説明

真空密着包装食品およびその製造方法

【課題】本発明の課題は、包装後の食品において菌が付着して繁殖するおそれを低減することにある。
【解決手段】本発明に係る真空密着包装食品の製造方法は、食品充填工程、真空密着包装工程および紫外線殺菌工程を備える。食品充填工程では、上方に開口する耐熱容器に食品が充填される。真空密着包装工程では、紫外線を透過させる包装フィルムにより食品が真空密着包装される。紫外線殺菌工程では、包装フィルムを介して食品に紫外線が照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空密着包装された食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「調理魚を、調理魚の一報の側面を載せ得るように形成した透明な容器に載せ、その容器をスキンパック真空包装機内に配置し、その容器を、透明で、弾力性、及びガスバリア性を有する上フィルムを加熱軟化して真空包装する」技術が提案されている(例えば、特開平8−140632号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−140632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、食品をスキン真空パック包装する場合、通常、包装前にその食品を加熱殺菌される場合が多い。しかし、包装前だけ食品が加熱殺菌されると、食品の容器充填中や包装中等において菌が食品に付着し、包装後の容器内の食品で菌が繁殖するおそれがあり、賞味期限や消費期限を短い期間に設定せざるをなかった。
【0005】
本発明の課題は、包装後の食品において菌が繁殖するおそれを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
本発明の一局面に係る真空密着包装食品の製造方法は、食品充填工程、真空密着包装工程および紫外線殺菌工程を備える。食品充填工程では、上方に開口する耐熱容器に食品が充填される。なお、ここにいう「食品」には、調理済み食品のみならず未調理の食材も含まれる。なお、食品が未調理である場合、その食品は、耐熱容器充填後に調理されることになる。また、ここにいう「耐熱容器」とは、陶器、磁器、ガラス製容器、エンジニアリングプラスチック製容器など、食品の加熱調理に耐え得る容器である。真空密着包装工程では、紫外線を透過させる包装フィルムにより食品が真空密着包装(スキン真空パック)される。なお、ここにいう「紫外線」とは、例えば、253nm付近の紫外線であり、殺菌能力を有する。また、ここにいう「菌」とは、一般生菌、大腸菌群、カビ類などの総称である。紫外線殺菌工程では、包装フィルムを介して食品に紫外線が照射される。
【0007】
この真空密着包装食品の製造方法では、食品が包装フィルムにより真空密着包装された後に、包装フィルムを介して食品に紫外線が照射される。このため、この真空密着包装食品の製造方法を利用すれば、食品表面の殺菌を行うことができると共に、包装後の食品に菌が付着することを防止することができる。したがって、この真空密着包装食品の製造方法を利用すれば、包装後の食品において菌が繁殖するおそれを低減することができる。よって、この真空密着包装食品の製造方法を利用すれば、食品の賞味期限や消費期限を比較的長期間に設定することができる。
【0008】
(2)
上述(1)の真空密着包装食品の製造方法は加熱調理工程をさらに備えることが好ましい。加熱調理工程では、耐熱容器に充填された食品が加熱調理される。なお、加熱調理工程は、食品充填工程後、真空密着包装工程前に実施されることが好ましい。
【0009】
このような真空密着包装食品の製造方法では、販売時に使用される容器内で食品を加熱調理することができる。したがって、このような真空密着包装食品の製造方法を利用すれば、調理鍋等の使用を省くことができる。
【0010】
(3)
上述(1)または(2)の真空密着包装食品の製造方法では、包装フィルムが片面側に熱融着層を有することが好ましい。なお、かかる場合、真空密着包装工程では、少なくとも耐熱容器の側面の上端部に対して包装フィルムが熱融着層を介して密着された状態となるように、食品が真空密着包装されることが好ましい。
【0011】
このような真空密着包装食品の製造方法では、少なくとも耐熱容器の側面の上端部に対して包装フィルムが熱融着層を介して密着された状態となるように、食品が真空密着包装される。このため、このような真空密着包装食品の製造方法を利用すれば、上端面の精度が低い陶器等の耐熱容器であっても食品を良好に密閉包装することができる。
【0012】
(4)
本発明に係る真空密着包装食品は、上述(1)から(3)のいずれかの真空密着包装食品の製造方法により得られることが好ましい。
