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真空紫外光発生及び紫外光分離装置並びに方法
説明

真空紫外光発生及び紫外光分離装置並びに方法

【課題】紫外光を容易に真空紫外光から分離除去する真空紫外光発生及び真空紫外光/紫外光波長分離装置並びに方法を提供する。
【解決手段】真空紫外光発生部2は、紫外レーザー光rを受光しフォーカスする第1のレンズ11と、フォーカスされた紫外レーザー光rを波長変換し真空紫外レーザー光r1を発生するガスセル5と、発生した真空紫外レーザー光r1をフォーカスする第2のレンズ12と、を備え、紫外光分離部3は、フォーカスされた真空紫外レーザー光r1を通過させる第1のアパーチャー21と、第1のアパーチャー21を通過した真空紫外レーザー光r1を受光しフォーカスする第3のレンズ13と、第3のレンズ13でフォーカスされた真空紫外レーザー光r1を通過させる第2のアパーチャー22と、を備え、紫外レーザー光r2の混合比を減少させ真空紫外レーザー光r1を取り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空紫外光を発生し真空紫外光発生の基本波である紫外光を分離する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微粒子の大気中への放出が大きな社会問題となっており、特にディーゼル車の排ガス規制を始めとするPM2.5(空気力学径が2.5μm以下の粒子)の問題などは健康被害の大きさから法規制も年々厳しくなっている。大気中の微粒子の存在量の測定には、フィルター捕集による重量法が一般的に用いられている。さらに、連続自動測定方法として、光散乱法、圧電天ビン法、β線吸収法は、適用例が多く、1時間値(60分間試料吸引を続けて測定する場合の測定値)の連続測定に優れている。微粒子の成分測定としては、蛍光X線による分析やイオンクロマトグラフ法などが一般的である。しかし、これらの微粒子測定は多数の微粒子を同時に測定し、それらの平均的な情報を得るバルクでの評価がほとんどであり、微粒子毎の評価はほとんど実施されてきていない。これは、微粒子毎の評価が難しいことに起因しているが、微粒子毎に評価しないと発生起因等の重要情報を明確にできない可能性がある。そのため、微粒子毎のサイズや形状、毒性など発生起因と人間に与える影響を評価するために微粒子中の分子の存在分布のマッピングを行う必要がある。
【0003】
元素マッピングであれば、SEM(走査型電子顕微鏡)やEPMA(電子線マイクロアナライザ)を用いることができ、一般的である。また、近年、FIB−TOF−SIMS(集束イオンビームを用いた飛行時間型2次イオン質量分析装置)装置が開発され(非特許文献1)、同一微粒子の表面と内部の両方について元素マッピングが可能になった。しかし、元素マッピングに用いられる装置を用いて分子マッピングを行おうとしても、実際には難しい。SEMやEPMAは元より、FIB−TOF−SIMSで採用されているような、イオンビームを用いたスパッタリングでは、ほとんどの分子はイオン化されないので、質量分析を行っても分子は検出できず、従って、分子マッピングを行うことができない。
【0004】
また、同じ組成であっても分子種が異なると毒性に大きな違いがあることが多い。このため、微粒子の毒性評価には微粒子に含まれている分子種の特定が必要である。分子種を特定する手段として、FIB−TOF−SIMSとレーザーイオン化技術を組み合わせたFIB−REMPI(集束イオンビーム共鳴多光子イオン化)法(特許文献1〜3)が報告されている。FIB−REMPIは、レーザー波長と共鳴する分子のエネルギー準位を利用したレーザーイオン化技術であるREMPI法とFIB−TOF−SIMSを組み合わせたもので、イオンビームで粒子をスパッタリングした際に発生する中性分子をレーザーによりイオン化して質量分析する方法である。そして、FIB−REMPIによる、粒子表面の特定分子のマッピングも報告されている。ただ、この方法は、特定の1分子種のみのマッピングしかできず、他の分子も含めた分子の全体像把握が困難であった。
【0005】
