説明

真空断熱材

【課題】長期間に渡って真空断熱材の断熱性能が維持される長寿命性、及び耐久性が高い真空断熱材を提供する。
【解決手段】芯材部を含む真空断熱材であって、前記芯材部を収納しかつ内部を減圧状態に維持できる第1の外包材を含む真空断熱体と、前記真空断熱体を収納しかつ内部を減圧状態に維持できる第2の外包材と、を含み、かつ前記第1の外包材と前記第2の外包材とが、異なる材料で形成されていることを特徴とする真空断熱材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
金属製の外包材を用いた真空断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、断熱材の耐熱性を高めるために、外包材としてステンレス鋼板のような金属製材料を用いた真空断熱材が考案されてきていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
断熱材の加工性を高めるために、金属製に代えて、外包材としてアルミ箔をラミネートした樹脂製のものを用いた真空断熱材が考案されてきていた(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平1−150098号公報
【特許文献2】特開平7−113494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属製の外包材を用いた場合でも、樹脂製の外包材を用いた場合でも、真空にするために、外包材同士を接合して封止する必要がある。そして、封止には加工が容易な樹脂シールが用いられるため、外包材の封止部分に不具合がなくとも、経時によって、封止部分から徐々に空気が入り込み、圧力が上昇する(つまり、真空度が低下する)問題があった。
【0005】
このように真空度が低下すると、断熱性能が低下し、一定期間後、例えば数年後に真空断熱材自体を交換する必要が生じる。そのため、長寿命を必要とする用途、また製品の内部に封止される用途に用いることができなかった。また、樹脂シールは耐熱温度が低いため、耐熱性に劣るという問題があった。
【0006】
また、上記のアルミ箔をラミネートした樹脂製を用いた場合、外包材に破損が生ずる場合がある。例えば、使用中の摩擦により磨耗して、外包材に破れが生じ、また、ささくれのような凹凸部分との摩擦、或いは壁等の建材に用いた場合、釘打ちのような打撃によって孔が開き、外包材に破損が生ずる場合がある。そのため、減圧状態が長期間に渡って維持できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、長期間に渡って真空断熱材の断熱性能が維持される長寿命性、及び耐久性が高い真空断熱材を提供することにある。
【0008】
以上のような目的を達成するために、本発明においては、真空断熱材を、異なる材料の2つ以上の外包材によって構成する。
【0009】
具体的には、本発明に係る真空断熱材は、
芯材部を含む真空断熱材であって、
前記芯材部を収納しかつ内部を減圧状態に維持できる第1の外包材を含む真空断熱体と、
前記真空断熱体を収納しかつ内部を減圧状態に維持できる第2の外包材と、を含み、かつ
前記第1の外包材と前記第2の外包材とが、異なる材料で形成されていることを特徴とする。
【0010】
上述したように、本発明に係る真空断熱材は、芯材部を含む。芯材部は、第1の外包材に収納され、内部を減圧状態に維持できる真空断熱体が形成される。真空断熱体は、第2の外包材に収納され、内部を減圧状態に維持できる真空断熱材が形成される。この第1の外包材と第2の外包材とは、異なる材料で形成されている。
【0011】
ここで、互いに向かい合う2枚の第1の外包材の四辺に沿って芯材部を周回するように、第1の封止接合部を形成することによって、芯材部を収納すべき第1の封止領域が第1の外包材の略中央に形成され、この第1の封止領域によって第1の外包材の内部を減圧状態に維持できる。第1の封止接合部は溶接等によって形成されている。第1の封止接合部を形成することによって、第1の外包材の内部が封止され、第1の封止領域が形成されている。第1の封止領域は、第1の封止接合部によりその周縁が封止されているので、その減圧状態を維持することができる。そして、芯材部は第1の封止領域内の略中央に収納されて、真空断熱体が形成されている。
【0012】
