説明

真空成膜装置

【課題】成膜条件が異なる場合であっても多数の基材に対して一度に且つ均一に成膜を行うことにより生産性を向上させる。
【解決手段】本発明のAIP装置101は、真空チャンバ内を真空排気する真空排気手段と、成膜対象である基材を自転状態で保持する4つの自転保持部4と、自転保持部4をその自転軸と軸心平行な公転軸Q回りに公転させる公転テーブル5と、アーク蒸発源6と、4つのバイアス電源10B1〜10B4を備えた電源ユニット10Bとを備え、自転保持部4の各々はスリップリング151を介して異なるバイアス電源に接続され、バイアス電位の差により異なる成膜条件を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空状態で多数の基材に電圧を印加することにより基材の表面に薄膜を形成する真空成膜方法(イオンプレーティング(AIP法を含む)、スパッタリング法、プラズマCVD法、これらの組合せを含む)を実現する真空成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1980年代以降、切削工具の寿命向上を目的として、AIP(Arc Ion Plating)法やスパッタリング法などの真空成膜方法によって、TiNやTiAlNなどの硬質皮膜を基材に形成することが行なわれている。また、近年では、ピストンリングや自動車のエンジン部品などを代表とする金属の機械部品へ、表面の耐摩耗性や耐焼き付き性の向上を目的として、CrNやDLC(Diamond-Like-Carbon)などの耐摩耗性コーティングの量産を行なうことが盛んに行なわれている。
【0003】
このような真空成膜装置としては、一度に多量の基材(部品)を均一性高く処理することを目的として、基材を自公転するテーブル上に(必要に応じて冶具などを用いて)搭載し、基材にプラズマ発生や膜質調整を目的とした電圧を印加しながら皮膜を形成するものが公知である。
たとえば、特開2004−323883号公報(特許文献1)は、真空チャンバ内には、複数の基材を保持する遊星回転可能な基材ホルダ(テーブル)と、前記基材ホルダに対向する位置に配置されたスパッタ蒸発源と、前記基材ホルダに接続されて前記基材ホルダに負のパルス状のバイアス電圧を印加可能なバイアス電源とからなる物理的蒸着装置を開示する。特許文献1は、基材ホルダに対向する位置にアーク蒸発源を配置することが開示する。基材ホルダに印加されるバイアス電源は1台であり、遊星回転する各軸には同一電圧が印加されている。
【0004】
また、特開平6−340968号公報(特許文献2)は、AIP法の円筒状アーク蒸発源をチャンバ中心に置き、自公転テーブルに搭載した基材がこれを取り囲むように配置し、円筒状蒸発源から蒸発した蒸気を内側から外側に向けて成膜するように構成されているAIP装置を開示する。アーク蒸発源はアーク電源のマイナス極に接続されて、このAIP装置においては、円筒状の蒸発源の表面にアークスポットを生成して皮膜源材料を蒸発させる。アーク蒸発源は対となって動作する陽極が必要であるが、自公転テーブルに搭載した基材が蒸発源を取り囲んでいるので、このAIP装置においては、有効に動作する陽極として蒸発源の周辺に複数の棒状の陽極、または、円筒状蒸発源の両端部付近にリング状の陽極を配置している。
【0005】
さらに、特開2007−308758号公報(特許文献3)は、成膜対象となる基材を配置する真空チャンバ内にプラズマを発生するプラズマ発生手段と、プラズマ発生手段によって発生させたプラズマを基材の周辺の閉込め空間に閉じ込めるマルチカスプ磁界を形成するマルチカスプ磁界発生手段と、基材を保持すると共に閉込め空間の中心近傍を中心軸として回転する保持回転手段とを有する成膜装置を開示する。この成膜装置においては、基材を自公転するテーブル上に設置し、当該テーブルを介して電源からバイアス電圧を印加して、プラズマを基材の周囲に発生させて皮膜を形成する。マルチカスプ磁場発生手段は、発生したプラズマの閉じ込めを改良する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−323883号公報
【特許文献2】特開平6−340968号公報
【特許文献3】特開2007−308758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献に開示された技術では以下の問題がある。
特許文献1に開示された物理的蒸着装置では、自公転テーブル上の基材にはすべて同一の電圧を加えて成膜が行なわれる。このため、1回の処理では自公転テーブル上の基材は、原則的に同一条件で被覆される。処理される全ての基材に対して同一の膜質が求められる場合であって、かつ、全てのテーブル軸に同じ量の基材が搭載される場合には、このような操業で全く問題がない。しかしながら、近年では、多品種の小ロット生産のニーズが高まる中で、同一条件で被覆処理する数量が減少して、成膜装置内に基材をフルに搭載して成膜処理する機会が減り、生産性の低下を引き起こしている。
【0008】
また、特許文献2に開示されたAIP装置では、AIP法の円筒状アーク蒸発源をチャンバ中心に置き、自公転テーブルに搭載した基材がこれを取り囲むように配置されている。基材には全て同一のマイナスの電圧を印加して成膜処理が行なわれる。アーク蒸発源にはアーク電源のマイナス極が接続されて円筒状アーク蒸発源の表面にアークスポットが生成して皮膜原材料が蒸発する。アーク蒸発源には対となって動作する陽極が必要であるが、自公転テーブルに搭載した基材が円筒状アーク蒸発源を取り囲んでいるので、有効に動作する陽極として、(1)円筒状アーク蒸発源の周辺に複数の棒状の陽極、または、(2)円筒状アーク蒸発源の両端部付近にリング状の陽極、を配置している。(1)の陽極は、円筒状アーク蒸発源から蒸発した蒸気を捕捉し基材に向かうのを妨げ、成膜速度の低下すなわち生産性の低下を引き起こす。また、捕捉した蒸気は陽極に堆積し、いずれは剥がれ落ち皮膜欠陥の原因となるので、陽極の清掃を頻繁に行なう必要を生じるため、生産性の低下を引き起こす。(2)の陽極は(1)の陽極のように蒸気を捕捉することはないが、円筒状アーク蒸発源の長さが長い場合に、アーク放電のスポットを円筒状アーク蒸発源の中央部付近への制御が容易でなく実用的とはいえない。このため、実際の装置は(1)の構成となり、生産性の低下を引き起こしている。
【0009】
