説明

真空式温水機排ガスの熱回収装置およびこれを用いた熱回収方法

【課題】 真空式温水機の熱効率を向上させるとともに、簡便かつ効果的に熱回収装置の過熱を防止し、さらに熱回収装置から排出される低温の排ガスを系外に排出する際に生じる白煙を抑制すること。
【解決手段】 熱回収装置10が、熱回収室1と、排出部3と、排出部の入り口下部に設けられ燃焼排ガスに対して噴霧水を吹き付ける噴霧器10aと、中和槽2と、中和槽2からの処理された排水が排出される排水部10bと、を有し、熱回収器1a内部の供給水と給送された燃焼排ガスと熱交換し、該供給水が加温され、加温水として熱交換器5cに供給されるとともに、噴霧水によって低温化された燃焼排ガスが、排出部3から二重構造のダクト30を流通し、ダクト30内で排気部4cからの高温の燃焼排ガスと熱交換した後排気部4c上部から放出されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空式温水機排ガスの熱回収装置およびこれを用いた熱回収方法に関し、特に、産業用の温水発生装置である真空式温水機における排ガスの熱回収装置およびこれを用いた熱回収方法に有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用の温水発生装置として多種多様な方式が利用されているが、100℃以下の温水を得る温水発生装置として、真空式温水機が多用されている。真空式温水機は、都市ガスや灯油、ペレットなどの燃料を燃焼し、その燃焼熱および排ガスを燃焼室の周囲に存在する熱媒水と熱交換させる。熱媒水は、大気圧下に減圧された減圧蒸発室で75℃〜85℃程度で減圧沸騰し、同室内にある熱交換器を介して給温水を加温する。熱媒水は燃焼室内に設けた伝熱管で燃焼排ガスと熱交換するが、通常は110℃〜200℃程度の排ガス温度まで熱回収する。熱効率は概ね85%〜95%程度である。
【0003】
こうした真空式温水機として、具体的には、例えば図5に示すような構成を有する真空式温水ボイラが挙げられる。上部に蒸気室102が形成されるよう熱媒水103を封入した熱媒水貯槽(缶体)101の下部内側に、上記熱媒水103に没するように燃焼室104を設けてバーナ105を設置し、且つ上記熱媒水貯槽101の頂部に、真空ポンプ106を、開閉弁108を備えた真空引きライン107を介し接続すると共に、上記蒸気室102となる熱媒水貯槽101内の上部位置に、加熱対象となる水109を外部から流通させることができるようにした熱交換器としての伝熱管110を設けた構成として、真空ポンプ106の作動により熱媒水貯槽101の内部を真空に引いた状態において、バーナ105を燃焼させることにより燃焼室104の壁面を介して熱媒水103を加熱し、これにより真空中にある熱媒水103を100℃以下の温度、たとえば、約80℃にて急速に沸騰、蒸発させ、発生した減圧蒸気を、蒸気室102に充満させると共に伝熱管110の表面で凝縮させることにより、該伝熱管110を流通する水109と熱交換を行わせて、該伝熱管110の出口より上記減圧蒸気の温度まで加熱された温水109aを回収できるようにしてある。なお、111は燃焼室104の排気口、112は燃焼室104内の中央部にてバーナ105に対峙するよう設置した火堰、113は火堰112の後方の煙道となる部分に燃焼室104を上下方向に貫通するよう設けた伝熱用水管である。凝縮伝熱を利用することで伝熱面積を小さくできると共に、減圧下における熱媒水103の凝縮領域の温度を制御温度とすることにより、加熱対象流体である水109を間欠的に熱交換させるような場合であっても、熱媒水103の温度が大きく変化することはなく、したがって、常に一定温度に加熱された温水109aを製造できるという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−279160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような真空式温水機では、以下に挙げるような問題点や課題が生じることがあった。
(i)燃焼排ガス中の水分から潜熱を回収する場合、一般に潜熱回収後の排ガス温度は50℃程度となり、系外に排出された際に外気によって冷却され、排ガスに含まれる水分が飽和湿度の差により凝縮して白煙となる。こうした白煙の発生を抑制することは、燃焼排ガスの低温化を効率的に行う必要があり、従前法においては難しい課題であった。
(ii)従来方式では、熱媒水の温度を通常75℃〜85℃に加熱した状態で保持し、減圧蒸気室の熱交換器で冷水を温水に熱交換する。排ガス中の水分から潜熱を回収する場合、排ガス温度を露点以下に冷却する必要があるが、従来の構造では排ガス温度を熱媒水温度以下にすることができないため、構造的に潜熱回収はできないという課題があった。
(iii)燃焼式の温水機においては、燃焼エネルギーを伝熱用水管により吸収することによって温水を得ると同時に、該水管によって燃焼排ガスの温度を低下させる働きがある。従って、水管での熱交換(吸収)が十分にできない状態(例えば、温水用供給水の停止や減少、水管表面でのスケールの発生等に伴う水管の熱交換効率の低下あるいは真空圧力の上昇等の異常な状態等)になった場合には、燃焼排ガス温度の上昇により、燃焼室から排出された燃焼排ガスの処理機能(低温処理や中和処理等)の低下や損傷等の可能性があり、こうした危険性を回避することが課題となる。
(iv)所望の温水が複数の異なる温度である場合(例えば、暖房用と給湯用)には、減圧蒸気室に、複数の熱交換器(伝熱菅)が配設され、各々所望の温度の温水が取出される。しかしながら、例えば低温の暖房用温水のみへの切替え等、燃焼条件の変更を必要とする場合、過渡的に水管からの熱吸収量の減少に伴う燃焼排ガス温度の上昇が発生する可能性があり、上記(iii)と同様の課題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、産業用の温水発生装置である真空式温水機から排出する低温の燃焼排ガスから顕熱を回収し、さらに燃焼排ガス中に含まれる水分の潜熱を回収し、真空式温水機の熱効率を向上させるとともに、簡便かつ効果的に熱回収装置の過熱を防止し、熱回収装置内部の温度・圧力の上昇を防ぎ、さらに熱回収装置から排出される低温の排ガスを系外に排出する際に、外気によって冷却されることで生じる白煙を抑制することが可能な真空式温水機排ガスの熱回収装置およびこれを用いた熱回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す真空式温水機排ガスの熱回収装置およびこれを用いた熱回収方法によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
本発明は、真空式温水機から燃焼排ガスが給送されるダクトの一端部で、該真空式温水機と接続する熱回収装置であって、
