説明

真空弁の制御装置

【課題】汚水の水位が過度に上昇した場合でも、汚水の圧力による破損を防止することができる真空汚水収集システムに使用される真空弁の制御装置を提供する。
【解決手段】真空弁4の開閉動作のために供給する真空および大気圧を切換える真空弁開閉機構64,65,53,70aと、該真空弁開閉機構を作動させる往復動可能な軸54と、軸54を、真空弁4を閉じる方向に付勢するバネ68と、軸54と一体に往復動可能な第1ダイヤフラム56および第2ダイヤフラム59と、第1ダイヤフラム56の両側に差圧を生じさせて、軸54を真空弁4を開く方向に移動させる第1室57および第2室58と、第2ダイヤフラム59の両側に差圧を生じさせて、軸54を真空弁4を開く方向に移動させる第3室60および第4室61と、軸54の真空弁4を閉じる方向への変位を制限する変位制限機構78とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空弁の開により汚水ます中の汚水を吸込管で吸引し、汚水処理場等に設置された真空ポンプ場に移送する真空汚水収集システムに使用される真空弁の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、真空汚水収集システムに使用される真空弁ユニットの従来の構成例を示す図である。図1において、符号1は汚水ますである。該汚水ます1内には吸込管3の先端が挿入されており、吸込管3の後端は真空弁4を介して真空タンクに連通するライン5(真空系)に接続されている。真空弁4はピストン室4c内にダイヤフラム4bと該ダイヤフラム4bを付勢するバネ4aを具備している。
【0003】
符号11は制御装置であり、該制御装置11はケーシング12を具備し、該ケーシング12は大径部12aと小径部12bが一体となった構造である。大径部12aには中央部にシャフト(軸)14が貫通する隔壁15が設けられ、左右室に区分されている。左側の室は中央部に設けられた第1ダイヤフラム16により第1室17と第2室18に区分され、右側の室は中央部に設けられた第2ダイヤフラム19により第3室20と第4室21に区分されている。また、小径部12bは隔壁22で左右室に区分されており、左側の室は前記第4室21に連通し、右側の室は隔壁23で第5室24と第6室25に区分されている。
【0004】
シャフト14の先端には弁体13が固定されており、弁体13は第6室25に配置されている。シャフト14の後端は第1ダイヤフラム16の中央部に固定されている。該シャフト14は隔壁15を貫通し、第2ダイヤフラム19を嵌挿(ダイヤフラム19はシャフト14に固定されている)し、さらに、隔壁22、隔壁23を貫通している。シャフト14が隔壁15を貫通する貫通部にはシール機構(図示せず)が、隔壁22を貫通する貫通部にはシール機構(図示せず)がそれぞれ設けられ、シャフト14の隔壁23の貫通部には弁体13で開閉される貫通孔23aが設けられている。符号28は第2ダイヤフラム19を左側に押すバネである。
【0005】
ケーシング12の後端壁のシャフト14の後端に対向する位置には磁石29が設けられている。第6室25には、大気開放孔30aを有する弁座30が設けられている。大気開放孔30aは、大気に連通しており、弁体13によって開閉される。シャフト14は、バネ28によって弁体13が大気開放孔30aから離間する方向に付勢されている。
【0006】
吸込管3には上下所定の間隔を設けて圧力検出孔9,10が設けられ、圧力検出孔9はパイプ31で第4室21に連通し、圧力検出孔10はパイプ32で第3室20に連通する。汚水ます1内には、汚水の水位の変化を圧力の変化に変換する圧力センサ管2が配置されている。この圧力センサ管2はパイプ33で第1室17に連通する。また、第2室18は孔34で大気に連通している。また、第5室24はパイプ35でライン5に連通し、第6室25はパイプ36で真空弁4のピストン室4cに連通している。
【0007】
