真空処理装置とリチウムイオン二次電池の製造方法
【課題】リチウムイオン二次電池の生産において、処理時間の違いによって生じる処理装置の待ち時間を減少させる技術を提供する。
【解決手段】第二の処理部4で基板70を真空処理した後、大気に搬出し、移動室2の一端に接続された搬入室31から大気に曝さずに基板70を移動室2内に搬入し、基板70を移動室2に接続された第一の処理部3に移動させて真空処理し、大気に曝さずに第三の処理部5で真空処理し、リチウムイオン二次電池を生産する。
【解決手段】第二の処理部4で基板70を真空処理した後、大気に搬出し、移動室2の一端に接続された搬入室31から大気に曝さずに基板70を移動室2内に搬入し、基板70を移動室2に接続された第一の処理部3に移動させて真空処理し、大気に曝さずに第三の処理部5で真空処理し、リチウムイオン二次電池を生産する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池を一貫装置により生産する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、携帯電話やノートパソコンの充電池として広く用いられているが、電解液の液漏れが起こらない固体電解質を用いたリチウムイオン二次電池が注目されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池を構成する電解質膜や各電極膜をエッチングやスパッタリング等により形成させてリチウムイオン二次電池を生成する場合に、固体電解質と正電極は、負電極、集電体や保護膜と比べ厚みが大きいので、正電極と電解質の処理時間は、負電極、集電体や保護膜の処理時間と比べて長く、正電極と電解質を形成する処理が終わるまでに他の装置が待つ時間が長いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−282731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、リチウムイオン二次電池の生産において、処理時間が長い成膜工程を複数回に分けて処理を行うことにより、処理時間の違いにより生じる処理装置の待ち時間を減少させる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、長手方向を有する形状に形成された移動室と、前記移動室の前記長手方向の一端に接続された搬入室と、前記移動室の前記長手方向の他端に接続された搬出室と、少なくとも一部が前記移動室内に位置し、前記搬入室側から前記搬出室側へ基板を移動させる移動機構と、前記基板の移動方向の、搬入室が接続された位置と前記搬出室が接続された位置との間で、第一〜第三の仕込取出室を介して前記移動室に接続された第一〜第三の処理部と、前記基板を前記移動室内に搬出入する搬出入室とを有し、前記第一〜第三の処理部内のいずれかの内部で、第一の真空処理を行った後、前記搬出入室から前記第一の真空処理が行われた基板を大気に取り出した後、前記搬入室から搬入して第二の真空処理を行えるように構成された真空処理装置である。
本発明は、真空処理装置であって、前記第一の真空処理が行われる基板は、前記搬出入室から前記移動室内に搬入される真空処理装置である。
本発明は、真空処理装置であって、前記第一の真空処理を行う処理部に接続された仕込取出室と、前記搬出入室とは、対面する位置に配置され、前記搬出入室から搬入する前記基板は、前記移動室を横断して、前記仕込取出室内に移動させる二度処理用搬送部が設けられた真空処理装置である。
本発明は、長手方向を有する形状に形成された移動室と、前記移動室の前記長手方向の一端に接続された搬入室と、前記移動室の前記長手方向の他端に接続された搬出室と、少なくとも一部が前記移動室内に位置し、前記搬入室側から前記搬出室側へ基板を移動させる移動機構と、前記基板の移動方向の、搬入室が接続された位置と前記搬出室が接続された位置との間で、第一〜第三の仕込取出室を介して前記移動室に接続された第一〜第三の処理部と、前記基板を前記移動室内に搬出入する搬出入室とを有する真空処理装置を用いた真空処理方法であって、前記第一〜第三の処理部内のいずれかの内部で、第一の真空処理を行った後、前記搬出入室から前記第一の真空処理が行われた基板を大気に取り出し、次いで、前記搬入室から搬入して第二の真空処理を行う真空処理方法である。
本発明は、真空処理方法であって、前記第一の真空処理が行われる基板は、前記搬出入室から前記移動室内に搬入する真空処理方法である。
本発明は、真空処理方法であって、前記搬出入室から、前記第一の真空処理を行う処理部に接続された仕込取出室へ前記基板を移動させる際には、前記移動室を横断させる真空処理方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、従来と比べ、リチウムイオン二次電池の生産速度が速くなる。
生産装置を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】真空処理装置の構成図
【図2】リチウムイオン二次電池電池量産一貫装置の構成図の一例
【図3】(a):基板の平面図(b):基板の断面図
【図4】(a):表面に正極集電体膜が形成された基板の平面図(b):表面に正極集電体膜が形成された基板のA−A’裁断面図
【図5】(a):表面に正電極膜が形成された基板の平面図(b):表面に正電極膜が形成された基板のB−B’裁断面図
【図6】(a):表面に電解質膜が形成された基板の平面図(b):表面に電解質膜が形成された基板のC−C’裁断面図
【図7】(a):表面に負電極膜が形成された基板の平面図(b):表面に負電極膜が形成された基板のD−D’裁断面図
【図8】(a):表面に負極集電体膜が形成された基板の平面図(b):表面に負極集電体膜が形成された基板のE−E’裁断面図
【図9】(a):表面に保護膜が形成された基板の平面図(b):表面に保護膜が形成された基板のF−F’裁断面図
【図10】リチウムイオン二次電池電池量産一貫装置の構成図の他の例
【図11】(a):表面に正極集電体膜が形成された基板の平面図(b):表面に正極集電体膜が形成された基板のG−G’裁断面図
【図12】(a):表面に正電極膜が形成された基板の平面図(b):表面に正電極膜が形成された基板のH−H’裁断面図
【図13】(a):表面に電解質膜が形成された基板の平面図(b):表面に電解質膜が形成された基板のI−I’裁断面図
【図14】(a):表面に負極集電体膜が形成された基板の平面図(b):表面に負極集電体膜が形成された基板のJ−J’裁断面図