前記真空式温水機が、燃焼バーナ、内部に熱媒体が流通し燃焼熱を吸収する複数の水管および燃焼排ガスの排気部が備えられた燃焼室と、該燃焼室を囲むように隣接し前記熱媒体が充填された熱媒体槽、内部に給温水が流通する熱交換器および減圧手段に接続される減圧部が備えられた減圧蒸気室と、該給温水が供出される給湯部と、を有し、
前記熱回収装置が、内部に供給水が流通する複数段かつ複数列設置したフィン水管からなる熱回収器を備えた熱回収室と、処理された燃焼排ガスが排出される排出部と、該排出部の入り口下部に設けられ、燃焼排ガスに対して噴霧水を吹き付ける噴霧器と、前記熱回収室の下部に配置され凝縮水および噴霧水を回収し中和処理する中和槽と、前記中和槽からの処理された排水が排出される排水部と、を有し、
前記ダクトが、前記真空式温水機からの燃焼排ガスが給送される前記排気部から前記熱回収装置上部までのダクト本体と、前記熱回収装置からの燃焼排ガスが給送される前記排出部から前記排気部上部までのダクトの内部あるいは外周部を有する二重構造部分と、を有し、
供給水を導入する流路Aを設け、該流路Aを前記熱回収装置に給水する流路Cと前記噴霧器に給水する流路Eとに分岐するとともに、該流路Eに流量調整器を設け、前記温度検出器の出力に基づき前記噴霧器への供給水の流量の調整可能な構成を有し、
給送された燃焼排ガスを前記熱回収室の上部から下部に流下させた状態で、前記熱回収器内部に前記供給水を下部から上部に流通させて熱交換し、燃焼排ガスの顕熱および該燃焼排ガス中に含まれる水蒸気の潜熱を回収するとともに、前記供給水が加温され、加温水として前記熱交換器に供給され、かつ前記熱回収室により処理され、前記噴霧水によって低温化された燃焼排ガスが、さらに前記排出部からダクトの内部あるいは外周部を流通し、前記ダクト本体内部の高温の燃焼排ガスと熱交換した後、前記排気部上部から放出されることを特徴とする。
【0009】
既述のように、真空式温水機においては、燃料排ガスの温度が低く、顕熱回収は比較的容易であるが、含有する水分からの潜熱の回収は難しい。本発明は、真空式温水機の燃焼排ガスの排出ダクトに熱回収装置を接続し、熱回収装置から排出される燃焼排ガスに噴霧水を吹き付け所定温度まで低下させる燃焼排ガスの冷却機能、二重構造のダクトにおける噴霧水により冷却処理された燃焼排ガスとの熱交換による真空式温水機からの高温の燃焼排ガスの冷却機能、装置上部から流下する燃焼排ガスと複数設置されたフィン水管を上昇する供給水との効率的な熱交換機能、流下するガス流によるフィン水管の表面に発生する凝縮水の排除機能、および回収した熱エネルギーによる真空式温水機の給温水の加温機能によって、効率のよく真空式温水機から排出する低温の燃焼排ガスから顕熱を回収し、さらに燃焼排ガス中に含まれる水分の潜熱を回収し、真空式温水機の熱効率を向上させることが可能となった。特に、真空式温水機から熱回収装置への導入流路であるダクトを二重構造にし、高温の真空式温水機から燃焼排ガスと噴霧水によってさらに低温化された熱回収装置からの燃焼排ガスとの向流式の熱交換という、熱回収の初段階での低温処理化は、後段での処理を非常に安定かつ効率的に行うことができるという優れた効果を生み出した。つまり、本発明は、噴霧水の供給という直接的な低温化手段と、低温化されたガスとの熱回収される高温のガスとの熱交換という間接的な低温化手段によって、燃焼排ガスからの熱回収の初段階での低温処理化を図り、熱回収装置での熱回収の安定化を図ることができことから、真空式温水機および熱回収装置からなるシステム全体としての熱的な均衡のより安定性を高めたものである。このとき、噴霧処理された燃焼排ガスの温度のモニタリングは、真空式温水機および熱回収装置からなるシステム全体の管理を行う上でも、重要な指標となる。ここで、「給温水」とは真空式温水機において熱交換され給湯用や暖房用として利用される供給水をいう。
【0010】
また、本発明は、真空式温水機から燃焼排ガスが給送されるダクトの一端部で、該真空式温水機と接続する熱回収装置であって、
前記真空式温水機が、燃焼バーナ、内部に熱媒体が流通し燃焼熱を吸収する複数の水管および燃焼排ガスの排気部が備えられた燃焼室と、該燃焼室を囲むように隣接し前記熱媒体が充填された熱媒体槽、内部に給温水が流通する熱交換器および減圧手段に接続される減圧部が備えられた減圧蒸気室と、該給温水が供出される給湯部と、を有し、
前記熱回収装置が、内部に供給水が流通する複数段かつ複数列設置したフィン水管からなる熱回収器を備えた熱回収室と、処理された燃焼排ガスが排出される排出部と、該排出部の入り口下部に設けられ、燃焼排ガスに対して噴霧水を吹き付ける噴霧器と、前記熱回収室の下部に配置され凝縮水および噴霧水を回収し中和処理する中和槽と、前記中和槽からの処理された排水が排出される排水部と、を有し、
前記ダクトが、前記真空式温水機からの燃焼排ガスが前記排気部から前記熱回収装置上部まで給送されるダクト本体と、前記熱回収装置からの燃焼排ガスが前記排出部から前記排気部上部まで給送されるダクトの内部あるいは外周部の流路を有する二重構造部分と、を有し、
前記熱回収装置に供給水を給水する流路Cと、排水給送手段を設けて前記排水部からの排水を前記噴霧器に給水する流路Eとを設けるとともに、前記温度検出器の出力に基づき前記噴霧器への供給水の流量の調整可能な構成を有し、
前記熱回収室の上部から下部に流下させた状態で、前記熱回収器内部に前記供給水を下部から上部に流通させて給送された燃焼排ガスと熱交換し、燃焼排ガスの顕熱および該燃焼排ガス中に含まれる水蒸気の潜熱を回収するとともに、前記供給水が加温され、加温水として前記熱交換器に供給され、かつ前記熱回収室により処理され、前記噴霧水によって低温化された燃焼排ガスが、さらに前記排出部からダクトの内部あるいは外周部を流通し、前記ダクト本体内部の高温の燃焼排ガスと熱交換した後、前記排気部上部から放出されることを特徴とする。
こうした構成は、上記発明の構成における噴霧水として、熱回収装置から排出される中和処理された排水を利用することによって、供給水の使用量の低減を図るものであり、効果的に熱回収装置の過熱を防止することができるとともに、よりエネルギー効率の高い真空式温水機排ガスからの熱回収を可能にした。
【0011】
本発明は、上記真空式温水機排ガスの熱回収装置であって、前記中和槽に中和処理された排水を貯留する貯留槽を設け、前記流路Aを前記熱回収装置に給水する流路Cと該貯留槽に給水する流路Fに分岐し、前記噴霧器への供給水の補充を行うことを特徴とする。
上記のように、噴霧水として中和処理された排水を利用することによって、よりエネルギー効率の高い真空式温水機排ガスからの熱回収が可能になる一方、循環的に排水を使用すると排水温度も徐々に上昇する可能性がある。本発明は、排水利用の循環系に新たな供給水を付加することによって、より安定的に噴霧水による冷却機能を確保することを可能にした。
