わる。このように、第1の電動機100Mを誘導電動機運転から永久磁石型同期運転に切り替えることによって、省エネルギ運転が可能となる。
【0056】
符号T5においては、例えば、ポンプ負荷が1〜3の場合、すなわちポンプロータに付着した生成物が除去された状態では、ポンプ負荷1(到達)とポンプ負荷3(最大ガス負荷)区間を永久磁石型同期運転にて省エネルギ運転を継続する。このときの状態が定常運転状態である。
【0057】
符号T5から符号T4に移行して、例えば、ポンプ負荷が3.5の場合、すなわち第1の電動機100Mの定常運転時にポンプロータに生成物が付着し、ポンプ負荷が重くなると、永久磁石型同期運転から同期はずれをおこし、誘導電動機運転に運転が切り替わる。このとき、第1の電動機駆動回路200の第1の回転数検出部250は、永久磁石型同期運転を行っている第1の電動機100Mの回転数を検出して第1の回転数検出信号SR1を制御部150に出力する。第1の電流検出部240は、永久磁石型同期運転を行っている第1の電動機100Mの入力段に流れる電流を検出して第1の電流検出信号SI1を制御部150に出力する。そして、第1の電流検出信号SI1又は第1の回転数検出信号SR1が入力された制御部150は、第1の電動機100Mの運転状態を判定する。この運転状態の判定結果によって、第2の電源供給ライン224から第1の電源供給ライン222に電源ライン切替部220により電源の切り替えを行う。この切り替えによって、第1の電源供給ライン222を介して商用電源210の3相交流電圧が第1の電動機100Mに直接供給される。
【0058】
符号T4よりポンプ負荷が重くなる例えば4〜10(符号T3、符号T2、符号T6)の場合、第1の電動機100Mに第1の電源供給ライン222を介して商用電源210を直接供給して誘導電動機運転によって高トルクで運転する。定常運転時に万一急激な負荷変動等で永久磁石型同期運転をおこなう第1の電動機100Mが同期はずれを起こした場合、第1の電動機100Mの運転を永久磁石型同期運転から誘導電動機運転に切り替え、商用電源210の3相交流電圧を直接第1の電動機100Mに供給することで継続運転が可能となる。その後、再びポンプ負荷が軽くなると第1の電動機100Mの運転を誘導電動機運転から永久磁石型同期運転に切り替えて定常運転状態になる。
【0059】
上述したように、本発明の第1の実施形態に係る永久磁石と2次導体を合わせもつ第1の電動機100Mは、第1の電動機100Mの運転状態を検出部によって検出し、検出した結果を制御部150に出力し、制御部150が検出部で検出した結果により第1の電動機100Mの運転状態を判定することで商用電源210の直接供給ライン(第1の電源供給ライン222)もしくはインバータライン(第2の電源供給ライン224)との切り替えを行い、さらにポンプ負荷の大小による永久磁石同期トルクの引き込み、あるいは同期はずれによって永久磁石型同期運転と誘導電動機運転との運転の切り替えを行なうことを可能にしている。第1の電動機100Mへの電源の切り替えと運転状態を始動時と定常運転時で永久磁石型同期運転と誘導電動機運転を切り替えることで、運転性能の改善と電力消費の低減が可能になる。
【0060】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態では、本発明に係る容積式の真空ポンプ500の電動機として、永久磁石を有する第2の電動機200Mと2次導体を有する第3の電動機300Mとを有する場合の構成を例示する。
【0061】
<真空ポンプの構成>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る真空ポンプ500の構成を示す断面図である。図6(a)は図5の第2の電動機200Mの部分拡大図であり、(b)は図6(a)のII−II線断面図である。図7(a)は図5の第3の電動機300Mの部分拡大図であり、(b)は図7(a)のII−II線断面図である。
【0062】
図5において、ケーシング1内の第1の回転軸240及び第2の回転軸260に各々対応する一対のポンプロータを構成するポンプロータ2、2が配設されている。各々のポンプロータ2は両端部近傍で軸受3、3によって支持されている。各々のポンプロータ2は第2の電動機200M及び第3の電動機300Mによって回転駆動されるようになっている。各々のポンプロータ2の主軸4の図中の左側端部にはタイミングギア11が取り付けられており、第2の電動機200M及び第3の電動機300Mによって回転駆動された一対の各々のポンプロータ2は、タイミングギア11によって相互に反転方向に同期回転するようになっている。
