説明

真空処理装置及びPLCでのパラメータ処理方法

【課題】PLCの有限なメモリー容量に対して、その有限メモリー容量を超えるデータ量のプロセスパラメータを、スループットの低下を伴わずに実行する成膜装置を提供する。
【解決手段】本発明の成膜装置を制御するPLCシステムは、プロセスレシピが作成されるとともに、作成されたプロセスレシピが格納される操作用コンピュータと、操作用コンピュータに格納されているプロセスレシピのうち、次に処理が実行されるプロセスパラメータが順次転送される次レイヤー領域P3と、次レイヤー領域P3に格納されているプロセスパラメータが順次転送されるレイヤー領域P2と、レイヤー領域P2に格納されているプロセスパラメータのうち、次に処理が実行されるコマンドが順次読み込まれるステップ実行領域P1とを有して構成されており、ステップ実行領域P1に格納されたコマンドを順次実行して成膜処理が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置及びPLC(プログラムロジックコントローラ)システムでのパラメータ処理方法に係り、特に真空処理装置に搭載されたPLCシステムでのパラメータ処理方法とそのようなパラメータ処理によって制御される真空処理装置に関する。具体的には、操作用コンピュータのGUI(グラフィック・ユーザ・インターフェース)上で作成されたプロセスパラメータ(プロセスレシピ)に基づいたPLC(プログラムロジックコントローラ)制御によって半導体デバイスなどを処理する真空処理装置および真空処理方法において、PLCをプロセスモジュールの制御に用いている複数ターゲットを搭載した処理室を有する真空処理装置(磁気ヘッド製造装置)及び、該真空処理装置に搭載されたPLCシステムでのパラメータ処理方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
PLCシステムを用いた制御においては、PLCのメモリー領域をデバイスナンバー等と呼ばれる有限な数に分割して、さまざまな制御毎に割り当てて使用しているため、搭載されているメモリーの容量に応じてプロセスパラメータのパラメータを格納するデバイスナンバーの数は限定される。そのため、メモリーの容量が足りない場合には、フラッシュカード等のメモリーを増設して使用していた(例えば、特許文献1乃至4)。
【0003】
特許文献1で用いられているような従来の方法によれば、例えば図9のようなプロセスパラメータをPLCにて実行する場合、操作用コンピュータ(PC)のGUIで作成されたプロセスパラメータをPLCに転送を行う必要があるものの、その際に転送可能なデータ量には上限が設定されていた。すなわち、データ量はステップ数(R1)とパラメータ数(R2)の積で決定され、プロセスパラメータによってはPLCのメモリー以上のデータ量になる場合があるため、常にPLCのメモリー容量を上回らないように制御する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−164311号公報
【特許文献2】特開2009−032293号公報
【特許文献3】特開2004−241628号公報
【特許文献4】特開2009−123214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PLCのメモリー容量を超えるデータ量のプロセスパラメータを実行する場合には、図9に示すようにメモリー容量を超えないデータ量のプロセスパラメータ実行後に後続のプロセスパラメータをPLCのメモリーに転送(図10のステップ105)していた。この場合には、メモリー転送時のプロセスパラメータの処理にタイムラグが生じることになり、データ処理の時間が遅くなるという問題があった。
【0006】
一方、増設したメモリーとPLCメモリーとの間でやりとりする場合は、増設メモリーとPLCメモリーの間でのデータ転送時間が上乗せされるため、増設メモリーを使用しなかった場合に比べてデータ処理の時間が遅くなるという問題があった。
【0007】
このため、複数ターゲットを搭載したPLCで制御されるスパッタ装置において、選択可能な材料を数十〜数百の積層膜の成膜を必要とするプロセスを実行する場合などには、PLC内でのデータ処理に時間がかかり、スループットが低下するおそれがあった。