【0012】
本発明は、上記真空式温水機排ガスの熱回収装置であって、前記ダクト本体が、前記排気部上部において分岐され、該分岐部にダンパが配設されるとともに、該分岐された流路に排気流路が形成され、かつ前記ダクトの内部あるいは外周部の流路と接続され、前記真空式温水機からの燃焼排ガスの一部と前記熱回収装置からの燃焼排ガスが合流して前記排気部上部から排出されることを特徴とする。
上記のように、水分が多く含まれ潜熱の大きな燃焼排ガスを系外に排出する際に生じる白煙の抑制は、単純にガスの温度を低下させて凝縮水として水分を除去するだけでは十分機能しない。本発明は、真空式温水機からの高温の燃焼排ガスとの熱交換を行うと同時に、さらにこの高温のガスの一部とともに排出することが有効であることを見出したもので、燃焼排ガスの過熱状態の発生を防止し、熱エネルギーの効率的な利用を図るとともに、効果的に白煙の発生を抑制することが可能となった。
【0013】
本発明は、上記真空式温水機排ガスの熱回収装置であって、前記流路Cを、熱回収装置に給水するまでの流路において前記真空式温水機に給水する流路Bと熱回収装置に給水するCaに分岐し、該流路Bの中間に設けられた分岐路に流路C1の末端を接続し、前記熱回収装置から供出された前記加温水を前記真空式温水機へ給水可能な構成を有するとともに、流路C−流路Bの接続と流路C−流路C1の接続の切換えを行う切換弁を設け、かつ、前記流路C1において、熱回収装置に給水するまでの流路に設けられた分岐路に流路Dが接続され、該流路Dに開閉弁が設けられるとともに、前記流路C内の供給水または加温水の一部を前記中和槽に放出可能に構成する。
上記熱回収装置においては、燃焼排ガスによる真空式温水機から熱回収装置への熱移動と同時に、加温水による熱回収装置から真空式温水機への熱移動が行なわれる。このとき、いずれか一方が過熱量となり各装置の機能低下や損傷等を生じるという不測の場合の防止するために、過熱された加温水の真空式温水機への供給を停止して、供給水を直接真空式温水機へ供給できる構成を有することを特徴とする。これによって、後者における真空式温水機への過量の熱移動を防止するとともに、真空式温水機における熱媒体から給温水への移動熱量を増加させることができ、これによって、さらに燃焼熱の熱媒体への移動熱量を増加させることができることから、燃料排ガスの温度を低減させることができる。つまり、前者における熱回収装置への過量の熱移動を防止することができる。本発明は、さらに安全性を高めるために、熱回収装置への供給水を停止した状態において、熱回収装置への供給流路内の水の一部を放出して熱回収装置内のフィン水管内部の水が沸騰することを防ぎ、給湯開始時に高温に過熱された加温水が真空式温水機の給湯用熱交換器に流入することを防止する。このように、真空式温水機に過大な機能を必要とせずに、簡便かつ効果的に熱回収装置の過熱を防止し、真空式温水機および熱回収装置内部の温度・圧力の上昇を防ぐことが可能となった。
【0014】
また、本発明は、上記のいずれかの熱回収装置を用い、真空式温水機からの燃焼排ガス中の熱エネルギーである顕熱および潜熱を回収する方法であって、
該熱回収装置において、該真空式温水機からダクトを経由して給送された燃焼排ガスと、熱回収装置に設けられたフィン水管中の供給水とを向流的に熱交換させ、加温された該供給水を熱回収装置から加温水として真空式温水機に供給するとともに、
前記熱回収装置から排出される燃焼排ガスに対して噴霧水を吹き付けて所定温度以下に低温化された燃焼排ガスと、前記真空式温水機から給送された燃焼排ガスとを、いずれか一方を二重構造のダクトの内部あるいは外周部とし、他方を該ダクトの外周部あるいは内部として向流的に熱交換させることを特徴とする。
上記熱回収装置は、真空式温水機からの廃熱を効率のよく回収し、真空式温水機の熱効率を向上させるという基本機能を有するとともに、熱回収装置から排出される燃焼排ガスに噴霧水を吹き付け所定温度まで低下させる燃焼排ガスの冷却機能および二重構造のダクトにおける噴霧水により冷却処理された燃焼排ガスとの熱交換による真空式温水機からの高温の燃焼排ガスの冷却機能という従前にない機能を有するもので、熱回収装置に導入される燃焼排ガスの二重構造のダクトでの初段階での低温化と排出される燃焼排ガスの噴霧水による後段階の低温化は、真空式温水機および熱回収装置からなるシステム全体としての熱的なバランスに対しても非常に有効に機能する。本発明は、こうした優れた機能を生かすことによって、従来難しかった燃料排ガス中の水分を効率的に凝縮させることができ、高い収率で熱回収を行うことができる熱回収方法の提供することが可能となった。
【0015】
本発明は、上記の真空式温水機排ガスの熱回収方法であって、前記噴霧水として、前記熱回収装置において発生した凝縮水および吹き付けられた噴霧水を回収し中和処理された排水を利用、あるいは該排水に新たな供給水が補充されて利用されるとともに、前記真空式温水機からの燃焼排ガスの一部と前記熱回収装置からの燃焼排ガスが合流して前記排気部上部から排出されることを特徴とする。
こうした操作によって、熱回収装置から排出される中和処理された排水を利用することによる供給水の使用量の低減を図り、効果的に熱回収装置の過熱を防止することができる。さらに、真空式温水機からの高温の燃焼排ガスの一部とともに排出することによって、熱エネルギーの効率的な利用を図るとともに、効果的に白煙の発生を抑制することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る真空式温水機排ガスの熱回収装置の基本構成を例示する全体構成図。
【図2】本発明に係る熱回収装置の具体的な構成を例示する構成図。
【図3】本発明に係る熱回収装置の第2構成例を示す構成図。
【図4】本発明に係る熱回収装置の第3構成例を示す構成図。
【図5】従来技術に係る真空式温水ボイラの概略を例示する全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る真空式温水機排ガスの熱回収装置(以下「本装置」という)は、真空式温水機(特に断りがない限り「温水機」という)とダクトによって接続され、
温水機が、燃焼バーナ、内部に熱媒体が流通し燃焼熱を吸収する複数の水管および燃焼排ガスの排気部が備えられた燃焼室と、該燃焼室を囲むように隣接し熱媒体が充填された熱媒体槽、内部に給温水が流通する熱交換器および減圧手段に接続される減圧部が備えられた減圧蒸気室と、該給温水が供出される給湯部と、を有し、
本装置が、内部に供給水が流通する複数段かつ複数列設置したフィン水管からなる熱回収器を備えた熱回収室と、処理された燃焼排ガスが排出される排出部と、排出部の入り口下部に設けられ、燃焼排ガスに対して噴霧水を吹き付ける噴霧器と、熱回収室の下部に配置され凝縮水および噴霧水を回収し中和処理する中和槽と、中和槽からの処理された排水が排出される排水部と、を有し、
