説明

真空凍結乾燥味噌汁およびその製造方法

【課題】味噌や具材の風味が損なわれず、具材の味慣れ具合を調整でき、実際の味噌汁に近い風味を味わうことができる真空凍結乾燥味噌汁とその製造方法を提供する。
【解決手段】味噌を含む調味液と、該調味液を用いて予め調味して味慣れ具合を調整した具材とを真空凍結乾燥した真空凍結乾燥味噌汁1において、味噌を含む調味料および賦形剤を含む第1の調味液と第1の具材グループ4を混合した混合物を真空凍結乾燥した、調味基材を絡めた具材2と、前記第1の調味液と比較して味噌を含む調味料の配合割合を変えた味噌を含む調味料および賦形剤を含む第2の調味液と第2の具材グループ5を混合した混合物を真空凍結乾燥した、具材を含む調味基材3とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空凍結乾燥味噌汁とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱湯を注いで調理でき、すぐに食することのできる食品は、消費者のニーズに合わせて様々なものが製造され、この中の一つに味噌汁がある。熱湯を注いで簡単に調理できる味噌汁の代表的な製品形態として、具材や調味料を乾燥させずにレトルトパウチ等で包装したもの、生タイプの味噌等が含まれる調味料と乾燥具材を別個包装したものがある。他にも具材と調味料を乾燥させて包装した製品があり、こちらの製品は軽量で持ち運び易く、保存性に優れている。具材と調味料を乾燥させた製品には、味噌や出汁等を含む調味料を乾燥させて粉末状または顆粒状にした調味基材と、別途乾燥した乾燥具材とを一緒に包装したもの、調味料と具材を混合してすべて一緒に凍結乾燥し、調味基材と乾燥具材が一体になったもの、調味料と具材を分けて凍結乾燥したものを組み合わせて一包装にしたもの等がある。
【0003】
熱湯を注いで調理でき、すぐに食することのできる乾燥食品や味噌汁について、可溶性調味基材から乾燥具材への味移りおよび色移りを確実に防止して、喫食時の風味を自然の風味に近い状態にした乾燥食品が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−183871公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでの乾燥味噌汁の中で、味噌を含む調味基材を乾燥して粉末状または顆粒状にした乾燥味噌汁は、その製法のため、味噌の風味が損なわれやすい。また、調味液と具材を一緒に混合して凍結乾燥させると、高濃度の調味液に具材を入れているので、具材に調味料の味が過度に移るという課題もある。また、特許文献1の調味基材と具材を別にして乾燥した食品は、予め具材を調味していないので、具材に味噌味が適度に染み込んだ実際の味噌汁に近い風味を味わうことができない。
【0006】
そこで本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、味噌や具材の風味が損なわれず、具材の味慣れ具合を調整でき、実際の味噌汁に近い風味を味わうことができる真空凍結乾燥味噌汁とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の真空凍結乾燥味噌汁は次の構成を備える。すなわち本発明は、味噌を含む調味液と、該調味液を用いて予め調味して味慣れ具合を調整した具材とを真空凍結乾燥した真空凍結乾燥味噌汁において、味噌を含む調味料と賦形剤を含む第1の調味液、および第1の具材グループを混合した混合物を真空凍結乾燥した、調味基材を絡めた具材と、前記第1の調味液と比較して具材に対する味噌の配合割合を多くした、味噌を含む調味料と賦形剤を含む第2の調味液、および第2の具材グループを混合した混合物を真空凍結乾燥した、具材を含む調味基材とを具備することを特徴とする。この構成によれば、具材をグループ分けして、それぞれ味噌を含む調味料の配合割合を変えた調味液で適度に味付けして真空凍結乾燥しているので、一般的な調理方法である味噌を溶かして具材を適度に煮込んで作られた味噌汁に近い具材と味噌の風味をもつ真空凍結乾燥味噌汁を提供できる。