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、PLCの有限なメモリー容量に対して、その有限メモリー容量を超えるデータ量のプロセスパラメータを、スループットの低下を伴わずに実行する真空処理装置及びこの真空処理装置でのPLCでのパラメータ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る真空処理装置は、PLCによって制御される真空処理装置であって、プロセスレシピが作成されるとともに、作成されたプロセスレシピが格納される操作用コンピュータと、PLCのメモリー内に確保され、操作用コンピュータに格納されているプロセスレシピのうち、次に処理が実行されるプロセスパラメータが順次転送される次レイヤー領域と、PLCのメモリー内に確保され、次レイヤー領域に格納されているプロセスパラメータが順次転送されるレイヤー領域と、PLCのメモリー内に確保され、レイヤー領域に格納されているプロセスパラメータのうち、次に処理が実行されるコマンドが順次読み込まれるステップ実行領域と、を有して構成されるPLCシステムを備えることを特徴とする。
【0010】
あるいは、本発明に係る成膜方法は、プロセスレシピが作成されるとともに、作成された プロセスレシピが格納される操作用コンピュータと、プロセスレシピを読み込むメモリーを有するとともに、メモリーに読み込まれたプロセスレシピに基づいて成膜処理の制御を行うPLCと、を有して構成されるPLCシステムを備え、PLCは、PLCのメモリー内に確保され、操作用コンピュータに格納されているプロセスレシピのうち、次に処理が実行されるプロセスパラメータが順次転送される次レイヤー領域と、PLCのメモリー内に確保され、次レイヤー領域に格納されているプロセスパラメータが順次転送されるレイヤー領域と、PLCのメモリー内に確保され、レイヤー領域に格納されているプロセスパラメータのうち、次に処理が実行されるコマンドが順次読み込まれるステップ実行領域と、を有し、ステップ実行領域に格納されたコマンドを順次実行して成膜処理が行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明は操作用コンピュータのGUIで作成されるプロセスパラメータを分割作成させ、その分割されたデータごとにPLCに転送を行う。そしてプロセスパラメータがなくなる前に次のプロセスパラメータを要求し、操作用コンピュータより転送してもらうことによって限られたPLCのメモリー内でプロセスパラメータを連続して途切れさせることなく、実行させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るデバイス製造装置の模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るデバイス製造装置に取り付けられたプロセスモジュールの断面模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るデバイス製造装置によって作製される多層膜を例示した断面模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る用語の関係を説明する関係図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る分割されたプロセスパラメータの操作用コンピュータでの作成画面の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るPLC内有限メモリーと操作用コンピュータで作成されたプロセスパラメータの関係を示す模式図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る操作用コンピュータとPLC間におけるプロセスパラメータデータのやり取りを示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に係る分類毎に分けられたプロセスパラメータの操作用コンピュータでの作成画面の一例を示す説明図である。
【図9】従来の一般的なステップ構造のプロセスパラメータを示す説明図である。
