説明

真空成膜装置

【課題】比較的安価な構成により、スイングアームのロックし忘れを防止する真空成膜装置を提供する。
【解決手段】真空成膜装置3は、ホルダ19fを支持しかつ揺動自在なスイングアーム90を備えている。スイングアーム90は、ホルダ19fを他のホルダ19と共に周回状に配置する閉位置と、ホルダ19fを中心位置15aの外方に移動させた開位置との間で揺動可能である。真空成膜装置3は、スイングアーム90を閉位置に保持するロック機構と、スイングアーム90が閉位置にあるとスイングアーム90を開位置側に向かって付勢する付勢部材61と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空状態において被処理物の表面に成膜を施すことができる真空成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、真空槽本体と前記真空槽本体に開閉自在に設けられる扉とを有する真空槽と、被処理物を支持するホルダと、を備えた真空成膜装置が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。また、所定の位置(例えば蒸着源の設置位置)を中心として周回状に配置された複数のホルダを備え、運転中にそれらホルダが自転しながら上記所定位置を中心として公転する真空成膜装置も知られている。
【0003】
上記真空成膜装置では、ホルダの自転および公転により、被処理物に対する成膜を均一に行うことができる。しかし、複数のホルダが前記所定位置(以下、中心位置という)を取り囲むように配置されるので、そのままではホルダが邪魔となって、蒸着源の交換作業等が行いにくいという課題がある。
【0004】
そこで、中心位置の外側に向かって揺動自在なスイング部材を設け、少なくとも一つのホルダを上記スイング部材に取り付けることが提案されている。このような真空成膜装置によれば、スイング部材を外側に向かって開くことにより、作業者が中心位置に向かって移動することが容易となる。そのため、蒸着源の交換作業等を容易に行うことができる。一方、蒸着源の交換作業等が終了すると、スイングアームが揺動しないように所定のロック機構によって当該スイングアームをロックする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−271931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、蒸着源の交換作業等を行った後、作業者がスイング部材をロックし忘れる場合がある。本願発明者は、そのような場合に以下のような現象が発生するおそれがあることを見出した。すなわち、ホルダは自転だけでなく、前記中心位置を中心として公転する。そのため、公転の際にスイング部材にホルダの遠心力が作用し、スイング部材が徐々に外側に向かって開いてしまうおそれがある。ところが、スイング部材が外側に向かって開いてしまうと、ホルダが真空槽の内周面に接触し、成膜処理の不良が発生するおそれがある。また、ホルダまたはスイング部材が真空槽の内周面に接触し、ホルダ等が落下するおそれがある。しかし、ホルダ等が落下すると、器材損傷を生じ、器材の交換が必要となる。ところが、器材交換が必要になると、その間、真空成膜装置を稼働させることができなくなる。
【0007】
そのような事態を回避するため、スイング部材に自動ロック機構を設けることが考えられる。すなわち、スイング部材が所定位置に移動すると、スイング部材を自動的にロックするような機構を設けることが考えられる。ところが、そのような自動ロック機構は高価であり、真空成膜装置の低コスト化を阻害する要因となり、好ましくない。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、真空成膜装置において、比較的安価な構成により、スイング部材のロックし忘れを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る真空成膜装置は、真空槽本体と前記真空槽本体に開閉自在に設けられた扉とを有し、その内部において被処理物に対する成膜処理が行われる真空槽と、所定の中心位置を取り囲むように周回状に配置され、それぞれ前記被処理物を支持する複数のホルダと、前記ホルダを少なくとも前記中心位置を中心として公転させる駆動機構と、前記複数のホルダのうち少なくとも一つのホルダを支持し、当該ホルダを他のホルダと共に前記周回状に配置する閉位置と、当該ホルダを前記閉位置よりも前記中心位置の外方に移動させた開位置との間で、揺動自在なスイング部材と、前記スイング部材を前記閉位置に保持するロック機構と、前記スイング部材が前記閉位置に保持されていないことを作業者に認識させる非ロック状態認識促進手段と、を備えたものである。
