説明

真空断熱材

【課題】 製造時およびリサイクル時において環境負荷が極めて低く、取扱い性・作業性および生産効率に優れ、しかも長期にわたって良好な断熱性を維持する真空断熱材を提供すること。
【解決手段】 ポリエステル繊維を含有する芯材を収容した内包材が減圧状態で外包材に収容されてなることを特徴とする真空断熱材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫、自動販売機、保冷箱、保冷車等の断熱材として用いる真空断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫、自動販売機、保冷箱、保冷車等には、種々の構造・性能を有する断熱材が使用されている。近年においては、非常に優れた断熱性を有する真空断熱材が上記用途に多く使用されている。真空断熱材とは、一般的には、ガスバリア性の金属蒸着フィルム等からなる外包材に芯材を充填し、その内部を減圧して密封した構造を有するものである。このような真空断熱材の断熱性・生産性・取扱い性能は、上記芯材によって大きく左右されるが、現在汎用される芯材としては、連続気泡ポリウレタンフォーム(特許文献1)、平均繊維径が0.5〜8μm程度のガラス繊維集合体(特許文献2)およびガラス繊維集合体と他の熱可塑性樹脂繊維の複合体(特許文献3)が挙げられる。
【0003】
しかしながら、上記汎用の真空断熱材用芯材は次のような課題を有している。
連続気泡ポリウレタンフォームを用いた芯材は、作業性、取扱い性、軽量性等非常に優れているが、ガラス繊維等の繊維状材料に比較して、断熱性が劣る面がある。
【0004】
平均繊維径が0.5〜8μm程度のガラス繊維集合体を用いた芯材は、アウトガス(芯材から揮発するガス分)の発生もなく、断熱性に極めて優れた性質を有するが、ガラス繊維という材質自身の取扱い性・作業性に大きな難がある。取扱い性を改善すべく、ガラス繊維を重ね合わせたものにニードルパンチを施し、外包材に芯材を挿入する作業について改善したものも見られるが、材質そのものに由来する取扱い性、作業性の難点を解決し得るものではない。特に、当該芯材をリサイクルする時点における、作業環境性、取扱い性の問題点は以前残ったままである。例えば、リサイクルする時に外包材を開封すると、ガラス繊維集合体芯材が飛散し、取扱い性・作業性が問題となるだけでなく、環境負荷の面においても問題となる。
【0005】
ガラス繊維集合体と他の熱可塑性樹脂繊維との複合体を用いた芯材については、若干の取扱い性の向上は見られるものの満足すべきものではない。熱可塑性樹脂繊維と同様に、ロックウール、パルプ等の繊維質を複合したものも見られるが、ガラス繊維が使用されるため、ガラス繊維自体に由来する取扱い性・作業性および環境負荷の難点は依然、残ったままである。
【0006】
熱可塑性樹脂繊維等の有機繊維のみを芯材として用いた真空断熱材も考えられるが、有機繊維から生じるアウトガスの問題により具体化された例は見られない。特に、0.75dのポリエステル繊維集綿体を芯材として使用した例も見られるが(特許文献4)、わた状で使用すると、取扱い性が極めて悪く、現実的な商品としては考えられない。そこで、取り扱い性の向上を目的として集綿体をシート状にすることも考えられるが、上記のように極細の繊維を使用する場合、ニードルパンチ法は使用困難なので、ケミカルボンド法によりバインダーを用いると、アウトガスが発生し、経時変化が大きく、時間と共に断熱性が大きく低下する問題がある。
【0007】
また、上記いずれの真空断熱材も外包材に直接的に芯材を収容させ、外包材内部を減圧状態に保持しながら、外包材開口部をシールすることによって製造されるので、真空断熱材の生産効率が問題となっていた。すなわち、外包材に直接的に芯材を収容させると、外包材にキズが付き易いので、真空断熱材の歩留まりが低下した。また外包材に直接的に芯材を収容させると、最終的にシールされる外包材開口部に芯材が静電気等によって付着し易く、当該付着芯材を十分に除去することは困難なため、開口部のシールによって付着芯材由来の通気口が外包材内部と外部との間で形成されて、真空断熱材の歩留まりが低下した。そのような歩留まり低下の問題は、取扱いが困難なわた状の芯材を用いる場合に顕著であった。しかも、わた状の芯材を外包材に直接的に収容させる場合には、上記したように外包材のキズの観点から収容作業が制限されるので、均一な厚みになるように収容させることが困難であった。そのため断熱性が低下した。