【図15】(a):表面に負電極膜が形成された基板の平面図(b):表面に負電極膜が形成された基板のK−K’裁断面図
【図16】(a):表面に保護膜が形成された基板の平面図(b):表面に保護膜が形成された基板のL−L’裁断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1の符号30は、固体薄膜二次電池が製造できる真空処理装置であり、移動室2と、搬入室31と、搬出室32と、第一〜第三の仕込取出部33〜35と、搬出入室36と、第一〜第三の処理部3〜5と、移動機構(不図示)と、二度処理用搬送部43と、第一、第二の搬送部44、45とを有している。
【0010】
移動室2は長手方向を有する細長形状に形成され、搬入室31は、移動室2の長手方向の一端に接続され、搬出室32は、移動室2の長手方向の他端に接続されている。
移動機構は、少なくとも一部が移動室2内に配置されており、移動室2内部に位置する基板を搬入室31側から搬出室32側へ移動させるように構成されている。
【0011】
搬出入室36は、移動室2の、搬入室31が接続された部分と搬出室32が接続された部分の間の位置に接続されている。
搬入室31と、搬出室32と、搬出入室36は、それぞれ開閉自在な扉を有しており、搬入室31の内部雰囲気と搬出室32の内部雰囲気と搬出入室36の内部雰囲気と、移動室2の内部雰囲気との間とを遮断して扉を開けると、移動室2の内部を所望のガスの雰囲気に維持しながら、搬入室31の内部雰囲気と搬出室32の内部雰囲気と搬出入室36の内部雰囲気とを、大気に接続して大気との間で基板70の搬出又は搬入ができるようになっている。
【0012】
扉を閉じると、各室31、32、36の内部雰囲気を大気雰囲気と遮断することができる。
搬入室31と、搬出室32と、搬出入室36には、それぞれガス導入装置55と同じガスを導入することができるガス導入系513〜515が接続されており、移動室2の内部雰囲気から遮断した状態では、搬入室31と、搬出室32と、搬出入室36とを、大気雰囲気から移動室2の内部と同じガスの雰囲気にすることができる。
搬入室31と搬出室32を移動室2と同じガス雰囲気にすると、搬入室31から移動室2への基板70の搬入と、搬出室32への移動室2からの基板70の搬出を行うことができる。
【0013】
移動室2には、搬入室31と搬出室32とが接続された部分の間で、搬入室31側から、第一〜第三の処理部3〜5が、第一〜第三の仕込取出部33〜35を介して、それぞれこの順序で接続されている。ここで、搬出入室36は、二度処理用の仕込取出部である第二の仕込取出部34と対面する位置で移動室2に接続されている。
【0014】
従って、搬出入室36の内部を大気から遮断すると共に、第二の仕込取出部34の内部と搬出入室36の内部を移動室2と同じ雰囲気にして接続すると、搬出入室36と第二の仕込取出部34との間で、二度処理用搬送部43が移動室2を横断させて基板を移動させることができる。
【0015】
移動室2には、移動室2の内部雰囲気を所望圧力のガス雰囲気にできるガス導入装置55が接続されている。移動室2は、基板の処理中は、ガス導入装置55が導入するガスの雰囲気にされている。
【0016】
第一〜第三の仕込取出部33〜35には、それぞれ真空排気部613〜615が接続され、また、第一〜第三の仕込取出部33〜35には、ガス導入装置55と同じガスを導入するガス導入部523〜525がそれぞれ接続されている。
【0017】
第一〜第三の仕込取出部33〜35の内部雰囲気を、それぞれ移動室2の内部雰囲気と遮断して真空排気し、ガス導入系523〜525を動作させ、第一〜第三の仕込取出部33〜35の内部雰囲気を移動室2の内部雰囲気と同じ雰囲気にすると、基板を移動室2と、第一〜第三の仕込取出部33〜35との間で移動させることができる。
【0018】
第一〜第三の処理部3〜5には、それぞれ真空排気部533〜535が接続され、基板の処理中は、移動室2が常圧程度のガス雰囲気に置かれているのに対し、第一〜第三の処理部3〜5の内部は真空雰囲気に置かれている。
【0019】
上記真空処理装置30は、搬出入室36と第二の仕込取出部34との間で、移動室2を通して基板を搬送し、また、第二の仕込取出部34と移動室2との間で基板を搬送できる二度処理用搬送部43を有している。
【0020】
また、移動室2と第一、第三の仕込取出部33、35の間でそれぞれ基板を搬送する第一、第二の搬送部44、45を有している。
上記真空処理装置30で基板を真空処理する際、移動室2を所望のガス雰囲気にし、第一〜第三の仕込取出部33〜35の内部を真空雰囲気にしておく。
【0021】
搬出入室36の内部には未処理の基板が配置されており、搬出入室36の内部と第二の仕込取出部34の内部とを、移動室2の内部と同じガス雰囲気にした後、搬出入室36と移動室2との間と、第二の仕込取出部34と移動室2との間を接続し、搬出入室36内に配置された基板を、二度処理用搬送部43が移動室2を横断させて第二の仕込取出部34に移動させる。
【0022】
次いで、第二の仕込取出部34と移動室2の間を遮断し、第二の仕込取出部34を第二の処理部4に接続し、第二の仕込取出部34内の基板を第二の処理部4内に搬入する。
そして、第二の処理部4内で真空処理をし、第二の仕込取出部34に戻す。
【0023】
第二の仕込取出室34と第二の処理部4との間を遮断し、第二の処理部34内を移動室2と同じガス雰囲気にして、第二の仕込取出室34と搬出入室36とを移動室2に接続し、第二の仕込取出部33から移動室2を横断させて搬出入室36に搬入する。搬出入室36の内部を移動室2から遮断し、搬入された基板を真空処理装置30の外部に取り出す。
処理された基板は真空処理装置30の外部で搬入室31の方向に移動させ、移動室2と遮断された搬入室31内に搬入する。
【0024】
次いで、搬入室31の内部を真空排気した後、移動室2と同じガス雰囲気にして、搬入室31と移動室2とを接続し、搬入室31内の基板を移動室2に搬入する。
ここで、第一の搬送部44によって、搬入した基板を第一の仕込取出部33に移動させる。上述した第二の仕込取出室34と第二の処理部4との間の処理及び搬出入と同様に、第一の仕込取出室33から第一の処理部3に移動させ、第一の処理部3内で基板に真空処理を行った後、第一の仕込取出部33に戻し、移動室2に移動させる。
【0025】
移動室2内に移動させた基板は、搬出室32が位置する下流方向に流し、第二の仕込取出部34を介して第二の処理部4内に搬入し、第二の処理部4と第一の処理部3とで真空処理した基板に、更に、第二の処理部4で真空処理を行う。
ここでの真空処理は、第一の処理部3で真空処理を行う前に第二の処理部4によって行った真空処理と同じ内容の真空処理であってもよいし、異なる内容の真空処理であってもよい。
