説明

真空補助式外科用ステープラー

真空デバイスが結合している外科用ステープリング装置が、開示される。この真空デバイスは、上記外科用ステープリング装置に、取り外し可能に固定的に固定され得るか、または上記外科用ステープリング装置中に組み込まれ得る。上記真空デバイスは、上記外科用ステープリンス装置のシェルアセンブリまたは本体部分に固定された、弾性バンドと真空チューブとを備え得る。あるいは、真空チャンバが、上記ステープリンス装置のシェルアセンブリおよび/または本体部分の周囲に固定され得る。さらに、1つ以上の真空チューブが、上記真空チャンバ内に位置し得る。上記真空チューブは、好ましくは、上記シェルアセンブリ中へと延び、そして非展開位置と展開位置との間を移動可能である。各チューブの遠位端は、上記シェルアセンブリとアンビルとの間の複数の位置に、選択的に位置し得る。上記真空チューブは、形状記憶材料から形成され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外科用装置(例えば、外科用ファスナーまたはステープラー装置)に関し、より具体的には、外科用手順(直腸粘膜抜去術、直腸肛門固定術(anopexy)、吻合術、痔核切除術などが挙げられるが、これらに限定されない)を実施するための環状外科用ステープラーに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連分野の背景)
種々の型の外科用ファスナーアプリケーターおよび/またはステープラーが、近接する組織を結合するために組織にファスナーもしくはステープルを適用するために、公知である。例えば、胃および食道の手術において種々の型のステープラーを使用することが、端端(end−to−end)、端側(end−to−side)、もしくは側側(side−to−side)で実施される古典的胃再構築または改変型胃再構築の両方において、ならびに痔核切除術を実施するために、公知である。
【0003】
痔核は、肛門の縁または直腸内近傍にある膨張組織中の拡張された静脈の塊である。代表的には、痔核は、例えば、便秘および/または出産からの慢性的緊張によって引き起こされる。肛門管の上皮内層の下にある脈管組織叢は、直腸海綿体または肛門クッションと呼ばれる。この叢は、毛細血管が介在することなく動脈を静脈に接続し、それにより、肛門クッションの脈管構成要素を生成する。これらの動脈静脈チャネルは、このチャネルを通って流れる血液容量を調節することによって、肛門クッションの大きさを制御する。慢性的緊張は、粘膜下線維弾性結合を損傷させ、肛門クッションは、肛門管中へと突出しており、無痛出血を生じ得る(第1度痔核)。肛門管の外側に位置する脱出痔核は、内括約筋の活動によって狭窄され、静脈叢の血栓症を伴う可能性がある(第4度痔核)。この状態は、壊疽を生じ得、膿瘍形成の危険がある。
【0004】
痔核は、外痔核および内痔核の2つの型があり得る。うねのある歯状線が、肛門の外側から約2.5cm〜3cmに位置し、肛門から直腸への変化の印となっている。痔核は、この線の前の肛門領域において見出される。内痔核は、一般的には、この線の前の直腸領域において見出され、外痔核は、一般的に、肛門輪の外側にある。内痔核は、一般的に、直腸壁内の粘膜下空間中に位置する動脈静脈吻合または動脈静脈接続から、肛門の外側から約2.5cm〜5cmに形成され得る。肛門に近いことに起因して、内痔核は、1つの限局領域、1つより多くの限局領域、または直腸の外周に沿ってのいずれかで、直腸壁から突出し得、特定の重篤な症例においては、内痔核は、肛門から外に突出し得る。
【0005】
広範な種類の外科的方法が、重篤な内痔核の処置のために示唆されている。1つの方法は、閉鎖痔核切除術である。この方法に従って、レトラクタが肛門中に挿入されて、痔核部位への接近が得られる。その後、外科医は、ワニ口クランプを用いてその痔核をクランプ締めし、脈管を結紮し、小刀またはカミソリを用いて直腸壁から痔核を切り離す。一旦、痔核が取り除かれると、その外科部位は、縫合して閉鎖される。その後、レトラクタが、別の位置へと回転され、残った痔核は、その痔核すべてが取り除かれるまで、同様の様式で処置される。
【0006】
内痔核の除去のための別の方法は、解放痔核切除術である。レトラクタを使用するのではなく、この手順に従って、肛門が、2つの指で拡張され、鉗子が、原発性痔核各々の粘膜皮膚結合部に配置される。この痔核は、引き下げられ、第2の鉗子が、各痔核の大部分に適用されて、「露出三角形」が生じる。次に、クランプ締めされた痔核が、括約筋から茎のできる限り近位で切り離され、次いで、結紮されるかまたは縛られる。閉鎖手順とは異なり、創傷は、縫合閉鎖されず、解放されたままにされ、創傷に対して軽い包帯が適用される。
【0007】
