説明

真空乾燥装置

【課題】 簡素な構成とするとともに、熱エネルギーの消費を少なくすることができる真空乾燥装置を提供する。
【解決手段】 真空乾燥装置M1は、被乾燥物Dを収容する乾燥室11を備える乾燥タンク1および乾燥室11内を真空にするオイル型真空ポンプ2を備えている。また、乾燥タンク1とオイル型真空ポンプ2とは、流通管4,5で接続されており、流通管4,5には、水蒸気を凝縮させるコールドトラップ3が設けられている。乾燥タンク1とコールドトラップ3とには、それぞれヒートポンプ6が接続されている。乾燥室11で蒸発した被乾燥物Dの水分は、水蒸気となってコールドトラップ3まで搬送され、コールドトラップ3では、水蒸気が凝縮して水となる。ヒートポンプ6は、コールドトラップ3における凝縮熱を乾燥タンク1に移動させ蒸発熱として利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空乾燥装置に係り、特に、泥水や海水等の塩水などの被乾燥物から水分を蒸発させて被乾燥物を乾燥する真空乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を廃棄する際、廃棄物中の水分を蒸発させて廃棄物を乾燥させることにより、廃棄物の処理が容易になることが知られている。このような廃棄物としては、有機性廃棄物や汚泥など、さらには、トンネル等で発生する泥水などがある。さらに、海水を淡水化させる場合、浸出水や膜処理によって発生する濃縮水の乾燥を行う場合などもある。
【0003】
海水や濃縮水、さらには、泥水などの被乾燥物を乾燥させる真空乾燥装置として、従来、真空タンクを用いた乾燥装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この乾燥装置は、廃棄物を入れる真空タンクと、その真空タンクからの水蒸気を圧縮する水蒸気圧縮機を備えている。また、真空タンクと熱的に結合された水蒸気凝縮器を備えるとともに、水蒸気凝縮器からの不凝縮性ガスを自発的に排出する不凝縮性ガス排出手段および水蒸気凝縮器からの凝縮水を自発的に排出する凝縮水排出手段を備えている。
【0004】
水蒸凝縮器によって水蒸気を凝縮する際には、凝縮熱が発生する。ここで、上記特許文献1に開示された真空乾燥装置では、真空タンク内に水蒸気凝縮器が設けられている。このため、水蒸気凝縮する際に発生する凝縮熱によって真空タンク内を加熱することができ、真空タンク内の廃棄物の乾燥に寄与するというものである。
【0005】
また、この種の真空乾燥装置において、汚泥に含まれる水分を凝縮して得られる熱をヒートポンプによって回収し、汚泥を乾燥させる際の熱源として利用する汚泥乾燥装置がある(たとえば、特許文献2参照)。この汚泥乾燥装置は、真空乾燥機とエゼクタとを備えており、エゼクタによって真空乾燥機の内部を減圧する。また、真空乾燥機とエゼクタとの間にコンデンサが配設されており、真空乾燥機の排気を凝縮している。さらに、コンデンサには、ヒートポンプから冷却水が循環供給され、排気と冷却水との間で熱交換を行う。また、ヒートポンプは、真空乾燥機に対してヒートポンプ蒸気を供給して、真空乾燥機内の汚泥を乾燥する。さらに、冷却水は、排気およびコンデンサから熱を奪って冷却排水となり、ヒートポンプ蒸気は、汚泥に熱を与えることによって液化して加熱媒体となる。そして、ヒートポンプは、冷却排水と加熱媒体との間で熱交換を行い、冷却排水を冷却水とし、加熱媒体をヒートポンプ蒸気とする。こうして、汚泥を乾燥するための消費エネルギーを低減するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−126652号公報
【特許文献2】特開2010−158616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に開示された乾燥装置では、真空タンク内の水蒸気を圧縮する圧縮機を用いている。このため、装置全体が大掛かりとなってしまうという問題があった。真空タンク内の水蒸気については、たとえば圧縮機よりも装置構成が簡素である真空ポンプなどを用いて吸引することが考えられる。
【0008】
