説明

真空式トイレシステム

【課題】簡易な構造で移動や設置を行いやすく、必要に応じて容易に使用することができる仮設の真空式トイレシステムを提供すること。
【解決手段】真空ステーション(真空源)21に真空管路(真空下水道管)23を連通してなる真空式下水道システム20に、移動可能なトイレユニット10の排水タンク13を接続し、真空式下水道システム20の真空管路23により、排水タンク13内の排水及び汚物を真空弁18aを介して搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害現場や工事現場等で使用される仮設の真空式トイレシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、真空ポンプを利用して真空引きすることで、トイレユニットから排水及び汚物を搬送する仮設真空式トイレシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この仮設真空式トイレシステムでは、トイレユニットと、真空ポンプユニットと、発電機ユニットとを備えている。
【0004】
ここで、トイレユニットは真空弁及びホースを順に介して真空ポンプユニットの集水タンクに接続され、発電機ユニットは電源ケーブルを介して真空ポンプユニットの真空ポンプに接続されている。また、集水タンクは真空ポンプに接続されている。
【0005】
発電機ユニットからの電力供給により真空ポンプが作動すると、集水タンクとホースとを介して真空弁の手前まで真空にされる。
【0006】
そして、適宜真空弁を開くことにより、トイレユニット内に溜まった排水及び汚物を集水タンクに搬送するようになっている。
【0007】
また、地中に横方向に埋設されると共に一端が既設の下水道管に連結した排水管に、縦方向に延びる複数の縦管を設け、必要に応じて縦管の先端に便器を連結する仮設トイレ用配管構造も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
この仮設トイレ用配管構造では、便器からの汚水は縦管を通じて排水管に流れ込み、さらに既設の下水道管に直接流すようになっている。
【特許文献1】特公平6−75558号公報
【特許文献2】特開平11−107362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述の仮設真空式トイレシステムでは、真空ポンプを駆動するための発電機ユニットが必要であった。
【0010】
そのため、システム全体が大掛かりなものとなり、移動や設置に手間がかかったり、広い設置スペースが必要になったりしていた。
【0011】
また、外部からの電力供給が可能であれば発電機ユニットを省略することができるが、特に災害現場では外部からの電力供給が困難になりやすく、発電機ユニットを省略することは難しいと考えられる。
【0012】
一方、上述の仮設トイレ用配管構造では、縦管が接続された排水管をあらかじめ下水道管に接続しておく必要があり、容易に移動したり設置したりすることが難しかった。
【0013】
そこで、この発明は、簡易な構造で移動や設置を行いやすく、必要に応じて容易に使用することができる仮設の真空式トイレシステムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、この発明に係る真空式トイレシステムは、真空源に真空下水道管を連通してなる真空式下水道システムに、移動可能なトイレユニットの排水タンクを接続し、前記真空式下水道システムの真空下水道管路により、前記排水タンク内の排水及び汚物を真空弁を介して搬送することを特徴としている。
【0015】
また、前記トイレユニットは、水源に連通されると共に前記真空式下水道システムに連通された貯水タンクを上部に備え、前記真空式下水道システムの真空下水道管路により、前記水源の水を吸い上げて前記貯水タンク内に洗浄水が満たされるようにしてもよい。
【0016】
また、前記排水タンク又は前記貯水タンクは、前記真空下水道管から分岐形成された点検用管路に接続されていてもよい。
【0017】
また、前記点検用管路は先端部が分岐され、この分岐された先端部のそれぞれに前記トイレユニットが接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、あらかじめ敷設されている真空式下水道システム又は特許文献1に記載の仮設真空式下水道システムにトイレユニットの排水タンクを接続することで、トイレユニットの排水及び汚物を真空弁を介して真空式下水道システムによって搬送することができ、従来の下水道接続型仮設トイレのように汲み取りが不要となり、クリーンで長期間使用可能なトイレユニットが可能となる。
【0019】
これにより、大掛かりな設備や電源装置等が不要となり、簡易な構造で移動や設置を行いやすく、必要に応じて容易に多数の仮設トイレを設置、使用することができる。
【0020】
また、トイレユニット上部に備えられた貯水タンクへの給水は、真空式下水道システムにより生じる真空によって水源から水を吸い上げることで行えるので、貯水タンクへの給水車等による給水や、電動ポンプ等を使用した給水が不要になり、さらに容易に水洗トイレを使用することが可能となる。
