説明

真空吸引処理方法および真空吸引処理システム

【課題】濁水処理、汚泥脱水固化処理または軟弱地盤改良処理において、簡易な構成で、真空までの到達時間が短く、高い真空度、高い排気量で真空吸引が可能な真空吸引処理方法を提供する。
【解決手段】駆動水により負圧を発生させて真空吸引するエジェクタを用いることにより、濁水処理、汚泥脱水固化処理または軟弱地盤改良処理を行う真空吸引処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濁水処理、汚泥脱水固化処理または軟弱地盤改良処理における真空吸引処理方法および真空吸引処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場等で発生する濁水の処理や、閉鎖水域の浄化に伴う濁水の処理には、排水中の懸濁物質(SS成分、例えば、粘土、シルト、セメント成分等の微細土や、植物プランクトン、動物プランクトン、食品、食品残渣等)の除去や固化、脱水が避けられない要件である。
【0003】
この要件に対応できる技術としてフィルタープレスの活用が一般的であるが、装置が大規模な加圧装置であり、エネルギー効率が悪いため、短期間の現場の濁水処理には適さない。オントラック型の小型フィルタープレスも存在するが、粘土、シルト、セメント成分等の微細土等の脱水固化(ケーキ作製)への適用のみであり、処理に時間を要し、濁水処理システムとしては不十分である。
【0004】
また、濁水処理能力をあげるためには、凝集剤などを使っての沈降分離水槽および凝集剤撹拌槽、pH調整槽、中和槽などの水槽が必要となり、また連続処理をする場合は、固化処理中の濁水を貯留する濁水槽が必要となる。さらに、凝集剤が排出脱水ケーキに混入するため、多くの場合、産業廃棄物としての処分が必要となり、再資源化の観点からも、コスト面でも課題となっている。
【0005】
一方、従来の濁水処理や、海洋、湖沼、河川等の底部に沈降、堆積した底質汚泥等の汚泥脱水固化処理に使用されている真空ポンプは、真空発生機能が低く(例えば、真空度−0.05MPa〜−0.08MPa程度、排気量100L/m程度)、真空までの到達時間が長く(例えば、数分程度)、定常的に一定の排水量を確保するのは難しかった。
【0006】
また、軟弱地盤内にドレーン材を打設後、真空ポンプによる吸引装置を用いて、負圧を作用させて地盤内を減圧することによって、地盤の圧密を促進する方法(真空圧密工法)が知られている。しかし、真空ポンプを使用する方法では、やはり真空発生機能が低く、真空までの到達時間が長く、定常的に一定の排水量を確保するのは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−167789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、濁水処理、汚泥脱水固化処理または軟弱地盤改良処理において、簡易な構成で、真空までの到達時間が短く、高い真空度、高い排気量で真空吸引が可能な真空吸引処理方法および真空吸引処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、駆動水により負圧を発生させて真空吸引するエジェクタを用いることにより、濁水処理、汚泥脱水固化処理または軟弱地盤改良処理を行う真空吸引処理方法である。
【0010】
また、本発明は、前記真空吸引処理方法において、懸濁物質を含む被処理水に浸漬した濾過材に接続した前記エジェクタを用いて真空吸引することにより、前記濾過材の内部に負圧を形成し、前記濾過材の表面に前記懸濁物質を付着させて、濁水処理または汚泥脱水固化処理を行う真空吸引工程を含む方法である。
【0011】
また、本発明は、前記真空吸引処理方法において、前記エジェクタの排出側の流路を閉じることにより、前記駆動水を逆流させて前記濾過材の表面に付着した前記懸濁物質を剥離する剥離工程、および、前記エジェクタの排出側の流路を閉じることにより、前記駆動水を逆流させて前記濾過材を逆洗浄する逆洗浄工程、のうち少なくとも1つを含む方法である。
【0012】
また、本発明は、前記真空吸引処理方法において、前記濾過材が、膨らんだときに筒型形状となるものである方法である。
【0013】
また、本発明は、前記真空吸引処理方法において、改良対象の軟弱地盤にドレーン材を設置し、前記ドレーン材に接続した前記エジェクタを用いて真空吸引することにより、軟弱地盤改良処理を行う真空吸引工程を含む方法である。
【0014】
また、本発明は、駆動水により負圧を発生させて真空吸引するエジェクタと、前記エジェクタを用いて真空吸引することにより、濁水処理、汚泥脱水固化処理または軟弱地盤改良処理を行うための処理手段と、を備える真空吸引処理システムである。
【0015】
また、本発明は、前記真空吸引処理システムにおいて、前記処理手段が濾過材であり、懸濁物質を含む被処理水に浸漬した前記濾過材に接続した前記エジェクタを用いて真空吸引することにより、前記濾過材の内部に負圧を形成し、前記濾過材の表面に前記懸濁物質を付着させて、濁水処理または汚泥脱水固化処理を行うシステムである。
【0016】
また、本発明は、前記真空吸引処理システムにおいて、前記エジェクタの排出側の流路を閉じることにより、前記駆動水を逆流させて、前記濾過材の表面に付着した前記懸濁物質を剥離する、あるいは、前記濾過材を逆洗浄する逆流手段を備えるシステムである。
【0017】
また、本発明は、前記真空吸引処理システムにおいて、前記濾過材が、膨らんだときに筒型形状となるものであるシステムである。
【0018】