なお、本明細書において、外包材(第1の外包材、及び後述する第2の外包材、第3の外包材等)は、1枚の外包材ではなく、上述のように、互いに向かい合う2枚の外包材の四辺に芯材部の外縁から一定距離に、封止接合部を形成することによって、芯材部を収納すべき封止領域が外包材の略中央に形成され、この封止領域は内部を減圧状態に維持できるものをいう。内部を減圧状態に維持できるとは、密閉されており、内部圧力を一定に保つことができることであり、すなわち、一旦減圧状態とされるとその減圧状態に維持できるものをいう。
【0013】
互いに向かい合う2枚の第2の外包材の四辺に沿って真空断熱体を周回するように、第2の封止接合部を形成することによって、真空断熱体を収納すべき第2の封止領域が第2の外包材の略中央に形成され、この第2の封止領域によって第2の外包材の内部を減圧状態に維持できる。第2の封止接合部は溶接等によって形成されている。第2の封止接合部を形成することによって、第2の外包材の内部が封止され、第2の封止領域が形成されている。第2の封止領域は、第2の封止接合部によりその周縁が封止されているので、その減圧状態を維持することができる。そして、真空断熱体は第2の封止領域内の略中央に収納されて、真空断熱材が形成されている。
【0014】
そして、本発明においては、芯材部を、異なる材料の2つ以上の外包材に収納しているので、封止部分から徐々に空気が入り込み、圧力が上昇することがない。長期間に渡って低い真空度を保つことができるため、長期間に渡って真空断熱材の断熱性能が維持される。よって、長寿命性の真空断熱材を提供することができ、長期間交換が不要であるので、製品の内部に封止されるような用途に用いることができる。
【0015】
また、異なる材料の2つ以上の外包材を用いているので、使用中の摩擦に対し耐磨耗性があり、外包材に破れが生じ難い。よって、高耐久性の真空断熱材を提供することができ、耐磨耗性が求められる用途に用いることができる。
【0016】
さらに、本発明に係る真空断熱材は、前記第2の外包材の内側に、前記真空断熱体を収納しかつ内部を減圧状態に維持できる、少なくとも1つの第3の外包材を含むことが好ましい。
【0017】
第3の外包材は、第1の外包材或いは第2の外包材のいずれかと同じ材料で形成されていてもよい。
そして、互いに向かい合う2枚の第3の外包材の四辺に沿って真空断熱体を周回するように、第3の封止接合部を形成することによって、真空断熱体を収納すべき第3の封止領域が第3の外包材の略中央に形成され、この第3の封止領域によって第3の外包材の内部を減圧状態に維持できる。第3の封止接合部は溶接等によって形成されている。第3の封止接合部を形成することによって、第3の外包材の内部が封止され、第3の封止領域が形成されている。第3の封止領域は、第3の封止接合部によりその周縁が封止されているので、その減圧状態を維持することができる。そして、真空断熱体は第3の封止領域内の略中央に収納されて、第2の真空断熱体が形成されている。この第2の真空断熱体は、上述の第2の封止領域内の略中央に収納されて、真空断熱材が形成されている。
【0018】
このように、真空断熱材が3つ以上の外包材で封止されているため、更なる長寿命化を図ることができる。
【0019】
本発明に係る真空断熱体の内部圧力が、前記真空断熱材の内部圧力よりも低いことが好ましい。
【0020】
ここで、真空断熱体の内部圧力とは、第1の封止領域内の圧力である。そして、真空断熱材の内部圧力とは、第2の封止領域内の圧力である。真空断熱体の内部圧力及び真空断熱材の内部圧力は、大気圧によりも低い圧力とされ、減圧状態に維持されている。よって、周囲圧力が大気圧である場合、真空断熱体の内部圧力は、真空断熱材の内部圧力よりも低く、また、真空断熱材の内部圧力は、周囲圧力よりも低い。
【0021】
このように、真空断熱体は、減圧状態に維持された第2の封止領域に収納されているので、すぐ外側が周囲圧力の場合よりも、一旦到達した減圧状態をよりよく維持することができる。したがって、芯材部を収納する最内部の真空断熱材の内部圧力をより低くすることができ、長期間に渡って断熱性能を維持することができる。
【0022】
本発明に係る真空断熱材は、前記第2の外包材が、金属製外包材であることが好ましい。また、前記第2の外包材が、ステンレス製外包材であることがとりわけ好ましい。
【0023】
このように第2の外包材が金属製外包材であるので、使用中の摩擦に対し耐磨耗性があり、外包材に破れが生じ難い。特に、アルミ箔をラミネートした樹脂製外包材の問題点である外的要因による破れ、ピンホール等の問題に対して有効であり、強度に優れ、高耐久性の真空断熱材を提供することができる。
【0024】