さらに、特許文献3に開示された成膜装置によりDLCなどの被膜をコーティングすると、コーティング膜は成膜対象の基材(基材ホルダも含む)以外のチャンバ内壁、プラズマ発生機構などに付着する。DLC膜は絶縁性の膜であるので、これによってプラズマの発生状態が変動し、長時間の安定的な操業が損なわれる。すなわち、この成膜装置では、チャンバに対して基材にバイアス電圧を印加してプラズマを発生している。皮膜は基材に成膜されると同時に、真空チャンバ内の各所にも堆積する。皮膜がDLCのような絶縁性の皮膜である場合は、成膜が進んで膜厚が大きくなれば、基材の表面に堆積した皮膜により基材表面の導電性は次第に失われる。ただ、成膜処理が終了すれば基材は導電性の表面を持つ新たなものと交換されるので、皮膜が堆積し続けて基材表面の導電性が完全に失われることはない。しかし、皮膜は成膜対象の基材以外の部分、たとえば真空チャンバ内壁にも付着する。真空チャンバの内壁は基材のように毎回交換されるものではないので、真空チャンバ側に堆積する絶縁皮膜は、成膜を何回も継続すればするほど厚く堆積する。そして、この堆積した皮膜の膜厚が増加するに連れて、チャンバ内壁の電気的な抵抗が増大し、内壁を一方の電極として発生するプラズマの生成が不安定になったり、操業条件が最適な条件からズレたりする可能性が生じる。このため、基材側に厚い皮膜を形成するための長時間の運転時に不安定な挙動が現れる。また1バッチの処理では影響が発生しない処理であっても操業を繰り返すにつれプラズマが不安定になる現象が発生するため、チャンバ内部の清掃等が頻繁に必要となっている。このため、生産性の低下を引き起こしている。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、成膜条件が異なる場合であっても多数の基材に対して一度に且つ均一に成膜を行うことにより生産性を向上させることのできる真空成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の真空成膜装置は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の真空成膜装置は、真空チャンバと、前記真空チャンバ内を真空排気する真空排気手段と、成膜対象である基材を自転する状態で保持する複数の自転保持部と、前記複数の自転保持部を前記自転保持部の回転軸と軸心平行な公転軸回りに公転させる公転機構とを備えていて、前記真空チャンバ内において前記自転保持部に保持された基材に皮膜を形成する。この真空成膜装置は、前記複数の自転保持部は複数の群に分けられ、群毎に異なる電位が供給されることを特徴とする。ここで異なる電位とは、印加する電圧が異なることや印加する電圧の波形(パルス化の有無、形状、周波数)が異なることを総称する。
【0012】
一つ目の本発明の側面では、好ましくは前記群毎にバイアス電源から異なる電位を供給されると良い。好ましくは、基板処理のためのプラズマ照射や、AIP蒸発源、スパッタ蒸発源やその他の蒸発源からの皮膜の蒸気を基材に供給可能であることが好ましい。
二つ目の本発明の側面では、好ましくは、前記真空成膜装置は、蒸発源をさらに備え、前記蒸発源が陰極になるように前記蒸発源へ電力を供給する蒸発源用電源と、前記基材へバイアス電圧を供給するバイアス電源とを備え、前記複数の自転保持部は、少なくとも2つの群に分けられ、前記各群は、蒸発源用電源の正極に接続される状態と、バイアス電源に接続される状態を、時間的に交互に繰り返えすと共に、少なくとも一つの群は前記蒸発源の陽極として作動する状態を維持するようにすると良い。一例としては、前記複数の自転保持部は、第1の群および第2の群に分けられ、前記複数の自転保持部は、前記第1の群へ前記蒸発源用電源の正極から電力が供給されるとともに前記第2の群へ前記バイアス電源から負のバイアス電圧が供給される第1の状態と、前記第1の群へ前記バイアス電源からバイアス電圧が供給されるとともに前記第2の群へ前記蒸発源用電源の正極から電力が供給される第2の状態とを、時間的に交互に繰り返されて、電力が供給されると良い。
【0013】
好ましくは、成膜プロセス中に基材に100nmの皮膜を形成するために必要な時間をt(sec)とするときに、前記第1の状態と前記第2の状態との切替周期T(sec)は、t>T>1msecを満足すると良い。
好ましくは、前記蒸発源用電源の正極に接続された群が一つだけの場合に、群の接続を切り替える前に、別の群を蒸発源用電源の正極に接続し、双方へ蒸発源用電源の正極から電力が供給される状態を備えると良い。
【0014】
好ましくは、前記バイアス電圧を時間的に変化させると良い。
三つ目の本発明の側面では、自転保持部に印加した電圧により前記真空チャンバ内に供給したガスにプラズマを発生させるものであって、自転保持部の各群は、負の電位となりグロー放電プラズマ生成に主体的な役割を果たす作用極として動作する状態と、その対極として動作する状態を、時間的に交互に繰り返すものであると良い。特に、前記真空チャンバ内に供給された原料ガスにプラズマを発生させるプラズマ発生電源を具備し、前記複数の自転保持部は、前記プラズマ発生電源の一方極に接続された第1の群と、前記プラズマ発生電源の他方極に接続される第2の群とのいずれかに分けられると良い。
好ましくは、前記公転機構は、前記公転軸回りに公転可能とされた公転テーブルを有しており、前記複数の自転保持部の各々は、前記公転テーブルの公転軸から等しい半径で且つ公転軸回りに等間隔となるように配備されていると良い。
【0015】
好ましくは、前記第1の群に属する自転保持部と第2の群に属する自転保持部とは、互いに同数とされており、前記公転軸回りに1つずつ交番に並んで配備されていると良い。
好ましくは、前記第1の群に属する自転保持部と第2の群に属する自転保持部とは、互いに同数とされており、前記公転軸回りに2つずつ交番に並んで配備されていると良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明の真空成膜装置を用いることで、多数の基材に対して一度に且つ均一に成膜を行うことにより生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る真空成膜装置(アーク蒸発源を搭載したAIP装置)の斜視図である。
【図2】自転保持部への基材の設置例を示した図である。
【図3】図1の真空成膜装置における回転駆動部近傍の断面の模式図である。
【図4】図1の真空成膜装置の電源接続例を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る真空成膜装置(円筒状アーク蒸発源を搭載したAIP装置)の電源接続例を示す図である。
【図6】図5の真空成膜装置における電源接続のタイミングチャートである。
【図7】本発明の第3実施形態に係る真空成膜装置(プラズマCVD装置)の斜視図である。
【図8】図7の真空成膜装置の電源接続例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る真空成膜装置の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。なお、以下の説明では、異なる実施形態であっても同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
<第1実施形態>
[全体構成]
図1は、本発明の真空成膜装置の一例であるAIP装置(アークイオンプレーティング装置)101の全体構成を示している。
【0019】
このAIP装置101は、真空チャンバ2と、真空チャンバ2内を真空排気する真空排気手段3と、成膜対象である基材Wを自転する状態で保持する複数の自転保持部4と、を有している。これら複数の自転保持部4は公転テーブル5に配備されており、このAIP装置101には複数の自転保持部4が設けられた公転テーブル5を自転保持部4の回転軸(自転軸P)と軸心平行な公転軸Q回りに公転させる公転機構8が設けられている。
【0020】
