説明

真空脱泡装置

【課題】泡立たせることなく、脱泡処理済の注入液を所望の場所に送ることができる様にする。
【解決手段】注入液5の脱泡処理をする脱泡タンク2と、該脱泡タンクの上部側に連通する真空ポンプ40及び供給口10と、該脱泡タンクの下側に設けられ、送液ポンプを介して脱泡液貯留部30に連通する排出口14と、を備えた真空脱泡装置1において、前記液送ポンプは、密閉されたシリンダ15内を摺動するピストン19と、前記シリンダの両端部に夫々配設され、前記脱泡液貯留部に供給弁27,28を介して連通している吐出口15c,15dと、前記シリンダの両端部に夫々配設され、前記脱泡タンクと吸入弁16,17を介して連通する吸入口51a,15bと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハム、ソーセージ、ベーコン等の製造に用いられる、真空脱泡装置に関するものであり、更に述べると、ピックル液等の注入液の気泡を破砕する真空脱泡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハム、ソーセージ、ベーコン等の製品では、製品全体に亘って、均一の味であることが求められている。
そこで、前記製品の原料である、豚、牛及び家禽等の肉塊に、ピックル液注入インジェクタを用いて、所定量のピックル液及び/又は調味液を注入し、味の均一化を図っている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
従来の注入液は、液体原料と粉体原料とを攪拌器を用いて混合攪拌することにより、製造されるが、製造直後注入液には、多くの気泡が含まれている。この気泡を含む注入液を肉塊に注入すると、前記製品中にピックル液が均一に分布しないので、好ましくない(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
そこで、真空脱泡装置により、前記注入液をインジェクタに供給する前に、前記注入液の脱泡処理を行なっている。なお、インジェクタ処理工程では、前記肉塊に注入されずに回収される注入液(回収注入液)が発生するが、この回収注入液は、前記脱泡処理の後、再使用されている。
【0005】
この真空脱泡装置は、攪拌手段を有する脱泡処理タンクと、該タンクの上部側に連通する真空ポンプ及び供給口と、該脱泡タンクの下側に設けられ、送液ポンプを介して脱泡液貯留部に連通する排出口と、を備えている。この真空脱泡装置では、前記真空ポンプの駆動により前記脱泡タンク内を真空状態にするともに、前記供給口から供給された注入液を攪拌手段で攪拌し、前記脱泡タンクの内壁に衝突させて気泡を破裂させ、脱泡処理をしている。
【0006】
脱泡された注入液は、排出口から回転遠心ポンプにより脱泡液貯留部に送られる。前記脱泡貯留部の注入液は、前記インジェクタのピックル液注入針に送られ、該針を肉塊に打ち込むことにより該肉塊に注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−209693号公報
【特許文献2】特開平7−213223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来例では、回転遠心ポンプを用いて脱泡タンク内の脱泡済みの注入液を脱泡液貯留部に送液しているが、回転遠心ポンプの羽根車を連続的に回転させるため、羽根車周辺に注入液の圧力変動が生じ、その圧力変動によって注入液が練られるのは避けられない。
【0009】
又、回転遠心ポンプの羽根車が回転中に、脱泡液貯留部への送液を一時停止する場合には、前記ポンプ内で羽根車が空転することになるが、このとき、注入液の圧力が大きく上昇し、その圧力によって注入液が練られるという問題がある。従って、注入液が泡立ち、その温度が上昇し、注入液が劣化する恐れがある。
【0010】
この発明は、上記事情に鑑み、泡立たせることなく、脱泡処理済の注入液を所望の場所に送ることができる様にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、注入液の脱泡処理をする脱泡タンクと、該脱泡タンクの上部側に連通する真空ポンプ及び供給口と、該脱泡タンクの下側に設けられ、送液ポンプを介して脱泡液貯留部に連通する排出口と、を備えた真空脱泡装置において、前記液送ポンプは、密閉されたシリンダ内を摺動するピストンと、前記シリンダの両端部に夫々配設され、前記脱泡液貯留部に供給弁を介して連通している吐出口と、前記シリンダの両端部に夫々配設され、前記脱泡タンクと吸入弁を介して連通する吸入口と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
この発明は、注入液の脱泡処理する脱泡タンクと、該脱泡タンクの上部側に連通する真空ポンプ及び供給口と、該脱泡タンクの下側に設けられ、送液ポンプを介して脱泡液貯留部に連通する排出口と、を備えた真空脱泡装置において、前記液送ポンプは、密閉されたシリンダ内を摺動するピストンと、前記シリンダの両端部に夫々配設され、前記脱泡液貯留部に供給弁及び大気開放弁を介して連通している吐出口と、前記シリンダの両端部に夫々配設され、前記脱泡タンクと共通弁及び吸入弁を介して連通する吸入口と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