【0008】
前記第1の具材グループに含まれる具材は前記第2の具材グループに含まれる具材よりも味噌を含む調味料に対して味慣れし易い具材であることで、味慣れし易い具材と味慣れし難い具材を分け、味慣れし易い具材でも調味液から過度な味移りが生じず、具材に合わせて適度に味慣れさせて煮込んだような味わいの真空凍結乾燥味噌汁を提供することができる。
【0009】
前記第1の具材グループに含まれる具材は前記第2の具材グループに含まれる具材よりも味噌を含む調味料からの色移りが生じ易い具材であることで、色移りし易い具材と色移りし難い具材を分け、色移りし易い具材でも調味液から過度な色移りが生じず、具材に合わせて適度で自然な色移りを現出させた真空凍結乾燥味噌汁を提供することができる。
【0010】
前記第1の具材グループは、豆腐、油揚げ、ホウレン草、小松菜、キャベツ、長葱、野沢菜、牛蒡、舞茸、椎茸、エノキ、茄子、南瓜、卵から選ばれる1以上の具材からなることで味噌を含む調味料に対して味慣れし易い具材と第1の調味液を混合しても味が過度に染み込まず、味噌を含む調味料からの色移りが生じ易い具材でも色が付き過ぎない真空凍結乾燥味噌汁を提供することができる。
【0011】
前記第2の具材グループは、ワカメ、人参、小葱から選ばれる1以上の具材からなることで、味噌を含む調味料に対して味慣れし難い具材と第1の調味液と比較して具材に対する味噌を含む調味料の配合割合を多くした第2の調味液を混合して味を適度に染み込ませ、味噌を含む調味料からの色移りが生じにくい具材にも適度に色を付けた真空凍結乾燥味噌汁を提供することができる。
【0012】
前記調味基材を絡めた具材と前記具材を含む調味基材とがブロック状に成形された真空凍結乾燥品で、それぞれ1または複数個含まれることにより、味慣れ、色移りのし易さによって具材を分け、具材への味噌を含む調味料の味、色の浸透度を調節して適した調味を施した具材を具材グループ別、または具材毎にブロック状に真空凍結乾燥した真空凍結乾燥味噌汁を提供できる。
【0013】
また、本発明の真空凍結乾燥味噌汁の製造方法は次の構成を備える。
味噌を含む調味料と賦形剤を含む第1の調味液、およびと第1の具材グループとを混合した混合物をトレイに入れ、真空凍結乾燥して調味基材を絡めた具材を製造する工程と、前記第1の調味液と比較して具材に対する味噌の配合割合を多くした、味噌を含む調味料と賦形剤を含む第2の調味液、および第2の具材グループとを混合した混合物をトレイに入れ、真空凍結乾燥して具材を含む調味基材を製造する工程と、前記製造した調味基材を絡めた具材と具材を含む調味基材とを併せて製品とする工程とを含むことを特徴とする。この製造方法によれば、味噌を含む調味料の配合割合を変えた第1、第2の調味液とグループ分けされた第1の具材グループと第2の具材グループをそれぞれ混合して調味しているので、本格的な風味を味わうことができる真空凍結乾燥味噌汁を製造することができる。
【0014】
前記第1の具材グループの具材に、前記第2の具材グループの具材よりも味噌を含む調味料に対して味慣れし易い具材を用いることにより、味慣れのし易さによって具材を分け、味慣れし易い具材でも調味液から過度な味移りが生じず、具材に合わせて味慣れさせると同時に過度の味移りを防止した真空凍結乾燥味噌汁を製造することができる。
【0015】
前記第1の具材グループの具材に、前記第2の具材グループの具材よりも味噌を含む調味料からの色移りが生じ易い具材を用いることにより、色移りのし易さによって具材を分け、色移りし易い具材でも調味液から過度な色移りが生じず、一般的な調理方法である味噌を溶かして作られた味噌汁に含まれる具材のような適度で自然な色移りした真空凍結乾燥味噌汁を製造することができる。
【0016】
前記第1の具材グループに、豆腐、油揚げ、ホウレン草、小松菜、キャベツ、長葱、野沢菜、牛蒡、舞茸、椎茸、エノキ、茄子、南瓜、卵から選ばれる1以上の具材を用いることにより、この具材と第1の調味液とを混合して真空凍結乾燥させた調味基材を絡めた具材は味噌汁の具材本来の風味と自然な色を再現し、具材に味と色を適度に染み込ませた真空凍結乾燥味噌汁を製造することができる。