また、本発明は、前記真空吸引処理システムにおいて、前記処理手段がドレーン材であり、改良対象の軟弱地盤に前記ドレーン材を設置し、前記ドレーン材に接続した前記エジェクタを用いて真空吸引することにより、軟弱地盤改良処理を行うシステムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、駆動水により負圧を発生させて真空吸引するエジェクタを用いることにより、濁水処理、汚泥脱水固化処理または軟弱地盤改良処理において、簡易な構成で、真空までの到達時間が短く、高い真空度、高い排気量で真空吸引が可能な真空吸引処理方法および真空吸引処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る濁水処理システムの一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る濁水処理システムにおける脱水装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る濁水処理システムにおける濾過パネルの一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る濁水処理システムにおけるエジェクタの一例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係る濁水処理システムにおける濾過材の他の例を示す概略構成図である。
【図6】本発明の実施形態に係る濁水処理システムの他の例を示す概略構成図である。
【図7】本発明の実施形態に係る濁水処理システムのエジェクタにおける逆洗浄時の駆動水と空気の流れの様子を示す概略図である。
【図8】本発明の実施形態に係る濁水処理システムの濾過パネルにおける逆洗浄時の逆洗浄水の流れの様子を示す概略図である。
【図9】本発明の実施形態に係る軟弱地盤改良処理システムの一例を示す概略構成図である。
【図10】本発明の実施形態に係る軟弱地盤改良処理システムの使用方法の一例を示す概略構成図である。
【図11】本発明の実施形態に係る軟弱地盤改良処理システムの使用方法の他の例を示す概略構成図である。
【図12】本発明の実施形態に係る軟弱地盤改良処理システムの使用方法の他の例を示す概略構成図である。
【図13】本発明の実施形態に係る軟弱地盤改良処理システムの使用方法の他の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0022】
<濁水処理、汚泥脱水固化処理>
本発明の実施形態に係る濁水処理システム(汚泥脱水固化処理システム)の一例の概略構成を図1に示し、その構成について説明する。濁水処理システム1は、少なくとも1つの脱水装置10と、真空吸引手段としてのエジェクタ12と、濁水槽14とを備える。それらをトラック等の車両に搭載してオントラック型のシステムとしてもよい。また、濁水処理システム1は、脱水装置10を移動させる駆動装置(図示せず)と、濁水槽14の前段側に沈降水槽および振動スクリーン等の予備濾過装置とを備えてもよい。
【0023】
図1の濁水処理システム1において、脱水装置10は、処理水配管48によりエジェクタ12の吸込口42に接続され、エジェクタ12の排出側の出口には処理水配管46が接続されている。エジェクタ12の駆動水入口には駆動水配管44が接続されている。図1の例では、濁水処理システム1は2つの脱水装置10を有するが、脱水装置10の数はこれに限定されるものではない。
【0024】
脱水装置10は、例えば、図2に示すように処理手段としての濾過装置である少なくとも1つの濾過パネル20と、濾過パネル20を保持する枠体22とを備える。図2の例では、4基の濾過パネル20が枠体22に略平行になるように固定されているが、濾過パネル20の数や形状はこれに限定されるものではない。
【0025】
濾過パネル20は、例えば、図3に示すように例えば板形状のパネル本体24と、濾過材26と、上空気室28と、下空気室30と、離間部材32と、上パイプ34と、下パイプ36などから構成される。
【0026】
パネル本体24には、内部にパネル本体24の上下方向に延びる通路(図示せず)が設けられており、さらに、表裏の少なくともいずれか一方の面には通路に連通した孔(図示せず)が多数形成されている。
【0027】
濾過材26は例えば布材で、水分は通すが、所定の大きさの懸濁物質等は通さない濾過機能を有し、さらに内側に空気等の気体が注入されると内部が膨張するように適度な通気遮断性を備えている。濾過材26は、少なくとも孔が形成されている箇所のパネル本体24を覆った状態で、周囲がパネル本体24の表面に付着されている。濾過材26の形状および材質は、濁水等の被処理水から懸濁物質を捕捉、分離することができるものであればよく、特に制限はない。濾過材26の形状および材質は、処理対象となる被処理水の性状、含まれる懸濁物質等の性状等に応じて選択すればよい。
【0028】
上空気室28および下空気室30は、例えば、それぞれ、両端部を閉塞させた金属製等の円柱管等から構成され、側面に形成された開口部からパネル本体24の端部が気密状態で差し入れられ、パネル本体24に形成された通路とそれぞれの内部が連通している。
【0029】
また上空気室28は上パイプ34とプラグ等を介して接続され、下空気室30は下パイプ36に同様にプラグ等を介して接続されている。下空気室30には、下空気室30の下面にプラグを設けて、下パイプ36に接続されている。
【0030】
離間部材32は、例えばゴム状等のチューブである。パネル本体24と濾過材26との間に離間部材32を挿入することにより、剥離工程において濾過材26の角部等における懸濁物質の剥離を容易にすることができる。離間部材32は、例えば袋状に形成された布製の部材で、内部に空気等の気体が注入されると外側に膨らむような構造のものであってもよく、剥離工程において離間部材32の内部に空気等の気体を送って膨張させてもよい。離間部材32は、濾過材26がパネル本体24に取り付けられている箇所に設けられていればよく、特に取り付け箇所は問わない。
【0031】
枠体22は、例えばアルミ製の直方体等の枠組みであり、上部に吊り下げ用のワイヤ38が取り付けてある。枠体22の上面には、脱水装置10の上空気室28が固定されており、枠体22の下部には、下空気室30が固定されている。
【0032】
駆動装置は、例えば、ワイヤ38等を介して、濁水槽14からの脱水装置10の引き上げや引き下げを行うための上下方向への移動や、脱水装置10の略水平方向への移動を行う搬送機能を備えるものである。