ところが、真空ポンプを用いて真空タンク内の水蒸気を吸引する場合、真空ポンプの上流側で水蒸気を凝縮させることとなる。このため、水蒸気が凝縮する際の凝縮熱を真空タンク(乾燥タンク)内の廃棄物(被乾燥物)の乾燥に利用することが難しくなってしまうという問題があった。
【0009】
また、上記特許文献2に開示された汚泥乾燥装置では、汚泥を乾燥して得られる気体を凝縮する際に、コンデンサ(凝縮器)を用いている。このため、コンデンサを冷却するための冷却装置(冷却塔)としてヒートポンプを用いる必要があること等から、複数のヒートポンプを用いている。したがって、装置全体が大型化してしまうという問題があった。また、真空乾燥機に対して、ヒートポンプからヒートポンプ蒸気を供給している。ここで、真空乾燥機内は減圧されているものの、ヒートポンプ内は減圧されていないことから、ヒートポンプ蒸気を100℃以上とする必要がある。このため、ヒートポンプ蒸気を加熱せざるを得ないことがあり、その分、多くの熱エネルギーを消費してしまうという問題があった。
【0010】
そこで、本発明の課題は、簡素な構成とするとともに、熱エネルギーの消費を少なくすることができる真空乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した本発明に係る真空乾燥装置は、被乾燥物を収容し、収容した被乾燥物における水分を蒸発させて乾燥する乾燥タンクと、乾燥タンク内を減圧する真空ポンプと、乾燥タンク内を減圧する際に乾燥タンクから排出された蒸気の凝縮による凝縮熱を吸熱し、乾燥タンクに供給するヒートポンプと、を備え、ヒートポンプは、凝縮側熱媒を介して凝縮熱を吸熱し、蒸発側熱媒を介して凝縮熱を乾燥タンクに供給することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る真空乾燥装置では、乾燥タンクを減圧するにあたり、真空ポンプを用いている。このため、水蒸気圧縮器などの大掛かりな設備を要することなく、簡素な構成とすることができる。また、乾燥タンク内は真空ポンプによって真空状態とされているため、被乾燥物に含まれる水分は100℃以下の温度で蒸発する。ここで、蒸発側熱媒としてヒートポンプ蒸気を用いた場合、ヒートポンプ蒸気は100℃以上であることから、被乾燥物に含まれる水分を蒸発させるためには余剰の熱が加えられていることとなる。この点、本発明に係る真空乾燥装置において、ヒートポンプは、凝縮側熱媒を介して凝縮熱を吸熱し、蒸発側液体熱媒を介して凝縮熱を乾燥タンクに供給する。このため、100℃未満の温度で凝縮熱を乾燥タンクに供給することができる。したがって、熱エネルギーの消費を少なくすることができる。
【0013】
ここで、真空ポンプがオイル型真空ポンプであり、オイル型真空ポンプには、油水分離装置が接続されており、真空ポンプと乾燥タンクとの間に、乾燥タンクから排出された蒸気を凝縮するコールドトラップが設けられており、ヒートポンプは、コールドトラップで凝縮された蒸気の凝縮熱を吸熱するようにすることができる。
【0014】
このように、真空ポンプがオイル型真空ポンプである場合、真空ポンプと乾燥タンクとの間にコールドトラップを配設し、コールドトラップで蒸気を凝縮することにより、蒸気が真空ポンプにおけるオイルと混入することを防止できる。ここで、コールドトラップで凝縮された蒸気の凝縮熱を吸収することにより、効率的に凝縮熱の吸熱を行うことができる。
【0015】
また、コールドトラップと、真空ポンプとが、配管で接続され、コールドトラップから排出される蒸気が配管を流通可能とされており、配管に圧力調整弁が設けられているようにすることができる。
【0016】
このように、配管に圧力調整弁が設けられていることにより、乾燥タンク内およびコールドトラップ内の圧力関係を調整し、乾燥タンクにおける蒸発促進やコールドトラップにおける凝縮促進を行うにあたって、好適な圧力で乾燥タンク内を減圧するとともに、蒸気の凝縮を行うことができる。
【0017】
さらに、真空ポンプが水封型真空ポンプであり、ヒートポンプは、水封型真空ポンプによって乾燥タンク内から排出された蒸気の凝縮による凝縮熱を水封型真空ポンプ内から吸熱するようにすることができる。
【0018】
