説明

真空蒸着用ミドルコート組成物

【課題】一液型または二液型で、短時間で硬化し、塗装作業性、意匠性および密着性に優れる、熱硬化型の真空蒸着用ミドルコート組成物を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリレート系共重合体(A)と、硬化剤(B)とを含有する真空蒸着用ミドルコート組成物であって、該(メタ)アクリレート系共重合体(A)はガラス転移点50〜70℃、重量平均分子量10000〜50000であり、かつ、側鎖に反応性官能基を有し、該硬化剤(B)が該反応性官能基と架橋反応をする官能基を有する、真空蒸着用ミドルコート組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミドルコート組成物に関する。より詳細には、本発明は熱硬化型ミドルコート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂のようなプラスチックを成型してなるプラスチック成型品の加飾蒸着においては、プラスチック基材の上にアンダーコートまたはベースコートと称されるアンダーコート剤が塗装されてアンダーコート層が形成され、その上にスズ、アルミニウム、ニッケル、銅等の金属が真空蒸着されて蒸着層が形成され、さらにその上にミドルコートと呼ばれるミドルコート剤が塗装されてミドルコート層が形成され、耐摩耗性および耐擦傷性を付与するために、さらにその上にトップコートまたはハードコートと称されるトップコート剤が塗装されてトップコート層が形成される場合が通常である。また、トップコート層および/またはミドルコート層を着色することによって、さらに意匠性を付与することができる。
【0003】
蒸着層の上にトップコートを直接塗装した場合、密着性が十分でなく、はく離が生じることがあるが、蒸着層とトップコート層との間にミドルコート層を介在させることによって、非常に高い耐久性および密着性を長期にわたって維持することができる。
【0004】
ミドルコート用の組成物(以下、「ミドルコート組成物」という。)の硬化方法には、大別して、熱硬化型と、UV硬化型の二種類がある。
熱硬化型は、ミドルコート層に濃い着色がされていても硬化が可能であるという有利な点をもつ。
一方、UV硬化型は、非常に短い時間で硬化するこができるので、リードタイムを非常に短くできるという有利な点をもつ。また、既存のUVラインを使用できる点も有利である。
しかし、UV硬化型には、硬化させるための照射光量の制御が比較的困難であるという問題が存在する。また、本発明の属する技術分野では、意匠性を高めるためにミドルコート層を着色することは普通に行われることであり、UV硬化型では、濃い着色をすると硬化が困難になるという欠点があった。
かかる欠点は、熱硬化型とすることによって解決できるが、従来の熱硬化型コート剤組成物は、硬化時間が30分以上と長く、通常のUV塗装ラインを用いて乾燥することが不可能であり、バッチ式の硬化工程を使用することが不可欠であった。
【0005】
熱硬化型のコーティング組成物としては、例えば、特許文献1には、優れた接着性および意匠性を有する塗膜を得ることができる、アルキル(メタ)アクリレートエステル(a1)と、不飽和二重結合、ヒドロキシ基および芳香環をそれぞれ少なくとも1つ有する化合物(a2)とを含む単量体成分を重合させて得られる共重合体(A)と、硬化性樹脂(B)とを含有するアンダーコート剤組成物が記載され、特許文献2には、一液型または二液型として使用でき、金属薄膜に対して優れた密着性を有する、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーAと、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、硬化剤とを含有する金属薄膜用アンダーコーティング剤組成物が記載され、特許文献3には、一液型または二液型として使用でき、基材に対する接着性、組成物の安定性および硬化性に優れる、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーAと、エポキシ樹脂と、2官能以上のチオールとを含有するアンダーコーティング剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−56813号公報
【特許文献2】特開2007−2050号公報
【特許文献3】特開2007−2051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これらの組成物は、あくまでもアンダーコート層のための組成物であり、プラスチック基材と蒸着金属層との間に介在させるために好適であるが、蒸着金属層とトップコート層との間に介在させるミドルコート層のための組成物としては、意匠性および密着性の観点からすれば好適なものではない。
【0008】
そこで、本発明は、短時間で硬化し、塗装作業性、意匠性および密着性に優れる、熱硬化型の真空蒸着用ミドルコート組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定範囲のガラス転移点と特定範囲の重量平均分子量とを有する(メタ)アクリレート系共重合体と硬化剤とからなる組成物が、低粘度でスプレー塗装が行い易く塗装作業性に優れ、金属蒸着層の上に塗布して加熱硬化させると適度な柔軟性を有してトップコート層との密着性が優れ、塗膜表面の凹凸が少なく意匠性に優れることを知得し、次に掲げる発明を完成させるに至った。
【0010】
〔1〕 (メタ)アクリレート系共重合体(A)と、硬化剤(B)とを含有する真空蒸着用ミドルコート組成物であって、該(メタ)アクリレート系共重合体(A)はガラス転移点50〜70℃、重量平均分子量10000〜50000であり、かつ、側鎖に反応性官能基を有し、該硬化剤(B)は該反応性官能基と架橋反応をしうる官能基を有する、真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔2〕 前記(メタ)アクリレート系共重合体(A)が、1分子中に反応性官能基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート(a1)、1分子中にフェニル基とビニル基とを有する化合物(a2)、およびアルキル(メタ)アクリレート(a3)を単量体成分として含む、〔1〕に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔3〕 前記(メタ)アクリレート系共重合体(A)が、1分子中に水酸基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート(a4)、1分子中にフェニル基とビニル基とを有する化合物(a2)およびアルキル(メタ)アクリレート(a3)を単量体成分として含む、〔1〕または〔2〕に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔4〕 前記アルキル(メタ)アクリレート(a3)のアルキル基が、炭素数1〜18の直鎖もしくは分枝アルキル基または環状アルキル基である、〔3〕に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔5〕 前記硬化剤(B)がポリイソシアネートであって、該ポリイソシアネートがトリメチロールプロパンまたはジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートである、〔3〕または〔4〕に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔6〕 