本発明に係る真空断熱材は、前記芯材部が、無機系芯材部であることが好ましい。
芯材部から所望しないガスの発生が少なく、芯材部の減圧状態をよりよく維持することができる。
【0025】
本発明に係る真空断熱材は、前記第1の外包材が樹脂製外包材であることが好ましい。
特に、最内層にポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂層を有する多層樹脂製外包材が好ましい。熱可塑性樹脂の融着により真空封止を容易に行うことができ、簡便にかつ迅速に生産することができるためである。
【発明の効果】
【0026】
真空断熱材の性能として、長期間に渡って真空断熱材の断熱性能が維持される長寿命性、及び耐久性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
【0028】
<<<<真空断熱材100>>>>
<<<真空断熱材100の構成>>>
図1は、真空断熱材100を示す斜視図である。図2は、この真空断熱材100を示す正面図であり、図3は、図2に示した線A−Aに沿った真空断熱材100を示す断面図である。なお、図3は、構成を明確に示すために、隣り合う部材の間に隙間があるように示したが、実際には、これらの部材は、密着するように構成されている。そして、第二の封止接合部150も厚くされているが、実際には、密着する部材の間に薄く構成されている。図3では、明確に示すために、芯材部110に実線・破線・破線・実線のパターンで斜線を付けて示し、第1の外包材に太線・細線のパターンで斜線を付けて示した。
【0029】
図1〜図3に示すように、真空断熱材100は、真空断熱体200と第2の外包材140を含む。真空断熱材100は、真空断熱体200を第2の外包材140に収納して、第2の封止接合部150を形成することによって作ることができる。また、真空断熱体200は、芯材部110(図1及び2では図示していない)を第1の外包材120に収納して、第1の封止接合部130を形成することによって作ることができる。真空断熱材100及び真空断熱体200の作り方の詳細については、後で述べる。なお、第2の封止接合部150は、視認できるように形成されるので、図1及び図2においては、実線で示した。また、真空断熱体200及び内部封止領域Sは、第2の外包材140で覆われているので、図1及び図2においては、破線で示した。そして、図1及び2においては、この真空断熱体200は収納しやすいように、そのへり124が、芯材部110の外縁に沿って折り曲げられている状態を点線で示した。
【0030】
<<第2の外包材140>>
<第2の外包材140の形状>
第2の外包材140は、図1及び図2に示すように、2枚のシート状の第2の外包材140a及び140bによって成形される。なお、以下では、第2の外包材140a及び140bを、単に第2の外包材140と称する場合もある。
【0031】
2枚の第2の外包材140a及び140bの各々は、同じ大きさの略正方形の一定の形状を有する。2枚の第2の外包材140a及び140bの各々の形状及び大きさは、真空断熱材100の形状及び大きさや、後述するへり144の形状及び大きさ等に合せて適宜定めればよい。
【0032】
後述するように、2枚の第2の外包材140a及び140bが、互いに重なり合うようにし、その間に真空断熱体200を挟んで、真空断熱体200を周回するように、2枚の第2の外包材140a及び140bを溶接することで、真空断熱材100を作ることができる。
【0033】
<第2の外包材140の材料>
第2の外包材140は、真空断熱材100が使用される温度や圧力等の条件下で十分に耐え、真空断熱材100としての機能を維持できる金属であれば、どのようなものでも用いることができる。例えば、軟鋼薄板、ステンレス鋼薄板、亜鉛メッキ鋼薄板等の各種の鋼薄板や、アルミニウム合金薄板や、チタン薄板や、スズ薄板等を用いることができる。特に、板厚が0.05mmから0.5mm程度のステンレス、鉄、チタン等を使用するのが好ましい。
【0034】
なお、第2の外包材140を、単一の層の金属製の薄板で構成するだけでなく、複数の層の金属製の薄板で構成してもよい。第2の外包材の構成は、耐熱性や真空断熱材100の断熱性等を考慮して適宜定めればよい。
【0035】
<第2の封止接合部150、第2の封止領域S、へり144>
後述するように、真空断熱材100は、2枚の第2の外包材140a及び140bの間に真空断熱体200を挟み、真空断熱体200の外周に沿って、2枚の第2の外包材140a及び140bを溶接することによって作ることができる。図1及び2に示すように、この2枚の第2の外包材140a及び140bを溶接することによって、第2の封止接合部150を形成することができる。