【特許文献1】特開平6−213561号公報
【特許文献2】特開平8−28776号公報
【特許文献3】特開2003−155651号公報
【特許文献4】特開2002−188791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、製造時およびリサイクル時において環境負荷が極めて低く、取扱い性・作業性および生産効率に優れ、しかも長期にわたって良好な断熱性を維持する真空断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリエステル繊維を含有する芯材を収容した内包材が減圧状態で外包材に収容されてなることを特徴とする真空断熱材に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の真空断熱材は、芯材がポリエステル繊維から構成されているため、環境負荷が小さく、使用後のリサイクル性についても非常に優れる。しかも、本発明の真空断熱材は、冷蔵庫等に採用されている連続気泡ウレタンフォームを用いた真空断熱材を上回る断熱性を長期にわたって発揮し、またガラス繊維と比較して取扱い性および作業性に優れる。
さらに本発明の真空断熱材において芯材は内包材に収容された状態で外包材に収容されるため、外包材にキズが付きにくく、しかも外包材開口部への芯材付着が起こりにくい。よって、真空断熱材の歩留まりが向上し、生産効率が上昇する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の真空断熱材は芯材を収容した内包材が減圧状態で外包材に収容されてなる。
【0012】
本発明において芯材はポリエステル繊維を含有する繊維集合体からなっている。環境負荷、取扱い性・作業性、リサイクル性および断熱性の観点から芯材はポリエステル繊維のみからなる繊維集合体であることが好ましい。芯材がポリエステル繊維を含有せずに、ポリエチレン繊維等の他の有機繊維からなっていると、アウトガス発生による断熱性の経時的な低下が起こる。
【0013】
本発明においてポリエステル繊維とは、化学構造単位が主としてエステル結合で結合されてなる高分子からなる繊維を意味し、製造法は特に限定されるものではい。例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分との反応により得られるポリエステル繊維であってもよいし、または一分子中にヒドロキシル基とカルボキシル基とを有するヒドロキシカルボン酸成分同士の反応により得られるポリエステル繊維であってもよい。
【0014】
ポリエステル繊維の具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリプロピレンテレフタレート繊維、ポリアリレート繊維などが挙げられる。例えば、PET繊維は、テレフタル酸ジメチル(DMT)とエチレングリコール(EG)またはテレフタル酸(TPA)とEGとの反応等により得られ、PBT繊維はDMTとテトラメチレングリコール(TMG)またはTPAとTMGとの反応等により得られる。量産性及びコストを加味すれば、好ましくはポリエチレンテレフタレート繊維である。当然ながら、リサイクルPET繊維を使用しても何ら問題はない。
【0015】
ポリエステル繊維の繊維太さは本発明の目的を達成できる限り特に制限されるものはなく、例えば1〜6デニール、特に1〜3デニールであることが好ましい。上記繊維太さを有するポリエステル繊維の平均繊維径はそれぞれ9〜25μm、9〜17μmに相当する。平均繊維径は、10本の繊維に対し、繊維1本当たり2箇所の径をCCDカメラ画像により処理して測定し、計20箇所の径の平均値を求めて平均繊維径値として用いた。
【0016】
ポリエステル繊維は軟化点200〜260℃程度、強度0.3〜1.2GPa程度のものが、繊維製造の容易さの観点から好ましい。
【0017】