【0026】
第二の処理部4で二度目の真空処理を行った後は、第二の仕込取出部34を介して移動室2に移動させ、更に下流方向に移動させる。
この基板は搬出室32から大気に取り出すこともできるが、ここでは、第三の仕込取出部35を介して第三の処理部5に移動させ、第三の処理部5内で、更に、真空処理を行うことができる。
第三の処理部5内で真空処理が終了した基板は、第三の仕込取出部35を介して移動室2に移動させ、搬出室32から大気に取り出すことができる。
【0027】
なお、第一〜第三の処理部3〜5は、それぞれ1乃至2以上の処理装置を設け、設けた処理装置を仕込取出室を介して移動室2に接続すれば、第一〜第三の処理部3〜5内で、複数の異なる真空処理を行うことができる。
【0028】
ここでは、第一の処理部3が、三台の処理装置8〜10を有しており、それぞれ仕込取出室を介して移動室2と接続され、一台の搬送部44が、移動室2の内部と、その仕込取出室との間で基板を移動させるように構成されている。
【実施例】
【0029】
<装置>
図2の符号1は、リチウムイオン二次電池量産装置の一例であり、移動室2と、第一〜第三の処理部3〜5と、第一〜第三の仕込取出室33〜35を有している。移動室2の、第一の仕込取出室33と対面する位置には、アニール装置6が接続されている。ガス導入装置や真空排気装置の図示は省略した。
【0030】
第一の処理部3は、正極形成装置8と、電解質膜形成装置9と、負極形成装置10とを有しており、第二の処理部4は、集電体形成装置7を有しており、第三の処理部5は、保護膜形成装置11を有している。
【0031】
正極形成装置8と、電解質膜形成装置9と、負極形成装置10と、保護膜形成装置11と、集電体形成装置7は、それぞれ処理用搬送室21を有しており、処理用搬送室21の周囲には、第1〜第5の処理室221〜225が接続されている。処理用搬送室21は、仕込取出室23を介して移動室2に接続されている。
【0032】
各装置7〜11が有する各室21、221〜225、23は、各装置7〜11で同じ接続、配置構造なので、同じ名称を付して説明する。図面では、正極形成装置8が有する各室21、221〜225以外は符号を省略している。
【0033】
集電体形成装置7と、正極形成装置8と、電解質膜形成装置9と、保護膜形成装置11の第1〜第5の処理室221〜225の内部には、ターゲットがそれぞれ配置され、負極形成装置10の第1〜第5の処理室221〜225の内部には、蒸発源がそれぞれ配置されており、各処理室221〜225の内部に基板70が搬送されると、表面にターゲットの薄膜、又は蒸発源の薄膜を形成できるように構成されている。
【0034】
正極形成装置8と、電解質膜形成装置9と、保護膜形成装置11の処理用搬送室21内には、円形搬送装置25が配置されており、処理基板71は、仕込取出室23内に搬入されると円形搬送装置25により、基板は起立した状態を維持され、第1〜第5の処理室221〜225の内部に、この順番に移動させると、薄膜が基板表面に形成される。
【0035】
次いで、薄膜を形成した基板は、第5の処理室225から仕込取出室23に移動させ、処理基板を円形搬送機構25から取り外して、仕込取出室23に配置する。
負極形成装置10の円形搬送装置26には、処理基板71を反転した状態で真空処理が行える機能が備えられている。
【0036】
集電体形成装置7の処理用搬送室21内には、搬送ロボット27が配置されており、基板70は搬送ロボット27に装着されると、搬送ロボット27によって第1〜第5の処理室221〜225の内の予め決められた室に移送されて、表面が成膜されるように構成されている。
【0037】
正極形成装置8と、電解質膜形成装置9と、負極形成装置10と、保護膜形成装置11は、第1の処理室221から所望の膜厚の五分の一の薄膜を成膜して、第5の処理室225で成膜が行われると、所望の厚さの薄膜が形成できるように構成されている。
【0038】
アニール装置6は、アニール室29を有しており、移動室2の、正極形成装置8に接続された仕込取出室23が接続された部分と、電解質膜形成装置9に接続された仕込取出室23が接続された部分との間に配置さている。
アニール室29の内部には、ヒータ28が配置され、ヒータ28に通電すると、ヒータ28は赤外線を放出し、発熱するように構成されている。
【0039】
<プロセス>
ガス導入装置55により水分を含まないアルゴン等の希ガスを移動室2内に導入し、移動室2内をアルゴンガス雰囲気にする。
【0040】
基板70を搬出入室36内に搬入し、出し入れ装置41により、基板70を先ず、第二の仕込取出部34に移動させる。ここでは、出し入れ装置41が基板70を搬出入室36と第二の仕込取出室34との間で移動させたが、二度処理用搬送部43が基板70を搬出入室36と第二の仕込取出室34との間で移動させてもよい。移動室2内の基板は、搬入室31〜搬出室32が位置する方向に、移動室2内を移動できるように構成されている。
【0041】
基板70(図3)の表面に、集電体形成装置7によって、金属から成る正極集電体膜81を成膜する(図4)。
成膜後の基板は、処理基板71として説明する。仕込取出室23へ搬送された処理基板71を搬出入室36に戻し、処理基板71を搬出入室36の外部に取り出す。
【0042】
処理基板71を搬入室31の内部に搬入し、搬送機構により移動室2内へ移動させ、正極形成装置8に接続された仕込取出室23内に搬入させる。スパッタリングにより正極集電体膜81の表面上に、LiCoO2膜、LiNiO2膜、LiMnO2膜、又はLiFePO4膜のうち、いずれか一層から成る正電極膜82を形成する(図5)。
正電極膜82が形成された処理基板71は、正極形成室8に接続された仕込取出室23を通って移動室2内へ移動させる。
【0043】
アニール室29、又は移動室2の内部のいずれか一方には、挿入抜去装置37が設けられており、処理基板71を挿入抜去装置37によってアニール室29の内部に搬入する。
アニール室29の内部でヒータ28によって処理基板71を加熱し、正電極膜82を結晶化させる。
結晶化後、挿入抜去装置37によって処理基板71を移動室2の内部に移動させる。
【0044】
次に、電解質膜形成装置9により、正電極膜82表面と接触し、正電極膜82を覆うようにLiPON膜から成る電解質膜83を成膜する(図6)。ここでは、電解質膜形成装置9が有する第1〜第5の処理室221〜225の内部には、Li3PO4ターゲットがそれぞれ配置され、処理ガス導入装置によりN2ガスが導入され、N2ガスがLi3Po4ターゲットをスパッタリングすることによりLiPON膜から成る電解質膜83が成膜される。