【0036】
この第2の封止接合部150(150a〜150d)は、図1及び図2に示すように、第2の外包材140の一の辺の端部から、一の辺と向かい合う他の辺の端部に至るまで、一の辺と他の辺とに挟まれた別の辺に沿って略平行に、第2の外包材140を周回するように形成されている。
【0037】
第2の封止接合部150を形成することによって、真空断熱体200が含まれた領域を的確に封止することができる。この真空断熱体200が含まれた領域、すなわち、2枚の第2の外包材140a及び140bによって真空断熱体200が挟まれて形成された領域は、封止された領域であるので、第2の封止領域Sと称する(図1参照)。また、第2の封止領域Sに沿って周回する第2の封止接合部150に延在する、第2の外包材の外縁領域は、へり144と称する(図1参照)。言い換えれば、第2の封止接合部150とへり144とを区画して画定するように、第2の封止接合部150が形成されている。しかし、第2の外包材上の外縁領域が、第2の封止接合部150であるように封止する場合は、へり144は形成されない。
【0038】
上述したように、第2の封止接合部150は、真空断熱体200の周囲を周回するように形成され、この第2の封止接合部150によって、真空断熱体200は封止される。すなわち、第2の封止接合部150によって、第2の封止領域Sが、減圧状態に維持される。第2の封止領域Sは減圧状態が維持された領域であるので、真空維持領域として機能する。この真空維持領域である第2の封止領域S内の圧力が真空断熱材100の内部圧力である。真空断熱材100の内部圧力は、好ましくは2.5Pa以下である。
【0039】
上述したように、第2の封止接合部150は、第2の封止領域Sや真空断熱体200を周回するように形成される。特に、この第2の封止接合部150は、真空断熱体200と重ならないように、かつ、真空断熱体200の外周に可能な限り近づけて形成するものが好ましい。
【0040】
さらに、第2の封止接合部150自体の幅を5mm以内とするのが好ましい。但し、断熱効率或いは寸法の面でとして好ましくない場合、特に0.1〜3mm程度にするのが好ましい。
【0041】
また、へり144の幅は、特に制限されるものではないが、3〜70mm程度であり、断熱効率及び取り付け性の観点から好ましくは10〜40mmである。
【0042】
なお、へり144は、必ずしも真空断熱材100の全周に存在する必要はない。
【0043】
<<<真空断熱体200の構成>>>
図4は、真空断熱体200の全体の概略を示す正面図である。図5は、真空断熱体200の構成を示す断面図である。なお、第1の封止接合部130は、視認できるように形成されるので、図4及び図5においては、実線で示した。また、芯材部110及び第1の封止領域Iは、第1の外包材120で覆われているので、図4及び図5においては、破線で示した。なお、図5は、構成を明確に示すために、隣り合う部材の間に隙間があるように示したが、実際には、これらの部材は、密着するように構成されている。図5では、明確に示すために、芯材部110に実線・破線・破線・実線のパターンで斜線を付けて示し、第1の外包材に太線・細線のパターンで斜線を付けて示した。
【0044】
<<芯材部110>>
<芯材部110の形状>
図4に示すように、芯材部110は、略正方形状で略薄板状の形状を有する。芯材部110の厚さや大きさは、断熱すべき対象物及び要求される断熱性能に応じて適宜定めればよい。
【0045】
<芯材部110の材料>
芯材部110は、特に限定されないが、繊維集合体、連続気泡発泡体等が使用される。断熱性の観点から好ましくは繊維集合体である。繊維集合体は、作業性の観点から、上述したように、略板状の形態で使用されることが好ましい。繊維集合体を、そのままの「わた状態」や、微細化した「粉体状」で使用する場合には、芯材部110の取り扱い性が低下するので、芯材部110を、後述する第1の外包材120へ収納する工程が煩雑になり、作業性が悪化する。
【0046】
繊維集合体は無機繊維、有機繊維またはそれらの混合物からなる。
【0047】
無機繊維としては、例えば、ガラス繊維(グラスウール)、アルミナ繊維、スラグウール繊維、シリカ繊維、ロックウール等が挙げられる。
【0048】
有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリウレタン繊維、ポリノジック繊維、レーヨン繊維等の合成繊維、麻、絹、綿、羊毛等の天然繊維等が挙げられる。無機繊維および有機繊維は、1種からなる単独繊維または複数種の混合繊維として用いられる。
