説明

真空蒸着装置および基板蒸着方法

【課題】基板への蒸着粒子堆積量のずれを補正可能な補正機構の、蒸発源とのマッチング性や取り扱い利便性を改善させた真空蒸着装置および基板蒸着方法を提供する。
【解決手段】真空蒸着装置100は、内部10eを減圧可能な真空槽10と、真空槽10内に配置され、蒸着粒子を基板に向けて飛散させる蒸発源11a、11bと、真空槽10内の基板12を回転可能な基板回転機構22と、蒸発源11a、11bの蒸発ポイントPと基板12との間の偏倚量に相関する、基板12への蒸着粒子堆積量のずれを補正する補正部材31を有する補正機構30と、を備え、蒸着粒子が蒸発ポイントPから基板12に向けて飛散する間、補正部材31は、蒸着粒子が通過する気流領域A、B内を揺動する装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着装置および基板蒸着方法に係り、更に詳しくは、蒸発源の蒸発ポイントと基板との間の偏倚量に相関する、基板への蒸着粒子堆積量のずれを補正可能な補正機構の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
回転する基板(ガラス基板や樹脂フィルム)の表面に光学フィルタ等の光学多層膜を均一に形成する真空装置がある。例えば、このような真空装置例としての真空蒸着装置は、真空槽内の複数の基板を搭載した状態の傘型の基板ドームを回転可能に構成させ、これにより、複数の基板に蒸発源から蒸発された蒸着粒子が、その回転方向に亘り均一に堆積される。
【0003】
また、従来から、蒸発源の蒸発ポイントと基板との間の位置関係(正確には基板回転方向に直交する基板ドームの径方向についての両者の位置関係)から生じる蒸着粒子堆積量のずれを補正可能な、中央部を幅広にして先端を尖らせた形態(喩えて言えば、木の葉状)の膜厚補正板がある。
【0004】
そして、このような膜厚補正板は、蒸発源の蒸発ポイント直上にその中央部を位置付け、かつ基板ドーム直下の蒸着粒子が通過する気流領域を、基板ドームの略半径分に亘り覆うように、配置されている。これにより、回転する基板に堆積された蒸着薄膜の、基板ドームの径方向における厚みが適切に補正される。
【0005】
このような膜厚補正板の一端(先端)は、通常、基板ドームの回転中心に向けて延び、膜厚補正板の他端は、基板ドーム周辺部から外側の真空槽内の適所に適宜のリンク機構により片持式に保持されている(以下、このような膜厚補正板を便宜上、「固定補正板」という)。
【0006】
これにより、固定補正板の未使用時には、この固定補正板を、その他端のリンク機構により下方に略90°曲げ、これが適切に格納される。
【0007】
ところで、基板ドーム周辺部の全域で支える1個の大型の基板(例えば、大型矩形平板)に均一に蒸着粒子を堆積させたい場合、または、基板ドームの回転中心に相当する領域(以下、「回転中心部」と略す)にも基板を搭載させ、基板ドームに無駄なく基板を搭載可能にし、その結果、トータル基板個数を増やし生産性向上を図りたい場合に、このような固定補正板には、基板の蒸着薄膜の厚み均一化の観点から支障があると、見做されている。
【0008】
具体的には、固定補正板の先端部により回転中心部に当たる基板領域を遮蔽しなければ、蒸着粒子が常時に当該基板領域に堆積され続けて、その結果、当該基板領域の蒸着粒子堆積厚みが飛躍的に増加する。一方、固定補正板の先端部により回転中心部に当たる基板領域を遮蔽すれば、蒸着粒子の遮蔽が当該基板領域に対し常時なされ、その結果、当該基板領域に蒸着粒子が全く堆積されない。
【0009】
すなわち、何れの場合であっても、固定補正板の先端近傍の回転中心部の基板領域は、他の領域に比べて蒸着厚みの大幅なギャップをきたす。
【0010】
そこで、このような固定補正板の不都合を解消する目的で、補正板自体を駆動させる回転式の膜厚補正板(以下、「回転補正板」と略す)を採用した真空蒸着装置が提案されている(例えば、従来例としての特許文献1や特許文献2参照)。
【0011】
このような回転補正板の一例は、基板回転機構と、この基板回転機構を囲む外リングと、基板回転機構と外リングにより両端を固定された木の葉状のマスク板とを備えてなり、マスク板の中央幅広部分が、基板回転機構を中心とした回転により間欠的に、1個乃至複数個の蒸発源の上方を通過するよう構成されている。
【特許文献1】特開平2−209471号公報(図2)
【特許文献2】特開平3−264668号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来例に記載の回転補正板には、蒸発源とのマッチングを適切に図るよう、回転補正板を構成し難い場合があると、本件発明者等は考えており、以下にその具体例を述べる。
【0013】
蒸発源真上から角度D分逸れた方向に蒸発源から放出される蒸着粒子の密度分布Φ(D)は、一般的に、蒸発源真上の密度をΦ0とすると、次式(1)のコサイン分布で近似され得ると、考えられている。
【0014】
Φ(D)=Φ0COSnD・・・(1)