ポリエステルを繊維化する方法としては、溶融紡糸法、湿式紡糸法、乾式紡糸法等があるが、本発明において好ましくは溶融紡糸法である。溶融紡糸法とは、高分子の融液を細孔ノズルより空気中に吐出し、吐出された溶融糸条を細化させながら空気で冷却、固化し、その後一定の速度で引き取る方式である。本方法では、前記繊維太さを有するポリエステル繊維が容易に製造可能である。
【0018】
ポリエステル繊維を含有する繊維集合体の形態は特に制限されず、例えば、シート状またはわた状であってよい。シート状とすることによって、芯材の取扱い性および作業性がより向上し、また製造時およびリサイクル時における環境負荷をより低減でき、しかも真空断熱材の断熱性がより向上する。わた状とすることによって、本発明の目的をより有効に達成できる。従来では、わた状の繊維集合体を用いると、外包材キズや外包材開口部への芯材付着により外包材内部を減圧状態に維持できず真空断熱材の歩留まりが低下したり、芯材の不均一化により断熱性が低下し易いが、本発明においてはわた状芯材を用いる場合であっても、そのような問題を有効に防止できるためである。
【0019】
「シート状」とは平板形状を有しているという意味である。シート状繊維集合体はバインダー等の他の材料を使用されないで加工されることが好ましく、例えば、いわゆるニードルパンチ法等でシート状に加工するようにする。バインダーを用いるケミカルボンド法等は、アウトガス発生による断熱性の経時的な低下が起こり問題となる。なお、ニードルパンチ法とは、繊維の方向がある程度揃ったポリエステル繊維塊、すなわちポリエステル繊維ウェブに対し、フックの付いた多数の針を垂直に突き刺したり引き上げたりすることを繰返し、ウェブ中の繊維同士を互いに絡ませることによりシート状にする方法である。
【0020】
「わた状」とはいわゆる原綿のような状態を指し、繊維が不規則に絡み合って一体化されている形態を意味する。いわゆる原綿をすいてなるウェッブ形状やニードルパンチ加工形状等のシート状形状は含まない。
【0021】
本発明においてそのような繊維集合体からなる芯材の厚みは本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、通常は真空断熱材としたときに1mm〜100mm程度、特に5mm〜75mm程度であればよい。特に、シート状繊維集合体は、1層のシートでも良いが、ポリエステル繊維の1層シートからなり真空断熱材としたときに5mm程度以上の厚いものは、シート製造が難しいため、芯材を比較的厚く設定したいときは、2層以上のシートを積層した積層型シート状繊維集合体(芯材)を用いるのが好ましい。
【0022】
本発明において芯材の密度は、断熱性及び強度の観点から、100〜300kg/mが好ましく、より好ましくは150〜300kg/mである。
芯材の密度は、芯材を収容した内包材を外包材に収容し、真空引きした後の密度を測定したものである。すなわち、真空断熱材を作成した後、真空断熱材の重量から、あらかじめ測定した内包材、外包材及びゲッター材等の重量を引き、芯材の重量を得る。また真空断熱材の体積から、あらかじめ測定したゲッター材等の体積を引き、芯材の体積を得る。なお、内包材および外包材は厚みが非常に小さいので、体積算出には考慮しない。得られた真空断熱材の重量および体積から密度を算出する。
【0023】
本発明は芯材を構成する繊維集合体がポリエステル繊維以外の繊維を含有することを妨げるものではない。ポリエステル繊維の含有量は本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常はアウトガス発生による断熱性の経時的低下防止の観点から芯材全量に対して50重量%以上、好ましくは90〜100重量%である。
【0024】
ポリエステル繊維とともに繊維集合体に含有されてもよい他の繊維として、例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ポリビニルアルコール繊維、フッ素繊維、ポリウレタン繊維、ポリノジック繊維、レーヨン繊維等の合成繊維、アルミナ、チタン酸カリウム等の無機繊維、麻、絹、綿、羊毛等の天然繊維等が挙げられる。
【0025】