【0017】
前記第2の具材グループに、ワカメ、人参、小葱から選ばれる1以上の具材を用いることにより、この具材と前記第1の調味液と比較して具材に対する味噌を含む調味料の配合割合を多くした第2の調味液とを混合して真空凍結乾燥させた具材を含む調味基材は味噌汁の具材本来の風味や本物感を再現し、具材に味と色を適度に染み込ませた真空凍結乾燥味噌汁を製造することができる。
【0018】
前記調味基材を絡めた具材および前記具材を含む調味基材をブロック状に製造する工程を含むことにより、種類に応じて味慣れ具合、色移り具合を調節させた具材が含まれるブロック状の凍結乾燥品を組み合わせて一包装にし、それぞれの具材の風味、色を保ちながら適度に味噌を含む調味料の味が染み込んだ真空凍結乾燥味噌汁を製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る真空凍結乾燥味噌汁およびその製造方法によれば、一般的な調理方法である味噌を溶かして具材を適度に煮込んで作られた味噌汁のように具材と味噌の風味が豊かで、具材をグループ分けして、それぞれ味噌を含む調味料の配合割合を変えた調味液で味慣れ具合を調整して適度に味付けした真空凍結乾燥味噌汁を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る真空凍結乾燥味噌汁の形態について、その一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は真空凍結乾燥味噌汁1を示し、調味基材を絡めた具材2と具材を含む調味基材3とを包装フィルム6で包装した包装品の断面図である。
【0023】
調味基材を絡めた具材2と具材を含む調味基材3はいずれも、味噌を含む調味料と賦形剤を含む調味液と、具材とを混合した混合物を真空凍結乾燥させた乾燥品である。具材は味噌等を含む調味液と混合することで、予め味慣れ具合が調整されている。
【0024】
調味基材を絡めた具材2に含まれる具材は第1の具材グループ4を、具材を含む調味基材3に含まれる具材は第2の具材グループ5を真空凍結乾燥させた乾燥品である。
調味基材を絡めた具材2と具材を含む調味基材3にそれぞれ含まれる調味基材は、味噌を含む調味料、賦形剤および水の配合量をそれぞれ変えることで、味噌を含む調味料の配合割合を調整した調味液を真空凍結乾燥させた乾燥品である。第1の具材グループ4と混合する第1の調味液と第2の具材グループ5と混合する第2の調味液とを比較すると、第1の調味液よりも第2の調味液の方が具材に対する味噌の配合割合は多い。
【0025】
調味基材を絡めた具材2は、第1の調味液と第1の具材グループ4との混合物をトレイに入れ、真空凍結乾燥させて製造される。具材を含む調味基材3は、第2の調味液と第2の具材グループ5との混合物をトレイに入れ、真空凍結乾燥させて製造される。
【0026】
製造された調味基材を絡めた具材2と具材を含む調味基材3とを併せて製品とする工程を経て真空凍結乾燥味噌汁1が製造される。
【0027】
具材は味噌を含む調味料に対して味の付き易さという指標で分別することもできる。具体的には、第1の具材グループ4と第2の具材グループ5に含まれる具材を比較した時、第1の具材グループ4は味噌を含む調味料に対して味慣れし易い具材であり、第2の具材グループ5は味噌を含む調味料に対して味慣れし難い具材である。
【0028】
具材は味噌を含む調味料からの色移りし易さという指標で分別することもできる。具体的には、第1の具材グループ4と第2の具材グループ5に含まれる具材を比較した時、第1の具材グループ4は味噌を含む調味料からの色移りが生じ易い具材であり、第2の具材グループ5は味噌を含む調味料からの色移りが生じ難い具材である。
【0029】