【0063】
図6(a)及び(b)に示すように、第2の電動機200Mは第1の回転軸240のポンプロータ2、2とは反対側の端部に配置された電動機固定子50と電動機回転子60とから構成されている。電動機固定子50の内側に配置された電動機回転子60は、複数の永久磁石61を備えている。図7(a)及び(b)に示すように、第3の電動機300Mは第2の回転軸260のポンプロータ2、2とは反対側の端部に配置された電動機固定子70と電動機回転子80とから構成されている。電動機固定子70の内側に配置された電動機回転子80は、2次導体81と、電動機回転子40の両端部に配置された短絡環82とを備えている。第2の電動機200M及び第3の電動機300Mは、後述する制御部280の制御により第2の電動機200Mの運転と、第3の電動機300Mの運転と、が切り替えられる。
【0064】
図5では、各々の一対のポンプロータ2、2間及びケーシング1の内面との間には微小な隙間が形成されており、各ポンプロータ2、2は僅かなクリアランスを保って非接触で回転するようになっている。
【0065】
上記構成の真空ポンプ500において、第2の電動機200M及び第3の電動機300Mを駆動して各々の一対のポンプロータ2、2を回転することにより、吸気口(図示せず)から吸入されたガスが各々のポンプロータ2、2に従って排気側に移送され、排気口(図示せず)から排気される。
【0066】
図5において、運転制御装置270は、後述する検出部により検出される第2の電動機200M及び第3の電動機300Mの運転状態に応じて第2の電動機200Mの運転と第3の電動機の運転を同時に行ない、又は、第2の電動機200Mの運転と第3の電動機300Mの運転を切り替える制御部280を備えている。
【0067】
図5において、第2の電動機200Mは、配線L1を介して運転制御装置270と接続され、第3の電動機300Mは、配線L2を介して運転制御装置270と接続される。配線L1及びL2は第2の電動機200M及び第3の電動機300Mの電流値または第2の電動機200M及び第3の電動機300Mの回転数を検出するための配線である。
【0068】
なお、本実施形態では、ルーツ型の真空ポンプ500を用いる例を示したが、ルーツ型の真空ポンプに限定するものではなく、例えば、スクリュー型の真空ポンプ、または、ロータリーポンプ等に対しても本発明の第2の電動機200M及び第3の電動機300Mを併用して用いることは可能である。
【0069】
<第2の電動機駆動回路の構成>
次に、図5の運転制御装置270により制御される第2の電動機駆動回路400の構成例について図8を参照して説明する。
【0070】
まず、図8に示す第2の電動機駆動回路400の構成例を参照して説明する。図8において、第2の電動機駆動回路400は、商用電源(50/60Hz)410と、制御部280と、インバータ430と、第2の電流検出部440及び第3の電流検出部445と、第2の回転数検出部450及び第3の回転数検出部455と、を備えている。制御部280は、入力段に商用電源410が接続され、出力段に第1の電源供給ライン422を介して並列にインバータ230を介した第2の電動機200Mと第3の電動機300Mとが接続され、第2の電源供給ライン424を介してインバータ430を介した第2の電動機200Mが接続され、第3の電源供給ライン426を介した第3の電動機300Mが接続されている。また、制御部280は、第2の電流検出部440と第2の回転数検出部450及び第3の電流検出部445と第3の回転数検出部455が接続されている。第2の電流検出部440及び第3の電流検出部445は、第2の電動機200M及び第3の電動機300Mの入力段に流れる電流を検出して第2及び第3の電流検出信号SI2、SI3をそれぞれ制御部280に出力する。第2の回転数検出部450及び第3の回転数検出部455は、第2の電動機200M及び第3の電動機300Mの回転数を検出して第2及び第3の回転数検出信号SR2、SR3を制御部280にそれぞれ出力する。