なお別の痔核切除手順は、歯状線の上の痔核組織を切除する工程、および余分な直腸粘膜を肛門管上皮まで切除し縫合する工程を包含する。この手順は、特に、周縁痔核に関して使用される。
【0008】
G.Allegra博士による「Particular Experience with Mechanical Sutures:Circular Stapler for Hemorrhoidectomy」と題する論文(補遺1、National Conference of the Italian Viscerosynthesis Association in May 28〜30,1989に提示され、GIORN Chir.,Vol.11,No.3,pp.95〜97,March 1990において公開された)において、Allegra博士は、痔核切除術を実施するための、より簡単でより速い方法を開示した。この論文は、第2度痔核および第3度痔核に対して痔核切除術を実施するための従来の環状ステープラーの使用を開示する。Allegra博士により詳述された手順に従うと、肛門は、櫛状線または歯状線の基部に縫合糸の連続する粘膜下環を配置するために、拡張される。次に、従来の環状ステープリング装置の端部エフェクターが、開口され、次いで、患者の肛門中に配置される。その結果、そのステープリング端部エフェクターのアンビルアセンブリは、縫合糸環の遠位にあり、(ステープリング端部エフェクター)のステープリングヘッドアセンブリは、患者の近位外側にあるようなる。この配置によって、縫合糸の自由端を掴むために、外科医が肛門内に達することが可能になる。その後、この縫合糸の自由端が引かれて、閉じた縫合糸の環が引かれ、そして環状ステープリング装置のステープリングヘッドアセンブリにアンビルを接続するアンビルシャフトの周囲の痔核組織が引かれる。次に、外科医は、痔核の塊の上でアンビルを閉じる。ステープラーは、痔核の離断を実施するために発射される。一旦、発射されると、環状ステープリング装置は、離断された痔核が中に捕捉された状態で、肛門から取り除かれる。
【0009】
Allegra博士の手順の1つの限定事項は、外科医が縫合糸の自由端を掴んで肛門とステープリングヘッドアセンブリとの間の隙間を通して縫合糸を肛門の外へと引くことを可能にするために、ステープリングヘッドアセンブリが、患者の近位外側に配置されなければならないということである。肛門とステープリングヘッドアセンブリとの間の隙間は、肛門から縫合糸を引き出すことを許容する必要があり、従って、ステープリング端部エフェクターが肛門中に配置され得る深さを限定する。Allegra博士の手順を使用すると、内痔核の場合のように、痔核が肛門管の中により深く位置する場合は、ステープリングヘッドアセンブリが、肛門に入り、外科医が縫合糸の自由端に接近するのを効果的にブロックする。
【0010】
Allegra博士の手順のさらなる限定事項は、従来の環状ステープリング装置のステープリング端部エフェクター中に引き込まれ得る痔核組織の量である。痔核は、歯状線の下に位置する縫合糸の連続する環を縛ることによって、(開放アンビルアセンブリをステープリングヘッドアセンブリにつなぐ)アンビルシャフトの中および周辺に引かれる。この動作は、痔核を、アンビルシャフトの周辺に引くが、痔核をステープリングヘッドアセンブリの内側チャンバ中へと引かない。これにより、ステープリング端部エフェクター中にもたらされ得る痔核組織の量が制限され、外科医は、痔核のほんの一部しか除去し得ない。
【0011】
Longoらに対する米国特許第6,083,241号は、環状ステープラーを使用して、患者から内痔核を除去するための方法をまた、開示する。縫合糸は、患者の内痔核の中または上に配置される。縫合糸を掴み、ステープリングヘッドアセンブリ中の通路を通してステープリングヘッドアセンブリのケースの外へとその縫合糸を引き出すために、針フックが使用される。この環状ステープリング装置は、閉じられ、その後、痔核組織をステープリングして切断するように発射され、このステープリング装置は、患者から上記組織を取り出すために患者から取り出される。
【0012】
Allegra博士の手順およびLongoらの手順の両方の重要な欠点は、それらの手順の複雑性である。各々の手順は、ステープリングおよび切断の前に、痔核組織が縫合されることを必要とする。これは、その手順を実施する時間を有意に増加させ、次いで、患者に対する合併症の確率および外傷の確率を増加する。上記のように、各手順は、一般的には、財布の紐型の縫合糸が、上記組織の一部を露出するためにレトラクタを使用することによって上記組織中にまず縫い込まれること、上記組織の露出部分を縫合すること、レトラクタを縫合部分に近接させて再配置すること、および組織全体が縫合されるまで直腸腔の周縁の周りでこれらの工程を反復することを、必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、既存の外科用ステープラーよりも複雑ではなくかつ迅速に外科手順を実施し得る、外科用ステープラーおよび/または装置についての必要性が、存在する。さらに、上記の外科手順の間に患者が経験する外傷を減少するステープラーおよび/または装置についての必要性が、存在する。さらに、外科手順を実施する既存の方法よりも複雑でなく時間もかからない上記の外科手順を実施する方法についての必要性が、存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(要旨)