前記硬化剤(B)が、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートおよびナフタレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1である、〔3〕に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔7〕 全不揮発分100質量部中、前記(メタ)アクリレート系共重合体(A)25〜35質量部、前記硬化剤(B)3〜15質量部を含有する、〔3〕〜〔6〕のいずれかに記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔8〕 硬化促進触媒(C)をさらに含む、〔3〕〜〔7〕のいずれかに記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔9〕 前記硬化促進触媒(C)が三級アミンである、〔8〕に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔10〕 全不揮発分100質量部中、前記三級アミン(C)1.0質量部以下を含有する、〔8〕に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
【0011】
〔11〕 前記(メタ)アクリレート系共重合体(A)が、1分子中にカルボキシル基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート(a5)、1分子中にフェニル基とビニル基とを有する化合物(a2)およびアルキル(メタ)アクリレート(a3)を単量体成分として含む、〔1〕または〔2〕に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔12〕 前記アルキル(メタ)アクリレート(a3)のアルキル基が、炭素数1〜18の直鎖もしくは分枝アルキル基または環状アルキル基である、〔11〕に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔13〕 前記硬化剤(B)が1分子中に2個以上のアジリジン基を有する、〔11〕または〔12〕に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔14〕 前記硬化剤(B)が1分子中に3個のアジリジン基を有し、かつ、脂肪族系炭素骨格を有する、〔11〕〜〔13〕のいずれかに記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔15〕 全不揮発分100質量部中、前記(メタ)アクリレート系共重合体(A)25〜35質量部、前記硬化剤(B)1〜15質量部を含有する、〔11〕〜〔14〕のいずれかに記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
【0012】
〔16〕 前記(メタ)アクリレート系共重合体(A)が、1分子中にグリシジル基と(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレート(a6)、1分子中にフェニル基とビニル基とを有する化合物(a2)、およびアルキル(メタ)アクリレート(a3)を単量体成分として含む、〔1〕または〔2〕に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔17〕 前記アルキル(メタ)アクリレート(a3)のアルキル基が、炭素数1〜18の直鎖もしくは分枝アルキル基または環状アルキル基である、〔15〕に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔18〕 前記硬化剤(B)が1分子中に2個以上のイミノ基を有する、〔16〕または〔17〕に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔19〕 前記硬化剤(B)が、1分子中に2個以上の第一級アミノ基を有するポリアミン(b1)と1分子中に炭素−炭素結合を2以上有する1個または2個のα炭素を有するケトン(b2)との反応により得られる、〔16〕〜〔18〕のいずれかに記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
〔20〕 全不揮発分100質量部中、前記(メタ)アクリレート系共重合体(A)25〜35質量部、前記硬化剤(B)1〜15質量部を含有する、〔16〕〜〔19〕のいずれかに記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の真空蒸着用ミドルコート組成物を蒸着金属層の上に塗装し、熱硬化することによって、蒸着金属層およびトップコート層との密着性ならびに意匠性に優れたミドルコート層を提供することができる。
本発明の真空蒸着用ミドルコート組成物は短時間で十分硬化するので、所望により、従来のUV塗装ラインを使用して塗布および硬化をすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の真空蒸着用ミドルコート組成物(以下、単に「本発明の組成物」という場合がある。)は、(メタ)アクリレート系共重合体(A)と、硬化剤(B)とを含有する。なお、(メタ)アクリレートの語は、アクリレートまたはメタクリル酸を意味する。
【0015】
<1.(メタ)アクリレート系共重合体(A)>
本発明の組成物に含有される(メタ)アクリレート系共重合体(A)(以下、「共重合体(A)」という。)は、ガラス転移温度50〜70℃、重量平均分子量10000〜50000で、側鎖に反応性官能基を有するものであれば特に限定されない。
共重合体(A)のガラス転移温度は、50〜70℃の範囲内であれば特に限定されないが、53〜68℃の範囲内が好ましく、55〜65℃の範囲内がより好ましい。この範囲内であると、蒸着金属層およびトップコート層との密着性が良好であるからである。
共重合体(A)のガラス転移温度の測定方法は、当業者が知る任意の方法を用いることができるが、例えば、DSC法、DTA法、TMA法等によって測定することができる。また、以下の計算式(1)により理論値を算出することも出来る。
100/Tg=w/Tg+W/Tg・・・(1)
ただし、Tg:共重合体のポリマーのガラス転移温度(K)
Tg:モノマー1のホモポリマーのガラス転移温度(K)
Tg:モノマー2のホモポリマーのガラス転移温度(K)
:モノマー1の重量分率(%)
:モノマー2の重量分率(%)
共重合体(A)の重量平均分子量の測定方法は、当業者が知る任意の方法を用いることができるが、例えば、浸透圧法、レイリー散乱法、拡散率法、沈降速度法、粘性率法、ラスト法等によって測定することができる。また、上記計算式(1)によって求めることもできる。
共重合体(A)の重量平均分子量は、上記計算式(1)によって計算した分子量で、10000〜50000の範囲内であれば特に限定されないが、15000〜45000の範囲内が好ましく、20000〜40000の範囲内がより好ましく、25000〜35000の範囲内がさらに好ましい。この範囲内であると、意匠性、塗装作業性、密着性が良好だからである。
【0016】
共重合体(A)が有する反応性官能基としては、後記する硬化剤(B)と反応性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、水酸基[下記式(1)]、カルボキシル基[下記式(2)]、グリシジル基[下記式(3)]等を挙げることができる。
共重合体(A)は、1分子中に反応性官能基と(メタ)アクリロイルオキシ基[下記式(4)]を有する(メタ)アクリレート(a1)、1分子中にフェニル基とビニル基とを有する化合物(a2)、およびアルキル(メタ)アクリレート(a3)を単量体成分として含んでもよい。
【0017】
【化1】