【図10】従来の操作用コンピュータとPLCの間におけるプロセスパラメータデータのやり取りを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は発明を具体化した一例であって本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0014】
本明細書中においては、図4の説明で記載するように、プロセスパラメータはプロセスレシピを分割したものであり、プロセスレシピ内のプロセスパラメータはその処理が実行される順番にレイヤー1、レイヤー2・・・レイヤーnと呼ぶこととした。プロセスパラメータは多数のステップ(コマンド)から構成されているものとする。特に、特許請求の範囲の記載では、プロセスパラメータを構成する各ステップを「コマンド」として記載した。
【0015】
なお、本願明細書中では、真空処理装置として、磁気ヘッドなどの半導体デバイスを作製するための磁気ヘッド製造装置(デバイス製造装置)を例に挙げて説明するが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、メモリーやメディア用の多層膜を成膜する成膜装置や、反応性PVD装置に用いる反応ガスやCVD装置に使用される原料ガス供給装置、若しくはアッシング装置やドライエッチング装置などのガス供給装置にも好適に適用することができる。
【0016】
図1〜8は本発明の一実施形態について説明した図である。図1はデバイス製造装置の模式図、図2はデバイス製造装置に取り付けられたプロセスモジュールの断面模式図、図3はデバイス製造装置によって作製される多層膜を例示した断面模式図、図4は用語の関係を説明する関係図、図5は分割されたプロセスパラメータの操作用コンピュータPCでの作成画面(GUI)の一例を示す説明図、図6はPLC内有限メモリー(メモリー)と操作用コンピュータで作成されたプロセスパラメータの関係を示す模式図、図7は操作用コンピュータとPLC間におけるプロセスパラメータデータのやり取りを示すフローチャート、図8は分類毎に分けられたプロセスパラメータの操作用コンピュータPCでの作成画面(GUI)の一例を示す説明図である。なお、図面の煩雑化を防ぐため一部を除いて本発明と直接の関係がない構成を省略している。
【0017】
図1に示すデバイス製造装置(真空処理装置)は、トランスファーモジュールTMにプロセスモジュールPM(PM、PM4,PM7)、ロードロック室LLが連結されて構成されている。トランスファーモジュールTMには必要に応じて基板搬送用のロボットが配設されており、ロードロック室LLは、ロードポートC1,C2が片側に連結されたフロントエンドモジュールEFEMに接続されている。基板(被処理部材)はロードポートC1,C2、フロントエンドモジュールEFEM、ロードロック室LL及びトランスファーモジュールTMを介して各プロセスモジュールPMに搬送される。
【0018】
図2に示すプロセスモジュールPMは、真空容器内にスパッタリングカソードT1〜T4と基板保持台T7を備えている。それぞれのスパッタリングカソードT1〜T4には成膜材料からなるスパッタリングターゲットが備えられており、基板保持台T7には被成膜部材(基板T6)を配置することができる。また、真空容器は、プロセスガスなどを導入するための不図示のガス導入機構やプロセスガスや不純物ガスを排気するための排気機構を備えている。
【0019】
図3にデバイス製造装置によって作製される多層膜を例示した断面模式図を示す。基板T6の上に、各種の成膜層(L1,L2,L3・・Ln,Ln+1)が積層されて多層膜が構成されている。それぞれの成膜層(L1,L2,L3・・Ln,Ln+1)は、例えば異なる組成から構成されており、それぞれ異なるカソードやプロセスモジュール(PM,PM3,PM4など)によって成膜される。
【0020】
ここで、図4に基づいて本明細書中での用語の意味について説明する。
「プロセスレシピ」(図10中A4)は1つのプロセスモジュールPM内で基板上に積層される多層膜全ての成膜条件のデータであり、プロセスパラメータの集合である。言い換えると、プロセスパラメータはプロセスレシピを分割したものである。なお、プロセスレシピ内のプロセスパラメータを処理する順番にレイヤー1、レイヤー2・・・レイヤーnと呼ぶ。
【0021】