【0033】
濁水槽14の前段側に備えていてもよい振動スクリーン等の予備濾過装置は、処理対象の濁水の予備濾過を行うものであればよく、特に制限はない。振動スクリーンは、処理対象の濁水に含まれる懸濁物質の粒度よりも小さい網目を有するものであればよく、例えば、金属製、樹脂製のものが挙げられる。振動スクリーンとしては、例えば、目開きの細かい(例えば、孔径75μm〜125μm程度)のものを用いることができる。振動スクリーン等の予備濾過装置を配置することにより、脱水固化装置の処理能力を低く抑えることができる。また、予備濾過装置等も含めてトラック等の車両に搭載してオントラック型のシステムとしてもよい。
【0034】
エジェクタ12は、駆動水配管44からの駆動水により負圧を発生させて、脱水装置10からの処理水を吸込口42から吸い込み、処理水配管46から処理水を駆動水とともに排出する構造となっている。エジェクタ12は、気体を吸引するための吸気口40を有していてもよい。また、吸気口40にバルブ47を設置して、吸気の開閉を行うことができる構成としてもよい。処理水配管48にはバルブ49を設置してもよい。バルブ47およびバルブ49の開閉量を調整することにより、エジェクタ12の流量を制御することができる。
【0035】
図4は、本発明の実施形態に係る濁水処理システム1におけるエジェクタ12の一例を示す概略構成図である。エジェクタ12は、円筒形状等を有する主管50と、主管50の入口側に設けられ、駆動水を導入するための、入口の内径よりも出口の内径が小さいノズル52と、主管50の入口側と出口側との間に設けられた、処理水を吸い込むための吸込口42とを有する。吸込口42と主管50の入口側との間であってノズル52の出口よりも下流側に設けられ、気体を吸引するための吸気口40を有してもよい。吸込口42の位置は、ノズル52の出口より上流側であってもよいが、吸い込みの効率等を考慮すると、ノズル52の出口より下流側であることが好ましい。エジェクタ12は、ノズル52の出口から所定の距離Lだけ離れて位置し、ノズル52の出口の内径dよりも大きい内径Dを有する円筒形状等の管であるキャビレスチューブ54を有していてもよい。
【0036】
エジェクタ12において、エジェクタ12の入口側から駆動水が導入されると、駆動水は内部で径が絞られたノズル52を通過し、ノズル52の出口から高圧噴流として噴射される。ノズル52から噴射された高圧噴流は、直進方向に進むに従って噴流核が拡散し、その勢いが拡散し希薄になるが、キャビレスチューブ54内で、吸気口40から吸引された空気がその噴流核の周囲に形成された真空域に起因する空気流とで、流速をほとんど減じることなく勢いを維持しながら、吸込口42の側に直進し、新たな負圧吸引域を形成し、処理水が吸引される。すなわち、キャビレスチューブ54は、噴流(気体(空気等)と液体(駆動水)との混合流体)のノズルの機能を有しており、安定した吸引性能を維持することができる。
【0037】
例えば3MPa以上の駆動圧でノズル52から駆動水を高圧噴流として高速で噴射させると、ノズル52の出口(噴射口)で真空度の高い負圧が発生する。一般に高圧噴流を閉鎖された管内で噴射させると、ノズルの噴射口周辺では乱流が発生(キャビテーション現象ともいう)し、構成部材に損傷を与えたり、噴流の直進を阻害したりする場合があるので、吸気口40を設け、吸気口40より外気を吸引すれば、キャビテーション現象の発生を防ぐと共に、噴流の拡散を防ぐことができる。
【0038】
エジェクタ12は、駆動水により負圧を発生させるものであればよく、上記構成のものに限らず、特に制限はないが、上記構成のものは定常的な真空吸引に最適な構成となっている。エジェクタ12の内径、長さは、特に制限はないが、例えば、内径10mm〜40mm程度、長さ0.5m〜1m程度に小型化が可能である。
【0039】
エジェクタ12の駆動水は、水に限らず液体または気体等の流体であればよいが、通常は水である。駆動水を別途用意してもよいし、処理水の少なくとも一部を循環して利用してもよい。
【0040】
エジェクタ12において、吸気口40から吸引される気体は、例えば、空気や、塩素ガス、オゾン等の殺菌性ガス等であるが、通常は空気(外気)である。吸気口40から吸引される気体として塩素ガス、オゾン等の殺菌性ガスを用いると、処理水を簡易に殺菌することができる。また、気液混合の高圧噴流により、処理水の曝気も同時に効率的に行うことができる。
【0041】
濁水槽14は、被処理水を貯留し、脱水装置10を浸漬可能なものであればよく、特に制限はない。図1の濁水処理システム1において、濁水槽14中の被処理水に脱水装置10が浸漬されて真空吸引処理が行われるが、濁水槽を設けずに、池、河川、湖等の処理対象に脱水装置10が直接浸漬されて真空吸引処理が行われてもよい。
【0042】
次に、濁水処理システム1の動作および濁水処理方法について図1を参照して説明する。
【0043】
濁水処理対象の懸濁物質(SS成分)を含む濁水等の被処理水は、必要に応じて振動スクリーン等により予備濾過され、懸濁物質や砂、礫分等の粒径の比較的粗いものが除去された後、ポンプ等により濁水槽14に送液される。濁水槽14への被処理水の供給にエジェクタを用いてもよい。図1に示すように、図示しない駆動装置で吊り下げられた脱水装置10が濁水槽14に収納され、濁水に浸漬される。バルブ49を有する場合は開状態として脱水装置10の例えば下パイプ36に接続されたエジェクタ12が起動され、駆動水配管44を通って駆動水が所定の流量、駆動圧で供給されると負圧が発生し、定常的に真空吸引される(真空吸引工程)。このとき上パイプ34は閉塞しておく。すると、濾過材26を通過して水分が濾過パネル20の内部に吸引され、処理水が下パイプ36、処理水配管48を通って、吸込口42からエジェクタ12の内部に吸い込まれ、エジェクタ12の排出側の出口から処理水配管46を通って駆動水と共に排出される。一方、濾過材26を通過しない汚泥等の懸濁物質が濾過材26で濾過されて、濾過材26の表面に徐々に付着する。