【0010】
上記真空成膜装置によれば、スイング部材が閉位置に保持されていない場合には、非ロック状態認識促進手段が作業者にそのことを認識させる。そのため、自動ロック機構のような高価な構成を採用しなくても、スイング部材のロックし忘れを未然に防止することができる。
【0011】
前記非ロック状態認識促進手段は、前記スイング部材が前記閉位置にあると前記スイング部材を前記開位置側に向かって付勢する付勢部材を有していてもよい。
【0012】
このことにより、スイング部材をロック機構でロックしていなければ、スイング部材は付勢部材によって開位置側に付勢されるので、閉位置に留まることができない。そのため、作業者は、スイング部材が閉位置にないことを視覚によって容易に認識することができる。したがって、付勢部材という比較的安価な構成により、スイング部材のロックし忘れを防止することができる。
【0013】
前記付勢部材は弾性体を有していてもよい。また、前記付勢部材は磁石を有していてもよい。
【0014】
このことにより、安価な構成により、スイング部材のロックし忘れを防止することができる。
【0015】
前記スイング部材は、ピボット軸に揺動自在に支持された根元部と、先端部とを有するスイングアームであり、前記付勢部材は、前記スイング部材の先端部を付勢するものであってもよい。
【0016】
このことにより、付勢部材はスイング部材の先端部を付勢すればよいので、付勢部材に必要とされる付勢力を比較的小さく抑えることができる。そのため、付勢部材の低コスト化を図ることができる。
【0017】
前記スイング部材は、ピボット軸に揺動自在に支持された根元部と、先端部とを有するスイングアームであり、前記付勢部材は、前記スイング部材の根元部を付勢するものであってもよい。
【0018】
スイングアームの揺動の際に、先端部は根元部よりも大きく移動する。しかし、上記事項によれば、付勢部材は根元部を付勢するものであるので、その付勢量を小さく抑えることができる。
【0019】
前記非ロック状態認識促進手段は、前記スイング部材が前記閉位置に保持されていないことを検出するロック状態検出手段と、前記スイング部材が前記閉位置に保持されていないことが前記ロック状態検出手段により検出されると、少なくとも前記駆動機構による前記公転を禁止する運転禁止手段と、を備えていてもよい。
【0020】
このことにより、スイング部材をロックしていなければ、ホルダの公転が行われない。そのため、作業者は、ホルダの公転が行われていないことに基づいて、スイング部材が閉位置にないことを容易に認識することができる。したがって、スイング部材のロックし忘れを防止することができる。また、スイング部材をロックしていなければホルダが公転しないので、ホルダの遠心力によってスイング部材が外側に向かって開いてしまうこともない。したがって、成膜不良の発生をより確実に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、作業者は、非ロック状態認識促進手段により、スイング部材が閉位置に保持されていないことを容易に認識することが可能となる。したがって、自動ロック機構のような高価な構成を採用しなくても、スイング部材のロックし忘れを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】真空槽の内部を示す正面図である。
【図2】真空槽の内部を示す側面図である。
【図3】スイングアームが開位置にあるときの真空槽の内部を示す側面図である。
【図4】真空槽の内部を示す平面図である。
【図5】スイングアームが開位置にあるときの真空槽の内部を示す平面図である。
【図6】(a)〜(c)はロック機構の側面図である。
【図7】(a)〜(c)は変形例に係るロック機構の側面図である。
【図8】実施形態1に係るスイングアームの先端部付近の平面図である。
【図9】実施形態2に係るスイングアームの先端部付近の平面図である。
【図10】実施形態3に係るスイングアームの根元部付近の平面図である。
【図11】実施形態4に係るスイングアームの根元部付近の平面図である。
【図12】実施形態5に係るスイングアームの先端部付近の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態1>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る真空成膜装置3の内部構成を示す正面図である。真空成膜装置3は、略有底円筒状の真空槽1を備えている。真空槽1は、真空槽本体2と扉4(図2参照)とを有している。扉4は、図示しないヒンジを介して、真空槽本体2に開閉自在に取り付けられている。真空槽1は、扉4を閉じることにより密閉される。真空槽1には排気ポンプ(図示せず)が接続されている。この排気ポンプにより、真空槽1内が真空状態とされる。また、真空槽1には、被処理物の表面に膜を形成するための成膜ユニット(図示せず)が内装されている。