ここで、式(1)の指数nは、蒸着粒子の材質の相違により別の数値をとることが知られており、このことが、真空槽内において異種粒子を基板に蒸着させる際の、回転補正板による適切な膜厚補正を困難せしめると、推定される。
【0015】
例えば、酸化シリコン(SiO2)の蒸着粒子と酸化チタン(TiO2)の蒸着粒子を、真空槽内の別個の蒸発源から交互に飛ばして、これらの蒸着薄膜を、基板に交互に連続多層形成する際に、蒸着粒子の材質に応じたコサイン分布の指数nの相違に由来して回転補正板による膜厚均一化技術は使いづらい。すなわち、酸化シリコン膜の均一化にマッチングするよう、回転補正板の構成を設計すれば、酸化チタン膜の均一化のマッチングが上手く図れず、この逆も同様である。
【0016】
また、このような複数種の蒸着粒子を基板に堆積させるといった状況を、仮に捨象したとしても、固定補正板は、取り扱いに不都合をきたす場合がある。
【0017】
例えば、回転補正板により蒸着薄膜の厚みを調整しない状況であれば、この回転補正板は、無用かつ邪魔な部材であり、これを適切に格納し難い。仮に当該回転補正板を格納するデッドスペースを真空槽内に確保すれば、装置の大型化を招く。
【0018】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、蒸発源の蒸発ポイントと基板との間の偏倚量に相関する、基板への蒸着粒子堆積量のずれを補正可能な補正機構の、蒸発源とのマッチング性や取り扱い利便性を改善させた真空蒸着装置および基板蒸着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明の真空蒸着装置は、内部を減圧可能な真空槽と、前記真空槽内に配置され、蒸着粒子を基板に向けて飛散させる蒸発源と、前記真空槽内の前記基板を回転可能な基板回転機構と、前記蒸発源の蒸発ポイントと前記基板との間の偏倚量に相関する、前記基板への蒸着粒子堆積量のずれを補正する補正部材を有する補正機構と、を備えて構成され、前記蒸着粒子が前記蒸発ポイントから前記基板に向けて飛散する間、前記補正部材は、前記蒸着粒子が通過する気流領域内を揺動する装置である。
【0020】
なおここで、前記補正部材の揺動の一例としては、前記補正部材が、前記蒸発ポイントを上方から覆い、弧に沿って揺動するというものである。
【0021】
より具体的には、前記補正機構は、揺動軸を備えて構成され、前記弧は、前記揺動軸の一端を中心とし、前記揺動軸の長さを半径として、前記揺動軸の他端により描かれる円周の軌跡の一部であっても良い。
【0022】
そして、前記補正機構は、前記補正部材に揺動力を伝える駆動装置を備えて構成され、前記駆動装置による前記補正部材の揺動条件が、前記蒸着粒子の材質に応じて設定されても良い。
【0023】
これにより、蒸発源の蒸発ポイントと基板との間の偏倚量に相関する、基板への蒸着粒子堆積量のずれを補正可能な補正機構の、蒸発源とのマッチング性や取り扱い利便性を改善される。
【0024】
すなわち、上記構成によれば、従来の回転補正板において問題視される、蒸着粒子の材質を違えた複数の蒸発源とのマッチング不良は、蒸発源の各々の蒸着粒子にマッチングする別種の補正板を容易に配置でき、更に、これらの補正板の揺動条件を各蒸着粒子にマッチングするよう、個別に設定することができる。
【0025】
また、上記構成によれば、真空槽内のデットスペースを減らして、真空蒸着装置のコンパクト化に寄与する。
【0026】
ここで、前記補正部材は、前記気流領域に進入する使用位置と前記気流領域から退いた未使用位置との間を、移動可能に構成されても良い。
【0027】
これにより、補正部材による基板の光学薄膜の厚みを調整しない状況、または、真空蒸着装置による蒸着動作を終了した状況において、当該補正部材を、真空槽の内部のデットスペースを大幅に増やすことなく、上記未使用位置に適切かつ容易に格納できる。
【0028】
なお未使用位置の一例としては、前記未使用位置が、上記円周の軌跡のうちの弧以外の部分に存在するものであっても良い。
【0029】
また、前記蒸発源の対と、前記各蒸発源に対応する前記補正部材の対と、前記補正部材同士を連結させるリンク部材と、を備え、前記リンク部材に前記揺動軸の他端を接続させても良い。
【0030】
補正部材の対が、上述のとおり、リンク部材に連結されていることから、複数種(ここでは2種類)の補正部材を、平面視において両者間の略中央部に配置された一つの駆動装置により同時に駆動することができる。これにより、駆動装置の構造簡素化および部品点数削減が図られ、駆動装置のコストダウンがなされ得る。
【0031】
また、前記補正部材の対の一方は、前記蒸発源の対の一方に対応する前記気流領域内のみを揺動し、前記補正部材の対の他方は、前記蒸発源の対の他方に対応する前記気流領域内のみを揺動するものであっても良い。
【0032】
これにより、例えば、一方の蒸発源から基板に向けて蒸着粒子を飛散させる際に、補正部材の対を同時駆動しても、他方の補正部材により当該蒸着粒子の飛散は阻害されず、逆に、他方の蒸発源から基板に向けて蒸着粒子を飛散させる際に、補正部材の対を同時駆動しても、一方の補正板により当該蒸着粒子の飛散は阻害されず好適である。
【0033】