【0018】
上記式(4)において、Rは水素原子またはメチル基である。
【0019】
1分子中に反応性官能基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート(a1)としては、例えば、1分子中にヒドロキシ基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート(a4)(以下、「(メタ)アクリレート(a4)」という。)、1分子中にカルボキシル基と(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレート(a5)(以下、「(メタ)アクリレート(a5)」という。)、1分子中にグリシジル基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート(a6)(以下、「(メタ)アクリレート(a6)」という。)等を挙げることができる。
【0020】
(メタ)アクリレート(a4)としては、1分子中にヒドロキシ基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有するものであれば特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート[下記式(5)]、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0021】
【化2】

【0022】
上記式(5)において、Rは水素原子またはメチル基である。
【0023】
(メタ)アクリレート(a5)としては、1分子中にカルボキシル基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有するものであれば特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸[下記式(6)]、2‐カルボキシエチル(メタ)アクリレート、4−カルボキシブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0024】
【化3】

【0025】
上記式において、Rは水素原子またはメチル基である。
【0026】
(メタ)アクリレート(a6)としては、1分子中にグリシジル基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有するものであれば特に限定されないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート[下記式(7)]、2−エポキシエチル(メタ)アクリレート、4−エポキシブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0027】
【化4】

【0028】
上記式(7)において、Rは水素原子またはメチル基である。
【0029】
化合物(a2)としては、1分子中にフェニル基とビニル基とを有するものであれば特に限定されないが、例えば、スチレン[下記式(8)]、ビニルトルエン(オルト、メタまたはパラのいずれでもよい。)等を挙げることができる。
【0030】
【化5】

【0031】
アルキル(メタ)アクリレート(a3)としては、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルであれば特に限定されず、例えば、下記式(9)で表すことができる。アルキル基は特に限定されないが、炭素数1〜18の直鎖、分枝または環状アルキル基であるものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、2−メチルプロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチルエチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3−メチルブチル(メタ)アクリレート、8−メチルノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0032】
【化6】

【0033】
上記式(9)において、Rは水素原子またはメチル基であり、Rはアルキル基、好ましくは、炭素数1〜18の直鎖、分枝または環状アルキル基である。
【0034】
<2.硬化剤(B)>
本発明の組成物に含有される硬化剤(B)は、前記共重合体(A)が有する反応性官能基と架橋反応をしうる官能基を有するものであれば特に限定されない。
【0035】
共重合体(A)が有する反応性官能基がヒドロキシ基である場合には、硬化剤(B)はヒドロキシ基と架橋反応しうる官能基を有するものであり、そのような官能基としては、例えば、イソシアネート基[下記式(10)]を挙げることができる。
【0036】
【化7】

【0037】
共重合体(A)が反応性官能基としてヒドロキシ基を有する場合、硬化剤(B)は1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物であれば特に限定されないが、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート、これらのジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート、トリメチロールプロパンから誘導されるポリイソシアネートが好ましく、これらを単独で、または組み合わせて用いることができる。
【0038】
1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)[下記式(11)]、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)[下記式(12)]、水添(水素添加)MDI、水添TDI、水添XDI、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、芳香族脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス−p−イソシアネートフェニルチオフォスフェイト等を挙げることができるが、これらを単独で、または組み合わせて用いることができる。組合せとしては、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)および芳香族イソシアネートを組み合わせたもの等を挙げることができる。
【0039】
【化8】

【0040】
また、ジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体でもよく、例えば、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体(TMP−TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体(TMP−HDI)、キシレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体(TMP−XDI)等を使用してもよい。
【0041】
また、イソシアヌレート体でもよく、例えば、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(イソシアヌレート変性TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(イソシアヌレート変性HDI)、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体(イソシアヌレート変性IPDI)等を使用してもよい。
【0042】
また、ビウレット体でもよく、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(ビウレット変性HID)等を使用してもよい。
【0043】
イソシアネート化合物は、市販品を好ましく用いることができ、例えば、HDIから誘導されるポリイソシアネート(HDI系ポリイソシアネート)としては、デュラネート(旭化成ケミカルズ社製;ビウレット体、イソシアヌレート体、アダクト体または2官能プレポリマー型)、タケネート700(三井化学社製)等を、XDIとしてはタケネート500(三井化学社製)等を挙げることができる。
【0044】
共重合体(A)が有する反応性官能基がカルボキシル基である場合には、硬化剤(B)はカルボキシル基と架橋反応をしうる官能基を有するものであり、そのような官能基としては、例えば、アジリジン基[下記式(13)]を挙げることができる。
【0045】
【化9】

【0046】
共重合体(A)が反応性官能基としてカルボキシル基を有する場合、硬化剤(B)としては、1分子中に2または3個以上のアジリジン基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパン−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、ジフェニルメタン−ビス−4,4′−N,N′−ジエチレンウレア、4,4−ビス(エチレンイミンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N´−トルエン−2,4−ビス−(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N´−ヘキサメチレン−1,6−ビス−(1−アジリジンカルボキシアミド)等を挙げることができ、これらの化合物を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
1分子中に2または3個以上のアジリジン基を有する化合物は市販品を好ましく使用することができ、例えば、ケミタイト PZ−33(日本触媒社、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート])[下記式(14)]、ケミタイト DZ−22E(日本触媒社、4,4−ビス(エチレンイミンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン)[下記式(15)]等を挙げることができる。
【0048】
【化10】