このように、真空ポンプとして水封型真空ポンプを用いる場合、蒸気は水封型真空ポンプまで搬送され、水封型真空ポンプ内で凝縮する。このため、蒸気の凝縮による凝縮熱を水封型真空ポンプ内から吸熱することにより、蒸気の凝縮熱を好適に吸熱することができる。
【0019】
そして、ヒートポンプは、外気との間で熱交換を行う熱交換器を備えるようにすることができる。
【0020】
このように、ヒートポンプは、外気との間で熱交換を行う熱交換器を備えることにより、真空ポンプと乾燥タンクとの間の熱バランスが悪い場合に、外気との熱交換を付加的に行い、熱バランスの調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る真空乾燥装置によれば、簡素な構成とするとともに、水蒸気の凝縮熱を乾燥物の乾燥に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態に係る真空乾燥装置の構成図である。
【図2】第2の実施形態に係る真空乾燥装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る真空乾燥装置の構成図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る真空乾燥装置M1は、被乾燥物を収容して乾燥する乾燥タンク1、オイル型真空ポンプ2、およびコールドトラップ3を備えている。また、真空乾燥装置M1は、上流側流通管4および下流側流通管5を備え、さらに、ヒートポンプ6を備えている。乾燥タンク1とコールドトラップ3とは、水蒸気などの気体(蒸気)が流通可能とされた上流側流通管4によって接続されており、コールドトラップ3とオイル型真空ポンプ2とは、やはり水蒸気が流通可能とされた下流側流通管5によって接続されている。
【0025】
乾燥タンク1は、乾燥室11を備えており、乾燥室11の周囲には加温ジャケット12が配設されている。乾燥室11には、被乾燥物Dとして汚泥や海水等の塩水などが収容される。また、乾燥室11には、上流側流通管4の先端側が接続され、乾燥室11は上流側流通管4と連通している。加温ジャケット12は、ヒートポンプ6から循環供給される蒸発側熱媒が流通可能とされている。蒸発側熱媒としては、液体熱媒(たとえば水)や冷媒蒸気などが用いられている。さらに、乾燥室11の下部には、乾燥された被乾燥物Dを排出する排出口13が形成されている。
【0026】
なお、乾燥タンク1としては、加温ジャケット12を有するジャケット型のもののほか、加熱プレートを備えるプレート型のものを用いることもできる。さらに、乾燥室11にフィンを形成し、伝熱性を高めることもできる。この場合、フィンは、上部では長く、下部では短く、かつ伝熱面よりもフィン開口の大きさが小さくならないようにすることが好適である。また、乾燥室11に伝熱処理を施すこともできる。
【0027】
また、乾燥タンク1は、コールドトラップ3およびオイル型真空ポンプ2と接続されている。このうち、オイル型真空ポンプ2とコールドトラップ3との間には、下流側流通管5が配管され、コールドトラップ3と乾燥タンク1との間には、上流側流通管4が配管されている。
【0028】
オイル型真空ポンプ2は、ポンプ本体21と油水分離装置22とを備えている。ポンプ本体21は、オイルを循環させることによって気体を吸引する吸引力を発揮する。ポンプ本体21には、下流側流通管5の後端側が接続されており、ポンプ本体21は下流側流通管5と連通している。ポンプ本体21の吸引力は、流通管4,5およびコールドトラップ3を介して乾燥タンク1の乾燥室11に作用し、乾燥室11内を減圧して、乾燥室11内に真空状態を形成する。
【0029】
油水分離装置22は、ポンプ本体21に接続されており、ポンプ本体21に混入した水分をポンプ本体21のオイルから分離して除去する。こうして、油水分離装置22は、ポンプ本体21における水抜き作業を行う。また、ポンプ本体21は、吸引した水蒸気などの気体を外部に排出する。
【0030】
コールドトラップ3は、凝縮用熱交換器を備えており、凝縮用熱交換器は、オイル型真空ポンプ2が吸引した水蒸気が通過する凝縮用熱交換器31を備えている。凝縮用熱交換器における凝縮用熱交換器31には、上流側流通管4の後端部および下流側流通管5の先端部が接続されており、凝縮用熱交換器31は、冷えた伝熱面を備えている。また、コールドトラップ3は、水槽32を備えている。水槽32は、冷媒が液体冷媒である場合に備えられている。