また、複数の前記蒸発源と、前記蒸発源の各々に対応する前記蒸発源と同数の前記補正機構と、を備えても良い。
【0034】
このように、本発明の真空蒸着装置によれば、蒸発源の個数を多数(3個以上)に設けたい場合、または、各蒸発源と一対一に対応する補正機構(駆動系統)により補正板を駆動させたい場合に、柔軟に対応できる。
【0035】
本発明の基板蒸着方法は、真空槽内を減圧させ、前記真空槽内の基板を回転させ、前記真空槽内の蒸発源の蒸発ポイントから前記基板に向けて蒸着粒子の飛散を開始させる際に、前記蒸発ポイントと前記基板の間の偏倚量に相関する、前記基板への蒸着粒子堆積量のずれを補正する補正部材を、前記蒸着粒子が通過する気流領域内で揺動させる方法である。
これにより、蒸発源の蒸発ポイントと基板との間の偏倚量に相関する、基板への蒸着粒子堆積量のずれを補正可能な補正機構の、蒸発源とのマッチング性や取り扱い利便性を改善される。
【0036】
そして、前記蒸着粒子の飛散を停止させる際に、前記補正部材の揺動を停止させるとともに、前記補正部材を前記気流領域から退かせても良い。
【0037】
これにより、真空蒸着装置による蒸着動作を終了した状況において、当該補正部材を、真空槽の内部のデットスペースを大幅に増やすことなく、上記未使用位置に適切かつ容易に格納できる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、蒸発源の蒸発ポイントと基板との間の偏倚量に相関する、基板への蒸着粒子堆積量のずれを補正可能な補正機構の、蒸発源とのマッチング性や取り扱い利便性を改善させた真空蒸着装置および基板蒸着方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0040】
図1は、本発明の実施の形態の真空蒸着装置の内部の一構成例を示した図である。
【0041】
図1では、基板12の搬入出用の扉(以下、「真空槽扉」と略す;不図示)を開き、後記の補正部31を真上に位置付けた状態の真空蒸着装置100の内部の様子が図示されている。
【0042】
なお同図において、「左方」および「右方」は、それぞれ、「蒸発源11aの側」、「蒸発源11bの側」を示す。また、図1の紙面に垂直な方向を前後方向(後記の図2参照)とする。
【0043】
真空蒸着装置100は、図1に示す如く、真空槽扉に反対側の側壁に配設された真空排気装置(真空ポンプ等;不図示)の排気により内部10eを減圧可能な箱型の真空槽10を有する。
【0044】
この真空槽10の内部10eの下方には、蒸着材料の蒸発用の一対の蒸発源11a、11bが配設されている。また、その内部空間10eの上方には、これらの蒸発源11a、11bに対向する大型(例えば、一辺が略1100mmの角型)の基板12を保持する基板吊り具20(基板保持手段)が配設されている。
【0045】
蒸発源11aは、酸化チタン粒子をこの蒸発源11aより上方の気流領域Aに向けて飛散させ、酸化チタンからなる光学薄膜(以下、「TiO2光学薄膜」と略す)を基板12に蒸着させる機器であり、蒸発源11bは、酸化シリコン粒子をこの蒸発源11bより上方の気流領域Bに向けて飛散させ、酸化シリコンからなる光学薄膜(以下、「SiO2光学薄膜」と略す)を基板12に蒸着させる機器であり、何れも基板12への蒸着粒子堆積に必要な各種部品を備えている。
【0046】
すなわち、蒸発源11a、11bは、周方向に所定間隔毎に配置された蒸着材料を溜める複数の材料溜め部14を有する円盤状のターンテーブル13と、このターンテーブル13の回転により蒸発ポイントPに当たる材料溜め部14の蒸着材料に、熱源としての熱電子を加速衝突させる電子銃15と、蒸着材料から放出した蒸着粒子の基板12への到達の有無を制御するよう、適宜のアクチュエータ(図示せず)により蒸発ポイントPの開口を開閉するシャッタ(不図示)と、を備える。なおここでの蒸発源11a、11bの構成は公知であり、その詳細な構成説明は省く。
【0047】
また、基板12を搭載した基板吊り具20は、基板回転機構22に保持され、この基板回転機構22とともに駆動され自転するが、基板回転機構22および基板吊り具20並びにこれらの周辺構造も従来技術に倣っており、ここでは、これらの詳細な構成説明も省略する。
【0048】
次に、本実施の形態の真空蒸着装置100の特徴部である補正機構30の構成について、図面を参照して詳しく説明する。
【0049】
図2は、図1に示した真空蒸着装置の内部を横(右から左に向かう方向)から見た図である。また、図3は、真空蒸着装置の内部の補正部(後記)および水平軸(後記)を上から見た図(以下、「平面視した図」という)である。
【0050】
但し、これらの図2、3では、補正機構20および蒸発源11a、11bの図示は簡略化している。
【0051】
なお図2において、「前方」および「後方」は、それぞれ、「真空槽扉の側」、「真空排気装置の側」を示す。
【0052】
補正機構30の主要構成部材は、図1に示す如く、一対の蒸発源11a、11bに挟まれて配置されている。
【0053】
