説明

真空紫外線を用いた方法により製造される表面架橋超吸収性ポリマー粒子を備えた吸収性物品

本発明は、表面架橋超吸収性ポリマー(SAP)粒子を含む吸収性物に関連し、SAP粒子は紫外線照射を用いた方法により作製されている。方法は、中空ドラム及び照射源を備えたドラム型反応装置で行われている。ドラムは、長手軸及び断面を有する。超吸収性ポリマー粒子がドラムに供給され、長手軸を中心に回転するドラム内を移動する間に照射される。照射源は、照射源から放出される照射が、前記のドラム内の超吸収性ポリマー粒子に到達できるような方法で用意される。本発明の方法で使用される照射源は、100nm〜200nmの波長の紫外線照射を放出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面架橋超吸収性ポリマー(SAP)粒子を含む吸収性物に関連し、そのSAP粒子は、紫外線(UV)を使用する方法で作製され、ドラム型反応装置で実行される。
【背景技術】
【0002】
超吸収性ポリマー類(SAP類)は、当該技術分野において周知である。SAPは一般に、おむつ、トレーニングパンツ、成人用失禁製品及び女性用ケア製品等の吸収性物品において、その製品の吸収能力を増大させる一方で、それらの全体容量を低下させる目的で適用される。SAPは、その重量の何倍もの量に等しい水性流体を吸収・保持する機能を備えている。
【0003】
SAPの商業生産は1978年に日本で始まった。初期の超吸収体は、架橋デンプン−g−ポリアクリレートであった。SAPの商業生産においては、部分的に中和させたポリアクリル酸が、最終的に初期の超吸収体を置き換え、SAPにおける主ポリマーとなっている。SAPは、多くの場合、小粒子形態で適用される。SAPは一般に、部分的に中和させ、僅かに架橋させたポリマー網状組織から成り、このポリマー網状組織は親水性であり、水又は生理食塩水等の水溶液に浸漬させると膨張する。ポリマー鎖間の架橋によって、SAPが水に溶解しないことを確実にする。
【0004】
水溶液の吸収後、膨潤したSAP粒子は非常に柔らかくなり、簡単に変形する。変形により、SAP粒子間の空隙が封鎖され、これにより、液体に対する流動抵抗が劇的に増大する。これは一般に「ゲルブロッキング」と呼ばれている。ゲルブロッキング状態において、液体は拡散のみによって膨張したSAP粒子の間を通って移動することができず、これはSAP粒子間の隙間を流動するよりもはるかに遅い。
【0005】
ゲルブロッキングの軽減に一般的に適用される方法の1つは、粒子の剛性を高める方法であり、これにより、膨張したSAP粒子が元の形状を保ち、粒子間に空隙を生成し維持できるようになる。剛性を高める周知の方法は、SAP粒子の表面上に露出しているカルボキシル基を架橋することである。この方法は一般に表面架橋と呼ばれている。
【0006】
当該技術分野は、例えば、表面架橋され、界面活性剤をコーティングされた吸収性樹脂粒子、及びそれらの調製方法に関する。表面架橋剤は、SAP粒子の表面上にあるカルボキシル基と反応する少なくとも2つのヒドロキシル基を含むポリヒドロキシル化合物であり得る。一部の技術分野では、表面架橋は、150℃以上の温度で行われる。
【0007】
水溶性ペルオキシドラジカル反応開始剤も、表面架橋剤として知られている。その表面架橋剤が含まれている水溶液をポリマーの表面上に適用する。表面架橋反応は、ペルオキシドラジカル反応開始剤を分解させるが、ポリマーは分解させないような温度まで加熱することによって達成される。
【0008】
ごく最近では、表面架橋剤として使用するオキセタン化合物及び/又はイミダゾリジノン化合物の使用が開示されている。表面架橋反応は加熱下で行われることができ、その際、好ましくは60℃〜250℃の温度の範囲である。あるいは、表面架橋反応を、好ましくは紫外線を使用する光照射処理によって達成することもできる。
【0009】
一般的に、表面架橋剤がSAP粒子の面上に適用される。従って、反応は、好ましくはSAP粒子の表面上で起こり、その結果、粒子のコアには実質的な影響を及ぼすことなく、粒子の表面上に改善された架橋がもたらされる。ゆえに、SAP粒子がより堅くなり、ゲルブロッキングが低減される。
【0010】
前述の商業的な表面架橋プロセスの欠点は、比較的時間がかかり、通常は少なくとも約30分かかることである。しかし、表面架橋プロセスに必要な時間が長いほど、より多くの表面架橋剤がSAP粒子内に浸透して粒子内の架橋を増加させることになり、それがSAP粒子の能力に悪影響を与える。従って、表面架橋プロセスの時間が短いことが望ましい。更に、全体的に経済的なSAP粒子製造プロセスという点でも、短いプロセス時間が望ましい。
【0011】
一般的な表面架橋プロセスの別の欠点は、それらがたいてい約150℃以上の比較的高い温度の下でしか行われないということである。これらの温度では、表面架橋剤がポリマーのカルボキシル基と反応するだけでなく、ポリマー鎖内又はポリマー鎖間で隣接するカルボキシル基の無水物生成や、SAP粒子に併合されるアクリル酸二量体の二量体開裂等、その他の反応が活性化される。それらの副反応もコアに影響を及ぼし、SAP粒子の能力を低下させる。更に、高温への曝露により、SAP粒子の色の劣化を導く可能性がある。ゆえに、これらの副反応は一般に望ましくない。
【0012】
当該技術分野において既知のSAPは、通常、例えば水酸化ナトリウムによって、部分的に中和される。但し、中和は、慎重に表面架橋への必要性とのバランスを取らなければならない。当該技術分野において既知の表面架橋剤は、ポリマー鎖に含まれる遊離カルボキシル基と比較的速く反応するが、中和されたカルボキシル基との反応は非常に遅い。従って、既定のカルボキシル基は、表面架橋又は中和のいずれかに適用できるが、両方には適用できない。当該技術分野において既知の表面架橋剤は、化学基のカルボキシル基と反応し、脂肪族基とは反応しないことが好ましい。
【0013】
SAP粒子を製造するプロセスでは通常、遊離カルボキシル基の中和を初めに行い、その後、表面架橋を行う。実際、中和工程は、モノマーを重合且つ架橋させてSAPを形成させる前に、プロセスの一番初めに行うことが多い。このようなプロセスは「プレ中和プロセス」と名づけられている。あるいは、SAPは、重合中又は重合後(「ポスト中和」)に中和できる。更に、これらの代替形態の組み合わせも可能である。
【0014】
SAP粒子の外側表面にある遊離カルボキシル基の全体数は、前述の中和により制限されるが、遊絡カルボキシル基も又、均質に分配されていないと考えられている。従って、今のところ、均質に分配された表面架橋を持つSAP粒子を取得するのは困難である。一方、SAP粒子は、表面架橋の数が比較的多いかなり濃厚な表面架橋の領域と、表面架橋が僅かしかない領域を持つことが多い。この不均質は、望まれるSAP粒子の全体的な剛性に悪影響を与える。
【0015】
従って、本発明の目的は、均等に分配された均質の表面架橋を伴うSAP粒子の作製方法を提供することである。
【0016】
更に、ゲルブロッキングの回避に十分な剛性(「ゲル強度」とも呼ばれる)と、十分な膨張容量(「ゲルボリューム」とも呼ばれる)の両方を持つSAP粒子を取得することは困難である。一般的に、SAP粒子のゲル強度を増加させると、ゲルボリュームに悪影響を与え、逆も又同様である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明のさらなる目的は、表面架橋をSAP粒子の極めて表面のみに制限し、容量の低下を最小化することでもある。従って、SAP粒子のコアは大幅には影響を受けず、コアに導入される架橋が最小限に抑えられる。
【0018】
更に、SAP粒子の表面架橋をすばやく行い、方法を効率的にすることを提供することも本発明の目的である。
【0019】
加えて、本発明のさらなる目的は、無水生成物及び二量体開裂等の望ましくない副反応を軽減するため、中程度の温度で実行できるSAP粒子の表面架橋の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、表面架橋超吸収性ポリマー粒子を含む吸収性物であって、該超吸収性ポリマーが、
a)超吸収性ポリマー粒子を用意する工程と、
b)長手軸を有し、断面をさらに有するドラムを備えた反応装置を用意する工程であって、照射源によって放出された照射線が、該ドラム内の超吸収性ポリマー粒子に到達できるように照射源が設けられ、該照射源が100nm〜200nmの波長の紫外線を放出可能なものである、工程と、
c)該超吸収性ポリマー粒子を該ドラムに供給し、
d)該ドラムをその長手軸の周りに回転することによって、超吸収性ポリマー粒子を移動させる工程と、
e)該超吸収性ポリマー粒子が、ドラム内を粒子が移動する際に該照射源により照射される工程と、
f)該ドラムから出る超吸収性ポリマー粒子を収集する工程と含む方法によって製造されたものである、吸収性物品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
発明に準拠したSAP類は、好ましくは部分的に中和されたα,β−不飽和カルボン酸のホモポリマー若しくはそれと共に共重合可能なモノマーと部分的に中和されたα,β−不飽和カルボン酸のコポリマーを含む。更に、好ましくは、SAPに含まれるホモポリマー又はコポリマーは脂肪族基を含み、その脂肪族基のうち少なくとも幾つかが粒子の表面に部分的に含まれている。
【0022】
SAP類は、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース等の置換及び非置換の天然及び合成ポリマー;ポリビニルアルコール及びポリビニルエーテル類等の非イオン型;ポリビニルピリジン、ポリビニルモルフォリニオン、そしてN,N−ジメチルアミノエチル又はN,N−ジエチルアミノプロピルアクリレート類及びメタクリレート類、並びにそれらの各第四級塩等の陽イオン型を包含する、様々な化学的形態で入手可能である。典型的には、本明細書において有用なSAP類は、スルホン酸のような複数の陰イオン性官能基、及びより典型的にはカルボキシル基を有する。本明細書で使用するのに好適なポリマー類の例としては、重合可能な不飽和の酸含有モノマー類から調製されるものが挙げられる。従って、こうしたモノマー類には、少なくとも1つの炭素−炭素オレフィン性二重結合を含有するオレフィン性不飽和酸類及び無水物類が包含される。更に具体的には、このようなモノマー類はオレフィン性不飽和カルボン酸類及び酸無水物類、オレフィン性不飽和スルホン酸類、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0023】
SAP類を調製する際、幾つかの酸性ではないモノマー類が、通常は微量で包含される可能性もある。こうした酸性ではないモノマー類としては、例えば、酸を含有するモノマー類の水溶性又は水分散性のエステル類、並びにカルボン酸基又はスルホン酸基を全く含有しないモノマー類を挙げることができる。従って、任意の酸性ではないモノマー類には、次の種類の官能基:カルボン酸又はスルホン酸エステル類、ヒドロキシル基類、アミド基類、アミノ基類、ニトリル基類、第四級アンモニウム塩基類、アリール基類(例えば、スチレンモノマーに由来するようなフェニル基類)を含有するモノマー類を包含することができる。これらの酸性ではないモノマー類は、周知の材料であり、例えば米国特許第4,076,663号及び米国特許第4,062,817号により詳細に記載されている。