味慣れ具合の調整や色移りの程度は、味噌を含む調味料、賦形剤、水等を含む調味液の配合割合を変えることで行う他、具材に対する味噌を含む調味料、賦形剤、水等を含む調味液の量を変えることで行う。第1の具材グループ4には味噌を含む調味料の味、色が僅かでも付けばよく、過度に味や色を染み込ませると具材の風味を損ない、見た目が悪くなる。このため第1の具材グループ4は第1の調味液と絡ませればよく、必ずしも第1の調味液が浸透されていなくてもよい。また、第2の具材グループ5は、極僅かな味付けでは本物感を再現することができないため、味噌を含む調味料の味を適度に付け、色も適度に付けている。適度に味や色を付けるためには、具材5に第2の調味液が浸透していることが好ましいが、必ずしも浸透されていなくてもよい。第1の調味液と第2の調味液とを比較すると、第1の調味液よりも第2の調味液の方が味噌の配合量が多い傾向にある。
【0030】
第1の具材グループと第2の具材グループの定義は、味の付き方および/または色の付き方を考慮した相対的な違いによるものである。第1の具材グループ4に含まれる具材としては、豆腐、油揚げ等を含む大豆製品類、舞茸、椎茸、エノキを含む茸類、卵類の他、ホウレン草、小松菜、キャベツ、長葱、野沢菜、牛蒡、茄子、南瓜等が挙げられ、1または複数の種類の具材を適宜選択する。第2の具材グループ5に含まれる具材としては、ワカメを含む海藻類の他、人参、小葱等が挙げられ、1または複数の種類の具材を適宜選択する。第1の具材グループと第2の具材グループにそれぞれ含まれる具材はこの限りではない。
【0031】
第1具材グループと第2具材グループに同じ具材が含まれていても構わない。すなわち、製品としての真空凍結乾燥味噌汁に含まれる具材の組み合わせが変われば、ある種の具材が第1グループに属することもあるし、第2グループに属することもある。より詳細には、ある具材が他の具材よりも味が付きやすい組み合わせとなる時は、第1具材グループに含まれることなり、逆に他の具材よりも味が付きにくい組み合わせとなる時は、第2具材グループに含まれることなる。色の付き方でも同様である。このとき、調味液の配合割合や具材に対する調味液の量、賦形剤の添加量、調味液との接触時間を変えて味移り、色移りを調整する。
【0032】
調味基材を絡めた具材2と具材を含む調味基材3をブロック状に製造する工程を経て、ブロック状の真空凍結乾燥品をそれぞれ1または複数個を併せて真空凍結乾燥味噌汁とする。これは味慣れのし易さ、色移りのし易さによって具材グループを2以上に分けて、具材に適した調味を施し、具材グループ別にブロック状に成形して、調味基材を絡めた具材2または具材を含む調味基材3を組み合わせてもよいということである。
【0033】
この他、具材のグループ分けは、具材の比重の違い等で分けることもできる。これにより、調味液と具材との混合時に比重が小さい具材が偏らず、トレイ充填時に具材の充填量に差が出ることが少なくなる。
【0034】
2種以上の調味液を真空凍結乾燥させた調味基材を含む真空凍結乾燥味噌汁の各調味液の配合割合および量は、具材に対して過度な味付け、色移りをさせないために適した量であり、かつ適度に味や色を付けるために適した量である。更に調味基材を複数個併せて真空凍結乾燥味噌汁とするので、各調味液を合わせた1つの製品としての配合割合、合計の配合量は湯を注いで作った味噌汁を食する時に適した量である。
【0035】
調味基材を絡めた具材2と具材を含む調味基材3の形状は特に限定されなく、例えば図1のように錘台状のブロックでもよく、球状、円柱状、角柱状、錐体状等どのような形状でもよい。調味基材を絡めた具材2と具材を含む調味基材3は、トレイに調味液と具材との混合物を充填して真空凍結乾燥させた時に、その中心まで短時間で凍結されることが重要である。特に、トレイに充填した時の混合物の厚さは真空凍結乾燥時間に影響する。このため、トレイの大きさは、真空凍結乾燥のし易さを考慮したものである。更に、真空凍結乾燥後に乾燥品をトレイから取り易くするために、トレイの開口部を広くし、底面に向かって狭くして壁面を傾斜させてもよい。底面の垂直面に対しての傾斜角度は特に限定されなく、断面図を見た時に左右対称とならないような傾斜角度でもよい。また、トレイを上から見た時、底面と投入面の形状が異なっていてもよい。ただし、製造や包装のし易さを考慮すれば錘台状が好ましい。また、調味基材を絡めた具材2と具材を含む調味基材3の形状、大きさは必ずしも同じである必要はなく、具材の量や調味基材の量に合わせてそれぞれ異なっていてもよい。