そして、補正機構30は、所定の蒸着粒子の飛散方向(より具体的には、基板12の回転方向に直交する径方向についての蒸発源の蒸発ポイントと基板との間の偏倚量)に相関する基板12への蒸着粒子堆積量のずれを補正するよう揺動する補正部31と、この補正部31に揺動力を伝える駆動部32と、制御部40と、を備える。
【0054】
補正機構30の駆動部32は、主として、図1に示す如く、真空槽10の外部(真空槽1の下壁の下方領域)に配置され、モータ回転棒34aを正転乃至反転可能なサーボモータ34と、真空槽10の下壁を貫通する直線棒状の駆動軸35と、L字棒状の回転/揺動軸36と、この回転/揺動軸36の上端に接続され、左右方向(水平方向)に延びる水平軸39と、を備える。
【0055】
なお、このような駆動部32のうちの駆動軸35の一部および回転/揺動軸36並びに水平軸39は、真空槽10内の中央領域(基板12の中心位置)付近の、真空槽10の内部10eの下方寄りに配置されている。
【0056】
そして、リンク部材としての水平軸39の両端には、後程詳しく述べる一対の第1および第2補正板31a、31b(補正部材)が連結されている。
【0057】
また、駆動軸35は、適宜の真空シール(不図示)により回転可能な状態で気密に真空槽10の下壁に配設されている。
【0058】
ここで、モータ回転棒34aの先端に固定される平歯車37aと、駆動軸35の一端に固定される平歯車37bと、が噛み合って連結され、その結果、サーボモータ34による回転動力が、駆動軸35に伝わり、駆動軸35をその軸周りに回転させる。
【0059】
また、駆動軸35の他端に固定される傘歯車38aと、回転/揺動軸36の左右方向に延びる水平部分36a(L字棒の短軸部分;回転軸)の端に固定される傘歯車38bと、が噛み合って連結され、その結果、駆動軸35の回転動力が、回転/揺動軸36に伝わり、回転/揺動軸36の水平部分36aをその軸周りに回転させる。同時に、水平部分36aの端から上下方向(垂直方法)に延びる、回転/揺動軸36の垂直部分36b(L字棒の長軸部分;揺動軸)が、垂直部分36bの下端(水平部分36aの軸)を中心に、垂直部分36bの長さを半径とした、垂直部分36の上端により描かれる円周の軌跡の一部(弧)に沿って、移動する。なおこの垂直部分36の上端は、水平軸39に接続されている。
【0060】
このため、サーボモータ34によるモータ回転棒34aの回転動作を、所定の周期で正転および逆転を反復させれば、図2および図3の実線の矢印に示す如く、回転/揺動軸36のうちの垂直部分36bの上端は、水平軸39(図1参照)を介して接続される後記の補正板の対と一緒に、上記弧に沿ってスイング移動(揺動)する。
【0061】
つまり、垂直部分36bの上端は、前後方向および上下方向の2方向により特定される平面(以下、「揺動面」という)内において、上記円周の軌跡の一部に相当する弧に沿って、所定の揺動角θ(言い換えれば上記円周のうちの弧に相当する部分の円の中心角θ)の範囲内に亘り振り子状に運動する。
【0062】
よって、補正部31(補正板の対)は、図2に示す如く、蒸発ポイントPと基板吊り具20との間に位置して、蒸発源11a、11bの蒸発ポイントPを上方から覆い、蒸発源11a、11bから基板12に向けて飛散する蒸着粒子が通過する気流領域A、Bに進入するよう、上記弧に沿って揺動できる。
【0063】
補正機構30の補正部31は、上述のとおり、水平軸39に連結され左右に振り分けられた補正板の対をなしている。
【0064】
つまり、補正部31は、TiO2光学薄膜用の補正板31a(以下、「第1補正板31a」と略す)と、SiO2光学薄膜用の補正板31b(以下、「第2補正板31b」と略す)と、を備える。
【0065】
そして、第1補正板31aがTiO2光学薄膜の均一化にマッチングするよう、構成され、第2補正板31bがiO2光学薄膜の均一化にマッチングするよう、構成されている。
【0066】
第1および第2補正板31a、31bが、上述のとおり、水平軸39に連結されていることから、複数種(ここでは2種類)の第1および第2補正板31a、31bを、平面視において両者間の略中央部に配置された一つの駆動部32により同時に駆動することができる。これにより、駆動部32の構造簡素化および部品点数削減が図られ、駆動部32のコストダウンがなされている。
【0067】
また、第1補正板31aは、図1に示す如く、その揺動の際に第2補正板31bの気流領域Bに進入しないよう、例えば、第1補正板31aの上下方向の位置を適切に決めて配置され、第2補正板31bは、同図に示す如く、その揺動の際に第1補正板31aの気流領域Aに進入しないよう、例えば、第2補正板31bの上下方向の位置を適切に決めて配置されている。
【0068】
このような配置構成により、蒸発源11aから基板12に向けて蒸着粒子を飛散させる際には、第1および第2補正板31a、31bを同時駆動しても、第2補正板31bにより当該蒸着粒子の飛散は阻害されず、逆に、蒸発源11bから基板12に向けて蒸着粒子を飛散させる際には、第1および第2補正板31a、31bを同時駆動しても、第1補正板31aにより当該蒸着粒子の飛散は阻害されず好適である。
【0069】