【0024】
オレフィン性不飽和のカルボン酸及びカルボン酸無水物のモノマー類には、アクリル酸自体で代表されるアクリル酸類、メタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、α−シアノアクリル酸、β−メチルアクリル酸(クロトン酸)、α−フェニルアクリル酸、β−アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、α−クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、p−クロロケイ皮酸、β−ステリルアクリル酸(sterylacrylic acid)、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、トリカルボキシエチレン及びマレイン酸無水物が挙げられる。
【0025】
オレフィン性不飽和スルホン酸モノマー類には、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸及びスチレンスルホン酸等の脂肪族又は芳香族のビニルスルホン酸類;スルホエチルアクリレート、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、スルホプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルスルホン酸及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のアクリル及びメタクリルスルホン酸が挙げられる。
【0026】
本発明による好ましいSAP類は、カルボキシル基を含有する。これらのポリマー類は、加水分解デンプン−アクリロニトリルのグラフトコポリマー類、部分的に中和された加水分解デンプン−アクリロニトリルのグラフトコポリマー類、デンプン−アクリル酸のグラフトコポリマー類、部分的に中和されたデンプン−アクリル酸のグラフトコポリマー類、鹸化された酢酸ビニル−アクリル酸エステルのコポリマー類、加水分解されたアクリロニトリル又はアクリルアミドのコポリマー類、前述のコポリマーのいずれかの僅かに網状架橋されたポリマー類、部分的に中和されたポリアクリル酸、及び部分的に中和されたポリアクリル酸の僅かに網状架橋されたポリマー類、部分的に中和されたポリメタクリル酸、及び部分的に中和されたポリメタクリル酸の僅かに網状架橋されたポリマー類を含む。これらのポリマー類は、単独で、又は2つ以上の異なるコポリマー類の混合物の形態で使用されることができ、混合物として使用されるときには、各々が部分的に中和される必要はないが、結果として生じるポリマーが部分的に中和されていなければならない。これらのポリマー材料の例は、米国特許第3,661,875号、米国特許第4,076,663号、米国特許第4,093,776号、米国特許第4,666,983号、及び米国特許第4,734,478号に開示されている。
【0027】
本明細書に用いるのに最も好ましいポリマー材料は、部分的に中和されたポリアクリル酸の僅かに網状架橋されたポリマー、部分的に中和されたポリメタクリル酸の僅かに網状架橋されたポリマー、これらのコポリマー及びそのデンプン誘導体である。最も好ましくは、部分的に中和され、僅かに網状架橋されたポリアクリル酸(つまり、ポリ(アクリル酸ナトリウム/アクリル酸))を含むSAP類である。SAP類は、好ましくは少なくとも50mol−%中和されており、より好ましくは少なくとも70mol−%、更により好ましくは75mol−%から95mol−%中和されている。網状架橋は、ポリマーを実質的に非水溶性にし、ヒドロゲルを形成する吸収性ポリマー類の吸収能力を決定するという一面もある。前記ポリマーを網状架橋するための方法及び典型的な網状架橋剤は、米国特許第4,076,663号により詳細に記載されている。
【0028】
α,β−不飽和カルボン酸モノマー類を重合するための好適な方法は水溶液重合であり、これは当該技術分野において周知である。α,β−不飽和カルボン酸モノマー類と、重合反応開始剤が含まれている水溶液は、重合反応させる。この水溶液には又、更に、α,β−不飽和カルボン酸モノマー類と共重合可能であるモノマー類を含めてもよい。少なくとも、α,β−不飽和カルボン酸は、モノマー類の重合前、重合中又は重合後に、部分的に中和させなければならない。
【0029】
水溶液のモノマーは、標準のフリーラジカルテクニックにより重合させ、一般には紫外線(UV)光活性化のための光開始剤を用いる。あるいは、レドックス反応開始剤を使用してもよい。しかしながらこの場合、高い温度が必要になる。
【0030】
吸水性樹脂は、好ましくは、非水溶性にするために僅かに(lightly)架橋させる。望ましい架橋構造は、選択した水溶性モノマーの共重合及び分子単位で重合可能な二重結合を少なくとも2つ以上処理する架橋剤により形成させてもよい。架橋剤は、水溶性ポリマーを架橋するのに効果的な量で含有させる。好ましい架橋剤の量は、所望の吸収能力の程度及び吸収された流体を保持するのに望ましい力、すなわち、負荷下での所望の吸収性によって決まる。通常、架橋剤は、使用される100重量部のモノマー(α,β−不飽和カルボン酸モノマー及び可能なコモノマーを含む)当たり、0.0005〜5重量部の範囲の量で使用される。100重量部につき5重量部を超える量の架橋剤を用いると、結果として生じるポリマー類の架橋密度は非常に高く、吸収能力が低下し、吸収された流体を保持する力が増大する。100重量部につき0.0005重量部未満の量で架橋剤を用いると、ポリマーの架橋密度は非常に低く、吸収すべき流体と接触すると、粘着性と水溶性が高くなり、特に負荷下では吸収性能が低下する。架橋剤は、典型的には水溶性である。
【0031】
架橋剤をモノマーと共重合させる代わりに、重合後に別個のプロセス工程にてポリマー鎖を架橋することも可能である。
【0032】
重合、架橋、及び部分的な中和後、ぬれた状態のSAPを脱水(すなわち、乾燥)し、乾燥SAPを得る。脱水工程は、粘性を有するSAPを約1〜2時間、強制空気オーブン内で約120℃まで加熱するか、又は粘性を有するSAPを約60℃で一晩中加熱することによって行うことができる。乾燥後のSAPに残留水の含有量は、主に乾燥時間及び温度に依存する。本発明では、「乾燥SAP」とは、残留水分の含有量が乾燥SAPの重量で0.5%から最大50%、好ましくは、0.5%から45%、より好ましくは0.5%から30%、更に好ましくは0.5%から15%、最も好ましくは、0.5%から5%を有するSAPを示す。以後、特に明示的に示さない限り、「SAP粒子」とは、乾燥SAP粒子を指す。
【0033】
SAP類は多数の形状の粒子に変換され得る。「粒子」という用語は、顆粒、繊維、フレーク、球体、粉末、小板、並びにSAPの当業者に既知のその他の形状及び形態のことを指す。例えば、粒子は、粒径約10μm〜1000μm、好ましくは約100μm〜1000μmを有する顆粒又は数珠状とすることができる。他の実施形態では、SAP類を、繊維の形状、すなわち、細長い針状SAP粒子とすることができる。これら実施形態において、SAP繊維の小さい方の寸法(すなわち、繊維の直径)は、約1mm未満、通常、約500μm未満、好ましくは250μm未満〜50μmまでである。繊維の長さは、好ましくは約3mm〜約100mmである。本発明においてはあまり好ましくないが、繊維は、編み込み可能な長繊維の形状とすることもできる。
【0034】
但し、本発明の方法はドラム型反応装置で実行されるため、SAP粒子は、ドラム型反応装置のドラムの内側表面に沿って貫流できるように、十分な自由流能力を有している必要がある。自由流能力は、例えば、SAP粒子の面上の均一な紫外線照射を大幅に高めるSAP粒子が相互に粒塊を形成しないようなものでなければならない。例えば、物理的なもつれの影響等により、SAP粒子が相互に粒塊を形成しないような流動性が必要である。粒塊があると、SAP粒子の表面に紫外線を一様に照射できなくなる。
【0035】
本発明のSAP粒子は、コア部及び表面部を有する。本発明によると、乾燥SAP粒子は、表面架橋処理工程を施される。すなわち、本発明の方法では粒子のコアにおける架橋は大幅には増加せず、これらは表面で架橋される。
【0036】
「表面」という用語は、粒子の外側に面した境界のことを指す。多孔質SAP粒子に関しては、内露出面も表面とみなしてもよい。本発明では、SAP粒子の「表面」は、乾燥SAP粒子のうち完全かつ継続的に外面に向かい合う容量6%を指し、「コア」は、容量の94%を有する乾燥SAP粒子の内部領域を指す。
【0037】
表面架橋SAP粒子は、当該技術分野において周知である。従来技術の表面架橋法では、表面架橋剤をSAP粒子の表面に適用する。表面架橋SAP粒子では、SAP粒子の表面の架橋レベルは、SAP粒子のコア部の架橋レベルよりも著しく高い。
【0038】
一般に適用される表面架橋剤は、熱活性化可能な表面架橋剤である。用語「熱活性化可能な表面架橋剤」は、典型的には約150℃の高温にさらすことによってのみ反応する表面架橋剤を指す。従来技術において既知の熱活性化可能な表面架橋剤は、例えば、SAPのポリマー鎖間に更なる架橋を構築することができる二官能剤又は多官能剤である。一般的に、熱活性化表面架橋剤には、例えば、二価(di−)又は多価アルコール、又は二価(di−)又は多価アルコールを形成できるそれらの誘導体が含まれる。このような表面架橋剤の代表は、アルキレンカーボネート、ケタール、及びジ−又はポリグリシジルエーテルである。更に、(ポリ)グリシジルエーテル、ハロエポキシ化合物、ポリアルデヒド、ポリオール、及びポリアミンも又、周知の熱活性化可能な表面架橋剤である。架橋は、例えば、カルボキシル基(ポリマーに含まれる)及びヒドロキシル基(表面架橋剤に含まれる)間のエステル化反応により形成される。典型的には、ポリマー鎖のカルボキシル基の比較的大部分が重合工程前に中和されるので、一般には、当該技術分野において既知のこの表面架橋プロセスのためには、ほんの僅かなカルボキシル基しか利用できない。例えば、70%中和させたポリマーでは、共有表面架橋結合のために、10個のカルボキシル基のうち3個のみしか利用できない。
【0039】
本発明における方法は、SAP粒子の表面架橋に使用される。従って、SAP粒子に含まれるポリマー鎖は、分子単位で少なくとも2つの重合可能な二重結合を含む、当該技術分野において既知の架橋剤によりすでに架橋されている。
【0040】
本発明の方法では、異なるポリマー鎖の主鎖に含まれる炭素原始の直接共有結合は、SAP粒子の表面に形成される。
【0041】
本発明による「直接共有結合」は、架橋分子に含まれている原子等の中間原子のない共有結合のみによってポリマー鎖が相互に結合される共有結合である。対照的に、ポリマー鎖間の既知の架橋反応は、常に、これらのポリマー鎖間の共有結合をもたらす。この場合における架橋分子の反応生成物は、ポリマー鎖間に組み込まれる。従って、既知の表面架橋反応は、直接共有結合ではなく、架橋分子の反応生成物を含む非直接的な共有結合をもたらす。直接共有結合は、第1のポリマー鎖の主鎖内の炭素原子と、第2のポリマー鎖の主鎖内の炭素原子との間に形成される。結合は、SAP粒子内の内部粒子状、より具体的には、SAP粒子の表面に形成される。このとき、SAP粒子のコアは、そのような直接共有結合からは実質的に遊離している。
【0042】