【0036】
具材は不可食部を除去、洗浄、裁断し、加熱した塩水に浸漬してブランチングしてから水冷却したものを用いてもよい。他に、具材を裁断した後、酸化防止剤を加えた湯で茹で、水冷却したものを用いてもよい。酸化防止剤はミックストコフェロール等を加えてもよい。
【0037】
味噌を含む調味液に含まれる味噌の種類は特に限定されなく米味噌、麦味噌、豆味噌、等を使用できる。他の調味料として、鰹エキス、昆布エキス、L−グルタミン酸ナトリウム、5’‐リボヌクレオチド二ナトリウム等を加えてもよい。賦形剤は真空凍結乾燥後の保形性を向上させるために、馬鈴薯澱粉、ゼラチン、寒天等を加えることが好ましい。更に添加した賦形剤を糊化させ、混合物を殺菌させるために、味噌を含む調味料、賦形剤および酸化防止剤の混合物を蒸気ニーダで80℃まで加熱して第1の調味液と第2の調味液を作製することもできる。更に、調味基材を絡めた具材2または具材を含む調味基材3のいずれかまたは両方を複数個組み合わせる時は、味噌を含む調味料の配合割合を変えた第3の調味液として調味液の種類を増やしてもよい。
【0038】
第1の調味液を第1グループの具材と均一に混合し、調味液を絡めた具材を作製する。次に調味液を絡めた具材をトレイに充填する。トレイの材質はプラスチック製のものが好ましい。具体的には、耐熱性、強度物性、透湿性の点からポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂製のものが挙げられる。
【0039】
次に、この調味液を絡めた具材を充填したトレイを庫内が−25℃以下に冷やされた冷凍庫に入れ、中心温度が−25℃以下になるまで凍結させる。その後、トレイを真空凍結乾燥装置に入れ、真空ポンプで釜内圧を減圧した後加熱を始め、90Paを超えない真空度で乾燥して調味基材を絡めた具材2を作製する。
【0040】
第2の調味液を第2グループの具材と混合して具材を均一に分散させ、具材を含む調味液を作製する。次にトレイに充填し、調味液を絡めた具材と同様な条件で凍結後に真空凍結乾燥装置に入れて具材を含む調味基材3を作製する。
【0041】
作製したブロック状の調味基材を絡めた具材2と具材を含む調味基材3とを併せて包装して真空凍結乾燥味噌汁とする。また、図1に示すように、ブロック状の調味基材を絡めた具材2と具材を含む調味基材3のトレイ充填時の底面を互い違いにして、それぞれの斜面を沿わせるようにして包装することでコンパクトに収納できる。このことで、生産時、搬送時でも破損し難くなる。ただし、縦横斜めのいずれの組み合わせでも良く、包装の形態に拘束はない。要するに生産時、搬送時、陳列時に適した包装形態であれば良い。従って図1のように並べる以外にも、包装時の調味基材を絡めた具材2と具材を含む調味基材3は積み重ねや、トレイ充填時の底面を向かい合わせや背中合わせにしてもよい。また、ブロック状の調味基材を絡めた具材2と具材を含む調味基材3とをトレイのような収納容器(図示せず)に入れて包装してもよい。
【実施例】
【0042】
本発明の実施形態による効果を確認するため、本発明の実施形態とする製造方法による真空凍結乾燥味噌汁と、一般的に市場で販売されている調味液と具材をすべて一緒にして混合した公知の製造方法による真空凍結乾燥味噌汁および特開2010−183871に示されているような可溶性調味基材と具材とを全く別に乾燥した真空凍結乾燥味噌汁をそれぞれ20個作り評価した。
【0043】
本発明の実施形態とする製造方法で製造した真空凍結乾燥味噌汁、調味液と具材をすべて一緒にして混合した公知の製造方法で製造した真空凍結乾燥味噌汁および特開2010−183871に示されているような可溶性調味基材と具材とを全く別に乾燥した真空凍結乾燥味噌汁は、いずれも160mlの熱湯を注いで1食分とする配合量とした。また、それぞれの真空凍結乾燥味噌汁を製造する際に加えた味噌を含む調味料、賦形剤および酸化防止剤の配合量は同じとした。