そこで、複数の分子種を一括で測定するために、YAGレーザー光の4倍波や5倍波などの紫外レーザー光を用いた非共鳴多光子イオン化法を適用し、複数の分子種を同時にイオン化して質量分析することが試みられてきた。しかしながら、非共鳴多光子イオン化法は、分子の電子状態に多光子が関与する多段階過程であり、分子のフラグメントが起こり易い励起状態の中間状態を経由するため、質量分析で正確な分子の特定が難しかった。
【0006】
このため、中間状態を経由しない一光子イオン化法が注目された。しかし、有機分子の一光子イオン化のためには真空紫外領域のレーザー光が必要とされる。真空紫外レーザー光は、空気中では伝播できず、真空紫外レーザー光を用いた実験は、通常、真空中で行う。そのため、レーザー光の通過経路も掴み難いため、光学系の光軸の調整が困難であった。スパッタリングされた中性分子が拡散される領域はμmオーダー領域であり、レーザーイオン化のための最適なイオン化スポット領域は小さいため、光学系の微妙な調整が必要となる。また、スパッタリングされた中性分子をイオン化するためには高強度の真空紫外レーザー光が必要とされるが、そのような真空紫外レーザー発振器は市販されていない。既存のレーザー装置を用いて高強度の真空紫外光を発生させる方法としては、Nd:YAGレーザー光の3倍波(355nm)を、Xeガスを適当な圧力で封入したガスセルに入射し、焦点を結んだ位置で再度3倍波に変換して、波長118nmの真空紫外光を発生させる方法が最も好適である。ここで、真空紫外光発生に使用したNd:YAGレーザー光3倍波の紫外光が真空紫外光に混じっていると、中性分子は紫外光により多段階イオン化される際にフラグメント化が起こりやすい中間状態を経由するため、フラグメント化を起こす可能性が高くなる。
【0007】
そこで、中性分子の一光子イオン化のためには真空紫外光から紫外光を排除することが一つの鍵となる。紫外光排除のため、真空紫外光から紫外光を分離除去する方法としては、4枚のプリズムPを利用する方法(図4)や、図5に示すように、紫外光を受光する入口側レンズ52の光軸と光軸をずらしてレンズ53を配し、レンズ53の中心から外した位置に紫外光が混じった真空紫外光を通すことにより、真空紫外光と紫外光に対するレンズの屈折率の違いを利用して、レンズ53から出射する真空紫外光と紫外光の方向を変えることにより分離する方法などがある。
【0008】
しかし、4枚のプリズムを使う方法は、光学系の枚数が多いためロスが大きく、真空紫外光の強度が低下してしまう。また、真空紫外光強度を高くするために紫外光出力を大きくすると、光学系にダメージが入るため現実的ではない。
【0009】
一方、図5に示すように、レーザー光を、レンズ53の光軸から外れた位置で角度をつけて入射する方法を用いれば、レンズ53にプリズムの機能を持たせて紫外光と真空紫外光を分離することができる。さらに、光学系は、真空紫外光発生後はレンズが1枚しかないため、ロスが少なく高強度の真空紫外光が取り出せる。ところが、真空紫外光の出射方向の確認が難しいため、真空紫外光を微小領域に正確に照射することは困難であった。
【0010】
以上の様に、一光子イオン化法では、真空紫外光を発生させた後、紫外光を分離除去し、高強度の真空紫外光を微小領域に正確に照射する方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3140577号公報
【特許文献2】特許第3188925号公報
【特許文献3】特許第3140557号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】T. Sakamoto and J. Yamaguchi.,Applied Surface Science 255, 1621-1624(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述のように、環境問題となっているPM2.5等の微粒子を粒子毎に測定し解析する技術として、真空紫外レーザーイオン化SNMS(2次中性粒子質量分析法:Secondary Neutral Mass Spectrometry)は有用な技術であることが期待されている。真空紫外レーザーイオン化SNMSは、光学系を調整して高強度の真空紫外レーザー光を微小領域に正確に照射することが求められる。真空紫外レーザーイオン化SNMSに用いる真空紫外光は、紫外光を基本波として高調波発生により高強度の真空紫外光を得る。このとき、紫外光が真空紫外光に混じってしまうので、測定に悪影響を与える可能性があった。