本開示に従って、環状外科用ステープリング装置が、真空デバイスと組み合わせて提供される。上記真空デバイスは、上記外科用ステープリング装置と一体的に形成され得るか、または上記外科用ステープリング装置中に組み込まれ得る。あるいは、上記真空デバイスは、上記外科用ステープリングデバイスに、取り外し可能にかまたは固定的に、固定され得る。
【0015】
本開示の好ましい一実施形態において、真空デバイスが、外科用ステープリング装置のシェルアセンブリに固定される。上記真空デバイスが、弾性カラー(collar)または弾性バンドによって、外科用ステープリング装置のシェルアセンブリに固定され得、その結果、真空源が、上記シェルアセンブリ中の通気孔と連絡するようになる。上記真空デバイスは、上記シェルアセンブリの通気孔のうちの1つ以上に直接固定され得ること、または上記真空デバイスは、上記外科用ステープリング装置のシェルアセンブリの周囲に配置された真空チャンバを備え得ることもまた、企図される。別の好ましい実施形態において、1つ以上の真空チューブが、上記真空チャンバ中に設けられる。各真空チューブは、上記真空チャンバ内に位置する第1端と、上記シェルアセンブリの内側チャンバ内に位置する第2端とを有する。好ましくは、各真空チューブの第1端が、回転可能に配置されたフィンガーアクチュエータに接続された、スライド可能なマニホルド上に支持される。フィンガーアクチュエータが、各真空チューブの第2端を、上記シェルアセンブリの内部チャンバ内の位置から上記シェルアセンブリの外側の位置へと再配置するために、作動可能である。
【0016】
本開示のなお別の好ましい実施形態において、真空を引くための手段が、上記外科用ステープリング装置中に組み込まれる。好ましい一実施形態において、真空チャネルが、上記外科用ステープリング装置の細長本体およびシェルアセンブリを通して、設けられる。上記真空チャネルの一端は、上記外科用ステープリング装置のアンビルシャフト中に形成される真空開口部と連絡し、上記真空チャネルのもう一端は、真空源と連絡し、この真空源は、外部供給源であっても、上記外科用ステープリング装置内に配置された内蔵ユニットであってもよい。上記アンビルシャフト中の真空開口部は、望ましい任意の構成を有し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本開示は、添付の図面を参照してさらに記載されている。添付の図面において、同様の参照番号は、いくつかの図において同様の部分を指す。
【0018】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本開示の外科用装置の好ましい実施形態は、ここで、図面を参照して、詳細に記載される。ここで類似の参照番号は、類似の要素または同一の要素を識別する。以下の図面および説明において、用語「近位」とは、従来のように、操作者に最も近いその外科用装置の端部をいう一方で、用語「遠位」とは、その操作者から最も遠い、デバイスの端部をいう。外科用装置および方法の以下の説明は、主に、患者の直腸粘膜組織からの除去に関し、本開示に従う装置は、その直腸粘膜組織の除去に限定されず、さらなるまたは他の外科用手順を行うために使用され得ることが想定される。
【0019】
本開示において、用語「直腸粘膜除去術」とは、直腸カフ粘膜除去術、環状ステープラー肛門固定術(anopexy)、痔核切除術、吻合、結腸切除術(colonectomy)および身体の内腔の粘膜壁を含む任意の他の手術手順を含むことが理解される。用語「ステープル」または「ファスナー」とは、本開示で使用される場合、単一部品または複数部品(例えば、2つの部品の外科用ファスナー、外科用ステープルなど)を含む。
【0020】
種々の環状外科用ステープリング装置が周知であることも注目される。本開示は、1つの好ましい環状ステープリング装置を例示するが、本明細書中に提供される教示が、種々の公知のステープリング装置のいずれかに適用され得ることが想定される。
【0021】