【0025】
真空槽1には、電動機5が配置されている。真空槽1の底板16には、回転軸15が回転自在に支持されている。回転軸15は、動力伝達部材10を介して電動機5に連結されている。なお、動力伝達部材10の種類は何ら限定されず、例えば歯車、チェーン、伝動ベルト等を用いることができる。回転軸15は、電動機5に駆動されて回転する。
【0026】
回転軸15には、回転軸15の軸心15aを中心として放射状に延びる複数の回転アーム17が固定されている。回転アーム17の半径方向外側の端部には、ホルダ19が取り付けられている。ホルダ19は、回転アーム17に取り付けられた上下方向に延びる回転軸19aと、回転軸19aに取り付けられたホルダ本体19bとを有している。ホルダ本体19bは、被処理物を支持する部分である。なお、本実施形態では、回転軸19aとホルダ本体19bとは別体に形成されているが、それらは一体的に形成されていてもよい。
【0027】
回転軸19aの下端部には、遊星歯車20が取付けられている。また、環状の太陽歯車21が回転軸15と同心円状に設けられており、遊星歯車20は太陽歯車21に噛合している。そのため、回転軸15の回転により、ホルダ19が回転軸15の軸心15aを中心として公転する。これと同時に、回転軸15の回転により、太陽歯車21と遊星歯車20とを介してホルダ19が自転する。すなわち、ホルダ19が回転軸19aを中心として回転する。なお、各回転軸19aの上端部は、回転アーム17と略同様の回転アーム17に回転自在に取付けられている。
【0028】
このように、ホルダ19は、回転軸15の軸心15aを中心とした公転を行うと共に、回転軸19aの軸心を中心とした自転を行う。なお、本実施形態に係る真空成膜装置3では、少なくとも電動機5、動力伝達部材10、回転軸15、回転アーム17、遊星歯車20、および太陽歯車21により、ホルダ19を公転させる駆動機構Bが形成されている。
【0029】
図4に示すように、真空成膜装置3には、複数のホルダ19が配置されている。本実施形態では、5つのホルダ19が配置されている。ただし、ホルダ19の個数は何ら限定されない。これらホルダ19は、平面視において、回転軸15の軸心(以下、中心位置という)15aを取り囲むように周回状に配置されている。なお、中心位置15a(詳細には、回転軸15の上方)には、真空蒸着を行う場合の蒸着源等が設置される。
【0030】
図4に示すように、複数のホルダ19のうちの一つ(以下、他のホルダから区別するために、当該ホルダに符号19fを付すこととする。)は、スイングアーム90に支持されている。真空槽本体2には、支持部材92が設けられている。図示は省略するが、支持部材92は、他のホルダ19に対して相対移動しないように設けられている。すなわち、支持部材92は、ホルダ19fおよび他のホルダ19と共に公転はするが、揺動するスイングアーム90と比較すると、いわば固定的に設けられている。支持部材92にはピボット軸93が設けられている。スイングアーム90の根元部90aは、ピボット軸93に回転自在に支持されている。そのため、スイングアーム90は、支持部材92によってピボット軸93周りに揺動自在に支持されている。このスイングアーム90の揺動により、ホルダ19fは、他のホルダ19と共に中心位置15aを取り囲むような位置(図4に示す位置。以下、この位置を正規位置という。)と、中心位置15aを半径方向の外方に開放するように上記位置から退避した位置(図5に示す位置)との間で移動可能である。
【0031】
なお、図4に示すように、ホルダ19fが正規位置にあると、中心位置15aはホルダ19および19fによって取り囲まれる。そこで、以下では、図4に示すスイングアーム90の位置を「閉位置」と称することとする。一方、図5に示すように、ホルダ19fが退避位置にあると、中心位置15aはホルダ19fが外方へ退避した分、外方に開放される。そこで、以下では、図5に示すスイングアーム90の位置を「開位置」と称することとする。
【0032】
図4に示すように、真空槽本体2には、固定部材91が設けられている。図示は省略するが、固定部材91も支持部材92と同様、他のホルダ19に対して相対移動しないように設けられている。固定部材91も支持部材92と同様、スイングアーム90と異なり、いわば固定的に設けられている。図6(a)に示すように、スイングアーム90の先端部90bには、孔90cが形成されている。固定部材91にも孔91cが形成されている。これらの孔90cおよび孔91cは、スイングアーム90が閉位置に位置付けられたときに平面視にて一致するような位置に形成されている。