なお、本発明において「基材Wが自転する」とは、基材Wを貫通する軸P回りに基材Wが回転する(スピンする)ことをいう。また、「基材Wが公転する」とは、基材Wが自分自身から離れた軸Q回りに回転すること、言い換えれば基材Wが軸Qの周りを周回することをいう。
また、上述したAIP装置101は、真空チャンバ2内に後述する蒸発源6(ここではアーク蒸発源)と、自転保持部4に異なる電位のバイアス電圧を供給する電源ユニット10Aとを備えていて、自転保持部4に保持された基材WにAIP法を用いて皮膜を形成する構成となっている。
【0021】
上述したAIP装置101の構成をさらに詳しく説明する。
真空チャンバ2は、その内部が外部に対して気密可能とされた筺体である。真空チャンバ2の側方にはこの真空チャンバ2内にある気体を外部に排気してチャンバ内を低圧状態(真空状態)にする真空ポンプ3(真空排気手段)が設けられていて、この真空ポンプ3により真空チャンバ2内は真空状態まで減圧可能である。そして、この真空チャンバ2の内部には、複数の基材Wが後述する自転保持部4にそれぞれ保持された状態で収容されている。
【0022】
第1実施形態のAIP装置101で成膜される基材Wは、均一な成膜を可能とするため上下に長尺な円柱状空間内に配備するとよい。
たとえば、基材Wが図2(a)に示すようなピストンリングである場合は、図2(a)のように、積重ねて略円筒状になるように設置するのが良い。好ましくは、積み重ねても周方向の一部が欠落して完全な円筒にならない部分を、必要に応じてカバー11で開口部分に蓋をすることにより、均一な成膜が可能となる。
【0023】
また、成膜しようとする基材Wが図2(b)に示すような小型部材(たとえば小さなピストンピン)の場合は、円板12が上下方向に多段に積み重ねられた設置ジグ13を用意し、それぞれの円板12に基材Wを配備するとよい。そして、この設置ジグ13を、円柱状空間内に収まるようにすればよい。図2(b)に示すような基材搭載形態は、基材Wがドリルやエンドミルのような軸物の工具にも適用可能である。さらに好ましくは、1本1本の基材が搭載状態で各個別に回転するようにジグを構成することも可能である。
【0024】
さらに、基材Wが前記以外の形状物である場合であっても、適宜固定用のジグを製作し、ジグと基材が円柱状空間内に収まるようにすればよい。
自転保持部4は、たとえばその上面が水平となっている円形の載置台である。自転保持部4は、上下方向を向く回転軸回りに回転自在となっており、上面乃至は上方に配備された基材Wを回転軸回りに自転させつつ保持できるようになっている。自転保持部4へは給電可能な状態となっており、供給された電圧は基材Wにも印加される。
【0025】
図1に示すAIP装置101の場合、自転保持部4は全部で4つ配備されている。これら4つの自転保持部4は、平面視で一つの円の上に並ぶように公転テーブル5の上面に起立状態で配備されている。
公転テーブル5の中心軸(公転軸Q)は上下方向を向き、この軸回りに公転テーブル5は回転する。公転テーブル5の上面には上述したように複数(4つ)の自転保持部4が、公転テーブル5の公転軸Qから等しい距離(半径)となるように且つ公転軸Q回り(周方向)に等間隔を開けて配備されている。この公転テーブル5の下側には、公転テーブル5を公転軸Q回りに回転させる公転機構8が設けられている。
【0026】
公転機構8は、公転テーブル5の下面から公転軸Qに沿って下方に向かって伸びる軸部14と、この軸部14を駆動回転させる回転駆動部15とを有している。このように公転機構8を用いて公転軸Q回りに公転テーブル5を回転させれば、基材Wが保持された自転保持部4が公転軸Q回りに公転する。それと同時に、自転保持部4がその軸心回りに回転する構成とされている故、自転保持部4に保持された基材Wが自転するようになる。
【0027】
係る機構により、基材Wを真空チャンバ2内で各自転保持部4を自転させつつ全体を公転させながら(自公転させながら)成膜させることが可能となる。
なお、隣り合う基材は、回転位相を考慮したり隣接する基材のサイズの調整などで、自公転時に相互に機械干渉しないように適切に設置する。
ところで、本発明のAIP装置101においては、複数の自転保持部4のそれぞれへ異なる電位のバイアス電圧が供給される。このため、自転保持部4毎にバイアス電圧を変更することにより成膜条件を変更することができる。
【0028】
詳しくは、公転テーブル5に自転保持部4が全部で4つ配備されている状態においては、図1の「A」、「B」、「C」、「D」で示される各自転保持部4は、異なる電位のバイアス電圧を供給する電源ユニット10Aの一方の電極に接続されている。
なお、各自転保持部4へ異なる電位のバイアス電圧を供給するためには、自転軸Pにそれぞれブラシ機構を設け、このブラシ機構を通じてそれぞれの電圧を印加するとよい。自転軸Pはベアリング機構を介して回転時自在に保持されているが、このベアリング機構を通じて電圧を印加するようにしてもよい。
【0029】
以下、この回転機構および給電機構について説明する。
[回転機構および給電機構]
図3は、AIP装置101の回転駆動部15近傍の断面の模式図である。図3に示すように、このAIP装置101は、各自転保持部4に異なる電位を与えることが可能な構成となっている。「個別に異なる電位」というのは、自転保持部4毎に異なる電位を与えること、必要に応じて、自転保持部4をいくつかの群(たとえば2群、3群)に分けて、群別に電位を与えることを含む。上述したように、図1の「A」、「B」、「C」、「D」で示される自転保持部4を、異なる4つの電位のバイアス電圧を供給する電源ユニットに接続すると、自転保持部4毎に異なる電位を与えることになる。図1の「A」、「B」、「C」、「D」で示される自転保持部4を、「A」と「C」とで1つの第1群として、「B」と「D」とで1つの第2群として、第1群と第2群とで異なる電位のバイアス電圧を供給する電源ユニット10Aの一方の電極に接続すると、自転保持部4を2つの群に分けて、群別に電位を与えることになる。なお、公転テーブル5上の自転保持部4の数は、後述するように、6本や8本であっても構わないし、自転保持部4を3つ以上の群に分けても構わないし、4つの自転保持部4毎に異なるバイアス電位を印加するようにしても構わない。
【0030】
バイアス電源から供給される電位は、負の直流電圧であることが多いが、時間的に値を変化させたり、交流であったり、間欠的に正の電圧を含むパルス状の波形であったりしても良い。
このAIP装置101の公転テーブル5は、真空チャンバ2の底面側に取り付けられ、公転ベアリング155と回転軸シール156を介して真空チャンバ2に対して公転可能に、また、公転時であっても真空チャンバ2内の真空を保持可能に、取り付けられ、ドライブギヤ153(またはプーリー)などの機構により、Q軸を回転軸として公転する。なお、公転テーブル5は、軸部152(14)と一体的に形成されている。
【0031】
公転テーブル5には、複数(ここでは4つ)の自転保持部4をP軸を回転軸として自転可能に支持する自転軸164が自転自転ベアリング161を介して取り付けられ、自転軸164に取り付けられたギア160が、固定ギア154とかみ合い、公転テーブル5の公転により自転軸164が公転すると、固定ギア154とギア160とのかみ合いによって、自転軸164が自転する。自転軸164の自転により、自転保持部4がP軸を回転軸として自転する。なお、固定ギア154は図3では、自転軸164の内側(Q軸側)に設置したが、外側に設置しても構わない。