【0014】
以上の問題点を解決するために、本発明は、紫外レーザー光の高調波により高強度の真空紫外光を発生させて、微小領域に真空紫外光を正確に照射し、紫外光を容易に精密光軸調整可能な手段で真空紫外光から分離除去して、測定に悪影響を及ぼさないようにする真空紫外光発生及び真空紫外光/紫外光波長分離装置並びに方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の通りである。
(1)紫外レーザー光から真空紫外レーザー光を発生させ真空紫外レーザー光を取り出す真空紫外光発生及び紫外光分離装置であって、真空紫外光発生部と、紫外光分離部とからなり、前記真空紫外光発生部は、紫外レーザー光を受光しフォーカスする第1のレンズと、前記フォーカスされた紫外レーザー光を波長変換し真空紫外レーザー光を発生させるガスセルと、前記発生した真空紫外レーザー光をフォーカスする第2のレンズと、を備え、前記紫外光分離部は、前記フォーカスされた真空紫外レーザー光を通過させる第1のアパーチャーと、前記第1のアパーチャーを通過した真空紫外レーザー光を受光しフォーカスする第3のレンズと、前記第3のレンズでフォーカスされた真空紫外レーザー光を通過させる第2のアパーチャーと、を備え、前記紫外レーザー光の混合比を減少させ真空紫外レーザー光を取り出すことを特徴とする真空紫外光発生及び紫外光分離装置。
(2)前記第1のレンズの光軸と、前記第2のレンズの光軸と、前記第1のアパーチャーの光軸と、前記第3のレンズの光軸と、前記第2のアパーチャーの光軸と、は全て同軸であることを特徴とする(1)に記載の真空紫外光発生及び紫外光分離装置。
(3)前記第1のアパーチャーと、前記第3のレンズと、前記第2のアパーチャーと、は配置位置の調整機構を備えていることを特徴とする(1)または(2)に記載の真空紫外光発生及び紫外光分離装置。
(4)紫外レーザー光から真空紫外レーザー光を発生させ真空紫外レーザー光を取り出す真空紫外光発生及び紫外光分離方法であって、第1のレンズにより紫外レーザー光を受光してフォーカスし、ガスセルにより前記フォーカスされた紫外レーザー光を波長変換して真空紫外レーザー光を発生させ、第2のレンズにより前記発生した真空紫外レーザー光をフォーカスし、第1のアパーチャーにより前記フォーカスされた真空紫外レーザー光を通過させ、第3のレンズにより前記第1のアパーチャーを通過した真空紫外レーザー光を受光しフォーカスし、第2のアパーチャーにより前記第3のレンズでフォーカスされた真空紫外レーザー光を通過させ、前記紫外レーザー光の混合比を減少させ真空紫外レーザー光を取り出すことを特徴とする真空紫外光発生及び紫外光分離方法。
(5)前記第1のレンズの光軸と、前記第2のレンズの光軸と、前記第1のアパーチャーの光軸と、前記第3のレンズの光軸と、前記第2のアパーチャーの光軸と、は全て同軸であることを特徴とする(4)に記載の真空紫外光発生及び紫外光分離方法。
(6)前記第1のアパーチャーと、前記第3のレンズと、前記第2のアパーチャーと、の配置位置を調整して、前記第2のアパーチャーを通過する真空紫外レーザー光の出力を最大化することを特徴とする(4)または(5)に記載の真空紫外光発生及び紫外光分離方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、微粒子表面の分子をマッピングして微粒子表面上の分子の配置を調べるために、ガリウムイオン等のFIB(集束イオンビーム)でスパッタした微粒子表面の中性分子に真空紫外光を照射して中性分子を励起し一光子過程でイオン化した分子イオンを質量分析器により検出する際に、高調波発生による真空紫外光発生の基本波として使用した紫外光を真空紫外光から分離し、紫外光が測定に影響を与えることを避けることができる。また、正確な位置に真空紫外光が照射されるように光学系の光軸を調整することができる。また、光学系が最小限の構成で済むため、光学ロスを最小限に抑え高強度の真空紫外光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる真空紫外光発生及び紫外光分離装置の概略図。