内包材は上記芯材を収容できる限り特に制限されず、通気性を有する形態を有していることが好ましい。そのような形態として例えば、少なくとも一部に通気孔を有するフィルム、ならびに織物、編物および不織布等が挙げられる。フィルムの孔の大きさおよび織物、編物および不織布の目付は、真空断熱材製造時の減圧排気によって芯材が内包材から飛散せず、かつ内包材内部も円滑に減圧排気可能な限り特に制限されない。本発明は内包材として通気性を有しないフィルム形態のものを使用することを妨げるものではない。通気性を有しない内包材を用いることによって、内包材内部を内包材単独で減圧状態に維持できる。
【0026】
内包材の材質は、本発明の目的を達成できる限り特に制限されず、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。アウトガス発生の観点から、ポリエステル製が好ましく、さらにリサイクル性の観点からは、芯材及び内包材共にPETを材質として用いるのが最も好ましい。また真空断熱材製造時における芯材乾燥の観点からは、融点が100℃以上、特に100〜300℃程度の材質を用いることが好ましい。
例えば、ポリエステルからなる織物、編物および不織布は、芯材として前記した同様のポリエステル繊維からなっていてよい。
【0027】
芯材を収容した内包材を収容する外包材は、ガスバリア性を有し、内部を減圧に維持できるものであれば、どのようなものでも用いることができ、好ましくはヒートシール可能なものである。好適な具体例として、例えば、最外層から、ナイロン、アルミ蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート)、アルミ箔、及び最内層として高密度ポリエチレンの4層構造からなるガスバリアフィルム、最外層から、ポリエチレンテレフタレート樹脂、中間層にアルミ箔、最内層に高密度ポリエチレン樹脂からなるガスバリアフィルム、最外層にPET樹脂、中間層にアルミニウム蒸着層を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、最内層に高密度ポリエチレン樹脂からなるガスバリアフィルム等が挙げられる。
【0028】
本発明の真空断熱材においては、経時的な断熱性をより向上させる観点から、外包材と内包材との間または内包材の中には、水蒸気もしくは空気の構成ガスのうち少なくとも1種類を吸着するガス吸着剤(ゲッター材)を封入することが好ましい。好ましくは、内包材内部の芯材にガス吸着剤に応じた窪みを形成しておき、当該窪みに直接的にガス吸着剤を配置してもよいし、内包材の上から当該窪みの位置にガス吸着剤を配置してもよい。ガス吸着剤は通気孔を有する硬質容器に収容されたものであってもよいし、または通気性を有する軟質容器(例えば、不織布からなる袋)に収容されたものであってもよい。
【0029】
本発明の真空断熱材の製造方法について好ましい実施形態を以下説明する。
まず、所定形態の芯材を、袋状の通気性内包材に挿入する。このとき芯材とともにガス吸着剤を内包材に挿入してもよい。芯材がシート状の場合は2以上の芯材を重ねて内包材に挿入してもよい。袋状の内包材は開口部を有していればよく、例えば、四角形状の二枚の内包材を重ね合わせ三方を結合したものが挙げられる。結合は内包材の材質に依存し、例えば、熱融着によって達成されてもよいし、または縫い取りによって達成されてもよい。
【0030】
次いで、芯材を収容した内包材の開口部を封じる。このとき、プレス機等の治具によって上記した所定の芯材厚みを確保しながら封じることが好ましい。プレスによって真空断熱材の表面平滑性が向上し、例えば冷蔵庫箱体内面への貼り付け時の作業性が向上し、さらに断熱性がより向上する。また、プレスの際には圧力だけでなく、熱も付与することが好ましい。熱と圧力を付与することによって、真空断熱材の表面平滑性がより向上し、優れた断熱性を容易に確保できるためである。特に芯材の繊維集合体としてわた状のものを使用する場合には、プレス時に熱を付与することがより好ましい。プレス時の温度は30〜100℃、特に35〜85℃が適当である。
【0031】
内包材開口部の封止は、熱融着によって達成されてもよいし、または縫い取りによって達成されてもよい。
【0032】
内包材に芯材を収容させ、開口部を封じた後は、得られた内包材を、三方が熱融着された袋状の外包材に挿入する。このときガス吸着剤を一緒に挿入してもよい。また芯材を収容した内包材を2以上重ね合わせて外包材に挿入してもよい。
【0033】