【0045】
電解質膜83を形成した後、処理基板71を集電体形成装置7内に移動させ、正電極膜82や正極集電体膜81とは非接触で、電解質膜83を露出させた状態で、負極集電膜85を形成する(図7)。負極集電膜85は、Cu膜やNi膜から成る。
【0046】
次に、処理基板71を負極形成装置10に移動させ、電解質膜83の表面と、負極集電体膜85の表面とに、接触させてリチウム膜から成る負電極膜84を蒸着させる(図8)。
【0047】
次いで、保護膜形成装置11に移動させ、負電極膜84の上に、正極集電体膜の一部と、負極集電体膜の一部とが露出した状態で、負電極膜84が覆われるようにして、保護膜86を形成すると、リチウムイオン二次電池が得られる(図9)。
ここでは、保護膜86は、Al2O3膜、Al膜、Al2O3膜の三層が積層された膜であり、この順序で、負電極膜84側から形成されている。
最表層に保護膜86が形成された処理基板71を搬出室32へ移動させ、搬出室32外部に取り出す。
【0048】
<リチウムイオン二次電池量産装置の他の例>
図10の符号50は、リチウムイオン二次電池量産装置の他の例であり、ここでは、第一の処理部3は、正極形成装置8と、電解質膜形成装置9とを有し、第二の処理部4は、負極形成装置10を有している。第三の処理部5は、集電体形成装置7と、保護膜形成装置11とを有している。
【0049】
基板70を搬出入室36から集電体形成装置7に接続された仕込取出室23へ搬入し、基板70の表面に集電体形成装置7によって、正極集電体膜91を成膜する(図11)。
正極集電体膜91を成膜後、処理基板71を搬出入室36に戻し、大気中に取り出す。
【0050】
表面に正極集電体膜91が成膜された処理基板71を搬入室31から移動室2内部に移動させ、正極形成装置8により正極集電体膜91の上に、LiCoO2膜、LiNiO2膜、LiMnO2膜、又はLiFePO4膜のうち、いずれか一層から成る正電極膜92を形成し(図12)、アニール室29内で処理基板71をアニール後、電解質膜形成装置9により、正電極膜92表面を覆うようにLiPONから成る電解質膜93を成膜し(図13)、集電体形成装置7により、電解質膜93の上に金属膜から成る負極集電体膜94を成膜する(図14)。負極形成装置10の第1〜第5の処理室221〜225の内部にそれぞれ配置されたリチウムから成る蒸発源により、電解質膜93の上にLiから成る負電極膜95を蒸着させ(図15)、保護膜形成装置11により、負極電極膜95の上にAl2O3膜、Al膜、Al2O3膜を、負極電極膜95から、この順序で積層させて保護膜96を形成すると、リチウムイオン二次電池が得られる(図16)。保護膜96は、ポリ尿素膜で構成してもよい。また、保護膜96は、金属、又は金属酸化物に限定されず、リチウムから水分を保護すれば有機、又は無機材料でもよい。
【0051】
上述したプロセスでは、搬送機構として多数のローラーやベルトが近接して配置されて構成され、ローラーやベルト上を処理基板71が移動するために処理基板71はトレイに載せられトレイがローラーやベルトと接触して移動するように構成されている。また、ローラーやベルトは、搬入室31と、移動室2と、搬送室32に亘って配置されてもよい。
上述した処理装置は成膜装置に限定されず、エッチング、CVD、表面改質等が行える装置でもよい。
【0052】
なお、上記例では未処理の基板を搬出入室36から搬入し、第二の処理部4で真空処理を行った後、大気に搬出し、再度、第二の処理部4で真空処理を行ったが、他の処理部(第一、第三の処理部3、5)内で真空処理後一旦大気に搬出して再度真空処理を行う二度の真空処理を行うこともできる。また、二個以上の処理部3〜5内で二度の真空処理を行うこともできる。
また、負極集電体膜85と負電極膜84の形成順序は逆であっても良いし、正極集電体薄膜81と正電極膜82の形成順序も逆であっても良い。
なお、本発明によれば、移動室2内に搬入された後、大気に搬出されるまでは、基板は大気に曝されることはない。
【符号の説明】
【0053】
2……移動室
3〜5……第一〜第三の処理部
7……集電体形成装置
8……正電極膜形成装置
9……電解質膜形成装置
10……負極形成装置
11……保護膜形成装置
36……搬出入室
81……正極集電体薄膜
82……正電極膜
83……電解質膜
84……負電極膜
85……負極集電体膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池を一貫装置により生産する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、携帯電話やノートパソコンの充電池として広く用いられているが、電解液の液漏れが起こらない固体電解質を用いたリチウムイオン二次電池が注目されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池を構成する電解質膜や各電極膜をエッチングやスパッタリング等により形成させてリチウムイオン二次電池を生成する場合に、固体電解質と正電極は、負電極、集電体や保護膜と比べ厚みが大きいので、正電極と電解質の処理時間は、負電極、集電体や保護膜の処理時間と比べて長く、正電極と電解質を形成する処理が終わるまでに他の装置が待つ時間が長いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−282731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、リチウムイオン二次電池の生産において、処理時間が長い成膜工程を複数回に分けて処理を行うことにより、処理時間の違いにより生じる処理装置の待ち時間を減少させる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、長手方向を有する形状に形成された移動室と、前記移動室の前記長手方向の一端に接続された搬入室と、前記移動室の前記長手方向の他端に接続された搬出室と、少なくとも一部が前記移動室内に位置し、前記搬入室側から前記搬出室側へ基板を移動させる移動機構と、前記基板の移動方向の、搬入室が接続された位置と前記搬出室が接続された位置との間で、第一〜第三の仕込取出室を介して前記移動室に接続された第一〜第三の処理部と、前記基板を前記移動室内に搬出入する搬出入室とを有し、前記第一〜第三の処理部内のいずれかの内部で、第一の真空処理を行った後、前記搬出入室から前記第一の真空処理が行われた基板を大気に取り出した後、前記搬入室から搬入して第二の真空処理を行えるように構成された真空処理装置である。