【0049】
共重合体(A)が有する反応性官能基がグリシジル基である場合には、硬化剤(B)はグリシジル基と架橋反応をしうる官能基を有するものであり、そのような官能基としては、例えば、イミノ基[下記式(16)]を挙げることができる。
【0050】
【化11】

【0051】
上記式(16)において、Rは水素原子または炭化水素基である。
【0052】
硬化剤(B)としては、1分子中に2個以上のイミノ基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、1分子中にケチミン基を2個以上有するケチミン化合物を用いることができる。ケチミン化合物を用いると、本発明の組成物を1液型とすることができる。
好ましいケチミン化合物は、例えば、1分子中に第一級アミノ基を2個以上有するポリアミン(b1)(以下、単に「ポリアミン(b1)」という。)と、1分子中に炭素−炭素結合を2個以上有する1または2個のα炭素を有するケトン(b2)(以下、単に「ケトン(b2)」という。)とを反応させて得ることができる。
【0053】
ポリアミン(b1)としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,2−ジアミノプロパン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、サンテクノケミカル社製のジェファーミンEDR148に代表されるポリエーテル骨格のジアミン、デュポン・ジャパン社製のMPMD等の脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、三井化学社製のNBDAに代表されるノルボルナン骨格のジアミン;メタキシリレンジアミン:ポリアミドの分子末端にアミノ基を有するポリアミドアミン;等を挙げることができる。
ポリアミン(b1)としては、ジアミンが好ましく、中でも、ヘキサメチレンジアミン[下記式(17)]、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3−BAC)[下記式(18)]、ノルボルナンジアミン(NBDA)[下記式(19)]、メタフェニレンジアミン(MPD)[下記式(20)]、メタキシリレンジアミン(MXD)[下記式(21)]が、貯蔵安定性と硬化性のバランスに優れるという点から好ましい。
【0054】
【化12】

【0055】
ケトン(b2)としては、例えば、下記式(22)で表されるアルキルケトン、シクロアルキルケトンを挙げることができる。
ケトン(b2)としては、具体的には、例えば、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)、ジエチルケトン(DEK)、エチルプロピルケトン(EPK)、エチルブチルケトン(EBK)、ジプロピルケトン(DPK)等を挙げることができる。これらのケトンを単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。ケトンの組み合わせは、特に限定されない。
【0056】
【化13】

【0057】
上記式(22)において、RおよびRは、直鎖アルキル基、分枝アルキル基および環状アルキル基からなる群から、それぞれ独立に選ばれる。
【0058】
ポリアミン(b1)とケトン(b2)とを反応させて得られるケチミン化合物は、具体的には、例えば、1,6−ヘキサメチレンジアミンとメチルイソプロピルケトンとを反応させて得られるケチミン化合物[下記式(23)]を挙げることができる。
【0059】
【化14】