次に、第1および第2補正板31a、31bの形状例を説明する。
【0070】
第1および第2補正板31a、31bの形状は、蒸発源11a、11bの蒸発ポイントPを点光源に想定した際の光照射軌跡に基づく検討実験により設計されている。
【0071】
すなわち、本件発明者等は、真空蒸着により得られたTiO2光学薄膜の厚み測定およびSiO2光学薄膜の厚み測定の結果を基にして、これらの光学薄膜の厚みの不均一性を招いている、補正板のポイントを上記光照射軌跡により特定し、当該ポイントの補正板の幅広化(厚過ぎる場合)乃至狭幅化(薄過ぎる場合)したうえで、再蒸着を行うことにより、TiO2光学薄膜の厚みの均一性およびSiO2光学薄膜の厚みの均一性を再確認するという試行検討を実行した。
【0072】
そして、このような検討の結果、TiO2光学薄膜乃至SiO2光学薄膜の均一性にマッチング可能な第1および第2補正板31a、31bの一例して、図3に示す如く、略八の字型(瓢箪型)の第1および第2補正板31a、31bが得られた。
【0073】
第1補正板31aは、その平面視において、中央を幅広にした木の葉状の大きい方の部分33a(以下、「大径部33a」と略す)および中央を幅広にした木の葉状の小さい方の部分33b(以下、「小径部33b」と略す)を有してなり、大小径部33a、33bの一端同士を合体させた形態に形作られている。
【0074】
また、第1補正板31bは、その平面視において、中央を幅広にした木の葉状の大きい方の部分33d(以下、「大径部33d」と略す)および中央を幅広にした木の葉状の小さい方の部分33c(以下、「小径部33c」と略す)を有してなり、大小径部33d、33cの一端同士を合体させた形態に形作られている。
【0075】
また、図3に示す如く、第1および第2補正板31a、31bの小径部33b、33cの他端同士が、互いに水平軸39を介して連結されている。
【0076】
そして、このような第1および第2補正板31a、31bが、上記揺動面に沿って揺動角θに亘り揺動する際には、第1および第2補正板31a、31bの大径部33a、33dの最大幅広部(略中央部)が各蒸発源11a、11bの蒸発ポイントPに対向するよう、第1および第2補正板31a、31bは、その左右方向を位置付けている。
【0077】
このように第1および第2補正板31a、31bの大径部33a、33dの中央部を蒸発ポイントPの真上に位置付ければ、蒸発ポイントPから真上に飛散する蒸着粒子の密度成分が最大であることから、第1および第2補正板31a、32bの補正効果が有効に発揮され好適である。
【0078】
また、駆動部32(サーボモータ34)による第1および第2補正板31a、31bの揺動条件、例えば、揺動の周期および揺動角θ(揺動範囲)を、蒸発源11a、11bの材質(ここでは酸化チタンと酸化シリコン)にマッチングするよう個別に設定すれば、第1補正板31aが、酸化チタン粒子の飛散量をより適切に補正できるようになる。同様に、第2補正板31bが、酸化シリコン粒子の飛散量をより適切に補正できるようになる。
【0079】
ここでは便宜上、図3において、第1補正板31aの八の字型の寸法と、第2補正板31bの八の字型の寸法とが、同じに図示されているが、現実には、第1および第2補正板31a、31bは、蒸着粒子の材質にマッチングするよう寸法を違えて設計される。より詳しくは、第1補正板31aのうちの大径部33aと小径部33bとの間の寸法差が、第2補正板31bのうちの大径部33dと小径部33cとの間の寸法差と異なるよう、第1および第2補正板31a、31bが設計されている。
【0080】
なお、TiO2光学薄膜乃至SiO2光学薄膜の均一性にマッチング可能な補正板の外形例は、略八の字形に一意に限定されず、真空蒸着装置100の設計スペックにより適切に適合するよう、この第1および第2補正板31a、31bの外形を他の形状に改変しても良い。
【0081】
次に、補正部31(第1および第2補正板31a、31b)の未使用位置について説明する。
【0082】
補正部31は、図2に示す如く、気流領域A、Bに進入して上記揺動面に沿って揺動角θに亘り揺動するという使用位置(補正位置)の他、このような気流領域A、Bから退いた未使用位置(退避位置)に移動可能に構成されている。
【0083】
ここで、当該未使用位置は、上記円周の軌跡のうちの、揺動角θに対応する弧以外の部分に存在する。
【0084】
例えば、補正部31を、図2の二点鎖線の矢印に示す如く、上記揺動角θから更に前方外側(図2において反時計回り)の未使用位置Cに逸らせば、補正部31は最早、気流領域A、Bに存在せず、この補正部31により、蒸着粒子の飛散が何等妨げられない。
【0085】
よって、補正部31による基板12の光学薄膜の厚みを調整しない状況、または、真空蒸着装置100の蒸着動作を終了した状況において、当該補正部31を、真空槽10の内部10eのデットスペースを大幅に増やすことなく、上記未使用位置Cに適切かつ容易に格納できる。
【0086】