【0033】
スイングアーム90を固定部材91に固定する際(すなわち、スイングアーム90をロックする際)に、固定部材91とスイングアーム90の先端部90bとには、ロック機構94が設けられる。ロック機構94の構成は何ら限定されないが、本実施形態では、ロック機構94はプランジャ40によって構成されている。なお、プランジャ40をロックの際にスイングアーム90に取り付けてもよいが、本実施形態では図6(a)に示すように、プランジャ40はスイングアーム90の孔90cに予め取り付けられている。
【0034】
図6(b)に示すように、プランジャ40をOFFした状態(すなわち、ピン42を埋没させた状態)でスイングアーム90を揺動させ、図6(c)に示すようにスイングアーム90の孔90cと固定部材91の孔91cとが一致した位置にてプランジャ40をONすると、プランジャ40のピン42が突出し、固定部材91の孔91cに差し込まれる。これにより、スイングアーム90が固定部材91に固定される。すなわち、スイングアーム90が閉位置にロックされる。
【0035】
なお、本実施形態では、図3に示すように、スイングアーム90はホルダ91fの上側および下側のそれぞれに設けられている。ロック機構94は、上側のスイングアーム90および下側のスイングアーム90のそれぞれに設けられている。ただし、ロック機構94は、上側のスイングアームのみに設けられていてもよく、或いは、下側のスイングアーム90のみに設けられていてもよい。
【0036】
図8に示すように、固定部材91には、付勢部材61が取り付けられている。付勢部材61は、固定部材91に固定された本体61aと、一端が本体61aに固定されたばね61cと、ばね61cの他端に設けられた接触部61bとを有している。接触部61bはスイングアーム90の先端部90bと接触するように配置されている。付勢部材61は、スイングアーム90の先端部90bを、中心位置15aから遠ざかる方向に付勢するものである。言い換えると、付勢部材61は、スイングアーム90を閉位置から開位置側に向かって付勢する部材である。
【0037】
スイングアーム90を閉位置に保持するためには、ばね61cの付勢力に対抗してスイングアーム90の先端部90bを閉位置側に押し込み、ロック機構94によってスイングアーム90を固定部材91に固定しなければならない。ロック機構94によってスイングアーム90を固定部材91に固定していない状態、言い換えれば非ロック状態では、スイングアーム90の先端部90bが付勢部材61によって押され、スイングアーム90が閉位置に留まることはない。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る真空成膜装置3によれば、作業者がスイングアーム90をロックし忘れた場合、スイングアーム90は閉位置に留まることができず、閉位置から開位置側に向かって開いてしまう。そのため、作業者は、スイングアーム90がロックされていないことを容易に把握することができる。すなわち、作業者は、スイングアーム90がロックされていないことを、視覚的に容易に把握することができる。したがって、スイングアーム90をロックし忘れたまま真空成膜装置3の運転を開始してしまうことを防止することができる。このように、本実施形態では、付勢部材61は、スイングアーム90がロック機構94によって閉位置にロックされていないことを作業者に認識させる非ロック状態認識促進手段として機能する。本実施形態によれば、付勢部材61という比較的安価な構成により、スイングアーム90のロックし忘れを防止することができる。したがって、真空成膜装置3の運転の際に、公転に伴ってホルダ19fが外方に移動し、真空槽1の内周面と接触するおそれはない。よって、成膜不良等の発生を未然に防止することができる。
【0039】
なお、ホルダ19fが正規位置にないこと(言い換えると、スイングアーム90が閉位置にないこと)は一見して把握することができるので、付勢部材61によるスイングアーム90の付勢量は特に限定される訳ではない。ただし、付勢部材61の付勢量は、扉4を閉じたときに扉4の内周面がホルダ19fと接触する程度に、スイングアーム90を外方に移動させる量であってもよい。これにより、スイングアーム90をロックしていなければ、扉4を閉じる際に、ホルダ19fは扉4と干渉することになる。そのため、スイングアーム90をロックしていなければ、扉4を閉じることができなくなる。よって、スイングアーム90のロックし忘れを、より確実に防止することが可能となる。
【0040】
<ロック機構の変形例>