【0049】
この実施の形態では、後述する第1の外包材120、第2の外包材140及び第3の外包材160等の耐熱性の利点を活かすために、芯材部110としても耐熱性に優れる無機系芯材部が好ましく、断熱性も考慮すれば、グラスウール製芯材部が特に好ましい。
【0050】
<<第1の外包材120>>
<第1の外包材120の形状>
第1の外包材120は、図4及び図5に示すように、2枚のシート状の第1の外包材120a及び120bによって成形される。なお、以下では、第1の外包材120a及び120bを、単に第1の外包材120と称する場合もある。
【0051】
2枚の第1の外包材120a及び120bの各々は、同じ大きさの略正方形の一定の形状を有する。2枚の第1の外包材120a及び120bの各々の形状及び大きさは、芯材部110の形状及び大きさや、後述するへり124の形状及び大きさ等に合せて適宜定めればよい。
【0052】
後述するように、2枚の第1の外包材120a及び120bが、互いに重なり合うようにし、その間に芯材部110を挟んで、芯材部110を周回するように、2枚の第1の外包材120a及び120bを溶接することで、真空断熱体200を作ることができる。
【0053】
<第1の外包材120の材料>
第1の外包材120は、真空断熱材100が使用される温度や圧力等の条件下で十分に耐え、真空断熱材100としての機能を維持できる金属であれば、どのようなものでも用いることができる。例えば、軟鋼薄板、ステンレス鋼薄板、亜鉛メッキ鋼薄板等の各種の鋼薄板や、アルミニウム合金薄板や、チタン薄板や、スズ薄板等を用いることができる。特に、板厚が0.05mmから0.5mm程度のステンレス、鉄、チタン等を使用するのが好ましい。
【0054】
なお、第1の外包材120を金属製とする場合、単一の層の金属製の薄板で構成するだけでなく、複数の層の金属製の薄板で構成してもよい。第1の外包材120の構成は、耐熱性や芯材部110の断熱性等を考慮して適宜定めればよい。
【0055】
また、第1の外包材120には、樹脂製外包材を用いることもできる。樹脂製外包材は、ガスバリア性を有するとともに、外包材内部を減圧状態に維持でき、かつヒートシール可能なものであれば、どのようなものでも用いることができるが、好ましくはアルミ箔やアルミ蒸着層を層構成に有する多層の樹脂製外包材である。
【0056】
樹脂製外包材は、例えば、最外層から最内層へ、ナイロン、アルミ蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート)、アルミ箔、高密度ポリエチレンの順に積層された4層構造からなるガスバリアフィルムや、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アルミ箔、高密度ポリエチレン樹脂からなるガスバリアフィルムや、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アルミニウム蒸着層を有するエチレンービニルアルコール共重合体樹脂、高密度ポリエチレン樹脂からなるガスバリアフィルム等が挙げられる。なお、上記多層構造の樹脂製外包材では、最内層が裏面を構成し、すなわち最内層が袋の内部を構成するように使用される。樹脂製外包材は、シート状又はフィルム状の素材を袋状、例えば、開口部を残して三方をヒートシールした袋状に加工して使用される。
【0057】
<第1の封止接合部130、第1の封止領域I、へり124>
後述するように、真空断熱材100は、2枚の第1の外包材120a及び120bの間に芯材部110を挟み、芯材部110の外周に沿って、2枚の第1の外包材120a及び120bを溶接することによって作ることができる。図4及び5に示すように、この2枚の第1の外包材120a及び120bを溶接することによって、第1の封止接合部130を形成することができる。
【0058】