制御部280は、第2及び第3の電流検出信号SI2、SI3又は第2及び第3の回転数検出信号SR2、SR3により第2の電動機200M及び第3の電動機300Mの運転状態を判定し、その運転状態の判定結果に応じて上記第2の電動機200Mの運転と第3の電動機300Mの運転を同時に行ない、又は、第2の電動機200Mの運転と第3の電動機300Mの運転を切り換える。制御部280は、第2の電動機200M及び第3の電動機300Mの電源を切り替えるため電源ライン切替部420を備える。制御部280は、第2の電動機200Mの運転状態及び第3の電動機300Mの運転状態に応じて、第2の電動機200Mの運転と第3の電動機300Mの運転を同時に行なう場合は第1の電源供給ライン422を第2の電動機200M及び第3の電動機300Mの双方に接続するように、電源ライン切替部420を切り替える。また、制御部280は、第2の電動機200Mの運転のみを行う場合は第2の電源供給ライン424を第2の電動機200Mに接続するように、電源ライン切替部420を切り替え、第3の電動機300Mの運転のみを行う場合は第3の電源供給ライン422を第3の電動機300Mに接続するように電源ライン切替部420を切り替える。この制御部280による電源ライン切替部420の切り替え動作により、第2の電動機200Mの運転及び第3の電動機300Mの運転を同時に行う場合は第1の電源供給ライン422を介してインバータ430により周波数変換された商用電源410の3相交流電圧が第2の電動機200Mに供給され、この3相交流電圧が第3の電動機300Mに直接供給される。また、第2の電動機200Mの運転のみを行う場合は第2の電源供給ライン424を介してインバータ430により周波数変換された3相交流電圧が第2の電動機200Mに供給され、第3の電動機300Mの運転のみを行う場合は第3の電源供給ライン426を介して商用電源410の3相交流電圧が第3の電動機300Mに直接供給される。
【0071】
なお、本発明に係る第2の実施形態では、第2の電動機駆動回路400の構成として図8に示す構成例を示したが、これらの回路構成に限定されるものではなく、他の回路構成を用いてもよい。
【0072】
<第2の電動機及び第3の電動機の動作例>
次に、運転制御装置270において実行される第2の電動機200M及び第3の電動機300Mの上記運転切り替え動作について図9を参照して説明する。
【0073】
図9は、真空ポンプ500の運転状態と第2の電動機200M及び第3の電動機300Mの上記運転切り替え動作との関係を示す図である。この図9において、縦軸は第2の電動機200M及び第3の電動機300Mの回転速度を示し、横軸は真空ポンプ500の負荷状態(以下、ポンプ負荷という)を示している。この場合、ポンプ負荷は数値化(例えば、0〜13.5)して示しており、その数値が大きい程、ポンプ負荷は大きいものとする。
【0074】
また、図9では、第2の電動機200M及び第3の電動機300Mを同時に始動させてから運転状態を切り替えて第2の電動機200Mのみを運転させる定常運転状態になり、定常運転状態から過負荷運転状態になるまでの遷移状態を、図中に示す符号T1〜T5と、この符号間を結ぶ実線により示している。この時、ポンプ負荷の最小値、すなわちポンプロータの生成物が除去され、ポンプ負荷がない状態を0とし、ポンプ負荷の最大値、すなわち、ポンプロータに生成物が付着し、ポンプ負荷が重い状態を13.5とする。
【0075】
図9に示す符号T1においては、ポンプ負荷が例えば13.5、すなわちポンプロータ2に生成物が付着し、ポンプ負荷が重い状態である。この場合、始動時として第2の電動機200Mの運転と第3の電動機300Mの運転を併用して行うことにする。始動時に第2の電動機200Mの運転と第3の電動機300Mの運転を併用して行うため、ポンプロータに生成物が付着し生成物が付着しポンプ負荷が重い状態であっても、高トルクでの始動が可能となる。
【0076】