【図2】実施例1における、本発明の真空紫外光発生及び紫外光分離装置とレーザーイオン化質量分析装置との関係を示す概略図。
【図3】実施例2における、本発明の真空紫外光発生及び紫外光分離装置とFIB−TOF−SIMS装置との関係を示す概略図。
【図4】4つのプリズムを利用した波長分散による従来の紫外光分離装置を示す概略図。
【図5】光軸をずらしたレンズによる従来の紫外光分離装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に、本発明の精密光軸調整可能な真空紫外光発生及び紫外光分離装置を模式的に示す。真空紫外光発生及び紫外光分離装置1は、真空紫外光発生部2と紫外線分離部3が、装置接続部4を介して配置されている。真空紫外光発生部2は、ガスセル5内に、YAGレーザー光第3高調波(355nm)の紫外光を3倍波に変換する非線形光学媒質6が封入され、ガスセル5の入口側および出口側に、それぞれ第1のレンズ11、第2のレンズ12を備えている。紫外線分離部3は、第1のアパーチャー21、第3のレンズ13、第2のアパーチャー22を備えている。第1のレンズ11、第2のレンズ12、第1のアパーチャー21、第3のレンズ13、第2のアパーチャー22の光軸は、全て同軸である。第1のアパーチャー21、第3のレンズ13、第2のアパーチャー22は、光軸方向の配置位置の調整機構(図示省略)を備えている。真空紫外光発生部2から発生する真空紫外光の波長は、例えば118nmである。
【0019】
波長118nmの真空紫外光を発生させるための真空紫外光発生部2は、以下の様に構成することができる。即ち、非線形光学媒質6であるXeガスを適切な圧力で封入したガスセル5に、Nd:YAGレーザー光の第3高調波(355nm)を第1のレンズ11で集光して入射させ(紫外光r)、第1のレンズ11の焦点の位置f1で更に3倍波に変換して、波長118nmの真空紫外光r1を発生させる。Nd:YAGレーザー光のパルス時間幅は、ns〜fsオーダーが好適であり、最も好適なのは5ns〜15ns程度である。ns〜fsの中でも、パルス幅が長いナノメートルの領域のパルス幅が最適であるのは、ps、fsの極短パルスレーザーは一般に尖頭値が高いので短時間に過剰エネルギーを試料に与えてフラグメント化させる可能性が高くなるためである。レーザーパルスの繰り返し周波数は高いほど良いが、市販の紫外レーザーを用いる場合は、パルス繰り返し周波数10〜100Hzが一般的である。本発明者らが鋭意検討した結果によれば、安定性と感度、マッピングの時間を満足させる点で、パルス繰り返し周波数は100Hzが最も好適である。
【0020】
光子エネルギーεと真空紫外レーザー光の波長λとの関係は、以下の式で表される。
ε=hc/λ
但し、hはプランク定数、cは光速度である。
【0021】
したがって、あるターゲット分子のイオン化ポテンシャルをIPとすると、光子エネルギーεは以下の式を満たすように設定される。
IP<ε
IP<hc/λ
この条件を満たすとき、目的とするターゲット分子をイオン化することが可能となる。つまり、真空紫外レーザー光の光子エネルギーより低いイオン化ポテンシャルを有するターゲット分子は、全て一括してイオン化し質量分析器で検出することが可能となる。波長118nmの真空紫外光を使用した場合は、イオン化ポテンシャルが10.5eV以下の分子を一括してイオン化することができ、質量分析することができる。
【0022】
ここで、Nd:YAGレーザー光の第3高調波である紫外光が直接イオン化部に入射すると、紫外光を吸収した測定分子が分解する可能性があるため、イオン化部に入射する前に紫外光を取り除く必要がある。
【0023】
図1にしたがって、本発明の真空紫外光発生及び紫外光分離装置1について説明する。真空紫外光を発生させるために、まず紫外光を、Xeガスからなる非線形光学媒質6を封入したガスセル5に入射させる。その際、大気とXeガスを仕切るために、合成石英製の第1のレンズ11がガスセル5の入口側に配置されている。第1のレンズ11で絞られた紫外光rは、焦点f1の位置で高調波発生により真空紫外光r1に効率良く変換される。発生した真空紫外光r1は紫外光rに比べて短波長なので、焦点f1から、入射した紫外光rよりも広がって伝播する。