補正機構30の制御部40は、ROMやRAM等の内部メモリ(不図示)を有し、マイクロプロセッサにより構成されている。この内部メモリには、補正部31の動作を遂行する補正実行プログラムが保存されているとともに、補正部31の各種の揺動条件、例えば、補正部31の揺動周期および揺動範囲(揺動角θの値)並びに未使用位置Cが予め保存されている。
【0087】
そして、制御部40は、真空蒸着装置100による基板12への真空蒸着に際して、上記補正実行プログラムおよび補正部31の揺動条件を読み出し、サーボモータ34の動作を適切に制御している。
【0088】
更に、作業者は、このような揺動条件を適宜の設定器(例えば作業者用の操作タッチパネルやリモコン;不図示)により、蒸発源11a、11bの蒸着粒子の材質にマッチングするよう、再設定することも可能である。
【0089】
なお制御部40は、補正部31の揺動させるサーボモータ34の制御の他に、真空蒸着装置100の全体動作を制御しても良い。また、このような真空蒸着装置100の全体動作を別個の演算器により制御させても良い。
【0090】
すなわち、本明細書の制御部とは、単一の制御部に限定されず、複数の制御部の協働による制御部の集合体をも意味する。
【0091】
次に、本実施の形態の真空蒸着装置100による基板12への蒸着動作を説明する。また、この蒸着動作に基づき基板12に形成されたTiO2光学薄膜とSiO2光学薄膜の分光特性分布の検証結果を述べる。
【0092】
なお、以下に述べる補正部31の動作は、制御部40により自動化されている。
【0093】
まず、基板12の面内の温度分布を均一化するため、真空槽10内に配置させた適宜のヒータ(不図示)により基板12の温度が略250℃に加熱される。また、真空槽10の内部10eが、所定の真空度(例えば8.0×10-4Pa)以下に減圧される。
【0094】
次に、光学薄膜の膜質改善用のプラズマソースを併用する目的でプラズマガンからアルゴンガス(アルゴンイオン)が真空槽10内に導かれ、適宜のガスポートから酸素ガスが真空槽10内に導かれる。
【0095】
そして、電子銃15により加速された電子が、蒸着材料に当たり、この蒸着材料を溶解蒸発させ、基板12に向けて蒸着粒子が飛散する。
【0096】
同時に、回転周方向の光学薄膜の厚み均一化を図る目的で、基板12を搭載した基板吊り具20を、基板回転機構22により6〜20rpmで回転させる。一方、基板回転方向と直交する方向における蒸発源の蒸発ポイントPと基板12との間の偏倚量に相関する、基板12への蒸着粒子堆積量のずれを補正する目的で、補正部31を、未使用位置Cから使用位置に移動させ、上述のとおり、補正機構30の駆動部32により、補正部31を揺動角θに亘り揺動させる。
【0097】
なお、補正部31による基板12の光学薄膜の厚みを調整しない場合、または、真空蒸着装置100の蒸着動作を終了する場合には、補正部31は、補正機構30の駆動部32により使用位置から速やかに未使用位置Cに格納される。
【0098】
図4は、本実施の形態の真空蒸着装置の蒸着動作に基づくSiO2光学薄膜の光学的膜厚分布の測定結果の一例を示した図である。
【0099】
図5は、本実施の形態の真空蒸着装置の蒸着動作に基づくTiO2光学薄膜の光学的膜厚分布の測定結果の一例を示した図である。
【0100】
図4および図5の横軸の数字は、矩形状の大型のテスト基板(基板12と略同一形状)に光学的膜厚(後記)の測定用のテストピースを埋め込んだ位置を表し、より具体的には、テスト基板の中心(横軸の数字:「1」)からテスト基板の角近傍(横軸の数字:「7」)に向かう対角線のほぼ全域をカバーするよう、当該対角線上の所定の測定ポイントを表している。すなわち、当該測定ポイントの測定データにより、テスト基板の略全域の光学的膜厚の分布を見積もれる。
【0101】
但し、従来の固定補正板で問題となった、基板吊り具20の回転中心部に対応する基板12の領域の光学薄膜の厚みギャップの存否が適切に検証できるよう、テスト基板の中央部近傍に測定ポイントを集中させている。
【0102】
図4および図5の縦軸は、光学薄膜の屈折率(n)に物理的膜厚(d)を乗じた値としての、光学的膜厚の測定値を表している。
【0103】
図4の測定結果によれば、テスト基板の略全域において、SiO2光学薄膜の光学的膜厚(n×d)の分布(バラツキ)が、良好な分光特性値(±2.2%)になり、図4の測定結果から算出される屈折率(n)の分布(バラツキ)も、良好な分光特性値(Δ0.01)になった。
【0104】
また、図5の測定結果によれば、テスト基板の略全域において、TiO2光学薄膜の光学的膜厚の分布が、良好な分光特性値(±3.1%)でなり、図5の測定結果から算出される屈折率の分布も、良好な分光特性値(Δ0.02)になった。
【0105】
本実施の形態の真空蒸着装置100によれば、減圧可能な内部10eを有する真空槽10と、この真空槽10内に配置され蒸着粒子を基板に向けて飛散させる蒸発源11a、11bと、この真空槽10内の基板12を回転可能な基板回転機構22と、蒸発源の蒸発ポイントと基板との間の偏倚量に相関する、基板12への蒸着粒子堆積量のずれを補正する補正部31を有する補正機構30と、を備えてなり、補正部31は、蒸発源11a、11bから蒸着粒子が基板12に向けて飛散する間、蒸着粒子が通過する気流領域A、B内を適切に揺動できる。