ポリマー鎖の「主鎖」とは、ポリマー鎖に直接接する炭素原子を指す。主として、反応が炭素原子の除去につながる場合は、これは、ポリマー鎖の主鎖の一部であるが、この反応は又、この炭素原子が事前にポリマー鎖に構築されている位置で、ポリマー鎖の破断につながる。
【0043】
又、所望により、表面架橋分子を本発明の方法に用いてもよい。表面架橋分子がSAP粒子に追加されるような実施形態では、SAP粒子の表面に含まれるポリマー鎖間に更なる共有結合が形成される。これらの更なる共有結合には、前記表面架橋分子の反応生成物が含まれている。
【0044】
本発明の異なるポリマー鎖の架橋は、異なるSAP粒子を相互に結合することを意図しない。従って、本発明の方法は、異なるSAP粒子間の感知できるほどの粒子間結合を導くのではなく、結果として、SAP微粒子内に粒子内の直接共有結合のみをもたらす。存在するとすれば、このような微粒子内の直接共有結合は、この理由から追加の微粒子間架橋物質を必要とする。
【0045】
2つの炭素原子間の共有結合によってポリマー鎖を相互に直接結合させる本発明の方法は、従来の表面架橋の代わりに、又は従来の表面架橋に加えて、SAP粒子を表面架橋するために適用することができる。
【0046】
照射活性化可能なラジカル形成剤分子
本発明の方法では、表面架橋の効率を向上させるため、照射活性化可能なラジカル形成剤分子を任意に適用してもよい。但し、このようなラジカル形成剤の使用は必須ではなく、実際には、コスト削減のために省略してもよい。これは、ラジカル形成剤が、表面架橋法の総合的なコストを実質的に増加させる可能性があるためである。100nm〜200nm(真空紫外線)の波長の紫外線照射の使用により、ラジカル形成剤は、表面架橋反応の開始には必ずしも必要ではない。
【0047】
本発明では、ラジカル形成剤分子を適用して表面架橋反応を開始されることができる。照射活性化可能なラジカル形成剤分子は、SAP粒子の表面に含まれるポリマー鎖のポリマー主鎖に配置される炭素中心ラジカルを形成できる。この反応は、紫外線照射により発生する。異なるポリマー鎖に含まれるこれらの炭素中心ラジカルの2つが相互に反応可能であり、その結果、ポリマー鎖間で直接共有結合を形成する。
【0048】
照射により、一部のラジカル形成剤が、第一の工程として中間体ラジカル(通常は、酸素中心ラジカル)を形成し、第2の工程として、SAP粒子の表面のポリマー主鎖に含まれる炭素原子と反応し、ポリマー主鎖の炭素中心ラジカルを形成することがある。
【0049】
原理上は、本発明に準じて、任意の光開始剤(一般的には、ビニルモノマーの重合の開始に使用)を表面架橋用のラジカル形成剤として適用できる。このような光開始剤は、一般的に、ビニルモノマーのラジカル連鎖重合を誘発する機能がある。紫外線照射を伴う光開始剤を照射した際に形成される反応中間種は、SAP粒子の表面のポリマー鎖のポリマー主鎖に含まれるC原子のC−H結合から水素原子を取り除く能力があると考えられる(同時に、本発明による架橋を開始する)。
【0050】
最も好ましくは、照射活性化可能なラジカル形成剤分子は、紫外線照射により均一に開裂される(光分解と呼ばれる)ペルオキソ架橋(O−O)を含む。
【0051】
但し、反応中間種は又、紫外線照射により短寿命、いわゆる三重項励起状態に遷移されているケトン体になり得る。又、三重項状態のケトンも、ポリマー主鎖に含まれるC原子のC−H結合から水素を抽出する能力があり、この場合はケトンがアルコールに変換される(光還元と呼ばれる)。
【0052】
本発明のラジカル形成剤は、水溶性であることが非常に好ましい。水溶性ラジカル形成剤の水への溶解度特性は、25℃で少なくとも1質量%、好ましくは少なくとも5質量%、最も好ましくは少なくとも10質量%とする。
【0053】
当初は水溶性ではないラジカル形成剤は、例えばカルボン酸塩若しくはアンモニウム等の荷電基を分子構造に導入する等、誘導体化により水溶性にできる。一例としては、ベンゾフェノンは、ベンゾイル安息香酸に容易に誘導体化可能である。但し、ラジカル形成剤は、本質的に水溶性であること、すなわち、水溶性にするために官能基の導入を必要としないものであることが好ましい。一般的な本質的に水溶性の照射活性化可能なラジカル形成剤は、アルカリ金属若しくはその他の無機ペルオキソ二硫酸又は誘導体化された有機ペルオキソ二硫酸のような過酸化物である。水溶性アゾ−反応開始剤も同様に使用できる(ワコースペシャリティケミカル(Wako Specialty Chemicals)から市販されているV−50又はVA−086等)。無機過酸化物は、一般的に水溶性要件を満たすが、有機化合物は一般的に誘導体化を必要とする。化合物は一般的に誘導体化を必要とする。最も好ましい水溶性ラジカル形成剤は、ペルオキシ二硫酸ナトリウムである。
【0054】
水溶液にラジカル形成剤を提供する利点(すなわち、水溶性ラジカル形成剤を使用する利点)には、2つの要素がある。一方は、水溶液がSAP粒子表面の効果的な湿潤を促進することである。従って、ラジカル形成剤分子は、実際に粒子表面に運搬され、そこで表面架橋反応を開始する。
【0055】
もう一方は、SAP粒子表面の効果的な湿潤により、SAP粒子の表面に含まれるポリマー鎖における移動性を強化する。ポリマー主鎖に含まれる炭素原子と、照射によりラジカル形成剤が転換される反応中間種間の二分子反応を促進する。この効果は、今日実際に最も広範に使用されているSAP粒子であるポリ(メタ)アクリル酸を含むSAP粒子に有利である。ポリアクリル酸は106℃のガラス転移温度を有し、ポリアクリル酸のナトリウム塩は、中和度100%にて200℃のガラス転移温度を超過するが、本発明の表面架橋は、一般的に100℃未満の温度で行われる。水の存在下で、部分的に中和されたポリアクリル酸のガラス転移温度が著しく低下することがある。例えば、65%中和されたポリアクリル酸ナトリウムのガラス転移温度は、約5質量%の水中では150℃であるが、35質量%では室温以下にできる。但し、この効果を活用するためには、SAP粒子の表面に直接的に含まれる実際の生水の濃度が重要である。
【0056】
本発明の架橋を確実にSAP粒子の表面に実際に制限されるように限定するには、拡散を通じて粒子容量全体に水が均一に分散されるのを防止しなければならない。従って、紫外線照射工程は、ラジカル形成剤を含む水溶液をSAP粒子に適用した後1時間以内に、より好ましくは10分以内に、更に好ましくは1分以内に行われるべきである。
【0057】
水溶性ラジカル形成剤が非常に好ましい。これは、一般的に、有機溶媒は、水よりも高価であり、且つ環境的な観点から考えても問題をもたらす可能性が高いためである。但し、上述の誘導体化を通じて水溶性化されてない有機ラジカル形成剤も使用してもよく、水ではなく有機溶媒に適用できる。例としては、ベンゾフェノン又はその他の好適なケトンがあり、紫外線照射を伴う照射時に、光還元がなされることが知られている。さらなる例としては、ジベンゾイル過酸化物又はその他の任意の有機過酸化物があり、紫外線照射を伴う照射時に、光分解がなされることが知られている。
【0058】
本発明の方法においては、ラジカル形成剤の適用量は、好ましくはSAP粒子の重量で25%未満、更に好ましくは15%未満であり、最も好ましくは1%〜5%である。ラジカル形成剤は、一般的に、水溶液に適用される。あるいは、好ましくはないが、ラジカル形成剤と水を2段階で追加してもよい。但し、ラジカル形成剤と水が照射中に表面に存在していなければならない。水の量は好ましくはSAP粒子の重量で25%未満、より好ましくは15%未満、最も好ましくは5%〜10%である。経済的理由から、追加する水の量をできる限り低く保ち、表面架橋後の乾燥工程を短縮又は完全に回避することが好ましい。
【0059】
表面架橋分子
表面架橋分子は、SAP粒子の表面に含まれるポリマー鎖の主鎖に配置されている上述の炭素中心ラジカルと反応可能な、少なくとも2つの官能基を持つ任意の化合物である。炭素中心ラジカルとの表面架橋分子における官能基の反応により、架橋分子をポリマー主鎖に接合しながら新規共有結合が形成される。
【0060】
表面架橋分子の官能基は、好ましくはC=C二重結合である。より好ましくは、架橋分子は2つを超えるのC=C二重結合を含む。あるいは、官能基は、Xがヘテロ原子であるCH−X部分にもなり得る。好ましいCHーX部分はエーテル、CG−O−Rで、Rはアルキル残基となっている。
【0061】
本発明の好ましい架橋分子は、多官能アリル及びアクリル化合物であり、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチルプロパントリクリレート(trimethylpropane tricrylate)又は他のトリアクリレートエステル類、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラアリルオルトシリケート、ジペンタエリスリトールペンタアシラレート(di−pentaerythritol pentaacyralate)、ジペンタエリスリトールヘキサアシラレート(di−pentaerythritol hexaacyralate)、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルフタレート、ジエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルアミン、1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルシトレート、又はトリアリルアミンである。
【0062】
あるいは、架橋分子は、スクアレン、N,N’メチレンビスアクリルアミド、イコサペンタエン酸、ソルビン酸、若しくはビニル終端シリコーンから成る群から選択される。
【0063】
アリル二重結合を伴う化合物は、一般的に、アクリル二重結合を伴う複合物よりも好ましい。本発明において、最も好ましい架橋分子はジアリルジメチル塩化アンモニウムである。
【0064】
表面架橋分子が適用されている場合は、SAP粒子が本発明のドラム型反応装置に入る前に、例えば、不活性溶媒(任意に蒸発可能)を伴う溶液における噴射の適用等により付加されるべきである。表面架橋分子は、適用後直接蒸発するジクロロメタン等の有機溶媒中で適用できる。実施形態では、SAP粒子に湿気が与えられており、表面架橋分子は懸濁液として水と共に適用するか、表面架橋分子が水溶性の場合は、溶液として適用することもできる。
【0065】
更に、表面架橋分子をラジカル形成剤と共に適用する実施形態においては、表面架橋分子からラジカル形成剤へのモル比は、好ましくは0.2〜5、より好ましくは好ましくは0.33〜3、最も好ましくは1〜3である。
【0066】
追加のラジカル形成剤を使用することなく、表面架橋分子のみが使用されている実施形態では、表面架橋分子は、好ましくは乾燥SAP粒子の濃度0.1重量%〜10重量%に適用し、より好ましくは1重量%〜5重量%に適用される。
【0067】
表面架橋化合物は、任意選択のラジカル形成剤を含む水溶液に適用できるように、水溶性であることが好ましい。あまり好ましくない非水溶性の表面架橋分子が適用された場合は、ラジカル形成剤を含む水溶液中で乳化又はけん濁させるか、別個に適用してもよい。又、非水溶性表面架橋分子は、適用後に直接蒸着するジクロロメタン等の有機溶媒にも適用できる。
【0068】