内包材が収容された外包材は、開口した状態で真空引き装置内に移送され、内圧が0.1〜0.01Torr程度の真空度となるよう減圧排気する。その後、外包材の開口部を熱融着により封止し、真空断熱材が得られる。
真空断熱材には、芯材厚みおよび芯材密度を調整すべく、室温でプレス加工してもよい。
【0034】
断熱性のさらなる向上の観点からは、外包材開口部の封止前に、芯材を乾燥させることが好ましい。詳しくは、乾燥は、芯材を収容し開口部が封された内包材を、外包材に挿入する直前に行ってもよいし、または外包材に挿入した後であって、減圧排気する前に、外包材に挿入した状態で行ってもよい。乾燥は芯材に含まれる水分等を除去できれば特に制限されず、例えば、120℃で1時間程度の条件にて行われることが好ましく、特にポリエステル繊維の水分等をより有効に除去するために、120℃において真空乾燥するのが好ましい。さらに、遠赤外線による乾燥を併用してもよい。真空度については、0.5〜0.01Torr程度で乾燥を行うのが好ましい。
【0035】
通気性を有さない内包材を使用する場合には、芯材を袋状の内包材に挿入した状態で真空引き装置内に入れて、内圧が0.1〜0.01Torr程度の真空度となるよう減圧排気した後、内包材の開口部を熱融着により封止する。好ましくは減圧排気しながら、プレス機等の治具によって上記した所定の芯材厚みを確保する。これによって、内部に芯材を減圧状態で収容した内包材を得ることができる。この場合の袋状の内包材は、開口部を有し、かつ該開口部を減圧状態で封止することによって内部を減圧状態に維持可能であればよく、例えば、四角形状の二枚の内包材を重ね合わせ三方を熱融着したものが挙げられる。この場合の芯材乾燥については、芯材を収容し開口部が未封の内包材を、減圧排気する前に、乾燥に供すればよい。内部に芯材を減圧状態で収容した内包材を得た後は、通気性を有する内包材を使用した場合と同様に、外包材に挿入し、減圧下で外包材開口部を封止すればよい。
【実施例】
【0036】
<実施例1>
通気性PET不織布(PET繊維の融点:260℃)を四角形状(250mm×270mm:シール部も含む)に裁断し、二枚の不織布を重ね合わせ、三方を熱融着によって結合し、通気性を有する袋状内包材を作製した。
袋状内包材に、PET繊維(1.5デニール、融点260℃)からなるわた状芯材88gを均一に挿入した。芯材を収容した内包材を、加熱温度40℃でプレスしながら、開口部を熱融着によって封じた。プレス時の芯材厚みは10mmであった。プレスの上型には高さ5mmの凸部形成されており、プレスによってゲッター材用の窪みを形成した。
芯材を収容し、かつ開口部が封じられ内包材を、120℃で60分間乾燥した後、ナイロン、アルミ蒸着PET、アルミ箔、高密度ポリエチレンの4層構造からなるガスバリアフィルム製外包材(250mm×270mm:シール部も含む)に挿入するとともに、外包材中の内包材の上にゲッター材(サエス ゲッターズ社製:COMBO−3)を1個挿入した。その状態で直ちに真空引き装置に入れて、内圧が0.01Torrとなるよう減圧排気を行い、熱融着により密封した。得られた真空断熱材は、芯材部が200mm×200mmの大きさで、厚み10mmであった。得られた真空断熱材の芯材の密度は220kg/mであった。
【0037】
<実施例2>
実施例1と同様の袋状内包材に、実施例1で使用のわた状PET繊維をすくことにより得られるウェッブからなるシート状芯材88gを挿入した。芯材を収容した内包材を、加熱温度40℃でプレスしながら、開口部を熱融着によって封じた。プレス時の芯材厚みは10mmであった。
芯材を収容し、かつ開口部が封じられ内包材を、ナイロン、アルミ蒸着PET、アルミ箔、高密度ポリエチレンの4層構造からなるガスバリアフィルム製外包材(250mm×270mm)に挿入した状態で、120℃で60分間の乾燥を行った。乾燥後、外包材中の内包材の上にゲッター材(サエス ゲッターズ社製:COMBO−3)を1個挿入した。その状態で直ちに真空引き装置に入れて、内圧が0.01Torrとなるよう減圧排気を行い、熱融着により密封した。得られた真空断熱材は、芯材部が200mm×200mmの大きさで、厚み10mmであった。得られた真空断熱材の芯材の密度は220kg/mであった。
【0038】
<実施例3>