【0106】
このような補正機構30の構成により、所定の蒸着粒子の飛散方向に相関する、基板12への蒸着粒子堆積量のずれを、蒸発源11a、11bとのマッチングを上手く図りつつ、適切に補正できる。
【0107】
つまり、従来の固定補正板に問題となった、基板吊り具20の回転中心部に対応する基板12領域の光学薄膜の厚みギャップが解消される。このため、例えば、基板吊り具20の周辺部の全周で支える1個の大型の基板12に均一な蒸着粒子を堆積させたい場合に、補正機構30の蒸着薄膜厚み補正は有効に機能する。
【0108】
また、従来の回転補正板において問題視される、蒸着粒子の材質を違えた蒸発源11a、11bとの間のマッチング不良は、蒸発源11a、11bの各々の蒸着粒子にマッチングする別種の補正板(第1および第2補正板31a)を配置し、更に、これらの補正板の揺動条件を各蒸着粒子にマッチングするよう、個別に設定することで適切に改善される。
【0109】
このため、この真空蒸着装置100を用いて、例えば、蒸発源11aによる基板12へのTiO2光学薄膜と、蒸発源11bによる基板12へのSiO2光学薄膜とを交互に均一に積層されれば、分光特性分布に優れた光学フィルタを製造できる。
【0110】
なお、真空蒸着装置内に一つの蒸発源を配置する状況であっても、本実施の形態で述べた蒸着粒子の飛散量の補正技術(以下、「本補正技術」という)によれば、真空槽内のデットスペースを減らして、真空蒸着装置のコンパクト化に寄与する。
【0111】
<本実施の形態の各種の変形例>
蒸発源の個数を多数(3個以上)に設けること、または、各蒸発源と一対一に対応する補正機構(駆動系統)により補正板を駆動させることが、有益な場合がある。
【0112】
例えば、蒸着粒子の種類によっては、複数の蒸発源から同時に異種の蒸着粒子を飛散させ、これにより、複数種の蒸着粒子からなる混合膜を基板に形成する状況も想定される。このような混合膜を基板に形成する場合であれば、以下の変形例1、2の如く、各蒸発源に専用の補正機構を設けるよう、真空蒸着装置の構成を改変する方が望ましい。
【0113】
そして本補正技術は、このような構成改変に柔軟に対応できる拡張性を内包していると言える。
【0114】
〔変形例1〕
図6は、本変形例の真空蒸着装置の内部の一構成例の概略を示した図である。
【0115】
なお本実施の形態で述べた内容や図1、図2および図3の図示内容を参酌すれば、蒸発源および補正機構の構成を容易に理解できることから、これらの図示は簡略化し、その詳細な説明は省く。
【0116】
本変形例の真空蒸着装置110によれば、複数の蒸発源111a、111b、111c、111dが、真空槽10の内部10eの下方に、左右方向に並んで配置されている。なお、図6では代表的に4個の蒸発源111a、111b、111c、111dを図示しているが、この個数に限らない。
【0117】
また、各蒸発源111a、111b、111c、111dに一対一に対応して、蒸発源111a、111b、111c、111dと同数の補正機構130a、130b、130c、130dが、同じく左右方向に並ぶように配置されている。
【0118】
真空蒸着装置110の蒸着動作の際に、補正機構130a、130b、130c、130dの各々の補正部が、図6の矢印に示した如く、蒸発源111a、111b、111c、111dの各蒸発ポイントの上方を適宜、揺動して、これにより、各蒸発源111a、111b、111c、111dの各蒸発ポイントから放出される蒸着粒子の基板12に向けた飛散量が、補正機構130a、130b、130c、130dの各々の補正部により適切に補正される。
【0119】
〔変形例2〕
図7は、本変形例の真空蒸着装置の内部の一構成例の概略を示した図である。
【0120】
なお本実施の形態で述べた内容や図1、図2および図3の図示内容を参酌すれば、蒸発源および補正機構の構成を容易に理解できることから、これらの図示は簡略化し、その詳細な説明は省く。
【0121】
本変形例の真空蒸着装置120によれば、4個の蒸発源211a、211b、211c、211dが、それぞれ真空槽10の内部10eの下方に、基板12の四隅の近傍に配置されている。
【0122】
なお、図7では代表的に4個の蒸発源211a、211b、211c、211dを図示しているが、この個数に限らない。
【0123】
また、各蒸発源211a、211b、211c、211dに一対一に対応して、各蒸発源211a、211b、211c、211dと同数の補正機構230a、230b、230c、230dが、同じく基板12の四隅の近傍に配置されている。
【0124】