【0024】
次に、焦点f1から入射光と同軸方向の反対側に、真空紫外光がほとんど減衰しないで透過する材質でできた第2のレンズ12が配置される。焦点f1から第2のレンズ12までの距離は、第2のレンズ12の焦点距離の2倍程度とする。焦点距離が50mmであれば焦点f1からの距離は10cm程度となる。好ましい距離は5cm〜15cmである。このような第2のレンズ12の材質としてはフッ化マグネシウムもしくはフッ化リチウムがあるが、その中でも経年劣化が少ないフッ化マグネシウムが最も好適である。第2のレンズ12により真空紫外光r1を集光し、図1の焦点f2の位置に第2の焦点を結ばせる。
【0025】
焦点f2の位置に、径がφ1mm〜φ2mm程度の穴が空いている第1のアパーチャー21が配置される。その際、紫外光r2は、真空紫外光r1よりも屈折率が小さいので、焦点f2の位置では、第2のレンズ12により真空紫外光r1ほどにはまだ絞られておらず、第1のアパーチャー21の位置で1cm程度のビーム径となる。ビームの中心部を除く紫外光r2の大部分は第1のアパーチャー21により遮蔽されて、第1のアパーチャー21を通過する紫外光r2の強度は1/100程度になる。第1のアパーチャー21を通過したビームの中心部の紫外光r2は第1のアパーチャー21の先の光路を進んだ位置で第2の焦点を結んだ後、再度広がって伝播する。さらに進行方向前方に、第3の集光レンズである第3のレンズ13が配置される。第3のレンズ13は第2のレンズ12と比較して焦点距離が長いレンズであり、焦点距離60cm〜100mm程度が好ましい。第2のレンズ12と第3のレンズ13の焦点距離及び配置の関係は、真空紫外光r1は第3の焦点を結ぶが紫外光r2は絞り切れず発散する条件とする。さらに、真空紫外光r1が第3の焦点を結ぶ位置(焦点f3)よりも手前の位置に、径がφ5mm〜φ8mm程度の穴が空いている第2のアパーチャー22が配置される。第2のアパーチャー22の位置では、紫外光r2は依然としてビームが拡がりつつあり、ビーム径は直径5cm程度になっているため、第2のアパーチャー22を通過する紫外光r2の強度はさらに1/100程度になる。第2のアパーチャー22を通過した後、真空紫外光r1は絞られるが、先の条件では紫外光r2は発散しており、第2のアパーチャー22を通過した後、真空紫外光r1が第3の焦点f3を結ぶ領域では紫外光r2のビーム系は5cm以上になっており、紫外光r2の光強度はさらに1/100以下になる。
【0026】
これらの一連の過程により、紫外光r2は入射した紫外光rの強度の10−6以下になり、紫外光rの真空紫外光r1への変換効率は10−4程度なので、真空紫外光r1の光強度と比較しても10−2以下にすることができる。
【0027】
光学系の光軸調整は、ビームの出射位置が判る紫外レーザー光を用いて行う。まず、第1〜第3のレンズ11、12、13を全て外し、真空紫外光発生部2と紫外光分離部3を分けていた第2のレンズ12のみ平面基板と交換して、光学系の中心を紫外光が通るように光学系を調整する。これは、第2のレンズ12を入れたまま光軸調整を行うと、紫外レーザー光が入射した際に広がってしまい、光学系の中心をレーザー光が正確に通っているか確認できないからである。さらに、第2のレンズ12を平面基板と交換して光軸調整を行うのは、大気との開放部を遮蔽するために平面基板で仕切り、装置内の真空をなるべく保てるようにするためである。次に、イオンビームでスパッタした中性分子が拡散する焦点f3に位置する微小領域を紫外レーザー光が通過するように光学系を配置し、且つ、第1〜第3のレンズ11、12、13を入れ直した際に第1〜第3のレンズ11、12、13の中心部を通るように紫外光が通過するように紫外光を調整する。その後、レンズホルダーに第1〜第3のレンズ11、12、13を入れる。第1〜第3のレンズ11、12、13の焦点距離や第1、第2のアパーチャー21、22の位置が適切な場合は、真空紫外光のみが微小領域に焦点を結ぶことを可能にする。
【0028】
