説明

真空断熱構造

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば冷蔵庫や冷凍庫等に用いられる真空断熱構造に関し、より詳しくは、庫内と庫外との間の断熱性能を向上させる真空断熱構造に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、例えば冷蔵庫や冷凍庫では、庫内と庫外との間の断熱が、冷蔵能力や冷凍能力の向上を図るために重要な要素である。このため、近年では、冷蔵庫等の外枠を構成する断熱箱体の外箱の内面に、図3に示すような真空断熱構造を採用している。
【0003】即ち、上記真空断熱構造は、熱伝導率の低い無機系の微粉末(例えばパーライトやシリカ等)からなるスペーサー材2を、通気性の良い中袋(例えばクラフト紙や不織布等)3に充填する。この中袋3をカラー鋼板製の外箱5の内面に設けた合成樹脂層(シーラント材)5aの上にセットする。そして、この中袋3を真空保持性の良い外包容器(例えばプラスチックラミネートシート等)4で覆って内部を減圧した後、この外包容器4のフランジ部4aを上記外箱5の合成樹脂層5aにヒートシールして真空密封している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記中袋3は柔軟性があり、その外面形状が一定でないことから外包容器4の内面形状に合わないことがある。その結果、図3に示すように外包容器4の内面と中袋3の外面との間に空洞部6ができると、この空洞部6に面する外包容器4に大気圧による応力が加わってクラックが発生しやすく、クラックが発生すると、内部の真空度が低下して断熱性能が低下するという問題があった。また、この空洞部6に面する外箱5にへこみが発生しやすく、へこみが発生すると、外観性が悪化して品質が低下するという問題があった。
【0005】そこで、本発明の目的は、外包容器にクラックが発生せず、かつ外箱にへこみが発生しない真空断熱構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、片面にヒートシール用の合成樹脂層を有する基板と、熱伝導率の低い粉末からなるスペーサー材と、通気性のフィルターを取付けた少なくとも1つの排気孔を有し、上記スペーサー材を内部に充填する合成樹脂製中空容器と、上記基板の上にセットした上記中空容器の外面に隙間なく嵌まり合う内面形状に成形され、フランジ部が上記合成樹脂層を介して上記基板に接合されて、上記中空容器とともに上記スペーサー材を真空密封する非通気性の外包容器とを備えたことを特徴としている。
【0007】
【作用】中空容器に外包容器が隙間なく嵌まり合うので、中空容器と外包容器との間には従来のような空洞部ができない。したがって、空洞部に起因するクラックやへこみが発生しなくなり、断熱性能の低下や品質の低下を来たさない。
【0008】
【実施例】図1は本発明の一実施例である真空断熱構造の断面図、図2はこの真空断熱構造における中空容器の構成を示す図である。
【0009】図1及び図2に示すように、合成樹脂で四角形状の剛性の中空容器13を成形する。この中空容器13の4つの側壁のうち2つの側壁に排気孔13aを一個ずつ設け、この各排気孔13aの内面側にクラフト紙や不織布製の通気性フィルター11を貼り付ける。この中空容器13の開口部の外周囲には、フランジ部13bを設け、このフランジ部13bに合致する蓋13cを設ける。
【0010】上記中空容器13の中空部13dには、パーライトやシリカ等のように熱伝導率の低い無機系の微粉末からなるスペーサー材12を所定量だけ充填する。そして、充填後に、開口部を蓋13cで閉じ、この蓋13cをフランジ部13bにヒートシールして、中空容器13内にスペーサー材12を封入する。
【0011】上記中空容器13は、基板としての断熱箱体のカラー鋼板製外箱15の内面に設けたヒートシール用の合成樹脂層15aの上に、蓋13c側を密着させてセットする。
【0012】一方、非通気性のプラスチックラミネートフィルムで四角箱状の剛性の外包容器14を成形する。この外包容器14は内側にヒートシール用のプラスチック層を有する。この外包容器14は、上記外箱15の合成樹脂層15aの上にセットした中空容器13の外面に隙間なく嵌まり合う内面形状に成形されている。そして、中空容器13が取り付けられた外箱15を真空チャンバー内に入れて真空引きを行い、中空容器13内が所定の真空度に達したときに、外包容器14を中空容器13に嵌め合わせて、外包容器14のフランジ部14aを外箱15の合成樹脂層15aにヒートシールする。この真空引きのときに、中空容器13内の空気は通気性フィルター11を介して排気孔13aから容易に排出される。
【0013】以上まとめると、スペーサー材12を中空容器13に充填した後、この中空容器13を外箱5の合成樹脂層15aの上にセットして、真空引きし、その後、外包容器14を嵌め合わせて、フランジ部14aを合成樹脂層15aにヒートシールすることにより、中空容器13とともにスペーサー材12を外包容器14で真空密封する。
【0014】上記構成であれば、中空容器13と外包容器14は、合成樹脂の成形体で剛性があり、かつ外包容器14は、中空容器13に隙間なく嵌まり合うように成形しているから、外包容器14と中空容器13との間に従来のような空洞部ができなくなる。したがって、外包容器14には、空洞部に起因する応力が加わらないのでクラックが発生せず、内部の真空度を長期間にわたって維持できるので、断熱性能が向上する。また、外箱15には、空洞部に起因するへこみが発生しないので、外観性が良好になり、品質が向上する。なお、上記実施例ではスペーサ材の微粉末は無機系であったが、有機系でもよい。また、中空容器ならびに外包容器の形状は上記実施例に限られるものではなく外包容器の内面が中空容器の外面に沿うという条件を満たせば、その形状はどのようなものでもよい。また、排気孔13aを設ける位置及び数も種々変更できる。
【0015】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明の真空断熱構造は、スペーサー材を充填する中空容器を合成樹脂で成形すると共に、非通気性外包容器を内面が中空容器外面に沿う形状に成形し中空容器の外面に外包容器を隙間なく嵌め合わせて外包容器のフランジ部を基板に接合するようにしたものである。したがって、上記中空容器は、それ自体で形状を維持できる剛性を有し、この中空容器に外包容器が隙間なく嵌まり合うので、中空容器と外包容器との間に従来のような空洞部ができなくなり、空洞部に起因するクラックやへこみが発生しなくなるので、断熱性能が向上するとともに、品質も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係る真空断熱構造の断面図
【図2】 上記真空断熱構造における中空容器の分解斜視図
【図3】 従来の真空断熱構造の断面図
【符号の説明】
11…フィルター、12…スペーサー材、13…中空容器、13a…排気孔、14…外包容器、14a…フランジ部、15…外箱(基板)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 片面にヒートシール用の合成樹脂層を有する基板と、熱伝導率の低い粉末からなるスペーサー材と、通気性のフィルターを取付けた少なくとも1つの排気孔を有し、上記スペーサー材を内部に充填する合成樹脂製中空容器と、上記基板の上にセットした上記中空容器の外面に隙間なく嵌まり合う内面形状に成形され、フランジ部が上記合成樹脂層を介して上記基板に接合されて、上記中空容器とともに上記スペーサー材を真空密封する非通気性の外包容器とを備えたことを特徴とする真空断熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】第2618541号
【登録日】平成9年(1997)3月11日
【発行日】平成9年(1997)6月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−62919
【出願日】平成3年(1991)3月27日
【公開番号】特開平4−300496
【公開日】平成4年(1992)10月23日
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【参考文献】
【文献】特開 昭63−270996(JP,A)
【文献】実公 昭61−25585(JP,Y2)