なお、ロック機構94は、上記実施形態のものに限定される訳ではなく、他に種々の形態が可能である。図6(a)〜(c)に示すように、上記実施形態に係るロック機構94は、スイングアーム90の先端部90bにプランジャ40を配置したものであった。しかし、図7(a)〜(c)に示すように、ロック機構94は、固定部材91にプランジャ50を配置したものであってもよい。図7(a)に示すように、プランジャ50は、固定部材91の孔91cに予め差し込まれている。図7(b)に示すように、プランジャ50をOFFした状態(すなわち、ピン52が埋没した状態)でスイングアーム90を揺動させ、図7(c)に示すようにスイングアーム90の孔90cと固定部材91の孔91cとが一致した位置にてプランジャ50をONすると、プランジャ50のピン52が突出し、スイングアーム90の孔90cに差し込まれる。これにより、スイングアーム90と固定部材91とがロックされる。
【0041】
なお、ロック機構94は、必ずしもスイングアーム90の先端部90bに設けられるものでなくてもよい。ロック機構94をスイングアーム90の他の部分、例えば根元部90aに設けることも勿論可能である。
【0042】
<実施形態2>
付勢部材61は、前記実施形態のものに限定されない。実施形態2は、実施形態1において、付勢部材61の構成を変更したものである。図9に示すように、本実施形態では、互いに反発し合うように配置された一対の磁石62a,62bによって付勢部材61が形成されている。一方の磁石62aはスイングアーム90の先端部90bに取り付けられ、他方の磁石62bは固定部材91に取り付けられている。
【0043】
磁石62aと磁石62bとは、同極が対向するように配置されている。すなわち、磁石62aと磁石62bとは、磁石62aのN極と磁石62bのN極とが対向するように配置されるか、あるいは、磁石62aのS極と磁石62bのS極とが対向するように配置される。なお、磁石62aおよび磁石62bの一方または両方は、永久磁石であってもよく、電磁石であってもよい。
【0044】
本実施形態においても、スイングアーム90をロックし忘れると、付勢部材61の付勢力(すなわち、磁石62aと磁石62bとの間の反発力)によって、スイングアーム90は閉位置から開位置側に向かって回動する。そのため、作業者はスイングアーム90が閉位置にないことを容易に視認することができ、スイングアーム90をロックし忘れていることを容易に認識することができる。したがって、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0045】
<実施形態3>
実施形態1および2は、付勢部材61がスイングアーム90の先端部90bを付勢するものであった。しかし、付勢部材61は、スイングアーム90を閉位置から開位置側に回動させるように付勢するものであれば足り、その設置位置は何ら限定されない。実施形態3は、実施形態1において、スイングアーム90の根元部90aを付勢するように付勢部材61を変更したものである。
【0046】
図10に示すように、本実施形態では、付勢部材61はねじりばね(トーションスプリング)63によって構成されている。ねじりばね63は支持部材92に固定されている。支持部材92には突部92aが形成されており、ねじりばね63の一片63aが突部92aに接触している。一方、ねじりばね63の他の一片63bは、スイングアーム90の根元部90aと接触可能となっている。スイングアーム90が閉位置にあると、スイングアーム90の根元部90aはねじりばね63の一片63bと接触し、一片63bから付勢力を受ける。すなわち、スイングアーム90は、ピボット軸93を中心として時計回り方向の力を受ける。これにより、スイングアーム90は開位置側に向かって回動する。
【0047】
本実施形態においても、スイングアーム90をロックし忘れると、付勢部材61の付勢力(すなわち、ねじりばね63の弾性力)によって、スイングアーム90は外方に向かって開かれる。その結果、作業者はホルダ19fが正規位置にないこと(言い換えると、スイングアーム90が閉位置にないこと)を容易に視認することができ、スイングアーム90をロックし忘れていることを容易に把握することができる。したがって、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0048】
<実施形態4>
図11に示すように、実施形態4は、実施形態3において、付勢部材61を変更したものである。本実施形態では、スイングアーム90の根元部90aに磁石64aが固定され、支持部材92に磁石64bが固定されている。磁石64aおよび磁石64bは、互いに反発し合うように配置されている。すなわち、磁石64aと磁石64bとは、同極が対向するように配置されている。なお、本実施形態においても、磁石64aおよび磁石64bの一方または両方は、永久磁石であってもよく、電磁石であってもよい。