微粒子測定の際は、本発明の真空紫外光発生及び紫外光分離装置1をFIB−TOF−SIMS装置に接続する。紫外光も真空紫外光もビームの中心軸は一致しており、レンズの中心を通過するので、イオンビームでスパッタした中性分子が拡散する微小領域を紫外光が通過するように調整することにより、真空紫外光も対象の微小領域を通過するように調整することができる。
【0029】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
本実施例では、本発明の真空紫外光発生及び紫外光分離装置1に紫外レーザー光を入射し、発生した真空紫外光により中性分子をイオン化して質量スペクトルを測定するとともに、入射した紫外レーザー光が十分に減衰しているかを検証した。図2に示すように、本発明の真空紫外光発生及び紫外光分離装置1をレーザーイオン化質量分析装置31に接続した。非線形光学媒質6としてキセノンを使用し、本発明の真空紫外光発生及び紫外光分離装置1のガスセル5に導入した。測定する試料ガスとして、空気ベースに微量のベンゼン、トルエン、キシレンを含むガスをレーザーイオン化質量分析装置31の真空槽32に導入し、Nd:YAGレーザー光第3高調波を本発明の真空紫外光発生及び紫外光分離装置1に入射して得られた真空紫外光を試料ガスに照射した。試料ガス分子は真空紫外光により光イオン化され、電極により加速され飛行時間型質量分析部33に送られた。リフレクトロン34によりイオン化分子は折り返され、MCP検出部35で検出され、イオン信号は電流量として出力された。イオン化した試料をパルス的に加速し、MCP検出部35で検出するまでの時間差を検出して質量スペクトルを得た。つまり、イオンが受ける電荷量が一定条件下であれば、質量電荷比が大きいものほど飛行時間が長くなることを利用し、質量スペクトルを得た。その際に、ガスセル内のキセノンの圧力を適切に調整した際は、質量スペクトルが得られたが、キセノンをガスセルから吸引排出した際には質量スペクトルは全く得られなかった。また、真空紫外光発生及び紫外光分離装置1の出射口側に蛍光紙36を置いて、蛍光が目視できない程度に紫外光は減衰していることが確認された。
【0031】
(実施例2)
本発明の真空紫外光発生及び紫外光分離装置1を用いて、微粒子の像を観察しながら粒子を構成する分子を観察した。図3のように、本発明の真空紫外光発生及び紫外光分離装置1をFIB−TOF−SIMS装置41に接続した。このとき、スパッタ領域に真空紫外光が焦点を結ぶよう調整した。FIB−TOF−SIMS装置41は真空装置であるので、FIB−TOF−SIMS装置41に接続した真空紫外光発生及び紫外光分離装置1は、真空紫外光発生部2と紫外光分離部3の境界の装置接続部4で真空を持たせるためシールを行った。イオンビームは、スパッタ領域の大きさにより条件を選択する必要があるが、マイクロメートルオーダーの微粒子の測定には、ビーム径を100nm程度に絞ることが可能なガリウムイオンビームが最も好適である。ガリウムイオンビームが照射された位置から、分子が中性状態でスパッタされる。スパッタされた分子に真空紫外レーザー光を照射した。真空紫外レーザー光が照射された中性分子はイオン化し、質量分析装置42で検出した。微粒子表面のイオンビームの照射位置を掃引することにより、微粒子表面のスパッタされる領域を変化させることができる。スパッタ位置を変えながらスパッタにより生じた中性分子を真空紫外レーザー光でイオン化して質量分析することにより、微粒子表面に含まれる分子種をマッピング像として得ることができた。
【0032】
イオンビームと真空紫外レーザー光の入射のタイミングは、発明者らが鋭意検討した結果、イオンビーム入射後2〜3μs後に真空紫外レーザー光を照射するのが最も好適であった。
【0033】
測定対象試料としてアントラセンを含む標準環境微粒子を選び測定した。微粒子は直径が凡そ2μmである。測定の結果、マッピング像の一部にアントラセンの質量数の分子が存在していることが明らかになった。
【0034】
アントラセン以外にも標準粒子に含まれるピレンの質量数の分子も検出し、複数の分子種をそれぞれマッピングすることが可能であった。
【0035】
(比較例)