符号T2においては、ポンプ負荷が例えば3.5、すなわち始動時からの回転速度上昇とともに生成物が除去されポンプ負荷が軽くなることによって、符号T2の電源切り替えポイントである誘導機同期回転数まで上昇する。このとき、第2の電動機駆動回路400の第2の回転数検出部450及び第3の回転数検出部455は、第2の電動機200Mと第3の電動機300Mの併用運転している第2の電動機200Mと第3の電動機300Mの回転数をそれぞれ検出して第2及び第3の回転数検出信号SR2、SR3を制御部280に出力する。第2の電流検出部440及び第3の電流検出部445は、第2の電動機200Mの運転と第3の電動機300Mの併用運転している第2の電動機200Mの入力段と第3の電動機300Mの入力段の電流をそれぞれ検出して第2及び第3の電流検出信号SI2、SI3をそれぞれ制御部280に出力する。そして、第2及び第3の電流検出信号SI2、SI3又は第2及び第3の回転数検出信号SR2、SR3がそれぞれ入力された制御部280は、第2の電動機200Mと第3の電動機300Mの運転状態を判定する。この運転状態の判定結果によって、第2の電動機200Mと第3の電動機300Mの併用運転を行っている第1の電源供給ライン422から第2の電動機200Mの永久磁石型同期運転のみを行う第2の電源供給ライン424に電源ライン切替部420により電源の切り替えを行う。この切り替えによって、第2の電源供給ライン424を介してインバータ430により周波数変換された3相交流電圧が第2の電動機200Mのみに供給される。このように、第2の電動機200Mと第3の電動機300Mとの併用運転から第2の電動機200Mの永久磁石型同期運転に切り替えることによって、永久磁石型同期運転で定格回転数まで昇速させて運転するため、定格運転時は永久磁石型同期電動機による省エネルギ運転が可能となる。
【0077】
符号T3においては、例えば、ポンプ負荷が3の場合、第2の電動機駆動回路400のインバータ430制御により誘導機同期回転数から定格回転数まで上昇させる。
【0078】
符号T4においては、例えば、ポンプ負荷が1〜3の場合、すなわちポンプロータに付着した生成物が除去された状態では、ポンプ負荷1(到達)とポンプ負荷3(最大ガス負荷)区間を永久磁石型同期運転にて省エネルギ運転する。このときの状態が定常運転状態である。
【0079】
なお、符号T11においては、例えば、ポンプ負荷が3.5の場合、すなわちポンプロータに生成物が付着していないため、第2の電動機200Mの運転のみで始動している。その後、第2の電動機駆動回路400のインバータ430制御により定格回転数まで上昇させている。
【0080】
符号T3から符号T2に移行して、例えば、ポンプ負荷が3.5の場合、すなわち第2の電動機200Mの定常運転時にポンプロータに生成物が付着し、ポンプ負荷が重くなると、第2の電動機駆動回路400のインバータ430制御により誘導機同期回転数まで第2の電動機200Mの回転数を低下させる。このとき、第2の電動機駆動回路400の第2の回転数検出部450は、永久磁石型同期運転を行っている第2の電動機200Mの回転数を検出して第2の回転数検出信号SR2を制御部280に出力する。第2の電流検出部440は、永久磁石型同期運転を行っている第2の電動機200Mの入力段に流れる電流を検出して第2の電流検出信号SI2を制御部280に出力する。そして、第2の電流検出信号SI2又は第2の回転数検出信号SR2が入力された制御部280は、第2の電動機200Mの運転状態を判定する。この運転状態の判定結果によって、永久磁石型同期運転と誘導電動機運転を併用して行うように電源ライン切替部420により電源の切り替えを行う。この切り替えによって、第1の電源供給ライン422を介してインバータ430により周波数変換された商用電源410の3相交流電圧が第2の電動機200Mに供給され、この3相交流電圧が第3の電動機300Mに直接供給される。
【0081】
符号T2よりポンプ負荷が重くなる、例えば3.5〜13.5(符号T2、符号T5)の場合、第1の電動機200Mと第2の電動機300Mを併用運転し高トルク運転する。定常運転時に万一急激な負荷変動等で永久磁石同期トルクを超える負荷が生じた場合には、第2の電動機200Mと第3の電動機300Mの併用運転を行うことで継続運転が可能となる。その後、第2の電動機200M単独による永久磁石型同期運転に切り替えて定常運転状態になる。
【0082】