初めに図1を参照すると、本開示に従う外科用ステープリング装置は、一般に、100とよばれる。外科用ステープリング装置100は、一般に従来の構造であり、ヨーク102、ヨーク102から延びる細長本体104、カートリッジアセンブリ106(図2)を有するように構成および適合され、その遠位端部で内部チャンバ150を規定するシェルアセンブリ107、ならびにその装置100の遠位端部におけるアンビルアセンブリ108を備える。装置100は、アンビルアセンブリ108をカートリッジアセンブリ106に関連して動かすために、装置100の近位端部において、アンビルアセンブリ108から、細長本体104を通って、ウィングナット110まで、近位に延びる接近機構(示さず)を有する。さらに、1対のハンドル112は、装置100に取り付けられて、外科医の手に握られ、図1において矢印「A」で示されるように、カートリッジアセンブリ106からアンビルアセンブリ108に向かって、ステープルを発射し、シェルアセンブリ107内に移動可能に位置づけられた環状ブレード130を作動するために、互いに向かって動かされる。安全ロック114はまた、ヨーク102の近位端部上に取り付けられる。安全ロック114は、互いに向かって、ハンドル112の不注意な動きを防止して、そのステープルの速すぎる発射またはその環状ブレードの作動を防止する。当該分野で公知であるように、1以上の適切な通気孔116が、カートリッジアセンブリ106の内部を通気するために、シェルアセンブリ107の円錐部分118に設けられる。本開示の一実施形態に従って、これらおよび/または他の通気孔または装置は、シェルアセンブリ107の内側チャンバまたは内部チャンバ150(図2)に真空を提供するために使用され得るかまたは設けられ得る。他の公知の外科用ステープリング装置は、同一人に譲渡された米国特許第5,915,616号(Violaら)およびPCT国際出願番号PCT/US02/10792(2002年4月3日出願)に記載され、これらの各々の開示全体は、本明細書中に参考として援用される。同時係属中の出願、標題「Surgical Stapler Apparatus And Method」(本願と同日に出願された、速達郵便発送番号EV149022962USの下で出願)もまた、本明細書中にその全体が参考として援用される。
【0022】
図2を参照すると、一般に、環状外科用ステープリング装置は、そのアンビルアセンブリ108(図1)のアンビルシャフト122を、外科用ステープリング装置100の接近機構に固定するためのアンビル保持具(retainer)120を備える。その接近機構は、例えば、ウィングナット110を介して作動して、細長本体104内のアンビル保持具120を往復運動させ、従って、細長本体104およびシェルアセンブリ107内にアンビルシャフト122を往復させることが可能である。細長本体104内のアンビルシャフト122の往復は、間隔を空けられた位置と近づけられた位置との間で、シェルアセンブリ107に関連するアンビルアセンブリ108の動きをもたらす。プッシャーアセンブリもまた、提供され、このプッシャーアセンブリは、プッシャーバック124およびステープルドライバ126を備える。プッシャーバック124は、細長本体104内に、例えば、ハンドル112の操作を介して動かされて、ステープルドライバ126および環状ナイフブレード130をカートリッジアセンブリ106に通して進み、ステープルまたはファスナー128をカートリッジアセンブリ106から出し、組織を切断する。
【0023】
ここで図2および2Aを参照すると、本開示の環状ステープリング装置100の好ましい実施形態において、弾性またはエラストマーのカラーまたはバンド140を備える真空デバイスが設けられ、その真空デバイスは、環状弾性バンド本体142および可撓性真空コンジット144を備える。真空コンジット144は、バンド本体142に形成されるポート146と連絡する第1の端部を有する。コンジット144の第2の端部(示さず)は、真空源と連絡するように適合される。真空コンジット144は、バンド本体142と一体して形成され得るか、または代わりに、適切なコネクタ(例えば、ねじ、インターロッキング構造など)を用いてバンド本体に固定される。弾性バンド142は、好ましくは、エラストマーであるネオプレンまたは天然もしくは合成のゴムから形成されるが、他の弾性および非弾性の材料が、使用されてもよい。バンド142は、シェルアセンブリ107の円錐部分118の周りを好ましくはぴったりと受容するような寸法にされ、バンド本体142のポート146が、好ましくは、シェルアセンブリ107における1以上の通気孔116および/または他の開口部もしくは隙間(clearance)と連絡する。残りの通気孔116は、バンド本体142により液密シールされている。
【0024】