「プロセスパラメータ」は成膜層ごとの成膜条件が入力されたプログラムであり、パラメータ(図4中A1)として表された設定可能な項目数と、ステップ(図4中A2)として表された項目数の集合体から構成されている。なお、ステップは図6のフローチャート中では「コマンド」として記載した。成膜処理はプロセスパラメータ内のステップ(コマンド)を順番に実行することで行われる。
【0022】
プロセスパラメータに基づいて成膜処理などの制御が行われる。例えば、基板にスパッタリングを行う制御では、成膜室にガスを導入するタイミングや、ガス導入圧力・時間、又は、カソードに電力を印加するタイミングがステップ(コマンド)として設定されており、PLCを介してMFCやカソード接続された電源の入出力制御などが行われる。
【0023】
図5(a),(b)はプロセスパラメータの操作用コンピュータPCでの作成画面(GUI)の一例を示す説明図である。成膜処理が行われるプロセスモジュール毎の各成膜層のプロセスパラメータを設定している。例えば、プロセスモジュールPM3で成膜処理される成膜層1のプロセスパラメータは、xステップのプロセス数から構成されるパラメータであり、それぞれのステップにおいて、時間(例えば、処理時間)、Heat(処理温度)、power(カソードへの印加電力)、Gas(導入ガスの種類、量)、回転数(基板保持台の回転数)などのパラメータが逐一設定されている。なお、操作用コンピュータPCは、演算装置、ストレージ装置、入出力装置(例えばGUI、I/O)などを有し、PLCと接続された公知のコンピュータである。
【0024】
図5に基づいてプロセスパラメータについて説明する。
ターゲット種毎といった分類別でのプロセスパラメータの管理が可能な構造になっており、複数ターゲットが配置されたスパッタ装置内で成膜される積層膜のプロセスパラメータ作成を容易にできる構成となっている。
【0025】
例えば、材料A、B、C、A、D、Eを順番に積層する場合、すなわちターゲット種毎に成膜層を積層する場合、積層する成膜層ごとの成膜条件が入力されたプロセスパラメータによって途切れなくデバイス製造装置の制御が実施される。例えば、材料Aの成膜処理にはプロセスパラメータNo.1、材料Bの成膜処理にはプロセスパラメータNo.5・・・等、成膜層ごとにプロセスパラメータが作成され、分割管理されている。このため、パラメータ作成時はこれらプロセスパラメータの組み合わせを変更するのみで積層順を変更することができる。
【0026】
また、別の例として材料Aの層と材料Bの層を繰り返して100層成膜する場合、100層の成膜層それぞれのプロセスパラメータを作成せずに、2層分のみのプロセスパラメータ(材料AのレイヤーAと材料BのレイヤーB)を作成し、開始レイヤーのプロセスパラメータ(図5中R12)、終了レイヤーのプロセスパラメータ(図5中R13)及び繰返し回数(図5中R14)を設定することにより、容易に多層の積層膜を形成するプロセスレシピの作成が可能となっている。
【0027】
なお、従来は、同一のプロセスパラメータ(図5中R18に相当)内で、ステップのパラメータを材料毎に変更していたため、積層順が入れ替わると関連したステップも順序を変えてプロセスパラメータを再構築する必要があった。
【0028】
図6は、PLC内の有限メモリーと操作用コンピュータPCで作成されたプロセスパラメータの関係を示す模式図である。
操作用コンピュータPCは成膜する積層膜の全てのプロセスパラメータ(プロセスレシピ)を格納できるメモリー領域(操作用コンピュータ領域)を有しており、操作用コンピュータ領域には全てのプロセスレシピが格納されている状態である。一方、PLC内メモリー(メモリー)の所定の領域(メモリー領域)にはステップ実行領域(図6中P1)、レイヤー領域(図6中P2)、次レイヤー領域(図6中P3)の3つ領域が確保されている。
【0029】
ステップ実行領域(P1)はプロセスパラメータ内、各レイヤー内の1つのステップ(図7中ではコマンド)を実行するために用意された領域であり、ステップが進んでいくにつれてレイヤー領域(P2)から該当ステップのデータを順次読み込んで実行(順次実行)する。
レイヤー領域(P2)の最終ステップがステップ実行領域(P1)へ転送されると、レイヤー領域(P2)は必要なくなるので次レイヤー領域(P3)からプロセスパラメータがレイヤー領域(P2)に転送される。
【0030】
次レイヤー領域(P3)が空になったその時点でPLCは操作用コンピュータPCに対し、次レイヤーの転送を要求し、データを受信する。