上記構成の真空弁ユニットにおいて、汚水ます1の汚水の水位が上昇し、圧力センサ管2の圧力が上昇すると、該圧力はパイプ33を通って制御装置11内の第1室17に伝えられる。これにより第1ダイヤフラム16がバネ28の弾発力および磁石29の磁気吸引力に打ち勝って右に移動してシャフト14を押し、弁体13は弁座30に当接して、大気開放孔30aを閉じる。そして、ライン5より真空がパイプ35を通って第5室24および第6室25に伝えられ、さらに真空弁4のピストン室4cに伝えられる。これにより真空弁4の弁体6は引き上げられる。
【0008】
圧力センサ管2の圧力により、第1ダイヤフラム16が押され、シャフト14が動き始めるとその移動に伴ってバネ28の弾発力は増大するが、磁石29の磁気吸引力は急激に減少(移動距離の2乗に反比例)するから、シャフト14は一気に移動端、即ち弁体13が大気開放孔30aを閉じる位置まで移動する。
【0009】
真空弁4の弁体6が引き上げられると、ライン5と吸込管3は連通するから、汚水が吸引され始め、汚水は空気吸込管8から取り込まれた空気と混ざり合いながら吸込管3を移送される。この時、圧力検出孔9と圧力検出孔10の間には差圧が発生し、これがパイプ31,32を通して第4室21と第3室20に伝えられる。この差圧は第2ダイヤフラム19を右側へ押す力となり、シャフト14を介して弁体13はさらに右に押し付けられる。汚水の水位が下がって第1室17と第2室18の圧力差が無くなっても、汚水が吸込管3内を流れている間は第4室21と第3室20の差圧のために弁体13は右側に押し付けられたままとなっている。
【0010】
汚水の水位がさらに下がり、吸込管3の下端が空気を吸うようになると、圧力検出孔9と圧力検出孔10の間に差圧が無くなるため、バネ28により第2ダイヤフラム19は左側に押され、弁体13は左側に押し付けられ、隔壁23の貫通孔23aを閉じる。これにより、第6室25に大気が流入し、該大気はパイプ36を通して真空弁4のピストン室4cに流入し、真空弁4の弁体6はバネ4aの弾発力により戻されて、吸込管3とライン5との間の胴体7を閉じ、吸込管3とライン5の連通を遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−60995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
停電などによりライン5が真空に引かれない状況では、汚水ます1内の汚水の水位が高くなっても汚水が吸引されないため、汚水の水位が通常よりも高くなる。それに伴って圧力センサ管2の圧力も通常よりも高められる。第1ダイヤフラム16に作用する圧力が高くなりすぎると、シャフト14が弁体13を弁座30に押し付ける力が強くなりすぎて、制御装置11が破損するおそれがあった。
【0013】
また、汚水ます1内の汚水の水位がさらに上昇して、弁体13や大気開放孔30aにまで達すると、弁座30に異物が付着し、弁体13と弁座30とのシール性が低下するおそれがあった。また、弁座30に付着した異物が制御装置内に吸い込まれる可能性もあった。
【0014】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、汚水の水位が過度に上昇した場合でも、汚水の圧力による破損を防止することができる真空汚水収集システムに使用される真空弁の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、先端が汚水ます内に配置された吸込管と汚水を真空吸引力によって移送させる真空系との間に配置され、真空および大気圧を供給することで開閉動作する真空弁を制御する制御装置であって、前記真空弁の開閉動作のために供給する真空および大気圧を切換える真空弁開閉機構と、前記真空弁開閉機構を作動させる往復動可能な軸と、前記軸を、前記真空弁を閉じる方向に付勢するバネと、前記軸と一体に往復動可能な第1ダイヤフラムおよび第2ダイヤフラムと、前記第1ダイヤフラムの両側に差圧を生じさせて、前記軸を前記真空弁を開く方向に移動させる第1室および第2室と、前記第2ダイヤフラムの両側に差圧を生じさせて、前記軸を前記真空弁を開く方向に移動させる第3室および第4室と、前記軸の前記真空弁を閉じる方向への変位を制限する変位制限機構とを備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記変位制限機構は、前記第1ダイヤフラムおよび/または前記第2ダイヤフラムの変位を制限するストッパーであることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記変位制限機構は、前記第1ダイヤフラムおよび/または前記第2ダイヤフラムに固定された鉤状部材と、前記鉤状部材に係合して前記第1ダイヤフラムおよび/または前記第2ダイヤフラムの変位を制限する係合部材とを有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記真空弁開閉機構は、前記軸の先端に設けられた弁体と、前記真空弁に真空を供給する際に前記弁体によって塞がれる大気開放孔とを有し、前記大気開放孔は、下方を向いた下側開口端を有するカバーノズルで覆われていることを特徴とする。
【0017】
本発明の他の態様は、先端が汚水ます内に配置された吸込管と汚水を真空吸引力によって移送させる真空系との間に配置され、真空および大気圧を供給することで開閉動作する真空弁を制御する制御装置であって、前記真空弁の開閉動作のために供給する真空および大気圧を切換える真空弁開閉機構と、前記真空弁開閉機構を作動させる往復動可能な軸とを備え、前記真空弁開閉機構は、前記軸の先端に設けられた弁体と、前記真空弁に真空を供給する際に前記弁体によって塞がれる大気開放孔とを有し、前記大気開放孔は、下方を向いた下側開口端を有するカバーノズルで覆われていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1ダイヤフラムの両側に生じた差圧が大きくなっても、変位制限機構により軸の変位が制限されるので、軸からの過度な荷重が真空弁開閉機構に加わらず、よって、制御装置の破損を防止することができる。
また、本発明によれば、カバーノズルによって大気開口孔が覆われているので、汚水ます内の汚水の水位が大きく上昇した場合でも、汚水の大気開放孔への浸入を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】真空汚水収集システムに使用される真空弁ユニットの従来の構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る制御装置を備えた真空弁ユニットを示す模式図である。
【図3】図2に示す制御装置の側面図である。
【図4】図2に示す制御装置の正面図である。
【図5】図2に示す制御装置の拡大断面図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【図7】変位制限機構の変形例を示す断面図である。
【図8】変位制限機構の他の変形例を示す部分断面図である。
【図9】図8に示すB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図2に示す真空弁ユニットにおいて、特に説明しない構成および動作は、図1に示す真空弁ユニットの構成および動作と同様であり、その重複する説明を省略する。また、同一または対応する要素には同一の符号を付す。
【0021】
本実施形態に係る制御装置51は、ケーシング52を具備し、該ケーシング52は大径部52aと小径部52bが一体となった構造である。大径部52aには中央部にシャフト(軸)54が貫通する隔壁55が設けられ、左右室に区分されている。左側の室は中央部に設けられた第1ダイヤフラム56により第1室57と第2室58に区分され、右側の室は中央部に設けられた第2ダイヤフラム59により第3室60と第4室61に区分されている。また、小径部52bは隔壁62で左右室に区分されており、左側の室は前記第4室61に連通し、右側の室は隔壁63で第5室64と第6室65に区分されている。
【0022】
シャフト54の先端には弁体53が固定されており、この弁体53は第6室65に配置されている。シャフト54と第1ダイヤフラム56とは固定されておらず、両者が離間可能になっている。該シャフト54は隔壁55を貫通し、第2ダイヤフラム59を嵌挿(ダイヤフラム59はシャフト54に固定されている)し、さらに、隔壁62、隔壁63を貫通している。シャフト54が隔壁55を貫通する貫通部にはシール機構71が、隔壁62を貫通する貫通部にはシール機構72がそれぞれ設けられ、シャフト54の隔壁63の貫通部には弁体53で開閉される貫通孔63a(図5参照)が設けられている。符号68は第2ダイヤフラム59を左側に押すバネである。