上述したように、本発明の第2の実施形態に係る第2の電動機200Mと第3の電動機300Mは、第2の電動機200Mと第3の電動機300Mとが併用運転している運転状態を検出部によってそれぞれ検出し、検出した結果をそれぞれ制御部280に出力し、制御部280が検出部で検出した結果により第2の電動機200M及び第3の電動機300Mの運転状態を判定することで永久磁石型同期運転と誘導電動機運転との併用運転と永久磁石型同期運転のみの運転に切り替えることを可能にしている。始動時に第2の電動機200Mと第3の電動機300Mにより併用運転を行い、定常運転時に第2の電動機200Mのみの運転に切り替えることで、運転性能の改善と電力消費の低減が可能になる。
【符号の説明】
【0083】
20…回転軸、30…電動機固定子、40…電動機回転子、100M…誘導電動機、120…真空ポンプ、140…運転制御部、150…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータケーシング内に配置されたポンプロータと、
前記ポンプロータを回転させる回転軸と、
前記回転軸の端部に連結され複数の永久磁石が配置され、かつ、前記複数の永久磁石の周囲に2次導体が配置された電動機回転子を有し、前記回転軸を駆動して前記ポンプロータを回転させる電動機と、
前記電動機の運転状態を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記電動機の運転状態に応じて、前記永久磁石を用いて前記回転軸を駆動する永久磁石型同期運転と、前記2次導体を用いて前記回転軸を駆動する誘導電動機運転と、を切り換える制御部と、
を備えることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
商用電源の周波数を変換して出力するインバータと、
前記商用電源を前記電動機に対して直接供給する第1の電源供給ラインと、
前記商用電源を前記インバータを介して前記商用電源の周波数を変換して前記電動機に対して供給する第2の電源供給ラインと、を備え、
前記制御部は、前記永久磁石型同期運転を行う場合は前記第2の電源供給ラインを前記電動機に接続し、前記誘導電動機運転を行う場合は前記第1の電源供給ラインを前記電動機に接続する電源ライン切替部を有することを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記検出部は、前記電動機に流れる電流を検出する電流検出部を有し、
前記制御部は、前記電流検出部により検出される電流値に応じて前記電動機の運転状態を判定し、判定した運転状態に応じて前記永久磁石型同期運転と前記誘導電動機運転とを切り換えることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記検出部は、前記電動機の回転数を検出する回転数検出部を有し、
前記制御部は、前記回転数検出部により検出される回転数に応じて前記電動機の運転状態を判定し、判定した運転状態に応じて前記永久磁石型同期運転と前記誘導電動機運転とを切り換えることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記制御部は、前記検出部により検出された前記電動機の運転状態により前記真空ポンプの負荷状態を判定し、当該真空ポンプの負荷状態に応じて前記永久磁石型同期運転と前記誘導電動機運転とを切り換えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記制御部は、前記真空ポンプの負荷状態を数値化し、前記負荷状態の数値範囲に応じて前記永久磁石型同期運転と前記誘導電動機運転とを切り換えることを特徴とする請求項5記載の真空ポンプ。
【請求項7】
ロータケーシング内に配置された2つのポンプロータと、
前記2つのポンプロータを各々回転させる第1の回転軸及び第2の回転軸と、
前記第1の回転軸の端部に連結され複数の永久磁石が配置された電動機回転子を有する第1の電動機と、
前記第2の回転軸の端部に連結され2次導体が配置された電動機回転子を有する第2の電動機と、
前記第1の電動機の運転状態及び前記第2の電動機の運転状態を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記第1の電動機の運転状態及び前記第2の電動機の運転状態に応じて、前記第1の電動機の運転と前記第2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記第2の電動機の運転を切り換える制御部と、
を備えることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項8】