ステップ領域(P1)、レイヤー領域(P2)、次レイヤー領域(P3)及び操作用コンピュータPCを有してPLCシステムが構成されている。
【0031】
図7は、図6に示した操作用コンピュータPCとPLC間におけるプロセスパラメータデータのやり取りのフローチャートを示したものである。
成膜プロセスを開始(Step1)すると、PLCのレイヤー領域P2から処理するプロセスパラメータの該当処理ステップ(以下、コマンドとする)をステップ実効領域P1に読み込む(Step2)。
【0032】
一つ前に読み込んだコマンドの処理が終わり次第(Step3)、Step2で読み込んだコマンドによる処理を行う(Step4)。Step4の処理中に次コマンドがレイヤー領域P2に格納されているか否かを判断して(Step5)、コマンドがレイヤー領域P2にある場合は(Step5:Yes)、Step2にもどる。レイヤー領域P2に格納されているプロセスパラメータの各コマンドは、上記Step2〜Step5までを繰り返して実行される。
【0033】
次処理のコマンドがレイヤー領域P2にない場合は(Step5:No)、次レイヤー領域P3に次のプロセスパラメータ(図7中はPパラメータ)が格納されているか否か判断する(Step6)。次レイヤー領域P3にプロセスパラメータ格納されている場合は(Step6:Yes)、次のプロセスパラメータをレイヤー領域P2に転送(第1転送ステップ)し(Step7)、Step5へ戻る。次レイヤー領域P3に格納されていない場合は(Step6:No)、操作用コンピュータに次のプロセスパラメータが格納されているか否か判断する(Step8)。
【0034】
操作用コンピュータに格納されている場合は(Step8:Yes)、次のプロセスパラメータを次レイヤー領域P3に転送(第2転送ステップ)し(Step9)、Step6に戻る。操作用コンピュータに格納されていない場合は(Step9:No)、Step4でのコマンドの処理の終了を確認後(Step10:Yes)、成膜プロセスを終える。
【0035】
なお、処理が終了したプロセスパラメータに2以上の繰返し回数が設定されているときは、設定された繰り返し回数分、操作用コンピュータから次レイヤー領域P3に当該プロセスパラメータが順次転送(繰り返し転送)されることになる。繰返し回数が、開始レイヤーのプロセスパラメータと終了レイヤーのプロセスパラメータ(任意のプロセスレシピ)として設定されている場合には、開始レイヤーのプロセスパラメータから終了レイヤーのプロセスパラメータまでのプロセスパラメータが順番に、操作用コンピュータから次レイヤー領域P3に、設定された繰り返し回数転送されることになる。
【0036】
このようにあらかじめ分割された次レイヤーのプロセスパラメータをプロセス実行中に指定領域に転送することを(図6、図7)繰り返すことでプロセレシピが途切れなく実行させることを可能にしている。
【0037】
ここで、図8に基づいてプロセスレシピの他の作成方法について説明する。
図8は、あらかじめ分類しておいたプロセスパラメータの中から成膜条件に応じて必要なプロセスパラメータを選択してプロセスレシピを作成する方法について示したものである。機能や材料などの分類毎に、ステップの一部が異なるだけのプロセスパラメータを集めて操作用コンピュータに格納してある。
【0038】
そのため、プロセスパラメータの一部のステップを書き換える必要があるときは、各分類に格納されたプロセスパラメータの中から最適なプロセスパラメータを選択してプロセスレシピを作成することができる。従って、膨大な数の近似した内容のプロセスパラメータの複雑な管理を簡略化することができる。
【0039】
図8でのターゲット材料毎の分類の具体例として、例えば、T−S距離(ターゲットと基板間の距離)の違いに応じて各ステップを最適化したプロセスパラメータを集めたものや、ホルダ回転数や基板温度の違いに応じて各ステップを最適化したプロセスパラメータを集めたものが考えられる。機能毎の分類の具体例として、成膜条件が変更されても使用されるものであり、例えば、着火準備作業工程やガス抜き作業工程に関するプロセスパラメータが考えられる。
【0040】