繊維太さ1.5デニールおよび平均繊維径11μmのPET繊維(融点260℃)をニードルパンチ法によりシート状に加工した。シート目付は550g/mであった。シート厚みは10mmであった。当該シートを200mm×200mmの大きさに裁断し芯材を得た。
得られた芯材を、実施例1と同様の袋状内包材に挿入した。芯材を収容した内包材の開口部を熱融着によって封じた。
芯材を収容し、かつ開口部が封じられ内包材を、ナイロン、アルミ蒸着PET、アルミ箔、高密度ポリエチレンの4層構造からなるガスバリアフィルム製外包材(250mm×270mm:シール部も含む)に挿入した状態で、120℃で60分間の乾燥を行った。乾燥後、外包材中の内包材の上にゲッター材(サエス ゲッターズ社製:COMBO−3)を1個挿入した。その状態で直ちに真空引き装置に入れて、内圧が0.01Torrとなるよう減圧排気を行い、熱融着により密封した。得られた真空断熱材は、芯材部が200mm×200mmの大きさで厚み10mmであった。得られた真空断熱材の芯材の密度は220kg/mであった。
【0039】
<実施例4>
袋状内包材に、わた状芯材176gを均一に挿入したこと、プレス時の芯材厚みは20mmであったこと以外、実施例1と同様の方法で真空断熱材を得た。真空断熱材の厚みは約20mmであり、芯材密度は220kg/mであった。
【0040】
<実施例5>
袋状内包材に、ウェッブを三枚重ねてなるシート状芯材264gを挿入したこと、プレス時の芯材厚みは30mmであったこと以外、実施例2と同様の方法で真空断熱材を得た。真空断熱材の厚みは約30mmであり、芯材密度は220kg/mであった。
【0041】
<実施例6>
実施例3で得られた芯材用シートを三枚重ねて芯材として用いたこと以外、実施例3と同様の方法で真空断熱材を得た。真空断熱材の厚みは約30mmであり、芯材密度は220kg/mであった。
<比較例1>
わた状PET繊維芯材を120℃で60分間乾燥した後、直接的に外包材(250mm×270mm:シール部も含む)に挿入したこと以外、実施例1と同様の方法で真空断熱材を得た。芯材密度は220kg/mであった。
【0042】
<初期断熱性>
初期断熱性の評価は、「Autoλ HC−074」(英弘精機(株)製)を用いて、平均温度20℃の熱伝導率を測定することにより行った。なお、測定は真空引き工程から1日経過後に測定した。
【0043】
<長期断熱性>
長期断熱性の評価は、初期断熱性を評価した真空断熱材を70℃の恒温槽に入れ、4週間経過後に取り出し、「Autoλ HC−074」(英弘精機(株)製)を用いて、平均温度20℃の熱伝導率を測定することにより行った。
【0044】
<作業性>
芯材または該芯材を収容した内包材を外包材に挿入するときの作業性を以下の基準に従って評価した。
○;外包材への挿入が簡便である;
×;外包材への挿入が煩雑である。
【0045】
<生産効率>
各実施例または比較例において真空断熱材の製造手順を50回繰り返した。得られた50個の真空断熱材のうち、製造後1日経過後において、真空を維持できなかったものの数(x)に基づいて評価した。
○;0〜1個;
×;2個以上。
【0046】
【表1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル繊維を含有する芯材を収容した内包材が減圧状態で外包材に収容されてなることを特徴とする真空断熱材。
【請求項2】
ポリエステル繊維の繊維太さが1〜6デニールである請求項1に記載の真空断熱材。
【請求項3】
ポリエステル繊維がポリエチレンテレフタレート繊維である請求項1または2に記載の真空断熱材。
【請求項4】
内包材がポリエチレンテレフタレート製内包材である請求項1〜3のいずれかに記載の真空断熱材。
【請求項5】
芯材の密度が、150〜300Kg/mである請求項1〜4のいずれかに記載の真空断熱材。
【請求項6】
芯材がポリエステル繊維のみからなる請求項1〜5のいずれかに記載の真空断熱材。



【公開番号】特開2006−283817(P2006−283817A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102028(P2005−102028)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】