この発明の吐出口及び前記大気開放弁は、バキューム弁に連通していることを特徴とすることを特徴とする。この発明の前記脱泡タンクは、大気開放弁を備えていることを特徴とする。この発明の前記脱泡タンクは、攪拌手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、以上のように構成したので、往路、即ち、ピストンが一端側から他端側に摺動する行程では、前記一端側の吸入口からシリンダ内に脱泡タンク内の注入液が吸入され、又、復路、即ち,前記ピストンが前記と反対方向に摺動する行程では、前記一端側の吐出口から注入液を脱泡液貯留部に送出するとともに、前記他端側の吸入口から脱泡タンク内の注入液をシリンダ内に吸入する。このようにして前記ピストンの往復行程を繰り返すことにより脱泡タンク内の注入液を泡立てることなく前記脱泡液貯留部に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図1により説明する。真空脱泡装置1は、脱泡タンク2と、攪拌器3と、前記撹拌器3の駆動装置4と、を備えている。前記脱泡タンク2の上端部は、封止板8により密封されているが、この封止板8の上には、前記駆動装置4を覆って密封する蓋体7が配設されている。
【0017】
前記封止板8には、脱泡タンク2と蓋体7とを連通させる連通口(図示省略)が設けられている。前記脱泡タンク2の上部側には、供給口10が設けられ、この供給口10は、供給管29を介して注入液タンク30に連結されている。前記注入液タンク30には、脱泡処理の対象となるピックル液などの注入液が収容されている。前記供給管29には、開閉弁、例えば、電磁切替弁11、が設けられている。前記脱泡タンク2は、略円筒状に形成され、その下部には、排出口14が設けられている。
【0018】
前記排出口14は、液排出管23を介してシリンダ15に接続されている。前記液排出管23には、共通弁24が配設され、該共通弁24の下流側は、第1分岐管16aと第2分岐管17aとに分岐している。前記分岐管16a,17aは、吸入弁16,17を介してシリンダ15の第1吸入口15a、第2吸入口15bに連結されている。前記吸入弁16,17として、例えば、電磁切替弁が用いられる。
【0019】
前記シリンダ15は、密封された円筒状体であり、その中には、ピストンロッド19付きのピストン20が摺動自在に設けられている。前記ピストンロッド20は、駆動手段(図示省略)の駆動により摺動してピストン20を変位させる。前記ロッド19の移動軌跡の近傍には、間隔をおいて1対の位置検出センサ21a,21bが配設されている。前記位置検出センサ21aは、ピストン20の往路摺動限界を検出する光センサであり、又、前記位置センサ21bは、ピストン20の復路摺動限界を検出する光センサであるが、このセンサは、必ずしも光センサに限定されるものではなく、例えば、接触センサ(リミットスイッチ)でも良い。なお、22は、前記ピストンロッド19を保持するホルダを示す。
【0020】
シリンダ15の一端(左端)部側の吐出口15cは、U字状管26の一方(左側)の脚部26aに、又、その他端(右端)部側の吐出口15dは、その他方(右側)の脚部26bに、それぞれ連結されている。前記各脚部26a,26bには、供給弁27,28が設けられているが、この供給弁27,28として、例えば、逆止弁、が用いられる。
【0021】
前記供給弁27,28と前記吐出口15c,15dとの間には、大気開放弁31,32及びバキューム弁34,35が配設されている。前記U字状管26の中央部には、吐出管37が接続され、この吐出管37を介して前記U字状管26内の注入液が処理済タンク38内に流入する。
【0022】
前記蓋体7は、開閉弁、例えば、電磁切替弁39、を介して真空ポンプ40に連通している。又、前記蓋体7には、脱泡タンク6に連通する大気開放弁12が設けられている。なお、41は、前記電磁切替弁11,16,17,24,31,32、真空ポンプ40等を制御する制御盤、を示す。
【0023】
次に、本実施形態の作動について説明する。
第1段階
S1:大気開放弁12、電磁切替弁11、共通弁24、吸入弁16,17を閉じる。
S2:真空ポンプ40のスイッチをオンにし、開閉弁39を開き、図示しない真空計が所定値になるまで真空引きする。この所定値は、例えば、0.08MPaである。
【0024】
第2段階
S3:共通弁24を開くとともに、開閉弁11を開く。そうすると、注入液タンク30内に収容されている注入液5が、脱泡タンク2内に吸い込まれてるが、所定量、例えば、300L、まで吸い込まれたら前記開閉弁11を閉じる。
S4:駆動装置4を駆動させて、撹拌器3を高速、例えば、1〜10/min.、で回転させて攪拌し、注入液を脱泡タンク2の内面にぶっつけ、泡に衝撃力を与えて破裂させ、消泡させる。
【0025】
第3段階
S5:共通弁24を開く。
S6:開閉弁11を開き、所定の流量、例えば、50L/min.、の割合で注入液タンク30内の注入液5を脱泡タンク2内に吸い込ませる。前記脱泡タンク2内に吸い込まれた注入液5は、前記撹拌器3の回転により攪拌され、脱泡タンク2の内面にぶっつけられるので、注入液5中の泡は衝撃力を受けて瞬時に破裂し、消滅する。