この第1の封止接合部130(130a〜130d)は、図4及び図5に示すように、第1の外包材120の一の辺の端部から、一の辺と向かい合う他の辺の端部に至るまで、一の辺と他の辺とに挟まれた別の辺に沿って略平行に、第1の外包材を周回するように形成されている。第1の封止接合部130(130a〜130d)を形成することによって、第1の封止接合部130は、芯材部110の周囲を周回するように形成され、芯材部110が含まれた領域を的確に封止することができる。この芯材部110が含まれた領域、すなわち、2枚の第1の外包材120a及び120bによって芯材部110が挟まれて形成された領域は、封止された領域であるので、第1の封止領域Iと称する(図4参照)。また、第1の封止領域Iに沿って周回する第1の封止接合部130に延在する、第1の外包材の外縁領域は、へり124と称する(図4参照)。言い換えれば、第1の封止接合部130とへり124とを区画して画定するように、第1の封止接合部130が形成されている。しかし、第1の外包材上の外縁領域が、第1の封止接合部130であるように封止する場合は、へり124は形成されない。
【0059】
上述したように、第1の封止接合部130は、芯材部110の周囲を周回するように形成され、この第1の封止接合部130によって、真空断熱体200は封止される。すなわち、第1の封止接合部130によって、第1の封止領域Iが、減圧状態に維持される。第1の封止領域Iは減圧状態が維持された領域であるので、真空維持領域として機能する。この真空維持領域である第1の封止領域I内の圧力が真空断熱体200の内部圧力である。真空断熱体200の内部圧力は、好ましくは2.5Pa以下であり、真空断熱材100の圧力より低い値である。
【0060】
上述したように、第1の封止接合部130は、第1の封止領域Iや芯材部110を周回するように形成される。特に、この第1の封止接合部130は、芯材部110と重ならないように、かつ、芯材部110の外周に可能な限り近づけて形成するものが好ましい。
【0061】
さらに、第1の封止接合部130自体の幅を10mm程度にするのが好ましい。但し、断熱効率或いは寸法の面でとして好ましくない場合、第1の封止接合部130の幅を小さくすることができ、例えば、5mm以内である。
【0062】
また、へり124の幅は、特に制限されるものではないが、3〜70mm程度であり、生産性の観点から好ましくは10〜40mmである。なお、樹脂製外包材を用いる場合には、熱可塑性樹脂のような樹脂同士が融着して、封止接合部が形成されるので、へり124を形成しないほうが生産性は高くなり、より好ましい。
【0063】
なお、へり124は、必ずしも芯材部110の全周に存在する必要はない。
【0064】
<<ゲッター剤180>>
<ゲッター剤180の機能>
第1の外包材120の中には、ゲッター剤180(図示せず)を設けてもよい。第1の外包材120の内部を減圧して溶接した後に、第1の外包材120の内部では、ガス、例えば、芯材部110からアウトガスや水分が発生する場合があり、真空度を低下させる可能性がある。このため、ガスや水分を吸着することができるゲッター剤180を、第1の外包材120の内部に芯材部110と共に収納することが好ましい。
【0065】
このように、ゲッター剤180を、第1の外包材120の内部に収納することで、ゲッター剤180によってガスや水分を吸収できるので、真空断熱材100の断熱効果をより長く持続させることができる。
【0066】
<ゲッター剤180の材質>
ガスや水分を吸着できる物質は、特に、限定されるものではなく、物理的にガスや水分等を吸着するものとして、例えば、活性炭、シリカゲル、酸化アルミニウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト等がある。また、化学的にガスや水分等を吸着するものは、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、塩化カルシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム等や、鉄、亜鉛等の金属粉素材、バリウム−リチウム系合金、ジルコニウム系合金等がある。
【0067】
<<真空断熱体200の形成>>
真空断熱体200は、以下のようにして作ることができる。
【0068】
まず、略同じ大きさの2枚の樹脂製の第1の外包材120a及び120bを用意し、これらの2枚の第1の外包材120a及び120bが、おおよそ重なるように配置し、互いの3辺を熱融着することによって封止した袋状とする。第1の外包材の封止されてない残り1辺は、芯材110を第1の外包材120内部に収納するための開放端となっており、芯材110を収納して真空引きした後に熱融着にすることによって、第1の外包材120を封止する。このようにすることで、内部を減圧状態にした真空断熱体200を作ることができる。
【0069】
なお、上述した例では、第1の封止接合部130を熱融着によって形成したが、外包材の材質を変更した場合には、溶接、ハンダ付けやロウ付けによって形成してもよい。真空断熱体200の内部、すなわち、第1の封止領域Iを減圧状態にして封止を維持できるものであればよい。