【0031】
凝縮用熱交換器における凝縮用熱交換器31は、水槽32に貯水された凝縮側熱媒内に沈められており、凝縮用熱交換器31における伝熱面が凝縮側触媒と接触している。凝縮側熱媒としては、液体熱媒、たとえば水が用いられている。水槽32に貯水された凝縮側熱媒と伝熱面とが接触していることにより、凝縮用熱交換器31の伝熱面が冷却され、伝熱面は冷えた状態を維持する。
【0032】
ヒートポンプ6は、冷熱と温熱とを同時に取り出すいわゆる冷温同時取出ヒートポンプである。ヒートポンプ6には、蒸発側高温配管6Aおよび蒸発側低温配管6Bの一端側が接続されている。また、ヒートポンプ6には、凝縮側低温配管6Cおよび凝縮側高温配管6Dの一端側が接続されている。
【0033】
蒸発側高温配管6Aの他端側は、乾燥タンク1における加温ジャケット12に接続されており、ヒートポンプ6は、蒸発側高温配管6Aを介して高温の蒸発側熱媒を加温ジャケット12に供給している。また、蒸発側低温配管6Bの他端側は、乾燥タンク1における加温ジャケット12に接続されており、ヒートポンプ6は、蒸発側低温配管6Bを介して、被乾燥物Dに蒸発熱を吸熱されて低温となった蒸発側熱媒を加温ジャケット12から受け取る。
【0034】
さらに、凝縮側低温配管6Cの他端側は、コールドトラップ3における水槽32に接続されており、ヒートポンプ6は、凝縮側低温配管6Cを介して低温の凝縮側熱媒を水槽32に供給している。そして、凝縮側高温配管6Dの他端側は、コールドトラップ3における水槽32に接続されており、ヒートポンプ6は、凝縮側高温配管6Dを介して、水蒸気が凝縮する際の凝縮熱を吸熱して高温となった凝縮側熱媒を水槽32から受け取る。
【0035】
また、ヒートポンプ6は、蒸発側高温配管6Aおよび蒸発側低温配管6Bを介して蒸発側熱媒を加温ジャケット12における配管に循環供給する。蒸発側熱媒は、乾燥室11内に収容された被乾燥物Dが蒸発熱を吸熱することによって冷却される。一方、ヒートポンプ6は、凝縮側低温配管6Cおよび凝縮側高温配管6Dを介して凝縮側熱媒をコールドトラップ3における水槽32に循環供給する。凝縮側熱媒は、水蒸気が凝縮する際の凝縮熱を吸熱することによって加熱される。
【0036】
さらに、ヒートポンプ6は、図示しない熱交換器を備えている。この熱交換器は、蒸発側熱媒あるいは凝縮側熱媒と外気との間での熱交換を行うものである。熱交換器を作動させることにより、蒸発側熱媒に外気から熱を吸熱することもできるし、蒸発側熱媒から外気に対して熱を与えることもできる。なお、熱交換器は、凝縮側熱媒と外気との間で熱交換を行うものとすることもできる。
【0037】
また、上流側流通管4には開閉弁7が設けられており、下流側流通管5には、圧力調整弁8および解放弁9が設けられている。開閉弁7、圧力調整弁8、および解放弁9を開放することにより、上流側流通管4および下流側流通管5が大気圧となる。また、解放弁9を閉じ、圧力調整弁8の開度を調整することにより、上流側流通管4および下流側流通管5内の圧力を調整することができる。
【0038】
次に、本実施形態に係る真空乾燥装置M1によって被乾燥物を乾燥する手順について説明する。本実施形態に係る真空乾燥装置M1は、いわゆるバッチ式の真空乾燥装置であり、乾燥室11に収容した乾燥物の乾燥後に、新たな被乾燥物の乾燥を行う。真空乾燥装置M1による乾燥物の乾燥を行う際には、まず、乾燥タンク1における排出口13を閉塞し、乾燥室11内に被乾燥物Dを投入する。また、上流側流通管4に設けられた開閉弁7は、閉じた状態としておき、乾燥室11を密閉して乾燥室11を気密状態とする。
【0039】
その一方、ヒートポンプ6を稼動して、蒸発側配管6A,6Bに蒸発側熱媒をたとえば温水として循環供給し、凝縮側配管6C,6Dに凝縮側熱媒をたとえば冷水として循環供給する。このとき、蒸発側配管6A,6Bに循環供給する蒸発側熱媒の温度を30℃〜70℃に調整し、凝縮側配管6C,6Dに循環供給する凝縮側熱媒の温度を10℃〜30℃に調整する。
【0040】