使用時に、装置100の遠位端部が管腔(例えば、肛門)内に配置され、真空が、真空コンジット114およびバンド本体142におけるポート146を通して引かれ、低圧領域または真空が、シェルアセンブリ107に規定された内側チャンバ150内に作り出される。この真空または低圧領域は、組織(例えば、管腔の粘膜壁)が、アンビルシャフト122の周りのシェルアセンブリ107の内側チャンバ150に吸引されるかまたは引っ張られる。従って、装置100が近づくと、すなわち、アンビルシャフト122が、細長本体104へと引っ込められると、組織は、アンビルアセンブリ108とカートリッジアセンブリ106との間に捕捉される。その後、装置100は、上記の様式で発射されて、組織をステープルし得かつ切断し得る。
【0025】
図3を参照すると、真空コンジット144が、弾性バンド以外の手段を使用して、通気孔およびまたは他の開口部もしくは隙間116に取り付けられ得ることもまた企図される。例えば、直接または関節に接続される、いずれかの部材または両方の部材に対する連結(例えば、スクリュー継手(screw fitting)152、クイック切断継手(quick disconnect fitting)、摩擦ばめなど)は、真空コンジット144を、1以上の孔116(1つが示される)に取り付けるか、またはその孔と連絡させるために使用され得る。その残りの孔116は、任意の公知の技術を使用してシールされ得るか、または代わりに、装置100は、単一の孔116のみが設けられ得る。
【0026】
図4〜図11は、現在開示される環状ステープリング装置の種々の代替的実施形態を図示し、各々は、シェルアセンブリの内部チャンバ中に真空を適用するかまたは真空を引くための異なる手段を備える。本明細書において示される実施形態のうちの多くは外部真空源を備えるが、上記の各装置が、内蔵真空ユニットを備えるように構成および適合され得ることが構想される(例えば、真空ユニットは、環状ステープリング装置のハンドルアセンブリもしくは細長本体の中に含まれ得る)。開示される環状ステープリング装置の各々はまた、ロボット制御され遠隔的に作動されるシステムに組み込まれるように適合され得る。したがって、真空源は、ロボットシステムにおけるように、遠隔操作され得るか、または遠隔ユニットもしくは制御ボックス内に配置され得る。
【0027】
図4に示される環状ステープリング装置の実施形態を参照すると、真空チャネル160が、プッシャーバック124、アンビル保持具120およびアンビルシャフト122を通じて設けられる。特定のステープラーに依存して、これらの部品は、中空であっても中実であってもよい。この部品が中実である場合、チャネル160は、特定の部品内に形成されなければならない(すなわち、成形されるかもしくは穿孔されねばならない)。一以上の真空開口部162が、アンビルシャフト122に設けられる。一つだけの開口部162がアンビルシャフト122に設けられる場合、この開口部は、好ましくは、内部チャンバ150内もしくは内部チャンバ150の近くに配置されるべきである。開口部162は、環状、楕円、細長チャネル162a(図5)、または通気を可能にする他の任意の構造であり得る。真空源(示されない)は、真空チャネル160に流体接続される。上記で考察されるように、この真空源は、外部真空ユニットであっても、またはこの装置のハンドルアセンブリもしくは細長本体中に担持される内蔵真空ユニット(示されない)であってもよい。外部真空源が設けられる場合、入口ポート(示されない)が、真空チャネル160に接続するアンビル保持具120の任意の近位位置において、装置内に設けられ得る。図2に関して上記で考察されるように、真空が真空チャネル160を通じて引かれる場合、低圧領域166が、シェルアセンブリ107の内部チャンバ150内、およびシェルアセンブリ107とアンビルアセンブリ108との間の領域に作られる。この低圧領域は、アンビルアセンブリ108のアンビルシャフト122の周りの管腔の内壁170からシェルアセンブリ107の内部チャンバ150中へと組織を引きこむように機能する。次いで、組織は、上記で考察された様式で切断されて、固定される。
【0028】
図6に示される環状ステープリング装置は、真空チャネル160が、プッシャーバック124、アンビル保持具120およびアンビルシャフト122を通じて設けられるという点で、図4および図5に示される装置と同様である。しかし、真空チャネル160はまた、アンビルシャフト122を貫いて形成される環状の一連の半径方向ポート160aを備える。このポートは、アンビルアセンブリ108およびカートリッジアセンブリ106が間隔を空けた関係にある場合、好ましくはシェルアセンブリ107の内部チャンバ150内に配置される。この装置は、上記で考察されると同様の様式で作動する。本明細書におけるこの実施形態、または他の実施形態において、ポートは、アンビルシャフト122を通して延びる主真空チャネルから延びる半径方向通路によって供給され得る。