以上のように本発明は操作用コンピュータで作成されるプロセスレシピをプロセスパラメータとして分割して管理し、その分割されたプロセスパラメータごとにPLCに順次転送し実行する。そして実行しているプロセスパラメータがなくなる前に次のプロセスパラメータを要求し、操作用コンピュータより転送してもらうことによって限られたPLCのメモリー内でプロセスパラメータ(プロセスレシピ)を連続して途切れさせることなく、実行させることが可能になる。
【0041】
このことにより、複数ターゲットを搭載した処理室で被処理体に対し、積層膜(図3)を決まったプロセスレシピに基づいた処理で成膜しようとした場合、個々のプロセスパラメータを作成すれば、PLCのメモリーの容量に無関係に積層膜を生成することができる。
【0042】
また、プロセスレシピ作成を分割して行うことにより、プロセスレシピ作成の簡略化及び管理の効率が飛躍的に向上する。決まった積層を繰り返し、数百層もの成膜が必要な場合は繰り返し設定を行うことでプロセスレシピの設定作業を簡略化することができる。
【符号の説明】
【0043】
PM,PM2,PM3,PM5,PM7 プロセスモジュール
C1,C2 ロードポート
TM トランスファーモジュール
LL−A,LL−B ロードロック
EFEM エキュップメント・フロント・エンド・モジュール
R1 プロセスパラメータのステップの数
R2 プロセスパラメータのパラメータの数
R11 分割られたプロセスレシピ
R12 繰り返し設定の開始ステップNo.と開始レイヤーNo.
R13 繰り返し設定の終了ステップNo.と終了レイヤーNo.
R14 繰り返し設定の繰り返し回数
R15 分割されたプロセスパラメータのステップ数
R16 分割されたプロセスパラメータのパラメータ数
R17 分割されたプロセスパラメータのレイヤー数
R18 プロセスパラメータ
T1,T2、T3,T4 スパッタリングカソード
T6 基板
T7 基板保持台
P1 ステップ実行領域
P2 レイヤー領域
P3 次レイヤー領域
PC 操作用コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PLCによって制御される真空処理装置であって、
プロセスレシピが作成されるとともに、作成されたプロセスレシピが格納される操作用コンピュータと、
前記PLCのメモリー内に確保され、前記操作用コンピュータに格納されているプロセスレシピのうち、次に処理が実行されるプロセスパラメータが順次転送される次レイヤー領域と、
前記PLCのメモリー内に確保され、前記次レイヤー領域に格納されているプロセスパラメータが順次転送されるレイヤー領域と、
前記PLCのメモリー内に確保され、前記レイヤー領域に格納されているプロセスパラメータのうち、次に処理が実行されるコマンドが順次読み込まれるステップ実行領域と、を有して構成されるPLCシステムを備えることを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
プロセスレシピが作成されるとともに、作成されたプロセスレシピが格納される操作用コンピュータと、
プロセスレシピを読み込むメモリーを有するとともに、該メモリーに読み込まれたプロセスレシピに基づいて成膜処理の制御を行うPLCと、を有して構成されるPLCシステムを備え、
前記PLCは、前記PLCのメモリー内に確保され、前記操作用コンピュータに格納されているプロセスレシピのうち、次に処理が実行されるプロセスパラメータが順次転送される次レイヤー領域と、前記PLCのメモリー内に確保され、前記次レイヤー領域に格納されているプロセスパラメータが順次転送されるレイヤー領域と、前記PLCのメモリー内に確保され、前記レイヤー領域に格納されているプロセスパラメータのうち、次に処理が実行されるコマンドが順次読み込まれるステップ実行領域と、を有し、
前記ステップ実行領域に格納されたコマンドを順次実行して成膜処理が行われることを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
プロセスレシピに基づいて成膜処理の制御を行うPLCのメモリー内に確保され、所定のメモリー領域に格納されているプロセスパラメータが順次転送される次レイヤー領域と、
前記PLCのメモリー内に確保され、前記次レイヤー領域に格納されているプロセスパラメータが順次転送されるレイヤー領域と、
前記PLCのメモリー内に確保され、前記レイヤー領域に格納されているプロセスパラメータのうち、次に処理が実行されるコマンドが順次読み込まれるステップ実行領域と、を有して構成されるPLCシステムを備え、