蒸発側熱媒および凝縮側熱媒の温度を調整し、温度が安定したら、開閉弁7を解放し、乾燥室11と上流側流通管4の間で通気状態を形成する。それとともに、オイル型真空ポンプ2を作動させ、乾燥室11内の空気を排出して乾燥室11内を減圧する。乾燥室11内を減圧することにより、乾燥室11内が真空状態となる。
【0041】
乾燥室11内が減圧された乾燥タンク1では、乾燥室11に収容された被乾燥物Dと加温ジャケット12に供給された蒸発側熱媒との間で熱交換が行われる。この熱交換により、蒸発側熱媒が被乾燥物Dに蒸発熱を吸熱されて、被乾燥物Dに含まれる水分が蒸発し、被乾燥物Dが乾燥する。
【0042】
また、蒸発した水分は、上流側流通管4を通過してコールドトラップ3における凝縮用熱交換器31に移動する。コールドトラップ3における凝縮用熱交換器31では、ヒートポンプ6から凝縮側低温配管6Cを介して供給された、たとえば冷水との間で熱交換が行われる。この熱交換では、たとえば冷水が水蒸気の凝縮熱を得て、凝縮用熱交換器31では、水蒸気が凝縮して水となる。ただし、凝縮しきらなかった一部の水蒸気は、そのまま下流側流通管5を通過してオイル型真空ポンプ2に移動する。
【0043】
このとき、圧力調整弁8の開度を調整し、乾燥タンク1における乾燥室11およびコールドトラップ3が備える凝縮用熱交換器31の水蒸気圧力を調整し、この水蒸気圧が、乾燥室11内の温度である乾燥室温度Teに対応する水蒸気圧と、凝縮用熱交換器31内の温度であるコールドトラップ温度Tcに対応する水蒸気圧の中間値となるようにする。ここで、乾燥室温度Teは、コールドトラップ温度Tcよりも高い温度となっている。このように水蒸気圧を調整することにより、水蒸気を効果的に凝縮することができる。こうして、被乾燥物Dの乾燥処理が行われる。
【0044】
さらに、ヒートポンプ6に設けられた熱交換器によって、蒸発側熱媒および凝縮側熱媒と外気との間で熱交換を行わせ、蒸発側熱媒および凝縮側熱媒に対する加熱と除熱とのバランスを取るようにすることもできる。このように加熱と除熱とのバランスを取ることにより、被乾燥物に含まれる水分の蒸発および凝縮の間における熱交換をより効率的に行うことができる。
【0045】
また、本実施形態に係る真空乾燥装置M1では、乾燥室11内を減圧するにあたって、オイル型真空ポンプ2を用いている。このため、圧縮機などといった大型の機器を用いる必要がなくなる。したがって、簡素な構成とすることができる。また、真空ポンプとしてオイル型真空ポンプ2を用いることにより、オイル型真空ポンプ2と乾燥タンク1との間にコールドトラップ3を配設することとなる。このコールドトラップ3で水蒸気を凝縮することにより、水蒸気がオイル型真空ポンプ2におけるオイルと混入することを防止できる。
【0046】
さらに、オイル型真空ポンプ2には、油水分離装置22が設けられている。このため、オイル型真空ポンプ2に水蒸気や水蒸気が凝縮した水が移動した場合でも、オイルと水とを容易に分離することができる。したがって、オイル型真空ポンプ2を確実に作動させることができる。
【0047】
また、被乾燥物Dに含まれる水分を蒸発させて被乾燥物Dを乾燥するには、被乾燥物Dに熱を付与することが必要となる。被乾燥物Dの乾燥処理を行っている間、乾燥室11内は真空状態となっているので、低い温度で伝熱効率の高い強制対流あるいは沸騰熱伝達を起こすことができる。
【0048】
このため、加温ジャケット12に供給する蒸発側熱媒がたとえば液体であり、その温度が100℃以下の低い温度であっても、被乾燥物Dに熱を付与することができ、被乾燥物Dにおける水分を蒸発させることができる。したがって、熱エネルギーの消費を少なくすることができる。
【0049】
また、乾燥室11内で被乾燥物Dの水分が蒸発して発生する水蒸気は、オイル型真空ポンプ2によって吸引され、コールドトラップ3における凝縮用熱交換器の凝縮用熱交換器31まで移動する。凝縮用熱交換器31の周囲には、水槽32が設けられており、水槽32には低温の凝縮側熱媒が供給されている。
【0050】
コールドトラップ3では、凝縮用熱交換器31を通過する水蒸気と水槽32に貯水された凝縮側熱媒との間で熱交換が行われ、凝縮側熱媒が水蒸気から凝縮熱を吸熱し、水蒸気が凝縮する。一方、水蒸気が凝縮する際の凝縮熱が移動することにより、凝縮側熱媒が加熱される。加熱された凝縮側熱媒は、ヒートポンプ6に流入する。