【0029】
図7を参照すると、真空デバイスは、細長本体104の遠位端の周りに配置される中空スリーブ180を備え得る。このスリーブ180は、真空チャンバ182を規定する。このスリーブ180は、真空チューブ186と接続する出口ポート184を備える。中空スリーブ180の遠位端180aは、シェルアセンブリ107’またはシャフト104の孔および/もしくは他の開口部または隙間(clearance)116が真空チャンバ182内に配置されるように、シェルアセンブリ107’の円錐部分118上に配置される。このように、真空が真空チューブ186を通じて引かれる場合、低圧領域が、真空チャンバ182およびシェルアセンブリ107’の内部チャンバ150内、ならびにシェルアセンブリ107’とアンビルアセンブリ108との間に規定される空間に、作られる。低圧領域は、上記で考察されるように、粘膜組織を管腔壁170からアンビルシャフト122に向けて引き出し、かつシェルアセンブリ107の内部チャンバ150内に引き入れる。
【0030】
シェルアセンブリ107’は、内部チャンバ150内により広い非閉塞領域を規定するように環状ナイフブレード130’の直径が増加していることを除いて、図2〜図6に示されるシェルアセンブリ107と実質的に同一である。環状ナイフブレード130’の半径方向の外部もしくは外側方向にあるカートリッジアセンブリの他の周辺要素間の空間もまた、好ましくは圧縮される。図示されるように、環状ナイフ130’の外径は、カートリッジ106の内径に実質的に等しい。このように、使用中に大量の組織が切断され得、そしてシェルアセンブリ107’内に保持され得る。
【0031】
図8〜図11を参照すると、中空スリーブ180に加えて、真空デバイスは、真空チャンバ182内から、シェルアセンブリ107’の孔116を通ってシェルアセンブリ107’の内部チャンバ150内へと延びる一以上の真空チューブ200を備え得る。好ましい一実施形態において、複数の真空チューブ200が設けられる。各真空チューブは、スライド可能な環もしくはマニホルド202に固定された第1端200aを備える。マニホルド202は、真空チャンバ182内にスライド可能に担持されて、リンク206によってフィンガーアクチュエータ204に固定される。リンク206は、マニホルド202およびフィンガーアクチュエータ204と一体的に形成される。あるいは、これらの要素は、個別に形成されて、公知の固定技術を用いて互いに固定される。フィンガーアクチュエータ204は、細長本体104の外部表面に沿ってスライド可能であり、マニホルド202および真空チューブ200を、引込み(非展開)位置(図8)と前進(展開)位置(図10)との間で動かす。フィンガーアクチュエータ204は、細長本体104上に配置されて示されるが、適切な連結が、フィンガーアクチュエータをハンドル112(図1)の隣に配置するために設けられ得る。ガイド構造210が、シェルアセンブリ107’内に提供されて、シェルアセンブリ107’を通して真空チューブ200を方向付ける。
【0032】
真空チューブ200は、好ましくは可撓性材料(例えば、プラスチック、ゴム、金属、金属製形状記憶材料もしくはプラスチック製形状記憶材料など)から形成される。各真空チューブ200の第2端は、をシェルアセンブリ107’中のそれぞれの孔116を通って延び、シェルアセンブリ107’の内部チャンバ150内に配置される。真空チューブ200の第2端200bの位置は、フィンガーアクチュエータ204を、細長本体104に対して、内部チャンバ150内の位置からシェルアセンブリ107’の外部の位置まで移動することによって、再配置され得る。真空チューブ200の長さは、真空チューブ200の端200bを、シェルアセンブリ107’の内部チャンバ150内からアンビルアセンブリ108までの任意の位置に配置することを容易にするように選択され得ることが、構想される。真空チューブ200はまた、シェルアセンブリ107’の半径方向外側に配置された組織と係合する長さであり得る。図11に図示される一つの好ましい実施形態において、真空チューブ200’が展開位置へと動かされる場合、真空チューブ200’は、シェルアセンブリ107’の外側に自然に半径方向に曲がる弾性材料もしくは形状記憶材料で形成される。チューブ200は、好ましくは組織(例えば、粘膜組織)と係合する長さであり、管腔(例えば、肛門)の内壁を規定する。チューブ200は、組織と係合するように展開され得、シェルアセンブリ内に組織を引くように非展開位置へと戻され得る。
【0033】