ダクトが、温水機からの燃焼排ガスが排気部から本装置上部まで給送されるダクト本体と、本装置からの燃焼排ガスが排出部から排気部上部まで給送されるダクトの内部あるいは外周部の流路を有する二重構造部分と、を有し、
供給水を導入する流路Aを設け、流路Aを本装置に給水する流路Cと噴霧器に給水する流路Eとに分岐するとともに、流路Eに流量調整器を設け、温度検出器の出力に基づき噴霧器への供給水の流量の調整可能な構成を有し、
給送された燃焼排ガスを熱回収室の上部から下部に流下させた状態で、熱回収器内部に供給水を下部から上部に流通させて熱交換し、燃焼排ガスの顕熱および該燃焼排ガス中に含まれる水蒸気の潜熱を回収するとともに、供給水が加温され、加温水として熱交換器に供給され、かつ熱回収室により処理され、噴霧水によって低温化された燃焼排ガスが、さらに排出部からダクトの内部あるいは外周部を流通し、ダクト本体内部の高温の燃焼排ガスと熱交換した後、排気部上部から放出されることを特徴とする。以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
<本装置の第1構成例>
本装置の1つの実施態様として、その基本構成の概略を図1に示す(第1構成例)。本装置10は、温水機20とダクト30によって接続される。本装置10は、熱回収室1と、噴霧器10aと、温度検出器Saと、中和槽2と、排出部3と、排水部10bと、を有する一方、温水機20は、燃焼室4と、減圧蒸気室5と、ダクト30と、を有する。
【0019】
ここで、供給水を導入する流路Aを設け、流路Aを本装置10に給水する流路Cと噴霧器10aに給水する流路Eとに分岐するとともに、流路Eに流量調整器Faを設け、温度検出器Saの出力に基づき噴霧器10aへの供給水の流量が調整される。ダクト30が熱回収室1の上部に接続され、給送された燃焼排ガスを噴霧水によって低温化し、さらに熱回収室1の上部から下部に流下させた状態で、熱回収室1に設けられた熱交換部(フィン水管)内部に供給水を下部から上部に流通させて給送された燃焼排ガスと熱交換し、燃焼排ガスの顕熱および該燃焼排ガス中に含まれる水蒸気の潜熱を回収する。加温された供給水は、加温水として温水機20の減圧蒸気室5に設けられた熱交換器に供給され、給湯用や暖房用等の給温水となる。熱エネルギーの循環系を形成する燃焼排ガスと加温水の加温機能によって、回収された廃熱を温水機の熱源として利用し、温水機の熱効率を向上させることができる。
【0020】
〔ダクト〕
本装置10と温水機20を接続するダクトは、温水機20からの燃焼排ガスが排気部4aから本装置10の上部まで給送されるダクト本体と、本装置10からの燃焼排ガスが排出部3から排気部4a上部まで給送されるダクト30の内部あるいは外周部の流路を有する二重構造部分から構成される。以下、図1に例示するように、ダクト本体の流路をダクトの内部流路30aとし、二重構造を有する他の流路をダクトの外周部流路30bとする構成に基づき説明するが、逆の構成も可能である。これらの流路間において熱交換が行なわれ、流路30aにおいて本装置10での熱回収に適正な温度まで低温化され(熱回収室1の入口で100℃以下、好ましくは80〜90℃の燃料排ガスが給送されることが好ましい)、流路30bにおいて系外に白煙を生じずに排出されるに適正な温度まで加温される(例えば、30〜50℃)。こうした熱交換機能は、所定の長さまでダクトの長さを変更することによって、調整することができる。
【0021】
また、ダクト本体(内部流路30a)が、排気部4aの上部において分岐され、該分岐部8aにダンパ8が配設されるとともに、分岐された流路に排気流路8bが形成され、かつダクトの外周部流路30bと接続され、温水機20からの燃焼排ガスの一部と本装置10からの燃焼排ガスが合流して排出される。本装置10内で低温化・水分除去された燃焼排ガスをダクト30における熱交換によって加温し、さらに温水機20からの高温の燃焼排ガスの一部を混合させることによって、水分が多く含まれ潜熱の大きな燃焼排ガスの白煙発生の防止を確実に行なうことができる。ここで、合流させる温水機20からの高温の燃焼排ガスの流量、つまり残量である本装置10へ給送される燃焼排ガスの流量は、ダンパ8のみならず、さらにダンパ8’を内部流路30aに設けて精度よく調整することもできる。
【0022】
〔熱回収装置〕
本装置10は、図2(A)に例示するように、熱回収室1、噴霧器10a、温度検出器Sa、中和槽2、排出部3、排水部10bから構成される。本装置10には、ダクト30によって給送された燃焼排ガスが、熱回収室1の上部から導入される。熱回収室1には、内部に供給水が流通する複数段かつ複数列設置したフィン水管1bからなる熱回収器1aが備えられる。中和槽2は、熱回収室1の下部に配置され、凝縮水を回収し中和処理する。排出部3は、熱回収室1から流下した燃焼排ガスが中和槽2の表面で折り返すように上昇させる構成が好ましい。流下によって低温化を促進し、中和槽2表面との接触によってガス中の酸性成分が処理された燃焼排ガスとして排出することができる。排水部10bからは、中和処理された排水が排出される。排出部3の入口下部には、噴霧器10aが設けられ、燃焼排ガスに噴霧水が吹き付けられ低温化を図る。排出部3の入口には、温度検出器Saが設けられ、燃焼排ガスの温度が検出されることが好ましい。
【0023】
上記のように、ダクト30を経由して熱回収室1に導入される燃焼排ガスの温度は、100℃以下、好ましくは80〜90℃が好適である。100℃を超えると後段での熱回収効率が低下し、80℃以下まで冷却すると、熱回収室1での熱回収効率が低下する。熱回収室1に導入された燃焼排ガスは、フィン水管1bにおいて供給水と熱交換し、冷却されて顕熱を放出するとともに、含有される水蒸気は、その潜熱を放出しながらフィン水管1bの表面で凝縮し凝縮水を形成する。凝縮水は、所定の大きさに拡大した状態で、熱回収室1の上部から流下する燃焼排ガスの流れに沿って落下し、中和槽2に貯留される。このとき、フィン水管1bの表面への水滴の付着は、フィン水管1bの伝熱機能を阻害することから、燃焼排ガスによる水滴の落下を促進する機能は、本装置10の熱効率向上に対して有効である。多くの水分が除去された燃焼排ガスは、低温化処理および酸性成分の除去処理をされた清浄ガスとして排出部3から排出される。中和槽2に貯留された凝縮水は、所定量貯留後あるいは連続的にpH調整剤によって中和処理された後、系外に排出される。なお、本装置10は、導入された燃焼排ガスを清浄化されたガスと液体をして排出する自己完結処理型の装置を構成するが、別途中和処理や排出処理の機能を、系外の装置において行なうことも可能である。