【0044】
脱水装置10から排出される水の量が所定量まで減少すると、汚泥が表面に付着して通水性が低下したと判断する。脱水装置10の濾過材26の表面は、汚泥等の懸濁物質が付着した状態である。次に、下パイプ36からのエジェクタ12による吸引作業が停止され、上パイプ34からコンプレッサ等により空気が圧送されることにより、濾過材26の内部が膨張される。すると、濾過材26はパネル本体24から大きく離れ、濾過材26の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質は剥離して落下する(剥離工程)。
【0045】
濾過材26の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質が十分に剥離したら、必要に応じて、再びエジェクタ12が起動され、定常的に真空吸引される(真空吸引工程)。以上の真空吸引工程および剥離工程を断続的に繰り返すことにより、濁水処理が行われる。本実施形態に係る真空吸引処理方法によれば、真空までの到達時間が短く(例えば、数秒程度)、高い真空度、高い排気量で真空吸引することが可能なエジェクタを用いることにより、効率的に濁水処理を行うことができる。
【0046】
次に、濁水処理システム1を用いた汚泥脱水固化処理方法について説明する。
【0047】
濁水処理対象の懸濁物質(SS成分)を含む濁水等の被処理水に脱水装置10が浸漬され、上記濁水処理と同様にして、エジェクタ12によって、定常的に真空吸引される(真空吸引工程)。濾過材26を通過して水分が濾過パネル20の内部に吸引され、処理水が下パイプ36、処理水配管48を通って、吸込口42からエジェクタ12の内部に吸い込まれ、エジェクタ12の排出側の出口から処理水配管46を通って駆動水と共に排出される。一方、濾過材26を通過しない汚泥等の懸濁物質が濾過材26で濾過されて、濾過材26の表面に徐々に付着する。
【0048】
脱水装置10から排出される水の量が所定量まで減少すると、汚泥が表面に付着して通水性が低下したと判断して、脱水装置10が駆動装置により引き上げられる。脱水装置10の濾過材26の表面は、汚泥等の懸濁物質が付着した状態である。なお、脱水装置10を濁水槽14から引き上げずに、濁水槽14から被処理水を抜いてもよい。
【0049】
引き上げられた脱水装置10は例えばそのまま吊り下げた状態で、あるいは地上等に置いた状態で、濁水槽14から被処理水を抜いた場合は脱水装置10は例えばそのままの状態で、継続してエジェクタ12によって大気中で真空吸引され、汚泥に含まれる水分が下パイプ36を通して吸引される。そして、汚泥の含水率がさらに低下すると汚泥を通して空気が吸引され、通過する空気によって汚泥が空気乾燥される。濾過パネル20内にある水分は、下パイプ36からエジェクタ12により吸引され、濾過パネル20の外部に排出される。
【0050】
汚泥が所定の含水率まで乾燥されると、上パイプ34が大気に開放されて、濾過パネル20内などに残る水分が下パイプ36から吸引される。次に、下パイプ36からのエジェクタ12による吸引作業が停止され、上パイプ34からコンプレッサ等により空気が圧送されることにより、濾過材26の内部が膨張される。すると、濾過材26はパネル本体24から大きく離れ、濾過材26の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質は剥離して落下する(剥離工程)。なお、上パイプ34からの空気の圧送とともに、下パイプ36からエジェクタ12による吸引を行ってもよい。
【0051】
濾過材26の表面から落下した汚泥は、含水率が低く、容易に搬送することができ、またこれを利用したり、他のものに加工することが容易な状態となっている。
【0052】
図1の濁水処理システム1では、エジェクタ12を利用して負圧を発生させて、脱水装置10からの処理水は、処理水を吸引するエジェクタの駆動水と共に排出されるが、脱水装置10からの処理水をエジェクタ12から排出される駆動水と共に循環し、エジェクタ12の駆動水に利用してもよい。この場合、濁水処理システム1は、エジェクタ12から排出される処理水および駆動水の少なくとも一部を循環させてエジェクタ12の駆動水として利用する循環手段として、ポンプ等を備えてもよい。
【0053】
従来の濁水処理装置、真空脱水固化装置等に使用されている真空ポンプは、真空発生機能が低く(例えば、真空度−0.05MPa〜−0.08MPa程度、排気量100L/m程度)、所定の真空度までの到達時間が長い(例えば、数分程度)。また、真空ポンプには通常ウォータートラップおよび排水ポンプ等が必要であり、定常的に一定の排水量を確保するのは難しかったが、本実施形態に係るエジェクタ12は、例えば、真空度−0.098MPa程度、排気量1,000L/m以上を達成することが可能であり、ウォータートラップおよび排水ポンプ等の必要もなく排水機能も充分であり、しかも真空までの到達時間が短く(例えば、数秒程度)、濁水処理システム1のような濁水処理や汚泥脱水固化処理に使用される真空吸引装置としては、性能、機能、重量、所要面積、操作性等の各面で装置のコンパクト化には最適であり、オントラック型のシステムが可能となる。
【0054】
また、複数の濾過パネル20を用いて、エジェクタ12により濾過材26の内側から真空吸引することにより、濁水を濾過する過程で濾過材26の表面に土粒子等の懸濁物質を吸着させて、汚泥のケーキの厚さが例えば10mm〜20mm程度になったら、濁水の入った濁水槽14から引き上げて、空気中で汚泥の真空脱水を続けることにより、所定の含水率(例えば40重量%程度)を確保することができる。
【0055】
例えば、濁水槽14中での濾過時間10分〜20分、空気中での脱水時間5分〜7分、ケーキ剥離時間3分程度で、1作業サイクルは30分もあれば十分である。これはフィルタープレスの標準作業サイクル4時間(逆洗浄時間を含む)に比べて5倍〜8倍程度の脱水固化能力を有するので、同一処理能力として、装置重量、所要装置面積の大幅な削減が可能である。このため、コストの削減、初期投資の削減が可能となり、コストおよび初期投資は例えば、1/2以下となる。