【0032】
加えて、自転軸164の上部には、絶縁物163を介して、基材Wを直接搭載するための自転テーブル162(図では円板状)が設けられている。自転テーブル162にはブラシ158を介してバイアス電圧が供給可能に構成されている。なお、公転テーブル5とブラシ158とは絶縁部材159により絶縁されている。自転テーブル162は、公転テーブル5を介した電気的接続はなく、各自転テーブル162毎に異なる電位のバイアス電圧を印加することが可能である。
【0033】
公転テーブル5の中央部には、電圧フィードスルー157があり、公転テーブル5の下方から供給されたバイアス電圧が、真空を維持し、かつ、電気的絶縁も維持して、公転テーブル5の上方に供給される。供給されたバイアス電圧は、配線によってブラシ158に接続され、ブラシ158から自転テーブル162へ、自転テーブル162から基材Wへの経路でバイアス電圧が基材Wへ印加される。
【0034】
各自転テーブル162へバイアス電圧を与えるブラシ158は、公転テーブル5上に設けられた自転保持部4の数だけ存在する。上述したように、各自転保持部4毎に、または、いくつかの群に分けてバイアス電圧を供給する。したがって、電圧フィードスルー157には、自転軸の数だけ、または群の数だけ電極が設けられる。電圧フィードスルー157には、電源ユニット10Aからスリップリング151を介して回転可能な状態でバイアス電圧が加えられる。
【0035】
なお、電源ユニット10Aの構成は様々な態様がある。本実施の形態においては、自転保持部4の数または群の数に相当するバイアス電源を設けて、各バイアス電源のそれぞれの一方の極が自転保持部4のそれぞれに接続される。たとえば、図4に示すように、電源ユニット10Bは、公転テーブル5に搭載された自転保持部4の数(4つ)に等しいバイアス電源10B1〜10B4を備える。バイアス電源10B1〜10B4の一方極を、4極のスリップリング151の固定側ブラシホルダー(A)〜(D)にそれぞれ接続する。
【0036】
これにより、バイアス電源10B1のバイアス電圧が図1および図4の「A」を付記した自転保持部4に搭載された基材Wに、バイアス電源10B2のバイアス電圧が「B」を付記した自転保持部4に搭載された基材Wに、バイアス電源10B1のバイアス電圧が「C」を付記した自転保持部4に搭載された基材Wに、バイアス電源10B1のバイアス電圧が「D」を付記した自転保持部4に搭載された基材Wに、それぞれ印加される。ここで、電源ユニット10Bは、公転テーブル5に搭載された自転保持部4の数または自転保持部4を2以上の群に分けた場合には群の数に等しいバイアス電源を備えるものに限定されない。1台のバイアス電源であっても複数の電位の電力を自転保持部4の基材Wに供給できれば、1台でも構わない。
【0037】
なお、図4には、皮膜供給源としてのアーク蒸発源6を記載している。さらに、ヒータによる加熱や、プロセスガス導入を可能とする構成も好ましい。また、皮膜供給源としては、アーク蒸発源6に替えてスパッタ蒸発源やるつぼ型蒸発源を使用しても良い。また、自転公転の機構は、回転軸が鉛直方向に向いているとしたが、回転軸の方向に限定はなく、例えば回転軸が水平方向であっても良い。
【0038】
[成膜処理]
このAIP装置101では、各自転保持部4に対して、個別に異なる電位のバイアス電圧を与えることできる。このため、成膜プロセスにおいて、自転保持部4によって異なるバイアス電位を印加して処理を行なうことができる。成膜プロセスにおいて、異なったバイアス電圧を印加可能であるので、バイアス電圧が異なる自転保持部4毎で異なる膜質を形成することができる。たとえば、AIP法によるTiN、TiAlNなどの硬質皮膜形成において、自転保持部4単位で、高い負のバイアス電圧(一例として、−150V〜−300V)と低い負のバイアス電圧(一例として、−10V〜−100V)とに分けて印加することによって、異なる応力レベルを有する皮膜を、1回の処理で、形成することが可能になる。
【0039】
また、成膜プロセスにおいて、異なったバイアス電圧を印加可能であるので、自転保持部4毎で異なる入熱条件を得ることができる。たとえば、AIP法によるTiN、TiAlNなどの硬質皮膜形成において、自転保持部4単位で、相対的に熱容量の大きな基材Wを搭載した自転保持部4には高い負のバイアス電圧、相対的に熱容量の小さい基材Wを搭載した自転保持部4には低い負のバイアス電圧を印加することによって、熱容量の異なる基材Wを混在して搭載するにも関わらず、均一な温度の処理が、同一の1回の処理で、可能になる。
【0040】
さらに、成膜に先立って行なうイオンボンバード処理(アーク蒸発源から金属イオンを照射しながら負の高電圧を加えて表面を清浄化する処理)において、自転保持部4毎で異なるバイアス電圧を印加可能であるので、バイアス電圧が異なる自転保持部4毎で異なるボンバード時の入熱条件を得ることができる。たとえば、AIP法によるTiN、TiAlNなどの硬質皮膜形成において、温度の上昇しにくい基材Wを搭載した自転保持部4へは高い負のバイアス電圧を印加し、温度上昇により基材の軟化が発生し易い小径のハイスドリルを搭載した自転保持部4には低い負のバイアス電圧を印加することによって、過熱しやすい基材の過熱を防ぎつつ、径の太い工具には十分なボンバード効果がある処理が、同一の1回の処理で、可能になる。
【0041】
以上のように、いずれの場合であっても、従来技術の装置では、処理を複数回に分けて行なう必要があったが、本実施形態に係るAIP装置101では、同一の1回の処理で、可能になる。
[真空成膜方法]
以上のような構成を備えたAIP装置101を用いた、成膜処理を含む全体のプロセスは、以下のようになる。なお、上述したようにこのAIP装置101は、皮膜供給源としてのアーク蒸発源6を備える。
【0042】
(1)基材Wセット〜真空排気
まず、図1および図4に示す如く、真空チャンバ2内に配置した公転テーブル5上に自転保持部4が公転軸Qを中心として90°ごとに4軸配備されたAIP装置101を用いて、AIP法により皮膜を実際に成膜する場合を考える。
まず、基材Wを自転保持部4に設置する。基材Wは自転保持部4の上に載置して固定してもよいし、設置ジグ13を用いて基材Wを自転保持部4の上に載置してもよい。
【0043】
このようにして基材Wが用意されたら、真空ポンプ3(真空排気手段3)を用いて真空チャンバ2内を高真空状態まで排気する。
(2)加熱(オプショナルな工程)
必要に応じて、真空チャンバ2内の輻射加熱機構(ヒータ)により、基材Wの予備加熱を行なう。このとき、軸Qを回転軸として公転させるとともに、軸Pを回転軸として自転させる。
【0044】
(3)イオンボンバード処理
このAIP装置101が搭載している皮膜供給源がアーク蒸発源6であるので、アーク蒸発源6でアーク放電を発生させ、基材Wに数百V〜1500Vの負のバイアス電圧を加えて表面清浄化の処理を行なう。このとき、軸Qを回転軸として公転させるとともに、軸Pを回転軸として自転させる。
【0045】