【0051】
ここで、ヒートポンプ6は、乾燥タンク1に対して蒸発側熱媒を循環供給し、コールドトラップ3に対して凝縮側熱媒を循環供給している。乾燥タンク1からヒートポンプ6に戻る蒸発側熱媒は、被乾燥物Dに含まれる水分に蒸発熱を吸熱されている一方、コールドトラップ3から戻る凝縮側熱媒は、水蒸気から凝縮熱を吸熱している。蒸発側熱媒が吸熱される蒸発熱Qeと凝縮側熱媒が吸熱する凝縮熱Qcとは、熱損失が無ければ絶対値がほぼ等しく符号が逆となる関係となっている。このため、ヒートポンプ6によって蒸発側熱媒と凝縮側熱媒との間で熱交換を行うことにより、水蒸気が凝縮する際の凝縮熱Qcを被乾燥物Dに含まれる水分を蒸発させる際の蒸発熱Qeとして利用することができる。
【0052】
また、乾燥処理を開始した直後においては、凝縮熱Qcが得られないので、被乾燥物Dに含まれる水分を蒸発させるための蒸発熱Qeとして凝縮熱Qcを利用することができない。そこで、ヒートポンプ6に設けられた熱交換器を用いて、外気の熱である外気熱Qaを吸熱し、蒸発熱Qeとして利用することができる。その後、乾燥処理の運転が安定すると、凝縮熱Qcを蒸発熱Qeとして利用することができ、熱効率のよい運転を行うことができる。なお、乾燥処理を開始した直後以外のときであっても、必要となる蒸発熱Qeに対して凝縮熱Qcが不足する場合には、外気熱Qaを取り込んで蒸発熱Qcとして利用することもできる。
【0053】
さらに、水蒸気を凝縮させるためにコンデンサを用いた場合、コンデンサを冷却するための冷却装置としてヒートポンプを設ける必要などが生じる。この点、真空乾燥装置M1では、水蒸気を凝縮させるにあたってコールドトラップ3を用いている。コールドトラップ3については冷却に対する要求は少ないため、別途冷却装置としてのヒートポンプを設けるなどの必要はなくなり、その分装置の簡素化を図ることができる。
【0054】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図2は、第2の実施形態に係る真空乾燥装置の構成図である。図2に示すように、第2の実施形態に係る真空乾燥装置M2は、第1の実施形態に係る真空乾燥装置M1と比較して、真空ポンプが異なる。第1の実施形態における真空乾燥装置M1では、真空ポンプとしてオイル型真空ポンプ2を用いていた。一方、本実施形態に係る真空乾燥装置M2では、真空ポンプとして水封型真空ポンプ50を用いている。
【0055】
水封型真空ポンプ50と乾燥タンク1とは、水蒸気などの気体が流通可能とされた流通管51によって接続されている。流通管51の先端側は、乾燥タンク1における乾燥室11と連通しており、流通管51の後端部は、水封型真空ポンプ50と連通している。水封型真空ポンプ50の吸引力は、流通管51を介して乾燥タンク1の乾燥室11に作用し、乾燥室11内を減圧して、乾燥室11内に真空状態を形成する。
【0056】
さらに、真空乾燥装置M2は、ヒートポンプ6を備えている。ヒートポンプ6には、凝縮側低温配管6Cおよび凝縮側高温配管6Dの一端側が接続されており、凝縮側低温配管6Cおよび凝縮側高温配管6Dの他端側は、水封型真空ポンプ50に接続されている。ヒートポンプ6は、凝縮側低温配管6Cを介して低温の凝縮側熱媒を水封型真空ポンプ50に供給している。また、ヒートポンプ6は、水封型真空ポンプ50において水蒸気が凝縮する際の凝縮熱を吸熱して高温となった凝縮側熱媒を、凝縮側高温配管6Dを介して受け取っている。なお、場合によっては、水封型真空ポンプ50に対して断熱を施すこともできる。その他の構成については上記の実施形態に係る真空乾燥装置M1と同様である。
【0057】
本実施形態に係る真空乾燥装置M2においては、上記第1の実施形態に係る真空乾燥装置M1が真空ポンプとしてオイル型真空ポンプ2を用いているのに対して、真空ポンプとして、水封型真空ポンプ50を用いている点において異なっている。水封型真空ポンプ50では、吸引力を発生するために封水を利用しているため、乾燥タンク1における乾燥室11から直接空気などを吸引して、真空状態を形成している。このため、乾燥室11から排出される水蒸気は、水封型真空ポンプ50に直接流入し、水封型真空ポンプ50内で凝縮側熱媒に混入して凝縮する。