【0056】
フィルタープレス装置は、濾過板を包む鋼製等の濾室を形成する必要があり、大型の濁水槽が別途必要である。一方、本実施形態に係る濁水処理システムでは、フィルタープレス装置のように濾室を形成する必要がなく、適切な容量の濁水槽に濾過材を直接浸漬してエジェクタ12による定常的な真空吸引処理を行うことができる。また、処理水と駆動水の少なくとも一部を循環させて、濁水処理量(濾過流量)と脱水固化によるケーキ作製量とのバランスをとることにより、効率的な濁水処理が可能である。凝集剤を用いなくてもよいため、凝集剤撹拌槽、pH調整槽、中和槽などの水槽を設ける必要がなく、設備の軽減につながる。凝集剤等の添加物を含まないため、ケーキを産業廃棄物処理する必要がなく、オンサイトで再利用可能となり、コスト低減効果も高い。
【0057】
濁水処理システム、汚泥脱水固化処理システム等の省スペース上の課題として、空気中でのケーキの剥離時に、圧搾空気で濾過材26を膨張させる必要があり、従って複数の濾過材26間の間隔を例えば10cm程度にすることが望ましい。本実施形態では、例えば、濾過材26をユニット化して、濁水槽14中では異なるユニットの濾過材26を櫛状に重ね合わせて、省スペース化を図ってもよい。この構成により、濁水の濾過処理後に、櫛状に重ね合わせた2つのユニットを駆動装置により吊り上げて、空気中で真空脱水をさせながら、排土スペース等で左右に分けた後、1つのユニット毎に圧搾空気で濾過材26を膨張させてケーキの剥離を行うことができる。再度濾過処理を行う場合には、各ユニットを元の形状に重ね合わせてから、濁水槽14に沈降させて、エジェクタ12による真空吸引を開始すればよい。
【0058】
また、一部のユニットは濾過流量を確保するために、同一の濁水槽14中で空気中に上げることなく、20秒〜30秒間隔でエジェクタ12による濾過と、圧搾空気による濾過材26の膨張による剥離を繰り返すことにより、高い濾過流量を確保することができる。
【0059】
本実施形態に係る真空吸引処理方法によれば、駆動水により負圧を発生させて真空までの到達時間が短く、高い真空度、高い排気量で真空吸引するエジェクタを用いることにより、凝集剤等の薬剤に頼ることなく濁水処理を行うことができ、きわめて効率的でかつ経済的でコンパクトなシステムを提供することができる。
【0060】
本実施形態に係る真空吸引処理方法においては、真空までの到達時間が短く、高い真空度、高い排気量で高真空が得られるエジェクタの負圧吸引機能に着目したものであり、コンパクトで、処理性能の高い濁水処理システムや汚泥脱水固化処理システムを可能とするものであり、例えばトラック等の車両に搭載可能なモバイルタイプのオントラック型から定置プラントタイプまで柔軟に対応できる。
【0061】
本実施形態に係る真空吸引処理方法においては、真空吸引手段としてエジェクタを用いることにより、エジェクタの吸引機能により処理水の曝気が促進され、気液混合された処理水の曝気を行うことができる。さらに、被処理水に揮発性有機化合物(VOC)等の有害な揮発性物質や、殺菌剤等が混入している場合でも、エジェクタの吸引機能により揮発性物質の気化が促進される。例えば、本システムにより飲料水を確保する場合に、エジェクタ12の前段側で塩素ガス等の揮発性の殺菌消毒剤を混入して殺菌消毒した後、本システムで処理を行うと、エジェクタ12の吸引機能により処理水の残留塩素等の残留揮発性物質を低減することができる。このように、殺菌と曝気を同時に行うことができる。さらに、有害物質の除去等のために、本実施形態に係る濁水処理システムの後段側により高度な水処理装置を設置してもよい。
【0062】
濁水処理システム1は、エジェクタの負圧吸引機能を利用するため、懸濁物質を含む濁水等の濁水処理に限らず、底質底泥や浚渫等の汚泥脱水固化処理にも適用可能である。そのスラリ吸引過程でエジェクタの負圧吸引機能を活用するため、エジェクタを通過したスラリは曝気されて、水質浄化に効果があるとともに、微細土粒子が解砕されるため、目開きの細かい(例えば、75μm〜125μm程度)振動スクリーンにて分級することができ、脱水固化ケーキの発生量が抑制される。
【0063】
本実施形態において、濁水処理、汚泥脱水固化処理に用いるシステムとしては、真空吸引を利用して、濁水処理や汚泥脱水固化処理を行うものであればよく、上記の濁水処理システム1の構成に限定されるものではない。例えば、図5に示すような濾過装置を用いるシステムを例示することができる。
【0064】
図5に示す濾過装置は、膨らんだときに円筒形状等の筒型形状となる濾過材27を備える濾過筒21である。濾過筒21は、内部の通路に連通した孔(図示せず)が多数形成されている円筒形状等の中空体25の両端部付近に、少なくとも孔が形成されている箇所を覆った状態で、濾過材27が付着されたものである。中空体25の少なくともいずれか一方の端部は、処理水配管48によりエジェクタ12の吸込口42に接続されて、真空吸引処理が行われる。この構成により、濾過材27の中空体25への接続端部においても剥離工程で懸濁物質等が剥離しやすく効率的である。濾過材27は例えば布材で、水分は通すが、所定の大きさの懸濁物質等は通さない濾過機能を有し、さらに内側に空気等の気体が注入されると内部が膨張するように適度な通気遮断性を備えている。
【0065】
濾過材27の形状および材質は、膨らんだときに筒型形状となり、濁水等の被処理水から懸濁物質を捕捉、分離することができるものであればよく、特に制限はない。膨らんだときの濾過材27の形状は、例えば、円筒形状、楕円筒形状、多角筒形状等の筒型形状や、板形状、球形状、多角形形状等であり、効率良く表面に付着した懸濁物の剥離が行われるために膨らんだときに角部がなるべくないように、円筒形状、楕円筒形状が好ましい。濾過材27の形状および材質は、処理対象となる被処理水の性状、含まれる懸濁物質等の性状等に応じて選択すればよい。中空体25の形状および材質は、特に制限はないが、形状としては、例えば、円筒形状、楕円筒形状、多角筒形状等の筒型形状や、板形状、球形状、多角形形状等である。中空体25と濾過材27の形状または大きさは、同じであっても異なっていてもよい。中空体25と濾過材27の形状または大きさが異なっている方が、剥離工程において懸濁物質の剥離を容易にすることができる。