【0024】
一方、本装置10には、熱回収室1内部のフィン水管1bに供給水が導入され、下部から上部に流通される。流下する燃焼排ガスと向流式熱交換を行なうことによって、効率的な熱交換機能を形成し、凝縮水の発生を促進すると同時に、上述の水滴の落下を促進する機能によって、より低温状態のフィン水管1b下部での供給水の冷却機能を活かすことができる。フィン水管1bは、複数段かつ複数列備えられ、熱回収器1aを構成する。図2(B)に示す平断面図のように、最密充填状に配設することによって、フィン水管1bのフィン表面を有効に活かすことができるとともに、均等に分布された燃焼排ガスの流れを形成し、ショートパスの発生による熱交換効率の低下を防止することができる。
【0025】
熱回収室1で処理された燃焼排ガスは、噴霧器10aによって噴霧水が吹き付けられ、低温化される。燃焼排ガスの低温化に伴い含有される水蒸気によって新たに発生した凝縮水は、噴霧水とともに流下し、熱回収室1において発生する凝縮水とともに、中和槽2に貯留される。噴霧水(冷却水)は、流路Aから流路Eを経由して噴霧器10aに供給される。供給水の流量は、温度検出器Saによって検出された温度の指標として、流路Eに設けられた流量調整器Faによって調整される。
【0026】
また、噴霧水の吹き付けによる排出部3から排出される燃焼排ガスの低温処理化は、ダクト内での熱交換による本装置10へ導入される燃焼排ガスの初段階での低温化を行うことができ、後段での処理を非常に安定かつ効率的に行うことができる。つまり、温水機20から供出される給温水の使用量が多くなれば、生成される燃焼熱量も多くなり、燃焼排ガス温度の上昇が生じる。このとき、本装置10において熱交換される供給水は給温水の使用量に応じて増加することから、増加した燃焼熱量を十分回収することができ、温水機20および本装置10からなるシステム全体として、熱的なバランスがとれた状態が維持される。本装置10は、こうした均衡のより安定性を高めるために、熱回収室1の後段階において燃焼排ガスの噴霧処理によって燃焼排ガスの低温化を図った。また、こうした排出部3から排出される燃焼排ガスの低温化処理によって、燃焼排ガスの白煙化防止処理の第1段階を行うことができる。
【0027】
〔温水機〕
温水機20は、燃焼室4と、減圧蒸気室5と、ダクト30とから構成される(ダクト30については既述)。燃焼室4には、燃焼バーナ4a、内部に熱媒体が流通し燃焼熱を吸収する複数の水管4b、および燃焼排ガスが排気される排気部4cが備えられる。減圧蒸気室5には、燃焼室4を囲むように隣接し、熱媒体5aが充填された熱媒体槽5b、内部に給温水が流通する熱交換器5c、および減圧手段(図示せず)に接続される減圧部5dが備えられる。ダクト30には、排気部4cからの燃焼排ガスが給送される。給温水は、給湯部5eを介して温水機20から給出される。
【0028】
温水機20では、燃焼室4において、別途供給された燃料と燃焼空気(図示せず)が燃焼バーナ4aにおいて燃焼反応を生じ、発熱反応による熱エネルギーの放射と高温の火炎4dを発生させる。これらの燃焼熱は、複数の水管4b内を流通する熱媒体5aによって吸収されるとともに、燃焼室4を囲むように隣接した熱媒体5aによって吸収される。つまり、燃焼室4の上下左右を囲むように伝熱性の高い材料を使用した熱媒体槽5bが配設され、複数の水管4b内部と連通して熱媒体5aが充填されている。従って、火炎4dの燃焼熱は、主として水管4bを介して吸収され、火炎4dの燃焼熱の一部および放射熱エネルギーは、伝熱性の高い材料を介して吸収される。燃焼反応によって発生した燃焼排ガスは、低温化されて排気部4cから排気され、ダクト30に給送される。
【0029】
減圧蒸気室5には、熱媒体槽5bの上層を減圧条件(例えば−3kPa〜−5kPa)に維持された空間が設けられ、該空間に内部に給温水が流通する熱交換器5cが配設される。上記のように、燃焼室4で発生した燃焼熱の多くは、熱媒体5aに吸収される。熱媒体5aは、通常市水等の水が利用される。このとき、熱媒体槽5bおよび水管4bの内部の温度には、殆どバラツキがないことが確認されている。燃焼室4との隔壁での伝熱効果と水管4bの内部を含む熱媒体5aの対流効果によるものである。また、減圧蒸気室5では、減圧条件における熱媒体の温度を通常75〜85℃に加熱した状態(減圧沸騰した状態)で維持され、熱媒体5aに吸収された燃焼熱は、減圧条件下の飽和蒸気を介して熱交換器5cに伝達される。熱交換器5c内部には、予め熱回収室1において加温された加温水が流通しており、75〜85℃に加熱され給温水となる。
【0030】
〔本装置の給水機能〕
本装置10には、給水ポンプ6によって流路Aを経由して供給水が圧送され、流路Cを経由して熱回収室1に供給され、流路Eを経由して噴霧器10aに供給される。噴霧器10aへの供給水の流量は、流量調整器Faによって調整される。温水機20には、本装置10の熱回収室1において加温された加温水が給送され、所望の温度に加熱された給温水として供出される。つまり、燃焼排ガスによる温水機20から本装置10への熱移動と同時に、加温水による本装置10から温水機20への熱移動が行なわれる。このとき、供給水の供給量は、給水ポンプ6による昇圧および絞り弁7によって調整される。また供給水として使用する水は、通常市水等を用いることができる。
【0031】
このとき、熱回収室1の上部、排出部3、排気部4c、熱媒体槽5bのいずれかあるいはそのいくつかに温度検出器を設け、それぞれの予め設定された温度を指標に、供給水の流量あるいは供給流路を制御することが好ましい。具体的には、図1に例示するように、熱回収室1の上部として熱回収室1から供出された加温水の温度を検出する温度検出器S1、排出部3に給送される燃焼排ガスの温度を検出する温度検出器Sa、排気部4cからの燃焼排ガスの温度を検出する温度検出器S2、熱媒体槽5b内の熱媒体5aの温度を検出する温度検出器S3が該当する。例えば、給温水の供給温度を約75〜85℃で制御された場合、供給水の温度を約20〜30℃とすれば、加温水の温度は約40〜50℃が適切であり、本装置10に導入される燃焼排ガスの温度は100℃以下、好ましくは80〜90℃が適切であり、熱媒体5aの温度は給温水の供給温度とほぼ同じである。これらの温度は、各々他の装置の水温やガス温度と密接な関係を有し、相互に関連することから、予めその相関関係が把握できる場合には、代表する1または2の温度検出器を設置することができる。このような特定箇所の水温やガス温度をモニタすることによって、システム全体の管理が可能であることを見出したものであり、こうした指標を基に、供給水の流量あるいは供給流路を制御することによって、本装置10および温水機20の適正な稼動状態を確保することができる。
【0032】
<本装置の第2構成例>