【0058】
ここで、一般的な水封型真空ポンプでは、膨大な封水に水蒸気が混入することで水蒸気を凝縮させるが、このときの蒸発圧力は、封水の水温に依存する。このような水封型真空ポンプを用いて乾燥タンク1から水蒸気を移動させる場合、乾燥タンク1から移動してきた水蒸気が封水に混入し、水蒸気が封水と同化する。その結果、蒸発熱相当の熱で封水が温められ、蒸発圧力が上昇し、凝縮に要する封水の温度が上昇してしまうため、封水を冷却する冷却水が必要となることとなる。
【0059】
この点、本実施形態に係る真空乾燥装置M2M2では、封水を冷却するために凝縮に要する封水の温度が上昇してしまうため、封水としてヒートポンプ6から循環供給される凝縮側熱媒を利用する。一般的な水封型真空ポンプにおける昇温対策として、ヒートポンプ6から循環供給される凝縮側熱媒を用いることにより、ヒートポンプ6において凝縮側熱媒と蒸発側熱媒との間で熱交換を行うことができる。したがって、凝縮側熱媒の温度を低温に維持することができるので、水蒸気の凝縮を好適に行うことができる。
【0060】
さらに、乾燥タンクや配管などに対して、適宜断熱部材を配設したり、加温システムを設けたりすることもできる。このような断熱部材や加温システムなどを設けることにより、乾燥タンクや配管における不適切な位置における水蒸気の凝縮の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…乾燥タンク
2…オイル型真空ポンプ
3…コールドトラップ
4…上流側流通管
5…下流側流通管
6…ヒートポンプ
6A…蒸発側高温配管
6B…蒸発側低温配管
6C…凝縮側低温配管
6D…凝縮側高温配管
7…開閉弁
8…圧力調整弁
9…解放弁
11…乾燥室
12…加温ジャケット
13…排出口
21…ポンプ本体
22…油水分離装置
31…凝縮用熱交換器
32…水槽
50…水封型真空ポンプ
51…流通管
D…被乾燥物
M1,M2…真空乾燥装置
Qa…外気熱
Qc…凝縮熱
Qe…蒸発熱
Tc…コールドトラップ温度
Te…乾燥室温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥物を収容し、収容した前記被乾燥物における水分を蒸発させて乾燥する乾燥タンクと、
前記乾燥タンク内を減圧する真空ポンプと、
前記乾燥タンク内を減圧する際に前記乾燥タンクから排出された蒸気の凝縮による凝縮熱を吸熱し、前記乾燥タンクに供給するヒートポンプと、を備え、
前記ヒートポンプは、凝縮側熱媒を介して前記凝縮熱を吸熱し、
蒸発側熱媒を介して前記凝縮熱を前記乾燥タンクに供給することを特徴とする真空乾燥装置。
【請求項2】
前記真空ポンプがオイル型真空ポンプであり、
前記オイル型真空ポンプには、油水分離装置が接続されており、
前記真空ポンプと前記乾燥タンクとの間に、前記乾燥タンクから排出された蒸気を凝縮するコールドトラップが設けられており、
前記ヒートポンプは、前記コールドトラップで凝縮された蒸気の凝縮熱を吸熱する請求項1に記載の真空乾燥装置。
【請求項3】
前記コールドトラップと、前記真空ポンプとが、配管で接続され、前記コールドトラップから排出される蒸気が前記配管を流通可能とされており、
前記配管に圧力調整弁が設けられている請求項1または請求項2に記載の真空乾燥装置。
【請求項4】
前記真空ポンプが水封型真空ポンプであり、
前記ヒートポンプは、前記水封型真空ポンプによって前記乾燥タンク内から排出された蒸気の凝縮による凝縮熱を前記水封型真空ポンプ内から吸熱する請求項1に記載の真空乾燥装置。
【請求項5】
前記ヒートポンプは、外気との間で熱交換を行う熱交換器を備える請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の真空乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−108678(P2013−108678A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254193(P2011−254193)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】