【0066】
本実施形態において、処理対象となる被処理水としては、例えば、砂場等の砂を洗浄した後の濁水、菜園等の土を洗浄した後の濁水、粘土、シルト等を含む濁水、セメント成分等の化学物質を含む濁水、アオコ等の植物プランクトンや、赤潮等の動物プランクトン等を含む濁水、味噌、醤油等の食品や、酒粕、果汁の絞り滓等の食品残渣等を含む濁水、池、河川、湖等の水等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、放流レベルから飲料水の確保まで多様な濁水処理が可能である。
【0067】
また、飲料水としての利用や、有害物質の除去等のために、本実施形態に係る濁水処理システムの後段側により高度な水処理装置を設置してもよい。
【0068】
本発明の実施形態に係る濁水処理システムの他の例の概略構成を図6に示す。濁水処理システム2は、図1の構成に加えて、エジェクタ12の排出側の出口の処理水配管46の途中にバルブ56を備える。エジェクタ12は、エジェクタ12の排出側の流路を閉じることにより、駆動水を吸気口40から吸引された気体と共に逆流させて、脱水装置10の濾過材26の表面に付着した懸濁物質等を剥離する、あるいは、濾過材26を逆洗浄する逆流手段としても機能する。
【0069】
例えば、図1のシステムと同様にして所定の時間、上記真空吸引工程および剥離工程により処理を行った後、脱水装置10の濾過材26の逆洗浄処理が行われる。エジェクタ12を駆動しながら、図6の排出側のバルブ56を閉状態とすると、駆動水および吸気口40から吸引された空気は、図7に示すように吸込口42から処理水配管48を逆流し、図8に示すように濾過パネル20の濾過材26の噴流逆洗浄が行われる(逆洗浄工程)。噴流により、濾過材26の表面等に残留した懸濁物質等が剥離される。また、バルブ47およびバルブ49の開閉量を調整することにより、エジェクタ12による逆洗浄水(逆流水)の流量または圧力を制御することができる。
【0070】
逆洗浄がほぼ終了したら、エジェクタ12を停止させる。このように真空吸引用のエジェクタを真空吸引だけではなく、逆洗浄にも利用することにより、コンプレッサ等の設備を別途用いなくてもよい。濾過処理時間の経過と共に、被処理水中の懸濁物質等によって濾過材が閉塞状態になり濾過流量が低下した場合でも、簡易な装置構成により、短い逆洗浄処理時間で効率的に、濾過材表面等に付着した懸濁物質が剥離、洗浄され、濾過機能が回復される。
【0071】
また、例えば、図1のシステムと同様にして所定の時間、上記真空吸引工程により濁水処理を行い、脱水装置10から排出される水の量が所定量まで減少すると、汚泥が表面に付着して通水性が低下したと判断する。次に、エジェクタ12を駆動しながら排出側のバルブ56を閉状態とすることにより、駆動水を吸気口40から吸引された気体と共に逆流させて脱水装置10の濾過材26の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質は剥離して落下する(剥離工程)。濾過材26の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質が十分に剥離したら、必要に応じて、エジェクタ12を駆動しながら排出側のバルブ56を開状態とすることにより、再び定常的に真空吸引される(真空吸引工程)。以上の真空吸引工程および剥離工程を断続的に繰り返すことにより、濁水処理が行われる。本実施形態に係る真空吸引処理方法によれば、真空までの到達時間が短く、高い真空度、高い排気量で真空吸引することが可能であり、さらに簡易な構成で逆流させることが可能なエジェクタを用いることにより、効率的に濁水処理を行うことができる。
【0072】
処理水配管46におけるバルブ56の設置位置は、特に制限はない。
【0073】
<軟弱地盤改良処理>
本発明の実施形態に係る軟弱地盤改良処理システムの一例の概略構成を図9に示し、その構成について説明する。軟弱地盤改良処理システム3は、処理手段としての少なくとも1つのドレーン材60と、エジェクタ62とを備える。図9の例では、軟弱地盤改良処理システム3は3つのドレーン材60を有するが、ドレーン材60の数はこれに限定されるものではない。なお、本実施形態に係る軟弱地盤改良処理システム3は、ウェルポイント工法等に用いてもよい。この場合、ドレーン材60が揚水管として機能する。また、エジェクタをディープウェル工法に用いてもよい。
【0074】
図9の軟弱地盤改良処理システム3において、軟弱地盤改良のために軟弱地盤74中に略鉛直方向に設置されたドレーン材60の上端部付近の吸引口は、処理水配管64によりエジェクタ62の吸込口66に接続され、エジェクタ62の排出側の出口には処理水配管68が接続されている。エジェクタ62の駆動水入口には駆動水配管70が接続されている。処理水配管64,68にバルブ65,69をそれぞれ設置してもよい。吸気口72にバルブ67を設置してもよい。バルブ65およびバルブ67の開閉量を調整することにより、エジェクタ62の流量または圧力を制御することができる。また、エジェクタ62を駆動しながらバルブ69を閉状態とすると、駆動水を逆流させることができる。
【0075】
ドレーン材60は、軟弱地盤74内の間隙水を吸引するために軟弱地盤74内に設置される。ドレーン材60としては、例えば、少なくとも一部が多孔質部材から構成されるものを用いることができる。
【0076】
次に、軟弱地盤改良処理システム3の動作について図9を参照して説明する。
【0077】