【0023】
ケーシング52の後端壁のシャフト54の後端に対向する位置には磁石69が設けられている。(なお、本実施形態では、ダイヤフラム56自体に磁性体の金属が埋め込まれている。)第6室65には、大気開放孔70aを有する弁座70が設けられている。大気開放孔70aは、大気に連通しており、弁体53によって開閉される。シャフト54は、バネ68によって弁体53が大気開放孔70aから離間する方向(真空弁4が閉じる方向)に付勢されている。
【0024】
吸込管3には上下所定の間隔を設けて圧力検出孔9,10が設けられ、圧力検出孔9はフレキシブルチューブ91で第4室61に連通し、圧力検出孔10はフレキシブルチューブ92で第3室60に連通している。さらに、汚水の水位の変化を圧力の変化に変換する圧力センサ管2はフレキシブルチューブ93で第1室57に連通する。また、第2室58は大気開放ポート74(図3,図4参照)を通じて大気に連通している。また、第5室64はフレキシブルチューブ95でライン5に連通し、第6室65はフレキシブルチューブ96で真空弁4のピストン室4cに連通している。
【0025】
フレキシブルチューブ91,92,93は、制御装置51の接続ポート101,102,103に取り付けられる。フレキシブルチューブ91,92,93の接続ポート101,102,103への取付け作業が行ないやすいように、大気開放ポート74は、図4に示すように、接続ポート101,102,103とは異なる角度に設けられている。同様の理由で、フレキシブルチューブ95,96が接続される接続ポート105,106は、互いに異なる角度で設けられている。
【0026】
大気開放孔70aの外側開口端は、カバーノズル76によって覆われている。より具体的には、図5に示すように、弁座70が取り付けられる部材73には、逆L字型のカバーノズル76が密着されている。カバーノズル76の上側開口端は大気開放孔70aの外側開口端を覆い、カバーノズル76の下側開口端は下方を向いている。カバーノズル76の下側開口端は、大気開放孔70aよりも下方に位置している。万が一、汚水ます1内の汚水の水位が上昇してカバーノズル76に達したとしても、汚水は下側開口端より上の空間には浸入してこない。したがって、汚水が弁座70や弁体53に付着することがなく、弁体53と弁座70とのシール性が良好に維持される。
【0027】
上記構成の真空弁ユニットにおいて、汚水ます1の汚水の水位が上昇し、圧力センサ管2の圧力が上昇すると、該圧力はフレキシブルチューブ93を通って制御装置51内の第1室57に伝えられる。これにより第1ダイヤフラム56がバネ68の弾発力および磁石69の磁気吸引力に打ち勝って右に移動してシャフト54を押し、弁体53は弁座70に当接して、大気開放孔70aを閉じる。そして、ライン5より真空がフレキシブルチューブ95を通って第5室64および第6室65に伝えられ、さらに真空弁4のピストン室4cに伝えられる。これにより真空弁4の弁体6は引き上げられる。
【0028】
圧力センサ管2の圧力により、第1ダイヤフラム56が押され、シャフト54が動き始めるとその移動に伴ってバネ68の弾発力は増大するが、磁石69の磁気吸引力は急激に減少(移動距離の2乗に反比例)するから、シャフト54は一気に移動端、即ち弁体53が大気開放孔70aを閉じる位置まで移動する。ここで第5室64、第6室65、大気開放孔70a、および弁体53は真空弁4を開閉する真空弁開閉機構を構成する。
【0029】
真空弁4の弁体6が引き上げられると、ライン5と吸込管3は連通するから、汚水が吸引され始め、汚水は空気吸込管8から取り込まれた空気と混ざり合いながら吸込管3を移送される。この時、圧力検出孔9と圧力検出孔10の間には差圧が発生し、これがフレキシブルチューブ91,92を通して第4室61と第3室60に伝えられる。この差圧は第2ダイヤフラム59を右側へ押す力となり、シャフト54を介して弁体53はさらに右に押し付けられる。汚水の水位が下がって第1室57と第2室58の圧力差が無くなっても、汚水が吸込管3内を流れている間は第4室61と第3室60の差圧のために弁体53は弁座70に押し付けられたままとなっている。