本発明は、真空処理装置であって、前記第一の真空処理が行われる基板は、前記搬出入室から前記移動室内に搬入される真空処理装置である。
本発明は、真空処理装置であって、前記第一の真空処理を行う処理部に接続された仕込取出室と、前記搬出入室とは、対面する位置に配置され、前記搬出入室から搬入する前記基板は、前記移動室を横断して、前記仕込取出室内に移動させる二度処理用搬送部が設けられた真空処理装置である。
本発明は、長手方向を有する形状に形成された移動室と、前記移動室の前記長手方向の一端に接続された搬入室と、前記移動室の前記長手方向の他端に接続された搬出室と、少なくとも一部が前記移動室内に位置し、前記搬入室側から前記搬出室側へ基板を移動させる移動機構と、前記基板の移動方向の、搬入室が接続された位置と前記搬出室が接続された位置との間で、第一〜第三の仕込取出室を介して前記移動室に接続された第一〜第三の処理部と、前記基板を前記移動室内に搬出入する搬出入室とを有する真空処理装置を用いた真空処理方法であって、前記第一〜第三の処理部内のいずれかの内部で、第一の真空処理を行った後、前記搬出入室から前記第一の真空処理が行われた基板を大気に取り出し、次いで、前記搬入室から搬入して第二の真空処理を行う真空処理方法である。
本発明は、真空処理方法であって、前記第一の真空処理が行われる基板は、前記搬出入室から前記移動室内に搬入する真空処理方法である。
本発明は、真空処理方法であって、前記搬出入室から、前記第一の真空処理を行う処理部に接続された仕込取出室へ前記基板を移動させる際には、前記移動室を横断させる真空処理方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、従来と比べ、リチウムイオン二次電池の生産速度が速くなる。
生産装置を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】真空処理装置の構成図
【図2】リチウムイオン二次電池電池量産一貫装置の構成図の一例
【図3】(a):基板の平面図(b):基板の断面図
【図4】(a):表面に正極集電体膜が形成された基板の平面図(b):表面に正極集電体膜が形成された基板のA−A’裁断面図
【図5】(a):表面に正電極膜が形成された基板の平面図(b):表面に正電極膜が形成された基板のB−B’裁断面図
【図6】(a):表面に電解質膜が形成された基板の平面図(b):表面に電解質膜が形成された基板のC−C’裁断面図
【図7】(a):表面に負電極膜が形成された基板の平面図(b):表面に負電極膜が形成された基板のD−D’裁断面図
【図8】(a):表面に負極集電体膜が形成された基板の平面図(b):表面に負極集電体膜が形成された基板のE−E’裁断面図
【図9】(a):表面に保護膜が形成された基板の平面図(b):表面に保護膜が形成された基板のF−F’裁断面図
【図10】リチウムイオン二次電池電池量産一貫装置の構成図の他の例
【図11】(a):表面に正極集電体膜が形成された基板の平面図(b):表面に正極集電体膜が形成された基板のG−G’裁断面図
【図12】(a):表面に正電極膜が形成された基板の平面図(b):表面に正電極膜が形成された基板のH−H’裁断面図
【図13】(a):表面に電解質膜が形成された基板の平面図(b):表面に電解質膜が形成された基板のI−I’裁断面図
【図14】(a):表面に負極集電体膜が形成された基板の平面図(b):表面に負極集電体膜が形成された基板のJ−J’裁断面図
【図15】(a):表面に負電極膜が形成された基板の平面図(b):表面に負電極膜が形成された基板のK−K’裁断面図
【図16】(a):表面に保護膜が形成された基板の平面図(b):表面に保護膜が形成された基板のL−L’裁断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1の符号30は、固体薄膜二次電池が製造できる真空処理装置であり、移動室2と、搬入室31と、搬出室32と、第一〜第三の仕込取出部33〜35と、搬出入室36と、第一〜第三の処理部3〜5と、移動機構(不図示)と、二度処理用搬送部43と、第一、第二の搬送部44、45とを有している。
【0010】
移動室2は長手方向を有する細長形状に形成され、搬入室31は、移動室2の長手方向の一端に接続され、搬出室32は、移動室2の長手方向の他端に接続されている。
移動機構は、少なくとも一部が移動室2内に配置されており、移動室2内部に位置する基板を搬入室31側から搬出室32側へ移動させるように構成されている。
【0011】
搬出入室36は、移動室2の、搬入室31が接続された部分と搬出室32が接続された部分の間の位置に接続されている。
搬入室31と、搬出室32と、搬出入室36は、それぞれ開閉自在な扉を有しており、搬入室31の内部雰囲気と搬出室32の内部雰囲気と搬出入室36の内部雰囲気と、移動室2の内部雰囲気との間とを遮断して扉を開けると、移動室2の内部を所望のガスの雰囲気に維持しながら、搬入室31の内部雰囲気と搬出室32の内部雰囲気と搬出入室36の内部雰囲気とを、大気に接続して大気との間で基板70の搬出又は搬入ができるようになっている。
【0012】
扉を閉じると、各室31、32、36の内部雰囲気を大気雰囲気と遮断することができる。
搬入室31と、搬出室32と、搬出入室36には、それぞれガス導入装置55と同じガスを導入することができるガス導入系513〜515が接続されており、移動室2の内部雰囲気から遮断した状態では、搬入室31と、搬出室32と、搬出入室36とを、大気雰囲気から移動室2の内部と同じガスの雰囲気にすることができる。
搬入室31と搬出室32を移動室2と同じガス雰囲気にすると、搬入室31から移動室2への基板70の搬入と、搬出室32への移動室2からの基板70の搬出を行うことができる。
【0013】
移動室2には、搬入室31と搬出室32とが接続された部分の間で、搬入室31側から、第一〜第三の処理部3〜5が、第一〜第三の仕込取出部33〜35を介して、それぞれこの順序で接続されている。ここで、搬出入室36は、二度処理用の仕込取出部である第二の仕込取出部34と対面する位置で移動室2に接続されている。
【0014】
従って、搬出入室36の内部を大気から遮断すると共に、第二の仕込取出部34の内部と搬出入室36の内部を移動室2と同じ雰囲気にして接続すると、搬出入室36と第二の仕込取出部34との間で、二度処理用搬送部43が移動室2を横断させて基板を移動させることができる。
【0015】
移動室2には、移動室2の内部雰囲気を所望圧力のガス雰囲気にできるガス導入装置55が接続されている。移動室2は、基板の処理中は、ガス導入装置55が導入するガスの雰囲気にされている。