本装置10は、上記第1構成例に代え、図3に例示するような給水機能を有する構成とすることができる(第2構成例)。第2構成例は噴霧水として、本装置10から排出される中和処理された排水を利用する。該排水は供給水と同レベルの清浄処理された水であり、噴霧水として循環的に使用することによって、新たな供給水の供給量の低減を図ることができる。具体的には、本装置10に供給水を給水する流路Cと別に、排水給送手段(給水ポンプ6a)を設けて排水部10bからの排水を噴霧器10aに給水する流路Eとを設けるとともに、噴霧器10aへの供給水の流量が、温度検出器Saの出力に基づき流量調整器Faによって調整される。
【0033】
また、第2構成例は、中和槽2において中和処理された排水を排出する前に一旦貯留する貯留槽2aを設け、流路Aを本装置10に給水する流路Cと貯留槽2aに給水する流路Fに分岐し、流路Fを経由して流路Aからの新たな供給水を噴霧器10aへの供給水として補充することができる構成を有している。噴霧水として中和処理された排水を循環的に使用すると、排水温度も徐々に上昇する可能性があることから、排水利用の循環系に新たな供給水を付加することによって、より安定的に噴霧水による冷却機能を確保することができる。新たな供給水の補充流量は、温度検出器Saの出力と噴霧水として供給される供給水の流量に基づき、決定される。
【0034】
<本装置の第3構成例>
本装置10は、図4に例示するような給水機能を有する構成とすることができる(第3構成例)。本装置10における効率的な熱回収は、燃焼排ガスによる温水機20から本装置10への熱移動と、加温水による本装置10から温水機20への熱移動のバランスにより成立する。このとき、いずれか一方が過熱量となれば、各装置の機能低下や損傷等を生じる可能性がある。こうした不測の場合の防止するために、具体的には、本装置10に供給水を導入する流路Cを温水機20に給水する流路Bと本装置10に給水する流路C1に分岐し、流路Bにおいて温水機20に給水するまでの流路に設けられた分岐路Baに流路C1の末端を接続し、本装置10から供出された加温水を温水機20へ給水可能な構成を有するとともに、流路C−流路Bの接続と流路C−流路C1の接続の切換えを行う切換弁Vaを設けることが好ましい。例えば、燃焼排ガス温度の上昇によって加温水が過熱状態となった場合、温水機20への過熱された加温水の供給は、給温水への燃焼熱の移動熱量を減少させ、燃焼排ガスの更なる温度上昇を招来する可能性がある。本装置10においては、通常流路C−流路C1の接続状態にある切換弁Vaを、流路C−流路Bの接続に切換えることによって、過熱された加温水の温水機20への供給が停止され、供給水を直接温水機20へ供給できることができる。これによって、温水機20への過量の熱移動を防止することができ、温水機20への加温水の供給に伴う燃焼排ガスの更なる温度上昇を未然に防止できる。
【0035】
また、第3構成例にあっては、流路C1において熱回収装置に給水するまでの流路に設けられた分岐路Cbに流路Dが接続され、流路Dに開閉弁Vbが設けられ、流路C1内の供給水または加温水の一部を中和槽2に放出可能に構成することが好ましい。上記のように、燃料排ガスの温度上昇によるリスク等に対する固有の未然防止機能を有している一方、本装置10への一時的な供給水の停止および燃焼排ガスの温度上昇は、熱回収器1a内の流路C1の加温水の沸騰を生じる可能性があり、流路C1内の供給水または加温水の一部を放出することによって、こうしたリスクを未然に防止し、さらに高い安全性を確保することができる。このとき、流路C1に設けられた絞り弁7は、供給水の流れを、流路Bへの流れを主とするとともに、流路C1にその一部を逆送させて熱回収器1aの熱交換機能を維持させることができる。さらに、以上の機能は、温水機20において給温水が停止状態になった時においても、流路Aを介して流路Cに供給水を供給することによって実行することができることから、熱回収器1aの熱交換機能を維持し、安全性を確保するためにおいても有効である。また、流路Dから放出される供給水または加温水は、中和槽2に貯留され、適宜放出されることが好ましい。中和剤および放出水の清浄に寄与することができる。また、第2構成例のように、排水を噴霧水として循環利用する場合には、こうした流路Dから放出される供給水は、新たな供給水の補充に近い効果を得ることができる。
【0036】
<本装置を用いた熱回収方法>
次に、本装置10を用いた熱回収方法を、各装置における熱エネルギーの授受・収支を主に詳述する。本装置10において、以下の操作が行なわれ、温水機20からの燃焼排ガスの熱エネルギーを効果的に回収することができる。操作は、制御器(図示せず)によって自動的に行なわれる。図1に例示された第1構成例を基に説明する。
【0037】
〔第1構成例における操作〕
(1)本装置および温水機の起動
予め減圧部5dから減圧手段(図示せず)によって減圧蒸気室5内部を所定圧力まで減圧しておく。温水機20の燃焼バーナ4aへの燃料および助燃空気の供給を行うと同時に着火して、本装置10および温水機20を起動する。
【0038】
(2)本装置への供給水の供給
排気部4cあるいは熱媒体槽5bの温度上昇が確認できると同時に、給水ポンプ6を駆動させ、供給水を本装置10および噴霧器10aに供給する。温度検出器Saによる排出部3入口の燃焼排ガスの温度の検出を行う。
【0039】
(3)ダクトでの燃焼排ガスの熱交換
ダクト30には、温水機20からの高温の燃焼排ガスが流路30aに給送され、本装置10からの低温化された燃焼排ガスが流路30bに給送される。二重構造を有するこれらの流路間において熱交換が行なわれ、流路30aにおいて低温化された燃焼排ガスが本装置に給送され、流路30bにおいて加温された燃焼排ガスが白煙を生じずに系外に排出される。
【0040】
(4)本装置での燃焼排ガスとの熱交換
温水機20からの燃焼排ガスは、ダクト30において熱交換され、所定温度以下に冷却される。導入された燃焼排ガスの初段階での低温化は、温水機20および本装置10からなるシステム全体としての熱的なバランスに対しても非常に有効に機能する。本装置10に導入された燃焼排ガスと熱回収室1に設けられたフィン水管1b中の供給水が向流的に熱交換される。燃焼排ガスは冷却され、含有する水分がフィン水管1bの表面で凝縮され水滴を生じさせる。これによって、燃焼排ガス中の熱エネルギーである顕熱および潜熱を回収することができる。供給水は回収されたエネルギーによって加温され、加温水として供出される。フィン水管1b表面の凝縮水は、上方からの燃焼排ガスの流れによって排除され、熱交換効率が維持される。低温化された燃焼排ガスは、さらに、噴霧水が吹き付けられ、所定温度以下に冷却され、排出部3からダクト30に排出され、温水機20に給送される。噴霧水による低温化は、ダクト30での熱交換により本装置10に導入される燃焼排ガスの初段階での低温化機能に繋がることから、温水機20および本装置10からなるシステム全体としての熱的なバランスに対しても非常に有効に機能する。