本発明の真空紫外光発生及び紫外光分離装置1の代わりに、図5に示す光軸をずらしたレンズによる紫外光分離装置51を利用し、それ以外は実施例2の条件により測定を行った。その結果、真空紫外光が発生している条件にも関わらず、アントラセンは検出されなかった。図5の紫外光分離装置51では、真空紫外光の微調は可能だが、その光を微調しても信号は検出されなかった。そして、分子種のマッピングのためのレーザーイオン化の信号を測定することすら出来なかった。
【符号の説明】
【0036】
1 真空紫外光発生及び紫外光分離装置
2 真空紫外光発生部
3 紫外光分離部
4 装置接続部
5 ガスセル
6 非線形光学媒質
11 第1のレンズ
12 第2のレンズ
13 第3のレンズ
21 第1のアパーチャー
22 第2のアパーチャー
r、r2 紫外光
r1 真空紫外光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外レーザー光から真空紫外レーザー光を発生させ真空紫外レーザー光を取り出す真空紫外光発生及び紫外光分離装置であって、
真空紫外光発生部と、紫外光分離部とからなり、
前記真空紫外光発生部は、
紫外レーザー光を受光しフォーカスする第1のレンズと、
前記フォーカスされた紫外レーザー光を波長変換し真空紫外レーザー光を発生させるガスセルと、
前記発生した真空紫外レーザー光をフォーカスする第2のレンズと、を備え、
前記紫外光分離部は、
前記フォーカスされた真空紫外レーザー光を通過させる第1のアパーチャーと、
前記第1のアパーチャーを通過した真空紫外レーザー光を受光しフォーカスする第3のレンズと、
前記第3のレンズでフォーカスされた真空紫外レーザー光を通過させる第2のアパーチャーと、を備え、
前記紫外レーザー光の混合比を減少させ真空紫外レーザー光を取り出すことを特徴とする真空紫外光発生及び紫外光分離装置。
【請求項2】
前記第1のレンズの光軸と、前記第2のレンズの光軸と、前記第1のアパーチャーの光軸と、前記第3のレンズの光軸と、前記第2のアパーチャーの光軸と、は全て同軸であることを特徴とする請求項1に記載の真空紫外光発生及び紫外光分離装置。
【請求項3】
前記第1のアパーチャーと、前記第3のレンズと、前記第2のアパーチャーと、は配置位置の調整機構を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の真空紫外光発生及び紫外光分離装置。
【請求項4】
紫外レーザー光から真空紫外レーザー光を発生させ真空紫外レーザー光を取り出す真空紫外光発生及び紫外光分離方法であって、
第1のレンズにより紫外レーザー光を受光してフォーカスし、
ガスセルにより前記フォーカスされた紫外レーザー光を波長変換して真空紫外レーザー光を発生させ、
第2のレンズにより前記発生した真空紫外レーザー光をフォーカスし、
第1のアパーチャーにより前記フォーカスされた真空紫外レーザー光を通過させ、
第3のレンズにより前記第1のアパーチャーを通過した真空紫外レーザー光を受光しフォーカスし、
第2のアパーチャーにより前記第3のレンズでフォーカスされた真空紫外レーザー光を通過させ、
前記紫外レーザー光の混合比を減少させ真空紫外レーザー光を取り出すことを特徴とする真空紫外光発生及び紫外光分離方法。
【請求項5】
前記第1のレンズの光軸と、前記第2のレンズの光軸と、前記第1のアパーチャーの光軸と、前記第3のレンズの光軸と、前記第2のアパーチャーの光軸と、は全て同軸であることを特徴とする請求項4に記載の真空紫外光発生及び紫外光分離方法。
【請求項6】
前記第1のアパーチャーと、前記第3のレンズと、前記第2のアパーチャーと、の配置位置を調整して、前記第2のアパーチャーを通過する真空紫外レーザー光の出力を最大化することを特徴とする請求項4または5に記載の真空紫外光発生及び紫外光分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−252121(P2012−252121A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124027(P2011−124027)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】