【0060】
<3.硬化促進触媒(C)>
共重合体(A)が有する反応性官能基がヒドロキシ基であり、硬化剤(B)がポリイソシアネート化合物である場合、本発明の組成物は、所望により、硬化促進触媒(C)を含有してもよい。
【0061】
硬化促進触媒(C)としては、例えば、トリエチルアミン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等の三級アミン、このような三級アミンの2−エチルヘキサン酸塩、フェノール塩、オレイン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩等の三級アミン塩、テトラメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム塩、オクチル酸錫、オクチル酸亜鉛、ナトリウムメトキシド、コバルト、ニッケル等の金属アセチルアセトン錯塩等の金属塩等を挙げることができる。
【0062】
<4.配合比>
共重合体(A)の反応性官能基がヒドロキシ基である場合には、共重合体(A)と、硬化剤(B)と、硬化促進触媒(C)との配合比は、特に限定されないが、本発明の組成物の全不揮発分100質量部中、共重合体(A)25〜35質量部、硬化剤(B)3〜15質量部、硬化促進触媒(C)0〜1質量部であることが好ましい。
共重合体(A)の反応性官能基がカルボキシル基である場合には、重合体(A)と、硬化剤(B)との配合比は、特に限定されないが、本発明の組成物の全不揮発分100質量部中、共重合体(A)25〜35質量部、硬化剤(B)1〜15質量部であることが好ましい。
共重合体(A)の反応性官能基がグリシジル基である場合には、重合体(A)と、硬化剤(B)との配合比は、特に限定されないが、本発明の組成物の全不揮発分100質量部中、共重合体(A)25〜35質量部、硬化剤(B)1〜15質量部であることが好ましい。
【0063】
<5.その他配合してよいもの>
本発明の組成物は、作業性および得られる塗膜の意匠性を向上できる点から、更に、溶剤を含有するのが好ましい。
溶剤としては、具体的には、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0064】
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、種々の添加剤、例えば、充填剤、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、艶消し剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン系化合物等)、染料、顔料等を含有することができる。
【0065】
充填剤としては、例えば、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;カーボンブラック等の有機または無機充填剤;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物、脂肪酸エステルウレタン化合物処理物が挙げられる。
【0066】
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
【0067】
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0068】
レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、ビニル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤等が挙げられる。
【0069】
<6.製造方法等>
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、反応容器に上記の各必須成分と任意成分とを入れ、減圧下で混合ミキサー等のかくはん機を用いて十分に混練する方法を用いることができる。
【0070】
上述した本発明の組成物は、プラスチックおよび金属に対する接着性および意匠性に優れる塗膜を得ることができる。特に、本発明の組成物を金属が蒸着されたプラスチック成型体の金属の真空蒸着層の上に塗布した場合、平滑で意匠性に優れる塗膜を得ることができる。
【0071】
本発明の組成物は、上述したような優れた効果を有するため、例えば、プライマー組成物、アンダーコート組成物、トップコート組成物、ミドルコート組成物等として使用できる。特に、本発明の組成物は、ミドルコート組成物として有用である。
【0072】
<7.積層体>
以下、本発明の積層体について詳細に説明する。
本発明の積層体は、プラスチック基材と、アンダーコート層と、金属の真空蒸着層と、該蒸着層の上に本発明の組成物を塗布して硬化させて形成されたミドルコートの上に形成されたトップコート層とを有する積層体である。