本明細書中で開示された実施形態に対して、種々の改変がなされ得ることが理解される。例えば、本明細書中で開示された真空デバイスは、環状外科用ステープリング装置のシェルアセンブリを通る真空チャネルを提供することによって、シェルアセンブリ中に通気孔を有さない環状外科手術用ステープリング装置に組み込まれ得る。したがって、上記の記載は、限定として解釈されるべきではなく、好ましい実施形態の単なる例示としてのみ解釈されるべきである。当業者は、本明細書に添付される特許請求の範囲の範囲および精神の範囲内で、他の改変を構想する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、従来の環状外科用ステープリング装置の側方透視図である。
【図2】図2は、図1に示される環状外科用ステープリング装置の遠位端の側方断面図である。ここに開示される真空デバイスまたはカラー(collar)の好ましい一実施形態が、シェルアセンブリの一部の周囲に配置されている。
【図2A】図2Aは、図2に示される真空カラー(collar)の側方透視図であり、真空コンジットの一部を切り出している。
【図3】図3は、図1に示される環状外科用ステープリング装置の遠位端の側方断面図であり、ここに開示される真空デバイス別の好ましい実施形態が、そのシェルアセンブリに固定されている。
【図4】図4は、そのシェルアセンブリ内で真空を引くための好ましい手段を備える、肛門内に配置された環状外科用ステープリング装置の遠位端部の側面断面図を例示する。
【図5】図5は、そのシェルアセンブリ内で真空を引くための別の好ましい手段を備える、肛門内に配置された環状外科用ステープリング装置の遠位端部の側面断面図を例示する。
【図6】図6は、そのシェルアセンブリ内で真空を引くための別の好ましい手段を備える、肛門内に配置された環状外科用ステープリング装置の遠位端部の側面断面図を例示する。
【図7】図7は、その外科用ステープリング装置のシェルアセンブリに固定された本開示の真空デバイスの別の好ましい実施形態を有する、肛門内に配置された図1に示される環状外科用ステープリング装置の側面断面図である。
【図8】図8は、非展開位置にある、その外科用ステープリング装置のシェルアセンブリに固定された、本開示の真空デバイスのなお別の好ましい実施形態を有する、図1に示されるその環状外科用ステープリング装置の側面断面図である。
【図9】図9は、そのアンビルアセンブリが外された、図8に示されるその外科用ステープリング装置の平面図である。
【図10】図10は、その展開位置にある真空デバイスとともに、図8に示されるその外科用ステープリング装置の側面断面図である。
【図11】図11は、展開位置において、その外科用ステープリングデバイスのシェルアセンブリに固定された、本開示の真空デバイスの別の好ましい実施形態とともに、図1に示されるその環状ステープリング装置の側面断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ステープリング装置および真空システムであって、該システムは、
外科用ステープリング装置であって、該装置は、本体部分、シェルアセンブリおよびアンビルを備え、該シェルアセンブリは、該本体部分の遠位端に位置しており、該シェルアセンブリは、ステープルの環状アレイおよび少なくとも1つの開口部を備え、該アンビルは、間隔を空けている位置と接近した位置との間に、該シェルアセンブリに関して移動可能に支持されている、装置;ならびに
真空デバイスであって、該デバイスは、真空コンジットと、該シェルアセンブリに固定されるように適合された弾性バンドとを備え、該真空デバイスは、該少なくとも1つの開口部を通して該外科用ステープリング装置のシェルアセンブリ内に真空を引くように配置されている、デバイス;
を備える、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記弾性材料は、ネオプレンである、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、前記弾性材料は、ゴムである、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記真空コンジットは、前記バンド中のポートと連絡している、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、前記シェルアセンブリの少なくとも1つの開口部は、複数の開口部を備え、前記ポートは、該複数の開口部のうちの1つの開口部と連絡しており、前記バンドは、該複数の開口部のうちの他の開口部をシールするような構成および寸法である、システム。
【請求項6】
外科用ステープリング装置および真空システムであって、該システムは、
外科用ステープリング装置であって、該装置は、本体部分、シェルアセンブリおよびアンビルを備え、該シェルアセンブリは、該本体部分の遠位端に位置しており、該シェルアセンブリは、ステープルの環状アレイおよび少なくとも1つの開口部を備え、該アンビルは、間隔を空けている位置と接近した位置との間に、該シェルアセンブリに関して移動可能に支持されている、装置;ならびに