【0044】
調味基材を絡めた具材は、以下の方法で製造される。
水10gに、調味料として米味噌4g、鰹エキス0.1g、昆布エキス0.07g、L−グルタミン酸ナトリウム0.07g、5’‐リボヌクレオチド二ナトリウム0.004gを加えて混合し、溶解させた。調味料が溶解した後、馬鈴薯澱粉0.3gと抗酸化力価20%のミックストコフェロール製剤0.02gを混合して溶解させ、蒸気ニーダで80℃まで加熱して第1の調味液を作製した。
【0045】
第1の具材としての葱は不可食部を除去して洗浄した後、所定の大きさに裁断して、1%の塩水を90℃以上に維持しながら浸漬し、60秒間ブランチングしてから水冷却した。また、第1の具材としての油揚は所定の大きさに裁断した後、抗酸化力価20%のミックストコフェロール製剤を抗酸化力価500ppmになるように加えて得られた水を90℃以上に維持しながら浸漬し、180秒間ボイルしてから水冷却した。この、葱18g、油揚1.5gおよび第1の調味液を均一に混合して調味液を絡めた具材を作製した。この調味液を絡めた具材を32.3mm×40.4mm方形で深さが25.0mm壁面の傾斜角が3度で、300μmの厚みのポリプロピレン製トレイに充填した。
【0046】
次に、この調味液を絡めた具材を充填したトレイを−30℃の冷凍庫に入れ、調味液を絡めた具材の中心温度が−25℃以下になるまで凍結した後に真空凍結乾燥装置に入れ、真空ポンプで釜内圧を40Paまで減圧した後に加熱を始め、90Paを超えない真空度で乾燥して調味基材を絡めた具材を作製した。
【0047】
具材を含む調味基材は、以下の方法で製造される。
水21gに、調味料として米味噌12g、鰹エキス0.3g、昆布エキス0.21g、L−グルタミン酸ナトリウム0.21g、5’‐リボヌクレオチド二ナトリウム0.012gを加えて混合し、溶解させた。更に、馬鈴薯澱粉を0.3gと抗酸化力価20%のミックストコフェロール製剤0.02gを混合、溶解後、蒸気ニーダで80℃まで加熱して第2の調味液を作製した。第2の具材としての乾燥ワカメを0.25gと第2の調味液を混合して乾燥ワカメを均一に分散させて具材を含む調味液を作製した。この具材を含む調味液を32.3mm×40.4mmの方形で深さが25.0mm、壁面の傾斜角が3度程度で300μmの厚みのポリプロピレン製トレイに充填した。
【0048】
次に、この具材を含む調味液を充填したトレイを−30℃の冷凍庫に入れ、具材を含む調味基材の中心温度が−25℃以下になるまで凍結した後、真空凍結乾燥装置に入れ、真空ポンプで釜内圧を40Paまで減圧した後加熱を始め、90Paを超えない真空度で乾燥し具材を含む調味基材を作製した。
【0049】
作製した調味基材を絡めた具材と具材を含む調味基材を併せて本発明の実施形態による真空凍結乾燥味噌汁とした。
【0050】
本実施形態と比較するために、調味液と具材をすべて一緒にして混合した公知の製造方法により作製した真空凍結乾燥味噌汁と、特開2010−183871に示されているような可溶性調味基材と具材を全く別に乾燥した真空凍結乾燥味噌汁を作った。
【0051】
公知の方法である、調味液と具材をすべて一緒にして混合してできた真空凍結乾燥味噌汁は、以下の方法で製造される。
水31gに、調味料として米味噌16g、鰹エキス0.4g、昆布エキス0.28g、L−グルタミン酸ナトリウム0.28g、5’‐リボヌクレオチド二ナトリウム0.016gを加えて混合し、溶解させた。更に、馬鈴薯澱粉を0.6gと抗酸化力価20%のミックストコフェロール製剤0.04gを混合、溶解させ、蒸気ニーダで80℃まで加熱して調味液を作製した。この調味液と葱18g、油揚1.5g、乾燥ワカメ0.25gを均一に混合した。ここで、葱と油揚は本実施形態と同様な条件でそれぞれブランチング、ボイルしたものである。
【0052】