このイオンボンバード処理において、このAIP装置101では、自転保持部4毎に異なる電位のバイアス電圧を印加可能であり、清浄化の程度や温度上昇の程度を自転保持部4毎に調整可能である。このため、イオンボンバード処理について異なる処理条件が要求される基材Wを混載した場合にも、それぞれに適した条件でこの処理が可能となる。
(4)成膜
アーク蒸発源6でアーク放電を発生させ、反応ガス(窒素等)を導入しつつ、基材Wに数十Vから300Vの範囲の負のバイアス電圧を加えながら皮膜形成を行う。このとき、軸Qを回転軸として公転させるとともに、軸Pを回転軸として自転させる。
【0046】
この成膜処理において、このAIP装置101では、自転保持部4毎に異なる電位のバイアス電圧を印加可能であり、バイアス電圧の印加条件を変更することにより、基材Wに形成される膜質や、基材Wの温度を自転保持部4毎に調整可能である。このため、異なる処理条件が要求される基材を混載した場合にも、それぞれに適した条件で処理が可能となる。また、処理条件を探索する工程にあっては、1回の処理で、多様な条件の皮膜が形成可能であるので、条件の探索するために必要な時間を短縮することができる。
【0047】
[効果]
以上のように、本実施形態に係るAIP装置101によると、自転保持部4毎または2以上の群に自転保持部4を分けて群毎に印加するバイアス電圧を異ならせることができる。このため、異なる応力レベルを有する皮膜を、同一の1回の処理で、形成することが可能になる。また、熱容量の異なる基材Wを混在して処理するにも関わらず、均一な温度の処理が、同一の1回の処理で、可能になる。また、過熱しやすい基材Wの過熱を防ぎつつ、温度上昇しにくい基材Wには十分なボンバード効果がある処理が、同一の1回の処理で、可能になる。従来技術の装置では、処理を複数回に分けて行なう必要があったことに比較して大幅に効率が向上する。
【0048】
<第2実施形態>
以下、本発明の真空成膜装置の一例であるAIP装置102について説明する。なお、図2および図3を用いた説明は、第1実施形態と同じであるため、ここでは繰り返さない。また、AIP装置102の全体構成は、自転保持部4の数を除き図1と同じである。
[全体構成]
図5は、第1実施形態の図4に対応する、AIP装置102の電源接続例である。このAIP装置102は、円筒状アーク蒸発源61を備える。また、公転テーブル5上に8つの自転保持部4が搭載され、8つの自転保持部4は、A群とB群とに分けられている。この円筒状アーク蒸発源61を、8つの自転保持部4が取り囲むように真空チャンバ2の中心に設けている。
【0049】
なお、真空チャンバ2内部は真空排気手段(真空ポンプ)3により真空に排気可能で、真空チャンバ2の中央部には円筒状アーク蒸発源61が設けられている。また、成膜を実施するプロセスによっては、ヒータによる加熱、プロセスガス導入(図示なし)も可能になっている。
このAIP装置102においては、電源ユニット10Cにより基材Wに給電される。電源ユニット10Cは、アーク電源10C1と、バイアス電源10C2と、切替スイッチ10C3とで構成される。図5(b)に示す「A」は、図5(a)に示す「A」が付された4つの自転保持部4を示し、図5(b)に示す「B」は、図5(a)に示す「B」が付された4つの自転保持部4を示す。
【0050】
このAIP装置102では、自転保持部4のA群およびB群は、切替スイッチ10C3により、アーク電源10C1の正極またはバイアス電源10C2の負極に接続される。この電源ユニット10Cおよび切替スイッチ10C3について説明する。
切替スイッチ10C3を作動させて、2つの群を、
a)アーク蒸発源6の陽極として作動する電位とするためにアーク電源10C1の正極に接続される期間、
b)基材Wに入射するイオンのエネルギーを制御するためのバイアス電圧10C2の電位とするためにバイアス電源の負極に接続される期間
、を時間的に交互に繰り返す。
【0051】
[成膜処理]
以上のような構成を備えたAIP装置102を用いた成膜方法の全体のプロセスの中で第1実施形態と異なる成膜処理について、図6を参照して説明する。図6は、成膜処理における切替スイッチ10C3の動作を示すタイミングチャートである。
時刻t(0)において、切替スイッチ10C3は、スイッチA(1)を接続するとともにスイッチB(2)を接続する。このとき、スイッチB(1)およびスイッチA(2)は遮断されている。時刻t(0)〜時刻t(1)の期間を第1の状態とする。一般的には、N=1、2、3、・・・として、時刻t(4N−4)〜時刻t(4N−3)の期間が第1の状態である。
【0052】
第1の状態では、A群の基材Wは、アーク電源10C1の正極に接続される。円筒状アーク蒸発源61でアーク放電を発生させると、A群の基材Wは、アーク放電の陽極として機能する。B群の基材Wは、バイアス電源10C2の負極に接続される。B群の基材Wには、バイアス電圧が印加される。このとき、基材Wは自公転されて、A群の基材WおよびB群の基材Wともに円筒状アーク蒸発源61からの蒸気により被覆される。このとき、A群の基材Wにはバイアス印加のない皮膜が形成され、B群の基材Wにはバイアスが印加された状態で皮膜が形成される。
【0053】
時刻t(1)において、切替スイッチ10C3は、スイッチB(2)を遮断して、スイッチB(1)を接続する。これにより、B群の基材Wがアーク電源10C1の正極に接続される。その後、時刻t(2)において、切替スイッチ10C3は、スイッチA(1)を遮断して、スイッチA(2)を接続する。
このとき、アーク放電の安定性の観点から、スイッチA(1)およびスイッチB(1)の両方が接続されている期間(時刻t(1)〜時刻t(2)の期間)はわずかに重なるとよい。
【0054】
時刻t(2)〜時刻t(3)の期間を第2の状態とする。一般的には、N=1、2、3、・・・として、時刻t(4N−2)〜時刻t(4N−1)の期間が第2の状態である。
第2の状態では、B群の基材Wは、アーク電源10C1の正極に接続される。円筒状アーク蒸発源61でアーク放電を発生させると、B群の基材Wは、アーク放電の陽極として機能する。A群の基材Wは、バイアス電源10C2の負極に接続される。A群の基材Wには、バイアス電圧が印加される。このとき、基材Wは自公転されて、A群の基材WおよびB群の基材Wともに円筒状アーク蒸発源61からの蒸気により被覆される。このとき、B群の基材Wにはバイアス印加のない皮膜が形成され、A群の基材Wにはバイアスが印加された状態で皮膜が形成される。
【0055】
時刻t(3)において、切替スイッチ10C3は、スイッチA(2)を遮断して、スイッチA(1)を接続する。これにより、A群の基材Wがアーク電源10C1の正極に接続される。その後、時刻t(4)において、切替スイッチ10C3は、スイッチB(1)を遮断して、スイッチB(2)を接続する。アーク放電の安定性の観点から、スイッチA(1)およびスイッチB(1)の両方が接続されている期間(時刻t(3)〜時刻t(4)の期間)はわずかに重なるとよいのは、上述した通りである。
【0056】
このように、公転テーブル5上のA群の基材WおよびB群の基材Wのうち少なくともひとつは、アーク放電の陽極として動作可能な電位になっている。その基材Wを陽極の電極とするため、アーク放電は、特別な陽極が無くても安定的に維持可能である。そして、その期間、バイアス電圧の電位にある他の基材Wには、バイアス電圧が印加されて膜質が制御された状態で皮膜形成を行うことができる。