【0016】
第一〜第三の仕込取出部33〜35には、それぞれ真空排気部613〜615が接続され、また、第一〜第三の仕込取出部33〜35には、ガス導入装置55と同じガスを導入するガス導入部523〜525がそれぞれ接続されている。
【0017】
第一〜第三の仕込取出部33〜35の内部雰囲気を、それぞれ移動室2の内部雰囲気と遮断して真空排気し、ガス導入系523〜525を動作させ、第一〜第三の仕込取出部33〜35の内部雰囲気を移動室2の内部雰囲気と同じ雰囲気にすると、基板を移動室2と、第一〜第三の仕込取出部33〜35との間で移動させることができる。
【0018】
第一〜第三の処理部3〜5には、それぞれ真空排気部533〜535が接続され、基板の処理中は、移動室2が常圧程度のガス雰囲気に置かれているのに対し、第一〜第三の処理部3〜5の内部は真空雰囲気に置かれている。
【0019】
上記真空処理装置30は、搬出入室36と第二の仕込取出部34との間で、移動室2を通して基板を搬送し、また、第二の仕込取出部34と移動室2との間で基板を搬送できる二度処理用搬送部43を有している。
【0020】
また、移動室2と第一、第三の仕込取出部33、35の間でそれぞれ基板を搬送する第一、第二の搬送部44、45を有している。
上記真空処理装置30で基板を真空処理する際、移動室2を所望のガス雰囲気にし、第一〜第三の仕込取出部33〜35の内部を真空雰囲気にしておく。
【0021】
搬出入室36の内部には未処理の基板が配置されており、搬出入室36の内部と第二の仕込取出部34の内部とを、移動室2の内部と同じガス雰囲気にした後、搬出入室36と移動室2との間と、第二の仕込取出部34と移動室2との間を接続し、搬出入室36内に配置された基板を、二度処理用搬送部43が移動室2を横断させて第二の仕込取出部34に移動させる。
【0022】
次いで、第二の仕込取出部34と移動室2の間を遮断し、第二の仕込取出部34を第二の処理部4に接続し、第二の仕込取出部34内の基板を第二の処理部4内に搬入する。
そして、第二の処理部4内で真空処理をし、第二の仕込取出部34に戻す。
【0023】
第二の仕込取出室34と第二の処理部4との間を遮断し、第二の処理部34内を移動室2と同じガス雰囲気にして、第二の仕込取出室34と搬出入室36とを移動室2に接続し、第二の仕込取出部33から移動室2を横断させて搬出入室36に搬入する。搬出入室36の内部を移動室2から遮断し、搬入された基板を真空処理装置30の外部に取り出す。
処理された基板は真空処理装置30の外部で搬入室31の方向に移動させ、移動室2と遮断された搬入室31内に搬入する。
【0024】
次いで、搬入室31の内部を真空排気した後、移動室2と同じガス雰囲気にして、搬入室31と移動室2とを接続し、搬入室31内の基板を移動室2に搬入する。
ここで、第一の搬送部44によって、搬入した基板を第一の仕込取出部33に移動させる。上述した第二の仕込取出室34と第二の処理部4との間の処理及び搬出入と同様に、第一の仕込取出室33から第一の処理部3に移動させ、第一の処理部3内で基板に真空処理を行った後、第一の仕込取出部33に戻し、移動室2に移動させる。
【0025】
移動室2内に移動させた基板は、搬出室32が位置する下流方向に流し、第二の仕込取出部34を介して第二の処理部4内に搬入し、第二の処理部4と第一の処理部3とで真空処理した基板に、更に、第二の処理部4で真空処理を行う。
ここでの真空処理は、第一の処理部3で真空処理を行う前に第二の処理部4によって行った真空処理と同じ内容の真空処理であってもよいし、異なる内容の真空処理であってもよい。
【0026】
第二の処理部4で二度目の真空処理を行った後は、第二の仕込取出部34を介して移動室2に移動させ、更に下流方向に移動させる。
この基板は搬出室32から大気に取り出すこともできるが、ここでは、第三の仕込取出部35を介して第三の処理部5に移動させ、第三の処理部5内で、更に、真空処理を行うことができる。
第三の処理部5内で真空処理が終了した基板は、第三の仕込取出部35を介して移動室2に移動させ、搬出室32から大気に取り出すことができる。
【0027】
なお、第一〜第三の処理部3〜5は、それぞれ1乃至2以上の処理装置を設け、設けた処理装置を仕込取出室を介して移動室2に接続すれば、第一〜第三の処理部3〜5内で、複数の異なる真空処理を行うことができる。
【0028】
ここでは、第一の処理部3が、三台の処理装置8〜10を有しており、それぞれ仕込取出室を介して移動室2と接続され、一台の搬送部44が、移動室2の内部と、その仕込取出室との間で基板を移動させるように構成されている。
【実施例】
【0029】
<装置>
図2の符号1は、リチウムイオン二次電池量産装置の一例であり、移動室2と、第一〜第三の処理部3〜5と、第一〜第三の仕込取出室33〜35を有している。移動室2の、第一の仕込取出室33と対面する位置には、アニール装置6が接続されている。ガス導入装置や真空排気装置の図示は省略した。
【0030】
第一の処理部3は、正極形成装置8と、電解質膜形成装置9と、負極形成装置10とを有しており、第二の処理部4は、集電体形成装置7を有しており、第三の処理部5は、保護膜形成装置11を有している。
【0031】
正極形成装置8と、電解質膜形成装置9と、負極形成装置10と、保護膜形成装置11と、集電体形成装置7は、それぞれ処理用搬送室21を有しており、処理用搬送室21の周囲には、第1〜第5の処理室221〜225が接続されている。処理用搬送室21は、仕込取出室23を介して移動室2に接続されている。
【0032】
各装置7〜11が有する各室21、221〜225、23は、各装置7〜11で同じ接続、配置構造なので、同じ名称を付して説明する。図面では、正極形成装置8が有する各室21、221〜225以外は符号を省略している。
【0033】
集電体形成装置7と、正極形成装置8と、電解質膜形成装置9と、保護膜形成装置11の第1〜第5の処理室221〜225の内部には、ターゲットがそれぞれ配置され、負極形成装置10の第1〜第5の処理室221〜225の内部には、蒸発源がそれぞれ配置されており、各処理室221〜225の内部に基板70が搬送されると、表面にターゲットの薄膜、又は蒸発源の薄膜を形成できるように構成されている。
【0034】
正極形成装置8と、電解質膜形成装置9と、保護膜形成装置11の処理用搬送室21内には、円形搬送装置25が配置されており、処理基板71は、仕込取出室23内に搬入されると円形搬送装置25により、基板は起立した状態を維持され、第1〜第5の処理室221〜225の内部に、この順番に移動させると、薄膜が基板表面に形成される。
【0035】