【0041】
(5)温水機での給温水の作製
本装置10から給送された加温水が、温水機20の減圧蒸気室5に導入され、熱交換器5cにおいて減圧状態の気相熱媒体5bと熱交換され、熱媒体5bとほぼ同温度の給温水を作製することができる。熱を奪われた気相熱媒体5bは、熱交換器5c表面で液化し、熱媒体槽5aに滴下する。気相熱媒体5bの減少熱量は、循環系を構成する熱媒体槽5aから蒸発した気相熱媒体5bで補充される。熱媒体槽5aにおける減少熱量は、熱媒体槽5a周囲および水管4bから燃焼室4において発生する燃焼熱で補充される。
【0042】
(6)燃焼排ガスの排出
本装置10において清浄化された燃焼排ガスは、
【0043】
以上の熱回収方法を用いることによって、安定した給温水の供給ができるとともに、こうした熱エネルギーの流れによって、ダクトでの効果的な熱交換機能を活かし、温水機20からの燃焼排ガス中の熱エネルギーである顕熱および潜熱を本装置10において効率のよく回収することができる。
【0044】
〔第2構成例における操作〕
また、本装置10の第2構成例においては、本装置10からの排水を噴霧水として循環利用され、清浄化された排水の有効活用と供給水の低減を図ることができるとともに、上記第1構成例と同様に、温水機20からの燃焼排ガスの熱エネルギーを効果的に回収することができる。図3に例示された構成を基に説明する。基本操作は、第1構成例と同様であり、異なる操作のみを挙げる。
【0045】
(1)噴霧水としての排水の供給
第1構成例における「(4)本装置での燃焼排ガスとの熱交換」操作において、給水ポンプ6aを駆動させ、本装置10の中和槽2において中和処理され排水部10bから排出される排水を吸引し、流路Eを経由して噴霧器10aに供給する。噴霧器10aにおいて本装置10に導入された燃焼排ガスに噴霧水を吹き付ける。
【0046】
(2)供給水の補充
実際に駆動した状態において、温度検出器Saの出力から、循環使用している噴霧水(排水)の温度が高い(例えば50℃以上)となった場合、給水ポンプ6によって供給される供給水を、流路Fを経由して貯留槽2aに供給する。安定的に噴霧水による冷却機能を確保することができる。
【0047】
上記の通り、本装置10は、燃焼排ガス導入前のダクト30における冷却機能を確保することによって、導入される燃焼排ガスを所定温度まで低下させるとともに、装置上部から流下する燃焼排ガスと複数設置されたフィン水管を上昇する供給水との効率的な熱交換機能、流下するガス流によるフィン水管の表面に発生する凝縮水の排除機能、および回収した熱エネルギーによる温水機20の給温水の加温機能、および排出される燃焼排ガスの噴霧水による冷却機能を有するとともに、加温水の温度が予め設定された温度以上に上昇した場合等のリスクを回避することもできる。
【0048】
〔第3構成例における操作〕
また、本装置10の第3構成例においては、燃料排ガスあるいは加温水の温度が予め設定された温度以上に上昇した場合、以下の操作が行なわれ、上記第1構成例と同様に、温水機20からの燃焼排ガスの熱エネルギーを効果的に回収することができる。図4に例示された構成を基に説明する。
【0049】
(1)設定温度を超える給温水の温度,燃料排ガスあるいは加温水の温度の検知
温度検出器S1による加温水の温度の検出、温度検出器S2による排気部4cからの燃焼排ガスの温度の検出、温度検出器S3による熱媒体5a(給温水)の温度の検出、のいずれかあるいはそのいくつかを行う。特に設定温度を超える場合には、既述のような本装置10と温水機20との間における熱移動のバランスがずれ、いずれか一方が過熱量となっている可能性がある
【0050】
(2)温水機への加温水の供給の停止
本装置10と温水機20との間における熱移動のバランスがずれた場合(燃焼排ガスあるいは加温水の温度上昇)、切換弁Vaを操作し、温水機20への加温水の供給を停止し、熱交換器5cからの温水機20への過量の熱移動を防止する。同時に、供給水を直接温水機20に供給し、温水機20に供給する熱量を減少させ、温水機20から供出する熱量(燃焼排ガスの温度)を減少させる。
【0051】
(3)本装置からの供給水または加温水の放出
開閉弁Vbを操作し、流路C1に流通した供給水または加温水を本装置10に設けられた中和槽2に放出する。温水機20に供給水または加温水が供給されないときは、熱回収器1a内の流路C1の加温水の沸騰を回避することができる。温水機20に供給水が供給されたときは、供給水の一部が熱回収器1a内の流路C1にも供給されることから、熱回収器1aの熱交換機能を維持することができる。
【0052】
上記の通り、本装置10は、装置上部から流下する燃焼排ガスと複数設置されたフィン水管を上昇する供給水との効率的な熱交換機能、流下するガス流によるフィン水管の表面に発生する凝縮水の排除機能、および回収した熱エネルギーによる温水機20の給温水の加温機能、および排出される燃焼排ガスの噴霧水による冷却機能を有するとともに、加温水の温度が予め設定された温度以上に上昇した場合等のリスクを回避することもできる。
【符号の説明】
【0053】
10 熱回収装置(本装置)
10a 噴霧器
10b 排水部
20 真空式温水機(温水機)
30 ダクト
30a ダクトの内部
30b ダクトの外周部
1 熱回収室
1a 熱回収器
1b フィン水管
2 中和槽
3 排出部
4 燃焼室
4a 燃焼バーナ
4b 水管
4c 排気部
4d 火炎
5 減圧蒸気室
5a 熱媒体
5b 熱媒体槽
5c 熱交換器
5d 減圧部
5e 給湯部
6 給水ポンプ
7 絞り弁
8,8’ ダンパ
8a 分岐部
8b 排気流路
A〜F,C1 流路
A〜F,Ca 流路
Ba,Ca 分岐路
Fa 流量調整器
S1〜S3,Sa 温度検出器
Va 切換弁
Vb 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空式温水機から燃焼排ガスが給送されるダクトの一端部で、該真空式温水機と接続する熱回収装置であって、
前記真空式温水機が、燃焼バーナ、内部に熱媒体が流通し燃焼熱を吸収する複数の水管および燃焼排ガスの排気部が備えられた燃焼室と、該燃焼室を囲むように隣接し前記熱媒体が充填された熱媒体槽、内部に給温水が流通する熱交換器および減圧手段に接続される減圧部が備えられた減圧蒸気室と、該給温水が供出される給湯部と、を有し、
前記熱回収装置が、内部に供給水が流通する複数段かつ複数列設置したフィン水管からなる熱回収器を備えた熱回収室と、処理された燃焼排ガスが排出される排出部と、該排出部の入り口下部に設けられ、燃焼排ガスに対して噴霧水を吹き付ける噴霧器と、前記熱回収室の下部に配置され凝縮水および噴霧水を回収し中和処理する中和槽と、前記中和槽からの処理された排水が排出される排水部と、を有し、