【0057】
ところで、陽極の電位にあった基材W上には、陽極として動作中にはバイアスの印加されない皮膜が形成されるが、所定の周期で、バイアスが印加された状態となり、その間はバイアスによる膜質の制御が可能となる。そして、印加するバイアス電圧の条件は、基材Wが陽極の電位で動く期間があることを考慮した水準に設定することにより、所期の膜質の皮膜形成が行われる。
【0058】
膜質と言う観点では、バイアス電圧が印加されない状態で100nmを越える成膜を行なうのは、当該層の脆弱さが全体の膜質に著しく影響すると考えられるために問題となる。好ましくは、陽極電位の間に継続的に皮膜が成長する厚みは10nm以下とすると膜質面の懸念は少なくなる。膜質という観点では、切替の時間は早いほど好ましいが、アーク電源から出力される大電流の切替の容易性という点からは、切替の周期は1kHzを超える周波数では問題があり、実際的な観点から100Hz以下とするのが好ましい。
【0059】
以上より、tを成膜プロセス中に基材に100nmの皮膜を形成するために必要な時間(sec)とするときに、切替周期T(sec)は、t>T>1msecを満足することが好ましい。
このような周期が繰り返し行われる。このようにすることにより、すなわち、上述した2つの時間区分を交互に繰り返すことにより、AIP法による皮膜形成をA群の基材WおよびB群の基材Wの両方に行うことが可能となる。
【0060】
なお、以上の説明はAIP法による皮膜形成を例に説明を行ったが、蒸発源としてスパッタ蒸発源を使うことも出来る。
[効果]
従来技術の装置では、自転保持部4は同一電位にあるため、膜質制御のためにバイアス電圧をかける場合には、円筒状アーク蒸発源61の周囲に配置した陽極が必須になる。このような陽極が存在すると、陽極に蒸気が付着することで、成膜速度が低下して生産性を損なうとともに、陽極に堆積した皮膜が剥がれて皮膜の欠陥等を引き起こす場合があった。このAIP装置102では、このような問題も発生しない。
【0061】
なお、各自転保持部4の電位は必ずしもアーク放電の陽極電位とバイアス電位との間で急激に変化する必要はなく、必要に応じて、上述したように、フローティング状態や接地状態を経由しても良い。
また、バイアス電圧を印加している期間中のバイアス電圧は必ずしも一定である必要はなく、特に、切替の周期が相対的に長い場合には、切替の周期よりも十分に早い周期で、パルス状に電圧を印加する等は好ましい。
【0062】
また、本実施形態においては、自転保持部4を2群に分けて説明したが、さらに多くの群に分けても構わない。このとき、少なくとも、ひとつの群(または1つの自転保持部4)は、いかなるタイミングでも、アーク放電の陽極として作用するようにする必要がある。
<第3実施形態>
以下、本発明の真空成膜装置の一例であるプラズマCVD装置103について説明する。なお、図2および図3を用いた説明は、第1実施形態と同じであるため、ここでは繰り返さない。また、図1を用いた説明は、第1実施形態のAIP装置101をプラズマCVD装置103と読み替えればよい部分についてはここでは繰り返さない。
【0063】
[全体構成]
図7は、第1実施形態の図1に対応する、プラズマCVD装置103の全体構成を示し、図8は、第1実施形態の図4および第2実施形態の図5に対応する、プラズマCVD装置103の電源接続例である。このプラズマCVD装置103は、公転テーブル5上に6つの自転保持部4が搭載され、6つの自転保持部4は、A群とB群とに分けられている。
【0064】
図8に示すように、上述したプラズマCVD装置103は、真空チャンバ2内に原料ガスを含むプロセスガスを供給するガス供給部9と、真空チャンバ2内に供給されたプロセスガスにプラズマを発生させるプラズマ発生電源10とを備えていて、自転保持部4に保持された基材WにプラズマCVD法を用いて皮膜を形成する構成となっている。
このガス供給部9は、CVD皮膜の形成に必要な原料ガスや、成膜をアシストするアシストガスを、ボンベ16から所定量だけ真空チャンバ2内に供給する構成とされている。
【0065】
プロセスガスとしては、具体的には、DLC(ダイヤモンドライクカーボン、非晶質カーボン膜)などのカーボン系のCVD皮膜を成膜する場合には、炭化水素(アセチレン、エチレン、メタン、エタン、ベンゼン、トルエンなど)を含む原料ガスに、不活性ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の不活性ガスをアシストガスとして加えたものが用いられる。また、シリコン化合物系のCVD皮膜(SiOx膜、SiOC膜、SiNx膜、SiCN膜)を成膜する場合には、シリコン系有機化合物(モノシラン、TMS、TEOS、HMDSOなど)やシランなどシリコン含む原料ガスに、酸素などの反応ガスを加え、さらにアルゴンなどの不活性ガスをアシストガスとして加えたものを用いることができる。なお、CVD皮膜としては、上述したもの以外にも、TiOx膜、AlOx膜、AlN膜などを成膜することができる。
【0066】
また、主たる原料ガスに少量の添加原料ガスを混合させることもある。たとえば、DLC皮膜の形成の際に、炭化水素を主たる原料ガスとして、シリコン系有機化合物ガスを少量添加することにより、DLC中にSiを含む皮膜を形成することができる。あるいは、DLC皮膜の形成の際に、炭化水素を主たる原料ガスとして、金属を含有する原料ガス(例として、TiPP(チタニウムイソプロポキサイド)やTDMAT(テトラジメチルアミノチタン))を少量添加することで、DLC中に金属(例ではチタン)を含む皮膜を形成することができる。
【0067】
なお、これらの原料ガス、反応ガスおよびアシストガスは、使用するガスの種類を適宜組みあわせて用いることができる。
また、図8の如く、真空チャンバ2内に別の皮膜供給源6(スパッタ源、アーク蒸発源など)を設けるようにしても良い。
一方、このプラズマCVD装置103に備えられたプラズマ発生電源10は、真空チャンバ2内に供給したプロセスガスにグロー放電を発生させて、プラズマを発生させるために用いるもので、交流の電力を供給する。このプラズマ発生電源10が供給する交流の電力としては、正弦波の波形に従って電流や電圧が正負に変化する交流だけでなく、パルス状の波形に従って正負に入れ替わる矩形波の交流を用いても良い。また、この交流には、連続した同一極性のパルス群が交互に現れるものや、正弦波の交流に矩形波を重畳したものを用いることもできる。なお、実際のプラズマ発生中の電圧波形は、プラズマ生成の影響によって歪む場合がある。また、プラズマが発生すると交流電圧のゼロレベルがシフトし、各電極の電位を接地電位に対して測定すると、マイナス側電極に印加電圧の80−95%が、プラス側電極に印加電圧の5−20%が加わるのが観察される。プラズマ発生時のマイナス側電極は、プラズマ中の正イオンを引き込むと共に、該正イオンの衝撃により電子を放出しプラズマに電子を供給し、グロー放電プラズマ生成に主体的な役割を果たす作用極となる。プラス側電極はプラズマ中の電子を引き込む状態にありグロー放電プラズマ生成の対極となる。
【0068】