ドレーン材60の上端部付近の吸引口に接続されたエジェクタ62が起動され、駆動水配管70を通って駆動水が所定の流量、駆動圧で供給されると負圧が発生し、定常的に真空吸引される(真空吸引工程)。すると、ドレーン材60の多孔質部材から構成される部分を通過して地中からの水分がドレーン材60の内部に吸引され、地中からの水分が処理水として処理水配管64を通って、吸込口66からエジェクタ62の内部に吸い込まれ、エジェクタ62の排出側の出口から処理水配管68を通って駆動水と共に排出される。
【0078】
本実施形態に係る真空吸引処理方法においては、真空までの到達時間が短く、高い真空度、高い排気量で高真空が得られるエジェクタの負圧吸引機能により、処理性能の高い軟弱地盤改良処理システムを可能とするものである。
【0079】
本実施形態に係る真空吸引処理方法においては、例えば、図10に示すように、軟弱地盤改良処理の進行に伴い、ドレーン材60を設置した軟弱地盤74の改良範囲の少なくも一部が沈下したとしても、小型化が可能であり容易に設置可能なエジェクタを用いているため、改良範囲内の沈下した地盤にエジェクタ62を設置することができる。これにより、真空による揚水高さから沈下による高低差の分だけロスすることが避けられる。また、処理水(地中からの排水)と駆動水はエジェクタ62による高圧噴流により高い位置まで(例えば、沈下前の地盤の高さまで)容易に揚水することができる。エジェクタによれば3MPaの駆動水の場合は、理論上は300mの揚水が可能である。処理水と駆動水の揚水に必要な高さが大きいときは、複数のエジェクタを直列に接続して、多段構成としてもよい。真空ポンプの場合には、通常ウォータートラップおよび排水ポンプ等が必要であり、装置の大型化が避けられないため、そのような設置は困難である。また、真空ポンプは、通常、−0.05MPa〜−0.08MPa程度の真空度であり、5mの沈下により−0.05MPa程度の真空度のロスがあるため、図10のエジェクタ62のような使用方法は困難である。エジェクタを用いれば、真空ポンプでは揚水できないような高い位置まで容易に揚水することができる。なお、図10の例において、必要に応じて、改良範囲外の沈下していない地盤にエジェクタ62を設置してもよい。
【0080】
本実施形態に係る真空吸引処理方法においては、例えば、図11に示すように、軟弱地盤改良処理の進行に伴い、ドレーン材60を設置した軟弱地盤74の改良範囲の少なくも一部が沈下して、盛土76を盛ったとしても、小型化が可能であり容易に設置可能なエジェクタを用いているため、例えば、沈下部分に隣接する軟弱地盤74の深さ方向に細い孔を掘削し、その孔の大きさに応じてエジェクタ62を小型化して、その孔の中に設置して軟弱地盤改良処理を行うことができる。沈下した沈下地盤75の高さよりもエジェクタ62の処理水の吸込口66の高さが低い場合には、処理水によるサイフォン効果を利用することもできるので、エジェクタの吸引能力に加えて、サイフォン効果が加わることにより、処理水(地中からの排水)を吸引する能力をさらに向上させることができる。また、エジェクタが盛土により埋められることを避けることができる。真空ポンプの場合には、通常ウォータートラップおよび排水ポンプ等が必要であり、装置の大型化が避けられないため、そのような設置は困難である。
【0081】
図11のような例において、サイフォン効果を有効に作用させるためには、処理水配管64内が水により満たされていることが望ましい。例えば、真空吸引処理によって地中からの排水に溶存する酸素等の気体が処理水配管64内に混入した場合には、エジェクタ62を駆動しながらバルブ69を閉状態として駆動水を逆流させて処理水配管64内が水によって満たされている状態にすることができる。また、この逆流を断続的に行うこともできる。
【0082】
本実施形態に係る真空吸引処理方法においては、例えば、図12に示すように、盛土状等の軟弱地盤74の略水平方向に少なくとも1つのドレーン材60を設置して軟弱地盤改良処理を行うことができる。小型化が可能であり容易に設置可能なエジェクタを用いているため、盛土状の地盤の例えば斜面(法面)やその近傍等の狭い場所にもエジェクタ62を設置することができる。これにより、真空吸引処理を行いながら、さらに盛土を高くするような施工も可能となる。ドレーン材60に接続された処理水配管64の最大高さよりもエジェクタ62の処理水の吸込口66の高さが低い場合には、図11の例と同様に、処理水によるサイフォン効果を利用することもできる。真空ポンプの場合には、通常ウォータートラップおよび排水ポンプ等が必要であり、装置の大型化が避けられないため、そのような設置は困難である。
【0083】
本実施形態に係る真空吸引処理方法においては、例えば、図13に示すように、海底、湖底、池底等の水底の軟弱地盤74の略鉛直方向に少なくとも1つのドレーン材60を設置して軟弱地盤改良処理を行うことができる。小型化が可能であり容易に設置可能なエジェクタを用いているため、例えば海底、湖底、池底等の水底にエジェクタ62を設置することができる。これにより、真空による揚水高さから水深による高低差の分だけロスすることが避けられる。処理水と駆動水はそのまま水源に放出してもよいし、エジェクタ62による高圧噴流により揚水してもよい。水深が深い場合には水圧による影響を避けるため、図13に示すように処理水と駆動水を揚水して水面上で放出した方がよい。3MPaの駆動水の場合は、理論上は300mの揚水が可能である。処理水と駆動水の揚水に必要な高さが大きいときは、複数のエジェクタを直列に接続して、多段構成としてもよい。図13の例では、水面78上の船80等の移動体からエジェクタ62に駆動水や空気等の気体を供給すればよい。真空ポンプの場合には、通常ウォータートラップおよび排水ポンプ等が必要であり、装置の大型化が避けられないため、そのような設置は困難である。また、真空ポンプは、通常、−0.05MPa〜−0.08MPa程度の真空度であり、5mの沈下により−0.05MPa程度の真空度のロスがあるため、図13のエジェクタ62のような使用方法は困難である。なお、図13の例において、必要に応じて、水面78上の船80等の移動体にエジェクタ62を設置してもよい。
【0084】