【0013】
(5)
本発明の他の局面に係る真空密着包装食品は、耐熱容器、食品および包装フィルムを備える。食品は、耐熱容器に充填される。包装フィルムは、片面側に熱融着層を有する。また、この包装フィルムは、少なくとも耐熱容器の側面の上端部に熱融着層を介して密着される。そして、食品は、包装フィルムにより真空密着包装されている。
【0014】
この真空密着包装食品では、包装フィルムが少なくとも耐熱容器の側面の上端部に熱融着層を介して密着されると共に、食品が包装フィルムにより真空密着包装されている。このため、この真空密着包装食品では、食品が良好に密閉包装される。したがって、この真空密着包装食品では、外部から菌が食品に付着することを十分に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る食品包装方法の流れを示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態に係るスキン真空パック食品の断面図である。
【図3】変形例に係るスキン真空パック食品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<食品包装方法>
本発明の実施の形態に係る食品包装方法は、主に、容器充填工程、加熱調理工程、冷却工程、真空包装工程、表面殺菌工程およびシュリンク包装工程からなる。以下、これらの工程について詳述する。なお、ここでは、食品をシチューとして説明するが、食品がシチューに限定されることはない。
【0017】
(1)容器充填工程
容器充填工程では、具材およびソース140(図2参照)が耐熱容器110(図2参照)に充填される(図1のS1参照)。なお、ここで、具材は、加熱調理済みのものであってもよいし、下処理済みのものであってもよい。なお、具材が下処理済みのものである場合、その具材は、加熱調理工程において加熱調理されると共に加熱殺菌される。また、具材は、一旦、冷却された後に冷蔵保存されていたものであってもかまわない。
【0018】
(2)加熱調理工程
加熱調理工程では、耐熱容器110に充填された具材の芯温が70から120℃となるように、具材およびソース140が加熱調理される(図1のS2参照)。なお、加熱調理方法としては、例えば、焼成加熱方法、ボイル加熱方法などが用いられる。なお、上述の通り、具材が下処理済みのものである場合、その具材は、本工程において加熱調理されると共に加熱殺菌される。
【0019】
(3)冷却工程
冷却工程では、具材およびソース140がブラスト冷却される(図1のS3参照)。なお、ブラスト冷却に代えて、冷水浸漬冷却が行われてもかまわない。
【0020】
(4)真空包装工程
真空包装工程では、図2に示されるように、耐熱容器110の側面の上端部UPに対してスキン真空パックフィルム120(図2参照)が熱融着層(後述)を介して粘着された状態となるように、具材およびソース140がスキン真空パックされる(図1のS4参照)。なお、スキン真空パックは、従前方法で実施することができる。このため、ここでは、スキン真空パックの詳細な説明を省略する。
【0021】
なお、このスキン真空パックに用いられるスキン真空パックフィルム120(図2参照)の詳細構成については後述する。
【0022】
(5)表面殺菌工程
表面殺菌工程では、スキン真空パックフィルム120を介して具材およびソース140の上表面に紫外線が照射され、具材およびソース140の上表面が殺菌処理される(図1のS5参照)。
【0023】
(6)シュリンク包装工程
シュリンク包装工程では、スキン真空パックフィルム120の上にシュリンクフィルム130(図2参照)がシュリンク成形され、スキン真空パックシチュー100が製造される(図1のS6参照)。なお、このシュリンクフィルム130は、スキン真空パックフィルム120を保護する役割を担っている。
【0024】
<スキン真空パックフィルムの構成>
スキン真空パックフィルム120は、酸素ガスバリア性樹脂からなる最外層、アイオノマー樹脂からなる第一中間層、エチレン−酢酸ビニル共重合体よりなる第二中間層、エチレン系ヒートシール性樹脂からなる熱融着層から構成される。
【0025】
なお、各層は、最外層、中間層、中間層および熱融着層の順に積層されている。また、各層間には、各層間の接着性を高めるために必要に応じて接着層が挿入されてもかまわない。本スキン真空パックフィルム120は、特に、最外層と第一中間層または第二中間層とは、共押出による製膜加工でも接着強度が弱いため、この両層の間には接着層が挿入されるのが好ましい。
【0026】