プラズマ発生電源10から供給される交流は、その周波数が1kHz〜1MHzが好ましい。周波数が1kHz未満では皮膜のチャージアップが起り易く、1MHzを超える周波数の電力を自転公転する基材に伝達する機構が難しいからである。さらに電源の入手性等を考慮すると、10kHz〜400kHzの範囲とするのがなお好ましい。また、プラズマ発生電源10から供給される交流の電圧は、波高値でグロー放電の維持に必要な300〜3000Vが好ましい。さらに、プラズマ発生電源10から供給される交流の電力は、基材Wの表面積によって変動するが、単位面積あたりの電力で0.05〜5W/cm2程度の電力密度であるのが好ましい。
【0069】
このような周波数、電圧、電力(電力密度)の交流電流を真空チャンバ2内に配備された一対の電極間に作用させれば、グロー放電が電極間に発生し、発生したグロー放電で真空チャンバ2内に供給されたプロセスガスが分解されてプラズマが発生する。そして、プラズマにより分解されたこれらのガス成分が電極表面に堆積することで、CVD皮膜の成膜が行われる。つまり、一対の電極のいずれかに基材Wを用いれば、基材Wの表面にCVD皮膜を成膜することが可能となる。
【0070】
なお、真空チャンバ2内には、基材の温度を制御して膜質を調整する加熱ヒータ17が適宜配備されていても良い。
ところで、図8に示すように、本発明のプラズマCVD装置103においては、複数の自転保持部4の半数が、プラズマ発生電源10の一方極に接続された第1の群18とされている。併せて、複数の自転保持部4の残り半数が、プラズマ発生電源10の他方極に接続された第2の群19とされている。互いに異なる極性とされた第1の群18の自転保持部4に保持された基材Wと、第2の群19の自転保持部4に保持された基材Wとの間にプラズマが発生できる。
【0071】
詳しくは、公転テーブル5に自転保持部4が全部で6つ配備されている状態においては、図8の「A」で示される第1の群18の自転保持部4は全部で3つ、また図8の「B」で示される第2の群19の自転保持部4も全部で3つ存在していて、第1の群18に属する自転保持部4の数と第2の群19に属する自転保持部4の数とは同数となっている。
これらの自転保持部4については、第1の群18に属する自転保持部4の両隣に第2の群19の自転保持部4が設けられ、これらの第2の群19の自転保持部4のさらに隣に別の第1の群18に属するある自転保持部4が設けられている。つまり、第1の群18に属する自転保持部4と第2の群19に属する自転保持部4とは、公転テーブル5の公転軸Q回りに1つずつ交番に(交互に)並ぶように配備されている。
【0072】
そして、第1の群18に属する3つの自転保持部4はいずれも、プラズマ発生電源10の一方の電極に接続されている。また第2の群19に属する3つの自転保持部4はいずれもプラズマ発生電源10の他方の電極に接続されている。つまり、電圧印加中は、第1の群18に属する自転保持部4と、第2の群19に属する自転保持部4とは、常に逆の極性となっている。
【0073】
なお、各自転保持部4を上記した極性とするためには、公転軸Qならびに自転軸Pにそれぞれブラシ機構(図示略)を設け、このブラシ機構を通じてそれぞれの極性の電圧を印加するとよい。公転軸Qおよび自転軸Pはベアリング機構を介して回転時自在に保持されているが、このベアリング機構を通じて電圧を印加するようにしてもよい。
[成膜方法]
以上のような構成を備えたプラズマCVD装置103を用いた成膜方法の全体のプロセスの中で第1実施形態と異なる成膜処理について説明する。
【0074】
基材Wをセットして、真空チャンバ2内を高真空状態にする。次に、必要に応じて、Ar等の不活性ガスやH2やO2などのガスをガス供給部9を用いて真空チャンバ2内に供給し、プラズマ発生電源10から電力を供給して基材W間に表面清化のためのグロー放電を発生させても良い(イオンボンバード処理)。また、上述した加熱ヒータ17を用いて、自公転する基材Wに対して予備加熱を行っても良い。また、真空チャンバ2内に別の皮膜供給源6(スパッタ源、アーク蒸発源など)を設けた場合には、これらの皮膜供給源を利用して、プラズマCVDによる皮膜と基材の間に挿入する中間層を形成してもよい。
【0075】
この後、ガス供給部9を用いてプロセスガスを真空チャンバ2内に供給し、真空チャンバ2内は成膜に適した0.1〜1000Paの圧力に保持する。
成膜にあたっては、プラズマ発生電源10から交流の電力を供給して、第1の群18に属する自転保持部4の基材Wと第2の群19に属する自転保持部4の基材Wとの間にグロー放電を発生させ、基材W間に成膜に必要なプラズマを発生させる。
【0076】
成膜時の圧力は成膜しようとするCVD皮膜(プロセスガスや反応性ガス)の種類によって好適な値は異なるが、0.1Pa〜1000Pa程度の圧力が好ましい。上述したように0.1Pa〜1000Pa程度の圧力にすることで、安定したグロー放電を発生させることが可能となり、良好な成膜速度で成膜を行うことが可能となる。なお、気体中での反応に伴うパウダー生成を抑制する観点では成膜時の圧力はさらに100Pa以下の圧力が好ましい。
【0077】
また、プラズマ発生電源10から供給される交流の電圧は、グロー放電の維持に必要な300V〜3000Vの間(両極間の電圧の波高値)となる。さらに、プラズマ発生電源10から供給される交流の出力電力は、単位面積あたりの電力に換算すると0.05〜5W/cm2程度が好ましい。
このようにプラズマ発生電源10から供給される交流の電圧および電力を調整した上で、基材Wを自転保持部4ごと自公転させれば、周方向に隣り合う基材W(近接する基材W)の間に安定したグロー放電が発生し、基材Wの表面に膜厚が均一なCVD皮膜を形成することが可能となる。
【0078】
成膜処理が終わったら、プラズマ発生電源10の出力、プロセスガスの導入を停止し、成膜を終了する。基材W温度が高い場合には、必要に応じて温度低下を待ち、真空チャンバ2内を大気に開放し、基材Wを取外す。このようにすれば、表面にCVD皮膜が形成された基材Wを得ることが可能となる。
上述したように、互いが逆極性とされた第1の群18の自転保持部4と第2の群19の自転保持部4とを周方向に交番(交互)に配置すれば、周方向に隣り合う自転保持部4に保持される基材W間に必ず電位差が生じて、両者の間に確実にグロー放電が発生する。そして、プラズマ発生電源10の正負が入れ替われば、周方向に隣り合う自転保持部4の極性も入れ替わり、引き続き両者間にグロー放電が発生する。それ故、多数の基材Wに対して一度に且つ均一に成膜を行うことが可能となる。
【0079】
すなわち、第1の群18に属する自転保持部4の基材Wが作用極として働いてこの基材W側にCVD皮膜が成膜されているときには、第2の群19に属する自転保持部4の基材Wが対極(反対極)となる。そして、プラズマ発生電源10の正負が入れ替われば、第2の群19に属する自転保持部4の基材Wが作用極となり、第1の群18に属する自転保持部4の基材Wが対極となる。
【0080】
[効果]