【0030】
汚水の水位がさらに下がり、吸込管3の下端が空気を吸うようになると、圧力検出孔9と圧力検出孔10の間に差圧が無くなるため、バネ68により第2ダイヤフラム59は左側に押され、弁体53は左側に押し付けられ、隔壁63の貫通孔63a(図5参照)を閉じる。これにより、第6室65に大気が流入し、大気はフレキシブルチューブ96を通して真空弁4のピストン室4cに流入し、真空弁4の弁体6はバネ4aの弾発力により戻されて、吸込管3とライン5との間の胴体7を閉じ、吸込管3とライン5の連通を遮断する。
【0031】
弁座70が取り付けられている部材73は、メンテナンスのために取り外しが可能となっており、弁座70に弁体53から過大な力がかかると部材73が破損する虞がある。そこで、弁体53が弁座70に過大な力を与えないようにするために、シャフト54の大気開放孔70aに向かう方向への変位を制限する複数のストッパー78が隔壁55に設けられている。このストッパー78は、第2室58内に配置されており、第1ダイヤフラム56に対向するように隔壁55上に設けられている。図6に示すように、ストッパー78は、シャフト54の周りに等間隔で配置されており、それぞれ円柱形状を有している。第1ダイヤフラム56がストッパー78に当接することで、第1ダイヤフラム56の右方向(真空弁4が開く方向)への変位が制限され、その結果、第1ダイヤフラム56と一体に動くシャフト54の変位が制限される。
【0032】
第1ダイヤフラム56がシャフト54を大気開放孔70aに向かって押すと、弁体53が弁座70に当接して大気開放孔70aを塞ぐ。第1ダイヤフラム56とストッパー78との間の軸方向のクリアランスは、弁体53と弁座70との間の軸方向のクリアランスよりもやや大きく設定されている。したがって、弁体53が弁座70に当接して大気開放孔70aを塞いだ状態では、第1ダイヤフラム56はストッパー78には当接せず、これらの間には若干の隙間がある。台座70はゴムなどの可撓部材から形成されており、第1室57の圧力が更に高まると、弁体53がさらに図面の右方向に押しやられるように弁座70が変形し、第1ダイヤフラム56がストッパー78に当接する。第1室57の圧力がさらに高まっても、ストッパー78が第1室57の圧力を支えるので、弁座70には更なる荷重がかからない。したがって、汚水ます1内の汚水の水位が大きく上昇した場合でも、弁体53による部材73の破損を防止することができる。
【0033】
別の態様としては、図7に示すように、第4室61内に第2ダイヤフラム59の右方向への変位を制限するストッパー79を設けても良い。圧力センサ管2の圧力が直接作用するのは第1ダイヤフラム56であるが、第2ダイヤフラム59はシャフト54と完全に連動しているため、第2ダイヤフラム59の変位を制限することによっても、第1ダイヤフラム56に作用する圧力を支えることができる。このストッパー79もシャフト54の周りに等間隔で配置された複数の円柱部材であり、第2ダイヤフラム59に対向して配置されている。この例においても、第2ダイヤフラム59とストッパー79との間の軸方向のクリアランスは、弁体53と弁座70との間の軸方向のクリアランスよりもやや大きく設定されている。
【0034】
さらに別の態様としては、図8に示すように、第1ダイヤフラム56に固定され、第1ダイヤフラム56と一体に動く複数の鉤状部材80と、この鉤状部材80に係合して第1ダイヤフラム56の軸方向の変位(すなわち、シャフト54の変位)を制限する係合部材81とにより変位制限機構を構成してもよい。この鉤状部材80および係合部材81は第1室57に設けられており、係合部材81は、ケーシング52と一体に形成されている。なお、別体として設けられた係合部材81をケーシング52に固定してもよい。
【0035】
図9は、図8のB−B線断面図である。図9に示すように、係合部材81はシャフト54の軸方向から見て円形であり、その周縁部には鉤状部材80に対応した形状の切り欠き81aが形成されている。鉤状部材80と係合部材81とを組み立てるときは、鉤状部材80を係合部材81の切り欠き81aに挿入し、鉤状部材80が切り欠き81aを完全に通過した後、鉤状部材80全体をシャフト54を中心として回転させて、鉤状部材80と切り欠き81aとの位置をずらす。これにより、鉤状部材80が軸方向に移動したときに、鉤状部材80は係合部材81に係合する。なお、鉤状部材80と係合部材81は、第3室60に設けてもよい。この場合は、鉤状部材80は第2ダイヤフラム59に固定され、係合部材81は隔壁55に固定される。