【0021】
また、排水タンク又は貯水タンクを真空式下水道システムの点検用管路に接続することにより、真空式下水道システムへの接続を容易に行うと共に、空気漏れ等の不具合が発生しにくくなる。
【0022】
また、点検用管路の先端部が分岐されてそれぞれにトイレユニットが接続されるので、複数のトイレユニットを必要に応じて容易に設置することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、図面に基づいて、この発明を実施するための最良の実施の形態の真空式トイレシステム(以下、トイレシステムと言う)を説明する。
【0024】
この発明に係るトイレシステム1では、図1に示すように、移動可能なトイレユニット10が真空式下水道システム20に接続されている。
【0025】
このトイレユニット1は、便器11と、この便器11へ給水する貯水タンク12と、便器11からの排水を一時的に貯留する排水タンク13と、便器11を囲う囲い部14と、給水管15と、洗浄水ダクト16と、給水用真空ダクト17と、排水用真空ダクト18とを備えている。
【0026】
貯水タンク12は、便器11の上方に配置され、自然流下によって便器11へと水を供給するようになっている。
【0027】
排水タンク13は、便器11の下方に配置され、自然流下によって便器11からの排水が流れ込むようになっている。
【0028】
囲い部14は、便器11の周囲を取り囲んで目隠しするものであり、図示しないドア付の出入り口が形成されている。なお、ここでは、囲い部14の上部に貯水タンク12が設置され、囲い部14の下部に排水タンク13が設置され、便器11、貯水タンク12、排水タンク13、囲い部14が一体になっている。
【0029】
給水管15は、一端15aが貯水タンク12内に連通し、他端15bが川や池等の水源Wに挿入されている。
【0030】
洗浄水ダクト16は、貯水タンク12の下面12aと便器11とを連通するものであり、中間部に洗浄水バルブ16aが設けられている。この洗浄水バルブ16aの開閉により、自然流下する貯水タンク12内の水の調整を行うようになっている。
【0031】
給水用真空ダクト17は、貯水タンク12内と排水用真空ダクト18の中間部とを連通するものであり、中間部に給水用弁17aが設けられている。この給水用弁17aを開くことで、貯水タンク12が排水用真空ダクト18を介して真空式下水道システム20と連通し、給水管15を通じて給水される。
【0032】
排水用真空ダクト18は、排水タンク13内と真空式下水道システム20とを連通するものであり、中間部に真空弁18aが設けられている。ここで、真空弁18aは、給水用真空ダクト17が連結された部分18bよりも排水タンク13の内部側に位置している。そして、この真空弁18aが開くことで、排水タンク13が真空式下水道システム20と連通し、排水タンク13内の排水と汚物が後述する真空下水管23を通って下流へ搬送される。
【0033】
また、この排水用真空ダクト18は、真空式下水道システム20の後述する点検用管路25に接続されている。
【0034】
真空式下水道システム20は、図2に示すように、真空ステーション(真空源)21と、真空弁ユニット22と、真空管路(真空下水道管路)23等とを備えている。
【0035】
真空ステーション21は、図示しない真空ポンプ及び圧送ポンプを有しており、真空管路23内を真空引きすると共に、真空引きした真空管路23内の汚水を下水処理場Gに圧送する。
【0036】
真空管路23は、地中に埋設されて真空ステーション21と真空弁ユニット22とを連通するものであり、この真空管路23内は真空に保たれている。
【0037】
真空弁ユニット22は、各家庭や工場等の設備Sから排出される汚水を一時的に貯留する貯留部(図示せず)と、真空管路23を開閉する真空弁部(図示せず)とを有している。この貯留部内に真空管路23の先端部は挿入されており、真空弁部が開放することで貯留部内の汚水が真空管路23内に吸い込まれるようになっている。
【0038】
なお、この真空弁ユニット22は、流入管24を介して設備Sに接続されている。設備Sからの汚水は、自然流下によって流入管24内を流れ、真空弁ユニット22の貯留部内に流れ込むようになっている。
【0039】
さらに、真空管路23には、中間部に一定間隔で点検用管路25,…が分岐形成されている。各点検用管路25は、管路敷設時等に真空漏れが発生していないかを検査するためのものであり、通常はバルブが設けられている。この点検用管路25の先端開口部(先端部)25aは、地表近くに位置しており、図示しない蓋によって通常密閉されている。
【0040】
次に、この発明に係るトイレシステム1の作用について説明する。
【0041】
このトイレシステム1を設置するには、まず、工事現場や災害現場等の緊急にトイレ設備が必要になった場所にトイレユニット10を搬送する。
【0042】
このとき、トイレユニット10は、便器11、貯水タンク12、排水タンク13、囲い部14が一体になっていると共に、電力設備等がない簡易な構造なので、搬送や設置を行いやすい。
【0043】
そして、次に給水管15の一端15aを貯水タンク12内に挿入すると共に、他端15bを近傍の水源Wに挿入する。
【0044】