商用電源の周波数を変換して出力するインバータと、
前記商用電源を前記インバータを介して前記商用電源の周波数を変換して前記第1の電動機に対して供給するとともに前記第2の電動機に対して直接供給する第1の電源供給ラインと、
前記商用電源を前記インバータを介して前記商用電源の周波数を変換して第1の電動機に対して供給する第2の電源供給ラインと、
前記商用電源を前記第2の電動機に対して直接供給する第3の電源供給ラインと、を備え、
前記制御部は、前記第1の電動機の運転状態及び前記第2の電動機の運転状態に応じて、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行なう場合は前記第1の電源供給ラインを前記第1の電動機及び前記第2の電動機の双方に接続し、前記第1の電動機の運転のみを行う場合は前記第2の電源供給ラインを前記第1の電動機に接続し、前記第2の電動機の運転のみを行う場合は前記第3の電源供給ラインを前記第2の電動機に接続する電源ライン切替部を有することを特徴とする請求項7記載の真空ポンプ。
【請求項9】
前記検出部は、前記第1の電動機及び前記第2の電動機に流れる電流を各々検出する電流検出部を有し、
前記制御部は、前記電流検出部により検出される電流値に応じて前記第1の電動機及び前記第2の電動機の各運転状態を判定し、判定した各運転状態に応じて前記第2の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を切り換えることを特徴とする請求項7又は8に記載の真空ポンプ。
【請求項10】
前記検出部は、前記第1の電動機及び前記第2の電動機の回転数を各々検出する回転数検出部を有し、
前記制御部は、前記回転数検出部により検出される回転数に応じて前記第1の電動機及び前記第2の電動機の運転状態を判定し、判定した各運転状態に応じて前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を切り換えることを特徴とする請求項7又は8に記載の真空ポンプ。
【請求項11】
前記制御部は、前記検出部により検出された前記第1の電動機及び前記第2の電動機の運転状態により前記真空ポンプの負荷状態を判定し、当該真空ポンプの負荷状態に応じて前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を切り換えることを特徴とする請求項7乃至10の何れか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項12】
前記制御部は、前記真空ポンプの負荷状態を数値化し、前記負荷状態の数値範囲に応じて前記第1の電動機の運転と前記第2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記第2の電動機の運転を切り換えることを特徴とする請求項11記載の真空ポンプ。
【請求項13】
ロータケーシング内に配置されたポンプロータと、前記ポンプロータを回転させる回転軸と、前記回転軸の端部に連結され複数の永久磁石が配置され、かつ、前記複数の永久磁石の周囲に2次導体が配置された電動機回転子を有し、前記回転軸を駆動して前記ポンプロータを回転させる電動機を有する真空ポンプの運転方法であって、
前記電動機の運転状態を検出し、
前記検出された前記電動機の運転状態に応じて、前記永久磁石を用いて前記回転軸を駆動する永久磁石型同期運転と、前記2次導体を用いて前記回転軸を駆動する誘導電動機運転と、を切り換えることを特徴とする真空ポンプの運転方法。
【請求項14】
前記誘導電動機運転を行う場合は、商用電源を前記電動機に対して直接供給する第1の電源供給ラインを前記電動機に接続し、前記永久磁石型同期運転を行う場合は、商用電源の周波数を変換して前記電動機に対して供給する第2の電源供給ラインを前記電動機に接続することを特徴とする請求項13記載の真空ポンプの運転方法。
【請求項15】
前記電動機に流れる電流値を検出し、
前記検出された電流値に応じて前記電動機の運転状態を判定し、
前記判定した運転状態に応じて前記永久磁石型同期運転と前記誘導電動機運転とを切り換えることを特徴とする請求項13又は14に記載の真空ポンプの運転方法。
【請求項16】
前記電動機の回転数を検出し、