前記ダクトが、前記真空式温水機からの燃焼排ガスが給送される前記排気部から前記熱回収装置上部までのダクト本体と、前記熱回収装置からの燃焼排ガスが給送される前記排出部から前記排気部上部までのダクトの内部あるいは外周部を有する二重構造部分と、を有し、
供給水を導入する流路Aを設け、該流路Aを前記熱回収装置に給水する流路Cと前記噴霧器に給水する流路Eとに分岐するとともに、該流路Eに流量調整器を設け、前記温度検出器の出力に基づき前記噴霧器への供給水の流量の調整可能な構成を有し、
給送された燃焼排ガスを前記熱回収室の上部から下部に流下させた状態で、前記熱回収器内部に前記供給水を下部から上部に流通させて熱交換し、燃焼排ガスの顕熱および該燃焼排ガス中に含まれる水蒸気の潜熱を回収するとともに、前記供給水が加温され、加温水として前記熱交換器に供給され、かつ前記熱回収室により処理され、前記噴霧水によって低温化された燃焼排ガスが、さらに前記排出部からダクトの内部あるいは外周部を流通し、前記ダクト本体内部の高温の燃焼排ガスと熱交換した後、前記排気部上部から放出されることを特徴とする真空式温水機排ガスの熱回収装置。
【請求項2】
真空式温水機から燃焼排ガスが給送されるダクトの一端部で、該真空式温水機と接続する熱回収装置であって、
前記真空式温水機が、燃焼バーナ、内部に熱媒体が流通し燃焼熱を吸収する複数の水管および燃焼排ガスの排気部が備えられた燃焼室と、該燃焼室を囲むように隣接し前記熱媒体が充填された熱媒体槽、内部に給温水が流通する熱交換器および減圧手段に接続される減圧部が備えられた減圧蒸気室と、該給温水が供出される給湯部と、を有し、
前記熱回収装置が、内部に供給水が流通する複数段かつ複数列設置したフィン水管からなる熱回収器を備えた熱回収室と、処理された燃焼排ガスが排出される排出部と、該排出部の入り口下部に設けられ、燃焼排ガスに対して噴霧水を吹き付ける噴霧器と、前記熱回収室の下部に配置され凝縮水および噴霧水を回収し中和処理する中和槽と、前記中和槽からの処理された排水が排出される排水部と、を有し、
前記ダクトが、前記真空式温水機からの燃焼排ガスが前記排気部から前記熱回収装置上部まで給送されるダクト本体と、前記熱回収装置からの燃焼排ガスが前記排出部から前記排気部上部まで給送されるダクトの内部あるいは外周部の流路を有する二重構造部分と、を有し、
前記熱回収装置に供給水を給水する流路Cと、排水給送手段を設けて前記排水部からの排水を前記噴霧器に給水する流路Eとを設けるとともに、前記温度検出器の出力に基づき前記噴霧器への供給水の流量の調整可能な構成を有し、
前記熱回収室の上部から下部に流下させた状態で、前記熱回収器内部に前記供給水を下部から上部に流通させて給送された燃焼排ガスと熱交換し、燃焼排ガスの顕熱および該燃焼排ガス中に含まれる水蒸気の潜熱を回収するとともに、前記供給水が加温され、加温水として前記熱交換器に供給され、かつ前記熱回収室により処理され、前記噴霧水によって低温化された燃焼排ガスが、さらに前記排出部からダクトの内部あるいは外周部を流通し、前記ダクト本体内部の高温の燃焼排ガスと熱交換した後、前記排気部上部から放出されることを特徴とする真空式温水機排ガスの熱回収装置。
【請求項3】
前記中和槽に中和処理された排水を貯留する貯留槽を設け、前記流路Aを前記熱回収装置に給水する流路Cと該貯留槽に給水する流路Fに分岐し、前記噴霧器への供給水の補充を行うことを特徴とする請求項2記載の真空式温水機排ガスの熱回収装置。
【請求項4】
前記ダクト本体が、前記排気部上部において分岐され、該分岐部にダンパが配設されるとともに、該分岐された流路に排気流路が形成され、かつ前記ダクトの内部あるいは外周部の流路と接続され、前記真空式温水機からの燃焼排ガスの一部と前記熱回収装置からの燃焼排ガスが合流して前記排気部上部から排出されることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の真空式温水機排ガスの熱回収装置。
【請求項5】
前記流路Cを、熱回収装置に給水するまでの流路において前記真空式温水機に給水する流路Bと熱回収装置に給水するCaに分岐し、該流路Bの中間に設けられた分岐路に流路C1の末端を接続し、前記熱回収装置から供出された前記加温水を前記真空式温水機へ給水可能な構成を有するとともに、流路C−流路Bの接続と流路C−流路C1の接続の切換えを行う切換弁を設け、かつ、前記流路C1において、熱回収装置に給水するまでの流路に設けられた分岐路に流路Dが接続され、該流路Dに開閉弁が設けられるとともに、前記流路C内の供給水または加温水の一部を前記中和槽に放出可能に構成することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の真空式温水機排ガスの熱回収装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの熱回収装置を用い、真空式温水機からの燃焼排ガス中の熱エネルギーである顕熱および潜熱を回収する方法であって、
該熱回収装置において、該真空式温水機からダクトを経由して給送された燃焼排ガスと、熱回収装置に設けられたフィン水管中の供給水とを向流的に熱交換させ、加温された該供給水を熱回収装置から加温水として真空式温水機に供給するとともに、
前記熱回収装置から排出される燃焼排ガスに対して噴霧水を吹き付けて所定温度以下に低温化された燃焼排ガスと、前記真空式温水機から給送された燃焼排ガスとを、いずれか一方を二重構造のダクトの内部あるいは外周部とし、他方を該ダクトの外周部あるいは内部として向流的に熱交換させることを特徴とする真空式温水機排ガスの熱回収方法。
【請求項7】
前記噴霧水として、前記熱回収装置において発生した凝縮水および吹き付けられた噴霧水を回収し中和処理された排水を利用、あるいは該排水に新たな供給水が補充されて利用されるとともに、
前記真空式温水機からの燃焼排ガスの一部と前記熱回収装置からの燃焼排ガスが合流して前記排気部上部から排出されることを特徴とする請求項6記載の真空式温水機排ガスの熱回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−102908(P2012−102908A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250141(P2010−250141)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(505229472)株式会社日本サーモエナー (24)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】