【0036】
上述した変位制限機構としてのストッパー78、ストッパー79、鉤状部材80と係合部材81は、単独で採用してもよく、またはこれらを組み合わせてもよい。
【0037】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0038】
1 汚水ます
2 圧力センサ管
3 吸込管
4 真空弁
5 ライン(真空系)
6 弁体
51 制御装置
53 弁体
54 シャフト
56 第1ダイヤフラム
57 第1室
58 第2室
59 第2ダイヤフラム
60 第3室
61 第4室
76 カバーノズル
78,79 ストッパー
80 鉤状部材
81 係合部材
91,92,93,95,96 フレキシブルチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が汚水ます内に配置された吸込管と汚水を真空吸引力によって移送させる真空系との間に配置され、真空および大気圧を供給することで開閉動作する真空弁を制御する制御装置であって、
前記真空弁の開閉動作のために供給する真空および大気圧を切換える真空弁開閉機構と、
前記真空弁開閉機構を作動させる往復動可能な軸と、
前記軸を、前記真空弁を閉じる方向に付勢するバネと、
前記軸と一体に往復動可能な第1ダイヤフラムおよび第2ダイヤフラムと、
前記第1ダイヤフラムの両側に差圧を生じさせて、前記軸を前記真空弁を開く方向に移動させる第1室および第2室と、
前記第2ダイヤフラムの両側に差圧を生じさせて、前記軸を前記真空弁を開く方向に移動させる第3室および第4室と、
前記軸の前記真空弁を閉じる方向への変位を制限する変位制限機構とを備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記変位制限機構は、前記第1ダイヤフラムおよび/または前記第2ダイヤフラムの変位を制限するストッパーであることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記変位制限機構は、前記第1ダイヤフラムおよび/または前記第2ダイヤフラムに固定された鉤状部材と、前記鉤状部材に係合して前記第1ダイヤフラムおよび/または前記第2ダイヤフラムの変位を制限する係合部材とを有することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記真空弁開閉機構は、前記軸の先端に設けられた弁体と、前記真空弁に真空を供給する際に前記弁体によって塞がれる大気開放孔とを有し、
前記大気開放孔は、下方を向いた下側開口端を有するカバーノズルで覆われていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
先端が汚水ます内に配置された吸込管と汚水を真空吸引力によって移送させる真空系との間に配置され、真空および大気圧を供給することで開閉動作する真空弁を制御する制御装置であって、
前記真空弁の開閉動作のために供給する真空および大気圧を切換える真空弁開閉機構と、
前記真空弁開閉機構を作動させる往復動可能な軸とを備え、
前記真空弁開閉機構は、前記軸の先端に設けられた弁体と、前記真空弁に真空を供給する際に前記弁体によって塞がれる大気開放孔とを有し、
前記大気開放孔は、下方を向いた下側開口端を有するカバーノズルで覆われていることを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−196113(P2011−196113A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64766(P2010−64766)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【出願人】(506236820)株式会社 荏原由倉ハイドロテック (31)
【Fターム(参考)】