【0070】
このように、略正方形状の略薄板状の形状を有する芯材部110と、略正方形状の略薄板状の形状を有する2枚の外包材120a及び120bとを用いて、形成された真空断熱体200も、略正方形状の略薄板状の形状を有する。
【0071】
上述した真空断熱体200は、第1の封止接合部130によって、芯材部110を周回するように封止している最小をいう。このように、芯材部110は、第1の封止接合部130によって周回するように封止されていればよく、封止されている芯材部110の数は問わない。上述した例では、封止されている芯材部110の数が1つである場合を示したが、2つ以上の芯材部110が封止されていても、第1の封止接合部130によって周回するように封止されていれば、真空断熱体200を構成する。そして、第1の封止接合部130に沿ってへり124が存在する場合、真空断熱体200は、芯材部110を周回するへり124が存在する最小としてもよい。
【0072】
<<<真空断熱材100の形成>>>
図6は、真空断熱体200に形成されたへり124を真空断熱材100に収納するために折り曲げる過程を示す正面図である。図7は、真空断熱体200に形成されたへり124を折り曲げた断面図である。なお、芯材部110及び第1の封止領域Iは、第1の外包材120で覆われているので、図6及び図7においては、破線で示した。図6においては、第1の封止接合部130は、図示していない。また、図7は、構成を明確に示すために、隣り合う部材の間に隙間があるように示したが、実際には、これらの部材は、密着するように構成されている。図7では、明確に示すために、芯材部110に実線・破線・破線・実線のパターンで斜線を付けて示し、第1の外包材に太線・細線のパターンで斜線を付けて示した。
【0073】
芯材部110を樹脂製の第1の外包材120の略中央に収納して、熱融着することによって、第1の封止接合部130を形成することによって、真空断熱体200を作ることができる(図4参照)。そして、収納しやすいように、形成された真空断熱体200のへり124を、芯材部110の外縁に沿って折り曲げる(図6及び7参照)。ついで、折り曲げた真空断熱体200を第2の外包材140の略中央に収納して、溶接により第2の封止接合部150を形成することによって、真空断熱材100を作ることができる(図1参照)。へり124と共に封止接合部130を含む部分を折り曲げることができる。なお、へりを形成しないで、真空断熱体200を作ることもできる。
【0074】
<<<真空断熱材100の他の態様>>>
<<真空断熱材100の外包材の数>>
図8は、真空断熱材100の他の態様の構成を示す断面図である。なお、図8は、構成を明確に示すために、隣り合う部材の間に隙間があるように示したが、実際には、これらの部材は、密着するように構成されている。そして、第二の封止接合部150も厚くされているが、実際には、密着する部材の間に薄く構成されている。図8では、明確に示すために、芯材部110に実線・破線・破線・実線のパターンで斜線を付けて示し、第1の外包材に太線・細線のパターンで斜線を付けて示し、第3の外包材に通常の右上がり斜線を付けて示した。
【0075】
真空断熱材100は、第2の外包材140の内側に、真空断熱体200を収納しかつ内部を減圧状態に維持できる、少なくとも1つの第3の外包材160を含むことができる。この第3の外包材160は上述の第2の外包材140と同様のものが選択され、第2の外包材140と同様にして、真空断熱体200を収納させることができる。この場合、互いに向かい合う2枚の第3の外包材の四辺に沿って真空断熱体200を周回するように、第3の封止接合部170を形成することによって、真空断熱体200を収納すべき第3の封止領域Mが第3の外包材160の略中央に形成され、この第3の封止領域Mによって第3の外包材160の内部を減圧状態に維持できる。第3の封止領域Mは、第3の封止接合部170によりその周縁が封止されているので、その減圧状態を維持することができる。そして、真空断熱体200は第3の封止領域M内の略中央に収納されて、第2の真空断熱体が形成されている。この第2の真空断熱体は、上述の第2の封止領域M内の略中央に収納されて、真空断熱材100が形成されている(図8参照)。
【0076】
<<<実施例>>>