表面架橋分子及び/又はラジカル形成剤は、流動床噴霧室を用いてSAP粒子に噴霧してもよい。同時に、IR−照射を適用して、乾燥を完了してもよい。IR光の代わりに、又はIR光と組み合わせて、従来の乾燥機材を任意に使用できる。但し、本発明の特定の実施形態においては、乾燥作業はほとんど必要ない。例えば、少量のみの表面架橋分子及び/又はラジカル形成剤を少量の溶液に適用した場合等である。
【0069】
本発明の方法では、表面架橋分子及び/又はラジカル形成剤は、常に、ドラム型反応装置内の照射前にドラム型反応装置の外部にあるSAP粒子に適用される。
【0070】
ラジカル形成剤若しくは表面架橋分子を伴わない反応機構
中間体炭素中心ラジカルの形成に寄与すると識別されうる機構は幾つかある。ある程度まで、これらの機構が同時に起こる可能性がある。
【0071】
100nm〜200nmの波長を有する紫外線(真空紫外線、以下VUVという)の照射により、O−H結合の均一開裂を通じて水分子からヒドロキシルラジカルが生成される。極めて反応性が高く短寿命のこれらの種は、SAP粒子の表面のポリマー鎖の主鎖に含まれる炭素―水素結合(C−H結合)から水素原子を取り出す能力を持つため、前記の炭素中心ラジカルの形成につながる:
式1:
【化1】

【0072】
又、主として、ポリマー鎖の主鎖に含まれる炭素―水素結合から水素原子を取り出す代わりに、ポリマー鎖から完全なカルボキシル基を抽出することもできる(脱炭酸反応)。この反応の結果として、SAP粒子の表面に含まれるポリマー鎖の主鎖に炭素中心ラジカルが形成される。
【0073】
水分子は、例えば、乾燥SAP粒子に含まれる残留水分子等があり得るが、噴霧の適用を介して、又は好ましくは水蒸気としてSAP粒子への加湿により用意することもできる。比較的低い残留水分含有量(乾燥SAP粒子の0.5重量%)を伴うSAP粒子が使用される場合等は、加湿が望ましいであろう。
【0074】
水分子中のO−H結合の均一開裂は、200nm未満の波長を有する紫外線照射によってのみ、十分な程度まで実現させることができる。
【0075】
更に、分子酸素は均等に開裂することができ、高反応性の原子状酸素を生じ、炭素中心ラジカルの発生をもたらす方法と同様に反応する。
式2:
【化2】

【0076】
ドラム型反応装置の反応が不活性ガス大気下で行われている場合、本発明のドラム型反応装置に入る前にSAP粒子に吸着した残留酸素は、すでに上述の反応に貢献している。あるいは、制御条件下(すなわち、ラジカル反応中に存在する酸素分圧を制御し調節する)で、酸素を追加することができるであろう。但し、ドラム型反応装置を使用する方法も、通常大気下で行われる。
【0077】
上述した反応に続き、2つのSAP粒子の表面に含まれるポリマー鎖の主鎖に生成された上述の炭素中心ラジカル炭素中心ラジカルが結合し、ポリマー鎖間で直接共有結合を形成する。
【0078】
任意のラジカル形成剤及び/又は表面架橋分子を伴う反応機構:
本発明の方法では、任意のラジカル形成剤及び/又は表面架橋分子を適用できる。
【0079】
ラジカル形成剤分子は、不安定な結合を含む光分解を経て、これは、以下、一般的にR−Rと呼ばれる。紫外線照射により不安定な結合が破断され、2つのラジカル(R及びR)が式3に従って形成される。
式3:
【数1】

【0080】
この均一開裂は、ラジカル形成剤分子(いわゆる、前駆体分子)に含まれる不安定な結合が当該分子を2つの同一部分に分割する場合、結果として2つの同一ラジカルをもたらす場合がある。あるいは、均一開裂は、結果として2つの異なるラジカルをもたらす場合がある。
【0081】
形成されたラジカルは、この時点でSAP粒子の表面に含まれるポリマー鎖の主鎖に含まれる脂肪族C−H基と反応し、式4に準拠してポリマー主鎖に炭素中心ラジカルを形成することができる。このような2つの炭素中心ラジカルは、相互に反応してポリマー主鎖に含まれる炭素原子間で直接共有結合を形成する。
式4:
【化3】

【0082】
ここでも又、主として、ポリマー鎖の主鎖に含まれる炭素―水素結合を取り出す代わりに、ポリマー鎖から完全なカルボキシル基を抽出することもできる(脱炭酸反応)。炭素中心ラジカルのこの反応の結果は、SAP粒子の表面に含まれるポリマー鎖の主鎖に形成される。
【0083】
所望により、表面架橋分子を追加で本発明の方法に用いてもよい。このような実施形態では、ラジカル形成剤分子から形成されたラジカルは、架橋分子に含まれるC=C二重結合の1つと反応して、式5に従って、架橋分子と初期のラジカルとの反応生成物から成るラジカルを形成することができる。
式5:
【化4】

【0084】
式4の反応で形成されるポリマー鎖セグメント内の炭素中心ラジカルは、式5で形成されるラジカルと反応することができる。この反応の反応生成物は、式6に従ってラジカル形成剤分子及び架橋分子の反応生成物がポリマー主鎖の炭素原子に共有結合されているポリマー鎖である。
式6:
【化5】

【0085】
その後、式3においてラジカル形成剤分子から形成されたラジカルは、式6の反応生成物中に含まれる架橋分子の2つ目のC=C二重結合と反応することができる。この反応を式7に表す:
式7:
【化6】

【0086】
2つのポリマー鎖間に架橋を形成するために、式5の反応生成物中に含まれる炭素中心ラジカルが、式8で示すように同じSAP粒子の別のポリマー鎖に配置含まれる別の炭素中心ラジカルと結合する。
式8:
【化7】

【0087】
従って、上記に説明した反応とは対照的に、ラジカル形成剤又は表面架橋分子が適用されていない場合は、ラジカル形成剤及び表面架橋分子の付加的使用に関与する反応は、SAP粒子の表面内部の2つの異なるポリマー鎖の主査に含まれる2つの炭素原子間の直接共有結合にはならない。但し、ラジカル形成剤及び表面架橋分子が付加的に使用されている場合は、式3〜8で説明した通りの反応に加え、上述の式1及び2で説明した反応から直接共有結合に至るまでの反応が起こる。
【0088】
更に、ラジカル形成剤のみを使用することも可能である。この場合は、ポリマー主鎖の炭素中心ラジカルが式1、2、及び4に従って形成される。このような実施形態では、直接共有結合のみが形成され、ラジカル形成剤がSAP粒子の表面に共有結合される。
【0089】
又、表面架橋分子のみを、追加のラジカル形成剤を使用することなく適用することも可能である。これらの実施形態では、紫外線照射によりSAP粒子の表面のポリマー主鎖に含まれる炭素中心ラジカルは、表面架橋分子のC=C二重結合の1つと反応する。従って、表面架橋分子は、SAP粒子の表面に共有結合され、表面架橋分子の旧C=C二重結合に含まれている2つのC原子のいずれかでラジカルが誘発される。このラジカルは、ここでも、SAP粒子の表面内部の別の(近接する)ポリマー鎖から炭素原子を取り出すため、この別のポリマー鎖のポリマー主鎖に形成された、もう1つの炭素中心ラジカルにつながる。この炭素中心ラジカルは、ここで、表面架橋分子に含まれる第2のC=C二重結合と反応する。これは、最初のC=C二重結合に含まれていたラジカル反応を介してSAP粒子にすでに共有結合されている。結果として、SAP粒子の2つのポリマー鎖は、SAP粒子の表面架橋分子の反応生成物を介して架橋されている。
【0090】
網状反応は、照射時に光分解されるラジカル形成剤分子を用いるとき、2つのポリマー鎖セグメント間の架橋の形成であり、ここで、架橋は、2つのC=C二重結合を有する1つの架橋分子と2つのラジカル形成剤分子との反応生成物から構成される。網状反応を式9に表す:
式9:
【化8】

【0091】
表面架橋分子の追加使用により、反応時間がより短くなるため、反応効率を更に高めることができる:理論に束縛されるものではないが、表面架橋分子の非存在下で開始された表面架橋反応の紫外線照射の律速段階は、2つの炭素中心ラジカルの再結合であり、2つの異なるポリマー鎖内に含まれる2つの炭素原子間の直接共有結合を形成すると考えられる。この再結合の後には速度法則の二次反応が続き、すなわち、両方の結合反応の速度は、結合する2つの反応物質(すなわち、2つの結合する炭素中心ラジカル)を相互に積算した濃度に比例する。
【0092】
しかし、表面架橋分子を添加する場合、表面架橋分子から形成されるラジカルとポリマー鎖内の炭素中心ラジカル間の反応は、疑似一次反応の速度法則に従うと考えられる、すなわち、第2の反応相手、つまり表面架橋分子から形成されるラジカルの濃度が非常に高く、反応を通して一定であるとみなすことができることから、反応速度は、炭素中心ラジカルの濃度のみに比例するよと考えられる。疑似一次反応動力学は、二次反応動力学の反応に対し動力学的に特恵があること、つまり反応速度がより速いことが分かっている。
【0093】
あるいは、光分解を経るラジカル形成剤分子に対し、照射により光還元を経るカルボニル基を含むラジカル形成剤分子を使用することもできる。本発明の好ましい実施形態では、かかるラジカル形成剤分子はケトン類である。
【0094】
紫外線照射により、このタイプのラジカル形成剤分子は「励起状態」(三重項状態)に移行される。従って、これらはまだラジカルには移行されていないが、照射前よりも反応性が高い。
【0095】
次の工程では、この励起状態にあるラジカル形成剤分子が、SAP粒子の表面のポリマー鎖の主鎖に含まれる脂肪族C−H基と反応し、水素ラジカルを抽出するため、このポリマー鎖で炭素中心ラジカルとケチルラジカルを式10に準拠して形成する:
式10:
【化9】

【0096】
ケチルラジカルは、このとき、架橋分子のC=C二重結合のいずれかと反応できる。主として、ポリマー鎖の主鎖に含まれる炭素中心ラジカルについて、図5〜9に図示するものと同様の反応が起こる。
【0097】
あるいは(又は表面架橋分子を使用しない実施形態で排他的に)2つのケチルラジカルを相互に再結合し、例えば、ベンゾフェノンを反応開始剤としたベンゾピナコール等、いわゆる、ピナコールを形成できる。
【0098】
光分解されるラジカル形成剤分子を適用する場合、ラジカル形成剤分子の一部しかポリマー鎖間の架橋に含まれないが、光還元されるラジカル形成剤分子の場合、その還元形態(ヒドロキシル基に還元されるカルボニル基を含む)ではラジカル形成剤分子全体が、ポリマー鎖間の架橋によって含まれることに留意すべきである。
【0099】
従って、光分解されるラジカル形成剤分子の場合、ポリマー鎖間の架橋に含まれる反応生成物は、初期のラジカル形成剤分子のほんの一部(典型的には、初期の前記分子の半分)である。
【0100】
光還元されるラジカル形成剤分子の場合、ポリマー鎖間の架橋に含まれる反応生成物は、その還元形態(ヒドロキシル基に還元されるカルボニル基を含む)のラジカル形成剤分子全体である。
【0101】
表面架橋分子の反応生成物は、―両方の種類のラジカル形成剤分子に関して―初期の架橋分子であり、ここで、これらC=C二重結合は、ラジカル形成剤分子から形成されたラジカルと反応して(又はポリマー鎖セグメント内に形成された炭素中心ラジカルと直接反応して)、C−C一重結合に転化される。
【0102】
本発明の好ましい実施形態では―両方の種類のラジカル形成剤分子に関する―表面架橋分子は、2つを超えるC=C二重結合を含む。これら実施形態では、2つを超えるポリマー鎖セグメントが、上述の反応に従って互いに架橋され得る。これら実施形態では、架橋に含まれるラジカル形成剤分子の反応生成物の数は、架橋分子に含まれるC=C二重結合の数と等しい。
【0103】