以上のように、本実施形態に係るプラズマCVD装置103によると、基材Wは対極となっても、公転テーブル5や真空チャンバ2の筐体が対極になることはない。それ故、これらの部材はプラズマ生成のためのグロー放電発生用電極としては作用せず、仮に絶縁皮膜が長時間の運転で厚く堆積したとしても、プラズマの不安定化が発生せず、膜質や厚みにバラツキのないCVD皮膜を安定的に生産することも可能となる。また、これらの部材は放電発生電極として作用していないため、原料ガスを分解するプラズマに直接的にはさらされず、このため、従来技術に比べてこれらの部材には皮膜が堆積しにくい。このため、皮膜の厚い堆積が原因となるフレークの飛散も起りにくく、皮膜欠陥も発生しにくい。なお、金属含有のDLCに代表される皮膜は皮膜自身がやや導電性を示すが、この場合も真空チャンバ2の筐体等に皮膜が堆積しにくく、フレークの飛散が起こりにくく、皮膜欠陥が発生しにくいとの効果は残る。加えて、金属含有DLCのような一定の導電性の皮膜を基材に形成する場合であっても、プラズマが弱いチャンバ部には膜質の悪い絶縁性を帯びた皮膜が形成される場合があり、このような場合にはプラズマの不安定化防止の効果も現れる。
【0081】
なお、第3の実施形態に関しては、最も好適な実施形態を例として説明を行なったが、技術の本質的な要素は、自公転テーブル上に配置した基材Wを群に分割して、各郡が、グロー放電プラズマを生成するときにプラズマ生成に主体的に機能する負電位にある作用極として作用する期間と、その対極として作用する期間を時間的に交互に繰り返す点にある。このことによって、真空チャンバ等の部材をプラズマ生成に関与する役割から開放し、仮にそれらが絶縁膜で覆われたとしてもプラズマが不安定になるなどの悪影響を与えないようにするものである。
【0082】
このような視点からすると、第3の実施形態の範囲は、1台のプラズマ発生電源の両極に接続された、2群の自転保持部を有する上記の実施例に限定されるものではない。例えば、自転保持部を3群に分割し、負電位にありグロー放電プラズマ生成の作用極となる期間、その対極として作用する期間、プラズマ発生の電源回路から切り離されプラズマ生成に特に役割を果たさない期間を、役割の位相をずらしてそれぞれ時間的に繰り返すことも本発明の技術的範囲に含まれる。あるいは例えば、自転保持部を3群に分割し、各郡は負電位にありグロー放電プラズマ生成の作用極として動作する時間的割合を2/3、その対極として作用する時間的割合を1/3として、これを各群が位相をずらしてそれぞれ時間的に繰り返すことも本発明の実施の一形態となる。さらに例えば自転保持部を3群に分割し、ここに3相交流の電力を加えるのも本発明の実施の一形態となる。
【0083】
また、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、さらには、実施形態の組合せも可能で、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。また、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、たとえば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
【符号の説明】
【0084】
101 真空成膜装置(第1実施形態のAIP装置)
102 真空成膜装置(第2実施形態のAIP装置)
103 真空成膜装置(第3実施形態のプラズマCVD装置)
2 真空チャンバ
3 真空排気手段(真空ポンプ)
4 自転保持部
5 公転テーブル
6 皮膜供給源
8 公転機構
9 ガス供給部
10 プラズマ発生電源
10A 電源ユニット(第1実施形態)
10B 電源ユニット(第2実施形態)
10C 電源ユニット(第3実施形態)
11 カバー部材
12 円板
13 設置ジグ
14 軸部
15 回転駆動部
16 ボンベ
17 加熱ヒータ
18 第1の群
19 第2の群
P 自転軸
Q 公転軸
W 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバと、前記真空チャンバ内を真空排気する真空排気手段と、成膜対象である基材を自転する状態で保持する複数の自転保持部と、前記複数の自転保持部を前記自転保持部の回転軸と軸心平行な公転軸回りに公転させる公転機構とを備えており、前記真空チャンバ内において前記自転保持部に保持された基材に皮膜を形成する真空成膜装置であって、
前記複数の自転保持部は複数の群に分けられ、群毎に異なる電位が供給されることを特徴とする真空成膜装置。
【請求項2】
前記群毎に異なる電位の電力は、バイアス電源から供給されることを特徴とする請求項1に記載の真空成膜装置。
【請求項3】
前記真空成膜装置は、蒸発源をさらに備え、
前記蒸発源が陰極になるように前記蒸発源へ電力を供給する蒸発源用電源と、前記基材へバイアス電圧を供給するバイアス電源とを備え、
前記複数の自転保持部は、少なくとも2つの群に分けられ、
前記各群は、蒸発源用電源の正極に接続される状態と、バイアス電源に接続される状態を、時間的に交互に繰り返えすと共に、少なくとも一つの群は前記蒸発源の陽極として作動する状態を維持することを特徴とする請求項1に記載の真空成膜装置。
【請求項4】
前記蒸発源用電源の正極に接続された状態にある一つだけの群の接続を切り替える前に、別の群を蒸発源用電源の正極に接続し、双方へ蒸発源用電源の正極から電力が供給される状態を備えることを特徴とする請求項3に記載の真空成膜装置。
【請求項5】
前記真空成膜装置は、自転保持部に印加した電圧により前記真空チャンバ内に供給したガスにプラズマを発生させるものであって、自転保持部の各群は、負の電位となりグロー放電プラズマ生成に主体的な役割を果たす作用極として動作する状態と、その対極として動作する状態を、時間的に交互に繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の真空成膜装置。
【請求項6】
前記真空成膜装置は、前記真空チャンバ内に供給された原料ガスにプラズマを発生させるプラズマ発生電源を有し、前記複数の自転保持部は2群で構成され、前記プラズマ発生電源の一方極に接続された第1の群と、前記プラズマ発生電源の他方極に接続される第2の群とのいずれかに分けられることを特徴とする請求項5に記載の真空成膜装置。
【請求項7】
前記公転機構は、前記公転軸回りに公転可能とされた公転テーブルを有しており、
前記複数の自転保持部の各々は、前記公転テーブルの公転軸から等しい半径で且つ公転軸回りに等間隔となるように配備されていることを特徴とする請求項6に記載の真空成膜装置。
【請求項8】
前記第1の群に属する自転保持部と第2の群に属する自転保持部とは、互いに同数とされており、前記公転軸回りに1つずつ交番に並んで配備されていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の真空成膜装置。
【請求項9】
前記第1の群に属する自転保持部と第2の群に属する自転保持部とは、互いに同数とされており、前記公転軸回りに2つずつ交番に並んで配備されていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の真空成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−44047(P2013−44047A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184819(P2011−184819)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】