芯材部110としてグラスウールを用い、これを第1の外包材120としての樹脂フィルム2枚の間に挟みこみ、かつ内部を減圧状態に維持できるように、熱融着することによって、第1の封止接合部140を形成し、真空断熱体200を形成した。なお、樹脂フィルムの構成は、ナイロン樹脂保護層、中間にアルミ箔層及び最内層に高密度ポリエチレン層からなる。真空断熱体200における第1の封止接合部の幅は10mmであり、へりは形成されていない。また、真空断熱体200の内部圧力は1.3Paである。
【0077】
このように形成された真空断熱体200を、第2の外包材140としての厚み0.08mmステンレス箔2枚で同様に挟み込み、その後溶接することによって、第2の封止接合部150を形成し、真空断熱材100を形成した。なお、真空断熱材100における第2の封止接合部の幅は1mmであり、へりの幅は30mmである。また、真空断熱材100の内部圧力は1.5Paである。
【0078】
実施例としての真空断熱材100及び比較例としての真空断熱体200を、実使用環境に比べて高い温度である70℃で加速寿命試験を28日間行った。
【0079】
試験は、内部空気を循環させた70℃オーブン内で行った。
【0080】
結果を、表1及び図9に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
表1及び図9から明らかなように、実施例では、加速寿命試験28日経過後も、熱伝導率が低く抑えられ、変化が少なく、断熱性能が長期間にわたって維持されることが予想される。
【0083】
しかし、比較例では、熱伝導率が徐々に上昇し、断熱性能が徐々に低下しているので、断熱性能が長期間にわたっては維持されていないことが予想される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】真空断熱材100の全体の概略を示す斜視図である。
【図2】真空断熱材100の全体の概略を示す正面図である。
【図3】真空断熱材100の構成を示す断面図である。
【図4】真空断熱体200の全体の概略を示す正面図である。
【図5】真空断熱体200の構成を示す断面図である。
【図6】真空断熱体200に形成されたへり124を真空断熱材100に収納するために折り曲げる過程を示す正面図である。
【図7】真空断熱体200に形成されたへり124を折り曲げた断面図である。
【図8】真空断熱材100の他の態様の構成を示す断面図である。
【図9】本発明の熱伝導率の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0085】
100 真空断熱材
110 芯材部
120 第1の外包材
130、130a、b、c、d 第1の封止接合部
140 第2の外包材
150、150a、b、c、d 第2の封止接合部
160 第3の外包材
170、170a、b、c、d 第3の封止接合部
200 真空断熱体
I 第1の封止領域
S 第2の封止領域
M 第3の封止領域
V,I 真空断熱体の内部圧力
V,S 真空断熱材の内部圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材部を含む真空断熱材であって、
前記芯材部を収納しかつ内部を減圧状態に維持できる第1の外包材を含む真空断熱体と、
前記真空断熱体を収納しかつ内部を減圧状態に維持できる第2の外包材と、を含み、かつ
前記第1の外包材と前記第2の外包材とが、異なる材料で形成されていることを特徴とする真空断熱材。
【請求項2】
前記第2の外包材の内側に、前記真空断熱体を収納しかつ内部を減圧状態に維持できる、少なくとも1つの第3の外包材を含む、請求項1記載の真空断熱材。
【請求項3】
前記真空断熱体の内部圧力が、前記真空断熱材の内部圧力よりも低い、請求項1又は2記載の真空断熱材。
【請求項4】
前記第2の外包材が、金属製外包材である、請求項1〜3のいずれか1項記載の真空断熱材。
【請求項5】
前記第2の外包材が、ステンレス製外包材である、請求項1〜3のいずれか1項記載の真空断熱材。
【請求項6】
前記芯材部が、無機系芯材部である、請求項1〜5のいずれか1項記載の真空断熱材。
【請求項7】
前記第1の外包材が樹脂製外包材である、請求項1〜6のいずれか1項記載の真空断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−222098(P2009−222098A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65554(P2008−65554)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】