理論上は、ラジカル形成剤が適用された場合、照射活性化可能なラジカル形成剤分子(radiation activatable radical former molecule)から形成されたラジカルも、ポリマー鎖セグメントに含まれるカルボキシル基と反応することがある。但し、カルボキシル基は強く分極されているため、熱力学的及び動力学的にカルボキシル基に含まれるO−Hからの水素ラジカルを抽出する可能性は比較的低いことから、ラジカルは、脂肪族C−H結合と反応する可能性が高い。
【0104】
本発明に準拠し、1種のみの架橋分子を使用するか、あるいは2つ又はそれ以上の科学的に異なる架橋分子を適用してもよい。同様に、1種のみの照射活性化可能なラジカル形成剤分子(radiation activatable radical former molecule)を使用するか、あるいは2つ又はそれ以上の科学的に異なる照射活性化可能なラジカル形成剤分子を適用してもよい。
【0105】
本発明の方法を用いると、SAP粒子の表面架橋の使用可能な反応部位数は、当該技術分野において既知の表面架橋と比較して著しく増加する。従って、当該技術分野において既知の表面架橋に比べて、はるかに均一且つ一様な表面架橋を達成することが可能である。SAP粒子表面の表面架橋の均質分布により、SAP粒子の全体的な剛性及びゲル強度を改善するために、当該技術分野において既知の表面架橋と比較し、表面架橋の全体数は、必ずしも増加する必要はない。
【0106】
均一に分布された表面架橋を伴うSAP粒子が確実に取得されるようにするには、任意選択のラジカル形成剤及び任意選択の表面架橋分子(適用される場合)は、SAP粒子に均一に分布されなければならない。そのため、表面架橋剤は、好ましくはSAP粒子上に噴霧することにより適用される。
【0107】
又、従来技術から既知である表面架橋と比較すると、本発明による表面架橋ははるかに迅速である。高温下で行われる従来技術の表面架橋反応は通常、最長45分かかる。時間がかかるこのプロセス工程では、SAP粒子の製造プロセスは、所望するよりも経済的ではなくなる。対照的に、本発明に準拠した架橋プロセスは、通常は数分程度等、著しく短縮された反応時間内に実行できるため、SAP粒子の製造時間という側面において全体的な改善が可能になる。これは、エネルギーコスト削減と処理量の増加につながる。
【0108】
更に、表面架橋反応が迅速に進むため、任意に適用したラジカル形成剤分子及び表面架橋分子がSAP粒子の内部に浸透する時間が短くなる。従って、先行技術による表面架橋と比較すると、より容易に表面架橋を実際にSAP粒子の表面のみに制限し、SAP粒子のコアにおける望ましくないさらなる架橋反応を回避できるようになる。
【0109】
本発明の別の利点として、中和工程に言及する:α,β−不飽和カルボン酸モノマーは、多くの場合、重合工程の前に中和(プレ中和)される。モノマーの酸性基を中和するのに有用な化合物は、典型的には、重合プロセスに有害な影響を及ぼさずに酸性基を十分に中和するものである。前記化合物としては、アルカリ金属の水酸化物類、炭酸及び重炭酸のアルカリ金属塩類が挙げられる。好ましくは、モノマー類の中和に使用する材料は、水酸化ナトリウム若しくはカリウム、又は、炭酸ナトリウム若しくはカリウムである。結果として、ポリマーのα,β−不飽和カルボン酸に含まれるカルボキシル基は、少なくとも部分的に中和される。水酸化ナトリウムを使用する場合、中和によってアクリル酸ナトリウムが生じ、これが水中でマイナスに帯電したアクリル酸モノマーとプラスに帯電したナトリウムイオンとに解離する。当該技術分野において既知の表面架橋剤は、ポリマーに含まれるカルボキシル基と反応するため、中和度は、表面架橋の必要性とのバランスを取らなければならない。これは、どちらのプロセス行程も、カルボキシル基を活用するためである。
【0110】
水溶液を吸収した後、最終的なSAP粒子が膨張状態にある場合、ナトリウムイオンはSAP粒子内を自由に移動することができる。おむつ又はトレーニングパンツ等の吸収性物品において、SAP粒子は典型的には尿を吸収する。蒸留水と比較して、尿には、少なくとも部分的に解離した形態で存在する塩が比較的多く含まれている。尿に含まれる解離した塩のために、液体はSAP粒子内に吸収されにくくなる。それは、解離した塩のイオンに起因する浸透圧に逆らって液体を吸収しなければならないからである。SAP粒子内で自由に移動することができるナトリウムイオンは浸透圧を低下させるので、液体が粒子内に吸収されるのを大きく促進する。従って、高程度の中和は、概して、SAP粒子の能力及び液体吸収速度を大いに高めることができる。
【0111】
更に、中和の度合いが高くなると、典型的には材料支出を軽減し、結果的にはSAP粒子の全体的な製造コストも削減することになる。水酸化ナトリウムは、ポリマーの中和に一般的に使用され、今日のSAPで最も好ましいポリマーであるアクリル酸と比較し、通常は安価である。従って、中和度を増加すると、所定量のSAPに含まれる水酸化ナトリウムの量が増加する。結果的に、SAPの作製に必要なアクリル酸が減少する。
【0112】
本発明のさらなる利点は、表面架橋プロセス中の望ましくない副反応の低減である。従来技術において知られている表面架橋は、通常約150℃以上の高温を必要とする。これらの温度では、表面架橋反応が達成されるだけでなく、例えば、ポリマー内での無水物形成、又はアクリル酸モノマー類によって先に形成された二量体の二量体開裂等の多数の他の反応も起こる。これらの副反応は、能力の低下したSAP粒子をもたらすので、極めて望ましくない。
【0113】
本発明による表面架橋プロセスは、必ずしも高温を必要とせず、中温でも行われるため、これらの副反応が大幅に軽減される。本発明に準拠し、表面架橋反応は、望ましくない副反応を回避するため、好ましくは100℃以下の温度で行うことができる。
【0114】
又、従来技術で知られている表面架橋プロセスにおいて一般的に適用される150℃前後又はそれより高い高温では、SAP粒子の色が白色から黄味がかった色へと変化することがある。本発明の方法の表面架橋において必要とされる温度が低いことから、SAP粒子の色の劣化の問題が著しく軽減される。
【0115】
本発明の方法に準拠した表面架橋は、好ましくはないが、所望により、1,4―ブタンジオール(butandiol)等の、当該技術分野において既知の1以上の熱活性化架橋剤と共に行うことができる。但しこの場合は、紫外線照射及び温度の上昇(典型的には140℃超)が必要である。これら実施形態では、結果として得られるSAP粒子の表面は更に、熱活性化可能な表面架橋剤の反応生成物を含む。
【0116】
ラジカル形成剤及び/又は表面架橋分子が適用されている実施形態では、本発明の方法では、更に、未反応の表面架橋分子及び/又はラジカル形成剤分子若しくは副反応により形成された分子をを洗い流す任意の洗浄工程を含めてもよい。
【0117】
紫外線照射
本発明では、SAP粒子は、紫外線−(UV−)照射に暴露される。電磁スペクトルの紫外線領域は100〜380nmの波長の間に定義されており、次の範囲に分割される:UV−A(315nm−400nm)、UV−B(280nm−315nm)、UV−C(200nm−280nm)、及び真空紫外線(VUV)(100nm−200nm)。
【0118】
好ましくは、パルス又は連続的なキセノン(Xe−)エクシマー照射源が適用される。周知のエクシマーレーザーと対照的に、エクシマーランプは、準単色非干渉照射(quasi-monochromatic incoherent radiation)を放出する。例えば、特定のガス雰囲気におけるマイクロ波放電若しくは誘電体障壁放電(DBD、無音放電)等により、非干渉エクシマー照射の生成が可能になっている。
【0119】
好ましいXe−照射は、VUV範囲中で160〜200nmという比較的広帯域を示し、172nmの波長のピークは、半値全幅(FWHM、半幅)が14nmである波長で最大になる。本発明の方法で使用するVUVスペクトル内で好ましい波長は、160nm〜200nmであり、より好ましくは、波長が172nmでピークを有する。
【0120】
反応装置の形状はランプの外観に適合しなくてはならないため、入手可能なほとんどの紫外線照射源が決まった形状(通常はドラム又はコイル形)をしており、反応装置のデザインの自由度を制限しているが、非干渉性エクシマーVUV照射源は、無電極包囲状であり、各種形状のものが迅速に入手可能であるため、該当しない。
【0121】
実験室での研究に好適なパルスXe−エクシマー照射源としては、オスラム社(Osram、ドイツ、ミュンヘン)からゼラデックス(Xeradex)(商標)として20W又は100Wの電力のものが市販されている。但し、表面架橋に使用されるドラム型反応装置が比較的大きい場合は、照射減の電力は、10kW又はそれ以上にすべきである。
【0122】
電力最大10kWを備えた連続的なXe−エクシマー照射源は、ヘラエウスノーブルライト社(Heraeus Noblelight、ドイツ、ハナウ)、より小さな出力源の場合は、ウシオ社(Ushio Ltd.)(例えば、ウシオドイツ(Ushio Deutschland)、シュタインへーリング(Steinhoering))からそれぞれ購入可能である。
【0123】
ドラム型反応装置及び方法
本発明の表面架橋法が実行される本発明の光化学物質反応装置は、図1に概略的に図示する通り、ドラム型反応装置である。
【0124】
ドラム型反応装置10は、好ましくは丸型(例えば円形)又は楕円形状の断面を有する中空ドラム20を備えている。又、ドラム20の断面は、多角形、例えば三角形、四角形等でもかまわない。但し、多角形の実施形態では、角数が多いほうが好ましい。好ましくは角数nが4を超える、より好ましくはnが6を超える、更により好ましくはnが8を超える。ドラムの素材は、ガラス、プレキシグラス(商標)等の合成材料、又は金属等、任意の種類ものから作製される。本発明においては、材料が不透明又は透明であるかは重要ではない。ドラム20は、長手軸30を備える。ドラムの長手方向延伸部は、一般的に断面より大きい。楕円形状の直径を有するドラムでは、長手方向延伸部は通常、最大半径よりも大きい。ドラムは更に下部の長手方向部120及び上部の長手方向部130を備える(但し、ドラムは使用時に回転するため、下部及び上部の長手方向部は、常にドラムの異なる物理的部分を示す)。
【0125】
紫外線照射源40は、好ましくはドラム20内に設けられ、より好ましくは、長手軸30に沿って、長手軸30に並行して、又は長手軸30に対して僅かに傾斜させるかのいずれかである。但し、あまり好ましくはないが、照射源40をドラムの外部に設置してもかまわないが、この場合は、ドラム内のSAP粒子に照射線が到達できるように設置する必要がある。照射源がドラム内に設置されている実施形態では、照射源40の寸法は、ドラム20内の組立が行いやすいような方法で選択しなければならない。ドラム20の寸法とドラム内でのSAP粒子の対象流量に応じて、単一の照射源又は2つ以上の照射源が必要となる場合がある。非ロッド形状の照射源40と比較し、本発明のドラム20の使用が容易になるため、ロッド形状の照射源40が好ましい。
【0126】
ドラム20は水平方向にも配置できるが、好ましくは、ドラム20を傾斜を付けて設置、つまり、長手軸30が水平ではなく、角度αで傾斜(水平方向の実施形態では、角度αはゼロ)で設置する。傾斜を付けた実施形態では、ドラム20の一方の末端部は、上部末端部が50、もう一方の下部末端部が60である。