次いで、薄膜を形成した基板は、第5の処理室225から仕込取出室23に移動させ、処理基板を円形搬送機構25から取り外して、仕込取出室23に配置する。
負極形成装置10の円形搬送装置26には、処理基板71を反転した状態で真空処理が行える機能が備えられている。
【0036】
集電体形成装置7の処理用搬送室21内には、搬送ロボット27が配置されており、基板70は搬送ロボット27に装着されると、搬送ロボット27によって第1〜第5の処理室221〜225の内の予め決められた室に移送されて、表面が成膜されるように構成されている。
【0037】
正極形成装置8と、電解質膜形成装置9と、負極形成装置10と、保護膜形成装置11は、第1の処理室221から所望の膜厚の五分の一の薄膜を成膜して、第5の処理室225で成膜が行われると、所望の厚さの薄膜が形成できるように構成されている。
【0038】
アニール装置6は、アニール室29を有しており、移動室2の、正極形成装置8に接続された仕込取出室23が接続された部分と、電解質膜形成装置9に接続された仕込取出室23が接続された部分との間に配置さている。
アニール室29の内部には、ヒータ28が配置され、ヒータ28に通電すると、ヒータ28は赤外線を放出し、発熱するように構成されている。
【0039】
<プロセス>
ガス導入装置55により水分を含まないアルゴン等の希ガスを移動室2内に導入し、移動室2内をアルゴンガス雰囲気にする。
【0040】
基板70を搬出入室36内に搬入し、出し入れ装置41により、基板70を先ず、第二の仕込取出部34に移動させる。ここでは、出し入れ装置41が基板70を搬出入室36と第二の仕込取出室34との間で移動させたが、二度処理用搬送部43が基板70を搬出入室36と第二の仕込取出室34との間で移動させてもよい。移動室2内の基板は、搬入室31〜搬出室32が位置する方向に、移動室2内を移動できるように構成されている。
【0041】
基板70(図3)の表面に、集電体形成装置7によって、金属から成る正極集電体膜81を成膜する(図4)。
成膜後の基板は、処理基板71として説明する。仕込取出室23へ搬送された処理基板71を搬出入室36に戻し、処理基板71を搬出入室36の外部に取り出す。
【0042】
処理基板71を搬入室31の内部に搬入し、搬送機構により移動室2内へ移動させ、正極形成装置8に接続された仕込取出室23内に搬入させる。スパッタリングにより正極集電体膜81の表面上に、LiCoO2膜、LiNiO2膜、LiMnO2膜、又はLiFePO4膜のうち、いずれか一層から成る正電極膜82を形成する(図5)。
正電極膜82が形成された処理基板71は、正極形成室8に接続された仕込取出室23を通って移動室2内へ移動させる。
【0043】
アニール室29、又は移動室2の内部のいずれか一方には、挿入抜去装置37が設けられており、処理基板71を挿入抜去装置37によってアニール室29の内部に搬入する。
アニール室29の内部でヒータ28によって処理基板71を加熱し、正電極膜82を結晶化させる。
結晶化後、挿入抜去装置37によって処理基板71を移動室2の内部に移動させる。
【0044】
次に、電解質膜形成装置9により、正電極膜82表面と接触し、正電極膜82を覆うようにLiPON膜から成る電解質膜83を成膜する(図6)。ここでは、電解質膜形成装置9が有する第1〜第5の処理室221〜225の内部には、Li3PO4ターゲットがそれぞれ配置され、処理ガス導入装置によりN2ガスが導入され、N2ガスがLi3Po4ターゲットをスパッタリングすることによりLiPON膜から成る電解質膜83が成膜される。
【0045】
電解質膜83を形成した後、処理基板71を集電体形成装置7内に移動させ、正電極膜82や正極集電体膜81とは非接触で、電解質膜83を露出させた状態で、負極集電膜85を形成する(図7)。負極集電膜85は、Cu膜やNi膜から成る。
【0046】
次に、処理基板71を負極形成装置10に移動させ、電解質膜83の表面と、負極集電体膜85の表面とに、接触させてリチウム膜から成る負電極膜84を蒸着させる(図8)。
【0047】
次いで、保護膜形成装置11に移動させ、負電極膜84の上に、正極集電体膜の一部と、負極集電体膜の一部とが露出した状態で、負電極膜84が覆われるようにして、保護膜86を形成すると、リチウムイオン二次電池が得られる(図9)。
ここでは、保護膜86は、Al2O3膜、Al膜、Al2O3膜の三層が積層された膜であり、この順序で、負電極膜84側から形成されている。
最表層に保護膜86が形成された処理基板71を搬出室32へ移動させ、搬出室32外部に取り出す。
【0048】
<リチウムイオン二次電池量産装置の他の例>
図10の符号50は、リチウムイオン二次電池量産装置の他の例であり、ここでは、第一の処理部3は、正極形成装置8と、電解質膜形成装置9とを有し、第二の処理部4は、負極形成装置10を有している。第三の処理部5は、集電体形成装置7と、保護膜形成装置11とを有している。
【0049】
基板70を搬出入室36から集電体形成装置7に接続された仕込取出室23へ搬入し、基板70の表面に集電体形成装置7によって、正極集電体膜91を成膜する(図11)。
正極集電体膜91を成膜後、処理基板71を搬出入室36に戻し、大気中に取り出す。
【0050】
表面に正極集電体膜91が成膜された処理基板71を搬入室31から移動室2内部に移動させ、正極形成装置8により正極集電体膜91の上に、LiCoO2膜、LiNiO2膜、LiMnO2膜、又はLiFePO4膜のうち、いずれか一層から成る正電極膜92を形成し(図12)、アニール室29内で処理基板71をアニール後、電解質膜形成装置9により、正電極膜92表面を覆うようにLiPONから成る電解質膜93を成膜し(図13)、集電体形成装置7により、電解質膜93の上に金属膜から成る負極集電体膜94を成膜する(図14)。負極形成装置10の第1〜第5の処理室221〜225の内部にそれぞれ配置されたリチウムから成る蒸発源により、電解質膜93の上にLiから成る負電極膜95を蒸着させ(図15)、保護膜形成装置11により、負極電極膜95の上にAl2O3膜、Al膜、Al2O3膜を、負極電極膜95から、この順序で積層させて保護膜96を形成すると、リチウムイオン二次電池が得られる(図16)。保護膜96は、ポリ尿素膜で構成してもよい。また、保護膜96は、金属、又は金属酸化物に限定されず、リチウムから水分を保護すれば有機、又は無機材料でもよい。
【0051】
上述したプロセスでは、搬送機構として多数のローラーやベルトが近接して配置されて構成され、ローラーやベルト上を処理基板71が移動するために処理基板71はトレイに載せられトレイがローラーやベルトと接触して移動するように構成されている。また、ローラーやベルトは、搬入室31と、移動室2と、搬送室32に亘って配置されてもよい。