【0073】
上記プラスチック基材としては、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチックを問わず種々のプラスチック基材を用いることができる。具体的には、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0074】
本発明の組成物を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、はけ塗り、流し塗り、浸漬塗り、スプレー塗り、スピンコート等の公知の塗布方法を採用できる。
【0075】
本発明の組成物の塗布量としては特に限定されないが、1〜30μmの範囲内であることが好ましく、2〜25μmの範囲内であることがより好ましく、5〜15μmの範囲内であることがさらに好ましい。
硬化塗膜の膜厚が1μm以上の場合、特に金属の真空蒸着層の表面劣化の防止効果に優れ、30μm以下の場合、金属の真空蒸着層との接着性により優れ、クラックの発生を防ぐことができる。
【0076】
本発明の組成物の硬化方法は、加熱により行うことができる。加熱条件としては、例えば、70℃で3分間以上、好ましくは70℃で5〜60分間、より好ましくは70℃で10〜60分間、さらに好ましくは70℃で15〜60分間、いっそう好ましくは70℃で20〜60分間の範囲内である。
【0077】
真空蒸着において使用される金属は、特に限定されず、例えば、スズ、アルミニウム、ニッケル、銅、インジウム等が挙げられる。
真空蒸着の方法は、特に制限されず、公知の方法を採用できる。
【0078】
本発明の積層体は、金属の真空蒸着層の上にミドルコート層を有し、さらにその上に、トップコートを有する。
トップコートを形成する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
トップコート剤は、特に制限されず、公知のトップコート剤を使用できる。
【0079】
本発明の積層体は、上述した本発明の組成物をミドルコート組成物として使用しているため、金属の真空蒸着層とトップコート層とが強固に接着される。また、ミドルコート層表面の凹凸が少なく、その上に形成されるトップコート層も凹凸を少なくできるため意匠性に優れる。さらに、ミドルコート層および/またはトップコート層を着色することもできる。
【0080】
本発明の積層体は、例えば、各種の電気・電子機器、通信機器(例えば、携帯電話)等の外枠、電磁波シールドとして使用することができる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
<1.共重合体(A)の合成>
下記第1表に示す各単量体成分を第1表に示す質量比で混合し、重合開始剤(AIBN(アゾビスイソブチロニトリル))の存在下、メチルエチルケトン中で重合させて、実施例1〜16および比較例1〜8について、第1表に示される各共重合体(30%メチルエチルケトン溶液)を得た。
【0083】
第1表において、HEMAは2−ヒドロキシエチルメタクリレートを、MAAはメタクリレートを、GMAはグリシジルメタクリレートをそれぞれ意味する。また、MMAはメチルメタクリレートを、BMAはn−ブチルメタクリレートをそれぞれ意味する。また、Tg(℃)は、共重合体(A)のガラス転移温度(℃)を意味し、Mwは、共重合体(A)の重量平均分子量を意味する。
【0084】
実施例1〜9および比較例1〜4の共重合体(A)は、反応性官能基が水酸基の例であり、実施例10の共重合体(A)は、反応性官能基がカルボキシル基の例であり、実施例11〜16および比較例5〜8の共重合体(A)は、反応性官能基がグリシジル基の例である。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
<2.組成物の調製>
第2表に示す各成分を、第2表に示す組成(質量部)で、かくはん機を用いて混合し、第2表に示される実施例1〜16および比較例1〜8の各組成物を得た。
【0088】
第2表において、硬化剤(B)および硬化促進触媒(C)は以下のものである。
・硬化剤(B)
(1)ポリイソシアネート
TMP−XDI(タケネート D110N、三井化学ポリウレタン社製)
TMP−HDI(タケネート D160N、三井化学ポリウレタン社製)
(2)1分子中に2または3個以上のアジリジン基を有する化合物
PZ−33(ケミタイト PZ−33、日本触媒社製)
(3)1分子中に2個以上のイミノ基を有する化合物
1,6−ヘキサメチレンジアミンとメチルイソプロピルケトンとを1:2のモル比で反応して合成したケチミン化合物
・硬化促進触媒(C)
トリエチルアミン(試薬1級、関東化学社製)
【0089】
実施例1〜8および比較例1〜4は、共重合体(A)の反応性官能基がヒドロキシ基であり、硬化剤(B)としてポリイソシアネート(TMP−XDIまたはTMP−HDI)を使用する例である。実施例9は、共重合体(A)および硬化剤(B)に加えて、さらに、硬化促進触媒(C)(トリエチルアミン)を含む例である。