【0127】
更に反応装置は、SAP粒子をドラム20に送り込むための装置を備える。供給手段70は、ドラムの一方の末端部に設けられている。傾斜を付けた実施形態では、供給手段70と共に設けられる末端部は、上部末端部50である。供給手段70は、例えば運搬スクリュー(conveying screw)又は好適なその他の装置でよい。
【0128】
SAP粒子の乾燥は、好ましくはSAP粒子がドラム型反応装置に供給される前に行う。ドラム型反応装置を通じて乾燥SAP粒子を変換する方が、膨張したSAP粒子よりも容易である。これは、SAP粒子の粒塊に対する粒塊傾向が著しく軽減されることによる。更に、VUV照射は水に吸収され、VUV適用範囲を低下させるため、飽和水流環境―これは、比較的大容量の水分を含む膨張したSAP粒子を用いてドラム型反応装置内で作製してもよいとされる可能性がある―を回避すべきである。
【0129】
SAP粒子が本発明に準拠した表面架橋を通った後に乾燥作業がそれでも行われる場合は、流動性エンハンサーを用いてアグロメレーションを低下できる可能性がある。
【0130】
反応装置は更に、収集手段80を含む。収集手段80は、好ましくはSAP粒子供給手段70とは反対側のドラム20の末端部に設けられ、表面架橋を経たのちにドラム20から出るSAP粒子を収集する。傾斜を付けた実施形態では、収集手段80と共に設けられる末端部は、下部末端部60であることが好ましい。収集手段80は、例えばじょうご又は好適なその他の手段でよい。
【0131】
あるいは、照射源40がドラム20の完全な長手方向延伸部に沿って取り付けられていない実施形態では、収集手段を下の末端部60に向かうドラム内で用意してもよい。この場合は、ドラムから粒子を逃がさないように開かず、閉じたままにする。SAP粒子はドラム20に連続的又は不連続的に供給されるこのような実施形態では、ドラム内を移動する間に照射され、この場合、照射源が設置されていないか、又は照射源がこのドラム部のSAP粒子が照射の対象でなく隠されている場合は下の末端部60に向かってドラム部で蓄積される。一定のSAP粒子量が累積されると、ドラムの下の末端部が開き、SAP粒子がドラムから出る。
【0132】
本発明の方法に準拠し、ドラム20は、長手軸20の周りを回転する。従って、ドラム型反応装置10は、ドラム20の回転を駆動する駆動手段(図1には示されていない)を備える。駆動手段は、モーター等、当該技術分野において既知の任意の好適な手段でよい。更に、ドラム20を安定させるため、支持ロール90等、所望により支持手段を設けてもよい。典型的には、ドラムはフレーム内に設けられる(図1には示されていない)。ドラムが回転されている間、ドラム内の紫外線照射源は、この方法が行われている間は回転する必要はない。
【0133】
本発明のドラム型反応装置10は、好ましくはパラボラ反射器であるスクリーン100も設けることが好ましい。スクリーン100は、ドラム20内の紫外線照射源の上方に設けられる。ドラムが回転されるように、紫外線照射源と同様に、スクリーンも紫外線照射源の周りを回転しない。
【0134】
本発明の方法は、連続的なプロセス、すなわち、SAP粒子が継続的にドラム型反応装置に供給され、更に継続的にドラムから出されるように行うことが好ましいが、方法は、バッチプロセスで不連続に行うこともできる。この場合、特定のSAP粒子量がドラム20に供給され、回転するドラム20内で照射され、SAP粒子の次のバッチがドラム20内に入る前に、ドラム20から出される。
【0135】
本発明の方法に準拠し、SAP粒子は、供給手段70を介してドラムに供給される。SAP粒子がドラム20内を移動するのに伴い、ドラムが軸線に沿って回転し、それによりSAP粒子を静かにかき混ぜる。SAP粒子は、ドラムを通る途中、照射源40により紫外線照射され、これにより表面架橋反応が開始及び行われる。ドラム20の末端部では、SAP粒子がドラムから放出され、収集手段80により収集される。
【0136】
SAP粒子は、通常は粒径サイズの分布を有し、典型的には10〜1000μmの範囲である。方法の再現性を上げるため、照射中に発生する可能性のある粒径サイズの識別の影響は回避する。具体的には、より大きな粒子は反応装置を早く通過することから、小さな粒子よりも更に少ない照射線量を受けないようにする。
【0137】
理論に束縛されるものではないが、鎖の反応機構を介して吸収された光子ごとに何千もの共有結合が作製される重合反応に反して、本発明の反応は、一般的に、紫外線照射線の光子の化学量論的を要する。にもかかわらず、面上の均一な相互結合を得るには、全ての粒子の全表面を暴露させる必要がある。
【0138】
ドラム20反応装置の重要な操作パラメーターは、傾斜角α、ドラム20内の照射源40の位置、ランプに相関するスクリーンの位置、ドラム20のガス雰囲気の組成物、ドラム20の回転速度、及び照射源の照射力(ランプの出力に相当する)である。更に重要なパラメーターは、ドラム壁の内側表面の特性である。スクリーン100を使用する場合、照射源40に相関したスクリーン100の位置は、更に可変である。追加の加熱は、典型的には不要である。
【0139】
傾斜角αは、ドラムの水平線と長手軸30間の角度である。ドラム20の傾斜角αにより、SAP粒子動作の比重の影響が決定される。傾斜角は、0°〜80°でよい。好ましい実施形態は、傾斜角αが0°を超過、より好ましくは傾斜角が0.5°〜45°、更に好ましくは1°〜30°である。
【0140】
SAP粒子動作の一時駆動力は、重力であることが好ましい。但し、傾斜角も、最小値0にしてもかまわない。これらの実施形態では、当初SAP粒子を正しい方向に押し進めるために、SAP粒子がドラム型反応装置に送られ、「壁」はドラム型反応装置の供給側に設けられる。粒子がドラム内に入ると、SAP粒子をドラム内に供給する定義した動作方向を伴うドラムの回転により、SAP粒子を螺旋形の経路(helical path)に押し進められ、これにより、結果的にSAP粒子がドラム内で運搬される。
【0141】
傾斜角0°のドラムをバッチプロセスで使用する場合、回転を開始する前に、SAP粒子もドラムの長さに沿って均一に分散させることができる(移動方向の初期定義はなし)。これらの実施形態のSAP粒子は、ドラム回転中にドラムに供給されないため、SAP粒子が螺旋形の経路(helicalpath)には押し進められない。SAP粒子が紫外線照射を通った後で、SAP粒子がドラムから出される。
【0142】
ドラム20内の照射源40の位置により、SAP粒子と照射源40の距離が決定される。ドラム内を移動するSAP粒子は、ドラムの内完全表面上に均一に分散されるわけではないが、重力により、主にドラムの下の部分に沿って移動する。従って、SAP粒子のほとんどは、ドラム内の完全な螺旋形の経路(helical path)をたどるわけではなく、螺旋形の経路の一部をたどり、ドラムの「壁」を上昇する間、特定の「高さ」達すると、重力によりSAP粒子が落下する。
【0143】
従って、照射源40は、ドラムの下の部分120に向かって配置され(非回転状態のドラムを参照)、照射源とSAP粒子間の距離は、比較的小さい。照射源40は、ドラムの上の部分130に向かって配置されている場合は(非回転状態のドラムを参照)、照射源とSAP粒子間の距離は大きくなる。
【0144】
研究室で使用されるような典型的な小型ドラム型反応装置(例えば、本書に含まれる事例で使用されているドラム型反応装置)では、SAP粒子の照射は、好ましくは0.1秒〜30分、より好ましくは0.1秒〜15分、更に好ましくは0.1秒〜5分である。架橋される照射源とSAP粒子間の距離は、好ましくは2mm〜150mm、より好ましくは2〜50mmである。空気(通常大気)が使用されている場合、距離は典型的には範囲の低い方の端になり、窒素を使用する実施形態では、距離は典型的には範囲が高い方の端になる。距離は、主に、選択した大気のVUVの適用範囲による。
【0145】
通常、個別のSAP粒子は、ドラムの回転により、ドラムの中を直線で回転するのではなく、準螺旋形経路を通るように押し進められる。従って、ドラム内でのSAP粒子の滞留時間は、回転速度を上げることで増加できる。但し、ドラムの回転速度は、遠心力によりドラムの内部表面に沿ってSAP粒子が均一に分布される程度まで上げることを目的としていない。回転は、主としてSAP粒子の螺旋系運動を支持するが、回転速度を調整し、SAP粒子のほとんどをドラムの下方の部分に保ち、内側表面の「上昇」を制限する必要がある。
【0146】
ドラムの回転は、SAP粒子の穏やかな剪断運動を促進し、これにより、SAP粒子が調整されて、完全なSAP粒子表面の紫外線放出への均質曝露を得ることができるようになる。同時に、SAP粒子は、それ以外の場合では、SAP粒子の表面に新規に作製された架橋を破壊する可能性のある磨耗を若干受ける。
【0147】
ドラムの回転速度は、好ましくは0.1rad/s(1rpm)〜18.8rad/s(180rpm)、より好ましくは0.5rad/s(5rpm)〜10.5rad/s(100rpm)、更に好ましくは1.1rad/s(10rpm)〜6.3rad/s(60rpm)である。但し、適切な回転速度は、ドラムの横断面に大きく依存する。
【0148】
ドラムのSAP粒子の滞留時間は、ドラムの内側表面の粗度により更に制御される。ドラムの内側表面が比較的粗い場合は、ドラムの内側表面が比較的平坦な場合と比較し、SAP粒子の移動はより遅くなる(特定の回転速度において)。表面が粗ければ粗いほど、特定の回転速度におけるSAP粒子の螺旋側面運動は急勾配になる。更に、ドラムのSAP粒子の滞留時間は、ドラムの内側表面の特定部分の障害物を増加又は低下させることで、更に増やすことができる。これは、ドラム内でのSAP粒子の動きの速度を低下させるため、特にドラムの傾斜角αが比較的に大きい場合に実行してもよい。
【0149】
障害物の1つの可能な実施形態は、ドラム内の螺旋形状の障害物(図1には示されていない)である。螺旋形状の障害物は、ドラムの内側表面に密に接触する場所に配置されている。これは、ドラムの内側表面に刻み込まれていたり、あるいは、ドラムの表面よりも上に持ち上げられている場合もある。螺旋形状の障害物は、ドラムの回転と共に回転でき(例えば、ドラムの内側表面に固定又はドラムの内側表面に刻み込まれている実施形態において)、又は、より好ましくは、螺旋形状の障害物は、ドラムの回転の方向に対して反対向きにも回転できる(これは、螺旋形状の障害物がドラムの内側表面に刻み込まれている実施形態には明らかに無効である)。又、螺旋形状の障害物は、ドラム回転中にも全く回転しないように構成できる(ここでも、螺旋形状の障害物がドラムの内側表面に刻み込まれている実施形態には明らかに無効である)。ドラム内のSAP粒子の滞留時間が螺旋形状の障害物を伴わない同じドラムと比較して長期になるように、螺旋形状の障害物を構成できる。
【0150】
あまり好ましくはないが、螺旋形状の障害物を備え、ドラムに傾斜をつけた方法で調整(α>0°)した実施形態では、SAP粒子をドラムの下方の末端部60に送り込み、SAP粒子をドラム内で内側表面に沿って上方向に移動させることが可能である。このような実施形態では、螺旋形状の障害物は、ドラムと同じ方向で回転しなければならない。螺旋形状の障害物により、SAP粒子が螺旋形の経路に沿ってドラム内を移動することが保証される。紫外線照射後、SAP粒子は、収集手段80が設けられている上の末端部50でドラムを出る。これらの実施形態では、AP粒子の運搬が重力に対し、螺旋形状の障害物を介して促進される。記載したドラム内の螺旋は、言うまでもなく、傾斜角α−0°の反応装置実施形態にも使用できる。