また、スキン真空パックフィルム120では、最外層の厚みは5〜30μmの範囲であるのが好ましく、第一中間層の厚みは5〜80μmの範囲であるのが好ましく、第二中間層の厚みは5〜80μmの範囲であるのが好ましく、熱融着層の厚みは5〜80μmの範囲であるのが好ましい。
【0027】
以下、各層について詳述する。
【0028】
(1)最外層
最外層は、例えば、エチレンービニルアルコール共重合体ケン化物から形成されている。なお、本発明の実施の形態において、エチレンービニルアルコール共重合体ケン化物として、エチレン含有量が27〜44モル%のもので延伸面積倍率が10倍以上有するものが採用される。
【0029】
なお、ここにいう「延伸面積倍率」とは、150μmのEVOH樹脂単層シートを100℃×30秒加熱した後、同EVOH樹脂単層シートを同時テンター法により延伸加工した際に、延伸されたシートが破れたり、ムラの発生した外観となったりした状態になる手前の延伸された面積(延伸限界面積)の延伸加工前の面積に対する倍率のことである。
【0030】
酸素ガスバリア性樹脂としてこのEVOH樹脂を使用することにより、最外層は、熱板に接触しても劣化しない光沢および透明性を有するばかりか、その延展加工性から歪な形状の内容物に対しても破断することなく、優れた追従性を示す。
【0031】
(2)第一中間層
第一中間層は、上述の通り、アイオノマー樹脂から形成されている。この第一中間層は、スキン真空パックフィルム120に強靭性を付与する役割を担っている。
【0032】
アイオノマー樹脂において、架橋される金属イオンは亜鉛(Zn)及びナトリウム(Na)のいずれでも差し支えなく、帯電防止を目的としてカリウム(K)であっても差し支えない。アイオノマー樹脂の物性としては、特に限定されないが、樹脂の加工の特性上、融点(JIS K−7121に準拠し、DSC法で測定)が100℃以下であり、引張破壊応力(JIS K−7162に準拠し測定)が40MPa以下であるのが好ましい。
【0033】
(3)第二中間層
第二中間層は、上述の通り、エチレン−酢酸ビニル共重合体から形成されている。この第二中間層は、スキン真空パックフィルム120に柔軟性を付与する役割を担っている。
【0034】
エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有量が5〜30重量%の範囲内であるのが好ましい。酢酸ビニル含有量が5重量%未満であると十分な柔軟性、透明性が得られず、逆に酢酸ビニル含有量が30重量%を超えると熱融着層をもってしても厚生省告示370号(食品、食品添加物等の規格基準第三器具及び容器包装Dによる。)に定めるn−ヘプタンの抽出残留物量の規格30ppmを超えるおそれが生じる。
【0035】
(4)熱融着層
熱融着層は、上述の通り、エチレン系ヒートシール性樹脂から形成されている。
【0036】
エチレン系ヒートシール層樹脂としては、JIS K7112に定める方法により測定される密度が0.890以上0.910以下の範囲にあり、JIS K7206に定める方法により測定されるビカット軟化点が90℃以下である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が用いられるのが好ましい。なお、熱融着層は、スキン真空パック包装において、被包装物と密着する層であり、かつ、スキン真空パックフィルム120を耐熱容器110の上端部UPにヒートシール(熱融着)させるための層である。
【0037】
熱融着層は、上述の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂単独で形成されることが好ましいが、スキン真空パックシチュー100の開封を容易にするために、公知の処方技術によりポリプロピレン樹脂などを添加しても差し支えない。
【0038】
また、滑り性やブロッキングを防止する目的で、エチレン系ヒートシール層樹脂に、適宜、滑剤を添加してもよい。なお、かかる場合、滑剤としては、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の有機系滑剤、シリカ、ゼオライト、炭酸カルシウム等の無機系滑剤を挙げることができる。その滑剤の添加量としては0.1〜5重量%の範囲内が好適である。なお、滑材は、通常マスターバッチの形で加えられる。
【0039】
(5)接着層
接着層は、主に、EVA、エチレン−無水マレイン酸共重合体、EAA、EEA、エチレン−メタクリレート−グリシジルアクリレート三元共重合体、あるいは、各種ポリオレフィンにアクリル酸、メタクリル酸などの一塩基性不飽和脂肪酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの二塩基性不飽和脂肪酸またはこれらの無水物をグラフトさせたもの、例えばマレイン酸グラフト化EVA、マレイン酸グラフト化エチレン−α−オレフィン共重合体など、公知の接着性樹脂から形成される。