【0049】
本実施形態においても、スイングアーム90をロックし忘れると、付勢部材61の付勢力(すなわち、磁石64aと磁石64bとの間の反発力)によって、スイングアーム90は開位置側に向かって回動する。そのため、作業者はホルダ19fが正規位置にないことを容易に視認することができ、スイングアーム90をロックし忘れていることを容易に認識することができる。したがって、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0050】
<実施形態5>
前記実施形態は、ホルダ19fを正規位置から外れた位置に移動させるようにスイングアーム90を付勢することによって、スイングアーム90のロックし忘れを作業者に認識させるものであった。しかし、スイングアーム90のロックし忘れを作業者に認識させる手段は、ホルダ19fを正規位置から外れた位置に移動させるものに限定されない。本実施形態は、スイングアーム90がロックされていないとホルダ19fの公転を禁止することにより、スイングアーム90のロックし忘れを作業者に認識させるものである。
【0051】
図12に示すように、実施形態5に係る真空成膜装置3は、スイングアーム90が固定部材91にロックされたことを検出するセンサ65を備えている。本実施形態では、センサ65は固定部材91に設けられている。ただし、センサ65の設置位置は、特に限定されない。センサ65は、スイングアーム90に設けられていてもよい。また、センサ65は、支持部材92に設けられていてもよい。センサ65は、スイングアーム90の根元部90aと接触することにより、前記ロック状態を間接的に検出するものであってもよい。また、本実施形態のセンサ65はいわゆる接触式のセンサであるが、非接触式のセンサ(例えば、磁気センサ、光学センサ等)を用いることも可能である。
【0052】
本実施形態に係るセンサ65は、スイングアーム90の先端部90bと接触することにより、ロック機構94によるスイングアーム90の先端部90bと固定部材91との間のロック状態を間接的に検出する。すなわち、センサ65は、スイングアーム90が閉位置に移動したときに、スイングアーム90の先端部90bと接触する位置に配置されている。センサ65がスイングアーム90の先端部90bに接触していなければ、スイングアーム90は閉位置にないため、スイングアーム90がロックされていないと推定される。
【0053】
図12に示すように、本実施形態に係る真空成膜装置3は、少なくとも電動機5を制御する制御装置70を備えている。制御装置70は、センサ65からの信号を受けて電動機5の運転を禁止する運転禁止部71を有している。運転禁止部71は、スイングアーム90がロックされていることが検出されると(すなわち、スイングアーム90の先端部90bがセンサ65に接触していることが検出されると)、電動機5の運転を許可する。一方、運転禁止部71は、スイングアーム90がロックされていないことが検出されると(すなわち、スイングアーム90の先端部90bがセンサ65に接触していないことが検出されると)、電動機5の運転を禁止する。これにより、ホルダ19fの公転が禁止されることになる。
【0054】
ホルダ19fが公転していない状態は、作業者にとって一目瞭然である。そのため、作業者は、ホルダ19fが公転していない状態を認識することによって、スイングアーム90がロックされていないことを容易に把握することができる。本実施形態では、スイングアーム90がロックされていないことを作業者に認識させる非ロック状態認識促進手段は、センサ65および運転禁止部71により構成されている。
【0055】
本実施形態においても、スイングアーム90をロックし忘れたとしても、作業者はそのことを容易に認識することができる。したがって、実施形態1と同様、成膜不良等の発生を未然に防止することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、スイングアーム90がロックされているか否かを直接検出する訳ではないので、何らかの偶然によりスイングアーム90が閉位置に留まっている場合には、ホルダ19fの公転が可能となる。しかし、ホルダ19fが公転し始めると、ホルダ19fは遠心力を受けて正規位置からずれた位置に移動するので、スイングアーム90は閉位置から開位置側に回動する。そのため、結果的に電動機5の運転が禁止される。つまり、電動機5の運転が中止される。したがって、作業者はスイングアーム90のロックし忘れを迅速に認識することができる。
【0057】