この調味液とすべての具材を混合したものを47.0mm×50.0mmの方形で深さが30.0mm、壁面の傾斜角が3度で300μmの厚みのポリプロピレン製トレイに充填し、本実施形態と同様な条件で真空凍結乾燥させ、調味基材と具材がすべて一緒になった真空凍結乾燥味噌汁を作製した。
【0053】
また、特開2010−183871に示されているような可溶性調味基材と具材を全く別に乾燥した真空凍結乾燥味噌汁は、以下の方法で製造される。
水17gに、調味料として米味噌16g、鰹エキス0.4g、昆布エキス0.28g、L−グルタミン酸ナトリウム0.28g、5’‐リボヌクレオチド二ナトリウム0.016gを加えて混合し、溶解させた。更に、馬鈴薯澱粉を0.15gと抗酸化力価20%のミックストコフェロール製剤0.02gを混合、溶解させ、蒸気ニーダで80℃まで加熱した。
【0054】
この調味液を32.3mm×40.4mmの方形で深さが25.0mm、壁面の傾斜角が3度程度で300μmの厚みのポリプロピレン製トレイに充填し、本実施形態と同様な条件で真空凍結乾燥させ調味基材を作製した。
【0055】
また具材部は、水14gに馬鈴薯澱粉を0.45gと抗酸化力価20%のミックストコフェロール製剤0.02gを混合、溶解させ、蒸気ニーダで80℃まで加熱したものに、葱18g、油揚1.5g、乾燥ワカメ0.25gを加えて均一に混合して作製した。
【0056】
この具材部を、32.3mm×40.4mmの方形で深さが25.0mm、壁面の傾斜角が3度程度で300μmの厚みのポリプロピレン製トレイに充填し、本実施形態と同様な条件で真空凍結乾燥させ乾燥具材を作製した。この乾燥具材と調味基材を併せて可溶性調味基材と具材を全く別に乾燥した真空凍結乾燥味噌汁を作製した。
【0057】
こうして真空凍結乾燥された、本実施形態による調味基材を絡めた具材と具材を含む調味基材とで構成された真空凍結乾燥味噌汁、調味基材と具材がすべて一緒になった真空凍結乾燥味噌汁および可溶性調味基材と具材を全く別に乾燥した真空凍結乾燥味噌汁を比較した。
【0058】
比較方法は、それぞれの方法で作った真空凍結乾燥味噌汁を同一容量の椀に入れ、90℃以上の熱湯を1検体当り設計喫食量の160mlを注いで軽く撹拌し、60秒後に喫食した。
【0059】
評価として、湯戻り時間、充填量の偏り、味慣れ具合、色移り具合を調べた。
本実施形態による調味基材を絡めた具材と具材を含む調味基材の湯戻り時間にほとんど差がなく、葱、油揚、ワカメの各具材の充填量にも個別の偏りが少なかった。また、葱、油揚、ワカメの各具材が味慣れしていると同時に過度の味移りがなく、なおかつ適度で自然な調味基材から具材への色移りがあって、凍結乾燥食品の特長である風味の良さや本物感を充分に楽しむことができた。
【0060】
調味基材と具材がすべて一緒になった真空凍結乾燥味噌汁は、調味基材と具材が一体となっているために調味基材の湯戻りと具材の湯戻りがほぼ同時であった。葱、油揚、ワカメの各具材の量に極端な偏りはなかったものの、本実施形態による調味基材を絡めた具材と具材を含む調味基材の設計のものに比較して、ワカメの充填量に偏りが見られた。また、葱、油揚、ワカメの各具材の内、葱と油揚に味移りが見られ、特に油揚についてはその傾向が顕著であったと同時に、葱については調味基材からの色移りがあって不自然さが感じられた。
【0061】
次に、可溶性調味基材と具材を全く別に乾燥した真空凍結乾燥味噌汁を評価してみたところ、調味基材部の湯戻りが具材部の湯戻りに比較して遅くそれぞれが完全に復元するまでに約1分間の時間差があった。葱、油揚、ワカメの各具材の充填量には偏りが少なく、本実施形態による調味基材を絡めた具材と具材を含む調味基材の設計のものに比較して、遜色なかった。また、葱、油揚、ワカメの各具材については味移りや色移りはなかったものの味慣れが少なく、特に油揚についてその傾向が顕著であった。
【符号の説明】
【0062】
1 真空凍結乾燥味噌汁
2 調味基材を絡めた具材
3 具材を含む調味基材
4 第1の具材グループ
41 葱
42 油揚
5 第2の具材グループ
51 ワカメ
6 包装フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