そして、真空蒸着装置120の蒸着動作の際に、補正機構230a、230b、230c、230dの各々の補正部が、図7の矢印に示した如く、蒸発源211a、211b、211c、211dの各蒸発ポイントの上方を適宜、揺動して、これにより、各蒸発源211a、211b、211c、211dの各蒸発ポイントから放出される蒸着粒子の基板12に向けた飛散量が、補正機構230a、230b、230c、230dの各々の補正部により適切に補正される。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明によれば、所定の蒸着粒子の飛散方向に相関する、基板への蒸着粒子堆積量のずれを補正可能な補正機構の、蒸発源とのマッチング性や取り扱い利便性が改善され、例えば、基板に蒸着薄膜を均一に形成する真空蒸着装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の実施の形態の真空蒸着装置の内部の一構成例を示した図である。
【図2】図1に示した真空蒸着装置の内部を横(右から左に向かう方向)から見た図である。
【図3】図1に示した真空蒸着装置の内部の補正部および水平軸を平面視した図である。
【図4】本実施の形態の真空蒸着装置による蒸着動作に基づくSiO2光学薄膜の光学的膜厚分布の測定結果の一例を示した図である。
【図5】本実施の形態の真空蒸着装置による蒸着動作に基づくTiO2光学薄膜の光学的膜厚分布の測定結果の一例を示した図である。
【図6】変形例1の真空蒸着装置の内部の一構成例の概略を示した図である。
【図7】変形例2の真空蒸着装置の内部の一構成例の概略を示した図である。
【符号の説明】
【0127】
10 真空槽
10e 真空槽の内部
11a、11b 蒸発源
12 基板
13 ターンテーブル
14 材料溜め部
15 電子銃
20 基板吊り具
22 基板回転機構
30 補正機構
31 補正部
31a 第1補正板
31b 第2補正板
32 駆動部
33a、33d 大径部
33b、33c 小径部
34 サーボモータ
34a モータ回転棒
35 駆動軸
36 回転/揺動軸
36a 水平部分
36b 垂直部分
37a、37b 平歯車
38a、38b 傘歯車
39 水平軸
40 制御部
100 真空蒸着装置
A、B 気流領域
C 未使用位置
P 蒸発ポイント
θ 揺動角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を減圧可能な真空槽と、
前記真空槽内に配置され、蒸着粒子を基板に向けて飛散させる蒸発源と、
前記真空槽内の前記基板を回転可能な基板回転機構と、
前記蒸発源の蒸発ポイントと前記基板との間の偏倚量に相関する、前記基板への蒸着粒子堆積量のずれを補正する補正部材を有する補正機構と、
を備え、
前記蒸着粒子が前記蒸発ポイントから前記基板に向けて飛散する間、前記補正部材は、前記蒸着粒子が通過する気流領域内を揺動する、真空蒸着装置。
【請求項2】
前記補正部材が、前記蒸発ポイントを上方から覆い、弧に沿って揺動する、請求項1記載の真空蒸着装置。
【請求項3】
前記補正部材は、前記気流領域に進入する使用位置と前記気流領域から退いた未使用位置との間を移動可能に構成される、請求項1記載の真空蒸着装置。
【請求項4】
前記補正機構は、揺動軸を備え、
前記弧は、前記揺動軸の一端を中心とし、前記揺動軸の長さを半径として、前記揺動軸の他端により描かれる円周の軌跡の一部である、請求項2記載の真空蒸着装置。
【請求項5】
前記補正機構は、前記補正部材に揺動力を伝える駆動装置を備え、
前記駆動装置による前記補正部材の揺動条件が、前記蒸着粒子の材質に応じて設定される、請求項1記載の真空蒸着装置。
【請求項6】
前記補正部材は、前記気流領域に進入する使用位置と前記気流領域から退いた未使用位置との間を、移動可能に構成され、前記未使用位置は、前記円周の軌跡のうちの、前記弧以外の部分に存在する、請求項4記載の真空蒸着装置。
【請求項7】
前記蒸発源の対と、
前記各蒸発源に対応する前記補正部材の対と、
前記補正部材同士を連結させるリンク部材と、を備え、
前記リンク部材に前記揺動軸の他端が接続される、請求項4乃至6の何れかに記載の真空蒸着装置。
【請求項8】
前記補正部材の対の一方は、前記蒸発源の対の一方に対応する前記気流領域内のみを揺動し、前記補正部材の対の他方は、前記蒸発源の対の他方に対応する前記気流領域内のみを揺動する、請求項7記載の真空蒸着装置。
【請求項9】
複数の前記蒸発源と、
前記蒸発源の各々に対応する前記蒸発源と同数の前記補正機構と、を備えた、請求項1乃至6の何れかに記載の真空蒸着装置。
【請求項10】
真空槽内を減圧させ、
前記真空槽内の基板を回転させ、
前記真空槽内の蒸発源の蒸発ポイントから前記基板に向けて蒸着粒子の飛散を開始させる際に、前記蒸発ポイントと前記基板の間の偏倚量に相関する、前記基板への蒸着粒子堆積量のずれを補正する補正部材を、前記蒸着粒子が通過する気流領域内で揺動させる、基板蒸着方法。
【請求項11】
前記蒸着粒子の飛散を停止させる際に、前記補正部材の揺動を停止させるとともに、前記補正部材を前記気流領域から退かせる、請求項10記載の基板蒸着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−262538(P2007−262538A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92119(P2006−92119)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】