【0151】
又、不連続なプロセス(特に製造方法の場合)が使用され、ドラムが傾斜した方法(α>0°)で設けられる場合、SAP粒子は、下方の末端部60からドラムに供給し、ドラム内に取り付けられた螺旋形状の障害物により照射中に上方向に移動することができ、同じように下方の末端部を通じてドラムを出ることができるようになる(例えば、SAP粒子の回転を停止すると、下方向に還流する)。その後、次のSAP粒子のバッチを下方の末端部60でドラムに供給できる。このような実施形態では、供給手段70及び収集手段80の両方が、ドラムの同じ(下方)末端部に設けられる。
【0152】
但し、ドラム内のSAP粒子層の数はSAP粒子が相互に重なりあって下の粒子への紫外線照射が低下することによる遮断(shadowing)の影響を最小化するため、比較的低く保つべきである。一方で、経済的理由から、高速処理が望ましい。所定の反応装置ジオメトリについて、各粒子が実質的に同じ紫外線線量を受容するようにSAP粒子が十分にドラム内で混合されるようにすることで、技術的/商用的効率が改善できる。このためには、全てのSAP粒子が効率的に照射され、望ましい表面架橋を取得できるように、ドラムの長さを伸長することが望ましいことがある。
【0153】
当該技術分野において既知の通り、親水性の非晶質シリカ等の流動性エンハンサーは、デグサ社(Degussa Corp)等から市販されているため、所望によりドラムのSAP粒子に追加し、SAP粒子の水分含有量が比較的高い場合等の粒塊化を回避する支援策としてもよい。流動性エンハンサーは、典型的には、SAP粒子重量で0.1重量%〜10重量%の範囲で適用される。
【0154】
SAP粒子の処理能力が向上する場合は、それに合わせてランプ出力及び/又はランプ数を調整し、その状態でも全てのSAP粒子が望ましい表面架橋を取得できるのに十分な紫外線線量に対してさらされるようにする。
【0155】
本発明の好ましい実施形態では、ドラムが、照射源40の上方に設けられるスクリーン100と共に用意される。
【0156】
スクリーンは、スクリーン上部の領域にある照射源40を隠蔽する。従って、ドラム130の上の部分は、―及び、必然的に、ドラム130の上の部分の表面に沿って移動するSAP粒子も―照射されない。照射からSAP粒子を保護する度合は、スクリーンの寸法をそれに従って選択することで調整できる。大きな粒度分布を処理するドラムにSAP粒子を供給する場合は、通常、小さな粒子は、大きな粒子よりもドラムの内側表面に付着し、ドラムを通じて螺旋形の経路に従いやすい傾向にある。結果的に、より小さなSAP粒子は、より大きなSAP粒子と比較し、ドラム内での滞留時間がより長くなる。スクリーンは、壁に付着した小さなSAP粒子が比例的に超過した高い紫外線線量を授受するのを防止する。これは、粒子が「壁を上昇する」につれて、影の中に入るためである。
【0157】
好ましい実施形態では、スクリーンはパラボラ反射器から成る。照射吸収ガスがない場合は、鏡は、ドラム120の下方の部分を移動するSAP粒子流に照射線を反射し、照射効率を高める。
【0158】
又、スクリーン100は、内側表面の上の部分130から落下する粒子から、照射源を保護する。
【0159】
本発明の方法は、コストを削減するため、通常大気下で行われることが好ましい。但し、通常大気下でのVUV線照射は、酸素により一部吸収されるため、VUV照射の適用範囲が制限される。更に、酸素によるVUVの吸収により、オゾンが形成される。従って、作業人員がオゾンに接触しないように、ドラム型反応装置を、好ましくは換気した、コンテナに配置することが望ましい。
【0160】
但し、VUV照射の適用範囲を広げるには(照射は酸素には吸収されないため)、本発明の方法は、窒素下で行われることもできる。窒素下でのVUVの適用範囲は、通常大気下でのVUVの適用範囲よりもはるかに大きい。これにより、例えば、SAP粒子の貫流速度を向上させるより大きな寸法のドラムを使用できるようになる等、反応装置設計及びプロセスレイアウトに更にゆとりを持たすことができる。
【0161】
又、VUV照射は、水分子にも吸収されるため、ドラム内の高大気湿度を避けるべきであり、比較的一貫した表面架橋を得るには、大気湿度を実質的に一定に保つ必要がある。大気湿度を制御し、比較的低いレベルに制限するには、SAP粒子の水分含有量を一定に、好ましくは比較的低いレベルに保つ。
【0162】
本発明の方法が通常大気下で行われない場合は、望ましいガス環境(例えば窒素若しくは強化水蒸気圧)を提供及び維持するための手段110が用意される。望ましい大気下にドラムを置くことも、あるいは、図1に示すように、反応装置10若しくはドラム20を含む反応装置10の一部を、ガス相を手段110により制御可能にするコンテナに配置することで、完全な反応装置10若しくは少なくともドラム20及びその隣接する周囲設備を不活性雰囲気に置くこともできる。
【0163】
ドラム20内の温度は、好ましくは20℃〜99℃、より好ましくは20℃〜75℃、及び最も好ましくは20℃〜50℃である。
【0164】
現況技術の表面架橋方法に必要な器材と比較すると、本発明の方法に使用するドラム型反応装置は、軽量であり、場所もあまり必要としない。又、機材がより安価である。
【0165】
本発明のドラム型反応装置の代わりに、中心にロッド形状の照射源を持つ照射状対象ジオメトリを備えた流動床反応装置を検討してもよい。本発明のドラム型反応装置と比較すると、流動床反応装置は、ガスの生成を必要とする。
【0166】
流動床反応装置の欠点は、寸法のより大きなSAP粒子(より重量が大きい)がより早く沈澱し、より小さなSAP粒子と比較するとより低い照射量に暴露されることである。寸法が異なるSAP粒子がこのような不均一な紫外線暴露を受けることにより、寸法が異なるSAP粒子の表面架橋に関して、偏差が比較的高くなることがある。同様の議論が、紫外線曝露を促進するための振動プレート(vibrating plate)の使用にも適用される。
【0167】
それに反し、本発明のドラム型反応装置は、ドラム内のSAP粒子において、極めて再現可能な滞留時間を可能にする。ドラム内でのSAP粒子の逆混合はごく僅かで、寸法の類似したサイズを有するSAP粒子は、ドラム内で非常に類似した滞留時間を有する。更に、寸法が大きく異なるSAP粒子が使用される場合、スクリーンのシャドウイング効果を活用すれば、すべてのSAP粒子は―寸法には関係なく―同様の紫外線線量に暴露することができる。
【0168】
更に、本発明のドラム型反応装置と比較した流動床反応装置の欠点としては、流動床反応装置では、ガス流制御のために高価な投資が必要になる点が挙げられる。
【0169】
又、ドラム型反応装置の使用は、かなり激しい攪拌と比較すると穏やかな剪断運動であるため、流動床反応装置と比較して磨耗の減少を促進する。
【0170】
上述のさまざまな関連パラメーターは、1つのパラメーターが変化すると、少なくとも1つ以上の他のパラメーターも変更及び調整しなければならない可能性があるため、多くの場合、相互に関連付けられている。例えば、紫外線ランプの出力は、方法に必要な紫外線ランプの全体数に影響を与える。更に、紫外線ランプの寸法と全体数は、ドラムの直径及び長さに影響を与えることがある。ドラムの長さは、同様に、ドラムの必要な傾斜角と回転速度に影響を与えることがある。これは、ドラムの長さ、傾斜角、及び回転速度は、すべてドラム内のSAP粒子の滞留時間に影響を与えるためである。従って、方法において望ましい変更を行うには、1つのパラメーター若しくは他のパラメーターを変更するか、あるいは1つより多いパラメーターを変更することが可能な場合がある。
【0171】
但し、本発明の方法は、定期的に異なるパラメーターを調整することで、本発明の方法により取得されるSAP粒子が望ましいレベルの表面架橋を有するまで、直ちに且つ迅速に最適化できる。
【0172】
吸収性物品
本発明の方法により作製されたSAP粒子は、吸収性物品の吸収性コアに適用される。本明細書で使用するとき、吸収性物品とは、液体を吸収して収容する道具を指し、より具体的には、着用者の身体に接触させたり隣接させたりして、身体から排泄される様々な排出物を吸収して収容する道具を指す。吸収性物品としては、おむつ、成人用失禁ブリーフ、おむつホルダー及びおむつライナー、生理用ナプキン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
本発明の好ましい吸収性物品はおむつである。本明細書で使用するとき、「おむつ」とは、一般に乳幼児及び失禁者が胴体下部の周囲に着用する吸収性物品を指す。
【0174】
本発明に特に好適な吸収性物品は、液体透過性トップシート、液体不透過性バックシート、一般には前記トップシートとバックシート間に配置された吸収性コアを備えた外側カバーから典型的には構成される。吸収性コアには、一般に圧縮可能且つ快適で、着用者の皮膚に刺激を与えず、尿及び他の体の排出物等の液体を吸収及び保持可能な吸収性材料を含有させてもよい。吸収性コアは、本発明のSAP粒子に加え、使い捨ておむつと他の吸収性物品で通常使用される、一般にエアフェルトと呼ばれる粉砕木材パルプ等の多種多様の液体吸収性材料を含んでもよい。
【0175】
吸収性アセンブリとして使用するための代表的な吸収性構造については、1992年8月11日にヘロン(Herron)らに付与された米国特許第5,137,537号、名称「個別のポリカルボン酸架橋木材パルプセルロース繊維を含有する吸収性構造(Absorbent Structure Containing Individualized, Polycarboxylic Acid Crosslinked Wood Pulp Cellulose Fibers)」、1992年9月15日にヤング(Young)らに付与された米国特許第5,147,345号、名称「失禁管理のための高効率吸収性物品(High Efficiency Absorbent Articles For Incontinence Management)」、1994年8月30日にロウ(Roe)に付与された米国特許第5,342,338号、名称「低粘性の糞便物質のための使い捨て吸収性物品(Disposable Absorbent Article For Low―Viscosity Fecal Material)」、1993年11月9日にデマレ(DesMarais)らに付与された米国特許第5,260,345号、名称「水性体液のための吸収性フォーム材料及び該材料を含有する吸収性物品(Absorbent Foam Materials For Aqueous Body Fluids and Absorbent Articles Containing Such Materials)」、1995年2月7日にダイアー(Dyer)らに付与された米国特許第5,387,207号、名称「水性体液のための濡れるまで薄い湿潤吸収性フォーム材料及びそれらの製造プロセス(Thin―Until―Wet Absorbent Foam Materials For Aqueous Body Fluids And Process For Making Same)」、1995年3月14日にラボン(LaVon)らに付与された米国特許第5,397,316号、名称「拡張可能な吸収性材料で形成された、水性体液のためのスリット付き吸収性部材(Slitted Absorbent Members For Aqueous Body Fluids Formed Of Expandable Absorbent Materials)」、並びに米国特許第5,625,222号、名称「水性流体のための吸収性フォーム材料(Absorbent Foam Materials For Aqueous Fluids Made From high In al.、1997年7月22日)に記載されている。