真空デバイスであって、該デバイスは、ハウジングと、真空コンジットと、少なくとも1つの真空チューブとを備え、該ハウジングは、該外科用ステープリング装置のシェルアセンブリの少なくとも一部の周囲に位置して真空チャンバを規定しており、該少なくとも1つの開口部は、該真空チャンバ内に位置しており、該真空コンジットは、該真空チャンバと連絡しており、該少なくとも1つの真空チューブは、該真空チャンバ内に位置する第1端と、該シェルアセンブリの内側チャンバ内に位置する第2端とを備える、デバイス;
を備える、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、前記少なくとも1つの真空チューブは、複数の真空チューブを包む、システム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムであって、前記真空チャンバ内にスライド可能に位置するマニホルドをさらに備え、前記真空チューブの各々の第1端は、該マニホルドに固定されている、システム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムであって、前記マニホルドに作動可能に接続されたアクチュエータをさらに備え、該アクチュエータは、非展開位置と展開位置との間で前記マニホルドおよび前記複数の真空チューブを移動するように移動可能であり、該非展開位置において、前記真空チューブの各々の第2端は、前記シェルアセンブリ内に位置し、該展開位置において、前記真空チューブの各々の第2端は、前記シェルアセンブリの外部に位置する、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、前記真空チューブのうちの少なくとも1つは、形状記憶材料から形成されている、システム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムであって、前記複数の真空チューブのうちの少なくとも1つの第2端は、前記展開位置において前記シェルアセンブリの半径方向外側を向いている、システム。
【請求項12】
請求項10に記載のシステムであって、前記複数の真空チューブのうちの少なくとも1つの第2端は、前記展開位置において前記シェルアセンブリの半径方向外側に位置する、システム。
【請求項13】
外科用ステープリング装置であって、
本体部分、
該本体の遠位端に支持されるシェルアセンブリ、
アンビルシャフトに遠位端に支持されるアンビル、
該アンビルシャフトを通って延びる真空チャネル、および
該アンビルから間隔を空けた位置において該アンビルシャフトを通って延びる少なくとも1つの真空開口部
を備え、該アンビルは、間隔を空けている位置と接近した位置との間に、該シェルアセンブリに関して移動可能に支持されている、システム。
【請求項14】
請求項13に記載の外科用ステープリング装置であって、前記少なくとも1つの真空開口部は、複数の真空開口部を含む、外科用ステープリング装置。
【請求項15】
請求項14に記載の外科用ステープリング装置であって、前記複数の開口部の各開口部は、細長スロットを備える、外科用ステープリング装置。
【請求項16】
請求項13に記載の外科用ステープリング装置であって、前記複数の開口部は、前記アンビルシャフトの長手方向軸に沿って間隔を空けている、外科用ステープリング装置。
【請求項17】
請求項13に記載の外科用ステープリング装置であって、前記少なくとも1つの真空開口部は、前記シェルアセンブリの内側チャンバ内に位置する、外科用ステープリング装置。
【請求項18】
請求項17に記載の外科用ステープリング装置であって、前記複数の開口部は、前記アンビルシャフトの外周の周りで間隔を空けている、外科用ステープリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−511277(P2006−511277A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563990(P2004−563990)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/041068
【国際公開番号】WO2004/058080
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(501289751)タイコ・ヘルスケア・グループ・リミテッド・パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】