【0026】
第4段階
S7:吸入弁16を閉じるとともに、大気開放弁31を開き、大気開放する。その後前記大気開放弁31を閉じるとともに、バキューム弁34を開にし、図示しない真空ポンプを駆動させて真空引きを行う。
【0027】
S8:駆動手段をオンにしてピストンロッド19を矢印A19方向に摺動させる(往路行程)。そうすると、シリンダ20内の注入液5aは、吐出口15cからU字状管26の脚部26aに吐き出され、逆止弁27、吐出管37を通って脱泡液タンク38に流れ込む。この時、吸入口15bから注入液5aがシリンダ15内に吸い込まれ、シリンダ15内に貯留される。
【0028】
S9:20Sに示す様に、前記ピストン19がシリンダ15の一端に到達すると、ピストンロッド19の端部19aが検出センサ21aにより検出され、この検出信号は制御盤41に送信される。そうすると、前記制御盤41は、前記駆動手段に対し、前記ピストンロッド19を矢印A19と反対方向に摺動させるように指示するとともに、吸入弁17を閉にし、又、吸入弁16を開にする。
【0029】
更に、制御盤41は、大気開放弁32を開にして大気開放させた後、該大気開放弁32を閉にするとともに、バキューム弁35を開にし、図示しない真空ポンプを駆動させて真空引きを行う。
【0030】
S10:前記ピストンロッド19が、前記矢印A19と反対方向に摺動する(復路行程)と、シリンダ20内の注入液5aは、吐出口15dからU字状管26の脚部26bに吐き出され逆止弁28、吐出管37を通って脱泡液タンク38に流れ込む。この時、吸入口15aから注入液5aがシリンダ15内に吸い込まれ、シリンダ15内に貯留される。
【0031】
S11:前記ピストン19がシリンダ15の他端に到達すると、ピストンロッド19の端部19aが復路センサ21bにより検出され、この検出信号は制御盤41に送信される。
【0032】
第5段階
前記第4段階(S7〜S11)の行程を繰り返し、所望量の脱泡処理を行った後、開閉弁11を閉じる。そして、真空ポンプ40を停止させるとともに、大気開放弁12を開いて大気開放し、脱泡タンク2内を大気圧にする。
【0033】
第6段階
この状態で、前述のように、前記ピストン20の往路行程・復路行程に対応させて吸入弁16,17を開閉し、吸入口15a,15bを交互に開閉させて、脱泡タンク2内の注入液5aを脱泡液タンク38に送る。
【符号の説明】
【0034】
1 真空脱泡装置
2 脱泡タンク
3 攪拌器
4 駆動装置
5 注入液
5a 脱泡後の注入液
10 供給口
11 開閉弁
12 大気開放弁
14 排出口
15 シリンダ
15a 吸入口
15b 吸入口
15c 吐出口
15d 吐出口
16 吸入弁
17 吸入弁
19 ピストンロッド
20 ピストン
24 共通弁
27 供給弁
28 供給弁
30 注入液タンク
31 大気開放弁
32 大気開放弁
34 バキューム弁
35 バキューム弁
38 脱泡液タンク
39 開閉弁
40 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入液の脱泡処理をする脱泡タンクと、該脱泡タンクの上部側に連通する真空ポンプ及び供給口と、該脱泡タンクの下側に設けられ、送液ポンプを介して脱泡液貯留部に連通する排出口と、を備えた真空脱泡装置において、
前記液送ポンプは、密閉されたシリンダ内を摺動するピストンと、前記シリンダの両端部に夫々配設され、前記脱泡液貯留部に供給弁を介して連通している吐出口と、前記シリンダの両端部に夫々配設され、前記脱泡タンクと吸入弁を介して連通する吸入口と、を備えていることを特徴とする真空脱泡装置。
【請求項2】
注入液の脱泡処理をする脱泡タンクと、該脱泡タンクの上部側に連通する真空ポンプ及び供給口と、該脱泡タンクの下側に設けられ、送液ポンプを介して脱泡液貯留部に連通する排出口と、を備えた真空脱泡装置において、
前記液送ポンプは、密閉されたシリンダ内を摺動するピストンと、前記シリンダの両端部に夫々配設され、前記脱泡液貯留部に供給弁及び大気開放弁を介して連通している吐出口と、前記シリンダの両端部に夫々配設され、前記脱泡タンクと共通弁及び吸入弁を介して連通する吸入口と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の真空脱泡装置。
【請求項3】
前記吐出口及び前記大気開放弁は、バキューム弁に連通していることを特徴とすることを特徴とする請求項2記載の真空脱泡装置。
【請求項4】
前記脱泡タンクは、大気開放弁を備えていることを特徴とする請求項1、又は、2記載の真空脱泡装置。
【請求項5】
前記脱泡タンクは、攪拌手段を備えていることを特徴とする請求項1、2、3、又は、4記載の真空脱泡装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−217980(P2012−217980A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90010(P2011−90010)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(506285574)
【Fターム(参考)】