【0040】
<スキン真空パックフィルムの製造方法>
このスキン真空パックフィルム120は、公知の共押出法、ドライラミネート法などにより製造することができる。
【0041】
<スキン真空パックフィルムの特性>
このスキン真空パックフィルム120は、無色透明であって、253nm付近の紫外線を透過させる。
【0042】
<食品包装方法の特徴>
本実施の形態に係る食品包装方法では、具材およびソース140がスキン真空パックフィルム120によりスキン真空パック包装された後に、スキン真空パックフィルム120を介して具材およびソース140に紫外線が照射される。このため、この食品包装方法を利用すれば、具材およびソース140等の食品の殺菌を行うことができると共に、包装後の食品に菌が付着することを防止することができる。したがって、この食品包装方法を利用すれば、包装後の食品において容器内を真空密着状態に維持し食品の酸化を防止すると共に、菌が付着して繁殖するおそれを低減することができる。よって、この食品包装方法を利用すれば、食品の賞味期限や消費期限を比較的長期間に設定することができる。
【0043】
<変形例>
先の実施形態に係る食品包装方法では、真空包装工程においてスキン真空パックが実施されたが、図3に示されるように、深絞り真空パックが実施されてもよい。深絞り真空パックについては、従前方法で実施することができる。このため、ここでは、深絞り真空パックの詳細な説明を省略する。なお、本変形例に係る深絞り真空パックでは、スキン真空パックと同様に、耐熱容器110の側面の上端部UPに対して上側スキン真空パックフィルム210(図3参照)が熱融着層を介して粘着された状態となるように、具材およびソース140がスキン真空パックされる(図3参照)。また、この深絞り真空パックでは、耐熱容器110の下端部LPに対しても下側スキン真空パックフィルム220が熱融着層を介して粘着された状態となると共に、上側スキン真空パックフィルム210および下側スキン真空パックフィルム220の端部SP同士が熱融着層を介して熱融着される。この結果、スキン真空パックシチュー200は、図3に示される通りの構造を有することになる。
【0044】
なお、本変形例では、シュリンク包装工程が省かれている。
【符号の説明】
【0045】
100 スキン真空パックシチュー(真空密着包装食品)
110 耐熱容器
120 スキン真空パックフィルム(包装フィルム)
130 シュリンクフィルム
140 具材およびソース(食品)
200 スキン真空パックシチュー(真空密着包装食品)
210 上側スキン真空パックフィルム(包装フィルム)
220 下側スキン真空パックフィルム(包装フィルム)
SP ラミネート部
UP 上端部
LP 下端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する耐熱容器に食品を充填する食品充填工程と、
紫外線を透過させる包装フィルムにより前記食品を真空密着包装する真空密着包装工程と、
前記包装フィルムを介して前記食品に紫外線を照射する紫外線殺菌工程と
を備える、真空密着包装食品の製造方法。
【請求項2】
前記耐熱容器に充填された前記食品を加熱調理する加熱調理工程をさらに備え、
前記加熱調理工程は、前記食品充填工程後、前記真空密着包装工程前に実施される
請求項1に記載の真空密着包装食品の製造方法。
【請求項3】
前記包装フィルムは、片面側に熱融着層を有し、
前記真空密着包装工程では、少なくとも前記耐熱容器の側面の上端部に対して前記包装フィルムが前記熱融着層を介して密着された状態となるように、前記食品が真空密着包装される
請求項1または2に記載の真空密着包装食品の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかの真空密着包装食品の製造方法により得られる
真空密着包装食品。
【請求項5】
耐熱容器と、
前記耐熱容器に充填される食品と、
片面側に熱融着層を有し、少なくとも前記耐熱容器の側面の上端部に前記熱融着層を介して密着される包装フィルムと
を備え、
前記食品は、前記包装フィルムにより真空密着包装されている
真空密着包装食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−70624(P2013−70624A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209452(P2011−209452)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【出願人】(397013137)株式会社ロック・フィールド (3)
【Fターム(参考)】