上述した処理装置は成膜装置に限定されず、エッチング、CVD、表面改質等が行える装置でもよい。
【0052】
なお、上記例では未処理の基板を搬出入室36から搬入し、第二の処理部4で真空処理を行った後、大気に搬出し、再度、第二の処理部4で真空処理を行ったが、他の処理部(第一、第三の処理部3、5)内で真空処理後一旦大気に搬出して再度真空処理を行う二度の真空処理を行うこともできる。また、二個以上の処理部3〜5内で二度の真空処理を行うこともできる。
また、負極集電体膜85と負電極膜84の形成順序は逆であっても良いし、正極集電体薄膜81と正電極膜82の形成順序も逆であっても良い。
なお、本発明によれば、移動室2内に搬入された後、大気に搬出されるまでは、基板は大気に曝されることはない。
【符号の説明】
【0053】
2……移動室
3〜5……第一〜第三の処理部
7……集電体形成装置
8……正電極膜形成装置
9……電解質膜形成装置
10……負極形成装置
11……保護膜形成装置
36……搬出入室
81……正極集電体薄膜
82……正電極膜
83……電解質膜
84……負電極膜
85……負極集電体膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を有する形状に形成された移動室と、
前記移動室の前記長手方向の一端に接続された搬入室と、
前記移動室の前記長手方向の他端に接続された搬出室と、
少なくとも一部が前記移動室内に位置し、前記搬入室側から前記搬出室側へ基板を移動させる移動機構と、
前記基板の移動方向の、搬入室が接続された位置と前記搬出室が接続された位置との間で、第一〜第三の仕込取出室を介して前記移動室に接続された第一〜第三の処理部と、
前記基板を前記移動室内に搬出入する搬出入室とを有し、前記第一〜第三の処理部内のいずれかの内部で、第一の真空処理を行った後、前記搬出入室から前記第一の真空処理が行われた基板を大気に取り出した後、前記搬入室から搬入して第二の真空処理を行えるように構成された真空処理装置。
【請求項2】
前記第一の真空処理が行われる基板は、前記搬出入室から前記移動室内に搬入される請求項1記載の真空処理装置。
【請求項3】
前記第一の真空処理を行う処理部に接続された仕込取出室と、前記搬出入室とは、対面する位置に配置され、
前記搬出入室から搬入する前記基板は、前記移動室を横断して、前記仕込取出室内に移動させる二度処理用搬送部が設けられた請求項2記載の真空処理装置。
【請求項4】
長手方向を有する形状に形成された移動室と、
前記移動室の前記長手方向の一端に接続された搬入室と、
前記移動室の前記長手方向の他端に接続された搬出室と、
少なくとも一部が前記移動室内に位置し、前記搬入室側から前記搬出室側へ基板を移動させる移動機構と、
前記基板の移動方向の、搬入室が接続された位置と前記搬出室が接続された位置との間で、第一〜第三の仕込取出室を介して前記移動室に接続された第一〜第三の処理部と、
前記基板を前記移動室内に搬出入する搬出入室とを有する真空処理装置を用いた真空処理方法であって、
前記第一〜第三の処理部内のいずれかの内部で、第一の真空処理を行った後、前記搬出入室から前記第一の真空処理が行われた基板を大気に取り出し、
次いで、前記搬入室から搬入して第二の真空処理を行う真空処理方法。
【請求項5】
前記第一の真空処理が行われる基板は、前記搬出入室から前記移動室内に搬入する請求項4記載の真空処理方法。
【請求項6】
前記搬出入室から、前記第一の真空処理を行う処理部に接続された仕込取出室へ前記基板を移動させる際には、前記移動室を横断させる請求項5記載の真空処理方法。
【請求項1】
長手方向を有する形状に形成された移動室と、
前記移動室の前記長手方向の一端に接続された搬入室と、
前記移動室の前記長手方向の他端に接続された搬出室と、
少なくとも一部が前記移動室内に位置し、前記搬入室側から前記搬出室側へ基板を移動させる移動機構と、
前記基板の移動方向の、搬入室が接続された位置と前記搬出室が接続された位置との間で、第一〜第三の仕込取出室を介して前記移動室に接続された第一〜第三の処理部と、
前記基板を前記移動室内に搬出入する搬出入室とを有し、前記第一〜第三の処理部内のいずれかの内部で、第一の真空処理を行った後、前記搬出入室から前記第一の真空処理が行われた基板を大気に取り出した後、前記搬入室から搬入して第二の真空処理を行えるように構成された真空処理装置。
【請求項2】
前記第一の真空処理が行われる基板は、前記搬出入室から前記移動室内に搬入される請求項1記載の真空処理装置。
【請求項3】
前記第一の真空処理を行う処理部に接続された仕込取出室と、前記搬出入室とは、対面する位置に配置され、
前記搬出入室から搬入する前記基板は、前記移動室を横断して、前記仕込取出室内に移動させる二度処理用搬送部が設けられた請求項2記載の真空処理装置。
【請求項4】
長手方向を有する形状に形成された移動室と、
前記移動室の前記長手方向の一端に接続された搬入室と、
前記移動室の前記長手方向の他端に接続された搬出室と、
少なくとも一部が前記移動室内に位置し、前記搬入室側から前記搬出室側へ基板を移動させる移動機構と、
前記基板の移動方向の、搬入室が接続された位置と前記搬出室が接続された位置との間で、第一〜第三の仕込取出室を介して前記移動室に接続された第一〜第三の処理部と、
前記基板を前記移動室内に搬出入する搬出入室とを有する真空処理装置を用いた真空処理方法であって、
前記第一〜第三の処理部内のいずれかの内部で、第一の真空処理を行った後、前記搬出入室から前記第一の真空処理が行われた基板を大気に取り出し、
次いで、前記搬入室から搬入して第二の真空処理を行う真空処理方法。
【請求項5】
前記第一の真空処理が行われる基板は、前記搬出入室から前記移動室内に搬入する請求項4記載の真空処理方法。
【請求項6】
前記搬出入室から、前記第一の真空処理を行う処理部に接続された仕込取出室へ前記基板を移動させる際には、前記移動室を横断させる請求項5記載の真空処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−14795(P2013−14795A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146904(P2011−146904)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
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