前記ステップ実行領域に格納されたコマンドを順次実行して成膜処理が行われる成膜方法であって、
前記PLCシステムでのプロセスパラメータの処理は、
前記レイヤー領域に格納されているプロセスパラメータから、次に処理を実行するコマンドを前記ステップ実行領域に読み込むステップと、
前記ステップ実行領域に読み込まれたコマンドを実行するステップと、
前記レイヤー領域に次のコマンドが格納されているか否かを確認するステップと、
前記レイヤー領域に次のコマンドが格納されていない場合に、前記次レイヤー領域にプロセスパラメータが格納されているか否かを確認するステップと、
前記次レイヤー領域にプロセスパラメータが格納されている場合には、前記次レイヤー領域から前記レイヤー領域に次に処理するプロセスパラメータを転送する第1転送ステップと、を有し、
前記ステップ実行領域に読み込まれたコマンドの実行が終了するよりも前に、第1転送ステップが終了されることを特徴とする成膜方法。
【請求項4】
プロセスレシピが作成されるとともに、作成されたプロセスレシピが格納される操作用コンピュータと、
プロセスレシピを読み込むメモリーを有するとともに、該メモリーに読み込まれたプロセスレシピに基づいて成膜処理の制御を行うPLCと、を有して構成されるPLCシステムを備え、
前記PLCは、前記PLCのメモリー内に確保され、前記操作用コンピュータに格納されているプロセスレシピのうち、次に処理が実行されるプロセスパラメータが順次転送される次レイヤー領域と、前記PLCのメモリー内に確保され、前記次レイヤー領域に格納されているプロセスパラメータが順次転送されるレイヤー領域と、前記PLCのメモリー内に確保され、前記レイヤー領域に格納されているプロセスパラメータのうち、次に処理が実行されるコマンドが順次読み込まれるステップ実行領域と、を有し、
前記ステップ実行領域に格納されたコマンドを順次実行して成膜処理が行われる成膜方法であって、
PLCシステムでのプロセスパラメータ処理は、
前記レイヤー領域に格納されているプロセスパラメータから、次に処理を実行するコマンドを前記ステップ実行領域に読み込むステップと、
前記ステップ実行領域に読み込まれたコマンドを実行するステップと、
前記レイヤー領域に次のコマンドが格納されているか否かを確認するステップと、
前記レイヤー領域に次のコマンドが格納されていない場合に、前記次レイヤー領域にプロセスパラメータが格納されているか否かを確認するステップと、
前記次レイヤー領域にプロセスパラメータが格納されていない場合に、前記操作用コンピュータにプロセスパラメータが格納されているか否かを確認するステップと、
前記操作用コンピュータ領域にプロセスパラメータが格納されている場合には、前記操作用コンピュータから前記次レイヤー領域に次に処理するプロセスパラメータを転送する第2転送ステップと、を有し、
前記ステップ実行領域に読み込まれたコマンドの実行が終了するよりも前に、前記第2転送ステップが終了されることを特徴とする成膜方法。
【請求項5】
前記操作用コンピュータでは、処理が実行される繰り返し回数を任意のプロセスレシピに対して設定することができ、
繰返し回数が設定されたプロセスレシピの処理が終了したときは、前記第2転送ステップにおいて、前記操作用コンピュータから前記次レイヤー領域に繰返し回数が設定されたプロセスパラメータを設定された繰り返し回数転送することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記操作用コンピュータには、コマンドの一部が異なるだけのプロセスパラメータが格納されており、
プロセスレシピは、前記操作用コンピュータに格納されたプロセスパラメータから選択されることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の成膜方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−159279(P2011−159279A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272136(P2010−272136)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】