味噌を含む調味液と、該調味液を用いて予め調味して味慣れ具合を調整した具材とを真空凍結乾燥した真空凍結乾燥味噌汁において、
味噌を含む調味料と賦形剤を含む第1の調味液、および第1の具材グループを混合した混合物を真空凍結乾燥した、調味基材を絡めた具材と、
前記第1の調味液と比較して具材に対する味噌の配合割合を多くした、味噌を含む調味料と賦形剤を含む第2の調味液、および第2の具材グループを混合した混合物を真空凍結乾燥した、具材を含む調味基材とを具備することを特徴とする真空凍結乾燥味噌汁。
【請求項2】
前記第1の具材グループに含まれる具材は前記第2の具材グループに含まれる具材よりも味噌を含む調味料に対して味慣れし易い具材であることを特徴とする請求項1に記載の真空凍結乾燥味噌汁。
【請求項3】
前記第1の具材グループに含まれる具材は前記第2の具材グループに含まれる具材よりも味噌を含む調味料からの色移りが生じ易い具材であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空凍結乾燥味噌汁。
【請求項4】
前記第1の具材グループは、豆腐、油揚げ、ホウレン草、小松菜、キャベツ、長葱、野沢菜、牛蒡、舞茸、椎茸、エノキ、茄子、南瓜、卵から選ばれる1以上の具材からなることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれかに記載の真空凍結乾燥味噌汁。
【請求項5】
前記第2の具材グループは、ワカメ、人参、小葱から選ばれる1以上の具材からなることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれかに記載の真空凍結乾燥味噌汁。
【請求項6】
前記調味基材を絡めた具材と前記具材を含む調味基材とがブロック状に成形された真空凍結乾燥品で、それぞれ1または複数個含まれることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれかに記載の真空凍結乾燥味噌汁。
【請求項7】
味噌を含む調味料と賦形剤を含む第1の調味液、およびと第1の具材グループとを混合した混合物をトレイに入れ、真空凍結乾燥して調味基材を絡めた具材を製造する工程と、
前記第1の調味液と比較して具材に対する味噌の配合割合を多くした、味噌を含む調味料と賦形剤を含む第2の調味液、および第2の具材グループとを混合した混合物をトレイに入れ、真空凍結乾燥して具材を含む調味基材を製造する工程と、
前記製造した調味基材を絡めた具材と具材を含む調味基材とを併せて製品とする工程とを含むことを特徴とする真空凍結乾燥味噌汁の製造方法。
【請求項8】
前記第1の具材グループの具材に、前記第2の具材グループの具材よりも味噌を含む調味料に対して味慣れし易い具材を用いることを特徴とする請求項7に記載の真空凍結乾燥味噌汁の製造方法。
【請求項9】
前記第1の具材グループの具材に、前記第2の具材グループの具材よりも味噌を含む調味料からの色移りが生じ易い具材を用いることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の真空凍結乾燥味噌汁の製造方法。
【請求項10】
前記第1の具材グループに、豆腐、油揚げ、ホウレン草、小松菜、キャベツ、長葱、野沢菜、牛蒡、舞茸、椎茸、エノキ、茄子、南瓜、卵から選ばれる1以上の具材を用いることを特徴とする請求項7から請求項9のうちいずれかに記載の真空凍結乾燥味噌汁の製造方法。
【請求項11】
前記第2の具材グループに、ワカメ、人参、小葱から選ばれる1以上の具材を用いることを特徴とする請求項7から請求項10のうちいずれかに記載の真空凍結乾燥味噌汁の製造方法。
【請求項12】
前記調味基材を絡めた具材および前記具材を含む調味基材をブロック状に製造する工程を含むことを特徴とする請求項7から請求項11のうちいずれかに記載の真空凍結乾燥味噌汁の製造方法。

【図1】
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