このように、小型化が可能であり簡易な構成であり、真空までの到達時間が短く、高い真空度、高い排気量で高真空が得られ、高圧噴流による揚水が可能なエジェクタを用いることにより、状況に応じてエジェクタの設置場所を適宜選択することができる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
<実施例1>
図1に示す濁水処理システムを用いて、濁水処理および汚泥の真空脱水固化処理の確認を行った。実験条件は以下の通りである。
【0087】
[実験条件]
振動スクリーン目開き:0.125mm
エジェクタ:内径32mm、長さ1m
エジェクタ駆動水量:30L/min
エジェクタ駆動圧力:4MPa
濾過パネル:4ユニット(各40m
濾過材目開き:約50μm
【0088】
実験結果は以下の通りであった。
エジェクタによる発生負圧:−0.098MPa
エジェクタによる排気量:1,000L/min
真空までの到達時間:2秒〜3秒
濾過処理水量:濾過膜面積1m当たり3L/min〜10L/min(180L/hr〜600L/hr)
4ユニット当たりの脱水ケーキ量(シルト・粘度分):1トン/hr(1サイクル30分、1回当たりケーキ付着量1cm)
【0089】
このように、簡易な構成で、真空までの到達時間が短く、高い真空度、高い排気量で真空吸引が可能なエジェクタを用いることにより、短い処理時間で濁水処理および汚泥の真空脱水固化処理が可能なことが確認された。
【符号の説明】
【0090】
1,2 濁水処理システム、3 軟弱地盤改良処理システム、10 脱水装置、12,62 エジェクタ、14 濁水槽、20 濾過パネル、21 濾過筒、22 枠体、24 パネル本体、25 中空体、26,27 濾過材、28 上空気室、30 下空気室、32 離間部材、34 上パイプ、36 下パイプ、38 ワイヤ、40,72 吸気口、42,66 吸込口、44,70 駆動水配管、46,48,64,68 処理水配管、47,49,56,65,67,69 バルブ、50 主管、52 ノズル、54 キャビレスチューブ、60 ドレーン材、74 軟弱地盤、75 沈下地盤、76 盛土、78 水面、80 船。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動水により負圧を発生させて真空吸引するエジェクタを用いることにより、濁水処理、汚泥脱水固化処理または軟弱地盤改良処理を行うことを特徴とする真空吸引処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の真空吸引処理方法であって、
懸濁物質を含む被処理水に浸漬した濾過材に接続した前記エジェクタを用いて真空吸引することにより、前記濾過材の内部に負圧を形成し、前記濾過材の表面に前記懸濁物質を付着させて、濁水処理または汚泥脱水固化処理を行う真空吸引工程を含むことを特徴とする真空吸引処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の真空吸引処理方法であって、
前記エジェクタの排出側の流路を閉じることにより、前記駆動水を逆流させて前記濾過材の表面に付着した前記懸濁物質を剥離する剥離工程、および、
前記エジェクタの排出側の流路を閉じることにより、前記駆動水を逆流させて前記濾過材を逆洗浄する逆洗浄工程、
のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする真空吸引処理方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の真空吸引処理方法であって、
前記濾過材が、膨らんだときに筒型形状となるものであることを特徴とする真空吸引処理方法。
【請求項5】
請求項1に記載の真空吸引処理方法であって、
改良対象の軟弱地盤にドレーン材を設置し、前記ドレーン材に接続した前記エジェクタを用いて真空吸引することにより、軟弱地盤改良処理を行う真空吸引工程を含むことを特徴とする真空吸引処理方法。
【請求項6】
駆動水により負圧を発生させて真空吸引するエジェクタと、
前記エジェクタを用いて真空吸引することにより、濁水処理、汚泥脱水固化処理または軟弱地盤改良処理を行うための処理手段と、
を備えることを特徴とする真空吸引処理システム。
【請求項7】
請求項6に記載の真空吸引処理システムであって、
前記処理手段が濾過材であり、
懸濁物質を含む被処理水に浸漬した前記濾過材に接続した前記エジェクタを用いて真空吸引することにより、前記濾過材の内部に負圧を形成し、前記濾過材の表面に前記懸濁物質を付着させて、濁水処理または汚泥脱水固化処理を行うことを特徴とする真空吸引処理システム。
【請求項8】
請求項7に記載の真空吸引処理システムであって、
前記エジェクタの排出側の流路を閉じることにより、前記駆動水を逆流させて、前記濾過材の表面に付着した前記懸濁物質を剥離する、あるいは、前記濾過材を逆洗浄する逆流手段を備えることを特徴とする真空吸引処理システム。
【請求項9】
請求項7または8に記載の真空吸引処理システムであって、
前記濾過材が、膨らんだときに筒型形状となるものであることを特徴とする真空吸引処理システム。
【請求項10】
請求項6に記載の真空吸引処理システムであって、
前記処理手段がドレーン材であり、
改良対象の軟弱地盤に前記ドレーン材を設置し、前記ドレーン材に接続した前記エジェクタを用いて真空吸引することにより、軟弱地盤改良処理を行うことを特徴とする真空吸引処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−96142(P2012−96142A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244210(P2010−244210)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(509320737)一般社団法人グリーンディール推進協会 (3)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】