実施例10は、共重合体(A)の反応性官能基がカルボキシル基であり、硬化剤(B)として1分子中に2以上のアジリジン基を有する化合物(PZ−33)を使用する例である。
実施例11〜16および比較例5〜8は、共重合体(A)の反応性官能基がグリシジル基であり、硬化剤(B)として1分子中に2個以上のイミノ基を有する化合物(ケチミン)化合物を使用する例である。
【0090】
<3.評価方法>
得られた各組成物の接着性および意匠性を以下の方法により評価した。
(1)塗装作業性
スプレー塗装の行い易さにより評価を行った。適切な塗料粘度であり、作業上問題がないものを良として「◎」と評価し、作業上問題がないものを可として「○」と評価し、粘度が高くスプレー塗装が困難であるものを不可として「×」と評価した。
【0091】
(2)意匠性
意匠性の評価は、塗布面を垂直にした状態のABS樹脂に対して、得られた各組成物をスプレーで塗布して、サンプルを得た。
スプレー塗布後、得られたサンプルの塗布面を水平にして、サンプルの塗布面に対して斜め45°の角度からサンプルを肉眼で観察した。
意匠性の評価基準は、塗膜の光沢に優れ、凹凸が少ないものを「◎」、凹凸が少なく実用上問題がないものを「○」、凹凸が目立つ等外観上異常があるものを「×」とした。
【0092】
(3)密着性
密着性の評価は、碁盤目テープはく離試験によって行った。
具体的には次の手順に従った。
ポリカーボネート(PC)樹脂を基材として用い、その上にUVアンダーコートを塗装し、UV硬化させ、さらにその上にスズ(Sn)を真空蒸着して蒸着金属層を形成した。
その蒸着金属層の上に、実施例1〜6、比較例1〜4に係る組成物を、それぞれ塗装し、塗布後60℃の条件下で3分間熱風乾燥させた後、日本電池社製のGS UV SYSTEMで積算光量が500mJ/cm、1000mJ/cm、1500mJ/cmとなるようにUV照射を行い、UV硬化させ、さらに70℃で10分間乾燥して、ミドルコート層を形成した。
さらに、そのミドルコート層の上に、UVトップコートを塗装し、UV硬化させ、碁盤目テープはく離試験用の試験体を作成した。
次に、得られた試験体に、1mmの基盤目100個(10×10)を作り、基盤目上にセロハン粘着テープ(幅18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端をPC樹脂に対して直角に保ちながら瞬間的に引き離し、完全に剥がれないで残った基盤目の数を調べた。
100個中、95個以上が残ったものを合格とした。
【0093】
<4.試験結果>
(1)実施例1〜16
塗装作業性および意匠性について、実施例1および11はともに「○」と評価され、実施例2〜9および12〜16はいずれも「◎」と評価された。
密着性について、実施例1および11は、70℃3分間の硬化条件では100個中90個が残存し、密着性が十分ではなかったが、70℃5分間の硬化条件では100個中100個が残存し、密着性が十分に発現していた。また、実施例2〜10および12〜16は、いずれも、70℃3分間の硬化条件で100個中95個以上が残存し、必要な密着性が発現して合格に達し、70℃で5分間以上の硬化条件では100個中100個が残存し、十分な密着性が発現していた。特に、実施例9の結果は、硬化促進触媒(C)を配合すると、3分間の硬化時間で十分な密着性が発現することを示唆する。
【0094】
(2)比較例1、2、5および6
塗装作業性および意匠性について、比較例1、2、5および6はいずれも優れ、「◎」と評価された。
密着性について、比較例1、5においては、70℃3分間または5分間の硬化条件では密着性が発揮されず、70℃15分間または30分間の効果条件では密着性が不良であった。一方、比較例2、6においては、70℃3分間または5分間の硬化条件では密着性が不良であり、70℃15分間または30分間の効果条件では密着性が発揮されなかった。
【0095】
(3)比較例3、4、7および8
塗装作業性について、比較例3および7はともに粘度が低すぎ、比較例4および8はともに粘度が高すぎ、すべて「×」と評価された。
意匠性について、比較例3および7は膜厚にムラが生じ、比較例4および8はユズ肌となり、すべて「×」と評価された。
密着性について、比較例3、7は全硬化条件において接着性不良であり、比較例4、8は全硬化条件において接着性が発揮されず、すべて不合格となった。
【0096】
(4)まとめ
以上の結果が示すように、共重合体(A)のガラス転移点が50〜70℃の範囲内にあり、かつ、重量平均分子量が10000〜50000の範囲内にある本発明の組成物は、塗装作業性、意匠性および密着性に優れ、特にミドルコート組成物として好ましく使用することができる。
【0097】
【表3】