【0176】
試験方法
SAP粒子の容量は、多くの場合、遠心分離保持性能値(CRC: centrifuge retention capacity value)として表わされる。CRCの試験方法は、EDANA法441.2−02に記載されている。
【0177】
SAP粒子を含むゲル床(gel bed)の透過性は、通常は、塩水流伝導度(SFC)として測定される。SFCを決定する試験方法は、ゴールドマン(Goldman)らにより1996年10月8日に発行された米国特許第5,562,646号に記載されている。本発明については、U.S.5,562,646の試験方法を改良し、Jayco溶液の代わりに0.9%NaCl溶液が使用される。更に、米国特許第5,562,646号に記載されている試験方法を改良し、圧力2.1kPa(0.3psi)の代わりに0.7kPa(0.1psi)が適用されている。
【実施例】
【0178】
ベースポリマー:
ベースポリマーとして、表題「コーティングされた水膨潤性物質からなる吸収性物品(Absorbent articles comprising coated water-swellable material)」として2005年2月17日に出願済みのWO2005/014066A1の例1.2に記載されている水膨潤性ポリマーが使用されている。但し。MBAAの量は、例示の通り37.5g/gのCRC値を有するSAP粒子を取得するため、それに従って定期的に調整しなければならない。CRC値は、主として、WO2005/014066A1の例1.2に記載されるCCRCの方法と同じ方法で調整可能であることに留意すべきである。
【0179】
例で使用されているドラム型反応装置は、長さ40cm、直径11cmである。ドラムはガラス製で、ドラムの内側表面は僅かに粗く据え付けた、られている。粗度は、ドラム内のSAP粒子の滞留時間が1分になるように調整される。ドラムの内側表面は、粗度が均一に分散されている。すなわち、ドラム内には異なる粗度を有する異なる領域はない。
【0180】
ドラム内には、オスラム社(Osram、ドイツ、ミュンヘン)のロッド型水冷式の1.4kW Xe−エクシマー照射源Xeradex(商標)長さ40cm(すなわち、ドラムと同じ長さ)が設けられる。照射源は、ドラムの長手軸と並行して、照射源とドラムの下方長手方向部分の距離が20mmになるように設置されている。ドラムは、傾斜角α−1°でフレーム内に設けられる。
【0181】
ベースポリマーから成るサンプルSAP粒子10gを、アルキメデススクリューを経由して20.2g/分の速度でドラムの上の末端部に供給し、このときドラムは、回転速度1.2rad/秒(11rpm)で回転している。この回転速度は、SAP粒子の紫外線照射中は一定に保つ。ラジカル形成剤若しくは表面架橋分子が使用されていない。
【0182】
SAP粒子は、酸素分子なしに窒素分子下のドラム内で照射される。ドラム内のSAP粒子の平均滞留時間は、1分と決定されている。
【0183】
ドラム内のSAP粒子の平均滞留時間は、反応装置に供給したSAP粒子に着色したSAP粒子を追加し、着色色粒子がドラムから出るまでの時間を測定することで判別した。この試験を5回行い、平均時間を計算した。ドラムの長さは、照射源の長さと等しいため、平均滞留時間は平均照射時間と等しくなる。
【0184】
ドラム内の温度は、20℃で一定に保たれる。SAP粒子は、ドラムの下の末端部から出るときに収集される。
【0185】
例1では、SAP粒子は、ドラム内を1回移動、すなわち1分間照射される。
【0186】
例2では、SAP粒子は、ドラム内に順に5回供給される。この際、SAP粒子は、全てのサンプルSAP粒子がドラムから出た直後にドラム内に再度供給される。従って、例2のSAP粒子は、合計5分間照射される。
【0187】
初期SAP粒子のCRC及びSFC値(すなわち、紫外線照射前のSAP粒子)及び紫外線照射後のSAP粒子は、上記に提示した試験方法に従って判別されている。その結果が表1に要約されている。
【表1】

【0188】
表面架橋なしのSAP粒子(従って、ベースポリマーのみから成る)については、CRC値は、典型的に高くなる。これは、SAP粒子の表面に導入されている架橋により、膨張における制限がなされていないためである。表面架橋後、SAP粒子のCRC値は減少する。
【0189】
これに反し、表面架橋されていないSAP粒子のSFC値は非常に低い(値は最少ゼロになる):SAP粒子は非常に柔らかいため、ゲルブロッキングが発生し、非常に低いSFC値につながる。
【0190】
一般的に、ベースポリマーのみから成る表面架橋されていないSAP粒子と比較し、SFC値の増加とCRC値の低下は、共に、表面架橋が実際に行われたことの非直接的な証明である。
【0191】
従って、これらの例では、本発明の方法により、ペースポリマーが実際に表面架橋されていることを示す。
【0192】
「発明を実施するための最良の形態」で引用した全ての文献は、その関連部分において本明細書に参考として組み込まれているが、いかなる文献の引用も、それが本発明に対する従来技術であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【0193】
本発明の特定の実施形態について説明し記載したが、この発明の要旨及び範囲を逸脱せずに様々なその他の変更及び修正が可能であることが当業者には明白であろう。従って、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。
【0194】
本明細書にて値が規定されたそれぞれの寸法は、技術寸法であって、これは本発明の背景において、文字通りには解釈されるべきでない。ゆえに、本明細書に規定される寸法と機能的に等価な寸法を有する全ての実施形態は、本発明の範囲で扱われることを意図し、例えば「40mm」の寸法は「約40mm」を意味すると解釈されるべきである。
【0195】
本明細書は、本発明を特に指摘し且つ明白に請求する特許請求の範囲をもって結論とするが、本発明は、以下の図面を添付の明細書と併せ読むことによって更によく理解されるものと考えられ、類似の構成要素には同じ参照番号が付与される。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】本発明によるドラム型反応装置の概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面架橋超吸収性ポリマー(SAP)粒子を含む吸収性物品であって、該超吸収性ポリマーが、
a)超吸収性ポリマー粒子を用意する工程と、
b)長手軸(30)を有し、断面をさらに有するドラム(20)を備えた反応装置(10)を用意する工程であって、照射源(40)によって放出された放射線が該ドラム(20)内の超吸収性ポリマー粒子に到達できるように照射源(40)が設けられ、該照射源(40)が100nm〜200nmの波長の紫外線を放出可能なものである、工程と、
c)該超吸収性ポリマー粒子を該ドラム(20)に供給する工程と、
d)該ドラム(20)をその長手軸(30)の周りに回転させることによって、該ドラム(20)内の超吸収性ポリマー粒子を移動させる工程と、
e)該超吸収性ポリマー粒子が、該ドラム(20)内を移動する際に該照射源(40)により照射される工程と、
f)該ドラム(20)から出る該超吸収性ポリマー粒子を収集する工程と
を含む方法によって製造されたものである、吸収性物品。
【請求項2】
前記方法における前記照射源(40)が、前記ドラム(20)内に配置される、請求項1に記載の吸収剤物品。
【請求項3】
前記方法における前記照射源(40)が、前記長手軸(30)に沿って、前記長手軸(30)と並行に、又は前記長手軸(30)に対して傾斜した向き若しくは弧を描くように配置される、請求項2に記載の吸収剤物品。
【請求項4】
前記方法における前記照射源(40)と前記ドラム内の前記超吸収性ポリマー粒子との間の距離が2mm〜150mmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記方法における前記ドラム(20)が、円形若しくは楕円形状であるか、又は角の数が6を超える多角形である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記方法におけるスクリーン(100)が、前記照射源(40)の上方に設けられる、請求項2〜5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記方法における前記ドラム(20)が、0.1rad/s(1rpm)〜18.8rad/s(180rpm)の速度で回転する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記方法における紫外線照射が、20℃〜99℃の温度で行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記方法におけるラジカル形成剤分子が、紫外線照射前に前記超吸収性ポリマー粒子に適用される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記方法における前記ラジカル形成剤が、水溶性であり、水溶液に適用される、請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記方法における前記ラジカル形成剤が、ペルオキシ二硫酸ナトリウムである、請求項10に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記方法における追加の表面架橋分子が、紫外線照射前に前記超吸収性ポリマー粒子に適用され、前記表面架橋分子が、C=C二重結合であるか又はヘテロ原子であるXを有するCH−X部分である少なくとも2つの官能基を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記方法における前記超吸収性ポリマー粒子が、前記ドラムに連続的に供給され、前記超吸収性ポリマー粒子が、前記ドラムから連続的に出る、請求項1〜12のいずれか一項に記載の吸収性物品。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−505738(P2009−505738A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528098(P2008−528098)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/032885
【国際公開番号】WO2007/024926
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】