さらに、排水用真空ダクト18を、あらかじめ敷設されている真空式下水道システム20の真空管路23から分岐形成されている点検用管路25の図示しない蓋をとり、この点検用管路25の先端開口部25aに接続する。
【0045】
なお、洗浄水ダクト16、給水用真空ダクト17はあらかじめトイレユニット10内に配管されている。
【0046】
そして、洗浄水バルブ16a及び真空弁18aの閉状態で、給水用弁17aを開く。
【0047】
これにより、真空式下水道システム20と貯水タンク12とが連通し、この真空式下水道システム20により生じる真空によって貯水タンク12内が真空となり、給水管15を通じて水源Wの水を吸い上げることができる。
【0048】
このように、真空式下水道システム20により生じる真空によって水を吸い上げることで、貯水タンク12への給水車等による給水や、電動ポンプ等を使用した給水が不要になり、さらに容易に使用することが可能となる。
【0049】
そして、貯水タンク12が満水になったら給水用弁17aを閉め、トイレユニット10は使用状態となる。
【0050】
さらに、便器11を使用したら、洗浄水バルブ16aを開き、貯水タンク12内の水を流下させて便器11の洗浄を行う。このとき生じた排水は、自然流下により便器11の下方に設置されている排水タンク13内に流入する。なお、洗浄水バルブ16aは一定量の水が流下したら閉められ、貯水タンク12からの水の供給を停止する。
【0051】
一方、排水タンク13内に貯留した排水が一定量となったら、真空弁18aが一定の水位を検知して開く。このとき、給水用弁17aは閉まっているので、真空式下水道システム20と排水タンク13とが連通し、この真空式下水道システム20により生じる真空によって、排水タンク13内に貯留した排水と汚物が真空ステーション21に吸い込まれて搬送される。
【0052】
このように、電源設備やトイレユニット10ごとの真空装置等がなくとも、トイレユニット10を必要に応じて容易に使用することが可能となっている。
【0053】
また、上述の実施の形態では、排水用真空ダクト18を点検用管路25に接続している。
【0054】
これにより、真空管路23の空気漏れ等の不具合を発生させずに、排水用真空ダクト18を真空式下水道システム20に容易に接続することができる。
【0055】
以上、この発明にかかる実施の形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施の形態に限らない。この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等はこの発明に含まれる。
【0056】
例えば、あらかじめ点検用管路25の先端開口部25aが分岐されており、分岐された先端開口部25aのそれぞれにトイレユニット1を接続してもよい。
【0057】
これにより、複数のトイレユニット1を必要に応じて設置することが可能となる。
【0058】
また、点検用管路25があらかじめ分岐されていなくとも、分岐ダクトを点検用管路25の先端開口部25aに接続し、この分岐ダクトを介して複数のトイレユニット1を真空式下水道システム20に接続することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る真空式トイレシステムの構成を示す概略図である。
【図2】真空式下水道システムを示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
10 トイレユニット
13 排水タンク
18a 真空弁
20 真空式下水道システム
21 真空ステーション(真空源)
23 真空管路(真空下水道管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空源に真空下水道管を連通してなる真空式下水道システムに、移動可能なトイレユニットの排水タンクを接続し、
前記真空式下水道システムの真空下水道管路により、前記排水タンク内の排水及び汚物を真空弁を介して搬送することを特徴とする真空式トイレシステム。
【請求項2】
前記トイレユニットは、水源に連通されると共に前記真空式下水道システムに連通された貯水タンクを上部に備え、
前記真空式下水道システムの真空下水道管路により、前記水源の水を吸い上げて前記貯水タンク内に洗浄水が満たされることを特徴とする請求項1に記載の真空式トイレシステム。
【請求項3】
前記排水タンク又は前記貯水タンクは、前記真空下水道管から分岐形成された点検用管路に接続されたことを特徴とする請求項2に記載の真空式トイレシステム。
【請求項4】
前記点検用管路は先端部が分岐され、この分岐された先端部のそれぞれに前記トイレユニットが接続されたことを特徴とする請求項3に記載の真空式トイレシステム。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−121070(P2009−121070A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293824(P2007−293824)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】