【0098】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート系共重合体(A)と、硬化剤(B)とを含有する真空蒸着用ミドルコート組成物であって、該(メタ)アクリレート系共重合体(A)はガラス転移点50〜70℃、重量平均分子量10000〜50000であり、かつ、側鎖に反応性官能基を有し、該硬化剤(B)は該反応性官能基と架橋反応しうる官能基を有する、真空蒸着用ミドルコート組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレート系共重合体(A)が、1分子中に反応性官能基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート(a1)、1分子中にフェニル基とビニル基とを有する化合物(a2)、およびアルキル(メタ)アクリレート(a3)を単量体成分として含む、請求項1に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
【請求項3】
前記1分子中に反応性官能基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート(a1)が1分子中に水酸基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート(a4)である、請求項2に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
【請求項4】
前記1分子中に反応性官能基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート(a1)が1分子中にカルボキシル基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート(a5)である、請求項2に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
【請求項5】
前記1分子中に反応性官能基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート(a1)が1分子中にグリシジル基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート(a6)である、請求項2に記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。
【請求項6】
前記アルキル(メタ)アクリレート(a3)のアルキル基が、炭素数1〜18の直鎖、分枝または環状アルキル基である、請求項2〜5のいずれかに記載の真空蒸着用ミドルコート組成物。

【公開番号】特開2010−275357(P2010−275357A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126573(P2009−126573)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】