前記検出された回転数に応じて前記電動機の運転状態を判定し、
前記判定した運転状態に応じて前記永久磁石型同期運転と前記誘導電動機運転とを切り換えることを特徴とする請求項13又は14に記載の真空ポンプの運転方法。
【請求項17】
前記検出された前記電動機の運転状態により前記真空ポンプの負荷状態を判定し、
前記真空ポンプの負荷状態に応じて前記永久磁石型同期運転と前記誘導電動機運転とを切り換えることを特徴とする請求項13乃至16の何れか一項に記載の真空ポンプの運転方法。
【請求項18】
前記真空ポンプの負荷状態を数値化し、前記負荷状態の数値範囲に応じて前記永久磁石型同期運転と前記誘導電動機運転とを切り換えることを特徴とする請求項17記載の真空ポンプの運転方法。
【請求項19】
ロータケーシング内に配置された2つのポンプロータと、前記2つのポンプロータを各々回転させる第1の回転軸及び第2の回転軸と、前記第1の回転軸の端部に連結され複数の永久磁石が配置された電動機回転子を有する第1の電動機及び第2の回転軸の端部に連結され2次導体が配置された電動機回転子を有する第2の電動機を有する真空ポンプの運転方法であって、
前記第1の電動機の運転状態及び前記第2の電動機の運転状態を検出し、
前記検出された前記第1の電動機の運転状態及び前記第2の電動機の運転状態に応じて、前記第1の電動機の運転と前記第2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記第2の電動機の運転を切り換えることを特徴とする真空ポンプの運転方法。
【請求項20】
前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行なう場合は、商用電源の周波数を変換して第1の電動機に対して供給するとともに前記第2の電動機に対して直接供給する第1の電源供給ラインを前記第1の電動機及び前記第2の電動機の双方に接続し、
前記第1の電動機の運転のみを行う場合は、前記商用電源の周波数を変換して前記第1の電動機に対して供給する第2の電源供給ラインを前記第1の電動機に接続し、
前記第2の電動機の運転のみを行う場合は、前記商用電源を前記第2の電動機に対して直接供給する第3の電源供給ラインを前記第2の電動機に接続することを特徴とする請求項19記載の真空ポンプの運転方法。
【請求項21】
前記第1の電動機及び前記第2の電動機に流れる電流値を各々検出し、
前記検出された電流値に応じて前記第1の電動機及び前記第2の電動機の各運転状態を判定し、
前記判定した各運転状態に応じて前記第2の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を切り換えることを特徴とする請求項19又は20に記載の真空ポンプの運転方法。
【請求項22】
前記第1の電動機及び前記第2の電動機の回転数を各々検出し、
前記検出された回転数に応じて前記第1の電動機及び前記第2の電動機の運転状態を判定し、
前記判定した各運転状態に応じて前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を切り換えることを特徴とする請求項19又は20に記載の真空ポンプ。
【請求項23】
前記検出された前記第1の電動機及び前記第2の電動機の運転状態により前記真空ポンプの負荷状態を判定し、
前記真空ポンプの負荷状態に応じて前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記2の電動機の運転を切り換えることを特徴とする請求項19乃至22の何れか一項に記載の真空ポンプの運転方法。
【請求項24】
前記真空ポンプの負荷状態を数値化し、前記負荷状態の数値範囲に応じて前記第1の電動機の運転と前記第2の電動機の運転を同時に行ない、又は、前記第1の電動機の運転と前記第2の電動機の運転を切り換えることを特徴とする請求項23記載の真空ポンプの運転方法。

【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−120268(P2012−120268A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265415(P2010−265415)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】