ただし、スイングアーム90のロック状態を直接検出するセンサを設けてもよいことは勿論である。例えば、図6に示すようなプランジャ40のON状態(すなわち、ピン42が突出して固定部材91の孔91cに係合している状態)、または、図7に示すようなプランジャ50のON状態(すなわち、ピン52が突出してスイングアーム90の孔90cに係合している状態)を検知するセンサを設けてもよい。このように上記ロック状態を直接検出するセンサを設けることにより、スイングアーム90のロックし忘れを電動機5の運転開始前に認識することができる。
【0058】
また、本実施形態5と実施形態1〜4のいずれか一つとを適宜組み合わせてもよい。言い換えると、本実施形態5において、スイングアーム90を閉位置から開位置側に付勢する付勢部材61を設けるようにしてもよい。この場合、ロックしなければスイングアーム90が閉位置に留まることはない。したがって、スイングアーム90のロック状態を間接的に検出するセンサ65を用いたとしても、スイングアーム90のロックし忘れを電動機5の運転開始前に認識することが可能となる。
【0059】
なお、真空成膜装置3は、センサ65の検出結果に基づいて前記ロックの実施の有無を報知するロック報知装置(図示せず)を別途備えていてもよい。このようなロック報知装置を設けることにより、作業者は、前記ロックの実施の有無をより確実に認識することができる。なお、前記ロック報知装置は、音声出力によって報知するものでもよく、表示によって報知するものでもよい。
【0060】
なお、スイング部材は閉位置と開位置との間で揺動自在な部材であればよく、その形状はアーム状に限られない。すなわち、スイング部材はスイングアーム90に限定される訳ではない。
【符号の説明】
【0061】
1 真空槽
2 真空槽本体
3 真空成膜装置
4 扉
5 電動機
19,19f ホルダ
61 付勢部材(非ロック状態認識促進手段)
61c ばね(弾性体)
62a,62b 磁石
65 センサ(ロック状態検出手段)
71 運転禁止部(運転禁止手段)
90 スイングアーム(スイング部材)
90a スイングアームの先端部
90b スイングアームの根元部
93 ピボット軸
94 ロック機構
B 駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空槽本体と前記真空槽本体に開閉自在に設けられた扉とを有し、その内部において被処理物に対する成膜処理が行われる真空槽と、
所定の中心位置を取り囲むように周回状に配置され、それぞれ前記被処理物を支持する複数のホルダと、
前記ホルダを少なくとも前記中心位置を中心として公転させる駆動機構と、
前記複数のホルダのうち少なくとも一つのホルダを支持し、当該ホルダを他のホルダと共に前記周回状に配置する閉位置と、当該ホルダを前記閉位置よりも前記中心位置の外方に移動させた開位置との間で、揺動自在なスイング部材と、
前記スイング部材を前記閉位置に保持するロック機構と、
前記スイング部材が前記閉位置に保持されていないことを作業者に認識させる非ロック状態認識促進手段と、
を備えた真空成膜装置。
【請求項2】
前記非ロック状態認識促進手段は、前記スイング部材が前記閉位置にあると前記スイング部材を前記開位置側に向かって付勢する付勢部材を有している、請求項1に記載の真空成膜装置。
【請求項3】
前記付勢部材は弾性体を有している、請求項2に記載の真空成膜装置。
【請求項4】
前記付勢部材は磁石を有している、請求項2に記載の真空成膜装置。
【請求項5】
前記スイング部材は、ピボット軸に揺動自在に支持された根元部と、先端部とを有するスイングアームであり、
前記付勢部材は、前記スイング部材の先端部を付勢する、請求項2〜4のいずれか一つに記載の真空成膜装置。
【請求項6】
前記スイング部材は、ピボット軸に揺動自在に支持された根元部と、先端部とを有するスイングアームであり、
前記付勢部材は、前記スイング部材の根元部を付勢する、請求項2〜4のいずれか一つに記載の真空成膜装置。
【請求項7】
前記非ロック状態認識促進手段は、前記スイング部材が前記閉位置に保持されていないことを検出するロック状態検出手段と、前記スイング部材が前記閉位置に保持されていないことが前記ロック状態検出手段により検出されると、少なくとも前記駆動機構による前記公転を禁止する運転禁止手段と、を備えている、請求項1〜6のいずれか一つに記載の真空成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−235971(P2010−235971A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82361(P2009−82361)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】